JP2019013215A - 口蹄疫ウイルスires発現細胞 - Google Patents
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Abstract
【課題】口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部認識領域(IRES)活性を阻害する薬剤や低分子化合物のスクリーニングに有用なFMDV-IRES発現細胞を提供することを目的とする。【解決手段】第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及びFMDV由来のIRESを含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を有する、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞であって、第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子とは異なり、且つ前記融合遺伝子において、5'側から3'側方向にFMDV由来のIRESが第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する、前記動物細胞。【選択図】なし
Description
本発明は、例えば口蹄疫ウイルス(Foot-and mouth disease virus;以下、「FMDV」と称する)の内部認識領域(Internal Ribosomal Entry Site;以下、「IRES」と称する)活性を阻害する薬剤や低分子化合物のスクリーニングに有用なFMDV-IRES発現細胞に関する。
FMDVは、家畜に重大な被害を及ぼす感染症を引き起こすウイルスである。FMDVはピコルナウイルス科アフトウイルス属に属する一本鎖プラス鎖RNAウイルスであり、FMDVゲノムRNAの非翻訳領域(5'UTR)内には、40SリボゾームのIRESが存在する。FMDVゲノムRNAの翻訳は、当該IRESへの40Sリボゾームの内部進入により開始する。当該プロセスは、IRES trans-acting factors(ITAFs)として知られる細胞因子により促進される。
本発明者は、FMDVゲノムRNAのIRESからの翻訳活性を、海椎茸(Renilla)ルシフェラーゼ遺伝子と蛍(Firefly)ルシフェラーゼ遺伝子との間にFMDV-IRES配列を持つジシストロニックレポータープラスミドを用いて、HEK293細胞株(ヒト)、MDCK細胞株(イヌ)、MDBK細胞株(ウシ)、CPK細胞株(ブタ)で比較した結果、当該翻訳活性はMDBK細胞株、MDCK細胞株、HEK293細胞株、CPK細胞株の順で強かったため、FMDVの感染域との相関はないことを明らかとした。また、IRES活性に関与する宿主因子が、poly-pyrimidine-tract binding protein(PTB)、eukaryotic initiation factor 4E-binding protein 1(4E-BP1)とIRES trans-acting factor(ITAF45)であることを解明した(非特許文献1)。これら宿主因子の翻訳における作用は各種細胞株で確認できた。
Kanda T. et al., BMC Veterinary Research, 12:66, 2016
FMDV-IRES活性を阻害する薬剤や低分子化合物のスクリーニングには、FMDV-IRES発現細胞が有用である。
上記のように、非特許文献1は、2種のルシフェラーゼ遺伝子間にFMDV-IRES配列を持つジシストロニックレポータープラスミドを発現する細胞を開示する。しかしながら、当該細胞におけるFMDV-IRES発現は一過性であり、薬剤スクリーニング等の実験の度に、当該レポータープラスミドを細胞にトランスフェクトする必要がある。
そこで、本発明は、上述の実情に鑑み、FMDV-IRES活性を阻害する薬剤や低分子化合物のスクリーニングに有用なFMDV-IRESを恒久的に発現する細胞を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、FMDV-IRESを恒久的に発現する細胞を樹立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及びFMDV由来のIRESを含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を有する、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞であって、第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子とは異なり、且つ前記融合遺伝子において、5'側から3'側方向にFMDV由来のIRESが第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する、前記動物細胞。
(2)第1のレポーター遺伝子が海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子であり、且つ第2のレポーター遺伝子が蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子である、(1)記載の動物細胞。
(3)選択マーカー遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子である、(1)又は(2)記載の動物細胞。
(4)ヒト細胞である、(1)〜(3)のいずれか1記載の動物細胞。
(5)(1)〜(4)のいずれか1記載の動物細胞と候補物質とを接触させる工程と、第1のレポーター遺伝子によりコードされる第1のレポータータンパク質の活性と第2のレポーター遺伝子によりコードされる第2のレポータータンパク質の活性を測定する工程とを含み、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率を指標として前記候補物質のFMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を決定する、FMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を有する物質のスクリーニング方法。
(1)第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及びFMDV由来のIRESを含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を有する、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞であって、第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子とは異なり、且つ前記融合遺伝子において、5'側から3'側方向にFMDV由来のIRESが第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する、前記動物細胞。
(2)第1のレポーター遺伝子が海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子であり、且つ第2のレポーター遺伝子が蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子である、(1)記載の動物細胞。
(3)選択マーカー遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子である、(1)又は(2)記載の動物細胞。
(4)ヒト細胞である、(1)〜(3)のいずれか1記載の動物細胞。
(5)(1)〜(4)のいずれか1記載の動物細胞と候補物質とを接触させる工程と、第1のレポーター遺伝子によりコードされる第1のレポータータンパク質の活性と第2のレポーター遺伝子によりコードされる第2のレポータータンパク質の活性を測定する工程とを含み、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率を指標として前記候補物質のFMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を決定する、FMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を有する物質のスクリーニング方法。
本発明によれば、FMDVに対する治療薬を効率的に同定することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る細胞は、第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及びFMDV由来のIRESを含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を有する、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞である。ここで、第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子とは異なり、また融合遺伝子において、5'側から3'側方向にFMDV由来のIRESが第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する。
本発明に係る細胞は、第1のレポーター遺伝子、FMDV由来のIRES及び第2のレポーター遺伝子を含む融合遺伝子と共に、当該細胞の核(ゲノムDNA)又は細胞質(発現ベクター中)に存在する選択マーカー遺伝子を指標として、当該融合遺伝子を有する動物細胞を選択することで樹立された、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞である。非特許文献1に記載の一過性にFMDV由来のIRESを発現する細胞とは異なり、本発明に係る細胞は、FMDV由来のIRESを恒久的に発現することで、FMDV-IRES活性を阻害する薬剤や低分子化合物のスクリーニングに有用である。
本発明において、第1及び第2のレポーター遺伝子としては、例えば酵素遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子等)、蛍光タンパク質遺伝子(緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子等)が挙げられる。例えば、第1のレポーター遺伝子は海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号1、アミノ酸配列:配列番号2)であり、また第2のレポーター遺伝子は蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号3、アミノ酸配列:配列番号4)である。なお、海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号2記載のアミノ酸配列から成るか又は当該アミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子以外に、配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つルシフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってよい。また、蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号4記載のアミノ酸配列から成るか又は当該アミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子以外に、配列番号4記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つルシフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってよい。
FMDV由来のIRESとしては、例えば配列番号5記載の塩基配列から成るか又は当該塩基配列を含むRNA、あるいは配列番号5記載の塩基配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する塩基配列から成り、且つIRES活性を有するRNAが挙げられる。IRES活性とは、RNAの5’非翻訳領域内部で40Sリボゾームが結合し、翻訳を開始する活性を意味する。なお、レポーター遺伝子との融合遺伝子において、FMDV由来のIRESは、DNA(例えば、配列番号5記載の塩基配列において、uがtである)として組み込まれる。
選択マーカー遺伝子としては、例えばネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等の薬物耐性遺伝子が挙げられる。
また、動物細胞としては、例えば脊椎動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、特に好ましくはヒト細胞が挙げられる。具体的には、由来する動物種によって細胞でのIRES活性が大きく異ならない事や、siRNAによるゲノムワイドなランダムノックダウンが容易にできるように既に全ゲノム配列が明らかとなっていることを考慮して、ヒト由来のHEK293細胞株を用いることができる。
本発明に係る細胞の作製においては、先ず第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及びFMDV由来のIRES(5'側から3'側方向において第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する)を含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を含むベクター(ジシストロニックレポータープラスミド)を作製する。あるいは、第1のレポーター遺伝子、FMDV由来のIRES及び第2のレポーター遺伝子を含む融合遺伝子を含むベクターと、選択マーカー遺伝子を含むベクターとを別々に作製してもよい。ベクターとしては、例えばpCAGGSベクター、pCMVベクター、pUCベクター、pBR322ベクター等が挙げられる。また、例えばpCAGGS-Neoベクター(ネオマイシン耐性遺伝子及びカナマイシン耐性遺伝子を含む)等の薬物耐性遺伝子(選択マーカー遺伝子)を既に含むベクターを、第1のレポーター遺伝子、FMDV由来のIRES及び第2のレポーター遺伝子を含む融合遺伝子を含むベクターの作製に使用してもよい。ベクターにおいて各エレメントは、機能的に連結されており、また適当な制御配列(プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)の下に配置される。
次いで、常法により、ベクターを細胞にトランスフェクトする。第1のレポーター遺伝子、FMDV由来のIRES及び第2のレポーター遺伝子を含む融合遺伝子を含むベクターと、選択マーカー遺伝子を含むベクターとを使用する場合には、これらベクターDNAを同時に細胞にコトランスフェクトする。トランスフェクション後、選択マーカー遺伝子によりコードされる選択マーカーによる選択を繰り返すことで、第1のレポーター遺伝子、FMDV由来のIRES及び第2のレポーター遺伝子を含む融合遺伝子が安定的に発現できる細胞を選択する。例えば、選択マーカー遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子である場合には、G418含有培地での培養により、生育する細胞を、ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞(上記融合遺伝子を有する細胞)として選択することができる。このようにして、本発明に係る細胞を樹立することができる。
また、本発明は、本発明に係る細胞と候補物質とを接触させる工程と、第1のレポーター遺伝子によりコードされる第1のレポータータンパク質の活性と第2のレポーター遺伝子によりコードされる第2のレポータータンパク質の活性を測定する工程とを含む、FMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を有する物質(FMDV-IRES特異的阻害剤)のスクリーニング方法に関する。本発明に係るスクリーニング方法では、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率を指標として候補物質のFMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を決定する。
候補物質としては、任意の物質を用いることができ、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、合成化合物、微生物の培養上清、植物由来の天然成分、植物抽出物、動物組織抽出物等が挙げられる。
また、本発明に係る細胞と候補物質との接触とは、FMDV由来のIRES活性に候補物質が影響を及ぼす状態を意味する。例えば、本発明に係る細胞を培養する培地に候補物質を添加するだけでもよい。あるいは、候補物質をある種のキャリアー物質(タンパク質や脂質等)と共に本発明に係る細胞を培養する培地に添加してもよい。また、本発明に係る細胞にマイクロインジェクション等で候補物質を直接導入してもよい。
本発明に係る細胞に候補物質を作用させた後、第1のレポーター遺伝子によりコードされる第1のレポータータンパク質の活性と第2のレポーター遺伝子によりコードされる第2のレポータータンパク質の活性を測定する。本発明に係る細胞では、第1のレポーター遺伝子とFMDV由来のIRESと第2のレポーター遺伝子とが、1本のmRNAとして融合したジシストロニック遺伝子として転写される。当該mRNAは、5’末端にcap配列を持ち、これをリボソームが認識することで、cap依存性に第1のレポーター遺伝子由来のmRNAの翻訳が行われる。一方、第2レポーター遺伝子は、FMDV由来のIRESにリボソームが直接結合することで、ジシストロニック遺伝子であるmRNAの途中からIRES介在性に第2のレポーター遺伝子由来のmRNAの翻訳が行われる。従って、第1のレポータータンパク質の活性(cap依存性翻訳)に対する第2のレポータータンパク質の活性(IRES介在性翻訳)の比率(割合)をIRES活性と表すことができる。換言すれば、IRES介在性翻訳が促進された場合には、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率が高くなり、IRES介在性翻訳が抑制された場合には、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率が低くなる。例えば、候補物質非添加時に培養した本発明に係る細胞における第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率と比較して、候補物質を添加して培養した本発明に係る細胞における当該比率が有意に低い場合に、当該候補物質をFMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を有する物質と判断することができる。
例えば、第1のレポーター遺伝子として海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子を使用し、第2のレポーター遺伝子として蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子を使用する場合には、これらルシフェラーゼの基質の違い(海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼの基質:セレンテラジン、蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼの基質:ルシフェリン)に基づいて、それぞれの基質との反応に伴う発光シグナルを指標として、それぞれのルシフェラーゼの活性を測定することができる。
さらに、本発明に係るスクリーニング方法に準じて、本発明に係る細胞をsiRNAやCrispr/Cas9等によるランダムノックダウンに供し、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率を指標として、IRES活性に関与する宿主因子(IRES活性化因子又はIRES抑制因子)を同定することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
1.材料及び方法
ジシストロニックベクターの構築:FMDV-IRES(配列番号5記載の塩基配列において、uがtである塩基配列)活性を測定するために、第1シストロンに海椎茸ルシフェラーゼ(以下、「R-luc」と称する)遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号1、アミノ酸配列:配列番号2)、第2シストロンにホタルルシフェラーゼ(以下、「F-luc」と称する)遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号3、アミノ酸配列:配列番号4)を繋げたジシストロニック遺伝子の発現ベクターを構築した(図1A)。ベクターは、pCAGGSベクター(図1B)もしくはpCAGGS-Neoベクター(図1C)を用いて構築した。pCAGGSベクターを用いる場合には、下記の様にNeo遺伝子を別途供給した。
ジシストロニックベクターの構築:FMDV-IRES(配列番号5記載の塩基配列において、uがtである塩基配列)活性を測定するために、第1シストロンに海椎茸ルシフェラーゼ(以下、「R-luc」と称する)遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号1、アミノ酸配列:配列番号2)、第2シストロンにホタルルシフェラーゼ(以下、「F-luc」と称する)遺伝子(cDNA塩基配列:配列番号3、アミノ酸配列:配列番号4)を繋げたジシストロニック遺伝子の発現ベクターを構築した(図1A)。ベクターは、pCAGGSベクター(図1B)もしくはpCAGGS-Neoベクター(図1C)を用いて構築した。pCAGGSベクターを用いる場合には、下記の様にNeo遺伝子を別途供給した。
FMDV-IRES発現細胞の樹立:以前の検討から、FMDV-IRESの活性がFMDVの宿主域に関わらず、どの細胞でもあまり大きく変わらなかった事(非特許文献1)や、実験の簡便さからヒト由来HEK293細胞を用いてFMDV-IRES発現細胞を樹立した。
細胞の培養にはダルベッコ変法イーグルMEM(DMEM)培地(ニッスイ)に牛胎児血清(Thermo Fisher Scientific)を10%添加したものを用いた。6cmディッシュ(Falcon社)にHEK293細胞を5x105個の細胞を撒き、翌日FMDV-DNA(図1に示すベクター)5μgとネオマイシン耐性遺伝子を発現するベクター(pCMV-Neo)のDNAを(5-50 ng)混合し、Lipofectamine LTX(Thermo Fisher Scientific)試薬を用いてトランスフェクションを行った(図2)。2日後、トランスフェクションした細胞を10cmディッシュに継代し、G418(Thermo Fisher Scientific)を終濃度300μg/mLになるように添加した。その後、適宜培地を交換し、1ヶ月後に細胞のコロニーが形成された際に、1コロニーずつピックアップして96ウェルプレートに移した。
その後、Dual-Luciferase assay system (Promega社)を用いて第一シストロンのR-luc活性(R)と第2シストロンのFMDV-IRES活性(F)をルミノメーターで測定し、F/R値を計算して高いものを40クローン得た。これらをさらに細胞を増やして1クローンあたり少なくとも3本のチューブを保存した。このF/R値も測定した(図3)。
pCAGGS-Neoベクターを細胞にトランスフェクションして、同様にG-418(300μg/mL)で選択して作製し、20クローンを得た(図4)。特に活性の高い4クローン(B5, B7, B10, G7)はそれぞれ5本のチューブを保存した。
2.結果及び考察
FMDV-IRESを持つジシストロニックベクターを発現する細胞株を得る事ができた。このジシストロニックベクターでは、第1シストロンのR-luc遺伝子はキャップ依存性に翻訳される。一方、第2シストロンのF-luc遺伝子はFMDV-IRES依存性に翻訳される。第一シストロンのR-luc活性に対するF-luc活性の比を算出する事により、異なる細胞間や阻害剤を処理した場合のFMDV-IRES抑制度を正確に算出する事ができる。また、細胞株となっているため、毎回トランスフェクションをする必要がなく、また、FMDV-IRES活性のばらつきも抑える事ができるため、阻害剤等のスクリーニングが容易である。
FMDV-IRESを持つジシストロニックベクターを発現する細胞株を得る事ができた。このジシストロニックベクターでは、第1シストロンのR-luc遺伝子はキャップ依存性に翻訳される。一方、第2シストロンのF-luc遺伝子はFMDV-IRES依存性に翻訳される。第一シストロンのR-luc活性に対するF-luc活性の比を算出する事により、異なる細胞間や阻害剤を処理した場合のFMDV-IRES抑制度を正確に算出する事ができる。また、細胞株となっているため、毎回トランスフェクションをする必要がなく、また、FMDV-IRES活性のばらつきも抑える事ができるため、阻害剤等のスクリーニングが容易である。
本実施例で作製したFMDV-IRES発現細胞株は少なくとも35もしくは20種類樹立する事に成功した。これらの細胞は、阻害剤探索やIRESで作用する翻訳因子探索等の強力なツールとなりうると期待できる。
Claims (5)
- 第1のレポーター遺伝子、第2のレポーター遺伝子及び口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の内部認識領域(IRES)を含む融合遺伝子並びに選択マーカー遺伝子を有する、FMDV由来のIRESを恒久的に発現する動物細胞であって、第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子とは異なり、且つ前記融合遺伝子において、5'側から3'側方向にFMDV由来のIRESが第1のレポーター遺伝子と第2のレポーター遺伝子との間に位置する、前記動物細胞。
- 第1のレポーター遺伝子が海椎茸(Renilla)由来のルシフェラーゼ遺伝子であり、且つ第2のレポーター遺伝子が蛍(Firefly)由来のルシフェラーゼ遺伝子である、請求項1記載の動物細胞。
- 選択マーカー遺伝子がネオマイシン耐性遺伝子である、請求項1又は2記載の動物細胞。
- ヒト細胞である、請求項1〜3のいずれか1項記載の動物細胞。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の動物細胞と候補物質とを接触させる工程と、
第1のレポーター遺伝子によりコードされる第1のレポータータンパク質の活性と第2のレポーター遺伝子によりコードされる第2のレポータータンパク質の活性を測定する工程と、
を含み、第1のレポータータンパク質の活性に対する第2のレポータータンパク質の活性の比率を指標として前記候補物質のFMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を決定する、FMDV由来のIRESに対する特異的な阻害活性を有する物質のスクリーニング方法。
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WO2016057903A1 (en) * | 2014-10-10 | 2016-04-14 | Dana-Farber Cancer Institute, Inc. | Methods for discovering therapeutics that alter the stability of target proteins |
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Title |
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BMC VETERINARY RESEARCH, vol. 12:66, JPN6021047385, 2016, pages 1 - 7, ISSN: 0004649164 * |
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