JP2019011436A - 導電性組成物および導体膜の製造方法 - Google Patents

導電性組成物および導体膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐腐食性が良好であり、かつ優れた導電性を発現し、更に印刷塗工にも適する組成物の提供。【解決手段】バインダー樹脂(A)と、導電性付与剤(B)と、有機溶剤(C)とを含む導電性組成物であり、バインダー樹脂(A)が、ポリオレフィン樹脂(A−1)及びスチレン系エラストマー樹脂(A−2)から選ばれ、導電性付与剤(B)が膨張化黒鉛(B1)を含み、膨張化黒鉛の平均粒径が10〜200μm好ましくは25〜150μmであって、導電性付与剤(B)の含有量が、組成物の固形分100質量%中、40〜90質量%であり、形成した導電性膜の体積抵抗値が10−3〜10−1Ωcm未満である導電性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた導電性を発現する導電性組成物に関する。
近年製品の軽量化、環境への配慮、及び製造コスト抑制の観点から、導電性樹脂組成物を使用した導電性塗料、及び導電性接着剤等が増加している(特許文献1)。こういった用途では、高い導電性が要求され、導電性フィラーとして、銀、銅などの金属が使われることが多い。しかし、長期信頼性が必要とされる用途では、各種の耐性、特に耐腐食性が要求され、そのような用途では、銀、銅などの金属は使用できないため、導電性炭素系フィラーがしばしば用いられることとなる。
導電性炭素系フィラーを用いた導電性組成物は、グラファイトやカーボンナノチューブなどを用いて、低抵抗な導電性組成物の検討が行われている(特許文献2、3)。しかし、金属フィラーと比較して、高い導電性を発現することが困難であり、また、炭素系フィラーは、金属と比較して比重が軽く、高い導電性を発現するために組成物内の炭素系フィラーの充填量が多くなると、スクリーン印刷等による印刷塗工が困難になるという問題がある。
特願2014−551472号公報 特願2001−60413号公報 特願2002−20515号公報
本発明の目的は、耐腐食性が良好であり、かつ優れた導電性を発現し、さらに印刷塗工にも適する組成物を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す導電性組成物により高い導電性を発現しつつ印刷できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、バインダー樹脂(A)と、導電性付与剤(B)と、有機溶剤(C)とを含む導電性組成物であって、バインダー樹脂(A)が、ポリオレフィン樹脂(A−1)およびスチレン系エラストマー樹脂(A−2)からなる群より選ばれ、導電性付与剤(B)が膨張化黒鉛(B1)を含み、膨張化黒鉛の平均粒径が10μm以上、200μm以下であって、導電性付与剤(B)の含有量が、組成物の固形分100質量%中、40質量%以上90質量%以下であることを特徴とする導電性組成物に関する。
また、本発明は、膨張化黒鉛(B1)の平均粒径が25μm以上、150μm以下であることを特徴とする前記の導電性組成物に関する。
また、本発明は、形成した塗膜の体積抵抗値が10−3Ωcm以上、10−1Ωcm未満であることを特徴とする前記の導電性組成物に関する。
また、本発明は、更に、導電性付与剤(B)が、カーボンブラック(B2)を含むことを特徴とする前記の導電性組成物に関する。
また、本発明は、有機溶剤(C)が、25℃の時の粘度が30mPa・s以上、75000mPa・s以下である有機溶剤(C1)を含み、有機溶剤(C1)の含有量が、有機溶剤(C)の含有量100質量%中、10質量%以上であることを特徴とする前記の導電性組成物に関する。
また、本発明は、前記の導電性組成物を基材に塗工した後、乾燥して得た導体膜を熱プレスすることを特徴とする導体膜の製造方法に関する。
また、本発明は、導体膜の体積抵抗値が10−4Ωcm以上、10−2Ωcm未満であることを特徴とする前記の導体膜の製造方法に関する。
また、本発明は、前記の導電性組成物をスクリーン印刷によりパターニングし、導体配線とする導電膜の製造方法に関する。
本発明により、耐腐食性が良好であり、かつ高い導電性を発現し、さらに印刷塗工にも適する組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の導電性組成物(以下、「組成物」と称す場合がある)は、バインダー樹脂(A)と導電性付与剤(B)と有機溶剤(C)とを含むことを特徴とする。
<バインダー樹脂(A)>
本発明に用いられるバインダー樹脂は、ポリオレフィン樹脂(A−1)およびスチレンエラストマー樹脂(A−2)からなる群より選ばれる。上記、樹脂を用いることで、体積抵抗値、基材への密着性および耐久性が良好となる。体積抵抗値は、熱プレス中の樹脂分が流動しやすいため良好な結果となる。
[ポリオレフィン樹脂(A−1)]
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂(A−1)としては、オレフィン系モノマーのアニオン重合、カチオン重合、配位重合等によって得られるランダムポリマー或いはブロックポリマー、およびそれらの酸無水物変性体やアミン変性体、塩素化体、グラフト変性体などが挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂の合成に使用されるオレフィン系モノマーとしては、分子中にエチレン性炭素−炭素二重結合を1つ以上有する化合物((メタ)アクリル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、アクリロニトリルを除く)であればよく、α―オレフィンモノマーや共役ジエンモノマー、イソブテンなどが挙げられる。α―オレフィンモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンもしくは3−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数3〜12の末端オレフィン化合物などが挙げられる。共役ジエンモノマーとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、β−ファルネセンなどが挙げられる。これらのオレフィン系モノマーは1種のみを用いて重合を行っても良いし、2種以上を併用してもよい。
また、上記ポリオレフィン樹脂(A−1)は、本発明の特性を失わない範囲で上記オレフィン系モノマーを必須として、上記オレフィン系モノマー以外のモノマー(スチレンを除く)とを共重合したものであってもよい。共重合に用いられる上記オレフィン系モノマー以外のモノマーとしては、アクリル酸エチルやメタクリル酸メチル、グリシジルメタクリレートなどの(メタ)アクリル化合物、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸無水物などが挙げられる。
このようなポリオレフィン樹脂(A−1)の市販品としては、例えばタフマーBL2491、タフマーBL3450(三井化学製ポリ1−ブテン樹脂)タフマーXM−7080、タフマーXM−5090(三井化学製1−ブテン・プロピレン共重合樹脂)、タフマーMA−8510、タフマーMA7020(三井化学製酸無水物変性ポリオレフィン樹脂)、アウローレン100S、アウローレン250S(日本製紙社製、酸無水物変性ポリオレフィン樹脂)、スーパークロン814HS、スーパークロン390S(日本製紙社製、塩素化ポリオレフィン樹脂)、モディパーA3400(日油社製、ポリプロピレンの側鎖アクリロニトリルグラフト変性物)、モディパーA4300(日油社製、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体の側鎖メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルグラフト変性物)などが挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
[スチレンエラストマー樹脂(A−2)]
本発明に用いられるスチレンエラストマー樹脂(A−2)としては、上記オレフィン系モノマーおよびスチレンのアニオン重合やカチオン重合等によって得られるランダムポリマー或いはブロックポリマーであればよく、例えばSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー),SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー)、SEBS(スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロックポリマー)、SBBS(スチレン−1−ブテン・ブチレン−スチレンブロックポリマー)、SEPS(スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロックポリマー)、SIBS(スチレン−イソブテン−スチレンブロックポリマー)、およびそれらの酸無水物変性体やアミン変性体などが挙げられる。
このようなスチレンエラストマー樹脂(A−2)の市販品としては、例えばタフプレンAやアサプレンT−411(旭化成社製、SBS樹脂)、JSRSIS5002やJSRSIS5506(JSR社製、SIS樹脂)、タフテックH1401やタフテックH1517(旭化成社製、SEBS樹脂)、セプトンS2005やセプトンS2104(クラレ社製、SEPS樹脂)、タフテックM1913やタフテックM1924(旭化成社製、マレイン酸無水物変性SEBS樹脂)、タフテックMP10(旭化成社製、アミン変性SEBS樹脂)、S.O.E1605やS.O.E1606(旭化成社製、水添スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂)SIBSTAR072TやSIBSTAR102T(カネカ社製、SIBS樹脂)などが挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリオレフィン樹脂(A−1)、もしくはスチレンエラストマー樹脂(A−2)と他バインダー樹脂を併用しても良い。併用する事が出来るバインダー樹脂としては、ポリウレタン系、アクリロニトリル系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、ポリビニルブチラール系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、EVA系、ポリフッ化ビニリデン系及びシリコン系樹脂等からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。これらの樹脂に限定されるわけではない。
バインダー樹脂は、導電性組成物を基材に塗工した後に、硬化剤と硬化(架橋)反応させることもできる。
<導電性付与剤(B)>
本発明の導電性組成物は、導電性付与剤として膨張化黒鉛(B1)を含むことを特徴とする。
(膨張化黒鉛(B1))
本発明で用いられる膨張化黒鉛とは、鱗片状黒鉛を化学処理した膨張黒鉛(膨張性黒鉛ともいう;ExpandableGraphite)を、熱処理して膨張化させた後、微細化したものである。なお、微細化前に圧延しグラファイトシート化したものを粉砕して得られた膨張化黒鉛粉末も含む。
膨張化黒鉛としては、従来公知の膨張化黒鉛から適宜選択され得る。市販の膨張化黒鉛を用いてもよい。市販の膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50が挙げられる(いずれも商品名)。
膨張化黒鉛の形状に関しては、特に限定されるものではない。例えばさらに薄片状に処理された薄片状の膨張化黒鉛などが挙げられる。
膨張化黒鉛は、他の黒鉛と比べて少量の含有量で高い導電性を発現することが可能となっている。例えば、一般的な鱗状黒鉛よりも少量で高い導電性を発現する傾向にある。
膨張化黒鉛の平均粒径は、10μm〜200μであり、25〜150μmがより好ましい。形成される導電膜の導電性向上の点から10μm以上であることが好ましく、導電性組成物の塗工性および形成される導電膜の基材への密着性の点から200μm以下であることが好ましい。
また、D10(μm)とD90(μm)の粒径の差分が、60μm以上であることが好ましい。
なお、本発明における「平均粒径」とはレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。D10(μm)とD90(μm)は、積算値10%、90%の粒径を意味する。
測定は、以下の条件で行うものとする。
測定機器:マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社)
測定サンプル調整方法:黒鉛0.63g、トルエン11.87gを蓋付きガラス瓶(M-70)に添加した後、遊星攪拌(株式会社シンキー製:あわとり錬太郎、攪拌時間:3分)を行い分散液を作製し、測定を実施する。
導電性組成物の固形分量を100質量%とした時の導電性付与剤(B1)の含有量は、40質量%〜90質量%であり、より好ましくは、50質量%〜85質量%である。形成される導電膜の導電性向上の点から40質量%以上が好ましく、導電性組成物の塗工性および形成される導電膜の基材への密着性の点から90質量%以下が好ましい。
(カーボンブラック(B2))
本発明では導電性付与剤としては、さらにカーボンブラックを併用することができる。膨張化黒鉛とカーボンブラックを併用することで、カーボンブラックが膨張化黒鉛の導電パスをつなぐ役割を果たし、熱プレス工程を経なくても高い導電性を発現する傾向にある。
カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネストブラック等従来公知の導電性カーボンの使用が可能である。
膨張化黒鉛(B1)とカーボンブラック(B2)の質量組成比は、膨張化黒鉛、カーボンブラックの総質量を100質量%とした時、膨張化黒鉛は、60〜90質量%、カーボンブラックは10〜40質量%が好ましい。膨張化黒鉛由来の高い導電性を活かすという点からカーボンブラック(B2)は40質量%以下が好ましく、膨張化黒鉛間の導電パスをつなぐという点からカーボンブラック(B2)は10質量%以上であることが好ましい。
(その他の導電性付与剤)
その他の導電性付与剤としては、膨張化黒鉛以外の黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、コークスが挙げられる。ただし、物性を損なわない範囲であればこの限りではない。また、1種または2種以上を併用することもできる。
<有機溶剤(C)>
有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から導電性組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。また、溶剤は2種以上用いてもよい。
尚、スクリーン印刷などのインキ組成物に一定以上の粘性が要求される印刷塗工方式を採用する場合、25℃の時の粘度は、30mPa・s〜75000mPa・sの有機溶剤(C1)を有機溶剤(C)100質量%中、10質量%以上含むことが好ましい。形成される導電膜の導電性向上の点からはバインダー(A)量の少なくすることが望まれるが、バインダー(A)量が少ないと、導電性付与剤(B)の分散性が低下し、導電性組成物の塗工性も低下する。導電性付与剤(B)の分散性向上、および導電性組成物を塗工に適した粘性にする「疑似バインダー」としての機能の点から、25℃において30mPa・s以上の有機溶剤を用いることが好ましい。一方、導電性付与剤(B)の分散性向上の点からは、粘度が高すぎないことが好ましく、具体的には、25℃において75000mPa・s以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
このような有機溶剤(C1)としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1、3−ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。ここで示すところの高粘度溶剤は、二種以上用いて良い。
さらに、有機溶剤(C1)は、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールのような25℃の時の粘度が30mPa・s未満の低粘度溶剤と併用して使用することも可能である。
ここで示す粘度とは、以下の測定方法で得られた数値のことを示す。
アントンパール・ジャパン社製のレオメーター(MCR302)を用いて測定した。測定方法としては、測定サンプルを設置後以下の条件で測定し、せん断開始から60秒後の数値を読み取ることとする。
測定治具:コーンプレートCP25−2(この治具で測定できない場合は、コーンプレートCP50−1を使用する)
回転数:1000(1/sec)
プレート温度:25℃
<その他の成分>
本発明の導電性組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
<硬化剤>
硬化剤としては、バインダー樹脂の有する官能基と反応するものであれば、特に限定されないが、多官能エポキシ化合物、多官能アジリジン化合物、多官能イソシネート化合物等が挙げられる。
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、上記、バインダー樹脂、膨張化黒鉛、有機溶剤を必須成分とし、更に、必要に応じて、その他の成分を配合後、均一に分散することで製造することができる。
分散方法は、バインダー樹脂を溶剤に溶解し、導電性フィラーを添加した後、遊星攪拌や三本ロール、二本ロール、スキャンデックス、ビーズミルによって行う。使用する溶剤はバインダー樹脂を溶かすものであれば特に制限されない。物性を低下させない範囲であれば上記以外の分散方法を用いても良い。
ただし、硬化剤を使用する場合は、硬化剤の添加は、導電性組成物の分散後に行うものとする。硬化剤添加後は、遊星攪拌、ミックスローター、ディスパー等によって適宜混合する。混合方法は特に限定されない。
<基材>
基材は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリ塩ビニル、ポリアミド、OPP(延伸ポリプロピレン)、CPP(未延伸ポリプロピレン)などが挙げられるが特に限定されることはない。
<導体膜>
本発明の導体膜は、導電性組成物を塗工し、乾燥することで形成される。
導電性組成物の基材への塗工方法を以下に示す。塗工方法は、公知の方法を用いればよく、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、反転印刷法等を挙げることができるが、特に限定されない。
乾燥条件は、特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。熱風乾燥の場合、膜厚や選択した有機溶剤にもよるが、通常60〜200℃程度で乾燥させる。また、基材としてPETやPEN等のプラスチックフィルムを用いる場合は、基材が熱で変形する場合があるため、60〜150℃がより好ましい。
導電膜を導体配線として使用する場合、導電性と取扱い性の観点から、塗工後の膜厚は、50〜1000μmが好ましい。
塗工後の導電膜をさらに低抵抗化するためには、熱プレス処理をすることが好ましい。熱プレス処理後の体積抵抗値は、10−4Ωcm以上、10−2Ωcm未満が好ましい。
<熱プレス方法>
熱プレス方法は、導電膜と基材にダメージを与えない範囲であればどのような方法でも良い。例えば、ロール加圧法、プレス加圧法等が挙げられる。圧力、温度、プレス時間、ロール速度は本発明の物性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。温度に関しては、フィルム基材を使用する場合、熱で変形する可能性があるため、50℃〜200℃が好ましい。
組成物を導体配線と使用する場合、熱プレス後の膜厚は、30〜200μmが好ましい。
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表し、Mwは質量平均分子量、Tgはガラス転移温度を意味する。
[バインダー樹脂(A)]
<実施例用>
(A−1−a)アウローレン250S:日本製紙社製、酸無水物変性ポリオレフィン樹脂、固形分比率100%
(A−1−b)スーパークロン390S:日本製紙社製、塩素化ポリオレフィン樹脂、固形分100%
(A−1−c)モディパーA3400:日油社製、ポリプロピレンの側鎖アクリロニトリルグラフト変性物、固形分100%
(A−1−d)モディパーA4300:日油社製、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体の側鎖メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルグラフト変性物、固形分100%
(A−2−a)タフテックH1041:旭化成社製、水添スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂、固形分100%
(A−2−b)タフテックM1913:旭化成社製、マレイン酸無水物変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂
(A−2−c)タフテックMP10:旭化成社製、アミン変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂、固形分100%
(A−2−d)SIBSTAR102T:カネカ社製、スチレン−イソブチレンブロック共重合体樹脂、固形分100%
<比較例用>
(A−3−a)N−730A:DIC製フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、固形分100%
(A−3−b)Nipol AR42W:日本ゼオン製アクリルゴムポリマー、固形分100%
(A−3−c)エスレックBM−2:積水化学工業製ポリビニルブチラール、固形分100%
(A−3−d)ショウノールBRG−556:アイカSDKフェノール製、ノボラック型フェノール樹脂、固形分100%
(A−3−e)JP03:日本酢ビ・ポバール製ポリビニルアルコール、固形分100%
(A−3−f)K−30:日本触媒製ポリビニルピロリドン、固形分100%
<バインダー樹脂溶液の調整>
実施例、比較例で使用するバインダー樹脂を表1に示すように、以下に示す溶剤1〜5を使用して固形分率20%の溶液に調整した。混合溶媒の組成比は質量比で記載。
1:トルエン/MEK/IPA(1/1/1)
2:ターピネオール
3:ターピネオール/イソボルニルシクロヘキサノール(7/3)
4:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、EDGAC)
5:水/EtOH(1/1)
<実施例1>
バインダー樹脂A−1−a−1の溶液に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、最後に、その溶液と同質量のガラスビーズ(3mm)を加えて、スキャンデックスによる分散を行い、ビーズを除いた後、導電性組成物を得た。その組成物をPETフィルムにアプリケーター12milで塗工後、80℃で5分間乾燥させることで塗膜を得て、後述する方法に従い体積抵抗値を求めた。
別途、前記の塗膜を油圧ラミネータで熱プレス(120℃)して、後述する方法に従い各種評価を実施した。熱プレスする場合、必要に応じて剥離フィルム、剥離紙を塗工物の上に設置してもよい。その場合、物性評価前に剥離フィルムを剥がす。
1.熱プレス方法
以下に示す条件で塗膜の熱プレスを実施した。
使用油圧ラミネーター機:大成ラミネーター(株)製油圧ラミネーターNP500S型
ポンプ圧:2MPa
ロール速度:0.2m/min
上下ロール温度:120℃
2.体積固有抵抗値の測定
得られた組成物とPETフィルムの積層物を1.5cm×3cmに裁断し、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製:ロレスターGXMCP−T700)を用いて組成物の体積抵抗値の測定を行った。「△」、「○」、「◎」評価の場合、実用上問題ない。
・プレス前塗膜の導電性判定基準
◎:体積抵抗値が10−2Ωcm未満
○:体積抵抗値が10−2Ωcm以上、10−1Ωcm未満
△:体積抵抗値が10−1Ωcm以上、10Ωcm未満
×:体積抵抗値が10Ωcm以上
・熱プレス後塗膜の導電性判定基準
○:体積抵抗値が10−2Ωcm未満
△:体積抵抗値が10−2Ωcm以上、10−1Ωcm未満
×:体積抵抗値が10−1Ωcm以上
3.印刷塗工性評価
印刷塗工性の優劣を塗膜の空隙の有無で評価した。評価方法としては、熱プレス後の塗膜を蛍光灯の光で透かして見たときの空隙の多さの度合いで以下に示す三段階で評価を行った。
○:空隙なし
△:わずかに空隙があるが導電性の評価を行う分には問題ない程度
×:空隙が多数あり導電性の評価ができない
4.塗膜の密着性の評価
熱プレス後の基材からの剥離度合を以下の三段階で評価した。実用上、「△」以上なら問題ない。
○:剥がれなし
△:一部剥離
×:完全剥離
5.耐久性試験
耐久性の優劣を以下に示す方法で評価した。作製した熱プレス処理済みの塗膜を基材と共に濃度3%の塩水に浸漬し、80℃下で5000時間放置した後、乾燥させてから、体積固有抵抗値を測定し、浸漬前の体積固有抵抗値を基準として以下の評価を行った。実用上「△」以上なら問題ない。(体積固有抵抗値の測定方法は前述と同様)
○:体積抵抗値上昇せず
△:体積抵抗値が上昇するが、10−2Ωcm未満の値を維持
×:体積抵抗値が10−2Ωcm以上まで上昇
<実施例2>
バインダー樹脂A−1−a−1に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、その溶液と同質量のガラスビーズ(3mm)を加えて、スキャンデックスによる分散を行い、ビーズを除いた。次に、1031S:テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン(ジャパンエポキシレジン(株))製「エピコート1031S」、エポキシ当量180〜220g/eq(固形分100%)をトルエンで希釈し、固形分50%とした硬化剤溶液D−1−1を表1に示す配合量で添加後、十分に攪拌して、導電性組成物を得た。その組成物をPETフィルムにアプリケーター12milで塗工後、80℃で5分間乾燥させることで塗膜を得た。そして、表1に該当する各種評価を実施した。さらに、得られた塗膜を油圧ラミネータで熱プレスし(120℃)、150℃30分間の加熱条件で硬化した後、表2に該当する各種評価を実施した。熱プレスする場合、必要に応じて剥離フィルム、剥離紙を塗工物の上に設置してもよい。その場合、物性評価前に剥離フィルムを剥がす。
<実施例3>
バインダー樹脂A−1−a−2に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、三本ロールによる分散を行った。その導電性組成物をPETフィルムに対してシルクスクリーン(40メッシュ)で印刷後、100℃で10分間、150℃で60分間乾燥させることで、塗膜を得て、表1に該当する各種物性評価を実施した。さらに得られた塗膜を油圧ラミネーターで熱プレスして(120℃)、表2に該当する各種物性評価を実施した。なお、プレス前膜厚は250μm、プレス後膜厚は80μmとした。
<実施例5、9、15、19、23、29、33、37〜45、比較例1〜8>
表2〜7に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例1と同様にスキャンデックスによって分散し導電性組成物を得、アプリケーターで塗工して塗膜を形成し、評価した。
<実施例4、6、8、10、12、16、18、20、22、24、26、30、32、34、36>
表2〜5に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例1または3と同様にしてスキャンデックスまたは3本ロールによって分散した後、実施例2と同様に硬化剤を加えて導電性組成物を得、アプリケーターで塗工して、またはシルクスクリーン印刷で印刷して塗膜を形成し、評価した。
<実施例7、11、13、14、17、21、25、27、28、31、35>
表2〜6に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例3と同様に3本ロールによって分散し導電性組成物を得、シルクスクリーン印刷で印刷して塗膜を形成し、評価した。
<比較例9>
市販されている膜厚20μm程度の銅箔で耐久性試験を実施した。
<導電性付与剤(B)>
(膨張化黒鉛(B1))
・LEP(日本黒鉛工業):平均粒径137μm
・CMX−40(日本黒鉛工業):平均粒径60μm
・GR−25(日本黒鉛工業):平均粒径31μm
・EC10(伊藤黒鉛工業):平均粒径190μm
・EC100(伊藤黒鉛工業):平均粒径190μm
・EC300(伊藤黒鉛工業):平均粒径50μm
・EC1500(伊藤黒鉛工業):平均粒径8μm
(鱗状黒鉛)
・CPB(日本黒鉛工業):平均粒径38μm
(薄片状黒鉛)
・UP−50N(日本黒鉛工業):平均粒径95μm
(カーボンブラック(B2))
・ECP600JD(ライオンスペシャリティケミカル)
・EC300JD(ライオンスペシャリティケミカル)
<有機溶剤(C)>
・トルエン:粘度0.66mPa・s
・MEK:0.49mPa・s
・IPA:2.00mPa・s
・ターピネオール:53mPa・s
・イソボルニルシクロヘキサノール:70000mPa・s
・EDGAC:2.6mPa・s
<硬化剤D>
・1031S:テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン(ジャパンエポキシレジン(株))製「エピコート1031S」、エポキシ当量180〜220g/eq(固形分100%)
D−1−1:エピコート1031Sをトルエンで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−1−1を得た。
D−1−2:エピコート1031Sをターピネオールで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−1−2を得た。
・スミジュールBL3175:ブロックイソシアネート硬化剤(住化コベストロウレタン社製「スミジュールBL3175」(固形分75%))
D−2−1:スミジュールBL3175をトルエンで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−2−1を得た。
D−2−2:スミジュールBL3175をターピネオールで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−2−2を得た。
なお、表中、スキャンデックスによる分散を「S」、3本ロールによる分散を「3本」、アプリケーターによる塗工を「A」、シルクスクリーン印刷による印刷を「SS」と略記した。
比較例1〜3は最適なバインダー樹脂を使用していないため、導電性、印刷性が悪い結果であった。比較例4、5は、最適なバインダー樹脂を使用していないため、密着性、耐久性が悪い結果であった。比較例6は、膨張化黒鉛の平均粒径が小さいため、低い導電性となっていた。比較例7、8は、膨張化黒鉛を使用していないために、低い導電性となっていた。比較例9は、耐久性試験の結果、銅箔表面に不導体が形成され、耐久性評価は、「×」となっていた。
実施例1〜45は、平均粒径が大きい膨張化黒鉛と基材への良好な密着性と熱プレス後の十分な塗膜強度を兼ね備えたバインダー樹脂を使用しており、高い導電性と基材への良好な密着性を示した。

Claims (8)

  1. バインダー樹脂(A)と、導電性付与剤(B)と、有機溶剤(C)とを含む導電性組成物であって、バインダー樹脂(A)が、ポリオレフィン樹脂(A−1)およびスチレン系エラストマー樹脂(A−2)からなる群より選ばれ、導電性付与剤(B)が膨張化黒鉛(B1)を含み、膨張化黒鉛の平均粒径が10μm以上、200μm以下であって、導電性付与剤(B)の含有量が、組成物の固形分100質量%中、40質量%以上90質量%以下であることを特徴とする導電性組成物。
  2. 膨張化黒鉛(B1)の平均粒径が25μm以上、150μm以下であることを特徴とする請求項1記載の導電性組成物。
  3. 形成した導体膜の体積抵抗値が10−3Ωc以上、10−1Ωcm未満であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性組成物。
  4. 更に、導電性付与剤(B)が、カーボンブラック(B2)を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の導電性組成物。
  5. 有機溶剤(C)が、25℃の時の粘度が30mPa・s以上、75000mPa・s以下である有機溶剤(C1)を含み、有機溶剤(C1)の含有量が、有機溶剤(C)100質量%中、10質量%以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の導電性組成物。
  6. 導電性組成物を基材に塗工した後、乾燥させて得られた導体膜を、熱プレスすることで得られる導体膜の体積抵抗値が10−4Ωcm以上、10−2Ωcm未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の導電性組成物。
  7. 請求項1〜6いずれか1項に記載の導電性組成物を基材に塗工した後、乾燥して得た導体膜を熱プレスすることを特徴とする導体膜の製造方法。
  8. 請求項1〜6いずれか1項に記載の導電性組成物をスクリーン印刷によりパターニングし、導体配線とすることを特徴とする導体膜の製造方法。
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