以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、下水処理システムの上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
図1は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図であり、図2は、図1に示す沈砂池のA−A断面図である。
図1に示すように、沈砂池1は、除塵機2と、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図1に示す沈砂池1は、図の右側から汚水を受け入れ、受け入れた水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図1および図2に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈砂池の長手方向が水の流れの方向になり、図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。
除塵機2は、沈砂池1に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものであり、トラフ3よりも上流側に設置されている。除塵機2は、無端チェーン21と、その無端チェーン21に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ22と、水中に没する濾過スクリーン23とを有する。無端チェーン21は、沈砂池1の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、図2に示すように、地上側スプロケット211と、池底側スプロケット212に巻きかけられている。無端チェーン21が駆動すると、レーキ22は水中を出入りする。濾過スクリーン23は、無端チェーン21の下流側に配置されている。この濾過スクリーン23は、上下方向に延びるバーが所定間隔(例えば、25mm〜75mm)で並べられたものであり、所定間隔以上の大きさの混入物の通過を遮る。濾過スクリーン23で遮られた混入物は、レーキ22によって掻き揚げられ、掻き揚げられた混入物は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。
除塵機2の下流側には、池底部1aに堆積した砂が集められる集砂ピット4が設けられている。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底面近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂は、この揚砂管42を通して沈砂池1の外部に送られる。
トラフ3は、集砂ピット4とポンプ井5の間に設けられている。すなわち、トラフ3は、集砂ピット4よりも下流側であって、ポンプ井5よりも上流側に設けられている。このトラフ3は、沈砂池1の池底部1a(図2参照)に設けられた溝である。池底部1aには、後述するように傾斜面6が設けられ、傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、池底部1aに向かって沈降し、池底部1aに堆積する。
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底面が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に移動するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して不図示の沈殿池に送られる。図2に示すWLは汚水の水面を表している。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
トラフ3は、図1に示すように沈砂池1の幅方向中央に設けられ、ポンプ井5よりも上流側となる位置から所定方向に延在した溝である。すなわち集砂ピット4に向かって延在したものである。トラフ3の下流端は集砂ピット4に接続されており、このトラフ3に堆積した砂は、後述する吐出口から吐出される水の流れによって集砂ピット4まで移動させられる。
また、図1に示す沈砂池1は、トラフ3内に空間形成部材8も備えている。この空間形成部材8の全長はトラフ3の全長と同じであり、空間形成部材8は、トラフ3に沿って延在したものである。空間形成部材8についての詳しい説明は後述する。
図3(a)は、図2におけるB−B断面図である。この図3(a)では図の左右方向がトラフ3の幅方向になる。
図3(a)には、池底部1aに設けられた傾斜面6の下部と、その傾斜面6につながるように設けられたトラフ3が示されている。図3(a)に示すように、傾斜面6は、トラフ3の幅方向両側に設けられている。この傾斜面6は、トラフ3に向かって下方に45度傾斜したコンクリート製のものであり、ポンプ井5よりも上流側となる位置と集砂ピット4との間で長手方向に延在している。なお、傾斜面6の傾斜角度は、例えば30度であってもよく60度であってもよい。
また、トラフ3は、図3(a)に示すように、3/4円弧の断面形状をもった、全長15m程度の溝である。このトラフ3は、ステンレス製等の板材を曲げ加工することによって形成したものであるが、傾斜面6と一体にコンクリートで形成したものであってもよい。また、トラフ3の断面形状は円弧状に限られず、U字状やV字状等であってもよい。図3(a)に示すトラフ3は、直径356mm程度の円筒体の上方(液面側)1/4を切り欠いた形状のものであり、上方に向かって開口している。以下、上方に向かって開口している部分をトラフ3の開口3aと称する。トラフ3内の空間S1のうち、上端の開口3aにつながる上端部分3bは、その開口3aに近づくほど狭くなっている。すなわち、トラフ3の開口3aは、トラフの延在方向に直交する幅方向に絞られた開口である。
沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく課程において池底部1aに沈降していくが、沈砂池1の上流側の池底部1aに堆積しやすい。池底部1aに沈降してきた砂のうち、傾斜面6に沈降した砂は、傾斜面6に沿ってさらにトラフ3に向かって流れ落ち、トラフ3の開口3aからトラフ内部に入り込む。したがって、池底部1aに沈降してきた砂は、まずは、トラフ3に集められる。
図3(a)に示す空間形成部材8は、3/4円弧の断面形状をもったものである。この空間形成部材8は、板厚4mmのステンレス製の板材を、断面円弧状に成形したものである。図3(a)に示す空間形成部材8は、直径156mm程度の円筒体の下方(池底部側)1/4を切り欠いた形状のものであり、下方に向かって開口している。すなわち、空間形成部材8の下端は、下方に向けて開口したものであり、以下、この開口している部分を吸込口81と称する。この吸込口81は、トラフ3の幅方向に80mm以上の長さLをもった開口であり、トラフ3の内周壁から離間している。空間形成部材8は、トラフ3内の空間を仕切るものであって、下端より上の部分が閉塞した空間S2を形成するものである。空間形成部材8の上端部分82は閉じているが、円弧状であり、下方へ向かって傾斜している。この空間形成部材8にも、砂が沈降してくるが、円弧状であるため、砂が堆積しにくく、空間形成部材8に沈降してきた砂は、円弧状の側面80をつたって、トラフ3の底部31に向かって流れ落ちやすくなる。また、円弧状の側面80によって、空間S2は、吸込口81につながる下端部分が、その吸込口81に近づくほど狭くなっている。
ここで、図1や図2に示すように、トラフ3の上端には、支持板部材91が、5m程度おきにトラフ3の幅方向に架け渡されている。この支持板部材91の両端は傾斜面6に固定されており、支持板部材91が設置された箇所では、その支持板部材91によってトラフ3の開口3aが覆われているが、支持板部材91の、トラフ延在方向の長さは200mm程度であり、この支持板部材91に砂が堆積することは問題にならない。また、200mm程度の長さがあることで、紐状の混入物(例えば、髪の毛やビニール紐)が支持板部材91に巻き付きく恐れが大幅に低減される。
図3(a)に示す空間形成部材8は、上端部分82がこの支持板部材91によって支持されている。したがって、空間形成部材8の上端部分82の高さ位置は、トラフ3の開口3aとほぼ同じ高さ位置である。本実施形態では、高さ(深さ)方向に見れば、空間形成部材8の径方向の中心は、トラフ3の径方向の中心3cよりも上方にズレていることになるが、トラフ3の幅方向に見れば、空間形成部材8の径方向の中心は、トラフ3の径方向の中心3cに一致している。したがって、トラフ3と空間形成部材8との隙間Wは、最も狭い位置でも80mm以上は確保されている。上述のごとく上流側には濾過部材(ここでは濾過スクリーン23)が設置されており、トラフ3と空間形成部材8との隙間Wは、その濾過部材を通過してしまう混入物の最大長(ここではスクリーンの目幅であって75mm)よりも長いことが、上流側の濾過部材を通過してしまった混入物がその隙間Wに詰まることを防止する上で好ましい。
さらに、空間形成部材8内の空間S2には、その空間S2内に流体を吐出する吐出口7が設けられている。この吐出口7は、直径50mm弱のパイプ状の給水管71の先端を扁平につぶした長孔形状のものである。吐出口7の横方向(トラフ幅方向)の最大開口長は60mm弱程度である。吐出口7をこのような扁平な形状にすることで、真円の形状のものよりも、流速を高めた範囲を広く確保することができる。給水管71は、傾斜板6の奥側から傾斜板6を貫通し、トラフ3の幅方向に支持板部材91に沿って延在し、トラフ3の幅方向中央で下方に向かって折れ曲がり、今度は、支持板部材91および空間形成部材8を貫通し、空間S2内に入り込んでいる。
図3(b)は、同図(a)におけるC−C断面図である。この図3(b)では図の左右方向がトラフ3の延在方向になり、図の右側が上流側(集砂ピット4側)になり左側が下流側(ポンプ井5側)になる。また、空間形成部材8の径方向の中心を通る、空間形成部材8の軸心8cが1点鎖線で示されている。
給水管71の、空間S2内に入り込んだ部分711は、空間形成部材8の径方向の中心を越えて下方へ延び、トラフ3の径方向の中心3c(図3(a)参照)よりも上で上流側(集砂ピット4側)に向けて水平に折れ曲がっている。すなわち、空間形成部材8の上端には矩形状の巻付防止板95が立設されており、給水管71の、空間S2内に入り込んだ部分711は、その巻付防止板95の縦の縁951に沿って下方へ延び、次いで、巻付防止板95の横の縁952に沿って上流側へ延びている。この巻付防止板95によって、給水管71の、空間S2内に入り込んだ部分711に、紐状の混入物が巻き付くことを防止している。給水管71の、上流側へ延びている部分は、巻付防止板95を越えて延在しており、吐出口7は、巻付防止板95よりも上流側に位置している。
本実施形態の吐出口7は、空間形成部材8の径方向の中心よりは下方であって、吸込口81よりは上方に位置している。この吐出口7からは、空間形成部材8の軸心8cと平行あるいは略平行に水が吐出される。すなわち、水平方向あるいは略水平方向に水が吐出される(図3(b)中の右向きの矢印参照)。
図3に示す吐出口7は、最も上流側、すなわち集砂ピット4に最も近い位置に設けられたものである。
吐出口7から空間形成部材8の空間2内に水が吐出されることで、空間形成部材8の内(空間S2)と外とで圧力差が生じ、トラフ3内(空間S1)に堆積した砂は、図3(a)に示す曲線の矢印のように、吸込口81から空間S2内に吸い込まれる。さらに、その空間形成部材8の空間S2内では、吸い込まれた砂が、吐出口7から吐出された水の流れによって集砂ピット4側に向かって移動する。図3に示すように、吸込口81は、幅方向(空間形成部材8の延在方向に直交する方向)に絞られた開口であって、空間S2はその吸込口81から拡がった空間である。このように吸込口81が絞られた開口であることによって、空間S2内を移動する砂がその空間S2内から外に出にくくなり、砂の撒き上がりがより抑えられる。また、空間S2内における水の流れを維持しやすくなり、砂をより遠くまで移動させることができる。
以上説明した支持板部材91における吐出口7の構造は、トラフ3の上端に設けられたいずれの支持板部材91においても同様である。また、吐出口7は、トラフ3の下流端面壁36にも設けられている。以下、トラフ3の下流端面壁36に設けられた吐出口7を下流吐出口と称し、図1や図2に示す下流側の支持板部材91における吐出口7を中間吐出口と称し、上流側の支持板部材91における吐出口7(図3に示す吐出口7)を上流吐出口と称して区別することがある。
図4(a)は、トラフの最上流端付近を拡大して示した部分断面図である。この図4(a)では、図の右側が上流側になり、図の左側が下流側になる。
図4(a)に示すように、トラフ3の最下流端部となる端面には、板状の下流端面壁36が取り付けられている。
図4(b)は、図4(a)を右方から見た部分断面図である。すなわち、図4(b)は、下流端面壁36を上流側から見た図であり、紙面の奥側が下流側になる。
図4(b)には、下流端面壁36に設けられた下流吐出口7が示されている。この下流吐出口7よりもさらに下流側には、下流吐出口7につながる空室78(同図(a)参照)を形成するL型管77が設けられている。このL型管77は、平面視でL字型をした管であり、水を供給する不図示の供給管が接続されている。空室78に流入した水は、空室78で流れの向きが下流側に変化して、下流吐出口7から水平方向あるいは略水平方向に水が吐出される。下流吐出口7が設けられたトラフ幅方向の位置は、図3に示す吐出口7が設けられたトラフ幅方向の位置と同じ位置である。また、下流吐出口7が設けられた高さ位置も、図3に示す吐出口7が設けられた高さ位置と同じ位置である。
本実施形態の沈砂池1には、下流吐出口、中間吐出口、および上流吐出口の3つの吐出口7が設けられているが、いずれの吐出口7における水の吐出流速も、8m/sec以上とすることが好ましい。8m/sec未満では、流速不足になってきてしまい、水圧との関係では砂を所定距離移動させられない場合も生じる。砂を所定距離移動させられなくなると、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。また、各吐出口7における水の吐出圧は、0.05MPa以上0.3MPa以下である。
以上説明した本実施形態の沈砂池1によれば、砂を十分に移動させながら砂の撒き上がりを抑えることができる。
続いて、本実施形態の沈砂池1の池底部1aに堆積した砂をその沈砂池1から除去する砂除去方法について説明する。
図5は、砂除去方法の流れを示すフローチャートである。
沈砂池1に流れ込んだ汚水は図2に示す除塵機2を通過する際に、その汚水に混入している混入物(し渣)が取り除かれる。除塵機2を通過した汚水は、集砂ピット4を越えて、トラフ3の上流端に到達し、トラフ3の延在方向に向かってさらに流れる。汚水は、トラフ3の上流側部分を流れる間に、汚水に含まれている砂の多くが沈砂池1の池底部1aに沈降していく。集砂ピット4に沈降する砂もあれば、傾斜面6に沈降する砂もあり、傾斜面6に沈降した砂は傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって流れ落ちる。また、空間形成部材8の上端部分82まで沈降した砂は、空間形成部材8の円弧状の側面80をつたって、トラフ3の底部31に向かって流れ落ちる。こうして、トラフ3の空間S1に砂が堆積する。
本実施形態における砂除去方法では、まず、図1や図2に示す揚砂ポンプ41を駆動させ、後述する集砂工程を実施する前に集砂ピット4内の砂を集砂ピット4から除去しておく(ステップS1)。この段階で集砂ピット4に堆積している砂は、沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂のうち、主として、集砂ピット4に沈降して集砂ピット4に堆積した砂である。
次に、揚砂ポンプ41を駆動させた状態で、3つの吐出口7のうち図3に示す上流吐出口7のみから、毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS2)。このステップS2では、トラフ3の空間S1から、空間形成部材8によって仕切られた空間S2内に、水が吐出される。上流吐出口7から空間2内に水が吐出されることで、空間形成部材8の内(空間S2)と外とで圧力差が生じ、トラフ3内(空間S1)の上流側部分に堆積した砂は、吸込口81から空間S2内に吸い込まれる(図3(a)に示す曲線の矢印参照)。さらに、その空間形成部材8の空間S2内では、吸い込まれた砂が、上流吐出口7から吐出された水の流れによって集砂ピット4に向かって移動する。空間形成部材8の空間S2内を移動する砂は、上記圧力差が生じている部分では、空間形成部材8の外に出にくく、砂の撒き上がりが抑えられる。こうして、トラフ3の上流側部分に堆積した砂は、空間形成部材8の空間S2内を移動し、やがて集砂ピット4に到達する。集砂ピット4に到達した砂は、先のステップS1で駆動を開始した揚砂ポンプ41によって沈砂池1の外部に搬送され、沈砂池1からの砂が除去される。ここでの砂の除去が、本排出工程の一例に相当する。
次いで、上流吐出口7からの水の吐出を中止し、今度は、3つの吐出口7のうち中間吐出口7のみから、毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS3)。このステップS3の実施中にも、揚砂ポンプ41の駆動は継続している。ステップS3でもステップS2と同様に空間形成部材8の空間S2内に水を吐出することで、空間形成部材8の内(空間S2)と外とで圧力差が生じ、今度は、トラフ3内(空間S1)の中間吐出口7周辺に堆積した砂が、吸込口81から空間S2内に再び吸い込まれる。さらに、吸い込まれた砂は、中間吐出口7から吐出された水の流れによって図3に示す上流吐出口7に向かって空間形成部材8の空間S2内を移動し、上流吐出口7の周辺まで到達する。上流吐出口7の周辺では中間吐出口7からの水の勢いが低下することで、上流吐出口7の周辺まで到達した砂は、吸込口81からトラフ3の底部31に向かって降下し、一旦、トラフ3の空間S1に戻る。すなわち、トラフ3内(空間S1)の上流吐出口7周辺に砂が堆積する。
次に、中間吐出口7からの水の吐出を中止し、再び、図3に示す上流吐出口7のみから、ステップS2と同様に、毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS4)。このステップS4によっても、トラフ3内(空間S1)の上流吐出口7周辺に堆積した砂が、吸込口81から空間S2内に吸い込まれ、吸い込まれた砂は、集砂ピット4に向かって空間S2内を移動し、やがて集砂ピット4に到達する。このステップS4の実施中にも、揚砂ポンプ41の駆動は継続しており、集砂ピット4に到達した砂は、揚砂ポンプ41によって沈砂池1から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、揚砂ポンプ41による砂の除去が、併せて行われる。
今度は、上流吐出口7からの水の吐出を中止し、3つの吐出口7のうち下流吐出口7のみから毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS5)。このステップS5の実施中にも、揚砂ポンプ41の駆動は継続している。ステップS5でもステップS2〜ステップS4と同様に空間形成部材8の空間S2内に水を吐出することで、空間形成部材8の内(空間S2)と外とで圧力差が生じ、トラフ3内(空間S1)の下流吐出口7周辺に堆積した砂が、吸込口81から空間S2内に吸い込まれる。さらに、吸い込まれた砂は、下流吐出口7から吐出された水の流れによって中間吐出口7に向かって空間形成部材8の空間S2内を移動し、中間吐出口7の周辺まで到達する。中間吐出口7の周辺では下流吐出口7からの水の勢いが低下することで、中間吐出口7の周辺まで到達した砂は、吸込口81からトラフ3の底部31に向かって降下し、トラフ3内(空間S1)の中間吐出口7周辺に砂が堆積する。
続いて、下流吐出口7からの水の吐出を中止し、再び、中間吐出口7のみから、ステップS3と同様に、毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS6)。このステップS6の実施中にも、揚砂ポンプ41の駆動は継続している。ステップS6によっても、トラフ3内(空間S1)の中間吐出口7周辺に堆積した砂が、吸込口81から空間S2内に吸い込まれ、吸い込まれた砂は、上流吐出口7に向かって空間S2内を移動し、やがてトラフ3内(空間S1)の上流吐出口7周辺に砂が堆積する。
次に、中間吐出口7からの水の吐出を中止し、三度、図3に示す上流吐出口7のみから、ステップS2と同様に、毎分1500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS7)。このステップS7によっても、トラフ3内(空間S1)の上流吐出口7周辺に堆積した砂が、吸込口81から空間S2内に吸い込まれ、吸い込まれた砂は、集砂ピット4に向かって空間S2内を移動し、やがて集砂ピット4に到達する。このステップS7の実施中にも、揚砂ポンプ41の駆動は継続しており、集砂ピット4に到達した砂は、揚砂ポンプ41によって沈砂池1から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、揚砂ポンプ41による砂の除去が、併せて行われる。また、揚砂ポンプ41は、上流吐出口7からの水の吐出を終了した後も所定時間の間は駆動し続け、排出工程の一例に相当する砂の除去は継続して行われる。
こうして、受け入れた水に含まれていた砂は、6段階にわたる空間形成部材8の空間S2内の移送を経て、集砂ピット4に集まる。以上説明したステップS2〜ステップS7までが、集砂工程に相当する。この集砂工程は、沈砂池1の水を排水し、沈砂池1の水を減らしたり、総て無くしてから行う必要はなく、沈砂池に汚水を連続的に受け入れている状態で実施する。なお、集砂工程で吐出口7から吐出する流体は、汚水処理場に受け入れた汚水を使用してもよいが、その他の流体であってもよい。
そして、上記所定時間が経過すると、ステップS1で駆動を開始した揚砂ポンプ41を停止し(ステップS8)、所定時間が経過すると、あるいは沈降してきた砂によって集砂ピット4に砂がある程度堆積すると、再びステップS1が実施される。このように、ステップS1〜ステップS8は、汚水の受け入れを開始してから、繰り返し実施される。
なお、以上の説明では、揚砂ポンプ41の駆動は、ステップS1で開始してからステップS8で停止するまで継続するが、集砂ピット4内の砂が一定量まで減ったら停止するようにしてもよいし、揚砂ポンプ41の駆動を、ステップS3,ステップS5〜ステップS6の実施中には、停止するようにしてもよい。
本実施形態の砂除去方法によれば、沈砂池1内で、砂の撒き上がりを抑えつつ砂を十分に移動させて、その沈砂池から砂を除去することができる。また、本実施形態の砂除去方法では、砂の移送方向を、下流側から上流側に向かう方向とすることで、沈砂池1の最も下流側に配置されたポンプ井5に砂が流入することを防止している。すなわち、本実施形態では、砂の移送方向下流側(本実施形態では沈砂池1の上流側に相当)に集砂箇所(本実施形態では集砂ピット4)を設け、砂の移送方向上流側(本実施形態では沈砂池1の下流側に相当)に汚水排出箇所(本実施形態ではポンプ井5)を設けている。
次に、第2実施形態の沈砂池1について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図6は、第2実施形態の沈砂池を幅方向の中央で切断した断面図である。この図6でも図の右側が上流側になり左側が下流側になる。
図6に示す沈砂池1は、図1に示す沈砂池1とは集砂ピット4を設けた位置が異なる。図6に示す沈砂池1では、集砂ピット4の上流側に上流側トラフ3’を有し、集砂ピット4の下流側に下流側トラフ3’’を有する。上流側トラフ3’も下流側トラフ3’’も、図1等に示すトラフ3より短いトラフであり、これらのトラフ3’,3’’には支持板部材91は設けられておらず、ここでは不図示の空間形成部材8は、上流端が上流端面壁36に支持され、下流端が集砂ピット4を形成するコンクリートに支持されることで、トラフ3内に配置されている。
なお、上流側トラフ3’よりもさらに上流側には、図2に示す除塵機2と同じ除塵機2が設置されているが、この図6では図示省略されている。
図7は、図6に示す沈砂池のD−D断面図である。この図7では図の左右方向がトラフ幅方向になる。
第2実施形態の沈砂池1は、断面矩形状の池の池底部1aを改修し、傾斜面6、上流側トラフ3’、および下流側トラフ3’’それぞれを形成した池である。図7では、池底部1aの、コンクリートによって改修された部分をクロスハッチングで示している。
図7に示すように、下流側トラフ3’’は、幅方向に2本並べられており、上流側トラフ3’も、幅方向に2本並べられている。したがって、第2実施形態の沈砂池1では、合計4本のトラフが設けられている。トラフを幅方向に並設することで、池底部1aの改修にあたり、池底部1aをコンクリートで埋める量が少なくなり、沈砂池1の汚水の受入れ容量の低下を抑えることができる。各トラフ内には、空間形成部材8が設けられている。
続いて、これまで説明してきた沈砂池1の変形例について説明する。
図8は、空間形成部材の変形例を示す斜視図である。この図8は、集砂ピット4側から空間形成部材8を斜めに見たときの様子を示す図である。なお、この図8には、図3に示す支持板部材91、給水管71、巻付防止板95、および吐出口7それぞれと同じものが示されている。
図8に示す空間形成部材8は、円筒状のパイプ部材である。この空間形成部材8は、トラフ3が設けられていない平らな池底部1aに配置されたものであり、空間形成部材8の下端83は池底部1aに接している。この空間形成部材8の幅方向両側それぞれには、空間形成部材8の延在方向に複数の吸込口81が並設されている。各吸込口81は、円筒状のパイプの周面を縦長に切り欠いたものであり、空間形成部材8の上下方向中間部分に設けられている。各吸込口81は、池底部1aから離間している。
なお、吸込口81は、空間形成部材8の幅方向片側で上記延在方向につながった一本のスリット状のものであってもよい。また、空間形成部材8は、筒状のものや、断面形状が円弧状のものに限らず、上端部分が閉塞したものであれば、断面形状が、U字状、V字状、コ字状等であってもよい。
また、第1実施形態の吐出口7はいずれも扁平な長孔形状のものであったが、この形状に限られることはない。さらに、吐出口7の配置位置も、図3(a)に示す位置に限られない。
図9は、吐出口の変形例を示す図である。この図9では図の左右方向がトラフ3の幅方向になる。
図9に示す吐出口7はいずれも真円の形状である。同図(a)に示す吐出口7は、空間形成部材8の径方向の中心8cに一致した位置に設けられたものである。同図(b)に示す吐出口7は、空間形成部材8の上端部分82の内周壁に設けられたものである。したがって、空間形成部材8の径方向の中心よりも上に設けられたものである。同図(b)および(c)に示す吐出口7は、水平方向に下流側に向かって突出している。同図(c)に示す吐出口7は、空間形成部材8の側面80における内周壁の下端に設けられたものである。すなわち、吸込口81の両側に配置されている。同図(b)および(c)に示す吐出口7につながる不図示の給水管は、空間形成部材8の側面80における内周壁に固定され、その内周壁に沿って延びるものである。同図(c)に示す吐出口7も、下流側に向かって突出したものであるが、この吐出口7は、やや上方、かつ、やや上記中心側を向いて設置されている。
なお、吐出口7は、図3(a)やこの図9に示すように、空間形成部材8の空間2内に設置されている必要は必ずしもなく、空間形成部材8(吸込口81)よりも下方で斜め上方を向いて設置され、空間形成部材8の空間2内に流体を吐出することができるものであればよい。
図10は、空間形成部材の支持の仕方の変形例を示す図である。図10(a)では、図3(a)と同様に図の左右方向がトラフ3の幅方向になる。また、図10(b)では、図3(b)と同様に、図の左右方向がトラフ3の延在方向になり、図の右側が上流側(集砂ピット4側)になり左側が下流側(ポンプ井5側)になる。
図3(a)に示す空間形成部材8は、上端部分82が支持板部材91によって支持されていたが、図10(a)に示す空間形成部材8は、吸込口81(同図(b)参照)の両脇になる下端83が支持台92によって支持されている。支持台92は、トラフ3の底部31に設けられたコンクリート製のものである。この支持台92は、延在するトラフ3の、支持板部材91が設けられた位置に形成されている。同図(b)に示すように、支持台92は、上流側傾斜面921と下流側傾斜面922を有するとともに、上流側傾斜面921と下流側傾斜面922の間に支持部923を有する。空間形成部材8の下端83は、この支持部923に支持されている。同図(a)に示すように、支持部923の幅方向中央には水平面9231が設けられているが、その水平面9231の両側は、トラフ3に向かって下方へ傾斜している。また、同図(b)に示すように、支持部923の下方から給水管71が上方に延び、給水管71は、水平面9231を貫通すると同時に上流側へ折れ曲がり、水平面9231に載置されるように、上流側を向いた吐出口7が形成されている。同図(a)に示すように、この吐出口7も扁平な長孔形状のものである。
図10(a)に示す空間形成部材8の形状や大きさは、図3(a)に示す空間形成部材8の形状や大きさと同じであり、3/4円弧の断面形状をもったものである。支持台92に下端83が支持された空間形成部材8の径方向の中心8cは、トラフ3の径方向の中心3cに一致している。
また、図10に示す変形例では、吐出口7が、トラフ3の径方向の中心3cよりも下方に位置している。また、空間形成部材8の上端部分82は、トラフ3の開口3aよりも下方になる。
なお、空間形成部材8の上端部分82は、トラフ3の開口3aよりも上方に位置していてもよいが、トラフ3内の空間S1に堆積した砂を空間形成部材8の空間S2内に効率良く吸い込むには、吸込口81が、トラフ3の開口3aよりも下方に位置している必要がある。
また、図8に示すように、池底部1aにトラフ3を設けず池底部1aを平らな面として、空間形成部材8を池幅方向に移動自在に設置してもよい。こうすることで、空間形成部材8を池幅方向にスライドさせる度に、吐出口7から水を吐出させ、広い幅方向の領域にわたって、砂を下流側へ移送することができるようになる。
次に、移送システムが設けられた沈殿池について説明する。沈殿池は、下水処理システムにおける、沈砂池の下流側に配置され、沈砂池によって砂が除去された汚水を受入れ、受け入れた汚水に含まれる汚泥を沈降させた後、沈降させた汚泥を汚泥ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
図11は、移送システムが設けられた沈殿池を上方から見た平面図であり、図12は、図11に示す沈殿池の側断面図である。
図11に示すように、沈殿池10は、汚泥ピット14を備えた平面視長方形状の池である。以下、沈殿池10の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図11および図12に示す沈殿池10は、図の右側に設けられた導水渠10bから汚水を受入れ(図12参照)、受け入れた水は図の左側に向って、例えば、0.03m/min〜0.5m/min程度の流速でゆっくり流れていく(図11および図12に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈殿池の長手方向が水の流れの方向になり、図11および図12では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。沈殿池10の下流側まで流れた水は、不図示のオーバーフロー用の堰から排出され、例えば、下水処理システムの反応タンク等に送られる。なお、池底部10aの底面100aは、上流側に向かうに従って沈殿池10の水深が増加するように少しだけ傾斜している。
導水渠10bの下流側には、池底部10aに堆積した汚泥が集められる汚泥ピット14が設けられている。汚泥ピット14の外部には、不図示の汚泥ポンプが設けられ、この汚泥ポンプの不図示の吸込管が汚泥ピット14に配設されている。汚泥ピット14に集められた汚泥は、汚泥ポンプを駆動させることによって吸込管から吸込まれ、沈殿池10の外部に搬送される。
池底部10aは、長手方向の長さが7m程度であり、この池底部10aには、長手方向に沿って延在した複数の流路が設けられている。図13も参照しつつ、流路について説明する。
図13は、図12におけるE−E断面図である。この図13では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図13に示すように、池底部10aの底面100a上には、複数の流路形成部材13が、幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。これら流路形成部材13は、略直角に接続された一対の傾斜片13aを有し、これら傾斜片13aの接続部分に角部13bが形成されたアングル状のものである。流路形成部材13は、角部13bが上方を向く姿勢で、傾斜片13aそれぞれの先端部分が底面100aに固定されている。これら流路形成部材13は、図12および図13に示すように、池底部10aの長手方向全体に延在したものである。また、図13に示すように、沈殿池10における一対の側壁10cの下端部分には、幅方向の内側に傾斜した傾斜部100cが形成されている。
本実施形態の沈殿池10では、5つの流路Fが設けられている。これら5つの流路Fのうち、沈殿池10の幅方向両側に設けられた2つの流路Fは、側壁10cの傾斜部100c、底面100a、および流路形成部材13の傾斜片13aによって画定された、上方が開放した空間である。また、幅方向中央側の3つの流路Fは、隣合う流路形成部材13それぞれの傾斜片13aと、底面100aとによって画定された、上方が開放した空間である。沈殿池10に流れ込んだ汚水中の汚泥は、池底部10aに向かって沈降して流路F内に入り込み、側壁10cの傾斜部100cや流路形成部材13の傾斜片13aを伝って流れ落ちる。この結果、沈降した汚泥は、流路F内の底面100a上に堆積する。なお、流路形成部材13の角部13bに沈降した汚泥も、いずれかの傾斜片13aをつたって底面100aに流れ落ちる。ここで、側壁10cの傾斜部100cや流路形成部材13の傾斜片13aの傾斜角度は特に限定されるものではないが、本実施形態の沈殿池10においては、いずれも45度に設定されている。また、流路形成部材13は、ステンレス等の金属製のものであるが、底面100aと一体にコンクリートで形成したものであってもよい。また、流路形成部材13の傾斜片13aや側壁10cの傾斜部100cは、円弧状の断面形状を有するものであってもよい。流路F内の底面100a上に堆積した汚泥は、後述する吐出口から吐出される水の流れによって汚泥ピット14まで移動させられる。
図11〜図13に示す沈殿池10には、移送システム20が設けられている。移送システム20は、空間形成部材28と、空間形成部材28を支持する支持部材29と、支持部材29が吊下げられる取付枠26と、給水管271と、給水管271によって供給された水を吐出する吐出口27とを備えている。
図13に示すように、空間形成部材28は、それぞれの流路F内における幅方向の中央であって、底面100a上に、この底面100aから離間した状態で配置されたものである。また、図11および図12に示すように、空間形成部材28は、沈殿池10の長手方向に沿って延在したものであり、空間形成部材28の全長は池底部10aの長手方向の長さと同じである。給水管271は、流体供給管の一例に相当するものであり、一端側が不図示の給水源に接続され、図12に示すように、他端側が、空間形成部材28の下流側部分に接続している。
取付枠26は、断面がコ字状のものであり、図11および図13に示すように、幅方向に延在した状態で、一対の側壁10c上に架け渡されている。また、取付枠26は、図11および図12に示すように、長手方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。支持部材29は、図13に示すように、幅方向において、空間形成部材28に対応した位置にそれぞれ鉛直方向に延在した状態で複数設けられている。また、支持部材29は、図12に示すように、長手方向において、取付枠26の位置に対応した位置に、長手方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。これらの支持部材29は、図13に示すように、鉛直方向に延在したパイプ部材291と、パイプ部材291の下端に取り付けられた下側ネジ部材292と、パイプ部材291の上端に取り付けられた上側ネジ部材293とを有している。また、これらの支持部材29は、下側ネジ部材292が空間形成部材28に取り付けられ、上側ネジ部材293が取付枠26に取り付けられることによって、空間形成部材28を支持している。
図14(a)は、図13のG部を拡大して示す拡大図である。この図14(a)では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図14(a)に示す空間形成部材28は、図3に示す空間形成部材8と略同じ断面形状をもったものであり、空間形成部材28の下端は、下方に向けて開口している。以下、この開口している部分を吸込口281と称する。この吸込口281は、幅方向に80mm以上の長さLをもった開口であり、底面100aから離間している。空間形成部材28は、流路F内を仕切るものであって、下端より上の部分が閉塞した空間S3を形成するものである。空間形成部材28の上端部分282は閉じており、円弧状の側面280によって、空間S3は、吸込口281につながる下端部分が、その吸込口281に近づくほど狭くなっている。空間形成部材28の上端部分282には、支持部材29の下側ネジ部材292に対応したネジ溝を内周に有する筒部283が設けられている。ここで、下側ネジ部材292は、下側部分にネジが切られ、上側部分はネジが切られていないものであり、この上側部分が、パイプ部材291に挿入されて溶接等によってパイプ部材291に固定されている。この下側ネジ部材292が、筒部283にねじ込まれることによって、空間形成部材28が支持部材29に支持されている。
図14(b)は、図13のH部を拡大して示す拡大図である。この図14(b)でも図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図14(b)に示すように、上側ネジ部材293は、上側部分にネジが切られ、下側部分はネジが切られていないものであり、この下側部分が、パイプ部材291に挿入されて溶接等によってパイプ部材291に固定されている。この上側ネジ部材293が、取付枠26に形成された孔に挿通された状態で、取付枠26の上下からそれぞれナットNで締め付けられることによって、支持部材29が取付枠26に吊下げられている。支持部材29は、上側ネジ部材293におけるナットNの位置を調整することによって、上下方向の位置を調整することができる。これによって支持部材29に支持された空間形成部材28の上下方向の位置を調整し、吸込口281と底面100aとの離間距離を変更することができる。また、沈殿池10内に汚水が溜まっている状態であっても、支持部材29を取付枠26から取り外し、取り外した支持部材29を引き上げることによって、空間形成部材28や後述する吐出口27も引き上げることができる。これによって、沈殿池10内に汚水が溜まっている状態であっても、空間形成部材28や吐出口27のメンテナンス等を行うことができる。
さらに、図14(a)に示すように、空間形成部材28内の空間S3には、その空間S3内に流体を吐出する吐出口27が設けられている。この吐出口27は、図3に示す吐出口7と同じ構造のものである。図12を用いて上述したように、空間形成部材28における下流側の部分まで下方に延在してきた給水管271は、空間形成部材28を貫通し、図14(a)に示すように、空間S3内に入り込んでいる。給水管271の、空間S3内に入り込んだ部分2711は、図3に示す、給水管71の、空間S2内に入り込んだ部分711と同様に、空間形成部材28の径方向の中心を越えて下方へ延び、上流側(図では手前側)に向けて水平に折れ曲がっている。なお、本実施形態では、図3に示す巻付防止板95は設けられていない。この理由は、沈砂池において紐状の混入物が除去され、沈殿池10が受入れる汚水には紐状の混入物がほとんど含まれていないため、このような紐状の混入物の巻き付きを防ぐ必要性が少ないからである。
本実施形態の吐出口27は、空間S3内における長手方向の下流側の端部に設けられたものであり、空間形成部材28の径方向の中心よりは下方であって、吸込口281よりは上方に位置している。この吐出口27からは、上流側に向けて空間形成部材28の軸心と平行あるいは略平行に水が吐出される。すなわち、上流側に向けて水平方向あるいは略水平方向に水が吐出され、図11および図12では、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。
吐出口27から空間形成部材28の空間S3内に水が吐出されることで、空間形成部材28の内(空間S3)と外とで圧力差が生じ、流路F内の底面100a上に堆積した汚泥は、図14に示す曲線の矢印のように、吸込口281から空間S3内に吸い込まれる。さらに、その空間形成部材28の空間S3内では、吸い込まれた汚泥が、吐出口27から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(汚泥ピット14側)に向かって移動する。図14(a)に示すように、吸込口281が絞られた開口であることによって、空間S3内を移動する汚泥がその空間S3内から外に出にくくなり、汚泥の撒き上がりがより抑えられる。
汚泥は、砂より粒径が小さい泥状のものであり、砂よりも移動させやすいため、図3に示す吐出口7における水の吐出流速よりも遅い吐出流速で汚泥を十分移動させることができる。このため、本実施形態の吐出口27における吐出流速は、例えば、図3に示す吐出口7における水の吐出流速の1/3程度にすることができる。また、吐出口27から吐出される水の吐出量も、図3に示す吐出口7から吐出される水の吐出量の1/3程度にすることができ、例えば、吐出口27から吐出される水の吐出量を、毎分500リットル程度にすることができる。
以上説明した本実施形態の移送システム20によれば、汚泥を十分に移動させながら汚泥の撒き上がりを抑えることができる。
続いて、本実施形態の沈殿池10の池底部10aに堆積した汚泥をその沈殿池10から除去する汚泥除去方法について説明する。この汚泥除去方法は、混入物除去方法の一例に相当する。
図15は、汚泥除去方法の流れを示すフローチャートである。
沈殿池10に流れ込んだ汚水は、汚泥ピット14を越えて、流路Fの上流端に到達し、流路Fの延在方向に向かってさらに流れる。汚水が流路Fの延在方向に向かって流れる間に、汚水に含まれている汚泥が、汚泥ピット14や池底部10aに沈降していく。流路F内の、側壁の傾斜部100cや流路形成部材13に沈降した汚泥は、底面100aに向かって流れ落ちる。こうして、流路F内の底面100a上に汚泥が堆積する。
本実施形態における汚泥除去方法では、まず、汚泥ピット14に設けられた不図示の汚泥ポンプを駆動させ、汚泥ピット14内の汚泥を汚泥ピット14から除去しておく(ステップS1)。この段階で汚泥ピット14に堆積している汚泥は、沈殿池10に流れ込んだ汚水中の汚泥のうち、主として、汚泥ピット14に沈降して汚泥ピット14に堆積した汚泥である。
次に、汚泥ポンプを駆動させた状態で、吐出口27から、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS2)。このステップS2では、流路Fから、空間形成部材28によって仕切られた空間S3内に、水が吐出される。吐出口27から空間S3内に水が吐出されることで、空間形成部材28の内(空間S3)と外とで圧力差が生じ、流路F内の底面100a上に堆積した汚泥は、吸込口281から空間S3内に吸い込まれる(図14(a)に示す曲線の矢印参照)。さらに、その空間形成部材28の空間S3内では、吸い込まれた汚泥が、吐出口27から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(汚泥ピット14側)に向かって移動する。空間形成部材28の空間S3内を移動する汚泥は、上記圧力差が生じている部分では、空間形成部材28の外に出にくく、汚泥の撒き上がりが抑えられる。こうして、流路F内の底面100a上に堆積した汚泥は、空間形成部材28の空間S3内を移動し、やがて汚泥ピット14に到達する。ここでの汚泥の移動が、移動工程の一例に相当する。この移動工程は、沈殿池10の水を排水し、沈殿池10の水を減らしたり、総て無くしてから行う必要はなく、沈殿池に汚水を連続的に受け入れている状態で実施する。汚泥ピット14に到達した汚泥は、先のステップS1で駆動を開始した汚泥ポンプによって沈殿池10の外部に搬送され、沈殿池10から汚泥が除去される。ここでの汚泥の除去が、排出工程の一例に相当する。
そして、吐出口27からの水の吐出を終了し、その後所定時間が経過すると、ステップS1で駆動を開始した汚泥ポンプを停止する(ステップS3)。また、さらに所定時間が経過すると、あるいは沈降してきた汚泥によって汚泥ピット14に汚泥がある程度堆積すると、再びステップS1が実施される。このように、ステップS1〜ステップS3は、汚水の受け入れを開始してから、繰り返し実施される。
本実施形態の汚泥除去方法によれば、沈殿池10内で、汚泥の撒き上がりを抑えつつ汚泥を十分に移動させて、その沈殿池から汚泥を除去することができる。
次に、移送システムの第2実施形態が設けられた沈殿池について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図16は、第2実施形態の移送システムが設けられた沈殿池における、図13に対応した態様を示す断面図である。この図16では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図16に示す沈殿池10に設けられた移送システム20は、トラフ33の一部である空間形成部材28と、この空間形成部材28に設けられた吐出口27と、給水管271とを備えている。トラフ33は、図11に示す汚泥ピット14の下流側であって、池底部10aの長手方向に延在したものであり、幅方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。このトラフ33は、溝を形成する溝形成体331と、空間形成部材28と、吐出口27とを有している。吐出口27には、沈殿池10の外から池底部10aに向って鉛直方向に延在した給水管271が接続されている。また、池底部10aには、トラフ33の幅方向両側それぞれからトラフ33に向って下方に傾斜してトラフ33につながった傾斜面16がコンクリートによって形成されている。この傾斜面16は、池底部10aの長手方向に延在したものである。図16では、池底部10aの、コンクリートによって形成された部分をクロスハッチングで示している。
図17(a)は、図16のI部を拡大して示す拡大図である。この図17(a)では図の左右方向が幅方向になる。
図17(a)に示すように、トラフ33は、それぞれ5/8円弧の断面形状をもつ、第1円弧状部材33aと第2円弧状部材33bとを有している。第1円弧状部材33aと第2円弧状部材33bは、ステンレス製等のパイプ材の一部を切り欠いて形成したものである。第1円弧状部材33aは、厚さが3〜4mm程度、直径が250mm程度のパイプ材における、時計の短針がさす、9時から、1時と2時との間までの部分(3/8円弧)を切り欠いたものである。また、第2円弧状部材33bは、厚さが3〜4mm程度、直径が150mm程度のパイプ材における、時計の短針がさす、4時と5時との間から9時までの部分(3/8円弧)を切り欠いたものである。トラフ33は、第1円弧状部材33aにおける上記9時に相当する端部に、第2円弧状部材33bにおける上記9時に相当する端部を突き合わせて接合することによって形成されている。これら第1円弧状部材33aと第2円弧状部材33bによって、空間形成部材28と溝形成体331が形成されている。空間形成部材28は、下方に向かって開口している。この、下方に向かって開口している部分が空間形成部材28の吸込口281になる。この吸込口281は、幅方向に80mm以上の長さLをもった開口であり、溝形成体331の底331aから離間している。溝形成体331の底331aは、底部の一例に相当する。空間形成部材28の上端部分282は円弧状に閉じており、下方へ向かって傾斜している。空間形成部材28は、下端より上の部分が閉塞した空間S3を形成するものである。この空間S3は、吸込口281につながる下端部分が、その吸込口281に近づくほど狭くなっている。
また、溝形成体331は、上方に向かって開口している。以下、図17(a)に示す、溝形成体331の、幅方向における左側半分を溝形成体331の一端側と称し、溝形成体331の、幅方向における右側半分を溝形成体331の他端側と称する。空間形成部材28は、溝形成体331の他端側と離間した状態で、共通部分を介して溝形成体331の一端側に接続している。これにより、溝形成体331の他端側と空間形成部材28との間は、上方に向かって開口している。以下、上方に向かって開口している部分をトラフ33の開口334と称する。また、溝形成体331内の空間のうち、空間形成部材28の空間S3を除いた空間を、空間S4と称する。すなわち、空間S3と空間S4を併せた空間が溝に相当し、トラフ33の開口334は、溝の開口に相当する。本実施形態における空間形成部材28は、溝内に設けられたものであって、吸込口281は、溝の開口よりも下に位置するものである。
このように、空間形成部材28は、溝形成体331の他端側と離間した状態で一端側に接続したものであるため、空間形成部材28を支持する部材を省略することができる。この結果、トラフ3の全長にわたり、空間形成部材28を支持する部材によって溝内への汚泥の沈降が阻害されることがなくなる。
また、上述のごとく、本実施形態のトラフ3は、直径が250mm程度の第1円弧状部材33aと、直径が150mm程度の第2円弧状部材33bとを接合することによって形成されている。したがって、空間形成部材28と溝形成体331の他端側との隙間Wは、トラフ33の全長にわたって100mm程度は確保されている。さらに、空間形成部材28と溝形成体331は、一部を互いに共通にした共通部分を有しているため、隙間Wを確保しやすく、この結果、トラフ33の幅方向における大きさを抑えることができる。
沈殿池10に流れ込んだ汚水に含まれている汚泥は、汚水が下流側へ流れていく課程において池底部10aに沈降していき、傾斜面16に沈降した汚泥は、傾斜面16に沿ってさらにトラフ33に向かって流れ落ちる。図17(a)の右側の傾斜面16から流れ落ちた汚泥は、トラフ33の開口3334から溝内に入り込む。また、図17(a)の左側の傾斜面16から流れ落ちた汚泥は、空間形成部材28における円弧状の側面をつたって、トラフ33の開口334から溝内に入り込む。これらによって、池底部10aに沈降してきた汚泥は、溝の底部分に集められる。
図17(b)は、同図(a)におけるJ−J断面図である。この図17(b)では図の左右方向がトラフ33の延在方向になり、図の右側が上流側(汚泥ピット14側)になり左側が下流側になる。
図17(a)および同図(b)に示すように、空間形成部材28まで下方に延在した給水管271は、下端部分が空間形成部材28の上端部分282を貫通し、空間形成部材28の空間S3と連通している。また、空間形成部材28の空間S3における、給水管271が連通する領域には、空間S3内に流体を吐出する吐出口27が設けられている。この吐出口27は、空間形成部材28における空間S3の上側部分を、仕切部材272で仕切ることによって形成されている。仕切部材272は、トラフ33の延在方向に水平な状態で延在した水平部2721と、この水平部2721の下流側の端部から上方に向けて傾斜した傾斜部2722を有している。水平部2721は、空間形成部材28の内周面における、上端部を挟んだ幅方向の両側に接続し、その上流側(汚泥ピット14側)の端部が給水管271の下端部分よりも上流側に位置している。また、傾斜部2722は、その下流側の端部が、空間形成部材28の内周面における、給水管271の下端部分が接続した部分よりも下流側に接続し、吐出口27の下流側を閉塞している。これらによって、空間形成部材28の空間S3における、給水管271が連通する領域が、仕切部材272によって仕切られている。なお、本実施形態の吐出口27は、図14に示す吐出口27と同じ構造にしてもよい。
吐出口27からは、給水管271から供給された水が、上流側に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される(図17(b)中の右向きの矢印参照)。すなわち、図17(b)では、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。吐出口27から空間形成部材28の空間S3内に水が吐出されることで、空間形成部材28の内(空間S3)と外(空間S4)とで圧力差が生じ、溝の底に堆積した汚泥は、図17(a)に示す曲線の矢印のように、吸込口281から空間S3内に吸い込まれる。さらに、その空間形成部材28の空間S3内では、吸い込まれた汚泥が、吐出口27から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(汚泥ピット14側)に向かって移動する。図17(a)に示すように、吸込口281は、幅方向に絞られた開口であることによって、空間S2内を移動する砂がその空間S3内から外に出にくくなり、汚泥の撒き上がりがより抑えられる。
すなわち、第2実施形態の移送システムが設けられた沈殿池は、受け入れた水に含まれている汚泥が池底部に設けられた溝内に沈降する沈殿池であって、
上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に前記溝の底から離間した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記空間内に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記吸込口は、前記溝内に堆積した汚泥を、前記吐出口から流体が吐出されることで前記空間内に吸い込む開口として機能するものであり、
前記空間形成部材は、前記空間内に吸い込まれた汚泥が、前記吐出口から流体が吐出されることで該流体の吐出方向下流側に向かって移動する経路として機能するものであり、
前記池底部は、前記溝を形成する溝形成体を有するものであり、
前記空間形成部材は、前記溝形成体の、前記溝の延在方向に直交した幅方向における一端側と他端側とのうち、該他端側と離間した状態で該一端側に接続し、該溝の延在方向に沿って設けられたものである。
また、前記空間形成部材は、前記溝内に設けられたものであって、
前記吸込口は、前記溝の開口よりも下に位置するものであってもよい。
さらに、前記空間形成部材は、一部を前記溝形成体の一部と共通にしたものであってもよい。
また、前記空間形成部材は、前記上端部分が曲面で構成されたものであってもよい。
さらに、前記池底部は、前記溝の幅方向の両側に、該溝に向かって下方に傾斜した一対の傾斜面を有するものであり、
前記一対の傾斜面のうちの一方は、下端部分が前記溝形成体の前記他端側に接続したものであり、
前記一対の傾斜面のうちの他方は、下端部分が前記空間形成部材の前記上端部分に接続したものであってもよい。
また、前記空間形成部材は、前記溝の略全長にわたって前記一端側に接続したものであってもよい。
次に、移送システムの第3実施形態が設けられた沈殿池について説明する。
図18は、移送システムの第3実施形態が設けられた沈殿池を上方から見た平面図である。この図18では図の左右方向が沈殿池10の長手方向になり、図の上下方向が沈殿池10の幅方向になる。図19は、図18に示す沈殿池のK−K断面図であり、この図19では図の左右方向が沈殿池10の長手方向になる。また、図20は、図18に示す沈殿池のL−L断面図であり、この図20では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図18〜図20に示す沈殿池10は、長手方向が水の流れの方向になり、図18および図19では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。この沈殿池10は、長手方向に延在した一対の側壁10c(図18参照)と、幅方向に延在し上流側に位置する上流壁10hと、幅方向に延在し下流側に位置する下流壁10gとを有し、長手方向の長さが35m程度、幅方向の長さが25m程度の平面視長方形状の池である。図19に示すように、下流壁10gには、オーバーフロー用の堰100gが設けられている。この堰100gを乗り越えた汚水は、例えば、下水処理システムの反応タンク等に送られる。また、図18に示すように、上流壁10hには、図示しない導水渠に連通した開口部100hが設けられている。なお、一対の側壁10cおよび上流壁10hそれぞれには、それそれが延在する方向に所定の間隔をあけて複数の柱部が設けられている。
図18および図20に示すように、沈殿池10の上流側における幅方向の中央部分には、汚泥ピット14が設けられている。汚泥ピット14の外部には、不図示の汚泥ポンプが設けられ、この汚泥ポンプの不図示の吸込管が汚泥ピット14に配設されている。また、図18および図20に示すように、汚泥ピット14の幅方向両側には、それぞれ幅方向に延在し汚泥ピット14に接続した一対の集積溝141が設けられている。これら集積溝141それぞれは、自身の幅になる、沈殿池10の長手方向における長さが4m程度であり、自身の全長になる、沈殿池10の幅方向における長さが10m程度の溝である。これら集積溝141は、移送経路の一例に相当し、集積溝141の溝底面141aは、移送経路の溝底部の一例に相当する。なお、図20に示すように、集積溝141それぞれの溝底面141aは、汚泥ピット14に向かうに従って沈殿池10の水深が増加するように傾斜している。
図18に示すように、沈殿池10における、汚泥ピット14および集積溝141よりも上流側は、長手方向に延在した3つの仕切壁10dによって4つの領域に仕切られており、それぞれの領域に池底部10aが設けられている。なお、仕切壁10dにも、側壁10cと同様に、長手方向に所定の間隔をあけて柱部が設けられ、仕切壁10dにおける、柱部が設けられていない部分の下端部分は、ハンチ状に断面形状が大きくなっている。また、隣合う仕切壁10dにおける柱部間には、幅方向に延在した梁10e(図19参照)が設けられている。さらに、側壁10cの柱部と、仕切壁10dの柱部との間にも、幅方向に延在した梁が設けられている。図18および図20では、図面を簡略化するため、梁は省略している。また、図19および図20に示すように、池底部10aの上流側部分と、汚泥ピット14および集積溝14の上方とには、天井10fが設けられている。図18では、集積溝14を示すため、天井10fは省略している。
図19に示す池底部10aそれぞれの底面100aには、図11〜図13に示す流路形成部材13と断面形状が同一の流路形成部材13が、池底部10aの底面100aにおける長手方向の略全長にわたって延在した状態で配置されている。本実施形態の側壁10cの下端部分には、図13に示す傾斜部100cが設けられておらず、また、仕切壁10dの下端部分にも傾斜部が設けられていない。本実施形態では、池底部10aの底面100aにおける幅方向の両端側部分には、一つの傾斜片からなる第2流路形成部材131が配置されている。これら流路形成部材13および第2流路形成部材131によって、本実施形態では、図20に示すように、池底部10aにおける、仕切壁10dによて仕切られた4つの領域それぞれには、4つの流路Fが幅方向に並んだ状態で形成されている。なお、側壁10cや仕切壁10dの下端部分に傾斜部を設け、第2流路形成部材131を省略してもよい。
沈殿池10における、仕切壁10dによって仕切られた領域それぞれには、移送システム20が設けられている。この移送システム20は、図11〜図14に示す移送システム20と同様に、空間形成部材28、支持部材29、取付枠26、給水管271、および吐出口27を備えている。空間形成部材28は、図14に示す空間形成部材28と断面形状が同一のものであり、流路Fそれぞれに、流路Fの長手方向の略全長にわたって延在した状態で配置されている。これら空間形成部材28は、図11〜図13に示す、支持部材29および取付枠26と同じ構成の、支持部材29および取付枠26によって、池底部10aの底面100aから離間した状態で支持されている。取付枠26は、沈殿池10における、仕切壁10dによって仕切られた領域それぞれにおいて、沈殿池10の幅方向に延在したものであり、この取付枠26は、沈殿池10の長手方向に間隔をあけて複数配置されている。取付枠26は、両端部分それぞれが受け枠261によって支持されている。これら受け枠261は、側壁10cおよび仕切壁10dそれぞれにおける、水面よりも上方になる部分に固定されたものである。これらの受け枠261にそれぞれ支持された取付枠26に支持部材29が吊下げられている。
図19に示すように、本実施形態の給水管271は、長手方向に6m程度の間隔をあけて、空間形成部材28の上端部分に複数接続されている。これら給水管271は、図14に示す給水管271と同様に、空間形成部材28を貫通して空間形成部材28内に入り込んだ後に上流側(汚泥ピット14および集積溝141側)に折れ曲がり、図14に示す吐出口27と同じ吐出口が形成されている。これによって、本実施形態では、それぞれの空間形成部材28内において、長手方向に6m程度の間隔をあけて、5つの吐出口が設けられている。これらの吐出口からは、給水管271から供給された水が、上流側(図18および図19では右側)に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される。すなわち、図18および図19では、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。以下、それぞれの空間形成部材28に形成された5つの吐出口のうち、吐出方向の最も下流側(沈殿池10では最も上流側)の吐出口を第1吐出口と称することがあり、この第1吐出口から吐出方向上流側(沈殿池10では下流側)に向けて設けられている順に、それぞれ、第2吐出口、第3吐出口、第4吐出口、第5吐出口と称することがある。図18および図19に示す沈殿池10からみると、上記第1吐出口は沈殿池10における水の流れの最も上流側に設けられたものになり、上記第5吐出口は沈殿池10における水の流れの最も下流側に設けられたものになる。なお、図18および図20では、図面を簡略化するため、給水管271は省略している。
図18および図19に示すように、一対の集積溝141それぞれの溝底面141aには、沈殿池10の幅方向に延在した流路形成部材13および第2流路形成部材131’が、沈殿池10の長手方向に間隔をあけて複数配置され、集積溝141の略全長にわたって延在した流路F’が形成されている。本実施形態では、汚泥ピット14を挟んだ一対の集積溝141それぞれに、3つの流路F’が形成されている。一対の集積溝141それぞれには、第2移送システム20’が設けられている。この第2移送システム20’は、移送システム20と同様に、空間形成部材28と、支持部材29と、取付枠26と、給水管271と、吐出口とを備えている。空間形成部材28は、図14に示す空間形成部材28と断面形状が同一のものであり、流路F’それぞれに、流路F’の略全長にわたって延在した状態で配置されている。これら空間形成部材28は、移送システム20の支持部材29と同じ構成の支持部材29と、移送システム20の取付枠26と同じ断面形状の取付枠26によって、集積溝141の溝底面141aから離間した状態で支持されている。取付枠26は、図18に示すように、集積溝141の上方において、沈殿池10の長手方向に延在した状態で、沈殿池10の幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。本実施形態では、それぞれの集積溝141に、3つの取付枠26が配置されている。図18および図20に示すように、3つの取付枠26のうち、沈殿池10の幅方向中央に配置された取付枠26は、上流側の端部部分が、上流壁10hに固定された受け枠261に支持され、下流側の端部部分が、仕切壁10dにおける上流側の面に固定された受け枠261に支持されている。また、図18および図19に示すように、3つの取付枠26のうち、沈殿池10の幅方向外側に配置された2つの取付枠26それぞれは、上流側の端部部分が、沈殿池10の上流壁10hに固定された受け枠261に支持され、下流側の端部部分が、移送システム20における最も上流側に配置された取付枠26上に支持されている。これら取付枠26それぞれに支持部材29が吊下げられている。
図20に示すように、第2移送システム20’の空間形成部材28それぞれには、給水管271が、沈殿池10の幅方向における外側の端部部分と、沈殿池10の幅方向における中間部分に接続されている。これら給水管271は、図14に示す給水管271と同様に、空間形成部材28を貫通して空間形成部材28内に入り込んだ後に幅方向中央側(汚泥ピット14側)に折れ曲がり、図14に示す吐出口27と同じ吐出口が形成されている。これによって、本実施形態では、それぞれの空間形成部材28内において、長手方向に5m程度の間隔をあけて、2つの吐出口が設けられている。これらの吐出口からは、給水管271から供給された水が、汚泥ピット14側に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される。すなわち、一対の集積溝141それぞれにおいては、沈殿池10の幅方向外側が吐出方向上流側になり、沈殿池10の幅方向内側(汚泥ピット14側)が吐出方向下流側になる。以下、第2移送システム20’の空間形成部材28それぞれに形成された2つの吐出口のうち、吐出方向上流側(沈殿池10の幅方向における外側)の吐出口を外側吐出口と称することがあり、沈殿池10の幅方向における内側の吐出口を内側吐出口と称することがある。なお、図18および図19では、図面を簡略化するため、移送システム20’の給水管271を省略している。
続いて、移送システムの第3実施形態が設けられた沈殿池10内に堆積した汚泥をその沈殿池10から除去する第2汚泥除去方法について説明する。この第2汚泥除去方法は、混入物除去方法の一例に相当する。
図21は、第2汚泥除去方法の流れを示すフローチャートである。
沈殿池10に流れ込んだ汚水は、汚泥ピット14および集積溝141を越えて、池底部10aの上流端に到達し、池底部10aの延在方向に沿ってさらに流れる。汚水が流れる間に、汚水に含まれている汚泥が、汚泥ピット14、集積溝141、および池底部10aに沈降していく。集積溝141に沈降した汚泥は、流路形成部材13や第2流路形成部材131’をつたって流路F’内の溝底面141aに流れ落ちる。また、空間形成部材28の外周面をつたって、流路F’内の溝底面141aに流れ落ちる。こうして、流路F’内の溝底面141a上に汚泥が堆積する。また、池底部10aに沈降した汚泥は、流路形成部材13や第2流路形成部材131を伝って流路F内の底面100aに流れ落ちる。また、空間形成部材28の外周面をつたって、流路F内の底面100aに流れ落ちる。こうして、流路F内の底面100a上に汚泥が堆積する。
本実施形態における第2汚泥除去方法では、まず、汚泥ピット14の外側に設けられた不図示の汚泥ポンプを駆動させ、汚泥ピット14内の汚泥を汚泥ピット14から除去しておく(ステップS1)。この段階で汚泥ピット14に堆積している汚泥は、沈殿池10に流れ込んだ汚水中の汚泥のうち、主として、汚泥ピット14に沈降して汚泥ピット14に堆積した汚泥である。なお、汚泥ポンプは、後述するステップS23で停止するまで駆動を継続させておく。
次に、それぞれの集積溝141における2つの吐出口のうち内側吐出口のみから、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS2)。このステップS2では、流路F’から、空間形成部材28によって仕切られた空間に、水が吐出される。内側吐出口から水が吐出されることで、空間形成部材28の内と外とで圧力差が生じ、流路F’における、幅方向の内側部分の溝底面141a上に堆積した汚泥は、吸込口から空間形成部材28によって仕切られた空間に吸い込まれる。さらに、その空間形成部材28によって仕切られた空間では、吸い込まれた汚泥が、内側吐出口から吐出された水の流れによって吐出方向下流側に(汚泥ピット14に向かって)移動する。空間形成部材28によって仕切られた空間を移動する汚泥は、上記圧力差が生じている部分では、空間形成部材28の外に出にくく、汚泥の撒き上がりが抑えられる。こうして、流路F’における、幅方向の内側部分の溝底面141aに堆積した汚泥は、空間形成部材28によって仕切られた空間を移動し、やがて汚泥ピット14に到達する。汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10の外部に搬送され、沈殿池10から汚泥が除去される。ここでの汚泥の除去が、排出工程の一例に相当する。
次いで、内側吐出口からの水の吐出を中止し、今度は、外側吐出口のみから、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS3)。ステップS3でもステップS2と同様に空間形成部材28で仕切られた空間に水を吐出することで、空間形成部材28の内と外とで圧力差が生じ、今度は、流路F’における、幅方向の外側部分の溝底面141a上に堆積した汚泥が、吸込口から空間形成部材28によって仕切られた空間に吸い込まれる。さらに、吸い込まれた汚泥は、外側吐出口から吐出された水の流れによって吐出方向下流側に(内側吐出口に向かって)空間形成部材28によって仕切られた空間を移動し、内側吐出口まで到達する。内側吐出口の周辺では外側吐出口からの水の勢いが低下することで、内側吐出口の周辺まで到達した汚泥は、空間形成部材28の吸込口から溝底面141aに向かって降下する。すなわち、流路F’における、内側吐出口周辺の溝底面141a上に汚泥が堆積する。
次に、外側吐出口からの水の吐出を中止し、再び、内側吐出口のみから、ステップS2と同様に、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS4)。このステップS4によって、流路F’における、内側吐出口周辺の溝底面141a上に堆積した汚泥が、空間形成部材28によって仕切られた空間に再び吸い込まれ、吸い込まれた汚泥は、吐出方向下流側に(汚泥ピット14に向かって)空間形成部材28によって仕切られた空間を移動し、やがて汚泥ピット14に到達する。ステップS2〜ステップS4までが、移動工程の一例に相当する。汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。この段階で排出される汚泥は、沈殿池10に流れ込んだ汚水中の汚泥のうち、主として、集積溝141に沈降して集積溝141の溝底面141aに堆積した汚泥である。
次に、池底部10aに設けられた空間形成部材28それぞれにおける5つの吐出口のうち、吐出方向の最下流側(沈殿池10では最上流側)の第1吐出口のみから、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS4)。このステップS4では、流路Fから空間形成部材28によって仕切られた空間に、水が吐出される。第1吐出口から水が吐出されることで、空間形成部材28の内と外とで圧力差が生じ、流路Fにおける、最上流側部分の底面100a上に堆積した汚泥は、吸込口から空間形成部材28によって仕切られた空間に吸い込まれる。さらに、その空間形成部材28によって仕切られた空間では、吸い込まれた汚泥が、第1吐出口から吐出された水の流れによって吐出方向下流側に(汚泥ピット14や集積溝141に向かって)移動し、やがて汚泥ピット14や集積溝141に到達する。汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10の外部に搬送され、沈殿池10から汚泥が除去される。ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。
次いで、第1吐出口からの水の吐出を中止し、今度は、第1吐出口よりも吐出方向上流側に位置する第2吐出口のみから、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS6)。ステップS6でもステップS5と同様に空間形成部材28で仕切られた空間に水を吐出することで、空間形成部材28の内と外とで圧力差が生じ、今度は、流路Fにおける、第2吐出口周辺の溝底面141a上に堆積した汚泥が、吸込口から空間形成部材28によって仕切られた空間に吸い込まれる。さらに、吸い込まれた汚泥は、第2吐出口から吐出された水の流れによって吐出方向下流側に(第1吐出口に向かって)空間形成部材28によって仕切られた空間を移動し、第1吐出口まで到達する。第1吐出口の周辺では第2吐出口からの水の勢いが低下することで、第1吐出口の周辺まで到達した汚泥は、空間形成部材28の吸込口から底面100aに向かって降下する。すなわち、流路Fにおける、第1吐出口周辺の底面100a上に汚泥が堆積する。
次に、第2吐出口からの水の吐出を中止し、再び、第1吐出口のみから、ステップS5と同様に、毎分500リットルの水を水中下で3分間吐出する(ステップS7)。このステップS7によって、流路Fにおける、第1吐出口周辺の底面100a上に堆積した汚泥が、空間形成部材28によって仕切られた空間に吸い込まれ、吸い込まれた汚泥は、吐出方向下流側に(汚泥ピット14や集積溝141に向かって)空間形成部材28によって仕切られた空間を移動し、やがて汚泥ピット14や集積溝141に到達する。汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。
次いで、第1吐出口からの水の吐出を中止した後、ステップS6やステップS7と同様の工程により、第3吐出口からの吐出(ステップS8)、第2吐出口からの吐出(ステップS9)、および第1吐出口からの吐出(ステップS10)の各工程を実施する。ステップS8〜ステップS10を実施することのより、第3吐出口周辺の底面100a上に堆積した汚泥が、汚泥ピット14や集積溝141に到達し、汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。
次に、第1吐出口からの水の吐出を中止した後、ステップS8〜ステップS10と同様の工程により、第4吐出口からの吐出(ステップS11)、第3吐出口からの吐出(ステップS12)、第2吐出口からの吐出(ステップS13)、および第1吐出口からの吐出(ステップS14)の各工程を実施する。ステップS11〜ステップS14を実施することにより、第4吐出口周辺の底面100a上に堆積した汚泥が、汚泥ピット14や集積溝141に到達し、汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。
次いで、第1吐出口からの水の吐出を中止した後、ステップS11〜ステップS14と同様の工程により、第5吐出口からの吐出(ステップS15)、第4吐出口からの吐出(ステップS16)、第3吐出口からの吐出(ステップS17)、第2吐出口からの吐出(ステップS18)、および第1吐出口からの吐出(ステップS19)の各工程を実施する。ステップS15〜ステップS19を実施することにより、第5吐出口周辺の底面100a上に堆積した汚泥が、汚泥ピット14や集積溝141に到達し、汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる汚泥の除去が、併せて行われる。
ステップS5〜ステップS19を実施することにより、池底部10aに沈降した汚泥は、汚泥ピット14や集積溝141まで移動させられ、汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。これらステップS5〜ステップS19が、移動工程の一例に相当する。
次に、第1吐出口からの水の吐出を中止した後、ステップS2〜ステップS4と同様に、内側吐出口からの吐出(ステップS20)、外側吐出口からの吐出(ステップS21)、および内側吐出口からの吐出(ステップS22)を実施する。ステップS20〜ステップS22を実施することにより、池底部10aに沈降しステップS5〜ステップS19によって集積溝141まで移動させられてきた汚泥が、汚泥ピット14に到達する。ここでの汚泥の移動も、移動工程の一例に相当する。また、汚泥ピット14に到達した汚泥は、汚泥ポンプによって沈殿池10から除去される。すなわち、ここでも排出工程の一例に相当する、汚泥ポンプによる砂の除去が、併せて行われる。
そして、内側吐出口からの水の吐出を終了し、その後所定時間が経過すると、ステップS1で駆動を開始した汚泥ポンプを停止する(ステップS23)。また、さらに所定時間が経過すると、あるいは沈降してきた汚泥によって汚泥ピット14に汚泥がある程度堆積すると、再びステップS1が実施される。このように、ステップS1〜ステップS23は、汚水の受け入れを開始してから、繰り返し実施される。
第2汚泥除去方法によれば、沈殿池10内で、汚泥の撒き上がりを抑えつつ汚泥を十分に移動させて、その沈殿池から汚泥を除去することができる。
続いて、これまで説明してきた、移送システムの変形例について説明する。
図22は、空間形成部材の支持の仕方の変形例を示す図である。図22では、図14と同様に図の左右方向が幅方向になる。
図14に示す空間形成部材28は、上端部分282の筒部283に支持部材29が取り付けられることによって支持されていたが、図22に示す空間形成部材28は、吸込口281の両脇になる下端284と上端部分282が支持体39によって支持されている。支持体39は、ステンレス製等の板材を折り曲げて形成されたものであり、例えば、長手方向に数十mm程度の長さを有し、空間形成部材28の延在方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている。また、支持体39は、コ字状の枠部391と、上下方向に延在した一対の下端支持部392と、底面100aに対して平行に延在し枠部391と下端支持部392とを接続した一対の接続部393とを有している。枠部391は、開放部分が下方を向いた状態で空間形成部材28の上端部分282に当接し、この上端部分282を支持するものである。下端支持部392は、空間形成部材28の下端284それぞれを支持するものである。一対の接続部393は、底面100aに配置されたベース部材40上に固定されたものである。空間形成部材28は、この支持体39によって、吸込口281が、底面100aから離間した状態で支持されている。
図23は、図13に示す空間形成部材28を、幅方向に移動自在に設置した変形例を示す図である。図23では、図13と同様に図の左右方向が幅方向になる。
図13に示す空間形成部材は、支持部材29の上側ネジ部材293が、取付枠26に取り付けられることによって、幅方向の位置が固定された状態で支持されていたが、本変形例では、取付枠26に代えて幅方向に延在したレール部材37を設け、さらに、支持部材29の上側ネジ部材293に代えて、レール部材37に幅方向に移動自在に係合するローラ部材294を設けている。また、本変形例では、流路形成部材13を省略し流路Fを形成することなく、池底部10aを底面100aからなる平らな面としている。ローラ部材294は、不図示の駆動手段で、レール部材37に沿って幅方向に移動させることができ、これによって、図の幅方向の矢印に示すように、支持部材29に支持された空間形成部材28を幅方向に移動させることができる。こうすることで、空間形成部材28を幅方向にスライドさせる度に、吐出口27から水を吐出させ、広い幅方向の領域にわたって、汚泥を汚泥ピット14側(図11参照)へ移送することができるようになる。
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上記実施の形態では、移送システム20を沈殿池10に設けているが、移送システム20をダム湖等の貯水池に設け、ダム湖等の底に沈降した土砂を一方向に移動させて所定の場所に集めるものであってもよい。なお、所定の場所に集められた土砂は、公知の排砂管で吸引する等によりダム湖等から除去してもよい。また、移送システム20をダム湖等の貯水池に設ける場合は、図23に示す変形例のように、空間形成部材を移動させる形態が好ましい。さらに、移送システム20を工場等に設け、工場等で生じた金属粉等を一方向に移動させて所定の場所に集めるものであってもよい。
なお、以上説明した実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の、実施形態や変形例に適用してもよい。