以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の移送装置を適用し得る一実施形態である沈砂池は、下水処理システムの上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
図1は、本発明の移送装置を適用し得る沈砂池1を上方から見た平面図であり、図2は、図1に示す沈砂池1のA−A断面図である。
図1に示すように、沈砂池1は、除塵機2と、本発明の移送経路構成部材としてのトラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図1に示す沈砂池1は、図の右側から汚水を受け入れ、受け入れた水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図2に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈砂池の長手方向が水の流れの方向になり、図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。
除塵機2は、沈砂池1に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものであり、トラフ3よりも上流側に設置されている。除塵機2は、無端チェーン21と、その無端チェーン21に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ22と、水中に没する濾過スクリーン23とを有する。無端チェーン21は、沈砂池1の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、図2に示すように、地上側スプロケット211と、池底側スプロケット212に巻きかけられている。無端チェーン21が駆動すると、レーキ22は水中を出入りする。濾過スクリーン23は、無端チェーン21の下流側に配置されている。この濾過スクリーン23は、上下方向に延びるバーが所定間隔(例えば、25mm〜75mm)で並べられたものであり、所定間隔以上の大きさの混入物の通過を遮る。濾過スクリーン23で遮られた混入物は、レーキ22によって掻き揚げられ、掻き揚げられた混入物は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。
トラフ3は、沈砂池1の池底部に設けられたものである。池底部には、後述するように傾斜面6が設けられ、傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、沈砂池1の上流側で池底部に向かって沈降し、池底部に堆積する。
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底面が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に移動するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して不図示の沈殿池に送られる。図2に示すWLは汚水の水面を表している。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
池底部の、ポンプ井5よりも上流側の部分には、集砂ピット4が設けられている。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底面近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂は、この揚砂管42を通して沈砂池1の外部に送られる。
トラフ3は、図1に示すように沈砂池1の幅方向中央に設けられ、除塵機2よりも下流側となる位置から所定方向に延在したものである。すなわち集砂ピット4に向かって延在したものである。このトラフ3に堆積した砂は、後述する吐出口から吐出される水の流れによって集砂ピット4まで移動させられる。図1には、吐出口の中心から上記所定方向に向かって延びる吐出軸Lが1点鎖線で示されている。言い換えれば、この吐出軸Lは、吐出口の中心線を所定方向に延長した延長線であり、本発明にいう軸の一例に相当する。
図1に示す沈砂池1は、トラフ3におけるこの吐出軸Lの部分を上方から覆う覆い部材38も備えている。この覆い部材38の長さはトラフの全長と同じであり、覆い部材38は、トラフ3に沿って延在したものである。覆い部材38についての詳しい説明は後述する。
また、トラフ3は、第1のU字状部材31と、第2のU字状部材32と、第3のU字状部材33と、第1の接続部材34と、第2の接続部材35とから構成されている。第1の接続部材34は、第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とを繋ぐものである。また、第2の接続部材35は、第2のU字状部材32と第3のU字状部材33とを繋ぐものである。本実施形態では、各U字状部材31,32、33の長手方向の長さはそれぞれ5mである。各U字状部材31、32、33は、板厚4mmのステンレス製の板材を、断面U字形状に成形したものである。
図3(a)は、第1のU字状部材31と第2のU字状部材32の接続箇所を中心にして示した斜視図である。この図3(a)では、トラフ3を透明なものとして表している。また、図3(b)は、同図(a)に示した接続箇所の部分断面図である。なお、図3における矢印は、砂の移動方向を示す。
図3(a)に示すように、この第1のU字状部材31と第2のU字状部材32は、下側部分となる半円筒状部分と上側部分となる2つの平面部分とから構成されている。第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とは、半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔が異なる。本実施形態では、第1のU字状部材31の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ300mmであり、第2のU字状部材32の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ350mmである。第1の接続部材34は、板厚4mmのステンレス製の板材を加工したものである。第1のU字状部材31と第1の接続部材34は溶接により接合されており、第2のU字状部材32と第1の接続部材34も溶接により接合されている。
図1及び図2に示した第3のU字状部材33と第2の接続部材35も板厚4mmのステンレス製の板材で形成されている。第3のU字状部材33の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ400mmである。なお、第2のU字状部材32と第3のU字状部材33の接続箇所は、図3(a)に示す接続箇所と大きさは異なるものの同一の構造なため説明は省略する。
第1のU字状部材31の内周面310、第2のU字状部材32の内周面320、第3のU字状部材33の内周面(図示省略)、第1の接続部材34の下流側面340、第2のU字状部材32の下流側面(図示省略)、および後述する端面壁36(図6(a)参照)の下流側面360によって溝形成壁30が構成されている。この溝形成壁30によって、沈砂池1の上流側から集砂ピット4まで長手方向に延在する溝Gが形成されており、溝Gの最も下流側端部は集砂ピット4に接続されている。この溝Gにおける底から3/4程度の高さ位置までの空間が移送経路として想定されている。
図3(b)に示すように、溝形成壁30の壁底部分300は、下流側の集砂ピット4に向かって段階的に深くなる階段形状を成している。この図3(b)でも、図の右側が上流側になり左側が下流側になる。壁底部分300は、階段形状の上段部となる第1の延在部301、階段形状の下段部となる第2の延在部302、およびこの階段形状の上段部と下段部とを繋ぐ段差部303とを有している。第1の延在部301と第2の延在部302は、長手方向に延在している。本実施形態では、第1の延在部301と第2の延在部302は、集砂ピット4に向かって水平に延在したものであるが、集砂ピット4に向かって下方に傾斜したものであってもよい。段差部303は、第1の延在部301と第2の延在部302に対して直角となっている部分である。段差部303には、水を吐出する第1の吐出口71が設けられている。この第1の吐出口71を段差部303に設けることで、上流側の吐出口(後述する第2の吐出口72)から水を吐出して溝Gの砂を移動させる際に、第1の吐出口71が砂の移動の妨げとなることを防止できる。なお、本実施形態における第1の吐出口71と第2の吐出口72の吐出口面積は、ともに2037mm2である。第1の吐出口71の上流側には、第1の吐出口71につながる空室75を形成する吐出ノズル7が設けられている。吐出ノズル7は、第1のU字状部材31の下部に固定されている。また、第1のU字状部材31の外周面311の一部が、吐出ノズル7の内壁の一部となっている。こうすることで、吐出ノズル7の構成を簡略化でき、吐出ノズル7の上下方向の厚みを薄くすることもできる。
図4(a)は、トラフ3と吐出ノズル7を表す図2のC−C断面図であり、図4(b)は、覆い部材38の下から図4(a)に示す部分を見た平面図である。なお、この図4(a)および図4(b)では、トラフ3と吐出ノズル7の板厚を誇張して表している。
図4(a)に示すように、吐出ノズル7は第1のU字状部材31よりも幅方向に突出した流体受入口76を備えている。この流体受入口76には、水を供給する第1の給水管21(図7参照)が接続されている。図4(b)に示すように空室75は平面視でL字状をしている。流体受入口76から空室75に流入した水は、空室75で流れの向きが下流側に変化して第2の延在部302と平行になり、第2の延在部302に沿って第1の吐出口71から吐出される。第2の延在部302に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
また、図4(a)に示すように、第1のU字状部材31における上方を向いた開口と、第2のU字状部材32における上方を向いた開口の高さ位置は揃えられている。すなわち、第1のU字状部材31の上縁312と第2のU字状部材32の上縁322の高さ位置は一致している。
さらに、この図4(a)には、断面が逆V字状の覆い部材38も示されている。すなわち、図4(a)には、第1のU字状部材31の上方に位置する第1覆い部材381と、第2のU字状部材32の上方に位置する第2覆い部材382が示されている。なお、ここには示されていないが、第3のU字状部材33の上方には第3覆い部材383(図5参照)が配置されている。以下の説明では、第1覆い部材381、第2覆い部材382、および第3覆い部材383を総称して覆い部材38と称する。覆い部材38は、吐出口から吐出された流体によって砂が巻き上がってしまうことを抑えるためのものである。この覆い部材38は、トラフ3の両側の上端それぞれに固定された支持部材39によって支持されている。支持部材39は、トラフ3の延在方向に所定間隔をあけて設けられており、トラフ3の延在方向における支持部材39と支持部材39の間37は、上方に開放している(図1参照)。支持部材39の延在方向の長さは、濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の長さであり、ここでは200mmである。支持部材39をこのような長さにしておくことで、濾過スクリーン23を通過した混入物(し渣)が支持部材200に巻き付くことが防止されている。また、支持部材39の配置位置は、少なくとも吐出口の下流側近傍に配置しておくことが好ましい。吐出口の下流側近傍では砂が最も巻き上がりやすく、支持部材39が覆い部材の機能も担って、より効果的に砂の巻き上がりを抑えることができる。なお、本実施形態では、覆い部材38と支持部材39は一体に形成されている。
覆い部材38は、1枚の板部材を90度折り曲げてなるものであり、トラフ3の幅方向両側それぞれに平板状の傾斜部380が形成されており、上端38aは尖っている。傾斜部380は、トラフ3の幅方向に下方へ向かって45度の角度で傾斜している。覆い部材38にも、砂が沈降してくるが、上端38aが尖っていることで砂がその上端38a部分に堆積しにくく、覆い部材38に沈降してきた砂は、傾斜部380をつたって、支持部材39と支持部材39の間37(図1参照)からトラフ3内に流れ落ちやすくなる。また、本実施形態における断面が逆V字状の覆い部材38の下端38bの高さ位置は、第1のU字状部材31の上縁312および第2のU字状部材32の上縁322の高さ位置に一致している。
なお、支持部材39にも覆い部材38と同様に傾斜部を設けておくことが好ましい。すなわち、支持部材39の上流側半分は上流側に向けて下方に傾斜させるとともに、下流側半分は下流側に向けて下方に傾斜させておくことが好ましい。こうしておくことによって、支持部材39に砂が堆積してしまうことも抑えることができる。
図5は、図2のD−D断面の池底部側を示す図である。先の図4もそうであったが、図5も、ちょうど支持部材39がない位置で断面したときの図である。また、この図5では背景を省略している。したがって、図5には、第3覆い部材383は示されているが、奥側に見えるはずの第1覆い部材381および第2覆い部材382は図示省略されており、同じく奥側に見えるはずの支持部材39も図示省略されている。
図5に示す様に、トラフ3の幅方向両側には傾斜面6が設けられている。この傾斜面6は、トラフ3に向かって下方に45度傾斜しており、沈砂池1の最上流端部から集砂ピット4の上流側端部の間で長手方向に延在している。沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく課程において池底部に沈降していく。傾斜面6に沈降した砂は、傾斜した傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって流れ落ち、沈降した砂を溝Gに集めることができる。図5には、傾斜面6に沈降した砂Sがトラフ3に向かって流れ落ち、トラフ3内に砂Sが堆積している様子が示されている。図5に示すトラフ3では、溝Gにおける底から半分程度の高さ位置までの砂Sが堆積しており、ここでは不図示の第3の吐出口73(図7参照)から水が吐出されると、トラフ3内が移送経路になる。なお、池底面の傾斜角度は、例えば30度であってもよく60度であってもよい。
また、図5には、支持部材39と支持部材39の間37(図1参照)における移送経路幅方向(トラフ幅方向)の長さを表す矢印Wが示されている。この長さも、濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の長さであり、ここでは100mmである。このような長さにしておくことで、傾斜面6に沿って流れ落ちてきた砂Sがトラフ3により流れ落ちやすく、また、上記間37が詰まってしまうことを防止することもできる。支持部材39と支持部材39の間37(図1参照)は、開放部分の一例に相当する。
図6(a)は、第1のU字状部材31の最上流端付近を拡大して示した部分断面図である。この図6(a)では、図の右側が上流側になり、図の左側が下流側になる。
図6(a)に示すように、第1のU字状部材31の最上流端部となる端面には、板状の端面壁36が取り付けられている。上述したように、端面壁36の下流側面360は、溝形成壁30の一部を形成している。
図6(b)は、図6(a)を左方から見た部分断面図である。すなわち、図6(b)は、端面壁36を下流側から見た図であり、紙面の奥側が上流側になる。
この図6(b)に示すように、端面壁36には、第2の吐出口72が設けられている。第2の吐出口72よりも上流側には、吐出口72につながる空室78を形成するL型管77が設けられている。このL型管77は、平面視でL字型をした管であり、水を供給する第2の給水管22(図7参照)が接続されている。空室78に流入した水は、空室78で流れの向きが下流側に変化して第1の延在部301と平行になり、第2の吐出口72から第1の延在部301に沿って吐出される。第1の延在部301に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
図7は、図1に示す沈砂池1に設けられた給水設備のブロック図である。
沈砂池1には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口71,72,73につながる各給水管21、22、23と給水ポンプPとの間には、分岐管24が設けられている。なお、図7には、第2のU字状部材32と第3のU字状部材33との段差部に設けられた第3の吐出口73と第3の給水管23が示されている。また、各給水管21、22、23には、それぞれ電動弁V1、V2、V3が設けられている。
次に、本実施形態における沈砂池1の作用について説明する。まず、沈砂池1に汚水が流れ込む。沈砂池1に流れ込んだ汚水は図2に示す除塵機2を通過する際に、その汚水に混入している混入物(し渣)が取り除かれる。除塵機2を通過した汚水は、トラフ3の上流端に到達し、トラフ3の延在方向に向かってさらに流れる。汚水は、トラフ3の上流側部分を流れる間に、汚水に含まれている砂が沈砂池1の池底部に沈降していく。上述したように、この部分では、傾斜した傾斜面6に沈降した砂も傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって流れ落ちる。また、覆い部材38まで沈降した砂は、傾斜部380をつたって、支持部材39と支持部材39の間37(図1参照)からトラフ3内に流れ落ちる。こうして、溝Gに砂が堆積する。
次に、給水ポンプPを駆動するとともに、電動弁V2を開く。この時、電動弁V1およびV3は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管24、第2の給水管22を経由して第2の吐出口72から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第1のU字状部材31の内周面310によって形成された溝G内の砂は、第2のU字状部材32の内周面によって形成された溝Gまで移動する。すなわち、砂は、移送経路を通って集砂ピット4側に移動する。砂が、移送経路を移動する際に、第2の吐出口72から吐出された水の勢いによって砂が巻き上がりそうになるが、浮き上がった砂は覆い部材38に当たって、それ以上は上方に行くことはなく溝G内に収まる。覆い部材38の傾斜部380は、移送経路の幅方向に傾斜したものであるため、第2の吐出口72から吐出された水を遮るものではない。また、その傾斜部380は、第2の吐出口72からの水の吐出方向に対向するようには配置されておらず、砂が傾斜部380に沿って巻き上がりにくい。
なお、本発明者の研究によれば、U字状部材の内周面底部が水深が2mの位置になるまで汚水を入れた沈砂池において、第1のU字状部材31と同形状のU字状部材を用い、そのU字状部材の上部から更に100mm程度まで砂を堆積させて、吐出流速16m/secで、吐出口から毎分3000リットル、毎分2000リットルおよび毎分1000リットルの水を吐出させた場合、むやみに吐出時間を増加しても効率良く砂を移動させることができず、効率よく砂を移動できる水の吐出時間は、5分程度であることがわかった。また、水の吐出時間を5分とした場合、毎分1000リットルの水を吐出すると砂の移動距離は6m強であり、毎分2000リットルでは砂の移動距離は約12mであり、毎分3000リットルでは砂の移動距離は約18mであることもわかった。
第2の吐出口72から5分間継続して水を吐出させたら、電動弁V2を閉じるとともに電動弁V1を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第1の吐出口71から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第2のU字状部材32の内周面320によって形成された溝G内の砂が、第3のU字状部材33の内周面によって形成された溝Gまで移動する。すなわち、砂は、移送経路を通って集砂ピット4側にさらに移動する。この際にも、第1の吐出口71から吐出された水の勢いによって砂が巻き上がりそうになるが、上述と同じく、覆い部材38によって巻き上がりが抑えられる。
その後、電動弁V1を閉じるとともに電動弁V3を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第3の吐出口73から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第3のU字状部材32の内周面によって形成された溝G内の砂が、集砂ピット4まで移動する。すなわち、砂は、移送経路を通って集砂ピット4側に到達する。この際にも、第3の吐出口73から吐出された水の勢いによって砂が巻き上がりそうになるが、上述と同じく、覆い部材38によって巻き上がりが抑えられる。
最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V3を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。
なお、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、そうはいっても各吐出口71、72、73における水の吐出流速がいくらでも良いわけではなく、その吐出流速は、8m/sec以上24m/sec以下とすることが好ましい。8m/sec未満では、さすがに流速不足になってきてしまい、水圧との関係では砂を所定距離移動させられない場合も生じる。砂を所定距離移動させられなくなると、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。24m/secよりも速くすると、支持部材39と支持部材39の間37(図1参照)から砂が上方へ出てきてしまう恐れがないとまでは言い切れないため、安全を見て、吐出流速は24m/sec以下に抑えることが好ましい。さらに、集砂水として汚水を使用する場合、配管が小口径となりごみが詰まってしまう虞がある。また、各吐出口71、72、73における水の吐出圧は、0.1MPa以上0.3MPa以下である。
以上説明したように、本実施形態の沈砂池1では、砂を十分に移動させながら覆い部材38によって砂の巻き上がりを抑えることができる。また、溝Gの延在方向(長手方向)に間隔をあけて各吐出口71、72、73を配置し、それぞれの吐出口71、72、73から毎分2000リットルの水を順に溝Gに吐出しているので、溝Gに堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
以下の説明では、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略する。
図8は、覆い部材の形状や配置位置、あるいはトラフの形状を変更した、本発明の実施形態の一例を示す図である。この図8ではトラフの幅方向は図の左右方向になる。また、トラフに形成された溝の下側の空間が移送経路になる。
図8(a)および同図(b)には、3/4の円弧状の内周面3051を有するトラフ305に、断面形状が桃の形の外郭線の上半分の形状の覆い部材385を配置した例が示されている。
図8(a)および同図(b)に示すトラフ305の内周面3051は、上端部分にトラフ幅方向中央側へ入り込んだ湾曲部3051aを有する。この湾曲部3051aは、トラフ305の内周面3051に沿って巻き上がろうとする砂に対してカエシとして作用し、同図(a)に示す矢印のように、内周面3051に沿って巻き上がろうとする砂は移送経路に戻される。
また、図8(a)および同図(b)に示す覆い部材385は、断面形状が栗の形の外郭線の上半分の形状であるともいえる。この覆い部材385も、トラフ305の幅方向(移送経路の幅方向)に下方へ向かって傾斜した傾斜部3851を有する。図8(a)および同図(b)に示す傾斜部3851は、90度の角度で開いており、下側部分は、曲面で構成されている。ここでは、その下側部分は、半径150mmの円弧状の曲面で形成されている。覆い部材385の上端385aは尖っており、その下端385bは、ほぼ真下、すなわち砂搬送経路を向いており、覆い部材385まで沈降した砂は、傾斜部3851をつたって、砂搬送経路に流れ落ちやすい。また、吐出口から吐出された水の勢いによってトラフ305の延在方向(所定方向)に巻き上がろうとする砂も、所定方向に延在した覆い部材385によってその巻き上がりが抑えられる。
図8(a)に示す覆い部材385は、下端385bの高さ位置が、トラフ305の上端3052の高さ位置に一致している。覆い部材385の下端385bと、トラフ305の上端3052との距離W1は、図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の長さであり、ここでは100mmである。
図8(b)に示す覆い部材385は、下端385bの高さ位置が、トラフ305の上端3052の高さ位置よりも下方であり、上端385aの高さ位置は、トラフ305の上端3052の高さ位置よりも上方である。すなわち、図8(b)に示す覆い部材385は、下端部分がトラフ305内に入り込んでいる。この覆い部材385は、トラフ305の上端3052から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W2離れており、ここでは140mm離れている。また、覆い部材385の下端385bも、トラフ305の内周面3051から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W3離れており、ここでは100mm離れている。なお、以上説明した距離W1〜W3はいずれも、トラフの幅方向の距離である。
図8(c)には、同図(a)や同図(b)に示すトラフの底部分の面積を狭くしたトラフ306に、同図(a)や同図(b)に示す覆い部材385を配置した例が示されている。
図8(c)に示すトラフ306の内周面3061も、上端部分に、カエシとして作用する湾曲部3061aを有する。また、図8(c)に示すトラフ306では、トラフの底部分の面積が狭いため、移送経路の底部の面積も狭くなり、その移送経路を砂が移動しやすくなっている。
また、図8(c)に示す覆い部材385は、下端385bの高さ位置が、トラフ306の上端3062の高さ位置よりも上方である。すなわち、この覆い部材385は、トラフ306よりも上方に配置されており、覆い部材385の下端385bは、トラフ306の上端3062から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W4離れている。ここにいう距離W4は、覆い部材385の下端385bとトラフ306の上端3062を結ぶ最短距離であり、ここでは100mm離れている。
図8(d)には、図3等に示すU字状のトラフ3に湾曲部を設けたトラフ307が示されている。すなわち、図8(d)に示すトラフ307の内周面3071は、外側を凸にして湾曲した湾曲部3071aと、上下方向中間部分になる平面部3071bと、底部分になる半円筒状部3071cを有する。この湾曲部3071aも、トラフ307の内周面3071に沿って巻き上がろうとする砂に対してカエシとして作用し、同図(d)に示す矢印のように、内周面3071に沿って巻き上がろうとする砂は移送経路に戻される。
図8(d)に示す覆い部材38は、図4(a)等に示す逆V字状の覆い部材38と同じものであり、平板状の傾斜部380が一対設けられている。この覆い部材38は、トラフ307よりも上方に配置されており、一対の傾斜部380の下端における幅方向の間隔L1は、トラフ307の開口の幅方向の長さL2よりも長い。また、覆い部材38の下端38bは、トラフ307の上端3072から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W5離れている。ここにいう距離W5も、距離W4と同じく最短距離であり、ここでは80mm離れている。吐出口から吐出された水の勢いによってトラフ307の延在方向(所定方向)に巻き上がろうとする砂も、所定方向に延在した覆い部材38によってその巻き上がりが抑えられる。
なお、これまで説明してきた例では、覆い部材の一対の傾斜部の下端における幅方向の間隔は、トラフの開口の幅方向の長さよりも短かったが、覆い部材がトラフよりも上記所定間隔以上上方にあれば、その間隔は、トラフの開口の幅方向の長さと同じであってもよい。
以上、図8を用いて説明したいずれの例においても、上記距離W1〜5が上記所定間隔以上であるため、図5に示す傾斜面6に沿って流れ落ちてきた砂がトラフにより流れ落ちやすく、また、ここでは図示されていない支持部材と支持部材の間37(図1参照)が詰まってしまうことを防止することもできる。
なお、トラフの形状は、この他に、半円形状に形成してもよく、上方が開口した矩形状であってもよく、下側に向かって曲率半径が小さくなる半卵形管形状としてもよい。半卵形管形状とした場合、石などの重量物が管の底部に沈降していても、その重量物を水の流れにより移動させやすいという効果がある。
また、覆い部材は、断面形状が、半円状のものであってもよいし、円弧状の曲線をつなぎ合わせた形状のものであってもよい。また、図8に示す覆い部材の傾斜部はいずれも90度の角度で開いていたが、30度以上90度以下の範囲に属する所定角度であってもよい。
図9(a)は、図8(d)に示す例の変形例を示す図である。
図9(a)には、図8(d)に示すトラフと同じトラフ307が示されている。また、この図9(a)には、トラフ307の幅方向両側に設けられた傾斜面6も示されている。この傾斜面6は、トラフ307に向かって下方にθ1(ここでは45度)傾斜している。図9(a)に示すように、トラフ307の開口307aは狭まっている。
図9(a)に示す覆い部材386は、逆V字状の覆い部材であるが、傾斜部3861の開いた角度(θ2)は60度である。また、この覆い部材386も、トラフ307よりも上方に配置されており、一対の傾斜部3861の下端386bにおけるトラフ幅方向の間隔L1は、トラフ307の開口のトラフ幅方向の長さL2よりも長く、トラフ307の開口307aは覆い部材386によって上下方向に間隔をあけて幅方向に完全に覆われている。さらに、この覆い部材386の下端386bは、傾斜面6から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W6離れている。ここにいう距離W6は、覆い部材386の下端386bと傾斜面6を結ぶ最短距離であり、ここでは100mm離れている。なお、覆い部材386の下端386bを、傾斜面6に対して、トラフ幅方向に上記所定間隔以上の距離W7離して設置してもよい。
図9(a)に示す変形例では、傾斜面6を滑って砂がトラフ307の開口307aから移送経路に落ち、落ちた砂が、吐出口から吐出された水の勢いによって内周面3071に沿って巻き上がりそうになっても、トラフ307の湾曲部3071aがカエシとして作用して、同図(a)に示す矢印のように、内周面3071に沿って巻き上がろうとする砂は移送経路に戻される。また、吐出口から吐出された水の勢いによってトラフ307の延在方向(所定方向)に巻き上がろうとする砂も、所定方向に延在した覆い部材386によってその巻き上がりが抑えられる。
図9(b)は、図8(c)に示す例の変形例を示す図である。
図9(b)には、図8(e)に示すトラフと同じトラフ306が示されている。また、図9(b)に示す覆い部材387は、図8(c)に示す覆い部材385と同じ形のものである。この覆い部材387は、トラフ306の開口306aを上下方向に間隔をあけて幅方向に完全に覆っている。図9(b)に示す覆い部材387の下端387bは、トラフ306の上端3062から図2に示す濾過スクリーン23における上記所定間隔以上の距離W8離れている。ここにいう距離W8は、覆い部材387の下端387bとトラフ306の上端3062を結ぶ最短距離であり、ここでは100mm離れている。
吐出口から吐出された水の勢いによって内周面3061に沿って巻き上がろうとする砂は、図9(b)に示す曲線の矢印のように、トラフ306の開口306aを一旦は飛び出したとしても覆い部材387の中で反転して移送経路に戻っていく。また、吐出口から吐出された水の勢いによってトラフ306の延在方向(所定方向)に巻き上がろうとする砂も、所定方向に延在した覆い部材387によってその巻き上がりが抑えられる。
以上説明した図9に示す例では、覆い部材の下端におけるトラフ幅方向の間隔は、トラフ(溝)の開口における幅方向の長さよりも長いが、その間隔はその長さと同じであってもよい。すなわち、覆い部材の下端におけるトラフ幅方向の間隔は、トラフ(溝)の開口における幅方向の長さ以上であればよい。
図10は、吐出ノズル7の変形例を示す部分断面図である。
この変形例では、吐出ノズル7の先端に、段差部303よりも溝G側に突出した吐出管79を設けている。この吐出管79の下流側端部には水を吐出する吐出口74が設けられている。この変形例では、吐出管79の、溝Gに突出している外形部分が、溝形成壁30の一部となる。なお、この変形例においては、吐出管79の、溝Gに突出している部分の真下に砂が堆積してしまうと、その砂を移動させることが困難になるという欠点がある。
また、上述の実施形態では、溝Gの延在方向における所定位置(5m間隔)毎に、吐出口71,72,73をそれぞれ一つづつ設けた例を説明したが、溝Gの延在方向における所定位置毎に複数の吐出口を設けてもよい。所定位置毎に複数の吐出口を設けた場合には、所定位置毎に設けられた複数の吐出口から吐出する水の総量が毎分2000リットルとなる。また、本実施形態では、トラフ3を一つのみ設けた例を説明したが、トラフ3を並列に複数設けてもよい。
また、各吐出口71、72、73から吐出する水は、毎分1000リットル以上3000リットル以下であることが好ましく、必ずしも毎分2000リットルである必要はない。毎分1000リットル未満の場合、溝Gに堆積した砂が殆ど移動しないことがある。毎分3000リットルよりも多いと、支持部材39と支持部材39の間37から砂が上方へ出てきてしまう恐れがないとまでは言い切れないため、ここでも安全を見て、水の吐出量は毎分3000リットル以下に抑えることが好ましい。このことをさらに詳細に説明すると、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、仮に、吐出流速を16m/secとした場合、吐出流量を毎分800リットルに落とすと、砂が所定距離移動しなくなるばかりか、吐出口やその吐出口につながる配管が小口径となり、集砂水として汚水を使用する場合、ごみが詰まってしまう虞がある。さらに、砂が所定距離移動しなくなるために、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。一方、吐出流速を同じく16m/secとした場合、吐出流量を毎分3200リットルに上げると、支持部材39と支持部材39の間37から砂が上方へ出てきてしまう恐れがないとまでは言い切れなくなる。
また、ポンプPを3台設け、各ポンプPを各吐出口71、72、73それぞれと接続し、各ポンプPから同時に水を供給してもよい。各ポンプPから同時に供給することで砂の移動時間を短縮することができる。なお、図8に示したように、各吐出口から吐出する水の量は、毎分1000リットル以上3000リットル以下の範囲内であることが好ましく、多い方が砂の移動距離を増加させることができる。ただし、既設の沈砂池を改修して吐出口を設置する場合、沈砂池の水位が上昇してしまわないように、吐出口から同時に吐出する水の量を揚水ポンプ51の揚水量よりも少なくすることが好ましい。換言すれば、吐出口から吐出される水の単位時間あたりの吐出量の総量を、該単位時間あたりにくみ上げる揚水ポンプを備えた態様であることが好ましい。
続いて、他の実施形態について説明する。以降の説明でも、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付し重複する説明は省略する。
図11は、第2実施形態である沈砂池10を幅方向の中央で切断した断面図である。この図11でも図の右側が上流側になり左側が下流側になる。
第2実施形態の沈砂池10は、先の実施形態の沈砂池1とは集砂ピット4を設けた位置が異なる。この沈砂池10は、集砂ピット4の上流側に上流側トラフ8を有し、集砂ピット4の下流側に下流側トラフ9を有している。また、先の実施形態とは異なり、上流側トラフ8および下流側トラフ9には、接続部材が存在せず、単体のU字状部材によって形成されている。上流側トラフ8と下流側トラフ9は、それぞれ板厚4mmのステンレス製の板材を、断面U字形状に成形したものである。この第2実施形態では、上流側トラフ8の長手方向の長さは7mであり、下流側トラフ9の長手方向の長さは8mである。
なお、上流側トラフ8よりもさらに上流側には、図2に示す除塵機2と同じ除塵機2が設置されているが、図11では図示省略されている。
また、上流側トラフ8および下流側トラフ9それぞれの上方には、図2等に示す覆い部材38と同じく断面形状が逆V時状の覆い部材38が設けられている。
上流側トラフ8の集砂ピット4とは反対側の端部および下流側トラフ9の集砂ピット4とは反対側の端部は、先の実施形態の説明で用いた図6(a)および図6(b)に示した構成と同一の構成をしており、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面に上流側吐出口81(図12参照)が設けられ、下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面に下流側吐出口91(図12参照)が設けられている。この第2実施形態では、上流側トラフ8の内周面と、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面によって上流側溝形成壁80が形成されている。この上流側溝形成壁80によって上流側の溝Gが形成されている。この上流側の溝Gの最も下流側端部は、集砂ピット4に接続されている。また、下流側トラフ9の内周面と下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面によって下流側溝形成壁90が形成されている。この下流側溝形成壁90によって下流側の溝Gが形成されている。この下流側の溝Gの最も上流側端部は、集砂ピット4に接続されている。上流側吐出口81(図12参照)から水が吐出されると、上流側トラフ8内が移送経路になり、下流側吐出口91(図12参照)から水が吐出されると、下流側トラフ9内が移送経路になる。
図12は、図10に示す沈砂池10に設けられた給水設備のブロック図である。
沈砂池10には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口81,91につながる各給水管25、26と給水ポンプPとの間には、分岐管27が設けられている。また、各給水管25、26には、それぞれ電動弁V4、V5が設けられている。
図11に示す沈砂池10では、給水ポンプPを駆動するとともに、まず最初に電動弁V4を開く。この時、電動弁V5は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管27、給水管25を経由して上流側吐出口81から吐出される。この吐出を5分間継続することで、上流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。次に、電動弁V4を閉じるとともに電動弁V5を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、下流側吐出口91から吐出される。この吐出を5分間継続することで、下流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。このように、砂は、上流側トラフ8内の移送経路および下流側トラフ9内の移送経路それぞれを通って集砂ピット4まで移動する。砂が、移送経路を移動する際に、吐出された水の勢いによって砂が巻き上がりそうになるが、浮き上がった砂は覆い部材38に当たって、それ以上は上方に行くことはなく溝G内に収まる。また、覆い部材38は、上流側吐出口81や下流側吐出口91から吐出された水を遮るものではない。さらに、覆い部材38は、上流側吐出口81や下流側吐出口91からの水の吐出方向に対向するようには配置されておらず、砂が覆い部材38に沿って巻き上がりにくい。最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V5を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。以上の動作を所定時間毎に繰り返す。
以上説明したように、第2実施形態の沈砂池10でも、砂を十分に移動させながら覆い部材38によって砂の巻き上がりを抑えることができる。また、上流側溝形成壁80の上流側端部に上流側吐出口81を配置し、下流側溝形成壁90の下流側端部に下流側吐出口91を配置して、それぞれの吐出口から毎分2000リットルの水を上流側の溝Gと下流側の溝Gに向かって吐出しているので、溝に堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。さらに、この沈砂池10では、集砂ピット4の上流側と集砂ピット4の下流側にそれぞれ溝Gを設けることで、溝Gにおける延在方向の長さが短くなる。溝Gにおける延在方向の長さを短くすることで、溝Gの途中に吐出口を省略でき、上流側トラフ8、下流側トラフ9の構造を簡略化できる。
なお、以上説明した沈砂池をまとめると、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝を形成する溝形成壁と、前記池底部に設けられ、前記溝が接続した集砂ピットと、前記溝形成壁に配置され、前記溝の延在方向における所定位置から該溝に流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニットとを備え、前記吐出口ユニットは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池であると言うこともできる。この沈砂池によれば、吐出口ユニットから毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するので、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
ここで、前記吐出ユニットが複数の吐出口からなるものである場合には、該複数の吐出口からの吐出量の単位時間当たりの総計が毎分1000リットル以上3000リットル以下であることになる。
また、前記突出口ユニットは、前記溝の延在方向に間隔をあけて前記溝形成壁に複数配置されていてもよい。
また、前記池底部は、前記溝に連なる底面を備え、前記底面は、前記溝に向かって下方へ傾斜したものであることが好ましい。前記底面が溝に向かって傾斜しているので、沈降した砂を溝に集めることができる。
また、前記溝形成壁は、壁底部分に前記集砂ピットに向かって延在した延在部を有するものであり、前記吐出口は、前記延在部に沿って流体を吐出するものであることが好ましい。こうすることで、砂を溝に沿って効率的に移動できる。
さらに、前記溝形成壁は、前記集砂ピットに向かって段階的に深くなる階段形状の壁底部分を有し、前記吐出口ユニットは、階段形状の壁底部分における上段部と下段部を繋ぐ段差部に配置されたものであることも好ましい。吐出口ユニットを段差部に配置することで、吐出口ユニットが砂の移動の妨げとならない。
またさらに、前記溝形成壁は、少なくとも一部が板状の部材の内周面からなるものであり、前記板状の部材の外周面の一部を前記吐出口ユニットにつながる内壁の一部とした吐出ノズルを備えていることも好ましい態様の一つである。この態様によれば、吐出ノズルの構成が簡略化できる上に、吐出ノズルの上下方向の厚みを抑制することができる。
また、これまで説明した沈砂池の集砂方法は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において該砂を集める集砂方法であって、前記砂を池底部に設けられた溝に沈降させる沈降ステップと、前記溝の延在方向における所定位置から流体を該溝に吐出し、該溝に沈降した砂を該溝に接続した集砂ピットに向けて該流体の流れにより移動させる集砂ステップとを有し、前記集砂ステップは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するステップであることを特徴とする沈砂池の集砂方法である。
図13は、第3実施形態である沈砂池100を集砂ピット側から見た模式図である。この図13では、紙面奥側が上流側になり紙面手前側が下流側になる。また、図11の左右方向が池幅方向になる。
第3実施形態の沈砂池100は、吐出口101から吐出される水の吐出圧が0.59MPa以上であるいわゆる高圧集砂の沈砂池である。図13には、吐出口101が4つ示されており、各吐出口101の中心から、ここでは不図示の集砂ピットが設けられた所定方向に延びる吐出軸Lも示されている。この吐出軸Lは紙面に対して垂直方向に延在した軸(延長線)である。また、この沈砂池100には、溝状のトラフは設けられておらず、池底部100aは平面である。砂の移送経路103は、池底部100aにおける吐出軸Lに沿った平面部分になる。図13では、移送経路103の延在方向も紙面に対して垂直方向になり、幅方向は、池幅方向と同じく図の左右方向になる。さらに、図13に示す沈砂池100にも、図4(a)等に示す覆い部材38と同じく断面形状が逆V時状の覆い部材38が設けられている。図13に示す覆い部材38も、移送経路103における吐出軸L上の部分を上方から上下方向に間隔を開けて覆うものであって、移送経路103の幅方向に下方へ向かって傾斜した傾斜部380を有する。
池底部100aに砂が堆積した状態で、吐出口101から高圧の水が吐出されると、砂は、移送経路103を通って不図示の集砂ピットまで移動する。この際、高圧の水であるが故に、吐出された水の勢いによって砂が巻き上がりやすいが、浮き上がった砂は覆い部材38に当たって、それ以上は上方に行くことはない。また、図13に示す覆い部材38も、吐出口101から吐出された水を遮るものではなく、吐出口101からの水の吐出方向に対向するようには配置されておらず、砂が覆い部材38に沿って巻き上がりにくい。このように、第3実施形態の高圧集砂を実施する沈砂池100においても、砂を十分に移動させながら覆い部材38によって砂の巻き上がりを抑えることができる。
ここまで説明してきた沈砂池は、
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、所定方向に延在し、沈降した砂が堆積する移送経路と、
前記移送経路に堆積した砂に対して、前記所定方向に流体を吐出する吐出口と、
前記移送経路における、前記吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる軸上の部分を、上方から覆う覆い部材と、
前記移送経路よりも水の受け入れ口側に配置され、受け入れた水に混入している混入物のうち所定の長さ以上の混入物の通過を遮る除塵機とを備え、
前記覆い部材は、前記移送経路の幅方向に下方へ向かって傾斜した傾斜部を有するものであり、
前記移送経路は、溝形成壁によって形成され、上端に常に開口を有する溝状のものであって、
前記覆い部材は、前記溝形成壁の上端から前記所定の長さ以上離れているものであることを特徴としてもよい。
上記沈砂地において、前記覆い部材は、下側部分が円弧状の曲面で形成されているものであってもよい。
また、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、所定方向に延在し、沈降した砂が堆積する移送経路と、
前記移送経路に堆積した砂に対して、前記所定方向に流体を吐出する吐出口と、
前記移送経路における、前記吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる軸上の部分を、上方から覆う覆い部材とを備え、
前記覆い部材は、前記移送経路の幅方向に下方へ向かって傾斜した傾斜部を有するものであり、
前記移送経路は、溝形成壁によって形成され、上端に常に開口を有する溝状のものであって、
前記溝形成壁は、上端部分に前記幅方向の中央側へ入り込んだ湾曲部を有するものであることを特徴としてもよい。
さらに、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、所定方向に延在し、沈降した砂が堆積する移送経路と、
前記移送経路に堆積した砂に対して、前記所定方向に流体を吐出する吐出口と、
前記移送経路における、前記吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる軸上の部分を、上方から覆う覆い部材とを備え、
前記覆い部材は、前記移送経路の幅方向に下方へ向かって傾斜した傾斜部を有するものであることを特徴としてもよい。
上記沈砂池によれば、傾斜部は、幅方向に傾斜したものであるため、吐出口から吐出される流体を遮るものではない。また、傾斜部は、上記吐出口からの流体の吐出方向に対向するようには配置されておらず、砂が傾斜部に沿って巻き上がりにくい。
ここで、前記覆い部材は、前記部分を上方から上下方向に間隔をあけて覆うものであることが好ましい。
前記傾斜部は、平板状であってもよいし、曲面状であってもよい。また、前記傾斜部は、曲面状である場合には、上方を凸にした湾曲形状であることが好ましい。
前記吐出軸は、前記移送経路全長にわたるものであるが、前記覆い部材は、該吐出軸の一部または全部を上方から覆うものである。なお、前記覆い部材は、前記移送経路に沿って設けられたものである。
前記移送経路は、平坦なものであってもよい。また、前記移送経路は、溝形成壁によって形成された、上端に開口を有する溝状のものであってもよい。なお、前記溝形成壁によって画定された空間総てを前記移送経路とするのではなく、該空間の下側の一部を前記移送経路としてもよい。また、前記傾斜部は、下端が、前記溝形成壁の上縁よりも上方に位置するものであってもよいし、該上縁と同じ高さに位置するものであってもよい。あるいは、前記傾斜部は、下端が、前記上縁よりも下方に位置するものであってもよく、この場合には、前記傾斜部の一部が前記溝形成壁によって画定された空間内に入り込んでいることになる。
また、前記池底部に設けられ、前記移送経路が接続した集砂ピットを備えた態様であってもよい。
さらに、前記覆い部材は、断面形状が、上下を逆さまにした逆V字状のものであってもよいし、桃あるいは栗の形の外郭線の上半分の形状のものであってもよいし、円弧状の曲線をつなぎ合わせた形状のものであってもよい。
また、上記沈砂池において、前記移送経路は、幅方向中央部分が前記覆い部材によって覆われ、幅方向両端部分が開放している態様であって、例えば、前記移送経路は、幅方向両端部分が上方に開放しているものであってもよい。
この態様によれば、前記吐出口の中心は幅方向中央部分に位置し、沈降してきた砂は上方に開放した幅方向両端部から移送経路に入り込み、移送経路に堆積する。
また、上記沈砂池において、前記移送経路は、溝形成壁によって形成された、上端に開口を有する溝状のものであって、
前記溝形成壁は、上端部分に前記幅方向中央側へ入り込んだ湾曲部を有するものである態様が好ましい。
すなわち、前記湾曲部は、溝状の移送経路の外側を凸にして湾曲したものであり、溝形成壁に沿って巻き上がろうとする砂に対してカエシとして作用し、溝形成壁に沿って巻き上がろうとする砂は移送経路に戻される。
また、上記沈砂池において、前記覆い部材は、上端が尖ったものであることが好ましい。
上端が尖っていることで、上記覆い部材に砂が堆積しにくく、上記覆い部材に沈降してきた砂は上記傾斜部をつたって上記移送経路に流れ落ちやすくなる。
さらに、上記沈砂池において、前記移送経路よりも水の受け入れ口側に配置され、受け入れた水に混入している混入物のうち所定の長さ以上の混入物の通過を遮る除塵機を備え、
前記移送経路は、溝形成壁によって形成された、上端に開口を有する溝状のものであって、
前記覆い部材は、前記溝形成壁の上端から前記所定の長さ以上離れているものであることが好ましい。
こうすることで、沈降してきた砂が、開放部分から移送経路により入り込みやすくなり、また、開放部分が詰まってしまうことを防止することもできる。
なお、前記覆い部材は、下端部分が前記溝形成壁の上端部分から前記所定の長さ以上離れているものであってもよい。あるいは、前記移送経路は、幅方向両端部分が、幅方向に見て前記所定の長さ以上開放しているものであってもよい。