以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の移送システムの一実施形態である沈砂池は、下水処理システムの上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
図1は、本発明の移送システムの一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図であり、図2は、図1に示す沈砂池のA−A断面図である。
図1に示すように、沈砂池1は、除塵機2と、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図1に示す沈砂池1は、図の右側から汚水を受け入れ、受け入れた水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図1および図2に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈砂池の長手方向が水の流れの方向になり、図1および図2では図の右側が沈砂池における水の流れの上流側になり左側が下流側になる。また、後述する吐出口からは、図1および図2の右側に水が吐出される。すなわち、図1および図2では図の右側が吐出方向下流側になり左側が吐出方向上流側になる。
除塵機2は、沈砂池1に流れ込んできた汚水に混入している混入物のうち、し渣等を除去するためのものであり、トラフ3よりも上流側に設置されている。除塵機2は、無端チェーン21と、その無端チェーン21に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ22と、水中に没するろ過スクリーン23とを有する。無端チェーン21は、沈砂池1の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、図2に示すように、地上側スプロケット211と、池底側スプロケット212に巻きかけられている。無端チェーン21が駆動すると、レーキ22は水中を出入りする。ろ過スクリーン23は、無端チェーン21の下流側に配置されている。このろ過スクリーン23は、上下方向に延びるバーが所定の目幅(例えば、25mm〜75mm)で並べられたものであり、この目幅以上の大きさの混入物の通過を遮る。すなわち、ろ過スクリーン23は、本発明にいうスクリーン部材の一例に相当する。本実施形態では、ろ過スクリーン23の目幅は、75mmに設定されている。このろ過スクリーン23で遮られた混入物は、レーキ22によって掻き揚げられ、掻き揚げられた混入物は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。
除塵機2の下流側には、池下部1aに堆積した砂が集められる集砂ピット4が設けられている。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底面近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。すなわち、揚砂ポンプ41は、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1に受け入れた水の外に排出するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂と汚水は、揚砂管42を通して、沈砂池1外に設けられた不図示の沈砂分離機に送られ、この沈砂分離機によって砂と汚水が分離される。すなわち、揚砂ポンプ41は、本発明にいう、受け入れた水の外に混入物を排出する排出手段の一例に相当する。本実施形態の揚砂ポンプ41には、排出量(吐出量)が2.0m3/分のものが用いられている。
トラフ3は、集砂ピット4とポンプ井5の間に設けられている。すなわち、トラフ3は、集砂ピット4よりも下流側であって、ポンプ井5よりも上流側に設けられている。このトラフ3は、沈砂池1の池下部1a(図2参照)に設けられた溝である。池下部1aには、後述するように傾斜面6が設けられ、傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、池下部1aに向かって沈降し、池下部1aに堆積する。
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底面が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に移動するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して、不図示の沈殿池に送られる。図2に示すWLは汚水の水面を表している。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底部からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
トラフ3は、図1に示すように沈砂池1の幅方向中央に設けられ、ポンプ井5よりも上流側となる位置から所定方向に延在した溝である。トラフ3の吐出方向下流側の端部は集砂ピット4に接続されており、トラフ3内に堆積した砂は、後述する吐出口から吐出される水の流れによって集砂ピット4まで移動させられる。
また、図1および図2に示す沈砂池1は、トラフ3内に移送空間形成部材8も備えている。この移送空間形成部材8の全長はトラフ3の全長と同じであり、移送空間形成部材8は、トラフ3に沿って延在したものである。移送空間形成部材8についての詳しい説明は後述する。
図3(a)は、図2におけるB−B断面図である。この図3(a)では図の左右方向がトラフ3の幅方向になる。
図3(a)には、池下部1aに設けられた傾斜面6の下部と、その傾斜面6につながるように設けられたトラフ3が示されている。図3(a)に示すように、傾斜面6は、トラフ3の幅方向両側に設けられている。この傾斜面6は、トラフ3に向かって下方に45度傾斜したコンクリート製のものであり、ポンプ井5よりも上流側となる位置と集砂ピット4との間で長手方向に延在している。なお、傾斜面6の傾斜角度は、例えば30度であってもよく60度であってもよい。
また、トラフ3は、図3(a)に示すように、3/4円弧の断面形状をもった、全長15m程度の溝であり、堆積空間S1を画定する画定面31を内周に備えている。このトラフ3は、ステンレス製等の板材を曲げ加工することによって形成したものであるが、傾斜面6と一体にコンクリートで形成したものであってもよい。また、トラフ3の断面形状は円弧状に限られず、U字状やV字状等であってもよい。図3(a)に示すトラフ3は、直径356mm程度の円筒体の上方(液面側)1/4を切り欠いた形状のものであり、上方に向かって開口している。以下、上方に向かって開口している部分をトラフ3の開口3aと称する。トラフ3内の堆積空間S1のうち、上端の開口3aにつながる上端部分3bは、その開口3aに近づくほど狭くなっている。すなわち、トラフ3の開口3aは、トラフ3の延在方向に直交する幅方向に絞られた開口である。
沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく過程において池下部1aに沈降していく。池下部1aに沈降してきた砂のうち、傾斜面6に沈降した砂は、傾斜面6に沿ってさらにトラフ3に向かって流れ落ち、トラフ3の開口3aから堆積空間S1に入り込む。したがって、池下部1aに沈降してきた砂は、まずは、トラフ3の堆積空間S1に集められる。
図3(a)に示す移送空間形成部材8は、3/4円弧の断面形状をもったものである。この移送空間形成部材8は、板厚が3mm〜4mm程度のステンレス製の板材を、断面円弧状に成形したものである。図3(a)に示す移送空間形成部材8は、直径156mm程度の円筒体の下方(池下部側)1/4を切り欠いた形状のものであり、堆積空間S1内において、画定面31のうちの底部31aに向って開口している。すなわち、移送空間形成部材8の下端は、底部31aに向って開口したものであり、以下、この開口している部分を吸込口81と称する。この吸込口81における、トラフ3の幅方向の長さLは、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下の範囲の中で設定されるものであり、本実施形態においては、長さLは100mm程度に設定されている。以下、吸込口81における、トラフ3の幅方向の長さLを、単に、吸込口の長さLと称することがある。また、吸込口81は、トラフ3の画定面31から離間したものである。
移送空間形成部材8は、トラフ3内の空間を仕切るものであって、下端より上の部分が閉塞した移送空間S2を形成するものである。移送空間形成部材8の上端部分82は閉じているが、円弧状であり、下方へ向かって傾斜している。この移送空間形成部材8にも、砂が沈降してくるが、円弧状であるため、砂が堆積しにくく、移送空間形成部材8に沈降してきた砂は、円弧状の側面80をつたって、画定面31の底部31aに向かって流れ落ちやすくなる。また、円弧状の側面80によって、移送空間S2は、吸込口81につながる下端部分が、その吸込口81に近づくほど狭くなっている。
ここで、図1および図2に示すように、トラフ3の下方には、支持台91が、トラフ3の延在方向において5m程度おきに設けられている。
図3(b)は、同図(a)におけるC−C断面図である。この図3(b)では図の左右方向がトラフ3の延在方向になり、図の右側が上流側(集砂ピット4側)になり左側が下流側(ポンプ井5側)になる。
図3(a)に示すように、移送空間形成部材8は、吸込口81の両脇になる下端83が支持台91によって支持されている。支持台91は、画定面31の最深部である底部31aに設けられたコンクリート製のものである。同図(b)に示すように、支持台91は、上流側傾斜面911と下流側傾斜面912を有するとともに、上流側傾斜面911と下流側傾斜面912の間に支持部913を有する。移送空間形成部材8の下端83は、この支持部913に支持されている。同図(a)に示すように、支持部913の幅方向中央には水平面9131が設けられているが、その水平面9131の両側は、トラフ3に向かって下方へ傾斜している。
図3(a)に示す移送空間形成部材8は、下端83が支持台91によって支持されることによって、吸込口81と底部31aとの上下方向の間隔C1を有している。この間隔C1も、吸込口81の長さLと同様に、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下の範囲の中で設定されるものである。本実施形態においては、移送空間形成部材8は、その径方向の中心が、トラフ3の径方向の中心よりも下方の位置とされ、間隔C1は100mm程度に設定されている。
また、本実施形態では、トラフ3の幅方向において、移送空間形成部材8の径方向の中心は、トラフ3の径方向の中心に一致し、トラフ3の画定面31と移送空間形成部材8との隙間C2は、最も狭い位置でも、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上は確保されている。本実施形態においては、隙間C2は、最も狭い位置でも、80mm程度は確保されている。吸込口81の長さL、吸込口81と底部31aとの上下方向の間隔C1、および画定面31と移送空間形成部材8との隙間C2は、ろ過スクリーン23の目幅(ここでは75mm)以上であるため、上流側のろ過スクリーン23を通過した混入物が、吸込口81、吸込口81と底部31aとの間、あるいは画定面31と移送空間形成部材8との間に詰まってしまうことが抑えられる。
さらに、移送空間形成部材8内の移送空間S2には、その移送空間S2内に流体を吐出する吐出口7が設けられている。この吐出口7は、直径50mm弱のパイプ状の給水管71の先端を扁平につぶした長孔形状のものである。吐出口7の横方向(トラフ幅方向)の最大開口長は60mm弱程度である。吐出口7をこのような扁平な形状にすることで、真円の形状のものよりも、流速を高めた範囲を広く確保することができる。なお、吐出口7は、直径80mm弱程度の給水管の先端を扁平につぶしたものであってもよい。図2に示すように、給水管71は、沈砂池1外の図示しない給水源から移送空間形成部材8に接続したものである。また、図3(a)に示すように、給水管71は、傾斜面6に沿ってトラフ3の開口3a付近まで下方に延在した後、トラフ3の幅方向中央に向って略水平状に延在し、さらに、トラフ3の幅方向中央で下方に向かって折れ曲がり、今度は、移送空間形成部材8を貫通し、移送空間S2内に入り込んでいる。
給水管71の、移送空間S2内に入り込んだ部分711は、支持台91の水平面9231まで下方へ延び、移送空間形成部材8の吸込口81の近傍で上流側(集砂ピット4側)に向けて水平面9131上に載置されるように水平に折れ曲がっている。給水管71の、移送空間S2内に入り込んだ部分711の上流側(集砂ピット4側)には、矩形状の巻付防止板95が立設されている。また、トラフ3の幅方向中央に向って略水平状に延在し、トラフ3の幅方向中央で下方に向かって折れ曲がり移送空間形成部材8まで下方に延在したL字状部分712の上流側(集砂ピット4側)には、矩形の板材をL字状に折り曲げた第2巻付防止板96が取り付けられている。これら巻付防止板95や第2巻付防止板96によって、給水管71の、移送空間S2内に入り込んだ部分711やL字状部分712に、紐状の混入物(例えば、髪の毛やビニール紐)が巻き付くことを防止している。なお、給水管71の、傾斜面6に沿って延在した部分は、傾斜面6に接触させることにより紐状の混入物が巻き付くことを抑えることができる。
本実施形態の吐出口7は、移送空間形成部材8の径方向の中心よりも下方に位置しており、具体的には、吸込口81よりやや上方、或いは吸込口81と略同じ高さに位置している。この吐出口7からは、水平方向あるいは略水平方向に水が吐出される(図3(b)中の右向きの矢印参照)。すなわち、図3(b)では、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。なお、吐出口7の上下方向の位置は、移送空間形成部材8の径方向の中心と同じにしてもよいし、移送空間形成部材8の径方向の中心よりも上方にしてもよい。ここで、吐出口7から吐出される水の量は、揚砂ポンプ41の排出量(ここでは、2.0m3/分)以下に設定される。吐出口7から吐出される水の量を揚砂ポンプ41の排出量以下にすることにより、沈砂池1に貯留される水の量が不用意に増加してしまうことを防ぐことができる。また、吐出口7から吐出される水の量は、0より大きく、3.0m3/分以下に設定することが好ましい。本実施形態の吐出口7は、1.5m3/分程度の水が吐出されるように設定されている。
吐出口7から移送空間形成部材8の移送空間S2内に水が吐出されることで、トラフ3内の堆積空間S1に堆積した砂は、図3(a)に示す曲線の矢印のように、吸込口81から移送空間S2内に吸い込まれる。ここで、吸込口81は、堆積空間S1内で開口しているため、堆積空間S1に堆積した砂を効率よく移送空間S2内に吸い込むことができる。また、仮に、移送空間S2内を吐出方向下流側に向って移動する砂が、吐出方向下流側で吸込口81から漏れ出したとしても、堆積空間S1内に留まりやすい。さらに、上述したように、吸込口81の長さLを125mm以内に設定しているため、この長さLが長すぎて堆積空間S1に堆積した砂が、吸込口81から移送空間S2内に吸い込まれにくくなることを防ぐことができる。また、吸込口81と底部31aとの上下方向の間隔C1を125mm以内に設定しているため、この間隔C1が大きすぎて、堆積空間S1内に堆積した砂が移送空間S2内に吸い込まれ難くなることが抑えられる。さらに、移送空間S2内では、吸い込まれた砂が、吐出口7から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(集砂ピット4側)に向かって移動する。図3に示すように、吸込口81は、幅方向(移送空間形成部材8の延在方向に直交する方向)に絞られた開口であって、移送空間S2はその吸込口81から拡がった空間である。このように吸込口81が絞られた開口であることによって、移送空間S2内を移動する砂がその移送空間S2内から外に出にくくなり、砂の巻き上がりがより抑えられる。また、移送空間S2内における水の流れを維持しやすくなり、砂をより遠くまで移動させることができる。さらに、吸込口81の長さLを125mm以内にすることにより、移送空間S2内を移動する砂がその移送空間S2内から外に出にくくなり、砂の巻き上がりがより抑えられる。また、吐出口7からの水の吐出量を、3.0m3/分以下にすることによっても、移送空間S2内を移動する砂がその移送空間S2の外により出にくくすることができる。
以上説明した支持台91における吐出口7の構造は、図1および図2に示す、トラフ3の延在方向に5m程度の間隔をあけて設けられたいずれの支持台91においても同様である。以下、吐出方向において最も上流側に設けられた吐出口7を上流吐出口と称し、吐出方向において最も下流側に設けられた吐出口7を下流吐出口と称し、上流吐出口と下流吐出口との間に設けられた吐出口7を中間吐出口と称して区別することがある。
本実施形態の沈砂池1では、沈砂池1に流れ込んだ汚水は図2に示す除塵機2を通過する際に、その汚水に混入している混入物のうち、ろ過スクリーン23の目幅(ここでは75mm)より大きい混入物(し渣等)が取り除かれる。除塵機2を通過した汚水は、集砂ピット4を越えて、トラフ3の上流端に到達し、トラフ3の延在方向に向かってさらに流れる。汚水は、トラフ3の上流側部分を流れる間に、汚水に含まれている砂の多くが沈砂池1の池下部1aに沈降していく。集砂ピット4に沈降する砂もあれば、傾斜面6に沈降する砂もあり、傾斜面6に沈降した砂は傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって流れ落ちる。また、移送空間形成部材8の上端部分82まで沈降した砂は、移送空間形成部材8の円弧状の側面80をつたって、画定面31の底部31aに向かって流れ落ちる。こうして、トラフ3の堆積空間S1内に砂が堆積する。本実施形態の沈砂池1では、例えば、下流吐出口、中間吐出口、下流吐出口、上流吐出口、中間吐出口、下流吐出口の記載順に、それぞれ所定時間(例えば3分間)水を吐出することによって、堆積空間S1内に堆積した砂が、移送空間S2を通って集砂ピット4まで移動させられる。集砂ピット4まで移動させられてきた砂は、揚砂ポンプ41によって沈砂池1外に排出される。
次に、図1〜図3に示す沈砂池1の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、図1〜図3に示す実施形態との相違点を中心に説明し、図1〜図3に示す実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図4(a)は、沈砂池の第1変形例における、図3(a)に対応した態様を示す断面図である。この図4(a)でも図の左右方向がトラフの幅方向になる。本変形例では、主に、移送空間形成部材がトラフの一部によって構成されている点が、図1〜図3に示す実施形態と相違する。
図4(a)に示すように、トラフ3’は、それぞれ5/8円弧の断面形状をもつ、第1円弧状部材30aと第2円弧状部材30bとを有している。第1円弧状部材30aと第2円弧状部材30bは、ステンレス製等のパイプ材の一部を切り欠いて形成したものである。第1円弧状部材30aは、厚さが3mm〜4mm程度、直径が250mm程度のパイプ材における、時計の短針がさす、9時から、1時と2時との間までの部分(3/8円弧)を切り欠いたものである。また、第2円弧状部材30bは、厚さが3mm〜4mm程度、直径が150mm程度のパイプ材における、時計の短針がさす、4時と5時との間から9時までの部分(3/8円弧)を切り欠いたものである。トラフ3’は、第1円弧状部材30aにおける上記9時に相当する端部に、第2円弧状部材30bにおける上記9時に相当する端部を突き合わせて接合することによって形成されている。第1円弧状部材30aにおける、時計の短針がさす、9時から、7時と8時との間までの部分(1/8円弧)と、第2円弧状部材30bとによって、移送空間形成部材8’が構成されている。すなわち、移送空間形成部材8’は、時計の短針が指す、7時と8時との間から、4時と5時との間までの部分(6/8円弧)を有するものである。この移送空間形成部材8’によって、下端より上の部分が閉塞した移送空間S2が画定されている。また、第1円弧状部材30aは、移送空間形成部材8’を構成しない、時計の短針が指す、7時と8時との間から、1時と2時との間までの部分(4/8円弧)の内周に、堆積空間S1を画定する画定面31を備えている。この画定面31の最深部である底には底部31aを有している。以下、図4(a)に示す、画定面31の、幅方向における左側半分を画定面31の一端側と称し、画定面31の、幅方向における右側半分を画定面31の他端側と称する。すなわち、移送空間形成部材8’は、画定面31の、幅方向における一端側に接続する一方、画定面31の、幅方向における他端側とは離間したものである。これにより、移送空間形成部材8’を支持する部材を省略することができ、トラフ3’の全長にわたり、移送空間形成部材8’を支持する部材によって堆積空間S1内への砂の沈降が阻害されることがなくなる。また、画定面31の他端側と移送空間形成部材8’との間は、上方に向かって開口し、この上方に向かって開口している部分がトラフ3’の開口3aになる。
移送空間形成部材8’は、下方に向かって開口しており、この下方に向かって開口している部分が移送空間形成部材8’の吸込口81になる。すなわち、吸込口81は、堆積空間S1内で開口したものであり、かつ、画定面31のうちの底部31aに向って開口したものである。この吸込口81の長さLと、吸込口81と底部31aとの上下方向の間隔C1は、いずれも図1および図2に示すろ過スクリーン23の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下の範囲の中で設定されるものである。本実施形態においては、長さLは100mm程度に設定され、間隔C1は80mm程度に設定されている。
また、上述のごとく、本実施形態のトラフ3’は、直径が250mm程度の第1円弧状部材30aと、直径が150mm程度の第2円弧状部材30bとを接合することによって形成されている。したがって、画定面31の他端側と移送空間形成部材28との隙間C2は、100mm程度になっている。すなわち、この隙間C2は、図1および図2に示すろ過スクリーン23の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下になっている。本変形例では、トラフ3’の一部が移送空間形成部材8’を構成しているため、画定面31の他端側と移送空間形成部材28との隙間C2を確保しやすく、この結果、トラフ3’の幅方向における大きさを抑えることができる。なお、図4(a)に示す変形例における、画定面31の他端側と移送空間形成部材28との隙間C2は、画定面31の他端側と移送空間形成部材28との幅方向の間隔になっている。
図4(b)は、同図(a)におけるD−D断面図である。この図4(b)では図の左右方向がトラフ3’の延在方向になり、図の右側が上流側(集砂ピット4側)になり左側が下流側になる。
図4(a)および同図(b)に示すように、移送空間形成部材8’まで下方に延在した給水管71’は、下端部分が移送空間形成部材8’の上端部分82を貫通し、移送空間S2と連通している。また、移送空間S2における、給水管71’が連通する領域には、移送空間S2内に流体を吐出する吐出口7’が設けられている。この吐出口7’は、移送空間形成部材8’における移送空間S2の上側部分を、仕切部材72で仕切ることによって形成されている。仕切部材72は、トラフ3’の延在方向に水平な状態で延在した水平部721と、この水平部721の下流側の端部から上方に向けて傾斜した傾斜部722を有している。水平部721は、移送空間形成部材8’の内周面における、上端部を挟んだ幅方向の両側に接続し、その上流側(集砂ピット4側)の端部が給水管71の下端部分よりも上流側に位置している。また、傾斜部722は、その下流側の端部が、移送空間形成部材8’の内周面における、給水管71の下端部分が接続した部分よりも下流側に接続し、吐出口7’の下流側を閉塞している。これらによって、移送空間形成部材8’の移送空間S2における、給水管71’が連通する領域が、仕切部材72によって仕切られている。なお、本変形例においても、図4(a)および同図(b)に示す吐出口7’に代えて、図3に示す吐出口7を用いてもよい。
吐出口7’からは、給水管71’から供給された水が、上流側に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される(図4(b)中の右向きの矢印参照)。すなわち、図4(b)では、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。吐出口7’から移送空間形成部材8’の移送空間S2内に水が吐出されることで、堆積空間S1に堆積した砂は、図4(a)に示す曲線の矢印のように、吸込口81から移送空間S2内に吸い込まれる。さらに、その移送空間S2内では、吸い込まれた砂が、吐出口7’から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(集砂ピット4側)に向かって移動する。
次に、沈砂池の第2変形例について説明する。
図5は、第2変形例の沈砂池を幅方向に切断した状態を示す断面図である。この図5では、図の左右方向が沈砂池の幅方向になる。第2変形例では、主に、池下部にトラフが設けられていない点が、図1〜図3に示す実施形態と相違する。
図5に示すように、沈砂池1の池下部1aには、平面状の底面12が設けられている。また、沈砂池1の、対向する一対の側壁11の下端部分それぞれには、上方に向うにつれて幅方向に拡がるように傾斜した傾斜面11aが設けられている。これら傾斜面11aそれぞれの下端部は底面12に接続している。この底面12における、幅方向の中央部分には、堆積空間形成部材13が配置されている。この堆積空間形成部材13は、略直角に接続された一対の傾斜片を備えたアングル状のものである。堆積空間形成部材13は、角部が上方を向く姿勢で、それぞれの先端部が底面12に固定されている。堆積空間形成部材13は、池下部1aの長手方向全体に延在したものである。第2変形例では、側壁11の傾斜面11a、堆積空間形成部材13および底面12によって、池下部1aの長手方向全体にそれぞれ延在した2つの堆積空間S1が画定されている。すなわち、傾斜面11a、堆積空間形成部材13、および底面12における、傾斜面11aと堆積空間形成部材13との間の部分が、本発明にいう、画定面に相当する。また、傾斜面11aと堆積空間形成部材13が、本発明にいう斜部に相当し、底面12のうち、傾斜面11aと堆積空間形成部材13との間の部分が、本発明にいう底部に相当する。以下、底面12のうち、傾斜面11aと堆積空間形成部材13との間の部分を底部12aと称する。
沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、池下部1aに向かって沈降して堆積空間S1内に入り込み、側壁11の傾斜面11aや堆積空間形成部材13を伝って流れ落ちて堆積空間S1内に堆積する。ここで、側壁11の傾斜面11aや堆積空間形成部材13の傾斜角度は特に限定されるものではないが、本変形例では、いずれも45度に設定されている。また、堆積空間形成部材13は、ステンレス等の金属製のものであるが、底面12と一体にコンクリートで形成したものであってもよい。また、側壁11の傾斜面11aや堆積空間形成部材13は、円弧状の断面形状を有するものであってもよい。
それぞれの堆積空間S1には、図3に示す移送空間形成部材8と形状や大きさが同じ移送空間形成部材8が、支持台91によって支持されている。この支持台91は、図3に示す支持台91と同様のものであり、池下部1aの長手方向に5m程度の間隔をあけて複数設けられている。給水管71’’は、支持台91の下方から上方に延び、水平面9131を貫通すると同時に上流側へ折れ曲がり、水平面9131に載置されるように、上流側を向いた吐出口7が形成されている。この吐出口7も扁平な長孔形状のものである。
移送空間形成部材8の吸込口81の長さLは、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下の範囲の中で設定され、本変形例においても、長さLは100mm程度である。また、移送空間形成部材8の吸込口81は、堆積空間S1内で開口するとともに、底部12aに向って開口している。吸込口81と底部31aとの上下方向の間隔C1も、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上125mm以下の範囲の中で設定され、本変形例においても、間隔C1は100mm程度である。
底部12aは、幅方向の長さが吸込口81の幅方向の長さよりも長いものである。また、傾斜面11aが底部12aに接続する部分と、堆積空間形成部材13が底部12aに接続する部分のいずれも、吸込口81との幅方向の距離Dが125mm以下に設定され、本変形例では、80mm程度である。これにより、堆積空間S1に堆積した砂が、吸込口81からの距離が遠くなることによって移送空間S2内に吸い込まれにくくなることを防ぐことができる。
また、傾斜面11aと直交する方向の、移送空間形成部材8と傾斜面11aとの隙間C22、および堆積空間形成部材13と直交する方向の、移送空間形成部材8と堆積空間形成部材13との隙間C21が、最も狭い個所でも、スクリーン部材(ここではろ過スクリーン23)の目幅(ここでは75mm)以上に設定され、本変形例では、隙間C21,C22を100mm程度は確保している。
以上説明した本実施形態の沈砂池1によれば、砂を十分に移動させながら砂の巻き上がりを抑えることができる。
次に、本発明の移送システムの第2実施形態である沈殿池について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。沈殿池は、下水処理システムにおける、沈砂池の下流側に配置され、沈砂池によって砂が除去された汚水を受入れ、受け入れた汚水に含まれる汚泥を沈降させた後、沈降させた汚泥を汚泥ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
図6は、本発明の移送システムの第2実施形態である沈殿池を上方から見た平面図である。図7は、図6に示す沈殿池のE−E断面図であり、図8は、図6に示す沈殿池のF−F断面図である。
図6に示すように、沈殿池10は、汚泥ピット14を備えた平面視長方形状の池である。以下、沈殿池10の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図6では図の左右方向が沈殿池10の長手方向になり、図の上下方向が沈殿池10の幅方向になる。また、図7では図の左右方向が沈殿池10の長手方向になり、図8では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。
図6および図7に示す沈殿池10では、受け入れた水は図の左側に向って、例えば、0.03m/min〜0.5m/min程度の流速でゆっくり流れていく(図6および図7に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈殿池の長手方向が水の流れの方向になり、図6および図7では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。この沈殿池10は、幅方向に延在し上流側に位置する上流壁10hと、長手方向に延在した一対の側壁10c(図6参照)と、幅方向に延在し下流側に位置する下流壁10gとを有し、長手方向の長さが35m程度、幅方向の長さが25m程度である。図7に示すように、下流壁10gには、オーバーフロー用の堰100gが設けられている。この堰100gを乗り越えた汚水は、例えば、下水処理システムの反応タンク等に送られる。また、図6に示すように、上流壁10hには、図示しない導水渠に連通した開口部100hが設けられている。
図6および図8に示すように、沈殿池10の上流側における幅方向の中央部分には、汚泥ピット14が設けられている。汚泥ピット14の外部には、不図示の汚泥ポンプが設けられ、この汚泥ポンプの不図示の吸込口が汚泥ピット14に配設されている。汚泥ピット14に集められた汚泥は、汚泥ポンプを駆動させることによって吸込口から吸込まれ、沈殿池10の外部に搬送される。すなわち、汚泥ポンプが、本発明にいう、混入物を、受け入れた水の外に排出する排出手段の一例に相当する。本実施形態の汚泥ポンプには、排出量(吐出量)が2.0m3/分のものが用いられている。また、図6および図8に示すように、汚泥ピット14の幅方向両側には、それぞれ幅方向に延在し汚泥ピット14に接続した一対の集積溝141が設けられている。これら集積溝141それぞれは、自身の幅になる、沈殿池10の長手方向における長さが4m程度であり、自身の全長になる、沈殿池10の幅方向における長さが10m程度の溝である。図7および図8に示すように、これら集積溝141の底には、それぞれ溝底面104が設けられている。なお、図8に示すように、集積溝141それぞれの溝底面104は、汚泥ピット14に向かうに従って沈殿池10の水深が増加するように傾斜している。
図6に示すように、沈殿池10における、汚泥ピット14および集積溝141よりも上流側は、長手方向に延在した3つの仕切壁10dによって4つの領域に仕切られており、それぞれの領域に池下部10aが設けられている。なお、図7および図8に示すように、池下部10aの上流側部分と、汚泥ピット14および集積溝141の上方とには、天井10eが設けられている。図6では、集積溝141を示すため、天井10eは省略している。
図7に示す池下部10aそれぞれの底面102には、図5に示す堆積空間形成部材13と断面形状が同一の堆積空間形成部材13が、池下部10aの底面102における長手方向の略全長にわたって延在した状態で配置されている。図8に示すように、本実施形態の側壁10cの下端部分には、図5に示す傾斜面11aが設けられておらず、また、仕切壁10dの下端部分にも傾斜面が設けられていない。本実施形態では、池下部10aの底面102における幅方向の両端側部分には、一つの傾斜片からなる第2堆積空間形成部材131が配置されている。本実施形態では、堆積空間形成部材13および第2堆積空間形成部材131によって、図8に示すように、それぞれの池下部10aには、4つの堆積空間S3が幅方向に並んだ状態で形成されている。なお、側壁10cや仕切壁10dの下端部分に傾斜面を設け、第2堆積空間形成部材131を省略してもよい。
沈殿池10の、仕切壁10dによって仕切られた領域に流れ込んだ汚水中の汚泥は、それぞれの池下部10aに向かって沈降して堆積空間S3内に入り込み、堆積空間形成部材13や第2堆積空間形成部材131を伝って流れ落ちる。この結果、沈降した汚泥は、底面102における、堆積空間形成部材13と堆積空間形成部材13との間の部分、あるいは堆積空間形成部材13と第2堆積空間形成部材131との間の部分に堆積する。これらの部分が、本発明にいう底部に相当し、以下、これらの部分を第1底部102aと称する。すなわち、第1底部102a、堆積空間形成部材13および第2堆積空間形成部材131が、本発明にいう画定面に相当する。
図6〜図8に示す池下部10aの複数の堆積空間S3それぞれには、図3に示す移送空間形成部材8と、断面形状や断面の大きさが同じ移送空間形成部材28が配置されている。また、移送空間形成部材28を支持する支持部材29と、この支持部材29が吊下げられる取付枠26が設けられている。
図8に示すように、移送空間形成部材28は、それぞれの堆積空間S3内における幅方向の中央であって、第1底部102a上に配置されたものである。また、図6および図7に示すように、移送空間形成部材28は、沈殿池10の長手方向に沿って延在したものであり、移送空間形成部材28の全長は池下部10aの長手方向の長さと同じである。これら移送空間形成部材28は、支持部材29および取付枠26によって、第1底部102aから離間した状態で支持されている。取付枠26は、断面がコ字状のものであり、図6および図8に示すように、沈殿池10における、仕切壁10dによって仕切られた領域それぞれにおいて、沈殿池10の幅方向に延在したものである。また、図6に示すように、取付枠26は、沈殿池10の長手方向に間隔をあけて複数配置されている。取付枠26は、両端部分それぞれが受け枠261によって支持されている。これら受け枠261は、側壁10cおよび仕切壁10dそれぞれにおける、水面よりも上方になる部分に固定されたものである。これらの受け枠261にそれぞれ支持された取付枠26に支持部材29が吊下げられている。図8に示すように、支持部材29は、仕切壁10dによって仕切られた領域それぞれにおいて、移送空間形成部材28に対応した位置それぞれに、鉛直方向に延在した状態で複数設けられている。また、図7に示すように、支持部材29は、長手方向において、取付枠26の位置に対応した位置に、長手方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
図7に示すように、それぞれの池下部10aには、長手方向に6m程度の間隔をあけて、移送空間形成部材28の上端部分に接続する給水管271が設けられている。これら給水管271は、図3に示す給水管71と同様に、移送空間形成部材28を貫通して移送空間形成部材28内に入り込んだ後に上流側(汚泥ピット14および集積溝141側)に折れ曲がり、図3に示す吐出口7と同じ形状の吐出口27が形成されている(図8参照)。これによって、第2実施形態では、それぞれの移送空間形成部材28内において、長手方向に6m程度の間隔をあけて、5つの吐出口が設けられている。これらの吐出口からは、給水管271から供給された水が、上流側(図6および図7では右側)に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される。すなわち、図6および図7に示す池下部10aでは、図の右側が吐出方向下流側になり、図の左側が吐出方向上流側になる。なお、図6および図8では、図面を簡略化するため、給水管271は省略している。
図9(a)は、図8のG部を拡大して示す拡大図であり、図9(b)は、図8のH部を拡大して示す拡大図である。図9(a)および同図(b)では図の左右方向が沈殿池10の幅方向になる。なお、図7のI部は、図8のG部と同一の構造であるため、図9(a)では、図8のG部の符号に図7のI部の符号を併記し説明を省略することがある。また、図7のJ部は、図8のH部と同一の構造であるため、図8のH部の符号に図7のJ部の符号を併記し説明を省略することがある。
まず、池下部10aについて説明する。図9(a)および同図(b)に示すように、支持部材29は、鉛直方向に延在したパイプ部材291と、パイプ部材291の下端に取り付けられた下側ネジ部材292と、パイプ部材291の上端に取り付けられた上側ネジ部材293とを有している。図9(a)に示すように、移送空間形成部材28の上端部分には、内周にネジが切られた筒部283が設けられている。支持部材29は、下側ネジ部材292が、移送空間形成部材28の筒部283に取り付けられている。図9(b)に示すように、支持部材29は、取付枠26に形成された孔に挿通された状態で、取付枠26の上下からそれぞれナットNで締め付けられることによって、支持部材29が取付枠26に吊下げられている。これらによって、移送空間S4を形成する移送空間形成部材28が支持され、移送空間形成部材28の吸込口281が、堆積空間S3内において、第1底部102aに向って開口している。支持部材29は、沈殿池10内に汚水が溜まっている状態であっても、取付枠26から取り外し、取り外した支持部材29を引き上げることができる。これによって、移送空間形成部材28や吐出口27も引き上げることができ、移送空間形成部材28や吐出口27のメンテナンス等が可能になる。
ここで、沈殿池10の上流側に設けられた沈砂池において大きな混入物は除去され、沈殿池10が受入れる汚水には大きな混入物がほとんど含まれていない。このため、沈殿池10では、図1や図2に示すろ過スクリーン23のようなスクリーン部材が設けられていない場合が多い。なお、砂が含まれていない汚水を受入れる沈殿池には、上流側に沈砂池が設けられない代わりに、スクリーン部材が設けられる場合がある。すなわち、沈殿池10では、沈砂池に比べ、吸込口281などに混入物がつまってしまうことを考慮する必要性が少ない。このため、吸込口281の長さLや吸込口281と第1底部102aとの間隔C1は、吐出口27から水を吐出した際に、移送空間形成部材28内に汚泥を吸い込みにくくならない範囲で設定することができる。具体的には、吸込口281の長さLや、吸込口281と第1底部102aとの上下方向の間隔C1は、125mm以下の範囲で適宜設定することができる。上述のように、図9(a)に示す移送空間形成部材28は、図3に示す移送空間形成部材8と断面形状や断面の大きさが同じであるため、吸込口281の長さLは100mm程度である。また、図9(a)に示す移送空間形成部材28では、移送空間形成部材28の吸込口281と第1底部102aとの上下方向の間隔C1を50mm程度に設定している。なお、支持部材29は、上側ネジ部材293におけるナットNの位置を調整することによって、上下方向の位置を調整することができる。これによって支持部材29に支持された移送空間形成部材28の上下方向の位置を調整し、吸込口281と第1底部102aとの上下方向の間隔C1を変更することができる。
さらに、第2堆積空間形成部材131が第1底部102aに接続する部分と吸込口281との幅方向の距離D、および堆積空間形成部材13が第1底部102aに接続する部分と吸込口281との幅方向の距離Dのいずれも、吐出口27から水を吐出した際に移送空間形成部材28内に汚泥を吸い込みにくくならない125mm以下の範囲で適宜設定することができる。図9(a)に示す移送空間形成部材28では、距離Dをどちらも50mm程度に設定している。また、堆積空間形成部材13と直交する方向の、移送空間形成部材28と堆積空間形成部材13との隙間C21、および第2堆積空間形成部材131と直交する方向の、移送空間形成部材28と第2堆積空間形成部材131との隙間C23は、最も狭い箇所で80mm程度である。なお、図9(a)に示す、給水管271の、移送空間S4内に入り込んだ部分2711には、図3に示す巻付防止板95は設けられていない。この理由は、沈砂池において紐状の混入物が除去され、沈殿池10が受入れる汚水には紐状の混入物がほとんど含まれていないため、このような紐状の混入物の巻き付きを防ぐ必要性が少ないからである。ここで、沈殿池10の上流側に沈砂池が設けられていない場合には、図3に示す巻付防止板95と同様の巻付防止板を、給水管271の、移送空間S4内に入り込んだ部分2711に設けることが好ましい。
また、沈殿池10にスクリーン部材が設けられている場合には、吸込口281の長さL、吸込口281と第1底部102aとの間隔C1、堆積空間形成部材13と直交する方向の、移送空間形成部材28と堆積空間形成部材13との隙間C21、および第2堆積空間形成部材131と直交する方向の、移送空間形成部材28と第2堆積空間形成部材131との隙間C23それぞれを、スクリーン部材の目幅以下にすることが好ましい。
次に、集積溝141について説明する。図7に示すように、一対の集積溝141それぞれの溝底面104には、堆積空間形成部材13’および第2堆積空間形成部材131’が、複数配置されている。図6に示すように、堆積空間形成部材13’および第2堆積空間形成部材131’は、沈殿池10の幅方向に延在したものであり、沈殿池10の長手方向に間隔をあけて配置されている。これによって、集積溝141の略全長にわたって延在した堆積空間S5が形成されている(図7参照)。本実施形態では、汚泥ピット14を挟んだ一対の集積溝141それぞれに、3つの堆積空間S5が形成されている。図9(a)に示すように、これら堆積空間S5それぞれにも、図6〜図8に示す池下部10aの堆積空間S3と同様に、移送空間形成部材28’が支持部材29’によって支持され、移送空間形成部材28’の吸込口281が、堆積空間S5内において、第2底部104aに向って開口している。移送空間形成部材28’は、移送空間S6を形成するものである。移送空間形成部材28’の吸込口281の長さL、移送空間形成部材28’の吸込口281と第2底部104aとの上下方向の間隔C1、移送空間形成部材28’と堆積空間形成部材13’との隙間C21、移送空間形成部材28’と第2堆積空間形成部材131’との隙間C23、第2堆積空間形成部材131’が第2底部104aに接続する部分と吸込口281との幅方向の距離D、および堆積空間形成部材13’が第2底部104aに接続する部分と吸込口281との幅方向の距離Dのいずれも、池下部10aと同様である。集積溝141における、支持部材29’が吊下げられる取付枠26’は、図6に示すように、集積溝141の上方において、沈殿池10の長手方向に延在した状態で、沈殿池10の幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。本実施形態では、それぞれの集積溝141に、3つの取付枠26’が配置されている。図6および図8に示すように、3つの取付枠26’のうち、沈殿池10の幅方向中央に配置された取付枠26’は、上流側の端部部分が、上流壁10hに固定された受け枠261’に支持され、下流側の端部部分が、仕切壁10dにおける上流側の面に固定された受け枠261’に支持されている。また、図6および図7に示すように、3つの取付枠26’のうち、沈殿池10の幅方向外側に配置された2つの取付枠26’それぞれは、上流側の端部部分が、沈殿池10の上流壁10hに固定された受け枠261’に支持され、下流側の端部部分が、池下部10aにおける、最も上流側に配置された取付枠26’上に支持されている。これら取付枠26’それぞれに支持部材29’が吊下げられている。
図8に示すように、集積溝141に設けられた移送空間形成部材28’それぞれには、給水管271’が、沈殿池10の幅方向における外側の端部部分と、沈殿池10の幅方向における中間部分に接続されている。これら給水管271’は、図3に示す給水管71と同様に、移送空間形成部材28’を貫通して移送空間形成部材28’内に入り込んだ後に幅方向中央側(汚泥ピット14側)に折れ曲がり、図3に示す吐出口7と同じ吐出口27’(図9(a)参照)が形成されている。これによって、本実施形態では、それぞれの移送空間形成部材28’内において、長手方向に5m程度の間隔をあけて、2つの吐出口27’が設けられている。これらの吐出口27’からは、給水管271’から供給された水が、汚泥ピット14側に向けて水平方向あるいは略水平方向に吐出される。すなわち、一対の集積溝141それぞれにおいては、沈殿池10の幅方向外側が吐出方向上流側になり、沈殿池10の幅方向内側(汚泥ピット14側)が吐出方向下流側になる。なお、図6および図7では、図面を簡略化するため、給水管271’を省略している。
沈殿池10に流れ込んだ汚水は、汚泥ピット14および集積溝141を越えて、それぞれの池下部10aの上流端に到達し、それぞれの池下部10aの延在方向に沿ってさらに流れる。汚水が流れる間に、汚水に含まれている汚泥が、汚泥ピット14、集積溝141、および池下部10aに沈降していく。集積溝141に沈降した汚泥は、堆積空間形成部材13’や第2堆積空間形成部材131’をつたって堆積空間S5内の第2底部104aに流れ落ちる。また、移送空間形成部材28’の外周面をつたって第2底部104aに流れ落ちる。こうして、堆積空間S5内に汚泥が堆積する。また、池下部10aに沈降した汚泥は、堆積空間形成部材13や第2堆積空間形成部材131を伝って堆積空間S3内の第1底部102aに流れ落ちる。また、移送空間形成部材28の外周面をつたって、堆積空間S3内の第1底部102aに流れ落ちる。こうして、堆積空間S3内に汚泥が堆積する。
それぞれの池下部10aでは、吐出口27から移送空間形成部材28の移送空間S4内に水が吐出されることで、堆積空間S3内に堆積した汚泥は、図9に示す曲線の矢印のように、吸込口281から移送空間S4内に吸い込まれる。さらに、その移送空間形成部材28の移送空間S4内では、吸い込まれた汚泥が、吐出口27から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(汚泥ピット14や集積溝141側)に向かって移動する。それぞれの池下部10aでは、例えば、長手方向に間隔をあけて設けられた複数の吐出口27のうち、吐出方向最上流側(沈殿池10の水の流れでは最下流側)から吐出方向下流側(沈殿池10の水の流れでは上流側)に順番に3分間程度ずつ水を吐出させ、堆積空間S3内に堆積した汚泥を、汚泥ピット14や集積溝141まで移動させることができる。また、集積溝141における、堆積空間S5内に堆積した汚泥も同様に、集積溝141の吐出口27’から移送空間形成部材28’の移送空間S6内に水が吐出されることで、堆積空間S5内に堆積した汚泥は、図9に示す曲線の矢印のように、吸込口281から移送空間S6内に吸い込まれる。さらに、その移送空間形成部材28’の移送空間S6内では、吸い込まれた汚泥が、吐出口27’から吐出された水の流れによって吐出方向下流側(汚泥ピット14側)に向かって移動する。集積溝141では、例えば、吐出方向上流側(沈殿池10の幅方向外側)の吐出口27’から水を3分間程度吐出させた後、吐出方向下流側(汚泥ピット14側)の吐出口27’から水を3分間程度吐出させることによって、堆積空間S5内に堆積した汚泥を、汚泥ピット14まで移動させることができる。
本実施形態の吐出口27,27’から吐出される水の吐出量は、汚泥ポンプの排出量(ここでは2.0m3/分)以下にすることが好ましく、0より大きく3.0m3/分以下の範囲で設定してもよい。また、汚泥は、砂より粒径が小さい泥状のものであり、砂よりも移動させやすいため、図3に示す吐出口7における水の吐出量よりも少ない吐出量で汚泥を十分移動させることができる。このため、図3に示す吐出口7から吐出される水の吐出量の1/3程度にすることができ、例えば、本実施形態の吐出口27,27’から吐出される水の吐出量を、0.5m3/分程度にすることができる。また、本実施形態の吐出口27,27’における吐出流速も、例えば、図3に示す吐出口7における水の吐出流速の1/3程度にすることができる。
以上説明した第2実施形態の沈殿池10によれば、汚泥を十分に移動させながら汚泥の巻き上がりを抑えることができる。
なお、これまで説明してきた隙間C2,C21,C22,C23は、吐出方向に直交する、上下方向を除いた方向の長さになる。
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、移送システムを工場等に設け、工場等で生じた金属粉等を一方向に移動させて所定の場所に集めるものであってもよい。また、上記第2実施形態の沈殿池10は、仕切壁10dで仕切られた複数の池下部10aと汚泥ピット14に接続する集積溝141とを備えるものであるが、1つの池下部10aと汚泥ピット14とを備え、集積溝141を備えていない沈殿池であってもよい。
なお、以上説明した実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の、実施形態や変形例に適用してもよい。