JP2019004881A - 生ニンニクの保存方法及びその保存方法により保存されたニンニク - Google Patents

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【課題】 生ニンニクの発芽・発根を抑制し、収穫時の生ニンニクの状態を維持できる生ニンニクの保存方法及びその保存方法により保存されたニンニクを提供する。【解決手段】 収穫した生ニンニクの根と茎を切除し、根と茎を切除した生ニンニクを乾燥処理を行わずに暗黒条件下−2〜0℃の雰囲気中で保存する保存方法である。これにより、生ニンニクの発芽・発根を抑制し、収穫時の生ニンニクの状態を維持できることから、収穫時の生ニンニクとほぼ同じ状態の保存したニンニクを翌年の収穫時期まで継続して提供することが可能になる。【選択図】 図1

Description

本発明は、生ニンニクの保存方法及びその保存方法により保存されたニンニクに関するものである。
生ニンニク(鱗茎)は6月中旬に収穫され、収穫時の生ニンニクを常温に置くと数カ月で保護葉から芽や根が突出する発芽・発根が始まる。生ニンニクは食用として年間を通じて需要があるが、発芽・発根したニンニクは食味が変化し、商品としての価値を失い出荷できなくなる。この課題を解決するため、乾燥したニンニクを低温雰囲気に置く保存方法が提供されている(例えば特許文献1・非特許文献1)。
特開平6−7081号公報
畑作園芸試験場、"にんにくの周年出荷に向けた低温貯蔵及び乾熱処理との組合せによる萌芽抑制技術(第1報)"、青森農研フラッシュ第3号、[online]、平成14年5月、(地独)青森県産業技術センター[平成29年4月10日検索]、インターネット<URL:http://www.aomori-itc.or.jp/index.php?id=595>
特許文献1に記載のニンニクの長期保存方法は、間接冷却を行う低温庫の貯蔵室内に、貯蔵温度0〜1℃、貯蔵湿度65〜75%で貯蔵することを特徴とする生ニンニクの長期貯蔵法である。また、特許文献1の保存方法では、収穫した生ニンニクを事前に乾燥する。特許文献1の保存方法における乾燥処理は、収穫した生ニンニクを35〜38℃程度の雰囲気に数日から1カ月程度おくものである。
しかし、特許文献1の保存方法では、6か月乃至8か月で発芽・発根する。発芽・発根した生ニンニクは商品価値がなくなることから、従来は翌年の収穫時期まで継続して商品価値のある生ニンニクを提供することができなかった。
また、乾燥処理を行うと、ニンニクの水分は収穫時の約40%から11〜13%程度にまで低下することから、食味が変化するという問題があった。
非特許文献1の萌芽抑制技術では、収穫した生ニンニクに所定の乾燥処理をおよそ1カ月程度施し、7月下旬から−2℃で保存する。これにより、約7カ月間は発芽・発根せずに保存できる。しかし、非特許文献1の萌芽抑制技術によっても、翌年の収穫時期まで継続して生ニンニクを提供することができなかった。
本発明は、上記の課題を解決するものであって、生ニンニクの発芽・発根を抑制し、収穫時の生ニンニクの状態を維持できる生ニンニクの保存方法及びその保存方法により保存されたニンニクを提供するものである。
本発明の生ニンニクの保存方法は、収穫した生ニンニクの根と茎を切除し、根と茎を切除した生ニンニクを乾燥処理を行わずに暗黒条件下−2〜0℃の雰囲気中で保存するようにしたものである。
本発明のニンニクは、収穫した生ニンニクの根と茎を切除し、根と茎を切除した生ニンニクを乾燥処理を行わずに暗黒条件下−2〜0℃、好ましくは−1.5℃の雰囲気中で保存したものである。
本発明の生ニンニクの保存方法によると、収穫時の生ニンニクの状態を維持できる。これにより、商品価値のあるニンニクを翌年の収穫時期まで継続して提供することが可能になる。
また、本発明の生ニンニクの保存方法により保存されたニンニクは、いつでも乾燥処理を行うことができることから、ニンニク生産量が増えた場合であっても乾燥施設の確保・増設を必要とせず、生産者の経済的負担を解消することができる。
本発明の生ニンニクの保存方法を示すフロー図である。 本発明の生ニンニクの保存方法における保存時の生ニンニクの盤茎を示した写真である。 本発明の生ニンニクの保存方法によって12か月保存したニンニクの外観写真である。 従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法で12か月保存したニンニクの外観写真である。 本発明の生ニンニクの保存方法によって12か月保存したニンニクのりん片の内部を示す図である。 従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法で12か月保存したニンニクのりん片の内部を示す図である。
最初に、本実施例で用いる生ニンニク、設備、測定方法、検査方法等について説明する。
(1)生ニンニク(鱗茎)
本実施例で用いた生ニンニクの品種は福地ホワイトであり、発明者が青森県十和田市の農場において栽培したものである。
(2)生ニンニクの前処理
ニンニク作業機(佐々木農機株式会社製、ルートシェーバーGR451M)を使用して、生ニンニクの茎と根を切除する。生ニンニクの茎と根を切除する生ニンニクの前処理では、盤茎の切除は行わないものとする(図2)。
(3)保冷設備
保冷設備として、日軽パネルシステム株式会社製のプレハブ冷蔵庫(内寸:幅3.6m×奥行3.6m×高さ2.5m)を用いた。プレハブ冷蔵庫の庫内温度は、ユニットクーラー(日立アプライアンス株式会社製、US−R3MHP1)によって制御されているものとする。
プレハブ冷蔵庫内には、床面から高さ約20cmのところに木棚が設けられている。また、木棚の上には、樹脂製メッシュコンテナ(三甲株式会社製、サンテナーB55)が置かれている。
(4)ニンニクの水分の測定方法
盤茎部分の水分を測定し、その水分をニンニクの水分とした。なお、盤茎部分の水分測定には、乾燥度計(株式会社サンコウ電子研究所製、NI−10)を用いた。
(5)発芽・発根の検査方法
ニンニクを目視により観察し、発芽・発根の有無を確認した。本実施例では、ニンニクの保護葉から芽や根が突出しているものを発芽・発根とした。また、新芽の成長を確認した。
次に、本発明の生ニンニクの保存方法を図1に基づき説明する。
6月下旬に栽培したニンニクを収穫する(ステップS1)。収穫したニンニクの根と花茎のみを切除し、生ニンニク(鱗茎)の盤茎は残す(ステップS2)。本発明の生ニンニクの保存方法では、切除した生ニンニクは洗浄せず(ステップS3)、乾燥処理も行わない(ステップS4)。
次に、プレハブ冷蔵庫内の樹脂製メッシュコンテナに根と花茎のみを切除した生ニンニクを入れる(ステップS5)。プレハブ冷蔵庫の庫内温度を−2から0℃の雰囲気に制御し、収穫した生ニンニクを貯蔵・保存する(ステップS6)。ステップS6において、プレハブ冷蔵庫内は暗黒条件である。なお、生ニンニクの保存は、収穫したその日に行った。
(発芽・発根の検査)
生ニンニク(鱗茎)の保存後、毎月定期的に、保存したニンニクについて、発芽・発根の有無を確認したところ、保存開始日から12か月後(翌年の生ニンニクの収穫時期)に至るまで、発芽・発根は確認されなかった(図3)。なお、図3の保存したニンニクは、発根を確認しやすくするために盤茎を取り除いたものである。
図4は、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法で12か月保存したニンニクの外観写真である。図4に表れるように、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法では、保存したニンニクは発芽していた。
また、保存開始から12か月後の保存したニンニクについて、そのりん片の内部観察(りん片の断面観察)によって、保存したニンニクのりん片内部の新芽の成長状態を確認した。図5は、本発明の生ニンニクの保存方法によって12か月保存したニンニクのりん片の内部を示す図である。図6は、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法で12か月保存したニンニクのりん片の内部を示す図である。
図5に示すように、本発明の生ニンニクの保存方法で保存されたニンニクにおける、りん片長に対する新芽の長さの割合は、左右のりん片においてそれぞれb/a=0.25、b/a=0.29であった。これに対し、図6に示すように、従来の乾燥処理を伴う方法で保存したニンニクにおける、りん片長に対する新芽の長さの割合は、左右のりん片においてそれぞれy/x=0.59、y/x=0.82であった。
本発明の生ニンニクの保存方法で保存されたニンニクと従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法で保存したニンニクのりん片内部の新芽の成長を比較すると、本発明の生ニンニクの保存方法は、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法より、新芽の成長を遅らせられることが分かった。すなわち、本発明の生ニンニクの保存方法によって保存されたニンニクは、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法により保存したニンニクと比べ、新芽の成長によるりん片の養分消費が抑えられ、収穫時の生ニンニクにより近い状態であることが分かった。
(水分の測定)
本発明の生ニンニクの保存方法によって12か月保存したニンニクの水分は、約40%であった。この水分は、収穫時の生ニンニクの水分と同じであった。
従って、本発明の生ニンニクの保存方法では、水分を低下させることなく、発芽・発根を抑制することができることから、従来の乾燥処理を伴う生ニンニクの保存方法において生じる水分の低下による生ニンニクの食味の変化を防ぐことができる。また、乾燥処理作業を省くことができることから、生ニンニクの保存作業の負担を軽減できる。
なお、本発明の生ニンニクの保存方法で保存されたニンニクには、腐敗しているものやカビが発生しているものは無かった。
本発明の生ニンニクの保存方法において、暗黒条件下−1.5℃の雰囲気中で生ニンニクを保存した。−1.5℃の雰囲気中で保存されたニンニクは、りん片長に対する新芽の長さの割合が最も小さく、新芽の成長が最も遅かった。また、保護葉の色は、収穫時の生ニンニクの保護葉の色に最も近いものであった。これにより、本発明の生ニンニクの保存方法において、暗黒条件下−1.5℃の雰囲気中で生ニンニクを保存することが、より収穫時の生ニンニクの状態を維持できることが分かった。
本発明の生ニンニクの保存方法により4カ月保存したニンニクを種子として植え付けたところ、生育した。これにより、従来のニンニク栽培で行われていた、収穫時に乾燥したニンニクを種子とする栽培に代えて、本発明の生ニンニクの保存方法により保存したニンニクを種子とすることができることから、収穫時の乾燥処理を省くことができ、生産者の労力・生産コストを軽減することができる。
以上のように、本発明の生ニンニクの保存方法によると、生ニンニクの発芽・発根を抑制し、収穫時の生ニンニクの状態を維持できる。これにより、収穫時から12か月間すなわち翌年の収穫まで一年を通して、収穫時の生ニンニクとほぼ同じ状態のニンニクを継続して提供することができる。
また、本発明の生ニンニクの保存方法により、収穫時の生ニンニクの状態を維持できることから、本発明の生ニンニクの保存方法により保存されたニンニクは、いつでも乾燥処理を行うことができる。
従来の乾燥処理は、非特許文献1の萌芽抑制技術に記載されているように、収穫した生ニンニクを1カ月程度乾燥するものであった。収穫した生ニンニクを1か月以内(すなわち収穫時から限られた期間内)に乾燥するためには、収穫量に応じた乾燥施設を予め準備する必要がある。作付面積を増やす場合も同様である。ニンニク生産量が増えた場合、その収穫量を限られた期間内に乾燥するための乾燥施設を確保・増設する必要があり、乾燥施設の確保・増設は生産者にとって経済的負担となっていた。
本発明の生ニンニクの保存方法により保存されたニンニクは、いつでも乾燥処理を行うことができることから、既存の乾燥施設のみで順次乾燥処理を行うことができる。すなわち、ニンニク生産量が増えた場合であっても乾燥施設の確保・増設を必要としないため、生産者の経済的負担を解消することができる。



Claims (2)

  1. 収穫した生ニンニクの根と茎を切除し、根と茎を切除した生ニンニクを乾燥処理を行わずに暗黒条件下−2〜0℃の雰囲気中で保存することを特徴とする生ニンニクの保存方法。
  2. 収穫した生ニンニクの根と茎を切除し、根と茎を切除した生ニンニクを乾燥処理を行わずに暗黒条件下−2〜0℃、好ましくは−1.5℃の雰囲気中で保存したものであることを特徴とするニンニク。


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"ならおかファーム"のウェブサイトに掲載された2010年 6月 3日付け記事「氷温貯蔵庫」,2010, JPN6022011592, ISSN: 0004752911 *
世界のウェブアーカイブ|"野菜情報サイト野菜ナビ"に掲載された"野菜コラム にんにくの保存方法"のア, JPN6022011593, ISSN: 0004752910 *

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