JP6316791B2 - 海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の栽培方法 - Google Patents

海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の栽培方法 Download PDF

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本発明は、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の栽培方法に関し、特に海水と農作物を接触させる期間を限定することで、少なくとも農作物中に含まれるマグネシウム量を増加させて農作物中に含有されるカルシウム/マグネシウム質量比を減少させる、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の栽培方法に関する。
従来より、農作物を栽培するにあたり、ミネラル肥料を添加して、収穫する農産物中に含まれるミネラル分を増大させる栽培が行われている。
近年、海水には多様なミネラルが含まれているため、海水を農作物の栽培に利用することが試みられている一方、海水は塩分を多量に含んでおり、農作物の栽培にそのまま用いると、農作物の生長を阻害するという欠点がある。
かかる海水を農作物の栽培に利用する試みとして、特に、海洋深層水を用いた農作物の栽培が提案されている。
海洋深層水は200m以深の海水であり、有光層(真光層)以深に位置し、光合成による有機物生産がほとんど行われず分解が卓越している。その資源性は現在知られているだけでも、低温・清浄等があり、この他、塩・金属類なども着目されている。
海洋深層水を利用した植物の栽培方法としては、例えば、特開2001−251981号公報(特許文献1)に、海面下300m以上の深海より取水した栄養塩(窒素、リン、ケイ酸の無機化合物)の濃度の高い肥やしのような海洋深層水をろ過、脱塩処理をした状態で、水耕栽培の主水として植物の生産に使用して、極めて清浄な状態で水耕栽培を実施することができることが開示されている。
かかる水耕栽培方法は、海洋深層水をろ過、脱塩処理したものを農作物の栽培に用いることができることが記載されているのみである。
また、特開2008−118946号公報(特許文献2)には、海洋深層水を希釈、濃縮、脱塩から選ばれる少なくとも一つ以上の操作を行うことにより、海洋深層水に含まれるミネラル分を調整して、植物を栽培する方法が記載されており、特に海洋深層水を調整して、カルシウム等のミネラル分を多量に含む組成に海洋深層水を調整して植物に与えて、該海洋深層水に含まれるカルシウムを含むミネラル分を植物に含有させて増加させることが開示されている。
かかる海洋深層水を用いた植物の栽培は、海洋深層水に含まれるミネラルを植物に含有させて、その含量を増加させることに志向しているものであり、特定のミネラル成分を減量させて、含有される特定ミネラル成分比を調整する技術思想は開示されていない。
さらに、特開2005−295952号公報(特許文献3)には、海洋深層水に含まれる各成分を残しつつ該深層水の塩素濃度及び電気伝導度を、栽培すべき植物の健全生育を保証する安全基準値以下に調整した調整深層水を準備し、植物の栽培において、植物当該調整深層水を植物に施用して、栽培植物の硝酸濃度を低減する低減方法が開示されている。
しかし、かかる方法は、海洋深層水を発芽から収穫までの間、分散させて複数回にわたって与えて植物中の硝酸濃度を低減させるものであり、ある特定の期間に継続して海洋深層水を与えるという技術思想はなく、また硝酸濃度の低減について記載されているのみである。
一方、近年の食の欧米化に伴い、カルシウム/マグネシウム摂取比が急激に増加している。カルシウム/マグネシウム摂取比の増加は虚血性心疾患をはじめとする急性冠性症候群(ACS)発症の大きな要因とされている。加えて近年は海産物の摂取量が大幅に減少しており、有力なマグネシウム供給源であった海産物が食卓から姿を消したこともカルシウム/マグネシウム摂取比の増加を促す要因となっている。
かかるカルシウム/マグネシウム摂取比を低下させるためには、カルシウム/マグネシウム質量比が小さい食品を摂取することが望まれるが、カルシウム/マグネシウム質量比が小さい食品の殆どが海産物であることから、最近の食事に対する志向性から鑑みて、海産物以外の食品自身の根本的な改良が望まれている。
即ち従来の食品中のカルシウム/マグネシウム質量比を低下させる技術の構築が必要となってきている。
特に野菜は重量の90%以上が水分で占められており、この水分は栽培中に野菜自身が吸収した水であり、野菜栽培においては主として、河川水や水道水、井戸水等の陸水を起源とした水が用いられている。かかる陸水に含まれるカルシウム/マグネシウム質量比は非常に大きいことが知られており、陸水を用いて栽培した野菜もかかるカルシウム/マグネシウム質量比が大きいものとなっている。
そこでかかるカルシウム/マグネシウム質量比が小さい農産物の栽培が期待されている。
特開2001−251981号公報 特開2008−118946号公報 特開2005−295952号公報
本発明の目的は、農作物を海水と接触させる期間を限定することで、農作物に所望するミネラルを含有させ、農作物中に含有されるミネラルを調整することができる、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の栽培方法を提供することである。
特に、海水の塩分による農作物の生長抑制等のリスクを低減することができ、十分な収量を確保しつつ、マグネシウム分を多く含み、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比を減少させた農作物を得るための、及び/又は、収穫後の農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比を減少させた農作物を得るための、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法及び農作物の簡便な栽培方法を提供することである。
本発明は、農作物の発芽時以降、特に栽培期間を農作物収穫時から遡った所定の期間のみに海水を継続して利用することにより及び/又は農作物収穫後に海水に農作物を浸漬することにより、海水中に含まれる塩分による生長抑制等のリスクを低減することができ、農作物に所望するミネラル、特にマグネシウム分を多く含有させて、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比を減少させることができることを見出したものである。
請求項記載の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、栽培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時までの期間を第1栽培期間とし、前記第2栽培期間において海洋深層水を継続的に用いて農作物と海洋深層水とを接触させて農作物を栽培し、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させることを特徴とする、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法である。
また、請求項記載の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、第2栽培期間は、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/300の期間であることを特徴とする、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法である。
請求項記載の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、請求項1記載の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法において、第2栽培期間は、海洋深層水濃度が20容量%以下の場合には、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/30の期間であり、海洋深層水濃度が20容量%を超える場合には、1/30〜1/300の期間であることを特徴とする、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法である。
請求項記載の海水を用いた農作物の栽培方法は、栽培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時までの期間を第1栽培期間とし、前記第2栽培期間において海洋深層水を継続的に用いて農作物と海洋深層水とを接触させ、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比を減少させて、農作物を栽培することを特徴とする、海水を用いた農作物の栽培方法である。
また、請求項記載の海水を用いた農作物の栽培方法は、第2栽培期間は、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/300の期間であることを特徴とする、海水を用いた農作物の栽培方法である。
請求項4記載の海水を用いた農作物の栽培方法は、請求項3記載の農作物の栽培方法において、第2栽培期間は、海洋深層水濃度が20容量%以下の場合には、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/30の期間であり、海洋深層水濃度が20容量%を超える場合には、1/30〜1/300の期間であることを特徴とする、海水を用いた農作物の栽培方法である。
本発明によれば、農作物に所望するミネラル、特に、農作物中のマグネシウム含量を増加させて、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させた農作物を得ることが可能となる。またマグネシウム以外の、海水に含まれる所望する他のミネラル成分も、農作物中に含有させることが期待される。
特に、農作物を収穫する前の特定の期間のみに農作物と海水とを接触させることにより、上記効果に加えて、海水による塩分による生長抑制等のリスクを低減することができ、農作物を十分な収量で得ることが可能となる。
更に、農作物を収穫した後であっても、農作物を海水と接触させることにより、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させることが可能となる。特に、農作物中のマグネシウム含量を増加させることができる。
したがって、特に、虚血性心疾患をはじめとする急性冠性症候群(ACS)発症の大きな要因とされているカルシウム/マグネシウム摂取比の増加を低減させることができる農作物の栽培に利用することが可能となる。
水耕栽培試験の栽培期間の第1栽培期間と第2栽培期間を模式的に示す一例の図である(試験区1〜5及び対照区)。 本発明の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた水菜に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム量と第2栽培期間との関係を示す図である。 本発明の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた小松菜に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム量と第2栽培期間との関係を示す図である。 本発明の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた、ほうれん草に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム量と第2栽培期間との関係を示す図である。 図2〜図4より、本発明の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた水菜、小松菜、ほうれん草に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム量と第2栽培期間との関係を示す線図である。 図2〜図4より、本発明の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた水菜、小松菜、ほうれん草のカルシウム/マグネシウム質量比と第2栽培期間との関係を示す図である。 水道水を用いて収穫した水菜、小松菜、ほうれん草を海洋深層水に浸漬した場合に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム量と、海洋深層水への浸漬時間及び濃度との関係を示す図である。 水道水を用いて収穫した水菜、小松菜、ほうれん草を海洋深層水に浸漬した場合に含まれるカルシウム/マグネシウム質量比と、海洋深層水への浸漬時間及び濃度との関係を示す図である。 本発明の他の一例のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法を適用して得られた小松菜のカルシウム/マグネシウム質量比と海洋深層水の濃度との関係を示す図である。
本発明を以下の実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、農作物の発芽時以降の所定の期間に、農作物と海水とを接触させることを特徴とする、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法である。
ここで、「所定の期間」には、農作物の発芽時以降収穫時までの全期間は含まれないことを意味する。
また本発明において「海水」としては、表面海水、海洋深層水、人工海水等を例示することができる。さらに、海水を電気透析処理した水(ED塩水、EDミネラル水)や逆浸透膜濾過(RO膜)処理した水、イオン交換膜処理した水や、海水に含まれるミネラル分に相当するミネラルを含む液体であれば任意の処理水も、本発明における「海水」の概念に含まれて好適に用いることができる。
本発明は、水耕栽培による育成中の農作物や、露地栽培又は水耕栽培により収穫された農作物の双方の農作物に適用することができる。
具体的には、農作物の発芽時以降に、農作物と海水とを接触させるための上記所定の期間には、水耕栽培により農作物を収穫する前の所定の期間と、水耕栽培及び露地栽培により農作物を収穫した後の所定の期間との双方を含む。なお、上記したように、農作物の発芽時以降収穫時までの全期間は、「所定期間」に含まれない。
本発明の第1の方法としての、農作物を育成する場合における、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、栽培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時までの期間を第1栽培期間とし、前記第2栽培期間において海水を継続的に用いて農作物と海水とを接触させて農作物を栽培し、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させる方法である。
かかる第1の好適方法は、水耕栽培による農作物の育成において、望ましく適用することができる。
更に、本発明の海水を用いた農作物の水耕栽培による栽培方法は、栽培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時時までの期間を第1栽培期間とし、前記第2栽培期間において海水を継続的に用いて農作物を栽培する栽培方法である。
本発明においては、農作物の種類に応じて発芽時から収穫時までの期間を予め決定し、この期間を栽培期間とし、かかる栽培期間を収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時時までの期間を第1栽培期間とする。
農作物発芽時から収穫時までの間、必ず第1栽培期間と第2栽培期間は設けられ、第1栽培期間を設けない場合は、本発明には該当しない。
第1栽培期間においては、河川水や水道水、井戸水等の陸水を用いて農産物を栽培する。
また第1栽培期間前の播種から発芽までの方法は、特に限定されるものではなく、任意の周知の発芽栽培方法を用いることができる。
本発明において、第2栽培期間に農作物へ適用する海水としては、上記したように、何も処理しない海水や、前記の種々の処理が行われた海水を用いることもでき、特に、海水を希釈して用いることが、より好ましくは海洋深層水を用いることが望ましい。
海洋深層水の産地は特に限定されず、任意の海洋深層水を好適に用いることができる。
農作物の種類に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を収穫時から遡った所定の期間である第2栽培期間は、農作物の種類に応じて、又は所望するミネラル、例えばマグネシウムの含有量を所望するように増大させるために決定することができるが、例えば栽培期間の1/3〜1/300、好ましくは1/3〜1/30の期間であることが好ましい。
また例えば、海水濃度が20容量%以下の場合には、第2栽培期間としては栽培期間の1/3〜1/30の期間、20容量%を超える場合には、第2栽培期間としては栽培期間の1/30〜1/300の期間とすることが望ましい。
このように第2栽培期間を設けることで、海水中の塩分による生長抑制等のリスクを低減することができ、十分な収量を確保しつつ、農作物に所望するミネラル、特にマグネシウムの含有量を増大させて、上記本発明の効果をより有効に発現させることが可能となる。
一例として、栽培期間を30日と設定した場合には、第2栽培期間は、海水濃度が20容量%の場合には2〜10日であり、また海水濃度が20容量%を超える場合には、16時間〜24時間とすることが例示できる。
また、第2栽培期間においては、海水は継続して農作物に適用され、その適用方法としては、露地栽培の場合は海水の灌水、散水等があり、水耕栽培の場合は海水を培養液として利用する方法がある。
また必要に応じて、各栽培において葉面散布をすることも有効である。
本発明の第2の方法としての、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法は、農作物を収穫した後、収穫された農作物を海水に浸漬することにより、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させる方法である。
かかる本発明の第2の好適方法は、海水を用いないで収穫した水耕栽培による農作物や露地栽培により収穫された農作物の双方に好適に適用することができる。
水耕栽培により育成された農作物は、根を残して収穫するのが一般的であり、この場合には、収穫された農作物の少なくとも根を、海水に浸漬することで、本発明を適用することが可能である。
また、露地栽培により育成された農作物は、根をほとんど切り落として収穫するのが一般的であり、この場合には少なくともかかる切り取り部を海水に浸漬することで、本発明を適用することが可能である。
本発明においては、海水を上記した期間または時期に適用することで、短期間で所望する含有量のミネラル、例えばマグネシウム含有量を増大することができ、農作物の生長にも特に影響を及ぼすことなく良好な収量の農作物を得ることができる。
更に、農作物中に含有されるカルシウムの含量を減少させる傾向が得られ、従って、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比をより減少させることも可能となる。
よって、本発明によれば、虚血性心疾患をはじめとする急性冠性症候群(ACS)発症の大きな要因とされているカルシウム/マグネシウム摂取比の増加を低減させることができる農作物の栽培に利用することが可能となる。
上記第2の方法の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法においては、海水への農作物の浸漬時間は、例えば、4時間〜24時間、好ましくは16時間〜24時間であることが望ましい。
例えば、海水濃度が20容量%以下の場合には、浸漬時間としては16時間〜24時間を例示することができ、20容量%を超える場合には、浸漬時間としては4時間〜16時間とすることが例示できる。
このように収穫後に所定の時間の浸漬期間を設けることで、海水中の塩分による農作物への影響を及ぼすことなく、十分な収量を保持した状態で、農作物に所望するミネラル、特にマグネシウムの含有量を増大させて、上記本発明の効果をより有効に発現させることが可能となる。
本発明を適用することができる農作物の種類は得意に限定されず、水菜、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー等の野菜、いちご、もも、りんご、みかん等の果物、稲、小麦等の穀物類等、任意の種類の農作物に適用することができる。
本発明を次の実施例及び比較例により説明するが、これらに限定されるものではない。
(例1)水耕栽培
樹脂性のスポンジに水道水を含有させ、水菜、小松菜、ほうれん草の計3品種の種子を該樹脂性のスポンジ上に播種して、発芽させた。
発芽した水菜、小松菜、ほうれん草の幼体を、それぞれ、完全閉鎖型の野菜プラント(プラントセラーTAPSH−1−SP、エスペック社製)を用いて、照射光量光量5000〜15000lx、水温20℃、光照射時間を12、5時間(12、5時間光照射し、11、5時間は光照射しない)で、電気伝導度(EC)が1.5dS/mとなるように肥料(大塚A処方)を添加した養液で水耕栽培を行った。
発芽時から収穫時までの栽培期間を30日と設定し、図1に示すように、収穫時から遡って2日間(試験区5)、4日間(試験区4)、6日間(試験区3)、8日間(試験区2)および10日間(試験区1)をそれぞれ第2栽培期間として海洋深層水(伊豆赤沢産)を用いて栽培し、第1栽培期間として水道水等を用いて栽培をおこなった。
具体的には、第1栽培期間の養液としては上記肥料と水道水を用い、第2栽培期間の養液としては上記肥料と20容量%の海洋深層水(以下、20%DSW養液という)を用いて栽培を行った。
なお、比較のために30日の栽培期間を通じて、養液として上記肥料と水道水を用いて栽培を行ったものを対照区として、各野菜を栽培した(第2栽培期間0日間)。
栽培期間30日目に各試験区及び対照区の水菜、小松菜、ほうれん草の各野菜を収穫した。
得られた各野菜の可食部を細切し、各野菜1gに対して1%塩酸50mLを加え、室温にて1時間振盪抽出した後、ICP発光分析装置(ICPE−9000、島津製作所社製)を用いて、Ca、Mg含量を測定した。また、Na、K含量も測定した。
得られたCa、Mg、Na、K含量と第2栽培期間との関係を図2〜5に示す。
具体的には、各試験区における水菜のCa、Mg、Na、K含量の測定結果を図2(a)〜(d)に、小松菜の測定結果を図3(a)〜(d)に、ほうれん草の測定結果を図4(a)〜(d)にそれぞれ示す。また、これらの結果を表1に示す。
Figure 0006316791
これらの図2〜4や表1の結果についてCa、Mg、Na、K含量に関しまとめた図を図5(a)〜(d)として示す。
図2〜4や表1に示す結果より、水菜、小松菜、ほうれん草のカルシウム/マグネシウム質量比を求め、図6に第2栽培期間とカルシウム/マグネシウム質量比との関係を示す(図6(a)〜(c))。
なお、図2〜6の横軸の栽培期間は、第2栽培期間を示すものである。
また、第2栽培期間として20%DSW養液を用いた試験区1〜5において、対照区とほぼ同様の収量の各野菜が得られ、3種の野菜ともに20%DSW養液による第2栽培期間の長さにほぼ相関してNa含量は増加したが、各野菜が枯れる等の生長に顕著な阻害は観察されなかった。
また、ほうれん草では、第2栽培期間の長さにほぼ相関して、Mg含量が緩やかに増加し、Ca含量は減少した。
水菜や小松菜では、Mg含量は、20%DSW養液による第2栽培期間が2日間であっても野菜にMg含量の増加が確認された。
水菜とほうれん草の20%DSW養液による第2栽培期間が4日間以上の試験区1〜4ではKとCa含量は減少する傾向が見られた。
図6より、3種の野菜ともに20%DSW養液による第2栽培期間の長さにほぼ相関して、カルシウム/マグネシウム質量比が減少した。
これらの結果から、20%DSW養液による第2栽培期間が2日間であっても野菜にMg含量の増加が確認され、収穫前の第2栽培期間が2日間という短期間であっても、カルシウム/マグネシウム質量比は、20%DSW養液を用いると減少させることが可能となった。
対照区と比較して、DSW養液による第2栽培期間を設けることにより、全ての野菜においてMg含量やNa含量が増加し、Ca含量やK含量が減少する傾向が得られた。また、このことからこれらの成分の吸収に際し、NaとK及びMgとCaにそれぞれ拮抗作用がある可能性が推察される。
これらの結果より、本発明は、海洋深層水を用いた野菜栽培において、塩分による生長抑制等のリスクを低減することができ、野菜中のマグネシウム含量を増加させ、カルシウム/マグネシウム質量比を水道水による対照区の水耕栽培と比較して減少させることができた。
また、所望するマグネシウム以外の他のミネラル成分も、本発明を利用することにより、農作物中に含有させることができることが期待される。
(例2)浸漬方法
樹脂性のスポンジに水道水を含有させ、水菜、小松菜、ほうれん草の計3品種の種子をその上に播種して、発芽させた。発芽した後、それぞれ、完全閉鎖型の野菜プラント(プラントセラーTAPSH−1−SP、エスペック社製)を用いて、照射光量5000〜15000lx、水温20℃、光照射時間を12.5時間(12.5時間光照射し、11.5時間は光照射しない)で、上記肥料と水道水で水耕栽培を行って、各野菜を収穫した。
収穫した水菜、小松菜、ほうれん草の各3株の根を、海洋深層水に16時間及び24時間浸漬した。なお、海洋深層水の濃度は20容量%、40容量%、60容量%、80容量%、100容量%と変化させたものをそれぞれ適用した。
比較のために、水道水を用いて、上記各野菜を16時間、24時間浸漬した。
上記各濃度の海洋深層水及び水道水を用いて16時間、24時間浸漬した各野菜の可食部を細切し、各野菜1gに対して1%塩酸50mLを加え、室温にて1時間振盪抽出した後、ICP発光分析装置(ICPE−9000、島津製作所社製)を用いて、Na、K、Ca及びMg含量を測定した。
得られた各野菜の平均Ca、Mg、Na及びK含量と浸漬時間との関係を図7(a)〜(d)及び表2に示す。また、図7に示す結果より、水菜、小松菜、ほうれん草のカルシウム/マグネシウム質量比を求め、図8に浸漬時間とカルシウム/マグネシウム質量比との関係を示す(図8(a)〜(c))。
Figure 0006316791
前記3種の野菜に関し、収穫後の野菜を海水に所定時間浸漬することを設けることにより、Mg含量の増加が確認された。
収穫後の野菜を所定時間海水に浸漬しても収穫された野菜に対して海洋深層水による影響はほとんどなく、野菜中のマグネシウム含量を増加させ、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させることが可能となった。
(例3)浸漬方法
海水を用いないで露地栽培により育成した小松菜を根ごと収穫した。
収穫した小松菜の3株を洗浄して、根をそのまま残した小松菜と、根をほとんど切り落とした小松菜を準備した。根をそのまま残した小松菜は、各株の根を、また根を切り落とした小松菜は各株の切り取り部を、海洋深層水に16時間、24時間浸漬した。なお、海洋深層水の濃度は20容量%、40容量%、60容量%、80容量%、100容量%と変化させたものをそれぞれ適用した。
比較のために、水道水を用いて、上記各小松菜を16時間、24時間浸漬した。
上記各濃度の海洋深層水及び水道水を用いて16時間、24時間浸漬した各小松菜の可食部を細切し、各野菜1gに対して1%塩酸50mLを加え、室温にて1時間振盪抽出した後、ICP発光分析装置(ICPE−9000、島津製作所社製)を用いて、Na、K、Ca及びMg含量を測定した。
得られた小松菜のカルシウム/マグネシウム質量比と海洋深層水濃度との関係を図9(a)〜(d)に示す。
水耕栽培や露地栽培で得られた小松菜に関し、収穫後の野菜を海水に所定時間浸漬することを設けることにより、Mg含量の増加が確認された。
収穫後の野菜を所定時間海水に浸漬しても収穫された野菜に対して海洋深層水による影響はほとんどなく、野菜中のマグネシウム含量を増加させ、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させることが可能となった。
これらの結果より、所望するマグネシウム以外の他のミネラル成分も、収穫した野菜を海水に短時間浸漬することで、所望するミネラルを農作物中に含有させることができることが期待される。
本発明は、海水中の塩分による生長抑制等のリスクを低減して農作物に所望するミネラル、特にマグネシウム分を多く含む農作物を得るための農作物の栽培に利用することができる。特に、虚血性心疾患をはじめとする急性冠性症候群(ACS)発症の大きな要因とされているカルシウム/マグネシウム摂取比の増加を低減させることができる、農作物の栽培に利用することが可能となる。

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  1. 培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時までの期間を第1栽培期間とし、第2栽培期間は、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/300の期間であり、前記第2栽培期間において海洋深層水を継続的に用いて農作物と海洋深層水とを接触させて農作物を栽培し、カルシウム/マグネシウム質量比を減少させることを特徴とする、海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法。
  2. 請求項1記載の海水を用いた農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法において、第2栽培期間は、海洋深層水濃度が20容量%以下の場合には、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/30の期間であり、海洋深層水濃度が20容量%を超える場合には、1/30〜1/300の期間であることを特徴とする、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比減少方法。
  3. 栽培する農作物に応じて発芽時から収穫時までの栽培期間を予め設定して、収穫時から遡った所定の期間を第2栽培期間とし、当該第2栽培期間から遡って発芽時までの期間を第1栽培期間とし、第2栽培期間は、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/300の期間であり、前記第2栽培期間において海洋深層水を継続的に用いて農作物と海洋深層水とを接触させ、農作物中のカルシウム/マグネシウム質量比を減少させて、農作物を栽培することを特徴とする、海水を用いた農作物の栽培方法。
  4. 請求項記載の農作物の栽培方法において、第2栽培期間は、海洋深層水濃度が20容量%以下の場合には、発芽時から収穫時までの栽培期間全体の1/3〜1/30の期間であり、海洋深層水濃度が20容量%を超える場合には、1/30〜1/300の期間であることを特徴とする、海水を用いた農作物の栽培方法。
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