画像形成装置には、用紙に転写されたトナー像を加熱及び加圧して用紙に定着する定着装置が備えられている。定着装置は、熱源によって加熱される加熱ローラーと、加熱ローラーに押し当てられて、用紙が通過する加圧領域を形成する加圧ローラーと、を有している。厚さの異なる用紙に対応したり各ローラーの変形や劣化を防止したりするために、加圧領域の圧力は変更できるようになっている。
加圧領域の圧力を変更する機構には、一般的にカムが使用される。詳細には、加圧ローラーの両端部は加圧レバーに支持され、各加圧レバーがバネによって付勢されて、加圧ローラーが加熱ローラーに押し当てられている。カムは、バネを保持するバネホルダーに当接しており、カムを回転させてバネの圧縮量を変更することで、加圧領域の圧力が加圧又は減圧される。カムは、ギア列を介してモーターに連結されて、回転力がギア列によって減速されてカムに加えられる。カムの回転角度は、センサーと回転時間によってコントロールされている。
図8A、図8Bに示されるように、カム200の外周面には、カム半径が周方向において略一定の小径区間200aと、カム半径が徐々に大きくなる上昇区間200bと、カム半径が徐々に小さくなる下降区間200cと、が周方向に沿って形成されている。バネホルダー203が上昇区間200bに沿って上昇すると、バネ205が圧縮されて加圧領域は加圧される。一方、バネホルダー203が下降区間200cに沿って下降すると、バネ205が伸長して加圧領域は減圧される。このようなカム100においては、上昇区間200bと下降区間200cでは、バネ205からカム200に加わる負荷の方向が切り替わる。
各図の実線矢印Aは、カム200とバネホルダー203との接触点で、バネホルダー203を介してバネ205からカム200が受ける垂直抗力を示す。破線矢印A1、A2は、垂直抗力Aを、バネホルダー203の運動方向と運動方向に直交する方向とに分割した力を示し、破線矢印A1が、圧縮されたバネ205が発する力を示し、破線矢印A2が、カム200を回転させる力を示す。
図8Aで示されるように、上昇区間200bでは、カム200を回転させる力の方向A2は、モーターによるカム200の回転方向Bとは反対の方向である。一方、図8Bで示されるように、下降区間200cでは、カム200を回転させる力の方向A2は、モーターによるカム200の回転方向Bと同じ方向となる。このように、負荷の方向が切り替わった場合、ギア列において衝突音が発生することがある。
この衝突音の発生について、図9A、図9Bを参照して説明する。図9A、図9Bは、ギア列の内の、互いに噛み合うモーター側ギア211とカム側ギア213とを示している。加圧領域の加圧時には、前述のとおり、図9Aに示されるように、モーターによるカム200の回転方向Bとは反対の方向A2の負荷がバネ205からカム200に加わり、カム200からカム側ギア213に加わる。つまり、モーターからの回転力の回転方向Bにおいて、カム側ギア213の上流側の歯面213aが、モーター側ギア211の下流側の歯面211aに当接して、回転方向Bにカム側ギア213が回転する。
一方、加圧領域の減圧時には、前述の通り、図9Bに示されるように、モーターによるカム200の回転方向Bと同じ方向A2の負荷がバネ205からカム200に加わり、カム200からカム側ギア213に加わる。
このように、カム側ギア213に加わる負荷が切り替わると、モーターによるカムの回転方向Bと同じ方向に、バックラッシュの分だけカム側ギア213が勢いよく回転する。一方、モーター側ギア211は、モーターによって一定の速度で回転しているので、モーターからの回転力の回転方向Bにおいて、カム側ギア213の下流側の歯面213bが、モーター側ギア211の上流側の歯面211bに勢いよく衝突する。この際に発生する衝突音が使用者に不快感を与える場合がある。
そこで、特許文献1には、ギアの歯を軟質な材料で形成することで、衝突音を減少させる提案がなされている。また、特許文献2には、カムの回転にブレーキをかけて回転力を減少させる提案がなされている。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る回転力伝達機構、定着装置並びに画像形成装置について説明する。
まず、図1を用いて、画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るプリンターの概略を示す模式図である。以下の説明では、図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きプリンター1を正面から見た方向を基準とする。各図に付される矢印Fr、Rr、L、R、Up、Loは、それぞれプリンター1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を示している。
プリンター1の装置本体1aには、用紙Sが収容される給紙カセット3と、給紙カセット3から用紙Sを給紙する給紙装置5と、用紙Sにトナー像を形成する画像形成部7と、トナー像を用紙Sに定着する定着装置9と、トナー像が定着された用紙Sを排出する排出装置11と、排出された用紙Sを受け止める排出トレイ13と、が備えられている。また、装置本体1aには、給紙装置5から、画像形成部7と定着装置9とを通って、排出装置11に向かう用紙Sの搬送経路15が形成されている。
次に、図2〜図4を参照して、定着装置9について説明する。図2は定着装置を示す斜視図、図3及び図4は定着装置を示す断面図である。
定着装置9は、図3及び図4に示されるように、定着ハウジング21と、互いに接触して加圧領域を形成する加熱ローラー23及び加圧ローラー25と、加圧ローラー25の両端部を支持する一対の加圧レバー27と、一対の加圧レバー27を揺動させるカム29を含み、該カム29に回転力を伝達する回転力伝達機構31(図2参照)と、を備えている。
図3及び図4に示されるように、定着ハウジング21の内部の前端部と後端部のそれぞれには、加圧レバー27を支持する支持部35が設けられている。支持部35の右端部の上端には、突部37が形成されている。突部37は上方に向かって断面半円弧状に突出している。支持部35の左端部の底面には、ハウジング側バネ受け部39とホルダー収容部41とが、突部37から近い順に左右方向に並んで形成されている。ハウジング側バネ受け部39は、上方に向かって突出している。
ホルダー収容部41は上下方向に延びる縦穴状に形成されている。ホルダー収容部41の上端面は開口しており、下端面には挿通穴41aが形成されている。ホルダー収容部41には、バネホルダー43が上下方向に移動可能に収容されている。バネホルダー43は略円筒状の部材である。バネホルダー43の上端面には、バネ受け凹部45が形成されている。バネホルダー43の上部の外周面には、周方向に沿って所定の間隔を開けて、突起47が形成されている。バネホルダー43は挿通穴41aから下方に突き出して、挿通穴41aの周囲に突起47が係止されることで、ホルダー収容部41に抜け止めされている。
加熱ローラー23は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、芯材の外周面に設けられるシリコンゴム等から成る弾性層と、弾性層を被覆するPFA等のフッ素樹脂からなる離型層と、を備えている。芯材の両端部は、定着ハウジング21に回転可能に支持されている。芯材の内部空間には、熱源としてのヒーター24が収容されている。ヒーター24は、例えばハロゲンヒーターやセラミックヒーターである。
加圧ローラー25は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、芯材の外周面に設けられるシリコンゴム等から成る弾性層と、この弾性層を被覆するPFA等のフッ素樹脂からなる離型層と、を備えている。芯材の両端部には、軸受51が固定されている。
一対の加圧レバー27の各々は、屈曲部を介して略直角に屈曲する略L字状を成している。加圧レバー27には、屈曲部の後部の上面に下向きの円弧状のローラー受け部53が形成されている。ローラー受け部53には、加圧ローラー25の軸受51が支持される。
さらに、加圧レバー27には、定着ハウジング21の支持部35に設けられた突部37、ハウジング側バネ受け部39、ホルダー収容部41にそれぞれ対応する、凹部55、第1バネ受け部57、第2バネ受け部59が形成されている。
凹部55は、加圧レバー27の右端部の下面に形成されている。凹部55は突部37に係合して、加圧レバー27は、凹部75を中心として上下方向に揺動可能となっている。
第1バネ受け部57と第2バネ受け部59とは、加圧レバー27の左端部の下面に、凹部55から近い順に左右方向に並んでいる。第1バネ受け部57とハウジング側バネ受け部39との間には、第1バネ61が介装されている。第1バネ61は、加圧レバー27を上方に付勢している。これにより、加圧レバー27が上方に揺動して加圧ローラー25が加熱ローラー23に押し当てられ、両ローラー間に加圧領域を形成している。この加圧領域を用紙が通過することで、用紙にトナー像が定着される。第2バネ受け部59とバネホルダー43のバネ受け凹部45との間には、第2バネ63が介装されている。
次に、回転力伝達機構31について、図2を参照して説明する。回転力伝達機構31は、各バネホルダー43に対向するように設けられるカム29と、一定の方向への回転力を発生する駆動源としてのモーター71と、カム29とモーター71との間に介装されて回転力をモーター71からカム29に伝えるギア列73と、を備えている。
カム29は、カム軸75と、カム軸75と一体に回転する2つのカム本体77と、を有している。2つのカム本体77は、所定の間隔を開けてカム軸75に固定されている。カム軸75の後端には、カム出力ギア75aが固定されている。
各カム本体77の外周面には、図3及び図4に示されるように、周方向に沿って順に、カム軸75の回転中心からのカム半径(カム軸75の中心とカム本体77の外周面との距離)が周方向において略一定の小径区間77aと、カム半径が徐々に大きくなる上昇区間77bと、カム半径が徐々に小さくなる下降区間77cと、が形成されている。
カム29は、各カム本体77が、定着ハウジング21の各ホルダー収容部41の挿通穴41aの下方に位置するように、定着ハウジング21に回転可能に支持されている。
ギア列73は、モーター側からカム側に向かって順に、すなわち、回転力の伝達方向に沿って順に配列された第1〜第5ギア81、82、83、84、85を有している。第1ギア81は、大径ギアと小径ギアとを有する二段ギアであり、大径ギアがモーター71の出力ギア71aと噛み合っている。第2ギア82は、平歯車であり、第1ギア81の小径ギアと噛み合っている。第3ギア83は、大径ギアと小径ギアとを有する二段ギアであり、大径ギアが第2ギア82と噛み合っている。第4ギア84は、平歯車であり、第3ギア83の小径ギアと噛み合っている。第5ギア85は、大径ギア91と小径ギア92とを有する二段ギアであり、大径ギア91が第4ギア84と噛み合い、小径ギア92がカム出力ギア75aと噛み合っている。モーター71が回転すると、モーター71の回転力がギア列73によって減速されてカム出力ギア75aに伝達され、カム軸75と共にカム本体77が回転するようになっている。この例では、モーター71は、図2の矢印Bで示される方向への回転力を、カム本体77に伝達する。
次に、第5ギア85について、図5及び図6を参照して説明する。図5は第5ギアの斜視図、図6は第5ギアの分解斜視図である。前述のように、第5ギア85は、回転力の伝達方向において上流側に設けられる駆動源側ギアとしての大径ギア91と、大径ギア91の下流側に設けられるカム側ギアとしての小径ギア92と、に軸上において分割されている。大径ギア91の歯数は、小径ギア92の歯数よりも多い。第5ギア85は、カム本体77に、前述のように矢印Bで示される方向への回転力を伝達する。
図6の上側の図に示されるように、大径ギア91の中心には軸孔101が形成されている。大径ギア91の小径ギア92に対向する側面91aには、軸孔101の周囲から小径ギア92の側に突出する筒部103が形成されている。さらに、大径ギア91の側面91aには、筒部103の側面から径方向に沿って延びる2つの突片105が形成されている。2つの突片105は、大径ギア91の中心に対して中心角度α(図7A参照)が180度の位置に形成されている。中心角度αは、詳細には、一方の突片105の回転方向下流側の面と、他方の突片105の回転方向下流側の面との間の角度である。各突片105は、筒部103よりも小径ギア92の側に突出した係合部107を有している。また、各突片105の、回転方向上流側の面には、補強リブ109が形成されている。
図6の下側の図に示されるように、小径ギア92の中心には軸孔111が形成されている。小径ギア92の大径ギア91に対向する側面92aには、軸孔111の周囲から大径ギア91の側に突出する筒部113が形成されている。さらに、小径ギア92の側面92aには、筒部113の周囲に沿って環状の溝115が形成されている。さらに、小径ギア92の側面92aには、筒部113の側面から径方向に沿って延びる2つの突片117が形成されている。2つの突片117は、大径ギア91の2つの突片105と同様に、小径ギア92の中心に対して中心角度α(図7A参照)が180度の位置に形成されている。中心角度αは、詳細には、一方の突片117の回転方向上流側の面と、他方の突片117の回転方向上流側の面との間の角度である。各突片117は、筒部113よりも大径ギア91の側に突出した被係合部119を有している。また、各突片117の、回転方向下流側の面には、2つの補強リブ121が形成されている。
図5に示されるように、大径ギア91と小径ギア92とは、同軸上に配列されてそれぞれの筒部103、113の先端面が当接している。このように筒部103、113の先端面が当接すると、大径ギア91の係合部107と、小径ギア92の被係合部119とが、回転方向において重なる。詳細には、係合部107の回転方向下流側の面が、被係合部119の回転方向上流側の面に対向する。
第1〜第4ギア81、82、83、84を介して、モーター71から第5ギア85の大径ギア91に回転方向Bの回転力が伝えられると、大径ギア91の係合部107の回転方向下流側の面が、小径ギア92の被係合部119の回転方向上流側の面に当接して、小径ギア92が大径ギア91と共に同じ方向に回転する。すなわち、回転力が大径ギア91から小径ギア92に伝達される。これにより、小径ギア92と噛み合っているカム出力ギア75aが回転して、カム軸75と共にカム本体77が回転する。
上記構成を有する定着装置9において、回転力伝達機構31によって加圧領域の圧力を変更する動作について、図3及び図4と図7A、図7B、図7C、図7Dを参照して説明する。
印字動作が開始される前の状態では、図3に示されるように、バネホルダー43はホルダー収容部41に収容されて、突起47によって抜け止めされている。カム本体77は、小径区間77aがバネホルダー43の下端部に対向するように回転している。この状態で、バネホルダー43の下端部は、カム本体77に当接しておらず、第2バネ63は自然長に保持されている。したがって、加圧レバー27には第2バネ63の付勢力は働かず、第1バネ61の付勢力のみによって押し上げられて、加圧ローラー25を加熱ローラー23に押圧している。この時の加圧領域の圧力をP1とする。また、第5ギア85においては、図7Aに示されるように、小径ギア92の被係合部119が大径ギア91の係合部107に当接して、小径ギア92と大径ギア91とが係合している。
印字動作開始時にモーター71が駆動されると、回転力はギア列73を介してカム29に伝達されて、カム29が回転を始める。やがて、カム本体77の上昇区間77bがバネホルダー43に当接し始めると、カム29には、モーター71によるカム29の回転方向(矢印Bの方向、以降、単に回転方向と言う)とは反対の方向(矢印A2の方向、以降、単に反対方向と言う)の負荷が第2バネ63から加わる。この負荷は、カム出力ギア75aを介して小径ギア92に加わり、小径ギア92が反対方向A2に回転しようとする。しかし、第2バネ63から小径ギア92に加わる力は、モーター71から大径ギア91に伝達された回転力よりも小さいので、小径ギア92の被係合部119の回転方向上流側の面は、大径ギア91の係合部107の回転方向下流側の面に当接したまま、被係合部119が係合部107で押されるように、小径ギア92が大径ギア91と共に回転する。そして、小径ギア92からカム出力ギア75aに回転力が伝わり、カム29が回転する。
なお、バネホルダー43がカム本体77に当接していない状態で、小径ギア92の被係合部119は、大径ギア91の係合部107に必ずしも当接している必要はない。この場合、モーター71が駆動されてカム29が回転を始めると、反対方向の負荷が第2バネ63からカム29に加わるので、カム29が反対方向A2に回転して、被係合部119が係合部107に当接し、小径ギア92と大径ギア91とが係合する。しかし、被係合部119が係合部107に当接する際に衝突音が発生する場合もあるので、被係合部119が係合部107に予め当接していることが好ましい。
カム29が回転すると、バネホルダー43はカム本体77の上昇区間77bに沿って上昇し、第2バネ63を介して加圧レバー27の第2バネ受け部59が押し上げられる。これにより、図4に示されるように、加圧レバー27が凹部55を中心に上方に揺動し、加圧ローラー25が加熱ローラー23に接近し、加圧レバー27から加圧ローラー25への加圧力と加圧ローラー25の弾性層の弾発力が釣り合った位置で加圧ローラー25が停止する。これに伴って、加圧領域の圧力がP1よりも大きなP2に移行する。この時、第1バネ61の付勢力も加圧レバー27に働いている。
第5ギア85においては、バネホルダー43が下降区間77cに移行するまで、図7Bに示されるように、大径ギア91と小径ギア92とが係合したまま、回転方向Bに回転する。
一方、プリンター1の電源OFF時等の放置時などは、加圧領域の圧力を減圧させて加熱ローラー23や加圧ローラー25に加わる負荷を低下させる。そこで、この場合には、モーター71が駆動されて、ギア列73を介してカム29をさらに回転させる。カム29の回転により、バネホルダー43は上昇区間77bから下降区間77cに移行し、下降区間77cに沿って下降する。
バネホルダー43が上昇区間77bから下降区間77cに移行する際、前述のように、第2バネ63からカム29に加わる負荷の方向が、反対方向A2から回転方向Bに切り替わり、カム出力ギア75aと噛み合っている小径ギア92は、回転方向Bに回転しようとする。この際の小径ギア92の回転速度は、モーター71からの回転力によって回転する大径ギア91の回転速度よりも速いので、図7Cに示されるように、小径ギア92の被係合部119が大径ギア91の係合部107から回転方向下流側に離間して、小径ギア92は大径ギア91に対して空転する。一例として、小径ギア92の回転角度βは120°である。大径ギア91の係合部107間の中心角度αは180°であるので、被係合部119は、もう一方の係合部107には当接しないようになっている。なお、小径ギア92の空転時には、負荷トルクがほとんどないため、被係合部119が係合部107に当接したとしても、その際の衝突音は小さい。
このように小径ギア92が大径ギア91に対して空転した後、あるいは、空転する間、大径ギア91にはモーター71からの回転力が伝達されているので、大径ギア91は回転方向Bに回転する。大径ギア91は、図7Dに示されるように、先に回転している小径ギア92の被係合部119に係合部107が当接するまで回転する。このように被係合部119に係合部107が当接すると、大径ギア91と小径ギア92とが係合して、回転力がカム出力ギア75aに伝えられて、カム29が回転する。なお、大径ギア91の回転速度は遅いので、係合部107は被係合部119にゆっくりと係合するため、係合部107と被係合部119とが係合する際の歯面の衝突音は小さい。
カム29の回転によって、バネホルダー43が下降区間77bに沿って下降すると、カム29によるバネホルダー43の押圧が解除されて、第2バネ63の付勢力が加圧レバー27に働かなくなり、ニップ圧がP2からP1に減圧される。
上記説明したように、本発明の定着装置9においては、第2バネ63から加わる負荷によってカム29の回転方向が切り替わると、第5ギア85において、小径ギア92は、大径ギア91に干渉せずに空転する。したがって、ギアの歯面の衝突等は発生せず、衝突音の発生等の不快感を使用者に与えることがない。
また、大径ギア91の2つの係合部107間の中心角度αは、小径ギア92の空転時の回転角度βよりも大きいので、小径ギア92が空転しても、被係合部119がもう一方の係合部107には当接しないようになっている。係合部107と被係合部119とを、中心角度αが180度の位置にそれぞれ2個形成することで、小径ギア92の空転時に被係合部119の係合部107への当接を回避しつつ、係合部107と被係合部119との係合強度を高めることができる。なお、係合部107と被係合部119とは、それぞれ1つ或いは3つ以上としても良い。
さらに、大径ギア91と小径ギア92の各側面に突片105、117を形成することで、各突片105、117の強度を高めることができるので、係合部107と被係合部119との係合強度が高くなり、大径ギア91から小径ギア92に回転力を確実に伝達することができる。なお、各突片105、117を軸孔101、111内に突出するように形成しても良い。
なお、本実施形態では、第5ギア85を大径ギア91と小径ギア92とに分割すると記載したが、大径ギア91と小径ギア92とを独立して考えても良い。すなわち、ギア列73が、第5ギアとして大径ギア91、第6ギアとして小径ギア92を含む構成としても良い。
さらに、第5ギア85を、カム軸75と同軸上に設けても良い。すなわち、カム出力ギア75aとして小径ギア92を使用する。この場合、ギア列73におけるギアの歯面の衝突が解消される。本実施形態の様に第5ギア85に本発明を適用した場合、第5ギア85の小径ギア92とカム出力ギア75aとの間で、カム29の回転方向の切り替わりによってギアの歯面の衝突が発生する。つまり、本発明が適用された第5ギア85よりも回転力の伝達方向の下流側では、ギアの歯面の衝突が発生するので、できるだけ下流側のギアに本発明を適用することが好ましい。つまりは、カム出力ギア75aに本発明を適用することが最も好ましい。
また、大径ギア91と小径ギア92とギアの歯数が異なっているので、モーター71の回転力を減速してカム29に伝達することができる。
本実施形態では、定着装置に本発明の回転力伝達機構31を適用する場合について説明したが、カム29を用いて圧力を変更する構成を有するシート搬送装置等にも適用することができる。さらに、プリンター以外の複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置や、家電製品や産業機器にも適用することも可能である。
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る回転力伝達機構、定着装置並びに画像形成装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。