以下の説明は、Qi仕様から知られているような電力伝送手法を利用したワイヤレス電力伝送システムに応用可能な本発明の実施形態に焦点を合わせる。しかしながら、本発明は、この応用に制限されず、多くの他のワイヤレス電力伝送システムに応用されてもよいことを理解されたい。
図1は、本発明のいくつかの実施形態に従う電力伝送システムの例を例証する。電力伝送システムは、送信機インダクタ/インダクタ103を含む(又はそれに結合される)電力送信機101を備える。本システムは、受信機コイル/インダクタ107を含む(又はそれに結合される)電力受信機105をさらに備える。
本システムは、電力送信機101から受信機105へのワイヤレス誘導電力伝送を提供する。具体的には、電力送信機101は、ワイヤレス誘導電力伝送信号(電力伝送信号、又は誘導電力伝送信号とも称される)を生成し、この信号は送信機インダクタ103により磁束として伝播される。電力伝送信号は、典型的にはおよそ70kHzからおよそ150kHzの間の周波数、及び多くの場合、Qi準拠システムでは、典型的には95kHz〜115kHzの範囲の周波数を有する。送信機インダクタ103及び受信機コイル107は、疎結合され、故に受信機コイル107は、電力送信機101から電力伝送信号(の少なくとも部分)を拾い上げる。したがって、電力は、送信機インダクタ103から受信機コイル107へのワイヤレス誘導結合により電力送信機101から電力受信機105へ伝送される。電力伝送信号という用語は、主に、送信機インダクタ103と受信機コイル107との間の誘導信号/磁場(磁束信号)を指すために使用されるが、この用語は、等価によって、送信機インダクタ103に提供される電気信号又は受信機コイル107によって拾い上げられる電気信号への言及とも見なされ且つ使用されることを理解されたい。
本システムは、かなりの電力レベルを伝送するように構成され、具体的には、本電力送信機は、多くの実施形態において、500mW、1W、5W、又は50Wを超過する電力レベルをサポートする。例えば、Qi対応の用途の場合、電力伝送は、典型的には、低電力用途では1〜5Wの電力範囲内にあり、例えば台所用途などの高電力用途では100Wを超過し且つ最大1000Wである。
図2は、図1のシステムの特定の例のシステム構造をもう少し詳細に例証する。この例では、電力送信機101の出力回路は、送信機インダクタ103を含む共振タンク又は共振回路201を含む(図2では、送信機インダクタ103は、明確性のために共振回路201の外部に示されるが、この一部分であると見なされる)。電力送信機101の共振回路201は、送信機共振回路201とも称される。共振回路201は、典型的には、直列又は並列共振回路であり、特に、送信機インダクタ103に並列で(又は直列で)結合された共振コンデンサからなる。電力伝送信号は、好適な駆動周波数(典型的には、20〜200kHz周波数範囲)で駆動信号を生成するドライバ203から出力共振回路を駆動することによって生成される。
同様に、電力受信機105の入力回路は、受信機インダクタ107を含む共振回路又は共振タンク205を含む(図2では、受信機インダクタ107は、明確性のために共振回路205の外部に示されるが、この部分であると見なされる)。電力受信機105の共振回路205は、受信機共振回路205又は受信機共振回路とも称される。受信機共振回路205は、典型的には、直列又は並列共振回路であり、特に、受信機インダクタ107に並列で(又は直列で)結合された共振コンデンサからなる。受信機共振回路205は、電力変換装置207に結合され、この電力変換装置207は、受信した電力伝送信号、即ち、受信機共振回路205によって提供される誘起信号を、外部負荷209に提供される電力に変換する(典型的には、当業者によく知られるようなAC/DC変換を実施することによって)。
負荷は、例えば、バッテリであり、電力提供は、バッテリを充電するためである。別の例として、負荷は、別個のデバイスであり、電力提供は、このデバイスへの電力供給のためである。
本システムでは、送信機共振回路201の共振回路201は、固定共振回路ではなく、むしろ駆動周波数に従うように制御される可変共振回路である。具体的には、共振回路201の効果的な共振周波数を適合させるための手法が使用される。本手法では、共振回路201の(共振)コンポーネントのうちの少なくとも1つの動的な状態変化は、サイクルの一部分的の間、一時的に遅くされる(場合によっては完全に停止されることを含む)。本手法は、後でより詳細に説明される。
図2のドライバ203は、変化する(及び典型的には、AC)電圧駆動信号を生成し、この電圧駆動信号は、共振回路に(故に共振コンデンサ(図2には示されない)及び送信機インダクタ103に)印加される。いくつかの実施形態において、送信機共振回路201は、直列共振回路であり、電圧駆動信号は、コンデンサ及びインダクタにわたって印加される。いくつかの実施形態において、ドライバ203は、送信コイル103に直接的に(又は間接的に)結合され、電圧駆動信号が送信コイル103に提供される。
したがって、本システムでは、ドライバ203は、送信機共振回路201/送信コイル103に供給される駆動信号を生成し、電力受信機105へ電力を提供する電力伝送信号を送信コイル103に生成させる。駆動信号は、駆動周波数と称される所与の周波数を有するように生成され、即ち、駆動周波数は、駆動信号の周波数である。
ドライバ203は、送信機インダクタ103に供給される電流及び電圧を生成する。ドライバ203は、典型的には、DC電圧から交流信号を生成するインバータの形態にある駆動回路である。ドライバ203の出力部は、典型的には、スイッチブリッジであり、これは、スイッチブリッジのスイッチの適切な切り替えによって駆動信号を生成する。図3は、ハーフブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1及びS2は、それらが決して同時に閉成されないように制御される。交互に、S1は、S2が開成されている間は閉成され、S2は、S1が開成されている間は閉成される。スイッチは、所望の周波数で開成及び閉成され、それにより出力部で交流信号を生成する。典型的には、インバータの出力部は、共振コンデンサを介して送信機インダクタに接続される。図4は、フルブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1及びS2は、それらが決して同時に閉成されないように制御される。スイッチS3及びS4は、それらが決して同時に閉成されないように制御される。交互に、S1及びS4は、S2及びS3が開成されている間は閉成され、次いでS2及びS3は、S1及びS4が開成されている間は閉成され、それにより出力部で方形波信号を作成する。スイッチは、所望の周波数で開成及び閉成される。
ドライバ203は、したがって、所与の駆動周波数を有する駆動信号を生成し、この信号を送信機共振回路201に印加する。送信機共振回路201は、誘導性インピーダンス部及び容量性インピーダンス部によって形成される。
図1及び図2のシステムでは、共振周波数を制御する特に有利なやり方が提供される。本手法では、電力送信機は、駆動信号の少なくとも複数のサイクルのうちの各々のサイクルの部分的時間間隔の間、送信機共振回路201の容量性インピーダンス部及び誘導性インピーダンス部の少なくとも一方の状態変化を遅くすることによって、送信機共振回路201の共振周波数を駆動周波数と揃えるための機能を備える。したがって、本手法では、送信機共振回路201は、容量性インピーダンス部及び誘導性インピーダンス部によって得られる固有周波数で自由に振動することが許されず、むしろ共振は、サイクルの一部分にわたってインピーダンス部(の少なくとも一方)の状態変化が遅くされる(特に停止される)ことによって制御される。これが、送信機共振回路201の効果的な共振周波数の低減を結果的にもたらす。したがって、送信機共振回路201は、効果的な共振周波数を有するように制御され、効果的な共振周波数は、インピーダンス部によって得られる、即ち、
より低い周波数によって得られる固有共振周波数より低く、ここで、L及びCは、送信機共振回路201の組み合わされたインダクタンス及び静電容量を表す。
この特定の手法では、送信機共振回路201は、送信機共振回路201を駆動する駆動信号に応じて制御され、それにより動作周波数及び送信機共振周波数が自動的に互いにリンクすることを本質的に可能にする。実際、本手法は、動作周波数及び送信機共振周波数が自動的及び本質的に、実質的に同じであることを可能にし、その結果、本システムは、単に駆動信号の動作周波数を適合させることができ、効果的な送信機共振周波数は、自動的及び本質的に、直接的に従うように適合されている。本手法は、具体的には、送信機共振回路201の効果的な共振の各サイクルが、駆動信号の対応するサイクルと同じ持続時間を有することを確実にすることができる。加えて、本手法は、これが非常に低い追加の複雑性及び非常に低い制御オーバーヘッドで達成されることを可能にする。
図5は、そのような手法の例に従う電力送信機のエレメントを例証する。
本例では、電力送信機は、共振回路を形成する誘導性インピーダンス部501及び容量性インピーダンス部503を備える。
この特定の例では、誘導性インピーダンス部501は、インダクタに直接対応するが、他の実施形態においては、誘導性インピーダンス部501は、少なくとも部分的な誘導性インピーダンス部を有する、即ち、誘導性リアクタンスコンポーネントを有する、又は言い換えると、正の仮想部(虚部)を有する複素インピーダンス部を有する、任意の、例えば、1ポート/二端子エレメントであるということを理解されたい。したがって、誘導性インピーダンス部501は、線形二端子回路又は(等価)コンポーネントであり、そこでは端子における電圧は、このコンポーネント/回路を通る電流の微分に少なくとも部分的に依存する。
同様に、この特定の例では、容量性インピーダンス部503は、コンデンサに直接対応するが、他の実施形態においては、容量性インピーダンス部503は、少なくとも部分的な容量性インピーダンス部を有する、即ち、容量性リアクタンスコンポーネントを有する、又は言い換えると、負の仮想部(虚部)を有する複素インピーダンス部を有する、任意の、例えば、1ポート/二端子エレメントであるということを理解されたい。したがって、容量性インピーダンス部503は、線形二端子回路又は(等価)コンポーネントであり、そこでは端子におけるこのコンポーネント/回路を通る電流は、端子にわたる電圧の微分に少なくとも部分的に依存する。
大部分の実施形態において、誘導性及び容量性インピーダンス部501、503の抵抗部は、典型的には、はるかに小さく、多くの場合はリアクタンスコンポーネントと比較して取るに足りないものであるということを理解されたい。これは、振動が比較的非減衰であるということを確実にし、即ち、それが共振回路に比較的高いQを提供する。
明確性及び簡潔性のため、以下の説明は、(理想の)インダクタ501並びに具体的には図1及び図2の送信機インダクタ103である誘導性インピーダンス部と、理想のコンデンサ503である容量性インピーダンス部とに焦点を合わせる。しかしながら、インダクタ501へのいかなる言及も、適切な場合には、誘導性インピーダンス部又はリアクタンスへの言及によって置き換えられるということ、並びに、コンデンサ503へのいかなる言及も、適切な場合には、容量性インピーダンス部又はリアクタンスへの言及によって置き換えられるということを理解されたい。簡潔性のため、一対のインダクタ501及びコンデンサ503は、共振コンポーネントとも称される。
インダクタ501及びコンデンサ503は、共振配置で結合される。本例では、インダクタ501及びコンデンサ503は、直列共振で結合されるが、他の実施形態においては、それらは並列共振配置で結合されるということを理解されたい。
インダクタ501及びコンデンサ503は、インダクタ501及びコンデンサ503のみを含む共振回路の共振周波数に対応する固有共振周波数を呈する。よく知られているように、そのような回路の共振周波数は、
によるものであり、ここで、Lはインダクタ501のインダクタンスであり、Cはコンデンサ503の静電容量である。
しかしながら、図5のシステムでは、電力送信機は、コンデンサ503及び/又はインダクタ501の状態変化を遅くすることによって送信機共振回路の共振周波数を制御するように構成される共振変更回路505をさらに備える。共振変更回路505は、送信機共振回路の部分と見なすことができる(又は、これの完全に又は部分的に外にあると見なされる)。共振変更回路505は、図5ではインダクタ501とコンデンサ503との間に直列で結合された単一の二端子エレメントとして示されるが、これは単に例にすぎず、他の実施形態においては他の配置が使用されるということも理解されたい。例えば、図5の例における共振変更回路505は、2つの端子のみを有するが、他の実施形態においては、共振変更回路505がより多くの端子を有し、回路の他の部分、例えば、ドライバ203のための電源レールに接続されてもよいということを理解されたい。
共振変更回路505は、インダクタ501及びコンデンサ503の一方又は両方の状態変化を遅くすることによって共振周波数を変更するように構成される。インダクタ501及びコンデンサ503の状態は、コンポーネントの電流エネルギー値によって表されると見なされ、具体的には、インダクタ501の電流(
)及びコンデンサ503の電圧
コンデンサ及びインダクタによって形成される従来の共振回路において、共振は、コンデンサ(エネルギーが電位エネルギーとして格納される場所)とインダクタ(エネルギーが磁位エネルギーとして格納される場所)との間を行ったり来たりするエネルギー流から生じる連続的且つ周期的な位相変化によって達成される。そのようなシステムにおける状態変化及びエネルギー流の速度は、コンデンサ及びインダクタの値によって得られ、これが、
の固有共振周波数での振動を結果としてもたらす。
しかしながら、図5のシステムでは、共振回路は、フリーランニング振動を単に実施することを許されておらず、むしろ共振変更回路505は、サイクルのいくつか及び典型的にはサイクルのすべての部分的時間間隔の間、インダクタ501及びコンデンサ503の少なくとも一方の状態変化を遅くする。
このようにして、状態変化は、コンデンサ503及びインダクタ501のみを含むフリーランニング共振回路の状態変化に対して、部分的時間間隔の間に遅くされる。
具体的には、状態変化は、コンデンサ503とインダクタ501との間のエネルギー流を妨げることによって(インダクタ501からコンデンサ503へのエネルギー流、コンデンサ503からインダクタ501へのエネルギー流、又はインダクタ501からコンデンサ503へのエネルギー流及びコンデンサ503からインダクタ501へのエネルギー流の両方を遅くすることによって)遅くされる。共振回路において、正の電流は、共振サイクルの半分の間はインダクタ501からコンデンサ503へ、共振サイクルのもう半分の間はコンデンサ503からインダクタ501へ流れる。多くの実施形態において、エネルギー流の遅延は、共振コンポーネント間を流れる電流を妨げることによって達成される。多くの実施形態において、共振変更回路505は、例えば、インダクタ501の電流(の一部又はすべて)をコンデンサ503からそらすこと(場合によっては、負の電流及び正の電流の両方をコンデンサ503からそらすことを含む)によって、インダクタ501からコンデンサ503への電流を妨げるように構成される。他の実施形態において、共振変更回路505は、例えば、部分的時間間隔の間、コンデンサ503をインダクタ501から切断する(それによりインダクタにわたる電圧をゼロに設定する、即ち、電流及び電圧の両方がインダクタではゼロに設定される)ことによって、コンデンサ503からインダクタ501への電流を妨げるように構成される。
これらの例では、したがって、共振コンポーネント間の電流の流れは、部分的時間間隔の間、減少されるか、又は完全に防がれる。この部分的時間間隔の間、コンポーネントのうちの少なくとも1つのコンポーネントの状態変化は、遅くされるか、又は完全に停止される。これがいくつかのサイクルの間、及び特にすべてのサイクルにおいて実施される場合、その効果は、共振回路が、フリーランニング共振回路配置の固有共振周波数より低い周波数で共振するかのように挙動するというものである。このより低い周波数は、共振回路の効果的な共振周波数と称される。
共振変更回路505は、このやり方では、効果的な共振周波数を固有共振周波数より低くなるように制御及び調整する。実際の効果的な共振周波数は、図5のシステムでは、部分的時間間隔のタイミング/持続時間を変化させることができる共振変更回路505によって制御される。したがって、部分的時間間隔が長いほど、状態変化を遅くする効果は大きくなり、したがって低い方が効果的な共振周波数である。
図5の特定の例となるシステムにおいて、共振変更回路505は、所望の共振周波数を提供するために独立して制御されるだけではない。むしろ、共振変更回路505の動作は、共振回路201の駆動と、故に電力伝送及び電力伝送システムの全体的な動作と密接に統合される。
具体的には、図5のシステムでは、ドライバ203は、タイミング信号を生成し、これを共振変更回路505に供給する。タイミング信号は、部分的時間間隔がいつ開始、終了、又はそれら両方をするべきかを示す遷移を含む(無視される他の遷移が存在する)。共振変更回路505は、部分的時間間隔をこれらの遷移に揃えるように構成される。遷移は、典型的には信号パラメータの変化、例えば、典型的には信号レベルの変化である。しかしながら、いくつかのシナリオにおいて、遷移は、別の信号パラメータの変化、例えば、信号の位相若しくは周波数又は信号の(部分的な)信号コンポーネントの変化などである。
したがって、タイミング信号の遷移は、部分的時間間隔のタイミングを制御し、特に、開始時間、終了時間、又は開始及び終了時間の両方を制御する。共振変更回路505は、したがって、タイミング信号から部分的時間間隔の開始及び/又は終了時間を設定する。典型的には、タイミング信号は、エネルギー流の阻止を作動/非作動することができる共振変更回路505のスイッチを制御するために使用されるスイッチ信号であり、即ち、それは、状態変化の遅延を作動/非作動することができる。タイミング信号は、電流阻止の入切を切り替えるためのスイッチを直接的又は間接的に制御するために、共振変更回路505によって検出することができ、これによって使用される遷移を含む。共振変更回路505は、典型的には、対応する遷移と実質的に同時(例えば、サイクル期間の1/50番目以内)に遅延の入切を切り替えることによって、開始又は終了時間を遷移と揃える。
したがって、本システムにおいて、ドライバ203は、部分的時間間隔のタイミングの少なくとも部分を制御する。さらには、ドライバ203は、タイミング信号を制御するように構成され、その結果、タイミング信号、故に部分的時間間隔は、駆動信号と同期される。具体的には、ドライバは、タイミング信号を生成し、これを駆動信号に時間同期させる同期装置507を備える。
具体的には、後で特定の例を用いて説明されるように、開始及び/又は終了時間は、駆動信号の個々のサイクル内の偶数の時間への一定の時間オフセットを有するように生成される。このイベントは、特に、極致が発生するとき((サイクル内の)局所的又は大域的な最大値又は最小値)、遷移が発生するとき(例えば、方形駆動信号のエッジ)、又はスイッチ回路のスイッチ(図3又は図4の例に対応するスイッチブリッジなど)が切り替わるときの、信号レベルしきい値(例えば、ゼロ交差においてなど)をまたぐ駆動信号である。故に、開始及び/又は停止時間は、そのようなイベントの時刻に対して一定の時間オフセットを有するように制御される。したがって、サイクル内のイベントのタイミングが変化する場合(例えば、駆動信号のサイクルの周波数/時間周期の変化に起因して)、制御された開始及び/又は停止時間はそれに従って変化する。
多くの実施形態において、開始時間及び停止時間のうちの一方は、駆動信号を生成するスイッチ回路のスイッチ時間に対する一定の時間オフセットを有するように制御される一方、もう一方の時間は、しきい値を交差する容量性インピーダンス部503及び誘導性インピーダンス部501の少なくとも一方の信号の時刻に対する一定の時間オフセットを有するように制御される。
例えば、ダイオード及びスイッチは、直列で結合され、電流を容量性インピーダンス部503から離れる方へ向けるために使用される(例えば、容量性インピーダンス部503を短絡させることによって、又は容量性インピーダンス部503及び誘導性インピーダンス部501間の接続を(例えば、ゼロの)レール電圧まで短絡させることによって)。この構成では、コンデンサにわたる(又は接続点の)電圧がダイオードに対応するしきい値をまたぐとき、ダイオードが導電し始めるように、スイッチは開成されている。したがって、開始時間は、しきい値をまたぐ信号によって得られる。しかしながら、終了時間は、駆動信号を生成するフルブリッジのスイッチのスイッチ時間に対する一定の時間オフセットを有するように決定される。したがって、この時間は、駆動信号の生成に直接的に時間リンクされる。したがって、駆動信号の時間周期が、1つのサイクルから次のサイクルで増えると、共振変更回路505は、自動的にこの変化に(同じサイクル内でさえ)適合する。
したがって、多くの実施形態において、部分的時間間隔のタイミングは、駆動信号に密接にリンクされる。この連動は、共振回路201の駆動と共振回路201の効果的な共振との密な対応を提供する。駆動信号とタイミング信号とのリンクは、特に、共振周波数が駆動信号の動作周波数と同じ周波数であるように自動的に固定されることを可能にする。実際、同期装置507は、共振回路201の各サイクル時間が駆動信号の対応するサイクルのサイクル時間と同じであるように、タイミング信号、故に部分的時間間隔を同期することができる。したがって、ドライバによって部分的時間間隔を制御する手法、及びこれが駆動信号に基づくことにより、共振周波数が常に駆動信号と同じであるシステムを提供することができる。実際、それぞれ個々のサイクル時間の個々の時間周期さえ、同じであるように制御することができる。
本手法は、低い複雑性を可能にし、また、例えば、共振回路201の任意の信号(インダクタ又はコンデンサの電流又は電圧など)のいかなる測定又は検出も必要としないだけでなく、それは周波数が同一であることを自動的に保証することもできる。
本手法は、多数の利点を提供する。特に、本手法は、相互変調を低減し、多くの実施形態においては、相互変調を防ぐ。本手法はまた、多くの実施形態において、電力伝送の改善をもたらし、具体的には、電力伝送効率の改善をもたらす。典型的には、電力伝送効率は、送信機共振周波数(送信機共振回路の共振周波数)、受信機共振周波数(受信機共振回路の共振周波数)、及び駆動信号の動作周波数が互いと近いほど増大する。説明された手法は、動作周波数及び送信機共振周波数が互いに密接に且つ自動的にリンクされることを可能にしながら、それらが受信機共振周波数に対して変化することを可能にする。したがって、駆動信号の適合だけが適用され、送信機共振周波数も自動的に設定される。
図6は、図5の電力送信機の例を例証し、ここでは共振変更回路505は、コンデンサ503の状態変化を遅くするように構成される。本例では、共振変更回路505は、部分的時間間隔の間、インダクタ501からの電流をコンデンサ503から離れる方へ分流させるように構成される。分流は、コンデンサ503と並列で結合され且つこれを短絡させるように構成されるスイッチ601によって達成される。したがって、共振変更回路505は、制御可能なスイッチによって実施される。
本例では、スイッチ601は、部分的時間間隔の間、閉成される。スイッチ601の開成及び閉成は、ドライバ203によって生成されるタイミング信号の遷移によって制御され、それに応じてスイッチ信号に同期される。スイッチが閉成されると、そうでない場合にはコンデンサ503を充電又は放電する、インダクタ501を通って流れる電流は、代わりにスイッチ601を通って分流される。したがって、コンデンサ503を短絡させることによって、電流はコンデンサ503を回避し、したがってコンデンサを充電しない。本例では、スイッチ601は、コンデンサ503にわたる電圧がゼロであることに対応する時刻に閉成するように構成される。このとき、著しい電流がインダクタ501を通っている(実際、電流は最大レベルにある)。しかしながら、スイッチを短絡させることによって、この電流は、もはやコンデンサ503を通って流れておらず、代わりにスイッチ601を通って流れる。したがって、コンデンサ503の短絡は、電圧がゼロに維持されること、即ち、コンデンサ503の状態が一定に保たれることを確実にする。
したがって、スイッチ601は、コンデンサ503からの正の電流及び負の電流の両方を分流させる電流分流経路を形成するということに留意されたい。
特定の持続時間の後、即ち、部分的時間間隔の最後に、スイッチは再び開成され、それによりインダクタを通って流れる電流が今度はコンデンサ503へと(又はそこから)流れることになる。その結果、コンデンサ503は充電を開始し、コンデンサ電圧がそれに応じて変化する。これは、増大されるインダクタから、故に低減される共振周波数において「見られる」ように、コンデンサ503の効果的な静電容量を結果としてもたらす。結果として生じる効果的な共振周波数は、効果的な共振周波数の低減を結果としてもたらす持続時間の増大とともに部分的時間間隔のタイミングに依存する。
具体的には、駆動信号の周期の一部分の間、コンデンサを短絡させることによって、効果的な静電容量が増大される。
この効果を例証するために、コンデンサC1は、時間t2の間、平均電流
で電圧U1(t2)まで充電されると見なされる。電圧U1(t2)は、以下のように表現される。
C1より小さい値を有するが0からt1まで短絡され且つt1からt2までの時間間隔において充電される別のコンデンサC2を代わりに検討すると、このコンデンサは、同じ平均電流
で電圧U1(t2)まで充電される。C2では、電圧は、以下のように決定することができる。
U1(t2)及びU2(t2)が、t2において等しい場合、C1は、以下によって表現することができる。
言い換えると、コンデンサC2の方が値は小さいが、時間t2で両方のコンデンサが、同じ電圧まで充電される。時間t2で、コンデンサC2は、インダクタをコンデンサC1と同じ電圧に曝露する。したがって、短絡の効果は、インダクタによって「見られる」ようなコンデンサの効果的な(又は明白な)静電容量を増大することである。
図6の回路における信号の例が、図7に提供される。本例では、インダクタ501のインダクタンスは、Lp=200uHであり、コンデンサ503のその静電容量は、Cp=8.2nFであり、結果として
という固有共振周波数をもたらす。本例では、上方の曲線は、駆動信号を示す。
見ると分かるように、各サイクルについて、スイッチ601は、第1の部分的時間間隔(コンデンサ電圧の正のゼロ交差)の間及び第2の部分的時間間隔(コンデンサ電圧の負のゼロ交差)の間、コンデンサ503を短絡させるように構成される。したがって、各部分的時間間隔において、電圧は、およそ1μsの間、一定に保たれる。この時間の間、コンデンサ503の電圧は変化しない。同様に、インダクタ501が電圧に曝露されないことに起因して、インダクタ501の電流もほとんど変化しない(それは最大値でほぼ一定である)。
見て分かるように、効果的な共振周波数は下げられ、実際、本例では、102kHz周辺の効果的な共振周波数が達成される。
正確な効果的な共振周波数は、単に部分的時間間隔の持続時間を調整することによって設定することができる。持続時間が長いほど、周波数は低くなる。
さらに、駆動信号パルス間の持続時間が一定に保たれる場合、駆動信号の動作周波数は、駆動信号パルスの持続時間が変化することによって変化され得るということが分かる。しかしながら、これは同じやり方で変化するタイミング信号の右エッジを直接的にもたらすことになり、タイミング信号の左エッジをコンデンサのゼロ交差に結合されたままにすることよって、それは、それに応じて変化する部分的時間間隔を結果としてもたらす。したがって、共振周波数は、駆動信号動作周波数に直接従い、本質的に同じである。
こうして、本手法は、駆動周波数及び送信機共振周波数が効果的に実質的に同一であるように、それらを効果的に結び付ける。
従来、疎結合では、電力伝送は、共振動作について最適化され、したがって送信機共振周波数及び駆動周波数は、受信周波数と同一であるように制御される。そのような従来の手法が説明されたシステムにおいて応用される場合、駆動回路は、駆動周波数(故に送信機共振周波数)を電力受信機の共振周波数(受信機共振周波数)と同一であるように制御する。したがって、従来の手法は、駆動周波数が受信機共振周波数によって決定されるということになる。
しかしながら、図5(及び図6)のシステムでは、駆動周波数は、変化し、受信機共振周波数とは異なることが可能である。したがって、駆動周波数は、受信機共振周波数によって制御されること、又はそれによって得られることはない。むしろ、説明されたシステムでは、駆動周波数(故に送信機共振周波数)は、電力伝送信号の負荷を表す等価負荷抵抗に基づいて適合される。
具体的には、電力送信機101は、電力伝送信号から抽出される電力を示す負荷推定を生成するように構成される負荷推定装置509を備える。負荷推定装置509は、例えば、送信機共振回路201を通る電流及び送信機共振回路201にわたる電圧を測定し、そこから電力伝送信号に提供される電力を決定する(故に(典型的には)電力受信機によって電力伝送信号から抽出される電力を反映する)。
負荷推定装置509は、負荷推定を供給される駆動周波数アダプタ511に結合される。駆動周波数アダプタ511は、ドライバに結合され、駆動周波数を制御するように構成される。例えば、駆動信号は、ドライバ203の内部可変発振器から生成され、駆動周波数アダプタ511は、これに制御信号(特定の実装形態によってアナログ又はデジタル制御信号である)を提供することによってこの発振器の周波数を制御する。
本手法は、特に、多くのワイヤレス電力伝送システムにおいて、負荷通信を改善する。実際、図5及び図6のシステムは、電力受信機103からメッセージを受信するように構成される負荷変調受信機513を備え、ここでメッセージは、電力伝送システム上へ負荷変調される。本例では、負荷変調は、変化するリアクティブ負荷によって少なくとも部分的に実施され、即ち、負荷変調は、誘導性負荷及び容量性負荷の少なくとも一方の変動を含む(即ち、負荷に対して電圧と電流との間の位相差をもたらす仮想負荷)。多くの実施形態において、負荷変調は、電力受信コイルにわたってコンデンサの入切を切り替える電力受信機によって実施される。
物理レベルでは、電力受信機105から電力送信機101への通信チャネルは、電力伝送信号を通信キャリアとして使用して実施される。電力受信機105は、受信機コイル107の負荷を変調することによってデータメッセージを送信する。電力受信機105は、例えば、これを、受信コイル107に並列で結合されるコンデンサを接続及び切断し、それにより共振、故に電力受信機105の負荷特性を変化させることによって行う。これらの変化は、電力送信機側での電力伝送信号における対応する変動、並びに具体的には、送信機インダクタ103の電流及び電圧における変動を結果としてもたらす。これらの変化は、電力送信機101によって直接的又は間接的に検出され、電力受信機105からの負荷変調データを復調するために使用される。
具体的には、負荷変調は、例えば、駆動信号電流/電圧の振幅及び/若しくは位相における変化、送信機インダクタ103の電流/電圧における変化、並びに/又は共振回路の電流/電圧における変化によって検出される。別の例として、負荷変調は、ドライバ203への(具体的には、インバータ/スイッチブリッジへの)電力供給の電流における変化によって検出される。
電力受信機105は、それに応じて、データを電力伝送信号上へ負荷変調することができ、次いでその電力伝送信号を電力送信機101が復調することができる。本手法は、例えば、Qiワイヤレス電力仕様とも呼ばれる、http://www.wirelesspowerconsortium.com/downloads/wireless−power−specification−part−1.htmlから入手可能な「ワイヤレスパワーコンソーシアムによって出版されたSystem description,Wireless power Transfer,Volume I:Low Power,Part 1:Interface Definition,Version 1.0 July 2010」、Qiについて説明されるもの、特に第6章Communications Interface(又はその仕様の後続バージョン)に対応する。
負荷変調は、具体的には、電力伝送を適合するため、特に、電力受信機105から受信される電力制御メッセージに基づいて送信電力レベルを継続して適合する電力制御ループを実施するために使用される。電力制御メッセージは、負荷変調によって通信される。
したがって、負荷変調は、例えば送信機インダクタ電流における変動を結果としてもたらし、これは、当業者に知られているように測定及び復調される。したがって、本例では、請求項1の電力送信機は、変化するリアクティブ負荷によって電力伝送信号上へ負荷変調されるメッセージを検出するための受信機513をさらに備える。
しかしながら、相互変調歪(異なる駆動周波数及び送信機共振周波数から生じる)は、負荷変調通信を劣化させ得る。高Q共振回路を検討すると、ドライバ203が送信機共振周波数に等しい周波数で信号を印加する場合、振動を、非常に長い間、減衰の存在下でさえ、持続させることができる。この場合、超高電流が回路を通って流れる。しかしながら、ドライバ203が共振周波数と異なる周波数で信号を印加する場合、本システムは、あまりよく共振せず、結果としてはるかに低い電流の流れをもたらす。実際、後者の場合、回路内の電流及び電圧信号は、2つの周波数、即ち、駆動周波数及び共振周波数を含み、ここでは共振周波数の方が、共振回路のより高いQ因子が理由で、より顕著である。電流及び電圧信号内の2つの周波数は、ビート周波数をもたらし、それは相互変調と称される。負荷変調によって生じる振幅変調を頼りにするワイヤレス電力伝送システムにおいて、これは、信頼性の高い通信を、不可能ではないとしても、困難にし得る。
しかしながら、これは、電力送信機の共振周波数及び駆動信号の駆動周波数を制御しリンクさせることによって効果的に軽減される。この特定の手法は、例えば、駆動信号への部分的時間間隔の同期/アライメントを介して駆動信号及び共振周波数をリンクさせ、それにより動作周波数及び共振周波数が互いに固定されることを可能にすることによって、相互変調歪の低減をもたらす。
しかしながら、そのような手法を使用するにもかかわらず、いくつかのシナリオにおいては、通信は準最適であることが分かっており、実際、不満足な通信信頼性が発生することが分かっている。
本発明者らは、この問題に気が付いただけでなく、潜在的な原因、及びこの問題が、図5及び図6のシステムなどのシステムにおいて、電力伝送信号の負荷のための等価負荷抵抗に応じて駆動周波数を適合させることによって効果的に軽減されるということにも気が付いた。
具体的には、本発明者らは、変調深さ(異なる変調シンボル/データビットに対する(例えば、送信コイル電流又は電圧の)検出された測定値間の差)が、電力伝送信号の負荷によって影響を受けること、並びに、実際、その影響は、予測されず、異なる負荷に対する駆動周波数の対立する要件/選好をもたらすということに気が付いた。特に、本発明者らは、変化する抵抗が負荷変調に使用される場合、十分な変調深さは、多くの場合、電力伝送信号の負荷の妥当な範囲において達成することができる一方、多くの場合、可変容量性負荷を使用した負荷変調など、リアクティブ負荷を使用した負荷変調ではこれは当てはまらないということに気が付いた。これは、負荷変調が多くの場合コンデンサの切り替えによって実施されるため、多くのシナリオにおいて重大な問題である(例えば、この手法はQiで使用される)。
本発明者らは、可変であり、したがって受信機共振周波数に固定されない適合性の駆動周波数(及び送信機共振周波数)を用いることによって、本問題が、例えば、電力伝送動作及び効率に対してこれが容認できない影響を引き起こすことなく軽減されるということにさらに気が付いた。したがって、本発明者らは、駆動周波数及び送信機共振周波数を受信機共振周波数と同じであるように適合させる従来の手法を応用するよりも、駆動周波数及び送信機共振周波数が受信機共振周波数と異なること、故に受信機共振周波数に対して可変であることを許すことによって、全体的な性能の改善を達成することができるということに気が付いた。これにより、例えば電力伝送効率を容認できないほどに劣化させることなく達成することができる通信性能の改善が可能になる。本発明者らは、駆動周波数(故に送信機共振周波数)を電力伝送信号の等価負荷抵抗に応じて適合させることによって、通信性能が大幅に改善されることにさらに気が付いた。
本発明者らは、この問題が、特に、可変負荷インピーダンス部が実質的に仮想的である(具体的には、負荷インピーダンス部が、バイナリ値を示すために入切を切り替えられるコンデンサである)リアクティブ(及び具体的には容量性)負荷変調では重大であることにさらに気が付いた。実際、本発明者らは、変調深さが、そのような負荷では、高電力レベルで大幅に低減され、実際、ゼロにまで低減されるということに気が付いた。本発明者らは、これがある程度(少なくとも部分的に)送信機共振回路の共振周波数が変化されるやり方に起因するということにさらに気が付いた。具体的には、電力受信機内の変調コンデンサ(又は場合によっては変調インダクタ)は、受信機の共振周波数をいくらかシフトし、それにより変調変動を引き起こす。しかしながら、先行技術に従う共振周波数の適合は、電力送信機の共振周波数を変化させ、それによりある程度まで変調変化の効果を補償する。即ち、それは、変調に起因する受信機共振周波数におけるシフトを補償する。正味の効果は、特定の条件に依存し、特に、電力受信機の抵抗負荷に依存することが分かっている。
したがって、図5及び図6のシステムでは、駆動周波数アダプタ511は、等価負荷抵抗が電力伝送信号の負荷を反映する送信機インダクタ103の等価負荷抵抗を反映する負荷推定に応じて駆動周波数(故に送信機共振周波数)を適合させるように構成されている。
動作中、ドライバ203は、送信機インダクタが電力伝送信号を生成するように送信機共振回路を駆動する。電力送信機に近接する電磁エンティティがない場合、故に電磁電力伝送信号が任意の他のエンティティと相互作用しない場合、送信機インダクタは、理想のインダクタとして効果的に動作する(内部寄生損失及び効果は別として)。しかしながら、他の電磁エンティティとの電力伝送信号の相互作用は、電力伝送信号の負荷を結果としてもたらす。
特に、電力受信機は、電力伝送信号から電力を抽出し、それにより電力伝送信号の負荷を提供する。電力伝送信号の負荷は、送信機インダクタ103を通る電流及び電圧に影響を与え、故に送信機インダクタ103に対する等価インピーダンス部を提供する。当該分野において知られているように、磁気送信電力伝送信号の負荷の結果は、送信機インダクタ103が、インダクタ(無負荷の送信機インダクタ103(又は、寄生コンポーネントが考慮される場合は、より一般的にインピーダンス部)に対応する)及び等価負荷インピーダンス部(送信機インダクタ103の負荷に対応する)を含む1ポートのように働くということでる。当該技術においてよく知られるように、等価負荷インピーダンス部は、リアクティブコンポーネント及び抵抗コンポーネントを含む。リアクティブコンポーネントは、送信機インダクタ103の電圧及び電流が同相でないコンポーネントに対応し、電力伝送信号の負荷の抵抗コンポーネントは、送信機インダクタ103の電圧及び電流が同相であるコンポーネントに対応する。したがって、等価負荷抵抗は、電力伝送信号から抽出される抵抗電力又は有効電力を反映し、等価リアクティブ負荷は、電力伝送信号から抽出されるリアクティブ電力又は仮想電力を反映する。
したがって、送信機インダクタ103は、図8の等価回路によって表され、ここで、インダクタLは無負荷の送信機インダクタ103を表し、抵抗Rは電力伝送信号の等価負荷抵抗を表し、リアクタンスXは等価リアクティブ負荷を表す。
図5及び図6のシステムでは、負荷推定装置は、電力伝送信号のこの等価負荷抵抗に対する推定を生成するように構成される。この負荷推定は、したがって、電力伝送信号から抽出される電力から生じる送信機インダクタ103の負荷の抵抗コンポーネントを反映する。負荷推定は、多くの場合、(電力伝送信号から電力を抽出するときの)電力受信機による負荷の抵抗コンポーネントの推定である。等価負荷抵抗は、具体的には、電力伝送信号から抽出される有効(抵抗)電力を反映する。等価負荷抵抗は、電力伝送信号が無負荷である(いかなるエンティティとも電磁的に相互作用しない)とき、等価回路が送信機インダクタ103に対応するインダクタ(又は、より一般的にはインピーダンス部)を含む、送信機インダクタ103の等価回路の抵抗によって提供される負荷、負荷のかけられた(即ち、他の構成要素と電磁的に相互作用する)電力伝送信号から生じるリアクティブ負荷を反映する/表すリアクタンス、及び負荷のかけられた(即ち、他の構成要素と電磁的に相互作用する)電力伝送信号から生じるリアクティブ負荷を反映する/表す抵抗に対応する。
このように、負荷推定は、等価負荷抵抗を示すものであり、単に抽出される電力全体又は電力伝送信号の電流負荷全体を反映するのではない。むしろ、負荷推定は、そのような負荷の抵抗コンポーネントを表し、即ち、それは、送信機インダクタ103の電流及び電圧が同相である負荷/抽出電力のコンポーネントを表す。言い換えると、それは、電力送信機で見られる複素負荷インピーダンス部の実部を表す。さらに、等価負荷抵抗は、抽出される電力を表すのみならず、電力伝送信号の負荷に起因して電力送信機が受ける負荷の等価オーム抵抗を表す。具体的には、等価負荷抵抗は、電力伝送信号から抽出される(抵抗、有効)電力を表すために送信機インダクタ103に並列で結合される等価抵抗と見なされる。
図8の例では、等価負荷抵抗は、等価並列負荷抵抗であり、即ち、抵抗負荷コンポーネントは、送信機インダクタ103と並列の等価抵抗コンポーネントによって表される。
そのような等価並列負荷抵抗の場合、電力負荷が高いほど(即ち、抽出された有効電力又は抵抗電力が高いほど)、負荷値は低くなり、即ち、等価並列負荷抵抗のオーム値は低くなる。したがって、そのような実施形態において、等価負荷抵抗の値は、電力負荷の減少に対して増加し、故に電力及び抵抗負荷は互恵関係を有する。以下の説明は、等価負荷抵抗が等価並列負荷抵抗として決定されることに焦点を合わせる。したがって、等価負荷抵抗のより高い値への言及は、等価並列負荷抵抗のより高い値、故により低い電力負荷を表す。同様に、等価負荷抵抗のより低い値への言及は、等価並列負荷抵抗のより低い値、故により高い電力負荷を表す。
しかしながら、等価負荷抵抗は、等価直列負荷抵抗としても決定され得る、即ち、等価負荷抵抗は、送信機インダクタ103と直列の抵抗と見なされ得るということを理解されたい。そのような等価負荷抵抗の場合、より低い値(即ち、より低いオーム値)は、より低い電力負荷に対応する一方、より高い値(即ち、より高いオーム値)は、より高い電力負荷に対応する。
等価並列負荷抵抗及び等価直列負荷抵抗は、本質的に等価であること、並びに、等価直列負荷抵抗に基づいて駆動周波数を適合させるアダプタは、本質的に等価並列負荷抵抗に基づいて駆動周波数を適合させるアダプタに対応し、その逆も然りであることを理解されたい。実際、これらは互いと互恵関係を有すること、及び一方は他方から容易に計算することができることを理解されたい。さらには、等価並列負荷抵抗の値を増加させるためにある特定のやり方で駆動周波数を適合させるように構成されるアダプタは、等価直列負荷抵抗の値の対応する減少のためにそのようなやり方で駆動周波数を適合させるアダプタに等しい(及びその逆も然りである)ことを理解されたい。
負荷推定装置は、異なる実施形態においては、異なる手法を使用して負荷推定を決定することを理解されたい。例えば、負荷推定装置は、送信機インダクタ電流振幅、送信機インダクタ電圧振幅、及びこれらの間の位相差を測定する。次いで、負荷推定装置は、電圧振幅及び電流振幅が位相差を補償されると、等価負荷抵抗を電圧振幅と電流振幅との比として計算する。実際、いくつかの実施形態において、位相差自体は、等価負荷抵抗の推定を、抵抗である負荷の部分がどれくらいの大きさであるかを示す位相差として決定するために使用される。
他の実施形態において、負荷推定装置509は、例えば、ドライバ回路への入力(例えば、図3及び図4のブリッジ)において定電圧を維持し、電流振幅を測定する。次いで、等価抵抗値が、平均電流で除算された供給電圧として決定される。
本システムでは、負荷推定の決定及び駆動周波数の適合は、(少なくとも部分的に)電力伝送フェーズの間に実施される。それは、電力が電力送信機から電力受信機へ伝送されるフェーズの間、故に、電力受信機が電力伝送信号から電力を抽出しているフェーズの間に実施される。電力送信機から抽出される電力は、典型的には、電力受信機の特定の動作に応じて変化し、説明されたシステムでは、負荷推定装置は、電力受信機による電力伝送信号の負荷の変動を反映するために負荷推定を動的に変化させるように構成される。同様に、駆動周波数アダプタ511は、負荷推定のそのような変動に応じて駆動周波数を動的に変化させるように構成される。したがって、電力伝送フェーズの間、即ち、電力が実際に電力受信機に伝送されるとき、及び、例えば、通常は電力伝送フェーズの間に適用される電力制御及び他の機能が機能しているとき、電力送信機は、負荷の変化を反映するために駆動周波数を動的に変化させるように構成される。このやり方では、本システムは、動作を効果的に最適化することができ、同時に効率的な通信性能及び効率的な電力伝送の両方を提供することができる。
多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、具体的には、電力を増大するために(送信機共振回路の)固有周波数の方へ駆動周波数を偏向するように構成され、及び/又は、それは、電力を減少するために固有周波数から離れる方へ駆動周波数を偏向するように構成される。
いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、第1の等価負荷抵抗が第2の等価負荷抵抗よりも高い(即ち、第2の等価負荷抵抗は、定電圧(又は電流)の第1の等価負荷抵抗よりも大きい量で抽出される電力に対応する)場合において、第2の等価負荷抵抗を示す負荷推定と比べて、第1の等価負荷抵抗を示す負荷推定では、容量性インピーダンス部及び誘導性インピーダンス部の共振周波数(即ち、固有共振周波数)からさらに離れるように共振周波数を適合させるように構成される。
例えば、いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を等価負荷抵抗推定の単調減少関数として決定する。この関数は、測定された変調深さなど、他のパラメータに依存してもよい。
これは、より低い等価負荷抵抗(典型的には、より高い電力)では送信機共振回路の固有共振周波数に近づき、より高い等価負荷抵抗(典型的には、より低い電力)では固有共振周波数から離れて受信機共振周波数に近づく駆動周波数を結果としてもたらす。そのような手法は、あらゆるシナリオにおいて十分な変調深さで効率的な通信を可能にし、その上、電力損失が一層大きなより高い電力負荷では共振変更回路によって生じる電力損失を低減することによって、改善されたトレードオフを提供する。
本手法をさらに理解するため、図9について検討する。これは、Qi仕様に従う例となるシステムについて、それぞれ等価負荷抵抗及び駆動周波数の関数としての結果として生じる変調深さを示す。結果は、負荷抵抗Rloadが5Vの定電圧で電力受信機の出力部において印加される状況での性能を示す。負荷抵抗Rloadは、したがって、電力受信機105の負荷であり、これが電力送信機側の等価負荷抵抗となり、この負荷の正確な値は当業者に知られるような駆動電圧などに依存した状態にある。本例では、送信機共振回路の固有共振周波数は125kHzであり、受信機共振周波数は105kHzである。結合係数は0.05である。
見て分かるように、駆動周波数(Fopと称される)並びに負荷抵抗Rloadの両方に対する変調深さの強い依存性が存在する。これは、駆動周波数及び等価負荷抵抗に対する非常に強い依存につながる。実際、見て分かるように、低抵抗負荷(高電力抽出)の場合、変調深さは、低い駆動周波数、特に受信機共振周波数に近い駆動周波数では非常に低い(実際、消失する)が、変調深さは、高い駆動周波数の場合は高い。対照的に、高抵抗負荷(低電力抽出)の場合、変調深さは、高い駆動周波数、特に送信機共振回路の固有共振周波数に近い駆動周波数では非常に低い(実際、消失する)が、変調深さは、低い駆動周波数の場合はより高い。
これは、負荷が大きく異なる、特に負荷条件が動作の異なるフェーズで非常に異なる、Qiなどのシステムに特有の問題である。
実際、スマートフォンなどの電化製品が電力送信機の表面に置かれるとき、電力受信機の負荷は、最初は接続されない。より詳細には、負荷(例えば、スマートフォンのバッテリ)は、Qi仕様のピングフェーズ及び識別&コンフィギュレーションフェーズの間は接続されない。したがって、受信機の実際の負荷は、典型的には、1〜2kΩの範囲内にあり、それは受信機の内部マイクロコントローラの入力インピーダンス部に対応する。第2のステップとして、負荷は、電力伝送フェーズの間に接続される(例えば、バッテリが接続される)。このフェーズの間、バッテリは誘導リンクを介して充電される。この状況では、受信機は、典型的には数オームから数十オームの範囲の低抵抗負荷(即ち、大きな電力抽出負荷)を有する。さらに、バッテリの等価インピーダンス部がその充電状態に依存するため、負荷は典型的には、電力伝送フェーズの間、一定ではない。
駆動周波数が一定に保たれる場合、通信チャネルは、典型的には、すべての電力伝送フェーズ(即ち、ピングフェーズから電力伝送フェーズまで)を通して動作可能でないということが特定された。図5及び図6のシステムでは、これは、等価負荷抵抗の推定に基づいて駆動周波数を適合させることによって対処され、これが典型的には、すべての電力伝送フェーズを通して高い通信品質を可能にするということが分かった。
異なる電力伝送フェーズ、負荷の状態例、及び駆動周波数の可能な調整を表す概念概略図が図10に提示される。電力送信機は、ピングフェーズ及び識別&コンフィギュレーションフェーズの間、小電力負荷(例えば、1kΩなどの高抵抗負荷)を有する。この期間の間、駆動周波数は、最適値fopt_1に設定される。周波数は、十分な変調深さが得られるように設定される。その後、電力伝送フェーズ中の1つの瞬間に(典型的には、フェーズの開始時に)、電力受信機はその負荷(即ち、スマートフォンのバッテリ)を接続する。したがって、電力送信機の負荷は、小電力負荷(例えば、1kΩ)から大電力負荷(例えば、5Ω)へと突然変化する。この瞬間に、駆動周波数は、十分な変調深さを維持するために、新しい値fopt_2に設定される。駆動周波数が適合されない場合、変調深さは、電力受信機と電力送信機との間の通信リンクを維持するには小さすぎる値(場合によってはゼロ)に達し得る。最後に、電力伝送フェーズの間、電力送信機の等価負荷インピーダンス部は変化し得る。例えば、スマートフォンのバッテリがほぼ充電されているとき、それはバッテリがほぼ空であるときと同じだけの電流を引き込まない。この状況では、電力送信機は、再び、駆動周波数を新しい値fopt_3に適合させる。周波数適合は、必要な回数だけ行うことができる。
したがって、例として、駆動周波数は、3つの異なるケースに基づいて適合される。
ケース1−小電力負荷(即ち、高抵抗負荷)
先に説明したように、電力送信機は、ピングフェーズ及び識別&コンフィギュレーションフェーズの間、小電力負荷(高抵抗負荷、例えば、1kΩ)を有する。図9の例に基づくと、駆動周波数は、100kHz周辺に設定される。典型的には、送信機の固有共振周波数と駆動周波数との周波数差は、およそ20〜30kHzの範囲内にあるはずである。これは、電力受信機の共振周波数(Frx)周辺の駆動周波数に対応する。図9の例では、この最適周波数範囲は、100Ωより大きい負荷インピーダンス部に有効である。
ケース2−大電力負荷(即ち、低抵抗負荷)
先に説明したように、電力伝送フェーズの開始時に、電力受信機はその負荷を接続する。典型的には、負荷の等価インピーダンス部は、5〜10Ωという小ささになり得る。図9の例では、最適駆動周波数は、115〜125kHzの範囲内にある。したがって、受信機の共振周波数と駆動周波数との周波数差は、およそ5〜20kHzの範囲内にあるはずである。これは、受信機共振周波数(Frx)より固有共振周波数(Ftx)に近い動作周波数に対応する。図9の例では、この周波数範囲は、およそ50Ωより小さい負荷インピーダンス部に有効である。
ケース3−中間負荷
最後に、電力伝送フェーズの間、負荷は、必ずしも5〜10Ωの範囲内にあるわけではない。それは、例えば、最大で50〜100Ωの大きな値に達することもよくある。図9の例では、この範囲内の負荷インピーダンス部の場合、駆動周波数の最適値が何であるかは明白ではない。2つのケース(即ち、上記の小負荷ケース及び大負荷ケース)の間の遷移は、50〜100Ωの範囲のインピーダンス部で発生すると予測される。この場合、駆動周波数は、中間値、例えば110〜115kHz周辺に設定されるか、又は(おそらくは変調深さなどの他のパラメータに基づいて)連続的に適合されればもっと良い。
図11は、図10の例に対応する例を例証するが、送信機共振回路の固有共振周波数は140kHzに増大されている。
この例を検討すると、駆動周波数は、例えば、まず120kHzに設定される(fopt_1=120kHz)。この状況では、2%の十分な変調深さが小電力負荷で達成される。その後、負荷が受信機に接続されると、変調深さは自動的に大きい値に増加する。変調深さがすでに高いため、駆動周波数を即座に変化させる必要はない。しかしながら、駆動周波数を固有周波数に近くなるように増大させることは、これが変更された共振周波数における電力損失を低減するため、望ましい。しかしながら、これを素早く達成する必要はない。
したがって、多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数が、より低い抵抗(より高い電力負荷)に対応する等価負荷抵抗と比べてより高い抵抗(より低い電力負荷)に対応する等価負荷抵抗では、固有周波数(誘導性及び容量性インピーダンス部により得られる周波数)からさらに離れるように、駆動周波数を適合させるように構成される。したがって、それぞれより高い抵抗及びより低い抵抗を示す等価負荷抵抗の少なくとも2つの値について、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数が、より低い抵抗の場合の送信機共振回路の固有周波数に、それがより高い抵抗の場合と比べて近くなるように、駆動周波数を制御する。
いくつかの実施形態において、例えば、駆動周波数を、等価負荷抵抗が所与のしきい値を上回る場合には第1の値に設定し、それを下回る場合には第2の値に設定するなど、単純な手法が使用される。例えば、図9の例の場合、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を、等価負荷抵抗が75オームのRloadに相当するしきい値を上回る場合に105kHzに設定し、等価負荷抵抗がこの値を下回る場合に120kHzに設定する。
他の実施形態において、より複雑な手法が使用され、例えば、駆動周波数は、等価負荷抵抗の単調減少関数として設定される。
例えば、図12は、駆動周波数(Fop)及び等価負荷抵抗の関数としての変調深さ(明るさ/暗さで示される)の例を例証する。本例では、等価負荷抵抗は、電力値として得られる。具体的には、本例では、負荷抵抗(及び送信機インダクタ103)にわたる電圧は、一定に維持され、等価負荷抵抗はそれに応じて、方向を電力伝送信号からの抽出電力と関連付ける。したがって、本例では、抽出電力推定は、等価負荷抵抗に反比例し、例えば、低電力値は高抵抗に対応し、高電力値は低抵抗に対応する。
見て分かるように、非常に高い変調深さ(明るい領域)は、負荷及び周波数のいくつかの組み合わせで達成することができるが、同時に、許容できない変調深さ(例えば2〜4%未満)もいくつかの組み合わせで発生する。さらに、見て分かるように、すべての負荷に容認可能な変調深さをもたらす単一の駆動周波数を選択することは不可能である。
しかしながら、例として、線1201によって表される関数が、特定の例では等価負荷抵抗の推定として使用することができる推定された電力抽出から駆動周波数を決定するために駆動周波数アダプタ511によって用いられる。
例えば、0.25Wの抽出電力推定の場合、駆動周波数は110kHzに設定され、0.5Wの場合は120kHzに設定され、2Wの場合は127kHzに設定され、4Wの場合は121kHzに設定されるなどである。
そのような関数を適用することによって、駆動周波数アダプタ511は、変調深さがすべての負荷において達成されるように駆動周波数(及び送信機共振周波数)を設定する。
大部分の実施形態において、駆動周波数の設定は、等価負荷抵抗だけでなく他のパラメータにもさらに応じる。具体的には、多くの実施形態において、駆動周波数の決定は、変調深さ、電力損失(特に共振変更回路の)、受信機共振周波数、固有共振周波数、動作フェーズ、電力伝送効率などのうちの少なくとも1つである第2のパラメータにさらに応じる。
実際、いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、負荷推定に応じて駆動周波数の動作範囲を決定し、駆動周波数をその動作範囲に制限するように構成される。したがって、そのような実施形態において、駆動周波数は等価負荷抵抗によって得られるのではなく、むしろ容認可能な動作間隔がこれに基づいて決定される。その容認可能な動作範囲内で、次いで駆動周波数は、例えば、周波数の変化をできる限り小さくしたいなど、他の検討事項に基づいて決定される。
例えば、図12の例の場合、電力送信機は、変調深さが少なくとも、例えば4%であることを確実にするように構成されるが、それは4%が、典型的には、非常に正確な通信を提供するためである。したがって、例えば、0.25Wの抽出電力の場合、駆動周波数の容認可能な動作範囲は100kHz〜118kHzであり、1Wの抽出電力の場合、駆動周波数の容認可能な動作範囲は117kHz〜140kHzであり、4Wの抽出電力の場合、駆動周波数の容認可能な動作範囲は108kHz〜140kHzなどである。
駆動周波数アダプタ511は、具体的には、変調深さが負荷変調に基づいて信頼性の高い通信をサポートするのに十分に大きいことを確実にするため、素早い適合を実施するように構成される。したがって、本手法は、素早い負荷変化の場合に、システムが迅速に応答して、最適ではないかもしれないが通信を可能にするには十分であることが確実である値に駆動周波数を変化させることができることを確実にする。例えば、システムが電力伝送フェーズに入り、電力受信機が外部負荷において切り替えを行うとき、電力送信機は、新しい等価負荷抵抗に対応する動作範囲内の値に周波数を素早く変化させ、それにより通信が可能になることを確実にする。
多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、負荷推定以外の動作パラメータに応じて駆動周波数を動作範囲内に適合させるように構成される。この動作パラメータは、具体的には、変調深さ測定若しくは推定、及び/又は電力損失推定(例えば、共振回路の)である。
例えば、電力負荷推定装置は、電流等価負荷抵抗を連続して決定し、駆動周波数(及び送信機共振)の容認可能な動作範囲を連続して決定する。しかしながら、加えて、駆動周波数アダプタ511は、変調深さが最大化されるが駆動周波数の制約のもとに許容動作範囲内のままであるように、駆動周波数を連続して適合させる。
別の例として、駆動周波数アダプタ511は、ドライバ回路の電力損失、及び特に共振変更機能の電力損失を、これが特に比較的電力消費が高い傾向があるために、低減することを連続して目指すように構成される。例えば、共振回路のコンデンサが、サイクルの一部分の間、短絡される例では、かなりの量の電流が、共振構成要素を通過して分岐され、それにより電力損失の増大を結果としてもたらす。さらに、電力損失は、実際の効果的な共振周波数に、特にこれが固有共振周波数とどれくらい違うのかに依存する。実際、効果的な共振周波数が固有共振周波数に近いほど、機能しているコンデンサの短絡は少なくなり、故にコンデンサを通過して分岐される電流は少なくなる。したがって、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数をできる限り固有共振周波数の近くに設定することを目指す一方で、依然として信頼性の高い通信を確実にする、即ち、依然として駆動周波数を容認可能な動作範囲内に維持することによって、電力損失を低減することを目指す。
多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、等価負荷抵抗に応じて駆動周波数のフィードフォワード適合を動作させる。そのようなフィードフォワード制御構成(オープンループとしても知られる)において、駆動周波数(又は容認可能な/許容できる範囲の駆動周波数)は、いかなるフィードバックループも生成されることなく、及びいかなる誤差信号も生成されること、又はパラメータが最小化されることもなく、等価負荷抵抗から直接決定される。例えば、等価負荷抵抗が決定されるとき、駆動周波数アダプタ511は、許容動作範囲を等価負荷抵抗の関数として直接生成する。
加えて、駆動周波数アダプタ511はまた、負荷推定とは別の動作パラメータに基づく駆動周波数の制御ループ適合を動作させる。例えば、駆動周波数アダプタ511は、変調深さを最大限にするか、又は電力損失を最小限にする制御ループを動作させるように構成される。そのような制御ループ適合(フィードバック制御又は閉ループ制御としても知られる)は、典型的には、非常に正確且つ信頼性の高い最適化を提供し、故に、動作の改善を確実にする。
等価負荷抵抗に基づく駆動周波数のフィードフォワード手法、及び変調深さなどの別のパラメータに基づく駆動周波数のフィードバック又は閉ループ制御の組み合わせは、多くの実施形態において、特に有利な動作を提供する。特に、本手法は、動作を微調整することができる(例えば、変調深さを最適化することによって)信頼性が高いが比較的遅い適合又は最適化を提供する一方で、依然として突然の負荷変化に非常に素早く反応することができるシステムを提供する。したがって、通信が、そのような突然の負荷変化が発生したときさえ信頼性が高いことが想定され得るということを確実にし、故に、多くの実施形態において、負荷変化の結果としての通信性能のドロップアウトが、効果的に軽減されるか、又は除去さえされ得る。
例として、電力伝送フェーズの間、電力受信機は、電力伝送信号から、例えば3Wを抽出する。フィードフォワード制御機能は対応する等価負荷抵抗を決定し、故に108kHz〜140kHzの許容動作範囲を決定した。この範囲内で、駆動周波数アダプタ511は、変調深さを連続して決定し、この値を最大限にするように制御ループを動作させる。電力受信機がここで突然、例えば125kHzである駆動周波数で電力伝送信号の負荷を例えば0.25Wに変化させる場合、勝手に動作している制御ループが、駆動周波数を非常に緩徐にのみ適合させる。実際、最初は、変調深さはゼロに近くなり、これが通信を不可能にする。しかしながら、説明された例において、駆動周波数アダプタ511は、負荷の変化を検出し、100〜117kHzの新しい容認可能な動作範囲を直ちに決定する。ループによって設定された電流駆動周波数はこの範囲外であるため、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数をこの範囲内の値、例えば、新しい許容範囲の中間点、即ち、104kHz周辺などにすぐに変化させる。緩徐な制御ループは、次いで、この動作点から進み、この新しい範囲内で変調深さを最大限にする。本手法は、こうして非常に効率的な動作を提供する。
述べたように、多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、単に等価負荷抵抗だけでなく他のパラメータに応じて駆動周波数を適合させるように構成され、即ち、駆動周波数(及び送信機共振周波数)の決定及び設定は、等価負荷抵抗並びに1つ以上の他のパラメータの両方に基づく。説明されるように、適合は、例えば、容認可能な範囲のフィードフォワード設定を用いることによるものであり、次いで制御ループが、他のパラメータに応じて駆動周波数を最適化するために実施される。他の実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を決定するときに様々なパラメータ(等価負荷抵抗を含む)を同時に考慮する複雑なアルゴリズム又は関数を実施する。
多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、特に、共振回路の電力損失に応じて駆動周波数を適合させるように構成される。具体的には、駆動周波数を決定するとき、駆動周波数アダプタ511は、状態変化が遅くされることに起因して共振回路において発生する電力損失を考慮する。
多くの実施形態において、共振周波数の変更から生じる電力損失は、特に高い電力負荷において大きくなる。例えば、共振コンデンサがサイクルの一部分の間、いくらかの損失を伴って回路によって「短絡される」例において、短絡におけるエネルギー損失は、もはや共振回路に留まらない。効果的な共振周波数が固有共振周波数に近いほど、位相変化を遅くするための要件は少なくなり、故に関連した電力損失も小さくなる。例えば、効果的な共振周波数が固有共振周波数に近いほど、コンデンサの短絡は少なくなり、故に分岐される電流及び損失エネルギーは少なくなる。
したがって、多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を固有周波数に向けて偏向することを目指す。例えば、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を可能な限りの最高値に設定することを目指し、この最高値は、これが依然として所与の等価負荷抵抗について容認可能な変調深さを提供すべきであるという要件の対象となる。例えば、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を、等価負荷抵抗に応じて決定される許容動作範囲内の最高値に設定するように構成される。
具体的には、例えば、電力伝送の全体の効率(システム効率が複数のパラメータ、即ち、システムの異なる部分における損失に依存するため、複雑性に起因して決定するのが困難である)に基づいて単に駆動周波数を適合させるのではなく、アダプタは、共振周波数変更によって(共振変更回路505によって)生じた共振回路内の電力損失を具体的に推定するように構成される。
共振変更から生じる損失(例えば、短絡されたコンデンサによって生じる共振変更損失)が高すぎる場合、それは、あまりに多くの電力が電力送信機出力回路内に消散されることにつながり、したがって容認できない温度上昇を結果としてもたらす。電力消散によって引き起こされる加熱に起因する、例えば、共振変更回路505におけるいかなる損傷も防ぐために、駆動周波数は、共振変更損失があまりに高くなりすぎる場合、送信機の固有共振周波数に向けて適合され得る。例えば、送信機インダクタ103内の電流が、問題であると見なされる値まで増加する場合、アダプタは、駆動周波数を固有共振周波数に向けて増大させることによってコンデンサ短絡のオン時間を減少させることを決める。
いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、特に、負荷変調の変調深さに応じて駆動周波数を決定するように構成される。したがって、いくつかの実施形態において、電力送信機は、変調深さを決定するように構成される。例えば、これは、復調される異なるシンボル値について、例えば送信機インダクタ103を通る電流の振幅の差を測定することによって、復調プロセスの一部として測定される。例えば、バイナリ通信の場合、電力送信機は、2つの異なる変調負荷(例えば、異なるシンボル又はシンボル内の異なる値/レベルに対応する)のインダクタ電流値の移動平均を決定する。例えば、Qiの場合、バイナリデータ値「1」は、2つのレベル遷移として通信され、「0」は、0.5msで1つのレベル遷移として通信される。移動平均は、異なるレベルについて決定され、次いで変調深さが、これら2つの値の間の差として決定される。
駆動周波数アダプタ511は、例えば等価負荷抵抗における変化を検出すると、駆動周波数を、容認可能な変調深さ動作を提供することで知られる好適な値に設定する。駆動周波数のこの段階変化に続いて、駆動周波数アダプタ511は、次いで、測定された変調深さに基づいて駆動周波数を適合させることに進み、特に、これを増大させることを目指す。例えば、それは、駆動周波数をわずかに変化させ、これが変調深さを増大又は減少させるかどうかを測定する。変調深さが増大する場合、駆動周波数は、この値に維持され、そうでない場合には、駆動周波数は、以前の値に戻される。次いで本プロセスは、駆動周波数が両方向にシフトされた状態で繰り返される。これは、最適化された変調深さ故に通信性能を結果としてもたらすが、それは本質的に緩徐なプロセスである傾向がある。しかしながら、等価負荷抵抗に基づく適合との組み合わせは、システムが、例えば、電力受信機による電力伝送信号の負荷の段階変化に素早く反応することができることを確実にする。
駆動周波数を決定するときに考慮される他のパラメータは、受信機と送信機インダクタとの間の結合、電力伝送効率、及び/又は動作フェーズを含む。
電力伝送効率は、例えば、電力受信機が、それが電力伝送信号から抽出した電力を報告すること、及び電力送信機が、これを、例えば、駆動回路に(例えば、スイッチブリッジに)提供される電力など、提供電力の局所的に生成された推定と比較することによって決定される。例えば、報告された受信電力は、スイッチブリッジへの固定供給電圧として得られるドライバ電力に、スイッチブリッジへ提供される平均電流を乗算したものと比較される。そのような実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、例えば、電力効率が所与のしきい値よりも低いとき、電力効率の改善のために変調深さを犠牲にするように構成される。したがって、いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、例えば、効率がしきい値を上回るときよりも効率がしきい値を下回るときに、所与の負荷の駆動周波数を低減して受信機共振周波数により近くなるようにするように構成される。
いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、システムが動作しているフェーズに応じて、アルゴリズムを適合させるように、又は、実際には、異なる関数及び決定基準を使用するように構成される。例えば、駆動周波数アダプタ511は、ピングフェーズでは電力伝送フェーズとは異なる手法を使用する。例えば、ピングフェーズにあるとき、駆動周波数アダプタ511は、100kHz..118kHzの間隔にあるように制限される一方、それが電力伝送フェーズにあるとき、それは代わりに108kHz..140kHzの間隔にあるように制限される。
システムが駆動周波数及び送信機共振周波数を受信機共振周波数と等しくなるように設定することを目指す従来の手法とは対照的に、説明された手法は、駆動周波数及び送信機共振周波数を揃えるが、これらは受信機周波数に対して変化することが許される。
しかしながら、いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を決定するときに受信機共振周波数も考慮する。受信機共振周波数は、例えば、初期化フェーズの間に周波数掃引を実施し、送信機共振周波数の効果的なインピーダンス部を測定することによって、電力送信機によって決定される。他の実施形態において、電力受信機は、例えば、受信機共振周波数を示すデータを電力送信機に送信するように構成される。
実際、電力伝送動作は、典型的には、駆動周波数、送信機共振周波数、及び受信機共振周波数が同じであるとき、より効果的である。本発明者らは、それが典型的には、この効率を最適化するために駆動周波数を設定しないことが有益であるということに気が付いたが、依然として、多くの実施形態において、効率、故に受信機共振周波数を考慮することが望ましい。例えば、いくつかの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数及び送信機共振周波数をできる限り受信機共振周波数の近くに適合させる一方で、駆動周波数を、等価負荷抵抗に応じて決定された許容動作範囲内に制約するように構成される。
例となるパラメータは上では個々に考慮されているが、駆動周波数アダプタ511は、多くの実施形態において、これらのうちのいくつかを考慮するということを理解されたい。例えば、駆動周波数アダプタ511は、複数のパラメータによって示されるような所与の動作点に対する異なる検討事項間の好ましいトレードオフを提供するように駆動周波数を設定するアルゴリズムを動作させる。例えば、駆動周波数アダプタ511は、例えば、等価負荷抵抗、受信機共振周波数、変調深さ、及び共振回路の固有共振周波数の両方に基づくテーブルルックアップによって駆動周波数を決定することができる。テーブルには、設計又は製造フェーズの間に試験によって決定された値が入っている。
本システムでは、性能、及び、特に、電力伝送と通信性能との間のトレードオフは、駆動周波数の適合によって管理される。加えて、駆動周波数の動作範囲に好適な値、容量性及び誘導性共振インピーダンス部によって得られる固有共振周波数、並びに共振変更回路505によって達成され得る効果的な周波数の範囲を選択することによって、信頼性の高い通信及び効率的な電力伝送の両方を結果的にもたらす非常に効率的な手法を達成することができる。さらに、本手法は、後方互換性で行われ、例えば、本手法は、Qi電力送信機及び電力伝送システムに導入される。
多くの実施形態において、及び特に、Qi仕様に従う電力伝送システムに好適な実施形態において、正確な送信機共振周波数は分からないが、それが予め規定された範囲内に入るということは分かる。具体的には、Qiの場合、受信機共振周波数は95〜115kHzの範囲内に入るはずであると特定される。したがって、電力送信機は、電力受信機の周波数が正確に何であるかは分からないが、それが(特定の例では115kHzの)最大周波数を下回るということは分かる。多くの実施形態において、駆動周波数は、受信機共振周波数に基づいて制約される。例えば、受信機共振周波数は、115kHz又は例えば120kHz未満であると特定され、したがって、電力送信機はこの点を考慮して設計される。したがって、多くの実施形態において、電力送信機は、電力受信機の最大許容共振周波数を認識している。
そのような実施形態において、電力送信機は、送信機共振回路の固有周波数が最大許容共振周波数よりも高くなるように設計される。状態変化の遅延が効果的な共振周波数を低減すると、これにより電力受信機の全範囲を取り扱うことが可能になる。
さらに、多くの実施形態において、電力送信機の共振回路は、固有周波数が電力受信機を20kHz以上超えるように設計される。したがって、本システムは、電力受信機の共振周波数をかなりの差で超える比較的高い固有周波数を有するように設計された。これはさらに、駆動周波数が、発生する電力受信機共振周波数の範囲を大幅に超える範囲内で可変であることを可能にする。それはさらに、幅広い範囲の負荷において通信の改善、及び特に、容認可能な変調深さを提供する。
駆動周波数は、より低い電力負荷(より高い等価並列負荷抵抗)と比べて、より高い電力負荷(より低い等価並列負荷抵抗)では受信機共振周波数からさらに離れるように制御される。実際、それが駆動周波数を固有共振周波数により近づけることを可能にし、故に送信機共振周波数変更回路内の電力損失を低減するため、これは非常に望ましい。
実際、多くの実施形態において、駆動周波数アダプタ511は、第1の等価並列負荷抵抗が第2の等価並列負荷抵抗よりも低い場合において、第2の等価並列負荷抵抗と比べて、第1の等価並列負荷抵抗では、受信機共振周波数からさらに離れるように駆動周波数を適合させるように構成される。
例えば、駆動周波数が受信機共振周波数よりも高い(ことが知られる)間隔にあるように構成されるシナリオにおいて、駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数を等価並列負荷抵抗の単調減少関数として決定する。したがって、等価並列負荷抵抗が減少すると(即ち、より高い電力負荷を受けると)より高い駆動周波数が用いられる。受信機共振周波数は駆動周波数よりも低いため、これは、減少する等価並列負荷抵抗(即ち、増加する電力負荷)の場合は、受信機共振周波数から離れる方への偏向を結果としてもたらす。
説明された手法において、駆動周波数アダプタ511は、したがって、駆動周波数(及び電力送信機共振回路共振周波数)を電力受信機の共振周波数から離調するように構成される。駆動周波数アダプタ511は、駆動周波数と電力受信機共振周波数との差を、これらが互いから逸脱するように導入するように構成される。さらに、この逸脱は、より高い電力負荷、即ち、より低い等価並列負荷抵抗では増大される。
これは、離調が効率を低減し、故に本手法が、増大する電力レベルでは電力伝送効率を低減することに相当するため、反直感的である。しかしながら、この効率の低減は、効率が最も有益であるときでさえ、通信性能における著しい改善を可能にし、特に、復調深さが、復調を十分に信頼性の高いレベルに維持することができないレベルまで低減されることを防ぐことができる。
特に、本手法は、高負荷においては、駆動周波数、送信機共振周波数、及び受信機共振周波数の密結合が、負荷変調を正確に検出することができないレベルまで低減する復調深さを結果としてもたらすという認識を反映する。しかしながら、電力受信機側に対して電力送信機側を離調することによって、復調深さを増大して効率的な通信を可能にする。したがって、効率は、信頼性の高い通信を確実にするために犠牲にされる。
しかしながら、低電力負荷(高等価並列負荷抵抗)の場合、復調性能は、電力送信機側の周波数と電力受信機共振周波数との密なアライメントがあっても容認可能である。したがって、そのようなアライメントを実施して効率を増大することは容認可能である。
駆動周波数アダプタ511は、それに応じて、等価並列負荷抵抗を示す負荷推定を決定、又は受信する。例えば、電力伝送信号から抽出される電力の指標が決定される(例えば、電力送信機共振回路に提供される電流又は電力を測定することによって)。駆動周波数アダプタ511は、次いで、駆動周波数を、それが、増大する電力負荷の場合に増大する値だけ電力受信機周波数とは異なるように決定する。駆動周波数アダプタ511は、例えば、この逸脱を明示的に計算するか、又はこれは、ドライバ周波数を電力推定の関数として直接設定することの一部として暗示的である。
多くの異なる手法が、電力送信機が電力受信機共振周波数を考慮又は決定するために使用されるということを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、それは単に、駆動周波数を計算するための関数に暗示的又は明示的に含まれる予め規定された値又は値の範囲である。
例えば、いくつかのシステムにおいて、電力受信機は、例えば100kHz〜105kHzの範囲内にある共振周波数を有することが必要とされる。そのような場合、駆動周波数は、例えば、105kHz〜120kHzの範囲内にあるように制御され、周波数は増大する電力負荷(減少する等価並列負荷抵抗)では増大される。
他の実施形態において、電力送信機は、電力共振周波数を能動的に測定又は推定する。例えば、電力出力は、好適な範囲にわたって掃引される駆動周波数によって周波数の関数として決定される。次いで、共振周波数が、最も効率的な電力伝送に対応するように決定される。
さらに他の実施形態において、電力受信機は、その共振周波数に関する情報を電力送信機に送信し、電力送信機は、駆動周波数アダプタを決定するのに受信した値を使用する。
電力送信機が周波数を電力受信機共振周波数と一致するように設定することを目指す従来の手法とは対照的に、本手法は、駆動周波数を変化させて、これを受信機共振周波数とは比較的大幅に異なるように設定する。
しかしながら、効果的な共振周波数と固有共振周波数との差が増大する場合には電力損失が増大するため、あまりに大きすぎる固有共振周波数を有しないことが望ましい。多くの実施形態及びシナリオにおいて、特に有利な性能は、160kHzを超えない固有周波数で見られるということが分かっている。
したがって、多くの実施形態及びシナリオにおいて、並びに特に、Qi手法に準拠するシナリオにおいて、以下の値は、効果的な電力伝送及び信頼性の高い通信性能の両方を有する特に有利な動作を提供する。
95kHz〜115kHzの範囲内の受信機共振周波数。
115kHz〜160kHzの範囲の送信機共振回路の固有周波数。
115kHz〜固有共振周波数の範囲を超えない範囲で可変である、駆動周波数及び送信機共振回路の効果的な共振周波数。
いくつかの実施形態において、電力送信機は、電力受信機から受信したメッセージに基づいて(典型的には、負荷変調によって)駆動周波数を決定するように構成される。具体的には、いくつかの実施形態において、電力送信機は、電力受信機による電力伝送信号の抵抗負荷を示す負荷指標を含む、電力受信機からのメッセージを受信する受信機を備える。
例えば、電力受信機は、例えば、充電されるバッテリによって消費される負荷など、外部負荷によって消費される有効電力を直接示すメッセージを送信する。他の例では、電力受信機は、例えば、負荷の電流及び負荷にわたる電圧の測定から抵抗を決定するように構成される。
電力送信機は、そのような実施形態において、受信した負荷指標に応じて駆動周波数を適合させるように構成され、特に、電力送信機は、受信した値に基づいて等価負荷抵抗の推定を生成するように構成される。実際、いくつかのシナリオにおいて、等価負荷抵抗は、電力受信機の報告された負荷から直接決定することができる。例えば、抽出電力が分かっており、電力送信機のスイッチブリッジに提供される電圧も分かっている場合、等価負荷抵抗は、抽出電力が駆動回路に提供される電力に対応すると仮定することによって(例えば、推定損失の補償とともに)、ドライバ回路に提供される平均電流で除算した電圧から決定することができる。
そのような実施形態の特定の例として、スイッチブリッジに提供される電圧を、一定値に保つことができる。そのような場合、提供される平均電流は、負荷抵抗の反比例指標である。平均電流が高い場合、電力抽出は高く、負荷抵抗は低い。平均電流が低い場合、電力抽出は低く、負荷抵抗は高い。
本手法は、多くのシナリオにおいて、性能の改善を提供し、特に、等価負荷抵抗のより正確な推定が、電力受信機が電力受信機側の状況の情報を提供することによって可能であるということを反映する。
先の文は、共振変更回路が、部分的時間間隔の間、誘導性インピーダンス部501からの電流を容量性インピーダンス部503から離れるように分流させることによって容量性インピーダンス部503の状態変化を遅くするように構成される例について焦点を合わせていた。しかしながら、他の実施形態において、共振変更回路505は、部分的時間間隔の間、容量性インピーダンス部503から誘導性インピーダンス部501への電流の流れをブロックすることによって、誘導性インピーダンス部501の状態変化を遅くするように構成されてもよい。
例えば、図13は、図5のシステムの別の実施形態を例証する。この例では、共振変更回路は、部分的時間間隔の間、容量性インピーダンス部から誘導性インピーダンス部への電流の流れ(及び、特に、電流の流れの変化率)を妨げることによって、又は同等に、誘導性静電容量にわたってコンデンサによって課せられる電圧を低減することによって、誘導性インピーダンス部の状態変化を遅くするように構成される。具体的には、本例では、共振変更回路は、部分的時間間隔の間、容量性インピーダンス部から誘導性インピーダンス部への電流の流れをブロックすることによって、又は同等に、インダクタ電圧をゼロに設定することによって、誘導性インピーダンス部の状態変化を遅くするように構成される。
本例では、コンデンサ503からインダクタ501への電流は、インダクタ501と直列にあるスイッチ1301によってブロックされる。本例では、ドライバ203は、共振サイクルの一部分の間、コンデンサ503とインダクタ501との結合を効果的に切断するように構成される。ドライバ203は、スイッチ1301を駆動信号に同期させ、原則として、図6の例について説明されるように動作する。実際、図6の例では、スイッチ601は、コンデンサ503を通る電流がゼロになるように制御することによって、コンデンサ503にわたる電圧をゼロで動かなくさせるように構成される。図13の例では、スイッチ1301は、インダクタ501をコンデンサ503から切断し、それによりインダクタに対するコンデンサの電圧の影響を除去することによって、インダクタ501を通る電流をゼロで動かなくさせるように構成される。したがって、2つの手法は、電流及び電圧の役割が交換されるときコンデンサ及びインダクタの動作が同じであるという観点から等価である。実際、図7の信号は、インダクタ電流及びコンデンサ電圧の曲線をそれぞれコンデンサ電圧及びインダクタ電流と交換すれば、図13の例にも適用することができる。
提供された例において、部分的時間間隔の間、コンデンサ503及びインダクタ501の両方の状態変化が遅くされるか、又は実質的に動かなくされるということも留意されたい。実際、図6の例では、部分的時間間隔の間、コンデンサ503に達する電流はなく、電圧はゼロで一定である。しかしながら、これは、インダクタ501にわたる電圧もゼロに設定し、故に、インダクタ電流は実質的に一定であり、即ち、インダクタ501の状態変化は実質的に存在しない。同様に、図8の例では、部分的時間間隔の間、コンデンサ503から流れることができる電流はなく、したがって、コンデンサ503にわたる電圧は、実質的に一定であり、即ち、コンデンサ501の状態変化は実質的に存在しない。
先の例では、部分的時間間隔の開始は、インダクタ電圧及びコンデンサ電流それぞれのゼロ交差と同期されている(及び、具体的には揃えられている)。特に、部分的時間間隔の開始時間は、コンデンサ電圧及びインダクタ電流それぞれのゼロ交差と揃えられる。これは、コンデンサ503とインダクタ501との間の電流の流れが、部分的時間間隔の間、完全にゼロまで低減されるときに特定の利点を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態において、電流の流れにおけるより漸進的な低減が使用されるということを理解されたい。
状態変化、及びコンデンサ503とインダクタ501との間のエネルギー流の遅延は、共振構成要素間の電流の流れを完全に防ぐというよりも低減することによって達成されるということを理解されたい。例えば、低減された電流は、例えばマイクロコントローラによってリアルタイムで制御することができる電流制御回路により達成される。
しかしながら、別の例として、この低減は、例えば、部分的時間間隔の間、追加のコンデンサ又はインダクタを含めることによって達成される。例えば、図14の例では、追加の電流低減コンデンサ1401が、図6のスイッチと直列に挿入される。部分的時間間隔の間、スイッチ601は、コンデンサ503を短絡させないが、電流低減コンデンサ1401を並列に挿入する。これは、部分的時間間隔の間、電流の一部が電流低減コンデンサ1401内へと流れ、それによりコンデンサ503の状態変化、そしてコンデンサ503がインダクタに課す電圧を低減するため、コンデンサ503への電流が低減するということになる(電流低減コンデンサ1401は、コンデンサ503と一緒に充電及び放電される)。
インダクタ501の対応する例は、図15に示される。この例では、電流低減インダクタ1501は、インダクタ501と直列に挿入され、スイッチ1503は、電流低減インダクタ1501と並列に結合される。この例では、スイッチ1503は、部分的時間間隔の間、開成状態にあり、結果として効果的なインダクタンスが増大される。したがって、部分的時間間隔の間、インダクタを通る電流変化は低減される(コンデンサ503が課す電圧がここでインダクタ501及び1501にわたって分割され、こうして、コンデンサ503がインダクタ501に課す、結果として生じる電圧が低減されるため)。部分的時間間隔の最後で、スイッチ1503は閉成され、それにより電流低減インダクタ1501を短絡させる。
以下では、システムの動作は、ドライバ203が駆動信号を生成するためのスイッチングブリッジ/インバータを備えるシステムに関してさらに説明される。スイッチングブリッジは、具体的には、図3及び図4の例に対応するハーフブリッジ又はフルブリッジである。
本例では、ドライバ203は、さらに、部分的時間間隔を直接制御する遷移を有するようにタイミング信号を生成する。具体的には、信号は、部分的時間間隔の開始時間に対応する(及び、典型的には、それに、サイクル時間の例えば50分の1以内で実質的に同一である)時間、部分的時間間隔の終了時間に対応する(及び、典型的には、それに、サイクル時間の例えば50分の1以内で実質的に同一である)時間、又は部分的時間間隔の開始時間及び終了時間の両方に対応する(及び、典型的には、それに、サイクル時間の例えば50分の1以内で実質的に同一である)時間で発生する遷移を有するように生成される。
さらには、本例では、ドライバ203は、タイミング信号をスイッチブリッジのスイッチを制御するスイッチ信号のうちの1つ(又は複数)に同期させるように構成される。したがって、駆動信号はスイッチブリッジ内のスイッチの切り替えによって生成されるため、スイッチ信号へのタイミング信号の同期、故に部分的時間間隔の同期も、駆動信号への同期をもたらす。
図16は、図1及び図2の誘導電力伝送システムの例のエレメントの電気モデルの例を示す。
送信機共振回路201は、コンポーネントCp、及びLp(コンデンサ503及びインダクタ501に対応する)によって表される。ドライバは、Vp、及び特定の例においてはFETであるスイッチM1〜M4によって形成されるスイッチブリッジによって表される。受信機共振回路205は、コンポーネントCs、Lsによって表される。コンデンサCdは、1MHzで共振を生み出し、それにより、可動コイルを使用する電力送信機が電力受信機の位置を突き止めることを可能にする(例えば、Qiワイヤレス電力仕様(バージョン1.0)において説明される原理に従って)。コンデンサCm及びスイッチSmは、電力受信機105による負荷変調を表す。ダイオードD7〜D10並びにCl及びRlは、電力受信機105の負荷を表す(ダイオードは整流を提供する)。
本例では、スイッチS1が、適切なデューティサイクルで開成及び閉成されると、効果的な静電容量は、コンデンサ503(Cp)の静電容量よりも自然に大きくなる。電力送信機の効果的な共振周波数が固有共振周波数より低いことが望まれる場合、スイッチS1は、Cpにわたる電圧が負から正へ及び/又はその逆でゼロ電圧を通過した直後の短い期間の間、閉成される。これは、図17に例証され、この図は、まず駆動信号及びスイッチSを制御するタイミング信号、次いでインダクタ501を通る電流、最後にコンデンサにわたる電圧を示す(図7に対応する)。駆動信号は、それぞれ93kHz及び10%の周波数fo及びデューティサイクルDで共振回路に印加され、即ち、駆動信号は、93kHzの動作周波数を有する。本例では、共振タンクの固有共振周波数fnは、100kHzである。したがって、共振回路にわたる電圧(V(左、右)で表される)は、フリーランニング共振回路の場合、電流ip(t)を遅らせ、つまり回路が容量性モードの動作状態にあるということを意味する。しかしながら、図16のシステムでは、スイッチS1は、電圧V(左、右)の第1高調波及び電流ip(t)が同相であるようにコンデンサCpを短絡させ、つまり電力送信機が共振で動作することを意味する。したがって、共振は、適切なデューティサイクルでスイッチS1を閉成することによって電圧V(Cp)のゼロ交差のイベントの直後、コンデンサCpにわたる電圧が増大すること(又は低減すること)を防ぐことによって達成される。これは、インダクタからの電流をコンデンサCpから離れる方へ効果的に分流させるように構成される。
多くの実施形態において、図16の例より実践的である手法の例が図18に提供される。図18の例では、図16のタイミングの簡略化が達成され、それによりさらなる柔軟性を提供する。
図18の例では、スイッチは、1つは一方向に流れる電流に対して、1つは他方向に流れる電流に対して短絡を提供する、2つの電流分流経路によって置き換えられる。本例では、各電流分流経路は、電流がその経路の一方向にのみ流れることができることを確実にする整流器(具体的には、ダイオード)を含む。
この例では、共振タンクを通る正の電流はここでD6/M6によって分岐され、負の電流はD5/M5によって分岐される。ダイオードD5及びD6は、M5及びM6の本体ダイオードが導電することを防ぐ。スイッチ/FET M6は、スイッチ/FET M4と全く同じ信号によって制御され、即ち、本例では、部分的時間間隔のタイミングを制御するスイッチ信号は、スイッチブリッジのスイッチのうちの1つのスイッチ信号と全く同じである。実際、部分的時間間隔の開始時間及び終了時間のうちの少なくとも一方は、駆動信号を生成するスイッチングブリッジのスイッチのうちの1つの切り替えと同期されるだけでなく、それと同時に起こる。
実際、スイッチM4が導電しているとき、電圧V(Cp)は、負から正へ共振している。この電圧が正になると、スイッチM6がすでにオンの状態にあるため、ダイオードD6は、直ちに導電し始める。このやり方では、ip(t)を通る電流は、複雑なタイミング制御を必要とせずに、コンデンサCpからD6/M6に向かって自然に伝わる。これは、さらに図19に例証される。
同様の状況が、M5/D5の第2の経路において発生する。実際、この例では、スイッチM5の制御スイッチ信号は、M3の切り替えと同時に起こるように直接生成される。
本例では、電流分流経路の各々(D5/M5及びD6/M6)は、したがって、スイッチ及び整流器の両方を備える。これが、部分的時間間隔のより柔軟なタイミングを可能にする。
具体的には、スイッチ及び整流器の両方の使用は、電力送信機が、部分的時間間隔の開始時間及び終了時間のうちの一方をタイミング信号内の遷移に揃えることを可能にするが、他方は、整流器によって自動的に生成され、即ち、それは導電状態と非導電状態との間で整流器を切り替えることによって決定される。
図18の例では、スイッチは、コンデンサの電圧が負である時間の間、導電状態に切り替えられる。しかしながら、ダイオードD6に起因して、D6/M6の電流分流経路は、いかなる電流も伝導せず、故にコンデンサ503からのいかなる(負又は正の)電流も分流しない。したがって、スイッチM6をオンに切り替える正確なタイミングは、これが、電流が分流される部分的時間間隔の開始を構成するわけではないため、無関係である。
しかしながら、コンデンサ503にわたる電圧のゼロ交差の直後、ダイオードD6は、導電し始める(電圧が十分な順方向バイアスを提供するのに十分に高くなるとすぐに)。したがって、ダイオードD6が、非導電状態から導電状態へと切り替わるとき、電流分流経路は、インダクタ501からの電流をコンデンサ503から離れる方へ分流させ始める。このように、部分的時間間隔の開始は、非導電状態から導電状態へと切り替わるダイオードによって制御され、スイッチM6がいつ切り替わるかには依存しない。したがって、部分的時間間隔の開始時間は、タイミング信号に揃えられない。
電流分流経路は、スイッチM6が開状態に切り替えられるまで電流を分流させ続ける(ダイオードD6の順方向にインダクタから流れる電流がある限り)。したがって、部分的時間間隔の終了時間は、タイミング信号の遷移と、故にスイッチM4のスイッチ信号の遷移と揃えられる。
したがって、図18の例では、図19によって例証されるように、電力送信機は、部分的時間間隔の開始時間を、非導電状態から導電状態へ切り替わる整流器(ダイオードD6)に揃えるように構成される一方、終了時間は、タイミング信号内の遷移、故にスイッチ信号内の遷移に揃えられる。実際、電流分流経路のスイッチ及びスイッチブリッジのスイッチの両方に同じスイッチ信号が使用される。
他の実施形態において、同じ原則が、例えば、整流器が導電状態から非導電状態に切り替わるとき場合によっては部分的時間間隔を終了させることを含む、導電状態を切り替える整流器に応じて部分的時間間隔の終了を制御するために適用されるということを理解されたい。例えば、そのような実装形態は、例えばコンデンサからの電流を分流する代わりに、インダクタへの電流のブロックが用いられるときに有用である。
本手法は、いくつかの特定の利点を有する。実際、本手法は、コンデンサ電圧及び/又はインダクタ電流のゼロ交差への部分的時間間隔の開始の自動同期を可能にする。したがって、本手法は、部分的時間間隔の開始を、コンポーネントが容易に短絡又は切断される時間に自動的に揃え、それにより複雑性の低い実施形態を可能にする。
別の重大な利点は、本手法が、駆動信号及びスイッチブリッジのスイッチ信号を生成することにおいてさらなる柔軟性を提供することである。具体的には、部分的時間間隔はスイッチ信号の1つのエッジにのみ同期されるため、他は(妥当な範囲内で)自由に変化することができる。これは、特に、デューティサイクルを変化させることを可能にし、故に、例えば、信号の動作周波数又は振幅レベルを変えることなく、ドライバが生成された電力伝送信号の電力レベルを動的に変化させることを可能にする。
実際、本手法は、駆動信号のはるかに簡略化された生成を可能にする。具体的には、駆動信号がアクティブ化される比較的短い時間間隔の間のみ(即ち、図19の第1の曲線のように)スイッチブリッジの対応するスイッチ(それぞれM1/M4及びM2/M3)をオンに切り替える代わりに、スイッチのすべてを、50%のデューティサイクルの略方形波信号によって動作させることができる。次いで駆動信号のデューティサイクルが、これらの駆動信号間の相対位相差によって生成される。しかしながら、エッジのうちの1つのみが、部分的時間間隔のタイミングを制御するため、これは部分的時間間隔に影響を与えない。
さらには、本手法は、依然として、第1の電力受信機105及び動作周波数が本質的に同じ値で互いに固定されることを確実にする。具体的には、これは、共振回路201の振動が駆動信号のサイクル毎に効果的に再開始されるということから生じる。
図18の例において、本システム内の電圧レベルは、典型的には、部分的時間間隔を制御するスイッチ(即ち、スイッチM5及びM6)が、典型的には2つの追加のパルス変圧器を使用して実施される高電圧レベルシフタにより駆動されることを必要とするということに留意されたい。
しかしながら、これは、図20のシステムにおいては部分的に回避される(具体的には、スイッチM6では高電圧レベルシフタを回避することができる)。この例では、2つの電流分流経路が、インダクタ501及びコンデンサ503の接続点とスイッチングブリッジへの電源の母線との間で結合される。
図20のシステムの動作は、図18の例と同様であり、分流される電流のための電源へと戻る異なる経路を単に提供する。しかしながら、重要な違いは、スイッチM5及びM6がそれぞれ電圧レール及びインバータの接地、即ち、一定電圧を参照にされるということである。これは、例えば、スイッチがMOSFETとして実装されるとき、スイッチの駆動を大幅に促進する。本例では、スイッチM6は、MOSFETがM4と同じスイッチ信号によって直接駆動されることによって実装される。しかしながら、MOSFETを実装するM5は、このMOSFETのソース電圧が負の電圧値を有するため、依然として、パルス変圧器を必要とする。
図21は、図20のシステムの変更を例証する。この例では、電圧レールへの電流分流経路、即ち、D5/M5を含む電流分流経路が完全に除去されている。このシステムは、ゼロ交差の半分に対してだけ部分的時間間隔を導入するが(即ち、サイクルあたり1つのゼロ交差のみ)、効果的な共振周波数の効果的な調整を提供することが分かっている。
したがって、図21のシステムでは、電流分流経路は、直列配置で結合されたスイッチ及び整流器を備え、電流分流経路の一方の端がインダクタとコンデンサとの間の接続点に連結され、電流分流経路の他方の端がスイッチングブリッジの接地供給レールに連結されている。本システムでは、整流器が、部分的時間間隔の開始時間を整流器が非導電状態から導電状態に切り替わる時間に揃える一方、部分的時間間隔の終了時間は、スイッチングブリッジのスイッチM4の切り替えに揃えられる。
本手法は、電力送信機の共振周波数を、それが駆動信号に一致するように適合させるための非常に複雑性の低い手法を可能にする。本手法は、具体的には、駆動信号の周波数が送信機共振回路の共振周波数と常に同じである、及びその逆も然りである自動システムを提供する。
動作周波数及び送信機共振周波数の固定を例証するために、図22のシステムを検討する。本例は、インダクタ501(L)及びコンデンサ503(C)を備える共振回路を駆動するドライバ203を例証する。ドライバがステップ電圧を共振回路に印加すると、それは、よく知られている共振周波数
で振動し始める。これらの振動は、システムを通って流れる電流I(実線)及び、インダクタ501とコンデンサ503との間の接点での電圧V(破線)に現れる。減衰の存在下では、振動はいくらかの時間の後に消えて、コンデンサ503がドライバ203のステップ電圧に課せられる安定状態をもたらす。実際には、共振回路は高Q因子、即ち、低減衰を有し、それは、振動が共振周波数の多くの期間にわたって継続することを意味する。
ドライバ203が共振周波数に等しい周波数で信号を印加する場合、減衰の存在下でさえも振動を無期限に持続させることができる。この場合、非常に高い電流が回路を通って流れることができる。しかしながら、ドライバ203が共振周波数と異なる周波数で信号を印加する場合、本システムは、あまりよく「揺れず」、結果としてはるかに低い電流が回路を通って流れることになる。実際、後者の場合、回路内の電流及び電圧信号は、2つの周波数、即ち、駆動周波数及び共振周波数を含み、ここでは共振周波数の方が、共振タンク回路のより高いQ因子が理由で、より顕著である。電流及び電圧信号内の2つの周波数は、それらの振幅に対してビート周波数をもたらし、これは時には、2つの周波数間の相互変調とも(誤って)称される。システムの電力受信側での負荷変調により達成されるような振幅変調に依存するワイヤレス電力伝送システムにおいて、これは、信頼性の高い通信を、不可能ではないとしても、困難にし得る。したがって、特定のケースでは必須ではないとしても、共振周波数に等しい周波数でシステムを動作させることが有利である。
共振周波数での振動のサイクルの完了後、スイッチSW1又はSW2のいずれかを閉成することによって、その周波数でのさらなる振動が抑制される。言い換えると、回路内の電流及び電圧信号の変化の状態は、遅くされ、この例ではゼロまで遅くされる。駆動信号の次のサイクルの開始時にスイッチを再び開成することは、あたかも駆動信号が初めて印加されたかのように共振周波数での振動を再開始する。これは、電流信号又は電圧信号の位相が、駆動信号の位相に一致するように再設定されることを意味する。言い換えると、回路内のサイクルの周波数は、駆動周波数に効果的に等しくなるが、それらはもはや正弦曲線形状を有しない。図23において、左側は、電流の負から正へのゼロ交差でSW1を閉成する場合の結果として生じる波形を示し、右側の図は、電圧の負から正へのゼロ交差でSW2を閉成する場合の結果として生じる波形を示す。実線の波形は電流を表し、破線の波形は電圧を表し、点線は駆動信号、この場合は方形波を示す。
駆動周波数と共振周波数との差によって、本システムはまた、スイッチを、サイクル毎に1回とは対照的に、数サイクルに1回動作させることによって、電流及び電圧信号内のビートを効果的に抑圧するように作用するということに留意されたい。例えば、駆動周波数が共振周波数に近づくと、ビートの周波数が増大し、振幅における結果として生じる変化が増大するまでには複数のサイクルを要する。そのような場合には、数サイクル毎に位相を再設定することは、スイッチを動作させることから生じるシステムにおける潜在的損失を低減しながら、負荷変調ベースの通信に対する感度を十分なレベルに保つのに十分である。
スイッチの動作の同期は、例えば、様々な異なる実施形態について先に説明したものなど、多くのやり方で達成することができる。スイッチを開成することは、方形波又はパルス波駆動信号のエッジ、例えば、立ち上がりエッジと最も容易に同期される。スイッチの閉成の場合、電流又は電圧信号の負から正へのゼロ交差でトリガするタンク回路に測定システムが追加され得る。当業者は、この機能を実施する多くの種類の回路を設計することができる。
電力受信機のより大きな(横の)位置決め公差を達成するために有利な実装形態である、並列にある複数のタンク回路を駆動する単一のドライバを備えるワイヤレス電力システムにおいて、共振周波数でシステムを動作させることは、不可能ではないとしても、困難である。その理由は、ワイヤレス電力システムを実装するために使用されるコンポーネントのインダクタンス及び静電容量値の自然な広がりに起因して、各共振タンク回路が、典型的には、異なる共振周波数を有するからである。各共振タンク回路のQ因子を制限することによって、共振周波数での電流及び電圧信号コンポーネントを、駆動周波数での信号コンポーネントに対して比較的小さく保つことができる。これが振幅に対するビートを抑え、その結果、振幅変調に基づく通信は可能なままである。しかしながら、この手法の欠点は、低いQ因子が、電力伝送の効率を標準に保つために比較的高い結合を必要とするということである。言い換えると、低いQ因子は、システムの電力送信部と電力受信部との間の大きい距離を許さない。
フリーランニング振動を上記のように抑制することによって、システム内の様々な周波数(駆動周波数並びに複数の共振タンク回路の異なる共振周波数)間のビートを抑えることができ、振幅変調による通信を可能にする。言い換えると、はるかに大きな距離に位置付けられている電力受信機からの振幅通信を復調することができる、高Qのマルチコイル又はアレイベースの電力送信機を実現することが可能になる。
本発明者らは、負荷変調が使用されるとき、これらの周波数を互いに密接に固定することが、特に、通信性能の改善をもたらすことができるということに気が付いた。
多くの実施形態において、電力送信機101は、電力受信機105からデータメッセージを受信するように構成される。具体的には、電力送信機101は、ワイヤレス誘導電力伝送信号の負荷変調を復調して、電力受信機105から送信される対応するデータを決定するように構成される。
物理レベルでは、電力受信機105から電力送信機101への通信チャネルは、通信キャリアとしてワイヤレス誘導電力伝送信号を使用することによって実施される。電力受信機105は、受信機コイル107の負荷を変調することによってデータメッセージを送信する。電力受信機105は、例えば、これを、受信コイル107に並列で結合されるコンデンサを接続及び切断し、それにより共振、故に電力受信機105の負荷特性を変化させることによって行う。これらの変化は、電力送信機側での電力伝送信号における対応する変動、並びに具体的には、送信機インダクタ103の電流及び電圧における変動を結果としてもたらす。これらの変化は、電力送信機101によって直接的又は間接的に検出され、電力受信機105からの負荷変調データを復調するために使用される。
具体的には、負荷変調は、例えば、駆動信号電流/電圧の振幅及び/若しくは位相における変化、送信機インダクタ103の電流/電圧における変化、並びに/又は共振回路の電流/電圧における変化によって検出される。別の例として、負荷変調は、ドライバ203への(具体的には、インバータ/スイッチブリッジへの)電力供給の電流における変化によって検出される。
電力受信機105は、それに応じて、データを電力伝送信号上へ負荷変調することができ、次いでその電力伝送信号を電力送信機101が復調することができる。本手法は、例えば、Qiワイヤレス電力仕様とも呼ばれる、http://www.wirelesspowerconsortium.com/downloads/wireless−power−specification−part−1.htmlから入手可能な「ワイヤレスパワーコンソーシアムによって出版されたSystem description,Wireless power Transfer,Volume I:Low Power,Part 1:Interface Definition,Version 1.0 July 2010」、Qiについて説明されるもの、特に第6章Communications Interface(又はその仕様の後続バージョン)に対応する。
負荷変調は、具体的には、電力伝送を適合するため、特に、電力受信機105から受信される電力制御メッセージに基づいて送信電力レベルを継続して適合する電力制御ループを実施するために使用される。電力制御メッセージは、負荷変調によって通信される。
動作周波数及び送信機共振周波数が自動的に同じである説明された手法は、多くの実施形態において、大幅に改善された性能を提供する。実際、本発明者らは、これらの周波数をリンクさせることによって、大幅に低減された相互変調を達成することができることに気が付いた。
この効果及び実現は、いくつかの実践的な例を検討することによって例証される。具体的には、図24の等価回路を検討する。
図24の図は、図1及び図2の誘導電力伝送システムの簡単な電気モデルを表す。
送信機共振回路201は、コンポーネントCp、Rcp、Rlp、及びLpによって表され、ここで抵抗は損失を表す。ドライバは、Vp及びRiによって表される。受信機共振回路205は、コンポーネントCs、Rcs、Rls、及びLsによって表され、ここで抵抗は損失を表す。コンデンサCd(抵抗Rcdは損失を表す)は、1MHzで共振を生み出し、それにより可動コイルを使用する電力送信機が電力受信機の位置を突き止めることを可能にする。コンデンサCm(抵抗Rcmは損失を表す)及びスイッチSmは、電力受信機105による負荷変調を表す。ダイオードD7〜D10並びにCl及びRlは、電力受信機105の負荷を表す(ダイオードが整流を提供する)。
本回路は、Qiワイヤレス電力伝送システムに典型的な値でシミュレートされている。そのようなシステムにおいて、送信機共振周波数は、f
p=(93±7)kHzの間隔にあり、受信機共振周波数は、f
s=(100±5)kHzの間隔にある。これら2つの間の結合係数kは、
に等しく、Mは2つのコイル間の相互インダクタンスである。本例では、結合係数kは、0.05の値に設定される。
本例では、駆動信号の動作周波数fo及びデューティサイクルD=Ton/Tが変化されて、例えば、所望の電力伝送特性を提供する。
本回路は、以下の例となる値を用いて分析されている。
図25は、以下のパラメータに対するシミュレーション結果を例証する。
k=0.05、fo=100kHz、fp=93kHz、fs=100kHz。
最初の2つの曲線は、送信機インダクタ103(Lp)を通る電流を例証し、2番目の曲線は、拡大表示を例証する。一番下の曲線は、電力受信機(特に、スイッチSmのスイッチ信号)による負荷変調を示す。
見て分かるように、電力伝送信号がまずオンに切り替えられると、振動が発生する。本質的には、電力送信機は、不測減衰共振回路と同様に動作する。実際、振動は、駆動信号と送信機共振回路201との間の相互変調効果と見なされ得る。したがって、振動は、fo−fp=7kHzの周波数での相互変調を表す。振動が次第に弱まり、t=2.0msで効果的に減衰される(主に電力受信機の負荷に起因して)ことも見て分かる。
本例では、負荷変調は、t=2.25msで始まり、本例は、fm=2kHzの変調クロック周波数を有するバースト信号に対応する負荷変調を提供する。見て分かるように、負荷変調の段階変化は、振動を結果的にもたらす相互変調を効果的に励起し、即ち、負荷変調ステップは、不足減衰共振回路を励起する段階機能と見なされ得る。見て分かるように、振動は大きく、負荷変調データの変動によって生じる差を超えるか、又は大幅に低減する。これが、復調の信頼性を大幅に低減し、さらに、多くのシナリオにおいては、信頼性の高い復調を防ぐ(復調における振動を補償することは、非常に複雑で且つ典型的には費用のかかる機能を必要とする)。
図26は、以下のパラメータに対するシミュレーション結果を例証する。
k=0.05、fo=93kHz、fp=93kHz、fs=100kHz。
このように、この例では、動作周波数及び送信機共振周波数は同じ値に設定される。
見て分かるように、これは、効果的に振動を除去する。実際、本回路は、依然として、不足減衰共振回路に対応すると見なされるが、相互変調効果は存在しない。その結果、データの復調が大幅に促進され、はるかに信頼性の高い復調を実施することができる。
したがって、例証されるように、動作周波数及び送信機共振周波数が同じであることを確実にすることによって、負荷変調の復調の改善を達成することができる。
明確性のため、上の説明は、異なる機能回路、ユニット、及びプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明しているということを理解されたい。しかしながら、異なる機能回路、ユニット、又はプロセッサ間の任意の好適な機能分散が、本発明から逸脱することなく使用されるということは明白である。例えば、別個のプロセッサ又はコントローラによって実施されるように例証される機能は、同じプロセッサ又はコントローラによって実施されてもよい。故に、特定の機能ユニット又は回路への言及は、厳密な論理的又は物理的な構造又は組織を示すというよりも、説明された機能を提供するための好適な手段への言及としてのみ見られるべきである。
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせを含む任意の好適な形態で実施され得る。本発明は、任意選択的に、1つ若しくは複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ上で実行するコンピュータソフトウェアとして少なくとも部分的に実施される。本発明の実施形態の要素及び構成要素は、任意の好適なやり方で、物理的、機能的、及び論理的に実装される。実際、機能は、単一のユニット内に、複数のユニット内に、又は他の機能ユニットの部分として実装される。したがって、本発明は、単一のユニット内に実装されるか、又は異なるユニット、回路、及びプロセッサ間に物理的及び機能的に分散される。
本発明は、いくつかの実施形態と関連して説明されているが、本明細書内で定められる特定の形態に限定されることは意図しない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。加えて、特徴は、特定の実施形態と関連して説明されるように見えるが、当業者は、様々な説明された実施形態の特徴が本発明に従って組み合わされることを認識する。請求項において、備える(comprising)という用語は、他の要素又はステップの存在を除外するものではない。
さらには、個別に列挙されるが、複数の手段、要素、回路、又は方法のステップは、例えば、単一の回路、ユニット、又はプロセッサによって実施される。加えて、個々の特徴は、異なる請求項に含まれるが、これらは、場合によっては、有利に組み合わされ、異なる請求項内の包含は、特徴の組み合わせが実現不可能である及び/又は有利ではないことを示唆するものではない。請求項の1つのカテゴリ内のある特徴の包含は、このカテゴリへの限定を示唆するものではなく、むしろこの特徴が、適切な場合には他の請求項カテゴリにも同等に適用可能であることを示す。さらには、請求項内の特徴の順序は、特徴が機能されなければならない任意の特定の順序を示唆するものではなく、特に、方法請求項内の個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実施されなければならないということを示唆するものではない。むしろ、ステップは任意の好適な順序で実施されてよい。加えて、単数形の言及は複数形を排除するものではない。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の」、「第2の」などへの言及は複数を除外するものではない。請求項内の参照記号は、単に例を明確にするものとして提供されるだけであり、特許請求の範囲を制限するものとして決して解釈されるべきではない。