JP2018530605A - プロテアーゼ抵抗性のストレプトアビジン - Google Patents

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Abstract

本発明は、Lys-Cまたは他のプロテアーゼによる切断に抵抗性である修飾ストレプトアビジン分子に関する。これらの修飾ストレプトアビジン分子は、天然ストレプトアビジンの化学修飾、化学合成または遺伝子操作により生じ得る。本発明はまた、これらの修飾ストレプトアビジン分子をコードする核酸分子、該核酸分子を含むベクター、および該核酸分子またはベクターを含む細胞に関する。本発明はさらに、修飾ストレプトアビジン分子を含む固体支持体およびキットに関する。本発明はまた、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)、ポリヌクレオチド(例えばDNA、RNAまたはPNA)、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物および小分子、天然および合成分子の捕捉/固定化のための該修飾ストレプトアビジン分子または該固体支持体の使用、ならびに前記(バイオ)分子と相互作用するタンパク質の同定のための質量分析におけるこれらの修飾ストレプトアビジン分子またはこれらの固体支持体の使用に関する。本発明はさらに、修飾ストレプトアビジン分子を用いることによる質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。

Description

本発明は、Lys-Cまたは他のプロテアーゼによる切断に抵抗性である修飾ストレプトアビジン分子に関する。これらの修飾ストレプトアビジン分子は、天然ストレプトアビジンの化学修飾、化学合成または遺伝子操作により生じ得る。本発明はまた、これらの修飾ストレプトアビジン分子をコードする核酸分子、該核酸分子を含むベクター、および該核酸分子またはベクターを含む細胞に関する。本発明はさらに、修飾ストレプトアビジン分子を含む固体支持体およびキットに関する。本発明はまた、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)、ポリヌクレオチド(DNA、RNAまたはPNA)、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物および小分子、天然および合成分子の捕捉/固定化のための該修飾ストレプトアビジン分子または該固体支持体の使用、ならびに前記(バイオ)分子と相互作用するタンパク質の同定のための質量分析におけるこれらの修飾ストレプトアビジン分子またはこれらの固体支持体の使用に関する。本発明はさらに、修飾ストレプトアビジン分子を用いることによる質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。
(発明の背景)
質量分析は、タンパク質分析において確立された方法である。しかしながら、完全長のタンパク質は、しばしば質量分光分析には大きすぎる。したがって、完全長のタンパク質は、通常、分析に適したより小さな断片を得るためにプロテアーゼにより消化される。
本発明者らは、分析される標的タンパク質をビオチンでタグを付けるプロトコールを通常用いる。ビオチニル化タンパク質は、ビオチンとストレプトアビジン間の強い結合親和性を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製される。これは、ストレプトアビジンが共有結合する支持物質を有するアフィニティーカラムを用いるか、またはストレプトアビジンが共有結合するビーズを用いることにより達成される。質量分光分析に適したタンパク質断片を生じさせるために、プロテアーゼ(例えばLysCまたはトリプシン)は、ビオチニル化標的タンパク質がストレプトアビジンと結合しているとき、またはビオチニル化タンパク質の該ビーズ/支持体からの溶離後に、親和性カラムまたはビーズに直接適用される。
しかしながら、タンパク質消化は、標的タンパク質だけなく、支持物質またはビーズと共有結合したストレプトアビジンもまた切断する。ストレプトアビジンのタンパク質分解断片は、その後の質量分光分析において望ましくないバックグラウンドを形成する。ビーズ/支持体からのストレプトアビジンの漏出が共有結合にもかかわらず生じるため、プロテアーゼ処理の前にタンパク質をビーズ/支持体から溶離させるときでさえ、しばしばストレプトアビジン断片のバックグラウンドが観察される。おそらく、ストレプトアビジンが四量体であり、そのうちの1つのサブユニットのみがビーズまたは支持物質と共有結合しているため、漏出は生じる。
本発明者らはまた、対象とする分子と相互作用するタンパク質が同定される実験プロトコールを用いる。この目的のために、対象とする分子は、ビオチンでタグを付けられ、ストレプトアビジンが共有結合する支持物質またはビーズと結合させる。その後、潜在的な相互作用パートナーを含む試料を支持物質またはビーズと接触させ、潜在的なタンパク質相互作用パートナーを捕捉する。その後、タンパク質相互作用は、タンパク質消化(適宜、支持物質またはビーズから溶離後)を受け得て、タンパク質分解断片は、質量分析により分析され得る。また、タンパク質消化がビーズ/支持体上で実施されるかまたはタンパク質相互作用パートナーの溶離後であるかにかかわらず、ストレプトアビジン断片の望ましくないバックグラウンドがしばしば観察される。
(本発明の技術的課題)
本発明者らは、このたび、ビオチンへの高い結合親和性を維持したまま、プロテアーゼによる切断に抵抗性である(特にLysCおよび/またはトリプシンによる切断に抵抗性である)修飾ストレプトアビジン分子を製造する方法を見出した。
本発明の新規な修飾ストレプトアビジンは、タンパク質精製における適用、特にその後の質量分析によるタンパク質同定に適する。しかしながら、新規な修飾ストレプトアビジンは、ビオチンへの高い結合親和性を有する安定な(すなわちプロテアーゼ抵抗性の)ストレプトアビジンを必要とする他の方法において、有利に用いられることができる。
上記概略は、本発明により解決されるすべての課題を必ずしも説明するものではない。
第1態様において、本発明は、(i)少なくとも1つのエンドペプチダーゼによる切断に抵抗性であり、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、塩基性アミノ酸に特異的であり;そして(ii)10-10 M以下のビオチンに対する解離定数KDを示す、修飾ストレプトアビジンに関する。
第2態様において、本発明は、第1態様による修飾ストレプトアビジンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
第3態様において、本発明は、第2態様による核酸分子を含むベクターに関する。
第4態様において、本発明は、第2態様の核酸分子または第3態様のベクターを含む細胞に関する。
第5態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンを含む固体支持体に関する。
第6態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体を含み、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される少なくとも1つのプロテアーゼをさらに含む、キットに関する。
第7態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、少なくとも1つのビオチニル化分子の捕捉または固定化のための使用に関する。
第8態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、タンパク質精製のための使用に関する。
第9態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、質量分析における使用に関する。
第10態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化タンパク質を含む試料を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化タンパク質を修飾ストレプトアビジンに結合する工程;
(iii)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(iv)プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化タンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(v)工程(iv)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vi)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を分光分析に付す工程
を含む、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。
第11態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化タンパク質を含む試料を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化タンパク質を修飾ストレプトアビジンに結合する工程;
(iii)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(iv)ビオチニル化タンパク質を溶離する工程;
(v)プロテアーゼを含む溶液を工程(iv)において溶離したビオチニル化タンパク質に加え、これによりビオチニル化タンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(vi)工程(v)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vii)適宜、工程(vi)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。
第12態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化分子を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化分子をビーズ上にロードする工程;
(iii)ビオチニル化分子のための少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーを含む試料を、工程(ii)において得られたビオチニル化分子をロードしたビーズと接触させる工程;
(iv)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(v)プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これにより少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーのペプチド断片を生じさせる工程;
(vi)工程(v)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vii)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、分子のタンパク質相互作用パートナーを捕捉するための方法に関する。
第13態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化分子を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化分子をビーズ上にロードする工程;
(iii)ビオチニル化分子のための少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーを含む試料を、工程(ii)において得られたビオチニル化分子をロードしたビーズと接触させる工程;
(iv)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(v)タンパク質相互作用パートナーを溶離する工程;
(vi)プロテアーゼを含む溶液を工程(v)において溶離したタンパク質相互作用パートナーに加え、これにより少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーのペプチド断片を生じさせる工程;
(vii)工程(vi)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(viii)適宜、工程(vii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、分子のタンパク質相互作用パートナーを捕捉するための方法に関する。
第14態様において、本発明は、下記工程:
(i)調査されるクロマチンの細胞を準備する工程;
(ii)ホルムアルデヒドを細胞に加えて、クロマチンを架橋する工程;
(iii)クロマチン試料をせん断し、これによりせん断されたクロマチン試料を生じさせる工程;
(iv)対象とするクロマチン結合タンパク質に特異的な抗体を、工程(iii)の架橋およびせん断されたクロマチン試料に加え、これにより対象とするタンパク質および対象とするタンパク質に架橋した分子を免疫沈降させる工程;
(v)工程(iv)からの免疫沈降したタンパク質を、プロテインAまたはプロテインGでコーティングされたビーズと接触させ、これにより免疫沈降したタンパク質をビーズ上に固定する工程;
(vi)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(vii)ビオチニル化ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを、工程(v)または存在するときは工程(vi)の免疫沈降したタンパク質に加え、これにより対象とするタンパク質に架橋したDNAをビオチン化する工程;
(viii)適宜、工程(iv)において加えられた抗体を洗浄工程により除去する工程;
(ix)工程(vii)または存在するときは工程(viii)からのビオチニル化DNAを第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズと接触させ、これにより工程(vii)または存在するときは工程(viii)からのビオチニル化DNAおよびビオチニル化DNAに架橋したタンパク質を捕捉する工程;
(x)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(xi)適宜、プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化DNAに架橋したタンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(xii)適宜、工程(xi)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(xiii)適宜、工程(xii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、クロマチン結合タンパク質を捕捉するための方法に関する。
第15態様において、本発明は、下記工程:
(i)調査されるクロマチンの細胞を準備する工程;
(ii)ホルムアルデヒドを細胞に加えて、クロマチンを架橋する工程;
(iii)クロマチン試料をせん断し、これによりせん断されたクロマチン試料を生じさせる工程;
(iv)ビオチニル化ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを工程(iii)のクロマチン試料に加え、これによりせん断されたクロマチン試料内でDNAをビオチン化する工程;
(v)工程(iv)からのビオチニル化DNAを、第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズと接触させ、これにより工程(iv)からのビオチニル化DNAおよびビオチニル化DNAに架橋したタンパク質を捕捉する工程;
(vi)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(vii)適宜、プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化DNAに架橋したタンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(viii)適宜、工程(vii)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(ix)適宜、工程(viii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、クロマチン結合タンパク質を捕捉するための方法に関する。
この発明の概要は、本発明のすべての特徴を必ずしも説明するものではない。他の実施態様は、以下の詳細な説明の検討から明らかになるだろう。
図1は、リシンおよびアルギニンのブロッキング前および後のストレプトアビジンコーティングビーズからLysCおよびトリプシン消化により生じるペプチドのクロマトグラムを示す。Aは、未処理のストレプトアビジンビーズのトリプシン消化がいくつかのペプチドを生じさせることを示し、それらのうち最も多量にあるものを表示の配列により示す。Bは、ストレプトアビジン由来ペプチドが存在しないことから明らかなように、還元的メチル化によるリシンのブロッキング後、ストレプトアビジンがLysCによる消化に難分解性になったことを示す。Cは、アルギニンおよびリシンのブロッキング後(それぞれ、シクロヘキサジオンおよび還元的メチル化による)、ストレプトアビジンがトリプシンによる消化に難分解性になったことを示す。 図2は、LysC抵抗性ストレプトアビジンビーズによるクロマチン試料からのビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の捕捉および同定を示す。Aは、ビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の略図、およびPRC2複合体においてタンパク質からペプチド断片を生じさせるために実施される方法の工程を示す。記号:三角:Suz12;白色の楕円:PRC2複合体中のタンパク質;灰色の楕円:他の一時的に関連するタンパク質;黒色の線:DNA;黒一色の円:DNA上のビオチン;下向きY:Suz12抗体;逆向きC:ストレプトアビジン(未修飾またはリシン(適宜、アルギニンも)のブロッキング後のいずれか)。Bは、図2Aに記載の手順を実施した後質量分析により同定されるタンパク質を示す。同定されたタンパク質を遺伝子名で示し、PRC2複合体に属すると公知なものを太字の斜体で示す。ペプチド:タンパク質当たり同定されるペプチドの数。PSM:ペプチド・スペクトル・マッチ(peptide-spectrum matches)、これらのペプチドがタンパク質当たり同定される回数を示す。 図3は、種々のタイプのストレプトアビジンの結合能を示す。種々のタイプのストレプトアビジンでコーティングされたビーズの結合能をビオチニル化DNAの回収を測定することにより評価した。左カラム:通常のストレプトアビジン;中央カラム:修飾リシンおよびアルギニン残基を有するストレプトアビジン;右カラム:修飾リシン残基を有するストレプトアビジン。 図4は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるシトルリン残基へのアルギニン残基の変換についての反応スキームを示す。 図5は、トリプシン抵抗性ストレプトアビジンビーズによるクロマチン試料からのビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の捕捉および同定を示す。DNA結合PRC2複合体の捕捉、溶離およびトリプシン消化後に得られたペプチドのLC-MSクロマトグラム。上図:通常のストレプトアビジンビーズを用いるときに得られるペプチドのLC-MSクロマトグラム。3つの最も多量な配列(すべてストレプトアビジンに由来する)を表示の配列により示す。下図:ブロックされたリシンおよびアルギニン(それぞれ、還元的メチル化およびシクロヘキサジオンによりブロックされる)を有するストレプトアビジンビーズを用いるときに得られるペプチドのLC-MSクロマトグラム。 図6は、トリプシン抵抗性ストレプトアビジンビーズによるクロマチン試料からのビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の捕捉および同定を示す。表は、通常のストレプトアビジンビーズ(左カラム、図5の上図に対応する)およびリシン-およびアルギニン-修飾ストレプトアビジン(右カラム、図5の下図に対応する)に富化されたPRC2複合体の分析におけるペプチド・スペクトル・マッチ(PSM)の数を示す。 図7は、親和性捕捉後の少量なタンパク質の検出を可能にする修飾ストレプトアビジンの使用を示す。通常のストレプトアビジンビーズ(赤色トレース)およびリシン-およびアルギニン-修飾ストレプトアビジンビーズ(青色トレース)での富化後に同定されるタンパク質のイオン強度(パネルA)およびペプチド・スペクトル・マッチの数(パネルB)。K&R-修飾ストレプトアビジン(図6参照)により得られる感度の全体的な増加は、すべてのタンパク質の一貫してより高いイオン強度(パネルA)およびそれらの各々のより多い数のPSM(パネルB)の結果である。
(定義)
本発明を下記に詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコールおよび試薬は変更することができるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で用いる専門用語は特定の実施態様を説明することを目的とするものに過ぎず、特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
好ましくは、本明細書で用いる用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)"、Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Koelbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載のように定義される。
本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む」(「comprise」ならびに「comprises」および「comprising」などの変形)は、記載される要素、整数もしくは工程または要素、整数もしくは工程の群を包含するが、その他の要素、整数もしくは工程または要素、整数もしくは工程の群を除外しないことを意味すると理解されるだろう。
本発明は、ローマ数字により番号付けされた1つ以上の方法の工程によって定義されるいくつかの方法に関する。方法の工程の番号付けは、個々の工程が番号により特定される順序で実施されなければならないことを必ずしも意味するものではない。当業者であれば、特定の方法により意図される目的を達成しながら、工程の順序を変えることができるか否かが分かるだろう。
いくつかの文書(例えば:特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、指示書、GenBank Accession Numberの配列提出物など)が、本明細書の文章全体を通じて引用される。本明細書中のいかなる記載も、本発明が従来発明に基づくこのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるものではない。本明細書において引用される文書のいくつかは、「参照により組み込まれる」として特徴づけられる。このような組み込まれる参考文献の定義または教示と本明細書に記載される定義または教示との間に矛盾がある場合、本明細書の文章が優先される。
配列:本明細書で言及されるすべての配列は、その全体的内容および開示が本明細書の一部である添付の配列表に開示される。
ストレプトアビジンは、ストレプトマイセス・アビジニ(Streptomyces avidinii)により産生される非グリコシル化細菌タンパク質である。ストレプトアビジンの完全長配列は、183個のアミノ酸(添付の配列表において配列番号1として示される)からなり、成熟時に切断されて159個のアミノ酸(添付の配列表において配列番号2として示される)を含むストレプトアビジンの成熟型を生じる、24個のアミノ酸シグナルペプチドを含む。S・アビジニの培地から単離されるストレプトアビジンは、しばしば、分泌後タンパク質消化のために、短縮されたN末端および短縮されたC末端を有する(E.A. Bayer et al., Biochem J. (1989) 259:369-376; T. Sano et al., J. Biol. Chem. (1995) 270(47):28204-28209参照)。
本明細書で用いる、用語「野生型ストレプトアビジン」は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するストレプトアビジンの成熟型を指す。
本明細書で用いる、用語「修飾ストレプトアビジン」は、配列番号2の天然型のストレプトアビジン(または配列番号2のアミノ酸配列の天然短縮型)に基づくが、例えば、天然型のストレプトアビジン分子の化学修飾、またはこのような修飾を含むストレプトアビジン分子の化学合成、またはストレプトアビジン遺伝子を遺伝子改変し、適切な発現宿主において改変された遺伝子を発現して、修飾アミノ酸を発現することによるストレプトアビジン分子に導入され得る修飾を含まない、ストレプトアビジン分子を指す。
本明細書で用いる表現「化学修飾」は、有機化学分野の当業者に公知な修飾を含むだけでなく、酵素反応によりもたらされる修飾などの生化学修飾をさらに含む。例えば、アルギニン残基は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)の酵素活性によりシトルリン残基に変換され得る(図4参照)。
本発明の目的で、修飾ストレプトアビジンは、問題のプロテアーゼとのインキュベーション時に得られる切断生成物の量が、同一条件(同じ温度、同じ緩衝条件、同じ量のプロテアーゼ、同じ量の野生型ストレプトアビジンおよび修飾ストレプトアビジンなど)下でインキュベートされる対応する野生型ストレプトアビジンのコントロールタンパク質分解的切断から得られる切断生成物の量のわずか25%以下であるとき、「プロテアーゼによる切断に抵抗性である」と見なされる。他に明記されていない場合、「量」は、本明細書においてモル量を意味する。しかしながら、本発明の修飾ストレプトアビジンは、親の天然型のストレプトアビジン分子とほぼ同じ分子量を有する。したがって、量がモル量(mol、mmol、nmolなどで測定される)または質量量(g、mgまたはμgなどで測定される)として測定されるかにかかわらず、上記定義における差異はほとんどないかまたは全くない。問題のプロテアーゼとのインキュベーション時に得られる切断生成物の量が、同一条件下でインキュベートされる対応する野生型ストレプトアビジンのコントロールタンパク質分解的切断から得られる切断生成物の量のわずか20%以下であることが好ましい(好ましくは15%以下;より好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下、またさらにより好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下)。より狭い意味において、用語「プロテアーゼによる切断に抵抗性である」は、修飾ストレプトアビジンが問題のプロテアーゼにより全く切断されないことを意味する。
本明細書で用いる第1化合物(例えばストレプトアビジンまたは抗体)は、1μM以下、好ましくは900 nM以下、好ましくは800 nM以下、好ましくは700 nM以下、好ましくは600 nM以下、好ましくは500 nM以下、好ましくは400 nM以下、好ましくは300 nM以下、好ましくは200 nM以下、より好ましくは100 nM以下、より好ましくは90 nM以下、より好ましくは80 nM以下、より好ましくは70 nM以下、より好ましくは60 nM以下、より好ましくは50 nM以下、より好ましくは40 nM以下、より好ましくは30 nM以下、より好ましくは20 nM以下、より好ましくは10 nM以下、さらにより好ましくは5 nM以下、さらにより好ましくは4 nM以下、さらにより好ましくは3 nM以下、さらにより好ましくは2 nM以下、およびさらにより好ましくは1 nM以下の第2化合物に対する解離定数KDを有する場合、第2化合物(例えばビオチンまたは抗原)に「結合する」とみなされる。
本発明による用語「結合」は、好ましくは、特異的結合に関する。「特異的結合」は、結合部分(例えばストレプトアビジンまたは抗体)が別の標的への結合と比較して特異的である標的(例えばビオチンまたは抗原)により強く結合することを意味する。結合部分は、第2標的の解離定数(KD)より低い解離定数を有する第1標的に結合する場合、第2標的と比較して第1標的により強く結合する。好ましくは、結合部分が特異的に結合する標的の解離定数(KD)は、結合部分が特異的に結合しない標的の解離定数(KD)より10倍超、好ましくは20倍超、より好ましくは50倍超、さらにより好ましくは100倍超、200倍超、500倍超または1000倍超低い。
本明細書で用いる用語「KD」(時に「M」と略される「mol/L」として、通常測定される)は、第1分子(例えばストレプトアビジン)と第2分子(例えばビオチン)間の特定の相互作用の解離平衡定数を指すことが意図される。結合親和性を決定するための方法、すなわち解離定数KDを決定するための方法は、当業者に公知であり、例えば当該技術分野で公知な以下の方法より選択され得る:表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく技術、バイオレイヤー干渉法(BLI)、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、フローサイトメトリー、蛍光分光学法技術、等温滴定型熱量測定法(ITC)、分析用超遠心法、放射免疫測定法(RIAまたはIRMA)および高感度化学発光法(ECL)。ビオチンと修飾ストレプトアビジン間の結合親和性は、修飾ストレプトアビジンをビオチニル化DNAプローブと接触させることによっても決定することができる。結合したDNAプローブの量は、定量的PCRを用いて読取値として決定することができる。典型的には、解離定数KDは、20℃、25℃または30℃にて決定される。他に明確に断らない限り、本明細書に記載のKD値は、25℃にてELISAにより決定される。
本明細書で用いる、用語「結合能」は、支持物質に結合し得る標的分子の最大量(質量量またはモル量)を指す。典型的に、「結合能」は、支持物質の数、面積または量と比較して計算される。例えば、支持物質の結合能は、μg/ビーズ、または支持物質のμg/cm2もしくはμg/gとして表され得る。
他に断らない限り、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において相互交換可能に用いられ、ペプチド結合により連結された少なくとも2つのアミノ酸の線状分子鎖を指す。
本発明の特定の実施態様において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合により連結された2〜100個のアミノ酸の線状分子鎖を指す。これらの実施態様において、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ペプチド結合により連結された100個超のアミノ酸線状分子鎖を指す。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、常に本明細書において相互交換可能に用いられる。用語「ポリペプチド」はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、タンパク質分解的切断、非天然型のアミノ酸による修飾および当該技術分野において周知な同様の修飾を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの翻訳後修飾の生成物を指すことが意図される。
本明細書で用いる用語「タンパク質相互作用パートナー」は、対象とする分子と相互作用するタンパク質を指す。したがって、タンパク質と対象とする分子を相互作用パートナーと呼ぶことができる。本明細書において、「相互作用」は、典型的には、タンパク質が対象とする分子に結合し、特に対象とする分子への特異的結合を示すことを意味し;ここで、用語「結合」および「特異的結合」は、上記で定義される意味を有する。本明細書で用いる用語「タンパク質相互作用パートナー」は、1つのポリペプチド鎖からなるタンパク質を指すだけでなく、2つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質複合体(「サブユニット」とも呼ばれる)にも関する。本明細書に記載のいくつかの実施態様について、タンパク質複合体のサブユニットを互いに共有結合させることが好ましいかまたは必要であり得る。例えば、タンパク質複合体のサブユニットは、ホルムアルデヒドまたはフルタルデヒドと架橋され得る。別の例において、対象とする分子は、核酸分子(例えばDNAまたはRNA)であり得て、核酸は、タンパク質相互作用パートナー、例えばDNA結合タンパク質と架橋され得る(ここで、該DNA結合タンパク質は、1つのペプチドからなってもよくまたは2つ以上のサブユニットを含んでもよい)。
用語「PSM」は、ペプチド・スペクトル・マッチ(peptide spectrum matches)の略語、すなわちMSにより観察される断片化パターンのペプチド特性(identity)に対する割当てである。
本明細書で用いる用語「小分子」は、1,000 g/mol未満、好ましくは500 g/mol未満の分子量の有機または無機化合物を指す。本発明の意味における「小分子」は、非ペプチド(すなわちペプチド結合なし)かつ非核酸の化合物である。
本明細書で用いる用語「オリゴヌクレオチド」は、互いに共有結合した2〜100個のヌクレオチドを含む核酸分子を指す。
本明細書で用いる用語「ポリヌクレオチド」は、互いに共有結合した100個以上のヌクレオチドを含む核酸分子を指す。
本発明において使用可能な核酸分子(すなわちオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)は、ホスホジエステル結合を一般的に含むが、ある場合には、例えば、ホスホルアミド、ホスホロチオネート、ホスホロジチオネート、O-メチルホスホロアミダイト結合、およびペプチド核酸骨格および結合を含む、代替骨格を有し得る核酸アナログが含まれる。他のアナログ核酸には、正の骨格、非イオン性骨格および非リボース性骨格を有するものが含まれる。1つ以上の炭素環式糖を含む核酸もまた、核酸の定義内に含まれる。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾は、標識の付加を促進するか、または生理的環境におけるこのような分子の安定性および半減期を増加させるためになされ得る。本発明に関連して使用可能な核酸は、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオネートDNA(PS-DNA)、2'-O-メチルRNA(OMe-RNA)、2'-O-メトキシ-エチルRNA(MOE-RNA)、N3'-P5'ホスホロアミデート(NP)、2'-フルオロ-アラビノ核酸(FANA)、ロックされた核酸(LNA)、モルホリノホスホロアミデート(MF)、シクロヘキセン核酸(CeNA)または三環系DNA(tcDNA)またはこれらの天然型核酸および核酸アナログのいずれかの混合物からなり得る。当業者に理解されるように、これらの核酸アナログのすべてが、本発明における使用を見出し得る。また、DNAおよびRNAおよびアナログなどの天然型核酸の混合物を調製し得る。あるいは、種々の核酸アナログの混合物、および天然型核酸およびアナログの混合物を作り得る。
(発明の実施態様)
以下、本発明をさらに説明する。以下の節において、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。以下で定義される各態様は、反対するものと特に断らない限り、他の一または複数の態様と組み合され得る。特に、好ましいまたは有利であるとして示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であるとして示される他の一以上の特徴と組み合され得る。
第1態様において、本発明は、
(i)少なくとも1つのエンドペプチダーゼによる切断に抵抗性であり、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、塩基性アミノ酸に特異的であり;および
(ii)10-10 M以下のビオチンに対する解離定数KDを示す、
修飾ストレプトアビジンに関する。
第1態様のいくつかの実施態様において、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される。第1態様の特定の実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、LysCおよびトリプシンの両方による切断に抵抗性である。
第1態様の一実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、10-15 M〜10-10 Mの範囲;例えば10-14 M〜10-11 Mの範囲または10-13 M〜10-12 Mの範囲のビオチンに対する解離定数KDを示す。
第1態様の一実施態様において、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、LysC、LysNおよびトリプシンからなる群より選択され、1つ以上のリシン残基は:
(i)リシンにおける側鎖の正電荷を中和する化学修飾;および
(ii)リシンにおけるεアミノ基の水素を置き換え、これにより第1級アミンを第2級または第3級アミンに変換する化学修飾
からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を担持する。
リシン残基の該化学修飾 - および特にリシン残基のε-アミノ基の化学修飾 - は、"The Protein protocols handbook" (2009), 3rd edition. Walker J.M. (Ed.), Humana pressに記載されている。
例えば、アミノ側鎖は、(例えば、酢酸無水物を用いて)アシル化され得るかまたはトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によりアルキル化され得る;これらの反応は、アミノ基の大きさおよび電荷の両方を変化させる。ジカルボン酸の無水物(例えば、コハク酸無水物)を用いる他の修飾は、正電荷を持つアミノ基を、負電荷を持つカルボキシル基と置き換える。アミジン化および還元的アルキル化は、正電荷を維持しながら、リシンのε-アミノ基の構造を修飾する機会を提供する。
したがって、第1態様の更なる実施態様において、該化学修飾を:
(i)アシル-リシンを生じるリシン残基のアシル化;好ましくはアセチル-リシンを生じるリシン残基のアセチル化(例えば酢酸無水物を用いることによる);
(ii)ジアルキル-リシンを生じるリシン残基の還元的アルキル化;好ましくはジメチル-リシンを生じるリシン残基の還元的メチル化;
(iii)プロピオニルリシンを生じるプロピオン酸無水物とのリシン残基の反応;
(iv)ジカルボキシル酸リシン無水物を生じるコハク酸無水物とのリシン残基の反応;
(v)アルキル-リシンを生じるリシン残基のアルキル化;
(vi)リシンのアセチミジン誘導体を生じるリシン残基のアミジン化
からなる群より選択される化学反応によって生じる。
第1態様の一実施態様において、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、LysC、LysNおよびトリプシンからなる群より選択され、修飾ストレプトアビジンは、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインは、少なくとも配列番号2の位置K121およびK132(それぞれ配列番号1のK145およびK156に対応する)におけるアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインは、適宜1〜10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)個の内部アミノ酸欠失を含んでもよく、適宜1〜1(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)0個のアミノ酸挿入を含んでもよく、適宜1〜10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)個のアミノ酸交換を含んでもよく、適宜1〜13(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13)個のN末端欠失を含んでもよく、および/または適宜1〜20(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)個のC末端欠失を含んでもよい。
第1態様の好ましい実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインは、少なくとも配列番号2の位置K121およびK132(それぞれ配列番号1のK145およびK156に対応する)におけるアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインは、適宜1〜13(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13)個のN末端欠失を含んでもよくおよび/または適宜1〜20(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)個のC末端欠失を含んでもよい。したがって、これらの実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、位置K121およびK132におけるアミノ酸交換以外の内部アミノ酸欠失またはアミノ酸挿入またはアミノ酸交換を含まない。
第1態様の更なる実施態様において、K121およびK132は、互いに独立して、別のアミノ酸により置き換えられ、該別のアミノ酸は、リシンでもアルギニンでもない。K121またはK132を置き換えるアミノ酸は、該置き換えるアミノ酸がリシンでもアルギニンでもない限り、天然型のアミノ酸または人工アミノ酸である任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、置き換えるアミノ酸は、正電荷を担持せず、本明細書に記載のエンドペプチダーゼの活性部位において水素結合を作ることができる水素残基を担持しない。
第1態様の更なる実施態様において、K121またはK132を置き換えるアミノ酸は、互いに独立して、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシ-プロリン、シトルリン、アセチル-オルニチン、アセトアミド-メチル-システイン、O-アセトアミド-メチル-ホモ-セリン、S-アセトアミド-メチル-ホモ-システイン、アセチル-リシン、プロピオニル-リシン、ヒドロキシル-アセチル-リシン、モノフルオロアセチル-リシン、ジフルオロアセチル-リシン、トリフルオロアセチル-リシン、クロトニル-リシンおよびジメチル-リシンからなる群より選択される。
第1態様のいくつかの実施態様において、少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択され、1つ以上のアルギニン残基は:(i)グアニジニウム基の正電荷を中和する化学修飾;および(ii)グアニジニウム基の1つ以上の水素を置き換える化学修飾からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を担持する。第1態様のいくつかの実施態様において、該化学修飾を:(i)修飾アルギニン残基を生じるジカルボニル化合物とのアルギニン残基の反応;(ii)カルバミル化アルギニンを生じるアルギニン残基のカルバミル化;および(iii)シトルリン残基を生じるアルギニン残基の脱イミノ化からなる群より選択される化学反応によって生じる。特に反応(i)に適したジカルボニル化合物は、α-ジカルボニル化合物であり、ジアルデヒド、ケトアルデヒドおよびジケトンを含む。適切なα-ジカルボニル化合物には、ビアセチル、ピルビン酸、グリオキサール、メチルグリオキサール、デオキシオソン、3-デオキシオソン、マロンジアルデヒド、2-オキソプロパナール、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオンおよび1,2-シクロヘキサンジオンが挙げられるが、これらに限られない。アルギニン残基とジカルボニル化合物間の化学反応は、WO 2004/046314 A2に記載されている。カルバミル化反応(ii)を実施するのに適する試薬は、イソシアン酸である。反応(iii)によるアルギニン残基の脱イミノ化は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)での酵素反応により生化学的に実施され得る(図4参照)。
第1態様の一実施態様において、少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択され、修飾ストレプトアビジンは、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインは、配列番号2の位置R59、R84およびR103(配列番号1のR83、R108またはR127に対応する)における1つ以上のアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインは、適宜1〜10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)個の内部アミノ酸欠失を含んでもよく、適宜1〜10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)個のアミノ酸挿入を含んでもよく、適宜1〜10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)個のアミノ酸交換を含んでもよく、適宜1〜13(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13)個のN末端欠失を含んでもよく、および/または適宜1〜20(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)個のC末端欠失を含んでもよい。
配列番号2の位置R59、R84およびR103(配列番号1のR83、R108またはR127に対応する)におけるアミノ酸交換は、配列番号2の位置K121およびK132(それぞれ配列番号1のK145およびK156に対応する)におけるアミノ酸交換に加えて、存在し得る。
第1態様の好ましい実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインは、配列番号2の位置R59、R84およびR103(配列番号1のR83、R108またはR127に対応する)における1つ以上のアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインは、適宜1〜13(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13)個のN末端欠失を含んでもよく、および/または適宜1〜20(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)個のC末端欠失を含んでもよい。したがって、これらの実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、位置R59、R84、R103、K121またはK132におけるアミノ酸交換以外の内部アミノ酸欠失またはアミノ酸挿入またはアミノ酸交換を含まない。
第1態様の好ましい実施態様において、R59、R84および/またはR103は、互いに独立して、別のアミノ酸により置き換えられ、該別のアミノ酸は、リシンでもアルギニンでもない。R59、R84またはR103を置き換えるアミノ酸は、該置き換えるアミノ酸がリシンでもアルギニンでもない限り、天然型のアミノ酸または人工アミノ酸である任意のアミノ酸であり得る。好ましくは、置き換えるアミノ酸は、正電荷を担持せず、本明細書に記載のエンドペプチダーゼの活性部位において水素結合を作ることができる水素残基を担持しない。
第1態様の更なる実施態様において、R59、R84またはR103を置き換えるアミノ酸は、互いに独立して、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシ-プロリン、シトルリン、アセチル-オルニチン、アセトアミド-メチル-システイン、O-アセトアミド-メチル-ホモ-セリン、S-アセトアミド-メチル-ホモ-システイン、アセチル-リシン、プロピオニル-リシン、ヒドロキシル-アセチル-リシン、モノフルオロアセチル-リシン、ジフルオロアセチル-リシン、トリフルオロアセチル-リシン、クロトニル-リシンおよびジメチル-リシンからなる群より選択される。
第2態様において、本発明は、第1態様による修飾ストレプトアビジンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。上で説明されるように、第1態様による修飾ストレプトアビジンは、天然または人工ストレプトアビジン分子の化学修飾により得られるストレプトアビジン分子、化学合成により得られるストレプトアビジン分子、および遺伝子操作により得られるストレプトアビジン分子を包含する。当業者により理解されるように、第2態様は、遺伝子操作により得られる第1態様の修飾ストレプトアビジン分子をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子にのみ関連する。したがって核酸分子は、好ましくは、上記配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインコードするヌクレオチド配列を含む。
第3態様において、本発明は、第2態様による核酸分子を含むベクターに関する。好ましい実施態様において、ベクターは、発現ベクターである。
第4態様において、本発明は、第2態様の核酸分子または第3態様のベクター(または発現ベクター)を含む、細胞、好ましくは宿主細胞、より好ましくは単離された宿主細胞に関する。
宿主細胞は、核酸配列で形質転換されたかまたは形質転換されることができ、これにより対象の遺伝子を発現する、細胞である。適切な宿主細胞は原核生物または真核生物を含む。様々な哺乳類または昆虫の細胞培養系をまた、組み換えタンパク質を発現するために使用し得る。
第5態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンを含む固体支持体に関する。
第5態様の好ましい実施態様において、固体支持体は、ビーズ、チューブ、チップ、レジン、プレート、ウェル、フィルム、スティック、磁気ビーズ、多孔質膜およびそれらの組合せからなる群より選択される。
第6態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体を含み、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される少なくとも1つのプロテアーゼをさらに含む、キットに関する。
好ましくは、キットは、LysCを含み、適宜、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される少なくとも1つのプロテアーゼを含む。
あるいは、キットは、トリプシンを含み、適宜、LysC、LysNおよびArgCからなる群より選択される少なくとも1つのプロテアーゼを含む。
第6態様の好ましい実施態様において、キットは、さらに、キットに存在するプロテアーゼに適した緩衝液(すなわちLysCに適した緩衝液、LysNに適した緩衝液、ArgCに適した緩衝液、および/またはトリプシンに適した緩衝液)、タンパク質標準(好ましくは、ビオチニル化タンパク質標準)、消化後の試料除去のための試薬、および使用説明書からなる群より選択される1つ以上の構成要素を含む。
第7態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、少なくとも1つのビオチニル化分子の捕捉または固定化のための使用に関する。
第7態様の好ましい実施態様において、少なくとも1つのビオチニル化分子は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)、ポリヌクレオチド(例えばDNA、RNAまたはPNA)、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物、小分子、天然および合成分子からなる群より選択される。
第8態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、タンパク質精製のための使用に関する。
第9態様において、本発明は、第1態様の修飾ストレプトアビジンまたは第5態様の固体支持体または第6態様のキットの、質量分析における使用に関する。
第9態様の好ましい実施態様において、該使用は、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるためである。
第10態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化タンパク質を含む試料を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化タンパク質を修飾ストレプトアビジンに結合する工程;
(iii)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(iv)プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化タンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(v)工程(iv)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vi)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。
第10態様のいくつかの実施態様において、工程(iii)を、タンパク質および他の望ましくない物質を除去する、特に非ビオチニル化タンパク質を除去するために実施する。
第10態様のいくつかの実施態様において、工程(iv)を、ビオチニル化タンパク質のタンパク質消化を達成するのに十分な温度および時間で実施する。
第11態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化タンパク質を含む試料を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化タンパク質を修飾ストレプトアビジンに結合する工程;
(iii)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(iv)ビオチニル化タンパク質を溶離する工程;
(v)プロテアーゼを含む溶液を工程(iv)において溶離したビオチニル化タンパク質に加え、これによりビオチニル化タンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(vi)工程(v)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vii)適宜、工程(vi)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法に関する。
第11態様のいくつかの実施態様において、工程(iii)を、タンパク質および他の望ましくない物質を除去する、特に非ビオチニル化タンパク質を除去するために実施する。
第10態様のいくつかの実施態様において、工程(v)を、ビオチニル化タンパク質のタンパク質消化を達成するのに十分な温度および時間で実施する。
第12態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化分子を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化分子をビーズ上にロードする工程;
(iii)ビオチニル化分子のための少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーを含む試料を、工程(ii)において得られたビオチニル化分子をロードしたビーズと接触させる工程;
(iv)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(v)プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これにより少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーのペプチド断片を生じさせる工程;
(vi)工程(v)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(vii)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、分子のタンパク質相互作用パートナーを捕捉するための方法に関する。
第12態様のいくつかの実施態様において、工程(iv)を、タンパク質および他の望ましくない物質を除去する、特にビオチニル化分子に結合していないタンパク質を除去するために実施する。
第12態様のいくつかの実施態様において、工程(v)を、タンパク質相互作用パートナーのタンパク質消化を達成するのに十分な温度および時間で実施する。
第13態様において、本発明は、下記工程:
(i)第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
(ii)ビオチニル化分子を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化分子をビーズ上にロードする工程;
(iii)ビオチニル化分子のための少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーを含む試料を、工程(ii)において得られたビオチニル化分子をロードしたビーズと接触させる工程;
(iv)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(v)タンパク質相互作用パートナーを溶離する工程;
(vi)プロテアーゼを含む溶液を工程(v)において溶離したタンパク質相互作用パートナーに加え、これにより少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーのペプチド断片を生じさせる工程;
(vii)工程(vi)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(viii)適宜、工程(vii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、分子のタンパク質相互作用パートナーを捕捉するための方法に関する。
第13態様のいくつかの実施態様において、工程(iv)を、タンパク質および他の望ましくない物質を除去する、特にビオチニル化分子に結合していないタンパク質を除去するために実施する。
第13態様のいくつかの実施態様において、工程(vi)を、タンパク質相互作用パートナーのタンパク質消化を達成するのに十分な温度および時間で実施する。
第12および第13態様のいくつかの実施態様において、ビオチニル化分子は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)、ポリヌクレオチド(例えばDNA、RNAまたはPNA)、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物および小分子、天然および合成分子からなる群より選択される。本発明に関連して、用語「分子」は、互いに、例えば架橋により、つながっている異なる分子または異なるタイプの分子の複合体を指し得る。例えば、本明細書で用いる用語「分子」は、架橋により互いに共有結合した同一のタンパク質、架橋により互いに共有結合した異なるタンパク質、または架橋により互いに共有結合したタンパク質およびポリヌクレオチドからのサブユニットを指し得る。
したがって、第12および第13態様のいくつかの実施態様において、ビオチニル化分子は、ビオチニル化DNAならびに互いにおよび/またはビオチニル化DNAに架橋したクロマチン結合タンパク質を含む、複合体である。該ビオチニル化DNAおよびクロマチン結合タンパク質を含む複合体の製造のための手順を、以下の第14態様および実施例3に記載する。
第14態様において、本発明は、下記工程:
(i)調査されるクロマチンの細胞を準備する工程;
(ii)ホルムアルデヒドを細胞に加えて、クロマチンを架橋する工程;
(iii)クロマチン試料をせん断し、これによりせん断されたクロマチン試料を生じさせる工程;
(iv)対象とするクロマチン結合タンパク質に特異的な抗体を、工程(iii)の架橋およびせん断されたクロマチン試料に加え、これにより対象とするタンパク質および対象とするタンパク質に架橋した分子を免疫沈降させる工程;
(v)工程(iv)からの免疫沈降したタンパク質を、プロテインAまたはプロテインGでコーティングされた第1ビーズと接触させ、これにより免疫沈降したタンパク質をビーズ上に固定する工程;
(vi)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(vii)ビオチニル化ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを、工程(v)または存在するときは工程(vi)の免疫沈降したタンパク質に加え、これにより対象とするタンパク質に架橋したDNAをビオチン化する工程;
(viii)適宜、工程(iv)において加えられた抗体を洗浄工程により除去する工程;
(ix)工程(vii)または存在するときは工程(viii)からのビオチニル化DNAを第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持する第2ビーズと接触させ、これにより工程(vii)または存在するときは工程(viii)からのビオチニル化DNAおよびビオチニル化DNAに架橋したタンパク質を捕捉する工程;
(x)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(xi)適宜、プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化DNAに架橋したタンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(xii)適宜、工程(xi)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(xiii)適宜、工程(xii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、クロマチン結合タンパク質を捕捉するための方法に関する。
ペプチド断片の質量分光分析は、ペプチドが由来したタンパク質の同定を可能にし、それ故に対象とするタンパク質と相互作用するクロマチン結合タンパク質の同定を可能にする。
第14態様の好ましい実施態様において、遠心分離工程を、せん断されたクロマチンを回収するために工程(iii)と(iv)との間に実施する。
第14態様の代替実施態様において、プロテアーゼでの消化は、第2ビーズにおいてではなく、ビーズからのビオチニル化DNA(およびそれに架橋したタンパク質)の溶離後にのみ行われる。
第15態様において、本発明は、下記工程:
(i)調査されるクロマチンの細胞を準備する工程;
(ii)ホルムアルデヒドを細胞に加えて、クロマチンを架橋する工程;
(iii)クロマチン試料をせん断し、これによりせん断されたクロマチン試料を生じさせる工程;
(iv)ビオチニル化ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを工程(iii)のクロマチン試料に加え、これによりせん断されたクロマチン試料内でDNAをビオチン化する工程;
(v)工程(iv)からのビオチニル化DNAを、第1態様による修飾ストレプトアビジンを担持するビーズと接触させ、これにより工程(iv)からのビオチニル化DNAおよびビオチニル化DNAに架橋したタンパク質を捕捉する工程;
(vi)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(vii)適宜、プロテアーゼを含む溶液をビーズに加え、これによりビオチニル化DNAに架橋したタンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
(viii)適宜、工程(vii)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
(ix)適宜、工程(viii)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
を含む、クロマチン結合タンパク質を捕捉するための方法に関する。
ペプチド断片の質量分光分析は、ペプチドが由来したタンパク質の同定を可能にし、それ故に本質的にすべてのクロマチン結合タンパク質の同定を可能にする。
第15態様の好ましい実施態様において、遠心分離工程を、せん断されたクロマチンを回収するために工程(iii)と(iv)との間に実施する。
第15態様の代替実施態様において、プロテアーゼでの消化は、ビーズにおいてではなく、ビーズからのビオチニル化DNA(およびそれに架橋したタンパク質)の溶離後にのみ行われる。
第10、第11、第12または第13態様の好ましい実施態様において、試料は、血液、血清、血漿、尿、組織、細胞培養上清および細胞溶解物からなる群より選択される。
第10、第11、第12、第13、第14または第15態様の好ましい実施態様において、プロテアーゼは、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択されるエンドペプチダーゼである。プロテアーゼがLysCまたはトリプシンであることが好ましい。
第10、第11、第12、第13、第14または第15態様の好ましい実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、ビーズに共有結合する。
第10、第11、第12、第13、第14または第15態様の代替実施態様において、修飾ストレプトアビジンは、ビーズ上ではなく、クロマトグラフィーカラム内の支持物質上にむしろ存在する。
以下の実施例は、本発明の組成物および方法をどのようにし、用いるかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、発明者らが発明とみなす範囲を限定することを意図しない。用いられる数字に関する正確性を保証するために努力がなされたが、実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に断らない限り、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い気圧である。
実施例1:ストレプトアビジン中のリシン残基の還元的メチル化
リシン残基のブロッキングのための化学反応は、以下に記載の改変を有するBoersemaらにより説明される還元的メチル化法に基づく(Boersema P.J. et al. (2009) Nat. Protoc. 4(4):484-94)。
ブロッキング反応を、既にビーズに取り付けられたストレプトアビジンで実施する。続いて、ビオチニル化タンパク質をブロックしたストレプトアビジンに結合し、ストレプトアビジンに触れることなくリシン残基において結合タンパク質を切断するプロテアーゼLysCで試料を消化する。
試薬
・4.5 mlの50 mMリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.5
・250μlの600 mM NaBH3CN
・250μlの4%ホルムアルデヒド
・酢酸(Merck, cat. no. 1.00063)
・アセトニトリル(ACN)(Biosolve, cat. no. 75-05-8)
・アンモニア溶液(25%(vol/vol), Merck, cat. no. 1.05432)
・ホルムアルデヒド(CH2O)(37%(vol/vol), Sigma, cat. no. 252549)
・ギ酸(Merck, cat. no. 1.00264)
・シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)(Fluka, cat. no. 71435)
・シアノ重水素化ホウ素ナトリウムナトリウム(NaBD3CN)(96%D, Isotec, cat. no. 190020)
・リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)(Merck, cat. no. 1.06346)
・リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)(Merck, cat. no. 1.06580)
・重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)
プロトコール
1. 100μlの100 mM TEAB中に試料を再構成する
2. 4μlの4%ホルムアルデヒドを加える
3. 短く混合し、回転させる
4. 4μlの600 mM NaBH3CNを加える
5. 室温にて1時間混合する
6. 16μlの1%アンモニア溶液を加えることにより反応をクエンチする
7. 短く混合し、回転させる
8. 8μlのギ酸を加えてさらにクエンチし、酸性化する
9. 乾燥し、分析する
結果
ブロックされなければならない最も重要なリシンは、以下に下線で示されるものである(K121およびK132、それぞれ配列番号1のK145およびK156に対応する):
特定の理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、他のリシン残基はLysCによって接近可能ではなく、少なくとも切断はあまり効率的でないと考える。
実施例2:アルギニンおよびリシンの化学的ブロッキング前および後のストレプトアビジンから同定されるペプチド。
ストレプトアビジン中のリシンおよびアルギニン残基を、それぞれその後の還元的メチル化およびシクロヘキサジオンによる反応によってブロックした。ブロッキング反応を、既にビーズに取り付けられたストレプトアビジンで実施した。つづいて、ストレプトアビジンビーズをトリプシン消化に供した。得られたペプチド断片をLC-MSにより分析した。
未修飾ストレプトアビジンビーズのトリプシン消化、続いてLC-MSによる分析の結果、複数のペプチドが同定される(図1Aも参照)。合計で、411個のスペクトルが記録され、それらのうちの大部分が複数回であり、これは高い存在量であることを示す(表1)。
リシンおよびアルギニンのブロッキング(それぞれ、還元的メチル化およびシクロヘキサジオンとの反応による)、続いてトリプシン消化およびLC-MSによる分析の結果、合計3個スペクトル中2つのペプチドのみが同定され(表2)、これはストレプトアビジンがトリプシンでの消化に難分解性になったことを示す(図1Cも参照)。
実施例3:リシンの化学的ブロッキングおよびアルギニンのシトルリンへの酵素的変換前および後のストレプトアビジンから同定されるペプチド。
酵素ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)は、アルギニンをシトルリンへ変換し(図4)、これはトリプシンの基質ではなく、それ故にタンパク質分解的切断に抵抗性をもたらす。
これは、ストレプトアビジン中のリシンを化学的にブロックし(実施例2のように)、続いてPDAで酵素処理して、アルギニンをシトルリンに変換させる実験において確認された。トリプシン消化の結果、合計7個のスペクトル中2つのペプチドが同定され(表3)、
未修飾のトリプシンの消化後に観察された411個のスペクトル(表1)と全く対照的であり、これは化学修飾ストレプトアビジン(表2)と同様のレベルのプロテアーゼ抵抗性を示す。注目すべきことに、アルギニンに隣接したペプチドR.NAHSATTWSGQYVGGAEAR.I(配列番号3)の検出が、未修飾ストレプトアビジンのスペクトルでの88(表1)から、PAD処理後のスペクトルで6(表3)に減少した。まとめると、これは、アルギニンの化学的および酵素的な誘導体化がトリプシンによるタンパク質分解に対する抵抗性をもたらすことを示す。
リシンおよびアルギニン残基のブロッキング前およびブロッキング後に得られるペプチドの配列から、ストレプトアビジンをトリプシンによる切断に抵抗性にするためにいくつかの残基が他のものより重要であると結論付けることができる。特に、配列番号2のR59、R84、R103、K121およびK132(それぞれ、配列番号1のR83、R108、R127、K145およびK156に対応する)のブロッキングが、ストレプトアビジンをトリプシンによる切断に抵抗性にする。これらの5つの重要なアミノ酸残基を以下の配列中で下線を引いて示す:
他のアルギニンおよびリシン残基はトリプシンによって接近可能ではないと考えられるか、少なくとも切断はあまり効率的でないと思われる。
実施例4:LysC抵抗性ストレプトアビジンビーズによるクロマチン試料からのビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の捕捉。
実験準備:ホルムアルデヒドと架橋し、せん断されたクロマチンから、クロマチン免疫沈降(ChIP)実験を、PRC2複合体のコア要素であるSuz12に対する抗体を用いて実施した。次に、DNAを、ビオチニル化ヌクレオチドの存在下DNAポリメラーゼによりビオチニル化し、DNA(それに架橋したタンパク質と一緒に)をストレプトアビジンビーズ(未修飾ストレプトアビジン、または還元的メチル化によりリシンをブロックすることにより達成されるLysC抵抗性ストレプトアビジンいずれかを用いる)上で捕捉した。大量の洗浄後、タンパク質をLysCで消化し、ペプチドを回収し、質量分析により同定した。
PRC2複合体の略図を図2Aに示す(記号:三角:Suz12;白色の楕円:PRC2複合体中のタンパク質;灰色の楕円:他の一時的に関連するタンパク質;黒色の線:DNA;黒一色の円:DNA上のビオチン;下向きY:Suz12抗体;逆向きC:ストレプトアビジン(未修飾またはリシンのブロッキング後のいずれか))。
上記手順後質量分析により同定されるタンパク質を、図2Bに示される表に記載する。同定されたタンパク質を遺伝子名で示し、PRC2複合体に属すると公知なものを太字の斜体で示す。見出し「ペプチド」のカラムは、タンパク質当たり同定されたペプチドの数を示す。見出し「PSM」(すなわちペプチド・スペクトル・マッチ)のカラムは、これらのペプチドがタンパク質当たり同定された回数を示す。
通常(未修飾)のストレプトアビジンを用いるとき、6つのストレプトアビジンペプチドが合計637回同定され、これは高い存在量であることに留意されたい。対照的に、リシンのブロッキング後には、1つのストレプトアビジンペプチドのみが2階だけ同定され、これは極めて低い存在量であることを示す。PRC2複合体全体を含む、すべての他のタンパク質が、未修飾およびリシンをブロックしたストレプトアビジンの両方において極めて匹敵する数のペプチドおよびPSMで同定された。重要なことに、通常のストレプトアビジンからの試料中ストレプトアビジンペプチドの高い存在量は、複雑さを減少させ、ペプチドの同定を容易にするために、10個の画分へのペプチド分画を必要とし、そうでなければストレプトアビジンによりマスクされ、10回のLC-MS実行が必要とされる。したがって、LysC抵抗性ビーズからの結果は、通常のストレプトアビジンからの試料と比較して同じ数のペプチドを有する同じペプチドを本質的に同定しながら、わずか10%の質量分析時間を必要とした。
実施例5:結合能に最小限の影響を及ぼすリシンおよびアルギニンの修飾。
種々のタイプのストレプトアビジンでコーティングされたビーズの結合能をビオチニル化DNAの回収を測定することにより評価した(図3)。K&R-修飾ストレプトアビジンビーズの結合能は、通常のストレプトアビジン(左カラム)と比較して75%(中央カラム)で維持され、一方、K-修飾後の結合能さえ、約30%増加する(右カラム)。
実施例6:トリプシン抵抗性ストレプトアビジンビーズによるクロマチン試料からのビオチニル化DNAに結合したPRC2複合体の捕捉および同定。
実験準備:実験準備は、トリプシン抵抗性ストレプトアビジンをLysC抵抗性ストレプトアビジンに代わり用いることを除いて、実施例4と同じであった。トリプシン抵抗性ストレプトアビジンを、還元的メチル化によりリシンをブロックし、シクロヘキサジオンとの反応によりアルギニンをブロックすることにより調製した。
PRC2複合体の略図を図2Aに示す(記号:三角:Suz12;白色の楕円:PRC2複合体中のタンパク質;灰色の楕円:他の一時的に関連するタンパク質;黒色の線:DNA;黒一色の円:DNA上のビオチン;下向きY:Suz12抗体;逆向きC:ストレプトアビジン(未修飾またはリシンおよびアルギニンのブロッキング後のいずれか))。
通常のストレプトアビジンビーズでのDNA結合PRC2複合体の捕捉、溶離および消化後、LC-MSクロマトグラムは、ストレプトアビジン-ペプチドに占められ(図5、上図)、これは、K&R-修飾ストレプトアビジンでの捕捉と対照的である(図5、下図)。異なる強度スケールに留意されたい(109対107)。
通常のストレプトアビジンビーズおよびK&R-修飾ストレプトアビジンビーズに富化されたPRC2複合体の分析におけるペプチド・スペクトル・マッチ(PSM)の数を、図6で提供される表に示す。「通常のストレプトアビジン」と題するカラムは、図5の上図に対応し、「K/R-修飾ストレプトアビジン」と題するカラムは、図5の下図に対応する。修飾ストレプトアビジンからのペプチドが存在しない場合、PRC2複合体のコア要素の各々は、K&R-修飾ビーズを用いるときより多い数PSMで同定される。また、通常のストレプトアビジンを用いるとき78個のみであるのに対して、224個の他のタンパク質が同定された。
K&R-修飾ストレプトアビジン(図5参照)により得られる感度の全体的な増加は、すべてのタンパク質の一貫してより高いイオン強度(図7A)およびそれらの各々についての多数のPSM(図7B)の結果である。
配列表テキストの情報
配列番号3 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号4 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号5 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号6 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号7 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号8 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号9 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号10 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号11 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号12 ストレプトアビジンのトリプシン断片
配列番号13 ストレプトアビジンのトリプシン断片

Claims (15)

  1. (i)少なくとも1つのエンドペプチダーゼによる切断に抵抗性であり、該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、塩基性アミノ酸に特異的であり;そして
    (ii)10-10 M以下のビオチンに対する解離定数KDを示し;
    該少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、好ましくは、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される、修飾ストレプトアビジン。
  2. 該少なくとも1つのエンドペプチダーゼが、LysC、LysNおよびトリプシンからなる群より選択され、1つ以上のリシン残基が:
    (i)εアミノ基の正電荷を中和する化学修飾;および
    (ii)εアミノ基の水素を置き換える化学修飾
    からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を担持する、請求項1に記載の修飾ストレプトアビジン。
  3. 該化学修飾を:
    (i)アシル-リシンを生じるリシン残基のアシル化;
    (ii)ジアルキル-リシンを生じるリシン残基の還元的アルキル化;
    (iii)プロピオニルリシンを生じるプロピオン酸無水物とのリシン残基の反応;
    (iv)ジカルボキシル酸リシン無水物を生じるコハク酸無水物とのリシン残基の反応;
    (v)アルキル-リシンを生じるリシン残基のアルキル化;
    (vi)リシンのアセチミジン誘導体を生じるリシン残基のアミジン化
    からなる群より選択される化学反応によって生じる、請求項2に記載の修飾ストレプトアビジン。
  4. 該少なくとも1つのエンドペプチダーゼが、LysC、LysNおよびトリプシンからなる群より選択され、該修飾ストレプトアビジンが、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインが、少なくとも配列番号2の位置K121およびK132におけるアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインが、1〜10個の内部アミノ酸欠失、1〜10個のアミノ酸挿入、1〜10個のアミノ酸交換、1〜13個のN末端欠失、および/または1〜20個のC末端欠失を含んでもよい、請求項1に記載の修飾ストレプトアビジン。
  5. K121およびK132が、互いに独立して、別のアミノ酸により置き換えられ、該別のアミノ酸が、リシンでもアルギニンでもなく;そして
    好ましくは、K121またはK132を置き換えるアミノ酸が、互いに独立して、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシ-プロリン、アセチル-オルニチン、アセトアミド-メチル-システイン、O-アセトアミド-メチル-ホモ-セリン、S-アセトアミド-メチル-ホモ-システイン、アセチル-リシン、プロピオニル-リシン、ヒドロキシル-アセチル-リシン、モノフルオロアセチル-リシン、ジフルオロアセチル-リシン、トリフルオロアセチル-リシン、クロトニル-リシンおよびジメチル-リシンからなる群より選択される、請求項4に記載の修飾ストレプトアビジン。
  6. 該少なくとも1つのエンドペプチダーゼが、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択され、1つ以上のアルギニン残基が:
    (i)グアニジニウム基の正電荷を中和する化学修飾;および
    (ii)グアニジニウム基の1つ以上の水素を置き換える化学修飾
    からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を担持する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジン。
  7. 該化学修飾を:
    (i)修飾アルギニン残基を生じるジカルボニル化合物とのアルギニン残基の反応;および
    (ii)カルバミル化アルギニンを生じるアルギニン残基のカルバミル化
    からなる群より選択される化学反応によって生じる、請求項6に記載の修飾ストレプトアビジン。
  8. 該少なくとも1つのエンドペプチダーゼが、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択され、該修飾ストレプトアビジンがは、配列番号2の野生型ストレプトアビジンアミノ酸配列のムテインであり、該ムテインが、配列番号2の位置R59、R84またはR103における1つ以上のアミノ酸交換により特徴付けられ、該ムテインが、1〜10個の内部アミノ酸欠失、1〜10個のアミノ酸挿入、1〜10個のアミノ酸交換、1〜13個のN末端欠失、および/または1〜20個のC末端欠失を含んでもよい、請求項1、4または5のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジン。
  9. R59、R84またはR103が、互いに独立して、別のアミノ酸により置き換えられ、該別のアミノ酸が、リシンでもアルギニンでもなく;および
    好ましくは、R59、R84またはR103を置き換えるアミノ酸が、互いに独立して、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒドロキシ-プロリン、アセチル-オルニチン、アセトアミド-メチル-システイン、O-アセトアミド-メチル-ホモ-セリン、S-アセトアミド-メチル-ホモ-システイン、アセチル-リシン、プロピオニル-リシン、ヒドロキシル-アセチル-リシン、モノフルオロアセチル-リシン、ジフルオロアセチル-リシン、トリフルオロアセチル-リシン、クロトニル-リシンおよびジメチル-リシンからなる群より選択される、請求項8に記載の修飾ストレプトアビジン。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンを含む、固体支持体であって、固体支持体が、好ましくは、ビーズ、チューブ、チップ、レジン、プレート、ウェル、フィルム、スティック、磁気ビーズ、多孔質膜およびそれらの組合せからなる群より選択される、固体支持体。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンまたは請求項10に記載の固体支持体を含む、キットであって、LysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択される少なくとも1つのプロテアーゼをさらに含む、キット。
  12. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンまたは請求項10に記載の固体支持体または請求項11に記載のキットの、少なくとも1つのビオチニル化分子の捕捉または固定化のための使用であって;好ましくは、少なくとも1つのビオチニル化分子が、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物、小分子、天然および合成分子からなる群より選択される、使用。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンまたは請求項10に記載の固体支持体または請求項11に記載のキットの、質量分析における使用であって、好ましくは、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための使用。
  14. 下記工程:
    (i)請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
    (ii)ビオチニル化タンパク質を含む試料を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化タンパク質を修飾ストレプトアビジンに結合する工程;
    (iii)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
    (iv)プロテアーゼ、好ましくはLysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択されるプロテアーゼを含む溶液を、ビーズに加え、これによりビオチニル化タンパク質のペプチド断片を生じさせる工程;
    (v)工程(iv)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
    (vi)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
    を含む、質量分析におけるバックグラウンドを減少させるための方法。
  15. 下記工程:
    (i)請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾ストレプトアビジンを担持するビーズを準備する工程;
    (ii)ビオチニル化分子を工程(i)のビーズと接触させ、これによりビオチニル化分子をビーズ上にロードする工程であって、好ましくは、ビオチニル化分子が、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、(ポリ)サッカライド、炭水化物、代謝物、薬物および小分子、天然および合成分子からなる群より選択されるものである、工程;
    (iii)ビオチニル化分子のための少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーを含む試料を、工程(ii)において得られたビオチニル化分子をロードしたビーズと接触させる工程;
    (iv)適宜、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
    (v)プロテアーゼ、好ましくはLysC、LysN、ArgCおよびトリプシンからなる群より選択されるプロテアーゼを含む溶液を、ビーズに加え、これにより少なくとも1つのタンパク質相互作用パートナーのペプチド断片を生じさせる工程;
    (vi)工程(v)において生じたペプチド断片を回収する工程;および
    (vii)適宜、工程(v)において回収したペプチド断片を質量分光分析に付す工程
    を含む、分子のタンパク質相互作用パートナーを捕捉するための方法。
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