発明の技術分野
本発明は、組換え抗原受容体及びその使用に関する。このような抗原受容体を発現するように工学操作されたT細胞は、抗原受容体に結合する1つ以上の抗原の発現によって特徴付けられる疾患の処置に有用である。
発明の背景
T細胞は、ヒト及び動物における細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。特定の抗原の認識及び結合は、T細胞の表面上に発現されるT細胞受容体(TCR)によって媒介される。T細胞のTCRは、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合しかつ標的細胞の表面上に提示された免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用することができる。TCRへの特異的な結合は、T細胞内のシグナルカスケードをトリガーし、成熟したエフェクターT細胞の増殖及び分化をもたらす。
TCRは、TCRα鎖及びβ鎖のヘテロ二量体複合体、共受容体のCD4又はCD8及びCD3シグナル伝達モジュールを含む、複雑なシグナル伝達機構の一部である(図1)。TCRα/βヘテロ二量体は、抗原の認識、及びCD3と協奏して細胞膜を通した活性化シグナルの中継に関与するが、CD3鎖それ自体も、細胞内のアダプタータンパク質に入ってくるシグナルを伝達する。したがって、TCRα/β鎖の導入は、あらゆる関心対象の抗原に向けてT細胞を再指向させる機会を与える。
養子細胞移植(ACT)に基づいた免疫療法は、低い出現率の前駆体から臨床的に妥当な細胞数へとエクスビボで増殖させた後に、免疫のないレシピエント又は自己宿主に導入される、事前に感作させたT細胞を用いての受動免疫化の一形態として広く定義され得る。ACT実験に使用されている細胞型としては、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞(Mule, J.J. et al. (1984) Science 225, 1487-1489; Rosenberg, S.A. et al. (1985) N. Engl. J. Med. 313, 1485-1492)、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)(Rosenberg, S.A. et al. (1994) J. Natl. Cancer Inst. 86, 1159-1166)、造血幹細胞移植(HSCT)後のドナーリンパ球、並びに腫瘍特異的T細胞株又はクローン(Dudley, M.E. et al. (2001) J. Immunother. 24, 363-373; Yee, C. et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 99, 16168-16173)が挙げられる。養子T細胞移植は、CMVなどのヒトウイルス感染に対して治療活性を有することが示された。黒色腫の養子免疫療法については、Rosenberg及び共同研究者は、骨髄破壊的ではないリンパ球除去化学療法及び高用量のIL2と組合せた、切除した腫瘍から単離されたインビトロで増殖させた自己腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の注入に依拠したACTアプローチを確立した。臨床試験により、転移性黒色腫を患っている処置患者において約50%の奏効率がもたらされた(Dudley, M.E. et al. (2005) J. Clin. Oncol. 23: 2346-2357)。
代替的なアプローチは、短時間のエクスビボでの培養中に規定の特異性を有する腫瘍反応性免疫受容体を発現するように再プログラム化され、その後、患者に再注入された、自己T細胞の養子移植である(Kershaw M.H. et al. (2013) Nature Reviews Cancer 13 (8):525-41)。この戦略により、たとえ腫瘍反応性T細胞が患者に存在していなくても、多種多様な一般的な悪性疾患にACTが適用可能となる。T細胞の抗原特異性は、TCRα鎖及びβ鎖のヘテロ二量体複合体に全体的に基づいているので、T細胞へのクローニングされたTCR遺伝子の導入は、T細胞を関心対象のあらゆる抗原に再指向させる可能性を与える。それ故、TCR遺伝子療法は、処置選択肢としての自己リンパ球を用いた抗原特異的免疫療法を開発するための魅力的な戦略を提供する。TCR遺伝子導入の主要な利点は、数日間以内に治療量の抗原特異的T細胞の作製、及び、患者の内因性TCRレパートリーには存在しない特異性を導入できることである。いくつかのグループが、TCR遺伝子導入は、初代T細胞の抗原特異性を再指向させるための魅力的な戦略であることを実証した(Morgan, R.A. et al. (2003) J. Immunol. 171, 3287-3295; Cooper, L.J. et al. (2000) J. Virol. 74, 8207-8212; Fujio, K. et al. (2000) J. Immunol. 165, 528-532; Kessels, H.W. et al. (2001) Nat. Immunol. 2, 957-961; Dembic, Z. et al. (1986) Nature 320, 232-238)。ヒトにおけるTCR遺伝子療法の実現性は、Rosenberg及び彼のグループによる悪性黒色腫の処置のための臨床試験において初めて実証された。黒色腫/メラニン細胞抗原特異的TCRを用いてレトロウイルスにより形質導入された自己リンパ球の養子移植により、処置された黒色腫患者の最大30%において癌の退縮がもたらされた(Morgan, R.A. et al. (2006) Science 314, 126-129; Johnson, L.A. et al. (2009) Blood 114, 535-546)。同時に、多くの異なる腫瘍抗原を標的化するTCR遺伝子療法の臨床試験は、黒色腫以外の癌にまで拡張された(Park, T.S. et al., (2011) Trends Biotechnol. 29, 550-557)。
規定の特異性を有する抗原標的化受容体をT細胞に挿入する遺伝子工学アプローチの使用は、ACTの可能性を大きく広げた。キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合ドメイン、最も一般的にはモノクローナル抗体由来の一本鎖可変断片(scFv断片)に融合された細胞内T細胞シグナル伝達ドメインから構成される、抗原標的化受容体の一種である。CARは、MHCにより媒介される提示とは独立して、細胞表面抗原を直接認識し、これにより、全ての患者において任意の所与の抗原に対して特異的な単一受容体構築物を使用することが可能となる。初期のCARは、抗原認識ドメインを、T細胞受容体(TCR)複合体のCD3ζ活性化鎖に融合した(図2)。その後のCAR反復は、CD3ζに対して直列である第二の共刺激シグナル、例えばCD28又は様々なTNF受容体ファミリー分子、例えば4−1BB(CD137)及びOX40(CD134)に由来する細胞内ドメインを含んでいる。さらに、第三世代の受容体は、CD3ζに加えて、最も一般的にはCD28及び4−1BBに由来する2つの共刺激シグナルを含む。第二及び第三世代のCARは、インビトロ及びインビボにおいて抗腫瘍効力を劇的に向上させ(Zhao et al., (2009) J. Immunol., (183) 5563-5574)、場合によっては、進行がん患者において完全寛解を誘導した(Porter et al., (2011) N.Engl.J.Med., (365) 725-733)。
古典的なCARは、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメイン、例えばCD3ζに融合された、抗原特異的な一本鎖抗体(scFv)断片からなる。T細胞に導入されると、それは膜結合タンパク質として発現され、その同族抗原に結合すると免疫応答を誘発する(Eshhar et al., (1993) PNAS, (90) 720-724)。誘発された抗原特異的免疫応答により細胞傷害性CD8+T細胞が活性化され、次いで、特異的抗原を発現している細胞、例えば特異的抗原を発現している腫瘍細胞又はウイルス感染細胞が根絶される。しかしながら、これらの古典的CAR構築物は、通常はT細胞の活性化に必須であるそれらの内因性のCD3複合体を通してT細胞を活性化/刺激しない。CD3ζに抗原結合ドメインが融合しているために、T細胞の活性化は、生化学的な「短い回路」を通して誘発される(Aggen et al., (2012) Gene Therapy, (19) 365-374)。この生化学的な短い回路を通したこの非生理学的なT細胞の活性化は、この方法で処置される患者にとって危険を伴う。なぜなら、T細胞の過剰活性化により、望ましくない副作用が生じる可能性があるからである。例えば、CAR発現に起因する組換えT細胞の長期な基礎活性化がインビトロにおいて観察され(「持続性シグナル伝達」)、これにより、組換えCAR発現T細胞の表面上でのLAG−3、TIM−3及びPD−1などの抑制性分子の蓄積が増加し、これにより時期尚早に疲弊したT細胞がもたらされ、続いてインビボでの腫瘍細胞に対する応答に対して強力な負の影響がもたらされる(Long et al., (2015) Nat. Med., (21) 581-590)。この有害反応は、この抗体のフレームワーク残基を通した、scFv断片の不規則なクラスター化に関連している。さらに、この種類の古典的CAR構築物は、白血病などの様々な新生物に対して成功裡に試験されてきたが(Porter et al., (2011) N.Engl.J.Med., (365) 725-733)、正常組織において標的化抗原(標的化腫瘍抗原)の基礎的発現に起因する致命的な自己免疫疾患ももたらした(オンターゲット/オフ腫瘍反応;Morgan et al., (2010) Mol Ther., (18) 843-51)。
T細胞の活性化がより生理学的な機序を通して起こる代替的なアプローチは、T細胞受容体(TCR)に由来するCβ定常ドメインに融合させた類似の一本鎖TCR(scTv)断片の提供、及びTCRに由来するCα定常ドメインとのその共発現(Voss et al., (2010) Blood, (115) 5154-5163)であり、後者では不可欠な内因性CD3ζホモ二量体を動員する(Call et al., (2002) Cell, (111) 967-79)。しかしながら、これらの構築物が免疫系の活性化因子として機能するためには、TCRに由来する定常ドメインはマウスTCRに由来するか、又はscTCRとCαとの間の鎖対形成を達成するためにマウス化されることが不可欠であった(Cohen et al., (2006) Cancer Res., 66) 8878-86)。これらの構築物が機能するために異種配列を有さなければならないという事実は、投与された場合に免疫系が該異種配列に対して反応するリスクを高め、それらの治療効力を減弱又は破壊する。
したがって、例えば、抗原に結合すると、受容体がT細胞を十分に活性化することができ、該受容体が内因性CD3複合体を通して通常の生理学的な様式で発現され、場合により、少なくとも抗原受容体のシグナル伝達ドメインにおいて、組換え抗原受容体それ自体に対する望ましくない免疫応答を誘発する可能性のあるヒト起源ではないアミノ酸配列の存在を全く必要としない、代替的な組換え抗原受容体の提供が必要とされる。
発明の概要
発明の要約
本発明は、少なくとも2つの抗原結合部位を有する組換え抗原受容体に関する。抗原受容体は、2つのペプチド鎖を含む。1つの態様では、該ペプチド鎖は各々、免疫受容体シグナル伝達ドメインの他に、少なくとも2つのドメインを含み、一方のペプチド鎖上の2つの各々のドメインは、他方のペプチド鎖上のドメインの1つと抗原結合部位を形成している。別の態様では、ペプチド鎖の一方は、免疫受容体シグナル伝達ドメインの他に、少なくとも4つのドメインを有し、4つのドメインの中の2つは、同じペプチド鎖上の2つの残りのドメインと共に2つの抗原結合部位を形成している。
1つの態様では、本発明は抗原受容体に関し、該受容体は第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含み、ここで第一のペプチド鎖が、少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン、並びに免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;第二のペプチド鎖が、少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン、並びに免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;ここで、第一のペプチド鎖由来の第一のドメインが、第二のペプチド鎖由来のドメインの一方と一緒に第一の抗原結合部位を形成し、そして、第一のペプチド鎖由来の第二のドメインが、第二のペプチド鎖由来の他方のドメインと一緒に第二の抗原結合部位を形成している。この態様の抗原受容体では、それぞれの抗原結合部位を形成しているドメインは好ましくは異なるペプチド鎖上に位置する。結果として、抗原結合部位は、ドメインの分子間相互作用によって形成される。
1つの実施態様では、第一及び/又は第二のドメインは各々、免疫グロブリン鎖の可変領域、又はT細胞受容体鎖の可変領域、又は該可変領域の一部を含む。
1つの実施態様では、第一の抗原結合部位を形成しているドメインの一方は、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第一の抗原結合部位を形成している他方のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。1つの実施態様では、第二の抗原結合部位を形成しているドメインの一方は、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第二の抗原結合部位を形成している他方のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。
1つの実施態様では、第一のペプチド鎖由来の第一のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第一のペプチド鎖由来の第一のドメインと抗原結合部位を形成している第二のペプチド鎖由来のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。1つの実施態様では、第一のペプチド鎖由来の第二のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第一のペプチド鎖由来の第二のドメインと抗原結合部位を形成している第二のペプチド鎖由来のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。
1つの実施態様では、第一のペプチド鎖由来の第一のドメイン及び第二のドメインは各々、免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み;そして第二のペプチド鎖由来の第一のドメイン及び第二のドメインは各々、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。
1つの実施態様では、第一のペプチド鎖由来のN末端ドメインは、第二のペプチド鎖由来のN末端ドメインと一緒に抗原結合部位を形成し;そして第一のペプチド鎖由来のC末端ドメインは、第二のペプチド鎖由来のC末端ドメインと一緒に抗原結合部位を形成している。
1つの実施態様では、第一のペプチド鎖由来のN末端ドメインは、第二のペプチド鎖由来のC末端ドメインと一緒に抗原結合部位を形成し;そして第一のペプチド鎖由来のC末端ドメインは、第二のペプチド鎖由来のN末端ドメインと一緒に抗原結合部位を形成している。
1つの態様では、本発明は抗原受容体に関し、該受容体は第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含み、ここで第一のペプチド鎖が、少なくとも4つのドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;第二のペプチド鎖が、免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;ここで、第一のペプチド鎖由来のドメインのうち2つが、第一の抗原結合部位を形成し、そして第一のペプチド鎖由来の他の2つのドメインが、第二の抗原結合部位を形成している。この態様の抗原受容体では、それぞれの抗原結合部位を形成しているドメインは好ましくは同じペプチド鎖上に位置している。結果として、抗原結合部位はドメインの分子内相互作用によって形成される。
1つの実施態様では、4つのドメインは各々、免疫グロブリン鎖の可変領域、又はT細胞受容体鎖の可変領域、又は該可変領域の一部を含む。
1つの実施態様では、第一の抗原結合部位を形成しているドメインの一方は、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第一の抗原結合部位を形成している他方のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。1つの実施態様では、第二の抗原結合部位を形成しているドメインの一方は、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、第二の抗原結合部位を形成している他方のドメインは、抗原に対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。
1つの実施態様では、4つのドメインの中の2つのN末端ドメインは一緒に抗原結合部位を形成し;4つのドメインの中の2つのC末端ドメインは一緒に抗原結合部位を形成している。
1つの実施態様では、4つのドメインの中の2つのN末端ドメインの一方は、免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、4つのドメインの中の2つのN末端ドメインの他方は、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含み;4つのドメインの中の2つのC末端ドメインの一方は、免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部を含み、4つのドメインの中の2つのC末端ドメインの他方は、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部を含む。
本発明の抗原受容体の1つの実施態様では、免疫受容体シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は免疫細胞Fc受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は該定常領域若しくは不変領域の一部を含む。本発明の抗原受容体の1つの実施態様では、(i)第一のペプチド鎖は、T細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体β鎖の定常領域又はその一部を含むか、あるいは(ii)第一のペプチド鎖は、T細胞受容体β鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部を含む。
本発明の抗原受容体の1つの実施態様では、免疫受容体シグナル伝達ドメインは、ヒト起源である。
1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、(a)抗原受容体のドメインを接続しているリンカー(群)を含む。1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、抗原結合部位を形成しているドメイン間、及び/又は抗原結合部位を形成しているドメインと免疫受容体シグナル伝達ドメインとの間に1つ以上のリンカーを含む。該リンカーは、抗原受容体が抗原に結合する能力又は内因性CD3複合体と会合する能力などの抗原受容体の機能に干渉しない限り、又は抗原への結合時に抗原受容体が免疫応答を誘発する能力に干渉しない限り、あらゆる長さのあらゆるアミノ酸配列であり得る。
本発明の抗原受容体の1つの実施態様では、第一及び第二の抗原結合部位は、同じ抗原又は異なる抗原に結合する。本発明の抗原受容体の1つの実施態様では、第一及び第二の抗原結合部位は、同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。結果として、第一の抗原結合部位を形成しているドメインは好ましくは同じ免疫グロブリンに由来し、第二の抗原結合部位を形成しているドメインは好ましくは同じ免疫グロブリンに由来するが、第一の抗原結合部位を形成しているドメイン及び第二の抗原結合部位を形成しているドメインは同じ又は異なる免疫グロブリンに由来し、前記の異なる免疫グロブリンは同じ又は異なる抗原に結合する。
1つの実施態様では、該抗原は疾患特異的抗原、好ましくは腫瘍抗原である。1つの実施態様では、該抗原は細胞表面上に発現されている。
1つの態様では、本発明は、本発明のいずれかの抗原受容体のペプチド鎖に関する。1つの実施態様では、本発明は、第一のドメイン及び第二のドメインを含むペプチド鎖に関し、該ドメインは各々、免疫グロブリンの重鎖の可変領域若しくはその一部を含むか、又は該ドメインは各々、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域若しくはその一部を含み、該ペプチド鎖はさらに、免疫受容体シグナル伝達ドメインを含む。1つの実施態様では、本発明は、少なくとも4つのドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含むペプチド鎖に関し、ペプチド鎖由来のドメインのうち2つは、第一の抗原結合部位を形成し、ペプチド鎖由来の他の2つのドメインは、第二の抗原結合部位を形成している。本発明のペプチド鎖のさらなる実施態様は、本発明の抗原受容体について本明細書に記載されている通りである。
1つの態様では、本発明は、本発明の抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変された、細胞、特に免疫エフェクター細胞、例えばT細胞に関する。1つの態様では、本発明は、本発明の抗原受容体の第一のペプチド鎖、第二のペプチド鎖、若しくは第一のペプチド鎖と第二のペプチド鎖の両方を発現しているか、又は本発明のペプチド鎖を発現している、組換え細胞、特に免疫エフェクター細胞、例えばT細胞に関する。本発明の細胞又は組換え細胞のさらなる実施態様は、本発明の抗原受容体又は本発明のペプチド鎖について本明細書に記載されている通りである。
1つの態様では、本発明は、本発明の抗原受容体を発現している細胞を産生するための方法に関し、該方法は、(a)細胞を準備する工程;(b)本発明の抗原受容体の第一のペプチド鎖をコードしている第一の遺伝子構築物を準備する工程;(c)本発明の抗原受容体の第二のペプチド鎖をコードしている第二の遺伝子構築物を準備する工程;(d)第一及び第二の遺伝子構築物を細胞に導入する工程;及び(e)該構築物を細胞内で発現させる工程を含む。1つの実施態様では、本発明は、該受容体は第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含む、抗原受容体を発現している細胞を産生するための方法に関し、該方法は、(a)細胞を準備する工程;(b)少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含む、第一のペプチド鎖をコードしている第一の遺伝子構築物を準備する工程;(c)少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含む、第二のペプチド鎖をコードしている第二の遺伝子構築物を準備する工程;(d)第一及び第二の遺伝子構築物を細胞に導入する工程;及び(e)該構築物を細胞内で発現させる工程を含み、第一のペプチド鎖由来の第一のドメインは、第二のペプチド鎖由来のドメインの一方と一緒に第一の抗原結合部位を形成することができ、そして第一のペプチド鎖由来の第二のドメインは、第二のペプチド鎖由来の他方ドメインと一緒に第二の抗原結合部位を形成することができる。1つの実施態様では、本発明は、該受容体は第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含む、抗原受容体を発現している細胞を産生するための方法に関し、該方法は、(a)細胞を準備する工程;(b)少なくとも4つのドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含む、第一のペプチド鎖をコードしている第一の遺伝子構築物を準備する工程;(c)免疫受容体シグナル伝達ドメインを含む、第二のペプチド鎖をコードしている第二の遺伝子構築物を準備する工程;(d)第一及び第二の遺伝子構築物を細胞に導入する工程;及び(e)該構築物を細胞内で発現させる工程を含み、第一のペプチド鎖由来のドメインのうち2つは、第一の抗原結合部位を形成することができ、そして第一のペプチド鎖由来の他の2つのドメインは、第二の抗原結合部位を形成することができる。本発明の方法の1つの実施態様では、抗原受容体の発現は細胞表面においてである。本発明の方法の1つの実施態様では、第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖は、単一の遺伝子構築物上に提供される。本発明の方法の1つの実施態様では、細胞はヒト細胞である。本発明の方法の1つの実施態様では、細胞は免疫エフェクター細胞、例えばT細胞である。本発明の方法の1つの実施態様では、遺伝子構築物はDNA及び/又はRNAを含む。本発明の方法のさらなる実施態様は、本発明の抗原受容体について本明細書に記載されている通りである。
1つの態様では、本発明は、抗原受容体を発現している細胞を産生するための本発明の方法によって産生される、組換え細胞、特に免疫エフェクター細胞、例えばT細胞に関する。本発明の組換え細胞のさらなる実施態様は、本発明の抗原受容体について又は抗原受容体を発現している細胞を産生するための本発明の方法について本明細書に記載されている通りである。
1つの態様では、本発明は、本発明の抗原受容体の第一のペプチド鎖、第二のペプチド鎖、若しくは第一のペプチド鎖と第二のペプチド鎖の両方をコードしているか、又は本発明のペプチド鎖をコードしている、核酸、例えばDNA又はRNAに関する。本発明の核酸のさらなる実施態様は、本発明の抗原受容体又は本発明のペプチド鎖について本明細書に記載されている通りである。
本発明は一般的に、細胞表面上に1つ以上の抗原を発現している細胞、例えば細胞表面上に1つ以上の疾患特異的抗原を発現している疾患を有する細胞、特に細胞表面上に1つ以上の腫瘍抗原を発現しているがん細胞を、本発明の抗原受容体を使用して標的化することによる、疾患の処置を包含する。該方法は、1つ以上の抗原をその表面上に発現している細胞の選択的根絶をもたらし、これにより、該抗原(群)を発現していない正常細胞に対する有害な作用は最小限となる。1つの実施態様では、抗原(群)への結合を通して細胞を標的化する本発明の抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞が投与される。T細胞は、細胞表面上に抗原(群)を発現している疾患を有する細胞を認識することができ、その結果、疾患を有する細胞は根絶される。1つの実施態様では、標的細胞個体群又は標的組織は、腫瘍細胞又は腫瘍組織である。
1つの態様では、本発明は、本発明の抗原受容体、本発明の組換え細胞、又は本発明の核酸;及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、本発明の抗原受容体に結合する1つ以上の抗原、例えば1つ以上の腫瘍抗原の発現によって特徴付けられる、特にがんなどの疾患の処置における医薬品として使用され得る。
1つの態様では、本発明は、治療有効量の本発明の医薬組成物を被験者に投与する工程を含む、がんなどの疾患を処置する方法に関し、該疾患は、抗原受容体に結合する少なくとも1つの抗原、例えば腫瘍抗原の発現によって特徴付けられる。
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの抗原の発現又は上昇した発現に関連した、疾患、障害、又は容態を有する被験者を処置する方法に関し、該方法は、少なくとも1つの抗原に標的化される本発明の抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞を被験者に投与する工程を含む。1つの実施態様では、該疾患、障害、又は容態はがんである。1つの実施態様では、T細胞は、被験者にとって自己、同種、又は同系であり得る。
本発明の1つの実施態様では、抗原受容体は、たった1つの抗原に結合するか(例えば、単一特異的であり、同じエピトープを認識することによって、又は二重特異的若しくは多重特異的であり、同じ抗原上の異なるエピトープを認識することによって)又は異なる抗原、特に2つの異なる抗原に結合する。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、処置法はさらに、被験者から細胞の試料を得る工程(該試料はT細胞又はT細胞前駆体を含む)、及び本発明の抗原受容体をコードしている核酸を用いて該細胞をトランスフェクトすることにより、該抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞を提供する工程を含む。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、該抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞は、該抗原受容体をコードしている核酸を用いて安定に又は一過性にトランスフェクトされている。したがって、該抗原受容体をコードしている核酸は、T細胞のゲノムに組み込まれているか又は組み込まれていない。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、T細胞及び/又は細胞試料は、該抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞が投与された被験者に由来する。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、T細胞及び/又は細胞試料は、該抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞が投与された哺乳動物とは異なる哺乳動物に由来する。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、該抗原受容体を発現するように遺伝子的に改変されたT細胞は、内因性T細胞受容体及び/又は内因性HLAの発現について不活性化されている。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、抗原は、がん細胞などの疾患を有する細胞に発現されている。1つの実施態様では、抗原は、がん細胞などの疾患を有する細胞の表面上に発現されている。1つの実施態様では、抗原受容体は、抗原の細胞外ドメイン又は抗原の細胞外ドメイン内のエピトープに結合する。1つの実施態様では、抗原受容体は、生細胞の表面上に存在する抗原の天然エピトープに結合する。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、抗原は腫瘍抗原である。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、抗原は、クローディン、例えばクローディン6及びクローディン18.2、CD19、CD20、CD22、CD33、CD123、メソテリン、CEA、c−Met、PSMA、GD−2、及びNY−ESO−1からなる群より選択される。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、該抗原は病原体抗原である。該病原体は、真菌、ウイルス、又は細菌病原体であり得る。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、抗原の発現は、細胞表面においてである。1つの実施態様では、抗原はクローディン、特にクローディン6又はクローディン18.2であり、該抗原受容体は該クローディンの第一の細胞外ループに結合する。1つの実施態様では、該抗原受容体が、T細胞によって発現される場合及び/又はT細胞上に存在する場合、細胞上に存在する抗原に結合すると、サイトカインの放出などの該T細胞の免疫エフェクター機能が起こる。1つの実施態様では、該抗原受容体が、T細胞によって発現される場合及び/又はT細胞上に存在する場合、抗原提示細胞などの細胞上に存在する抗原に結合すると、該T細胞の刺激、プライミング、及び/又は増殖が起こる。1つの実施態様では、該抗原受容体が、T細胞によって発現される場合及び/又はT細胞上に存在する場合、がん細胞などの疾患を有する細胞上に存在する抗原に結合すると、疾患を有する細胞の細胞溶解及び/又はアポトーシスが起こり、該T細胞は好ましくは細胞傷害性因子、例えばパーフォリン及びグランザイムを放出する。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、抗原結合部位を形成している抗原受容体のドメインは、抗原受容体の細胞外ドメインに含まれる。本発明の全ての態様の1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、膜貫通ドメインを含む。1つの実施態様では、膜貫通ドメインは膜を横断する疎水性αヘリックスである。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、新生タンパク質を小胞体へと指向させるシグナルペプチドを含む。1つの実施態様では、シグナルペプチドは、抗原結合部位を形成しているドメインより前にある。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は好ましくは、特に疾患を有する細胞又は抗原提示細胞などの細胞表面上に存在する場合には、それが標的化される抗原に対して特異的である。
本発明の全ての態様の1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、T細胞、好ましくは細胞傷害性T細胞によって発現され得、かつ/又はその表面上に存在し得る。1つの実施態様では、T細胞は、本発明の抗原受容体に標的化される抗原(群)と反応性である。
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に使用するための本明細書に記載の物質及び組成物を提供する。
本発明の他の特色及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
発明の詳細な説明
本発明は以下に詳細に記載されているが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール、及び試薬に限定されないことを理解されたい。なぜなら、これらは変更され得るからである。また、本明細書に使用される用語は、単に特定の実施態様を説明する目的のためであり、本発明の範囲を制限する意図はなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるであろうことを理解されたい。特記しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
以下において、本発明の要素が説明されるだろう。これらの要素は、具体的な実施態様を用いて列挙されているが、それらは追加の実施態様を作り出すために任意の様式でかつ任意の数で組合せてもよいことが理解されるべきである。様々に記載された実施例及び好ましい実施態様は、明記された実施態様のみに本発明を制限すると捉えられるべきではない。この説明は、明記された実施態様をあらゆる数の開示された要素及び/又は好ましい要素と組合せた実施態様を支援及び包含することを理解するべきである。さらに、本出願における全ての記載された要素の任意の並べ替え及び組合せが、特記しない限り、本出願の記載によって開示されたと考えられるべきである。
好ましくは、本明細書に使用される用語は、「バイオテクノロジー用語辞典:(IUPAC勧告)」、H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Kolbl, Eds., (1995) Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載されている通りに定義される。
本発明の実施は、特記しない限り、当技術分野の文献に説明されている生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術の慣用的な方法を使用するだろう(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989参照)。
本明細書及び以後の特許請求の範囲の全体を通して、内容から別様であることが必要とされない限り、「含む(comprise)」という語句並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変化形は、記載されたメンバー、整数若しくは工程、又はメンバー群、整数群、若しくは工程群の包含を意味するものであり、任意の他のメンバー、整数若しくは工程、又はメンバー群、整数群、若しくは工程群の除外を意味すると理解されるが、実施態様によっては、このような他のメンバー、整数若しくは工程、又はメンバー群、整数群、若しくは工程群が除外される場合もあり、すなわち、主題は、記載されたメンバー、整数若しくは工程、又はメンバー群、整数群、若しくは工程群の包含からなる。本発明を記載する脈絡で(特に特許請求の範囲の脈絡で)使用される「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語及び類似の言及は、本明細書で別様であると示されていない限り又は脈絡により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を網羅すると捉えられる。本明細書の数値の範囲の列挙は単に、その範囲内に該当する各々の別々の数値を個々に言及する簡潔な方法としての役目を果たすことを意図する。本明細書において特記しない限り、各々の個々の数値は、それが個々に本明細書に列挙されているかのように本明細書に組み入れられる。
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書において特記しない限り又はさもなくば脈絡により明らかに矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で実施され得る。本明細書に提供される任意及び全ての実施例又は例示的な言葉(例えば「などの」)の使用は単に本発明をより良く説明することを意図し、別様に特許請求された本発明の範囲に制限を課さない。明細書におけるどの言葉も、本発明の実施に不可欠ないずれかの特許請求されていない要素を示すものと捉えられるべきではない。
いくつかの文書が本明細書の文書全体を通して引用されている。本明細書に引用された各文書(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)(上段であれ後段であれ)は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書においてどの文書も、本発明は先行技術のためにこのような開示に先行する資格がないという承認として捉えられるべきではない。
「免疫応答」という用語は、抗原に対する統合された生体応答を指し、好ましくは細胞性免疫応答又は細胞性並びに体液性免疫応答を指す。免疫応答は、防御的/防止的/予防的及び/又は治療的であり得る。
「免疫応答を与える」は、免疫応答を与える前は特定の標的抗原、標的細胞及び/又は標的組織に対する免疫応答が全く存在しなかったことを意味し得るが、それはまた、免疫応答を与える前は特定の標的抗原、標的細胞及び/又は標的組織に対する一定レベルの免疫応答が存在し、免疫応答を与えた後は該免疫応答が増強されることも意味し得る。したがって、「免疫応答を与える」は、「免疫応答を誘導する」及び「免疫応答を増強する」ことを含む。好ましくは、被験者において免疫応答を与えた後、該被験者は、がん疾患などの疾患を発症することから防御されるか、又は疾患容態は、免疫応答を与えることによって寛解される。例えば、腫瘍抗原に対する免疫応答が、がん疾患を有する患者に又はがん疾患を発症するリスクのある被験者に与えられ得る。この場合の免疫応答を与えることは、被験者の疾患容態が寛解すること、被験者が転移を発症しないこと、又はがん疾患を発症するリスクのある被験者ががん疾患を発症しないことを意味し得る。
「細胞媒介性免疫」又は「細胞性免疫」又は類似の用語は、抗原の発現によって特徴付けられる、特にクラスI又はクラスII MHCを用いての抗原の提示によって特徴付けられる細胞に指向される細胞応答を含むことを意味する。細胞応答は、「ヘルパー」又は「キラー」のいずれかとして作用するT細胞又はTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞、又はCTLとも呼ばれる)は、がん細胞などの疾患を有する細胞を死滅させ、より多くの疾患を有する細胞の産生を防止する。
「抗原」という用語は、エピトープ(これに対して免疫応答が発生する及び/又は指向される)を含む物質に関する。好ましくは、本発明の脈絡における抗原は、場合により処理後に、好ましくは抗原に対して、又は好ましくは細胞表面上に抗原を発現している細胞に対して特異的である免疫反応を誘発する、分子である。「抗原」という用語は、特にタンパク質及びペプチドを含む。抗原は好ましくは、天然抗原に相当するか又はそれに由来する産物である。このような天然抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、並びに他の感染物質及び病原体を含み得るか又はそれに由来し得るか、あるいは、抗原はまた腫瘍抗原であってもよい。本発明によると、抗原は、天然物、例えばウイルス性タンパク質、又はその一部に相当し得る。
「病原体」という用語は病原性微生物に関し、これはウイルス、細菌、真菌、単細胞生物、及び寄生虫を含む。病原性ウイルスの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス(HSV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、HBV、HCV、パピローマウイルス、及びヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)である。単細胞生物としては、マラリア原虫、トリパノソーマ類、アメーバなどを含む。
好ましい実施態様では、抗原は疾患特異的抗原又は疾患関連抗原である。「疾患特異的抗原」又は「疾患関連抗原」という用語は、病理学的に重要な全ての抗原を指す。1つの特に好ましい実施態様では、抗原は疾患を有する細胞、組織及び/又は器官に存在するが、健康な細胞、組織及び/又は器官には存在しないか又は減少した量で存在し、したがって、疾患を有する細胞、組織及び/又は器官を、例えば抗原に標的化された抗原受容体を有するT細胞によって標的化するために使用され得る。1つの実施態様では、疾患特異的抗原又は疾患関連抗原は、疾患を有する細胞の表面上に存在する。
好ましい実施態様では、抗原は腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原、すなわち、細胞質、細胞表面及び細胞核に由来し得るがん細胞の構成成分、特にがん細胞上の表面抗原として好ましくは大量に産生されている抗原である。
本発明の脈絡において、「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」という用語は、通常の条件下では少数の組織及び/若しくは器官、又は特定の発達段階において特異的に発現されているタンパク質に関し、例えば、腫瘍抗原は、通常の条件下では、胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器官、例えば精巣、絨毛組織、例えば胎盤、又は生殖系列細胞に特異的に発現され得、1つ以上の腫瘍又はがん組織において発現又は異常に発現されている。この脈絡において、「少数」は好ましくは、3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明の脈絡における腫瘍抗原としては、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち、通常の条件下では特定の細胞型において特定の分化段階において特異的に発現されているタンパク質、がん/精巣抗原、すなわち通常の条件下で精巣及び時には胎盤において特異的に発現されているタンパク質、並びに生殖系列特異的抗原が挙げられる。本発明の脈絡において、腫瘍抗原は好ましくは、がん細胞の細胞表面に結合し、好ましくは正常組織においては発現されていないか又はほんの稀にしか発現されていない。好ましくは、腫瘍抗原又は腫瘍抗原の異常発現は、がん細胞を同定する。本発明の脈絡において、被験者、例えばがん疾患を患っている患者においてがん細胞によって発現されている腫瘍抗原は好ましくは、該被験者における自己タンパク質である。好ましい実施態様では、本発明の脈絡における腫瘍抗原は、通常の条件下で不可欠ではない組織若しくは器官、すなわち免疫系によって損傷されても被験者の死をもたらさない組織若しくは器官、又は免疫系によって近づけないか又は殆ど近づけない体内の器官若しくは構造において特異的に発現されている。好ましくは、腫瘍抗原のアミノ酸配列は、正常組織において発現されている腫瘍抗原とがん組織において発現されている腫瘍抗原との間で同一である。
本発明において有用であり得る腫瘍抗原の例は、p53、ART−4、BAGE、β−カテニン/m、Bcr−abL CAMEL、CAP−1、CASP−8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えばクローディン−6、クローディン18.2及びクローディン−12、c−MYC、CT、Cyp−B、DAM、ELF2M、ETV6−AML1、G250、GAGE、GnT−V、Gap100、HAGE、HER−2/neu、HPV−E7、HPV−E6、HAST−2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE−A、好ましくはMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、又はMAGE−A12、MAGE−B、MAGE−C、MART−1/Melan−A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM−1、−2、−3、NA88−A、NF1、NY−ESO−1、NY−BR−1、p190マイナーBCR−abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART−1又はSART−3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP−1、TRP−2、TRP−2/INT2、TPTE並びにWTである。特に好ましい腫瘍抗原としては、クローディン−18.2(CLDN18.2)及びクローディン−6(CLDN6)が挙げられる。
本明細書において使用する「CLDN」又は単に「C1」という用語はクローディンを意味し、これはCLDN6及びCLDN18.2を含む。好ましくは、クローディンはヒトクローディンである。クローディンは、密着結合の最も重要な成分であるタンパク質ファミリーであり、密着結合においてそれらは上皮細胞間の細胞間空間における分子の流れを制御する傍細胞バリアを確立している。クローディンは、膜を4回貫通する膜貫通タンパク質であり、N末端及びC末端は両方共に細胞質内に位置する。EC1又はECL1と呼ばれる第一の細胞外ループは平均して53アミノ酸からなり、EC2又はECL2と呼ばれる第二の細胞外ループは約24アミノ酸からなる。クローディンファミリーの細胞表面タンパク質は、様々な起源の腫瘍に発現され、その選択的な発現(毒性に関連する正常組織には全く発現されない)及び形質膜への局在化に因り、標的化がん免疫療法に関連した標的構造として特に適している。
CLDN6及びCLDN18.2は、腫瘍組織において発現差を有するとして同定され、CLDN18.2を発現している唯一の正常組織は胃(胃粘膜の分化した上皮細胞)であり、CLDN6を発現している唯一の正常組織は胎盤である。
CLDN18.2は、膵癌、食道癌、胃癌、気管支癌、乳癌、及びENT腫瘍などの様々な起源のがんに発現されている。CLDN18.2は、原発性腫瘍、例えば胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、大腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、及び膀胱癌、並びにその転移、特に胃癌転移、例えばクルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、及びリンパ節転移の予防及び/又は治療のための価値ある標的である。少なくともCLDN18.2を標的化する抗原受容体が、このようながん疾患の処置に有用である。
CLDN6は、例えば、卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、腎細胞癌、及び膀胱癌に発現していることが判明している。CLDN6は、卵巣癌、特に卵巣腺癌腫及び卵巣奇形癌腫、肺癌、例えば小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)、特に扁平細胞肺癌及び腺癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌及び扁平細胞癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫及び癌肉腫、胆管癌、膀胱癌、特に移行細胞癌及び乳頭癌、腎臓癌、特に腎細胞癌、例えば明細胞腎細胞癌及び乳頭状腎細胞癌、大腸癌、小腸癌、例えば回腸癌、特に小腸腺癌及び回腸腺癌、精巣胎児性癌、胎盤性絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫及び胚性精巣癌、子宮癌、生殖細胞腫瘍、例えば奇形癌腫又は胚性癌腫、特に精巣の生殖細胞腫瘍、並びにその転移形の予防及び/又は治療のための特に好ましい標的である。少なくともCLDN6を標的化する抗原受容体が、このようながん疾患の処置に有用である。
本発明の実施態様の脈絡では、抗原は、好ましくは細胞、好ましくは抗原提示細胞又は疾患を有する細胞の表面上に存在する。本発明によると、抗原は抗原受容体と結合すると、場合により適切な共刺激シグナルの存在下で、抗原と結合する抗原受容体を有するT細胞の刺激、プライミング及び/又は増殖を好ましくは誘発することができる。疾患を有する細胞表面上での抗原の認識により、抗原(又は抗原を発現している細胞)に対する免疫応答が生じ得る。
本発明の様々な態様によると、目的は好ましくは、腫瘍抗原、特にCLDN6又はCLDN18.2などの抗原を発現しているがん細胞などの、抗原を発現している疾患を有する細胞に対する免疫応答を与えること、及び、腫瘍抗原などの抗原を発現している細胞の関与するがん疾患などの疾患を処置することである。好ましくは、本発明は、抗原を発現している疾患を有する細胞に対して標的化されたT細胞などの抗原受容体の工学操作された免疫エフェクター細胞の投与を含む。表面上に抗原を発現している細胞は、抗原に対して標的化された抗原受容体を有する免疫エフェクター細胞によって標的化され得る。
「細胞表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質及び他の分子による結合を起こすことのできる細胞の外側を含む。抗原は、細胞の表面に位置する場合には細胞表面上に発現され、抗原受容体、又は細胞に添加された抗原特異的抗体などの、抗原結合性分子による結合を起こすことができる。1つの実施態様では、細胞表面上に発現された抗原は、抗原受容体によって認識される細胞外部分を有する膜内在性タンパク質である。抗原受容体は、細胞の表面に位置する場合には細胞表面上に発現され、例えば細胞に添加された抗原(これに対して抗原受容体は特異的である)による結合を起こすことができる。1つの実施態様では、細胞表面上に発現された抗原受容体は、抗原を認識する細胞外部分を有する膜内在性タンパク質である。
本発明の脈絡における「細胞外部分」又は「細胞外ドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面し、好ましくは、例えば細胞外に局在する抗体などの結合性分子が該細胞の外側から近づくことのできる、タンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、該用語は、1つ以上の細胞外ループ又はそのドメイン若しくはその断片を指す。
「部分」又は「一部」という用語は本明細書において互換的に使用され、アミノ酸配列などの連続的又は非連続的な構造の要素を指す。「断片」という用語は、アミノ酸配列などの連続的な構造の要素を指す。構造の部分、一部、又は断片は好ましくは、該構造の1つ以上の機能的特性、例えば抗原性特性、免疫原性特性及び/又は結合特性を含む。タンパク質配列の部分又は一部は好ましくは、タンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも100の連続的及び/又は非連続的アミノ酸を含む。タンパク質配列の断片は好ましくは、タンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも100の連続的アミノ酸を含む。
本発明によると、抗原は、発現レベルが検出限界未満である場合、及び/又は発現レベルが低すぎて細胞に添加された抗原特異的抗体による結合が可能ではない場合に、細胞内に(実質的に)発現されていない。本発明によると、抗原は、発現レベルが検出限界を上回る場合、及び/又は発現レベルが十分に高く細胞に添加された抗原特異的抗体による結合が可能となる場合に、細胞内に発現されている。好ましくは、細胞内で発現された抗原は、該細胞の表面上に発現又は露出している、すなわち存在し、したがって、抗体又は細胞に添加された抗原受容体などの抗原特異的分子による結合に利用可能である。
「標的細胞」は、細胞性免疫応答などの免疫応答の標的である細胞を意味する。標的細胞には、がん細胞などのあらゆる望ましくない細胞も含まれる。好ましい実施態様では、標的細胞は、好ましくは細胞表面上に存在している、標的抗原、特に疾患特異的抗原を発現している細胞である。
「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識、すなわち結合、例えば抗体又は抗原受容体によって認識される、抗原などの分子における抗原決定基、すなわち、該分子の一部又は断片を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の個別の3次元の部位である。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性な分子の表面基からなり、通常、特異的な3次元構造特徴並びに特異的な荷電特徴を有する。コンフォメーションエピトープ及び非コンフォメーションエピトープは、前者への結合は変性溶媒の存在下では失われるが、後者では失われない点で区別される。好ましくはエピトープは、抗原又は抗原を発現している細胞に対する免疫応答を惹起することができる。好ましくは、該用語は、抗原の免疫原性部分に関する。腫瘍抗原などのタンパク質のエピトープは好ましくは、該タンパク質の連続的又は非連続部分を含み、好ましくは5〜100、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30、最も好ましくは10〜25アミノ酸長であり、例えば、エピトープは好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長であり得る。
「抗原の処理」は、抗原から、該抗原の断片である処理産物への分解(例えばタンパク質からペプチドへの分解)、及び細胞による、好ましくは抗原提示細胞による特定のT細胞への提示のためにMHC分子との(例えば結合を介した)これらの1つ以上の断片の結合を指す。
抗原提示細胞(APC)は、その表面上に主要組織適合性複合体(MHC)との関連で抗原を提示する細胞である。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識し得る。抗原提示細胞は抗原を処理し、それらをT細胞に提示する。本発明によると、「抗原提示細胞」という用語は、プロフェッショナル抗原提示細胞及びノンプロフェッショナル抗原提示細胞を含む。
プロフェッショナル抗原提示細胞は、食作用によって又は受容体媒介エンドサイトーシスによってのいずれかで抗原を内部移行させ、次いで、それらの膜上でクラスII MHC分子に結合された抗原断片を提示することにおいて非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞膜上の抗原−クラスII MHC分子複合体を認識し相互作用する。次いで、追加の共刺激シグナルが抗原提示細胞によって産生され、これによりT細胞が活性化される。共刺激分子の発現は、プロフェッショナル抗原提示細胞を規定する特色である。主な種類のプロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞(これらは幅広い範囲の抗原提示を有し、おそらく最も重要な抗原提示細胞である)、マクロファージ、B細胞、及び特定の活性化上皮細胞である。
ノンプロフェッショナル抗原提示細胞は、ナイーブT細胞との相互作用に必要とされるMHCクラスIIタンパク質を構成的に発現せず;これらは、IFNγなどの特定のサイトカインによるノンプロフェッショナル抗原提示細胞の刺激時のみ発現される。
樹状細胞(DC)は、MHCクラスII及びI抗原提示経路の両方を介して、末梢組織において捕捉された抗原をT細胞に提示する、白血球個体群である。樹状細胞は、免疫応答の強力な誘導因子であり、これらの細胞の活性化は、抗腫瘍免疫の誘発にとって重要な工程であることは周知である。樹状細胞及び前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、又は任意の他の適切な組織若しくは体液から得ることができる。例えば、樹状細胞は、GM−CSF、IL−4、IL−31及び/又はTNFαなどのサイトカインの組合せを、末梢血から収集された単球の培養液に添加することによって、エクスビボで分化され得る。あるいは、末梢血、臍帯血、又は骨髄から収集されたCD34陽性細胞は、樹状細胞の分化、成熟及び増殖を誘発するGM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンド及び/又は他の化合物(群)の組合せを培養培地に添加することによって、樹状細胞へと分化され得る。樹状細胞は、「未熟」及び「成熟」細胞として簡便に分類され、これは、2つの十分に特徴付けられた表現型を区別するための簡単な方法として使用され得る。しかしながら、この命名法は、全ての可能性ある分化の中間段階を排除するものと捉えられるべきではない。未熟樹状細胞は、抗原の取り込み及び処理について高い能力を有する抗原提示細胞として特徴付けられ、これは、Fcγ受容体及びマンノース受容体の高い発現に相関する。成熟表現型は典型的には、これらのマーカーの発現が低いが、T細胞活性化に関与する細胞表面分子、例えばクラスI及びクラスII MHC、接着分子(例えばCD54及びCD11)及び共刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86及び4−1BB)の発現が高いことによって特徴付けられる。樹状細胞の成熟は、このような抗原提示樹状細胞によりT細胞のプライミングが起こる樹状細胞活性化状態として言及されるが、一方、未熟樹状細胞による提示により寛容が起こる。樹状細胞の成熟は主に、生得的受容体によって検出される微生物の特色を有する生体分子(細菌DNA、ウイルスRNA、エンドトキシンなど)、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IL−1、IFN)、CD40Lによる樹状細胞表面上でのCD40への結合、及びストレスによる細胞死を受けている細胞から放出された物質によって引き起こされる。樹状細胞は、サイトカイン、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及び腫瘍壊死因子αと共にインビトロで骨髄細胞を培養することにより導かれ得る。
「免疫原性」という用語は、抗原が免疫反応を誘発する相対的効率に関する。
本発明の脈絡における「免疫エフェクター機能」という用語は、例えば、腫瘍細胞などの疾患を有する細胞の死滅、又は腫瘍増殖の抑制、並びに/又は腫瘍発症の抑制、例えば腫瘍汎発及び転移の抑制をもたらす、免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明の脈絡における免疫エフェクター機能は、T細胞媒介エフェクター機能である。このような機能は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の場合、インターロイキン−2などのサイトカインの放出、並びに/又はCD8+Tリンパ球(CTL)及び/若しくはB細胞の活性化、並びにCTLの場合には、例えば、アポトーシス又はパーフォリンにより媒介される細胞溶解、IFN−γ及びTNF−αなどのサイトカインの産生、及び抗原を発現している標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を介した、細胞、すなわち抗原の発現によって特徴付けられる細胞の排除を含む。
本発明の脈絡における「免疫反応性細胞」又は「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は好ましくは、細胞表面上に発現される抗原などの抗原に結合して、免疫応答を媒介することができる。例えば、このような細胞は、サイトカイン及び/又はケモカインを分泌し、微生物を死滅させ、抗体を分泌し、感染細胞又はがん性細胞を認識し、場合によりこのような細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤性T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む。好ましくは、本発明の脈絡において、「免疫反応性細胞」は、T細胞、好ましくはCD4+及び/又はCD8+T細胞である。本発明によると、「免疫反応性細胞」という用語はまた、適切な刺激を用いて免疫細胞(例えばT細胞、特にヘルパーT細胞、又は細胞溶解性T細胞)に成熟することのできる細胞を含む。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟及び成熟T細胞、並びに未熟及び成熟B細胞を含む。抗原に曝された場合のT細胞前駆体から細胞溶解性T細胞への分化は、免疫系のクローン選択に類似している。
好ましくは、「免疫反応性細胞」又は「免疫エフェクター細胞」は、特に、抗原が抗原提示細胞又は疾患を有する細胞、例えばがん細胞の表面上に提示されている場合、幾分かの特異性で、該抗原を認識する。好ましくは、該認識は、抗原を認識する細胞が応答性又は反応性であることを可能とする。細胞がヘルパーT細胞(CD4+T細胞)である場合、このような応答性又は反応性は、サイトカインの放出、並びに/あるいは、CD8+リンパ球(CTL)及び/又はB細胞の活性化を含み得る。細胞がCTLである場合、このような応答性又は反応性は、細胞、すなわち抗原の発現によって特徴付けられる細胞の、例えば、アポトーシス又はパーフォリンにより媒介される細胞溶解を介した排除を含み得る。本発明によると、CTL応答性は、持続的なカルシウム流入、細胞分裂、IFN−γ及びTNF−αなどのサイトカインの産生、CD44及びCD69などの活性化マーカーのアップレギュレーション、並びに抗原を発現している標的細胞の特異的な細胞溶解性死滅を含み得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工的なレポーターを使用して決定され得る。抗原を認識しかつ応答性又は反応性であるこのようなCTLはまた、本明細書において「抗原応答性CTL」とも呼ばれる。
「リンパ球系細胞」は、場合により適切な改変後、例えばT細胞受容体若しくは抗原受容体の導入後に、細胞性免疫応答などの免疫応答を生じることのできる細胞、又はこのような細胞の前駆細胞であり、これには、リンパ球、好ましくはTリンパ球、リンパ芽球、及び形質細胞が挙げられる。リンパ球系細胞は、本明細書に記載のような免疫反応性細胞又は免疫エフェクター細胞であり得る。好ましいリンパ球系細胞は、改変されて細胞表面上にT細胞受容体又は抗原受容体を発現することのできる、T細胞である。1つの実施態様では、リンパ球系細胞は、T細胞受容体の内因性発現を欠失している。
「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は本明細書において互換的に使用され、これにはヘルパーT細胞(CD4+T細胞)、及び細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)が挙げられる。
T細胞は、リンパ球として知られる白血球の群に属し、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。それらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるそれらの細胞表面上の特殊な受容体の存在によって、他のリンパ球型、例えばB細胞及びナチュラルキラー細胞とは区別され得る。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主な器官である。T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見され、各々が明確に異なる機能を有する。
ヘルパーT細胞は、他の機能の中でもとりわけ、B細胞から形質細胞への成熟、並びに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化をはじめとする、免疫学的プロセスにおいて他の白血球を支援する。これらの細胞は、CD4+T細胞としても知られる。なぜなら、それらはそれらの表面上にCD4タンパク質を発現しているからである。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原が提示されると、活性化されるようになる。一旦活性化されると、それらは急速に分裂し、能動的な免疫応答を調節又は支援するサイトカインと呼ばれる低分子タンパク質を分泌する。
細胞傷害性T細胞はウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を破壊し、それらはまた移植片拒絶にも関与している。これらの細胞はCD8+T細胞としても知られる。なぜなら、それらはそれらの表面にCD8糖タンパク質を発現しているからである。これらの細胞は、生体のほぼ全ての細胞の表面上に存在しているMHCクラスIと結合している抗原への結合によってそれらの標的を認識する。
T細胞の大半は、いくつかのタンパク質の複合体として存在しているT細胞受容体(TCR)を有する。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体α及びβ(TCRα及びTCRβ)遺伝子から産生され、α−及びβ−TCR鎖と呼ばれる、2本の別々のペプチド鎖から構成される。γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、それらの表面上に明確に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットを示す。しかしながら、γδT細胞では、TCRは、1本のγ鎖及び1本のδ鎖から作られる。この群のT細胞は、αβT細胞よりもはるかに稀である(T細胞の総数の2%)。
全てのT細胞は、骨髄の造血幹細胞から派生する。造血幹細胞から誘導された造血前駆細胞は胸腺に居住し、細胞分裂によって増殖して未熟胸腺細胞の大きな個体群を生成する。最初期の胸腺細胞は、CD4もCD8も発現せず、それ故、ダブルネガティブ(CD4−CD8−)細胞として分類される。それらがそれらの発達を通して進歩するにつれて、それらはダブルポジティブな胸腺細胞(CD4+CD8+)となり、最終的にはシングルポジティブ(CD4+CD8−又はCD4−CD8+)胸腺細胞へと成熟し、次いで、胸腺から末梢組織へと放出される。
T細胞は、一般的に、標準的な手順を使用して、インビトロ又はエクスビボで調製され得る。例えば、T細胞は、哺乳動物、例えば患者の骨髄、末梢血、又は骨髄若しくは末梢血の一部から、市販の細胞分離システムを使用して単離され得る。あるいは、T細胞は、関連した又は関連性のないヒト、非ヒト動物、細胞株又は培養液から得ることができる。T細胞を含む試料は、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。
本発明に従って使用されるT細胞は内因性T細胞受容体を発現していても、又は内因性T細胞受容体の発現を欠失していてもよい。
抗原受容体をコードしているRNAなどの核酸を、T細胞又は溶解能を有する他の細胞、特にリンパ球系細胞に導入し得る。
「抗原に標的化された抗原受容体」という用語又は類似の用語は、T細胞などの免疫エフェクター細胞上に存在する場合に、抗原提示細胞又は疾患を有する細胞、例えばがん細胞の表面上などの抗原を認識し、よって免疫エフェクター細胞を刺激、プライミング、及び/若しくは増殖するか、又は上記のような免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を発揮する、抗原受容体に関する。
「抗原特異的T細胞」という用語又は類似の用語は、特に抗原受容体が備えられると、抗原提示細胞又は疾患を有する細胞、例えばがん細胞の表面上などにある抗原受容体に標的化される抗原を認識し、好ましくは上記のようなT細胞のエフェクター機能を発揮する、T細胞に関する。T細胞及び他のリンパ球系細胞は、該細胞が抗原を発現している標的細胞を死滅させる場合、該抗原に対して特異的であると判断される。T細胞特異性は、例えばクロミウム放出アッセイ又は増殖アッセイなどの、様々な標準的な技術のいずれかを使用して評価され得る。あるいは、リンホカイン(例えばインターフェロン−γ)の合成が測定されてもよい。
「主要組織適合性複合体」という用語及び「MHC」という略称はMHCクラスI及びMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子複合体に関する。MHCタンパク質又は分子は、免疫反応においてリンパ球と抗原提示細胞又は疾患を有する細胞との間のシグナル伝達にとって重要であり、ここでのMHCタンパク質又は分子はペプチドに結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は細胞表面上に発現され、自己抗原(細胞それ自体に由来するペプチド断片)及び非自己抗原(例えば侵入している微生物の断片)の両方をT細胞に提示する。
本発明によると、「抗原受容体」という用語は、モノクローナル抗体の特異性などの任意の特異性を免疫エフェクター細胞、例えばT細胞に付与する、工学操作された受容体を含む。このように、多数の抗原特異的T細胞を、養子細胞移植のために作製することができる。したがって、本発明による抗原受容体は、例えばT細胞自体のT細胞受容体の代わりに又はそれに加えて、T細胞上に存在し得る。このようなT細胞は、標的細胞の認識のために抗原の処理及び提示を必ずしも必要とせず、むしろ好ましくは、標的細胞上に存在するあらゆる抗原を特異性をもって認識し得る。好ましくは、該抗原受容体は、細胞表面上に発現されている。本発明の目的のために、抗原受容体を含むT細胞は、本明細書に使用されるような「T細胞」という用語に含まれる。具体的には、本発明によると、「抗原受容体」という用語は、がん細胞などの標的細胞上の標的構造(例えば抗原)を認識、すなわち結合し(例えば、標的細胞表面上に発現されている抗原への、抗原結合部位又は抗原結合ドメインの結合によって)、細胞表面上に該抗原受容体を発現しているT細胞などの免疫エフェクター細胞上に特異性を付与し得る、単一分子又は分子の複合体を含む、人工的な受容体を含む。好ましくは、抗原受容体による標的構造の認識により、該抗原受容体を発現している免疫エフェクター細胞の活性化が起こる。抗原受容体は1つ以上のタンパク質単位を含み得、該タンパク質単位は、本明細書に記載のような1つ以上のドメインを含む。「抗原受容体」という用語は好ましくはT細胞受容体を含まない。本発明によると、「抗原受容体」という用語は好ましくは、「キメラ抗原受容体(CAR)」、「キメラT細胞受容体」及び「人工的T細胞受容体」という用語と同義語である。
本発明によると、抗原は、抗原結合部位を形成することができる任意の抗原認識ドメイン(本明細書では単に「ドメイン」とも称する)を通して、例えば同じ又は異なるペプチド鎖上に存在し得る抗体の抗原結合部分及びT細胞受容体を通して、抗原受容体によって認識され得る。1つの実施態様では、抗原結合部位を形成している2つのドメインは免疫グロブリンに由来する。別の実施態様では、抗原結合部位を形成している2つのドメインは、T細胞受容体に由来する。特に好ましいのは、モノクローナル抗体由来の抗体可変ドメイン、例えば一本鎖可変断片(scFv)、及びT細胞受容体可変ドメイン、特にTCRα及びβ一本鎖である。事実、高い親和性で所与の標的に結合するほぼどれでも、抗原認識ドメインとして使用することができる。
1つの実施態様では、本発明の抗原受容体は、少なくとも2つの結合部位を形成している少なくとも4つの免疫グロブリン可変ドメインを含み、ここでの2つの結合部位は、同じ又は異なるエピトープに結合し得、該エピトープは、同じ又は異なる抗原上に位置し得る。1つの実施態様では、抗原受容体は、第一のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(又は領域)(VH(1))、第一のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(又は領域)(VL(1))、第二のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(又は領域)(VH(2))、及び第二のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(又は領域)(VL(2))を含み、第一及び第二のエピトープは同じ又は異なり得、同じ又は異なる抗原上に位置し得る。1つの実施態様では、VH(1)は、VL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができ、VH(2)はVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができるが、VH(1)は、VL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することはできず、VH(2)はVL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することはできない。しかしながら、別の実施態様では、VH(1)は、VL(1)並びにVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができ、VH(2)は、VL(2)並びにVL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができる。後者の実施態様では、VH(1)及びVH(2)は同一であり得るか又は少なくとも同じ免疫グロブリンに由来し得、VL(1)及びVL(2)は同一であり得るか又は少なくとも同じ免疫グロブリンに由来し得る。
1つの態様では、本発明は、本明細書において組合せ抗原受容体とも呼ばれる抗原受容体に関し、該受容体は、第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含み、ここで第一のペプチド鎖が、少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン、並びに免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;第二のペプチド鎖が、少なくとも第一のドメイン及び第二のドメイン、並びに免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;ここで、第一のペプチド鎖由来の第一のドメインが、第二のペプチド鎖由来のドメインの一方と一緒に第一の抗原結合部位を形成し;そして第一のペプチド鎖由来の第二のドメインが、第二のペプチド鎖由来の他方のドメインと一緒に第二の抗原結合部位を形成している。
1つの実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は、両方の各々のペプチド鎖上に軽鎖可変ドメインに接続された重鎖可変ドメインを含み、ここでの2つの抗原結合部位の形成は、異なるペプチド鎖上の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間の相互作用を通して起こる。1つの実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は2本のペプチド鎖を含み、ここでの一方のペプチド鎖はVL(1)及びVH(2)を含み、他方のポリペプチド鎖はVH(1)及びVL(2)を含む。別の実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は、一方のペプチド鎖上に重鎖可変ドメインに接続された重鎖可変ドメイン、及び他方のペプチド鎖上に軽鎖可変ドメインに接続された軽鎖可変ドメインを含み、ここでの2つの抗原結合部位の形成は、異なるペプチド鎖上の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間の相互作用を通して起こる。1つの実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は2本のペプチド鎖を含み、ここでの一方のペプチド鎖はVH(1)及びVH(2)を含み、他方のペプチド鎖はVL(1)及びVL(2)を含む。
1つの実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は第一のペプチド鎖(ここでの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は好ましくは、N末端からC末端へ向かって、VH(1)−VL(2)の順で整列している)及び第二のペプチド鎖(ここでの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は好ましくは、N末端からC末端へ向かって、VL(1)−VH(2)の順で整列している)を含む。免疫受容体シグナル伝達ドメインは好ましくは、可変領域の整列に対してC末端に位置し、そして好ましくは一方のペプチド鎖上に位置するT細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部、及び他方のペプチド鎖上に位置するT細胞受容体β鎖の定常領域を含む。
1つの実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体は第一のペプチド鎖(ここでの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は好ましくは、N末端からC末端へ向かって、VH(1)−VH(2)の順で整列している)及び第二のペプチド鎖(ここでの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は好ましくは、N末端からC末端へ向かって、VL(1)−VL(2)の順で整列している)を含む。免疫受容体シグナル伝達ドメインは好ましくは、可変領域の整列に対してC末端に位置し、そして好ましくは一方のペプチド鎖上に位置するT細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部、及び他方のペプチド鎖上に位置するT細胞受容体β鎖の定常領域又はその一部を含む。
1つの態様では、本発明は、本明細書において直列型抗原受容体とも呼ばれる、抗原受容体に関し、該受容体は第一のペプチド鎖及び第二のペプチド鎖を含み、第一のペプチド鎖は、少なくとも4つのドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;第二のペプチド鎖は免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み;ここでの第一のペプチド鎖由来のドメインのうち2つは第一の抗原結合部位を形成し;そして第一のペプチド鎖由来の他の2つのドメインは第二の抗原結合部位を形成している。
1つの実施態様では、本発明の直列型抗原受容体は、第一のペプチド鎖上に軽鎖可変ドメインに接続された重鎖可変ドメインに接続された軽鎖可変ドメインに接続されたさらなる重鎖可変ドメインを含み、2つの抗原結合部位の形成は、同じペプチド鎖上の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間の相互作用を通して起こる。したがって、第一のペプチド鎖は、同じペプチド鎖上にVH(1)及びVL(1)並びにVH(2)及びVL(2)を含む。1つの実施態様では、本発明の直列型抗原受容体は、第一のペプチド鎖上でリンカーペプチドを介して接続された2つのscFv分子を含むと考えられ得る。
1つの実施態様では、本発明の直列型抗原受容体は第一のペプチド鎖を含み、ここでの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は好ましくは、N末端からC末端に向かって、VH(1)−VL(1)−VH(2)−VL(2)、VL(1)−VH(1)−VH(2)−VL(2)、VH(1)−VL(1)−VL(2)−VH(2)、又はVL(1)−VH(1)−VL(2)−VH(2)の順で整列している。免疫受容体シグナル伝達ドメインは好ましくは、可変領域の整列に対してC末端に位置し、好ましくはT細胞受容体α鎖の定常領域若しくはその一部、又はT細胞受容体β鎖の定常領域若しくはその一部を含む。第二のペプチド鎖上に位置する免疫受容体シグナル伝達ドメインは好ましくは、第一のペプチド鎖がT細胞受容体β鎖の定常領域若しくはその一部を含む場合、T細胞受容体α鎖の定常領域若しくはその一部を含み、又は第一のペプチド鎖がT細胞受容体α鎖の定常領域若しくはその一部を含む場合、T細胞受容体β鎖の定常領域若しくはその一部を含む。
本発明の抗原受容体は少なくとも2つの抗原結合部位を含み、したがって、少なくとも二価である。上記のように、本発明の抗原受容体の結合部位は、同じ又は異なるエピトープに結合し得、該エピトープは、同じ又は異なる抗原上に位置し得る。結合部位が、特に同じ抗原上の同じエピトープに結合する場合、2つの結合部位は同一若しくは本質的に同一であり得、及び/又は、同一若しくは本質的に同一なドメインによって形成され得、ここでのこのような同一若しくは本質的に同一なドメインは、例えば、同じ免疫グロブリンに由来し得る。結合部位が、同じ又は異なる抗原上の異なるエピトープに結合する場合、2つの結合部位は異なり、異なるドメインによって形成され、ここでのこのような異なるドメインは、異なる免疫グロブリンに由来し得る。このような異なるドメインの場合、異なるエピトープ特異性を有するドメインは、互いに相互作用しないか又は実質的に相互作用せず、すなわち、VH(1)はVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができず、VH(2)は、VL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができないことが好ましい。結果として、VH(1)はVL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成し、VH(2)はVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成する。本発明の組合せ抗原受容体が2つのペプチド鎖を含む場合、ここでの一方のペプチド鎖はVH(1)及びVL(2)を含み、他方のペプチド鎖はVH(2)及びVL(1)を含み、これにより、ドメインの分子内相互作用を通して抗原結合部位を形成することができないペプチド鎖が得られる。
抗原結合部位を形成している本発明の抗原受容体の2つのドメインはまたT細胞受容体に由来し得、そして抗原への特異的な結合、特に、ペプチド−MHC複合体への結合を維持する断片又はその一部、例えばT細胞受容体の可変領域であり得る。
本発明によると、「T細胞受容体の可変領域」という用語は、TCR鎖の可変ドメインに関する。TCRα鎖及びβ鎖の両方の可変領域は、3つの超可変領域又は相補性決定領域(CDR)を有し、β鎖の可変領域は、通常は抗原と接触せずそれ故にCDRとは判断されない追加の超可変領域(HV4)を有する。CDR3は、処理された抗原を認識するのに関与する主なCDRであるが、α鎖のCDR1もまた、抗原性ペプチドのN末端と相互作用することが示され、一方、β鎖のCDR1は該ペプチドのC末端と相互作用する。CDR2は、MHCを認識すると考えられている。β鎖のCDR4は、抗原の認識に関与しないと考えられているが、スーパー抗原と相互作用することが示された。
免疫グロブリン可変ドメインに関連した上記の開示は、対応する様式でT細胞受容体可変ドメインに適用される。本発明の抗原受容体は、第一のエピトープに対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(VH(1))、及び第一のエピトープに対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(VL(1))の代わりに、第一のエピトープに対して特異性を有するTCRのTCRα鎖の可変ドメイン、及び第一のエピトープに対して特異性を有するTCRのTCRβ鎖の可変ドメインを含み得る。代替的に又は追加的に、本発明の抗原受容体は、第二のエピトープに対して特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(VH(2))、及び第二のエピトープに対して特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(VL(2))の代わりに、第二のエピトープに対して特異性を有するTCRのTCRα鎖の可変ドメイン、及び第二のエピトープに対して特異性を有するTCRのTCRβ鎖の可変ドメインを含み得る。
各抗原結合部位は2つのドメインから形成されるので、各々のドメインは、それぞれ免疫グロブリン又はT細胞受容体の一部又は断片を含み得る。個々の部分又は断片は単独で抗原に結合することはできない可能性があるが、2つの個々の部分又は断片が会合すると、それらは一緒に元来の免疫グロブリン又はT細胞受容体の抗原結合構造を形成又は再現し、したがって、同じ抗原に好ましくは同じ親和性で結合することができる。
抗原認識後、受容体は好ましくはクラスター化し、シグナルが細胞に伝達される。これに関して、「免疫受容体シグナル伝達ドメイン」又は「T細胞シグナル伝達ドメイン」は、抗原に結合した後にT細胞に活性化シグナルを伝達するのに関与するドメインである。このようなシグナル伝達は、一方のペプチド鎖上に、T細胞受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は免疫細胞Fc受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は該定常領域若しくは不変領域の一部、例えばT細胞受容体α鎖の定常領域若しくはその一部を含み、かつ他方のペプチド鎖上に、T細胞受容体鎖の対応する定常領域若しくは不変領域、又は免疫細胞Fc受容体鎖の対応する定常領域若しくは不変領域、又は該定常領域若しくは不変領域の一部、例えばT細胞受容体β鎖の定常領域若しくはその一部を含む、本発明の抗原受容体によって可能となり得る。これに関して、CD3複合体は、多分子T細胞受容体(TCR)複合体の一部として、成熟したヒトT細胞、胸腺細胞、及びナチュラルキラー細胞のサブセット上に発現されている、抗原を示す。T細胞共受容体はタンパク質複合体であり、4つの別個の鎖から構成されている。哺乳動物では、該複合体は、1本のCD3γ鎖、1本のCD3δ鎖、及び2本のCD3ε鎖を含有している。これらの鎖はT細胞受容体(TCR)及びζ鎖と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを発生する。TCR、ζ鎖、及びCD3分子は一緒にTCR複合体を含む。CD3は、TCRのシグナル伝達に関与している。Lin and Weiss, Journal of Cell Science 114, 243-244(2001)によって記載されているように、MHCにより提示された特異的抗原エピトープの結合によるTCR複合体の活性化により、Srcファミリーキナーゼによる免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化が起こり、さらなるキナーゼの動員がトリガーされ、これによりCa2+の放出をはじめとするT細胞の活性化が起こる。例えば固定された抗CD3抗体による、T細胞上のCD3のクラスター化により、T細胞受容体の関与に類似しているが、そのクローンに典型的な特異性とは独立している、T細胞の活性化がもたらされる。
抗原受容体シグナル伝達ドメインは好ましくは最低でも、抗原受容体に結合している抗原のシグナルを細胞内に伝達し、その結果、免疫細胞の活性化が起こることに関与する、例えばCD3複合体などの、天然の細胞性シグナル伝達複合体と相互作用するように作用する。シグナル伝達ドメインの実体は、それが天然のシグナル伝達複合体と相互作用する能力を有し、これにより抗原受容体への抗原の結合時に免疫細胞の活性化を誘発する点においてのみ制限される。
好ましくは、一方のペプチド鎖上のシグナル伝達ドメインは、例えばジスルフィド橋を通して、第二の鎖上のシグナル伝達ドメインと二量体を形成するだろう。好ましいシグナル伝達ドメインは、T細胞受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は免疫細胞Fc受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は該定常領域若しくは不変領域の一部を含み得る。好ましいシグナル伝達ドメインは、T細胞受容体のα鎖、β鎖、γ鎖、若しくはδ鎖の定常領域又はその一部、並びに、免疫細胞Fc受容体の定常ドメインのD2若しくはD3不変領域又はその一部を含み得る。好ましい実施態様では、第一のペプチド鎖は、T細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体β鎖の定常領域又はその一部を含むか、あるいは第一のペプチド鎖は、T細胞受容体β鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体α鎖の定常領域又はその一部を含む。別の実施態様では、第一のペプチド鎖は、T細胞受容体γ鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体δ鎖の定常領域又はその一部を含むか、あるいは第一のペプチド鎖は、T細胞受容体δ鎖の定常領域又はその一部を含み、第二のペプチド鎖は、T細胞受容体γ鎖の定常領域又はその一部を含む。場合により、シグナル伝達ドメインは、鎖間の追加のジスルフィド結合が作られるように改変され得、これによりより効果的な二量体が形成され、該二量体の安定性はより高くなる。
特定の作用機序に限定したいわけではないが、本発明の抗原受容体の2本のペプチド鎖は、免疫細胞の表面上に発現された場合に、少なくとも2本の鎖上の個々の免疫受容体シグナル伝達ドメイン間の相互作用(例えばジスルフィド結合)に因り二量体を形成し、並びに、生理的なT細胞受容体シグナル伝達に関与する内因性CD3複合体と共に複合体を形成すると考えられる。しかしながら、本発明はまた、TCR Cαドメイン及びCβドメインの代わりに、CD3ζ又は任意の他の免疫細胞シグナル伝達ドメイン(CD3、CD3サブユニットFcγR)への直接的な融合も含み得る。抗原と結合すると、シグナルが細胞内に伝達され、これにより免疫細胞の活性化及び抗原特異的免疫応答が生じると考えられる。さらに、鎖間抗原結合は、より安定な抗原−抗原受容体−内因性CD3シグナル伝達モジュールを提供し、そのより高い安定性により、次いで、鎖内抗原結合しかできない一価受容体及び二価受容体と比較して、より効果的な抗原特異的免疫応答の刺激を可能とすると考えられる。このより高い安定性はまた、ヒト起源の免疫受容体シグナル伝達ドメインのみを使用する選択肢を可能とすると考えられる(例えば、マウスなどの別の種に由来するアミノ酸配列を用いて、ヒト由来アミノ酸配列を最小限に置換するか又は全く置換しない)。したがって、抗原受容体それ自体に対するあらゆる起こり得る望ましくない免疫応答を回避することができる。
本発明による抗原受容体又はそのペプチド鎖は、抗原結合部位を形成しているドメイン及びCD3ζをはじめとする免疫受容体シグナル伝達ドメイン又は任意の他の免疫細胞シグナル伝達ドメインに加えて、1つ以上の共刺激ドメインも含み得る。共刺激ドメインは、標的化部分への抗原受容体の結合時に細胞傷害性T細胞などのT細胞の増殖及び生存を増強するように作用する。共刺激ドメインの実体は、それらが、抗原受容体に標的化部分が結合した時に細胞増殖及び生存を増強する能力を有する点においてのみ制限される。適切な共刺激ドメインとしては、CD28、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーメンバーであるCD137(4−1BB)、TNFRスーパーファミリー受容体メンバーであるCD134(OX40)、及び活性化T細胞上に発現されるCD28スーパーファミリー共刺激分子であるCD278(ICOS)が挙げられる。当業者は、これらの記載の共刺激ドメインの配列変異体を、本発明に有害な影響を及ぼすことなく使用することができ、ここでの変異体は、それらのモデル化の元となるドメインと同じ又は類似した活性を有することを理解するだろう。このような変異体は、それらが由来するドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列同一率を有するだろう。本発明のいくつかの実施態様では、抗原受容体構築物又はそのペプチド鎖は2つの共刺激ドメインを含む。特定の組合せは、4つの記載のドメインの全ての可能性あるバリエーションを含むが、具体例としてはCD28+CD137(4−1BB)及びCD28+CD134(OX40)が挙げられる。
本発明の抗原受容体又はそのペプチド鎖は、N末端からC末端の方向へと連結された、1つ以上の共刺激ドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインを含み得る。しかしながら、本発明の抗原受容体又はそのペプチド鎖はこの整列に限定されず、他の整列も許容可能であり、これは、免疫受容体シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激ドメインを含む。
抗原結合部位を形成しているドメインは、抗原に自由に結合しなければならないので、融合タンパク質内のこれらのドメインの配置は、一般的に、細胞の外側に領域の提示がなされるようなものであろうことが理解されるだろう。同じように、共刺激ドメイン及び免疫受容体シグナル伝達ドメインは、T細胞の活性及び増殖を誘発するように作用するので、融合タンパク質は一般的に、細胞の内側にこれらのドメインを提示するだろう。抗原受容体は、追加の要素、例えば、細胞表面に融合タンパク質を確実に適切に排出するためのシグナルペプチド、融合タンパク質が膜内在性タンパク質として確実に維持されるための膜貫通ドメイン、及び、抗原結合部位を形成しているドメインに対して可動性を付与しかつ抗原に対する強い結合を可能とするヒンジドメイン(又はスペーサー領域)を含み得る。
場合により、本発明の抗原受容体はさらにリンカーを含み得、該リンカーはアミノ酸配列間のスペーサーとして有用である任意のアミノ酸配列又は他の化合物であり得る。該リンカーは一般的に、可動性及びプロテアーゼに対する抵抗性を与えるように設計されている。例えば、該リンカーは、本発明の組合せ抗原受容体の第一のペプチド鎖上の第一のドメインと第二のドメインとの間、及び/又は、第二のペプチド鎖上の第一のドメインと第二のドメインとの間にあり得る。別の実施態様では、該リンカーは、本発明の直列型抗原受容体の第一のペプチド鎖上の少なくとも4つのドメインの中のいずれか2つの間、すなわち、第一のドメインと第二のドメインとの間、及び/又は第二のドメインと第三のドメインとの間、及び/又は第三のドメインと第四のドメインとの間にあり得る。場合により、該リンカーは、抗原結合部位を形成しているドメインと、免疫受容体シグナル伝達ドメインとの間に存在し得る。ドメインが抗原結合部位を形成することを可能とするか又は抗原との結合に干渉しない当技術分野において公知の任意の種類のリンカーが本発明に包含される。具体的な実施態様では、該リンカーは任意のアミノ酸配列であり得、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は少なくとも100アミノ酸残基長であり得る。アミノ酸リンカーは典型的には可動性のためにグリシンに富み、並びに溶解性のためにセリン及びトレオニンに富む。1つの実施態様では、該リンカーは、4つのグリシン残基に続いてセリン残基(Gly4Ser)が1回以上(1、2、3、4、5、6、7、8又は9)反復されている。特定の実施態様では、該リンカーは、抗体のヒンジ領域又はその断片であり得る。
本発明の抗原受容体はさらに、膜上に抗原受容体をアンカーしている別のドメイン、例えば古典的な膜貫通ドメインを含み得る。好ましくは、膜貫通ドメインは、シグナル伝達ドメインに組み込まれているか又はその一部である。
他の実施態様では、本発明の抗原受容体又は抗原受容体のペプチド鎖はさらに、他のドメイン、例えば抗原との結合に関与するか又は増強する追加のドメイン、膜結合型発現のための又は分泌のためのシグナル配列、改善された二量体化を与えるドメイン、及びすでに免疫受容体シグナル伝達ドメインの一部ではない場合には膜貫通ドメインを含み得る。特定の実施態様では、膜貫通ドメインは、膜を横断する疎水性αヘリックスであり得る。
好ましくは、シグナル配列又はシグナルペプチドは、分泌経路を通した十分な通過及び細胞表面上での十分な発現を可能とする配列又はペプチドであり、これにより、抗原受容体は、例えば、細胞外環境に存在する抗原に結合することができる。好ましくは、シグナル配列又はシグナルペプチドは切断可能であり、成熟ペプチド鎖から除去される。シグナル配列又はシグナルペプチドは好ましくは、ペプチド鎖が産生される細胞又は生物に関して選択される。
特定の実施態様では、本発明の組合せ抗原受容体のペプチド鎖は以下の構造を含み得る:NH2−シグナルペプチド−抗原との結合に関与する第一のドメイン−任意選択のリンカー−抗原との結合に関与する第二のドメイン−任意選択のリンカー−免疫受容体シグナル伝達ドメイン−COOH。
特定の実施態様では、本発明の直列型抗原受容体の第一のペプチド鎖は、以下の構造を含み得る:NH2−シグナルペプチド−抗原との結合に関与する第一のドメイン−任意選択のリンカー−抗原との結合に関与する第二のドメイン−任意選択のリンカー−抗原との結合に関与する第三のドメイン−任意選択のリンカー−抗原との結合に関与する第四のドメイン−任意選択のリンカー−免疫受容体シグナル伝達ドメイン−COOH。
本発明の直列型抗原受容体に関して、第一のペプチド鎖の抗原結合部位の形成に関与している第一及び第二(N末端からC末端に向かって)ドメインは本明細書において「N末端ドメイン」とも称され、第一のペプチド鎖の抗原結合部位の形成に関与している第三及び第四(N末端からC末端に向かって)ドメインは本明細書において「C末端ドメイン」とも称される。
本発明の例示的な抗原受容体としては、以下の表1に列挙された構造を有する第一及び第二のペプチド鎖によって形成されたものが挙げられるがこれらに限定されない(VHは、免疫グロブリンの重鎖の可変領域又はその一部であり;VLは免疫グロブリンの軽鎖の可変領域又はその一部であり;C1及びC2は、互いに二量体を形成するであろう免疫受容体シグナル伝達ドメイン、例えば、免疫細胞Fc受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又はT細胞受容体鎖の定常領域若しくは不変領域、又は該定常領域若しくは不変領域の一部である):
上記に定義されているように、抗原受容体は、第一のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(VH(1))、第一のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(VL(1))、第二のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変ドメイン(VH(2))、及び第二のエピトープに対する特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変ドメイン(VL(2))を含み、第一及び第二のエピトープは同じ又は異なり得、同じ又は異なる抗原上に位置し得る。1つの実施態様では、VH(1)は、VL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができ、VH(2)はVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができるが、VH(1)は、VL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することはできず、VH(2)はVL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することはできない。しかしながら、別の実施態様では、VH(1)は、VL(1)並びにVL(2)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができ、VH(2)は、VL(2)並びにVL(1)と相互作用してそれと共に抗原結合部位を形成することができる。後者の実施態様では、VH(1)及びVH(2)は同一であり得るか又は少なくとも同じ免疫グロブリンに由来し得、VL(1)及びVL(2)は同一であり得るか又は少なくとも同じ免疫グロブリンに由来し得る。
具体的な実施態様では、表1に列挙された第一及び第二のペプチド鎖のC1及びC2ドメインは、それぞれT細胞受容体α鎖及びβ鎖の定常領域又はその一部である。
好ましい実施態様では、一方のペプチド鎖上の2つのドメインが両方共に免疫グロブリン重鎖可変領域又はその一部であり、他方の鎖上の2つのドメインが両方共に免疫グロブリン軽鎖可変領域又はその一部である場合、両方のペプチド鎖上の第一のドメインと第二のドメインとの間にリンカーが存在する。該リンカーは、10〜25アミノ酸長、より好ましくは15アミノ酸長の任意のアミノ酸配列であり得る。具体的な実施態様では、該リンカーは、5−merアミノ酸配列(Gly4Ser)が3回繰り返されたものである。
本発明の特定の実施態様では、第一及び第二のペプチド鎖のアミノ酸配列、例えば抗原結合部位を形成する1つ以上のドメイン又は免疫受容体シグナル伝達ドメインを含むものは、哺乳動物起源であり、好ましくはマウス起源であり、より好ましくはヒト起源である。1つの実施態様では、アミノ酸配列はヒト起源であるが、ヒト配列内の1つ以上のアミノ酸を、マウス配列内の対応する位置に見られるアミノ酸を用いて置換することによってマウス化されている。このような置換は、より多くの二量体化、又はより高い安定性、又は抗原結合時に細胞内にシグナルを伝達するより高い能力を提供し得る。さらに別の実施態様では、アミノ酸配列はマウス起源であり、ヒト化されている。
本発明によると、抗原受容体は、上記のようなT細胞受容体の機能を置換し得、特に、細胞溶解活性などの反応性を、上記のようなT細胞などの細胞に付与し得る。しかしながら、上記のような抗原ペプチド−MHC複合体へのT細胞受容体の結合とは対照的に、抗原受容体は、特定の実施態様では、特に細胞表面上に発現されている場合に、抗原に結合し得る。
ドメイン又はリンカーのいずれかを含む、ペプチド鎖のアミノ酸配列は改変されていてもよい。例えば、当業者によって理解されるように、抗体及びT細胞受容体の可変領域の配列は、標的に結合する能力を失うことなく改変され得、結果として、抗原結合部位のアミノ酸配列は、標的に結合する能力を失うことなく同様に改変され得る。例えば、抗原結合部位を形成しているドメインのアミノ酸配列は、それが由来する抗体の可変領域に対して同一又は高度に相同であり得る。「高度に相同」によって、1〜5個、好ましくは1〜4個、例えば1〜3個又は1個若しくは2個の置換が行われ得ることが考えられる。1つの実施態様では、ペプチド鎖は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含み得る。別の実施態様では、ペプチド鎖は天然アミノ酸のみを含む。「非天然アミノ酸」という用語は、20種の天然アミノ酸種とは異なる構造を有するアミノ酸を指す。非天然アミノ酸は、天然アミノ酸と類似した構造を有するので、非天然アミノ酸は、所与の天然アミノ酸の誘導体又は類似体として分類され得る。
本発明はまた、本明細書に記載の抗原受容体及びペプチド鎖の誘導体も包含する。本発明によると、「誘導体」は、タンパク質及びペプチドの改変形である。このような改変は任意の化学的改変を含み、抗原受容体又はペプチド鎖に結合した任意の分子、例えば糖鎖、脂質、及び/又はタンパク質若しくはペプチドの単一又は複数の置換、欠失及び/又は付加を含む。1つの実施態様では、タンパク質又はペプチドの「誘導体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/遮断基の導入、タンパク質分解的切断又は抗原への結合から生じたそうした改変された類似体を含む。「誘導体」という用語はまた、該抗原受容体及びペプチド鎖の全ての機能的な化学的等価体にも拡大される。好ましくは、改変された抗原受容体又はそのペプチド鎖は、高まった結合能又は二量体化能及び/又は高まった免疫活性化能を有する。
本発明の抗原受容体システムと関連して使用される細胞は、好ましくはT細胞、特に細胞傷害性リンパ球であり、好ましくは細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。活性化時に、これらの各々の細胞傷害性リンパ球は、標的細胞の破壊をトリガーする。例えば、細胞傷害性T細胞は、以下のいずれか又は両方の手段によって標的細胞の破壊をトリガーする。まず、活性化されるとT細胞は、パーフォリン、グランザイム、及びグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリン及びグランザイムは、標的細胞に穴を作り、グランザイムは細胞に進入し、細胞質内で細胞のアポトーシス(プログラム化細胞死)を誘発するカスパーゼカスケードをトリガーする。第二に、アポトーシスが、T細胞と標的細胞の間のFas−Fasリガンド相互作用を介して誘発され得る。細胞傷害性Tリンパ球は好ましくは自己細胞であるが、異種細胞又は同種細胞も使用され得る。
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、好ましくは抗体又はB細胞受容体(BCR)などの抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち免疫グロブリンドメインによって特徴付けられる。該用語は、膜結合型免疫グロブリン、並びに、可溶性免疫グロブリンを包含する。膜結合型免疫グロブリンはまた、表面免疫グロブリン又は膜型免疫グロブリンと呼ばれ、これらは一般的にBCRの一部である。可溶性免疫グロブリンは一般的に抗体と呼ばれる。免疫グロブリンは一般的に、数本の鎖、典型的にはジスルフィド結合を介して連結された2本の同一な重鎖と2本の同一な軽鎖を含む。これらの鎖は主に、免疫グロブリンドメイン、例えばVL(軽鎖可変)ドメイン、CL(軽鎖定常)ドメイン、並びにCH(重鎖定常)ドメインCH1、CH2、CH3、及びCH4から構成される。哺乳動物の免疫グロブリン重鎖には5種類あり、すなわち、α、δ、ε、γ、及びμがあり、これはクラスの異なる抗体、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの原因となる。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜型免疫グロブリン又は表面免疫グロブリンの重鎖は、膜貫通ドメイン及びそれらのカルボキシ末端に短い細胞質ドメインを含む。哺乳動物では、2種類の軽鎖、すなわちλ及びκが存在する。免疫グロブリン鎖は、可変領域及び定常領域を含む。定常領域は本質的に、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ間で保存され、可変部は高度に多様化し、抗原の認識の原因となる。
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)を含む、糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びキメラ抗体を含む。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略称される)及び重鎖定常領域から構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略称される)及び軽鎖定常領域から構成される。VH領域及びVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域の介在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細分され得る。各々のVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順で並んだ、3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(C1q)をはじめとする、宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、単一の結合特異性及び親和性を示す。1つの実施態様では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された非ヒト動物、例えばマウスから得られたB細胞を含む、ハイブリドーマによって産生される。
本明細書において使用する「組換え抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離された全ての抗体、例えば、(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるか又は導入染色体を有する動物(例えばマウス)から単離された抗体、又はそれから調製されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えられた組合せ抗体ライブライリーから単離された抗体、及び(d)免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体を含む。
本明細書において使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種に由来する免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指し、該分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合された完全可変ドメイン、又は可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含み得る。抗原結合部位は野生型であっても、又は1つ以上のアミノ酸置換によって改変、例えばヒト免疫グロブリンにより似るように改変されていてもよい。いくつかの形態のヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存している(例えば、マウス抗体に由来する6つ全てのCDRを含有しているヒト化マウス抗体)。他の形態は、元来の抗体に対して変更されている1つ以上のCDRを有する。
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖の各々のアミノ酸配列のある部分が、特定の種に由来するか又は特定のクラスに属する抗体内の対応する配列に対して相同であるが、鎖の残りのセグメントは、別のものの対応する配列に対して相同である、そのような抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、ある種の哺乳動物に由来する抗体の可変領域を模倣するが、定常部分は、別の種に由来する抗体の配列に対して相同である。このようなキメラ形の1つの明確な利点は、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組合せて、非ヒト宿主生物由来の容易に入手可能なB細胞又はハイブリドーマを使用して、現在公知である入手源から、可変領域を簡便に誘導することができることである。可変領域は調製が容易であるという利点を有し、特異性は入手源によって影響されない一方、定常領域がヒトであることは、非ヒト入手源由来の定常領域よりも、抗体が注射された場合にヒト被験者から免疫応答をあまり惹起しないであろう。しかしながら、定義は、この特定の例に限定されない。
抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びヒトを含むがこれらに限定されない、様々な種に由来し得る。
本明細書に記載の抗体としては、IgA抗体、例えばIgA1抗体又はIgA2抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、IgE抗体、IgM抗体、及びIgD抗体が挙げられる。様々な実施態様では、該抗体はIgG1抗体、より特定するとIgG1κアイソタイプ抗体又はIgG1λアイソタイプ抗体(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)、又はIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
本明細書に記載の抗原受容体は、1つ以上の抗体の抗原結合部分を含み得る。抗体の「抗原結合部分」(又は単に「結合部分」)若しくは抗体の「抗原結合断片」(又は単に「結合断片」)という用語又は類似の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持した抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCHドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわち、ジスルフィド橋によってヒンジ領域において連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメイン及びCHドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)場合により合成リンカーによって接続されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、すなわちVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらを、組換え法を使用して、合成リンカーによって接続することができ、これにより、VL領域及びVH領域が対を形成することにより一価分子を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242: 423-426;及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883参照)。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることを意図する。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合された結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質はさらに、米国特許第2003/0118592号及び米国特許第2003/0133939号に開示されている。これらの抗体断片は、当業者には公知である慣用的な技術を使用して得られ、該断片を、インタクト抗体と同じような方法で有用性についてスクリーニングする。
一本鎖可変断片(scFv)は、リンカーペプチドを用いて接続された免疫グロブリンの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。該リンカーは、VHのN末端とVLのC末端を接続し得、又はその逆でもよい。二価(divalent)(又は二価(bivalent))一本鎖可変断片(ジ−scFv、ビ−scFv)は、2つのscFvを連結することによって工学操作され得る。これは、2つのVH領域及び2つのVL領域を用いて単一ペプチド鎖を作製することにより行なわれ得、これにより、直列型scFvが得られる。
「結合ドメイン」又は単に「ドメイン」という用語は、本発明に関連して、場合により別のドメインと相互作用した場合に、所与の標的構造/抗原/エピトープと結合/相互作用する、例えば抗体の構造を特徴付ける。したがって、本発明によるこれらのドメインは「抗原結合部位」を示す。
抗体及び抗体の誘導体は、抗体断片などの結合ドメインを提供するのに、特にVL領域及びVH領域を提供するのに有用である。
抗原受容体内に存在し得る抗原に対する結合ドメインは、抗原に結合(標的化)する能力、すなわち、抗原内に存在するエピトープ、好ましくは抗原の細胞外ドメイン内に位置するエピトープに結合(標的化)する能力を有する。好ましくは、抗原に対する結合ドメインは、抗原に対して特異的である。好ましくは、抗原に対する結合ドメインは、細胞表面上に発現された抗原に結合する。特に好ましい実施態様では、抗原に対する結合ドメインは、生細胞の表面上に存在する抗原の天然エピトープに結合する。
本発明の目的のために本明細書に記載の全ての抗体及び抗体の誘導体、例えば抗体断片が、「抗体」という用語に包含される。
抗体は、様々な技術、例えば慣用的なモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術によって生成され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則的に、モノクローナル抗体を生成するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスによる形質転換若しくは癌化形質転換、又は抗体遺伝子ライブラリーを使用したファージディスプレイ技術も使用され得る。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常に良く確立された手順である。免疫化プロトコール及び融合のために免疫化された脾臓細胞を単離する技術は当技術分野において公知である。融合対(例えばマウス骨髄腫細胞)及び融合手順も公知である。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための他の好ましい動物系は、ラット及びウサギ系である(例えば、Spieker-Polet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:9348 (1995)に記載、Rossi et al., Am. J. Clin. Pathol. 124: 295 (2005)も参照)。
抗体を生成するために、マウスを、抗原配列、すなわち、抗体が指向される配列に由来する担体にコンジュゲートさせたペプチド、組換え発現された抗原若しくはその断片の濃縮された調製物、及び/又は記載のような抗原を発現している細胞を用いて免疫化することができる。あるいは、マウスを、抗原又はその断片をコードしているDNAを用いて免疫化することができる。精製又は濃縮された抗原の調製物を使用した免疫化により抗体が生じない場合には、マウスを、抗原を発現している細胞、例えば細胞株を用いて免疫化することにより免疫応答を促進することもできる。
免疫応答を、免疫化プロトコールの経過中にモニタリングすることができ、血漿試料及び血清試料は尾静脈又は後眼窩出血によって得られる。十分な力価の免疫グロブリンを有するマウスを融合のために使用することができる。マウスを、屠殺して脾臓を除去する3日前に抗原を発現している細胞を用いて腹腔内で又は静脈内でブーストして、特異的抗体を分泌しているハイブリドーマの割合を増加させることができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウス由来の脾臓細胞及びリンパ節細胞を単離して適切な不死化細胞株、例えばマウス骨髄腫細胞株に融合させることができる。次いで、得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。次いで、個々のウェルを、抗体を分泌するハイブリドーマについてELISAによってスクリーニングすることができる。抗原発現細胞を使用した免疫蛍光法及びFACS分析によって、抗原に対する特異性を有する抗体を同定することができる。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再度スクリーニングし、モノクローナル抗体について依然として陽性である場合、限界希釈法によってサブクローニングすることができる。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養することにより、特徴付けのために抗体を組織培養培地中で生成することができる。
抗体及び他の結合物質が抗原に結合する能力は、標準的な結合アッセイを使用して決定することができる(例えばELISA、ウェスタンブロット、免疫蛍光法及びフローサイトメトリー分析)。
本発明による「結合」という用語は好ましくは特異的結合に関する。
本発明によると、抗原受容体などの物質は、それが、予め決定された標的に対する有意な親和性を有し標準的なアッセイで前記の予め決定された標的に結合するならば、予め決定された標的に結合(標的化)することができる。「親和性」又は「結合親和性」はしばしば、平衡解離定数(KD)によって測定される。好ましくは、「有意な親和性」という用語は、10−5M又はそれ以下、10−6M又はそれ以下、10−7M又はそれ以下、10−8M又はそれ以下、10−9M又はそれ以下、10−10M又はそれ以下、10−11M又はそれ以下、あるいは10−12M又はそれ以下の解離定数(KD)で予め決定された標的に結合することを指す。
物質は、それが標的に対して有意な親和性を有さず、標準的なアッセイで該標的に有意に結合しないならば、標的に結合(標的化)することは(実質的に)できない、特に検出可能な程度に結合しない。好ましくは、該物質は、2以下、好ましくは10、より好ましくは20、特に50又は100μg/ml又はそれ以上の濃度で存在するならば、該標的に検出可能な程度に結合しない。好ましくは、物質が結合することのできる予め決定された標的への結合についてのKDよりも少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍高いKDで該物質が該標的に結合するならば、該物質は標的に対する有意な親和性を全く有さない。例えば、物質が結合することのできる標的への該物質の結合についてのKDが10−7Mであるならば、該物質が有意な親和性を全く有さない標的への結合についてのKDは、少なくとも10−6M、10−5M、10−4M、10−3M、10−2M、又は10−1Mであろう。
物質は、予め決定された標的に結合することはできるが、他の標的に結合することは(実質的に)できず、すなわち、他の標的に対する有意な親和性は全く有さず、標準的なアッセイにおいて他の標的に有意に結合しないならば、該物質は前記の予め決定された標的に対して特異的である。好ましくは、このような他の標的に対する親和性及びそれへの結合が、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン又はヒト血清アルブミン(HSA)などの予め決定された標的に関連性のないタンパク質に対する親和性又はそれへの結合を有意に超えないならば、該物質は予め決定された標的に対して特異的である。好ましくは、物質が、特異的ではない標的への結合についてのKDよりも少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍低いKDで該物質が該標的に結合するならば、該物質は予め決定された標的に対して特異的である。例えば、物質が特異的である標的への該物質の結合についてのKDが10−7Mであるならば、特異的ではない標的への結合についてのKDは、少なくとも10−6M、10−5M、10−4M、10−3M、10−2M、又は10−1Mであろう。
標的への物質の結合は、任意の適切な方法を使用して実験的に決定することができる;例えば、Berzofsky et al., "Antibody-Antigen Interactions" In Fundamental Immunology, Paul, W. E., Ed., Raven Press New York, N Y (1984), Kuby, Janis Immunology, W. H. Freeman and Company New York, N Y(1992)及び本明細書に記載の方法を参照されたい。親和性は、慣用的な技術を使用して、例えば平衡透析によって;製造業者によって概略が示された一般的な手順を使用してビアコア2000機器を使用することによって;放射標識された標的抗原を使用したラジオイムノアッセイによって;又は当業者には公知である別の方法によって容易に決定され得る。親和性データを、例えば、Scatchard et al., Ann N.Y. Acad. ScL, 51:660(1949)の方法によって分析し得る。測定された特定の抗体−抗原相互作用の親和性は、異なる条件下で、例えば異なる塩濃度、異なるpHで測定されれば異なり得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメーター、例えばKD、IC50などの測定は好ましくは、抗体及び抗原の標準溶液、並びに標準緩衝液を用いて行なわれる。
本発明は、インビトロ又はインビボにおけるT細胞などの細胞への抗原受容体をコードしている核酸の導入、すなわちトランスフェクションに関与し得る。
本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸の導入又は細胞による核酸の取り込みを含み、ここでの細胞は、被験者、例えば患者に存在し得る。したがって、本発明によると、本明細書に記載の核酸のトランスフェクション用の細胞はインビトロ又はインビボにおいて存在し得、例えば、該細胞は、患者の器官、組織及び/又は生命体の一部を形成していてもよい。本発明によると、トランスフェクションは、一過性又は安定であり得る。いくつかのトランスフェクションの適用では、トランスフェクトされた遺伝子材料が一過性に発現されるだけで十分である。トランスフェクションプロセスにおいて導入された核酸は通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂を通して希釈されるか又は分解されるだろう。核酸のエピソームでの増幅を可能とする細胞は、希釈率を大きく減少させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞及びその娘細胞のゲノム内に留まることが望ましい場合、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。RNAを細胞内にトランスフェクトすることにより、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
本発明によると、細胞に核酸を導入、すなわち移入又はトランスフェクトするのに有用な任意の技術を使用し得る。好ましくは、RNAなどの核酸を、標準的な技術によって細胞にトランスフェクトする。このような技術としては、電気穿孔法、リポフェクション、及びマイクロインジェクションが挙げられる。本発明の1つの特に好ましい実施態様では、RNAは電気穿孔法によって細胞内に導入される。電気穿孔法又は電気透過化処理は、外部からかけられた電場によって引き起こされた細胞形質膜の電気伝導率及び透過性の有意な増加に関連する。それは、いくつかの物質を細胞内に導入する方法として分子生物学において通常使用されている。本発明によると、タンパク質又はペプチドをコードしている核酸の細胞への導入により、該タンパク質又はペプチドの発現が起こることが好ましい。
抗原受容体構築物をT細胞に導入するために、ウイルスに基づかないDNAトランスフェクション、トランスポゾンに基づいたシステム、及びウイルスに基づいたシステムをはじめとする様々な方法を使用し得る。ウイルスに基づかないDNAトランスフェクションは、挿入突然変異誘発のリスクが低い。トランスポゾンに基づいたシステムは、組み込まれる要素を含有しないプラスミドよりも効率的に導入遺伝子を組み込むことができる。ウイルスに基づいたシステムは、γ−レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターの使用を含む。γ−レトロウイルスは比較的作製が容易であり、T細胞を効率的かつ永久的に形質導入し、かつ初代ヒトT細胞への組込みの観点から安全であることが事前に証明されている。レンチウイルスベクターもT細胞を効率的かつ永久的に形質導入するが製造費用がより高い。それらもまた、レトロウイルスに基づいたシステムよりも安全性が高い可能性がある。
インビボにおける細胞のトランスフェクションのために、抗原受容体をコードしている核酸を含む医薬組成物を使用し得る。T細胞などの特定の細胞に核酸を標的化させる送達ビヒクルを患者に投与し、その結果、インビボでトランスフェクションが起こり得る。
本発明によると、抗原受容体をコードしている核酸を裸形又は担体内で投与することが好ましい。本発明における使用のために考えられた脂質担体などの担体は、RNAなどの核酸が、例えば該核酸と複合体を形成することによって、又は該核酸が封入若しくはカプセル化された小胞を形成することによって、会合することができる任意の物質又はビヒクルを含む。これにより、裸核酸と比較して核酸の安定性が増加し得る。特に、血中の核酸の安定性が増加し得る。例えば、規定の粒径を有するナノ粒子状RNA製剤、例えばRNAとリポソームからのリポプレックス、例えばDOTMA及びDOPE又はDOTMA及びコレステロールを含むリポプレックスを使用することができる。
本明細書において使用する「ナノ粒子」という用語は、粒子を、特に核酸の全身投与、特に非経口投与に適したものとする、ある直径を有する、典型的には1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する、任意の粒子を指す。いくつかの実施態様では、ナノ粒子は、600nm未満の直径を有する。いくつかの実施態様では、ナノ粒子は400nm未満の直径を有する。
本明細書において使用する「ナノ粒子状製剤」という用語又は類似の用語は、少なくとも1つのナノ粒子を含有している任意の物質を指す。いくつかの実施態様では、ナノ粒子状組成物は、均一なナノ粒子の集合である。いくつかの実施態様では、ナノ粒子状組成物は、分散液又はエマルションである。一般的に、分散液又はエマルションは、少なくとも2つの非混和性材料が配合された場合に形成される。
「リポプレックス」又は「核酸リポプレックス」、特に「RNAリポプレックス」という用語は、脂質及び核酸、特にRNAの複合体を指す。リポプレックスは、陽イオン性リポソーム(これは中性の「ヘルパー」脂質も含むことが多い)が核酸と混合された場合に自発的に形成される。
陽イオン性脂質、陽イオン性ポリマー、及び正電荷を有する他の物質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し得る。これらの陽イオン性分子を使用して、核酸と複合体を形成することができ、これにより、例えばいわゆるリポプレックス又はポリプレックスをそれぞれ形成することができ、これらの複合体は、細胞に核酸を送達することが示されている。
本発明において使用するためのナノ粒子状核酸調製物は、様々なプロトコールによって、核酸と複合体を形成する様々な化合物から得ることができる。脂質、ポリマー、オリゴマー、又は両親媒性物質は典型的な複合体化剤である。1つの実施態様では、複合体化化合物は、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ−L−リジン、ポリ−L−アルギニン、又はヒストンからなる群より選択される少なくとも1つの物質を含む。
本発明によると、プロタミンは、陽イオン性担体剤として有用である。「プロタミン」という用語は、アルギニンに富み、様々な動物(魚など)の精子細胞における体細胞ヒストンの代わりに特にDNAと会合していることが認められる、比較的分子量の低い様々な強塩基性のタンパク質のいずれかを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性であり、水溶性であり、熱により凝固せず、かつ加水分解により主にアルギニンを生じる、魚精子に見られるタンパク質を指す。精製形では、それらは、長時間作用型のインシュリン製剤において及びヘパリンの抗凝固作用を中和するために使用される。
本発明によると、本明細書において使用する「プロタミン」という用語は、天然源又は生物学的入手源から得られた又はそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列(その断片を含む)及び該アミノ酸配列又はその断片の多量体形を含むことを意味する。さらに、該用語は、人工的であり特定の目的のために特別に設計され、天然源又は生物学的入手源から単離することができない、(合成された)ポリペプチドも包含する。
本発明に従って使用されるプロタミンは、硫化プロタミン又はプロタミン塩酸塩であり得る。好ましい実施態様では、本明細書に記載のナノ粒子の生成のために使用されるプロタミン源は、等張塩溶液中に10mg/ml(5000ヘパリン中和単位/ml)超でプロタミンを含有しているプロタミン5000である。
リポソームは、リン脂質などの1つ以上の二重層の小胞形成脂質をしばしば有する微視的な脂質小胞であり、かつ薬物をカプセル化することができる。様々な種類のリポソームを本発明の脈絡において使用し得、これには、多重層小胞(MLV)、小型単層小胞(SUV)、大型単層小胞(LUV)、立体的に安定化したリポソーム(SSL)、多小胞性小胞(MV)、及び大型多小胞性小胞(LMV)、並びに当技術分野において公知である他の二重層形が挙げられるがこれらに限定されない。リポソームのサイズ及びラメラリティ(lamellarity)は調製法に依存し、使用する小胞の種類の選択は好ましい投与形態に依存するだろう。ラメラ相、六方晶相及び逆六方晶相、立方体相、ミセル、単層から構成される逆ミセルをはじめとする、脂質が水性媒体中に存在し得るいくつかの他の形態の超分子構成が存在する。これらの相はまた、DNA又はRNAと組合せて得られ得、RNA及びDNAとの相互作用は実質的に相の状態に影響を及ぼし得る。記載の相は、本発明のナノ粒子状核酸製剤に存在し得る。
核酸とリポソームからの核酸リポプレックスの形成のために、リポソームを形成する任意の適切な方法を、それが想定した核酸リポプレックスを提供する限り使用することができる。リポソームは、逆蒸発法(REV)、エタノール注射法、脱水−再水和法(DRV)、超音波処理、又は他の適切な方法などの標準的な方法を使用して形成され得る。
リポソーム形成後、リポソームをサイズ分類し、実質的に均一なサイズ範囲を有するリポソーム個体群を得ることができる。
二重層を形成している脂質は典型的には、2本の炭化水素鎖、特にアシル鎖、及び極性又は非極性のいずれかの頭部基を有する。二重層形成脂質は、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド酸、ホスファチジルイノシトール、及びスフィンゴミエリンをはじめとする、天然脂質又は合成起源の脂質から構成され、ここでの2本の炭化水素鎖は典型的には約14〜22炭素原子長であり、様々な不飽和度を有する。本発明の組成物に使用するための他の適切な脂質としては、リポソームにも使用され得る、糖脂質及びステロール、例えばコレステロール及びその様々な類似体が挙げられる。
陽イオン性脂質は典型的には、ステロール鎖、アシル鎖、又はジアシル鎖などの親油性部分を有し、全体としては正味の正電荷を有する。脂質の頭部基は典型的には、正電荷を有する。陽イオン性脂質は好ましくは、1〜10価の正電荷、より好ましくは1〜3価の正電荷、より好ましくは1価の正電荷を有する。陽イオン性脂質の例としては、1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP);1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DODAP);1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン;1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−1,3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、及び2,3−ジオレオイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいのはDOTMA、DOTAP、DODAC、及びDOSPAである。最も好ましいのはDOTMAである。
さらに、本明細書に記載のナノ粒子は好ましくはさらに、構造的安定性などの観点から中性脂質を含む。中性脂質は、核酸−脂質複合体の送達効率の観点から適切に選択され得る。中性脂質の例としては、1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、ステロール、及びセレブロシドが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいのはDOPE及び/又はDOPCである。最も好ましいのはDOPEである。陽イオン性リポソームが陽イオン性脂質及び中性脂質の両方を含む場合、陽イオン性脂質と中性脂質のモル比は、リポソームの安定性などの観点から適切に決定され得る。
1つの実施態様によると、本明細書に記載のナノ粒子は、リン脂質を含み得る。リン脂質は、グリセロリン脂質であり得る。グリセロリン脂質の例としては、以下の3種類の脂質が挙げられるがこれらに限定されない:(i)例えばホスファチジルコリン(PC)、卵黄ホスファチジルコリン、天然形、部分的硬化形、又は完全硬化形の大豆由来PC、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、スフィンゴミエリン(SM)を含む、両性イオン性リン脂質;(ii)例えばホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジパルミトイルPG、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);メトキシ−ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(mPEG−DSPE)の場合のようにコンジュゲートにより両性イオン性リン脂質が負電荷となる合成誘導体を含む負に荷電したリン脂質;及び(iii)例えばホスファチジルコリン又はスフィンゴミエリン(そのホスホモノエステルはO−メチル化されて陽イオン性脂質を形成していた)を含む陽イオン性リン脂質。
脂質担体への核酸の会合は、例えば、担体が核酸を物理的に捕捉するように、担体の中間空間を核酸が満たすことによって、又は共有結合、イオン結合若しくは水素結合によって、又は非特異的結合による吸着を用いて行なわれ得る。会合の様式が何であれ、核酸はその治療特性、すなわちコードしている特性を保持しなければならない。
本発明によると、1つの実施態様では抗原受容体をコードしている核酸は、RNA、好ましくはmRNAである。RNAは好ましくはインビトロでの転写によって得られる。
本明細書において使用する「核酸」という用語は、DNA及びRNA、例えばゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え産生された分子及び化学合成された分子を含むことを意図する。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。RNAは、インビトロで転写されたRNA(IVT RNA)又は合成RNAを含む。本発明によると、核酸は好ましくは単離された核酸である。
核酸はベクターに含まれ得る。本明細書において使用する「ベクター」という用語は、当業者には公知である任意のベクター、例えばプラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばλファージ、ウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクター又はバキュロウイルスベクター、又は人工染色体ベクター、例えば細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、又はP1人工染色体(PAC)を含む。該ベクターは、発現ベクター並びにクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミドベクター並びにウイルスベクターを含み、一般的に所望のコード配列、及び特定の宿主生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫、又は哺乳動物)又はインビトロでの発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含有している。クローニングベクターは一般的に、特定の所望のDNA断片を工学操作及び増幅させるために使用され、これは所望のDNA断片の発現に必要とされる機能的な配列を欠失していてもよい。
本発明の脈絡において、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、かつ好ましくは全体的に又は実質的にリボヌクレオチド残基から構成される、分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。該用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生されたRNA、並びに、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は変更によって天然RNAとは異なる改変されたRNAを含む。このような変更は、非ヌクレオチド材料の、例えばRNA末端(群)への付加、又は内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドへの付加を含み得る。RNA分子内のヌクレオチドはまた、標準的ではないヌクレオチド、例えば非天然ヌクレオチド又は化学合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたRNAは、類似体、又は天然RNAの類似体と称され得る。
本発明によると、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含みかつ好ましくはそれに関し、鋳型としてDNAを使用して産生され得、かつペプチド又はタンパク質をコードしている「転写物」に関する。mRNAは典型的には、5’非翻訳領域(5’−UTR)、タンパク質又はペプチドをコードしている領域、及び3’非翻訳領域(3’−UTR)を含む。mRNAは細胞内及びインビトロにおいて短い半減期を有する。好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を使用してインビトロでの転写によって産生される。本発明の1つの実施態様では、RNAは、インビトロでの転写又は化学合成によって得られる。インビトロでの転写法は当業者には公知である。例えば、様々なインビトロにおける転写キットが市販されている。
本発明の1つの実施態様では、RNAは自己複製RNA、例えば一本鎖自己複製RNAである。1つの実施態様では、自己複製RNAは、プラス鎖の一本鎖RNAである。1つの実施態様では、自己複製RNAは、ウイルスRNA、又はウイルスRNAに由来するRNAである。1つの実施態様では、自己複製RNAはアルファウイルスゲノムRNAであるか、又はアルファウイルスゲノムRNAに由来する。1つの実施態様では、自己複製RNAはウイルス遺伝子発現ベクターである。1つの実施態様では、ウイルスはセムリキ森林ウイルスである。1つの実施態様では、自己複製RNAは1つ以上の導入遺伝子を含有し、該導入遺伝子の少なくとも1つは本明細書に記載の物質をコードしている。1つの実施態様では、RNAがウイルスRNAであるか又はウイルスRNAに由来する場合、導入遺伝子は構造タンパク質をコードしているウイルス配列などのウイルス配列を部分的に又は完全に置き換え得る。1つの実施態様では、自己複製RNAはインビトロで転写されたRNAである。
本発明に従って使用されるRNAの発現及び/又は安定性を高めるために、それは、好ましくは発現されたペプチド又はタンパク質の配列を変更することなく改変されていてもよい。
本発明に従って使用されるようなRNAの脈絡における「改変」という用語は、RNAには天然に存在しないRNAの任意の改変を含む。
本発明の1つの実施態様では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5’−三リン酸を有さない。このようなキャップされていない5’−三リン酸の除去は、ホスファターゼを用いてRNAを処理することによって成し遂げられ得る。
本発明によるRNAは、その安定性を高めるため及び/又は細胞毒性を低下させるために、改変された天然又は合成のリボヌクレオチドを有していてもよい。例えば、1つの実施態様では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、5−メチルシチジンが、部分的に又は完全に、好ましくは完全にシチジンに置換されている。代替的に又は追加的に、1つの実施態様では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、プソイドウリジンが部分的に又は完全に、好ましくは完全にウリジンに置換されている。
1つの実施態様では、「改変」という用語は、RNAへの5’−キャップ又は5’−キャップ類似体の付与に関する。「5’−キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端において見られるキャップ構造を指し、一般的に、通常ではない5’−5’三リン酸結合を介してmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。1つの実施態様では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「簡便な5’−キャップ」という用語は、天然のRNA5’−キャップ、好ましくは7−メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明の脈絡において、「5’−キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に似ており、好ましくはインビボにおいて及び/又は細胞内においてそこに付着するとRNAを安定化させる能力を有するように改変されている5’−キャップ類似体も含む。
RNAへの5'−キャップ又は5’−キャップ類似体の付与は、該5’−キャップ又は5’−キャップ類似体の存在下におけるインビトロでのDNA鋳型の転写によって達成され得、該5’−キャップは、生成されたRNA鎖に転写と同時に組み込まれるか、又はRNAを、例えばインビトロでの転写によって生成し得、5’−キャップを、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに付着させ得る。
RNAはさらなる改変を含み得る。例えば、本発明において使用されるRNAのさらなる改変は、天然ポリ(A)テイルの伸長若しくは切断短縮、又は5’−若しくは3’−非翻訳領域(UTR)の変更、例えば該RNAのコード領域に関連していないUTRの導入、例えば、グロビン遺伝子、例えばα2−グロビン、α1−グロビン、β−グロビン、好ましくはβ−グロビン、より好ましくはヒトβ−グロビンに由来する3’−UTRの1つ以上、好ましくは2つのコピーの挿入であり得る。
それ故、本発明に従って使用されるRNAの安定性及び/又は発現を高めるために、それは、好ましくは10〜500、より好ましくは30〜300、さらにより好ましくは65〜200、特に100〜150の長さのアデノシン残基を有するポリA配列と共に存在するように改変され得る。特に好ましい実施態様では、ポリA配列は、約120のアデノシン残基の長さを有する。さらに、RNA分子の3’−非翻訳領域への2つ以上の3’−非翻訳領域(UTR)の組み込みにより、翻訳効率は増強され得る。1つの特定の実施態様では、3’−UTRは、ヒトβ−グロビン遺伝子に由来する。
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を消失するのに必要とされる期間に関する。本発明の脈絡において、RNAの半減期は、該RNAの安定性の指標となる。RNAの半減期は、RNAの「発現期間」に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは、より長い期間発現されることが予想され得る。
本発明の脈絡において、「転写」という用語は、DNA配列内の遺伝子コードがRNAに転写されるプロセスに関する。続いて、RNAはタンパク質へと翻訳され得る。本発明によると、「転写」という用語は「インビトロでの転写」を含み、ここでの「インビトロでの転写」という用語は、RNA、特にmRNAが無細胞系において、好ましくは適切な細胞抽出物を使用してインビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターが転写物の生成のために適用される。これらのクローニングベクターは一般的に転写ベクターとして設計され、本発明によると「ベクター」という用語に包含される。
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNA鎖がペプチド又はタンパク質を作製するようにアミノ酸配列の構築を指令する、細胞のリボソーム内のプロセスに関する。
核酸は、本発明によると、単独で又は他の核酸と組合せて存在し得、該核酸は相同であっても異種であってもよい。好ましい実施態様では、核酸は、該核酸に関して相同であっても異種であってもよい発現制御配列に機能的に連結されている。「相同」という用語はまた、核酸が機能的に天然に連結されていることを意味し、「異種」という用語は核酸が機能的に天然に連結されていないことを意味する。
核酸及び発現制御配列は、それらが、該核酸の発現又は転写が該発現制御配列の制御下又は影響下にあるように互いに共有結合されている場合、互いに「機能的に」連結されている。核酸を機能的タンパク質に翻訳しようとする場合、発現制御配列がコード配列に機能的に連結されることで、該発現制御配列の誘導により、コード配列内にフレームシフトを引き起こすことなく、又は該コード配列が、所望のタンパク質又はペプチドへと翻訳されることができないことなく該核酸の転写が起こる。
「発現制御配列(sequence)」又は「発現制御要素(element)」という用語は、本発明によると、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、及び遺伝子の転写又はmRNAの翻訳を調節する他の制御要素を含む。本発明の特定の実施態様では、発現制御配列を調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、種又は細胞型に応じて変化し得るが、一般的に、転写及び翻訳の開始にそれぞれ関与する5’−非転写配列並びに5’−及び3’−非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などを含む。より具体的には、5’−非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。発現制御配列はまた、エンハンサー配列又は上流アクチベーター配列も含み得る。
「発現」という用語は、本発明に従ってその最も一般的な意味で使用され、これは例えば転写及び/又は翻訳による、RNA及び/又はペプチド若しくはタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は特にペプチド又はタンパク質の産生に関する。それはまた、核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性又は安定であり得る。本発明によると、発現という用語はまた、「異常発現」又は「普通ではない発現」も含む。
「異常発現」又は「普通ではない発現」は、本発明によると、発現が、基準(例えば、特定のタンパク質、例えば腫瘍抗原の異常な発現又は普通ではない発現を伴う疾患を有さない被験者における状態)と比較して変更されている、好ましくは増加していることを意味する。発現の上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、又は少なくとも100%又はそれ以上の上昇を指す。1つの実施態様では、発現は疾患を有する組織にのみ見られ、一方、健康組織における発現は抑制されている。
「特異的に発現されている」という用語は、タンパク質が本質的に特定の組織又は器官にのみ発現されていることを意味する。例えば、胃粘膜において特異的に発現される腫瘍抗原は、該タンパク質が主に胃粘膜において発現され、他の組織には発現されていないか又は他の組織若しくは器官型においては有意な程度には発現されていないことを意味する。したがって、胃粘膜細胞に専ら発現され、任意の他の組織、例えば精巣には有意により低い程度で発現されているタンパク質は、胃粘膜細胞に特異的に発現されている。いくつかの実施態様では、腫瘍抗原はまた、通常の条件下では、1つを超える組織型又は器官、例えば2又は3つの組織型又は器官において特異的に発現されていてもよいが、好ましくは3つを超える異なる組織又は器官型には発現されていない。この場合、腫瘍抗原は、よって、これらの器官に特異的に発現されている。例えば、腫瘍抗原が通常の条件下で好ましくは肺及び胃においてほぼ等しい程度で発現されている場合、該腫瘍抗原は肺及び胃において特異的に発現されている。
本発明によると、「核酸をコードしている」という用語は、核酸が適切な環境に、好ましくは細胞内に存在する場合、それがコードするタンパク質又はペプチドを生成するように発現させることができることを意味する。
本発明による「ペプチド」という用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、これは、ペプチド結合によって共有結合で接続された2個又はそれ以上、好ましくは3個又はそれ以上、好ましくは4個又はそれ以上、好ましくは6個又はそれ以上、好ましくは8個又はそれ以上、好ましくは9個又はそれ以上、好ましくは10個又はそれ以上、好ましくは13個又はそれ以上、好ましくは16個又はそれ以上、好ましくは21個又はそれ以上、及び最大で好ましくは8個、10個、20個、30個、40個、又は50個、特に100個のアミノ酸を含む、物質を指す。「タンパク質」という用語は、大型ペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般的に、「ペプチド」、「ペプチド鎖」及び「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書において互換的に使用される。
上記のように、本明細書に記載のペプチド鎖及び抗原受容体のアミノ酸配列は、該アミノ酸配列の変異体が得られるように改変されていてもよい。したがって、本発明は、本明細書に記載のペプチド及びタンパク質配列の変異体を含み、該配列に対して機能的に等価である配列、例えば、該配列と同一又は類似した特性を示すアミノ酸配列を生じる、天然アミノ酸配列の変異体を含む。重要な特性は、抗原受容体のその標的への結合、又はT細胞などの細胞への抗原結合シグナルの伝達を保持することである。1つの実施態様では、変異分子又は配列は、その親分子又は配列に対して免疫学的に等価である。
本発明による「変異体」という用語は特に、突然変異体、スプライス変異体、構造変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体、及び種相同体、特に天然に存在するものを指す。対立遺伝子変異体は、遺伝子(その重要性は不明であることが多い)の正常な配列の変更に関する。完全な遺伝子シークエンスはしばしば、所与の遺伝子についての数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種相同体は、所与の核酸又はアミノ酸配列とは異なる種を起源とする核酸又はアミノ酸配列である。「変異体」という用語は、あらゆる翻訳後修飾された変異体及び構造変異体を包含する。
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価な分子、例えば免疫学的に等価なアミノ酸配列が、同じ若しくは本質的に同じ免疫学的特性を示す及び/又は同じ若しくは本質的に同じ免疫学的作用(例えば、免疫学的作用の種類に関して)を発揮することを意味する。本発明の脈絡において、「免疫学的に等価」という用語は好ましくは、療法に使用される抗原受容体の免疫学的作用又は特性に関して使用される。
CDR配列、超可変領域及び可変領域の配列は、標的への結合能を失うことなく改変され得ることが当業者によって理解されるだろう。例えば、CDR領域は、親抗体の領域に対して同一又は高度に相同のいずれかであり得る。「高度に相同」によって、1〜5個、好ましくは1〜4個、例えば1〜3個、又は1個若しくは2個の置換がCDRにおいて行なわれ得ると考えられる。
本発明の目的のために、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体、及び/又はアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN末端及び/又はC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体はまた、N末端及び/又はC末端切断短縮変異体とも呼ばれる。
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列内に1個又は2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを用いてのランダムな挿入も可能である。
アミノ酸付加変異体は、1つ以上のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個又はそれ以上のアミノ酸のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端への融合を含む。
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個又はそれ以上のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。欠失はタンパク質の任意の位置であり得る。
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1つの残基が除去され、別の残基がその場所に挿入されることによって特徴付けられる。好ましいのは、改変が相同タンパク質若しくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列内の位置であること、及び/又はアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸で置換することである。好ましくは、タンパク質変異体内のアミノ酸の変化は、保存的なアミノ酸の変化であり、すなわち、類似の電荷のアミノ酸又は非荷電のアミノ酸の置換である。保存的なアミノ酸の変化は、それらの側鎖に関連したアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然アミノ酸は一般的に4つのファミリーに分類される:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは時に、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される。
好ましくは、所与のアミノ酸配列と、前記の所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似度、好ましくは同一度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であろう。類似度又は同一度は、好ましくは、基準アミノ酸配列の完全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%であるアミノ酸領域について示される。例えば、基準アミノ酸配列が200アミノ酸からなる場合、類似度又は同一度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200アミノ酸、好ましくは連続アミノ酸について示される。好ましい実施態様では、類似度又は同一度は、基準アミノ酸配列の完全長について示される。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野において公知のツールを用いて、好ましくは最善の配列アラインメントを使用して、例えば、Alignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open10.0、Gap Extend0.5を使用して実施することができる。
「配列類似性」は、同一であるか又は保存的アミノ酸置換を示す、アミノ酸の比率を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸の比率を示す。
「同一率」という用語は、最善のアラインメント後に得られた、比較しようとする2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の比率を示すことを意図し、この比率は純粋に統計学的であり、2つの配列間の差異はランダムにかつその全長にわたり分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は簡便には、これらの配列を最適にアラインさせた後にそれらを比較することによって実施され、該比較はセグメントによって又は「比較窓」によって実施され、これにより、配列類似性を有する局所領域が同定及び比較される。比較のための最適な配列のアラインメントは、手作業の他に、Smith and Waterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482の局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443の局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444の類似性探索法を用いて、又はこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(Genetics Computer Group、575 Science Drive、マジソン、ウィスコンシン州のWisconsin Geneticsソフトウェアパッケージの、GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて作成され得る。
同一率は、比較する2つの配列間で同一な位置の数を決定し、この数字を、比較される位置の数で割り、得られた結果に100を乗じることによって計算され、これにより、これらの2つの配列間の同一率が得られる。
相同的アミノ酸配列は、本発明によると、少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸残基同一率を示す。
本発明によると、アミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の変異体、断片、一部、部分、又は誘導体は好ましくは、それが由来するアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の機能的特性をそれぞれ有し、すなわち、それは機能的に等価である。1つの実施態様では、アミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質の変異体、断片、一部、部分、又は誘導体は、それが由来するアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質に対しそれぞれ機能的に等価、例えば免疫学的に等価である。1つの実施態様では、機能的特性は、抗原に結合するか又は細胞内に結合シグナルを伝達する特性である。
「由来する」という用語は本発明によると、特定の実体、特に特定の配列が、それが由来する物体、特に生物又は分子に存在することを意味する。アミノ酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」は特に、関連するアミノ酸配列が、それが存在するアミノ酸配列に由来することを意味する。
「細胞」又は「宿主細胞」という用語は好ましくは、インタクトな細胞、すなわち、酵素、細胞小器官、又は遺伝子材料などのその通常の細胞内成分を放出していないインタクトな膜を有する細胞に関する。インタクトな細胞は好ましくは、生存可能な細胞、すなわち、その通常の代謝機能を実施することができる生細胞である。好ましくは、該用語は、本発明によると、外来性核酸を用いてトランスフェクトされ得る任意の細胞に関する。好ましくは、細胞は、外来性核酸を用いてトランスフェクトされレシピエントに導入されると、レシピエントにおいて核酸を発現することができる。「細胞」という用語は、細菌細胞を含み;他の有用な細胞は酵母細胞、真菌細胞、又は哺乳動物細胞である。適切な細菌細胞としては、大腸菌(エシェリヒア・コリ)、プロテウス、及びシュードモナスの株などのグラム陰性細菌株、並びに桿菌、ストレプトマイセス、ブドウ球菌、及び乳酸球菌の株などのグラム陽性細菌株由来の細胞が挙げられる。適切な真菌細胞としては、トリコデルマ、ニューロスポラ、及びアスペルギルスの種に由来する細胞が挙げられる。適切な酵母細胞としては、サッカロマイセス(例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロマイセス(例えばシゾサッカロマイセス・ポンペ(Schizo saccharomyces pombe))、ピキア(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びピキア・メタノリカ(Pichia methanolicd))、及びハンゼヌラの種に由来する細胞が挙げられる。適切な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、293HEK細胞などが挙げられる。しかしながら、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び異種タンパク質の発現のために当技術分野において使用される任意の他の細胞も同様に使用することができる。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、及び霊長類に由来する細胞などの哺乳動物細胞が、養子移植に特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し得、これには初代細胞及び細胞株、例えば、免疫系細胞、特に抗原提示細胞、例えば樹状細胞及びT細胞、幹細胞、例えば造血幹細胞及び間葉系幹細胞及び他の細胞型が挙げられる。本発明に従って使用するのに特に好ましい細胞は、免疫反応性細胞又は免疫エフェクター細胞、特にT細胞である。
核酸分子を含む細胞は好ましくは、核酸によってコードされるペプチド又はタンパク質を発現する。
「クローン増殖」又は「増殖」という用語は、特定の実体が増殖されるプロセスを指す。本発明の脈絡において、該用語は好ましくは免疫応答の脈絡において使用され、リンパ球は、抗原によって刺激され、増殖し、該抗原を認識している特定のリンパ球が増幅する。好ましくは、クローン増殖により、リンパ球の分化がもたらされる。「プライミング」という用語は、T細胞がその特異的な抗原と最初に接触し、エフェクターT細胞への分化を引き起こす、プロセスを指す。
核酸、ペプチド鎖、若しくは抗原受容体などの分子、又は本明細書に記載の細胞は、組換え及び/又は単離され得る。
本明細書において使用する「単離された」という用語は、他の細胞材料などの他の分子を実質的に含まない実体を指すことを意図する。「単離された」という用語は好ましくは、単離された実体がその天然環境から分離されたことを意味する。単離された実体は、本質的に精製された状態であり得る。「本質的に精製された」という用語は好ましくは、実体が、天然で又はインビボにおいて会合している他の物質を本質的に含まないことを意味する。
本発明の脈絡における「組換え」という用語は、「遺伝子工学操作を通して作製された」を意味する。好ましくは、本発明の脈絡における組換え細胞などの「組換え物体」は天然に存在しない。
本明細書において使用する「天然」という用語は、物体が天然に見られ得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在し、天然源から単離され得、研究室で人間によって意図的に改変されていないペプチド又は核酸は天然である。
「自己」という用語は、同じ被験者に由来するあらゆるものを説明するために使用される。例えば、「自己移植片」は、同じ被験者に由来する組織又は器官の移植片を指す。このような手順は有利である。なぜなら、それらはさもなくば拒絶に至る免疫学的障壁を克服するからである。
「同種」という用語は、同じ種の異なる個体に由来するあらゆるものを説明するために使用される。2つ以上の個体は、1つ以上の遺伝子座における遺伝子が同一ではない場合、互いに同種であると言われる。
「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体又は組織、すなわち、一卵性双生児若しくは同じ近交系の動物、又はそれらの組織に由来するあらゆるものを説明するために使用される。
「異種」という用語は、複数の異なる要素からなるものを説明するために使用される。一例として、ある個体の骨髄の、異なる個体への移植は、異種移植片を構成する。異種遺伝子は、被験者とは別の供給源に由来する遺伝子である。
本明細書において使用する「減少する」又は「抑制する」は、レベルの全体的な減少、好ましくは5%又はそれ以上、10%又はそれ以上、20%又はそれ以上、より好ましくは50%又はそれ以上、最も好ましくは75%又はそれ以上の減少を引き起こす能力を意味する。「抑制する」という用語又は類似の語句は、完全な又は本質的に完全な抑制、すなわち、ゼロまでの減少又は本質的にゼロまでの減少を含む。
「増加する」又は「増強する」などの用語は好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%の増加又は増強に関する。
本発明の抗原受容体は、疾患特異的抗原を含む事実上全ての抗原を標的化するように工学操作され得るので、本発明の抗原受容体は、幅広い治療用途を有する。したがって、本発明は、治療法及び予防法における、本発明の抗原受容体、そのペプチド鎖、それをコードする核酸、及び他の関連する分子の使用を対象とする。1つのこのような使用は、抗原特異的免疫細胞の産生においてであり、これは疾患を予防又は治療するために患者に投与され得、該疾患は、免疫細胞において発現される本発明の抗原受容体と結合し得る1つ以上の抗原の発現によって特徴付けられる。好ましくは、該疾患はがんである。さらに、本発明の抗原受容体及び関連した分子はまた、予め決定された抗原を発現している細胞の選択的根絶のために、並びに、予め決定された抗原が発現されている疾患に対する免疫化又はワクチン接種のために使用され得、該抗原は、本発明の抗原受容体の少なくとも1つの抗原結合部位に結合し得る。
1つの実施態様では、疾患の治療法又は予防法は、有効量の本発明の抗原受容体をコードしている核酸を患者に投与する工程を含み、抗原受容体の少なくとも1つの抗原結合部位は、治療又は予防しようとする疾患に関連した抗原(例えばウイルス抗原又は腫瘍抗原)に結合することができる。別の実施態様では、疾患の治療法又は予防法は、有効量の組換え免疫エフェクター細胞又は該免疫エフェクター細胞の増殖させた個体群を患者に投与する工程を含み、免疫エフェクター細胞又は細胞個体群は、本発明の抗原受容体を組換え発現し、抗原受容体の少なくとも1つの抗原結合部位が、治療又は予防しようとする疾患に関連した抗原に結合することができる。好ましい実施態様では、該疾患はがんであり、該抗原は腫瘍関連抗原である。
別の実施態様では、本発明は、特定の抗原に関連した疾患に対して、又は特定の抗原を発現している疾患を引き起こす生物に対して免疫化又はワクチン接種する方法を提供し、該方法は、有効量の本発明の抗原受容体をコードしている核酸を患者に投与する工程を含み、抗原受容体の少なくとも1つの抗原結合部位が特定の抗原に結合することができる。別の実施態様では、本発明は、特定の抗原に関連した疾患に対して、又は特定の抗原を発現している疾患を引き起こす生物に対して免疫化又はワクチン接種する方法を提供し、該方法は、有効量の組換え免疫エフェクター細胞又は該免疫エフェクター細胞の増殖させた個体群を患者に投与する工程を含み、該免疫エフェクター細胞又は細胞個体群は、本発明の抗原受容体を組換え発現し、抗原受容体の少なくとも1つの抗原結合部位が、特定の抗原に結合することができる。
特定の実施態様では、免疫エフェクター細胞個体群は、クローン増殖個体群であり得る。組換え免疫エフェクター細胞又はその個体群は、抗原特異的に治療的又は予防的免疫エフェクター機能を提供する。好ましくは、本発明の抗原受容体は、免疫エフェクター細胞の細胞表面上に発現される。
本発明の治療法及び予防法に関連して使用される細胞は好ましくは免疫エフェクター細胞であり、該免疫エフェクター細胞は好ましくはT細胞である。特に、本明細書において使用される細胞は、細胞傷害性リンパ球であり、好ましくは細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。活性化/刺激時に、これらの各々の細胞傷害性リンパ球は、標的細胞の破壊をトリガーする。例えば、細胞傷害性T細胞は、以下のいずれか又は両方の手段によって標的細胞の破壊をトリガーする。まず、活性化されるとT細胞は、パーフォリン、グランザイム、及びグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリン及びグランザイムは、標的細胞に穴を作り、グランザイムは細胞に進入し、細胞質内で細胞のアポトーシス(プログラム化細胞死)を誘発するカスパーゼカスケードをトリガーする。第二に、アポトーシスが、T細胞と標的腫瘍細胞の間のFas−Fasリガンド相互作用を介して誘発され得る。T細胞及び他の細胞傷害性リンパ球は好ましくは自己細胞であるが、異種細胞又は同種細胞も使用され得る。
したがって、本明細書に記載の物質、組成物、及び方法を使用して、疾患、例えば、抗原を発現している疾患を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患を有する被験者を処置することができる。特に好ましい疾患はがん疾患である。
本明細書に記載の物質、組成物、及び方法はまた、本明細書に記載の疾患を予防するための免疫化又はワクチン接種のために使用され得る。
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす正常ではない容態を指す。疾患はしばしば、特定の症状及び兆候を伴う医学的容態と捉えられる。疾患は、感染症などの外部の供給に元来は由来する因子によって引き起こされ得るか、又は、自己免疫疾患などの内部の機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしばより広義に使用され、罹患した個体に疼痛、機能不全、窮迫、社会的問題若しくは死を引き起こすか、又は、該個体と接触した個体に類似した問題を引き起こす、任意の容態を指す。このより広い意味では、それは、時に、損傷、能力障害、障害、症候群、感染症、孤立した症状、異常な行動、並びに構造及び機能の非定型的変化を含むが、他の脈絡及び他の目的では、これらは識別可能な分類であると考えられ得る。疾患は、通常、個体に身体的だけでなく感情的にも影響を及ぼす。なぜなら、多くの疾患に罹患しこれと共に生きることは、人生の展望及び人格を変化させる可能性があるからである。本発明によると、「疾患」という用語は、感染症及びがん疾患、特に本明細書に記載の形態のがんを含む。本明細書におけるがん又は特定の形態のがんへのあらゆる言及は、そのがんの転移も含む。
本発明に従って処置しようとする疾患は好ましくは、抗原の関与する疾患である。「抗原の関与する疾患」、「抗原の発現又は上昇した発現に関連した疾患」又は類似の表現は本発明によると、抗原が、疾患を有する組織又は器官の細胞に発現されていることを意味する。疾患を有する組織又は器官の細胞における発現は、健康な組織又は器官における状態と比較して上昇している場合がある。1つの実施態様では、発現は、疾患を有する組織のみに見られるが、健康な組織における発現は見られず、例えば発現は抑制されている。本発明によると、抗原の関与する疾患としては感染症及びがん疾患が挙げられるが、疾患に関連した抗原は好ましくは、それぞれ感染病原体の抗原及び腫瘍抗原である。好ましくは、抗原の関与する疾患は好ましくは、好ましくは細胞表面上に抗原を発現している細胞の関与する疾患である。
「健康な」又は「正常な」という用語は、病的ではない容態を指し、好ましくは感染していない容態又はがんがない容態を意味する。
「がん疾患」又は「がん」という用語は、未制御な細胞増殖によって典型的には特徴付けられる個体における生理学的容態を指すか又は説明する。がんの例としては、細胞癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるがこれらに限定されない。より特定すると、このようながんの例としては骨癌、血液のがん、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系のがん、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織癌、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉の癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫が挙げられる。本発明による「がん」という用語はまた、がん転移も含む。好ましくは、「がん疾患」は、腫瘍抗原を発現している細胞によって特徴付けられ、がん細胞は腫瘍抗原を発現する。
1つの実施態様では、がん疾患は、退形成、侵襲性、及び転移の特性によって特徴付けられる悪性疾患である。悪性疾患はその増殖が自律的に制限されていない、隣接する組織に侵入することができる、遠隔組織に広がる(転移する)ことができるという点で、悪性腫瘍は、非がん性の良性腫瘍とは対照的であり得、一方、良性腫瘍はこれらのいずれの特性も有していない。
本発明によると、「腫瘍」又は「腫瘍疾患」という用語は、細胞(新生細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)の普通ではない増殖によって形成される腫脹又は病変を指す。「腫瘍細胞」によって、急速で未制御な細胞増殖によって増殖し、かつ新たな増殖を開始した刺激が止まった後も増殖し続ける、普通ではない細胞を意味する。腫瘍は、正常組織との構造的構成、及び機能的な協調の部分的又は完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性、又は悪性のいずれかであり得る、別個の組織の塊を形成する。
本発明によると、「細胞癌」は、上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。このグループは、一般的な形態の乳癌、前立腺癌、肺癌、及び大腸癌をはじめとする最も一般的ながんを示す。
「腺癌」は、腺組織を起源とするがんである。この組織はまた、上皮組織として知られるより大きな組織の分類の一部でもある。上皮組織は、皮膚、腺、並びに生体の体腔及び器官を裏打ちする様々な他の組織を含む。上皮は発生学的に、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉に由来する。腺癌として分類されるためには、細胞は、それらが分泌特性を有する限り、腺の一部である必要は必ずしもない。この形態の細胞癌は、ヒトをはじめとするいくつかのより高等な哺乳動物において起こり得る。高分化型腺癌は、それが由来する腺組織に似ている傾向があるが、低分化腺癌はそうではない場合がある。生検材料に由来する細胞を染色することによって、病理学者は、腫瘍が腺癌であるか又はいくつかの他の種類のがんであるかを決定するだろう。腺癌は、体内における腺の遍在性のために生体の多くの組織に発生し得る。各々の腺は同じ物質を分泌していない可能性があるが、細胞に外分泌機能がある限り、それは腺性であると考えられ、それ故、その悪性形は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織に侵入し、転移する時間が十分にあればしばしば転移する。卵巣腺癌は、最も一般的な種類の卵巣癌である。それは、漿液性腺癌及び粘液性腺癌、明細胞腺癌及び類内膜腺癌を含む。
リンパ腫及び白血病は、造血(血液形成)細胞に由来する悪性疾患である。
芽細胞腫瘍又は芽細胞腫は、未熟組織又は胚組織に似た腫瘍(通常は悪性)である。これらの中の多くの腫瘍は小児において最も頻度が高い。
「転移」によって、身体のその元来の部位から別の部分へのがん細胞の広がりを意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、これは原発性腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外マトリックスへの侵入、内皮基底膜を透過して体腔及び血管に進入、次いで、血液によって輸送された後の、標的器官への浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の増殖は血管形成に依存する。腫瘍転移はしばしば、原発性腫瘍を除去した後でさえ起こる。なぜなら、腫瘍細胞又は成分は残存する可能性があり、転移能を発生させる可能性があるからである。1つの実施態様では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍及び所属リンパ節系から遠い転移に関する「遠隔転移」に関する。1つの実施態様では、本発明による「転移」という用語はリンパ節転移に関する。
再燃又は再発は、ヒトが過去に罹患した容態に再度罹患する場合に起こる。例えば、患者が腫瘍疾患を患い、該疾患の成功裡の処置を受け、該疾患を再び発症した場合、新たに発症した該疾患は、再燃又は再発と考えられ得る。しかしながら、本発明によると、腫瘍疾患の再燃又は再発は、元来の腫瘍疾患の部位に起こり得るが、必ずしも起こるわけではない。したがって、例えば、患者が卵巣腫瘍を患い、成功裡な処置を受けた場合、再燃又は再発は、卵巣腫瘍の発生、又は卵巣とは異なる部位における腫瘍の発生であり得る。腫瘍の再燃又は再発はまた、腫瘍が、元来の腫瘍部位とは異なる部位並びに元来の腫瘍部位において起こる状況も含む。好ましくは、患者がそのための処置を受けた元来の腫瘍は原発性腫瘍であり、元来の腫瘍部位とは異なる部位における腫瘍は続発性腫瘍又は転移性腫瘍である。
本発明によって治療又は予防され得る感染症は、ウイルス、細菌、真菌、原虫、蠕虫、及び寄生虫を含むがこれらに限定されない、感染病原体によって引き起こされる。
ヒト及び非ヒト脊椎動物の両方の感染性ウイルスとしては、レトロウイルス、RNAウイルス、及びDNAウイルスが挙げられる。ヒトに見られるウイルスの例としては、レトロウイルス科(例えばヒト免疫不全ウイルス、例えばHIV−1(HTLV−III、LAV、又はHTLV−III/LAV、又はHIV−IIIとも呼ばれる);及び他の単離株、例えばHIV−LP);ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えばデングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(例えばハンタウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(殆どアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1型及び2型、水疱帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリドウイルス科(例えばアフリカブタ熱ウイルス);並びに未分類のウイルス(例えば海綿状脳症の疫学的病原体、デルタ肝炎の病原体(欠陥のあるB型肝炎サテライトウイルスと考えられている)、非A非B型肝炎の病原体(クラス1=体内で伝染;クラス2=非経口的に伝染(すなわちC型肝炎);ノーウォークウイルス及び関連したウイルス、並びにアストロウイルス)が挙げられるがこれらに限定されない。
考えられるレトロウイルスは、単純なレトロウイルス及び複雑なレトロウイルスの両方を含む。複雑なレトロウイルスとしては、レンチウイルスの亜群、T細胞白血病ウイルス、及び泡沫状ウイルスが挙げられる。レンチウイルスとしては、HIV−1が挙げられるが、HIV−2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)も挙げられる。T細胞白血病ウイルスとしては、HTLV−1、HTLV−II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)、及びウシ白血病ウイルス(BLV)が挙げられる。泡沫状ウイルスとしては、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、サル泡沫状ウイルス(SFV)及びウシ泡沫状ウイルス(BFV)が挙げられる。
本発明によって治療又は予防することのできる細菌感染症又は疾患は、その生活環に細胞内段階を有する細菌、例えばマイコバクテリア(例えば結核菌(Mycobacteria tuberculosis)、ウシ型結核菌(M. bovis)、マイコバクテリア・アビウム(M. avium)、らい菌(M. leprae)、又はマイコバクテリア・アフリカヌム(M. africanum))、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジア、及びレジオネラを含むがこれらに限定されない細菌によって引き起こされる。考えられる他の細菌感染症の例としては、グラム陽性桿菌(例えば、リステリア(Listeria)、桿菌(Bacillus)、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)種)、グラム陰性桿菌(例えば、バルトネラ(Bartonella)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、エシェリヒア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Hemophilus)、クレブシエラ(Klebsiella)、モルガネラ(Morganella)、プロテウス(Proteus)、プロビデンシア(Providencia)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、赤痢菌(Shigella)、ビブリオ(Vibrio)、及びエルシニア(Yersinia)種)、スピロヘータ細菌(例えばボレリア(Borrelia)種、例えばライム病を引き起こすボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi))、嫌気性菌(例えば放線菌(Actinomyces)及びクロストリジウム(Clostridium)種)、グラム陽性及び陰性球菌、腸球菌(Enterococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、シュードモナス種、ブドウ球菌(Staphylococcus)種、ナイセリア(Neisseria)種によって引き起こされる感染症が挙げられるがこれらに限定されない。感染性細菌の具体例としては、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、結核菌、マイコバクテリア・アビウム、マイコバクテリア・イントラセルラーエ(M. intracellulare)、マイコバクテリア・カンサシ(M. kansaii)、マイコバクテリア・ゴルドネ(M. gordonae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(B群連鎖球菌)、緑膿連鎖球菌(Streptococcus viridans)、ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus aecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneunmoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatuin)、モニリホルム連鎖球菌(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、レプトスプラ(Leptospira)、リケッチア、及びアクチノマイセス・イスラエリ(Actinoyyces israelli)が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明によって治療又は予防することのできる真菌疾患としては、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、接合菌症、及びカンジダ症が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明によって治療又は予防することのできる寄生虫疾患としては、アメーバ症、マラリア症、リーシュマニア症、コクシジウム症、ジアルジア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラスマ症、及びトリパノソーマ症が挙げられるがこれらに限定されない。また、回虫症、鉤虫症、鞭虫症、糞線虫症、トキソカラ症、旋毛虫症、オンコセルカ症、糸状虫、及びイヌ糸状虫症などであるがこれらに限定されない様々な虫による感染も包含される。また、住虫吸虫症、肺吸虫症、及び肝吸虫症などであるがこれらに限定されない様々な吸虫による感染症も包含される。
「処置」又は「治療的処置」という用語は、健康状態を改善する及び/又は個体の寿命を延長(増加)させる任意の処置に関する。該処置は、個体における疾患を排除し得、個体における疾患の発症を停止若しくは緩徐化し得、個体における疾患の発症を抑制若しくは緩徐化し得、個体における症状の頻度若しくは重症度を低減させ得、及び/又は疾患を現在患っているか若しくは以前に患っていたことがあった個体における再発を低減し得る。
「予防的(prophylactic)処置」又は「予防的(preventive)処置」という用語は、個体において疾患が起こるのを予防することを意図した任意の処置に関する。「予防的(prophylactic)処置」又は「予防的(preventive)処置」という用語は本明細書において互換的に使用される。
「個体」及び「被験体」という用語は、本明細書において互換的に使用される。それらは、疾患又は障害(例えばがん)を患う可能性があるか又は罹りやすいが、該疾患又は障害を有していても又は有していなくてもよい、ヒト、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)を指す。多くの実施態様では、個体はヒトである。特記しない限り、「個体」及び「被験者」という用語は特定の年齢を示さず、したがって、成人、高齢者、小児、及び新生児を包含する。本発明の好ましい実施態様では、「個体」又は「被験者」は「患者」である。「患者」という用語は、本発明によると、処置のための被験者、特に疾患を有する被験者を意味する。
「リスクのある」によって、一般集団と比べて、疾患、特にがんを発症する機会が通常より高いとして同定される、被験者、すなわち患者を意味する。さらに、疾患、特にがんを有していたか又は現在有している被験者は、疾患を発症するリスクが増加している被験者であり、よって、被験者は疾患を発症し続ける可能性がある。がんを現在有しているか又は有していた被験者はまた、がんの転移のリスクも増加している。
「免疫療法」という用語は、特定の免疫反応又は免疫応答に関与する処置に関する。
本発明の脈絡において、「防御する」、「予防する」、「予防的(prophylactic)」、「予防的(preventive)」、又は「防御的」などの用語は、被験者における疾患の発生及び/又は増殖の予防又は治療又はその両方、特に被験者が疾患を発症するであろう機会を最小限にすること、あるいは疾患の発症を遅延させることに関する。例えば、上記のような腫瘍のリスクのあるヒトは、腫瘍の予防療法の候補となるだろう。
免疫療法の予防的投与、例えば、本発明の物質又は組成物の予防的投与は好ましくは、レシピエントが疾患を発症するのを防御する。免疫療法の治療的投与、例えば、本発明の物質又は組成物の治療的投与により、疾患の進行/増殖の抑制がもたらされ得る。これは、疾患の進行/増殖の減速、特に疾患の進行の崩壊を含み、これにより好ましくは疾患が排除される。
免疫療法は、本明細書に提供された物質が好ましくは、患者から抗原を発現している細胞を除去するように機能する様々な技術のいずれかを使用して実施され得る。このような除去は、抗原又は抗原を発現している細胞に対して特異的である患者における免疫応答を増強又は誘導する結果として起こり得る。
「免疫化」又は「ワクチン接種」という用語は、治療又は予防の理由で免疫応答を惹起する目的で被験者を処置するプロセスを説明する。
「インビボ」という用語は被験者における状況に関する。
本発明の抗原受容体、ペプチド鎖、核酸、組換え細胞、免疫エフェクター細胞、好ましくはT細胞、並びに、本明細書に記載の他の化合物及び物質は、任意の適切な医薬組成物の剤形で投与され得る。
本発明の医薬組成物は好ましくは無菌であり、所望の反応又は所望の効果を生じるために、有効量の本明細書に記載の物質及び場合により本明細書に考察されているようなさらなる物質を含有している。
医薬組成物は通常、単位投与剤形で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。医薬組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の剤形であり得る。
医薬組成物は、塩、緩衝物質、保存剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含み得、それらは全て、好ましくは薬学的に許容される。「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の無毒性を指す。
薬学的に許容されない塩が、薬学的に許容される塩の調製のために使用されてもよく、それは本発明に含まれる。この種の薬学的に許容される塩は、以下の酸から調製されたものを含むがこれらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。薬学的に許容される塩はまた、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩として調製され得る。
医薬組成物に使用するのに適した緩衝物質としては、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。
医薬組成物に使用するのに適した保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールが挙げられる。
注射用製剤は、乳酸リンゲル液などの薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
「担体」という用語は、天然又は合成の有機成分又は無機成分を指し、この中に活性成分が配合されることにより、適用を促進、増強、又は可能とする。本発明によると、「担体」という用語はまた、患者への投与に適している、1つ以上の適合性の固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化用物質も含む。
非経口投与の可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、無菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、硬化ナフタレン、及び特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコライドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシ−プロピレンコポリマーである。
本明細書に使用される場合の「賦形剤」という用語は、医薬組成物に存在し得かつ活性成分ではない全ての物質、例えば、担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤、表面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、芳香剤、又は着色剤を示すことを意図する。
本明細書に記載の物質及び組成物は、注射又は注入を含む非経口投与によるなどの、任意の慣用的な経路を介して投与され得る。投与は好ましくは、非経口的、例えば、静脈内、動脈内、皮下、皮内、又は筋肉内である。
非経口投与に適した組成物は通常、レシピエントの血液に対して好ましくは等張である、無菌の水性又は非水性の活性化合物の調製物を含む。適合性の担体及び溶媒の例はリンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、通常、無菌の不揮発性油が、溶液又は懸濁液の媒体として使用される。
本明細書に記載の物質及び組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、所望の反応又は所望の効果を単独で又はさらなる薬用量と一緒に達成する量を指す。特定の疾患又は特定の容態の処置の場合、所望の反応は好ましくは、疾患の経過の抑制に関する。これは、疾患の進行の減速、特に疾患の進行の中断又は逆行を含む。疾患又は容態の処置における望ましい反応はまた、該疾患又は該容態の発症の遅延又は発症の予防であり得る。
有効量の本明細書に記載の物質又は組成物は、処置しようとする容態、疾患の重症度、患者の個々のパラメーター、例えば年齢、生理学的容態、サイズ、及び体重、処置期間、併用療法の種類(ある場合)、具体的な投与経路、及び類似の要因に依存するだろう。したがって、本明細書に記載の物質の投与量は、様々なこのようなパラメーターに依存し得る。患者における反応が初回量では不十分である場合、より高い用量(又は、異なるより局所的な投与経路によって達成される、効果的なより高い用量)を使用し得る。
本明細書に記載の物質及び組成物を、患者に、例えばインビボにおいて投与することにより、本明細書に記載のような様々な障害を治療又は予防することができる。好ましい患者としては、本明細書に記載の物質及び組成物の投与によって修正又は寛解され得る障害を有するヒト患者が挙げられる。これは、抗原の発現によって特徴付けられる細胞の関与する障害を含む。
例えば、1つの実施態様では、本明細書に記載の物質を使用して、がん疾患、例えば、抗原を発現しているがん細胞の存在によって特徴付けられる本明細書に記載のようながん疾患を有する患者を処置することができる。
本発明に従って記載された医薬組成物及び処置法はまた、本明細書に記載の疾患を予防するための免疫化又はワクチン接種のために使用され得る。
本発明の医薬組成物は、1つ以上のアジュバントなどの補助的な免疫増強物質と一緒に投与されてもよく、その有効性をさらに高めるための、好ましくは免疫刺激の相乗作用を達成するための、1つ以上の免疫増強物質を含んでいてもよい。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長又は増強又は加速する化合物に関する。これに関してアジュバントの様々な種類に応じて様々な機序が可能である。例えば、DCの成熟を可能とする化合物、例えばリポ多糖又はCD40リガンドは、最上級の適切なアジュバントを形成する。一般的に、免疫系に影響する「危険シグナル」(LPS、GP96、dsRNAなど)という種類の任意の物質、又はサイトカイン(例えばGM−CSF)を、制御された様式で免疫応答を強化する及び/又は免疫応答に影響を及ぼすことを可能とするアジュバントとして使用し得る。CpGオリゴデオキシヌクレオチドも場合によりこの脈絡で使用され得るが、上記に説明されているように、特定の環境下で起こるそれらの副作用を考慮しなければならない。特に好ましいアジュバントは、サイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、又はケモカイン、例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IFNα、IFNγ、GM−CSF、LT−α又は増殖因子、例えばhGHである。さらなる公知のアジュバントは水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント又は油、例えばモンタナイド(登録商標)であり、最も好ましいのはモンタナイド(登録商標)ISA51である。リポペプチド、例えばPam3Cysもまた、本発明の医薬組成物におけるアジュバントとしての使用に適している。
医薬組成物は、局所又は全身、好ましくは全身に投与され得る。
「全身投与」という用語は、物質が個体の体内に有意な量で広く分布されるようになり所望の効果を発生するような、該物質の投与を指す。例えば、該物質は血中でその所望の効果を発生し得、及び/又は、血管系を介してその所望の作用部位に到達する。典型的な全身投与経路としては、血管系に該物質を直接導入することによる投与、又は、経口、肺内、若しくは筋肉内投与が挙げられ、該物質は吸着され、血管系に進入し、血液を介して1箇所以上の所望の作用部位(群)に運ばれる。
本発明によると、全身投与は非経口投与によることが好ましい。「非経口投与」という用語は、物質が腸を通過しないような該物質の投与を指す。「非経口投与」という用語は、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、又は動脈内投与を含むが、それらに限定されない。
投与はまた、例えば、経口、腹腔内、又は筋肉内に行なわれ得る。
本明細書に提供された物質及び組成物は、単独で、あるいは手術、放射線療法、化学療法及び/又は骨髄移植(自己、同系、同種、又は無関連)などの慣用的な治療措置と組合せて使用され得る。
本発明は、以下の図面及び実施例によって詳細に記載され、これらは単に説明の目的に使用され、限定する意味はない。説明及び実施例により、本発明に同様に含まれるさらなる実施態様を、当業者は利用できるだろう。