JP2018529389A - 神経前駆細胞集団およびそれらの使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、特定の神経前駆体マーカーに関して富化された細胞集団ならびに抑制性ニューロン機能の調節不全および/または興奮性/抑制性ニューロン活性のアンバランスに関連する障害の処置のためにそのような細胞集団を使用する方法を提供する。特に、本発明は、細胞に基づく療法として使用するための細胞集団、ならびに異常な神経機能に関連する神経障害を改善するための移植におけるこれらの神経前駆細胞の精製および使用のための方法を提供する。

Description

本発明は、一般に、細胞生物学、多能性(pluripotent)幹細胞、および細胞分化の分野に関する。本発明は、神経前駆細胞の集団およびそれらの治療的使用を開示する。
以下の議論では、特定の物および方法が背景および導入の目的で記載される。本明細書に含まれるもので、従来技術の「承認」として解釈されるべきものはない。出願人は、適切であれば、本明細書で示される物および方法は適用される法律上の条項に基づいて従来技術を構成するものではないことを実証する権利を明示的に留保する。
中枢神経系および末梢神経系の状態、疾患および損傷の臨床管理は、未だ満たされていない重要な臨床上の必要性の余地を残している。発作性疾患、パーキンソン病、外傷性脳損傷、疼痛および痙縮を含む種々の障害に現在使用されている治療法は、疾患または障害の根本原因に取り組むというよりも、通常は症状の管理に焦点を当てるものである。よって、傷害または損傷を受けた神経系組織を修復するまたは置き換えることができる中枢神経系および末梢神経系の改良された有効な治療の差し迫った必要が依然としてある。
本発明は、in vivoで遊走し機能的ニューロンへ分化する能力を有する新規な神経前駆細胞集団を提供することによりこの必要に取り組むものである。
本概要は、以下の詳細な説明にさらに記載される概念の選択を簡略化した形で紹介するために示す。本概要は、特許請求される主題の重要または必須の特徴を特定することを意図するものでも、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、および利点は、添付の図面に示され、添付の特許請求の範囲で定義される態様を含め、以下に記載される詳細な説明から明らかとなる。
本発明は、特定の神経前駆体マーカーに関して富化された(enriched)細胞集団ならびに抑制性ニューロン機能の調節不全および/または興奮性/抑制性ニューロン活性のアンバランスに関連する障害の処置のためにそのような細胞集団を使用する方法を提供する。特に、本発明は、細胞に基づく治療法として使用するための細胞集団、ならびに異常な神経機能に関連する神経障害を改善するための移植におけるこれらの神経前駆細胞の精製および使用のための方法を提供する。
よって、一実施形態では、本発明は、哺乳類への移植時に抑制性介在ニューロンへ効率的に分化するこれらの細胞の能力を示す重要な因子を発現する神経前駆細胞の富化された集団を提供する。好ましくは、神経前駆細胞は、主としてMGEに起源する細胞である皮質介在ニューロンにより発現されるマーカーの発現において富化される。本発明の細胞集団は、限定されるものではないが、細胞表面マーカーを用いた単離;神経前駆体で下方調節される細胞表面マーカーを用いた細胞集団の枯渇;および神経前駆体マーカーを発現するように多能性細胞を分化させること、を含む方法を用いて富化され得る。
集団中で富化される例示的神経前駆細胞マーカーとしては、限定されるものではないが、AS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1が含まれる。
いくつかの実施形態では、本発明は、GABA発現細胞へ分化することができる細胞を含む神経前駆細胞集団を提供し、前記細胞集団は、神経前駆体マーカーAS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上を発現する細胞が大多数(50%以上)を占める。いくつかの態様では、神経前駆細胞は、in vitroでGABAを産生することができるニューロンを形成するように分化することができる。他の態様では、神経前駆細胞は、哺乳類神経系(例えば、中枢神経系、またはCNS)への移植後にGABAを産生することができるニューロンを形成するように分化することができる。
本発明の神経前駆細胞集団は、ヒト組織(例えば、ヒト胎児皮質もしくはヒト基底核隆起)から単離することができるか、または幹細胞もしくは他の複能性(multipotent)細胞から分化させることができる。よって、いくつかの実施形態では、神経前駆細胞集団は、多能性幹細胞の供給源から単離される。いくつかの実施形態では、神経前駆細胞は、ヒト幹細胞、例えば、ヒト胚性幹細胞から分化させる。他の実施形態では、神経前駆細胞は、誘導多能性幹細胞から分化させる。さらに他の実施形態では、神経前駆細胞は、神経幹細胞から分化させる。さらに他の実施形態では、神経前駆細胞集団は、例えば、MGE、皮質、皮質下部、脳の他の領域から得られた神経細胞、または非神経細胞などの細胞のリプログラミングを介して作出される。
よって、特定の実施形態では、本発明は、細胞に神経前駆細胞で上方調節される1以上の細胞表面マーカーの発現を増強させる条件下で、哺乳類脳組織から細胞を単離すること、および神経細胞表面マーカー発現細胞を富化して細胞表面マーカー富化細胞集団を作出することを含み、前記富化細胞集団はin vitroでおよび/または哺乳類神経系(例えば、CNS)への移植時にGABA産生ニューロンを形成することができる神経前駆細胞を含む、神経前駆細胞集団を作出する方法を提供する。好ましい実施形態では、細胞表面マーカーは、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2である。
他の特定の実施形態では、本発明は、多能性哺乳類幹細胞集団を準備すること;前記細胞に対象とする神経前駆細胞で上方調節される1以上の細胞表面マーカーの発現を増強させる条件下で前記幹細胞を分化させること;および前記細胞集団の、前記細胞表面マーカーのうち1以上を発現する細胞を富化することを含み;前記富化細胞集団は、in vitroでおよび/または哺乳類脳への移植時にGABA産生ニューロンを形成することができる神経前駆細胞を含む、神経前駆細胞集団を作出する方法を提供する。好ましくは、神経前駆細胞表面マーカーは、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2である。
いくつかの実施形態では、富化細胞は、第2の神経前駆細胞マーカーの発現においても富化される。例えば、前記細胞を富化するために使用された細胞表面マーカーに加え、細胞は、AS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上を発現するようにさらに富化されてもよい。
いくつかの実施形態では、細胞表面マーカー発現細胞は、神経前駆細胞表面マーカーと選択的に結合する薬剤(例えば、抗体)を用いて富化される。特定の実施形態では、神経前駆細胞表面マーカー発現細胞は、蛍光活性化セルソーティング(FACS:fluorescence−activated cell sorting)により単離される。他の特定の実施形態では、神経前駆細胞表面マーカー発現細胞は、磁気活性化セルソーティング(MACS:magnetic−activated cell sorting)により単離される。
好ましくは、神経前駆細胞は、移植後に哺乳類の中枢神経系または末梢神経系と一体化する機能的抑制性介在ニューロンを形成することができ、このような機能的抑制性ニューロンの形成および一体化は、神経障害の処置に関連する。
別の態様では、本発明は、本発明の神経前駆細胞集団を単離するための方法を特徴とする。その方法は、対象由来の組織(例えば、哺乳類胎児脳由来の組織)、または多能性細胞供給源から分化させた細胞を準備する工程、および選択された細胞集団を、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2から選択される1以上の異なる細胞表面タンパク質を用いて富化する工程、それにより神経前駆細胞集団を単離する工程を含む。
別の態様では、本発明は、本発明の神経前駆細胞において少なくとも2倍の抑制を有する1以上の細胞表面タンパク質を用いて望まない細胞から、単離された細胞集団を枯渇するための方法を特徴とする。例えば、神経前駆細胞集団は、ATP1A2、BCAN、CD271、CD98、CNTFR、FGFR3、GJA1、MLC1、NOTCH1、NOTCH3、PDPN、PTPRZ1、SLC1A5、TMEM158、またはTTYH1から選択される1以上の異なる細胞表面タンパク質を用いた細胞集団の枯渇により富化することができる。
加えてまたは代わりに、本方法は、前記細胞を凍結保存する工程もさらに含み得る。
本方法はさらに、神経前駆細胞集団を前記細胞の増殖を補助する条件下で培養することも含み得る。
本発明はまた、上記方法のいずれかにより産生される神経前駆細胞集団も特徴とする。
本発明はまた、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時に機能的抑制性介在ニューロンへ分化する能力を有する細胞が大多数(50%を超える)を占める神経前駆細胞集団を提供する。
本発明は、細胞表面マーカーPLEXINA4を発現する細胞において、哺乳類CNSへの移植時に機能的皮質介在ニューロンへと成熟するそれらの能力が増強されていることを確認した。よって、特定の実施形態では、神経前駆細胞集団は、富化された神経前駆体マーカーの1つとしてPLEXINA4を発現する。
特定の実施形態では、本発明は、AS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上の発現の増強;およびPLEXINA4の発現の増強を含む、細胞が富化された神経前駆細胞集団を提供する。これらの神経前駆細胞は、in vitroにおいておよび/または哺乳類神経系(例えば、哺乳類CNS)への移植時にGABA産生ニューロンを形成することができる。
別の実施形態では、本発明は、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2の1以上の細胞表面マーカーの発現の増強;およびPLEXINA4の発現の増強を含む、細胞が富化された神経前駆細胞集団を提供する。これらの神経前駆細胞は、in vitroにおいておよび/または哺乳類神経系(例えば、哺乳類CNS)への移植時にGABA産生ニューロンを形成することができる。
いくつかの実施形態では、抑制性ニューロン機能不全および/または興奮性−抑制性アンバランスに関連する神経学的状態、疾患、または損傷を有する哺乳類の処置のための方法であって、哺乳類の神経系に本発明の神経前駆細胞集団を移植することを含む方法が提供される。本発明の神経前駆細胞の集団は、本明細書により詳しく記載されるように、細胞を宿主神経系、特に、宿主中枢神経系と機能的に一体化し得る遊走細胞として特定する特定のシグネチャー転写産物の発現および/または他の転写産物の発現の不在により識別される。本発明の神経前駆細胞は、移植部位から少なくとも0.5mm遊走する(migrate)ことができ、かつ、成熟し、所望の処置部位の内在組織と機能的に一体化し得る。
本発明の方法で処置可能な(amendable to treatment)神経学的状態、疾患、または損傷としては、種々の変性疾患、発達疾患、遺伝疾患、急性損傷、および慢性損傷が含まれる。前記細胞は中枢神経系または末梢神経系に移植可能である。いくつかの実施形態では、神経学的状態、疾患、または損傷には、限定されるものではないが、パーキンソン病、発作性疾患(例えば、癲癇)、痙縮、脊髄損傷、脳損傷、または末梢神経傷害、疼痛(例えば、神経因性疼痛)、アルツハイマー病、不安、自閉症、脳卒中、慢性掻痒、弱視/視覚的可塑性、精神病(例えば、統合失調症)、ジスキネジアおよび/または失調症が含まれる。
よって、本発明はまた、対象において神経障害を処置するための方法を提供し、前記方法は、神経障害に苦しむ哺乳類の神経系に、集団の少なくとも50%がAS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1から選択される転写産物のうち1以上に関して富化された細胞で占められる神経前駆細胞集団を移植すること、および移植細胞を遊走させ、前記哺乳類の中枢神経系と一体化させ、それにより前記哺乳類の神経障害を処置することを含む。
いくつかの実施形態では、処置される神経学的状態は、発作性疾患(例えば、癲癇)であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、自発的エレクトログラフィック発作活性の軽減をもたらす。特定の実施形態では、神経学的状態は癲癇であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、発作強度および/または持続時間の軽減をもたらす。いくつかの実施形態では、神経学的状態は癲癇であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、発作頻度および/または強度の軽減をもたらす。いくつかの実施形態では、神経学的状態は癲癇であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、移植片を受容する患者において必要な抗癲癇薬の使用を低減する。
いくつかの実施形態では、本発明の方法で処置される神経疾患はパーキンソン病であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、必要な抗パーキンソン病薬使用の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、神経疾患はパーキンソン病であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、安静時振戦、筋強剛、無動、動作緩慢、姿勢反射障害、屈曲姿勢および/またはすくみ反応の軽減をもたらす。
いくつかの実施形態では、処置される神経学的状態は、限定されるものではないが、神経因性膀胱痙縮を含む痙縮であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、投薬または手術の必要を軽減または回避する。いくつかの実施形態では、神経学的状態は痙縮であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、必要な鎮痙薬使用の軽減をもたらす。
他の実施形態では、本発明の方法を用いて処置される神経学的状態は神経損傷(例えば、脊髄または末梢神経損傷)であり、本発明の神経前駆細胞の移植は、神経損傷に関連する生理障害の改善をもたらす。
さらに他の実施形態では、処置される神経学的状態は疼痛(例えば、慢性疼痛または神経因性疼痛)であり、本発明の神経前駆細胞集団の移植は、処置される対象において疼痛の軽減をもたらす。
さらに他の実施形態では、本発明の方法を用いて処置される神経学的状態はアルツハイマー病であり、本発明の神経前駆細胞集団の移植は、学習および記憶能力の増大をもたらす。
さらに他の実施形態では、本発明の方法を用いて処置される神経学的状態は外傷性脳損傷(例えば、脳卒中)であり、本発明の神経前駆細胞集団の移植は、歩行運動および/または協調の改善をもたらす。
さらに他の実施形態では、本発明の方法を用いて処置される神経学的状態は、自閉症、統合失調症または精神病を含む神経発達または精神医学的疾患であり、本発明の神経前駆細胞集団の移植は、これらの患者の社会的障害および学習障害などの行動を改善する。
上記処置計画のそれぞれにおいて、本発明の神経前駆細胞の移植は、対象の疾患関連症状に少なくとも10%の改善、より好ましくは、対象の疾患関連症状に少なくとも20%の改善、いっそうより好ましくは、対象の疾患関連症状に少なくとも30%の改善をもたらす。
好ましくは、移植された神経前駆細胞またはその移植細胞から生じた細胞は、対象内で移植後少なくとも1か月、好ましくは2か月、より好ましくは6か月間生存する。
これらの態様ならびに本発明の他の特徴および利点を以下により詳細に記載する。当業者ならば、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態との多くの均等物を認識し、または慣例の実験だけを用いて確認することができるであろう。このような均等物は以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
図1は、APC結合抗CXCR4抗体(図1B)およびAPC結合抗ERBB4抗体(図1D)、または各アイソタイプ陰性対照抗体(図1Aおよび1C)を用いたヒト皮質介在ニューロンのFACSソーティングの効率を示す一連のグラフである。 図1は、APC結合抗CXCR4抗体(図1B)およびAPC結合抗ERBB4抗体(図1D)、または各アイソタイプ陰性対照抗体(図1Aおよび1C)を用いたヒト皮質介在ニューロンのFACSソーティングの効率を示す一連のグラフである。 図1は、APC結合抗CXCR4抗体(図1B)およびAPC結合抗ERBB4抗体(図1D)、または各アイソタイプ陰性対照抗体(図1Aおよび1C)を用いたヒト皮質介在ニューロンのFACSソーティングの効率を示す一連のグラフである。 図1は、APC結合抗CXCR4抗体(図1B)およびAPC結合抗ERBB4抗体(図1D)、または各アイソタイプ陰性対照抗体(図1Aおよび1C)を用いたヒト皮質介在ニューロンのFACSソーティングの効率を示す一連のグラフである。 図2は、各表面マーカー陰性集団対照に比べて、表面マーカー陽性FACSソート細胞集団においてMGE特異的マーカーLHX6、DLX2およびSOX6マーカーの定量的RTPCRにより、富化された発現を示す棒グラフである。 図2Bは、各表面マーカー陰性集団対照に比べて、表面マーカー陽性FACSソート細胞集団においてMGE特異的マーカーLHX6、DLX2およびSOX6マーカーの定量的RTPCRにより、富化された発現を示す棒グラフである。 図3は、各表面マーカー陰性集団対照に比べて、表面マーカー陽性FACSソート細胞集団において他の非MGE型GABA作動性介在ニューロン細胞種のマーカーの定量的RT−PCRにより、大幅に低下した発現を示す棒グラフである。 図4は、APC結合抗CXCR4抗体を用いたソート前細胞集団(上)とFACSソート後の表面マーカー陽性集団(下)における、細胞残渣/死滅細胞(左)およびCXCR4発現細胞純度(右)の違いのフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。 図5は、APC結合抗ERRB4抗体を用いたソート前細胞集団(上)とFACSソート後の表面マーカー陽性集団(下)におけるERBB4発現細胞純度の違いのフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。 図6は、MACS陽性集団とMACS陰性集団の両方を単離するための、磁気MACSソーティング前の表面マーカー陽性細胞のパーセンテージ(ソート前、左)およびMACSソーティングの使用後の表面マーカー陽性細胞の純度(ソート後、右)のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。MACSソーティングは、抗ERBB4ビオチン化一次抗体を用いた後に磁性ビーズに結合された抗ビオチン二次抗体により行った。MACSソート前および後のフローサイトメトリー分析は、APC結合抗ERRB4抗体を用いて行った。 図7は、ソート後フローサイトメトリー分析による表面マーカーERBB4を発現する細胞のパーセンテージとしての、再現性ある、MACSにより単離された表面マーカー陽性および陰性集団のソート後純度をまとめた棒グラフである。 図8は、例示的GABA作動性介在ニューロンマーカー(LHX6、DCX、ERBB4)の富化された発現および非介在ニューロン細胞系譜のマーカーの発現の枯渇を示す、ソート後タンパク質発現を、単離された表面マーカー陽性集団の免疫細胞化学分析により定量した棒グラフである。 図9は、種々の介在ニューロン表面マーカーを発現する細胞のパーセンテージを示す、ソート前神経細胞集団のフローサイトメトリー分析をまとめた表である。 図10は、抗CXCR4抗体を用いてFACSにより単離された表面マーカー陽性集団において、陰性集団に比べて最も上方調節された転写産物の変化倍率を選択マーカーとともに示す、RNAシークエンシング分析による富化された転写産物発現の表である。 図11は、抗CXCR7抗体を用いてFACSにより単離された表面マーカー陽性集団において、陰性集団に比べて最も上方調節された転写産物の変化倍率を選択マーカーとともに示す、RNAシークエンシング分析による富化された転写産物発現の表である。 図12は、抗ERBB4抗体を用いてFACSより単離された表面マーカー陽性集団において、陰性集団に比べて最も上方調節された転写産物の変化倍率を選択マーカーとともに示す、RNAシークエンシング分析による富化された転写産物発現の表である。 図13Aは、抗CXCR4抗体、抗CXCR7抗体、および抗ERBB4抗体を用いてFACSにより単離された陽性細胞集団において最も上方調節された表面マーカーの変化倍率(各陰性集団と比較)を示す、RNAシークエンシング分析による富化された表面マーカー転写産物発現の表である。 図13Bは、抗CXCR4抗体、抗CXCR7抗体、および抗ERBB4抗体を用いてFACSにより単離された陽性細胞集団において最も上方調節された表面マーカーの変化倍率(各陰性集団と比較)を示す、RNAシークエンシング分析による富化された表面マーカー転写産物発現の表である。 図13Cは、抗CXCR4抗体、抗CXCR7抗体、および抗ERBB4抗体を用いてFACSにより単離された陽性細胞集団において最も上方調節された表面マーカーの変化倍率(各陰性集団と比較)を示す、RNAシークエンシング分析による富化された表面マーカー転写産物発現の表である。 図14は、FACSにより単離された表面マーカー陽性集団において、RNAシークエンシングによる種々の細胞系譜を定義することができるマーカーセットおよびこれらのマーカーの変化倍率(各表面マーカー陰性集団と比較)の表であり、富化されたMGE介在ニューロンマーカー転写産物発現および種々の非介在ニューロン細胞系譜のマーカーとなる転写産物の発現の大幅な枯渇を示す。 図15は、FACS(左)またはMACS(右)のいずれかによってソートした、単離された表面マーカー陽性および陰性細胞集団をソート後に再び平板培養したものから採取した細胞培養培地中のGABAのレベルのHPLC分析を示す棒グラフのセットである。 図16は、移植前にセルソーティングにより単離された神経前駆細胞表面マーカー(NPCSM+)陽性細胞の注射後1か月の時点の齧歯類脳におけるヒトHNA+ニューロン前駆細胞の遊走を示すグラフである。 図17は、移植前にセルソーティングにより単離された神経前駆細胞表面マーカー(NPCSM+)陽性細胞の注射から1か月後の齧歯類脳においてGABA作動性介在ニューロンマーカーLHX6、CMAF、およびMAFBを共発現するヒトHNA+細胞の免疫組織化学的定量を示すグラフである。 図18は、移植前にセルソーティングにより単離された神経前駆細胞表面マーカー(NPCSM+)陽性細胞の注射後90日および130日の時点の齧歯類脳において皮質介在ニューロンサブタイプ成熟のマーカーであるSSTおよびCALRを共発現するヒトHNA+細胞の免疫組織化学的定量を示すグラフである。 図19は、成体齧歯類脳における注射部位を示す模式図である。 図20Aは、表面マーカーPLXNA4単独、またはPLXNA4および1つの他のNPCSMの発現に基づくFACSソーティングにより単離された3つの集団を表すグラフを示し、図20Aは、単離された集団の定量的RTPCR分析を示す棒グラフを含む。単離された表面マーカー陽性集団は、表面マーカー陰性集団に比べてGABA作動性介在ニューロンマーカー転写産物の富化、および非介在ニューロンマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT)の枯渇を示す。 図20Bは、単離された集団の定量的RTPCR分析を示す棒グラフを含む。単離された表面マーカー陽性集団は、表面マーカー陰性集団に比べてGABA作動性介在ニューロンマーカー転写産物の富化、および非介在ニューロンマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT)の枯渇を示す。 図21Aは、表面マーカーNPCSM単独、またはPLXNA4および1つの他のNPCSMの発現に基づくFACSソーティングにより、ヒトESC由来神経前駆細胞培養物から単離された3つの集団を表すグラフを示し、図21Aは、単離された集団の定量的RTPCR分析を示す棒グラフを含む。単離された表面マーカー陽性集団は、表面マーカー陰性集団に比べ、GABA作動性介在ニューロンマーカー転写産物の富化、および非介在ニューロンマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT、LHX8、GBX1、ZIC1)の枯渇を示す。 図21Bは、単離された集団の定量的RTPCR分析を示す棒グラフを含む。単離された表面マーカー陽性集団は、表面マーカー陰性集団に比べ、GABA作動性介在ニューロンマーカー転写産物の富化、および非介在ニューロンマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT、LHX8、GBX1、ZIC1)の枯渇を示す。 図22は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM+細胞においてPLEXINA4−NPCSM−細胞集団に比べて上方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図23は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM+細胞においてPLEXINA4−NPCSM−細胞集団に比べて下方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図24は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM+細胞においてPLEXINA4+NPCSM−細胞集団に比べて上方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図25は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM+細胞においてPLEXINA4+NPCSM−細胞集団に比べて下方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図26は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM−細胞においてPLEXINA4−NPCSM−細胞集団に比べて上方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図27は、FACSソーティングにより単離されたPLEXINA4+NPCSM−細胞においてPLEXINA4−NPCSM−細胞集団に比べて下方調節された例示的転写産物の変化倍率を示すRNAシークエンシング分析の表である。 図28は、ソート前(非ソート)、およびMGE型介在ニューロン系譜へ向かって分化している4つの異なるヒトESC系統からNPCSM+およびNPCSM−集団を単離するためのMACSソーティング後のNPCSM+細胞のパーセンテージのフローサイトメトリー分析を示す一連のヒストグラムグラフである。 図29は、MGE型介在ニューロン系譜に向かって分化している4つの異なるヒトESC系統から磁気MACSにより単離されたNPCSM+集団における、NPCSM−集団および非ソート集団に比べての皮質介在ニューロンマーカー転写産物を発現する細胞の富化、およびOLIG2、KI67、ISL1を発現する他の細胞種の枯渇を示す免疫細胞化学分析の一連の棒グラフである。 図30は、hESC由来培養物からソートされたNPCSM+細胞の移植後1か月および2か月の時点の齧歯類脳におけるヒト介在ニューロン成熟を示す種々のマーカーを共発現するヒトHNA+細胞の免疫組織化学分析およびそのパーセンテージの定量の一連の棒グラフである。 図31は、2つの異なるヒトESC系統からセルソーティングにより単離されたNPCSM+細胞の注射後1か月の時点の齧歯類脳におけるヒトHNA+ニューロン前駆細胞の遊走を示すグラフである。 図32は、ヒトESC由来培養物から単離し、ソート後に再び平板培養した、ソート後PLXNA4および/または1つの他のNPCSM表面マーカー陽性細胞集団および陰性細胞集団から採取した細胞培養培地中のGABAのレベルのHPLC分析を示すグラフである。
定義
本明細書で使用する用語は、当業者に理解されているような明瞭かつ通常の意味を有するものとする。以下の定義は本発明を理解する上で読み手を助けることを意図するものであって、明示されていない限り、このような用語の意味に変更、あるいは他の形による制限を与えるものではない。
用語「単離された」は、本明細書で使用する場合、特定の転写産物シグネチャー、例えば、細胞の遊走能および/または分化能の指標となる転写産物の発現を伴う細胞の表現を有する細胞を含む細胞集団の精製または実質的精製を指す。
「幹細胞」は、一般に、(i)自己を再生する能力を有し、かつ(ii)非対称細胞分裂を介して2種類以上の細胞を生じ得る細胞と定義される(Watt他,Science,284:1427−1430,2000)。幹細胞は一般に、始原細胞と呼ばれる複能性細胞の一種を生じる。
「前駆細胞」は、身体のある場所を占める系譜が運命付けられた細胞へ分化することができる細胞である。このような細胞は有糸分裂前または有糸分裂後であり得、限定されるものではないが、始原細胞および分化および/または内在宿主組織との一体化を完全には完了していないが神経系の運命が確立されている細胞が含まれる。
本明細書に記載されているような用語「神経前駆細胞」および「対象とする神経前駆細胞」は、in vitroまたはin vivoで遊走し、GABA産生抑制性介在ニューロンへ分化することができる細胞を指す。このような本発明の前駆細胞は、好ましくは、移植部位から所望の処置部位へ遊走する能力を有する遊走細胞である。このような細胞は、哺乳類脳の、例えばMGE、CGE、LGEまたは別の部分から生じ得る。このような細胞はまた、他の細胞種から分化させるか、またはリプログラミングすることもできる。本発明の方法で使用するための神経前駆細胞は、本明細書にさらに詳細に記載されるように、それらの発現パターンならびにin vitroおよびin vivo活性によってさらに定義される。
発明の詳細な説明
本明細書に記載される技術の実施には、特に断りのない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学(組換え技術を含む)、生化学、治療薬製剤、幹細胞分化の従来の技術および記載を使用することができ、これらは全て当業者の技術の範囲内にある。このような従来の技術には、本明細書に記載の方法に補足的または有用な分化技術、細胞集団を含む治療薬の製剤のための技術、本発明の細胞集団の送達に有用な送達方法などが含まれる。好適な技術の具体的な実例は、本明細書の実施例を参照することにより得ることができる。
このような従来の技術および記載は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,Volumes IおよびII(D.N.Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Mullis他の米国特許第4683195号明細書;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154および155(Wu他編),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編,Academic Press,London,1987);およびHandbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編,1986)などの標準的な実験手引き書に見出すことができ、これらは全て、あらゆる目的で、それらの全内容が参照により本明細書の一部として援用される。
本明細書で参照される転写産物および遺伝子は、本出願の優先日および出願日の時点でWeitzman Institutes GeneCards(登録商標)Human Gene Database (http://www.genecards.org/)および/またはNational Center for Biotechnology Information(全米バイオテクノロジー情報センター)(http:/www.ncbi.nlm.nih.gov)のデータベースに使用されているものなどの命名規則を用いている。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明示しない限り、複数の指示語を含む。よって、例えば、「1つの細胞」という場合には、種々の多能性および発現パターンを有する1以上の細胞を指し、「その方法」という場合には、当業者に知られた等価な工程および方法に対する言及を含むなどである。
そうではないことが定義されない限り、本発明で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に挙げられた刊行物は全て、ここに記載される発明に関連して使用され得る装置、製剤および方法論を記載および開示する目的で、参照により本明細書の一部として援用される。
値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限の間にある各中間値、および他のあらゆる記載の値またはその記載の範囲内の中間値は、本発明の範囲内に包含されると理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限は独立にそのより狭い範囲内に含まれてよく、また、その記載の範囲内の任意の具体的に除外された限界に従って、本発明の範囲内に包含される。記載の範囲が一方または両方の限界を含む場合には、その含まれる限界の両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
以下の記載では、本発明のより完全な理解を提供するために多くの具体的詳細が示される。しかしながら、当業者には、本明細書を読めば、これらの具体的詳細の1または複数を用いずに本発明が実施され得ることが明らかであろう。他の場合では、周知の特徴および当業者によく知られた手順は、本発明を不明瞭とすることを避けるために記載されていない。
本発明は、神経前駆細胞集団、神経前駆細胞集団の作出方法、およびそのような神経前駆細胞集団を使用する処置方法を提供する。これらの細胞に顕著な特徴は、哺乳類の内在組織内で遊走し、機能的抑制性介在ニューロンへ分化する能力である。このような細胞集団は、神経前駆細胞の指標となる特定のシグネチャー転写産物またはマーカーの発現レベルにより同定することができる。このような細胞集団はまた、他の神経細胞種の指標となる他の転写産物の発現レベルの低下により同定することもできる。本発明の神経前駆細胞集団は、移植後に遊走し、機能的抑制性介在ニューロンへ分化する能力を有する。
富化されたニューロン前駆細胞マーカーは、一般に、他の細胞種、例えば、星状細胞、内皮細胞、興奮性皮質ニューロンの中間型始原細胞、小グリア細胞、興奮性皮質投射ニューロン、乏突起神経膠細胞、および興奮性皮質ニューロンの放射状グリア始原細胞の少なくとも2倍は高いレベルを呈する。他の実施形態では、富化されたニューロン前駆細胞マーカーは、一般に、多能性細胞、例えば、未分化ヒトES細胞と比較して、少なくとも2倍は高いレベルのマーカー発現を呈する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも50%が、2以上の神経前駆細胞マーカーにおいて富化された細胞で占められる、神経前駆細胞集団を提供する。他の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも60%が、2以上の神経前駆細胞マーカーにおいて富化された細胞で占められる神経前駆細胞集団を提供する。特定の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも70%が、2以上の神経前駆細胞マーカーにおいて富化された細胞で占められる神経前駆細胞集団を提供する。特定の他の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも80%が、2以上の神経前駆細胞マーカーにおいて富化された細胞で占められる神経前駆細胞集団を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも90%が、2以上の神経前駆細胞マーカーにおいて富化された細胞で占められる神経前駆細胞集団を提供する。
他の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも55%が、ニューロン前駆細胞マーカーの発現が他の神経細胞種の少なくとも2倍以上増加している細胞で占められる神経前駆細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞集団の少なくとも80%が、ニューロン前駆細胞マーカー転写産物の発現が他の神経細胞種の少なくとも2倍以上増加している細胞で占められる。他の特定の実施形態では、細胞集団の少なくとも90%が、ニューロン前駆細胞マーカーの発現が他の神経細胞種の少なくとも2倍以上増加している細胞で占められる。
いくつかの好ましい実施形態では、神経前駆細胞マーカーの発現は、他の神経細胞種での発現の少なくとも10倍増加している。
他の実施形態では、本発明は、細胞集団の少なくとも55%が、細胞の遊走し介在ニューロン、具体的には、GABA発現介在ニューロンへ分化する能力の指標となる2以上、好ましくは3以上、いっそうより好ましくは5以上の神経前駆体マーカーを発現する神経前駆細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞集団の少なくとも70%が、細胞の遊走し介在ニューロン、具体的には、GABA発現介在ニューロンへ分化する能力の指標となる2以上、好ましくは3以上、いっそうより好ましくは5以上の神経前駆体マーカーを発現する。さらに他の実施形態では、細胞集団の少なくとも80%が、細胞の遊走し介在ニューロン、具体的には、GABA発現介在ニューロンへ分化する能力の指標となる2以上、好ましくは3以上、いっそうより好ましくは5以上の神経前駆体マーカーを発現する。
好ましくは、本発明の神経前駆細胞集団は、哺乳類への移植時に抑制性介在ニューロンへ効率的に分化することができる少なくとも55%の神経前駆細胞、より好ましくは、哺乳類への移植時に抑制性介在ニューロンへ効率的に分化することができる少なくとも80%の神経前駆細胞、より好ましくは、哺乳類への移植時に抑制性介在ニューロンへ効率的に分化することができる少なくとも90%の神経前駆細胞、いっそうより好ましくは、哺乳類への移植時に抑制性介在ニューロンへ効率的に分化することができる少なくとも95%の細胞を含む。
本発明の細胞は、本明細書により詳細に記載されるように、種々の適応に対する大規模使用に比類無く適合する。好ましくは、神経前駆細胞集団の少なくとも50%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟し、より好ましくは、神経前駆細胞集団の少なくとも60%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟し、いっそうより好ましくは、神経前駆細胞集団の少なくとも70%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟し、いっそうより好ましくは、神経前駆細胞集団の少なくとも80%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟し、神経前駆細胞集団の少なくとも90%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟し、いっそうより好ましくは、神経前駆細胞集団の少なくとも95%の細胞が、哺乳類中枢神経系または末梢神経系への移植時にGABA作動性抑制性介在ニューロンへ成熟する。
神経前駆細胞集団の作出
特定の実施形態では、本発明の神経前駆細胞集団は、MGE由来ヒト介在ニューロンで発現される1以上の細胞表面タンパク質を用いて富化される。このようなマーカーは、興奮性ニューロンまたは放射状グリアもしくは未分化ヒト多能性幹細胞などの他の細胞種の集団よりもヒト皮質介在ニューロンで豊富に発現される。本発明の神経前駆細胞集団の単離および/または富化に使用するための細胞表面マーカーとしては、限定されるものではないが、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2が含まれる。
他の実施形態では、細胞集団は、より一般的な神経細胞表面タンパク質を用いて単離または富化され、本明細書に記載の神経前駆細胞の富化のための1以上の特定の方法を用いてさらに富化される。例えば、限定されるものではないが、CD24、CD56、CD200、L1CAMおよびNCAM、PSANCAMを含む汎神経マーカーが、本発明の神経前駆細胞を提供するためにさらに富化される細胞集団を単離するために使用され得る。
本発明の神経前駆細胞集団はまた、抗体に基づかない精製方法を用いて、好ましくは、移植時に機能的抑制性介在ニューロンへ分化し、遊走し、かつ/または機能的に一体化する能力を有する前駆細胞が大多数となるように細胞を富化するための別の方法と組み合わせて単離および/または富化されてもよい。このような精製方法には、限定されるものではないが、サイズ選択(例えば、密度勾配、FACSまたはMACSによる)、細胞表面受容体に対する標識リガンドの使用、またはエンハンサー−プロモーターリポーター遺伝子発現の使用もしくは標識表面マーカーの使用によるものが含まれる。
例えば、細胞集団は、まず、胎児神経組織または多能性もしくは神経幹細胞から分化させた細胞などの供給源から、細胞表面マーカー、例えば、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2に対する抗体を用いて単離することができる。次に、細胞集団は、機能的抑制性介在ニューロンへさらに分化する細胞の能力の指標となる神経前駆細胞表面マーカーに基づくさらなる細胞選択を用いてさらに富化することができる。
生体サンプルから神経前駆体を単離するための方法としては、限定されるものではないが、サイズおよび密度による細胞分画;アフィニティークロマトグラフィー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)および磁気セルソーティングなどの高選択性親和性に基づく技術;エンハンサー−リポーターに基づく単離;タグ付きリガンドに基づく単離;および神経前駆細胞の機能的特性に基づく単離が含まれる。例えば、Dainiak MB他,Adv Biochem Eng Biotechnol.2007;106:1−18;Gross A.他,Curr Opin Chem Eng.2013 Feb1;2(1):3−7;Swiers G他、Nat Commun.2013;4:2924;Bonnet D他,Bioconjug Chem.2006 Nov−Dec;17(6):1618−23およびWO2013155222A2を参照されたい。これらは全てその全内容が参照により本明細書の一部として援用される。
他の実施形態では、本発明の神経前駆体は、多能性幹細胞または神経幹細胞集団から分化させることができる。特定の多能性幹細胞および分化に有用であり得る神経分化の種々の方法は、例えば、米国特許出願公開第20150004701号明細書、米国特許出願公開第20140335059号明細書、米国特許出願公開第20140308745号明細書、米国特許出願公開第20140113372号明細書、米国特許出願公開第20130004985号明細書、米国特許出願公開第20120328579号明細書、米国特許出願公開第20120322146号明細書、米国特許出願公開第2011031883号明細書、米国特許出願公開第20110070205号明細書、米国特許出願公開第20110002897号明細書、米国特許出願公開第20100291042号明細書、米国特許出願公開第20100287638号明細書、米国特許出願公開第20090263361号明細書、米国特許出願公開第20090220466号明細書、米国特許出願公開第20080254004号明細書、米国特許出願公開第20070231302号明細書、米国特許出願公開第20070020608号明細書、米国特許出願公開第20060270034号明細書、米国特許出願公開第20060211111号明細書、米国特許出願公開第20060078545号明細書、米国特許出願公開第20060008451号明細書、および米国特許出願公開第20050095702号明細書に開示され、これらは全てその全内容が参照により本明細書の一部として援用される。
いくつかの実施形態では、神経前駆細胞集団は、例えば、MGE、皮質、皮質下部、他の脳領域、または非神経細胞から得られる神経細胞などの細胞のリプログラミングにより作出される。本発明において有用であり得るリプログラミングの方法は、例えば、米国特許出願公開第20150087594号明細書、米国特許出願公開第20150086649号明細書、米国特許出願公開第20130109090号明細書、および米国特許出願公開第20130109089号明細書に開示されている;また、Takahashi,K.他、Cell 131,861−872(2007)および米国特許出願公開第20130022583号明細書も参照されたい。
いくつかの実施形態では、神経前駆細胞集団は、例えば、多能性幹細胞、線維芽細胞、血液細胞、または非神経グリア細胞などの非神経細胞のダイレクトリプログラミングにより作出される(Colasante G他,Cell Stem Cell,2015,17,719−34;Shi Z他,Journal of Biological Chemistry,2016,291(26),13560−70;Sun A他,Cell Reports,2016,16,1942−53)。
治療的投与法
本開示の本発明の神経前駆細胞を動物、特にヒトに投与する方法は本明細書に詳細に記載され、対象の標的部位への本発明の神経前駆細胞の注射または移植を含む。本開示の細胞は、動物への本細胞の注射または移植による導入を補助する送達装置に挿入することができる。このような送達装置には、レシピエント動物の体内へ細胞および流体を注入するためのチューブ、例えば、カテーテルが含まれる。好ましい実施形態では、このチューブはさらに、動物の所望の場所へ細胞を導入することができる針、例えば、シリンジを備えている。本発明の神経前駆細胞は、このような送達装置、例えば、シリンジに種々の形態で挿入することができる。例えば、細胞は、このような送達装置に含まれるにあたり、溶液中に懸濁させることができ、また支持体マトリックスに包埋することもできる。本明細書で使用する場合、用語「溶液」には、細胞が生存を維持する薬学上許容される担体または希釈剤が含まれる。薬学上許容される担体および希釈剤には、生理食塩水、バッファー水溶液、溶媒および/または分散媒が含まれる。このような担体および希釈剤の使用は当技術分野では周知である。溶液は好ましくは無菌であり、かつ、送達を容易にするために流体である。好ましくは、この溶液は、製造および保存の条件下で安定であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどの使用によって、細菌および真菌などの微生物の混入の影響から保護される。本開示の溶液は、薬学上許容される担体または希釈剤および必要に応じて上記で列挙された他の成分に関して本明細書に記載されたように調製した後、濾過除菌を行うことができる。
ヒトでは、注射は一般に、23〜27ゲージの針を備えた滅菌10μlハミルトンシリンジで行われる。細胞を加えたシリンジを、定位固定フレームのヘッドに直接取り付ける。注射針を頭蓋の小穿頭孔を通して所定の座標まで下ろし、40〜50μlの懸濁液を約1〜2μl/分の速度で挿入し、さらに2〜5分拡散させた後に針をゆっくり後退させる。多くの場合、同じ穿刺で1〜3mm離して2回以上に分けて挿入を行い、同じ操作で標的領域に分散して5箇所までの挿入を容易に行うことができる。注射は手でまたは注入ポンプにより行える。針の後退後、手術の完了時に、患者を定位固定フレームから外し、創傷を縫合する。必要に応じて予防用の抗生剤または免疫抑制療法を投与してもよい。
処置可能な治療適応
いくつかの実施形態では、本開示は、変性疾患の処置において有用である。変性疾患は、特定の細胞種、例えば、神経細胞種の減退(例えば、機能、構造、生化学)が有害な臨床状態をもたらす疾患である。例えば、パーキンソン病は、中枢神経系、例えば、大脳基底核の変性疾患であり、律動的筋振戦、動きの固縮、加速歩行、前傾姿勢および仮面様顔貌を特徴とする。本開示の実質的に均質な細胞集団で処置可能な変性疾患には、例えば、パーキンソン病、多発性硬化症、癲癇、ハンチントン病、失調症(変形性筋失調症(dystonia musculmusculorum deformans))および舞踏病アテトーゼが含まれる。
いくつかの実施形態では、本開示は、急性損傷により引き起こされる状態の処置に有用である。急性損傷状態は、1または複数のイベントが有害な臨床状態をもたらす状態である。急性損傷状態をもたらすイベントは、鈍力または圧迫(例えば、外傷性脳損傷の特定の形態)などの外的イベントまたは突発虚血(例えば、脳卒中または心臓発作)などの内的な生理学的イベントであり得る。本発明の細胞集団で処置可能な急性損傷状態としては、限定されるものではないが、脊髄損傷、外傷性脳損傷、心筋梗塞および脳卒中から起こる脳傷害が含まれる。
いくつかの実施形態では、投与される細胞は、初代供給源からの単離または多能性もしくは複能性幹細胞供給源由来細胞の誘導から得られ得る実質的に均質な細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、実質的に均質な集団は、細胞の少なくとも25%がGABA発現細胞となる細胞を含む。いくつかの実施形態では、実質的に均質な集団は、細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%がGABA発現抑制性介在ニューロンとなる細胞を含む。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団を含む細胞の少なくとも25%が、注射部位から少なくとも0.5mm遊走する。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団を含む細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%が、注射部位から少なくとも0.5mm遊走する。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団を含む細胞の大多数が、注射部位から少なくとも1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、または5.0mm遊走する。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団の少なくとも25%が、機能的GABA作動性介在ニューロンとなる。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%が、機能的GABA作動性介在ニューロンとなる。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団の少なくとも25%が、内在ニューロンと一体化する機能的GABA作動性介在ニューロンとなる。いくつかの実施形態では、実質的に均質な細胞集団の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%が、内在ニューロンと一体化する機能的GABA作動性介在ニューロンとなる。
選択された細胞は、培養物から直接使用することができるか、または例えば液体窒素中で凍結保存することにより将来の使用のために保存することができる。他の凍結保存法も当技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第20080057040号明細書が挙げられる。凍結保存する(cryopreserved)場合、本発明の神経前駆細胞は、本発明の神経前駆細胞を移植培地に置く前にまず解凍しなければならない。凍結保存材料が解凍工程後に活性があるように、それらを凍結および解凍する方法は当業者に周知である。
いくつかの実施形態では、本開示は、神経前駆細胞の実質的に均質な細胞集団医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、少なくとも約10または10の実質的に均質な細胞を有する。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、少なくとも約10、10、10、10、または1010の実質的に均質な細胞を有する。本医薬組成物を構成する細胞はまた、少なくとも1つの神経伝達物質、神経栄養因子、抑制性因子、またはサイトカインも発現することができる。
本発明の神経前駆細胞集団は、中枢神経系、例えば、脳もしくは脊髄、または末梢神経系に、例えば、移植または留置することができる。本開示の細胞に関する神経系内での留置部位は、特定の神経学的状態に基づいて決定され、例えば、病変した線条体、脊髄実質、または背側神経節への直接注射がある。例えば、本開示の細胞は、パーキンソン病患者の線条体内またはその近傍に留置することができる。同様に、本開示の細胞は、脊髄損傷患者の脊髄(例えば、頸部、胸部、腰部または仙骨)内またはその近傍に留置することができる。当業者は、患者の神経学的状態および医学的状態の位置に応じて細胞の留置に最も好適な様式(例えば、針注射または留置、より侵襲的な手術)を決定することができる。
本発明の神経前駆細胞集団は、単独でまたは本開示の細胞と有害な反応を起こさない経腸もしくは非経口適用に好適な従来の賦形剤、例えば、薬学上もしくは生理学上許容される有機もしくは無機担体物質との混合物として投与することができる。好適な薬学上許容される担体としては、水、塩溶液(例えば、リンゲル液)、アルコール、オイル、ゼラチンおよびラクトース、アミロースまたはデンプンなどの糖質、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース(hydroxymethycellulose)、およびポリビニルピロリジンが含まれる。このような調製物は滅菌し、所望により、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に作用するための塩、バッファー、着色剤、および/または芳香族物質など、本開示の細胞と有害な反応を起こさない助剤と混合することができる。
非経口適用が必要とされるまたは望まれる場合、本細胞に特に好適な混合物は、注射可能な無菌溶液、好ましくは、油性または水性溶液、ならびに懸濁液、乳剤、またはインプラントである。特に、非経口投与用の担体としては、デキストロース水溶液、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、落花生油、ゴマ油およびポリオキシエチレンブロックポリマーが含まれる。本開示での使用に好適な医薬混合物は当業者に周知であり、例えば、Pharmaceutical Sciences(第17版,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.)およびWO96/05309に記載され、これら両方の教示は参照により本明細書の一部として援用される。
神経前駆細胞集団は、神経学的状態を患うヒトに投与される際には、単独でまたは他の療法と組み合わせて使用することができる。例えば、ステロイドまたは医薬合成薬物を本開示の細胞と併用投与することができる。同様に、脊髄損傷の処置は、脊髄がすでに物理的に安定化されたヒトにおける本開示の細胞の投与/移植を含み得る。
ヒトに移植される細胞の実際の数を含め、ヒトへの本細胞の投与または移植の用量および頻度(単回または複数回投与)は、処置される特定の状態、例えば、変性状態、急性損傷、神経学的状態;大きさ;年齢;性別;健康状態;体重;体格指数;食事;処置される神経学的状態の症状の性質および程度、例えば、早期発症型パーキンソン病か進行したパーキンソン病か;脊髄外傷か脊髄の部分的または完全な断裂か;併用処置の種類、例えば、ステロイド;神経学的状態からの合併症;処置に対する忍容度またはその他の健康関連問題を含む、様々な要因によって異なり得る。変性状態、急性損傷、または神経学的状態を有するヒトは、本開示の細胞、例えば、約10の細胞で1回、または同じ部位もしくは異なる部位に繰り返し処置することができる。処置は、毎月、6か月毎、毎年、年2回、5、10、もしくは15年毎、または、医学的に必要と判断された他のいずれかの適当な期間で実施することができる。
本開示の方法は、ヒト以外の哺乳類において神経学的状態を処置するために使用することができる。例えば、獣医学的処置を必要とする非ヒト哺乳類、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、農用動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット)などである。
以下の例は、当業者に完全な開示ならびに本発明をどのように作製および使用するかの説明を提供するために示され、本発明者らが自らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施された実験の全てまたは唯一のものであることを明示または暗示することを意図した例ではない。当業者には、広く記載されている本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の態様で示される本発明に対して多くの変形および/または修正をなし得ることが認識されるであろう。よって、本態様は、あらゆる点で例示的であって限定的ではないと見なされるべきである。
使用した数字(例えば、量、温度など)については精度を保証すべく努力を行ったが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。そうではないことが示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
実施例1:ヒト皮質からの対象とする神経前駆体の細胞富化
マウス抑制性介在ニューロン前駆体移植は、癲癇、パーキンソン病、自閉症、アルツハイマー病、および神経因性疼痛を含む複数の前臨床モデルの脳および脊髄において効能があることが示されている(米国特許出願公開第20090311222号明細書、米国特許出願公開第20130202568号明細書)。in vivoで遊走し抑制性介在ニューロンへ分化する能力を有する細胞の同定を目的に、ヒト介在ニューロンにおいて、またヒト介在ニューロンの前駆体において新規な転写産物発現を同定するために、RNAシークエンシングを用いて発達中のヒト胎児脳のグローバル遺伝子発現プロファイルを調べた。調べたこれらのマーカーは細胞内マーカーと細胞表面で発現されるマーカーの両方を含んでいた。
特定の例において、胎児ヒト組織から神経前駆体を富化するために3つの細胞表面マーカーを使用した。ヒト胎児脳組織を冷HibE(Thermo Fisher、カールスバッド、CA)中に入れ、オートクレーブ滅菌した手術用具を用いて立体顕微鏡下で切開した。切開した組織(1〜2cm)を、冷HBSS(Thermo Fisher、カールスバッド、CA)を含有する新しいプレートに入れた。
切開した脳組織を、脳組織を冷HBSSバッファーに入れ、それを小片に切断することによってさらに解離させた。切断した組織を冷PBSで2回洗浄し、予温した(4ml)TrypLE(Thermo Fisher、カールスバッド、CA)とともに37℃で10分間インキュベートした。この反応物を、大容量(25〜40ml)の、HBSS中100μg/mlのDNAse(Roche Molecular Systems、プレザントン、CA)および140μg/mlオボムコイド(Worthington、レークウッド、NJ)を用いてクエンチした。次に、前記消化組織から10mlピペットを用いて機械的に細胞を解離させ、この混合物を40umセルストレーナーで濾過した。細胞懸濁液を300xgで5分間遠心分離し、得られた細胞ペレットを冷HBSSで2回洗浄した。次に、細胞を、1%BSA、0.1%グルコースを含む冷HBSS(FACSバッファー)に再懸濁させ、トリパンブルーを用いて計数した。他の形態の組織解離、例えばディスパーゼ、アキュターゼ、パパインもしくはその他の酵素および/または機械的方法の使用も可能である。
ティッシュデバルキング(tissue debulking)は、他の勾配を用いた遠心分離および/または磁性ビーズに基づく分離などの方法を用いて達成した。本実験では、ティッシュデバルキングは、4mlの冷FACSバッファー中およそ2000万個のヒト解離皮質細胞を用い、8mlの冷10%パーコール(Sigma、セントルイス、MO)上に注意深く重層し、500xgで20分間遠心分離することにより行った。次に、ペレットを10ml冷HBSSで2回洗浄し、細胞を冷FACSバッファーに再懸濁させた。
MGE由来皮質介在ニューロンにより発現される3つの神経系細胞表面マーカーCXCR4、CXCR7およびERBB4を、APC結合抗CXCR4抗体(図1Aおよび1B)およびAPC結合抗ErbB4抗体(図1Cおよび1D)の使用を含む、胎児脳からの細胞の抗体に基づく精製を用いた細胞集団の富化に用いた。非染色細胞およびアイソタイプ対照抗体をゲーティング対照として使用した。
およそ500万個のヒト解離皮質細胞を250μlのFACSバッファーに再懸濁させ、ヒトBD Fcブロック(商標)(BD Pharmigen、1:50希釈)とともに4℃で10分間インキュベートした。次に、これらの細胞にAPC結合一次抗体を最終希釈1:25で加え、4℃で30〜40分間インキュベートした。冷FACSバッファーで2回洗浄した後、細胞を、5uM Sytox(登録商標)Blue(Thermo Fisher、カールスバッド、CA)を含む500μlのFACSバッファーに再懸濁させ、セルストレーナーキャップ(Falcon)付きの5mlポリスチレンチューブに回収し、BD FACS−Ariaセルソーター(Beckton Dickonson、フランクリンレーク、NJ)を用いて分析した。Sytox(登録商標)Blueを用いて、死滅(Sytox(登録商標)陽性)細胞を生存(Sytox(登録商標)陰性)細胞から識別した。APC陽性および陰性細胞画分を5mlのNS培地(Neurobasal A、B27(ビタミンA添加)、Pen/streptおよびグルタミン)を含有する15mlチューブ(Corning、Corning NY)に採取した。次に、細胞画分を500xgで5分間遠心分離し、β−メルカプトエタノールを含有する300μlのRLTバッファー(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)に再懸濁させ、−80℃で保存した。あるいは、5000〜10000個のAPC陽性および陰性細胞をマトリゲル(増殖因子低減)でコーティングされた96ウェルプレートに採取し、150μlのNS培地で37℃にて48時間培養した。
MGE系譜の細胞に特異的なマーカーの発現を用いて精製細胞の属性を確認するために、RT−PCRおよび免疫細胞化学などのin vitroアッセイを用いた。ソート細胞(RLTバッファーに回収)のRNAはRNEasyマイクロキット(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて単離し、スーパースクリプトIII逆転写酵素(ThermoFisher、カールスバッド、CA)を用いてcDNAを合成した。RT−PCRは、SYBR(登録商標)グリーンを用いて行った。MGE介在ニューロンを検出するために、LHX6、DLX2およびSOX6に対するプライマーを用いた。
図2に示されるように、FACS精製細胞集団ではMGE特異的マーカーLHX6、DLX2およびSOX6が富化された。それぞれ乏突起神経膠細胞、CGE介在ニューロン、小グリア細胞、興奮性皮質ニューロン、大グリア細胞、周皮細胞、および内皮細胞の夾雑集団を検出するために、OLIG2、SCGN、CSF1R、NEUROD2、AQ4、VAMP1およびFOXC1に対するプライマーを用いた。図3に示されるように、単離された細胞は乏突起神経膠細胞(OLIG2)、CGE介在ニューロン(SCGN)、小グリア細胞(CSF1R)、興奮性ニューロン(NEUROD2)、大グリア細胞(AQ2)、および内皮細胞(FOXC1)のマーカーの発現が低かったことから、FACS精製は夾雑細胞集団をほぼ選別した。例外は、CXCR4を用いて精製された、SCGN、AQ4およびFOXC1を発現する細胞とERBB4を用いて精製された、SCGNを発現する細胞であった。後者の細胞はさらなる特性評価から除外した。
次に、精製された皮質介在ニューロン集団を免疫組織化学により確認した。培養48時間後に、96ウェルプレート内のソート細胞を室温で7分間、4%PFA(Affimetrix、サンタクララ、CA)中で固定し、PBSで洗浄した。次に、細胞を含有するウェルをブロッキング溶液(10%ロバ血清(Sigma、セントルイス、MO)、1%BSA(Sigma、セントルイス、MO)、0.1%トリトンX100、0.1%アジ化ナトリウムおよびPBS)で1時間ブロックした。固定された細胞を一次抗体とともに4℃で一晩、次いで、Alexa Fluor蛍光結合二次抗体(ThermoFisher、カールスバッド、CA)とともに室温で2時間インキュベートした。介在ニューロンを同定するために用いた抗体は、GABA(Sigma、セントルイス、MO)、VGAT(Synaptic Systems、ゲッティンゲン、ドイツ)、GAD65/67(Millipore、テメキュラ、CA)、およびDLX2であった。MGE由来介在ニューロンを同定するために、LHX6に対する抗体(Santa Cruz、ダラス TX)、MAFBに対する抗体(Sigma、セントルイス、MO)、およびCMAFに対する抗体(Santa Cruz、ダラス TX)を用いた。他の抗体は、それぞれCGE由来介在ニューロン、未熟ニューロン、乏突起神経膠細胞、放射状グリア/星状細胞、小グリア細胞、増殖細胞、およびアポトーシス細胞を検出するためのSP8、DCX、OLIG2(Millipore、テメキュラ、CA)、GFAP(Millipore、テメキュラ、CA)、IBA1およびPU1(Millipore、テメキュラ、CA)、KI67、および切断型カスパーゼ3(Millipore、テメキュラ、CA)に相当した。染色された細胞を分析し、ライカDmi8顕微鏡で画像を得た。
CXCR4+細胞はヒト核抗原(HNA)、神経芽細胞マーカーDCXおよびMGEマーカーLHX6を発現し、大多数はMGEマーカーMAFBおよび小胞GABA輸送体(VGAT:vesicular GABA transporter)を発現していた。ERBB4およびCXCR7抗体を用いて単離された細胞はまたほとんどVGATを発現していた。これらの結果は、FACSで精製された細胞集団は増殖細胞および乏突起神経膠細胞の夾雑が最少であったことを示した。
精製された細胞集団は、ソート前の細胞集団よりも残渣が少なく、死滅細胞が有意に少なかったことを示した。妊娠18週(GW18)の脳由来の皮質組織を解離させた。解離した細胞をCXCR4抗体でソートし、ソートされた細胞を新生(P0〜P2)仔マウスに移植した。図4に示されるように、ソート前の細胞は、細胞残渣(P5)および死滅(BV421−A+)細胞の大集団を含んでいる(図4Aおよび4B)が、CXCR4マーカーを用いてソートした細胞は少量の細胞残渣のみを含み(P5)、死滅(BV421−A+)細胞はほとんどなかった(図4Cおよび4D)。ERBB4神経系細胞表面マーカーを用いてソートした細胞でも同じことが見られた(図5Aおよび5B)。
富化方法により細胞の特徴に偏りが無いか確認するために、次に、磁気活性化セルソーティング(MACS)を用いて細胞を単離した。1000万個のヒト解離皮質/MGE細胞を500μlのバッファーに再懸濁させ、ヒトBD Fcブロック(商標)とともに4℃で10分間インキュベートした。次に、これらの細胞にビオチン化一次抗体を加え、4℃で30〜40分間インキュベートした。冷バッファーで2回洗浄した後、細胞を、抗ビオチンマイクロビーズを含有するFACSバッファーに再懸濁させ、4℃で30分間インキュベートした。バッファーで2回洗浄した後、細胞を500μlのバッファーに再懸濁させ、磁石上に保持したLSカラムに添加した。通過画分を「陰性ソート」として回収し、結合した材料を3回洗浄した。次に、このカラムを磁石から外し、5mlのFACSバッファーを加え、「陽性画分」を回収した。その後、細胞画分をフローサイトメトリーまたは免疫染色により分析した。
図6は、細胞表面マーカー陽性および陰性集団を分離するための磁性ビーズ結合抗神経前駆細胞表面抗体および磁気カラムソーティングとその後の、磁気分離の純度を決定するためのソート後フローサイトメトリー分析を用いてヒト皮質介在ニューロンのMACSソーティングの効率を示すグラフを示す。ヒト皮質サンプルのERBB4+細胞(「ソート前」)は、陽性磁気カラム結合画分(「ソート後陽性」)では富化されていたが、通過画分(「ソート後陰性」)では枯渇していた。図7は、ヒト皮質サンプルの細胞の細胞表面マーカーソーティングのMACS分離効率の概要(n=7)を示すグラフである。
ヒト皮質組織からのMACSソート集団を、免疫細胞化学(ICC:immunocytochemistry)分析により分析した。培養48時間後に、96ウェルプレート内のソート細胞を室温で7分間、4%PFA(Affimetrix、サンタクララ、CA)中で固定し、PBSで洗浄した。次に、細胞を含有するウェルをブロッキング溶液(10%ロバ血清(Sigma)、1%BSA(Sigma)、0.1%トリトンX100、0.1%アジ化ナトリウムおよびPBS)で1時間ブロックした。固定された細胞を一次抗体とともに4℃で一晩、次いで、二次抗体とともに室温で2時間インキュベートした。使用抗体には、LHX6(Santa Cruz)、SP8、DCX、OLIG2、GFAP、NEUROD2、SOX10(Millipore)およびERBB4を含んだ。二次抗体には、AlexaFluor結合抗体(ThermoFisher)を含んだ。染色された細胞を分析し、ライカDmi8顕微鏡で画像を得た。全細胞数を、DAPI染色を用いて決定した。
図8は、介在ニューロンマーカー(LHX6、SP8、DCX、ERBB4)に関して富化され、かつ、投射ニューロン(NEUROD2)、乏突起神経膠細胞(OLIG2、SOX10)、および星状細胞/放射状グリア(GFAP)などの他の細胞系譜のマーカーに関して枯渇されるMACSソートERBB4+集団のICC分析(n=4の独立した実験)を示すグラフである。
実施例2:ヒト皮質由来細胞における対象とする神経前駆体のマーカーの発現の増加
対象とする神経前駆細胞の特異的マーカーの発現を、ヒト皮質から単離された細胞において調べた。次に、実施例1に関して調製したヒト皮質由来介在ニューロンのFACSソート集団のRNA配列分析を行った。3つの精製細胞集団(CXCR4選別、CXCR7選別およびERBB4選別)のそれぞれならびに標準的な技術を用いて、選別しなかった各サンプルの細胞からmRNAを単離し、RNeasy RNA精製キット(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いてmRNAを精製し、S.Wang他,Plant Cell Rep.(2014)33(10):1687−96に記載の方法に従ってRNAシークエンシングを行った。アダプター連結およびPCR増幅の後に、ライブラリーをクラスター化し、配列を決定した。
各群のmRNA−FACS選別細胞集団および非選別細胞集団からのmRNA−をバルク細胞RNAシークエンシング(Wang他,同上)にかけ、発現分析を行い、対応するサンプル由来の非選別細胞に比べてFACS選別細胞で発現に最も大きな変化がある転写産物を同定した。要するに、Illumina Hiseq(登録商標)2500にてサンプルの配列決定を行い、質の低いリードをトリミングし、残りの質の高いリードを次の参照ゲノム−HomoSapiens Hg19 GRCh37:http://hgdownload.cse.ucsc.edu/downloads.html#humanに対してマッピングした。各遺伝子に関してRPKM値を計算し、群間で比較した。
例示的細胞表面マーカーの発現を図9に示す。最も富化された30の転写産物を選択介在ニューロンマーカー富化転写産物とともに、各個の細胞表面マーカーCXCR4(図10)、CXCR7(図11)およびERBB4(図12)に関して図10〜12に示す。CXCR4選別、CXCR7選別およびERBB4選別細胞集団において最も富化された表面マーカー転写産物をそれぞれ図13A、13Bおよび13Cに示す。
ソート集団の細胞種組成を評価するために、種々の系譜のマーカーのパネルを、それらの各陰性集団に比べてのNPCSM陽性集団における転写産物の変化倍率とともに示す。NPCSM+集団ではMGE型およびCGE型介在ニューロンマーカー転写産物が富化されるが、非介在ニューロン細胞系譜のマーカーとなる転写産物は大幅に低下する(図14)。
実施例3:選別された神経前駆体におけるGABA発現
細胞表面マーカー(例えば、CRCX4、CRCX7、またはERBB4)を発現するヒト皮質組織から調製した神経前駆細胞は、FACSソーティングまたはMACSソーティングのいずれかによる富化および培養の後にin vitroでGABAを発現および分泌することが示された。ヒト皮質組織から細胞をソートして5日後、神経前駆細胞マーカー陽性および神経前駆細胞マーカー陰性細胞培養物をGABA分泌に関してHPLC分析により分析した。図15は、ヒト皮質サンプルからのを用いたFACS(左のパネル)またはMACS(右のパネル)培養神経前駆細胞マーカー陽性集団においてGABA分泌の増加を示す。
実施例4:マウス脳に移植されたヒト皮質由来の細胞表面マーカー陽性細胞の前後方向の遊走と運命
ヒト皮質組織から富化された神経前駆細胞マーカー陽性細胞の、in vivoで遊走し介在ニューロンへ分化する能力を判定するために、FACSまたはMACSによりソートされた神経前駆細胞マーカー陽性細胞を濃縮し、新生仔マウス皮質に移植した。濃縮細胞懸濁液を、油圧式インジェクターに取り付けた面取りガラスマイクロピペット(Wiretrol 5μl、Drummond Scientific Company)に装填した。P0〜P2新生仔SCIDマウスを低体温法により麻酔し、注射プラットフォーム上のクレイヘッドモールド内に配置した。定位固定装置を用い、注射部位当たり所定数の細胞を各仔マウスの大脳皮質の正中(矢状洞)から1.0mm、ラムダから2.6mmおよび皮膚表面から深度0.3mmに経頭蓋的に注射した。これらの細胞を免疫組織化学分析法まで動物においてin vivoで遊走および分化させた。
齧歯類脳におけるヒト神経前駆細胞の遊走および分化は、ヒト特異的マーカーHNAに対する抗体による染色、および介在ニューロンの既知のマーカーに対する抗体による同時染色を用いて同定した。簡単に述べれば、インキュベーション期間の後にマウスを犠牲にし、脳組織を4%PFAで4℃にて48時間固定し、PBSで洗浄した。組織ブロックをクリオスタットで切片とし、使用まで−80℃で保存した。凍結切片を一次抗体とともに4℃で一晩、次いで、二次抗体とともに室温で2時間インキュベートした。DCXおよびGABAに対する抗体を用いて介在ニューロンを検出した。LHX6、CMAFおよびMAFBに対する抗体を用いてMGE型皮質介在ニューロンを検出し、COUP−TFIIおよびSP8に対する抗体を用いてLGE/CGE型介在ニューロンを検出した。
遊走性介在ニューロンに特徴的な注射部位から新生仔マウス皮質への前後方向のHNA+/DCX+細胞の遊走を図16に示す。マウス皮質に種々の用量(25、50、100および200×10細胞/挿入)で移植した、ヒト皮質からソートした細胞表面マーカー陽性細胞を同定するために、注射後に染色を行った。ヒトHNA+細胞は移植30日後(DPT)にマウス脳に存続し、介在ニューロンマーカーC−MAF、MAF−B、LHX6、およびGABAも発現した。90DPTにおいて、細胞はなおGABAを発現していた。マウス皮質における30DPTの介在ニューロンマーカーLHX6、C−MAF、およびMAF−Bを発現するHNA+細胞の定量を図17に示す。90DPTおよび130DPTにおける、より成熟した介在ニューロンサブタイプマーカーSSTおよびCALR(SP8を伴うまたは伴わない)を発現するHNA+細胞の定量を図18に示す。
実施例5:ソートされたヒト皮質細胞の成体ラットCNSへの移植
ヒト皮質組織から富化された神経前駆細胞マーカー陽性細胞の、in vivoの成体脳において遊走し介在ニューロンへ分化する能力を決定するために、FACSまたはMACSによりソートされた神経前駆細胞マーカー陽性細胞を濃縮し、成体ラットの海馬に移植した。細胞集団をまず、CXCR4またはERBB4のいずれかに対する抗体によりソートした。濃縮細胞懸濁液を、油圧インジェクターに取り付けた面取りガラスマイクロピペット(Wiretrol 5μl、Drummond Scientific Company)に装填した。成体RNUラットを低体温法により麻酔し、注射プラットフォーム上のクレイヘッドモールド内に配置した。注射部位を図19に模式的に示す。
定位固定装置を用い、注射部位当たり所定数の細胞を成体ナイーブラット海馬に注射した。細胞を免疫組織化学分析法までラットにおいてin vivoで遊走および分化させた。71DPTに冠状切片を採り、HNAならびに介在ニューロンマーカーMAFB、LH6XおよびGABAに対する抗体を用いて染色した。HNAおよび介在ニューロンマーカー陽性の細胞が海馬内に分散して見られ、これらの細胞は遊走性介在ニューロンの形態を呈した。
次に、ヒト皮質からソートされた神経前駆細胞の、成体罹患哺乳類CNSにおいて遊走および分化する能力を、カイニン酸により誘発されるラット癲癇モデルおよび脊髄挫傷を有するラットの両方を用いて調べた。ソートされた濃縮細胞をカイニン酸により誘発される癲癇成体ラット海馬または損傷のある脊髄に移植し、上記のようにin vivoで細胞を遊走させた。71日後、移植細胞を受容したCNS切片は、海馬または脊髄内に分散したヒトHNA+DCX+二重陽性細胞を含んでおり、これらの細胞は両方とも介在ニューロンマーカーLHX6を共発現し、遊走表現型を呈した。
実施例6:ヒト基底核隆起およびヒトESC由来培養物からの細胞におけるPLEXINA4細胞の富化および対象とする神経前駆体のマーカーの発現増加
妊娠20週のヒト基底核隆起(内側、尾側、および外側)は、神経前駆細胞表面マーカー(「NPCSM」)(例えば、CRCX4、CRCX7またはERBB4)およびPLEXINA4の両方を発現する細胞集団を含むことが判明している(Hoch RV他,Cell Rep.2015,July 21,12:3 484−492)。内側GEには、比率的に多いPLEXINA4単一陽性細胞といくらかのNPCSM単一陽性細胞が見られる。染色hESC由来培養物がMGE系譜へ向けて分化していた場合には、類似の発現パターンが検出された。
ヒト皮質由来の細胞に関して本明細書に記載されるように、対象とする神経前駆細胞に関して細胞を富化するためにNPCSM(例えば、CRCX4、CRCX7またはERBB4)を用いてヒト胎児MGEから細胞を単離し、これらの富化細胞に対して発現分析を行い、対応するサンプル由来の非選別細胞に比べてFACS選別細胞で発現に最も大きな変化がある転写産物を同定した。要するに、Illumina Hiseq(登録商標)2500にてサンプルの配列決定を行い、質の低いリードをトリミングし、残りの質の高いリードを次の参照ゲノム−HomoSapiens Hg19 GRCh37:http://hgdownload.cse.ucsc.edu/downloads.html#humanに対してマッピングした。各遺伝子に関してRPKM値を計算し、群間で比較した。
PLXNA4+NPCSM+二重陽性、PLXNA4−NPCSM−二重陰性、PLXNA4+NPCSM−、およびPLXNA4−NPCSM+単一陽性集団を、結合剤を用いて単離した。PLXNA4−NPCSM+およびPLXNA4+NPCSM+集団を単離するためにはNPCSM+結合剤だけを用いればよいことに留意されたい。これらの集団は、細胞表面マーカーに対する抗体を用いてFACSソーティングによりヒト内側GEから単離された。これら3つの細胞集団の相対的遺伝子発現レベルは、qRT−PCR(本明細書に記載の通りに実施)により決定した。NPSCM+二重陽性集団は、全mRNAレベルに対して、介在ニューロンマーカー転写産物(LHX6、ERBB4、MAFB、CMAF、GAD1、SOX6、DLX2)に関しては富化され(図20Aおよび20B)、かつ、他の細胞系のマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT)に関しては枯渇されている。PLXNA4単一陽性集団もまた、介在ニューロンマーカー転写産物に関しては富化されているが、PLXNA4+NPSCM+集団よりも低レベルであり、おそらくはより未熟な発達段階を反映している(図20Aおよび20B)。
次に、ヒトMGE組織由来のこれら3つのFACSソート細胞集団の組成を免疫細胞化学(ICC)分析によりさらに特性評価した。MGE始原マーカーNKX2.1およびOLIG2はNPCSM+細胞で下方調節され、かつ、介在ニューロンマーカーLHX6およびERBB4はNPCSM+細胞で上方調節されており、この発現は未分化hES細胞における発現レベルに対する変化倍率(fold change)として測定した。LHX6はまたPLXNA4+NPSCM−細胞でも上方調節されていたが、PLXNA4−NPSCM−細胞には検出可能なレベルで存在しなかった。
同様に、二重陰性、二重陽性、およびNPCSM+単一陽性集団もヒトESC由来MGEパターン培養物から、NPCSMに対する抗体を用いてFACSソーティングにより単離した。これら3つの細胞集団における相対的遺伝子発現レベルを、本明細書に記載通りにqRT−PCRにより決定した。NPSCM+単一陽性集団は、全mRNAレベルに対して、介在ニューロンマーカー転写産物(LHX6、ERBB4、MAFB、CMAF)に関して富化され(図21A)、かつ、他の細胞系譜のマーカー(OLIG2、ISL1、CHAT、LHX8、GBX1およびZIC1)に関しては枯渇されている。PLXNA4+NPCSM+二重陽性集団も上記のような介在ニューロンマーカー転写産物に関しては富化されているが、NPSCM+単一陽性集団よりも低レベルであり、おそらくはより未熟な発達段階を反映している(図21Aおよび21B)。
ヒトMGEからのPLXNA4−NPCSM−、PLXNA4+NPCSM−、およびPLXNA4+NPCSM+FACS精製集団を比較するグローバル遺伝子発現分析をRNAシークエンシング(RNAseq)により調べた。挙げられている上位遺伝子は、単一または二重陽性集団において上方調節または下方調節されていた。
RNA配列分析は高度に富化されたマーカー転写産物を特定した。なお、これらは表1〜3および図22〜27の各群の、他の表面マーカーソート細胞に比べての発現値の変化倍率により比較される。表1は、全ての富化された差次的発現転写産物を、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団における、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べた変化倍率により示す。表2は、全ての富化された差次的発現転写産物を、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団における、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べた変化倍率により示す。表3は、全ての富化された差次的発現転写産物を、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団における、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べた変化倍率により示す。図22は、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団において、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて富化された上位30の神経前駆細胞マーカーを、さらなる例示的介在ニューロンマーカーとともに示す。図23は、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団において、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて枯渇した上位20のマーカーを、例示的表面マーカーとともに示す。図24は、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団において、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて発現が増加した上位16の神経前駆細胞マーカーを示す。図25は、PLEXINA4+NPCSM+ソート集団において、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて発現が低下した上位23のマーカーを示す。図26は、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団において、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて発現が増加した上位20の神経前駆細胞マーカーを示す。図27は、PLEXINA4+NPCSM−ソート集団において、PLEXINA4−NPCSM−ソート集団でのこれらのマーカーのレベルに比べて発現が低下した上位20のマーカーを示す。
表1:PLEXINA4+NPCSM+細胞におけるPLEXINA4−NPCSM−細胞に対する変化倍率による転写産物
表2:PLEXINA4+NPCSM+細胞におけるPLEXINA4+NPCSM−細胞に対する変化倍率による転写産物
表3:PLEXINA4+NPCSM−細胞におけるPLEXINA4−NPCSM−細胞に対する変化倍率による転写産物
実施例8:hESC培養物からの対象とする神経前駆体の生産
ヒトES細胞(ESC)系統は、ビトロネクチン支持体(ThermoFisher)上のTESR−E8培地(Stem Cell Technologies)中で培養した。ヒトESCを、MGE型の介在ニューロンを誘導するために特定の時点で添加される最適なモルフォゲンカクテルを用い、MGE型の培養物へ分化させた(14/763,397,Nicholas C他,Cell Stem Cell.2013,12(5):573−86に詳細に記載される通り)。これらの細胞は、上記実施例に詳細に記載した通り、ヒト皮質細胞およびヒトMGE細胞の両方に使用されたセルソーティング技術を用い、対象とする神経前駆体に関してさらに富化することができる。
磁気ソーティングは、MGE型の介在ニューロン系譜に向かって分化している4つの異なるヒトESC系統からNPCSM陽性細胞(例えば、CRCX4+、CRCX7+またはERBB4+)に関して効率的に富化する。図28は、4つの異なるESC系統からの非ソートhESC由来培養物におけるNPCSM陽性細胞のパーセンテージ(上段)を陽性ソート画分(中段)、および陰性ソート画分(下段)と比較して示すフローサイトメトリーヒストグラムプロット例示的セットを示す。
hESC由来培養物から単離された非ソート画分、NPCSM陽性ソート画分およびNPCSM陰性ソート画分のICC分析は、NPCSM陽性画分において、ERBB4、LHX6およびMAFBを含む介在ニューロンマーカーの富化、ならびに始原細胞マーカー(OLIG2およびKi67)および投射ニューロンマーカー(ISL1)の枯渇を示す(図29)。hESC由来神経前駆体集団におけるこれらのマーカーの発現の増大または低下は、これらのマーカーはin vivoで遊走しGABA産生細胞へ分化する能力を有する細胞にて富化されることから、移植のために対象とする細胞集団を同定することができる。このような細胞集団は、分化、陽性選択、または神経前駆細胞の指標とはならない細胞マーカーを発現する細胞の枯渇により富化され得る。
hESCから分化したMGE様細胞集団を、NPCSM陽性集団で枯渇され、かつ、NPCSM陰性集団で富化される他の表面マーカーに対する抗体を用いるFACS分析によりさらに特性評価した。NKX2.1:eGFP hESC由来MGE様培養物から精製したCD98陰性細胞は、有糸分裂後遊走性ニューロンのマーカーであるDCXに関して富化された。加えて、増大したCD271発現レベルは、その後、hESC細胞がMGE様培養物に分化するにつれ経時的に減退した。FACS分析を用い、NKX2.1:eGFP hESC由来MGE様培養物から精製されたCD271陰性細胞は、有糸分裂後遊走性ニューロンのマーカーであるDCXに関して富化されることが示された。
実施例9:対象とするhESC由来神経前駆細胞はマウス脳に生着する(engraft)ことができる
上記のように選択されたhESC由来神経前駆細胞(PLEXINA4+単一陽性、NPCSM+単一陽性、またはPLEXINA4+NPCSM+)を次に、in vivoで遊走しGABA産生細胞へ分化するそれらの能力に関して試験した。ソート細胞を上記のように免疫不全SCID新生仔マウス皮質に移植し、マウス脳内で遊走させ、分化させた。生着1か月後に、ヒトHNA+細胞は、DCX、MAFB、LHX6、およびGABAを含むMGE型皮質介在ニューロンのマーカー発現を示した。移植細胞内ではSP8の発現はほとんどまたは全く検出されず、これらの介在ニューロンがLGE型またはCGE型の介在ニューロンではなかったことを示す。
hESC由来培養物からソートした神経前駆体を免疫不全マウス皮質に注射した後1か月および2か月の時点での免疫組織化学によるヒトHNA+細胞マーカー発現の定量は、NKX2.1の下方調節およびcMAFの上方調節による皮質介在ニューロン成熟、MAFB発現の維持、ならびに増殖細胞(Ki67)の不在を示す(図30)。マウス皮質に注射された2つの異なるhESC系統からのソート細胞は、確かなヒト細胞生着、および既に述べたようなヒト胎児皮質由来NPCSM+細胞の移植後の遊走性介在ニューロンに似た皮質中の遊走をもたらした(図31)。PLXNA4+NPCSM+およびNPCSM+のソートされたhESC由来MGE様神経前駆細胞もまた、精製後さらに3〜5週間培養した際に、NPCSM陰性集団に比べて高いレベルのGABAを分泌することが示された(図32)。
実施例10:対象とするhESC由来神経前駆細胞は成体ラットCNSに生着することができる
hESC由来MGE様培養物からMACS精製したNPCSM陽性細胞は、側頭葉癲癇(TLE:temporal lobe epilepsy)の免疫不全ラットモデルにおいて成体海馬に生着することが示された。生着3週間で、これらのヒト細胞は遊走性介在ニューロンのマーカー発現(DCXおよびNKX2.1)を示した。移植細胞内では、それぞれLGEおよびCGE由来介在ニューロンおよび増殖のSP8またはKi67発現マーカーはほとんどまたは全く検出されなかった。
ヒトESCに由来するNPCSM+MACS−でソートされた神経前駆細胞も、挫傷後の成体ラット脊髄に移植した。移植1か月後にマウスを犠牲にし、それらの脊髄をヒト細胞の遊走および分化に関して分析した。脊髄内のヒトHNA+細胞は遊走しており、MAFBおよびLHX6を含む皮質介在ニューロンマーカーが陽性であり、介在ニューロン系譜に向けた分化が証明される。
実施例11:本発明の神経前駆細胞集団による発作性疾患の処置
本発明の神経前駆細胞集団を、急性および慢性発作を軽減する能力に関して調べる。in vivoにおける抑制性介在ニューロン機能の回復または増強は脳へのMGE細胞の移植により達成され、このような細胞は、注射部位から0.75mm〜5mmの間に分布を有する宿主新皮質において遊走することが証明されている(U.S.20090311222、U.S.9,220,729およびAlvarez−Dolado他,J Neurosci.2006 Jul 12;26(28):7380−9を参照されたい)。本発明の神経前駆細胞集団が癲癇のマウスモデルで遊走し急性発作性疾患を軽減するものと同じ能力を有することを証明するために以下の実験を行う。
KCNA1にドミナントネガティブミスセンス突然変異を有するヒトまたはKv1.1/Kcna1の劣性ノックアウトを有するマウスでは、自発的強直間代発作が報告されている(Zuberi SM他,Brain.1999 May;122:817−25)。これらのマウスで自発的発作を監視するために、長期ビデオ脳波検査(EEG:electroencephalography;Methods for full description of electrographic phenotypesを参照)を行う。Kv1.1−1−マウスのEEGは、10〜340秒持続し、1時間当たり2回以上起こる重度の全身性エレクトログラフィック発作を示し、齢の適合する野生型兄弟では、エレクトログラフィック発作または高電位スパイクは全く見られなかった。ビデオ監視により、発作性痙攣エピソード中の強直間代S4発作挙動(例えば、強直性背曲げ、尾伸ばし、それに次ぐ、前肢クローヌス、およびその後の同期的前肢および後肢クローヌス)を確認した。
側頭葉癲癇(TLE)は、患者を衰弱させる自発的再発性発作を特徴とする一般的な発作性疾患である。現在、多くの患者が抗癲癇薬に応答せず、侵襲性の高い側頭葉切除などの限られた治療オプションしかない。ほとんどの場合、癲癇病巣の外科的切除の後であっても、やがて発作が戻る。抑制性GABA作動性シグナル伝達の欠陥が、TLEの既知の原因の1つである。海馬へのGABA作動性介在ニューロンの移植は、TLE患者を処置するための有望な治療アプローチである。発作は一般に、神経回路の過活動または過剰興奮を含み、脳機能を障害する。新たな介在ニューロンが脳の興奮/抑制バランスを抑制側へ移行する。NPCSM+介在ニューロン移植の治療能を評価するために、TLEの成体ラットおよびマウスカイニン酸モデル(Rattka他,Epilepsy Research,2013,103,135−52)およびピロカルピンモデル(Borges K他,Experimental Neurology,2003,21−34)が使用される。
反復性の低用量カイニン酸でTLE型発作を誘発するために、動物にラシーンスケールでステージ5の発作を発症するまで毎時5〜15mg/kgのカイニン酸のIP注射を行う。これらの動物に30〜90分の発作を受けさせた後に、発作を終結させるために10mg/kgのジアゼパム(IP)を投与する。ピロカルピンで癲癇重積を誘発するために、これらの動物をスコポラミン(1mg/kg、30分)で予め処置した後に、そのまま100〜500mg/kgのピロカルピンIPを注射する。スコポラミンの前処置は、ピロカルピンの末梢作用を遮断する。細胞移植の有効性および安全性を評価する目的で発作頻度および持続時間を測定するために、ビデオおよびEEG記録および行動試験を用いる。
本発明の神経前駆細胞集団を約1,000細胞/nlに濃縮する。濃縮細胞懸濁液を面取りガラスマイクロピペット(Wiretrol 5μl、Drummond Scientific Company)に装填し、油圧式インジェクターに取り付けた。癲癇動物を低体温法により麻酔し、注射プラットフォーム上のクレイヘッドモールド内に配置した。定位固定装置を用い、注射部位当たり25〜50,000細胞を各動物の脳(限定されるものではないが、皮質、線条体、海馬、視床、扁桃体、鉤状回、嗅内皮質を含む)の正中(矢状洞)から1.0mm、ラムダから2.6mmおよび皮膚表面から深度0.3mmに経頭蓋的に注射した。
報告されているように(Smart 1999;Wenzel 2007;Glasscock 2007)、Kv1.1−1−マウスは、出生後2〜3週の間に始まる頻繁な自発性発作を示し、出生後8週を超えて生存せず、突然死はおそらく癲癇重積に関連する心肺不全によるものである。対照的に、P2に本発明の神経前駆細胞を移植したKv1.1−1−マウスは、出生後10週を過ぎても十分に生存し、エレクトログラフィック発作活性の軽減を示す。発作イベントの頻度を非移植マウスと比較する。カプランマイヤー生存プロットは、本発明の神経前駆細胞集団の移植が成功したKv1.1変異マウスについては明瞭かつ統計的に有意な右側へのシフトを示す。同様に、TLEモデルは、動物が1日1回を超える自発的再発性発作を生じるまでの、その状態の後に数週間の潜伏期、その後の発作頻度の立ち上がり期を示す。本発明の神経前駆細胞を注射した成体動物は、エレクトログラフィックEEG記録および/または行動的発作分析により測定した場合に、自発的発作活性の有意な軽減(発作頻度、持続時間、および/または重篤度の軽減)を示す。
実施例12:本発明の神経前駆体でのパーキンソン病の処置
パーキンソン病(PD)は、米国および欧州で100,000人におよそ150人が罹患している。PDは、運動障害ならびに認知および自律神経機能不全および気分障害を特徴とする。PDの4つの基本的特徴は、TRAPの頭文字で分類することができる:安静時振戦(Tremor at rest)、筋強剛(Rigidity)、無動(Akinesia)(または動作緩慢)および姿勢反射障害(Postural instability)。さらに、屈曲姿勢およびすくみ反応(運動遮断)も、PDを最も一般的な形態とするパーキンソン症候群の古典的特徴の中に含まれている。既存の処置はPDの症状を減弱することはできるが、治癒はない。
PDの運動症状は、主として、軸索投射を線条体へ延長しドーパミンを放出する黒質緻密部(SNc:substantia nigra compacta)におけるドーパミン含有ニューロンの欠損から起こる(総説としては、Litvan他,2007,J Neuropathol Exp Neurol.2007 May;66(5):329−36を参照されたい)。SNcおよび線条体は、動きを制御するために抑制性および興奮性シグナルを統合する核のネットワークである大脳基底核に属す。PDにおけるSNc細胞の欠損は、線条体へのドーパミン放出量を減らし、大脳基底核の出力を阻害し運動低下の徴候をもたらす神経伝達物質のアンバランスを生じる(総説としては、DeLongおよびWichmann,2007,Arch Neurol.2007 Jan;64(1):20−4を参照)。
MGE細胞の移植は、大脳基底核の回路活性を修正するドーパミンに基づかない戦略として、ドーパミン作動性の入力の減少により起こるパーキンソン病の運動症状を処置できる(米国特許出願公開第20130202568号明細書参照)ことがこれまでに証明されている。簡単に述べれば、MGE細胞を十分に確立されたPDモデルである、6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)で処置したラットの線条体に移植する。この処置は、MGE細胞の、移植後に宿主の脳内で遊走し、機能的に一体化し、抑制のレベルを高める能力に頼るものである。移植MGE細胞は、注射部位から遊走し、宿主の線条体に分散した。ほとんどのMGE移植細胞は成熟したニューロンの表現型を獲得し、ニューロンマーカーおよびGABA作動性マーカーを発現していた。加えて、移植細胞は、CB、CR、CB、およびSomなどの線条体GABA作動性介在ニューロンに特徴的な様々なマーカーを発現していた。最後に、MGE移植細胞は、ラット6−OHDAモデルにおいて、生理学的に成熟し、宿主回路に組み込まれ、PDの運動症状を改善した。これらの結果は、GABA作動性介在ニューロンの移植が、PDなどの神経変性疾患に侵されたニューロン回路にバランスを回復させることを示した。
同様に、本発明の神経前駆細胞集団も、パーキンソン病の処置に有用ある。本発明の神経前駆細胞は、十分に確立されたパーキンソン病の動物モデルである6−OHDAモデルに移植される。ラットに6−OHDAを用いた黒質線条投射の片側病変は、逆行性輸送によるSNcにおけるドーパミン作動性細胞の欠損、および軸索の中断による線条体におけるドーパミン作動性終末の欠損をもたらす(Berger他,1991,Trends Neurosci.1991 Jan;14(1):21−7.)。結果として、D1およびD2受容体の分布が変更される。片側性の傷害はSNcに両側性の変化をもたらし得る(Berger他,前掲)。ラットの黒質線条体路の傷害は、残存しているドーパミン作動性終末からのドーパミンの合成および放出の補償的増加を伴う(Zigmond他,1984 Life Sci.1984 Jul 2;35(1):5−18)。
成体雌ラットをケタミン(90mg/Kg)およびキシラジン(7mg/Kg)で麻酔し、疼痛を感受しなくなれば、定位固定装置内にフラットスカル位で固定する。頭皮に2センチメートルの正中矢状皮膚切開を行って頭蓋を露出させる。黒質線条体束の座標は、コンピュータ化された成体ラット脳地図に基づいて決定する(Toga AW他,1982 Brain Res Bull.1989 Feb;22(2):323−33)。適当な座標で頭蓋に孔を開け、ガラスキャピラリーマイクロピペットを、ピペットの内部先端が黒質線条体路内に位置するように、定位固定的に前進させる。マイクロピペットは直径50μmの先端を備え、0.1%アスコルビン酸−生理食塩水3μl中、12grの6−OHDAの溶液が満たされている。この6−OHDAを右黒質線条体路に1μl/分の速度で注入する。マイクロピペットをさらに4分間その位置に保持した後、ゆっくり後退させる。皮膚の切開部をステンレス製の創傷クリップで閉じる。各動物の右側にのみ6−OHDAを注入し、片側パーキンソン病ラットを作出する。
6−OHDA傷害を試験1日目に誘発させ、3週目および5週目に行動試験を行った。移植用に選択したラットにおいて、本発明の神経前駆細胞を6週目に移植し、行動試験を9、11、14および18週目に繰り返す。手術の成功を評価するために、1組の動物(n=5)を傷害4週間後に潅流し、SNcを、ドーパミン作動性細胞を標識するために、ドーパミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素免疫反応性(TH−IR:tyrosine hydroxylase immunoreactivity)に関して染色した。成功した手術では、6−OHDA注射と同側のSNcの部位はTH−IRを示さないが、反対側は多くのTH+細胞を含む。6−OHDA手術をin vivoで評価するために、下記のように行動試験を行う。
線条体の吻尾軸に沿って3回の注射を行い、各注射部位において背腹軸に沿った3か所の送達部位に、まず最も腹側から始め、次に注射ピペットを背側に後退させながら細胞を挿入して2回目および3回目の注射を行う。およそ400nlの細胞懸濁液を各送達部位に注射し、合計3.6μlの総細胞懸濁液を各線条体に注射する。
神経前駆細胞移植の、6−OHDA傷害ラットの行動症状を改善する能力に対して行動試験を使用する。神経前駆細胞移植の前と後に、アポモルフィン下での回転、歩長の変化、および最大経路幅の3種類の行動試験を行う。神経前駆細胞移植を受けた6−OHDA傷害ラットは、アポモルフィン回転試験の改善、歩長の増大、および歩行の正常化を含む行動改善を示す。これらの行動および運動の変化は、本発明の神経前駆細胞の移植後のPD動物の運動症状の全般的改善を示す。
最初の行動試験は、アポモルフィン下での回転である。アポモルフィンは、宿主の線条体ニューロンにより発現されるドーパミン受容体に結合し、6−OHDAラットに回転を生じさせる(UngerstedtおよびArbuthnott,1970,Brain Res.Dec 18;24(3):485−93)。これまでに示されるように、アポモルフィンを投与すると、両方向にほぼ同等に回転する対照ラットに比べて、片側性の6−OHDA傷害ラットは同側よりも反対側(傷害部位に対して)へより有意に回転する。アポモルフィンは、除神経により誘発されるドーパミン受容体の超感受性のために除神経側で優先的にドーパミン作動性受容体を直接刺激し、反対側への回転を生じる(UngerstedtおよびArbuthnott,1970)。アポモルフィン投与後の最大回転行動を生じさせるために達成されるべき傷害の閾値が存在する(Hudson他,1993)。片側パーキンソンラットの異常行動は直接的にDA細胞の欠損の量に関連する。線条体のドーパミン枯渇が50%未満である場合には、線条体における補償機構のためにアポモルフィン注射後の回転行動には有意な変化は見られない。
6−OHDA処置ラットにおいて反対側への回転行動を生じさせるためには、各試験ラットにドーパミンアゴニストアポモルフィン(0.05mg/kg、IP)を注射する。薬剤誘発性の回転は自動ロトメーターボウルで測定する(Columbus Instruments,Ohio,Brain Research,1970,24:485−493)。アポモルフィンの腹腔内注射の後、動物に、ケーブルで回転センサーに取り付けられたジャケットを装着させる。これらの動物を試験ボウルに入れ、回転の数と方向を40分の試験期間の間記録する。この試験を、頭蓋内6−OHDA注入の有効性を確認および定量するために各ラットに行う。移植試験には、注射と同側よりも反対側へ少なくとも4回多く回転した6−OHDAだけを選択する。
神経前駆細胞移植後、移植を受けた6−OHDA傷害ラットでは、非移植6−OHDA対照に比べて反対側への回転の数に有意な減少が見られる。この効果は、9週目の初めから少なくとも18週までのあらゆる試験時点で見られる。偽移植6−OHDAラットの成績は非移植6−OHDAラットと区別がつかず、移植手順ではなく神経前駆細胞がMGEを移植された6−OHDAラットの運動改善の原因であることを示す。
6−OHDA傷害ラットに対する本発明の移植神経前駆体の第2の行動効果は、歩長の変化である。試験動物を長さ1m幅33cmで両側に高さ50cmの壁面のある走路に入れる。この走路は上部が開放し、明室に置いた。この走路の一端に暗い囲いを配置し、ラットはこの走路を横断した後にこの囲いに自由に入れる。ラットに、この走路の暗い囲いの反対側にラットを置くことにより、この走路を走り下る訓練を行う。各ラットが走路に置かれてすぐにその走路の距離を走るまで練習走行を繰り返す。走路の床は紙で覆う。各試験の開始時に、動物の後肢を黒いインクに漬けた後、走路の起点に置く。この試験を各ラットについて繰り返し、各試験の歩長を測定して各ラットの平均歩長を得る。
平均歩長を群間で比較する。6−OHDAラットは、姿勢および反対側の肢の動きに障害を示す。これらのラットは、バランスのために反対側の肢および尾を使いながら主として同側の肢で自身を支えることにより、また、歩行を良好な肢に不均衡に頼ることにより補っている。良好な肢は姿勢の補正および前進運動の両方を担い、それらは体の前側および片側に偏る(Miklyaeva,1995,Brain Res.1995 May 29;681(1−2):23−40)。不良な肢は前進運動をほとんど生み出さず、結果として、6−OHDAラットでは対照ラットよりも歩長が短くなる。
傷害ラットは、対照ラットの歩長よりも有意に短い歩幅を示す。神経前駆細胞移植の後には、6−OHDAラットの歩長は増し、9週までに対照ラットと同等の値に達した。この歩長の増大は、11週および14週間後も維持される。偽移植を受けた6−OHDAラットの歩長は変わらず、処置を受けなかった6−OHDAラットの歩長と有意差はない。
6−OHDA傷害ラットに対する本発明の移植神経前駆体の第3の行動効果は、走路を下る際にラットが移動した最大経路幅である。6−OHDA動物の経路幅は、対照ラットよりも有意に広い。正常な対照ラットは、端の囲いまでまっすぐに走り下る。しかしながら、6−OHDAラットでは、肢の障害が側部から側部までジグザグの曲がりくねった経路を作り出し、結果として、6−OHDAラットがたどる経路は正常な場合より広くなる。対照群と試験群の最大経路幅を比較して、ラットの走路を下る能力に対する神経前駆細胞集団の効果を決定する。
神経前駆細胞移植を受けた6−OHDAラットの経路幅は小さくなり、11週までに非傷害対照動物と同等となる。偽移植を受けた6−OHDAラットの経路は6−OHDAラットと有意差はなく、6−OHDA傷害ラットの歩行における実質的改善の原因は細胞移植であることを示す。
実施例13:本発明の神経前駆体による脊髄損傷(SCI:Spinal Cord Injury)の処置
MGE細胞は、脊髄損傷に関連する特定の病状を改善する能力を有することがこれまでに記載されている(例えば、米国特許第9,220,729号明細書および米国特許出願公開第20130202568号明細書を参照)。局部回路、また、挫傷脊髄および離断脊髄への一体化を評価するために、齧歯類の非損傷脊髄に神経前駆細胞集団を移植する。軽度(挫傷)および中等度(離断)の痙縮を評価するために挫傷および離断を調べる。
遺伝子改変型マウスおよび野生型マウスを、イソフルランを添加したアベルチンまたはイソフルラン単独で麻酔する。背中央の皮膚を剃毛する。剃毛領域をクリニジンで消毒する。全ての手術用具を使用前に一晩クリニジンに浸漬する。潤滑性の眼用軟膏を両目に塗る。動物を37℃の温度に維持するために加温毛布上に置く。メスの歯を用い、背正中をおよそ1cmの長さで切開する。T9の棘突起および椎弓板を特定して取り出す。硬膜の直径およそ2.4mmの円領域を露出させる。この時点で動物を、手術エリアから約1.5メートル(5フィート)にある脊髄損傷装置に移す。脊椎を安定化させるために、椎弓切除部位に対して吻側棘および尾側棘上に小型の手術用鉗子を配置する。その後、2〜3gの重りを露出した硬膜上に5.0cm落下させる。これは中等度の脊髄損傷を生じさせる。損傷直後に、動物を損傷装置から外し、手術エリアに戻す。損傷部位に目印を付けるために、傍脊髄筋肉組織に無菌縫合糸小片を置く。次に、皮膚を創傷クリップで閉じ、動物を麻酔から回復させる。全ての手術手順を45〜60分以内に完了させる。
6−OHDA傷害ラットの行動症状と同様に、SCIに関連する生理障害を改善する神経前駆細胞移植の能力を決定するために行動試験を用いる。神経前駆細胞移植の前と後に、オープンフィールド試験、グリッド歩行試験、足位置試験、ビームバランス試験、および傾斜板試験の5種類の行動試験を行う。
最初の行動試験はオープンフィールド試験であり、損傷後3日目と以降42日目の安楽死の時まで毎週動物を試験することを含む。運動試験は、オープンフィールド試験で動物がどのように動くかを評価することからなる。このオープンフィールド歩行スコアは、Basso他により記載されているように、自由なオープンフィールドでの歩行運動の間に動物の後肢の動きの回復を評価する。自発的な動きが無い場合には0のスコアが与えられ、スコア21は正常な歩行運動を示す。動物が14点のスコアを示す場合には、全体重を支える足底の踏み方および完全な前肢−後肢の協調が達せられる。回復する一連の運動の特徴がオリジナルのスコアに記載されているものと同じでなければ、決定のために改変型のBBBスコアを使用する。これが認められる場合には、その単一の特徴に関する点数を独立に加える。例えば、不完全なつま先クリアランス、足回転の増強およびすでにテールアップ位を示すマウスについては、尾の位置に関するスコアにさらに1点を追加する。
マウスを術前にオープンフィールドで試験し、これは30cmの壁面とボール紙で覆われた滑らない床を有する80×130cmの透明プレキシガラスボックスである。術後のセッションでは、処置に対して盲検とされた2名が各動物を4分間観察する。オープンフィールド試験に基づいて協調した動きを示す動物に、次のように運動機能のさらなる試験を行う。
SCIを有するラットに対する神経前駆細胞移植の効果を評価するために使用される第2の行動試験は、グリッド歩行である。下降運動制御の欠陥を、丸い金属バーの間に不規則に割り当てられたギャップ(0.5〜5cm)を備えた長さ1mの走路を通り抜ける動物の能力を評価することにより調べる。このバーの距離は試験セッションごとに無作為に変化させる。安楽死1〜2週間前に始めて5日間にわたり動物を試験する。
この走路を渡るには、動物がこれらのバーに四肢を正確に置く必要がある。ベースラインの訓練および術後試験では、どの動物も少なくとも3回このグリッドを渡る。各通過において足踏み(エラー)の数を数え、平均誤り率を計算する。動物が後肢を動かすことができなければ、最大20のエラーを与える。計数されたエラーの数はまたノンパラメトリックグリッド歩行スコアでも見積もり、足踏みエラー0〜1回は3点、2〜5回は2点、6〜9回は1点、10〜20回は0点と見なされる。
SCIを有するラットに対する神経前駆細胞移植の効果を評価するために使用される第3の行動試験は、足位置である。足跡分析は、De Medinaceli他からの改変法である。動物の後足に例えば容易に洗浄できる水彩のインクを付け、動物が走路を横断する際に長さ1m幅7cmの狭い走路を覆う紙の上に足跡を付ける。これは、各足取りの方向が線で標準化されることを保証する。少なくとも連続8歩を用いて、肢旋回、歩長および支持の基盤という各測定に関する平均値を求める。支持の基盤は、両後足の中央の肉球の中心から中心までの距離を測定することにより決定される。肢旋回は、第3指の跡と中足指節関節を表す跡を通る線と歩行方向に平行の中央肉球を通る線の交差により形成される角度により定義される。歩長は、各側の2つの連続する足跡の中央肉球間で測定する。
術後初期試験セッションに、体重支持の不完全な動物を含めるために、4点スコアリング系も用いる:一定した背側歩行または後肢の引きずり、すなわち、足跡が認識できない場合には0点が与えられ;少なくとも3つの足跡のうち少なくとも3つのつま先の認識可能なつま先跡を動物が有する場合には1点が与えられ;動物がその固有のベースライン値の2倍を超える値の肢の外旋または内旋を示した場合には2点が与えられ;動物がつま先を引きずる徴候はないが肢の旋回を示した場合には3点が記録され;動物が外旋または内旋の徴候を示さなかった(ベースライン値の角度の2倍未満)場合には4点と見積もられる。これらの動物は、安楽死1〜2週間前に始めて5日間にわたり試験する。
SCIを有するラットに対する神経前駆細胞移植の効果を評価するために使用される第4の行動試験は、ビームバランスである。動物を細いビームに載せ、バランスを維持しかつ/またはビームを横断する能力を測定する。これらの動物は、安楽死1〜2週間前に始めて5日間にわたり試験する。ナロービーム試験(narrow beat test)は、HicksおよびD’Amatoの記載に従って行う。細い通路として2.3cm幅の方形ビーム(bean)、1.2cm幅の方形ビームおよび2.5cm径の丸いだぼの3種類のビームを使用する。全てのビームは1m長であり、地面から30cmの高架とする。訓練の後、正常ラットはこの水平ビームを3歩未満で横断できると予想される。滑ってビームを踏み外した場合には、それらの動物を回収して正確な位置に戻す。
ビームを横断する動物の能力を評価するためにスコアリングシステムを用いる:ビーム上の歩行が完全に不能である(動物がすぐに落下する)場合には0が与えられ、動物がビームの半分を横断できる場合には0.5が得点され、全長横断には1点が与えられ、後肢でのステップが部分的に可能であれば1.5点、および正常な体重支持および正確な肢の位置であれば2点が記録される。3種類のビーム全てのスコアを加算すれば、最大6点となり得る。
SCIを有するラットに対する神経前駆細胞移植の効果を評価するために使用される最後の行動試験は、傾斜板試験である。動物を、様々な角度に立ち上げることができるプラットフォームに載せる。ある角度で位置を維持する能力を決定する。これらの動物は、安楽死1〜2週間前に始めて5日間にわたり試験する。動物を、記載のように(RivlinおよびTator,1977,J Neurosurg.1977 Oct;47(4):577−81)構成した調節可能な傾斜板に載せる。傾斜を20秒毎に段階的に増し、マウスがその位置で5秒間維持できなかった角度を記録する。この試験を各マウスについて2回繰り返し、平均角度を記録する。この傾斜板試験では、損傷前ならびに損傷の1、7、14、および21日後運動障害からの回復が評価される。ラットが落ちずに自身を5秒間維持できた傾斜板の最大傾斜が記録される。
これら上記の試験のそれぞれの所要時間は5分未満である。これらの種々の試験は、動物が試験装置から落下しても、動物が損傷を受けないパッド入りの床材に着地するかまたは落下距離が十分に限定される(15センチメートル(6インチ)未満)ように設計する。
実施例14:本発明の神経前駆体による痙縮の処置
痙縮は、脳および脊髄の損傷を有する患者で一般的な障害である。有病率は脊髄損傷患者のおよそ65〜78%(Maynard他、1990)、持続性片麻痺を伴う脳卒中患者の35%前後(Sommerfeld他、2004)である。ヒト脊髄損傷後数ヶ月にわたって病変部の尾側の分節に反射過剰興奮が生じる。また、難治性痙縮は、多発性硬化症患者の一般的な障害源でもある。症状には、筋緊張亢進、クローヌス、痙攣および反射亢進が含まれる。膀胱痙縮もまた、高齢者、妊娠中または妊娠後の女性、および閉経の際に一般に発生する。
痙縮の発生の原因となる厳密な機序は十分に理解されていないが、罹患領域へのMGE細胞の移植は、脊髄損傷のマウスモデルで痙縮を改善することが示されている(例えば、米国特許第9,220,729号明細書および米国特許出願公開第20130202568号明細書を参照)。同様に、本発明の神経前駆細胞集団は、痙縮の処置に有用である。本発明の神経前駆細胞集団を、SCIの動物モデルに移植する。脊髄の灰白質に神経前駆細胞集団を受容したマウスは、死滅細胞/ビヒクル注射を受けたまたは注射しなかった対照動物に比べて膀胱機能の改善、無抑制膀胱収縮の減少および残尿の減少を示す。
実施例15:本発明の神経前駆体による神経因性疼痛の処置
上記の実験に加え、神経前駆細胞の移植は、神経因性疼痛も改善し得る。特に、神経前駆細胞は、これまでに記載されているように(Shields他、2003)spared nerve injury(SNI)モデルを用い、損傷誘発性の神経因性疼痛を用いた動物モデル研究に移植することができる。このモデルは動物の片側の坐骨神経の3つの分岐のうち2つの離断により作出され、長期の機械的過敏性を生じる(Shields他,J Pain.、2003 Oct;4(8):465−70)。
移植は全て雄マウス(6〜8週齢)で行う。ZWおよびZWXマウスがこれまでに記載されている(BrazおよびBasbaum,2009,Neuroscience.Nov 10;163(4):1220−32)。二重トランスジェニックZWX−NPYマウスを作出するために、ZWXマウスを、NPY発現ニューロン内でCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配させる(DeFalco他,2001,Science.Mar 30;291(5513):2608−13)。Per−ZWマウスを作出するために、ZWマウスをペリフェリン−Creマウスと交配させる(Zhou他,2002,FEBS Lett.、Jul 17;523(1−3):68−72)。
移植については、6〜8週齢のマウス(ナイーブまたはSNI1週間後)をケタミン(60mg/kg)/キシラジン(8mg/kg)の腹腔内注射により麻酔する。背部片側椎弓切除術は腰膨大のレベルで行い、腰髄の2分節(約1.5〜2mm)を露出させ、その後、硬膜を切開し、屈曲させる。5×10の神経前駆細胞を含有する細胞懸濁液をガラスマイクロピペット(鉱油を予め充填)に装填する。このマイクロピペットを定位固定装置に取り付けたマクロインジェクターに接続する。この細胞懸濁液注射を神経損傷と同側の後角に向ける。対照群には等容量のDMEM培地を注射する。創傷を閉じ、動物を回復させた後、ホームケージに戻す。動物を移植後種々の時点(1〜5週間)で殺す。
機械的感受性は、高架ワイヤーメッシュグリッド上に動物を載せ、フォン・フライ・ヘア(von Frey hairs)で後足を刺激することにより評価する。アップ・ダウン・パラダイム(Chaplan他,1994 J Neurosci Methods.Jul;53(1):55−63)を用いて閾値を定義する。動物には、ベースライン閾値を決定するために術前に1日おきに1回、術後は2日に1回で3回試験を行い、機械的アロディニアの大きさを評価する。機械的逃避閾値の少なくとも50%の低下を示す動物のみ移植群または培地注射群(対照群)に含める。行動試験は、移植または培地注射後7、14、21および28日目に行う。行動試験については、調査者は処置(細胞培地または細胞集団移植)に対して盲検とする。熱痛覚過敏検定(熱/冷プレート法、ハーグリーブス法、およびテールフリック法)も疼痛感受性を測定するために使用される。
また、試験動物にはロータロッド(rotorod)試験、およびマウスにおいて神経因性疼痛を検知するための確立されたアッセイである後足損傷アッセイも行った。ロータロッド試験の加速化に関しては、最初、ラットに1セッションにつき3回の試行で3セッション、ロータロッドの回転軸に留まるように訓練を行い、ラットがその回転軸に60秒を超えて留まることができた後は1回の試行とする。ロータロッドの加速は、5分内に4rpmから40rpmに自動的に増すように設定し、動物が回転軸から落下した際に試行は自動的に終了する。テールフリック検定では、10μlの1%ホルマリン溶液(Sigma、セントルイス、MO)を、培地または神経前駆細胞移植マウスの、移植側と同側の後足に注射する。注射した後足を引っ込めるまたは舐めるのに費やした総時間に関してマウスにスコアを付ける(5分ビン)。これらの行動スコアは処置群に対して盲検とされた試験者により付けられる。
この移植は、損傷側と同側の機械的閾値(フォン・フライ)に劇的な低下をもたらす。対照群と神経前駆細胞集団移植群の有意差は、移植細胞がニューロンに分化し、宿主の回路に一体化するのに必要であると予測される時間と同等の、移植2週間後(SNI後23日目)に初めて検出される。回復の度合は改善し続け、疼痛閾値は、本発明の神経前駆細胞の移植4週間後に損傷前のベースラインレベルに戻る。
重要なこととして、移植を受けた動物に運動障害を示すものはいない。さらに、両群のマウスは、観察期間の間に回転ロッド上を歩行することが見出される。後足損傷検定では、脊髄の灰白質への神経前駆細胞の移植は、培地の注射を受けたマウスに比べて疼痛の軽減をもたらす。各試験群について5個体のマウスを評価し、神経前駆細胞の注射を受けたマウスは、培地単独群に比べて神経因性疼痛に統計的に有意な軽減を示す。
同様の結果がSCI動物モデルの脊髄に本発明の神経前駆細胞を注射する場合でも得られる。SCIは機械的アロディニアおよび熱痛覚過敏の両方の慢性疼痛を誘発する。損傷後の急性期、亜急性期、および/または慢性期に脊髄に注射された神経前駆細胞は、慢性神経因性疼痛を改善する。
実施例16:本発明の神経前駆体によるアルツハイマー病の認知欠陥の処置
本発明の方法はまた、アルツハイマー病の処置において、これらの患者の学習および記憶の障害を改善するために使用することもできる。神経前駆細胞は、これまでに記載されているように(Tong LM他,J.Neuroscience 34(29):9506−9515)、apoE4−KIマウスの門に、または家族性アルツハイマー病(FAD:familial Alzheimer’s disease)のモデルに、apoE4誘発性の認知欠陥、ならびに発作の救済を証明するために移植することができる。本発明の神経前駆細胞の移植は、海馬における移植由来のGABA作動性介在ニューロンの機能的成熟および一体化、ならびに成体マウスでのapoE4誘発性認知障害の救済をもたらす。
雌の、14か月齢のapoE4−KIおよびapoE3−KIマウスおよび10か月齢のapoE4−KI/hAPPFADマウスを生理食塩水中80μlのケタミン(10mg/ml)およびキシラジン(5mg/ml)で麻酔し、0.8〜1.0%イソフルランで維持する。神経前駆細胞懸濁液(600細胞/nl)を先端径60μmの30°面取りガラスマイクロピペットニードル(Nanoject、Drummond Scientific Company)に装填する。吻側と尾側の両側の定位固定部位に0.5mmのマイクロバール(Foredom、Fine Science Tools)で孔を開け、4部位に門移植を行う。各移植部位において、推定20,000個の神経前駆細胞を導入する。対照移植マウスには、等容量の熱ショックにより死滅させた神経前駆細胞を施し、これは55℃3分とドライアイス中で3分の4回の交互サイクルにより生じさせた後に遠心分離で回収する(Alvarez−Dolado他,2006,J Neurosci.2006 Jul 12;26(28):7380−9.;Baraban他,2009,Proc Natl Acad Sci USA.Sep 8;106(36):15472−7.;Southwell他,2010,Science.Feb 26;327(5969):1145−8)。
移植した神経前駆細胞集団の、アルツハイマーモデルにおいて認知を改善する能力を評価するために、70〜80DPTに、細胞移植マウスと対照移植マウスに関して行動試験を行う。モリス水迷路(MWM:Morris water maze)試験は、見えない状態の試行では、10cmのプラットフォームを不透明な水の表面の1.5cm下に沈めた、室温の水(22〜23℃)を入れた水槽(122cm径)で行う(Andrews−Zwilling他,2010,J Neurosci.,Oct 13;30(41):13707−17.;Leung他,2012,PLoS One.7(12):e53569)。マウスに、1〜5日(HD1〜5)に見えないプラットフォーム上で1日に4回の試行で見えないプラットフォームを捜し当てる訓練を行う。なお、HD0は初日の最初の試行であり、1試行当たり最大60秒とする。各記憶試行は、最後の学習セッション後24、72、および120時間の時点で、プラットフォームの不在下で60秒間行う。記憶は、非ターゲット四分円で費やした時間の平均パーセンテージと比較した、学習試行中にプラットフォームがあったターゲット四分円で費やした時間のパーセンテージとして評価する。
見える状態の試行では、黒と白の縞模様のマスト(高さ15cm)でプラットフォームの位置をマークする。見える状態の試行中、プラットフォームを移動させる以外はプラットフォームを置くことと室内の配置はアッセイを通して一定に維持する。移動距離を試行継続時間で割ることにより速度を計算する。成績は、EthoVision(登録商標)ビデオ追跡ソフトウエア(Noldus Information Technology)を用いて客観的に監視する。
オープンフィールド試験では、マウスに新奇な何も無い環境を探索させることにより馴化および全般的な活動行動を評価する(Andrews−Zwilling他,2012,PLoS One.7(7):e40555.)。少なくとも2時間の室内馴化の後、30%EtOHでクリーニングした臭気標準化チャンバーに15分間マウスを入れる。活動行動はSan Diego Instrumentsからのソフトウエアにより監視および解析する。高架十字迷路では、マウスに開放的な照明区域(開放アーム)を探索させるか、または暗い閉鎖空間(閉鎖アーム;Bien−Ly他,2011,Proc Natl Acad Sci USA.Mar 8;108(10):4236−41)に身を隠させることにより不安および探索行動を評価する。この場合、少なくとも2時間の室内馴化の後に、30%EtOHでクリーニングした臭気標準化迷路に10分間マウスを入れる。行動はMotor Monitorソフトウエア(Kinder Scientific)をインターフェースとする赤外線フォトセルにより解析する。
apoE4−KIマウスの門への神経前駆細胞の移植は、これらのマウスに見られた認知障害を改善する能力だけでなく、apoE4およびAβ蓄積の存在下で機能的に一体化される介在ニューロンを産生する能力も示す。
実施例17:脳卒中誘発性の障害の処置のための本発明の神経前駆細胞集団の移植
本発明の神経前駆細胞の、脳卒中などの外傷性脳損傷を有する対象における歩行運動および協調を改善する能力を、脳卒中の中大脳動脈閉塞(MCAO:middle cerebral artery occlusion)モデルを用いて試験する。簡単に述べれば、Sprague−Dawley(SD)成体ラット(275〜310g、Charles River Laboratories、ウィルミントン、MA)に、これまでに記載されているように(Daadi,M.他,PLoS ONE3(2):e1644;200)、血管内縫合により1.5時間の一過性MCAOを施す。これまでに記載されているように(Borlongan,C.V.他,J.Neurosci.,15(7)Pt.2:5372-5378;1995)、MCAO後に、持ち上げボディースィング試験(EBST:elevated body swing test)を用いて体幹の非対称性を評価する。動物を尾でぶら下げ、20回の試行で最初に虚血側と反対に頭を揺らす頻度を数え、合計に対するパーセンテージとして表す。75%を超える偏向スィングのある虚血ラットを試験に使用する。虚血傷害の2週間後に、2μlの神経前駆細胞懸濁液を50,000細胞/μlの濃度で、傷害を受けた線条体および皮質内の4箇所に定位固定的に移植する。虚血を受け、ビヒクルを移植したラットを対照として使用する。
MCAO脳卒中モデルにおいて脳卒中傷害側の再配線に作用する神経前駆体移植の能力を検討するために、神経前駆細胞移植3週間後に右の感覚運動皮質にBDAを注射することにより無傷半球に起源する軸索を標識することができる。細胞移植3週間後に、移植群およびビヒクル処置群のそれぞれから無作為に選択した3個体の動物を麻酔し、定位固定装置に設置する。開頭の後、0.5μlのビオチン化デキストランアミン[BDA:biotinylated dextran amine、10,000分子(MW)、Molecular Probes、ユージーン OR;無菌PBS中10%w/v溶液]を脳卒中傷害部と反対側の感覚運動皮質に定位固定的に注射する。次に、頭皮を閉じ、動物をそのケージに戻す。BDA注射1週間後に動物を犠牲にする。BDA標識末端の定量分析を注射部位の標識された神経細胞体の総数に対して正規化すると(詳細は材料および方法を参照)、移植部位での増加が明らかとなる。
神経前駆体移植が脳卒中後の運動機能に効果を有するかどうかを判定するために、試験動物にロータロッド試験およびEBSTの2種類の運動行動試験を行う。全ての動物のベースライン運動行動評価を虚血傷害前および傷害2週間後、ならびに移植4週間後に行う。ロータロッド試験の加速化に関しては、最初、ラットに1セッションにつき3回の試行で3セッション、ロータロッドの回転軸に留まるように訓練を行い、ラットがその回転軸に60秒を超えて留まることができた後は1回の試行とする。ロータロッドの加速は、5分内に4rpmから40rpmに自動的に増すように設定し、動物が回転軸から落下した際に試行は自動的に終了する。EBSTに関しては、上記のように、動物を尾でぶら下げ、20回の試行で虚血側と反対に頭を揺らす頻度を数え、合計に対するパーセンテージとして表す。神経前駆体移植ラットは歩行運動および運動協調性が向上し、両試験とも有意な改善である。
神経前駆細胞移植が脳卒中または外傷性脳損傷誘発性の発作に対して効果を有するかどうかを判定するために、発作頻度、重篤度、および持続時間のビデオ/EEG監視を行う。上記のように、神経前駆体移植動物は発作活性を有意に軽減した。
実施例18:自閉症モデルへの神経前駆細胞集団の移植
本発明の方法はまた、自閉症スペクトラム障害の処置において、これらの患者の社会的障害および学習障害などの行動を改善するために使用することもできる。BTBR T Itpr3tf/Jマウス(BTBRマウス)は、十分に研究されている特発性自閉症モデルである(Defensor,E.B.,Pearson他,(2011).Behav.Brain Res,.217,302-308;McFarlane,H.G.他,(2008).Genes Brain Behav.7,152-163;Yang,M.他(2012),Physiol.Behav.107,649-662.)。BTBRマウスは、対照系統C57BL/6Jに比べて海馬におけるGABA受容体が媒介する抑制性神経伝達のレベルが低く、これが自閉様行動の一因であり得る。Han他,Neuron 2014;81:1282−1289。本発明の神経前駆細胞の移植およびその結果としての移植由来GABA作動性介在ニューロンの海馬における機能的成熟および一体化は、神経前駆細胞の移植を受けたBTBRマウスにおいて自閉様行動を救済し得る。
14か月齢の雌BTBRマウスを、生理食塩水中の80μlのケタミン(10mg/ml)およびキシラジン(5mg/ml)で麻酔し、0.8〜1.0%イソフルランで維持する。神経前駆細胞懸濁液(600細胞/nl)を、先端径60μmの30°面取りガラスマイクロピペットニードル(Nanoject、Drummond Scientific Company)に装填する。吻側と尾側の両側の定位固定部位に0.5mmのマイクロバール(Foredom、Fine Science Tools)で孔を開け、4部位に線条体移植を行う。各移植部位において、推定20,000個の神経前駆細胞を導入する。対照移植マウスには、等容量の熱ショックにより死滅させた神経前駆細胞を施し、これは55℃3分とドライアイス中で3分の4回の交互サイクルにより生じさせた後に遠心分離で回収する(Alvarez−Dolado他,2006;Baraban他,2009;Southwell他、2010)。
BTBRマウスの自閉様行動に対する神経前駆細胞の移植の効果を測定するために行われる行動試験には、試験マウスの、新奇物体(novel object)に比べての新奇マウス(stranger mouse)との相互作用時間を測定する3チャンバー社会的相互作用試験、および不安関連行動を測定するオープンフィールド試験が含まれる。神経前駆細胞移植を受けたBTBRマウスは、3チャンバー社会的相互作用試験および/またはオープンフィールド交互社会作用試験において対照マウスよりも相互作用率が高く、交互の相互作用回数が多く、鼻と鼻を付けて匂いを嗅ぎ合う時間が長い。神経前駆細胞移植を受けたBTBRマウスはまた、オープンフィールドの中心に向かって移動する総距離として測定されるオープンフィールド試験での過活動の減少、および常同的旋回行動の減少を示す。これらの結果は、抑制性介在ニューロン活性の増大がBTBRマウスの行動欠陥を軽減できることを示す。
神経前駆細胞の移植はまた、BTBRマウスが示す認知欠陥を改善することもできる。BTBRマウスは、恐怖記憶傷害を有することが知られ(MacPherson,P他(2008).Brain Res.,1210,179-188)、文脈依存的恐怖条件付けを自閉症に関連する認知障害を測定するために使用することができる。空間的文脈に対する恐怖条件付けにおける短期記憶(30分)および長期記憶(24時間)の両方の成績が、神経前駆細胞移植を受けた9週間後のBTBRマウスにおいて改善される。
恐怖の不在下での空間的学習および記憶を試験するためにバーンズ円形迷路試験を行うが、この試験では、マウスは、その周辺に暗い隠れ場所のある穴の位置を学習することにより明るく照らされたフィールドから素早く逃避する。移植9週間後のBTBRマウスは、BTBR対照対応物に比べて、反復訓練セッション後に実行時間の有意な短縮を示す。
実施例19:精神病モデルへの神経前駆細胞集団の移植
本発明の方法はまた、統合失調症などの精神病障害の処置において、これらの患者の神経調節不全に関連する行動を改善するために使用することもできる。サイクリンD2ノックアウト(Ccnd2−/−)マウスモデルは、海馬基礎代謝活性の増大、中脳DAニューロン活性の増大、AMPHに対する応答の増強、および海馬を動員し海馬に依存する認知プロセスの破綻を含む、精神病に関する成体神経行動表現型に関連する皮質PV+介在ニューロンの減少を示す。Ccnd2−/−マウスは、腹側被蓋野ドーパミンニューロン集団活性の増大、アンフェタミンに対する行動過敏反応、および海馬依存的認知の障害を含む海馬の脱抑制により生み出されると予想されるいくつかの神経生理学的および行動的表現型を有する。例えば、Gilani他、Proc Natl Acad Sci USA.2014 May 20;111(20):7450−5参照。
Ccnd2ノックアウトマウスは、C57BL/6Jバックグラウンドの上に維持される。神経前駆細胞集団は、本明細書に記載のように作出され、移植を助けるために適当な賦形剤が添加される。対照移植については、神経前駆細胞は、凍結−解凍サイクルを繰り返して死滅させる。平均密度30,000生細胞/マイクロリットルの生細胞または対照(死滅細胞)懸濁液を、ナノインジェクターに接続したガラスピペット(先端外径50μm)を使用することにより、6〜8週齢のマウスの尾腹海馬CA1に両側注射する。
自発的およびアンフェタミン誘導性の歩行活動を、標準照明条件下の43×43センチメートル(17×17インチ)のオープンフィールドボックスで測定する。マウスをオープンフィールドに30分間置き、その後、アンフェタミン(0.2mg/mLの等張生理食塩水に2mg/kgを溶解)または生理食塩水を腹腔内注射により注射する。移動距離をさらに60分間測定する。因子として遺伝子型と薬物、および反復測定として時間(注射前または注射後)を用いる混合ANOVAデザインを記載のように(同上)使用する。この分析に続いて、ベースラインと注射後歩行運動に関して個別に、薬物条件の範囲内で遺伝子型の計画スチューデントのt検定比較を行う。文脈的恐怖条件付け法は、以前の研究から適合させる(例えば、Saxe MD他(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103(46):17501-17506;Quinn JJ他(2008)Hippocampus 18(7):640-654)。
簡単に述べれば、マウスを、訓練の1時間前に試験室に馴化させる。訓練/試験装置は、音減衰チャンバー内にショックグリッドフロアが配置されたチャンバーである。内室は、一緒に文脈を定義する空間視覚的手がかり、触覚的手がかり、および匂いの手がかりの示差的な組合せを特徴とする。訓練当日、マウスをある文脈に置き(「訓練文脈」)、音(85dB、20秒持続、4.5kHz)からなるCS+を300、470、580、670、および840秒の時点に与える。各音の最終秒の間に、0.7mAのスクランブル電流を、フロアグリッドを通して送る(US+)。マウスは最後のCS−US提示の140秒後に訓練文脈から取り出す。24時間後、マウスを新奇な文脈に置き、300、410、580、670、および830秒の時点でショック無しで音CS+を与える。音CS+想起試験の6時間後、マウスを600秒間、訓練文脈に置く。呼吸以外の運動が無いことと定義される条件付けすくみ反応を以下の期間に定量する:(i)音−CS+の最初の提示中、(ii)CS+提示2〜5のオフセット後40〜100秒間(音後すくみ反応;5音全ての平均)、および(iii)訓練文脈中。データは、反復測定として想起期(retrieval phase)および被験体間因子として遺伝子型を用いる混合ANOVAで分析する。
神経前駆体移植細胞は、それらの歩行運動および運動協調性を改善し、両試験で有意な改善を伴う。
本発明は、本発明の好ましい態様に関して詳細に記載されるように、多くの異なる形態の態様により満足されるが、本開示は本発明の原理の例示と見なされるべきであり、本発明を本明細書に例示および記載される特定の態様に限定することは意図されないと理解される。当業者ならば本発明の趣旨から逸脱することなく多くの変形を行うことができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物により判断される。要約および発明の名称は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、それらの目的は適当な権威者ならびに一般公衆が本発明の一般的性質を素早く判断することを可能にすることである。本明細書に引用されている全ての参照文献は、あらゆる目的でそれらの全内容が参照により本明細書の一部として援用される。以下の特許請求の範囲では、「手段(means)」という用語が使われていない限り、特許請求の範囲に列挙されたいずれの特徴または要素も米国特許法第112条第6段落に基づくミーンズ・プラス・ファンクションの限定と解釈されるべきでない。

Claims (43)

  1. 神経前駆細胞で上方調節される1以上の細胞表面マーカーの発現が増強されている哺乳類脳組織から細胞を単離すること;および
    神経細胞表面マーカー発現細胞を富化して、細胞表面マーカー富化細胞集団を作出することを含み、
    前記富化細胞集団は、GABA産生ニューロンを形成することができる神経前駆細胞を含む、
    神経前駆細胞集団を作出する方法。
  2. 前記神経前駆細胞から形成された前記ニューロンがin vitroでGABAを産生することができる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記神経前駆細胞から形成された前記ニューロンが哺乳類神経系への移植後にGABAを産生することができる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記細胞表面マーカーがATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記富化細胞がAS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上の発現においてさらに富化される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記細胞が細胞表面マーカーとの結合剤を用いて富化される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記細胞表面マーカー発現細胞が請求項4に記載の細胞表面マーカーと選択的に結合する薬剤を用いて富化される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記細胞集団が蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて富化される、請求項6に記載の方法。
  9. 前記細胞集団が磁気活性化セルソーティング(MACS)を用いて富化される、請求項6に記載の方法。
  10. 前記脳組織がヒト胎児脳組織である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記脳組織がヒト皮質由来の細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記脳組織がヒト基底核隆起由来の細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記富化細胞集団を、GABAを産生することができる抑制性介在ニューロン前駆細胞へ分化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  14. 多能性哺乳類幹細胞集団を準備すること;および
    前記細胞に対象とする神経前駆細胞で上方調節される1以上の細胞表面マーカーの発現を増強させる条件下で前記幹細胞を分化させること;および
    前記細胞集団の、前記細胞表面マーカーのうち1以上を発現する細胞を富化すること
    を含み;
    前記富化細胞集団は、GABA産生ニューロンを形成することができる神経前駆細胞を含む、神経前駆細胞集団を作出する方法。
  15. 前記神経前駆細胞から形成された前記ニューロンがin vitroでGABAを産生することができる、請求項14に記載の方法。
  16. 前記神経前駆細胞から形成された前記ニューロンが哺乳類神経系への移植後にGABAを産生することができる、請求項14に記載の方法。
  17. 前記富化細胞表面マーカーがATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2である、請求項14に記載の方法。
  18. 前記富化細胞がAS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、WI2−1896O14.1のうち1以上の発現においてさらに富化される、請求項14に記載の方法。
  19. 前記細胞が、対象とする神経前駆細胞で上方調節される細胞表面マーカーへの結合剤を用いて富化される、請求項14に記載の方法。
  20. 前記細胞が、請求項17に記載の細胞表面マーカーと選択的に結合する薬剤を用いて富化される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記細胞が、対象とする神経前駆細胞で上方調節される1以上の細胞表面マーカーの発現が低い細胞の数を減らすことにより富化される、請求項19に記載の方法。
  22. 前記細胞が、ATP1A2、BCAN、CD271、CD98、CNTFR、FGFR3、GJA1、MLC1、NOTCH1、NOTCH3、PDPN、PTPRZ1、SLC1A5、TMEM158、またはTTYH1の群からの細胞表面マーカーを発現する細胞の枯渇により富化される、請求項21に記載の方法。
  23. 前記細胞が請求項22に記載の細胞表面マーカーと選択的に結合する薬剤を用いて富化される、請求項21に記載の方法。
  24. 前記細胞集団が蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて富化される、請求項22に記載の方法。
  25. 前記細胞集団が磁気活性化セルソーティング(MACS)を用いて富化される、請求項22に記載の方法。
  26. 前記幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項14に記載の方法。
  27. 前記富化細胞集団を、GABAを産生することができる抑制性介在ニューロン前駆細胞へ分化させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  28. 神経前駆細胞集団であって、
    AS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上の発現の増強;および
    PLEXINA4の発現の増強、
    を含む、細胞が富化された、神経前駆細胞集団。
  29. GABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項28に記載の神経前駆細胞集団。
  30. in vitroでGABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項29に記載の神経前駆細胞集団。
  31. 哺乳類神経系への移植後にGABAを発現する細胞へ分化することができる神経前駆細胞を含む、請求項29に記載の神経前駆細胞集団。
  32. 細胞が多能性幹細胞から分化された、請求項28に記載の神経前駆細胞集団。
  33. 細胞がヒト多能性幹細胞から分化された、請求項32に記載の神経前駆細胞集団。
  34. 神経前駆細胞集団であって、
    ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GRIA1、GRIA4、L1CAM、NCAM1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PLXNA4、ROBO1、ROBO2、またはTMEM2のうち1以上の細胞表面マーカーの発現の増強;および
    PLEXINA4の発現の増強
    を含む、細胞が富化された、神経前駆細胞集団。
  35. in vitroでGABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項34に記載の神経前駆細胞集団。
  36. 哺乳類神経系への移植後にGABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項34に記載の神経前駆細胞集団。
  37. 細胞が多能性幹細胞から分化された、請求項34に記載の神経前駆細胞集団。
  38. 細胞がヒト多能性幹細胞から分化された、請求項37に記載の神経前駆細胞集団。
  39. 神経前駆細胞集団であって、
    AS1、ATRNL1、CD200、CELSR3、CHRM4、CNTNAP4、CXCR4、CXCR7、DSCAML1、ELAVL2、ENSG00000260391、EPHA5、ERBB4、FAM5B、FAM65B、FNDC5、GAD1、GAD2、GNG2、GPD1、GRIA1、GRIA4、HMP19、INA、KALRN、KDM6B、KIF21B、L1CAM、LHX6、LINC00340、LINC00599、MAF、MAFB、MAPT、MIAT、NCAM1、NKX2−1、NMNAT2、NPAS1、NRCAM、NRXN3、NXPH1、PDZRN4、PIP5K1B、PLS3、PLXNA4、RAI2、ROBO1、ROBO2、RP11−384F7.2、RP4−791M13.3、RUNX1T1、SCG3、SCRT1、SCRT2、SIAH3、SLC32A1、SOX6、SRRM4、SST、ST8SIA5、STMN2、TAGLN3、TIAM1、TMEM2、TTC9B、またはWI2−1896O14.1のうち1以上の発現の増強を含む、細胞が富化された、神経前駆細胞集団。
  40. in vitroでGABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項39に記載の神経前駆細胞集団。
  41. 哺乳類神経系への移植後にGABAを発現する細胞へ分化することができる細胞を含む、請求項39に記載の神経前駆細胞集団。
  42. 細胞が多能性幹細胞から分化された、請求項39に記載の神経前駆細胞集団。
  43. 細胞がヒト多能性幹細胞から分化された、請求項42に記載の神経前駆細胞集団。
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WO2020138510A1 (ja) * 2018-12-28 2020-07-02 国立大学法人京都大学 大脳皮質細胞からのl1cam陽性細胞の取得および細胞製剤としてのその使用

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