定義
本開示における数値範囲は近似値であるため、別段の定めがない限り、範囲外の値も含み得る。数値範囲は、任意の小さい値と任意の大きい値とが少なくとも2単位離れているならば、小さい値及び大きい値からとこれらの値を含めた1単位ずつ増える全ての値を含む。例えば、組成的な、物理的な又は他の特性、例えば分子量、粘度等が100〜1000である場合、全ての個々の値、例えば100、101、102等及び部分範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200等が明確に列挙されたものとする。1未満又は1を超える分数を含む値(例えば、1.1、1.5等)を含む範囲の場合、適宜、1単位は0.0001、0.001、0.01又は0.1と見なされる。10未満の1桁の数字を含む範囲の場合(例えば、1〜5)、1単位は典型的には0.1であると見なされる。これらは具体的に意図したものの例にすぎず、列挙した最小値と最大値との間の数値の全ての考えられ得る組み合わせが本開示において明確に提示されたとみなされたい。数値範囲は、本開示において、とりわけ、混合物の成分の相対量、また方法で説明する様々な温度及び他のパラメータ範囲に関して設けられる。
本明細書において、「アレル」という語はある遺伝子の1つ以上の代替形態のいずれかであり、全てが1つの形質又は特徴に関わる。二倍体細胞又は生物において、所与の遺伝子の2つのアレルは、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。四倍体又は六倍体の細胞又は生物、例えばコムギにおいては、ゲノムの1つ上の所与の遺伝子の2つのアレルは、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占め、別のゲノム、例えば四倍体のA又はBゲノム、或いは六倍体コムギのA、B又はDゲノム上の同じ遺伝子座を占める同じ遺伝子の2つのアレルは第1のゲノムの遺伝子と同祖であり且つ同祖染色体上に存在すると言われる。
本明細書において、「改変」、「増加」、「低下」、「阻害」等の語は相対的、すなわち野生型又は改変していない状態と比較してのものであると見なす。「タンパク質のレベル」とは、特定のタンパク質、例えばEPSPSの量のことであり、当該分野で公知の任意の手段、例えばウェスタンブロット分析又は他の免疫学的手段により測定し得る。
本明細書において、「改変EPSPSタンパク質活性」とは、グリホサートに対する親和性が低いEPSPSタンパク質のことである。一実施形態において、EPSPSタンパク質はグリホサートに対しては変化した親和性を、ただし植物又は内在性基質に対しては相当な親和性を保持し得る。EPSPS活性のレベルは変異体において変化するかもしれないものの、タンパク質それ自体の発現レベル(量)は変化しないことがわかる。逆に、より活性が高い又は低いタンパク質が産生されたならば、タンパク質の量は変化するかもしれないものの、活性は同じままとなる。量及び活性の両方における低下も考えられ、例えば、そのタンパク質をコードしている遺伝子が不活化される場合である。特定の実施形態において、タンパク質レベルの低下又はグリホサートに対する低い親和性は、無改変のコムギの胚乳におけるタンパク質レベル又はグリフォスフェート(glyphosphgate)に対する親和性と比較して、少なくとも10%又は少なくとも20%又は少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%である。タンパク質若しくは遺伝子発現のレベル又はグリホサートに対するEPSPSタンパク質の親和性の低下は、植物及び穀粒の発育の任意の段階で、特には栄養成長中及び登熟段階中、或いは植物及び穀粒の成熟までの発育の全ての段階で、植物の分裂組織において起き得る。
本明細書において、アミノ酸又はヌクレオチド配列の「同一性」及び「類似性」は、比較している2つの配列間での最適なグローバルアラインメントで判断する。最適なグローバルアラインメントは、例えばニードルマン−ブンシュアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453)を用いて達成する。配列は当該分野で公知のアルゴリズムを用いてもアラインし得て、以下に限定するものではないが、CLUSTAL Vアルゴリズム又はBlastn若しくはBLAST2配列プログラムを含む。
「同一性」とは、第1ポリペプチド又はポリヌクレオチドの特定の位置にあるアミノ酸又はヌクレオチドが、第1ポリペプチド又はポリヌクレオチドと最適なグローバルアラインメントにある第2ポリペプチド又はポリヌクレオチド中の対応するアミノ酸又はヌクレオチドと同一であることを意味する。同一性とは対照的に、「類似性」は、保存的置換基であるアミノ酸を包含する。「保存的」置換基は、Blosum62置換行列(Hentikoff and Hentikoff,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919)において正のスコアを有する任意の置換基である。
「配列Aは配列Bにn%類似している」という記述は、配列Aと配列Bとの最適なグローバルアラインメントの位置のn%が同一残基又はヌクレオチド及び保存的置換基から成ることを意味する。「配列Aは配列Bとn%同一である」という記述は、配列Aと配列Bとの最適なグローバルアラインメントの位置のn%が同一残基又はヌクレオチドから成ることを意味する。
本明細書において、「遺伝子」又は「遺伝子配列」という語は、ある遺伝子の部分又は完全コード配列、その相補的配列及びその5’又は3’非翻訳領域のことである。遺伝子は遺伝の機能単位でもあり、物理的には、ポリペプチド鎖の産生に関わるDNA(又はRNAウイルスの場合はRNA)の分子に沿ったヌクレオチドの特定のセグメント又は配列である。後者を続くプロセシング、例えば化学修飾又はフォールディングに供すると機能性タンパク質又はポリペプチドが得られる。遺伝子は、単離、部分単離又は生物のゲノム内で発見し得る。例えば、転写因子遺伝子は転写因子ポリペプチドをコードし、転写因子ポリペプチドは機能性になり得る又は転写のイニシエータとして機能するためのプロセシングを必要とし得る。
操作上、遺伝子はシス−トランス検定により定義し得て、この検定は、2つの変異が同一遺伝子で起きるか否かを確認する遺伝子試験であり、遺伝的に活性な単位の限界を求めるのに使用し得る。一般に、遺伝子は、コード領域の前(「リーダー」、上流)及び後ろ(「トレーラー、下流)にくる領域を含む。遺伝子は、「イントロン」と称される、介在性の非コード配列も含み得て、エクソンと称される個々のコードセグメントの間に位置する。殆どの遺伝子が、関連するプロモーター領域、すなわち転写開始コドンの調節配列5’を有する(同定できるプロモーターを有さない遺伝子もある)。遺伝子の機能は、エンハンサー、オペレーター及び他の調節要素でも調節し得る。
本明細書において、「改変植物」という語は、非トランスジェニック変異を有する植物、トランスジーンを含む植物、ゲノム編集を経た植物又はこれらの組み合わせを含む。
本明細書において、「植物」という語には、種子又は穀粒又は葯が取り除かれた植物を含めた未熟な又は成熟した全草への言及が含まれる。植物を生む種子又は胚も植物と見なす。
本明細書において、「植物部位」という語には、そこからコムギ植物を再生できる植物のプロトプラスト、植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊(plant clump)及び植物又は植物の部位において完全である植物細胞、例えば胚、花粉、胚珠、果皮、種子、花、小花、頭状花、穂、葉、根、根端、葯等である。
本明細書において、「ポリペプチド」という語は、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合で互いにつながれた2つ以上のアミノ酸を含むペプチド又はタンパク質を意味する。「ポリペプチド」は、一般にはペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと称される短鎖のものと、一般にはタンパク質と称される長鎖のものの両方を指す。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。「ポリペプチド」は、自然な過程、例えばプロセシング及び他の翻訳後修飾、また化学修飾技法により修飾されたものを含む。そのような修飾は基礎的な書籍及びより詳細なモノグラフ、また巻数の多い研究文献に詳述されており、また当業者に周知である。当然のことながら、同じタイプの修飾が、所与のポリペプチドの幾つかの部位に同じ又は異なる度合いで存在し得る。
本明細書において、一般に、「ポリヌクレオチド」という語は任意のポリリボヌクレオチド又はポリ−デオキシリボヌクレオチドを意味し、これらは非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAになり得る。この定義には、限定することなく、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域又は一本鎖、二本鎖及び三本鎖領域の混合物であるDNA、cDNA、一本鎖及び二本鎖RNA並びに一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖若しくは、より典型的には、二本鎖若しくは三本鎖領域又は一本鎖及び二本鎖領域の混合物になり得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。「ポリヌクレオチド」という語は、変異誘発により100%同一ではないものの同じアミノ酸配列をコードする、「オリゴヌクレオチド」と称されることが多い短いヌクレオチド又はフラグメントもその範囲に含む。
本明細書において、「グリホサートに対する低い親和性」という句は、通常測定されるものより低い率でグリホサートに結合及び/又は相互作用することを意味する。一実施形態において、グリホサートに対する低い親和性とは、グリホサートへの結合を示さないタンパク質のことである。別の実施形態において、グリホサートに対する低い親和性とは、野生型EPSPSより緩やかな率でグリホサートに結合する1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質のことである。一実施形態において、グリホサートに対する低い親和性とは、グリホサートに対する野生型EPSPSの結合率の約10%又は20%又は30%又は40%又は50%又は60%又は70%又は80%又は85%又は90%又は95%の率でグリホサートに結合する1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質のことである。一実施形態において、グリホサートに対する低い親和性とは、グリホサートに対する野生型EPSPSの結合率の70%未満又は60%未満又は50%未満又は40%未満又は30%未満又は20%未満又は10%未満又は5%未満の率でグリホサートに結合する1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質のことである。
本明細書において、「グリホサートに対する抵抗性」という語は、「グリホサートに対する耐性」という語と同じ意味で使用される。どちらの表現も、野生型の植物では通常、害及び/又は成長阻害を引き起こすであろうグリホサートの散布量下で成長できる植物の能力を包含する。「グリホサートに対する抵抗性」という語は、野生型の植物にとっては有害又は致命的であろうグリホサートの散布量で成長及び/又は実ることができる植物の能力を包含する。
一実施形態において、グリホサートに対する抵抗性/耐性は、野生型の植物と比較して高い割合又は量のグリホサートで成長できる、実れる又は生存できる植物の能力を包含し、以下に限定するものではないが、1〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、95〜100%及び100%超えを含む。
一実施形態において、グリホサートに対する抵抗性/耐性は、野生型の植物と比較して多いグリホサート散布回数で成長できる、実れる又は生存できる植物の能力を包含し、以下に限定するものではないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10回を超えるグリホサート散布回数を含む。
本明細書における「低下又は非機能性フラグメント」とは、全核酸配列のタンパク質コード配列と比較してグリホサートに対する親和性が低いEPSPSタンパク質をコードする核酸配列のことである。言い換えると、EPSPSポリペプチドをコードする能力を実質的に保持しているが、そのコードされたEPSPSポリペプチドのグリホサートに対する親和性は低い核酸又はフラグメントのことである。
本明細書における「フラグメント」という語は、人工的に(例えば、化学合成により)又は天然物を制限エンドヌクレアーゼ若しくは機械的せん断により複数片に切断することで構築した対象核酸の単離部分、或いはPCR、DNAポリメラーゼ若しくは当該分野で周知の他の重合技法で合成された又は当業者に周知の組み換え核酸テクノロジーによりホスト細胞において発現した核酸の一部であるポリヌクレオチド配列(例えば、PCRフラグメント)を指す。
本開示のポリヌクレオチドに関して、「単離されたポリヌクレオチド」という表現を使う場合がある。この表現は、DNAの場合、由来元の生物の天然のゲノムにおいてすぐ隣(5’及び3’方向に)の配列から分離されたDNA分子のことである。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、PCRフラグメントを含み得る。別の実施形態において、「単離されたポリヌクレオチド」はベクター、例えばプラスミド若しくはウイルスベクターに挿入された又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含み得る。「単離されたポリヌクレオチド分子」はcDNA分子も含み得る。
本明細書において、一塩基多型(SNP)は、トランジション(C/T又はG/A)又はトランスバージョン(C/G、A/T、C/A又はT/G)としてのヌクレオチドの置換による2つのDNA間での1つのヌクレオチド塩基の違いである。一塩基バリアントは、ゲノムにおける1つの塩基の挿入及び欠失(in/del)であるSNPと見なされる。
本明細書において、「トランスジェニック植物」とは、同じ種、変種及び栽培品種の野生型植物では見られない遺伝子コンストラクト(「トランスジーン」)を含む植物のことである。本明細書における「トランスジーン」はバイオテクノロジー分野における通常の意味を有し、また組み換えDNA又はRNAテクノロジーにより生み出された又は改変された及び植物細胞に導入された遺伝子配列を含む。トランスジーンは、植物細胞由来の遺伝子配列を含み得る。典型的には、トランスジーンは、人間による操作、例えばトランスフォーメーションにより植物に導入されてきたが、当業者ならばわかるように、いずれの方法も用いることができる。
本明細書において、「改変EPSPS遺伝子」は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集又はこれらの組み合わせを介したEPSPS遺伝子の改変を含む。
本明細書において、「EPSPS誘導体」とは、全EPSPSタンパク質/ペプチド/ポリペプチド配列と比較して低いグリホサート親和性を有するEPSPSタンパク質/ペプチド/ポリペプチド配列のことである。「EPSPS誘導体」という語は、改変EPSPSタンパク質/ペプチドの「フラグメント」又は「化学的誘導体」を包含する。
本明細書において、コムギ植物はトリチカム属に属する種の植物と定義され、この種は商業的に栽培され、例えば、トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種(普通又はパンコムギ)、トリチカム・エスチバムの他の亜種、トリチカム・ツルギダム(Triticum turgidum)・デュラム亜種(デュラムコムギ、マカロニ又はパスタコムギとしても知られる)、トリチカム・モノコッカム(Triticum monococcum)・モノコッカム亜種(栽培されたヒトツブコムギ又はスモールスペルト)、トリチカム・チモフェービ(Triticum timopheevi)・チモフェービ亜種、トリチカム・ツルギダム・ジコッコン(dicoccon)亜種(栽培されたエンマー)及びトリチカム・ツルギダムの他の亜種(Feldman)を含む。コムギは、AABBDD型ゲノムを有する六倍体コムギ又はAABB型ゲノムを有する四倍体コムギになり得る。コムギにおける遺伝的な多様性はハイブリダイゼーションによりライムギ及びオオムギを含めた特定の関連種に移行するため、本開示はそのようにしてつくられたハイブリッド種も含み、パンコムギとライムギとのハイブリッドであるライコムギを含む。一実施形態において、コムギ植物はトリチカム・エスチバム種であり、好ましくはエスチバム亜種である。或いは、変異又はトランスジーンはトリチカム・エスチバムからデュラムコムギへと簡単に移行できるため、コムギは好ましくはトリチカム・ツルギダム・デュラム亜種である。
別の実施形態において、本開示では、外来核酸をコムギ植物のゲノムに含めなくても野生型のコムギ植物と比較してグリホサートに対して抵抗性を示すコムギ植物について説明する。一実施形態において、本開示は、1つ以上のEPSPS遺伝子における非トランスジェニック変異に関する。
更に別の実施形態において、本開示は、1つ以上のEPSPS遺伝子における一連の独立した人為的非トランスジェニック変異、少なくとも1つのEPSPS遺伝子にこれらの変異の1つ以上を有するコムギ植物並びにコムギの少なくとも1つのEPSPS遺伝子において同様及び/又は追加の変異を作り出し、それらを同定する方法に関する。
更に別の実施形態において、本開示は、野生型の植物と比較してEPSPS遺伝子の発現を低下させる及び/又はグリホサートに対するEPSPSタンパク質の親和性を低下させるトランスジーンを有するトランスジェニックコムギ植物に関する。
更に別の実施形態において、本開示は改変EPSPS遺伝子を有するコムギ植物に関し、EPSPS遺伝子はゲノム編集により改変され、更にこの改変は、野生型の植物と比較してグリホサートに対して抵抗性を有する植物に貢献する。
I.5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェートシンターゼ(EPSPS)
一実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子の発現を低下させることに関する。別の実施形態において、本開示は、グリホサートに対するEPSPSタンパク質の親和性を低下させることに関する。一実施形態において、本開示は、グリホサートに対する親和性が低いEPSPSタンパク質を有するコムギ植物に関する。一実施形態において、EPSPS遺伝子の発現の低下又はグリホサートに対するEPSPSタンパク質の親和性の低下は、非トランスジェニック変異、トランスジーン又はゲノム編集により達成できる。
一実施形態において、本開示は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集を通じたEPSPS遺伝子の改変に関する。
一実施形態において、本開示は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集を通じてEPSPS遺伝子を改変することで、無改変又は野生型EPSPSタンパク質と比較して、グリホサートに対する親和性は低いが植物基質に対する親和性は相当な改変EPSPSタンパク質を得ることに関する。一実施形態において、植物基質に対する相当な親和性とは、野生型EPSPSの植物基質に対する親和性の少なくとも70%又は少なくとも75%又は少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%を有する改変EPSPSタンパク質のことである。
図1に、イネEPSPS及びコムギEPSPSタンパク質のタンパク質配列のアラインメントを示す。図からわかるように、相当な同一性が、イネEPSPSタンパク質とコムギEPSPSタンパク質との間に存在する。小さな差異が、N末端領域においてイネ及びコムギEPSPSタンパク質間に見られる。
EPSPSタンパク質の活性領域は、イネ及びコムギEPSPSタンパク質間で高度に保存されている。この活性領域は典型的には、以下のアミノ酸配列:FLGNAGTAMRPLTAAVVAAGGN(配列番号18)に包含される。
II.EPSPS遺伝子の変異
一実施形態において、コムギ種子は、エチルメタンスルホネート(EMS)で変異誘発させ、次にM1植物に成長させることができる。次に、このM1植物を自家受粉させ、M1植物からの種子をM2植物に成長させ、次にEPSPS遺伝子座における変異についてスクリーニングした。M1植物は変異についてスクリーニングできるが、M2植物のスクリーニングの利点は、全ての体細胞変異が生殖細胞系列変異に対応することである。当業者ならば、本開示のEPSPS変異コムギ植物を作出するために、種子、花粉、植物組織又は植物細胞を含めた(ただしこれらに限定しない)多種多様なコムギ植物材料に変異を起こさせ得ることがわかる。しかしながら、植物DNAを変異についてスクリーニングする場合、変異を誘発させた植物材料のタイプが影響し得る。例えば、変異を誘発させていない植物の授粉に先立って花粉を変異誘発に供する場合、その授粉で得られる種子はM1植物へと成長する。M1植物の全ての細胞が花粉で作られた変異を含むため、次に、M2世代を待つ代わりに、これらのM1植物をEPSPS変異についてスクリーニングし得る。
主に点変異及び短い欠失、挿入、トランスバージョン及び/又はトランジション(約1〜約5個のヌクレオチド)を作り出す変異原、例えば化学変異原又は放射線を用いて変異を作り出し得る。本明細書で開示の方法に準拠した変異原には、以下に限定するものではないが、エチルメタンスルホネート(EMS)、メチルメタンスルホネート(MMS)、N−エチル−N−ニトロスウレア(nitrosurea)(ENU)、トリエチルメラミン(TEM)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)、プロカルバジン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ジエチルサルフェート、アクリルアミドモノマー、メルファラン、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロソアミン、N−メチル−N’−ニトロ−ニトロソグアニジン(MNNG)、ニトロソグアニジン、2−アミノプリン、7,12ジメチル−ベンズ(ア)アントラセン(DMBA)、エチレンオキシド、ヘキサメチルホスホラミド、ビスルファン(bisulfan)、ジエポキシアルカン(ジエポキシオクタン(DEO)、ジエポキシブタン(BEB)等)、2−メトキシ−6−クロロ−9[3−(エチル−2−クロロ−エチル)アミノプロピルアミノ]アクリジンジヒドロクロリド(ICR−170)及びホルムアルデヒドが含まれる。
現在知られている又は今後考案される適切な植物DNA準備方法を用いて、EPSPS変異スクリーニング用のコムギ植物DNAを準備し得る。例えば、Chen&Ronald,Plant Molecular Biology Reporter 17:53−57,1999;Stewart and Via,Bio Techniques 14:748−749,1993を参照のこと。加えて、幾つかの市販のキットが入手可能であり、Qiagen社(バレンシア、カリフォルニア州)及びQbiogene社(カールスバッド、カリフォルニア州)のキットを含む。
一実施形態においては、次に、変異を誘発させた植物組織起源の植物の個体群全体のEPSPS遺伝子における変異についてのスクリーニングを促進するために、個々のコムギ植物から準備したDNAをプールした。プールした群のサイズは用いるスクリーニング法の感度及びスクリーニングする植物の倍数性に依存し得る。好ましくは、2つ以上の個々のコムギ植物の群をプールする。
別の実施形態においては、DNAサンプルをプールした後、プールをEPSPS配列特異的増幅技法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供する。PCRの概要に関しては、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,Gelfand,Sninsky,and White,eds.),Academic Press,San Diego,1990を参照のこと。EPSPS遺伝子座又はEPSPS遺伝子座の真横の配列に特異的ないずれのプライマーを利用しても、プールしたDNAサンプル内のEPSPS配列を増幅し得る。好ましくは、有用な変異が最も起き易いEPSPS遺伝子座の領域を増幅するようにプライマーを設計する。最も好ましくは、酵素の活性ドメインをコードするEPSPS遺伝子の保存領域を増幅するようにプライマーを設計する。EPSPS酵素のこの領域は当該分野で周知である(Padgette et al.,The Journal of Biological Chemistry 266(33):22364−22369,1991;Schonbrunn et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences 98(4):1376−1380,2001;Funke et al.,The Journal of Biological Chemistry 284(15):9854−9860,2009)。加えて、点変異のスクリーニングを容易にするために、プライマーは公知の多型部位を回避することが好ましい。一実施形態においては、1度に1つのホメオログだけが変異についてスクリーニングされるように、プライマーを、ホメオログの1つだけを増幅するように設計する。プライマーはホメオログ間の多型部位を標的にできるため、ホメオログの1つを増幅するだけである。
ゲル上でのPCR産物の検出を促進するために、PCRプライマーは、慣用の又は今後考案される標識方法を用いて標識し得る。
一実施形態においては、オリザ・サティバ(イネ)EPSPS cDNA(配列番号1;NCBI参照配列NM_001063247)及びゲノムDNA(配列番号2;NCBI参照配列NC_008399)配列をGenBankのコムギ発現配列タグ(EST)に対してNCBIのBLASTN(Basic Local Alignment Search Tool for nucleotides)を用いてアラインし、ESTのUnigeneクラスタ(Ta.12687;引き上げられ、Ta.17912に置き換えられた)を同定した。次に、Unigene配列をイネEPSPS cDNA及びゲノムDNA配列とアラインし、酵素の活性ドメインをコードするコムギEPSPS遺伝子の領域を増幅するように表1のPCRプライマー(配列番号4〜5)を設計した。これらのPCRプライマーを使用して、野生型四倍体及び六倍体栽培品種であるクロノス(トリチカム・ツルギダム、デュラム)及びエクスプレス(トリチカム・エスチバム、PVP#9000012)のそれぞれから準備したコムギゲノムDNAからのEPSPSを増幅した。
いずれの適切なクローニングベクターも使用できたが、PCR増幅産物を、TOPO Taクローニング(登録商標)キット(pCR(登録商標)2.1−TOPO)(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州、92008)を使用してクローニングした。複数の独立したクローンをシーケンシングした。2つのカテゴリの配列をクロノスからのゲノムDNAで同定した。これら2つに加えて追加の配列カテゴリをエクスプレスのゲノムDNAで同定した。これらは3種のコムギEPSPSホメオログを代表すると考えられた。イネゲノムとの予測されるシンテニーに基づき、染色体7Bの一部の公知の転座により、コムギEPSPS A及びDゲノムコピーは染色体7A及び7D上に局在すると予測され、Bゲノムコピーは染色体4A上にあると予測された(http://wheat.pw.usda.gov/NSF/project/mapping_data)。これを念頭に置いて、ゲノムDNAを、同じPCRプライマー(配列番号:4〜5)を使用して、ホメオログ群7A、B、D及び4Aの改変染色体補体を含むチャイニーズスプリング(Chinese Spring)ゼロ染色体/四染色体コムギ系統から増幅し、PCR増幅産物をシーケンシングした。同じ3つのEPSPS配列カテゴリを、エクスプレスにおける同定と同様にゼロ染色体/四染色体系統で同定した。得られた配列は、コムギにおけるEPSPS同祖遺伝子について新規な部分ゲノム配列を表すと確認された(配列番号6〜8)。
別の実施形態においては、次に、3つの部分ゲノム配列で同定されたヌクレオチドの違いに基づいて各EPSPSホメオログを特異的に増幅するようにプライマーを設計した。EPSPS配列内の有用な変異を同定するのに有用だと判明しているPCRプライマー例(配列番号9〜12)を下の表2に示す。EPSPのAホメオログを、左プライマーとしての配列番号9を右プライマーとしての配列番号10と組み合わせて使用して増幅した。EPSPのBホメオログを、左プライマーとしての配列番号9を右プライマーとしての配列番号11と組み合わせて使用して増幅し、このPCR産物を更に後述するTaqManプロトコルを用いてスクリーニングした。EPSPのDホメオログを左プライマーとしての配列番号9を右プライマーとしての配列番号12と組み合わせて使用して増幅した。
様々なプライマーの組み合わせからのPCR増幅産物をシーケンシングすることで、プライマー対が所望のホメオログを特異的に増幅したことを確認した。次に、PCR産物を使用して各ホメオログ中のEPSPS変異についてスクリーニングした。
別の実施形態においては、PCR増幅産物を、野生型及び変異配列間のヌクレオチドの違いを同定する任意の方法を用いてEPSPS変異についてスクリーニングし得る。これらは、例えば、限定するものではないが、シーケンシング、変性高圧液体クロマトグラフィ(dHPLC)、一定変性剤キャピラリ電気泳動(constant denaturant capillary electrophoresis、CDCE)、温度勾配キャピラリ電気泳動(TGCE)(Li et al.,Electrophoresis 23(10):1499−1511,2002を参照のこと)又はColbert et al.,Plant Physiology 126:480−484,2001が記載の高スループット法で用いられているような酵素での切断によるフラグメンテーションを含み得る。好ましくは、PCR増幅産物を、野生型及び変異配列間でのヘテロ二本鎖におけるミスマッチを優先的に切断するエンドヌクレアーゼとインキュベートする。
別の実施形態において、切断産物を、自動シーケンシングゲル装置を使用して電気泳動にかけ、ゲルイメージを標準的な市販の画像処理プログラムの助けを借りて分析する。PCR増幅産物は、TaqMan(登録商標)SNPジェノタイピングアッセイ(プロトコル番号4332856C、Applied Biosystems社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を使用して一塩基多型についてもスクリーニングし得る。
一実施形態において、本明細書で開示及び想定する変異は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)及び3−ホスホシキミ酸を含めた内在性基質の結合における最小限の変化でもってグリホサートの結合を減少させるEPSPS酵素の活性ドメインにおけるミスセンス変異を含む。
一実施形態において、コムギEPSPS遺伝子における変異は、アミノ酸位173でのトレオニンからイソロイシンへの変化をもたらす変異(本明細書においてはT173I変異と称する)、アミノ酸位177でのプロリンからセリンへの変化をもたらす変異(本明細書においてはP177S変異と称する)及びアミノ酸位177でのプロリンからイソロイシンへの変化をもたらす変異(本明細書においてはP177L変異と称する)を含む。明確にするために、コムギEPSPSタンパク質における変異アミノ酸に、公開されているイネEPSPSタンパク質配列(配列番号3)に従って番号をふる。好ましい変異は、上述したような酵素活性を変化させるEPSPS酵素の活性ドメインにおける他の変異も含む。タンパク質の機能へのその影響(すなわち、完全な耐性〜機能喪失)を予測するために、各新規な変異を、SIFT(Sorting Intolerant from Tolerant;Ng and Henikoff,Nucleic Acids Research 31:3812−3814,2003)、PSSM(Position−Specific Scoring Matrix;Henikoff and Henikoff,Computer Applications in the Biosciences 12:135−143,1996)及びPARSESNP(Taylor and Greene,Nucleic Acids Research 31:3808−3811,2003)等のバイオインフォマティクスツールを用いて評価する。例えば、0.05未満のSIFTスコア及びPSSMスコアにおける大きな変化(例えば、およそ10以上)は、タンパク質の機能に対して有害な作用を及ぼし易い変異を示す。
A.EPSPS遺伝子
一実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子における1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。別の実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子における1つ以上の変異に関する。一実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子における複数の非トランスジェニック変異に関し、以下に限定するものではないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10より多い変異を含む。
別の実施形態において、EPSPS遺伝子は、表4に挙げた1つ以上の変異を有するポリペプチドをもたらす1つ以上の非トランスジェニック変異及びホメオログにおける対応する変異及びこれらの組み合わせを含み得る。
別の実施形態において、本開示は、対応するホメオログのEPSPS遺伝子における本明細書で開示の1つ以上の非トランスジェニック変異に対応する変異に関する。例えば、AゲノムのEPSPS遺伝子における同定された変異は、B及び/又はDゲノムのEPSPS遺伝子における有益な変異になり得る。当業者ならば、ホメオログにおける変異が全く同じ位置にはない場合もあることがわかる。
当業者ならば、異なるコムギ変種ではEPSPS遺伝子の遺伝子配列が天然で異なり得ることがわかる。
発明者は、グリホサートに対する抵抗性を有する植物を作出するためには、EPSPS遺伝子機能を変化させる変異が望ましいことを突き止めた。好ましい変異はミスセンス及びナンセンスな変化を含み、メッセンジャーRNAからの1つ以上のEPSPSタンパク質の翻訳を途中でトランケートする変異、例えばEPSPSメッセンジャーRNAのコード領域内に終止コドンを作り出す変異を含む。そのような変異は、挿入、反復配列、スプライスジャンクション変異、修飾されたオープンリーディングフレーム(ORF)及び点変異を含む。
更に別の実施形態において、1つ以上の変異はAゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。別の実施形態において、1つ以上の変異はBゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。更に別の実施形態において、1つ以上の変異はDゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。更に別の実施形態において、1つ以上の変異はA及びBゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。更に別の実施形態において、1つ以上の変異はA及びDゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。別の実施形態において、1つ以上の変異はB及びDゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。更に別の実施形態において、1つ以上の変異はA、B及びDゲノムのEPSPS遺伝子におけるものである。
1.Aゲノム
一実施形態において、本開示は、AゲノムのEPSPS遺伝子における複数の非トランスジェニック変異に関し、以下に限定するものではないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える変異を含む。一実施形態において、1つ以上の非トランスジェニック変異は、AゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおけるものである。別の実施形態において、非トランスジェニック変異はAゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。一実施形態において、変異はホモ接合である。
表4で同定した以下の変異は、本明細書で開示の様々な実施形態に従って作り出し、同定した変異の例である。これらは限定ではなく説明を目的としたものである。後出の変異は単なる例であって、同様の変異も考えられることを理解されたい。
表4は、A、B及びDゲノムのEPSPS遺伝子における代表的な変異のリストである。アミノ酸変化を、公開されているイネタンパク質配列(配列番号3)、またコムギタンパク質配列(配列番号9)の両方に従って同定する。
一実施形態において、Aゲノムにおいて同定され表4に記載した2つ以上の変異は、Aゲノムが2つ以上の変異を含むように組み合わせ得る。
別の実施形態において、Bゲノムにおいて同定され表4に記載した2つ以上の変異は、Bゲノムが2つ以上の変異を含むように組み合わせ得る。
更に別の実施形態において、Dゲノムにおいて同定され表4に記載した2つ以上の変異は、Dゲノムが2つ以上の変異を含むように組み合わせ得る。
一実施形態において、表4のAゲノムで同定された変異はいずれも、表4に記載のBゲノムにおける任意の変異と組み合わせ得る。
別の実施形態において、表4のAゲノムで同定された変異はいずれも、表4に記載のDゲノムにおける任意の変異と組み合わせ得る。
更に別の実施形態において、表4のAゲノムで同定された変異はいずれも、表4のBゲノムにおける任意の変異及び表4に記載のDゲノムにおける任意の変異と組み合わせ得る。
別の実施形態において、表4のBゲノムで同定された変異はいずれも、表4に記載のDゲノムにおける任意の変異と組み合わせ得る。
一実施形態において、本開示は、表4に記載の1つ以上の変異を有するポリペプチドを産生する1つ以上の非トランスジェニック変異を有する配列番号6に対応するAゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施形態において、表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号6に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
更に別の実施形態において、ポリヌクレオチドは表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するEPSPSタンパク質をコードし、EPSPSタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み且つEPSPS−Aタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
2.Bゲノム
一実施形態において、本開示はBゲノムのEPSPS遺伝子における複数の非トランスジェニック変異に関し、以下に限定するものではないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える変異を含む。一実施形態において、1つ以上の非トランスジェニック変異はBゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおけるものである。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、BゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。更に別の実施形態において、変異はホモ接合である。
一実施形態において、本開示は、表4で挙げた1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有する配列番号7に対応するBゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施形態において、1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドは表4に記載の1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードし且つ配列番号7に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
更に別の実施形態において、本開示は、1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードし且つEPSPS−Bタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する1つ以上の非トランスジェニック変異を有するBゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドに関する。
3.Dゲノム
一実施形態において、本開示はDゲノムのEPSPS遺伝子における複数の非トランスジェニック変異に関し、以下に限定するものではないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える変異を含む。一実施形態において、1つ以上の非トランスジェニック変異は、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおけるものである。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。更に別の実施形態において、変異はホモ接合である。
一実施形態において、本開示は、表4で挙げた1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有する配列番号8に対応するDゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施形態において、1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドは、表4に記載の1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードし且つ配列番号8に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
更に別の実施形態において、本開示は、1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードし且つEPSPS−Dタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する1つ以上の非トランスジェニック変異を有するDゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドに関する。
B.EPSPSタンパク質
更に別の実施形態において、本開示は、野生型EPSPSタンパク質と比較して1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質をもたらすEPSPS遺伝子における1つ以上の非トランスジェニック変異(EPSPS変異と題したセクションで上述したとおり)に関する。一実施形態において、非トランスジェニック変異は、表4に記載の変異に限定するものではないが、ホメオログにおける対応する変異及びこれらの組み合わせを含む。
別の実施形態において、本開示は、グリホサートに対する親和性が低いEPSPSタンパク質をもたらすEPSPS遺伝子における1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。幾つかの実施形態において、EPSPS遺伝子における変異は、EPSPSタンパク質の発現を低下させる。他の実施形態において、EPSPS遺伝子における変異は、不安定な又は機能が低下したEPSPSタンパク質を作り出す。
1.EPSPSタンパク質の発現レベル
別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質の発現レベルは、野生型EPSPSタンパク質の発現レベルの0〜2%、2〜5%、5〜7%、7〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%及び95〜99%低下する。
更に別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質の発現レベルは、野生型EPSPSタンパク質の発現レベルと比較して10〜20%又は20〜30%又は30〜40%又は40〜50%又は50〜60%又は60〜70%又は70〜80%又は80〜90%又は90〜99%低下する。
2.EPSPSタンパク質の活性
更に別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質はグリホサートに対して低い親和性を有し、この低い親和性は、グリホサートに対する野生型EPSPSタンパク質の親和性の0〜1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%及び99%超である。別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質は、野生型EPSPSタンパク質と比較してグリホサートに対する親和性を有さない又はゼロの親和性を有する。
更に別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質はグリホサートに対しては低い親和性を有するが、植物又は内在性基質に対しては野生型の親和性を有する。一実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質は植物又は内在性基質に対して相当な親和性を有し、植物基質に対する親和性は、野生型EPSPSタンパク質と比較して約100%又は99%又は98%又は97%又は96%又は95%又は94%又は93%又は92%又は91%又は90%である。
更に別の実施形態において、本明細書で開示の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質の活性は、野生型EPSPSタンパク質の活性レベルの1〜10%又は10〜30%又は30〜50%又は50〜70%又は70〜80%又は80〜90%又は90〜95%である。
III.ゲノム編集
一実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子の発現が低下した及び/又はEPSPSタンパク質の活性が低下した植物に関し、EPSPS遺伝子の発現の低下及び/又はEPSPSタンパク質の活性の低下はゲノム編集により達成される。
一実施形態において、本開示はゲノム編集したEPSPS遺伝子を有するコムギ植物に関し、コムギ植物は、野生型植物と比較して改変されたEPSPSタンパク質を有する。
ゲノム編集又は操作されたヌクレアーゼを用いたゲノム編集(genome editing with engineered nucleases、GEEN)は、人為的に操作されたヌクレアーゼ又は「分子バサミ」を使用してDNAを挿入、置換又はゲノムから除去する遺伝子操作のタイプの1つである。ヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置で特異的二重鎖切断(DSB)を行い、相同組み換え(homologous recombination、HR)及び非相同末端結合(nonhomologous end−joining、NHEJ)の天然の工程でもって誘発された切断を修復する細胞の内在メカニズムを制御する。使用される操作されたヌクレアーゼには現在、4つの主なファミリー:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム及び再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼを含めた操作されたメガヌクレアーゼある。
A.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることで作り出される人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインは特定の所望のDNA配列を標的とするように操作でき、これによりジンクフィンガーヌクレアーゼは複雑なゲノム内の独特の配列を標的にできるようになる。内在するDNA修復機構を利用することで、これらの試薬を使用してより高次の生物のゲノムを精確に改変し得る。
ZFNは、FokI制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインに融合させた操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインから成る。ZFNを使用して特定のDNA配列において二本鎖切断(DSB)を誘発させ、それによって外来の鋳型との部位特異的な相同組み換えを促進し得る。この外来の鋳型は、ゲノムに導入する配列を含む。
ジンクフィンガードメインを操作するための公開されている方法には、(1)コンテキスト依存アセンブリ(Context−dependent Assembly、CoDA)、(2)オリゴマー化プールエンジニアリング(OPEN)及び(3)モジュラーアセンブリが含まれる。
一実施形態において、本開示は、ZFNを使用してEPSPS遺伝子及びそのコードされた酵素のグリホサート耐性を上昇させることに関する。
B.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)及びFokIエンドヌクレアーゼから成る配列特異的エンドヌクレアーゼである。TALEは、34個のアミノ酸のタンデム反復ユニットを備えた高度に保存された中心領域を有するDNA結合タンパク質である。各反復単位についての塩基優先性は、反復可変二残基(repeat−variable di−residue、RVD)と称される2つのアミノ酸残基により決定され、RVDは標的DNAにおける1つの特定のヌクレオチドを認識する。DNA結合反復単位のアレイは、特定のDNA配列を標的とするようにカスタマイズし得る。ZFNと同様に、ゲノムにおける標的とする特定の配列上での2つのTALENの二量体化はDSBのFokI依存的な導入をもたらし、相同組み換え型修復(homology directed repair、HDR)及び非相同性末端結合(NHEJ)修復機構を刺激する。
一実施形態において、本開示は、TALENを使用してEPSPS遺伝子及びそのコードされた酵素のグリホサート耐性を上昇させることに関する。
C.CRISPR/Casシステム
規則的な間隔でもってクラスタ化された短い反復回文配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、CRISPR)タイプIIシステムは、ゲノム工学のためのRNA誘導型エンドヌクレアーゼテクノロジーである。このシステムには2つの別個の構成要素:(1)ガイドRNA及び(2)エンドヌクレアーゼがあり、この場合、CRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ、Cas9である。
ガイドRNAは、内在性細菌性crRNAとtracrRNAとを組み合わせて一本鎖キメラガイドRNA(gRNA)転写物にしたものである。gRNAは、crRNAの標的特異性とtracrRNAの足場特性とを組み合わせて1つの転写物にしたものである。gRNA及びCas9が細胞で発現する場合、ゲノム標的配列を改変できる又は永久に破壊できる。
gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列とゲノムDNA中の標的配列との塩基対形成及び標的配列に対する相補性により標的配列にリクルートされる。Cas9をうまく結合させるために、ゲノム標的配列は、正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif、PAM)配列を標的配列のすぐ後ろに含まなくてもならない。gRNA/Cas9複合体の結合は、野生型Cas9がDNAの両方の鎖を切断して二重鎖切断(DSB)を引き起こすようにCas9をゲノム標的配列へと限局する。Cas9はPAM配列の上流で3〜4個のヌクレオチドを切断する。DSBは2つの一般的な修復経路:(1)NHEJ DNA修復経路又は(2)HDR経路の一方を通して修復し得る。NHEJ修復経路ではDSB部位での挿入/欠失(InDel)が起きることが多く、これはフレームシフト及び/又は未成熟終止コドンにつながって標的遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を効果的に破壊し得る。
HDR経路は修復用鋳型の存在を必要とし、この鋳型はDSBを直すのに用いられる。HDRは修復用鋳型の配列を切断された標的配列に忠実にコピーする。修復用鋳型を用いたHDRの使用により、特定のヌクレオチド変化を標的遺伝子に導入できる。
一実施形態において、本開示は、CRISPR/Cas9システムを使用してEPSPS遺伝子及びそのコードされた酵素のグリホサート耐性を上昇させることに関する。
D.再操作されたホーミングヌクレアーゼを含めたメガヌクレアーゼ
メガヌクレアーゼは、大きな認識部位を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼである(12〜40個の塩基対の二本鎖DNA配列)。その結果、この部位は一般に、所与のゲノムで一度だけ生じる。例えば、I−SceIメガヌクレアーゼにより認識される18塩基対配列は、平均的に、偶然一度発見するにはヒトゲノムのサイズの20倍を必要とする(ミスマッチが1つの配列はヒトサイズのゲノムあたり約3回起きるが)。従って、メガヌクレアーゼは、最も特異的な天然の制限酵素だと見なされる。
メガヌクレアーゼの中でも、LAGLIDADG型のホーミングヌクレアーゼが、過去15年にわたってゲノム及びゲノム工学の研究にとって貴重なツールとなっている。タンパク質を操作してその認識配列を改変することで、標的配列を変化させることができる。
一実施形態において、本開示は、再操作されたホーミングヌクレアーゼを含めたメガヌクレアーゼを使用してEPSPS遺伝子及びそのコードされた酵素のグリホサート耐性を上昇させることに関する。
IV.コムギ栽培品種
一実施形態において、二倍体、多倍数体、四倍体及び六倍体である少なくとも1つのEPSPS遺伝子を有するコムギ栽培品種を用い得る。
別の実施形態において、コムギはトリチカム・エスチバムである。
一実施形態において、いずれのコムギ栽培品種を用いてもEPSPS遺伝子に変異を作り出せる。一実施形態において、いずれのコムギ栽培品種を用いてもAゲノムのEPSPS遺伝子に変異を作り出せる。別の実施形態において、いずれのコムギ栽培品種を用いてもBゲノムのEPSPS遺伝子に変異を作り出せる。別の実施形態において、いずれのコムギ栽培品種を用いてもDゲノムのEPSPS遺伝子に変異を作り出せる。
一実施形態において、いずれのコムギ栽培品種も、EPSPS変異を交配させて異なる栽培品種にするための系統として使用し得る。別の実施形態において、少なくとも1つのEPSPS遺伝子を有するいずれのコムギ栽培品種も使用し得て、以下に限定するものではないが、硬質赤色春コムギ、硬質白色コムギ、デュラムコムギ、軟質白色春コムギ、軟質白色冬コムギ、硬質赤色冬コムギ、普通コムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマーコムギ、パスタコムギ及びツルギダムコムギを含む。
一実施形態において、硬質赤色春コムギは、以下に限定するものではないが、ブルズアイ(Bullseye)、カベルネ(Cabernet)、カルロジョ(Cal Rojo)、ハンク(Hank)、ホアキン(Joaquin)、ケルセ(Kelse)、ラリアット(Lariat)、ラシック(Lassik)、マルベック(Malbec)、マイカ(Mika)、PR 1404、レッドウィング(Redwing)、サミット(Summit)515、SY 314、トリプル(Triple)IV、ウルトラ(Ultra)、WB−パトロン(WB−Patron)、WB−ロックランド(WB−Rockland)、イエコーラロッジョ(Yecora Rojo)、アコード(Accord)、エイム(Aim)、アンザ(Anza)、ベーカー(Baker)、ベスハシタ(Beth Hashita)、ボーナス(Bonus)、ボラー(Borah)、ブリム(Brim)、ブルックス(Brooks)、バックプロント(Buck Pronto)、ビュート(Butte)86、キャバリエ(Cavalier)、チャレンジャー(Challenger)、チーフ(Chief)、シアノ(Ciano)T79、コルサ(Colusa)、コンパニオン(Companion)、カッパー(Copper)、カヤーマ(Cuyama)、ダッシュ(Dash)12、エルドン(Eldon)、エナノ(Enano)、エクスプレス(Express)、エクスプレッソ(Expresso)、ジェファーソン(Jefferson)、ジェネロ(Genero)F81、グランディン(Grandin)、ヘレナ(Helena)554、ホリス(Hollis)、イムリス(Imuris)T79、イニア(Inia)66R、ジェローム(Jerome)、カーン(Kern)、レン(Len)、マーシャル(Marshall)、マッケイ(McKay)、ノーマッド(Nomad)、ノースウェスト(Northwest)10、オスロ(Oslo)、パヴォン(Pavon)F76、ペガサス(Pegasus)、ピティック(Pitic)62、ポコレッド(Poco Red)、パウエル(Powell)、プロブランド(Probrand)711、プロブランド751、プロブランド771、プロブランド75、プロブレッド(Probred)、プロインタキュゲイ(Prointa Queguay)、プロインタキンタル(Prointa Quintal)、リッチ(Rich)、RSI 5、サジタリオ(Sagittario)、スカーレット(Scarlet)、セラ(Serra)、シャスタ(Shasta)、ソラーノ(Solano)、スピルマン(Spillman)、スプライト(Sprite)、スタンダー(Stander)、ステラ(Stellar)、ストア(Stoa)、サクセス(Success)、サミット(Summit)、サンスター(Sunstar)2、サンスターキング(Sunstar King)、タディニア(Tadinia)、タミー(Tammy)、タノリ(Tanori)71、タラ(Tara)2000、テンポ(Tempo)、テシア(Tesia)T79、トピック(Topic)、UIウィンチェスター(Winchester)、ヴァンス(Vance)、ヴァンダール(Vandal)、W444、ワンパム(Wampum)、ウェアド(Wared)、WB−フュージョン(Fuzion)、ウェストブレッド(Westbred)906R、ウェストブレッド911、ウェストブレッド926、ウェストブレッド936、ウェストブレッドディスカバリー(Westbred Discovery)、ウェストブレッドランボー(Westbred Rambo)、ヨーロー(Yolo)及びジーク(Zeke)を含む。
別の実施形態において、硬質白色コムギは、以下に限定するものではないが、ブランカフエルテ(Blanca Fuerte)、ブランカグランデ(Blanca Grande)515、ブランカロイヤル(Blanca Royale)、クリアホワイト(Clear White)、パトウィン(Patwin)、パトウィン515、WB−クリスタロ(Cristallo)、WB−パロマ(Paloma)、WB−ペルラ(Perla)、アルタブランカ(Alta Blanca)、ブランカグランデ(Blanca Grande)、デラーノ(Delano)、ゴールデンスパイク(Golden Spike)、ID377S、クラシック(Klasic)、ロクサ(Lochsa)、ロロ(Lolo)、メイコン(Macon)、オーティス(Otis)、フェニックス(Phoenix)、ピマ(Pima)77、プラタ(Plata)、プリスティーン(Pristine)、ラモナ(Ramona)50、シエテセロス(Siete Cerros)66、バイオレット(Vaiolet)及びウィンサム(Winsome)を含む。
更に別の実施形態において、デュラムコムギは、以下に限定するものではないが、クラウン(Crown)、デザートキング(Desert King)、デザートキングHP、デュラキング(Duraking)、フォルティシモ(Fortissimo)、ハヴァス(Havasu)、クロノス(Kronos)、メストラーレ(Maestrale)、ノルマーノ(Normanno)、オリータ(Orita)、プラチナム(Platinum)、Q−マックス(Q−Max)、RSI 59、サラゴーラ(Saragolla)、タンゴ(Tango)、ティパイ(Tipai)、トッパー(Topper)、ユートピア(Utopia)、ヴォランテ(Volante)、WB−ミード(Mead)、ウェストモア(Westmore)、アルデンテ(Aldente)、アルデュラ(Aldura)、アルター(Altar)84、アルバ(Aruba)、ビッターン(Bittern)、ブラバデュール(Bravadur)、カンデュラ(Candura)、コルテス(Cortez)、デラックス(Deluxe)、デザートタイタン(Desert Titan)、デュレックス(Durex)、ダーフォート(Durfort)、エディ(Eddie)、ジャーメイン(Germains)5003D、インペリアル(Imperial)、コファ(Kofa)、ラヴァンテ(Levante)、マット(Matt)、ミード(Mead)、メキシカリ(Mexicali)75、ミノス(Minos)、モドック(Modoc)、モホーク(Mohawk)、ニューデュラ(Nudura)、オコティーロ(Ocotillo)、プロデュラ(Produra)、リーヴァ(Reva)、リア(Ria)、セプター(Septre)、スカイ(Sky)、タクナ(Tacna)、タイタン(Titan)、トランプ(Trump)、ワード(Ward)、ウェストブレッド803、ウェストブレッド881、ウェストブレッド883、ウェストブレッド1000D、ウェストブレッドレイカー(Westbred Laker)、ウェストブレッドターボ(Westbred Turbo)及びヤヴァロス(Yavaros)79を含む。
別の実施形態において、軟質白色春コムギは、以下に限定するものではないが、アルポワ(Alpowa)、アルチュラス(Alturas)、ベーブ(Babe)、ディーヴァ(Diva)、JD、ニューダークウィン(New Dirkwin)、ニック(Nick)、ツイン(Twin)、ウィット(Whit)、ブランカ(Blanca)、ブリス(Bliss)、カロルワ(Calorwa)、センテニアル(Centennial)、チャリス(Challis)、ダークウィン(Dirkwin)、エデン(Eden)、エドウォール(Edwall)、フィールダー(Fielder)、フィールドウィン(Fieldwin)、ジュビリー(Jubilee)、ルイーズ(Louise)、オーウェンス(Owens)、ペナワワ(Penawawa)、ポメレール(Pomerelle)、スターリング(Sterling)、サンスタープロミス(Sunstar Promise)、スーパーダークウィン(Super Dirkwin)、トレジャー(Treasure)、UIカタルド(Cataldo)、UIプティ(Pettit)、ユルキュイ(Urquie)、ヴァンナ(Vanna)、ワデュエル(Waduel)、ワデュエル94、ワカンツ(Wakanz)、ワラデイ(Walladay)、ワワワイ(Wawawai)、ホワイトバード(Whitebird)及びザック(Zak)を含む。
更に別の実施形態において、軟質白色冬コムギは、以下に限定するものではないが、APバッジャー(Badger)、APレガシー(Legacy)、ブランデージ(Brundage)96、ブリュノー(Bruneau)、カラ(Cara)、ゲッツェ(Goetze)、レギオン(Legion)、メアリー(Mary)、スカイルズ(Skiles)、スティーブンス(Stephens)、SYオヴェーション(Ovation)、タブス(Tubbs)、WB−ジャンクション(Junction)、WB−528、ゼルファ(Xerpha)、ヤンヒル(Yamhill)、バービー(Barbee)、ベイスン(Basin)、ビタールート(Bitterroot)、ブリュール(Bruehl)、カスタン(Castan)、チャカール(Chukar)、コダ(Coda)、ダウズ(Daws)、エドウィン(Edwin)、エルタン(Eltan)、ファロ(Faro)、フィンチ(Finch)、フット(Foote)、ジーン(Gene)、ヒル(Hill)81、ヒラー(Hiller)、ハバード(Hubbard)、ハイアック(Hyak)、ハイスロップ(Hyslop)、アイダホ(Idaho)587、クモール(Kmor)、ランバート(Lambert)、リュージェイン(Lewjain)、マクヴィカー(MacVicar)、マドセン(Madsen)、マルコム(Malcolm)、マサミ(Masami)、マクダーミッド(McDermid)、モロ(Moro)、ニューゲインズ(Nugaines)、ORCF−101、ORCF−102、ORCF−103、ロッド(Rod)、ローデ(Rohde)、ルロ(Rulo)、サイモン(Simon)、サリュート(Salute)、テンプル(Temple)、トレス(Tres)、タブス06、UICF−ブランデージ(Brundage)、WB−523及びウェザーフォードを含む。
別の実施形態において、硬質赤色冬コムギは、以下に限定するものではないが、アンドリュース(Andrews)、アーチャー(Archer)、ベイタム(Batum)、ブリザード(Blizzard)、ボネヴィル(Bonneville)、バウンダリー(Boundary)、デクロ(Declo)、デロリス(Deloris)、フィンレー(Finley)、ガーランド(Garland)、ハットン(Hatton)、ホフ(Hoff)、ロングホーン(Longhorn)、マニング(Manning)、メリディアン(Meridian)、プロモントリー(Promontory)、ヴォナ(Vona)、ワンサー(Wanser)、ウィンリッジ(Winridge)を含む。
別の実施形態において、普通コムギ(六倍体、易脱穀性)、トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種は、以下に限定するものではないが、ソノラ(Sonora)、ウィットウォルカリング(Wit Wolkoring)、チダムブランデマール(Chiddam Blanc De Mars)、インディアジャムー(India−Jammu)、フォイシー(Foisy)を含む。
更に別の実施形態において、スペルトコムギ(六倍体、非易脱穀性)、トリチカム・エスチバム・スペルト亜種は、以下に限定するものではないが、スパニッシュスペルト(Spanish Spelt)、スイススペルト(Swiss Spelt)を含む。
更に別の実施形態において、エンマーコムギ(四倍体)、トリチカム・ツルギダム・ジコッカム亜種は、以下に限定するものではないが、エチオピアンブルーティンジ(Ethiopian Blue Tinge)を含む。
別の実施形態において、パスタコムギ(四倍体、易脱穀性)、トリチカム・ツルギダム・デュラム亜種は、以下に限定するものではないが、ブルービアード(Blue Beard)、デュラム−イラク(Durum−Iraq)を含む。
更に別の実施形態において、ツルギダムコムギ(四倍体、易脱穀性)、トリチカム・ツルギダム・ツルギダム亜種は、以下に限定するものではないが、アクモリンカ(Akmolinka)、マパーチャ(Maparcha)を含む。
一実施形態において、配列番号6、配列番号7又は配列番号8に対する相当なパーセント同一性を有する少なくとも1つのEPSPS遺伝子を有するコムギ栽培品種を、本明細書で開示の方法及び組成物と共に使用し得る。
コムギ栽培品種に関して本明細書で言うところの「相当なパーセント同一性」とは、遺伝子のDNA配列が、ヌクレオチドレベルで、実質的に同様のタンパク質をコードするのに十分なだけ配列番号6、7及び8に類似しており、栽培品種間でのアレル差(又は交互mRNAスプライシング)を許容することを意味する。一実施形態において、遺伝子の保存領域におけるパーセント同一性がより高い(例えば、少なくとも約90%)ならば、「相当なパーセント同一性」は、EPSPS遺伝子と配列番号6、7及び8との間のコード領域におけるパーセント同一性が約85%もの低さである場合に存在し得る。好ましくは、コード領域におけるパーセント同一性は85〜90%、より好ましくは90〜95%であり、最適には95%を超える。従って、当業者ならば、本開示の範囲及び意図から逸脱することなく、商業的に人気が高い又は特定の所望の特徴を有するコムギ栽培品種を利用してEPSPS変異コムギ植物を作出することを好み得る。或いは、当業者ならば、本開示にしたがった1つ以上のEPSPS遺伝子内の変異についてのスクリーニングを促進するために、自殖性栽培品種等の殆ど多型を有さないコムギ栽培品種を利用することを好み得る。
V.EPSPS変異の同定に関する代表的な方法
当業者ならば、数々の技法及び方法が、変異及び/又は非トランスジェニック変異を作り出すのに利用できることがわかる。1つの代表的な方法を後述する。
本明細書で開示のEPSPS変異及びコムギ植物を作出、同定するために、TILLINGとして知られる方法を利用した。McCallum et al.,Nature Biotechnology 18:455−457,2000;McCallum et al.,Plant Physiology,123:439−442,2000;米国特許出願公開第20040053236号及び米国特許第5994075号を参照のこと。これらの文献は全て参照により本明細書に援用される。基本的なTILLING法においては、植物材料、例えば種子を化学的変異誘発に供し、この変異誘発は、種子の細胞のゲノム内で一連の変異を作り出す。変異を誘発させた種子を成熟したM1植物へと成長させ、自家受粉させる。得られたM2植物からのDNAサンプルをプールし、次に対象となる遺伝子における変異についてスクリーニングする。対象となる遺伝子で変異が同定されたら、その変異が生じたM2植物の種子を成熟したM3植物へと成長させ、対象となる遺伝子におけるその変異に関連した表現型の特徴についてスクリーニングする。
一実施形態においては、四倍体の栽培品種であるクロノスを用いた。他の実施形態においては、六倍体の栽培品種であるエクスプレスを用いた。
一実施形態においては、コムギの種子に変異を起こさせ、次にM1植物に成長させる。次に、このM1植物を自家受粉させ、M1植物の種子をM2植物へと成長させ、次にEPSPS遺伝子座における変異についてスクリーニグする。M1植物は本明細書で開示の代替の実施形態に従って変異についてスクリーニングできるが、M2植物をスクリーニングする利点は、全ての体細胞変異が生殖細胞系列変異に対応することである。
当業者ならば、本明細書で開示のEPSPS変異コムギ植物を作出するために、種子、花粉、植物組織又は植物細胞を含めた(これらに限定するわけではない)多種多様なコムギ植物材料に変異を起こさせ得ることがわかる。しかしながら、植物DNAを変異についてスクリーニングする場合、変異を誘発させた植物材料のタイプが影響し得る。例えば、変異を誘発させていない植物の授粉に先立って花粉を変異誘発に供する場合、その授粉から得られる種子をM1植物に成長させる。M1植物の全ての細胞が花粉において作り出された変異を含むため、M2世代を待つ代わりに、次にこれらのM1植物をEPSPS変異についてスクリーニングし得る。
主に点変異、短い欠失(約1〜約30個のヌクレオチド)、挿入、トランスバージョン及びトランジションを作り出す変異原、例えば化学変異原又は放射線、例えばX線及び高速中性子を用いて変異を作り出し得る。本明細書で開示の方法に準拠した変異原には、以下に限定するものではないが、エチルメタンスルホネート(EMS)、メチルメタンスルホネート(MMS)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)、トリエチルメラミン(TEM)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)、プロカルバジン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ジエチルサルフェート、アクリルアミドモノマー、メルファラン、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロソアミン、N−メチル−N’−ニトロ−ニトロソグアニジン(MNNG)、ニトロソグアニジン、2−アミノプリン、7,12ジメチル−ベンズ(ア)アントラセン(DMBA)、エチレンオキシド、ヘキサメチルホスホラミド、ビスルファン、ジエポキシアルカン(ジエポキシオクタン(DEO)、ジエポキシブタン(DEB)等)、2−メトキシ−6−クロロ−9[3−(エチル−2−クロロ−エチル)アミノプロピルアミノ]アクリジンジヒドロクロリド(ICR−170)、アジ化ナトリウム及びホルムアルデヒドが含まれる。変異原によって直接引き起こされてはいないと考えられるEPSPS遺伝子における自然変異も同定できる。
現在知られている又は今後考案される適切な植物DNA準備方法を用いて、EPSPS変異スクリーニング用のコムギ植物DNAを準備し得る。例えば、Chen&Ronald,Plant Molecular Biology Reporter 17:53−57,1999;Stewart and Via,Bio Techniques 14:748−749,1993を参照のこと。加えて、この目的に合わせて設計された幾つかの市販キットが入手可能であり、Qiagen社(バレンシア、カリフォルニア州)及びQbiogene社(カールスバッド、カリフォルニア州)のキットを含む。
一実施形態においては、変異を誘発させた植物組織起源の植物の個体群全体の1つ以上のEPSPS遺伝子における変異についてのスクリーニングを促進するために、個々のコムギ植物から準備したDNAをプールした。プールした群のサイズは用いるスクリーニング法の感度に依存し得る。好ましくは、2種以上の個々のコムギ植物の群をプールする。
別の実施形態においては、DNAサンプルをプールした後、プールをEPSPS配列特異的増幅技法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供する。PCRの概要に関しては、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,Gelfand,Sninsky,and White,eds.),Academic Press,San Diego,1990を参照のこと。
EPSPS遺伝子座又はこれらの遺伝子座の1つのすぐ隣の配列に特異的ないずれのプライマーを利用しても、プールしたDNAサンプル内のEPSPS配列を増幅し得る。好ましくは、有用な変異が最も起き易いEPSPS遺伝子座の領域を増幅するようにプライマーを設計する。最も好ましくは、プライマーを、1つ以上のEPSPS遺伝子のエクソン領域を検出するように設計する。加えて、特定のゲノムにおける点変異をスクリーニングし易くするために、プライマーが公知の多型部位を標的とするとするようにゲノム特異的プライマーを設計することが好ましい。ゲル上でのPCR産物の検出を促進するために、PCRプライマーは、慣用の又は今後考案される標識方法を用いて標識し得る。
一実施形態において、プライマーは、EPSPS遺伝子(配列番号6、7及び8)をベースにして設計する。別の実施形態において、プライマーは、EPSPS遺伝子に対して5’又は3’で設計し得る。
別の実施形態においては、PCR増幅産物を、野生型及び変異配列間のヌクレオチドの違いを同定する任意の方法を用いてEPSPS変異についてスクリーニングし得る。これらは、例えば、限定するものではないが、シーケンシング、変性高圧液体クロマトグラフィ(dHPLC)、一定変性剤キャピラリ電気泳動(CDCE)、温度勾配キャピラリ電気泳動(TGCE)(Li et al.,Electrophoresis 23(10):1499−1511,2002を参照のこと)又はColbert et al.,Plant Physiology 126:480−484,2001が記載の高スループット法で用いられているような酵素での切断によるフラグメンテーションを含み得る。好ましくは、PCR増幅産物を、野生型及び変異配列間でのヘテロ二本鎖におけるミスマッチを優先的に切断するエンドヌクレアーゼとインキュベートする。
別の実施形態において、切断産物を、自動シーケンシングゲル装置を使用して電気泳動にかけ、ゲルイメージを標準的な市販の画像処理プログラムの助けを借りて分析する。
更に別の実施形態においては、変異EPSPS遺伝子配列を有するM2植物が同定されたら、変異を分析して発現、翻訳及び/又はEPSPS酵素の活性に対するその影響を確認する。一実施形態においては、EPSPS配列全体に対する変異の正確な位置を求めるために、変異を含むPCRフラグメントを、標準的なシーケンシング技法を用いてシーケンシングにかける。タンパク質の機能へのその影響(すなわち、完全な耐性〜機能喪失)を予測するために、各変異を、SIFT(Sorting Intolerant from Tolerant;Ng and Henikoff,Nucleic Acids Research 31:3812−3814,2003)、PSSM(Position−Specific Scoring Matrix;Henikoff and Henikoff,Computer Applications in the Biosciences 12:135−143,1996)及びPARSESNP(Taylor and Greene,Nucleic Acids Research 31:3808−3811,2003)等のバイオインフォマティクスツールを用いて評価する。例えば、0.05未満のSIFTスコア及びPSSMスコアにおける大きな変化(例えば、およそ10以上)は、タンパク質の機能に対して有害な作用を有し易い変異を示す。これらのプログラムは予測に役立つことが知られているが、当業者ならば、予測した結果が常に正確であるとは限らないことがわかる。
別の実施形態において、M2植物における変異の最初の評価でそれが有用な性質であり且つEPSPS遺伝子内の有用な位置にあると判明したならば、次に、その変異を含むコムギ植物の表現型の分析を更に進め得る。六倍体コムギにおいて、A、B及びDゲノムのそれぞれにおける変異は通常、表現型が検出される前に組み合せなくてはならない。四倍体コムギにおいては、A及びBゲノム変異を組み合わせる。加えて、変異を有する植物は、いずれの世代であっても、バックグラウンド変異を排除するために、2回以上戻し交配又は他配し得る。次に、EPSPS変異についてホモ接合である植物を作り出すために、戻し交配又は他配した植物を自家受粉又は交配させ得る。
これらのホモ接合EPSPS変異植物の幾つかの物理的な特徴を評価し、変異が、望ましくない負の作用、例えば種子収量の著しい低下を引き起こすことなく、コムギ植物において有用な表現型の変化をもたらすかを判断する。
一実施形態においては、EPSPSに複数の好ましい1つの変異を含む植物の種子に再度変異を起こさせ、次に子孫をスクリーニングにかけることで、1部位の変異の場合の耐性よりグリホサート耐性を上昇させる好ましい第2部位の変異を見つけ出し得る。
VI.コムギ植物の作出方法
別の実施形態において、本開示は、グリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物を作出する方法に関する。別の実施形態において、本開示は、グリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物を作出する方法に関する。
別の実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子変異を野生型植物に他配する方法に関する。
更に別の実施形態において、本開示は、野生型EPSPSタンパク質と比較してグリホサートに対する親和性が低い1つ以上のEPSPSタンパク質を有する植物を作出する方法に関する。
一実施形態において、本方法は、少なくとも1つの非トランスジェニック変異を、親植物からの植物材料又は植物部位のEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーで誘発させ、変異を誘発させた植物材料を成長させる又は使用することで子孫植物をつくり、変異を誘発させた植物材料及び/又は子孫植物を分析することでEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーにおける少なくとも1つの変異を検出し、EPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選択することを含む。
別の実施形態において、本方法は更に、EPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物をEPSPS遺伝子の異なるコピーに少なくとも1つの変異を有する他の子孫植物と交配させることを含む。変異を有する子孫植物を同定し、その子孫植物を他の子孫植物(変異を有する)と交配させる工程を繰り返すことでEPSPS活性が低下した子孫コムギ植物を作出できる。
別の実施形態において、コムギ植物の改変EPSPSタンパク質のグリホサートに対する親和性は、野生型植物のEPSPSタンパク質の親和性の0〜2%、2〜5%、5〜7%、7〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%又は95〜99%に低下する。
A.2つ以上のゲノムのEPSPS遺伝子に1つ以上の変異を有する植物を作出する方法
更に別の実施形態において、本開示は植物を作出する方法に関し、この方法は以下の:少なくとも1つの非トランスジェニック変異を、EPSPS遺伝子に変異を含む親植物からの植物材料のEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーで誘発させ、変異を誘発させた植物材料を成長させる又は使用することで子孫植物をつくり、EPSPS遺伝子の少なくとも2つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫コムギ植物を選択することを含む。例えば、親植物はAゲノムのEPSPS遺伝子に変異を有し得る。選択された子孫植物はAゲノムのEPSPS遺伝子にある変異を、また1つ以上の変異をBゲノムのEPSPS遺伝子に有し得る。この例は単に明確にするためのものであって、本明細書で開示の方法を限定すべきではない。
更に別の実施形態において、本開示は植物を作出する方法に関し、この方法は、少なくとも1つの非トランスジェニック変異を、2つのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの変異を含む親植物からの植物材料のEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーで誘発させ、変異を誘発させた植物材料を成長させる又は使用することで子孫植物をつくり、EPSPS遺伝子の3つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選択することを含む。この実施形態においては、A、B及びDゲノムのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し得る。
別の実施形態において、本開示はコムギ植物を作出する方法に関し、この方法は、第1EPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第1植物を第2EPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第2植物と交配させ、EPSPS遺伝子の少なくとも2つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選択することを含む。
別の実施形態において、本開示は植物の作出方法に関し、この方法は、第1及び第2EPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第1植物を第3EPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第2植物と交配させ、EPSPS遺伝子の3つのコピー全てに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選択することを含む。この実施形態においては、A,B及びDゲノムのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの変異が存在し得る。
VII.コムギ植物、コムギ種子及びコムギ植物の部位
一実施形態において、グリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物を本明細書で開示の方法に従って作出する。更に別の実施形態において、野生型コムギ植物と比較してグリホサートに対する抵抗性及び改変されていない成長特性を有するコムギ植物を、本明細書で開示の方法に従って作出する。更に別の実施形態において、グリホサートに対する抵抗性及び野生型の発芽率を有するコムギ植物を本明細書で開示する。
更に別の実施形態において、グリホサートに対する抵抗性を有し、発芽する種子をつけるコムギ植物を本明細書で開示する。更に別の実施形態において、グリホサートに対する抵抗性及び野生型の稔性を有するコムギ植物を本明細書で開示する。
更に別の実施形態において、グリホサートに対する抵抗性及び通常の収量を有するコムギ植物を本明細書で開示する。
一実施形態において、コムギ植物又はその部位は、畑1ヘクタールあたり34.4g以上又は68.8g以上のグリホサートのイソプロピルアミン塩の散布量に耐性である。
別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位はEPSPS遺伝子又は改変EPSPS遺伝子に1つ以上の変異を有する。別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位はEPSPS遺伝子に1つ以上の変異を有する。
別の実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位に関する。別の実施形態において、本開示は2つのゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位に関する。更に別の実施形態において、本開示は、3つのゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位に関する。
一実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、AゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルに1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、AゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
一実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、BゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルに1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、BゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
一実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルに1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、配列番号6に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、このポリペプチドは1つ以上の非トランスジェニック変異を含み且つEPSPS−Aタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の変異を有するポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、配列番号7に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、EPSPSタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み、このEPSPSタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み且つEPSPS−Bタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、表4で挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の変異を有するポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、配列番号8に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、EPSPSタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み、このEPSPSタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み且つEPSPS−Dタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
別の実施形態において、コムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位は、表4で列挙した1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードするEPSPS遺伝子における1つ以上の変異及びホメオログにおける対応する変異を有する。以下に限定するものではないが、表4で開示の変異、また対応するホメオログにおける変異を含め、本明細書で開示の変異を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25又は25個を超えて有するコムギ植物、コムギ種子又はコムギ植物の部位を作り出し得る。
VIII.穀粒、穀粉及びデンプン
別の実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子又は改変EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギ穀粒、穀粉又はデンプンに関する。別の実施形態において、本開示は胚を含むコムギ穀粒に関し、胚はEPSPS遺伝子又は改変EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。
別の実施形態において、コムギ穀粒、穀粉又はデンプンは、表4に記載の変異並びにホモログ及びホメオログにおける対応する変異を含め(これらに限定されない)、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。
更に別の実施形態において、本開示は、1、2又は3つのゲノムのEPSPS遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギ穀粒又は穀粉に関する。
更に別の実施形態において、本開示は、AゲノムのEPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギ穀粒、穀粉又はデンプンに関する。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、AゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
一実施形態において、コムギ穀粒、穀粉又はデンプンは、BゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルに1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、BゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
一実施形態において、コムギ穀粒、穀粉又はデンプンは、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルに1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施形態において、非トランスジェニック変異は、DゲノムのEPSPS遺伝子の両方のアレルにおいて同一である。
一実施形態において、本開示は、表4で挙げた1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有する配列番号6に対応するAゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギ穀粒、穀粉又はデンプンに関する。別の実施形態において、コムギ穀粒又はコムギ穀粉は1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み且つ配列番号6に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ穀粒、穀粉又はデンプンは、表4に記載の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み、EPSPSタンパク質は、EPSPS−Aタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
一実施形態において、本開示は、表4に記載の1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の変異を有する配列番号7に対応するBゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギ穀粒、穀粉又はデンプンに関する。別の実施形態において、コムギ穀粒又はコムギ穀粉は1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み且つ配列番号7に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ穀粒、コムギ穀粉又はデンプンは、表4に記載の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドを含み、EPSPSタンパク質は、EPSPS−Bタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
一実施形態において、本開示は、表4に記載の1つ以上の変異を有するポリペプチドをコードする1つ以上の変異を有する配列番号8に対応するDゲノムのEPSPS遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギ穀粒、コムギ穀粉又はデンプンに関する。別の実施形態において、コムギ穀粒又はコムギ穀粉は1つ以上の変異を有するポリヌクレオチドを含み且つ配列番号8に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、コムギ穀粒、コムギ穀粉又はデンプンは、表4に記載の1つ以上の変異を有するEPSPSタンパク質をコードする1つ以上の変異を有するポリヌクレオチドを含み、EPSPSタンパク質は、EPSPS−Dタンパク質に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性又は類似性を有する。
更に別の実施形態において、本開示は、胚乳、野生型のコムギ穀粒又は穀粉と比較して低いEPSPS遺伝子の遺伝子発現レベル、活性又は発現レベル及び活性を含むコムギ穀粒又は穀粉に関する。
IX.食品
一実施形態において、本開示は、上述した穀粒又は穀粉から製造した穀粉又は他の製品を対象とする。別の実施形態において、穀粉、粗砕物又は精製デンプンは食品の成分になり得る。
食品は、以下に限定するものではないが、ベーグル、ビスケット、パン、ロールパン、クロワッサン、ダンプリング、イングリッシュマフィン、マフィン、ピタパン、クイックブレッド、フラットブレッド、サワードウブレッド、冷蔵/冷凍生地製品、生地、ベークドビーンズ、ブリトー、チリ、タコ、タマル、トルティーヤ、ポットパイ、インスタントのシリアル、インスタント食品、詰め物、電子レンジ対応食品、ブラウニー、ケーキ、チーズケーキ、コーヒーケーキ、クッキー、デザート、ペーストリー、スイートロール、キャンディバー、パイ皮、パイの詰め物、ベビーフード、ミックス粉、バッター、パン粉、グレービーミックス、ミートエクステンダー、肉代用品、シーズニングミックス、スープミックス、グレービー、ルー、サラダドレッシング、スープ、サワークリーム、麺、パスタ、ラーメンの麺、焼きそばの麺、ロウミンの麺、アイスクリームのトッピング、棒アイス、アイスクリームコーン、アイスクリームサンドイッチ、クラッカー、クルトン、ドーナッツ、春巻、押出成形スナック、フルーツと穀類が入ったバー、電子レンジ対応スナック製品、栄養バー、パンケーキ、半焼き製パン製品、プリッツェル、プリン、グラノーラ系製品、スナックチップ、スナック食品、スナックミックス、ワッフル、ピザ生地、飼料又はペットフードを含む。
一実施形態において、穀粉は全粒粉(例えば、超微粉砕全粒粉、例えば超微粉砕全粒コムギ穀粉)である。一実施形態において、全粒粉は精製穀粉要素(例えば、精製コムギ穀粉又は精製穀粉)及び粗砕物(例えば、超微粉砕粗砕物)を含む。精製コムギ穀粉は、例えば、清浄化したコムギを粉砕し、篩にかける(選別)することで調製される穀粉になり得る。米国食品医薬品局(FDA)は、精製コムギ穀粉のカテゴリに含めるためには穀粉が特定の粒径規格を満たすことを要求している。精製コムギ穀粉の粒径は、少なくとも98%が「212マイクロメートル(U.S.ワイヤ70)」と称される織金網のもの以下の開口部を有する網を通過する穀粉とされる。
別の実施形態において、粗砕物は、ふすま及び胚芽の少なくとも一方を含む。例えば、胚芽は、コムギの穀粒内に見られる植物の胚である。胚芽は脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及び植物栄養素、例えばフラボノイドを含む。ふすまは幾つかの細胞層を含み得て、またかなりの量の脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及び植物栄養素、例えばフラボノイドを有する。
例えば、本開示の粗砕物又は全粒穀粉又は精製穀粉を様々な量で使用することで、焼いた食品、スナック製品及び食品中の精製又は全粒穀粉と置き換え得る。全粒穀粉(すなわち、超微粉砕全粒穀粉)はまた、自家製の焼いた食品で使用できるように消費者に直接市販し得る。ある実施形態例において、全粒穀粉の顆粒化プロファイルは、全粒穀粉の粒子の98%(質量基準)が212マイクロメートル未満となるようなものである。
別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、栄養サプリメントの成分になり得る。栄養サプリメントは、典型的にはビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素、酸化防止剤、ハーブ、香辛料、プロバイオティクス、抽出物、プレバイオティクス及び繊維を含めた1種以上の原料を含有する食餌に添加する製品になり得る。
更なる実施形態において、栄養サプリメントは、個体の健康全般を支援するいずれの公知の栄養素も含み得て、例は、以下に限定するものではないが、ビタミン、ミネラル、他の繊維成分、脂肪酸、酸化防止剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ルテイン、リボース、オメガ−3脂肪酸及び/又は他の栄養成分を含む。胚乳は栄養素含有量が高いため、繊維及び他の必須の栄養分の送達、消化機能及び健康の向上、体重管理、血糖値管理、心臓の健康、糖尿病のリスク低下、潜在的な関節炎のリスク低下並びに個体の健康全般及びウェルネスを含め、個体に数多くのメリットをもたらす多くの用途があると考えられる。
更に別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、食餌サプリメントの成分になり得る。米連邦規則集は食餌サプリメントを、食餌を補うことを目的とし、ビタミン、ミネラル、ハーブ、植物性薬品、アミノ酸及び他の物質又はその要素を含めた1種以上の食餌成分を含有し、経口で丸薬、カプセル、錠剤又は液体として摂取する、また食餌サプリメントであると正面に表示されている製品と定義している。
更に別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、繊維サプリメント又はその成分になり得る。繊維サプリメントは、以下に限定するものではないが、以下の形態:即席飲料ミックス、即席飲料、栄養バー、ウェハース、クッキー、クラッカー、ゼリー飲料、カプセル、チューイングキャンディ、チュアブル錠及び丸薬で届け得る。一実施形態では繊維サプリメントを、フレーバーシェイク又はモルトタイプの飲料の形態で届ける。
別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、消化促進サプリメントの成分として含め得る。全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、消化促進サプリメント単体の成分になり得る、或いは1種以上のプレバイオティクス化合物及び/又はプロバイオティク生物と組み合わせ得る。プレバイオティック化合物は、結腸にいる数が限定された微生物の成長及び/又は活動を選択的に刺激することで宿主に有益な影響を及ぼし得る消化できない食品原料である。本開示の範囲内のプレバイオティック化合物の例は、以下に限定するものではないが、オリゴ糖及びイヌリンを含み得る。
プロバイオティクスとは、十分な量で投与した場合に、宿主に健康上のメリットをもたらす微生物である。プロバイオティック生物は、以下に限定するものではないが、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィズス菌、エシェリキア(Escherichia)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)及びサッカロマイセス(Saccharomyces)を含む。
更に別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、機能性食品の成分として含め得る。米国食品技術者協会は機能性食品を、基本的な栄養を超えて健康上のメリットをもたらす食品及び食品成分と定義している。これは従来の食品、強化、栄養富化又は栄養強化食品並びに食餌サプリメントを含む。全粒穀粉及び粗砕物又は精製穀粉は多くのビタミン及びミネラルを含み、高い酸素ラジカル吸収能を有し、また繊維含有量が高く、機能性食品における/としての使用に理想的である。
別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は医療用食品に使用し得る。医療用食品は、医師の完全なる監督下で摂取又は投与されるように処方される食品と定義され、一般に認められている科学原理に基づいて医学的判断により特徴的な栄養要件が確立されている疾患又は状態を特殊な食餌で管理するためのものである。全粒穀粉及び粗砕物又は精製穀粉の栄養含有量及び酸化防止能は、これらを医療用食品での使用に理想的なものにしている。
更に別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は医薬品にも使用し得る。全粒穀粉及び粗砕物又は精製穀粉は繊維含有量が多く、極めて細かい顆粒度を有するため、医薬品における担体としての使用に適している。
更に別の実施形態において、全粒穀粉又は粗砕物又は精製穀粉は、栄養サプリメント、食餌サプリメント又は消化促進サプリメントとして、全粒穀粉又は粗砕物を単一の原料又は多くの栄養原料の1つにすることで届けることが考えられる。届け方の例は、以下に限定するものではないが、即席飲料ミックス、即席飲料、栄養バー、ウェハース、クッキー、クラッカー、ゼリー飲料、カプセル及びチューイングキャンディを含む。
更に別の実施形態において、微粉砕工程を用いることで、複数種のコムギから構成される穀粉又は複数種の穀類から構成される粗砕物を作り得る。一実施形態においては、あるタイプのコムギからのふすま及び胚芽を粉砕し、別のタイプのコムギの粉砕された胚乳又は全粒コムギとブレンドし得る。或いは、あるタイプの穀類のふすま及び胚芽を粉砕し、別のタイプの穀物の粉砕された胚乳又は全粒穀粉とブレンドし得る。
更に別の実施形態において、第1タイプのコムギ又は穀類のふすま及び胚芽を、第2タイプのコムギ又は穀類のふすま及び胚芽とブレンドすることで複数の穀類から構成される粗砕物を製造し得る。本開示が、1種以上の穀類のふすま、胚芽、胚乳及び全粒穀粉の1つ以上の任意の組み合わせを混合することを包含することが考えられる。この複数種の穀類、複数種のコムギのアプローチを用いることで注文通りの穀粉を作り、1つの穀粉を構成する複数タイプの穀類又はコムギの特性及び栄養素含有量を利用し得る。
本明細書で開示の全粒穀粉は、多種多様な微粉砕法で製造し得る。ある模範的な方法では、穀粒の胚乳、ふすま及び胚芽を別々の流れへと分けることなく、1つの流れで穀粒を粉砕する。清浄でテンパリングした穀粒を第1通過グラインダ、例えばハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、インパクトミル、ディスクミル、エアアトリションミル、ギャップミル等に送る。
粉砕後、穀粒を取り出し、シフターに送る。粉砕済みの粒子を選別するための当該分野で公知のいずれのシフターも使用し得る。シフターの網を通過する材料が本開示の全粒穀粉であり、更なる加工を必要としない。網上に残る材料は第2分級物と称される。この第2分級物は更なる粒子粉砕を必要とする。従って、この第2分級物を第2通過グラインダに送り得る。
粉砕後、第2分級物を第2シフターに送り得る。第2シフターの網を通過した材料が全粒穀粉である。網上に残った材料は第4分級物と称され、更に加工して粒径を小さくする必要がある。フィードバックループを介して更に加工するために、第2シフターの網上の第4分級物を第1通過グラインダ又は第2通過グラインダに戻す。
本開示の全粒穀粉、粗砕物、精製デンプン及び/又は穀類製品は、当該分野で公知の多数の微粉砕方法により製造し得ることが考えられる。
X.植物の品種改良
別の実施形態において、本開示は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ植物及び植物部位を用いて植物の品種改良をする方法を対象としている。
1つのそのような実施形態は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種を別のコムギ変種と交配させてF1植物の第1世代個体群を形成する方法である。この方法で作り出した第1世代F1植物の個体群も本開示の実施形態である。F1植物のこの第1世代個体群は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種の本質的に完全なアレルセットを含む。当業者ならば、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種を用いて作った特定のF1植物を同定するために品種改良に関する書籍又は分子法を利用でき、そのような個々の植物も本開示に包含される。これらの実施形態は、EPSPS遺伝子に1つ以上の変異を有するコムギ変種のトランスジェニックな又は戻し交配による転換を用いることで第1世代F1植物を作ることもカバーする。
別の実施形態において、本開示は、子孫コムギ植物の開発方法に関する。子孫コムギ植物の開発方法は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種を第2コムギ植物と交配させ、品種改良法を実施することを含む。EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来の系統を作出する特定の方法は、以下の通りである。
当業者ならば、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種を別のコムギ変種、例えばエリート変種と交配させ得る。この交配由来のF1種子を育てて同種の個体群を形成し得る。F1種子は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種からの1組のアレル及びもう一方のコムギ変種からの1組のアレルを含む。
F1ゲノムは、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種50%及びもう一方のエリート変種50%から成る。F1種子は成長してF2種子を形成する。F1種子は自殖、或いは別のコムギ栽培品種と品種改良し得る。
平均して、F2種子は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種からのアレルの50%、また他方のコムギ変種のアレルの50%を受け継ぐが、個体群の植物の様々な個体はEPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来のアレルをずっと高い割合で有し得る(Wang J.and R.Bernardo,2000,Crop Sci.40:659−665及びBernardo,R. and A.L.Kahler,2001,Theor.Appl.Genet.102:986−992)。
F2種子は成長し、植物の選択は、目視での観察及び/又は特質の測定及び/又はマーカー支援選択に基づいて行い得る。EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来の、遺伝子由来の特質を示す子孫を選択し、各植物を別々に収穫する。各植物からのこのF3種子を個別に並べて成長させ、自殖させる。次に、選択した列又は各植物を個別に収穫し、脱穀する。ここでも選択は、目視による観察及び/又は植物の望ましい特質、例えばEPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有する望ましいコムギ変種の1種以上由来の特質についての測定に基づく。
育成及び選択の工程は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合コムギ変種由来のコムギ植物が得られるまで何回でも繰り返し得る。EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合コムギ変種由来のコムギ植物は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来の望ましい特質を含み得て、その一部は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種を交配させた他方の本来のコムギ変種で発現していない可能性があり、一部は両方のコムギ変種で発現している可能性があるが、ここではEPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異変異を有するコムギ変種で発現しているレベル以上のレベルになり得る。
交配、自殖及び選択の品種改良工程を繰り返すことで、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来のコムギ植物の別の個体群(平均で、遺伝子の25%がEPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来である)を作り出し得るが、この個体群の様々な個々の植物は、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ変種由来のアレルをずっと高い割合で有し得る。本開示の別の実施形態は、EPSPS遺伝子における1つ以上の非トランスジェニック変異由来の特質を有する別のコムギ植物と交配させた、EPSPS遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合コムギ変種由来のコムギ植物である。
A.マーカーとしての変異
遺伝子マーカーは遺伝子のアレル形態又は遺伝子座により決定される生物学的特徴であり、1つの世代から別の世代へと伝達されるため、個体、植物、組織、細胞、核、染色体又は遺伝子を追跡し続けるための実験プローブ又はタグとして使用できる。遺伝学及び植物の品種改良で使用する遺伝子マーカーは2つのカテゴリ:古典的マーカー及びDNAマーカーに分類できる。古典的マーカーは、形態学的マーカー、細胞学的マーカー及び生化学的マーカーを含む。DNAマーカーは、異なる多型検出技法又は方法(サザンブロット法−核酸ハイブリダイゼーション、PCR−ポリメラーゼ連鎖反応及びDNAシーケンシング)に基づいた多くのシステムへと発展し、例えば制限断片長多型(RFLP)、増幅断片長多型(AFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)法、単純反復配列(SSR)、一塩基多型(SNP)等である。
1つのヌクレオチド塩基が遺伝の最小単位であることから、SNPは究極の/最も単純な形態の分子マーカーであり、従って最大数のマーカーが得られる。SNPは動物及び植物で極めて一般的に起きる。典型的には、SNP頻度は植物において100〜300塩基対あたり1SNPの範囲である。SNPは、遺伝子のコード配列、遺伝子の非コード領域内又は遺伝子同士の遺伝子間領域に染色体領域毎に異なる頻度で存在し得る。
SNPは共優性マーカーであり、遺伝子にリンクしていることが多く、多型に関する最も単純な/究極の形態で存在するため、遺伝子の研究及び品種改良において極めて魅力的且つ潜在的な遺伝子マーカーになった。更に、SNPは極めて容易に自動化でき、また迅速に検出でき、多型を検出する効率は高い。
一実施形態において、本開示は、植物の品種改良においてマーカーとして使用し得る、一塩基多型である、EPSPS遺伝子における変異に関する。EPSPS遺伝子における変異は原因として作用し、その分離は例えばKASPプローブを使用して追跡し得る。
別の実施形態において、本開示のセクションIIで同定した変異は、植物の品種改良においてマーカーとして使用し得る。更に別の実施形態において、表1〜3の1つ以上の変異は、植物の品種改良においてマーカーとして使用し得る。
一実施形態において、変異は、以下に限定するものではないが、SNP−制限断片長多型(RFLP)、CAPS、Axiom SNPアレイ、iSelectアレイ、TaqManプローブ及びKASPプローブを含む技法で追跡し得る。別の実施形態においては、次世代シーケンシング技法を用い得て、以下に限定するものではないが、454 Life Sciences(Roche Applied Sciences社、インディアナポリス、インディアナ州)、HiSeq(Illumina社、サンディエゴ、カリフォルニア州)、SOLiD and Ion Torrent(Life Technologies Corporation社、カールスバッド、カリフォルニア州)を含む。
PCRをベースにしたKASP(商標)ジェノタイピングアッセイは、公知のSNP及びインデルの正確な2アレル識別を可能にする均一蛍光(FRET)ベースアッセイである。PCRをベースにしたKASP技術の重要な特徴は普遍的なFRETカセットレポーターシステムの使用であり、これは高コストの二重標識プローブの必要性を排除する。アレル特異的順方向プライマーはそれぞれ、2つのFRETカセットの1つに対応する専有テール配列を有する(一方の標識はFAM色素、他方はHEX色素)。2アレル識別は、2アレル特異的順方向プライマーの競合的結合を通して達成する。
植物、組成物及び方法について、以下の非限定的な段落により更に説明する。
1.A、B又はDゲノムの少なくとも1つのEPSPS遺伝子に変異を含み、変異が、野生型植物と比較してグリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物に貢献するコムギ植物。
2.A、B又はDゲノムの少なくとも1つのEPSPS遺伝子に変異を含み、遺伝子変異が活性領域に変異を有するEPSPSタンパク質を産生し、更に変異が、野生型植物と比較してグリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物に貢献するコムギ植物。
3.A、B又はDゲノムの少なくとも1つのEPSPS遺伝子に変異を含み、遺伝子変異が、グリホサートに対する親和性が低く、植物基質に対して野生型と同様の親和性を有するEPSPSタンパク質を産生し、更に変異が、野生型植物と比較してグリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物に貢献するコムギ植物。
4.EPSPS遺伝子の変異がB及びDゲノムにおけるものである、段落1〜3のいずれかに記載のコムギ植物。
5.EPSPS遺伝子の変異がA及びBゲノムにおけるものである、段落1〜3のいずれかに記載のコムギ植物。
6.EPSPS遺伝子の変異がA及びDゲノムにおけるものである、段落1〜3のいずれかに記載のコムギ植物。
7.EPSPS遺伝子の変異がA、B及びDゲノムにおけるものである、段落1〜3のいずれかに記載のコムギ植物。
8.変異がグリホサートに対する親和性が低いEPSPSタンパク質をもたらす、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
9.変異が植物基質に対して野生型と同様の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
10.変異がグリホサートに対して親和性が低く、植物基質に対して野生型と同様の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
11.変異が野生型EPSPSのグリホサートに対する親和性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80又は90%から成る群から選択されるグリホサートに対する親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
12.変異についてホモ接合である、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
13.トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種である、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
14.トリチカム・ツルギダム・デュラム亜種である、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
15.変異が表1〜3に記載されている、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
16.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物からのコムギ穀粒。
17.先行の段落のいずれかに記載のコムギ穀粒を含む穀粉。
18.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物の成分を含む食品。
19.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物からのコムギ種子、植物部位又は子孫。
20.EPSPS遺伝子の発現を低下させる及び/又はグリホサートに対するEPSPSタンパク質の親和性を低下させるトランスジーンを含み、低下した発現及び/又は低下したグリホサート親和性が、グリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物に貢献するトランスジェニックコムギ植物。
21.トランスジーンが植物基質に対して野生型と同様の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落20に記載のコムギ植物。
22.トランスジーンがタンパク質の活性領域に変異を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落20に記載のコムギ植物。
23.トランスジーンがグリホサートに対して親和性が低く、植物基質に対して野生型EPSPSと同様の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落20に記載のコムギ植物。
24.トランスジーンが、野生型EPSPSのグリホサートに対する親和性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80又は90%から成る群から選択されるグリホサートに対する親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落20に記載のコムギ植物。
25.トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種である、段落20に記載のコムギ植物。
26.トリチカム・ツルギダム・デュラム亜種である、段落20に記載のコムギ植物。
27.段落20〜26のいずれかに記載のコムギ植物のコムギ穀粒。
28.段落27のコムギ穀粒を含む穀粉。
29.段落20〜28に記載のコムギ植物の成分を含む食品。
30.段落20〜26のコムギ植物からのコムギ種子、植物部位又は子孫。
31.改変EPSPS遺伝子を含み、EPSPS遺伝子がゲノム編集により改変され、改変がグリホサートに対する抵抗性を有するコムギ植物に貢献するコムギ植物。
32.改変EPSPS遺伝子が植物基質に対して野生型の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落31に記載のコムギ植物。
33.改変EPSPS遺伝子がタンパク質の活性領域に変異を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落31に記載のコムギ植物。
34.改変EPSPS遺伝子が、グリホサートに対して低い親和性及び植物基質に対して野生型と同様の親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落31に記載のコムギ植物。
35.改変EPSPS遺伝子が、グリホサートに対する野生型EPSPSの親和性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%から成る群から選択されるグリホサートに対する親和性を有するEPSPSタンパク質をもたらす、段落31に記載のコムギ植物。
36.トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種である、段落31に記載のコムギ植物。
37.トリチカム・ツルギダム・デュラム亜種である、段落31に記載のコムギ植物。
38.段落31〜37のいずれかに記載のコムギ植物からのコムギ穀粒。
39.段落38のコムギ穀粒を含む穀粉。
40.段落31〜39に記載のコムギ植物の成分を含む食品。
41.段落31〜37のコムギ植物からのコムギ種子、植物部位又は子孫。
42.(a)親コムギ植物から植物材料を得るステップと、
(b)この植物材料を変異原で処理することで植物材料のEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの変異を誘発させて変異誘発された植物材料を作り出すステップと、
(c)変異誘発された植物材料を栽培して子孫コムギ植物をつくるステップと、
(d)子孫コムギ植物を分析することでEPSPS遺伝子の少なくとも1つのコピーにおける少なくとも1つの変異を検出するステップと、
(e)親コムギ植物と比較して除草剤のグリホサートに対して抵抗性である子孫コムギ植物を選択するステップと、
(f)子孫コムギ植物を栽培してグリホサートに対して抵抗性である追加の子孫コムギ植物をつくるサイクルを繰り返すステップ
とを含む、野生型コムギ植物と比較して除草剤のグリホサートに対して抵抗性であるコムギ植物を作出する方法。
43.植物材料が、種子、花粉、植物細胞又は植物組織から成る群から選択される、段落42に記載の方法。
44.変異原がエチルメタンスルホネートである、段落42に記載の方法。
45.使用するエチルメタンスルホネートの濃度が0.75〜約1.2%である、段落44に記載の方法。
46.子孫コムギ植物を、
(a)ゲノムDNAを子孫コムギ植物から単離し、
(b)単離したゲノムDNA中のEPSPS遺伝子のセグメントを、このEPSPS遺伝子又はこのEPSPS遺伝子に隣接するDNA配列に特異的なプライマーを使用して増幅する
ことで分析する、段落42に記載の方法。
47.EPSPS遺伝子配列が実質的に配列番号6と同一である、先行の段落のいずれかに記載の方法。
48.EPSPS遺伝子配列が実質的に配列番号7と同一である、先行の段落のいずれかに記載の方法。
49.EPSPS遺伝子配列が実質的に配列番号8と同一である、先行の段落のいずれかに記載の方法。
50.少なくとも1つのプライマーが、配列番号9〜12から成る群の配列と実質的に同一の配列を有する、先行の段落のいずれかに記載の方法。
51.ステップ(d)で検出した変異を評価することで、変異がグリホサートに対する抵抗性を上昇させる公算を判断する、先行の段落のいずれかに記載の方法。
52.変異を、SIFT、PSSM及びPARSESNPから成る群から選択されるバイオインフォマティクスツールを使用して評価する、先行の段落のいずれかに記載の方法。
53.先行の段落のいずれかに記載の方法により作出するコムギ植物。
54.段落53のコムギ植物の花、種子、花粉、植物部位又は子孫。
55.段落54の種子の部位。
56.段落53のコムギ植物の種子の任意の一部を取り入れた食物及び食品。
57.コムギ植物を段落53のコムギ植物で品種改良することで作出される、グリホサートに対して抵抗性を示すコムギ植物。
58.配列番号6に対する相当な同一性を有し且つ変異原での処理後に内在性EPSPS遺伝子内に非トランスジェニック変異を有する内在性EPSPS遺伝子。
59.非トランスジェニック変異がミスセンス変異である、段落58に記載の内在性EPSPS遺伝子。
60.変異が配列番号9のT168Iである、段落59に記載の非トランスジェニックミスセンス変異。
61.変異が配列番号9のP172Sである、段落59に記載の非トランスジェニックミスセンス変異。
62.先行の段落のいずれかに記載の内在性EPSPS遺伝子を含むコムギ植物。
63.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物の花、種子、花粉、植物部位及び子孫。
64.先行の段落のいずれかに記載の種子の部位。
65.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物の種子の任意の一部を取り入れた食物及び食品。
66.配列番号7に対する相当な同一性を有し且つ変異原での処理後に内在性EPSPS遺伝子内に非トランスジェニック変異を有する内在性EPSPS遺伝子。
67.非トランスジェニック変異がミスセンス変異である、段落66に記載の内在性EPSPS遺伝子。
68.変異が配列番号9のT168Iである、段落67の非トランスジェニックミスセンス変異。
69.変異が段落番号9のP172Sである、段落67の非トランスジェニックミスセンス変異。
70.段落66の内在性EPSPS遺伝子を含むコムギ植物。
71.先行の段落のいずれかに記載のEPSPS植物の花、種子、花粉、植物部位及び子孫。
72.先行の段落のいずれかに記載の種子の部位。
73.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物の種子の任意の一部を取り入れた食物及び食品。
74.配列番号8に対する相当な同一性を有し且つ変異原での処理後に内在性EPSPS遺伝子内に非トランスジェニック変異を有する内在性EPSPS遺伝子。
75.非トランスジェニック変異がミスセンス変異である、段落74に記載の内在性EPSPS遺伝子。
76.変異が配列番号3の173位(T173I)又は配列番号9のT168I位でのトレオニンからイソロイシンである、段落75に記載の非トランスジェニックミスセンス変異。
77.変異が、配列番号3の177位(P177S)又は配列番号9のP172S位でのプロリンからセリンである、請求項75に記載の非トランスジェニックミスセンス変異。
78.段落74の内在性EPSPS遺伝子を含むコムギ植物。
79.先行の段落のいずれかに記載のEPSPS植物の花、種子、花粉、植物部位及び子孫。
80.先行の段落のいずれかに記載の種子の部位。
81.先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物の種子の任意の一部を取り入れた食物及び食品。
82.先行の段落のいずれかに記載の内在性EPSPS遺伝子から選択された2つ以上の内在性EPSPS遺伝子を含むコムギ植物。
83.A、B及びDゲノムの少なくとも2つのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が、配列番号9のアミノ酸位172(配列番号3のP177S)でのプロリンからセリンへの変異を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
84.AゲノムのEPSPS遺伝子に少なくとも2つの変異を含み、Aゲノムの変異EPSPS遺伝子が、配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)(配列番号3のT173I及びP177S)を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
85.DゲノムのEPSPS遺伝子に少なくとも2つの変異を含み、Dゲノムの変異EPSPS遺伝子が、配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)(配列番号3のT173I及びP177S)を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
86.A、B及びDゲノムの少なくとも2つのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)(配列番号3のT173I及びP177S)を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
87.A、B及びDゲノムの少なくとも2つのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
88.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、BゲノムのEPSPS遺伝子が変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
89.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及び/又はアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、BゲノムのEPSPS遺伝子が変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
90.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及び/又はアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、BゲノムのEPSPS遺伝子が変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
91.A、B及びDゲノムの少なくとも2つのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が配列番号9のアミノ酸位172にプロリンからセリンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が配列番号9のアミノ酸位168にトレオニンからイソロイシンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
92.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し、BゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し、グリホサートに対する上昇した抵抗性を有するコムギ植物。
93.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し、BゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し、グリホサートに対する上昇した抵抗性を有するコムギ植物。
94.A、B及びDゲノムのそれぞれのEPSPS遺伝子に変異を含み、AゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも1つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及び/又はアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、DゲノムのEPSPS遺伝子が少なくとも2つの変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位168でのトレオニンからイソロイシンへの変化(T168I)及びアミノ酸位172でのプロリンからセリンへの変化(P172S)を含むEPSPSポリペプチドをコードし、BゲノムのEPSPS遺伝子が変異を有し且つ配列番号9のアミノ酸位172でのプロリンからロイシンへの変化を含むEPSPSポリペプチドをコードするコムギ植物。
95.トリチカム・エスチバム・エスチバム亜種である、段落82〜94のいずれかに記載のコムギ植物。
96.トリチカム・ツルギダム・デュラム亜種である、段落82〜94のいずれかに記載のコムギ植物。
97.段落82〜94のいずれかに記載のコムギ植物からのコムギ穀粒。
98.段落97のコムギ穀粒を含む穀粉。
99.段落82〜94のコムギ植物の成分を含む食品。
100.段落82〜94のコムギ植物からのコムギ種子、植物部位又は子孫。
101.グリホサートに対する抵抗性を有する、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
102.グリホサートに対する抵抗性及び改変されていない成長特性を有する、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
103.EPSPSタンパク質がグリホサートに対する低い親和性及び植物又は内在性基質に対する相当な親和性を有する、先行の段落のいずれかに記載のコムギ植物。
以下の実施例は例証のためのものにすぎず、限定を目的とはしていない。本明細書で論じる変異は単なる具体例であって、同様の変異も考えられることを理解されたい。
実施例1
A.変異誘発
六倍体の栽培品種であるエクスプレス(トリチカム・エスチバム、PVP#9000012)のコムギ種子をH2O中での減圧浸潤に供した(約1000個の種子/100mlのH2O、約4分)。次に、種子を周囲温度のヒュームフード内のシェイカー上に置いた(45rpm)。変異原であるエチルメタンスルホネート(EMS)を吸水した種子に最終濃度約0.75〜約1.2%(体積/体積)で添加した。18時間にわたるインキュベーション後、EMS溶液を新鮮なH2Oと4回交換した。次に、種子を流れる水で約4〜8時間にわたってすすぎ洗いした。最期に、変異誘発させた種子を鉢植え用土に蒔き(96個/トレイ)、屋内で発芽させた。4〜6週齢の植物を畑に移して完全に成熟したM1植物へと成長させた。成熟したM1植物を自家受粉させ、次にM1植物からの種子を回収し、蒔いてM2植物をつくった。
B.DNAの準備
M2植物がEPSPS遺伝子座に変異を有することを確認するために、上述した通りにつくったM2植物からのDNAを抽出し、準備した。M2植物のDNAを、Qiagen(登録商標)(ヴァレンシア、カリフォルニア州)DNeasy(登録商標)96プラントキットに含まれる方法及び試薬を用いて準備した。約50mgの冷凍植物サンプルをサンプル管にタングステンビーズと共に入れ、液体窒素で冷凍し、1分間にわたって各20HzでRetsch(登録商標)ミキサーミルMM300を使用して2回粉砕した。次に、80℃の400μlの溶液AP1[Buffer AP1、溶液DX及びリボヌクレアーゼ(100mg/ml)]をサンプルに添加した。サンプル管を封止し、15秒シェイクした。130μlのBuffer AP2の添加に続いて、サンプル管を15秒シェイクした。サンプルをマイナス20℃の冷凍庫内に少なくとも1時間いれた。次に、サンプルを20分間にわたって5600xgで遠心分離した。上清のアリコート400μlを別のサンプル管に移した。600μlのBuffer AP3/Eの添加後、このサンプル管に蓋をし、15秒シェイクした。フィルタープレートを矩形のウェルブロック上に置き、1mlのサンプル溶液を各ウェルに入れ、プレートを封止した。プレート及びブロックを4分間にわたる5600xgでの遠心分離に供した。次に、800μlのBuffer AWをフィルタープレートの各ウェルに添加した。プレートを封止し、15分間にわたって5600xgで矩形のウェルブロックにおいて回転させた。次に、フィルタープレートを新しいサンプル管セット上に置き、80μlのBuffer AEをフィルタに適用した。サンプル管に蓋をし、室温で1分間にわたってインキュベートし、2分間にわたって5600xgで回転させた。このステップを、追加の80μlのBuffer AEを使用して繰り返した。フィルタープレートを取り外し、プールされた濾液が入ったサンプル管に蓋をした。次に、個々のサンプルをDNA濃度5〜10ng/μlに正規化した。
C.TILLING(登録商標)
M2のDNAを、2つの個々の植物のグループへとプールした。プール内の各個体のDNA濃度は約0.8ng/μlであり、プール全体の最終濃度は1.6ng/μlであった。次に、5μlのプールしたDNAサンプル(又は8ng)をマイクロタイタープレート上に並べ、遺伝子特異的PCRに供した。
PCR増幅を、2.5ngのプールしたDNA、0.75X ExTaqバッファー(Panvera(登録商標)、マディソン、ウィスコンシン州)、2.6mM MgCl2、0.3mM dNTPs、0.3μMプライマー及び0.05U Ex−Taq(Panvera(登録商標))DNAポリメラーゼが入った体積15μlで行った。PCR増幅を、MJ Research(登録商標)サーマルサイクラーを使用して以下のように行った:95℃で2分;8サイクルの「タッチダウンPCR」(94℃で20秒、続いて70〜68℃での30秒間にわたるアニーリングステップ及び1サイクルあたり1℃の低下、次に72℃まで1秒あたり0.5℃温度を上昇させ、続いて1分間にわたって72℃);94℃で20秒、63〜61℃で30秒、72℃まで0.5℃/秒で上昇、72℃で1分を25〜45サイクル;72℃で8分;98℃で8分;80℃で20秒;80℃で7秒−0.3℃/サイクルを60サイクル。
PCRプライマー(MWG Biotech社、ハイポント、ノースカロライナ州)を以下の通りに混合した。
2.5μl 100μM IRD−700標識左プライマー
7.5μl 100μM左プライマー
9.0μl 100μM IRD−800標識右プライマー
1.0μl 100μM右プライマー
標識は上述したように各プライマーに又はプライマーの1つだけにつけることができる。或いは、Cy5.5修飾プライマーを使用し得る。標識を、慣用のホスホラミダイト化学反応を用いてオリゴヌクレオチドに結合させた。
PCR産物(15μl)を96ウェルプレートで消化させた。次に、10mM HEPES[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸](pH7.5)、10mM MgSO4、0.002%(質量/体積)Triton(登録商標)X−100、20ng/mlのウシ血清アルブミン及びCEL1(Transgenomic社、1:100000希釈)を含有する30μlの溶液を氷上で混合しながら添加し、
プレートを45℃で15分間にわたってインキュベートした。CEL1の比活性は800単位/μlであり、単位は、製造業者により、pH8.5、1分、37℃で1ngの酸可溶性物質を、せん断し熱変性させたウシ胸腺DNAから得るのに必要な酵素の量として定義された。反応は、10μlの2.5M NaCl溶液を0.5mg/mlのブルーデキストラン及び75mM EDTAと共に添加し、続いて80μlのイソプロパノールを添加することで停止させた。反応物を80℃で沈澱させ、4000rpmで30分間にわたってEppendorf Centrifuge 5810で回転させた。ペレットを、0.017%ブロモフェノールブルー色素のはいった8μlの33%ホルムアミドに再懸濁させ、80℃で7分間、次に95℃で2分間にわたって加熱した。サンプルを、コームローディングロボット(MWG Biotech社)を使用してメンブレンコームに移した。コームをスラブアクリルアミドゲル(6.5%)に挿入し、10分間電気泳動させ、取り出した。電気泳動を、4時間にわたって1500−V、40−W及び40mAリミット、50℃で継続した。
電気泳動中、ゲルを、LI−COR(登録商標)(リンカーン、ネブラスカ州)スキャナを使用して撮像し、スキャナはIR Dye 700及び800標識を検出可能なチャネルにセットした。ゲル画像は、96本のレーン全てに共通するバックグラウンドバンドの配列特異的パターンを示した。稀な事象、例えば変異により新たなバンドが出現し、バックグランドパターンから目立つ。対象の変異を示すバンドを有する植物を、野生型DNAと混合したプールの個々のメンバーをTILLING(登録商標)し、次に個々のPCR産物をシーケンシングすることで評価した。シーケンシングにより確認された変異を有する植物を上述したように育てた(例えば、M2植物を2回戻し交配又は他配することでバックグラウンド変異を排除し、自家受粉させることで変異についてホモ接合の植物を作り出した)。
D.Aゲノムの変異P177Sの同定及び評価
栽培品種エクスプレスの種子起源のコムギ植物のDNA(0.75%EMS中でインキュベート)をプライマーTaEPS1CL及びEp486AR(配列番号10及び11)を使用して増幅した。次に、PCR増幅産物をCEL1とインキュベートし、電気泳動に供した。電気泳動ゲル画像は約200bpのIRD−700標識フラグメントを示し、約486bpの全長PCR増幅産物についてのバックグランドパターン上で目立った。従って、このフラグメントは、EPSPS遺伝子配列のAホメオログにおける変異により作り出されたヘテロ二重鎖を含んでいるようであった。このフラグメントの配列を解析したところ、変異は、イネEPSPSについて公開されているゲノムDNA(配列番号2)に従って番号をふったヌクレオチド1233でのシトシンからチミンへの変化であった。この変異は、AゲノムEPSPSホメオログによりコードされたEPSPSポリペプチドにおけるアミノ酸番号177(公開されているイネEPSPSタンパク質配列番号3に従って番号をふった)でのプロリンからセリンへの変化に関連した。
E.Bゲノムの変異T173Iの同定及び評価
1.2%EMS中でインキュベートした栽培品種エクスプレスの種子起源のコムギ植物のDNAをプライマーTaEPS1CL及びEp558BR(配列番号10及び12)を使用して増幅した。次に、PCR増幅産物を、改変したTaqMan(登録商標)SNPジェノタイピングアッセイ(PN4332856C、Applied Biosystems社から入手可能、フォスターシティ、カリフォルニア州)をPCRプライマー(配列番号14〜15)及びTaqMan(登録商標)MGBプローブ(配列番号16〜17)と共に用いて、イネEPSPSについて公開されているゲノムDNA(配列番号2)に従って番号をふったヌクレオチド1222でのシトシンからチミンへの変化を同定することでスクリーニングした。この変異は、BゲノムEPSPSホメオログによりコードされたEPSPSポリペプチドにおけるアミノ酸番号173(公開されているイネEPSPSタンパク質配列番号3に従って番号をふった)でのトレオニンからイソロイシンへの変化に関連した。
F.Dゲノムの変異T173Iの同定及び評価
栽培品種エクスプレスの種子起源のコムギ植物のDNA(1.0%EMS中でインキュベート)をプライマーTaEPS1CL及びTaEPSJR(配列番号10及び13)で増幅した。次に、PCR増幅産物をCEL1とインキュベートし、電気泳動に供した。電気泳動ゲル画像は長さ約160bpのIRD_700標識フラグメントを示し、長さ約1000bpの全長PCR増幅産物についてのバックグランドパターン上で目立った。従って、このフラグメントは、EPSPS遺伝子配列のBホメオログにおける変異により作り出されたヘテロ二重鎖を含んでいるようであった。このフラグメントの配列を解析したところ、変異は、イネEPSPSについて公開されているゲノムDNA(配列番号2)に従って番号をふったヌクレオチド1222でのシトシンからチミンへの変化であった。この変異は、DゲノムEPSPSホメオログによりコードされたEPSPSポリペプチドにおけるアミノ酸番号173(公開されているイネEPSPSタンパク質配列番号3に従って番号をふった)でのトレオニンからイソロイシンへの変化に関連した。
G.表現型の解析
研究用に選択したコムギ植物
一重の好ましい変異(BゲノムにおけるT173I変異、DゲノムにおけるT173I変異及びAゲノムにおけるP177S変異)をM3種子で同定した。野生型の同胞も同定し、コントロールとして使用した。DゲノムのT173I変異についてホモ接合である植物をAゲノムのP177S変異についてホモ接合の植物と交配させることで二重変異植物を作り出した。
グリホサートに対する抵抗性の測定
グロースチャンバでの研究:一重の好ましい変異についてホモ接合である植物からの種子及び野生型の同胞コントロール植物からの種子を表面滅菌し、湿った発芽紙上に一晩置き、次に、0又は0.15Mグリホサートを含有する0.1Xムラシゲ&スクーグ(MS)培地の入ったガラス管で育てた。発芽を、グロースチャンバにおいて、80マイクロアインシュタインの16時間の光/8時間の闇の光条件下で行った。成長10〜14日目に、苗条及び根の長さを測定した。グリホサートを含有する培地上で、苗条及び根の長さは共に、好ましい変異についてホモ接合である種子のほうが野生型の同胞コントロール種子より有意に長く、これは好ましい変異を有する種子がグリホサートに対して抵抗性であったことを示す。野生型の種子はグリホサートを含有する培地上で生い茂り損ね、殆どは成長できなかったが、変異を有する種子の殆どはよく成長した。
二重の好ましい変異(T173I及びP177Sの両方)についてホモ接合である植物からの種子を一重の好ましい変異のそれぞれについてホモ接合である種子と、グリホサート含有MS培地上での生存能について比較した。野生型の同胞植物からの種子をポジティブコントロールとして使用した。種子は上述した通りに発芽させた。苗条及び根の長さの測定結果は、二重の好ましい変異についてホモ接合である種子のほうが一重の好ましい変異のそれぞれについてホモ接合である種子よりグリホサートに対する抵抗性がより高いことを示した。1つ以上のEPSPS遺伝子に変異を有する種子の3つグループ全て(二重T173I及びP177S;一重T173I;一重P177S)がグリホサートに抵抗性であり、殆どが成長しなかった野生型同胞植物からの種子と比較してよく成長した。
H.A:P177S及びD:173Iについてホモ接合である植物の種子の再変異誘発
一実施形態において、Aゲノム又はDゲノムにおける変異についてホモ接合である植物の種子の再変異誘発により第二点突然変異(second−site mutation)を同定できる。単点A及びDゲノム植物の子孫種子を再変異誘発させ、EPSPSに第二点変異を含む独立したM2変異体を同定した。Aゲノムに変異P177S及びT173Iの両方を含む植物を同定した。この組み合わせは2回独立して同定された。別々に、Dゲノムに変異P177S及びT173Iを含む植物を同定した。A及びDゲノムにおける両方の二重変異体が1つの植物に組み込まれるように交配を行った。別々に、BゲノムT173I変異を、A及びDゲノムに二重の変異を含む植物と交配させた。加えて、別々に、BゲノムP177L(P172L)をA及びDゲノムに二重の変異を含む植物と交配させた。
上記の実施例は本開示を例証するためのものであって、その範囲を限定するためのものではない。当業者ならば本開示の他の変化形もすぐにわかり、これらは添付の請求項及びその等価物全てに包含される。上の実施例ではコムギの1つ以上のEPSPS遺伝子に変異を作り出し、同定するのにTILLING技術を用いているが、当業者ならば、他の方法、例えば標的変異誘発(部位指向的変異誘発、部位特異的変異誘発又はオリゴヌクレオチド指向的変異誘発としても知られる)を用いてコムギの1つ以上のEPSPS遺伝子座に有用な変異を作り出し得ることがわかる(例えば、Zhang et al.,PNAS 107(26):12028−12033,2010;Saika et al.,Plant Physiology 156:1269−1277,2011を参照のこと)。当業者ならば、追加の方法を用いることでコムギEPSPS遺伝子の活性を不活化又は低下させ得ることもわかる。これらの方法は、限定するものではないが、EPSPS転写物を変異させる又はその蓄積を減少させるためのCRISPR/Cas9変異誘発、TALEN及びジンクフィンガー変異誘発、RNAi、マイクロRNA及びヘアピンRNAベースの方法を含む。本明細書で引用した全ての出版物、特許及び特許出願は参照により本明細書に援用される。
情報としての配列一覧
配列番号1は、オリザ・サティバEPSPS mRNA(NCBI参照配列:NM_001063247)を示す。
配列番号2は、オリザ・サティバEPSPSゲノムDNA(NCBI参照配列:NC_008399)を示す。
配列番号3は、配列番号2によりコードされるEPSPSタンパク質を示す(NCBI参照配列:NP_001056712)を示す。
配列番号4〜5は、ゲノムシーケンシングに使用するトリチカム・エスチバムEPSPS特異的プライマーのDNA配列を示す。
配列番号6は、コムギのAゲノムのEPSPSについての部分ゲノムDNA配列を含むPCR産物のDNA配列を示す。
配列番号7は、コムギのBゲノムのEPSPSについての部分ゲノムDNA配列を含むPCR産物のDNA配列を示す。
配列番号8は、コムギのDゲノムのEPSPSについての部分ゲノムDNA配列を含むPCR産物のDNA配列を示す。
配列番号9は、コムギEPSPSタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号10〜13は、変異検出に使用したコムギEPSPS特異的プライマーについてのDNA配列を示す。
配列番号14〜17は、T173I変異検出に有用なTaqMan(登録商標)プライマーを示す。
配列番号18は、コムギEPSPSタンパク質の活性領域を示す。
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