JP2018516976A - キナーゼ阻害剤および癌治療におけるそれらの使用 - Google Patents

キナーゼ阻害剤および癌治療におけるそれらの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、一般式(I)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体と、癌の診断または処置における2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の使用とに関する。【選択図】図9

Description

本発明は、キナーゼ阻害剤および癌治療におけるそれらの使用に関する。
癌は世界的に主要な死因であり、その根底の機構の理解および効率的な標的療法の開発が最も重要である。癌細胞が増殖および生存に対する正常な生理学的制約を逃れるための主要な機構として、キナーゼ活性の調節不全が出現した。過去20年のうちに、キナーゼは学術的および産業的研究における薬物発見の中心的標的となった。たとえば癌などの疾患における調節不全キナーゼは、多様な小分子阻害剤によって対処されており、たとえばエルロチニブおよびゲフィチニブなどの例を含むいくつかのキナーゼ阻害剤が同定されて、FDAにより認可されている。
プロテインキナーゼ(protein kinase)BまたはAkt(PKB/Akt)はセリン/スレオニンキナーゼであり、たとえばホルモンおよび増殖因子などの多様な刺激に露出された細胞において活性化される。プロテインキナーゼAktは、触媒キナーゼドメインに加えて制御性プレクストリン相同(PH:pleckstrin homology)ドメインを特徴とし、これによって増殖因子刺激の際の膜付着および上流のキナーゼホスホイノシチド依存性キナーゼ1(PDK1:phosphoinositide−dependent kinase−1)を介したリン酸化による活性化が可能である。Aktの活性化機構はまだ完全に特徴付けられていないが、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI−3K:phosphoinositide 3−kinase)の下流で起こる。PI3K/Aktシグナル伝達は、癌の特徴を含む細胞プロセスのほとんどに介在する。したがって、Akt調節不全は腫瘍性形質転換および悪性化、ならびにたとえば乳癌、前立腺癌、およびUD 40776/SAM:AL結腸直腸癌などのさまざまな固形腫瘍の化学療法および放射線療法に対する抵抗性の増加に直接関連する。この目的のために、選択的小分子阻害剤を用いた調節不全Aktの化学的調節は、多様な形の癌になった患者の処置に対する有望な展望を提供する。
したがって本発明の根底にある目的は、Aktキナーゼを阻害する化合物を提供することであった。
この課題は、下に与えられた一般式(I)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルによって解決され、
Figure 2018516976
ここで
Aは、6から14の鎖長を有し、かつ少なくとも1つの5員環から10員環部分を含むリンカーであり、
は、水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、
、R、Rは、同じであるか、もしくは互いに独立に、水素、CN、CF、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/もしくはC−C−シクロアルキルを含む群より選択されるか、または
とRとは、それらが付着する炭素原子の間で三重結合を形成し、
は、水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、
ここでR、R、R、R、Rのアルキルおよびシクロアルキル基は、O、Nおよび/もしくはSを含む群より選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲンで置換されてもよい。
驚くべきことに、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、類似の特徴を有する他のプロテインキナーゼよりもセリン/スレオニンキナーゼAktの方に高い力価および選択性を伴って結合し、特にAkt2およびAkt3よりもAkt1に対するアイソフォーム選択性を示すことが見出された。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、高い配列および構造相同性を明らかにするキナーゼに影響することなく、Aktアイソフォームを排他的に標的とする優れた選択性プロファイルを示した。
消化管間葉性腫瘍細胞を用いて、細胞環境におけるAkt1に対する特定の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の選択性が実証される一方で、たとえばc−KITおよびErk1/2などのさらなる発癌性プロテインキナーゼが残った。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体はさらに、さまざまな癌株細胞におけるAktの細胞透過性エフェクターであることが実証された。これらの観察は、さらなる医薬品化学アプローチに2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を用いるという見通しを導入する。特に、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は共有結合的に調節する抗癌薬の開発に寄与し得る。
本発明に従う「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖アルキル基を意味するものと理解されるべきである。本明細書において用いられる「直鎖C−C−アルキル」という用語は、1から5の炭素原子を有する直鎖基を示す。直鎖C−C−アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、およびn−ペンチルを含む群より選択されてもよい。好ましい直鎖C−C−アルキル基は、メチルおよびエチルより選択される。好ましい分岐鎖「C−C−アルキル」は、イソブチル、tert.−ブチル、sec.−ブチル、および/またはイソペンチルより選択される。最も好ましい分岐鎖「C−C−アルキル」は、イソプロピルである。
本発明に従う「C−C−シクロアルキル」という用語は、5員から7員の飽和環を意味するものと理解されるべきである。好ましいシクロアルキル基は、シクロペンチルおよび/またはシクロヘキシルを含む群より選択される。
本発明に従う「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素、塩素または臭素を意味するものと理解されるべきである。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、Aktキナーゼに対する優れた選択性および高い力価を示す。Aktキナーゼの共有結合的およびアロステリックな阻害が提供されると考えられる。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン構造は、Aktキナーゼのプレクストリン相同(PH:pleckstrin homology)ドメインとのアロステリックな相互作用を提供すると考えられる。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン構造は、有利には特に効果的な結合親和性を示した。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体で処理したAktキナーゼ分子のトリプシン消化および質量分析はさらに、Aktキナーゼの位置296および310の2つの非触媒性Aループシステイン(Cys296およびCys310)が、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体によって共有結合的に修飾されることを示した。この共有結合的相互作用は、反応性アルケニルまたはアルキニル基を提供する構造の部分によって提供されると考えられる。
Aktキナーゼの共有結合的およびアロステリックな阻害を提供する2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の部分は、リンカーAを介して接続される。リンカーAは6から14の鎖長を有し、かつ少なくとも1つの5員環から10員環部分を含む。
本発明に従う「5員環から10員環部分」という用語は、安定な5員から7員の単環式の環、または7員から10員の二環式の環を示し、これは飽和でも不飽和であってもよく、かつN、Oおよび/もしくはSを含む群より選択される1から3のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲン、たとえば塩素もしくはフッ素などで置換されてもよい。「5員環から10員環部分」という用語は、5員または6員の複素環式の環がベンゼン環に融合された二環式の基を含む。
5員環から10員環部分は、ベンゼン、フラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、テトラヒドロピラン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、モルホリン、またはアザシクロヘプタンを含む群より選択されてもよい。さらに好ましい複素環は、フラン−2−イル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロピラン−2−イル、1,3−ジオキソラン−5−イル、ピロール−1−イル、ピロール−2−イル、ピロリジン−1−イル、イソキサゾール−3−イル、イソキサゾール−4−イル、1,2−ジ−チアゾリン−5−イル、イミダゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,3,4−トリアゾール−1−イル、チオフェン−2−イル、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−4−イル、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピリミジン−5−イル、モルホリン−1−イル、アザシクロヘプタン−1−イル、および/またはベンゾ−1,2,3−チアジアゾール−7−イルを含む群より選択される。
5員環から10員環部分は、飽和または不飽和6員環であってもよい。この6員環はN、Oおよび/もしくはSを含む群より選択される1から3のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲン、たとえば塩素もしくはフッ素などで置換されてもよい。6員環はベンゼン、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−4−イル、ピペラジン(piperrazin)−1−イル、およびピペラジン−4−イルより選択されてもよい。リンカーAは2つの6員環を含んでもよい。リンカーAは6員環と5員環とを含んでもよいし、6員環と二環式の基とを含んでもよい。
環部分は、有利にはリンカーAの安定性を提供する。リンカーAは少なくとも1つの環部分を含んでもよいし、2つまたは3つの環部分を含んでもよい。リンカーAは、Aktキナーゼとの共有結合的およびアロステリックな相互作用のために設計された分子の部分を接続する。リンカーAはさらに、キナーゼとの適切かつ独立した相互作用を確実にするための部分の特定の距離を提供する。6から14の炭素またはヘテロ原子の鎖長が有効であることが示された。鎖長は好ましくは6から12の炭素もしくはヘテロ原子の範囲、または7から10の範囲、または8から9の範囲であってもよい。5員環から10員環部分は、6から14の炭素またはヘテロ原子の鎖長に加えられるのではなく、この鎖長に含まれることが理解されるべきである。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の好ましい実施形態において、Aは以下に与えられる構造要素(A1)から(A12)を含む群より選択される。
Figure 2018516976
特定的に別様に述べられない限り、アラビア数字で示された化合物、基、または置換基は、ローマ数字または数字と文字とを組み合わせた名称で示される化合物、基、または置換基とは異なり、すなわち化合物、基、または置換基は異なる化合物、基、または置換基である。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、置換基RからRを含む。Rは水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、このアルキルおよびシクロアルキル基はO、Nおよび/もしくはSを含む群より選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲンで置換されてもよい。Rは5員または6員のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、Rは水素または直鎖C−C−アルキル基である。より好ましくは、Rは水素またはメチルである。
加えて、Rは水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、このアルキルおよびシクロアルキル基はO、Nおよび/もしくはSを含む群より選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲンで置換されてもよい。Rは5員または6員のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、Rは水素または直鎖C−C−アルキル基である。より好ましくは、Rは水素またはメチルである。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の好ましい実施形態において、RおよびRは同じであるか、または互いに独立に、水素および/またはメチルを含む群より選択される。最も好ましい実施形態において、RおよびRは水素である。
置換基R、RおよびRは同じであるか、または互いに独立に、水素、CN、CF、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、ここでアルキルおよびシクロアルキル基はO、Nおよび/もしくはSを含む群より選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲンで置換されてもよい。R、RおよびRの少なくとも1つまたは2つがCNまたはCFであってもよい。R、RおよびRは直鎖C−C−アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルであってもよい。R、RおよびRの1つまたはそれ以上が、少なくとも1つの窒素原子を含む分岐鎖C−C−アルキル、たとえば−(CH)−N(CHなどであってもよい。R、RおよびRの1つまたはそれ以上が、1つまたはそれ以上の塩素原子で置換された分岐鎖C−C−アルキルであってもよい。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の好ましい実施形態において、R、RおよびRは水素である。
代替的実施形態において、RおよびRは、それらが付着する炭素原子の間で三重結合を形成する。この結果、炭素原子の間に三重結合が得られる。
好ましい実施形態において、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、下に示される式(1a)、(28)、(29)、(30)、(31)、(32)、および/もしくは(33)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む化合物の群より選択される。
Figure 2018516976
特に好ましい実施形態において、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、式(1a)、(30)、および/または(32)を含む化合物の群より選択される。これらはAktキナーゼの阻害に対する特に良好な最大半量阻害濃度および解離定数を示した。最も好ましい2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、式(1a)に従う化合物である。
さらに好ましい実施形態において、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、下に示される式(34)、(35)、(36)、(37)、(38)、(39)、(40)、および/もしくは(41)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む化合物の群より選択される。
Figure 2018516976
実施形態において、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、蛍光ラベルまたはたとえば18Fなどの放射性核種を含む。蛍光または放射性ラベルは、医学的使用のために特に好適である。
蛍光ラベルまたは放射性核種を含む2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の例は、下に示される式(42)、(43)、および/もしくは(44)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む群より選択される。
Figure 2018516976
さらに好ましい実施形態において、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、下に示される式(45)、(46)、(47)、(48)、(49)、および/もしくは(50)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む化合物の群より選択される。
Figure 2018516976
式(46)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が特に好ましい。
本明細書に記載される化合物は、1つまたはそれ以上の不斉中心を含有するため、立体異性体(立体配置異性体)を生じることがある。本発明は、こうした生じ得るすべての立体異性体、ならびにそれらの混合物およびそれらの薬学的に許容可能な塩を含む。
本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、その溶媒和物、水和物、ならびに薬学的に許容可能な塩およびエステルの形で使用可能であってもよい。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、薬学的に許容可能な無毒性の塩基または酸から調製された塩を示す。薬学的に許容可能な塩は、無機塩基および有機塩基を含む薬学的に許容可能な無毒性の塩基、有機アニオン、有機カチオン、ハロゲン化物、またはアルカリから簡便に調製され得る。薬学的に許容可能な塩という用語は、アルカリ金属塩および遊離酸または遊離塩基の付加塩を含む。好適な薬学的に許容可能な塩基付加塩は、金属塩および有機塩を含む。無機塩基に由来する好ましい塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩を含む。薬学的に許容可能な有機無毒性塩基に由来する塩は、一級、二級、および三級アミンの塩を含む。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、塩酸塩またはマレイン酸塩の形で用いられてもよい。
本発明のさらなる局面は、薬物または診断試薬として用いるための、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体に関する。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、キナーゼAktの強力な共有結合−アロステリック阻害剤である。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、AktキナーゼPHドメインに対する顕著な選択性と、Aktキナーゼに共有結合する標的不可逆モジュレーターであることの薬理学的および治療的利益とを組み合わせており、これは優れた薬物−標的滞留時間および力価の増加を含む。PHドメイン依存的な共有結合−アロステリック阻害剤のこれらの特徴によって、治療または診断用の使用のためにAktキナーゼを標的とすることが可能になる。Aktシグナル伝達は、癌の特徴を含む細胞プロセスのほとんどに介在する。
したがって本発明の特定の局面は、癌の診断または処置に用いるための、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体に関する。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、白血病(血液癌)を含むさまざまな癌に対して有用であるが、特に固形腫瘍に対して使用するためのものである。本明細書において用いられる「固形腫瘍」という用語は、臓器系において増殖し、かつ体内のどこでも発生し得る癌細胞の固形質量を示す。本明細書において用いられる固形腫瘍という用語は、血液癌を示さない。実施形態において、固形腫瘍は乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、甲状腺癌、肺癌、肝臓癌、膵癌、胃癌、黒色腫(皮膚癌)、リンパ腫、および神経膠腫を含む群より選択される。
薬物または診断試薬として用いるために、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は組成物中で使用されるか、または組成物に含まれてもよい。本発明のさらなる局面は、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を含む診断用組成物に関する。こうした診断用組成物は特に癌の検出または診断に使用するためのものであり、特に固形腫瘍の検出または診断に使用するためのものである。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、Aktキナーゼに特異的に結合して、サンプルに存在する癌性細胞を標識する。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体はラベリングを含んでもよく、そのラベルによって提供されるシグナルの存在または不在を定めることによって、Aktキナーゼと結合した2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を検出できることを提供する。たとえば、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、たとえば蛍光色素などの蛍光ラベルでラベルされてもよい。たとえば蛍光色素などによって提供される蛍光ラベリングは、蛍光もしくはレーザー走査型顕微鏡またはフローサイトメトリによる2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の可視化を提供できる。さらに、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体をたとえば18Fなどの放射性核種でラベルして、放射線量測定によって検出できる。
腫瘍細胞中のAktキナーゼを認識することによって癌を検出または診断するために有用であることに加えて、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体はAktキナーゼを阻害するため、治療のために使用することもできる。したがって別の局面において、本発明は、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を活性成分として含む医薬組成物に関する。この医薬組成物は癌の処置、特に固形腫瘍の処置に用いるために特に好適である。
2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を、薬学的に許容可能な担体に溶解または分散させることができる。「薬学的または薬理学的に許容可能な」という用語は、たとえばヒトなどの対象に適切に投与されたときに、有害な(adverse)反応、アレルギー反応、またはその他の有害(untoward)反応を生じない分子実体および組成物を示す。医薬担体は、たとえば固体、液体、または気体などであり得る。好適な担体およびアジュバントは固体または液体であってもよく、医薬調合物に対する調合技術において通常使用される物質に対応する。組成物に対して、簡便な医薬媒体が使用されてもよい。たとえば水、緩衝剤、グリコール、油、およびアルコールなどが用いられて、たとえば溶液などの液体調製物を形成してもよい。組成物は、たとえば固体、液体、または気体などであり得る医薬担体を含んでもよい。好適な担体は好ましくは液体であり、医薬調合物に対する調合技術において通常使用される物質に対応する。組成物、特に医薬組成物は、当業者に周知の標準的な製薬技術を用いて無菌条件下で生成されてもよい。
加えて本発明は、薬物または診断試薬の製造のため、特に癌の検出もしくは診断のための診断試薬または癌、特に固形腫瘍の処置のための薬物の製造のための、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の使用に関する。
本発明のさらなる局面は、癌または癌の素因を検出または診断する方法に関し、この方法は、対象から得られる細胞、組織、またはサンプルにおける、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体と、Aktキナーゼ、特にAkt1との結合を検出するステップを含む。
本明細書において用いられる「サンプル」という用語は、腫瘍細胞を含有する可能性のある任意の材料を示し、それは任意の液体もしくは流体サンプルまたは固体材料、特にたとえば患者またはテスト対象などの生物学的供給源に由来するサンプルを含む。サンプルという用語は特に生物学的材料、たとえば細胞または組織、生物学的流体または上清などを示す。生物学的材料は、好ましくはヒトである癌の対象から、たとえば外科的切除または生検などによって取り出された組織検体であってもよい。生物学的材料は、たとえば血液、血清、血漿、唾液、痰、および尿などの体液であってもよい。
この方法は、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を、腫瘍細胞を含有し得るサンプルと接触させるステップを含む。サンプルは、たとえば癌の対象などの生物学的供給源に由来していてもよい。サンプルはたとえば、好ましくはヒトである癌の対象から、たとえば外科的切除または生検などによって単離された細胞または組織検体などを含み得る。加えてサンプルは、たとえば血液、血清、血漿、唾液、痰、および尿などの体液であってもよい。2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を用いることによってサンプルにおける癌を検出または診断する方法は、特定的にはインビボまたはエクスビボの方法である。
本発明のさらなる局面は、癌、特に固形腫瘍を処置する方法に関し、この方法は、治療上有効な量の本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を対象に投与するステップを含む。
対象はヒトの対象および動物の対象の両方を含み、特にたとえばヒトの対象または医学的目的のためのマウスもしくはラットなどの哺乳動物の対象を含む。本明細書において、「治療上有効な量」という用語は、対象における臨床的に有意な条件の改善をもたらすために十分な量または用量を意味するために用いられる。
癌は白血病(血液癌)を含む。特に、癌とは固形腫瘍を示す。固形腫瘍は乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、甲状腺癌、肺癌、肝臓癌、膵癌、胃癌、黒色腫(皮膚癌)、リンパ腫、および神経膠腫を含む群より選択されてもよい。
別様に定義されない限り、本明細書において用いられる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
以下の実施例は本発明をより詳細に示す働きをするが、本発明の限定を構成するものではない。
実施例1に従う本発明の実施形態に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体と、実施例2に従う比較のための化合物との合成の概要を示す図である。 実施例3に従う比較のための化合物の合成の概要を示す図である。図2aはステップ3.2.1から3.2.8を示す。 実施例3に従う比較のための化合物の合成の概要を示す図である。図2bはステップ3.2.9を示す。 実施例1から4の化合物と、対照とのiFLiK結合分析を示す図である。3回の独立した測定から得られた代表的な結果が示されており、データは4つ組の測定値の平均±s.d.を示す。 実施例1から4の化合物の活性に基づくスクリーニングを示す図である。3回の独立した測定から得られた代表的な結果が示されており、データは4つ組の測定値の平均±s.d.を示す。 実施例1(図5a)および実施例2(図5b)およびMK−2206(図5c)の化合物の、時間依存的な活性に基づくスクリーニングの結果を示す図である。データは2つ組の測定値の平均±s.d.を示す。 式(1a)(図6a)および(2a)(図6b)に従う化合物に対するインキュベーション時間に対してプロットされたIC50値を示す図である。3回の独立した測定から得られた代表的な結果が示されており、3つ組の測定値からkinact、Kおよびkinact/Kに対する平均±s.d.を算出した。 式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の濃度1μMにおける100の異なるプロテインキナーゼのパネルのスクリーニングの阻害を示す図である。示されるデータは、評価されるキナーゼに対する2回の独立した測定の平均%阻害を示す。 異なる濃度の式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体およびAkt阻害剤MK2206による乳癌(BT474)および前立腺癌(PC−3)細胞の処置の際の、Akt1およびリン酸化Akt1、ならびにGSK3βおよびリン酸化GSK3βのウエスタンブロットを示す図である。ロード対照としてβ−アクチンを用いた。 異なる濃度の式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体、Akt阻害剤MK2206およびGSK690693、ならびにイマチニブによる消化管間葉性腫瘍細胞(GIST−T1)の処置の際の、キナーゼのウエスタンブロットを示す図である。ロード対照としてβ−アクチンを用いた。 式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体をマウスにそれぞれ静脈内(i.v.(intravenously)、2mg/kg)、腹腔内(i.p.(intraperitoneally)、20mg/kg)および経口(p.o.(perorally)、20mg/kg)注射した後の濃度時間プロファイルを示す図である。 式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の存在下で共結晶化されたAkt1の、2.5Åの解像度まで精密にされた結晶構造を示す図である。
別様に述べられない限り、化学物質はアクロス(Acros)、フルカ(Fluka)、メルク(Merck)、またはシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入して、さらなる精製なしに使用した。
<実施例1>
式(1a)に従う化合物の合成:N−(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)アクリルアミド
ステップ1.1 5−クロロ−6−ニトロ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(4)の合成
5−クロロ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(3)(2g、8.0mmol)を1,2−ジクロロベンゼン(40mL)に溶解し、上記撹拌溶液に70%硝酸(1g、16.0mmol)を室温(RT(room temperature)、20±2℃)にて滴下して加えた。60℃にて2h撹拌した後、反応混合物をRTに冷却した。ろ過によって沈殿した結晶を分離し、ジエチルエーテル(2×50mL)および水で洗浄した。粗生成物を高温エタノールから再結晶化し、高真空にて1h乾燥することによって、表題の化合物(4)を淡黄色の固体(1.51g、64%)として与えた。
ステップ1.2 6−アミノ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(5)の合成
ステップ1.1の5−クロロ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(4)(2g、6.7mmol)と、10%Pd/C(0.2g)とをエタノール(40mL)に溶解し、80℃にて30min撹拌させた。RTにて上記撹拌反応塊(reaction mass)にギ酸アンモニウム(4.0g、67mmol)を加えた。80℃にて30min撹拌した後、反応混合物をRTに冷却し、セライトのパッドでろ過した。過剰な溶剤を除去し、粗塊(crude mass)をフラッシュクロマトグラフィー(5%MeOH/CHCl)溶剤系によって精製して、化合物6−アミノ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(5)をオフホワイト色の固体(0.97g、62%)としてもたらした。
ステップ1.3 tert−ブチル(2−オキソ−3−(ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(6)の合成
(Boc)O(0.88mL、3.8mmol)の1,4−ジオキサン(34.2mL)溶液を、ステップ1.2の6−アミノ−1−(ピペリジン−4−イル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−オン(5)(0.9g、3.8mmol)を10%AcOH(34.2mL)に入れた撹拌溶液に滴下して加え、RTにて一晩撹拌させた。反応混合物をジエチルエーテル(2×25mL)で洗浄し、水溶液を2N NaOH(5mL)で塩基性化し、CHCl(2×50mL)で抽出した。有機層をかん水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、過剰な溶剤を除去した。粗塊をフラッシュクロマトグラフィー(4%MeOH/CHCl)溶剤系によって精製して、表題の化合物tert−ブチル(2−オキソ−3−(ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(6)を淡黄色の液体(1.05g、79%)としてもたらした。
ステップ1.4 4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンズアルデヒド(7)の合成
Z.ファング(Fang)、J.R.シマード(Simard)、D.プレンカー(Plenker)、Η.D.ヌグイェン(Nguyen)、T.ファン(Phan)、P.ウォレ(Wolle)、S.バウマイスター(Baumeister)、D.ロー(Rauh)、ACSケミカル・バイオロジー(ACS Chem.Biol.)2015、10、279〜288に記載される手順に従って、4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンズアルデヒド(7)を合成した。
ステップ1.5 tert−ブチル(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(8)の合成
tert−ブチル(2−オキソ−3−(ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(6)(0.5g、1.5mmol)およびステップ1.4の4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンズアルデヒド(7)(0.49g、1.5mmol)を、ドライMeOH(20mL)、TEA(2滴)、およびAcOH(2滴)に溶解し、75℃にて4h撹拌させた。次いでNaBHCN(0.31g、1.5mmol)をRTにて加え、反応塊を一晩撹拌させた。減圧下で溶剤を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(2〜4%のMeOH/CHCl)によって精製して、表題の化合物tert−ブチル(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(8)を淡黄色の液体(0.46g、51%)としてもたらした。
ステップ1.6 2−(4−((4−(6−アミノ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)フェニル)−3−フェニル−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(9)の合成
ステップ1.5のTert−ブチル(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)カルバメート(8)(200mg、0.31mmol)を酢酸エチル(25mL)に溶解し、4N HClのジオキサン(5mL)溶液を氷浴によって0℃にて滴下して加え、RTにて一晩撹拌させた。沈殿をろ過してEtOAc(20mL)で洗浄し、水(20mL)に溶解した。水層をsat NaHCOによって塩基性化し、CHClで抽出し、かん水で洗浄し、NaSO上で乾燥した。過剰な溶剤を除去し、粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(7%MeOH/CHCl)によって精製して、表題の化合物9を淡黄色の固体(120mg、収率75%)として得た。
ステップ1.7 N−(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)アクリルアミド(1a)の合成
Ν,Ν−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA:Diisopropylethylamine)(0.096mL、0.55mmol)を、ステップ1.6の2−(4−((4−(6−アミノ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)フェニル)−3−フェニル−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(9)(0.06g、0.11mmol)をCHCl(5mL)に入れた撹拌溶液に、氷浴によって0℃にて加えた。上記撹拌反応混合物にアクリロイルクロライド(0.084mL、0.11mmol)を0℃にて滴下して加え、RTにて16h反応させた。反応混合物を飽和NaHCOでクエンチし、生成物をCHCl(3×20mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(8%MeOH/CHCl)によって精製して、表題の化合物1a(0.035g、53%)(R=0.35、8%MeOH/CHCl)をオフホワイト色の固体としてもたらした。この合成の概要を図1に示す。
比較例2
N−(2−オキソ−3−(1−(4−(5−オキソ−3−フェニル−5,6−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−2−イル)ベンジル)ピペリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−5−イル)プロピオンアミド(1b)の合成
DIPEA(0.05mL、0.27mmol)を、ステップ1.6の2−(4−((4−(6−アミノ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル)メチル)フェニル)−3−フェニル−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(9)(0.03g、0.05mmol)をCHCl(5mL)に入れた撹拌溶液に、氷浴によって0℃にて加えた。上記撹拌反応混合物にプロピオニルクロライド(0.005mL、0.06mmol)を0℃にて滴下して加え、RTにて16h反応させた。反応混合物を飽和NaHCOでクエンチし、生成物をCHCl(3×20mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(8%MeOH/CHCl)によって精製して、表題の化合物1b(0.019g、57.5%)(R=0.4、8%MeOH/CHCl)をオフホワイト色の固体としてもたらした。
比較例3
式(2a)に従う化合物の合成:
ステップ3.1.1 tert−ブチル4−アジドピペリジン−1−カルボキシレート(11)の合成
50mLの2口丸底フラスコにDMSO(5mL)およびtert−ブチル4−ブロモピペリジン−1−カルボキシレート(10)(1.01g、3.82mmol)を入れた。その後、溶液が透明になって出発材料が溶解するまでRTにて撹拌した。次いでアジ化ナトリウム(1.2当量、0.301g、4.64mmol)を加え、無色の反応混合物を60℃にて18h撹拌した。反応混合物を蒸留HOで希釈し、生成物をEtOAc(5×80mL)で抽出した。次いで複合有機層をかん水で洗浄し、MgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をCC(5%から20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物(11)(0.762g、3.37mmol、88%)(R=0.47、10%EtOAc/ヘキサン)を無色の油としてもたらした。
ステップ3.1.2 4−アジドピペリジン−1−イウムクロライド(12)の合成
1口丸底フラスコに、ステップ3.1.1のtert−ブチル4−アジドピペリジン−1−カルボキシレート11(0.714g、3.16mmol)および4M HClを1,4−ジオキサン(6mL)に入れた溶液を入れた。反応混合物をRTにて23h撹拌した後、真空中で溶剤を除去して粗製の表題化合物12(0.508g、3.12mmol、99%)を淡黄色の固体としてもたらした。
ステップ3.1.3 N−(3−エチニルフェニル)アクリルアミド(14)の合成
シュレンクチューブにジクロロメタン(DCM:dichloromethane)(15mL)、3−エチニルアニリン13(0.20mL、0.22g、1.9mmol)およびトリエタノールアミン(TEA:triethanolamine)(4.5当量、1.20mL、0.871g、8.61mmol)を入れた。無色の反応混合物を氷浴によって0℃に冷却し、アクリロイルクロライド(4.5当量、0.70mL、0.78g、8.6mmol)を滴下する態様で加えた。反応混合物は時間とともに不透明な黄色になった。アクリロイルクロライドの添加後、反応混合物をRTにて18h撹拌させた。反応を水性NaHCOの飽和溶液でクエンチし、生成物をDCM(3×150mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をCC(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物14(0.317g、1.85mmol、97%)(R=0.20、20%EtOAc/ヘキサン)を淡黄色の固体としてもたらした。
ステップ3.1.4 N−(3−エチニルフェニル)プロピオンアミド(15)の合成
50mLの2口丸底フラスコにDCM(50mL)、3−エチニルアニリン13(0.20mL、0.22g、1.9mmol)およびTEA(5.1当量、1.35mL、0.890g、9.69mmol)を入れた。無色の反応混合物を氷浴によって0℃に冷却し、プロピオニルクロライド(5.1当量、0.85mL、0.91g、9.8mmol)を滴下する態様で加えた。反応混合物は時間とともに乳白色になった。プロピオニルクロライドの添加後、反応混合物をRTにて17h撹拌させた。反応を水性NaHCOの飽和溶液でクエンチし、生成物をDCM(4×50mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をCC(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物15(0.331g、1.91mmol、定量的)(R=0.69、40%EtOAc/ヘキサン)を淡黄色の固体としてもたらした。
ステップ3.2.1 2−(4−ブロモフェニル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン(18)の合成
100mLの3口丸底フラスコに2,4’−ジブロモアセトフェノン17(6.08g、21.9mmol)、2−アミノピリジン16(1.1当量、2.31g、24.5mmol)、および脱気したアセトン(45mL)を入れた。反応フラスコに還流冷却器を装備し、反応混合物を80℃にて3h加熱した。この時間中に追加のアセトン(20mL)を加えた。その後反応混合物を室温に冷却し、250mLの1口丸底フラスコに移した。真空中で溶剤を除去し、反応混合物にHBr(45mL)およびMeOH(90mL)を加えた。反応フラスコに再び還流冷却器を装備し、反応混合物を80℃にて1h加熱した。氷浴によって反応混合物を0℃に冷却した。次いで白色の沈殿を焼結漏斗でろ過し、蒸留HOで洗浄し、真空下で乾燥して、粗製の表題化合物18(5.69g、20.8mmol、95%)(R=0.36、40%EtOAc/ヘキサン)を白色の固体としてもたらし、さらなる精製は行わなかった。
ステップ3.2.2 4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル(19)の合成
10〜20mLのマイクロ波バイアルにステップ3.2.1の2−(4−ブロモフェニル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン18(1.01g、3.71mmol)、CuCN(1.5当量、0.500g、5.58mmol)、および脱気したDMF(12mL)を入れた。バイアルをマイクロ波リアクタに入れ、160℃にて30min加熱して試薬を溶解した。次いでそれを200℃にて4h加熱した。反応混合物をRTに冷却し、エチレンジアミン(5mL)およびHO(20mL)で希釈した。DCM(10×50mL)による抽出を行い、複合有機層を無水MgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去し、暗い茶色の粗製材料をCC(50%EtOAc/ヘキサンおよび1%TEA)によって精製して、まだ不純な表題の化合物19(0.786g)をもたらした。次いでその化合物19を第2ラウンドのCC(50%EtOAc/ヘキサンおよび1%TEA)によってさらに精製して、表題の化合物19(0.498g、2.27mmol、61%)(R=0.32、40%EtOAc/ヘキサン)を淡黄色の固体としてもたらした。
ステップ3.2.3 4−(3−ブロモイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル(20)の合成
50mLの1口丸底フラスコに、ステップ3.2.2の4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル19(0.203g、0.925mmol)およびMeCN(2mL)を入れた。NBS(2.0当量、0.330g、1.85mmol)をMeCN(5mL)に溶解し、3回に分けて反応フラスコに加えた。NBSの添加の間に沈殿が形成され、反応混合物をRTにて10min撹拌し、真空中で溶剤を除去して黄色の固体を得て、それを飽和水性NaHCOで希釈し、DCM(4×50mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過し、真空中で溶剤を除去した。黄色の粗製材料をCC(30%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、まだ不純な表題の化合物20(0.312g)をもたらした。次いでその化合物20を第2ラウンドのCC(30%EtOAc/ヘキサン)によってさらに精製して、表題の化合物20(0.181g、0.608mmol、66%)(R=0.47、40%EtOAc/ヘキサン)をオフホワイト色の固体としてもたらした。
ステップ3.2.4 4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル(22)の合成
S.マーハドゥール(Marhadour)、M.−A.バジン(Bazin)、P.マーチャンド(Marchand)、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)2012、53、297〜300に記載されるとおりに、シュレンクチューブにステップ3.2.3の4−(3−ブロモイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル20(0.314g、1.05mmol)、フェニルボロン酸21(1.2当量、0.159g、1.30mmol)、KCO(2.4当量、0.356g、2.57mmol)、およびPd(PPh(5mol%、0.063g、0.54mmol)を入れ、次いで排気してNを充填した。脱気した1,4−ジオキサン(2mL)およびHO(1mL)を加え、それを再び排気してNを充填した。反応混合物を110℃にて2.5h加熱し、次いで室温に冷却した。透明な黄色の反応混合物をHO(75mL)で希釈し、DCM(6×75mL)で抽出した。複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過し、真空中で溶剤を除去した。粗製材料をCC(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物22(0.245g、0.830mmol、79%)(R=0.41、40%EtOAc/ヘキサン)をオフホワイト色の固体としてもたらした。
ステップ3.2.5 4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンズアルデヒド(23)の合成
50mLの2口丸底フラスコにステップ3.2.4の4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル22(0.261g、0.883mmol)、ギ酸(6.5mL)、およびラネーニッケル(RaNi:Raney nickel)を入れた。反応混合物を90℃にて28h加熱した。次いでそれをRTに冷却し、次いで脱脂綿でろ過し、飽和水性NaHCO(200mL)で希釈した。EtOAc(5×75mL)による抽出を行い、複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過し、真空中で溶剤を除去した。黄色の粗製材料をCC(20%から40%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物23(0.172g、0.577mmol、65%)(R=0.32、40%EtOAc/ヘキサン)を濃い黄色の油/固体としてもたらした。
ステップ3.2.6 [4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェニル]メタノール(24)の合成
50mLの1口丸底フラスコにステップ3.2.5の4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンズアルデヒド23(0.170g、0.569mmol)およびMeOH(3.5mL)を入れた。不透明な黄色の反応混合物を氷浴によって0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(2.1当量、0.045g、2.30mmol)を加えた。結果として得られた透明な黄色の反応混合物を0℃の温度にて30min撹拌した。反応をRTに冷却し、真空中で溶剤を除去して淡黄色の油を得て、それに蒸留HOを加えた。EtOAc(4×150mL)を用いて抽出を行い、複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をCC(40%から50%から80%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物24(0.135g、0.449mmol、79%)(R=0.11、50%EtOAc/ヘキサン)を白色の固体としてもたらした。
ステップ3.2.7 2−[4−(クロロメチル)フェニル]−3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン(25)の合成
50mLの2口丸底フラスコにステップ3.2.6の[4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェニル]メタノール24(0.121g、0.403mmol)およびDMF(5mL)を入れた。反応混合物に四塩化炭素(2.5mL)およびトリフェニルホスフィン(2.1当量、0.223g、0.850mmol)を加え、反応フラスコに還流冷却器を装備した。その後、反応混合物を90℃にて21h加熱した。次いで追加のトリフェニルホスフィン(2.0当量、0.216g、0.823mmol)を反応混合物に加え、それを90℃にてさらに5h加熱した。反応混合物を蒸留HOで希釈し、生成物をEtOAc(3×150mL)で抽出した。次いで複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過し、真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をCC(30%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物25(0.149g、まだ不純)(R=0.40、40%EtOAc/ヘキサン)を黄色の油としてもたらした。
ステップ3.2.8 2−{4−[(4−アジドピペリジン−1−イル)メチル]フェニル}−3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン(26)の合成
50mLの2口丸底フラスコに4−アジドピペリジン−1−イウムクロライド12(1.7当量、0.114g、0.702mmol)、DMF(1mL)、およびTEA(1.8当量、0.10mL、0.073g、0.72mmol)を入れた。これらをRTにてともに撹拌し、次いでステップ3.2.7の2−[4−(クロロメチル)フェニル]−3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン25(0.128g、0.403mmol)をDMF(2mL)に溶解したものを加えた。反応混合物を60℃にて2.5h加熱した。反応混合物をRTに冷却し、蒸留HOで希釈した。生成物をEtOAc(3×150mL)で抽出し、次いで複合有機層をMgSO上で乾燥してろ過した。真空中で溶剤を除去して粗生成物を得て、その粗生成物をかん水で希釈し、ジエチルエーテルで抽出し、次いでCC(80%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の化合物26(0.115g、0.282mmol、2ステップで70%)(R=0.12、80%EtOAc/ヘキサン)を濃い黄色の油としてもたらした。
ステップ3.2.9 N−[3−(1−{1−[4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンジル]ピペリジン−4−イル}−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)フェニル]アクリルアミド(2a)の合成
シュレンクチューブにステップ3.2.8の2−{4−[(4−アジドピペリジン−1−イル)メチル]フェニル}−3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン26(0.038g、0.094mmol)、ステップ3.1.3のN−(3−エチニルフェニル)アクリルアミド14(2.2当量、0.035g、0.20mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.1当量、0.050mL、0.037g、0.29mmol)、およびMeCN(1.5mL)を入れた。不透明な黄色の反応混合物を25℃に加熱して内容物を溶解し、反応混合物はほぼ透明な黄色になった。CuI(28mol%、5mg、0.03mmol)を加え、反応を25℃にて15h撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、脱脂綿プラグでろ過し、真空中で濃縮した。結果として得られた橙色の粗製材料をCC(1%から2.5%MeOH/DCM)によって精製して、表題の化合物2a(0.068g、定量的)(R=0.19、EtOAc)を淡黄色の固体としてもたらした。
特徴付けに対して、酢酸エチル(EtOAc)およびジエチルエーテルはH NMRスペクトルにおいて見られ、生成物の過剰な質量をもたらしていた。それは、真空下でのさらなる乾燥の前は元々油であった化合物によってトラップされていた。生化学的評価に送られたサンプルは、高い表面積対体積の比率のために広げられ、真空下でさらに乾燥されて、完全に乾燥したサンプルであることを確実にした。2D NOESYスペクトルを得て、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールではなく、必要とされる1,4−二置換1,2,3−トリアゾールが合成されたことを確認した。このNMRスペクトルはトリアゾールプロトンとピペリジニルプロトンとの相関を示し、1,4−二置換1,2,3−トリアゾールの合成が成功したことを確認した。1,5−二置換1,2,3−トリアゾールのトリアゾールプロトンは、ピペリジニルプロトンと相関するには遠すぎるであろう。この合成の概要を図2aおよび図2bに示す。
比較例4
N−[3−(1−{1−[4−(3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)ベンジル]ピペリジン−4−イル}−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)フェニル]プロピオンアミド(2b)の合成
25mLの1口丸底フラスコに、ステップ3.2.8の2−{4−[(4−アジドピペリジン−1−イル)メチル]フェニル}−3−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン26(0.038g、0.094mmol)、ステップ3.1.4のN−(3−エチニルフェニル)プロピオンアミド15(2.0当量、0.033g、0.19mmol)、およびCuI(28mol%、5mg、0.03mmol)を入れた。その後、MeCN(1.5mL)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.1当量、0.050mL、0.037g、0.29mmol)を加え、不透明な黄色の反応混合物を25℃にて21h撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、脱脂綿プラグでろ過し、真空中で濃縮した。結果として得られた橙色の粗製材料をCC(0.5%MeOH/EtOAc)によって精製して、まだ不純な表題の化合物2bをもたらし、次いでこの化合物2bを第2ラウンドのCC(0.5%MeOH/EtOAc)によってさらに精製して、表題の化合物2b(16mg、0.028mmol、29%)(R=0.073、0.5%MeOH/EtOAc)を淡黄色の半固体としてもたらした。
方法
プラスミド構築:
Hisタグ付き全長野生型(wt:wild−type)Akt1と、突然変異体全長Akt1(E49C、C296S、C310S、C344S)とをコードする遺伝子を合成によって生成した(GeneArt(登録商標)、レーゲンスブルク(Regensburg)、ドイツ(Germany))。その後、それらの遺伝子をpREN4427−HIS−DESTベクターにクローニングし、Sf9細胞(インビトロジェン(Invitrogen))においてBacMagic(商標)キット(Calbiochem(登録商標))を用いてバキュロウイルスに導入した。タンパク質の発現、精製およびラベリングは、標準的プロトコルに従って行われた。
生化学的アッセイ:
Z.ファング、J.R.シマード、D.プレンカー、H.D.ヌグイェン、T.ファン、P.ウォレ、S.バウマイスター、D.ロー、ACSケミカル・バイオロジー(ACS Chem.Biol.)2015、10、279〜288に記載されるとおりに、iFLiKおよびHTRF調査を行った。
HTRF実験に対するすべての試薬は、シスビオ・バイオアッセイズ(Cisbio Bioassays)、フランス(France)より購入した。データ分析のためにOriginPro 9.1Gソフトウェア(オリジンラボ社(OriginLab Corporation)、ノースハンプトン(Northhampton)、MA)が用いられ、次の4パラメータロジスティック等式を用いて、データをS字状の用量−応答モデルに適合させた。
Figure 2018516976
(A:底部漸近線;A:頂部漸近線;IC50:最大半量阻害濃度;p:ヒル係数)
共有結合プローブ化合物の動力学的特徴付け:
「生化学的アッセイ」において説明されるとおりに、活性化全長Akt1によって時間依存的IC50測定を行った。簡単にいうと、12の異なるインキュベーション時間に対するIC50値を定めた後に、それぞれに対してプロットした。B.F.クリッペンドルフ(Krippendorff)、R.ニューハウス(Neuhaus)、P.リエノー(Lienau)、A.レイチェル(Reichel)、W.ホイジンガ(Huisinga)、ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング(J.Biomol.Screen.)2009、14、913〜923に記載される文献の手順に従って、データを分析した。基質濃度を250nM、対応する基質Kを150nMと定めるXLfit(バージョン5.4.0.8、IDBS、ミュンヘン(Munich)、ドイツ)によって、Kおよびkinactを算出した。
質量分析:
精製した全長wtAkt1を冷水下で解凍し、最終濃度が1mg/mLとなるように貯蔵用緩衝剤(50mM HEPES、200mM NaCl、10%グリセロール、pH7.4)で希釈した。それぞれの混合物20μLを2モル濃度当量の式(1a)および(2a)の化合物(10mM、DMSO中)とそれぞれ混合した。対照測定のために、等体積のDMSOを含有するサンプルを個別に調製した。氷上で30分間のインキュベーションの後、サーモフィニガン(ThermoFinnigan)LTQ線形イオントラップ(Linear Ion Trap)質量分析計に接続されたアジレント(Agilent)1100シリーズHPLCシステムを用いたESI−MSによって、サンプルを分析した。したがって、ヴィダック(Vydac)214TP C4 5uカラム(150mm×2.1mm)を用いて6μLのサンプルが注入および分離され、5分間の20%の溶剤Bから始めて、その後14minにわたる最大90%の溶剤Bの勾配(流速210μL/min)が続き、ここで0.1%TFAの水溶液を溶剤A、0.1%TFAのアセトニトリル溶液を溶剤Bとした。カラムを90%の溶剤Bによって2分間洗浄した後、1minのうちに溶剤Aの濃度を80%に増やし、カラムをさらに5分間洗浄した。完全な実験の間、700m/zから2000m/zの質量範囲を走査し、MagTranおよびmMass(バージョン5.5.0)ソフトウェアによって生データをデコンボリューションおよび分析した。
ESI−MS/MS測定のために、サンプルを変性させてSDS−PAGEによって分離した後、クーマシーブリリアントブルーで染色し、A.シェフチェンコ(Shevchenko)、H.トマス(Tomas)、J.ハブリス(Havlis)、J.V.オルセン(Olsen)、M.マン(Mann)、ネイチャー・プロトコルズ(Nat.Protoc.)2006、1、2856〜2860に記載される標準的なトリプシンインゲル消化プロトコルに従って調製した。その後、サンプルを解凍し、20μLの0.1%TFA水溶液に溶解し、室温にて15min超音波処理し、分析の直前に15000×gで1min遠心分離した。3μLのサンプルをプレカラムカートリッジにロードし、0.1%TFA水溶液を溶出剤として用いて30μL/minの流速で5min脱塩した。分析全体の間に、サンプルをプレカラムからナノHPLCカラムに逆流させた。溶出剤Aとして0.1%ギ酸水溶液を、溶出剤Bとして0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液を用い、かつ40℃のカラム温度を用いた、5%Bから始まって35min後(流速300nL/min)に30%Bの最終組成となる勾配を用いて溶出を行った。溶剤Bのパーセンテージを5minのうちに60%に、追加の5minのうちに95%に増加し、カラムをさらに5min洗浄し、システムの出発条件および平衡に14min流し戻すことによって、ナノHPLCカラムを洗浄した。完全な勾配サイクルの間に、MSおよびMS/MS分析に対する典型的なTOP10ショットガンプロテオミクス法を用いた。全走査MS実験に対して、m/z300から1650の質量範囲を70000の解像度で走査した。MS/MS実験の後に、最も強い少なくとも2倍の荷電イオンの解像度17500を伴う、最大10の高エネルギ衝突解離(HCD:high energy collision dissociation)MS/MS走査を行った。コックス(Cox)、M.マン(Mann)、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat.Biotechnol.)2008、26、1367〜1372に記載されるMaxQuantを用いて、データ評価を行った。偽発見率の決定のためのデコイデータベースを用いて、ペプチドおよびタンパク質レベルに対する1%の偽発見率を用いて、Akt1配列および混入データベースに対してスペクトルを検索した。データベース検索に対して、タンパク質のメチオニンの酸化およびN末端アセチル化、システインのカルバミドメチル化、ならびにシステインの人工的修飾を可変修飾として定めた。
細胞培養:
GIST−T1は、タカヒロ・タグチ(Takahiro Taguchi)(高知大学(Kochi University)、高知(Kochi)、日本(Japan))によって、H.ナカタニ(Nakatani)、M.コバヤシ(Kobayashi)、T.ジン(Jin)、T.タグチ(Taguchi)、T.スギモト(Sugimoto)、T.ナカノ(Nakano)、S.ハマダ(Hamada)、K.アラキ(Araki)、キャンサー・サイエンス(Cancer Sci.)2005、96、116〜119に記載されるとおりに、KITエキソン11の57bp欠失を含むヒト未処置転移性GISTから確立され、DMEM高グルコース培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、ドイツ)に10%FBS(バイオクロム(Biochrom)、ベルリン(Berlin)、ドイツ)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PenStrep:penicillin/streptomycin)、および1%L−グルタミンを補った培地において、37℃および5%COの加湿インキュベーター内で培養された。
ヒト腺管乳癌細胞(BT474)およびヒト前立腺癌細胞(PC−3)をATCC(ベセスダ(Bethesda)、メリーランド(Maryland)、USA)から購入し、RPMI1640培地(ライフ・テクノロジーズ、ドイツ)に10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS(fetal calf serum);バイオクロム、ベルリン、ドイツ)を補った培地において培養し、37℃および5%COの加湿インキュベーターにおいて維持した(C200、ラボテクト・インキュベーター(Labotect Incubator)、ゲッティンゲン(Goettingen)、ドイツ)。
ウエスタンブロッティング:
GIST−T1細胞に対して、A.デュエンシング(Duensing)、F.メデイロス(Medeiros)、B.マッコナーティー(McConarty)、N.E.ジョセフ(Joseph)、D.パニグラヒー(Panigrahy)、S.シンガー(Singer)、C.D.フレッチャー(Fletcher)、G.D.デメトリ(Demetri)、J.A.フレッチャー、オンコジーン(Oncogene)2004、23、3999〜4006に記載される標準的なプロトコルに従って、株細胞単層からタンパク質ライセートを調製した。バイオ・ラッドタンパク質アッセイ(Bio−Rad Protein Assay)(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories)、ハーキュリーズ(Hercules)、CA)によって、タンパク質濃度を定めた。B.P.ルビン(Rubin)、S.シンガー、C.ツァオ(Tsao)、A.デュエンシング、M.L.ルクス(Lux)、R.ルイズ(Ruiz)、M.K.ヒバード(Hibbard)、C.J.チェン(Chen)、S.シャオ(Xiao)、D.A.ツベソン(Tuveson)、G.D.デメトリ、C.D.フレッチャー、J.A.フレッチャー、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)2001、61、8118〜8121に記載されるとおりに、電気泳動およびイムノブロッティングを行った。FUJI LAS3000システムとともにサイエンス・ラボ(Science Lab)2001 ImageGauge 4.0ソフトウェア(フジフィルム・メディアル・システムズ(Fujifilm Medial Systems)、スタンフォード(Stamford)CT、USA)を用いて、化学ルミネセンスによって可視化されるタンパク質発現およびリン酸化の変化を捕捉および定量化した。
62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、2%(w/v)SDS、10%(v/v)グリセロール、80mM DTT、および0.01%(w/v)ブロモフェノールブルーの中で、BT474およびPC−3細胞を95℃にて10min溶解した(100μLの溶解緩衝剤当り350.000細胞)。SDS−PAGEによってタンパク質を分離し、製造者のマニュアル(B44、バイオメトラ(Biometra)、ゲッティンゲン、ドイツ)に従うファストブロット(Fastblot)を用いてPVDF膜(ロス(Roth)、カールスルーエ(Karlsruhe)、ドイツ)にブロットした。5%(w/v)脱脂粉乳によるブロッキングの後、膜をそれぞれの一次抗体(β−アクチンに対して1:20.000、その他すべての抗体に対して1:1000)とともに4℃にて一晩インキュベートした。洗浄後、膜を二次抗体(抗IgG−HRP 1:2000、CST、フランクフルト(Frankfurt)、ドイツ)とともに室温にて1hインキュベートし、再び洗浄し、FUSIONソロ(Solo)(ペクラボ(peqlab)、エアランゲン(Erlangen)、ドイツ)および製造者のプロトコル(GEヘルスケア/アマシャム・バイオサイエンシズ(GE Healthcare/Amersham−Biosciences)、フライブルク(Freiburg)、ドイツ)に従う適切なECLプライム(Prime)ウエスタンブロッティング検出試薬を用いて、化学ルミネセンスイメージングによってモニタした。
抗体:
Akt、ホスホ−Akt(Thr308 & Ser473)、GSK−3β、ホスホ−GSK−3β(Ser9)、p42/44マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK:mitogen−activated protein kinase)、ホスホ−p44/42MAPK(Thr202/Tyr204)、S6リボソームタンパク質、ホスホ−S6リボソームタンパク質(Ser235/236)、4E−BP1,ホスホ−4E−BP1(Ser65)に対して特異的なウサギ抗体、ならびにHRP結合抗ウサギおよび抗マウス二次抗体を、セル・シグナリング(Cell Signaling)(フランクフルト、ドイツ;ビバリー(Beverly)、MA)より購入した。マウス抗β−アクチン抗体は、シグマアルドリッチ(ダイゼンホーフェン(Deisenhofen)、ドイツ;セントルイス(St.Louis)、MO)より得られた。KITおよびホスホ−KIT(Tyr703)に対するウサギポリクローナル抗体は、それぞれDAKO(カーピンテリア(Carpinteria)、CA)およびセル・シグナリング(ビバリー、MA)からのものであった。
<実施例5>
キナーゼにおける界面蛍光ラベル(iFLiK:interface Fluorescent Labels in Kinases)システムを用いたAktキナーゼ阻害の動力学的分析
蛍光ラベルした全長Akt1に関する解離速度を定めるために、キナーゼにおける界面蛍光ラベル(iFLiK)システムを用いて、式(1a)、(1b)、(2a)および(2b)に従う化合物に動力学的分析を受けさせた。iFLiK調査は、0.1nMから12.5μΜの範囲の濃度を用いて、「生化学的アッセイ」において説明されるとおりに行われた。さらに式(1a)、(1b)、(2a)および(2b)の化合物に対して、比較のために公知のアロステリックAkt阻害剤MK−2206(セレックケム(Selleckchem))およびATP競合的阻害剤GSK690693(セレックケム)を用いた。フルオロフォアラベル組み換えAkt1の最終濃度は200nMであった。
図3は、化合物の結合分析の結果を示す。図3から分かるとおり、式(1a)および(2a)に従う化合物は、MK−2206と類似の結合特徴を示した。しかし式(2a)の化合物は、蛍光ラベルAkt1に対して式(1a)の化合物よりも低い親和性を示した。一方、式(1b)および(2b)に従う化合物は、類似の親和性で突然変異全長Akt1に結合した。
次の表1は、式(1a)、(1b)、(2a)および(2b)に従う化合物ならびにAkt阻害剤MK−2206およびGSK690693に対する最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K)を示す。
表1:最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K):
Figure 2018516976
n.r.=100μMまで応答なし(no response)
この結果は、本発明の式(1a)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体および参照阻害剤MK−2206に対して類似の結合親和性を示した(それぞれ58±8nMおよび69±13nM)。式(2a)に従う化合物は、Akt1に対して有意に低い結合親和性を示した(795±176nM)。しかし、式(1b)および(2b)に従う対応物は、類似のK値を有した(それぞれ62±12nMおよび797±180nM)。これらの結果は、これらの調査に用いられた全長Aktタンパク質が、両方のAループシステインを含むすべての溶剤に露出するシステインをセリンに置換することによって共有結合形成を防ぐことによる部位特異的フルオロフォアラベリングのための突然変異を起こしているという事実と一致した。
これらの結果は、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が、イミダゾ−1,2−ピリジンコアを有する比較例3および4の式(2a)および(2b)の化合物よりもかなり良好な最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K)を示すことを示す。
加えて、式(28)、(29)、(30)、(31)、(32)および(33)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体にも、iFLiKシステムを用いた動力学的分析を受けさせた。式(27)の化合物は下に与えた構造を有する。
Figure 2018516976
これは式(32)の化合物に類似しているが、アルケニル基を有さないためにAktと共有結合を形成できない。
次の表2は、式(28)、(29)、(30)、(31)、(32)および(33)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K)を示す。
表2:最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K):
Figure 2018516976
これらの結果は、式(28)、(29)、(30)、(31)、(32)および(33)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体もAktの有用な阻害剤であり、特に式(30)および(32)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が良好な最大半量阻害濃度(IC50)および解離定数(K)を示したことを示す。
<実施例6>
活性に基づく調査を用いた動力学的分析
活性化全長wtAkt1(ミリポア(Millipore))を使用した活性に基づく調査において、マイケル受容体として機能する反応性アルケニル基の影響の可能性をさらに評価し、阻害力価をさらに評価した。実施例5と同様に、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体ならびに式(1b)、(2a)および(2b)の化合物、ならびに公知のアロステリックAkt阻害剤MK−2206およびATP競合的阻害剤GSK690693を比較のために用いた。0.001nMから12.5μΜの範囲の濃度を用いた。組み換えAkt1の最終濃度は120pMであった。
図4は、活性に基づくスクリーニングの結果を示す。図4から分かるとおり、アルケニル基を含む式(1a)および(2a)の化合物は、全長wtAkt1に対してそれぞれそれらの対応物(1b)および(2b)よりも高い阻害力価を示した。特に、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、参照阻害剤GSK690693(ATP競合的阻害剤)およびMK−2206(アロステリック、PHドメイン依存性阻害剤)よりも強力にAkt1を阻害した。
式(2a)の化合物は、参照阻害剤MK−2206およびGSK690693に比べて穏やかにAktキナーゼ活性を阻害したが(それぞれ372±48nM対7±1nMおよび2±1nM)、式(1a)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体はnM以下の最大半量阻害濃度を示した(0.2±0.1nM)。これに対し、Akt1の最大半量阻害を誘発するために、それぞれ10倍および4倍高い濃度の式(1b)および(2b)の化合物が必要であった。このことは、それらの力価が高くなった理由として、式(1a)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体および式(2a)の化合物によるAktの共有結合修飾を示唆する。
<実施例7>
時間依存的な活性に基づくスクリーニング
1×10−4nMから12.5μMの範囲の濃度の式(1a)に従う化合物と、1×10−3nMから12.5μMの範囲の濃度の式(1b)に従う化合物およびアロステリックAkt阻害剤MK−2206とを、活性化全長wtAkt1とともにそれぞれ10、30、60、または300分間インキュベートし、一方で酵素および停止反応の持続時間は一定に保った。組み換えAkt1の最終濃度は120pMであった。
図5は、時間依存的な活性に基づくスクリーニングの結果を示す。図5aから分かるとおり、式(1a)の化合物は、共有結合モードの作用を示す時間依存的用量応答曲線を示す。図5bおよび図5cにそれぞれ示されるとおり、MK−2206および式(1b)の化合物に対する違いは観察されず、したがって可逆的な結合機構および動的平衡結合が示された。
これらの時間依存的IC50の決定はさらに、式(1a)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体に対する共有結合モードの作用を示した。
<実施例8>
inact/Kの決定による動力学的特徴付け
式(1a)および(2a)に従う化合物を、1分から120分の範囲の期間だけ活性化全長wtAkt1(ミリポア)とともにインキュベートし、一方で酵素および停止反応の持続時間は一定に保った。算出されたIC50値をインキュベーション時間に対してプロットし、上述のとおりにkinactおよびKを定めるために文献に記載されるとおりにデータを適合させた。
図6は、図6aにおいては式(1a)、図6bにおいては(2a)に従う化合物に対するインキュベーション時間に対してプロットされたIC50値を示す。3回の独立した測定から得られた代表的な結果が示されており、3つ組の測定値からkinact、Kおよびkinact/Kに対する平均±s.d.を算出した。kinact/Kは、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体に対して3.29±0.40μΜ−1−1、式(2a)に従う化合物に対して0.0023±0.0003μΜ−1−1と算出された。
inact/Kの決定による化合物の動力学的特徴付けは、親和性および共有結合複合体形成の両方に関して、式(2a)の化合物よりも式(1a)の化合物に対して有意に向上した阻害プロファイルを示した。
<実施例9>
ESI−MSを用いたAkt1に対する結合特性の決定
「質量分析」において説明したとおり、Akt1に対するそれぞれの結合特性を調査するためにESI−MSを用いた。質量分析の結果は、組み換え野生型Akt1を式(1a)および(2a)に従う化合物で処理した結果、DMSOで処理した対照Akt1に比べて、それぞれ587Daおよび572Daの対応する単一ラベルAkt1と同等の質量増加がもたらされることを示した。これらの結果は、活性に基づく調査において観察された傾向と相関する、予測される共有結合モードをさらに実証するものである。
<実施例10>
ESI−MS/MS分析を用いたAkt1に対する結合特性の決定
「質量分析」において説明したとおり、式(1a)および(2a)に従う化合物で処理したAktのトリプシン消化後にESI−MS/MS分析を用いて、Akt1に対する結合をさらに定めた。
全長wtAkt1をSf9昆虫細胞内で発現し、AKTAピュアFPLCシステムによって精製した。精製タンパク質を、2倍モル濃度過剰の式(1a)および(2a)に従う化合物とともにそれぞれインキュベートし、標準的なプロトコルに従うSDS−PAGEの後にトリプシンで消化した。式(1a)および(2a)に従う化合物の両方によって修飾されたCys296およびCys310を含有するペプチドフラグメントを、配列カバレッジ>90%によって識別した。このことは、式(1a)および(2a)に従う化合物がCys296およびCys310においてAkt1と共有結合することを支持するものである。
動力学的分析は、本発明に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が、Aktキナーゼに対する有望な生化学的阻害力価を提供することを示す。さらに質量分析は、式(1a)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が、Cys296およびCys310においてAktをさらに共有結合的に修飾するAktキナーゼのアロステリック阻害剤として作用することを示した。よって、アルケニル基が全長Aktの酵素的に不活性な立体構造を安定化すると考えられる。
<実施例11>
Aktキナーゼに対する式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の選択性の決定
本発明に従う式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体に対して、a)AGCキナーゼファミリーのメンバー、b)PHドメインを特徴とするキナーゼ、および/またはc)活性化ループにシステインを含むキナーゼに焦点を合わせて、類似の特徴を有する他のプロテインキナーゼを超えるAkt1に対する選択性を調べた。これらの基準に適合する100の異なるプロテインキナーゼを評価した。
1μMの化合物濃度において、100の異なるプロテインキナーゼのパネルに対して式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体をスクリーニングした。測定は2つ組で行われ、SelectScreen(登録商標)キナーゼ・プロファイリング・サービシズ(Kinase Profiling Services)(ライフ・テクノロジーズ)の活性に基づくZ’LYTE(登録商標)キナーゼアッセイを用いて、各個々のキナーゼの特に明白なATP Kにおいて行われた。図7は、プロファイリングデータの表を示す。示されるデータは、評価されるキナーゼに対する2回の独立した測定の平均%阻害を示す。
図7から分かるとおり、キナーゼのパネル内で、Aktアイソフォーム1、2および3のみが、1μMの濃度の式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体においてそれぞれ98%、96%、および83%阻害によって有意に対処された。残り97のキナーゼは40%未満しか阻害されず、キナーゼMAP4K5が37%阻害によって4位に順位付けされた。
結論として、本発明の化合物は、高い配列および構造的相同性を示すキナーゼに影響することなく、Aktアイソフォームを排他的に標的とする優れた選択性プロファイルを示した。
<実施例12>
癌細胞におけるAkt阻害の決定
前立腺癌(PC3)、乳癌(BT474)、および消化管間葉性腫瘍(GIST−T1)株細胞を用いた細胞の調査において、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体によるAktキナーゼの阻害をさらに調査した。
これらの株細胞は、PI3K/Akt経路に遺伝学的病変(PC3:PTEN−/−、BT474:PI3K mut、HER2+;GIST T1:c−KIT mut)を有し、基礎ホスホ−Aktレベルに相違を示す。これらの株細胞をウエスタンブロット分析に対するモデル系として使用して、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の細胞侵入効果と、細胞Akt1および下流のGSK3βリン酸化状態に対するその影響との両方を調査した。細胞培養、ウエスタンブロッティングは上述と同様に行った。
前立腺癌(PC3)および乳癌(BT474)細胞を、0.01μΜ、0.1μΜ、01μΜ、および10μΜの濃度の式(1a)の化合物および参照化合物としてのMK−2206のそれぞれとともに24時間インキュベートした。対照はジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)で処理した。
図8は、結果として得られた前立腺癌(PC3)および乳癌(BT474)細胞におけるAkt1およびリン酸化Akt1、ならびにGSK3βおよびリン酸化GSK3βのウエスタンブロットを示す。ロード対照としてβ−アクチンを用いた。図8から分かるとおり、ウエスタンブロットは、PC3およびBT474癌株細胞におけるThr308およびSer473の両方におけるpAkt1の感受性の用量依存的減少を示す。この結果は、式(1a)の共有結合−アロステリック阻害剤が、Akt1の発現レベルに影響することなく乳癌(BT474)および前立腺癌(PC−3)細胞において用量依存的態様でAkt1の脱リン酸化を引き起こすことを示す。これらの結果は、臨床的候補のMK2206と類似の式(1a)の化合物による処理の際にAkt1基質のGSK3βのリン酸化が減少することと相関した。
消化管間葉性腫瘍細胞(GIST−T1)細胞を、それぞれ0.001μΜ、0.005μΜ、0.01μΜ、0.05μΜ、および0.1μΜの濃度の式(1a)の化合物とともに24時間インキュベートした。参照化合物として1μΜ MK−2206、1μΜ GSK690693、および0.1μΜイマチニブを用いた。対照はジメチルスルホキシド(DMSO)で処理した。
図9は、結果として得られたKIT依存性GIST−T1細胞における定められたキナーゼのウエスタンブロットを示す。消化管間葉性腫瘍細胞(GIST−T1)は、恒常的に活性のKITに関する高い基礎pAkt1レベルを示す。KIT阻害に対する正の対照として、イマチニブを用いた。図9から分かるとおり、式(1a)の化合物による処理は、低いナノモル濃度における細胞pAkt1レベルを低減させ、これは下流の標的S6および4EBP1のリン酸化の減少と相関する。他の関連プロテインキナーゼc−KITおよびMAPK(Erk1/2)のリン酸化は、式(1a)の化合物による処理に影響されなかった。KITに対して、成熟グリコシル化形および未成熟形を表す2つのバンドがみられる。MAPKに関して、これらのバンドはErk1およびErk2に関する。
このウエスタンブロットは、式(1a)の化合物が癌細胞におけるAkt1リン酸化を損なうことを実証する。さらに、KIT依存性のGIST−T1細胞を用いて、この結果は細胞環境におけるAkt1に対する式(1a)の化合物の選択性を実証し、一方でたとえばc−KITおよびErk1/2などのさらなる発癌性プロテインキナーゼを残すことを示す。
前立腺癌、乳癌、および消化管間葉性腫瘍細胞における結果は、式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体が、さまざまな癌株細胞におけるAktの細胞透過性のエフェクターであることを実証する。
これらの観察は、特に異常に活性化されたAktを伴う腫瘍に対する共有結合的調節を行う抗癌薬の開発、およびさらなる医薬品化学アプローチに2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を用いるという見通しを導入する。
<実施例13>
Aktキナーゼ阻害の生化学的分析
野生型Akt1および癌関連突然変異体Akt1_E17Kの阻害に対する14の物質の阻害力価を実施例6で説明したのと同様に定め、ここでの実験設定の唯一の相違点は、一連の化合物希釈物の調製のために、手動調製の代わりにECHO520液体操作システム(Liquid Handling System)(ラボサイト社(Labcyte Corp.))を使用することであった。E17K突然変異を有する全長Akt1タンパク質は、バイオゾル(Biozol)から購入した。位置17のグルタミンのリジンによる置換は、プロテインキナーゼの過剰な活性化をもたらすだけでなく、参照分子MK−2206に対して示されるとおり、可逆的アロステリック阻害剤に対する抵抗性も伴う。しかし、ATP競合的Akt阻害剤、たとえばGDC−0068(セレックケム)などは、このAktの突然変異形に対する力価の低減を示さない。
次の表3は、野生型Akt1および突然変異体Akt1_E17Kに対する、式(1a)、(28)から(33)、(36)、(45)、(46)、(47)、(48)、(49)、および(50)に従う化合物、ならびにAkt阻害剤MK−2206およびGDC−0068の最大半量阻害濃度(IC50)を示す。
表3:野生型Akt1およびAkt1_E17Kに対する最大半量阻害濃度(IC50):
Figure 2018516976
表3にみられるとおり、共有結合−アロステリックAkt阻害剤についての阻害の減少は、可逆的アロステリック阻害剤よりも顕著ではなかった。したがって、本発明の化合物は抵抗性を克服して有効かつ選択的にAkt1_E17Kに対処するための新たな戦略を表すものかもしれない。
表1および表2と比べたときのIC50値の相違は、一連の化合物希釈物の調製のために用いた非接触の超音波液体操作システムECHO520(ラボサイト)の適用によって生じている。
<実施例14>
野生型Akt1および突然変異体Akt1_E17Kに対する動力学的パラメータ(K、kinact)の決定
化合物の動力学的特徴付けを実施例8で説明したのと同様に行い、ここでの実験設定の唯一の相違点は、一連の化合物希釈物の調製のために、手動調製の代わりにECHO520液体操作システム(ラボサイト社)を使用することであった。次の表4は、Akt1に対する式(1a)、(30)から(33)、(36)、(45)、および(46)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の動力学的パラメータ(K、kinact)を示す。
表4:活性化全長Akt1に対する共有結合阻害剤に対する動力学的パラメータK、kinact、およびkinact/K
Figure 2018516976
表4にみられるとおり、本発明の化合物の動力学的特徴付けは、可逆的な酵素−阻害剤複合体の形成(K)、ならびに反応性システイン296および310と、本発明の化合物の弾頭部分との間の共有結合の形成(kinact)における相違を明らかにした。式1a、30、32、33、および46の最も強力な阻害剤に対して、0.110〜0.134μΜ−1−1の範囲の類似の速度の不可逆的酵素不活性化が観察され、一方で解離定数(K)のより強く明白な相違を観察できた(1.0〜18.9nM)。よって、本発明の化合物の阻害効率は、不可逆的な付加物形成の速度よりも酵素へのリガンドの初期の可逆的結合の方により依存するようである。
図6と比べたときの動力学的パラメータK、kinact、およびkinact/K値の相違は、一連の化合物希釈物の調製のために用いた非接触の超音波液体操作システムECHO520(ラボサイト)の適用によって生じている。
加えて、表5は突然変異体Akt1_E17Kに対する式(1a)および(33)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の動力学的パラメータ(K、kinact)を示す。
表5:活性化全長突然変異体Akt1_E17Kに対する共有結合阻害剤に対する動力学的パラメータK、kinact、およびkinact/K
Figure 2018516976
表5にみられるとおり、式(1a)および(33)の2つの最も強力な阻害剤は、突然変異体Akt1−E17Kに対して(それぞれ0.129s−1および0.105s−1)野生型Akt1に対するもの(それぞれ0.116s−1および0.110−1)と類似の不活性化速度(kinact)を示す。しかし、突然変異体Akt1_E17Kタンパク質に対する親和性(K)の低減(それぞれ94nMおよび139nM)の結果、Akt1_E17Kに対する生化学的力価(IC50)の有意な損失がもたらされる。これらの結果は、可逆的阻害剤に対する力価のより顕著な損失とよく一致している。なぜなら、これらのリガンドは標的タンパク質に対するそれらの親和性のみに依存するからである。
<実施例15>
マウスモデルにおける薬物動態学的パラメータの評価
最大耐用量(MTD:maximum tolerated dose)および薬物動態学的(PK:pharmacokinetic)パラメータを定めるために、最良のIC50(1hプレインキュベーション時間において)ならびにAkt1に対する最高の親和性(K)および妥当な反応性(kinact)を示したリード化合物1aをマウスモデルにおいて評価した。したがって、増加する濃度の化合物1aをPBS/PEG200(60:40)に溶解したものを、RjOrl:SWISSマウス(ジャンビエル・ラブス(Janvier Labs))に腹腔内(i.p.)注射して、MTD20mg/kgにした。PKプロファイリングのために、CD1マウスをプローブ化合物1aによって、それぞれ2mg/kgを用いて静脈内(i.v.)処置、20mg/kgを用いて腹腔内(i.p.)処置、および20mg/kgを用いて経口(p.o.)処置した。5、15、45、および135分後に血液サンプルを集め、15000×g、4℃にて10分間の遠心分離によって血漿を分離した。血液の凝固を防ぐために、血漿にEDTAを加えた。特定の血漿サンプル中の化合物濃度を、LC−MS/MSによって次のとおりに定めた。
2.5μLブランクDMSOおよび内部標準(グリセオフルビン、1μM)を含有する80μLの氷冷アセトニトリルを20μlの血漿に加えた後、13000rpm(4℃)にて10min遠心分離することによって、サンプルおよびブランクを調製した。65μLの上清を65μLのLC−MSグレードの水で希釈した。サンプルをろ過して(ミリポアMSRLN0450親水性)、LC−MS測定を受けさせた。分析物ストック溶液(10mM、DMSO中)をDMSOで希釈して、次の濃度のDMSOストック溶液を得た。10、5、2.5、1、0.5、0.25、0.1、0.05、0.025、0.01、0.005、0.0025μΜ。2.5μLの対応するDMSOストック溶液を20μLのブランク血漿に加えた後、内部標準を含有する80μLの氷冷アセトニトリルを加えた。サンプルを13000rpmにて4℃で10min遠心分離した。65μLの上清を65μLのLC−MSグレードの水で希釈して、LC−MS分析を受けさせた。2.5μLのDMSOストック溶液(5、0.5、および0.05μΜ)を20μLの血漿に加えることによって、3つの異なるQC(n=3)の組を調製した。その後、サンプルを上述のとおりに取り扱った。島津(Shimadzu)LC20ADXR溶剤運搬ユニット(Solvent Delivery Unit)、島津SIL30ACMPオートサンプラー、およびABSciex Qtrap5500 LC−MS/MSシステムを用いて、すべてのサンプルを分析した。したがって、60℃にてアジレント・ポロシェル(Agilent Poroshell)C18、2.7μmカラム(2.1mm×50mm)を用いて2μLのサンプルが注入および分離され、0.3minの5%の溶剤Bから始めて、その後0.6minにわたる最大100%の溶剤Bの勾配(流速1mL/min)が続き、ここで0.1%ギ酸の水溶液を溶剤A、0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液を溶剤Bとした。Analyst 1.6.2ソフトウェア(サイエックス(Sciex))を用いてデータ評価を行った。
図10は、それぞれの濃度時間プロファイルを示す。図10から分かるとおり、濃度時間プロファイルは、注入の直後(i.v.、1.05μΜ)、45min後(i.p.、1.15μΜ)、および15min後(p.o.、0.62μΜ)に式(1a)の化合物の最大血漿濃度を示した。これらの知見は、良好な生物学的利用率(p.o.10.8%;またはi.p.47.7%)を示す。
<実施例16>
タンパク質X線結晶学
化合物の予測された結合モードの確認および可視化の両方のために、タンパク質X線結晶学を行った。したがって、式(1a)の化合物の存在下でAkt1を共結晶化し、得られた結晶をスイス・ライト・ソース(Swiss Light Source)(パウル・シェラー研究所(Paul Scherrer Institut)、フィリンゲン(Villingen))にて分析した。集められた回折データをXDSで処理し、プログラムスカラ(Scala)を用いて調整した。複合結晶構造を2.5Åの解像度まで精密にした。
図11は、化合物(1a)の存在下で共結晶化されたAkt1の、2.5Åの解像度まで精密にされた結晶構造を示す。図11は、Cys296の側鎖に対する式(1a)の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の共有結合形成を確証するものである。

Claims (15)

  1. 下に与えられた一般式(I)に従う2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルであって、
    Figure 2018516976
    ここで
    Aは、6から14の鎖長を有し、かつ少なくとも1つの5員環から10員環部分を含むリンカーであり、
    は、水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、
    、R、Rは、同じであるか、もしくは互いに独立に、水素、CN、CF、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/もしくはC−C−シクロアルキルを含む群より選択されるか、または
    とRとは、それらが付着する炭素原子の間で三重結合を形成し、
    は、水素、直鎖C−C−アルキル、分岐鎖C−C−アルキル、および/またはC−C−シクロアルキルを含む群より選択され、
    ここでR、R、R、R、Rのアルキルおよびシクロアルキル基は、O、Nおよび/もしくはSを含む群より選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含むか、ならびに/または1つもしくはそれ以上のハロゲンで置換されてもよい、2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  2. Aは以下に与えられる構造要素(A1)から(A12)を含む群より選択される、
    Figure 2018516976
    請求項1に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  3. およびRは同じであるか、または互いに独立に、水素および/またはメチルを含む群より選択され、好ましくは水素である、請求項1または2に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  4. 、RおよびRは水素である、先行する請求項のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  5. 前記2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、下に示される式(1a)、(28)、(29)、(30)、(31)、(32)、および/もしくは(33)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む群より選択される、
    Figure 2018516976
    先行する請求項のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  6. 前記2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体は、下に示される式(45)、(46)、(47)、(48)、(49)、および/もしくは(50)、ならびに/またはそのラセミ体、鏡像異性体、立体異性体、溶媒和物、水和物、および薬学的に許容可能な塩および/もしくはエステルを含む群より選択される、
    Figure 2018516976
    請求項1に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  7. 薬物または診断試薬として用いるための、請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  8. 癌、特に固形腫瘍の診断または処置に使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  9. 前記固形腫瘍は乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、甲状腺癌、肺癌、肝臓癌、膵癌、胃癌、黒色腫(皮膚癌)、リンパ腫、および神経膠腫を含む群より選択される、請求項8に記載の使用のための2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体。
  10. 特に癌の検出または診断に用いるため、特に固形腫瘍の検出または診断に用いるための、請求項1から76のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を含む診断用組成物。
  11. 請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を活性成分として含む、医薬組成物。
  12. 癌の処置、特に固形腫瘍の処置に用いるための、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 薬物または診断試薬の製造のため、特に癌の検出もしくは診断のための診断試薬または癌、特に固形腫瘍の処置のための薬物の製造のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体の使用。
  14. 癌または癌の素因を検出または診断する方法であって、前記方法は、対象から得られる細胞、組織、またはサンプルにおける、請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体と、Aktキナーゼとの結合を検出するステップを含む、方法。
  15. 癌、特に固形腫瘍を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の2,3−ジフェニル−1,6−ナフチリジン−5−オン誘導体を対象に投与するステップを含む、方法。
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