JP2018515674A - 塩基性第四級アンモニウム塩処理を含む、グリセリド油精製法 - Google Patents

塩基性第四級アンモニウム塩処理を含む、グリセリド油精製法 Download PDF

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Abstract

本発明は、(i)グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体と接触させて、処理されたグリセリド油を形成する工程、ここで第四級アンモニウム塩は、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオン、およびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンと、第四級アンモニウムカチオンとを含有し、(ii)処理されたグリセリド油を、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩から分離する工程、および(iii)処理されたグリセリド油を、分離工程後に、少なくとも1つのさらなる精製工程に供する工程を含む、グリセリド油を精製する方法に関する。本発明はまた、グリセリド油を加熱する際にクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または減少させるための、グリセリド油を塩基性第四級アンモニウム塩と接触させる使用に関する。

Description

本発明は、精製法の一部として、グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体で処理することを用いる、グリセリド油を精製する方法に関する。本発明はまた、グリセリド油を加熱する際にクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または減少させるための、グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩と接触させる使用に関する。
人間もしくは動物が消費するための、またはその他の家庭用途および商業用途(バイオディーゼルの製造を含む)のための、天然源から抽出可能なグリセリド油は数多くある。このようなグリセリド油は例えば、植物油、魚油、ならびに動物性の脂肪および油脂がある。通常、グリセリド油は使用前に精製に供する必要があるが、この精製は、特定の油および関連する水準、および抽出後のあらゆる汚染の性質に応じて、また例えば精製油の所望の官能特性に応じて、様々である。
例えばパーム油は、主にアブラヤシの果実から誘導される植物油であり、グリセリンでエステル化されている幾つかの脂肪酸(パルミチン酸およびオレイン酸を含む)から構成されている。パーム油には多様な用途があり、通常はバイオディーゼルにおける、また食品製造における、または食品添加剤としての使用と関連しており、その一方でパーム油は、化粧品および清掃用品における添加剤としても使用されることが判明している。生のパーム油は、ビタミンEを含有することで知られており、またカロテン(プロビタミンA活性と関連)が最も豊富な天然植物源の1つであり、これはパーム油を、抗酸化剤の供給源として使用することも考えている。
パーム油は、大量の高飽和脂肪を含有し、高い酸化安定性を有し、コレステロールがもともと低く、そのコストが低いこともあって食品産業では、特定の加工食品製品におけるトランス不飽和脂肪の代替物として、ますます使用されている。しかしながら、その他のグリセリド油と同様、食用にするためには、生のパーム油は、精製法を経て、望ましくない成分を除去しなければならない。生のパーム油は、グリセリンでエステル化されていないモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、カロテン、ステロール、また遊離脂肪酸(FFA)を含有する。FFAによって、油の分解、および油焼けの増加につながり、このためこれは、精製工程において、除去を望む複数の成分のうちの1つである。グリセリド油についてその他のあり得る汚染(その除去が極めて重要となっているもの)は、クロロプロパノールおよび/またはグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)の脂肪酸エステルである。
クロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルは、グリセリド油中、特に(例えば精製法の結果として)高温にさらされた精製油中に堆積することが判明している。消費に際して、クロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルは、胃腸管でリパーゼによって加水分解され、遊離クロロプロパノールおよびグリシドールを放出する。クロロプロパノールは、モノクロロプロパンジオール類の2−クロロ−1,3−プロパンジオール(2−MCPD)、および3−クロロ−1,2−プロパンジオール(3−MCPD)、ならびにジクロロプロパノール類の2,3−ジクロロ−1−プロパノール(2,3−DCP)、および1,3−ジクロロ−2−プロパノール(1,3−DCP)を包含する。
精製された食用グリセリド油の消費と関連した最も一般的なクロロプロパノールは、3−MCPDであり、これはイン・ビトロ(in vitro)の試験で、遺伝毒性的に発がん性があると判明している。その結果、食品添加物に関するFAO/WHOの合同専門家会議(JECFA)は2001年に、一日あたりの暫定最大許容摂取量(TDI)を、3−MCPDについては体重1kgあたり2μgと定めており、これは2006年における新たな研究の見直しでも保たれた。その他の遊離クロロプロパノールについてあり得る発がん性作用への調査も行われている(Food Chem Toxicol, 2013年8月、58: 467〜478)。
クロロプロパノールの脂肪酸エステルは、グリセリドから環状アシルオキソニウムイオンの形成を介して、塩化物イオンによる開環によって生成されると考えられており(Destaillats, F.; Craft, B. D.; Sandoz, L.; Nagy, K.; Food Addit. Contam. 2012b , 29 , 29〜37)、以下に示すように、式中Rは、脂肪酸のアルキル鎖であり、R1は、HまたはC(O)Rであり、1は2−MCPDエステルであり、2は3−MCPDエステルである。
Figure 2018515674
当初は、脱臭のためにストリッピング剤として使用される水が、塩化物の供給源をもたらし、これによってクロロプロパノール脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成を増大すると疑われた。しかしながら、そうではないことが明らかになり(Pudelら、Eur, J. Lipid Sci. Technol. 2011, 113, 368〜373)、その代わりに、クロロプロパノールの形成を可能にするためには塩素ドナーが、油中に油溶性の形態で存在しなければならいことが提唱された(Matthaeusら、Eur, J. Lipid Sci. Technol. 2011, 113, 380〜386)。
グリセリド油中の塩化物の無機供給源は通常、塩化鉄(III)(水処理における凝集剤)、KClまたは塩化アンモニウム(植物の生長を促進するために用いられる)、ならびに塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムである。その一方で、生のグリセリド油中に存在する有機塩素系化合物は、反応性の塩化化合物、例えば塩化水素(例えば熱分解の結果物として)に変換させることができ、これを前述のように、アシルグリセリンと反応させることができる。有機塩素系物質は、成熟の間に植物によって内生で製造されることがある(Matthaeus, B., Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2012, 59, 1333〜1334、Nagy, K.; Sandoz, L.; Craft, B. D.; Destaillats, F.; Food Addit. Contam. 2011, 28, 1492〜1500、および“Processing Contaminants in Edible Oils-MCPD and Glycidyl Esters”, AOCS Press, 2014, Chapter 1)。
国際生命科学研究機構(ILSI)の一連の欧州報告書(タイトル:“3-MCPD Esters in Food Products”、John Christian Larsen(2009年10月))は、3−MCPDエステル、および天然での、未精製の脂肪および油での、また精製された脂肪および油でのその汚染について、近年の意見の概観をもたらしている。そこには、化学・獣医学検査局(CVUA、シュトゥットガルト、ドイツ)によって行われた調査が報告されており、この調査は、3−MCPDエステルの残渣が、幾つかの天然の未精製の脂肪および油中に見られることを示している。その一方で大量の3−MCPDエステルが、精製されたほぼ全ての脂肪および油において見られた。
脱臭は、精製法で不可欠な工程とされているが、3−MCPDエステルの形成につながる。しかしながら、漂白、例えば漂白土による漂白の結果として、いくらかの形成が存在することも判明した。さらに、生の油を酸で前処理すること、脱ガムの一部として例えば塩化水素酸またはリン酸で前処理することもまた、3−MCPDエステル形成を増加させることが判明した。この調査によって、精製された植物油および脂肪(これらは3−MCPDレベルに従った調査の一部として試験された)を分類したところ、エステル結合性であることが判明し、以下にそれを示す:
・低レベル(0.5〜1.5mg/kg):菜種油、大豆油、ココナツ油、ヒマワリ油
・中レベル(1.5〜4mg/kg):紅花油、落花生油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、米ぬか油
・高レベル(>4mg/kg):水素化脂肪、パーム油、およびパーム油フラクション、固形の揚げ物油。
グリシドールの脂肪酸エステルも、精製されたグリセリド油中で検出されたことが報告されている。グリシジルエステル(GE)は、別の公知の汚染物質であり、これは国際がん研究機関(IARC)によって、「ヒトに対しておそらく発がん性がある(IARCグループ2A)」と分類されており、その形成は、例えば植物油の熱処理の間に、さらなる安全上の懸念を喚起している(IARC、2000年)。グリシジル脂肪酸エステルは、同じアシルオキソニウム中間体から誘導されると考えられており、この中間体から、3−MCPDおよび2−MCPDの脂肪酸エステルが形成される。3−MCPDおよび2−MCPDが、アシルオキソニウム上にある塩化物イオンの求核性攻撃によって形成される一方、グリシジルエステルは以下に示したように、ヒドロキシ基の分子間求核性攻撃によって形成される(Rは脂肪酸のアルキル鎖であり、R1=HまたはC(O)Rである)。
Figure 2018515674
これは、上記ILSI報告によって支持されており、そこには、生の油中に充分な量の塩化物イオンが存在しなければ、反応はグリシジル脂肪酸エステル形成によって終わると記載されている。それとは対照的に、上記CVUA調査で行われた分析条件(塩化ナトリウムの添加を含む)では、グリシドールがほぼ定量的に反応して、3−MCPDを形成することが報告されている。測定された結合性3−MCPDのかなりの量(10〜60%)は実際、分析自体の結果として形成されるグリシドールの脂肪酸エステルから誘導されることが、強く示唆されている。
グリシジル脂肪酸エステルは、主にジグリセリドから、例えば熱により促進される脂肪酸除去の結果として、誘導されると考えられている(Destaillats, F.; Craft, B. D.; Dubois, M.; Nagy, Food Chem. 2012a, 131, 1391〜1398)。
前述のように、グリセリド油におけるクロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルの優位性は、高温にさらされると、また精製と関連する他の工程条件では、かなり上昇する。通常、リン脂質含有グリセリド油、例えば生のパーム油は、水和可能な、および水和できない脂質成分、およびその他の不所望の物質を除去するために、FFAが除去される前に、リン酸水溶液および/またはクエン酸水溶液による脱ガムを経る。FFAは、官能特性および油安定性を改善するために除去される。慣用の工程における脱酸は、化学的な経路(中和)によって、強塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって(「化学的な精製」)、または物理的な経路によって、例えば水蒸気ストリッピングによって(「物理的な精製」)行われる。食用油の精製はまた通常、漂白(例えば漂白土または漂白粘土による)、および脱臭(これはFFAを除去するためにも使用できる)を含み、精製されたグリセリド油はその後、市販用途に適していると考えられる。精製法全体の一部として、クロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルまたはこれらの前駆体を食用グリセリド油から除去するために、従来技術では今日、幾つかの方法が提案されている。
国際公開第2011/009843号(WO 2011/009843)は、水蒸気ストリッピングの代わりに脱臭の間に植物油または脂肪を不活性ガス、例えば窒素でストリッピングすることによって、エステル結合性MCPDを除去するための方法を記載している。この方法は、140℃超の温度、かつ270℃未満の温度で行われるため、慣用のグリセリド油精製法に比して、著しいエネルギー節約は得られない。
Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2011, 113, 387〜392は、か焼したゼオライトおよび合成ケイ酸マグネシウム吸着剤を用いて、3−MCPD脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルを、パーム油から除去する方法を開示している。国際公開第2011/069028号(WO 2011/069028)はまた、油を水蒸気精製および脱臭する前に、吸着剤、例えばケイ酸マグネシウム、シリカゲル、および漂白粘土と接触させることによって、グリシジル脂肪酸エステルを植物油から除去する方法を開示している。吸着剤の使用による問題点には、中性油の損失があり得ること、および吸着剤の再利用という選択肢が無いことが含まれ、これは精製したグリセリド油を経済的に製造する可能性に対して、重大な影響をもたらし得る。
例えば米国特許第2,771,480号明細書(US 2,771,480)からは、FFA、着色性物質、ガム、およびフレーバー物質をグリセリド油から、イオン交換樹脂上にこれらの不純物を吸着させることによって除去するために、イオン交換樹脂を使用することも知られている。国際公開第2011/009841号(WO 2011/009841)は、イオン交換樹脂、例えばカルボキシメチルセルロースを脱臭工程の間に、MCPDエステル形成時に付随する選択的な結合種のため、またはそのエステル自体のために使用することを記載している。
1つの選択肢として、国際公開第2012/130747号(WO 2012/130747)は、生の植物油から塩化不純物を、極性溶媒溶液、例えば酸性化されたエタノール・水の溶液(これは植物油と非混和性である)による液−液抽出によって除去するための方法を記載している。極性溶媒相は廃棄され、油がさらなる精製を経る前に、抽出が続く。
極性溶媒による液・液抽出技術は、グリセリド油のための油処理として、例えばFFAの除去のために以前に開示されており、これは汚染物質の溶解性の相違、および特定の溶媒相への選択的な分別による油作用分離に基づき行われる。Meirellesらは、Recent Patents on Engineering 2007, 1, 95〜102で、植物油の脱酸へのこのようなアプローチについて概観をもたらしている。液・液抽出法は一般的に、室温で行うことができることに基づいて有利であると考えられており、これらは廃棄生成物を出さず、中性油損失が低いことが利点である。しかしながらMeirellesらは、液・液抽出法の実施との関連で著しい投資コストがかかること、および全体としての利点となるかどうかは疑わしいことを述べている。さらに、液・液抽出技術で使用される極性溶媒はしばしば、FFAに加えてモノグリセリドおよびジグリセリドも、油から除去する能力を有し、このことは望ましくないことがある。
価値の高い生成物をもたらすことができる一方で、精製法全体についてエネルギーの節約を最大化可能な、グリセリド油中でのクロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または減少させるための方法に対する需要が存在する。
本発明は、塩基性アニオンを含有する塩基性第四級アンモニウム塩が、有利なことにグリセリド油中でのクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または減少するために利用可能である(この処理は容易に、グリセリド油精製法に組み込むことができる)という、意想外の発見に基づく。
加えて、塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体によるグリセリド油の処理は、色素および臭気化合物(これは通常、別個の漂白工程で、高温(例えば240℃〜270℃)の脱臭工程で、それぞれ慣用の精製法の間に除去される)を少なくとも部分的に除去することが判明している。第四級アンモニウム塩を含有する液体による処理はまた、グリセリド油を少なくとも部分的に脱ガムすることが判明している。
塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体によるグリセリド油の処理によってまた、グリセリド油精製法の脱臭工程においてより低温および/またはより短い時間を用いることが可能になり、そもそも必要な場合には、より安価な脱ガムおよび/または漂白が必要となり得る。これにより、精製法と関連した、エネルギー必要量および材料コストの削減という利点が得られる。
よって第一の態様では、本発明は以下の工程:
(i)グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体と接触させて、処理されたグリセリド油を形成する工程、ここで第四級アンモニウム塩は、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオン、およびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンと、第四級アンモニウムカチオンとを含有し、
(ii)処理されたグリセリド油を、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩から分離する工程、および
(iii)処理されたグリセリド油を、分離工程後に、少なくとも1つのさらなる精製工程に供する工程、
を含む、グリセリドを精製する方法をもたらす。
ここで使用する「グリセリド油」という用語は、その主成分としてトリグリセリドを含有する油または脂肪を言う。トリグリセリド成分は例えば、グリセリド油の少なくとも50質量%であり得る。グリセリド油は、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドを含有することもできる。グリセリド油は好ましくは、天然供給源(例えば植物、動物または魚/甲殻類の供給源)から少なくとも部分的に得られ、食用であることも好ましい。グリセリド油は、植物油、魚油および動物性の油/脂肪を含み、これらは通常、その生の形態でリン脂質成分も含有する。
植物油は、全ての植物、ナッツおよび種の油を含む。本発明で使用可能な適切な植物油の例は、以下のものを含む:アサイーオイル、アーモンド油、ブナの実油、カシューナッツ油、ココナツ油、ナタネ油、トウモロコシ油、綿実油、グレープフルーツシードオイル、グレープシードオイル、ヘーゼルナッツ油、麻の実油、レモン油、マカデミア油、カラシ油、オリーブ油、オレンジ油、パーム油、ピーナツ油、ペカン油、松の実油、ピスタチオ油、ケシの実油、菜種油、米ぬか油、紅花油、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、クルミ油、および麦芽油である。ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、紅花油、大豆油、およびヒマワリ油から選択される植物油が好ましい。植物油がパーム油であるのが、最も好ましい。
適切な魚油は、脂っぽい魚または甲殻類(例えばオキアミ)の組織から誘導される油、および藻類から誘導される油を含む。適切な動物性の油/脂肪の例は、ブタ油(ラード)、アヒル油、ガチョウ油、獣脂およびバターである。
グリセリド油中に存在していてよいFFAは、モノ不飽和、ポリ不飽和、および飽和FFAを含む。不飽和FFAの例は、以下のものを含む:ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノレン酸、リノエライジン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸。飽和FFAの例は、以下のものを含む:カプリル酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキドン酸、ヘンエイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸。
本発明で使用されるグリセリド油は好ましくは、植物油である。グリセリド油は、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、紅花油、大豆油、およびヒマワリ油から選択される植物油であるのが、最も好ましい。 植物油がパーム油であるのが、最も好ましい。
ここで使用する「パーム油」という用語は、アブラヤシ属の系統から少なくとも部分的に誘導される油を含み、ヤシ属の一部を形成し、Elaeis guineensis(ギニアアブラヤシ)およびElaeis oleifera(アメリカアブラヤシ)の種、またはこれらの交雑種を含む。よってここで言うパーム油はまた、パーム核油も含む。本発明の方法に従って処理されるパーム油は、生であるか、または生ではない(少なくとも部分的に精製されている)。よって、ここで言うパーム油はまた、フラクション化されたパーム油、例えばパーム油ステアリンまたはパーム油オレインフラクションも含む。
ここでグリセリド油について使用する「生」という用語は、油抽出に続く精製工程を経ていないグリセリド油を意味することが意図されている。例えば、生のグリセリド油は、脱ガム、脱酸、脱ろう、漂白、脱色、または脱臭を経ていないであろう。ここでグリセリド油との関連で使用する「精製された」とは、1つ以上の精製工程、例えば脱ガム、脱酸、脱ろう、漂白、脱色、および/または脱臭を経たグリセリド油を意味することが意図されている。
ここで言う「クロロプロパノール」とは、1つまたは2つのヒドロキシ基を塩素で置換することによって、グリセロールから誘導されるクロロプロパノールに相当し、これは以下のものを含む:2−クロロ−1,3−プロパンジオール(2−MCPD)、3−クロロ−1,2−プロパンジオール(3−MCPD)、2,3−ジクロロ−1−プロパノール(2,3−DCP)、および1,3−ジクロロ−2−プロパノール(1,3−DCP)。ここで言うクロロプロパノールの脂肪酸エステルとは、クロロプロパノールと脂肪酸との、モノエステルまたはジエステルに相当する。ここで言うグリシドールの脂肪酸エステルは、グリシドールと脂肪酸とのエステルに相当する。
ここで、工程(ii)における「第四級アンモニウムカチオンを含有する塩」とは、工程(i)で接触させる第四級アンモニウム塩から、少なくとも工程(ii)で分離された塩中に存在する第四級アンモニウムカチオンによって誘導される塩を言うことが意図されている。幾つかの実施例において、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩はまた、アニオン交換を経た本来の第四級アンモニウム塩の結果物として予測されるように、塩化物アニオンも含有することができる。別の実施例では、グリセリド油はFFAを含有し、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩はまた、脂肪酸のアニオンも含有する。さらなる実施例において、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩は、工程(i)で接触させた第四級アンモニウム塩と同じアニオンを有する。言い換えると、工程(ii)で分離した塩は、工程(i)で接触させた塩と同じである。
ここで使用する「第四級アンモニウムカチオン」という用語は、正の電荷を有する少なくとも1つの窒素原子を有するカチオンを指すことが意図されており、その窒素原子は、炭素原子に対してのみ結合している。窒素原子は飽和していてよく、単結合によって4つの炭素原子に結合している。または窒素原子は不飽和であってよく、単結合によって2つの炭素原子に、そして二重結合によって第三の炭素原子に結合している。窒素原子が不飽和である場合、これは複素芳香族環の一部、例えばイミダゾリウムカチオンであり得る。窒素原子が飽和している場合、これは脂環式環の一部、例えばピロリジニウムまたはピペリジニウムのカチオンであり得る。窒素原子は好ましくは、4つの置換されたまたは非置換のC1〜C12ヒドロカルビル基に結合しており、この基は、正の電荷を有する窒素原子に結合されていない炭素原子にさらなる置換基を有することができる。「ヒドロカルビル基」という用語は、炭化水素から誘導される一価の基を言い、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基を含むことができる。
ここで言う第四級アンモニウム塩は、塩を含有する液体の形態でもたらされる。第四級アンモニウム塩は非揮発性であり、液体の一部として、イオン形態でのみ存在する。この液体は、適切な溶媒中の塩の溶液であり得る。適切な溶媒は、極性溶媒、例えば水性またはアルコール性の溶媒、例えば水、メタノールもしくはエタノール、またはこれらの混合物を含む。溶媒は、水であるのが好ましい。第四級アンモニウム塩は、イオン性液体であってよく、その場合、工程(i)で接触させた液体は、実質的にイオン性液体から成っていてよいか、またはイオン性液体と、1種以上の補助溶媒とを含有することができる。適切な補助溶媒は、極性溶媒、例えば水性またはアルコール性の補助溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、またはこれらの混合物を含む。
ここで使用するように「イオン性液体」という用語は、塩の溶融によって製造可能な液体を言い、このようにして製造した場合、イオンのみから成る。イオン性液体は、1種のカチオンと、1種のアニオンとを含有する均質な物質から形成されていてよい。またはイオン性液体は、1種より多くのカチオン、および/または1種より多くのアニオンから構成されていてよい。よってイオン性液体は、1種より多くのカチオンと、1種のアニオンとから構成されていてよい。イオン性液体はさらに、1種のカチオンと、1種以上のアニオンとから構成されていてよい。さらにイオン性液体は、1種のカチオンと、1種より多くのアニオンとから構成されていてよい。「イオン性液体」という用語は、高い融点を有する化合物と、低い融点(例えば室温、または室温未満)を有する化合物との両方を含む。イオン性液体は好ましくは、200℃未満、より好ましくは100℃未満、最も好ましくは30℃未満の融点を有する。
本発明に従って接触工程(i)で使用される第四級アンモニウム塩の第四級アンモニウムカチオンは好ましくは、
[N(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+
から選択され、上記式中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、C1〜C8アルキルから選択され、ここで1つ以上のRa、Rb、RcおよびRdは任意で、C1〜C4アルコキシ、C2〜C8アルコキシアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、−OH、−SH、−CO2eおよび−OC(O)Reから選択される1〜3個の基、例えば1〜3個の−OH基によって窒素原子と結合されていない炭素原子のところで置換されていてよく、ここでReは、C1〜C6アルキルである。
より好ましくは、第四級アンモニウムカチオンは、
[N(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+
から選択されており、上記式中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルを含むC1〜C4アルキルから選択され、ここでRa、Rb、RcまたはRdのうち少なくとも1つは、1つの−OH基によってそれぞれ置換されている。置換されたRa、Rb、RcまたはRdは好ましくは、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、または2−ヒドロキシ−2−メチルエチルである。
第四級アンモニウムカチオンは最も好ましくは、コリン:(CH33+CH2CH2OHである。
本発明の方法の接触工程(i)で使用される第四級アンモニウム塩は、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオン、およびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンも含有する。
本発明の1つの態様において、塩基性アニオンは、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、およびアルコキシドイオンから選択される。好ましいのは、炭酸水素イオン、アルキル炭酸イオンおよび炭酸イオンである。より好ましいのは、炭酸水素イオンである。
塩基性アニオンが、アルコキシドイオンまたはアルキル炭酸イオンから選択される場合、アルキル基は直鎖状または分枝鎖状であってよく、置換または非置換であり得る。1つの好ましい実施形態において、アルキル基は置換されていない。別の好ましい実施形態において、アルキル基は非分枝状である。より好ましい実施形態では、アルキル基は非置換であり、非分枝状である。アルキル基は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有することができる。よってアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、および/またはデシルから選択することができる。分枝鎖状アルキル基、例えばイソ−プロピル、イソ−ブチル、sec−ブチルおよび/またはtert−ブチルを使用することもできると理解されるだろう。特に好ましいのは、メチル、エチル、プロピル、およびブチルである。さらに好ましい実施形態においてアルキル基は、メチルおよびエチルから選択される。
本発明の態様において、塩基性アニオンは、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオンおよびリシン酸イオンから、好ましくはセリン酸イオン、リシン酸イオン、プロリン酸イオン、タウリン酸イオンおよびトレオニン酸イオンから、より好ましくはリシン酸イオン、プロリン酸イオンおよびセリン酸イオンから選択され、最も好ましくは、塩基性アニオンはリシン酸イオンである。
本発明の方法から直接得られるグリセリド油を、消費のために適切にするには、工程(i)で油と接触させるために使用される第四級アンモニウム塩が、また工程(ii)で分離される第四級アンモニウムカチオンを含有する塩もほとんど、または全く毒性がなく、かつ/または容易に、かつ処理した油から実質的に分離可能であるのが望ましいと評価されるだろう。コリンカチオンを含有する第四級アンモニウム塩は特に、本発明の方法による使用に適している。コリンは、B錯体ビタミンに属する水溶性の必須栄養素であり、アセチルコリンの前駆体であり、多くの生理学的機能に関係する。コリンは特に毒性が低く、生分解性に優れており、本発明の方法で特に有用な第四級アンモニウムカチオンを形成可能な天然成分として知られている。
よって、本発明の特に好ましい実施形態では、第四級アンモニウム塩は、重炭酸コリン:(CH33+CH2CH2OH HOCOO-、コリンアルキルカーボネート:(CH33+CH2CH2OH ROCOO-(ここでRはアルキル基である)、または水酸化コリン:(CH33+CH2CH2OH OH-から選択される。
セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオンおよびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンを含有する第四級アンモニウム塩もまた、これらのアミノ酸誘導体の毒性が特に低いため、本発明の方法に特に適している。
本発明の最も好ましい実施形態において第四級アンモニウム塩は、重炭酸コリン:(CH33+CH2CH2OH HOCOO-である。
接触工程(i)で使用される第四級アンモニウム塩、また工程(ii)で分離される第四級アンモニウムカチオンを含有する塩も好ましくは、油溶性が低く、非油相(例えば水相)へと優先的に隔離され、これによって処理された油からの除去が容易になる。より好ましくは、第四級アンモニウム塩は、油と非混和性である。油と非混和性であるとは、第四級アンモニウム塩で飽和したグリセリド油が、第四級アンモニウム塩を50mg/kg未満、好ましくは30mg/kg未満、より好ましくは20mg/kg未満、最も好ましくは10mg/kg未満、例えば5mg/kg未満、含有することを意味する。
第四級アンモニウム塩の溶解性はまた、第四級アンモニウム塩が水に不溶性または可溶性であるように、調整することもできる。水に不溶性とは、第四級アンモニウム塩が、50mg/kg未満、好ましくは30mg/kg未満、より好ましくは20mg/kg未満、最も好ましくは10mg/kg未満、例えば5mg/kg未満という、水への溶解性を有することを意味する。しかしながら好ましくは、第四級アンモニウム塩は、水と混和性である。
好ましい実施形態において、第四級アンモニウムカチオンは、直鎖状C12〜C18脂肪酸を有する融点が低い脂肪酸塩をもたらすように選択される。特に好ましい第四級アンモニウムカチオンは、100℃未満の融点を有するこのような脂肪酸を有する塩を形成する。このような塩は分離工程(ii)の間に、以下で論じる液・液分離技術によって慣用的に分離することができる。
適切には、本発明の方法の接触工程(i)は、80℃未満、好ましくは25〜65℃、より好ましくは35〜55℃、例えば40℃の温度で実施する。グリセリド油が室温で半固体の場合、第四級アンモニウム塩を含有する液体と接触させるために、グリセリド油が液状の形態であるように、高温が好ましいことが評価されるだろう。適切には、接触工程(i)を、0.1MPa〜10MPaの圧力で行う(1bar〜100bar)。
幾つかの実施形態では接触工程を、容器内でグリセリド油を、第四級アンモニウム塩を含有する液体と接触させることによって行うことができ、ここで生じる混合物は、例えば機械式撹拌器、超音波式撹拌器、電磁式撹拌器を用いて撹拌するか、または不活性ガスを混合物に通すことによって撹拌する。代替的に接触工程は、グリセリド油と、第四級アンモニウム塩を含有する液体との混合物を、スタチックミキサ(例えばSulzerミキサ、またはKenicsミキサ)に通過させることによって行うことができる。
適切には、第四級アンモニウム塩を含有する液体およびグリセリド油を、1:40から1:300の体積比で接触させることができる。接触工程は1分から60分、好ましくは2〜30分、より好ましくは5〜20分、最も好ましくは8〜15分、続けることができる。
油中に存在するFFAは、第四級アンモニウム塩と接触した際に中和されて、第四級アンモニウム脂肪酸塩を形成することができる。好ましい実施形態において、接触工程で使用される第四級アンモニウム塩の量は、油中に含有されるFFAのモル量と少なくとも化学量論的である。好ましくは、油中における第四級アンモニウム塩の、FFAに対するモル比は、1:1から10:1、より好ましくは1:1から2:1である。グリセリド油中のFFA含分は、第四級アンモニウム塩による処理より前に、慣用の滴定技術(これは当業者であれば分かる)により特定することができる。例えば、フェノールフタレイン指示薬を用いた水酸化ナトリウムによる滴定は、グリセリド油のFFA含分を特定するために使用することができる。
接触工程(i)において、第四級アンモニウム塩を含有する液体を、グリセリド油と接触させる。この液体は、これまでに記載した適切な溶媒または溶媒混合物を含有することができ、これらの溶媒は第四級アンモニウム塩およびグリセリド油と相容性である。溶媒、または溶媒混合物は、第四級アンモニウム塩を含有する液体の粘度を所望の通りに修正するために使用することができる。代替的に、溶媒の使用によって、第四級アンモニウム塩の反応を促進させるのに特に適した液系反応の液状構造に所望の特性をもたらすことができる。前述のように、この目的に適した溶媒は、極性溶媒、例えば水、またはアルコール、例えばメタノールまたはエタノールを含む。
好ましい実施形態において、第四級アンモニウム塩を含有する液体は、溶媒を含有し、ここで好ましくは、この液体中における第四級アンモニウム塩の濃度が、15質量%〜90質量%である。溶媒は好ましくは水、例えば脱イオン水である。
第四級アンモニウム塩の塩基性アニオンが、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、および炭酸イオンから選択される場合、特に塩基性アニオンが、炭酸水素イオンである場合、第四級アンモニウム塩を含有する液体が、溶媒、好ましくは水を含有するのが特に好ましく、この液体中における第四級アンモニウム塩の濃度は、50質量%〜90質量%、好ましくは75質量%〜85質量%である。
第四級アンモニウム塩の塩基性アニオンが、水酸化物イオンおよびアルコキシドイオンから選択される場合、特に塩基性アニオンが、水酸化物イオンである場合、第四級アンモニウム塩を含有する液体が、溶媒、好ましくは水を含有するのが特に好ましく、この液体中における第四級アンモニウム塩の濃度は、15質量%〜60質量%、好ましくは40質量%〜50質量%である。
液体が溶媒を含有する上記実施形態において、さらなる補助溶媒も存在していてよい。例えば、水が溶媒である場合、アルコール性の補助溶媒も1種または複数種、存在していてもよい。上記実施形態において、液体中における補助溶媒の濃度は例えば、液体の1質量%〜40質量%、好ましくは1質量%〜10質量%であり得る。
本方法の工程(ii)における第四級アンモニウムカチオンを含有する塩の分離は、重力による分離(例えば沈殿ユニット)によって行うことができ、ここで、処理されたグリセリド油は一般的に、上相であり、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩は、あらゆる溶媒とともに、沈殿ユニットの下相に組み込まれる。第四級アンモニウムカチオンを含有する塩の分離はまた、例えばデカンタ、液体サイクロン、静電気式コアレッサー、遠心分離、または膜フィルタプレスによって達成することができる。これらの相は好ましくは、遠心分離を用いて分離する。接触および分離工程は、複数回繰り返して、例えば2〜4回行うことができる。
工程(ii)で分離された第四級アンモニウムカチオンを含有する塩が、接触工程(i)の後に沈殿した固体である場合、例えば第四級アンモニウム脂肪酸塩の形成に続いて、固体の塩は、ろ過または遠心分離によって油から分離することができる。代替的に、先に記載したように油相と非混和性の極性溶媒を、固体の塩を溶解するために添加することができ、これに続いて塩を含有する相を、前述の方法によって油から分離することができる。
接触および分離工程はまた、向流の反応カラムで一緒に行うこともできる。グリセリド油(以下、「油供給流」)は一般的に、向流反応カラムの底部、または底部の近くで導入され、第四級アンモニウム塩を含有する液体(以下、「第四級アンモニウム塩供給流」)は、向流反応カラムの頂部、または頂部の近くで導入される。処理された油相(以下、「生成油流」)は、カラムの頂部から抜き出され、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩を有する相、ならびに存在する場合には溶媒(以下、「二次流」)は、カラムの底部で、またはカラムの底部の近くで抜き出される。向流反応カラムが、二次流を集めるための液溜領域を有するのが好ましい。油供給流を、液溜領域のすぐ上方にある向流反応カラムに導入するのが好ましい。1つより多い向流反応カラム、連続的に配置された例えば2〜6個、好ましくは2〜3個のカラムを用いることができる。好ましくは、向流反応カラムは、規則充填材料または不規則充填材料、例えばガラスのラシヒリングで充填されており、これによって相境界表面が増大する。代替的に向流反応カラムは、複数のトレイを有することができる。
特に好ましい実施形態では、接触工程および分離工程を一緒に、接触式遠心分離器で行い、接触式遠心分離器は例えば、米国特許第4,959,158号明細書(US 4,959,158)、米国特許第5,571,070号明細書(US 5,571,070)、米国特許第5,591,340号明細書(US 5,591,340)、米国特許第5,762,800号明細書(US 5,762,800)、国際公開第99/12650号(WO 99/12650)、および国際公開第00/29120号(WO 00/29120)に記載されている。適切な接触式遠心分離器は、Costner Industries Nevada, Inc.によって供給されるものを含む。グリセリド油と、第四級アンモニウム塩を含有する液体は、接触式遠心分離器の環状の混合ゾーンへと、導入することができる。グリセリド油および第四級アンモニウム塩を含有する液体は好ましくは、別個の供給流として、環状の混合ゾーンに導入する。グリセリド油と、第四級アンモニウム塩を含有する液体は、環状の混合ゾーンで迅速に混合される。生成する混合物はそれから、分離ゾーンへと通過させ、その際に遠心分離力をこの混合物に適用して、油相と二次相とをきれいに分離させる。
複数の、好ましくは2〜6個、例えば2〜3個の接触式遠心分離器を、直列で使用するのが好ましい。好ましくは、油供給流を直列式の第一の接触式遠心分離器に導入し、その一方で、第四級アンモニウム塩供給流を含有する液体を、直列式の最後の接触式遠心分離器に導入し、これによって、例えばFFA含分または遊離塩化物アニオンの含分が次第に減少した油が、直列式の第一の接触式遠心分離器から最後の接触式遠心分離器へと通過し、その一方で、例えば第四級アンモニウムFFA塩の含分および/または第四級アンモニウム塩化物の含分が次第に増加した第四級アンモニウム塩の流れは、直列式の最後の接触式遠心分離器から、第一の接触式遠心分離器へと通過する。こうして、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩を有する相は、第一の接触式遠心分離器から除去され、処理された油相は、直列式の最後の接触式遠心分離器から除去される。
必要であれば、処理されたグリセリド中に存在する残りの第四級アンモニウム塩は、生成油流をシリカカラムに通過させ、残りの第四級アンモニウム塩をシリカカラム上に吸着させることによって、回収することができる。吸着された第四級アンモニウム塩はその後、第四級アンモニウム塩用の溶媒を用いてシリカカラムから洗い流すことができ、第四級アンモニウム塩は、減圧下で溶媒を飛ばすことによって回収することができる。
処理されたグリセリド油はまた、非油相液体(例えば第四級アンモニウムカチオンの塩を含有する液体)の微細な液滴を凝集させるためのコアレッサーフィルタを通過させることができ、これによって連続相がもたらされ、相分離が容易になる。コアレッサーフィルタは、グリセリド油よりも第四級アンモニウム塩を含有する液体で湿らせるのがより容易な材料製のろ過媒体を含有するのが好ましく、このようなフィルタ媒体は例えば、ガラス繊維製、またはセルロース製である。
幾つかの実施形態において、例えば第四級アンモニウム塩がイオン性液体である場合、第四級アンモニウム塩を含有する液体は、担持材料上にもたらすことができる。本発明で使用するために適切な担体は、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリカ、炭素、活性炭素、またはゼオライトから選択することができる。担体はシリカであるのが好ましい。担持形態は、適切な溶媒を含有するスラリーとしての油と接触させるためにもたらすことができ、ここで溶媒は、前述のものである。
担持された第四級アンモニウム塩を使用する場合、接触工程および分離工程はまた、担持された第四級アンモニウム塩で充填されたカラムに油を通過させることによって、一緒に行うこともできる(つまり充填床配置)。さらに、または代替的に、複数のプレートおよび/またはトレイを有する固定床配置を使用することができる。
第四級アンモニウム塩を担持材料上に担持するための手法は、その分野でよく知られている(例えば米国特許出願公開第2002/0169071号明細書(US 2002/0169071)、米国特許出願公開第2002/0198100号明細書(US 2002/0198100)、および米国特許出願公開第2008/0306319号明細書(US 2008/0306319))。第四級アンモニウム塩は通常、担持材料上に物理的に、または化学的に吸着されていてよいが、物理的に吸着されているのが好ましい。本発明の方法では、第四級アンモニウム塩は、10:1から1:10の第四級アンモニウム塩:担体の質量比で、好ましくは1:2から2:1の第四級アンモニウム塩:担体の質量比で、担体上に吸着されていてよい。
本発明に従って使用される第四級アンモニウム塩は、引き続く精製工程の結果物としての、グリセリド油におけるクロロプロパノールの脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成を防止可能、または減少可能であることが判明した。油と、第四級アンモニウム塩を含有する液体とを接触させた結果として、幾つかの反応機構があり得ると考えられ、これについてさらに詳細に、以下で論じる。
クロロプロパノール脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成は、主に以下のものによることが判明した:(i)グリセリド油のモノグリセリド含分およびジグリセリド含分、(ii)グリセリド油の塩化物含分、(iii)グリセリド油のプロトン活性、および(iv)精製の間、熱にさらされる程度。本発明に従って第四級アンモニウム塩によりグリセリド油を処理することは、油のモノグリセリド含分およびジグリセリド含分に影響を与えないことが判明しているため、減少されるのは塩化物含分とプロトン活性であると考えられ、これによって、精製法の間におけるクロロプロパノール脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成が、防止または低減される。
油中の第四級アンモニウム塩についてあり得る反応または相互作用に関して、特定の理論に縛られるつもりはないが、遊離塩化物イオンによるアニオン交換は、油の遊離塩化物含分を減らせる手段であると考えられる。その一方で、第四級アンモニウム塩の塩基性もまた、油のプロトン活性を低下させることができ、これによってグリシジル脂肪酸エステル形成も低減される。例えば、本発明に従って使用される第四級アンモニウム塩は、油中に存在するFFAを中和することが判明しており、接触工程(i)で使用される塩の第四級アンモニウムカチオンと、FFAのカルボン酸アニオンとを含有する塩を形成する。油中の第四級アンモニウム塩およびFFAとの酸に基づく反応の塩生成物が、塩化物アニオンおよび/または塩素含有化合物を錯体化させることがあり、処理された油から第四級アンモニウム脂肪酸塩を分離する際に、これらを油から除去することに貢献し得る。
よって幾つかの実施形態において、方法の工程(ii)で分離された第四級アンモニウムカチオンを含有する塩は、塩化物アニオンを含有することができる。工程(i)で接触させるグリセリド油がFFAを含有する実施形態では、工程(ii)で分離される第四級アンモニウム塩を含有する塩は、脂肪酸のアニオンを含有することができる。
本発明の方法は、グリセリド油中におけるクロロプロパノールの脂肪酸エステルの形成を防止、または低減させるために使用するのが好ましい。本発明の方法は、グリセリド油中における3−MCPDの脂肪酸エステルの形成を防止、または低減させるために使用するのが、最も好ましい。
本発明の方法に従えば、グリセリド油を、第四級アンモニウム塩を含有する液体で処理した後に、少なくとも1つのさらなる精製工程を行う。当業者であれば、食用油の加工で通常使用される様々な精製工程について知っており、それには例えば“Practical Guide to Vegetable Oil Processing”、2008, Monoj K. Gupta, AOCS Pressで、また“AOCS Lipid Library” website lipidlibrary.aocs.orgの食用油加工の部分で論じられた精製工程が含まれる。
少なくとも1つのさらなる精製工程(iii)は例えば、脱ガム、漂白、脱ろう、脱色および脱臭から選択することができる。通常は脱臭工程との関連で熱にさらすと、クロロプロパノールおよびグリシドールの脂肪酸エステルの形成が大幅に増大する原因につながることが知られているので、第四級アンモニウム塩処理は、脱臭に先行するのが好ましい。よって好ましい実施形態では、本発明の方法による少なくとも1つのさらなる精製工程は、脱臭を含む。
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる精製工程(iii)は、脱ガム、漂白、および脱臭の工程を有する。あるいは別の実施形態では、少なくとも1つのさらなる精製工程(iii)は脱臭工程を含み、この方法は脱ガムおよび/または漂白を含まない。よって、例示的な実施形態において、少なくとも1つのさらなる精製工程は、脱ガムおよび脱臭の工程を含むが、漂白は含まない。別の例示的な実施形態において、少なくとも1つのさらなる精製工程は、漂白および脱臭の工程を含むが、脱ガムの工程は含まない。
本発明に従って第四級アンモニウム塩により処理することのさらなる利点は、塩基性第四級アンモニウム塩が、色素および臭気化合物(通常は慣用の精製法の間に、高温(例えば240℃〜270℃)の脱臭工程で除去される)を少なくとも部分的に除去することも判明していることである。グリセリド油を第四級アンモニウム塩で処理することは、より低い温度および/またはより短い時間が、精製法全体の一部としての脱臭工程のために使用可能になることを意味する。これは、精製法のエネルギー必要量の削減という利点を有する。
脱ガムは通常、油をリン酸水溶液および/またはクエン酸水溶液と接触させて、水和性ホスファチドと非水和性ホスファチド(NHP)の双方を除去することを伴う。通常は、クエン酸またはリン酸を、50質量%の水溶液として添加する。この酸水溶液を、油の質量を基準として酸が約0.02%〜約0.30%の量、好ましくは油の質量を基準として酸が0.05%〜約0.10%の量で使用することが適切である。脱ガム工程は、約50〜110℃、好ましくは80〜100℃、例えば90℃の温度で行うことが適切である。脱ガム工程は5分〜60分、好ましくは15〜45分、より好ましくは20〜40分、例えば30分間、続くことが適切であり得る。酸処理に続く粘液の沈殿後に水相を分離し、それから、脱ガムされた油を通常は乾燥させる。脱ガムされた油の乾燥は、80〜110℃の温度で、適切な時間、例えば20〜40分、減圧下、例えば2〜3kPa(20〜30mbar)で行うのが適切である。
当業者であれば、ホスファチド含分が低い(例えば、リンの質量を基準として20ppm未満)グリセリド油のために、乾式脱ガム工程(水であまり希釈せずにリン酸またはクエン酸、例えば85%の酸溶液を加える)を使用可能なことを知っている。NHPは、リン酸と、カルシウムまたはマグネシウムの重硫酸塩とに変換され、これらは油から、後続の漂白工程で除去できる。ホスファチド、特にNHPが多い油のためには、過剰量の漂白土が必要となるため、乾式脱ガムはあまり適していないことが知られている。
漂白は、着色性物質(クロロフィルを含む)、残存する石鹸およびガム、痕跡量の金属および酸価生成物を減らすために、食用油の精製法に組み込まれる。漂白は通常、油を一定量(例えば油の物質を基準として0.5〜5質量%)の漂白粘土または漂白土と接触させることを伴う。漂白粘土または漂白土は通常、カルシウムモンモリロナイト、アタパルジャイト、およびセピオライトという三種の粘土鉱物のうち1種以上から構成される。適切な漂白粘土または漂白土(中性および酸性の活性粘土(例えばベントナイト)を含む)を、本発明に従って使用することができる。油は、漂白粘土と15〜45分、好ましくは20〜40分にわたり適切に接触させ、それから漂白土を、通常はろ過によって分離する。油は通常、漂白粘土または漂白土と、80℃〜125℃の温度、好ましくは90℃〜110℃の温度で接触させる。大気圧下で行われた接触(「湿式漂白」)の初期時間に続き、漂白工程の第二段階を減圧下で(「乾式漂白」)、例えば2〜3kPa(20〜30mbar)で行う。
慣用のグリセリド油精製法は通常、強塩基(例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)によるFFA中和工程を含む(いわゆる「化学的な精製」法に相当)。脱酸は代替的には、揮発性のFFAをその工程で除去する(いわゆる「物理的な精製」法)ことが保証されるように、脱臭パラメータを調節することによって達成できる。FFA中和工程(「化学的な精製」)の欠点は、油の不所望な鹸化、トリグリセリド含分の低下を伴うことであり、その一方でFFAからの石鹸形成は、乳化の結果として、中性油の実質的な損失につながり得る。本発明の精製法の一部をなす第四級アンモニウム塩処理は、油中のFFAを中和する際に効果的であり、化学的な精製法で使用される慣用の中和工程と完全に置き換えることができる。第四級アンモニウム塩による処理には有利なことに、より少ない鹸化につながるか、または鹸化が起こらない、特に重炭酸塩を使用する場合、中性油のより少ない鹸化につながるか、または中性油の鹸化が起こらないという利点がある。よって、本発明の好ましい実施形態において精製法は、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム)による中和工程を含まない。
当業者であれば分かるように、脱臭は、ストリッピング剤の量が、通常直接注入によって、減圧下で一定の時間、油を通過するストリップ法に相当し、これによって揮発性成分(例えばFFA、アルデヒド、ケトン、アルコール、炭化水素、トコフェロール、ステロール、およびフィトステロール)を蒸発させて、追い出す。ストリッピング剤は水蒸気であるのが好ましいが、その他のストリッピング剤、例えば窒素も使用できる。ストリッピング剤の量は、油の約0.5質量%〜約3質量%の量で適切に使用する。ストリッピングは、ストリッピング剤で除去する揮発性化合物を回収するための蒸留装置で行うことができる。
本発明による精製法のための脱臭の温度範囲は、160℃〜270℃であるのが適切である。ここで脱臭工程の温度について述べる場合、これは油の温度を指す。脱臭の圧力範囲は、0.1〜0.4kPa(1〜4mbar)、好ましくは0.2〜0.3kPa(2〜3mbar)であるのが適切である。脱臭のために適切な時間の長さは通常、30〜180分、例えば60〜120分、または60〜90分である。
当業者であれば、グリセリド油の外観と組成を分析することによって、例えば油のp−アニシジン値(AnV)を特定することによって、脱臭の適切な長さを決めることができる。油のp−アニシジン値は、酸化状態の測定であり、より具体的には、油中に含有される二次的な酸化生成物(これは主にアルデヒド、例えば2−アルケナールおよび2,4−ジエナールである)の水準に関する情報をもたらす。よってp−アニシジン値(AnV)はまた、脱臭工程によって除去すべき酸化生成物の水準の指標をもたらす。充分な脱臭は例えば、AOCS Official Method Cd 18-90によって特定して、例えばAnVが10未満、好ましくは5未満である場合に達成することができる。
さらに、または代替的に、油のアルデヒド成分およびケトン成分の量(これらは通常、原油の臭いと関連する)は、充分な脱臭が起こったかどうかを特定するために、測定することができる。生の、または悪臭のするパーム油に典型的な揮発性臭気アルデヒドおよびケトンの成分は、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、n−プロパナール、n−ブタナール、n−ペンタナール、n−ヘキサナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−ブテナール、3−メチルブタナール、2−メチルブタナール、2−ペンテナール、2−ヘキセナール、2E,4E−デカジエナール、2E,4Z−デカジエナール、2−ブタノン、2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2−ノナノンを含む。これらの成分はそれぞれ好ましくは、油1kgあたり3mg未満、より好ましくは油1kgあたり1mg未満、最も好ましくは油1kgあたり0.5mg未満の量で、脱臭された油中に個々に存在する。
アルデヒドおよびケトンの量は、クロマトグラフ法、例えばGC−TOFMSまたはGCxGC−TOFMSによって容易に特定できる。代替的には、アルデヒドおよびケトンの誘導は、クロマトグラフ分析を改善するために使用することができる。例えば、アルデヒドおよびケトンは、酸性条件下で2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)によって誘導できることが知られている。この試薬は、カルボン酸またはエステルとは反応しないため、この分析は、グリセリド油試料中にあるこのような成分の存在に影響されない。誘導体化に続きHPLC−UV分析によって、試料中に存在するアルデヒドおよびケトンの合計量を定量化することができる。
慣用の脱臭温度は通常、220℃超、例えば240℃〜270℃であり、脱臭は通常、60〜90分にわたって行われる。脱臭のために、本発明の方法に許容されるよりも低い慣用の温度、例えば160℃〜200℃を使用する場合、脱臭のための時間の長さは、充分な脱臭を保証するために延長することができ、それでも高温、例えば240℃〜270℃で短時間行われる慣用の脱臭よりもエネルギー消費が低い。
好ましい実施形態において、慣用の脱臭時間の長さと同じ、またはそれよりも短い時間を、慣用の脱臭温度よりも低い温度と組み合わせて使用する場合、それでも、先行する第四級アンモニウム塩処理の結果として、同程度の脱臭が達成される。別の好ましい実施形態では、本発明の精製法に含まれる脱臭工程のために慣用の温度、例えば240℃〜270℃を使用する場合、脱臭のための時間の長さは、慣用的に使用される長さに比べて短くすることができ、それでも、先行する第四級アンモニウム塩処理の結果として、同等の脱臭水準が達成される。
よって第四級アンモニウム塩処理にはまた、後続の脱臭工程の間にエネルギー消費を削減できるという利点もある。さらに、脱臭工程の間に熱にさらす温度または時間の長さのいずれかを減らすことによって、油の不所望の官能特性、または不所望の、有害であり得る副生成物の形成につながり得る副反応も、有利なことに減らすことができる。
本発明の方法に従った少なくとも1つのさらなる精製法が脱臭を含む場合、脱臭の温度は、好ましくは160℃〜270℃、より好ましくは160℃〜240℃である。さらなる好ましい実施形態において脱臭の温度は、160℃〜200℃、より好ましくは170℃〜190℃である。これらの温度で脱臭を行う時間の長さは好ましくは、30〜150分、より好ましくは45〜120分、最も好ましくは60〜90分である。
本発明の方法に従った第四級アンモニウム塩処理は適切には、油抽出に続く事前の精製工程を経ていない生のグリセリド油に適用することができる。代替的には、本発明による方法は、第四級アンモニウム塩による処理より前に、少なくとも1つのさらなる精製工程を経たグリセリド油に適用することができる。少なくとも1つのさらなる精製工程は好ましくは、漂白および/または脱ガムから選択される。
上述のように脱ガムは通常、油中のリン脂質を除去するために、クエン酸および/またはリン酸の添加を伴う。この工程により油のタンパク質活性が向上され、熱にさらされた際のグリシジル脂肪酸の形成が増大され得る。酸により活性化された漂白粘土または漂白土が、汚染物質、例えば塩化物アニオンの供給源になり得ることも知られており、例えば塩化水素酸が、酸による活性化のために使用されてきた。このように酸により活性化された漂白土または漂白粘土は、プロトン活性も上昇させることがあり、後に熱にさらされた際にグリシジル脂肪酸エステルの形成を、潜在的に上昇させる。
よって幾つかの実施形態では、脱ガムが、第四級アンモニウム塩処理に先行するのが好ましい。それと言うのも脱ガムにより、グリセリド油を酸にさらした後、第四級アンモニウム塩により減少させるべき油のプロトン活性がもたらされるからである。幾つかの実施形態では、特に塩化物アニオンの供給源を含有する材料を使用する場合、漂白が、第四級アンモニウム塩処理に先行するのが好ましい。それと言うのも、これによってこのような汚染物質が、第四級アンモニウム塩処理によって除去される機会がもたらされるからである。
有利には、本発明の方法の一部をなす第四級アンモニウム塩処理はまた、少なくとも部分的に油を脱ガムし、色素を除去することが可能であると判明しており、これは脱ガムおよび漂白の工程のスケールの程度を、例えば処理時間または原料の観点で下げることができることを意味する。前述のように、本発明の方法の一部をなす第四級アンモニウム塩処理は、化学的な精製法で使用される別個のFFA中和工程を不要にする。その一方、本発明の方法の一部をなす第四級アンモニウム塩処理は、脱臭工程におけるエネルギー消費を減少させることができる。
本発明に従って使用される塩基性第四級アンモニウム塩処理は、汚染物質を除去するためのイオン交換樹脂および限外濾過膜などの使用を不要にすることが意図されており、これはグリセリド油精製と関連する材料コストに大いに貢献し得る。よって好ましい実施形態では、ここに記載した精製法は、イオン交換樹脂または限外濾過膜によるグリセリド油の処理を含まない。
幾つかの実施形態において、接触工程(i)で使用される第四級アンモニウム塩は、(これらの塩が異なる場合)工程(ii)で分離される第四級アンモニウムカチオンを含有する塩から再生法によって再生して、必要に応じて、第四級アンモニウム塩を本発明による精製法に再利用することができる。再生法は例えば、アニオン交換工程またはカチオン交換工程を含み、先に記載した所望の塩基性アニオンを含有する第四級アンモニウム塩を得ることができる。
1つの実施形態では、コリン重炭酸塩をコリン脂肪酸塩から再生するための再生法は、以下の工程:
(a)コリン脂肪酸塩を、炭酸と接触させる工程、および
(b)コリン重炭酸塩を、工程(a)で形成されたFFAから分離する工程
を含む。
工程(a)は好ましくは、コリン脂肪酸塩を含有する水溶液を、CO2と接触させることによって(例えばCO2をバブリングして、水溶液に通すことによって)行う。
本発明はまた、油を加熱する際にグリセリド油中のクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または低減させるための、グリセリド油を、先に記載した塩基性第四級アンモニウム塩と接触させる使用に関する。この接触は、油が100℃を超える温度に加熱される前に、例えば100℃〜250℃の温度への加熱の前に行うのが好ましく、ここでグリセリド油中でのクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの実質的な形成が、通常は予測されるだろう。
塩基性第四級アンモニウム塩は、先に記載した塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体の形態で使用することができる。塩基性第四級アンモニウム塩は、グリセリド油中のクロロプロパノールの脂肪酸エステル形成を防止または低減するために使用するのが好ましい。第四級アンモニウム塩は、グリセリド油中の3−MCPDの脂肪酸エステル形成を防止または低減させるために使用するのが最も好ましい。第四級アンモニウム塩のアニオンおよびカチオンの性質、またグリセリド油の性質に関連する本発明の別の態様の好ましい実施形態は、本発明の態様に等しく当てはまる。例えば、グリセリド油がパーム油であり、第四級アンモニウム塩が、コリン重炭酸塩であるのが最も好ましい。
塩基性第四級アンモニウム塩処理のこの使用によって、食品を揚げるための使用により良好に適した処理された油が得られ、これによってクロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成が防止され、ここで油は、食品を揚げるために使用されるものである。
グリセリド油におけるMCPDの濃度を特定するための分析手法は、R.Weisshaar, “Determination of total 3-chloropropane-1,2-diol (3-MCPD) in edible oils by cleavage of MCPD esters with sodium methoxide”, Eur. J. Lipid Sci. Technol. (2008) 110, 183〜186に記載されている。ドイツ脂質科学会(DGF)の改訂標準法C−III 18(10)(ドイツ標準法 2010)も、MCPD、またはその脂肪酸エステルの水準を特定するための適切な手順を提供しており、またグリシドール、またはその脂肪酸エステルの存在を特定するための間接的な手法を提供している。クロロプロパノール、およびグリシドール、およびこれらの脂肪酸エステルの含分を特定するための直接的な手順は、J Am Oil Chem Soc. 2011年1月、88: 1〜14で報告されているように、液体クロマトグラフィー(飛行時間型質量分析法、LC−TOFMS)の使用を伴う。
先に記載した本発明の実施形態は、本発明のさらなる実施形態を形成するための他のあらゆる同等の実施形態と組み合わせることができる。
これから本発明を、以下の実施例によって説明する。
実施例
パーム油の酸価(mg KOH/油1g)、およびFFA含分(質量%)の一般的な特定法。
イソプロパノールを60ml含有するビーカーに、フェノールフタレイン0.5mlを加えた。この混合物を沸騰するまで加熱し、イソプロパノール中で0.02Mの水酸化カリウムを、弱いピンク色が約10秒間保たれるまで添加した。
ガラスのバイアルに、パーム油の試料を0.200g添加し、これを前述の熱いイソプロパノール溶液50mlに引き続き溶解させた。生じた溶液について、25mlのビュレットを用いて0.02Mの水酸化カリウム溶液とともに、0.1ml段階ごとに撹拌しながら、フェノールフタレイン指示薬の終点、すなわちピンク色が少なくとも30秒間保たれるまで、滴定した。
酸価(mg KOH/油1g)は引き続き、以下の式を用いて算出した:
56.1×N×V/m
上記式中、
56.1は、水酸化カリウムの分子量(g/mol)であり、
Vは、使用する水酸化カリウム溶液の体積(ml)であり、
Nは、水酸化カリウム溶液の規定度(mol/l)であり、
mは、パーム油試料の質量(g)である。
酸価を特定したら、FFA含分を導くことができる。本開示の目的のためのFFA含分は、FFAがパルミチン酸(分子量256g/mol)とオレイン酸(分子量282g/mol)との等量混合物であり、かつ平均分子量が269g/molであると仮定して、質量パーセンテージとして規定される。FFA含分が1質量%の油は、油1gあたりオレイン酸/パルミチン酸を0.01g含有し、オレイン酸/パルミチン酸の量は、3.171×10-5molに相当する。この量のオレイン酸/パルミチン酸を中和するのに必要となるKOHの量(すなわち酸価−AV)は、2.086mg/油1gと計算される(3.171×10-5×56.1)。よってFFA含分(質量%)の計算は、以下のような式となる:
質量%FFA=酸価×0.479
例1:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理
測定されたFFA含分が3.8質量%である生のパーム油(CPO)の試料1kgを、サーモスタット制御式水浴中で50℃に加熱した。それから、均質化したCPOを、2lの撹拌式タンク反応器(その内部で反応器の温度は、循環加熱油によって50℃に維持された)に加えた。それから、CPOのFFA含分に対するコリン重炭酸塩(Sigma-Aldrich UKによる、水中で80質量%のもの)の化学量論量を、1分あたり1〜2mlの速度で反応容器に導入した。この混合物を、機械的なオーバーヘッドスターラを用いて500min-1で1時間、撹拌した。その後、この混合物を4000min-1で3分間、遠心分離して、第四級アンモニウム脂肪酸塩を含有する相と、処理されたCPO相とを分離した。
分離された油相を滴定したところ、FFA含分は0.29質量%であることが判明した。さらなる質的なパラメータをCPOについて、および処理されたCPOについて特定したのだが、これにはジグリセリド含分、モノグリセリド含分、3−MCPD脂肪酸エステル(3−MCPD−FAエステル)含分、およびグリシジル脂肪酸エステル(GE−FAエステル)含分が含まれる。その結果は以下の表2に、使用した測定手法とともに示してある。
例2:生のパーム油の、慣用の物理的な精製
測定されたFFA含分が3.78質量%である例1で使用したのと同じCPOの試料を、以下の表1で規定した工業的に標準な条件を用いて脱ガム、漂白、および脱臭を伴う慣用の物理的な精製法により精製した。精製した油について質的なパラメータ(リンの値を含む)を特定した。その結果は以下の表2に、使用した測定手法とともに示してある。
Figure 2018515674
ここで、油精製処理の一部としての表1に記載の精製段階の使用について言及する場合、実験は実験室スケールの設備(例えば、撹拌装置、温度測定器および真空接続部を備える3つ首フラスコ)を用いて行った。表1に従った脱臭に関して、また以下の実施例で報告する二段階の脱臭に関しても、この工程は、水蒸気ストリッピングのために水を添加するためのDESO−ピストン、真空発生器、コンデンサ、温度計および加熱ジャケットを備える装置で行った。
例3:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、慣用の物理的精製
例1からの、第四級アンモニウム塩処理されたパーム油の試料を、先の表1で規定した条件を用いて脱ガム、漂白および脱臭にかけた。精製した油について質的なパラメータ(リンの値を含む)を特定した。その結果は以下の表2に、使用した測定手法とともに示してある。
例4:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、慣用の脱臭のみ
漂白工程および脱ガム工程無しで、例3を繰り返した。第四級アンモニウム塩処理し、脱臭した油について、質的なパラメータ(リンの値を含む)を特定した。その結果は以下の表2に、使用した測定手法とともに示してある。
Figure 2018515674
表2における結果は、本発明の精製法の一部としての、第四級アンモニウム塩処理の利点を説明している。例1(第四級アンモニウム塩処理された油)についての結果をCPOと比較すると、第四級アンモニウム塩処理がFFAを大量に取り除き、その一方で、油のモノグリセリド含分およびジグリセリド含分には、最小限の影響しかもたらさないことを表している。例3および4についての結果はまた、第四級アンモニウム塩処理に脱臭工程が続く場合に、油中で実質的に全てのFFAが除去されることを表している。
例2、3および4の結果を比較すると、引き続く物理的な精製の結果として、パーム油中でのクロロプロパノール脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成を防止または低減させるという、第四級アンモニウム塩処理の利点も説明される。例2では、脱ガム、漂白および脱臭を伴うCPOの慣用の物理的な精製に相応して、3−MCPD脂肪酸エステルの形成は、著しい(CPO中で0.2mg/kgから、精製油中で2.8mg/kgに増加)。グリシジル脂肪酸エステルの形成はまた、この慣用の精製法について、顕著である(CPO中で0.1mg/kgから、精製油中で23.9mg/kgに増加)。
対照的に、第四級アンモニウム塩処理を慣用の物理的な精製に組み込んだ場合(例3)、3−MCPD脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成は、慣用の高い脱臭温度(260℃)を使用しているにも拘わらず、著しく減少する(CPO中で0.2mg/kgから、精製油中で0.5mg/kgにしか増加しない)。例4では、第四級アンモニウム塩処理を用い、脱臭が続くが、脱ガム工程および漂白工程が介在しない。精製油中で、3−MCPD脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成における同様の減少も、この例について観察される。
例3では、第四級アンモニウム塩処理に、慣用の脱ガム、漂白、および脱臭工程が続く。それと比較して例2の慣用の方法は、第四級アンモニウム塩処理が無いという点で異なる。意外なことに、例3の油について観察されたリンの水準は、例2の水準よりも著しく低い(1.1mg/kgに比べて、0.5mg/kg)。このことは第四級アンモニウム塩処理が、油の脱ガムに貢献することを表している。例4では、第四級アンモニウム塩処理に、脱臭のみが続くが、脱ガム工程または漂白工程は一切介在しない。第四級アンモニウム塩処理単独では、例2と例4の油のリンの値を比較した場合、慣用の脱ガム工程と同程度に効果的ではないものの(それぞれ順に1.1mg/kg、および2.6mg/kg)、第四級アンモニウム塩処理単独では、それにも関わらず脱ガムの充分な水準をもたらすことができる。精製されたパーム油の場合における脱ガムの所望の水準は、5ppm以下のリンの値の低下に相当する。よって、2.6mg/kg(2.6ppm)の値は、典型的な数値内にうまく収まっている。このことは第四級アンモニウム塩処理が、脱ガム工程に取って代わることができることを表している。
例5:生のパーム油の、慣用の物理的な精製
測定されたFFA含分が3.97質量%であるCPOの試料を、先の表1で規定した条件を用いて脱ガム、漂白、および脱臭を伴う慣用の物理的な精製法により精製した。質的なパラメータは、油の精製前、および精製後に特定した。その結果は以下の表3に、使用した測定手法とともに示してある。精製油の官能試験は、KIN GmbH Lebensmittel Instituteで、色、味、外観、および臭いを、BVL L 00.90-6に記載された方法(Beuth-Verlagが管理するオンラインデータベースで公開:“Official Collection of Testing Methods according to § 64 LFGB, § 35 of the Draft Tobacco Regulation and pursuant to § 28b of the Genetic Engineering Act”)に従って判断する4人の試験パネリストによっても行った。試験者は、それぞれのパラメータについて1〜5(1/2=消費に不向き、3=充分、4=良好、5=優秀)というグレードで判断し、判断の平均値および中央値を、各パラメータについての最終的な結果として示した。通常、市販に受け入れられると考えられる油の試料のためには、各パラメータについて4または5の値が必要とされる。その結果は、以下の表4に記載されている。
例6:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、調整した脱臭
例5で使用したのと同じCPOの試料4kgを、サーモスタット制御式の水浴で50℃に加熱し、それから撹拌式タンク反応器(その内部で反応器の温度は、循環加熱油によって50℃に維持された)に加えた。それから、CPOのFFA含分に対するコリン重炭酸塩(Sigma-Aldrich UKによる、水中で80質量%のもの)の化学量論量を、1分あたり1〜2mlの速度で反応容器に導入した。この混合物を、機械的なオーバーヘッドスターラを用いて500min-1で1時間、撹拌した。その後、この混合物を4000min-1で3分間、遠心分離して、第四級アンモニウムFFA塩を含有する相と、処理されたパーム油相とを分離した。分離された油相を滴定したところ、FFA含分は0.05質量%であることが判明した。
それから、処理されたパーム油を二段階の脱臭に供した。第一段階は240℃の温度で10分間、第二段階は180℃の温度で120分間(慣用の脱臭温度よりも低い)であり、両方の段階は、0.2〜0.3kPa(2〜3mbar)で行った。脱ガム工程または漂白工程は、行わなかった。処理されたパーム油について質的なパラメータは、脱臭前および脱臭後に特定した。その結果は以下の表3に、使用した測定手法とともに示してある。第四級アンモニウム塩処理し、脱臭した油の官能試験もKIN GmbH Lebensmittel Instituteで、例5について記載したように行った。その結果は、以下の表4に記載されている。
例7:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、調整した脱臭
例6の二段階の脱臭を繰り返したのだが、第二の脱臭段階を180℃の温度ではなく、200℃で行った。
例8:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、調整した物理的精製
例6からの、第四級アンモニウム塩処理されたパーム油の試料を、先に表1に記載したように脱ガム工程および漂白工程に供し、それから例6の二段階の脱臭を行った。
例9:生のパーム油の第四級アンモニウム塩処理に続いて、調整した物理的精製
例8を繰り返したのだが、第二の脱臭段階を180℃の温度ではなく、200℃で行った。
Figure 2018515674
Figure 2018515674
表3および4における結果はさらに、本発明の精製法の一部としての、第四級アンモニウム塩処理の利点を説明している。表2で得られた結果と同様に表3は、第四級アンモニウム塩処理が、引き続いた物理的な精製の間に、パーム油中でクロロプロパノール脂肪酸エステルおよびグリシジル脂肪酸エステルの形成を実質的に減少させることが可能なことを示す。これは、例6〜9の油のクロロプロパノール脂肪酸エステル含分およびグリシジル脂肪酸エステル含分を、慣用の物理的な精製に相当する例5の油と比較することから明らかに分かる。
表3はまた、脱ガムおよび/または漂白工程も、脱臭後のグリシジル脂肪酸エステルの形成に対して著しい影響を与え得ることを示している。例えば、脱ガム工程および漂白工程が精製法の一部として含まれる場合(例8および9)、グリシジル脂肪酸エステルの含分は、これらの工程が含まれない精製法(例6および7)の場合よりも、ほぼ一桁高い。これは、これらの方法工程後の油のプロトン活性における変化の結果であり得る。よって、これらの工程が少なくとも一部、またはさらには完全に、第四級アンモニウム塩処理によって置き換えられる場合、グリシジル脂肪酸エステル形成における低減は、さらに強化されるだろう。代替的に、漂白工程および/または脱ガム工程は、これらの工程がグリシジル脂肪酸エステルの形成に対して有する否定的な影響を、引き続いた脱臭における高温処理より前に無くせるように、第四級アンモニウム塩による処理より前に行うことができる。
表4における結果は、第四級アンモニウム塩処理が、物理的な精製工程(脱ガムおよび漂白を含む)に組み込まれている場合、低温脱臭段階(例8および9)であっても、充分〜優秀という結果が得られることを示している。二段階の脱臭の第一の高温段階は、油の脱色を大部分、行うことを目的としている。第二段階における脱臭温度を200℃に下げることによって(例9)、精製油の臭いについて、一段階の高温脱臭を含む慣用の物理的な精製(例5)と比べた場合よりも低い点数が得られる。しかしながら意外なことに、第四級アンモニウム塩処理、脱ガムおよび漂白の後、二段階の脱臭の第二段階の温度をさらに180℃に下げた場合(例8)に、優れた官能試験の結果が得られた。よって、本発明の方法の一部をなす第四級アンモニウム塩処理は、脱臭温度を低下させる可能性をもたらして、精製法のエネルギー消費を低下させる一方でなおも、適切な嗅覚的品質を有する生成物をもたらす。
また第四級アンモニウム塩処理が、脱ガム工程および漂白工程に効果的に置き換えられる場合、油の官能的品質は、慣用の延長された高温脱臭工程が組み込まれていないと、表4における例6および7についての結果が提示するように、充分ではないことがある。しかしながら、180℃という比較的低い脱臭温度を有する例6についての官能試験結果が実際に、200℃というより高い脱臭温度を使用した例7に比べてより良好(かつ、消費に充分)であることも分かる。このことは、低い脱臭温度ではその他の要素が、臭気化合物(例えばアルデヒドおよびケトン)のバランスに影響を与えている可能性を提示している。

Claims (24)

  1. グリセリド油を精製する方法であって、以下の工程:
    (i)グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体と接触させて、処理されたグリセリド油を形成する工程、ここで塩基性第四級アンモニウム塩は、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオン、およびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンと、第四級アンモニウムカチオンとを含有し、
    (ii)グリセリド油を第四級アンモニウム塩と接触させた後に、処理されたグリセリド油を、第四級アンモニウムカチオンを含有する塩から分離する工程、および
    (iii)処理されたグリセリド油を、分離工程後に、少なくとも1つのさらなる精製工程に供する工程
    を含む、前記方法。
  2. 少なくとも1つのさらなる精製工程が、脱ガム、漂白、脱ろう、脱色、および脱臭から選択され、ここで好ましくは、少なくとも1つのさらなる精製工程が脱臭を含む、請求項1記載の方法。
  3. 少なくとも1つのさらなる精製工程が、脱臭工程、好ましくは水蒸気ストリッピングを伴う脱臭工程を含み、該脱臭工程は、160℃〜270℃の温度、好ましくは160℃〜240℃の温度、より好ましくは170℃〜190℃の温度で行われる、請求項2記載の方法。
  4. 前記方法はさらに、グリセリド油の少なくとも1つのさらなる精製工程を含み、該精製工程は、工程(i)における塩基性第四級アンモニウム塩による処理より前に行われ、ここで好ましくは少なくとも1つのさらなる精製工程は、漂白および/または脱ガムから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 少なくとも1つのさらなる精製工程が、漂白土による漂白工程である、請求項4記載の方法。
  6. 少なくとも1つのさらなる精製工程(iii)が脱臭工程を含み、前記方法は、脱ガム工程および/または漂白工程を含まない、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  7. 工程(ii)で分離される塩が、塩化物アニオンを含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 工程(ii)で分離される塩が、遊離脂肪酸のアニオンを含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  9. 接触工程を80℃未満、好ましくは25〜65℃、より好ましくは35〜55℃の温度で行う、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. 第四級アンモニウムカチオンが、
    [N(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+
    から選択され、上記式中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、C1〜C8アルキルから選択され、ここでRa、Rb、RcまたはRdのうち1つ以上は任意で、C1〜C4アルコキシ、C2〜C8アルコキシアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、OH、SH、CO2eおよびOC(O)Reから選択される1〜3個の基によって窒素原子と結合されていない炭素原子のところで置換されていてよく、ここでReは、C1〜C6アルキルである、
    請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
  11. a、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、C1〜C4アルキルから選択され、ここでRa、Rb、RcまたはRdのうち少なくとも1つは、1つの−OH基によってそれぞれ置換されている、請求項10記載の方法。
  12. 第四級アンモニウムカチオンがコリン:
    (CH33+CH2CH2OH
    である、請求項11記載の方法。
  13. 塩基性アニオンが、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび炭酸イオンから選択され、ここで好ましくは塩基性アニオンが、炭酸水素イオンである、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. 工程(i)で接触させる第四級アンモニウム塩が、重炭酸コリン:
    (CH33+CH2CH2OH HOCOO-
    である、請求項13記載の方法。
  15. 塩基性アニオンが、水酸化物イオンおよびアルコキシドイオンから選択され、ここで好ましくは塩基性アニオンが水酸化物イオンである、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  16. 工程(i)で接触させる塩基性第四級アンモニウム塩が、水酸化コリン:
    (CH33+CH2CH2OH OH-
    である、請求項15記載の方法。
  17. 塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体が溶媒を含有し、該液体中の第四級アンモニウム塩の濃度が、15質量%〜90質量%であり、ここで好ましくは前記溶媒が水性溶媒である、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
  18. 塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体が、溶媒、好ましくは水性溶媒を含有し、ここで前記液体中の第四級アンモニウム塩の濃度は、50質量%〜90質量%、好ましくは75質量%〜85質量%である、請求項13または14記載の方法。
  19. 塩基性第四級アンモニウム塩を含有する液体が、溶媒、好ましくは水性溶媒を含有し、ここで前記液体中の第四級アンモニウム塩の濃度は、15質量%〜60質量%、好ましくは40質量%〜50質量%である、請求項15または16記載の方法。
  20. グリセリド油が植物油であり、ここで好ましくは該植物油が、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、紅花油、大豆油、およびヒマワリ油、またはこれらの混合物から選択される、より好ましくは、ここで前記植物油がパーム油である、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
  21. グリセリド油を加熱する際に、クロロプロパノールおよび/またはグリシドールの脂肪酸エステルの形成を防止または低減させるための、グリセリド油を、塩基性第四級アンモニウム塩と接触させる使用であって、ここで塩基性第四級アンモニウム塩が、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、アルキル炭酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、セリン酸イオン、プロリン酸イオン、ヒスチジン酸イオン、トレオニン酸イオン、バリン酸イオン、アスパラギン酸イオン、タウリン酸イオン、およびリシン酸イオンから選択される塩基性アニオンと、第四級アンモニウムカチオンとを含有する、前記使用。
  22. 接触を、グリセリド油を100℃超の温度に加熱するより前に行う、請求項21記載の使用。
  23. グリセリド油が、請求項20で規定されたものである、請求項21または22記載の使用。
  24. 塩基性第四級アンモニウム塩が、請求項10から16までのいずれか1項で規定されたものである、請求項21から23までのいずれか1項記載の使用。
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