JP2018511664A - 医療器具用洗浄剤 - Google Patents

Abstract

ａ．少なくとも１つのアルカノールアミンと、ｂ．少なくとも１つの鉱酸と、ｃ．少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と、ｄ．少なくとも１つのプロテアーゼ酵素とを含み、界面活性剤を含有しない、洗浄組成物。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明

［発明の分野］
[1]本発明は、使用時にわずかしか又はまったく泡を生じない、医療器具、手術器具、及び他の器具の自動洗浄を目的とする洗浄組成物に関する。

［発明の背景］
[2]使用後の、鉗子、開創器、剪刀、検鏡、硬性内視鏡、可撓性内視鏡などのような医療器具を問題なく再処理するためには、滅菌又は消毒前に、血液、脂肪、組織片などのような全ての生体由来汚れを器具から除去することが望ましい。機器に残存した汚れがあると、滅菌工程又は消毒工程に障害をもたらす可能性が高く、したがって次の患者は、汚染された器具に曝され、院内感染するおそれがある。

[3]一般的に、大部分の医療器具は、洗浄消毒器で自動的に再処理される。大部分の手術器具の場合、使用される洗浄消毒器は、一般的に複数のスプレイアームを備える。器具は、トレイに載せられ、洗浄のために洗浄消毒器に入れられる。

[4]その後、水をチャンバ内に導入し、スプレイアームを通して比較的高圧でポンプにより供給し下洗いを行う。チャンバから排水し、追加の水を加え、５０℃〜６０℃の間に加熱する。加熱後に、少量の洗浄剤をポンプでチャンバに供給し、生じた溶液を、再度スプレイアームを通して比較的高圧でポンプにより供給する。スプレイアームによって引き起こされる激しい撹拌のため、タンパク質で汚染されている場合であっても、発泡傾向がほとんどないか、又は発泡傾向がない洗浄剤を使用する必要がある。泡は、底部の汚れへの接近を妨げることがあるため、洗浄サイクル中に生じる著しい発泡があると、特に、器具に存在するあらゆる継手又は蝶番の内部及び周囲において、洗浄効果に悪影響を及ぼすことがある。この影響は、管腔のある機器でさらに顕著になることがある。

[5]多くの低発泡性界面活性剤が公知であり、医療器具の自動洗浄に問題なく使用されているが、多くは、いくつかの課題をもたらす。

[6]まず、配合物は低発泡性であることがあるが、洗浄消毒器、特に、洗浄効果を向上させるために、より高圧なポンプを利用する、新型のモデル内に見られるような動的環境では、泡が持続されることがある。

[7]次に、発泡を制御する最も一般的な手段は、非イオン性界面活性剤、特にアルキルアルコキシレートを使用し、溶液の曇点を操作することによる。当技術分野で公知のように、非イオン性界面活性剤の溶液をその曇点を超えて加熱すると、一般的に、泡を不安定化して、泡を崩壊させ、消失させる。溶液の曇点を操作することによって発泡を制御する場合の副次的作用の１つは、その曇点を上回る溶液は、乳白色に見える可能性があり、洗浄工程の目視による観察を妨げることになることである。

[8]他の発泡制御方法は、シリコーンオイル、又はシリコーン／シリカ消泡剤などの発泡制御剤の添加であろう。しかし、この方法は、医療器具表面が消泡剤で汚染される原因となり得る。

[9]発泡を防ぐ１つの手段は、界面活性剤を含まない洗浄剤系の使用であろう。一般的に、この方法は、メタケイ酸ナトリウム及びアルカリ金属水酸化物などの高アルカリ成分に基づく固形洗浄剤系を使用し、自動食器洗浄器で使用されている。高アルカリ洗浄剤は、特に脂肪性又はタンパク質性汚れに対する洗浄剤として非常に有効であるが、材料の適合性の問題に起因し、多くの医療器具、特に内視鏡、又はアルミニウム製器具、若しくは陽極酸化アルミニウムで被覆された器具の洗浄には適さない。

[10]ｐＨがより中性（例えばｐＨ７〜９）の洗浄溶液は、器具への使用により適しているが、界面活性剤は表面の濡れ及び汚れの可溶化を促進するため、界面活性剤を用いずに配合される場合には、あまり有効でない。

[11]驚くべきことに、アルカノールアミン、鉱酸、ヒドロキシカルボン酸塩、及び酵素を含有する、界面活性剤を含まない配合物は、本質的に中性のｐＨで、効果的に生体由来汚れを除去しつつ、泡をほとんど又はまったく生じない洗浄溶液をもたらすことできることが見出された。

[12]医療器具洗浄剤におけるアルカノールアミンの使用は、これまでに報告されている。例えば、米国特許第６５６２２９６号は、トリエタノールアミン、各種キレート剤、及び一般的に湿潤剤として添加される界面活性剤（Ｎ−アシルグルタミン酸塩）を含む非酵素洗浄溶液の使用を教示している。

[13]米国特許第４２４３５４６号、欧州特許第０４８１６６３号、及び欧州特許第０７３００２４号は、特に血液タンパク質を酵素的に分解できる酵素含有洗浄溶液を開示している。これらの開示では、酵素の安定化のためにトリエタノールアミンの使用が提案されている。各配合物は、必須の成分として界面活性剤も含有する。米国特許第４２４３５４６号、及び欧州特許第０４８１６６３号の場合、界面活性剤は非イオン性であるが、欧州特許第０７３００２４号は、必須の構成要素としてアニオン性界面活性剤を含有する。

[14]配合物中の界面活性剤の存在は、医療器具の洗浄を妨げ得る有害な泡を生成させる原因となる可能性がある。したがって、激しい撹拌条件下においても、泡をまったく又はわずかにしか生じない洗浄配合物に対する持続的な需要がある。

［発明の概要］
[15]本発明の第１の実施形態によると、
ａ 少なくとも１つのアルカノールアミンと、
ｂ 少なくとも１つの鉱酸と、
ｃ 少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と、
ｄ 少なくとも１つのプロテアーゼ酵素とを含み、
界面活性剤を含有しない、洗浄組成物が提供される。

[16]本発明の第２の実施形態によると、水での希釈で、自動洗浄器内で手術器具及び医療器具から生体由来汚れを除去し、泡をほとんど生じることない、第１の実施形態による洗浄溶液が提供される。

[17]本発明の第３の実施形態によると、手術及び医療器具から生体由来汚れを除去する方法であって、水で希釈された第１の実施形態による組成物を用いて、自動洗浄器内で上記器具を洗浄することを含む、方法が提供される。

[18]本発明の第４の実施形態によると、
ａ 少なくとも１つのアルカノールアミンと、
ｂ 少なくとも１つの鉱酸と、
ｃ 少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と、
ｄ 少なくとも１つのプロテアーゼ酵素と
を組合せて、濃縮物を形成することを含む、洗浄組成物を調製する方法であって、上記濃縮物が界面活性剤を含有しない、方法が提供される。

[19]本発明の第５の実施形態によると、上記濃縮物を水で希釈することを含む、第４の実施形態による方法が提供される。

[20]本明細書（特許請求の範囲を含む）において「含む」、「含まれる」、又は「含んでいる」という用語が使用される場合、それらは、述べられた特徴、値、ステップ、又は構成要素の存在を規定するが、１つ又は複数の他の特徴、値、ステップ、若しくは構成要素、又はそれらの群の存在を除外しないと解釈されるべきである。

[21]本発明は、上記組成物は、水で希釈された状態で、本質的にｐＨが中性の低発泡性又は無発泡性の溶液をもたらす、プロテアーゼ酵素、アルカノールアミン、及び適切な酸を含み、界面活性剤を含まない水性濃縮物を提供する。溶液は、手術器具、及び他の医療器具の自動洗浄によく適する。

[22]組成物の洗浄効果は、ヒドロキシカルボン酸塩の添加により向上する。塩は、ナトリウム塩であり、ヒドロキシカルボン酸は、グルコン酸であることが好ましい。

[23]本発明は、少なくとも１つのプロテアーゼ酵素、アルカノールアミン、及びヒドロキシカルボン酸塩を含み、界面活性剤を含まない組成物で器具を処理することを含む、医療又は手術器具を洗浄する方法も提供する。

[24]本発明の組成物の構成要素間には相乗関係があり、効果的な洗浄特性を有する組成物であって、水で希釈された状態で、撹拌時に泡をほとんど又はまったく生じない組成物を生じる。したがって、本発明の組成物は、自動洗浄工程における使用に極めて適する。

［発明の詳細な説明］
[25]好ましい実施形態において、本発明は、
少なくとも１つのプロテアーゼ酵素と、
少なくとも１つのトリアルカノールアミンと、
少なくとも１つの鉱酸と、
少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と
を含み、
界面活性剤を含まない、洗浄組成物を提供する。

[26]本発明の組成物は、界面活性剤を含有しない。明細書及び特許請求の範囲を通して、「界面活性剤」という語は、疎水性基及び親水性基の両方を含む両親媒性化学種を意味すると考えられるべきであり、ここで疎水性基は、５個以上の炭素原子を含有する炭化水素基を含み、ここで親水性基は、イオン性官能基若しくはポリイオン性官能基、ポリヒドロキシ基、又はポリエーテル基で構成されてもよい。

[27]本発明の組成物のｐＨは、約７〜約９．５の範囲であることが好ましく、約７．５〜約８．５の範囲であることがより好ましい。

酵素
[28]本発明の組成物は、少なくとも１つの酵素を含む。好ましい実施形態において、酵素はプロテアーゼ酵素であり、特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、プロテアーゼ酵素及び第２の酵素の両方を含む。第２の酵素は、アミラーゼ、セルラーゼ、又はリパーゼからなる群から選択されることが好ましい。

[29]酵素（プロテアーゼと第２の酵素の両方）の総量は、組成物の０．１％〜５％ｗ／ｗの間であり得ることが好ましい。組成物全体が、呼吸器感作性物質に分類されることを避けるために、組成物が含む総酵素含有量は、組成物の約１％ｗ／ｗ未満であることがより好ましい。

[30]組成物中のプロテアーゼ酵素は、何らかの方法で安定化させてもよい。好ましい安定化法としては、少量のホウ酸塩を組成物に加えること、組成物にカルシウムイオンを含ませること、及び組成物の水分含有量を組成物の約５０％ｗ／ｗ未満に制限することが挙げられる。特に好ましい方法は、水分含有量を組成物の約４０％〜５０％ｗ／ｗの間に制限することである。

[31]プロテアーゼ酵素は、組成物の約０．５％ｗ／ｗ〜約２．０％ｗ／ｗの量で存在することが好ましい。

[32]プロテアーゼ酵素の好ましい商品名は、１〜５％の活性サブチリシンを含む液体プロテイナーゼ酵素溶液である、Ｐｒｏｐｅｒａｓｅ Ｌ１６００（商標）である。第２の酵素の好ましい商品名は、１〜１０％の活性酵素を含む液体アルファアミラーゼ酵素溶液である、Ｓｐｅｚｙｍｅ ＡＡ（商標）である。Ｐｒｏｐｅｒａｓｅ Ｌ１６００（商標）及びＳｐｅｚｙｍｅ ＡＡ（商標）は、何れもＧｅｎｅｎｃｏｒ Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌから供給される。

アルカノールアミン
[33]本発明の組成物は、界面活性剤の代わりとなる、少なくとも１つのアルカノールアミンを含む。少なくとも１つのアルカノールアミンは、組成物中に、組成物の約１０〜３０％ｗ／ｗの間の濃度で存在することが好ましく、約３〜２５％ｗ／ｗの間の濃度で存在することがより好ましく、組成物の約４〜２２％ｗ／ｗの間で存在することがさらに好ましい。

[34]アルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンからなる群から選択されることが好ましく、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンが最も好ましい。

鉱酸
[35]少なくとも１つの鉱酸は、本発明の組成物のｐＨを調整するために好ましく使用される。好ましい実施形態において、本発明の組成物のｐＨは、約７．５〜約８．５の間に調整される。

[36]好ましい実施形態において、鉱酸は、硝酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及びホウ酸、又はそれらの組合せからなる群から選択され得る。

[37]ホウ酸が選択される場合、最終組成物が、Ｒ６０及びＲ６１のリスクフレーズ（ＥＵ指針６７／５４８／ＥＥＣ、又は１９９９／４５／ＥＣ）を有する生殖毒性物質、又はＨ３６０の危険有害性情報（生殖能を害するおそれ、胎児を害するおそれ）を有するＧＨＳ分類の生殖毒性区分１Ｂに分類されることを避けるために、ホウ酸の濃度は、組成物の５％ｗ／ｗを超えないことが好ましい。

[38]特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、リン酸及びホウ酸を含み、リン酸含有量は、組成物の約１〜１０％ｗ／ｗの間である。洗浄組成物は、組成物の約０．５％〜約５％ｗ／ｗの間のホウ酸を含むことが好ましい。

[39]好ましい実施形態において、本発明の組成物は、組成物の約１％〜約９％ｗ／ｗの間、より好ましくは約２〜約７％ｗ／ｗの間のリン酸、及び組成物の約１％ｗ／ｗのホウ酸を含む。

ヒドロキシカルボン酸塩
[40]本発明の組成物は、少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩を含む。ヒドロキシカルボン酸塩の機能は、一般的に硬水中に見られる、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンを捕捉することである。ヒドロキシカルボン酸塩は、アルカリ金属塩、又はアルカノールアミン塩であってもよい。塩は、ナトリウム塩であることがより好ましい。ヒドロキシカルボン酸塩は、グリコール酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、又はそれらの組合せであることが好ましい。

[41]本発明の組成物に利用され得るヒドロキシカルボン酸塩の、非排他的な一覧は、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸カリウム、酒石酸カリウム、グルコン酸カリウム、グリコール酸カリウム、及びそれらの組合せである。

[42]少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩は、単純な錯体形成以外に、脂肪及び他の汚れ成分の可溶化などのさらなる特性をもたらすことができ、かつステンレス鋼などの鉄系金属のための腐食防止剤としても働き得ることが好ましい。

[43]好ましい実施形態において、ヒドロキシカルボン酸塩は、グルコン酸ナトリウムである。

[44]非金属塩を利用する実施形態も考えられる。このような実施形態において、ヒドロキシカルボン酸は、アルカノールアミンで中和される。

[45]ヒドロキシカルボン酸塩は、組成物の約１．０％〜２６％ｗ／ｗの間の量で存在することが好ましく、約１〜約１８％ｗ／ｗの間の量で存在することがより好ましい（親酸の重量として表される）。

[46]個々の成分の役割は、下記の実施例で説明することができる。

[47]これらの実施例において、好ましい成分のさまざまな組合せを調製し、実用濃度である１ｍｌ／リットルまで希釈した。次いで、洗浄効果、並びに静的泡量及び動的泡量について、希釈溶液を評価した。

グリコール溶媒
[48]本発明の組成物は、グリコール又はグリコールエーテルを含む溶媒を含有してもよい。溶媒の役割は、成分同士を結合させて均質な溶液を与え、さらに組成物全体の水分含有量を約４０〜５０％の間まで減らし、プロテアーゼ酵素を安定化することである。本発明の組成物に使用され得る、適切なグリコール溶媒の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセロール、及びそれらの組合せである。

[49]好ましい実施形態において、グリコール溶媒は、本発明の組成物の約５％〜約４０％ｗ／ｗの間の量で配合物中に存在する。より好ましい実施形態において、グリコール溶媒は、本発明の組成物の約１５％〜約２５％ｗ／ｗの間の量で存在する。

洗浄効果
[50]国産の食器洗浄器（Ｓａｍｓｕｎｇ ＤＷ５３４３ＴＧＢＷＱ型）を使用し、「Ｑｕｉｃｋ５０」プログラムを用いて、洗浄効果を評価した。このサイクルにおいて、３．４４リットルの水が洗浄サイクルで使用されるため、３．４ｍｌの洗浄剤を洗浄剤ディスペンサに入れる。「Ｑｕｉｃｋ５０」プログラムの洗浄サイクルは、３４分間である。水温が２８℃の場合、洗浄剤は、２分後にディスペンサから放出される。水は、６分間で最高温度の５０℃に達する。洗浄はさらに１０分間継続され、その後、チャンバは排水される。冷水を用いる２回のリンスサイクルの後、洗浄プログラムは終了する。

[51]次いで、人工的に汚染されたさまざまな手術器具と共に、２種類の市販の洗浄指標（ＴＯＳＩ、及びＢｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦ）を洗浄器のチャンバに入れ、洗浄サイクルを開始した。

市販の洗浄指標
[52]下記の市販の洗浄指標を使用し、洗浄効果を評価した。

１．ＰｒｏＦｏｒｍａｎｃｅ ＴＯＳＩ
[53]これは、プラスチックホルダに取り付けられた、傷のついたステンレス鋼スライド見本上の疑似血餅であり、手術器具上の乾燥した血液を再現する。試験用汚れは、フィブリン、及びヘモグロビンの両方から構成される。ＴＯＳＩ試験用汚れは、ＵＳ特許第６１０７０９７号に記載されている。

[54]使用する際、洗浄指標は、洗浄器のチャンバ内のラックに留められる。良好な洗浄は、全ての試験用汚れをステンレス鋼から除去する。

２．Ｂｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦ
[55]Ｂｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦは、プラスチックフィルムの両面に印刷された人工汚れである。汚れは、２つのタンパク質源、脂質、及び多糖を含む。使用する際、洗浄指標は、グリッドで構成されるステンレス鋼ホルダに取り付けられ、次いで洗浄器のチャンバに入れられる。

様々な配合物成分の試験
[56]実施例１〜６に従う配合物を調製し、前述の洗浄効果について試験した。

[57]Ｓａｍｓｕｎｇ製食器洗浄器内で、表１に与えられた各配合物を、Ｂｒｏｗｎｅｓ、及びＴＯＳＩの両方に対して試験した。

[58]相対洗浄効果は、３人の独立した観察者により、１＝汚れの除去が観察されないから５＝全汚れが除去されるまでの５段階評価で評価された。表２（Ｂｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦ）、及び表３（ＴＯＳＩ）に結果を示す。

[59]表２、及び表３に見られるように、トリエタノールアミン／リン酸塩の両方と酵素の組合せは、個々の成分の一式と比較し、配合物の効果を高める。さらに驚くべきことに、グルコン酸ナトリウムを含有させることで、トリエタノールアミン／リン酸塩と酵素を組み合わせた際、特にＴＯＳＩに対する効果がさらに改善される。

[60]次いで、全ての成分を含む配合物（実施例６）を、著しい汚れの負荷に対して試験した。ＩＳＯ１５８８３−５のＡｎｎｅｘ Ｎに記載されている、手術器具、手術器具トレイ、ボウル、皿、及びレシーバ用の、ＵＫ試験用汚れ及び方法を使用し、高度に汚染された器具に対する洗浄効果を評価した。

[61]エジンバラ汚れ（Ｅｄｉｎｂｕｒｇｈ ｓｏｉｌ）としても公知の汚れを次のように調製した。

[62]１００ｍｌの生卵黄を、１０ｍｌのウマ脱線維血液（Ｓｅｒｕｍ Ａｕｓｔｒａｌｉｓ）及び２．０ｇのブタ由来ムチン（Ｓｉｇｍａ Ａｌｄｒｉｃｈ）と共にミキシングボウルに入れた。次いで、オービタル混合機を用いて、均質な混合が達成されるまで原料を混合した。

[63]次いで、クランプ、鉗子、剪刀、検鏡、及び開創器などの代表的な各種手術器具に、箱の蝶番などのような、器具の、より複雑で閉塞した部分が確実に多量の汚れに覆われるよう、絵筆を用いて試験用汚れを塗布した。次いで、洗浄機に入れる前に、少なくとも１時間、器具を乾燥させた。洗浄後、汚れの存在について器具を目視で検査し、その後、器具を拭い、採取したスワブをニンヒドリン溶液を用いて試験し、タンパク質の存在の有無を判定した。

[64]Ｓａｍｓｕｎｇ製洗浄器を使用し、「Ｑｕｉｃｋ ５０」プログラムを用いて洗浄を行った後、器具は、目視では汚れていなかった。器具の表面、特に蝶番継手などの周辺を綿棒で拭い、次いで２％ニンヒドリンのエタノール中溶液を１滴加え、その後、採取したスワブを炉内で６０℃まで温めると、いかなるタンパク質残渣も存在しないことが示された。

発泡特性
[65]３種のさらなる配合物を調製した。低発泡性界面活性剤を用いて、２つの比較配合物（比較実施例７、及び比較実施例８）を調製し、一方で界面活性剤を用いないが、トリエタノールアミン、リン酸、グルコン酸ナトリウム、及びプロテアーゼ酵素とアミラーゼ酵素のブレンドを用いて、本発明に従って、実施例９、及び実施例１０を調製した。

[66]各配合物を水道水で希釈して１ｍｌ／リットルの溶液とし、室温及び５５℃の両方で泡量を評価した。泡量は、ストッパに嵌合された１００ｍｌのメスシリンダに、希釈溶液５０ｍｌを入れることにより評価した。水浴を用いて、溶液を必要な温度とした。次いで、メスシリンダを２０回激しく振とうさせ、振とう直後、及び３０秒後に泡量を測定した。

[67]表５に示されるように、比較実施例７、及び比較実施例８で調製された溶液は、比較的低発泡だったの対し、実施例９で調製された溶液は、室温であっても泡を生じなかった。

[68]溶液が非イオン性界面活性剤混合物の曇点を上回っていたという事実に起因し、比較実施例７、及び比較実施例８の溶液は、室温でやや濁っており、５５℃で外観が乳白色であることも観察された。実施例９の溶液は、５５℃まで加熱しても、透明性を維持し、濁り、又は白濁は見られなかった。

[69]実施例は、本発明の組成物の構成要素間に相乗関係があり、水で希釈された状態で、撹拌時に泡をほとんど又はまったく生じない洗浄組成物を生じることを明らかに示す。

実施例１２
[70]下記の実施例は、成分の濃度が低い配合物を示す。

この配合物は、５ｍｌ／リットルの希釈で使用されるよう意図される。

洗浄消毒器試験
[71]さまざまな異なる洗浄消毒器で、実施例９の配合物を試験した。試験で使用した典型的なサイクルとして、冷水による下洗いの後に本洗浄が続くサイクルが含まれた。

[72]洗浄サイクルの後に、２回のリンスサイクルを行い、２回目のリンンスサイクルは、９０℃の温度で行われ、負荷物を消毒した。洗浄サイクルの間、発泡について負荷チャンバを目視で観察した。さらに、複数の洗浄指標（ＴＯＳＩ及びＢｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦの両方）を洗浄消毒器内の棚にそれぞれ取り付けてサイクルを運転した。合格と記録されるためには、チャンバ内の全ての洗浄指標に目視での汚れの残渣がない必要があった。

実施例１３：カリウム塩型の調製
[73]この実施例において、ナトリウム塩の代わりにカリウム塩を用いた以外は実施例９と類似の配合物を調製した。グルコン酸カリウムが容易に商業的に入手できないことを考慮し、グルコノラクトンを使用した。本実施形態の製造において、グルコノラクトンは、水酸化カリウムと反応し、グルコン酸のカリウム塩を生じる。

[74]最終的な配合物の比重は１．１３４５、屈折率は１．４０６１であることが見出された。配合物のｐＨは、７．８１であった。

[75]実施例９のナトリウム塩の同等物に対する、実施例１０のカリウム塩配合物の利点は、カリウム塩のはるかに高い水溶性にある。これにより、配合物は、より低温に対し著しく安定となり、全ての成分が配合物から晶出することなく、製品を０℃未満で長期間保管することができる。

代替実施形態
[76]下記の実施例において、アルカノールアミンとしてモノエタノールアミン、及びさまざまな異なるヒドロキシ酢酸を利用する代替実施形態を調製した。これらの実施例において、鉱酸として、ホウ酸、及びリン酸が使用され、ヒドロキシ酢酸はアルカノールアミンによって中和された。

[77]Ｂｒｏｗｎｅｓ ＳＴＦ、及びＴＯＳＩに対して試験した際、実施例１１〜実施例１３は、前述した、Ｓａｍｓｕｎｇ製食器洗浄器内で、１ｍｌ／リットルの濃度、５０℃で評価された場合の実施例９と類似の活性を有することが示された。

[78]下記の実施例において、アルカノールアミンは、ジエタノールアミンである。与えられたジエタノールアミンは、腐食防止剤としても働き、これらの実施例は、金属器具の腐食からの保護に役立つ。

Claims (31)

1. ａ 少なくとも１つのアルカノールアミンと、
   ｂ 少なくとも１つの鉱酸と、
   ｃ 少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と、
   ｄ 少なくとも１つのプロテアーゼ酵素と
   を含み、
   界面活性剤を含有しない、洗浄組成物。
2. ｐＨが、約７〜約９．５の範囲である、請求項１に記載の洗浄組成物。
3. 前記ｐＨが、約７．５〜約８．５の範囲である、請求項２に記載の洗浄組成物。
4. 第２の酵素も含む、請求項１〜３のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
5. 前記第２の酵素が、アミラーゼ、セルラーゼ、又はリパーゼからなる群から選択される、請求項４に記載の洗浄組成物。
6. 前記組成物の総酵素含有量が、約０．１％〜５％ｗ／ｗの間である、請求項１〜５のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
7. 前記プロテアーゼ酵素が、前記組成物の約０．５％〜約２．０％ｗ／ｗの量で存在する、請求項１〜６のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
8. 前記アルカノールアミンが、前記組成物の約３〜２５％ｗ／ｗの間の濃度で存在する、請求項１〜７のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
9. 前記アルカノールアミンが、前記組成物の約４〜約２２％ｗ／ｗの濃度で存在する、請求項８に記載の洗浄組成物。
10. 前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群から選択される、請求項１〜９のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
11. 前記鉱酸が、硝酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及びホウ酸、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項１〜１０のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
12. リン酸及びホウ酸を含む、請求項１１に記載の洗浄組成物。
13. 前記リン酸が、前記組成物の約１〜１０％ｗ／ｗの量で存在する、請求項１２に記載の洗浄組成物。
14. 約０．５％〜５％ｗ／ｗの間のホウ酸を含む、請求項１２に記載の洗浄組成物。
15. 約１〜約９％ｗ／ｗの間のリン酸、及び約１％ｗ／ｗのホウ酸を含む、請求項１３に記載の洗浄組成物。
16. 約２〜約７％ｗ／ｗの間のリン酸、及び約１％ｗ／ｗのホウ酸を含む、請求項１５に記載の洗浄組成物。
17. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、グリコール酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、又はそれらの組合せである、請求項１〜１６のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
18. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、アルカリ金属塩である、請求項１〜１７のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
19. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、ナトリウム塩である、請求項１８に記載の洗浄組成物。
20. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項１７に記載の洗浄組成物。
21. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、グルコン酸ナトリウムである、請求項２０に記載の洗浄組成物。
22. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、アルカノールアミン塩である、請求項１〜１６のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
23. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、前記組成物の約１％〜２６％ｗ／ｗの間の量で存在する、請求項１〜２２のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
24. 前記ヒドロキシカルボン酸塩が、前記組成物の約１〜約１８％ｗ／ｗの間の量で存在する、請求項２３に記載の洗浄組成物。
25. 前記洗浄組成物が、グリコール溶媒も含む、請求項１〜２４のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
26. 前記グリコール溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項２５に記載の洗浄組成物。
27. 前記グリコール溶媒が、前記組成物の約５％〜４０％ｗ／ｗの間の量で存在する、請求項２６に記載の洗浄組成物。
28. 水での希釈で、自動洗浄器内で手術及び医療器具から生体由来汚れを除去し、泡をほとんど又はまったく生じることがない、請求項１〜２７のいずれか一項に記載の洗浄溶液。
29. 手術及び医療器具から生体由来汚れを除去する方法であって、水で希釈された請求項１〜２７のいずれか一項に記載の組成物を用いて、自動洗浄器内で前記器具を洗浄することを含む、方法。
30. ａ 少なくとも１つのアルカノールアミンと、
    ｂ 少なくとも１つの鉱酸と、
    ｃ 少なくとも１つのヒドロキシカルボン酸塩と、
    ｄ 少なくとも１つのプロテアーゼ酵素と
    を組み合わせて、濃縮物を形成することを含む、洗浄組成物を調製する方法であって、前記濃縮物が、界面活性剤を含有しない、方法。
31. 前記濃縮物を水で希釈することを含む、請求項３０に記載の方法。