JP2018509393A - 認知の向上のための方法および組成物 - Google Patents

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Abstract

klothoポリペプチドを用いた治療を含む、個体における認知機能を向上させるためのklothoポリペプチド組成物および方法を本明細書において提供する。

Description

関連特許出願の相互参照
本出願は、2015年2月6日に提出された米国仮特許出願第62/113,300号に対する優先権の恩典を主張するものであり、それは参照により組み入れられる。
発明の背景
脳の健康は、たとえあったとしてもごくわずかの有効な医学的治療しかない最大の生物医学的難題の一つである。認知は、正常な老化、無数の神経変性疾患、神経疾患、および精神疾患、小児期発達症候群、外傷性脳損傷、ならびにストレスにおいて損なわれるまたは混乱する脳の健康の非常に重要視されかつ中心的な徴候である。認知は、時差ぼけ、薬の副作用、および癌に対するものなどある特定の医学的治療によっても混乱される。ゆえに、認知を増強させるまたは認知機能障害に対抗するポテンシャルは、健康および疾患におけるヒトの寿命と多大な関連性がある。
発明の簡単な概要
klothoの全身投与、またはklothoもしくはその機能的断片を含むタンパク質の全身投与により認知を向上させるための方法および組成物が本明細書において提供される。一部の態様において、方法は、Klothoポリペプチドまたはその機能的変種もしくは断片を含むタンパク質の有効量を個体に投与する工程であって、それによって個体における認知機能を向上させる、工程を含む、個体における認知を向上させることを含む。一部の態様において、投与は、全身性、末梢性、または経鼻的である。一部の態様において、タンパク質はKlothoポリペプチドまたはその断片である。一部の態様において、投与は、経口的であるか、粘膜的であるか、または注射によって実施される。一部の態様において、注射は、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内である。一部の態様において、投与は注入、例えばリザーバーまたは浸透圧ミニポンプを用いた連続注入によるものである。
一部の態様において、個体はヒトである。一部の態様において、ヒトは少なくとも正常な認知機能を有し、かつ投与は、投与前と比較して認知機能の向上をもたらす。一部の態様において、ヒトは50歳またはそれを上回る年齢(例えば、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、100歳、またはそれを上回る年齢)である。一部の態様において、個体は、加齢に関連した認知衰退を経験しているところである。一部の態様において、投与は、認知衰退の速度の低下をもたらし、例えばそれにより短期記憶は、治療前または年齢コホートの衰退に基づいて予想されるほど早急には衰退しない。一部の態様において、個体は50歳未満である。
一部の態様において、個体は神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、軽度認知障害、血管性認知症、レビー小体認知症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、およびHIV関連認知症を有する。一部の態様において、個体は精神障害または気分障害、例えばうつ病、統合失調症、注意欠陥/多動性障害、自閉症スペクトラム障害、知的障害、気分障害、または精神病性障害を有する。一部の態様において、個体は、外傷性脳損傷、脳卒中、多発性硬化症、神経自己免疫疾患(neuroautoimmune disease)、てんかん、せん妄、および腫瘍随伴障害より選択される病態を有する。一部の態様において、個体は、X連鎖精神障害、ダウン症候群、アンジェルマン症候群、およびレット症候群より選択される病態を有する。一部の態様において、個体は、フェニルケトン尿症、レッシュ・ナイハン、ガラクトース血症、および副腎白質ジストロフィーより選択される病態を有する。一部の態様において、個体は、癌に対する放射線治療または化学療法を受けているところである。一部の態様において、個体は、ストレス、痛み、断眠、または時差ぼけを経験しているところである、または(例えば、約2時間〜2週間、約12〜48時間、または約24時間のうちに)経験することが予想される。
一部の態様において、ヒトは運動機能を損なっており、投与は、投与前と比較して運動機能の向上をもたらす。
一部の態様において、klothoポリペプチドは、可溶性ヒトklotho(SEQ ID NO:1のアミノ酸34〜979位)に対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有する。一部の態様において、klothoポリペプチドは、ヒトklothoのKL1ドメインに対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有するポリペプチドを含む機能的断片である。一部の態様において、klothoポリペプチドは、ヒトklothoのKL2ドメインに対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有するポリペプチドを含む機能的断片である。一部の態様において、klothoポリペプチドは、可溶性ヒトklothoの少なくとも1種の活性のレベルの少なくとも40、50、60、70、80、90、または100%を保持する。
一部の態様において、klothoポリペプチドを、0.1〜50,000μg/kg体重(例えば、0.5〜10μg/kg、0.5〜500μg/kg、1〜2000μg/kg、1〜250μg/kg、5〜250μg/kg、10〜100μg/kg、1000〜20,000μg/kg、または約10、25、50、100、もしくは1000μg/kg)の用量で個体に投与する。一部の態様において、klothoポリペプチドを、毎日、1週間に2回、毎週、または隔週で投与する。一部の態様において、klothoポリペプチドを、認知の高まりを要する事象、例えばストレス、時差ぼけ、断眠、または予期される負担のかかる精神課題の(例えば、2、6、12、24、または48時間)前にまたはそれに応じて投与する。
一部の態様において、個体を、投与前に認知能力について試験する。一部の態様において、個体を、投与後に認知能力について試験する。一部の態様において、個体を、投与前および投与後に、または治療の経過中に複数回、認知能力について試験する。一部の態様において、個体を、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング記憶、および/または作動記憶について試験する。一部の態様において、個体を、言語能力、実行機能、視空間機能、または認知症について試験する。一部の態様において、klothoポリペプチドの投与の用量または頻度を、認知能力が有意に増加しない場合に増加させる。
一部の態様において、運動機能を向上させる方法が提供される。一部の態様において、方法は、それを必要としている個体における運動機能を向上させるために提供され、該方法は、Klothoポリペプチドまたはその機能的断片を含むタンパク質の有効量を個体に投与する工程であって、該投与は全身性または末梢性であり、それによって、投与前と比較して個体における運動機能を向上させる、工程を含む。一部の態様において、klothoポリペプチドは、可溶性ヒトklotho(SEQ ID NO:1のアミノ酸34〜979位)に対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有する。一部の態様において、klothoポリペプチドは、ヒトklothoのKL1ドメインに対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有するポリペプチドを含む機能的断片である。一部の態様において、klothoポリペプチドは、ヒトklothoのKL2ドメインに対して少なくとも75%の同一性(例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の同一性)を有するポリペプチドを含む機能的断片である。一部の態様において、klothoポリペプチドは、可溶性ヒトklothoの少なくとも1種の活性のレベルの少なくとも40、50、60、70、80、90、または100%を保持する。一部の態様において、klothoポリペプチドを、0.1〜50,000μg/kg体重(例えば、0.5〜10μg/kg、0.5〜500μg/kg、1〜2000μg/kg、1〜250μg/kg、5〜250μg/kg、10〜100μg/kg、1000〜20,000μg/kg、または約10、25、50、100、もしくは1000μg/kg)の用量で個体に投与する。一部の態様において、klothoポリペプチドを、毎日、1週間に2回、毎週、または隔週で投与する。
一部の態様において、損なった運動機能を有する個体は、脳または脊髄に対する脳卒中(虚血性または出血性)、神経変性疾患(パーキンソン病、レビー小体認知症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、ハンチントン病、核上性麻痺)、パーキンソニズム、外傷性脳損傷、神経感染性脳病変、多発性硬化症ならびに関連した自己免疫疾患および脱髄疾患、脊髄病変(圧迫性、感染性、中毒性または代謝性、自己免疫性、腫瘍性)、脳腫瘍、てんかん、腫瘍随伴障害、神経発達障害(ミトコンドリア性、常染色体遺伝的)、筋疾患(多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、感染性、内分泌性、代謝性、中毒性、先天性ミオパチー、先天性筋ジストロフィー、遺伝性)、ニューロパチー(ギラン・バレー症候群、軸索性および脱髄性、糖尿病性、中毒性、代謝性、感染性、重症疾病性、絞扼性)、ダニ麻痺症、重症筋無力症、ならびに脊髄性筋萎縮症を有する。
Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた治療の18時間後、マウスをY迷路において試験した。Y迷路の探索の4分間中のアーム間での交替行動%が示されている(n=4匹の雄のマウス/群)。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。プラットフォームが隠されている場合の空間学習曲線が、コホート1において示されている。試験の4時間前にVehまたはKLを投与した。データは、隠しプラットフォームに到達するまでの、1〜4日目に巡回した全距離の日平均を表す。0日目は、1日目の最初の試行で巡回した距離を表す。5日目、プラットフォームが目に見えた場合、Veh処理およびklotho処理されたマウスは、同等に上手くそれを探した(n=4匹の雄のマウス/群)。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。4日目の隠し訓練からの平均速度によって測定されるように、コホート1において、Veh処理およびklotho処理されたマウスは同等のスピードで泳いだ。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。プラットフォームが隠されている場合の空間学習曲線が、マウスの独立したコホートであるコホート2において示されている。試験の18時間前にVehまたはKLを投与した。データは、隠しプラットフォームに到達するまでの、1〜4日目に巡回した距離の日平均を表す(n=7〜10匹のマウス/群;雄および雌が含まれる)。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。1時間の探査における標的中心での持続期間は、元のプラットフォーム位置で過ごした時間を示している。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。1時間の探査における標的プラットフォーム横断は、元のプラットフォーム位置を横断する頻度を示している。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。1時間の探査における、他の四分円で過ごした平均時間と比較した、標的四分円で過ごした時間%。*p<0.05(t検定)。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。24時間の探査における標的中心での持続期間。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。24時間の探査における標的プラットフォーム横断。 Klotho送達は、マウスにおいて認知を増強させる。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)(4ヶ月齢)のi.p.送達後、マウスを認知課題において試験した。データは平均±SEMである。ビヒクルまたはklothoを用いた毎日の治療の後、マウスをモリス水迷路において試験した(2つの独立したコホートが示されている:コホート1およびコホート2)。コホート1においてVeh処理およびklotho処理されたマウスにおける、隠しプラットフォーム訓練の完了の1時間後および24時間後にプラットフォームが取り外された場合の、空間記憶を査定する探査試行の結果。24時間の探査における標的四分円で過ごした時間%。 図2A〜B。klothoの急性送達は、老齢マウスにおいて認知を増強させる。訓練の24時間前のビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(10μg/kg)のi.p.送達後、マウスを大型Y迷路において空間記憶および作動記憶について試験した(実験群あたりn=8〜9匹のマウス、性別の均衡が取られた群、18ヶ月齢、老齢マウスのNIHコロニー由来)。訓練の18時間後、マウスは試験を受け、かつ迷路の探索の間、新規アームおよび見慣れたアームで過ごした時間の持続期間を測定した。(図2A)新規アーム選好性が、表示される探索の時間を通じた、および(図2B)3分の時点での、見慣れたアームと比較した、新規で過ごした時間比率として示されている。*p<0.05(t検定)。データは平均±SEMである。 klothoの急性送達は、長続きする認知増強を誘導する。5日間毎日与えられたビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(0.5または2.5μg/kg)の最後のi.p.送達の16日後に、マウスを大型Y迷路において空間記憶および作動記憶について試験した(実験群あたりn=8〜10匹のマウス、性別の均衡が取られた群、5〜5.5ヶ月齢)。訓練の18時間後の迷路の探索の間、新規アームおよび見慣れたアームで過ごした時間の持続期間を測定した。新規アーム選好性が、探求の5分間の時点での見慣れたアームと比較した、新規で過ごした時間の比率として示されている。**p=0.01(Bonferroni-Holm検定)。データは平均±SEMである。 図4A〜B。klothoの急性送達は、ヒトα-シヌクレインタンパク質を発現するトランスジェニックhSYNマウスにおいて認知欠陥を向上させる。訓練の22時間前および次いで試験の14時間前の時点でのビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(2.5μg/kg)のi.p.送達後、マウスを大型Y迷路において空間記憶および作動記憶について試験した(群あたりn=6〜9匹のマウス、2.5〜6ヶ月齢)。訓練の18時間後の迷路の探索の間、新規および見慣れたアームにおける時間の持続期間および進入の回数を測定した。データは平均±SEMである。図4A。新規アーム選好性が、探求の5分間の時点での見慣れたアームと比較した、新規で過ごした時間の比率として示されている。二元配置ANOVA:hSYN効果p=0.026、KL効果p=0.07;*p<0.05、#p=0.07(Bonferroni-Holm検定)。図4B。新規アーム選好性が、探求の5分間の時点での見慣れたアームと比較した、新規への進入の比率として示されている。二元配置ANOVA:hSYN効果p=0.07、KL効果p=0.03;#p=0.07(t検定)。 klothoの急性送達は、ヒトα-シヌクレインタンパク質を発現するトランスジェニックhSYNマウスにおいて早期運動欠陥を向上させる。試験のおよそ17時間前の時点でのビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(2.5μg/kg)のi.p.送達後、マウスをロータロッド課題での運動機能について試験した(実験群あたりn=6〜10匹の雄のマウス、2.5〜6ヶ月齢)。落下せずに回転式ロッド上で過ごした時間が、秒単位(s)で描かれている。hSYNマウスにおいて、試行1〜3の間の回転式ロッド上で過ごした平均時間の持続期間の増加によって示されるように、KL処理は早期運動機能を向上させる。二元配置ANOVA:hSYN効果0.0025;**p<0.01、*p<0.05(Bonferroni-Holm検定)。データは平均±SEMである。 klotho急性送達は、マウスの全体的活動を変更しない。ビヒクル(Veh)または組換えマウスklotho(KL)(2.5μg/kg)のi.p.送達の16時間後に、マウスをオープンフィールド課題における全体的移動および全活動のレベルについて試験した(実験群あたりn=8匹のマウス;性別の均衡が取られた群;5ヶ月齢)。5分間にわたる全移動が描かれている。データは平均±SEMである。
発明の詳細な説明
I.序論
Klothoは、その分泌型でおよそ130kDの比較的大きなタンパク質であり、かつ脳血液関門を横断しないと予想される。しかしながら、本明細書において提供される結果は、Klothoが、全身投与の数時間以内におよびその排泄半減期後も長く、認知にプラス効果を及ぼすことを示している。これらの結果は極めて予想外であり、かつ脳へのまたは脳脊髄液内への直接投与と比較してより安全でより簡便な療法という利点を提供する。
II.定義
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的な用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Lackie, DICTIONARY OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY, Elsevier (4th ed. 2007);Sambrook et al., MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照されたい。本明細書において記載されるものと類似または等価の任意の方法、装置、および材料が、本発明の実践において用いられ得る。以下の定義は、本明細書において頻繁に用いられるある特定の用語についての理解を容易にするために提供するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するわけではない。
「klotho」または「klothoポリペプチド」という用語は、別様に記述されていない限り、可溶性klothoポリペプチドならびにその機能的変種および断片を指す。可溶性klothoは、流体(例えば、血清、脳脊髄液など)中を循環しかつ膜貫通のまたは細胞内の構成要素を含まない、klothoの任意の形態である。Klothoは、その膜貫通型から切断され得かつ流体中に放出され得る、またはそうでなければ細胞から分泌され得るもしくは放たれ得る。Klotho RNAも選択的にスプライシングされ得、かつ周囲の流体中に直接分泌され得る(すなわち、膜貫通タンパク質を形成することなく)。両形態が、可溶性klothoポリペプチド、klothoポリペプチド、およびklothoという用語に包含される。
本明細書において使用するとき、「全身性」または「末梢性」という用語は、脳脊髄液(CSF)または中枢神経系(CNS)への直接注射(または他の投与)を伴わない経路による投与を指す。つまり、全身性および末梢性の投与は、脳血液関門の「血液」側への投与を包含する。全身性および末梢性の経路の例には、経口および粘膜投与、静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下への注射、ならびに静脈内点滴が含まれる。
「認知」、「認知能力」、「認知機能」という用語および同様の用語は、記憶(例えば、意味、エピソード、手続き、プライミング、または作動);志向性;言語;問題解決;視覚、構築、および統合;立案;体系化する技能;選択的注意;抑制制御;ならびに情報を精神的に操作する能力を含むがそれらに限定されない、精神的な課題および機能の集合体を指す。
「認知の向上」、「認知能力の増加」、「認知機能の向上」という用語および同様の用語は、所定の条件(例えば、klothoを用いた治療)下での、該条件がない(例えば、klothoを用いた治療がない)認知と比較した、認知の向上を指す。認知衰退を経験している個体に対して、認知の向上は、認知衰退の速度の低下(すなわち、治療がないことと比較した向上)であり得るが、認知能力の真の向上でなくてもよい。認知能力の増加は、例えばMRIによって判定される、指定のエリアにおける脳活動の増加、またはより良好な脳機能全般をもたらす、脳活動の阻害でもあり得る。認知能力の増加は、本明細書においてより詳細に記載される認知パフォーマンス試験における向上でもあり得る。認知能力の向上または増加は、任意の1つの認知的な局面もしくは機能、または個々の認知機能の任意の組み合わせにおけるものであり得る。
認知機能の向上を必要としている個体とは、加齢に関連した認知衰退;神経変性疾患;精神障害または気分障害;外傷性脳損傷;発達遅延;認知能力の低下をもたらす遺伝的障害;脳卒中、脳腫瘍、MS、てんかん、放射線、または化学療法が原因の脳損傷などを有する個体を指す。認知機能の向上を必要としている個体には、ストレス、断眠、時差ぼけ、もしくは痛みの作用と闘うための、または特定の課題に対する能力を高めるための精神機能の増加を望む個体も含まれ得る。そのような個体のより完全かつ具体的な一覧は、本明細書における「認知の病態および障害」の節に含まれる。
「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という単語は、1つのアミノ酸ポリマー、または2つもしくはそれを上回る数の相互作用しているもしくは結合しているアミノ酸ポリマーの一組を表すために互換可能に用いられる。該用語は、1個または複数個のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、改変された残基を含有するもの、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するおよび合成のアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似して機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに後に修飾されるそうしたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンを指す。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持し得る。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似して機能する化学的化合物を指す。
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に公知の三文字記号によって、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される一文字記号によって言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般に認められている一文字暗号によって言及され得る。
「保存的に改変された変種」は、アミノ酸および核酸の配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変種とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそうした核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一のもしくは関連した、例えば天然に隣接する配列を指す。遺伝暗号の縮重により、多数の機能的に同一の核酸が、大部分のタンパク質をコードする。例えば、GCA、GCC、GCG、およびGCUというコドンはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。ゆえに、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる箇所において、該コドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載される対応するコドンの別のものに変更され得る。そのような核酸変異は、保存的に改変された変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書におけるあらゆる核酸配列は、該核酸のサイレント変異も記載する。当業者であれば、ある特定の背景において、核酸における各コドン(メチオニンに対する普通唯一のコドンであるAUG、およびトリプトファンに対する普通唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を産出し得ることを認識するであろう。したがって、しばしば、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載される配列において黙示的であるが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
アミノ酸配列に関しては、当業者であれば、コードされた配列における単一のアミノ酸またはわずかなパーセンテージのアミノ酸を変更する、付加する、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、または付加は、変更が、化学的に類似したアミノ酸でのアミノ酸の置換をもたらす場合、「保存的に改変された変種」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。そのような保存的に改変された変種は、本発明の多型変種、種間ホモログ、および対立遺伝子に追加されるものであり、それらを除外しない。以下のアミノ酸は、典型的に、互いに保存的置換である:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
2つもしくはそれを上回る数の核酸、または2つもしくはそれを上回る数のポリペプチドの文脈における「同一の」または「同一性%」という用語は、同じであるもしくは指定のパーセンテージのヌクレオチドもしくはアミノ酸を有する、あるいは初期設定パラメーターを有するBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定されるものとして、または手動によるアライメントおよび目視点検によって同じである(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたる最大の一致を目指して比較されかつアライメントされた場合に、指定の領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い同一性の)2つもしくはそれを上回る数の配列もしくは部分配列を指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTにおけるNCBIウェブサイトを参照されたい。そのような配列は、ひいては「実質的に同一」であると言われる。この定義は、ヌクレオチド試験配列の相補鎖も指すまたはそれにも適用され得る。該定義は、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものも含む。下記で記載されるように、アルゴリズムは、ギャップなどを説明し得る。典型的に、同一性は、抗体エピトープを含む領域、または長さが少なくとも約25個のアミノ酸もしくはヌクレオチドである配列にわたって、あるいは長さが50〜100個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在する。
「組換え」という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関連して用いられる場合、該細胞、核酸、タンパク質、もしくはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されているということ、あるいは該細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。ゆえに、例えば、組換え細胞は、該細胞の天然(非組換え)型の中では見出されない遺伝子を発現するか、または、そうでなければ異常に発現される、低く発現される、もしくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
「異種の」という用語は、タンパク質または核酸の一部に関連して用いられる場合、タンパク質または核酸が、天然では互いとの同じ関係性で見出されない2つまたはそれを上回る数の部分配列を含むことを示す。例えば、タンパク質または核酸は、典型的に組換えにより産生され、新たな機能的核酸(例えば、ある供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域)または機能的キメラタンパク質を作り出すように編成された無関係な遺伝子由来の2つまたはそれを上回る数の配列を有する。
「アゴニスト」、「活性化因子」、「誘導因子」という用語および同様の用語は、対照と比較して、(例えば、klothoまたはklothoシグナル伝達経路の)活性または発現を増加させる作用物質を指す。アゴニストとは、例えば活性化を刺激する、増加させる、活性化する、増強させる、klothoまたはklothoシグナル伝達経路の活性を増感させるまたは上方調節する作用物質である。発現または活性は、対照におけるものよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれを上回る割合、増加し得る。ある特定の場合において、活性化は、対照と比較して、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはそれを上回る割合である。
「阻害因子」、「リプレッサー」、または「アンタゴニスト」、または「下方調節因子」という用語は、対照と比較して、検出可能な程度により低い発現または活性のレベルをもたらす物質を互換可能に指す。阻害される発現または活性は、対照におけるものよりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを上回る割合、下回り得る。ある特定の場合において、阻害は、対照と比較して、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはそれを上回る割合である。
「対照」サンプルまたは値とは、試験サンプルとの比較のための参照、通例公知の参照として働くサンプルを指す。例えば、試験サンプルは、例えば試験化合物の存在下で、試験条件から採取され得、かつ例えば試験化合物の非存在下で(陰性対照)または公知の化合物の存在下で(陽性対照)、公知の条件由来のサンプルと比較され得る。対照は、いくつかの試験または結果から集められた平均値でもあり得る。当業者であれば、対照は、任意の数のパラメーターについての査定のために設計され得ることを認識するであろう。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期)または治療的尺度(例えば、利益および/または副作用の比較)に基づき、治療的利益を比較するために考案され得る。対照は、インビトロ適用のために設計され得る。当業者であれば、どの対照が所定の状況において有益であるかを理解し、かつ対照値との比較に基づきデータを分析することができるであろう。対照は、データの有意性を判定するのにも有益である。例えば、所定のパラメーターに対する値が対照において幅広く可変的である場合、試験サンプルにおける変動は有意であるとは見なされないであろう。
「標識」または「検出可能な部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的な手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、および例えば標識ペプチドと特異的に反応性を示すペプチドもしくは抗体内に放射性標識を組み入れることによって検出可能になり得るタンパク質もしくは他の実体が含まれる。例えばHermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoに記載されている方法を用いた、タンパク質を標識にコンジュゲートすることで知られる任意の方法が採用され得る。
「標識された」分子(例えば、klothoポリペプチド)とは、リンカーもしくは化学結合を介して共有結合的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、もしくは水素結合を介して非共有結合的に標識に結合しているものであり、それにより、該分子の存在は、該分子に結合している標識の存在を検出することによって検出され得る。
「診断」という用語は、個体に障害が存在するという相対的確率を指す。同じように、「予後」という用語は、個体においてある特定の将来的転帰が生じ得る相対的確率を指す。例えば、本開示の文脈において、予後とは、個体が認知衰退を患う可能性、または疾患の推定重症度(例えば、症状の重症度、機能衰退の速度など)を指し得る。該用語は、医学的診断の分野における任意の当業者によって解されるであろうように、絶対的であることを意図するわけではない。
「生物学的サンプル」は、患者、例えば生検から、動物モデルなどの動物から、または培養細胞、例えば患者から取り出されかつ観察のために培養下で成長させた細胞株もしくは細胞から獲得され得る。生物学的サンプルには、組織および体液、例えば脳脊髄液(CSF)、血液、血液画分、リンパ液、唾液、尿、糞便などが含まれる。
「療法」、「治療」、および「改善」という用語は、症状(認知衰退)の重症度の任意の軽減、もしくは認知機能の向上、または運動機能が影響を受けている場合には運動機能の向上を指す。本明細書において使用するとき、「治療する」および「阻止する」という用語は、絶対的な用語であることを意図するわけではない。治療および阻止は、認知衰退の任意の遅延、症状(例えば、精神錯乱、せん妄)の改善などを指し得る。治療および阻止は、認知が、治療なしで予想されるであろうよりも良好であるように(例えば、治療前の同じ個体における認知と比較して、または治療を受けていない類似した個体における認知と比較して)、完全または部分的であり得る。治療の効果は、治療を受けていない個体もしくは個体のプールと、または治療前の同じ患者もしくは治療中の異なる時点における同じ患者と比較され得る。一部の局面において、認知は、例えば投与前の個体とまたは治療を受けていない対照個体と比較して、少なくとも1%向上する。一部の態様において、認知は、少なくとも2、3、5、7、10、15、20、25%、50%、75%、80%、もしくは90%、またはそれを上回る割合向上し、認知の試験、分子代理(proxy)、または脳機能に関連した構造変化を用いて判定される。一部の局面において、運動機能は、例えば投与前の個体とまたは治療を受けていない対照個体と比較して、少なくとも1%向上する。一部の態様において、運動機能は、少なくとも2、3、5、7、10、15、20、25%、50%、75%、80%、もしくは90%、またはそれを上回る割合向上し、運動機能の試験を用いて判定される。
「有効量」、「有効用量」、「治療上有効量」などという用語は、上記で記載されるように、障害を改善するのに十分な治療剤の量を指す。例えば、所定のパラメーターに対して、治療上有効量は、少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の治療効果の増加または減少を示す。治療効力は、「−倍」の増加または減少としても表現され得る。例えば、治療上有効量は、対照と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはそれを上回る割合の効果を有し得る。
本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される」という用語は、生理学的に許容されるおよび薬理学的に許容されると同義に用いられる。薬学的組成物は、一般的に緩衝のためのおよび保管における防腐のための作用物質を含み、かつ投与の経路に応じて、適当な送達のための緩衝液およびキャリアを含み得る。
「用量」および「投薬量」という用語は、本明細書において互換可能に用いられる。用量とは、各投与で個体に与えられる活性成分の量を指す。本発明に関して、用量とは、Klothoポリペプチドの量を指す。用量は、投与の頻度;個体のサイズおよび許容範囲;病態のタイプおよび重症度;副作用のリスク;ならびに投与の経路を含めたいくつかの因子に応じて変動する。当業者であれば、用量が、上記の因子に応じてまたは治療の進行に基づいて修正され得ることを認識するであろう。「剤形」という用語は、医薬の特定の形式を指し、かつ投与の経路に依存する。例えば、剤形は液体、例えば注射のための生理食塩溶液の状態であり得る。
「対象」、「患者」、「個体」、および同様の用語は互換可能に用いられ、そして示されている場合を除いて、ヒトおよび非ヒト霊長類などの哺乳類、ならびにイヌ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、および他の哺乳類種を指す。該用語は、対象が特定の疾患を有すると診断されていることを必ずしも示すわけではないが、典型的には医学的管理下にある個体を指す。患者は、治療、モニタリング、既存の治療レジメンの調整または修正などを求めている個体であり得る。
III.Klotho
Klothoは、体および脳全体にわたって循環する、多面発現性のタンパク質でありかつ老化調節因子である(Imura et al. (2004) FEBS Letters 565:143;Kurosu et al. (2005) Science 309:1829)。ヒトKlothoは、GenBankアクセッション番号NC_000013およびUniprotアクセッション番号Q9UEF7で記載されている。SEQ ID NO:1として示されているヒトKlothoポリペプチドと86%および85%の同一性を共有するマウスおよびラットKlothoを含めた、いくつかの種ホモログが存在する。それは、細胞外部分(アミノ酸34〜979位)がホルモンとして放出されるように切断され得る膜貫通型で存在する(Shiraki-lika et al. (1998) FEBS Letters 424:6)。Klothoは、また機能的である549アミノ酸の分泌型のタンパク質をもたらすスプライス変種も有する(Wang and Sun (2009) Ageing Res. Rev. 8:43)。切断されたおよび分泌されたklothoの両方は、体内で可溶性でありかつ機能的であるが、スプライス変異によりC末端に配列変異を有する。アミノ酸535〜549位は、切断された可溶性のヒトKlothoに関しては、
Figure 2018509393
であり、そしてスプライシングされた可溶性のヒトKlothoに関しては、
Figure 2018509393
である。全長の可溶性Klothoは、βグリコシダーゼタンパク質との相同性を有する2つの保存されたドメイン(KL1およびKL2)を含む。保存されたβ-グルコシダーゼ/6-ホスホ-β-グルコシダーゼ/β-ガラクトシダーゼモチーフは、ヒトタンパク質において62〜497位およびマウスにおいて64〜499位に及ぶ。保存されたKL1配列は、Chateau et al. (2010) Aging 2:567およびMatsumura et al. (1998) Biochem Biophys Res Communに記載されており、そしてヒトKlothoタンパク質のアミノ酸34〜549位を含み、ヒトKlothoタンパク質のアミノ酸57〜506(マウスの59〜508)位に及ぶグリコシルヒドロラーゼコンセンサス領域を有する。Klothoは、β-グリコシダーゼ活性を有しないが、いくらかのβ-グルクロニダーゼ活性を示す。
Klothoは、インシュリンおよびwntシグナル伝達を抑制し、イオンチャネルおよびそれらの輸送を調節し、かつFGF23の機能を促進する。例えば、Chang et al. (2005) Science 310:490;Imura et al. (2007) Science 316:1615;Kurosu (2005);Liu et al. (2007) Science 317:803;およびUrakawa et al. (2006) Nature 444:770を参照されたい。
マウスにおいて、klothoのトランスジェニック過剰発現は、寿命を延ばしかつ正常なおよび罹患した脳におけるより良好な認知機能と関連している(Kurosu (2005);Dubal et al. (2014) Cell Reports 7:1065;Dubal et al. (2015) J. Neuroscience)。ヒトにおいて、分泌型klothoを増加させる、KLOTHO遺伝子のKL-VS変種の単一対立遺伝子は、長生きを促進し(Arking et al., 2002;Arking et al., 2005;Invidia et al., 2010)、かつ老齢人口におけるより良好なベースライン認知機能とも関連している。例えば、Arking et al. (2002) PNAS 99:856;Arking et al. (2005) Circ. Res. 96:412;Dubal et al (2014) Cell Reports 7:1065;Yokoyama et al. (2015) Ann. Clin. Translational Neurology 2:215を参照されたい。
投与に用いられ得るKlothoポリペプチドには、認知向上活性を保持する、野生型配列の種ホモログ(例えば、非ヒト霊長類、マウス、ラット)、対立遺伝子変種、機能的断片、および機能的変種が含まれる。例には、分泌型Klotho、KL1ドメインを含む断片、KL2ドメインを含む断片、KL1およびKL2ドメインを含む断片、1個の異なるアミノ酸で置換されたまたは欠失した、KL1ドメインにおける少なくとも1個の(例えば、1〜20、5〜50、25〜100個の)非保存アミノ酸を有するKL1ドメインを含む変種、1個の異なるアミノ酸で置換された、KL2ドメインにおける少なくとも1個の非保存アミノ酸を有するKL2ドメインを含む変種が含まれる。
本明細書において記載されるように用いられ得る、Klothoポリペプチドの機能的断片には、細胞外ドメイン(例えば、ヒトKlothoのアミノ酸34〜979位に相当する、またはそれと実質的に同一のもしくは類似した)、分泌型Klotho(例えば、549アミノ酸型に相当する、またはそれと実質的に同一のもしくは類似した)、KL1ドメイン(例えば、ヒトKlothoのアミノ酸34〜549位に相当する、またはそれと実質的に同一のもしくは類似した)、グリコシルヒドロラーゼコンセンサス配列(例えば、ヒトKlothoのアミノ酸57〜506位に相当する、またはそれと実質的に同一のもしくは類似した)、またはβ-グルコシダーゼ/6-ホスホ-β-グルコシダーゼ/β-ガラクトシダーゼコンセンサス配列(例えば、ヒトKlothoのアミノ酸62〜497位に相当する、またはそれと実質的に同一のもしくは類似した)が含まれる。一部の態様において、Klothoポリペプチドは、ヒトKlothoのアミノ酸34〜549位を含む、またはそれと実質的に同一であるもしくは類似している。一部の態様において、Klothoポリペプチドは、より大きな融合タンパク質の一部である。一部の態様において、融合タンパク質は、本明細書において記載されるKlothoポリペプチドを含み、かつ100、75、50、または30個以下の付加的アミノ酸をさらに含む。一部の態様において、Klothoポリペプチドは、線維芽細胞増殖因子(FGF)に融合されていない。一部の態様において、Klothoポリペプチドは、インビボにおける安定性または半減期を増加させるコンジュゲートまたはアフィニティータグ(例えば、ヒスチジンタグ)を含む(例えば、それに融合されている)。
Klothoの機能的変種または断片は、任意のklotho活性、例えば可溶性klothoの任意の活性のレベルの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%を保持する変種または断片である。可溶性klotho活性には、上記で記載されるものが含まれ、そしてFGF-23への結合性、FGFR1cへの結合性、β-グルクロニダーゼ活性、wntシグナル伝達の抑制、インシュリンシグナル伝達の抑制、TFG-β1活性の抑制、GluN2B発現および/またはシナプス局在の増加、c-fos誘導が含まれる。付加的なKlotho活性には、磁気共鳴画像法(MRI)による脳スキャン、例えば機能的MRI、脳波計(EEG)、および経頭蓋磁気刺激と電気刺激(TMSおよびTES)における変化を引き起こすこと;ならびに神経心理学的試験におけるパフォーマンスおよび認知能力の向上が含まれる。
IV.Klothoの投与
Klothoを個体に投与する工程を含む、個体における認知および/または運動機能を向上させる方法が本明細書において提供される。一部の態様において、治療の方法は、有効量のKlothoポリペプチド(またはその機能的変種もしくは断片)を個体に投与する工程を含む。一部の態様において、治療は、例えばストレス(例えば、時差ぼけ、軍事遂行)が予想される個体にとって予防的である、または老化に伴う認知衰退を阻止することである。一部の態様において、個体は、認知障害を有すると診断されている。一部の態様において、個体は、認知障害のためのまたは認知機能に関係する病態(例えば、化学療法に応答した認知衰退)のための療法を受けているところであるまたは受けたことがある。
一部の態様において、方法は、分子代理(例えば、脳内におけるNMDA受容体もしくはc-fosの活性化、またはGluN2Bレベルを変化させる)、MRI脳スキャン(例えば、機能的MRI)の変化、EEGの変化、TMSおよびTESの変化、神経心理学的試験スコアの変化、または認知能力(例えば、学習、短期または長期記憶、実行機能、言語能力、および視空間機能)の試験のいずれかにより、個体を認知能力についてモニターする工程をさらに含む。一部の態様において、個体を、1つを上回る数の上記の試験を任意の組み合わせで用いてモニターする。一部の態様において、各投与に対するKlothoポリペプチドの用量は、個体の治療の進行に基づいて決定され、例えば個体が療法に十分に応答していない場合にはより高用量が投与される。
一部の態様において、Klothoポリペプチドは、生理学的に(すなわち、薬学的に)許容されるキャリアとともに薬学的組成物の状態で投与される。「キャリア」という用語は、診断用または治療用作用物質のための希釈剤またはビヒクルとして用いられる典型的に不活性の物質を指す。該用語は、組成物に粘着性品質を付与する典型的に不活性の物質も包含する。生理学的に許容されるキャリアは液体、例えば生理学的生理食塩水、リン酸塩緩衝液、正常緩衝生理食塩水(135〜150mM NaCl)、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、安定性の増強を提供する糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)などであり得る。生理学的に許容されるキャリアは、一部には投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために用いられる特定の方法によって決定されるため、本発明の薬学的組成物の多種多様の適切な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17thed., 1989を参照されたい)。
目下開示される組成物は、従来的な周知の滅菌技法によって滅菌され得る、または滅菌条件下で産生され得る。水溶液は用途用にパッケージされ得または無菌条件下で濾過され得、かつ凍結乾燥され得、凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌水溶液と組み合わされる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、およびトリエタノールアミンオレエートなど、生理学的条件に近づけるために要される薬学的に許容される補助物質を含有し得る。凍結乾燥された抗体組成物のための安定剤など、組成物を安定させるために糖類も含まれ得る。
剤形は、患者への粘膜(例えば、経鼻、舌下、経膣、口腔、または直腸)、非経口(例えば、ボーラスまたは注入のいずれかでの、皮下、静脈内、筋肉内、または動脈内への注射)、経口、または経皮の投与のために調製され得る。剤形の例には、分散体;坐薬;軟膏;パップ(湿布);ペースト;粉末;包帯剤;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば、経鼻スプレーまたは吸入器);ゲル;懸濁液(例えば、水性もしくは非水性の液体懸濁液、水中油型エマルション、または油中水型エマルション)、溶液、およびエリキシル剤を含めた、患者への経口または粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば、結晶質または非晶質の固体)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
注射可能な組成物は、水性キャリアなどの許容されるキャリア中に懸濁されたKlothoポリペプチドの溶液を含み得る。多様な水性キャリアのいずれか、例えば水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.9%等張生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどが用いられ得、そしてそれはアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど、安定性の増強のための糖タンパク質を含み得る。一部の態様において、正常緩衝生理食塩水(135〜150mM NaCl)が用いられる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど、生理学的条件に近づける薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
例えば関節内(接合部内)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下の経路などによる非経口投与に適した製剤には、抗酸化物質、緩衝液、静菌薬、および製剤を所期のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性の等張滅菌注射液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。注射液および懸濁液は、滅菌した粉末、顆粒、および錠剤からも調製され得る。一部の態様において、組成物を、静脈内注入によって、局所的に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に投与する。Klothoポリペプチド製剤は、アンプルおよびバイアルなど、単位用量または多数回用量の密封された容器内に提供され得る。
Klothoポリペプチド組成物は、単独でまたは他の適切な構成要素と組み合わせて、吸入により投与される(「噴霧される」)エアロゾル製剤に作製され得る。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素など、加圧された許容される噴射剤中に置かれ得る。
薬学的調製物は、単位剤形にパッケージされ得るまたは調製され得る。そのような形態において、調製物は、例えばKlothoポリペプチドの用量に従って、適当な分量の活性構成要素を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージされた調製物であり得、パッケージは、別個の分量の調製物を含有する。所望の場合、組成物は、他の適合する治療剤も含有し得る。一部の態様において、Klothoポリペプチド組成物は、投与のためのキットに製剤化され得る。
一部の態様において、klothoポリペプチドを含む薬学的組成物は、経口で投与される。一部の態様において、klothoポリペプチドを含む薬学的組成物は、粘膜的に、例えば経鼻的に投与される。一部の態様において、klothoポリペプチドを含む薬学的組成物は、注射によって、例えば皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内に投与される。一部の態様において、klothoポリペプチドを含む薬学的組成物は、注入によって、例えばリザーバーまたは浸透圧ミニポンプを用いて投与される。
薬学的組成物の投与の例は、滅菌した等張性水性生理食塩溶液中にKlothoポリペプチドを10mg/mlで4℃にて保管する工程、および患者への投与前にそれを注射のための適当な溶液中に希釈する工程を含む。一部の態様において、Klothoポリペプチド組成物は、0.25〜2時間の経過にわたって静脈内注入によって投与され得る。一部の態様において、投与手順は、ボーラス注射によるものである。
治療的用途において、Klothoポリペプチドは、1日約0.1μg/kg〜約1000μg/kgの初回投薬量で投与され得、かつ経時的に調整され得る。約1μg/kg〜約500μg/kgまたは約10μg/kg〜約100μg/kgまたは約30μg/kg〜約50ug/kgの1日用量範囲が用いられ得る。投薬量は、患者の要件、治療されている病態の重症度、および投与の経路に応じて変動する。例えば、Klothoポリペプチドの注射に関して、有効用量は、典型的に10〜100μg/kgの範囲内にあり、一方で中枢神経系(CNS)への直接送達に関して、有効投薬量はより低く、例えば5〜30μg/kgである。経口投与に関して、有効用量はより高く、例えば50〜10,000μg/kg(例えば、100μg/kg〜2mg/kg)の範囲内にある。用量は、患者に対して有効な療法を提供するように選定される。投薬は、Klothoポリペプチド組成物の薬物動態(例えば、循環中での半減期)および薬力学的応答(例えば、治療効果の持続期間)に応じて、1日あたり1回または2回、1週間あたり1回または2回〜3ヶ月ごとに1回の範囲内にあり得る適当な頻度で繰り返され得る。
投与は周期的であり得る。投与の経路に応じて、用量は、例えば1、3、5、7、10、14、21、もしくは28日、またはそれよりも長い期間ごとに1回(例えば、2、3、4、または6ヶ月ごとに1回)投与され得る。ある場合には、投与はより高頻度、例えば1日あたり2または3回である。当業者によって認識されるであろうように、患者をモニターして、治療の進行および任意の有害な副作用に応じて、投薬量および投与の頻度を調整し得る。
投薬量は、特定の患者において診断された認知病態のタイプおよび重症度を考慮して、経験的に決定され得る。本開示の文脈において、患者に投与される用量は、経時的に患者において有利な治療的応答に影響を及ぼすのに十分でなければならない。技能を有する実施者によって認識されるであろうように、用量のサイズは、特定の患者における任意の特定の組成物の投与に付随する任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
一部の態様において、Klothoポリペプチド組成物は、少なくとも正常な認知機能を有する(例えば、ヒト)個体に投与される。本明細書において記載されるように、Klothoは、損なわれた認知を有する個体における認知を向上させ得るだけでなく、Klothoは、少なくとも正常な認知を有する個体の認知をも向上させ得ることが驚くべきことに発見された。ゆえに一部の態様において、Klothoポリペプチド組成物を受けている個体は、初めに少なくとも正常な認知から始まり、かつKlothoポリペプチド組成物の投与後、認知の初期レベルと比較して認知の向上を実現する。個体の認知のレベルは、当技術分野において公知であるように判定され得る。正常な認知機能は、Dubal DB et al. (2014) Cell Reports 7:1065-1076に記載されているように、全体的認知スコアにまとめられる認知試験のセットからのスコアによって判定される。そのような認知試験には、トレイルAおよびトレイルBなどの実行機能および作動記憶についての試験が含まれる(Dubal DB et al. (2014) Cell Reports 7:1065-1076)。一部の態様において、Klothoの投与は、少なくとも5%、10%、20%、またはそれを上回る割合の認知の向上をもたらす(初めに少なくとも正常であるまたは損なわれているかどうかにかかわらず)。
一部の態様において、投与は、運動機能の向上をもたらす。一部の態様において、Klothoポリペプチド組成物は、損なわれた運動機能を有する(例えば、ヒト)個体に投与される。例えば、一部の態様において、個体は、脳または脊髄に対する脳卒中(虚血性または出血性)、神経変性疾患(パーキンソン病、レビー小体認知症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、ハンチントン病、核上性麻痺)、パーキンソニズム、外傷性脳損傷、神経感染性脳病変、多発性硬化症ならびに関連した自己免疫疾患および脱髄疾患、脊髄病変(圧迫性、感染性、中毒性または代謝性、自己免疫性、腫瘍性)、脳腫瘍、てんかん、腫瘍随伴障害、神経発達障害(ミトコンドリア性、常染色体遺伝的)、筋疾患(多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、感染性、内分泌性、代謝性、中毒性、先天性ミオパチー、先天性筋ジストロフィー、遺伝性)、ニューロパチー(ギラン・バレー症候群、軸索性および脱髄性、糖尿病性、中毒性、代謝性、感染性、重症疾病性、絞扼性)、ダニ麻痺症、重症筋無力症、ならびに脊髄性筋萎縮症を有する。運動機能の変化は、当技術分野において公知のようにアッセイされ得る。例示的な運動機能アッセイには、筋電図および神経伝導調査、強度、緊張、および筋肉量の直接的なまたは装置支援の臨床テスト、反射検査、協調検査、ならびに歩行分析が含まれるが、それらに限定されるわけではない。運動機能の欠陥を引き起こす病因を試験するためのアッセイには、中枢神経系の磁気共鳴画像法、筋生検、神経生検、および実験室調査が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
ゆえに一部の態様において、付加的な投与は患者の進行に依存し、例えば投与の間に患者をモニターする。例えば、1回目の投与または投与のラウンドの後、認知能力について、または副作用、例えば衰弱、めまい、吐き気などについて患者をモニターし得る。
一部の態様において、個体は慢性的な病態を有し、そのためklothoは、無期限の期間にわたって、例えば患者の生涯の間投与される。そのような場合、投与は、典型的には周期的である。長期的または慢性的と見なされる疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ならびに高血圧および心疾患に伴う認知衰退が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
一部の態様において、Klothoポリペプチドは、PEG、グリコシル化、またはリポソームもしくは他のナノキャリアなどの安定化部分に連結される。米国特許第4,732,863号および第7892554号、ならびにChattopadhyay et al. (2010) Mol Pharm 7:2194は、PEG、PEG誘導体、およびナノ粒子(例えば、リポソーム)にポリペプチドを付着させるための方法を記載している。ホスファチジル-エタノールアミン(PE)を含有するリポソームは、本明細書において記載される確立された手順によって調製され得る。PEの内包は、付着のためのリポソーム表面に、活性を有する機能的部位を提供する。一部の態様において、Klothoポリペプチドは、アフィニティータグ、例えばヒスチジンタグ(例えば、4〜16個のヒスチジン残基)、ストレプトアビジン、または抗体標的に連結される。
Klothoポリペプチドは、持続放出性調製物(例えば、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド)の状態に)としても製剤化され得る。Klothoポリペプチドは、例えばコアセルベーション技法によってまたは界面重合によって調製されたナノ粒子、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルション中に封入され得る。
一部の態様において、Klothoポリペプチドは、例えば体内またはエクスビボでの追跡のために標識される。Klothoポリペプチドは、例えば以下の参考文献において提供される、当技術分野において公知の任意の診断用作用物質によって標識され得る:Armstrong et al., Diagnostic Imaging, 5thEd., Blackwell Publishing (2004);Torchilin, V. P., Ed., Targeted Delivery of Imaging Agents, CRC Press (1995);Vallabhajosula, S., Molecular Imaging: Radiopharmaceuticals for PET and SPECT, Springer (2009)。診断用作用物質は、検出可能なシグナルを提供しかつ/または増強させる作用物質としてを含めた、多様なやり方によって検出され得る。検出可能なシグナルには、γ線放射性、放射性、エコー源性、光学的、蛍光性、吸収性、磁気性、または断層撮影のシグナルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。診断用作用物質を撮像するための技法には、単一光子放出型コンピューター断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、光学的画像法、陽電子放出断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CT)、X線画像法、γ線画像法などが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。「検出可能な作用物質」、「検出可能な部分」、「標識」、「イメージング剤」という用語および同様の用語は、本明細書において同義に用いられる。
一部の態様において、標識には、蛍光性作用物質、リン光性作用物質、化学発光性作用物質など、光学的作用物質が含まれ得る。無数の作用物質(例えば、色素、プローブ、標識、または指示薬)が当技術分野において公知であり、そして本発明において用いられ得る。(例えば、Invitrogen, The Handbook- A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Edition (2005)を参照されたい)。蛍光性作用物質には、多様な有機および/もしくは無機の小分子、または多様な蛍光タンパク質およびその誘導体が含まれ得る。例えば、蛍光性作用物質には、シアニン、フタロシアニン、ポルフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、ジピロロピリミドン、テトラセン、キノリン、ピラジン、コリン、クロコニウム、アクリドン、フェナントリジン、ローダミン、アクリジン、アントラキノン、カルコゲノピリリウム類似体、クロリン、ナフタロシアニン、メチン色素、インドレニウム色素、アゾ化合物、アズレン、アザアズレン、トリフェニルメタン色素、インドール、ベンゾインドール、インドカルボシアニン、ベンゾインドカルボシアニン、およびBODIPY(商標)誘導体が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。蛍光色素は、例えば米国特許第4,452,720号、米国特許第5,227,487号、および米国特許第5,543,295号に記述されている。
標識は放射性同位体、例えばγ線、陽電子、ベータおよびアルファ粒子、ならびにX線を放つ放射性核種でもあり得る。適切な放射性核種には、
Figure 2018509393
が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一部の態様において、放射性作用物質には、111In-DTPA、99mTc(CO)3-DTPA、99mTc(CO)3-ENPy2、62/64/67Cu-TETA、99mTc(CO)3-IDA、および99mTc(CO)3トリアミン(環状または線状)が含まれ得る。一部の態様において、該作用物質には、DOTAおよび111In、177Lu、153Sm、88/90Y、62/64/67Cu、または67/68Gaを有するその様々な類似体が含まれ得る。一部の態様において、ナノ粒子は、以下の参考文献において提供される、DTPA-脂質など、キレートに付着した脂質の組み入れによって標識され得る:Phillips et al., Wiley Interdisciplinary Reviews: Nanomedicine and Nanobiotechnology, 1(1):69-83 (2008);Torchilin, V.P. & Weissig, V., Eds. Liposomes 2nd Ed.: Oxford Univ. Press (2003);Elbayoumi, T.A. & Torchilin, V.P., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging 33:1196-1205 (2006);Mougin-Degraef, M. et al., Int'l J. Pharmaceutics 344:110-117 (2007)。
一部の態様において、診断用作用物質は、二次的結合リガンドに、または発色性基質と接触すると着色産物を生成する酵素(酵素タグ)に関連し得る。適切な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋わさび)ペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase)、およびグルコースオキシダーゼが含まれる。二次的結合リガンドには、例えば当技術分野において公知のビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン化合物が含まれる。
V.認知の病態および障害
Klothoポリペプチド(ならびにその機能的変種および断片)を投与して、いくつかの病態および状況に関して認知を向上させることができる。これには、正常よりも低いもしくは衰退しつつある認知能力を有する個体の治療、または向上したもしくは増加した認知能力を必要としている個体の予防的治療が含まれる。
Klothoポリペプチド(ならびにその機能的変種および断片)を用いて、例えば50歳もしくはそれを上回る年齢の個体においてまたは認知衰退の初期兆候があれば、老化に伴う認知衰退を阻止し得るまたは軽減させることができる。
Klothoポリペプチド(ならびにその機能的変種および断片)を用いて、
神経変性疾患および認知症:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、軽度認知障害、血管性認知症、レビー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、HIV関連認知症;
精神障害または気分障害:うつ病、統合失調症、注意欠陥/多動性障害、自閉症スペクトラム障害、知的障害、気分障害、および精神病性障害;
小児期神経発達症候群および脳腫瘍:X連鎖精神障害または遅滞、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、乏突起膠腫;
学習に影響を及ぼす遺伝的症候群:ダウン症候群、アンジェルマン症候群、レット症候群;
認知に影響を及ぼす代謝障害:フェニルケトン尿症、レッシュ・ナイハン、ガラクトース血症、および副腎白質ジストロフィー;
化学療法および/または放射線療法に伴う認知衰退;ならびに
付加的な病態および障害:痛みに関連した認知作用、外傷性脳損傷、脳卒中、多発性硬化症、神経自己免疫疾患、てんかん、せん妄、腫瘍随伴障害、発達遅延、および白質ジストロフィー
を含むがそれらに限定されない、加齢に関連した、加齢に関連しない、または疾患に関連した病態を有する個体を治療することもできる。
Klothoポリペプチド(ならびにその機能的変種および断片)を投与して、認知の向上を望む個体、例えばストレス、断眠、もしくは時差ぼけに曝露された個体に対して、または外科医、航空交通管制官、および軍人など、より優れた認知機能を要する個体に対して、認知の増加を提供することもできる。そのような場合、klothoポリペプチド組成物は所望の効果の2〜24時間前に投与され得、効果は、作動記憶に関して約3〜5日間および空間記憶に関して約2週間続き得る。
認知能力は、例えば記憶、言語能力、実行機能、視空間機能、認知症、または多重パラメーターの神経心理学的能力を試験するための、当技術分野において公知の任意の方法を用いて測定され得る。一部の態様において、Klotho投与は、標準的な認知能力試験のスコアの少なくとも1%、2%、5%、7%、10%、15%、20%、30%、50%、またはそれを上回る割合の向上をもたらす(例えば、投与の1〜3日後に測定される)。一部の態様において、試験する工程は、個体に対して1回を上回る回数、例えばKlothoを用いた治療の経過にわたって1回または複数回実施される。
例えば、記憶および学習についての標準的試験を適用して、例えば意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング記憶、および/または作動(すなわち、短期)記憶を判定し得る。よく用いられる試験には、ケンブリッジ展望的記憶試験(CAMPROMPT)、記憶査定尺度(MAS)、レイ聴覚性言語学習試験、リバーミード行動記憶試験、記憶および学習の試験(TOMAL)、ウェクスラー記憶尺度(WMS)、ならびに記憶詐病の試験(TOMM)が含まれる。言語機能についての試験には、例えばボストン診断学的失語症検査(BDAE)、包括的失語症試験(CAT)、および多言語失語症検査(MAE)が含まれる。
実行機能(例えば、問題解決、立案、体系化、抑制制御)は、遂行機能障害症候群の行動査定(BADS)、CNSバイタルサイン(簡単なコアバッテリー)、制御された口頭単語連想試験(COWAT)、Delis-Kaplan実行機能システム(D-KEFS)、数字ヴィジランス試験、Kaplan Baycrest神経認知査定(KBNA)、HaylingおよびBrixton試験、注意変数試験(TOVA)、ウィスコンシンカード分類試験(WCST)、または日常の注意力試験(TEA)を用いて試験され得る。視空間能力(例えば、視覚、構築、および統合)は、クロックテスト、Hooper視覚体系化課題(VOT)、またはRey-Osterrieth複雑図形試験を用いて試験され得る。認知症は、臨床的な認知症評定または認知症評定尺度を用いて数値化され得る。
神経心理学的機能(例えば、認知機能)についての多重パラメーター試験には、バルセロナ神経心理学的試験(BNT)、ケンブリッジ神経心理学的自動検査バッテリー(CANTAB)、コグニスタット、認知査定スクリーニングツール(CASI)、認知機能スキャナー(CFS)、Dean-Woodcock神経心理学査定システム(DWNAS)、認知の一般的実践的査定(GPCOG)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、NEPSY、またはCDRコンピューター査定システムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
あるいは、認知は、例えば変化を検出するために経時的に比較された、認知活動のための構造的または分子的な代理を用いて判定され得る。認知変化は、例えばMRI、fMRI、EEG、TMS、およびTES、ならびに/またはこれらの任意の組み合わせによって、例えば脳の構造、接続性、活性化、阻害、またはシナプス可塑性に対する変化を観察することによって検出され得る。一部の態様において、脳活動を観察する。一部の態様において、Klotho投与は、脳活動の1.5倍、2倍、5倍、7倍、10倍、またはそれを上回る割合の増加をもたらす(例えば、投与の1〜3日後に測定される)。認知の向上のための分子代理には、脳内におけるGluN2Bのレベルの増加、GluN2Bシナプス局在の増加、NMDA受容体活性化の増加、およびc-fos活性化の増加が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの測定は、認知にとくに関連している。そのような方法は、例えば個体から神経組織またはCSFのサンプルを獲得する工程、および遺伝子の発現または活性化を判定する標準的アッセイを用いる工程を含む。
同じように、マウスおよび他の非ヒト動物において、認知能力は、例えば実行機能(作動記憶、注意、処理スピード、セットシフティング)、視空間の学習および記憶、対象記憶、パターン認識、恐怖記憶、受動的回避記憶、馴化、ならびに新規対象認識の測定を用いて試験され得る。よく用いられる試験には、モリス水迷路、バーンズ迷路、放射アーム水迷路、Y迷路、T迷路、およびオープンフィールド馴化が含まれるが、それらに限定されるわけではない。脳イメージング技法が同じように適用可能である。
VI.実施例
実施例1:
A.材料および方法
マウス。すべてのマウスはC57BL/6Jバックグラウンドであり、そして食料(Picolab Rodent Diet 20、Labdiet)および水への随意アクセスを有して、12時間の明/暗サイクルで飼われた。標準的な飼育群は、水迷路調査の間の1つの飼育を除いて、ケージあたり5匹のマウスであった。すべての認知および行動の調査を明サイクル中に実施した。すべての調査を盲検様式で行った。
処理。ビヒクルまたはklotho(組換えマウスklotho、アミノ酸35〜982位、C末Hisタグを有する、R&D Systems)を、マウスの行動試験の前に腹腔内に(i.p.)注射した。
モリス水迷路認知行動試験。水迷路調査を、Dubal et al. (2014) Cell Reports 7:1065;Dubal et al. (2015) Journal of Neuroscience 35:2358に記載されているように実施した。マウスを、5日間毎日試験する4時間前に、ビヒクルまたはklotho(10μg/kg)i.p.のいずれかで処理した。簡潔には、マウスを白色の不透明な水(21°±1℃)を有するプール(直径、122cm)中で試験した。正方形の14cm2プラットフォームは、水面下2cmであった。隠しプラットフォーム訓練の前に、マウスは、水路を泳ぎ抜けて隠しプラットフォームに上ることによる、2回の事前訓練試行を受けた。隠しプラットフォーム訓練の経過にわたって、プラットフォーム位置は一貫したままであり、一方で投下位置は試行中に変動した。マウスは、4日間毎日、それぞれ60秒間の2回の試行からなる2種の訓練セッションを受けた。探査試行試験に関しては、プラットフォームを取り外し、かつマウスを60秒間泳がせた。1時間および24時間の探査試行の後、マウスを、2種のセッションにわたって、キュー(プラットフォーム上の15cmのポール)で印付けされた目に見えるプラットフォームを見出し得るそれらの能力について試験した。調査の一部として、遊泳速度も記録した。
Y迷路認知行動試験。Y迷路調査を、Dubal et al. (2014) Cell Reports 7:1065に記載されているように実施した。マウスを、試験の18時間前にビヒクルまたはklotho(10μg/kg)i.p.のいずれかで処理した。簡潔には、試験の30分前に、マウスを部屋に順応させた。次いで、マウスをY迷路の1つのアーム(3つ同一のアーム、120°離れている)に置き、かつ4分間探索させた。アーム進入を記録し、かつマウスが連続的アーム進入で3つのアームのそれぞれに進入したときにはいつでも交替行動を書き留めた;偶然の交替行動は22%であった。試験セッションの間、機器を70%アルコールで掃除した。交替行動%を、記録されたデータから算出した。
B.全身性klotho送達は、若齢マウスにおいて作動記憶を増強させる
klothoの治療的送達が認知を増強させ得るかどうかを検討するために、本発明者らは、マウスに組換えklotho(i.p.)を注射し、かつ18時間後にY迷路で作動記憶を試験した。ビヒクル処理されたマウスと比較して、klotho処理されたマウスはより多くの交替行動を示し、より優れた作動記憶が示された(図1A)。ゆえに、全身性klotho送達は、前頭皮質の脳領域を伴う過程である作動記憶を増強させた。
C.全身性klotho送達は、若齢マウスにおいて空間学習を増強させる
次に本発明者らは、klotho処理が、モリス水迷路において空間学習を増強させるかどうかを試験した。本発明者らは、1群のマウス(コホート1)において、5日間毎日試験する4時間前に、マウスに組換えklotho(i.p.)を注射した。ビヒクル処理されたマウスと比較して、klotho処理されたマウスは、隠しプラットフォーム位置の空間学習においてより良好にパフォーマンスした(図1B)。両群は、同等のスピードで泳いだ(図1C)。マウスの独立した群(コホート2)において、本発明者らは、毎日試験する18時間前に、組換えklotho(i.p.)を注射した。再度、ビヒクル処理されたマウスと比較して、klotho処理されたマウスは、空間学習においてより良好にパフォーマンスした(図1D)。ゆえに、全身性klotho送達は、前頭皮質および海馬の脳領域を伴う過程である空間学習を増強させた。
D.全身性klotho送達は、若齢マウスにおいて空間記憶を増強させる
klotho処理が空間記憶を増強させ得るかどうかを判定するために、本発明者らは、プラットフォームを取り外し、かつモリス水迷路における隠し訓練後に探査試験を実施した。コホート1の探査試行において、標的エリアに対するマウスのアフィニティーを測定することによって、空間記憶保持力を査定した。1時間の時点での探査試験において、klotho処理されたマウスは、ビヒクル処理された対照と比較して、標的中心でより多くの時間を過ごし(図1E)、標的を横断する頻度の増加を示し(図1F)、かつ標的四分円での時間を増加させた(図1G)。24時間の時点での探査試験において、klotho処理されたマウスは、ビヒクル処理されたマウスと比較して、より多くの中心持続期間(図1H)、横断頻度(図1I)、および標的四分円での時間%(図1J)を示し続けた。ゆえに、全身性klotho送達は、海馬の脳領域に関与する過程である空間記憶を増強させた。
データは、klothoの全身送達が、マウスにおける正常な認知を増強させることを示している。Klotho処理は、作動記憶、空間学習、および空間記憶を含めた、多数の試験および測定において学習および記憶を向上させた。これらの知見は、正常な脳の認知増強、ならびに正常な老化、無数の神経変性疾患、神経疾患、および精神疾患、小児期発達症候群、外傷性脳損傷、およびストレスによる認知機能障害に関連するがそれらに限定されない療法である、認知機能を強化するための直接的治療適用を提供する。
実施例2
方法
マウス。すべてのマウスはC57BL/6Jバックグラウンドであり、そして食料(Picolab Rodent Diet 20、Labdiet)および水への随意アクセスを有して、12時間の明/暗サイクルで飼われた。標準的な飼育群は、水迷路調査の間の1つの飼育を除いて、ケージあたり5匹のマウスであった。すべての運動、認知、および行動の調査を明サイクル中に実施した。すべての調査を盲検様式で行った。
老齢マウス(18ヶ月齢)をNIH老化コロニーから獲得し、そして実験で用いた。α-シヌクレイン毒性に関連したヒト神経変性疾患をモデル化するトランスジェニックマウスを実験で利用した;これらのマウスは、マウスThy-1プロモーターから全長ヒトα-シヌクレインを発現し(Rockenstein E, et al. (2002) J Neurosci Res 68:568-578)、かつ運動、認知、および行動の欠陥を呈する。ヒトα-シヌクレインタンパク質の発現の増加は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、レビー小体認知症(LBD)、および多系統萎縮症(MSA)を含むがそれらに限定されない、ヒト病態におけるいくつかの神経変性疾患に寄与する。
処理。ビヒクルまたはα-klotho(組換えマウスα-klotho、アミノ酸35〜982位、C末Hisタグを有する、R&D Systems)を、示されるように、マウスの行動試験の前に腹腔内に(i.p.)注射した。すべての動物調査は、サンフランシスコ・カリフォルニア大学の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認され、かつNIHガイドラインを順守して行われた。
認知行動および運動行動
モリス水迷路。水迷路調査を、記載されているように実施した(Zarei M, et al. (2013) J Neurol Neurosurg Psychiatry 84:875-881;Dubal DB et al. (2014) Cell Reports 7:1065-1076)。マウスを、5日間毎日試験する4時間前に、ビヒクルまたはklotho(10μg/kg)i.p.のいずれかで処理した。簡潔には、マウスを白色の不透明な水(21°±1℃)を有するプール(直径、122cm)中で試験した。正方形の14cm2プラットフォームは、水面下2cmであった。隠しプラットフォーム訓練の前に、マウスは、水路を泳ぎ抜けて隠しプラットフォームに上ることによる、2回の事前訓練試行を受けた。隠しプラットフォーム訓練の経過にわたって、プラットフォーム位置は一貫したままであり、一方で投下位置は試行中に変動した。マウスは、4日間毎日、それぞれ60秒間の2回の試行からなる2種の訓練セッションを受けた。探査試行試験に関しては、プラットフォームを取り外し、かつマウスを60秒間泳がせた。1時間および24時間の探査試行の後、マウスを、2種のセッションにわたって、キュー(プラットフォーム上の15cmのポール)で印付けされた目に見えるプラットフォームを見出し得るそれらの能力について試験した。調査の一部として、遊泳速度も記録した。
Y迷路。Y迷路調査を、記載されているように実施した(Dubal DB et al. (2014) Cell Reports 7:1065-1076)。マウスを、試験の18時間前にビヒクルまたはklotho(10μg/kg)i.p.のいずれかで処理した。簡潔には、試験の30分前に、マウスを部屋に順応させた。次いで、マウスをY迷路の1つのアーム(3つ同一のアーム、120°離れている)に置き、かつ4分間探索させた。アーム進入を記録し、かつマウスが連続的アーム進入で3つのアームのそれぞれに進入したときにはいつでも交替行動を書き留めた;偶然の交替行動は22%であった。試験セッションの間、機器を70%アルコールで掃除した。交替行動%を、記録されたデータから算出した。
大型Y迷路。大型Y迷路調査を、若干の改変を有して、記載されているように実施した(Dellu F, et al. (1992) Brain Res 588:132-139)。大型Y迷路機器は、2つのアームの後部に個別のかつ異なる目に見えるキューを有する、120°離れた3つの同一のアームからなり、目に見えるキューを有しない第三のアームが開始アームである。訓練または試験の前に、マウスを薄暗い部屋に60分間順応させた。訓練中、目に見えるキューを有する1つのアームを固体の仕切りで遮断し、かつマウスを開始アームの端に置いた。マウスにオープンアームを5分間探索させ、次いでそれらのケージに戻した。訓練で用いられたオープンアーム(見慣れたアーム)は、コホート試験を通じて均衡が保たれた。訓練の16時間後、マウスは試験を受けた。試験中、仕切りは取り外された。マウスを開始アームに置き、かつ新規のおよび見慣れた目に見えるキューを有するアーム(新規アームおよび見慣れたアーム)を5分間探索させた。新規のおよび見慣れたアームにおける進入の回数および過ごした時間の持続期間を記録しかつ測定した。見慣れたアームの進入または持続期間に対する新規の比率を算出して、空間記憶および作動記憶を査定した。セッションの間、機器を70%アルコールで掃除した。
ロータロッド。各セッションの60分前に、マウスを部屋に順応させた。5匹のマウスを、最大300秒間、16rpmの一定のスピードで回転ロッド(ロータロッド、Med Associates Inc, VT)に同時にのせた。各試行において、落下までの待ち時間を記録した。試行間に10分間の休憩を有して、3回の試行を連続して実施した。試験セッションの間、機器を70%アルコールで掃除した。
オープンフィールド。オープンフィールドにおける全活動を、自動Flex-Field/Open Field Photobeam Activity System(San Diego Instruments, San Diego, CA)を用いて、記載されているように測定した(Dubal DB, et al. (2015) J Neurosci 35:2358-2371)。マウスを試験室に30分間順応させ、次いで、移動を測定する2つのフォトビームアレイを有する透明なプラスチック製チャンバー(41×30cm)中で5分間試験した。試験セッションの間、機器を70%アルコールで掃除した。
結果
全身性klotho送達は、老齢マウスにおいて認知を増強させる。klothoの治療的送達が老齢マウスにおいて認知を増強させ得るかどうかを判定するために、本発明者らは、マウスに組換えklotho(i.p.、10μg/kg)を1回注射し、次いで24時間後、大型Y迷路における作動記憶および空間記憶を測定する課題のためにそれらを訓練した。次いで、訓練の18時間後(klotho送達の42時間後)、マウスは試験を受けた。ベースラインにおいて、およびklotho処理なしで、老齢マウスは新規アーム選好性を示さず、認知欠陥が示された。ビヒクル処理されたマウスと比較して、klotho処理されたマウスは、探索を通じて大いに新規アームに対する持続的選好性を示し(図2A、B)、前頭および海馬の脳領域を伴うより良好な認知が示された。これらのデータは、klothoが、加齢誘導性の認知欠陥を有するマウスにおいて認知を増強させることを示している。これらのデータは、klothoの治療的送達が、老化脳において認知を増強させることを示唆する。
全身性klotho送達は、長続きする様式で認知を増強させる。klothoの治療的送達が、7時間というその半減期を超えて継続する様式で長続きする認知増強を誘導し得るかどうかを判定するために(Hu MC, et al. (2015) J Am Soc Nephrol.)、本発明者らは、5日間の毎日のklotho処理および認知試験(i.p.、0.5または2.5μg/kg)のおよそ2週間後に若齢マウスを試験した。予想どおり、ビヒクル処理されたマウスは、新規アームに対する選好性を示さず、2週間後の目に見えるキューに対する記憶の喪失が示された。対照的に、klotho処理されたマウスは、最後の処理の2週間後でさえかつ用量依存的様式で、迷路の新規アームに対する明白な選好性を示した(図3)。これらのデータは、正常な若齢マウスにおけるklotho仲介性の認知増強が長続きし、かつその半減期を超えて少なくとも2週間継続したことを示す。これらのデータは、klothoの治療的送達が、神経機能を増強させる脳内の組織変化を誘導することを示唆する。
全身性klotho送達は、神経変性疾患をモデル化するマウスにおいて認知機能障害を向上させる。次に、本発明者らは、klothoの急性の治療的送達が、神経変性疾患のマウスモデルにおいて既存の認知欠陥を向上させ得るかどうかを試験した。この十分に特徴付けされた疾患のモデルにおいて、マウスは、認知および運動の欠陥を引き起こし、かつパーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、および多系統萎縮症に寄与する病原性タンパク質であるヒトα-シヌクレイン(hSYN)を発現する。これらのマウスにおいて、認知機能を大型Y迷路で査定した。この課題は、それが、探索するマウスの天然の傾向を利用し、試験誘導性ストレッサーを回避し、かつ他の試験を制限する運動困難(水迷路中を適当に泳ぐことができないことなど)によって影響を受けないため最適である。非トランスジェニック(NTG)マウスと比較して、hSYNマウスは、持続期間の減少によって示されるように、新規アームに対する選好性の減少を示した(図4A)。際立ったことには、hSYNマウスのklotho処理(i.p.、2.5μg/kg)は、新規アーム選好性を増加させ(図4A、B)、急性のかつ治療的な認知向上が示された。新規アーム選好性を増加させることによって示されるように、記憶を増強させることにおいてklotho処理の全体的効果があった(二元配置ANOVA KL効果p<0.05)(図4B)。これらのデータは、klothoの治療的送達が、神経変性疾患においてα-シヌクレイン毒性によって引き起こされる認知欠陥を逆転させ得るまたは向上させ得ることを示唆する。留意すべきは、klotho仲介性の認知増強は、運動学習の向上に寄与し得る。
全身性klotho送達は、神経変性疾患をモデル化するマウスにおいて、早期運動機能障害を向上させる。α-シヌクレイン毒性は、神経変性疾患における主要な臨床的問題である運動機能の欠陥を誘導するため、本発明者らは、klothoの治療的送達が、hSYNマウスにおいてこの重要な測定を向上させ得るかどうかを試験した。運動機能を、ロータロッドである回転式ロッド上で査定した。NTGマウスと比較して、hSYNマウスは運動機能の減少を示した(図5)。際立ったことには、hSYNマウスのklotho処理(i.p.、2.5μg/kg)は、回転式ロッド上でのより長い待ち時間によって示されるように、運動機能を急性に増加させた(図5)。これらのデータは、klotho処理が、hSYNマウスにおいて早期運動機能を急性に向上させることを示す。これらのデータは、klothoの治療的送達が、神経変性疾患においてα-シヌクレイン毒性によって引き起こされる運動問題に関連した欠陥を向上させ得ることを示唆する。
全身性klotho送達は、マウスの全体的移動または活動を変更しない。klotho送達がマウスの全体的移動および活動を変更するかどうかを調べるために、本発明者らは、オープンフィールドのマウス探索を調べた。全体的移動は、Veh処理またはKL処理された(i.p.、2.5μg/kg)マウスの間で異ならなかった(図6)。これらのデータは、klothoの治療効果が、認知機能および運動機能に特異的であり、かつ多動性などの非特異的動作によって左右されないことを示唆する。
考察
本発明者らのデータは、脳血液関門を横断しないklothoの全身送達が、長続きする様式で若齢マウスにおいて正常な認知を増強させ、正常な若齢マウスにおいておよび老齢マウスにおいて認知欠陥を向上させ;それは、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体認知症、および多系統萎縮症などの主要な神経変性疾患をモデル化するトランスジェニックマウスにおいて認知および運動の欠陥をも向上させることを示している。
これらの知見は、正常な脳において認知機能を強化するための、ならびに老化および神経変性疾患において脳機能を向上させるための直接的治療適用を提供する。この治療適用は、無数の神経疾患および精神疾患、小児期発達症候群、外傷性脳損傷、ならびにストレスによる認知機能障害にも関連するが、それらに限定されるわけではない。
本発明者らのデータは、以下のことを示している。
1.マウス組換えklotho型の全身投与は、若齢(2〜7ヶ月)から老齢(18ヶ月)の雄および雌のマウスの寿命を通じて正常な認知を増強させる。
2.全身性klotho療法は、試験の4時間〜16日前に与えられた場合、認知を増強するのに有効である。認知増強効果は、広範な認知訓練後少なくとも2週間続く。
3.0.5μg/kg〜10μg/kgのマウスklothoの全身投薬は、試験された病態において認知を増強させる。
4.組換えklothoを用いた全身性療法は、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体認知症、および多系統萎縮症に関連するがそれらに限定されない神経変性疾患のマウスモデルにおいて認知を増強させる。
5.神経変性疾患のマウスモデルにおいて認知欠陥を向上させることに加えて、klotho療法は、早期運動機能も向上させた。
6.認知を増強させることに対するklothoの治療効果は、およそ7時間というその半減期をはるかに超えて継続する。
7.klothoの治療効果は、認知機能および運動機能に特異的であると思われ、かつ多動性などの非特異的動作によって左右されない。
上記の実施例は、本発明を例証するために提供されるが、その範囲を限定するわけではない。本発明の他の変種は、当業者に容易に明らかであると考えられ、かつ添付の特許請求の範囲によって包含される。本明細書において引用されるすべての刊行物、データベース、インターネット情報源、特許、特許出願、およびアクセッション番号は、すべての目的のために参照によりそれらの全体として本明細書によって組み入れられる。
VII.非公式な配列表
SEQ ID NO:1:ヒトKlothoタンパク質
Figure 2018509393
Figure 2018509393

Claims (29)

  1. Klothoポリペプチドまたはその機能的断片を含むタンパク質の有効量を個体に投与する工程であって、該投与が全身性または末梢性であり、それによって個体における認知機能を向上させる、工程
    を含む、それを必要としている個体における認知機能を向上させるための方法。
  2. タンパク質がKlothoポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記投与が、経口的であるか、粘膜的であるか、または注射によって実施される、請求項1に記載の方法。
  4. 注射が、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内注射である、請求項3に記載の方法。
  5. 個体がヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  6. ヒトが、少なくとも正常な認知機能を有し、かつ前記投与が、投与前と比較して認知機能の向上をもたらす、請求項5に記載の方法。
  7. ヒトが50歳以上である、請求項5に記載の方法。
  8. ヒトが、加齢に関連した認知衰退を有する、請求項7に記載の方法。
  9. ヒトが50歳未満である、請求項5に記載の方法。
  10. 個体が、神経変性疾患を有するヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、軽度認知障害、血管性認知症、レビー小体認知症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、およびHIV関連認知症からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 個体が、うつ病、統合失調症、注意欠陥/多動性障害、自閉症スペクトラム障害、知的障害、気分障害、および精神病性障害からなる群より選択される病態を有するヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  13. 個体が、外傷性脳損傷、脳卒中、多発性硬化症、神経自己免疫疾患(neuroautoimmune disease)、てんかん、せん妄、および腫瘍随伴障害からなる群より選択される病態を有するヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  14. 個体が、X連鎖精神障害、ダウン症候群、アンジェルマン症候群、レット症候群、フェニルケトン尿症、レッシュ・ナイハン、ガラクトース血症、および副腎白質ジストロフィーからなる群より選択される病態を有するヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  15. 個体が、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、および乏突起膠腫より選択される病態を有するヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  16. 個体が、癌に対する放射線治療または化学療法を受けているヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  17. 個体が、断眠または時差ぼけを経験しているところであるまたは24時間以内に経験するであろうヒトである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  18. Klothoポリペプチドが、SEQ ID NO:1のアミノ酸34〜534位に対して少なくとも85%の同一性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  19. Klothoタンパク質が、KL1ドメインを含む機能的断片である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  20. Klothoタンパク質が、KL1およびKL2ドメインを含む機能的断片である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  21. Klothoタンパク質が、SEQ ID NO:1のアミノ酸34〜979位に対して少なくとも85%の同一性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記有効量が、個体の体重1kgあたり1ug〜1000ugである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  23. Klothoポリペプチドまたはその機能的断片が、治療の経過の一部として1回を上回る回数投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  24. Klothoポリペプチドまたはその機能的断片が、1〜7日に1回投与される、請求項23に記載の方法。
  25. 投与後に個体の認知機能を試験する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  26. 投与前に個体の認知機能を試験する工程、ならびに投与前後の個体の認知機能を比較する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
  27. 認知機能が、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング記憶、および/または作動記憶について個体を試験することによって判定される、請求項25または26に記載の方法。
  28. 認知機能が、言語能力、実行機能、視空間機能、または認知症について個体を試験することによって判定される、請求項25または26に記載の方法。
  29. Klothoポリペプチドまたはその機能的断片を含むタンパク質の有効量を個体に投与する工程であって、該投与が全身性または末梢性であり、それによって、投与前と比較して個体における運動機能を向上させる、工程
    を含む、それを必要としている個体における運動機能を向上させるための方法。
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