JP2018507865A - 肝細胞へのミトコンドリアの標的化移植 - Google Patents
肝細胞へのミトコンドリアの標的化移植 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018507865A JP2018507865A JP2017544947A JP2017544947A JP2018507865A JP 2018507865 A JP2018507865 A JP 2018507865A JP 2017544947 A JP2017544947 A JP 2017544947A JP 2017544947 A JP2017544947 A JP 2017544947A JP 2018507865 A JP2018507865 A JP 2018507865A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cells
- mitochondria
- asor
- asg
- mitochondrial
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K35/00—Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
- A61K35/12—Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K38/00—Medicinal preparations containing peptides
- A61K38/16—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- A61K38/17—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- A61K38/1703—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
- A61K38/1709—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K47/00—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
- A61K47/50—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates
- A61K47/51—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates the non-active ingredient being a modifying agent
- A61K47/62—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates the non-active ingredient being a modifying agent the modifying agent being a protein, peptide or polyamino acid
- A61K47/64—Drug-peptide, drug-protein or drug-polyamino acid conjugates, i.e. the modifying agent being a peptide, protein or polyamino acid which is covalently bonded or complexed to a therapeutically active agent
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K47/00—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
- A61K47/50—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates
- A61K47/51—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates the non-active ingredient being a modifying agent
- A61K47/62—Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient the non-active ingredient being chemically bound to the active ingredient, e.g. polymer-drug conjugates the non-active ingredient being a modifying agent the modifying agent being a protein, peptide or polyamino acid
- A61K47/64—Drug-peptide, drug-protein or drug-polyamino acid conjugates, i.e. the modifying agent being a peptide, protein or polyamino acid which is covalently bonded or complexed to a therapeutically active agent
- A61K47/645—Polycationic or polyanionic oligopeptides, polypeptides or polyamino acids, e.g. polylysine, polyarginine, polyglutamic acid or peptide TAT
- A61K47/6455—Polycationic oligopeptides, polypeptides or polyamino acids, e.g. for complexing nucleic acids
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P1/00—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
- A61P1/16—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for liver or gallbladder disorders, e.g. hepatoprotective agents, cholagogues, litholytics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P43/00—Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N5/00—Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
- C12N5/10—Cells modified by introduction of foreign genetic material
- C12N5/12—Fused cells, e.g. hybridomas
Abstract
本開示は、とりわけ、ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質と、少なくとも部分的に精製され、AsG−ポリカチオン分子に静電的に結合している機能的な哺乳動物ミトコンドリアとを含む組成物およびキット;ならびにそれらの調製方法および使用方法に関する。他の態様では、本開示は、肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止する医薬組成物を作製する方法であって、細胞から機能的な哺乳動物ミトコンドリアを少なくとも部分的に精製するステップと;AsGを、高度に正に帯電したポリカチオンに共有結合によって付着させるステップと;AsG/ポリカチオン分子をミトコンドリアと静電的に結合させるステップとを含む方法を提供する。
Description
配列表の組込み
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2016年2月24日に作製された前記ASCIIコピーは、1900−422_SL.txtと称し、1,323バイトのサイズである。
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2016年2月24日に作製された前記ASCIIコピーは、1900−422_SL.txtと称し、1,323バイトのサイズである。
本発明は、細胞内のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患および状態の分野に関する。
ミトコンドリアは、それ自体のDNAおよび代謝系を含有する、膜により限定される細胞内の小器官であり、哺乳動物細胞の発電所として機能する。代謝活性が最大である臓器は、エネルギーを最も多く必要とし、また、細胞1個当たりのミトコンドリア数も最大である。
機能不全を結果としてもたらす、遺伝的および後天的ミトコンドリア欠損は、肝臓損傷に起因する疾患を引き起こし、しばしば、早死を引き起こす。遺伝的欠損はまれであるが、通例、生涯の早期において致死性である。しかし、薬物毒性に起因する、後天的ミトコンドリア損傷は、比較的一般的であり、成人において、重度の病的状態および死をもたらしうる。現在のところ、ミトコンドリアの欠損または損傷に対する医療は存在しない。
本開示は、ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質(AsG)と、少なくとも部分的に精製され、AsG−ポリカチオンに静電的に結合している機能的な哺乳動物ミトコンドリアとを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着しているエンドソーム溶解剤をさらに含む。
他の態様では、本開示は、肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止する医薬組成物を作製する方法であって、細胞から機能的な哺乳動物ミトコンドリアを少なくとも部分的に精製するステップと;AsGを、高度に正に帯電したポリカチオンに共有結合によって付着させるステップと;AsG/ポリカチオン分子をミトコンドリアと静電的に結合させるステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、エンドソーム溶解剤を用意するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、AsGに共有結合によって付着している。なおさらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着している。
他の態様では、本開示は、ミトコンドリアを肝細胞に移植する方法であって、AsG−PLと静電的に複合体化している機能的な哺乳動物ミトコンドリアを含む医薬組成物を用意するステップと;前記組成物を肝細胞に送達するステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着しているエンドソーム溶解剤をさらに含む。
ある特定の態様では、本開示は、ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質(AsG)と;少なくとも部分的に精製された、AsG/ポリカチオンに静電的に結合している機能的な哺乳動物ミトコンドリアとを含む医薬組成物と;前記組成物を使用して肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止するための指示とを含むキットを提供する。
ある特定の他の態様では、肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止する方法であって、治療有効量の本明細書で開示される医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法が提供される。
本発明のこれらの態様および他の態様に従い、他の多数の態様が提供される。本発明の他の特色および態様は、以下の詳細な記載および付属の特許請求の範囲から、より完全に明らかとなる。
いくつかの図面をカラーからモノクロに転換した。
本明細書で使用される場合、名詞の前の「a(1つの、ある)」または「複数」という語は、特定の名詞の1または複数を表す。例えば、「哺乳動物細胞」という語句は、「1または複数の哺乳動物細胞」を表す。
「哺乳動物細胞」という用語は、当技術分野で公知であり、例えば、ヒト、ハムスター、マウス、グリーンモンキー、ラット、ブタ、ウシ、ハムスター、またはウサギを含む、任意の哺乳動物に由来するか、またはこれから得られた任意の細胞を指す場合がある。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、不死化細胞、分化細胞、未分化細胞、幹細胞などでありうる。
本明細書で使用される場合、「被験体」および「患者」という用語は、互換的に使用される。患者または被験体は、ヒト患者またはヒト被験体でありうる。
「例えば」および「など」という用語、ならびにそれらの文法的同等物については、そうでないことが明示的に言明されない限りにおいて、「限定せずに述べると(and without limitation)」という語句が後続すると理解される。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、実験の誤差に起因するばらつきを説明することを意図する。本明細書で報告される全ての測定値は、そうでないことが明示的に言明されない限りにおいて、用語が明示的に使用されているのであれ、されていないのであれ、「約」という用語により修飾されていると理解される。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、そうでないことが文脈により明確に指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書では、本発明における使用のための方法および材料が記載され、また、当技術分野で公知の、他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および例は、例示的であるだけであり、限定することを意図するものではない。本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース項目、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。対立する場合は、定義を含む本明細書により管理する。
肝臓細胞(肝細胞)は、ガラクトース残基を露出させた、アシアロ糖タンパク質(AsG)として公知のタンパク質を認識し、これに結合する、固有の細胞表面受容体を有する。AsGの、その受容体への結合は、細胞表面膜の陥入を誘発し、最終的には、受容体−糖タンパク質複合体を細胞内膜により限定される小胞であるエンドソーム内に隔離する。エンドソームは、分解酵素を含有するリソソームと融合する結果として、糖タンパク質の分解をもたらす。アシアロ糖タンパク質受容体系は、細胞外の物質が、細胞の内部へのアクセスを獲得しうる天然の機構を表し、例えば、図1を参照されたい。
哺乳動物の肝細胞は、高度な分化細胞である。しかし、大半の分化細胞と異なり、肝細胞は、臓器が損傷されると、分裂することが可能である。ミトコンドリアは、それら自身のDNAを有するため、宿主細胞が分裂すると、複製が可能である。宿主細胞の分裂中に、ミトコンドリアの数は、娘細胞が、元の親細胞と同じ数のミトコンドリアを含有するように増大する。ミトコンドリアが欠損しているか、または損傷されている肝細胞への、健常ミトコンドリアのターゲティングは、これらの細胞に、選択的生存の利点を付与する。結果として、これらの細胞は、増殖し、最終的に、欠損性細胞に置きかわる。
ミトコンドリア損傷に起因する肝不全を有する患者の処置は、支持医療または肝臓移植に限られている。現在のところ、他の処置は存在しない。
本開示は、ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質(AsG)と;少なくとも部分的に精製され、AsG−ポリカチオンに静電的に結合している機能的な哺乳動物ミトコンドリアとを含む医薬組成物を含む組成物を提供する。
他の態様では、本開示は、肝疾患(例えば、肝不全)など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止する医薬組成物を作製する方法であって、細胞から機能的なミトコンドリアを少なくとも部分的に精製するステップと;AsGをポリカチオンに共有結合によって付着させるステップと;高度に正に帯電したポリカチオンに共有結合によって結合しているAsGをミトコンドリアと静電的に複合体化させるステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、エンドソーム溶解剤を用意するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、エンドソーム溶解剤は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着させることができる。
他の態様では、本開示は、ミトコンドリアを、肝細胞に移植する方法であって、AsG−PLと静電的に複合体化している機能的な哺乳動物ミトコンドリアを用意するステップと;前記組成物を肝細胞に送達するステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、エンドソーム溶解剤をさらに含む。さらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着している。
ある特定の実施形態では、AsGは、肝細胞などの細胞上のその受容体に結合しうる、任意のAsGである。一部の実施形態では、AsGは、アシアロオロソムコイド(AsOR)を含む。
ポリカチオンは、任意の適切なポリカチオンでありうる。ある特定の実施形態では、ポリカチオンは、高度に正に帯電している。ある特定の実施形態では、高度に正に帯電したポリカチオンは、ポリリシン(PL)、ポリアルギニン、またはポリオルニチンである。
ある特定の実施形態では、組成物は、エンドソーム溶解剤をさらに含む。さらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、AsGに付着している。なおさらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、AsGに共有結合によって付着している。なおさらなる実施形態では、エンドソーム溶解剤は、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着している。任意の適切なエンドソーム溶解剤を使用することができる。ある特定の実施形態では、エンドソーム溶解剤は、リステリオリシンである。本明細書で使用される「リステリオリシン」という用語は、リステリオリシン、エンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンの断片、エンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンペプチド、リステリオリシン、エンドソーム溶解活性を有するその断片またはペプチドを含む融合タンパク質を含む。例えば、米国特許第5,728,399号を参照されたい。ある特定の実施形態では、エンドソーム溶解剤は、エンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンの断片、エンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンペプチドである。切断可能な結合は、例えば、ジスルフィド結合(還元条件により切断または分離される);酸切断性のチオマレアミド酸(thiomaleamic acid)、イミン、アセタールリンカーなどを含む、任意の切断可能な結合でありうる。切断可能な結合は、化学リンカーにより形成することもでき、タンパク質により形成することもでき、エンドソーム内の条件下で切断可能な任意の結合により形成することもできる。エンドソーム溶解剤に結合しているAsG分子は、ポリカチオンに共有結合によって結合しているAsG分子の場合もあり、ポリカチオンに共有結合によって結合していないAsG分子の場合もある。ある特定の実施形態では、エンドソーム内に存在する条件下で切断可能な結合は、エンドソーム内に存在する条件下で切断可能な結合はジスルフィド結合であり、エンドソーム内に存在する条件下の結合であって(is one under conditions that exist in endosome)、ジスルフィド結合、および、例えば、イミノ結合、アセタール結合、またはラクトン結合を含む、酸不安定性結合でありうる。
当技術分野で公知の任意の方法を使用して、AsGをカチオンに共有結合によって付着させことができ;AsG/ポリカチオンをミトコンドリアに静電的に付着させことができ;エンドソーム溶解剤を、切断可能な結合により共有結合でAsGに共有結合によって付着させることができる。
ミトコンドリアは、ヒト細胞およびラット細胞を含む、任意の哺乳動物供給源から得ることができる。ミトコンドリアは、健常ドナーに由来する細胞から得ることもでき、哺乳動物細胞または組織から単離することもできる。ある特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、肝細胞、白血球、幹細胞、または組織である。ある特定の実施形態では、ミトコンドリアは、ラットまたはヒトミトコンドリアである。
少なくとも部分的に精製されたミトコンドリアは、肝細胞などの別の細胞への移植の際に、機能を保持し、正常なミトコンドリアとしての機能を保持する。移植されたミトコンドリアが、それらの新たな宿主細胞内で機能的であるかどうかについての任意のアッセイを使用して、ミトコンドリアが、機能的であるかどうかを評価することができる。
ミトコンドリアは、細胞から、ミトコンドリアが機能を保持することを可能とする任意の方法により単離および精製する。ミトコンドリアは、細胞または核が存在しないように、少なくとも部分的に精製する。ミトコンドリアは、例えば、米国特許公開第2014/0193511号において開示されている通りに精製することができる。
任意の適切な医薬組成物および製剤のほか、製剤化に適する方法、ならびに適切な投与経路(複数可)および適切な投与部位(複数可)も、本発明の範囲内にある。またそうでないことが言明されない限りにおいて、任意の適切な投与量(複数可)および投与頻度も想定される。
医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリア(すなわち、賦形剤)を含みうる。「薬学的に許容されるキャリア」は、ありとあらゆる溶媒、ありとあらゆる液体ビヒクル、例えば、水、緩衝液など、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、希釈剤、流動促進剤などを指し、これらを含む。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩または塩基付加塩(例えば、Bergeら(1977年)、J Pharm Sci、66巻:1〜19頁を参照されたい)を含みうる。
「治療有効量」もしくは「治療有効用量」という用語、または本明細書で使用される同様の用語は、例えば、ミトコンドリア機能が弱いことで引き起こされる肝疾患の処置の成功など、所望の生物学的または医学的応答を誘発する、開示される医薬組成物の量を意味することを意図する。このような応答は、当技術分野で公知の方法により確認することができる。
ある特定の態様では、本開示は、本明細書で開示される医薬組成物と、前記組成物を使用して肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止するための指示とを含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、キットは、アシアロ糖タンパク質(AsG)、ポリカチオン、およびエンドソーム溶解剤を、それぞれ個々の容器内の滅菌溶液中に含み、また、凍結保存されたミトコンドリアであって、健常ドナーの細胞に由来するミトコンドリア、またはヒト白血球もしくはヒト幹細胞など、適切な哺乳動物細胞型から単離されたミトコンドリアのバイアルも含む。治療用キットは、使用前は、冷凍庫内に保管しうる。ある特定の実施形態では、必要な場合、溶液およびミトコンドリアを、注意深く解凍し、速やかかつ完全に混合し、ミトコンドリア損傷および肝不全を含む肝疾患を有する患者の末梢静脈に静脈内注射する。
ある特定の他の態様では、肝疾患など、細胞のミトコンドリア機能の増大から利益を受けることができる疾患または状態を処置または防止する方法であって、治療有効量の本明細書で開示される医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法が提供される。
ある特定の実施形態では、開示される組成物および方法は、遺伝的欠損に起因する、ミトコンドリアの機能不全および肝不全を有する患者のための治療として使用することができる。ある特定の実施形態では、開示される組成物および方法は、例えば、薬物療法に起因する、後天的なミトコンドリアの機能不全および肝不全を有する患者のための治療として使用することができる。
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を明示する。これらの実施例は、例示だけを目的とするものであり、いかなる形でも、本発明の範囲を限定するものとみなさないものとする。
(実施例1)
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング、およびAsGR経路による取込み
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング、およびAsGR経路による取込み
方法:アシアロ糖タンパク質である、アシアロオロソムコイド(AsOR)を蛍光標識して、Fl−AsORを作製した。Fl−AsORを、ポリリシンに共有結合によって連結して、負に帯電したミトコンドリアに結合することが可能な、正に帯電したコンジュゲートであるFl−AsOR−PLを作製した。GFPで標識したラットミトコンドリアを、HTC mito−GFP細胞から単離し、Fl−AsOR−PLと混合して、安定的な静電結合複合体を形成させた。ミトコンドリアの、肝細胞への標的化送達を評価するため、Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体を、ヒトヘパトーマ細胞系である、AsG受容体(+)のHuh7細胞およびAsG受容体(−)のSK Hep1細胞と、個々に、37℃でインキュベートし、細胞を、様々な時点でサンプリングした。十分な洗浄の後で、ラットミトコンドリアの、細胞内への取込みを、ラットミトコンドリアDNAに対して特異的なプライマーを使用するqPCRにより、GFPを検出する二光子共焦点蛍光顕微鏡法により、および早期エンドソームを検出するための抗EEA抗体、続いてAlexafluor 594によりアッセイした。
結果:蛍光データは、Fl−AsOR−PLコンジュゲートが、複数回の遠心および再懸濁のサイクル後に、ミトコンドリアへの安定的な結合を維持することを示した。
Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の、細胞とのインキュベーションは、Huh7[AsG受容体(+)]細胞のみが、有意なFl−AsOR蛍光を示すが、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞は、これを示さないこと、および、蛍光は、時間と共に増大することを示した。qPCRは、ラットミトコンドリアDNAは、Huh7細胞では、時間と共に増大するが、SK Hep1細胞ではそうではないことを確認した。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の、大モル過剰量の遊離AsORの存在下における、Huh7細胞とのインキュベーションは、蛍光の、これらの細胞との会合を遮断した。共焦点顕微鏡法は、細胞内のミトコンドリアの存在を確認した。GFPとAlexafluor 594とをオーバーラップさせることにより、エンドソーム内の、Fl−AsOR−PL−ミトコンドリアの存在が示された。エンドソーム溶解剤の共ターゲティングは、エンドソーム内のミトコンドリアの初期共局在化のほか、エンドソームと会合していない、細胞内のラットミトコンドリアも確認した。
こうして、ポリリシンの、AsORへのカップリングは、強く正に帯電したコンジュゲートであるFl−AsOR−PLであって、安定的な非共有結合による相互作用によりミトコンドリアに結合しているFl−AsOR−PLを結果としてもたらす。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体は、受容体媒介性エンドサイトーシスにより、肝細胞により取り込まれ、エンドサイトーシスされた複合体のレベルは、時間と共に増大した。エンドソーム溶解剤の共ターゲティングは、エンドソーム内のミトコンドリアの共局在化を増大させ、また、エンドソームと会合していない、細胞内のラットミトコンドリアの数も増大させた。
(実施例2)
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング、およびAsGR経路による取込み
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング、およびAsGR経路による取込み
アシアロ糖タンパク質(AsG)は、送達される物質に結合することができる場合、その物質を肝臓に送達するようにターゲティング可能なキャリアとして使用することができる。しかし、ミトコンドリアの場合、それらは化学物質により損傷されうる、脆弱な小器官である。したがって、AsGを、非損傷性相互作用により、ミトコンドリアに結合させうる方法を開発することが重要であった。ミトコンドリアは、負に帯電しているので、アシアロ糖タンパク質を、高度に正に帯電した分子に転換する方法を考案した。次いで、このタンパク質コンジュゲートを、ミトコンドリアと混合することにより、コンジュゲートは、強力であるが非損傷性の静電(電荷間)相互作用により、ミトコンドリアに結合して、タンパク質−ミトコンドリア複合体を形成することができた(図2)。AsGを、正に帯電したアミノ酸であるリシンのポリマーからなる、ペプチドであるポリリシン(PL)に、化学的に連結することにより、正に帯電した分子に転換した。
アシアロ糖タンパク質−ポリリシン(AsOR−PL)コンジュゲートの調製および蛍光標識付け
AsGであるアシアロオロソムコイド(AsOR)を、蛍光タグであるdylight 650で標識した。次いで、ポリリシン(平均MW:1kDa)を、共有結合リンカーであるカルボジイミドを使用して、AsGであるアシアロオロソムコイド(AsOR)に連結し、分子篩クロマトグラフィーにより精製した。
各タンパク質1μgずつを使用して、dylight 650で標識されたタンパク質の蛍光強度を決定した。図3は、AsOR自体が、予期される通り、蛍光を有さなかったことを示す。しかし、蛍光タグで標識されたAsORおよびAsOR−ポリリシンコンジュゲートの両方が、蛍光を有し、比蛍光(1mg当たりの)は、Fl−AsORおよびFl−AsOR−PLについて同様であった。
結論:AsOR−PLコンジュゲートを、蛍光タグで標識することに成功した。
蛍光アシアロ糖タンパク質−ポリリシン(Fl−AsOR−PL)コンジュゲートの質量の測定
AsORの、PLへのカップリングの後、精製されたコンジュゲートを、質量スペクトル解析にかけた。図4は、AsORの平均質量が、32.8kDaであったことを指し示す質量分析データを示す。Fl−AsORの平均質量は、わずかに大きく、33.4kDaであり、Fl−AsOR−PLの平均質量は、大幅に大きく、35.2kDaであった。
結論:FL−AsORを、PLに共有結合によって連結した。質量スペクトルデータの計算は、平均で、AsOR分子1つ当たり、2つのdylight 650タグが共有結合によって結合し、FL−AsOR−PL分子1つ当たり、2つのPL鎖が結合していることを明らかにした。
アシアロ糖タンパク質−ポリリシン(AsOR−PL)コンジュゲート上の電荷の評価
アガロースゲル電気泳動を行って、AsOR−PLコンジュゲートが、正に帯電しているかどうかを決定した。図5は、AsORおよびFl−AsORの両方が、正極に向かって移動したことを示し、これらが、負に帯電していることを指し示す。対照的に、Fl−AsOR−PLは、PLと同様に、負極に向かって移動した。Fl−AsOR−PLコンジュゲートは、単一のバンドとして泳動した。遊離AsORまたは遊離PLはなかった。
結論:AsORを、PLに共有結合によって連結して、AsOR−PLコンジュゲートを形成し、精製工程により、全ての出発材料を消失させた。AsORとは対照的に、AsOR−PLコンジュゲートは、正に帯電していた。
AsOR−PLコンジュゲートの取込みについての評価
PLの、AsORへの化学的連結が、AsG受容体によるAsORの認識を変更しえたかどうかについて調べるため、[AsG受容体(+)]細胞、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞を使用して、AsOR−PLの、AsG受容体への結合について研究した。Fl−AsOR−PLを、細胞と共に、37℃で1時間(h)にわたりインキュベートし、蛍光顕微鏡法を実施した。DAPIを使用して、核を、AsORの色(赤)と比較して異なる色(緑)に染色した。図6は、Fl−AsOR−PLと共にインキュベートされたHuh7[AsG受容体(+)]細胞が、多数の小型で赤色の斑点状構造を結果としてもたらしたことを示す(図6上左パネル)。一部の構造が、下パネルに示された核を取り囲んでいたことから、これらの構造は、細胞内にあり、サイズは、エンドソーム小胞を示唆したことが指し示された(図6下左パネル)。これに対し、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞は、検出可能な小型で赤色の斑点状構造を欠いた(図6上パネル;また、図6下右パネルも参照されたい)(DAPI染色)。
結論:AsOR−PLコンジュゲートは、内部移行が可能であった。結果として得られる斑点状パターンの出現は、AsOR−PLの、エンドソーム内への移入と符合する。蛍光が、Huh7[AsG受容体(+)]細胞内においてのみ出現し、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞では出現しなかったという事実は、AsOR−PLの、AsG受容体による取込みと符合する。AsOR−PLは、AsG(+)細胞により特異的に取り込まれる。
アシアロ糖タンパク質−ポリリシン(AsOR−PL)コンジュゲート−ミトコンドリア複合体の形成および安定性
AsOR−PLが、ミトコンドリアに安定的に結合しうるかどうかを決定するために、ラット肝細胞であるHTC細胞からミトコンドリアを単離した。ミトコンドリアの供給源としてのこの非ヒト種は、移植されたミトコンドリアを、既存のヒト宿主細胞のミトコンドリアから識別することを可能とするために選択した。単離したばかりのラットミトコンドリアを、Fl−AsOR−PLと共にインキュベートし、繰り返し遠心分離し、新鮮培地中に再懸濁させた。図7Aは、Fl−AsOR−PLの蛍光が、1回目の遠心の後で約15%減少し、次いで、3回目の遠心(3rd spin)を通して、ペレット化したミトコンドリア中、約27,000単位で一定のままであったことを示す。さらに、図7Bに示される通り、上清中の蛍光はほとんど残っておらず、また、ほとんど存在しない蛍光は一定のままであった。これに対し、PLを欠き、したがって、ミトコンドリアに強く結合することが予期されないFl−AsOR単独は、図7Aに示される通り、1回目の遠心の後で、30,000単位から3,000単位に90%を超えて減少し、次いで、後続の遠心の後におけるペレット化したミトコンドリアについてはもはや検出されなかった。
結論:AsOR−PLコンジュゲートは、遠心分離の反復にも拘らず、ミトコンドリアとの会合を維持した。PLを伴わないAsORは、依然として上清中にあり、ミトコンドリアペレットと会合しなかった。その小型のサイズのために、AsOR−PL単独を、この遠心分離工程により、ペレット化させることはできなかった。ミトコンドリアペレットと会合したAsOR−PLについての知見は、AsOR−PLの、ミトコンドリアへの結合であって、洗浄および遠心の条件に対して安定的な結合を裏付ける。
AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の平均サイズの測定
タンパク質−ミトコンドリア複合体のサイズは、粒子サイズ解析により決定した。図8は、AsOR−PLと複合体化させたときに、ミトコンドリアの平均直径が、約300nm増大したことを示す。ミトコンドリア単独の平均直径が、700+57.8nmであったのに対し、AsOR−PLと複合体化させたミトコンドリアは、1000+62nmの平均直径を有した。
結論:AsOR−PLとの複合体(AsOR-PL complexes)の形成は、サイズの増大と関連する。平均直径が、700nmの倍数として増大しなかったという事実は、サイズの増大が単に、ミトコンドリアの凝集に起因したものではなかったことを示唆する。
蛍光により測定される、AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の取込み
取込みを測定するため、Huh7[AsG受容体(+)]細胞およびSK Hep1[AsG受容体(−)]細胞を、Fl−AsOR−PLミトコンドリア複合体、ミトコンドリア単独、Fl−AsORタンパク質単独と共に個々にインキュベートし、Fl−AsOR−PLミトコンドリア複合体と競合するように、過剰量のAsORを添加し、37℃で、時間の関数として測定した。図10Aは、Huh7細胞におけるAsORに由来する蛍光が、15分(min)で20,000単位に達し、1時間で35,000単位に増大したことを示す。これは、15分で15,000単位に達し、1時間で20,000単位に増大したFl−AsORのレベルと類似している。これに対し、ミトコンドリア単独は、蛍光を有さなかった。さらに、大モル過剰量のAsORの、複合体化ミトコンドリアへの添加は、15分および1時間の両方において、2500単位未満を結果としてもたらした。Fl−AsOR−PLミトコンドリア複合体の存在下における、SK Hep1細胞による蛍光の取込みは、2500単位を超えなかった(図10B)。AsG受容体(−)細胞による取込みの欠如、および過剰量の遊離AsGによる取込みの競合阻害は、Huh7細胞での取込みが、AsG受容体により媒介されたという考えを裏付ける。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共にインキュベートされたHuh 7細胞は、15分での無処理細胞と比較して、HTCミトコンドリアDNAレベルの990倍である、細胞1個当たり約6〜14個のHTCミトコンドリア(ミトコンドリア1個当たりのミトコンドリアDNAの報告コピー数に基づく)という有意な(p<0.004)増大を結果としてもたらし、60分で、これを、2倍超(細胞1個当たり約14〜36個のHTCミトコンドリア)に増大させた(p<0.001)(図10C)。ミトコンドリア単独またはFl−AsOR単独と共にインキュベートされたHuh 7細胞は、有意なHTCミトコンドリアDNAレベルを有さなかった。Huh 7細胞の、過剰量の遊離AsORを有するFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体への曝露は、過剰量のAsORを伴わない複合体より76%(p<0.001)低いHuh 7細胞内のHTCミトコンドリアDNAレベルを結果としてもたらした。これに対し、SK Hep1細胞内のHTCミトコンドリアDNAレベルは、いかなる条件下でも、ほとんど検出可能でなかった(図10D)。データは、複合体化ミトコンドリアが、AsGRにより特異的に媒介されるHuh 7細胞により取り込まれることを示唆した。
結論:AsOR−PL−ミトコンドリア複合体は、AsG受容体を有する細胞によって取り込まれうるが、AsG受容体を有さない細胞によっては取り込まれえない。ミトコンドリア単独は、測定可能な取込みを有さないことから、観察される取込みは、ミトコンドリアの、細胞への、非特異的な結合には起因しなかったことが指し示される。過剰量のAsORとの競合は、取込みの特異性が、AsG受容体の特異性と符合することを確認する。
ミトコンドリアDNAにより測定される、AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の取込み
観察される蛍光結果が、蛍光の、細胞への何らかの非特異的会合に起因しなかったことを確認するために、複合体化ミトコンドリアの取込みを、ラットミトコンドリアDNAについてのPCRにより測定した。表1は、ラットミトコンドリアDNAに対する特異性を達成するのに使用されるプライマーを示す。Huh7細胞と共にインキュベートされた複合体化ミトコンドリアは、15分で、無処理細胞の1000倍のDNAレベルを結果としてもたらし、1時間後で、これを、2500倍に増大させた(図10C)。SK Hep1細胞を伴う、ミトコンドリア単独も、AsOR−PL単独も(図10C)、複合体化ミトコンドリアも(図10C)、非処置対照の250倍を超えるDNAレベルを結果としてもたらさなかった。
FW:フォワード;RV:リバース;LDHA:ヒト乳酸デヒドロゲナーゼA;mito:ミトコンドリア。
結論:細胞と会合したミトコンドリアDNAは、Huh7[AsG受容体(+)]細胞でのみ、時間と共に増大した。ミトコンドリア単独のインキュベーションは、いずれの細胞系とも、有意な会合を有さなかったことから、AsOR−PLとの複合体の形態にあるラットミトコンドリアDNAの会合が、AsG受容体(+)細胞だけと関連し、時間と共に増大したという蛍光データが確認される。
エンドサイトーシス経路に入る物質の通例の運命は、エンドソームの、リソソームとの融合に続く分解である。これは、ミトコンドリアを含む、標的物質の破壊を結果としてもたらす。エンドソームからの放出は生じうるが、まれなイベントである。しかし、いくつかの生物は、リソソームとの融合の前に、エンドソームからの脱出のための機構を進化させていることが公知である。例えば、Listeria monocytogenesという細菌は、エンドソーム内に取り込まれた場合に分泌する、リステリオリシンO(LLO)というタンパク質を発生させている。酸性環境では、リステリオリシンは、膜に小孔を作り出すという特性を有する。エンドソーム形成の直後、pHは通常低下する。LLOが存在する場合、pHの降下は、エンドソーム膜の穿孔を結果としてもたらし、エンドソームの破裂は、リステリア菌を放出する。
ミトコンドリア複合体およびLLOコンジュゲートの両方を、同じエンドソームに入るように作製できた場合、LLOは、エンドソームを破裂させ、リステリア菌の様式と類似の様式で、複合体化ミトコンドリアを放出しうる(図11)。しかし、LLOの、AsORへの化学的連結はLLOを不活化させうる。したがって、LLOを、AsORに、ジスルフィド結合を介して、共有結合によって連結した。この結合は、エンドソーム環境下で切断されることが公知であり、エンドソーム内に無傷のLLOを放出することが予期される(図12)。
ASORの、リステリオリシン(LLO)への、切断可能な共有結合による連結
LLOを、その天然の非改変状態で送達するために、AsORを、エンドソーム内に存在するようなおよびジチオトレイトール(dithiotheitol)(DTT)の存在下の還元条件下で切断されることが公知のジスルフィドリンカーであるSPDPにより、LLOに連結した。図13は、ポリアクリルアミドゲルにより、AsOR−LLOコンジュゲートが、AsORまたはLLOより大きな、75kDaの質量と符合する位置に移動することが見出されたことを示す。この試料中には、大量の遊離AsORは存在するが、遊離LLOは存在しなかった。還元剤であるDTTの存在下では、AsOR−LLOコンジュゲートは消滅し、AsORバンドが増大し、LLOバンドが再出現した。これらのデータは、AsORを、SPDPにより、LLOに、安定的にカップリングさせたところ、還元条件下では、LLOが、AsORへの結合から放出されることを指し示す。
LLOの膜溶解特性の保持
AsOR−LLOコンジュゲートが、膜活性特性を保持するかどうかを決定するために、溶血アッセイを実施した。低pHでLLOに曝露された赤血球は、小孔形成に起因して破裂し、ヘモグロビンを放出することが公知である。新鮮なヒト赤血球を、AsOR−LLOコンジュゲートおよび対照と共に、37℃で、中性pHまたは低pHで、DTTを含むかまたはこれを含まずにインキュベートして、溶血を測定した。表2は、低濃度(0.1μg/200μlを下回る)では、LLOが18%未満であったことを示す。0.1μg/200μlでは、溶血活性は、pH5.6において、pH7.4における0.87%と比較して高く、32.8%であった。還元剤であるDTTの存在下では、溶血活性は、DTTを伴わない場合の32.8%と比較してはるかに高度な、88.6%であった。同様に、1.5を下回る濃度における、AsOR−LLOコンジュゲートの溶血活性は、14%未満であった。1.5であり、かつ、DTTの存在下で、AsOR−LLOコンジュゲートは、pH5.6において、pH7.4における32.7%と比較して、より大きな活性の55.3%であった。コレステロールは、LLOおよびAsOR−LLO複合体の両方の活性を阻害した。LLOおよびAsOR−LLOコンジュゲートの両方の50%溶血補体(CH50)活性を計算した。
結論:LLOの、AsORへのコンジュゲーションは、溶血活性の保持およびpH依存性を結果としてもたらした。しかし、溶血活性は、濃度依存的であった。
AsOR−LLOの、ターゲティング可能なミトコンドリア複合体の取込みに対する効果
AsOR−LLOコンジュゲートが、ミトコンドリアの、肝細胞への送達を増強しうるかどうかを決定するために、AsOR−LLOコンジュゲートを、AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と混合し、Huh7細胞およびSK HEP1細胞と共に、37℃でインキュベートした。ラットミトコンドリアDNAレベルを、リアルタイムPCRにより、時間の関数として測定した。図14Cは、ミトコンドリア複合体単独に曝露されたHuh7細胞内のミトコンドリアDNAレベルが、1時間での4,000から、2時間での7,000に増大したことを示す。AsOR−LLOを、複合体化ミトコンドリアと混合したところ、ミトコンドリアDNAは、1時間での6,000から、2時間での24,000に増大した。取込みについて、複合体化ミトコンドリアと競合するように、大モル過剰量のAsORを添加したときに、Huh7細胞における、有意なHTCミトコンドリアDNAレベルは存在しなかった。図14Dは、37℃で複合体化ミトコンドリアと共にインキュベートされたSK Hep1細胞においてもまた、有意なレベルのHTCミトコンドリアDNAは存在しなかったことを示す。エンドサイトーシスによる取込みは、0℃およびアルカロイドであるコルヒチンの存在下で停止することが公知である。0℃におけるHuh7細胞(図14E)およびコルヒチンで処理されたHuh7細胞(図14F)は、有意なレベルのミトコンドリアDNAを有さなかった。
結論:AsOR−PLとの複合体の形態にあるミトコンドリアは、Huh7細胞上のAsG受容体により、特異的に取り込まれることが可能であり、その取込みは、AsOR−LLOコンジュゲートと混合した場合、少なくとも4倍に増強されうる。0℃およびコルヒチンの存在下における取込みの欠如は、取込みが、受容体に媒介されたものであるという結論を裏付ける。
HTC mito−GFP細胞系
ミトコンドリア複合体が、細胞に確かに入り、単に細胞表面に接着しているのでないことを検証するために、共焦点顕微鏡法を使用して、細胞を通るZ−stackスライス内のミトコンドリアの場所について検査した。この研究を容易とするために、抗生剤選択圧下、そのミトコンドリア内で、GFPを安定的に発現させるHTC細胞系である、HTC mito−GFPを開発した。蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して、蛍光細胞を同定および分取した。図15に示される通り、FACSは、蛍光細胞を単離することが可能であった。
標的化mito−GFPミトコンドリアの細胞内局在化
HTC mito−GFPを、取込み実験のための、ミトコンドリアの供給源として使用した。Huh 7細胞を、複合体および対照と共に、120分間にわたりインキュベートし、EDTA−PBSで洗浄し、10%FBSを含むDMEM中で維持した。6時間後、細胞を、早期エンドソームマーカー(EEA1−Alexa Fluor 594)で染色した。GFPで標識したHTCミトコンドリア単独と共にインキュベートされたHuh 7細胞は、エンドソーム(赤)染色(図16A1)を示したが、GFP染色(図16B1)は示さなかった。AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共にインキュベートされた細胞は、エンドソーム染色(図16A2)および一部のGFP蛍光(図16B2)を示した。存在するGFP染色構造が、合体させた図(図17D2)においてAlexa Fluor 594とオーバーラップしていたことから、ミトコンドリアとエンドソームとの共局在化が示唆された。AsOR−PL−ミトコンドリア複合体およびAsOR−LLOコンジュゲートの両方と共にインキュベートされた細胞もまた、エンドソーム染色(図16A3)と、Alexa Fluor 594染色にオーバーラップしている(図17D3)、かなりのGFP染色(図16B3)とを示した。しかし、合体させた図ではまた、核を取り囲む、大量の非重複GFPも存在した(図17D3)ことから、エンドソームと共局在化しないミトコンドリアの存在が示唆された。
結論:Huh7細胞と共にインキュベートされたミトコンドリア単独は、検出可能な取込みが明らかではなかった。Huh7細胞と共にインキュベートされたAsOR−PL−ミトコンドリア複合体は、ミトコンドリアの、エンドソームとの共局在化を結果としてもたらした。データは、複合体化ミトコンドリアが、細胞内コンパートメントに位置していたことを確実にする。
ミトコンドリアが、エンドソーム内に存在するなら、蛍光のピークは、細胞内の同じ場所で生じるはずである。細胞を通る平面の深さの関数としての蛍光の2つの波長の強度を測定することにより、ピークの場所を、図21に示される通りに決定することができた。ミトコンドリアのピーク蛍光、およびエンドソームのピーク蛍光の両方が、同じスタックである、スタック10で生じたことから、ミトコンドリアとエンドソームとは、共局在化したという結論が裏付けられた。
(実施例3)
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング:ミトコンドリアの、栄養補助剤非含有培地中で成長させた、Huh−7受容体(+)Mito(−)細胞への取込み
ミトコンドリアの、肝細胞へのターゲティング:ミトコンドリアの、栄養補助剤非含有培地中で成長させた、Huh−7受容体(+)Mito(−)細胞への取込み
Huh 7ミトコンドリアDNAまたはHTCおよびラット肝臓ミトコンドリアDNAを、特異的に増幅するように、プライマー3およびプライマー−BLASTを使用して、プライマーをデザインした(図9)。
ミトコンドリア毒性についてのモデルを作製するために、20%の集密度のHuh 7細胞およびSK Hep1細胞を、10μMの2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)(Sigma−Aldrich)に、3週間にわたり曝露した。qPCRにより決定されるミトコンドリアDNAレベルは、時間と共に着実に低下した(図22)。検出可能なミトコンドリアを欠く細胞を、補充培地中で繁殖させ、ミトコンドリア移植のためのモデルであって、バックグラウンドの宿主ミトコンドリアDNAが存在しないモデルとして使用した。
アシアロ糖タンパク質であるAsORを、ポリリシンに連結して、コンジュゲートであるAsOR−PLを作製し、健常ミトコンドリアと複合体化させた。Huh 7[AsGR(+)]細胞およびSK Hep1[AsGR(−)]細胞を、ミトコンドリア毒素で処理して、検出可能なミトコンドリアDNAを欠く、Huh 7−Mito(−)細胞およびSK Hep1−Mito(−)細胞を形成させた。エンドソーム溶解性ペプチドであるLLOを、AsORにカップリングさせて、AsOR−LLOを形成させた。複合体化ミトコンドリアおよびAsOR−LLOの、Huh7−mito(−)細胞との共インキュベーションは、7日目に、ミトコンドリアDNAを、対照の>9,700倍に増大させ(p<0.001)、10日目までに、ミトコンドリアの酸素消費速度を、対照の>90%に増大させた。
ミトコンドリア損傷肝細胞のレスキューは、受容体媒介性エンドサイトーシスを介する、正常なミトコンドリアの標的化取込みにより達成することができる。
ミトコンドリアDNAを欠くHuh 7−Mito(−)細胞およびSK Hep1−Mito(−)細胞を、ミトコンドリア損傷を有する細胞のモデルとして使用した。これらの細胞は、生存するのに、補充培地を必要とする。Huh7 AsGR(+)細胞の、ターゲティング可能なエンドソーム溶解剤であるAsOR−LLOを加えたFl−AsOR−PL−ミトコンドリアへの曝露は、細胞における蛍光レベルおよびミトコンドリアDNAレベルを増大させたが、対照では、そうならなかった(図23A〜F)。Huh7 AsGR(+)細胞の、ターゲティング可能なエンドソーム溶解剤であるAsOR−LLOを加えたFl−AsOR−PL−ミトコンドリアへの曝露は、Huh7 Mito(−)細胞をレスキューする結果として、栄養補助剤非含有培地中の増殖をもたらした(図25A)。細胞1個当たりのミトコンドリアDNAの含量および比は、曝露後急速に上昇し、一定を維持したが、対照ではそうならなかった。SK Hep1 Mito(−)細胞では、レスキューが観察されなかった(図25B)。
実験手順
タンパク質の調製
オロソムコイド(OR)を、既に記載されている(Whitehead PH、Sammons HG.、Biochim Biophys Acta、1966年、124巻:209〜211頁)通りに、ヒト血清(American Red Cross)から単離した。ORを、ノイラミニダーゼ(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)(12)で脱シアル酸化して、アシアロオロソムコイド(AsOR)を作製し、製造元の指示に従い、NHSエステル反応(Thermo Fisher Scientific Inc.、Rockford、IL USA)を使用して、蛍光標識であるdylight 650で標識した。AsORおよび蛍光で標識したAsOR(Fl−AsOR)を、カルボジイミド架橋剤(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)と、個々に反応させた後、25℃で、24時間にわたり、0.1Mの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH6 1ml中のポリL−リシン(PL)(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)を添加した。過剰量のPLは、排除カラム(10,000MWCO)(EMD Millipore、Billerica、MA、USA)を使用して除去した。100μlのリン酸緩衝食塩液(PBS)中、1μgずつのFl−AsORおよびFl−AsOR−PLの蛍光強度を、XFLUOR4SAFIREII Version:V 4.62n分光光度計により測定した。
質量分析
AsOR、Fl−AsOR、およびFl−AsOR−PLを、それぞれ、1、0.1、0.025、および0.001mg/mlに希釈した。製造元の指示に従い、マトリックスである3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)(Sequazym Peptide Mass Standards Kit、Applied Biosystems、Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL、USA)を、対照有りまたは無しで、様々な濃度のタンパク質と混合し、質量分析(Voyager−MALDI)にかけた。
ミトコンドリアの調製および精製
哺乳動物細胞用のミトコンドリア単離キット(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、製造元の指示に従い、HTC細胞またはHuh 7細胞からミトコンドリアを単離した。ミトコンドリアペレットを、単離キット試薬Cで洗浄し、さらなる使用まで、単離キット試薬C中、氷上で保存した。
Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の調製および安定性
ラット(HTC)細胞ミトコンドリア800μl(1.6μg/μlの総ミトコンドリアタンパク質)を、100μgのFl−AsOR−PLまたはFl−AsORタンパク質(52μlのPBS中)と共に、氷上で45分間にわたりインキュベートした。試料を、4℃、4000rpmで、8〜10分間にわたり、繰り返し遠心し、ミトコンドリア単離キット試薬C(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)中に再懸濁させた。各遠心の後で、ミトコンドリアペレットおよび上清を回収し、蛍光を、685nmで測定した。実験は、3連で行い、3回ずつ反復した。結果は、等しい数の細胞当たりの任意の蛍光単位の平均±標準誤差として表した。
リステリオリシンの調製
遠心分離デバイス(EMD Millipore Centricon(登録商標)Plus−70 Centrifugal Filter Units、膜NMWL:30,000)を使用して、上清を濃縮し、3リットル(L)の氷冷蒸留水で洗浄し、400〜600mlに濃縮したことを除き、既に記載されている(Walton CM、Wu CH、WuGY.、Protein Expr Purif、1999年、15巻:243〜245頁)通りに、リステリオリシンO(LLO)を、L.monocytogenes(D.A.Portnoy、Stanford University)から精製した。上清を、DEAE−Sephacelカラムに通し、精製されたLLOを洗浄し、次いで、PD−10カラム(Sephadex G−25M、Pharmacia Biotech)で脱塩した。精製されたLLOは、さらなる使用まで、−20℃で保管した。AsOR−LLOコンジュゲートは、製造元の指示に従い、SPDP架橋剤(Thermo Fisher Scientific)を使用して合成した。LLO−SPDPを、DTTで還元し、PBSで平衡化させたPD−10カラムにより、過剰量のDTTから分離した。還元LLO−SPDPを、AsOR−SPDPと混合し、4℃で、18時間にわたりインキュベートして、AsOR−LLOコンジュゲートを形成させた。タンパク質の最終濃度は、製造元の指示に従い、Bio−Radタンパク質アッセイ(BIO RAD)を使用して測定した。タンパク質の純度およびサイズは、10%のSDS−PAGEにより決定した。
溶血アッセイ
溶血活性を測定するために、様々な濃度のLLOおよびAsOR−LLOコンジュゲートを、DTTを含むかまたはこれを含まず、および、pH7.4または5.6の10μl中、約500万個のヒトRBCと共に、37℃で、30分間にわたりインキュベートした。コレステロールの、溶血活性に対する影響は、既に記載されている(Jacobs Tら、Mol Microbiol、1998年、28巻:1081〜1089頁)通りに決定した。50%の溶血(CH50)に必要とされるタンパク質の量を計算した(Costabile M.、J Vis Exp、2010年3月29日(37巻)、pii: 1923. doi: 10.3791/1923)。アッセイを、4回の独立した反復(4 independent replicates)で実施し、結果を、蒸留水中のRBCの溶血と比べたパーセントとして表す。
細胞培養物
ヒト肝細胞癌細胞である、Huh 7 AsGR(+)細胞、SK Hep1 AsGR(−)細胞、およびラットHTC細胞を、抗生剤/抗真菌剤溶液(Invitrogen)、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)(Choi Jら、Hepatology、2004年、39巻:81〜89頁)中で維持した。GFPで標識したミトコンドリアを作製するために、製造元の指示に従い、リポフェクタミン(Life Technologies)を使用して、HTC細胞に、pAcGFP1−Mitoプラスミド(Clontech Laboratories)をトランスフェクトした。pAcGFP1−mitoプラスミドは、Aequorea coerulescensに由来する緑色蛍光タンパク質(GFP)(AcGFP)のN末端に融合させた、ミトコンドリアターゲティング配列(ヒトチトクロームCオキシダーゼのサブユニットVIIIの前駆体に由来する)をコードする。蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して、GFPで標識した細胞を分離した。HTC GFP細胞を、抗生剤/抗真菌剤溶液、10%のFBS、および1.5mg/mlのG418(Calbiochem)を補充したDMEM中で維持した。GFPによる標識付けは、製造元の指示に従い、MitoTracker RED FM(Molecular Probes(Life Technologies))を使用して決定した。略述すると、Opti−MEM I培地(Invitrogen)中、200nMのMitoTracker redプローブを、HTC mito−GFP細胞と共にインキュベートした。細胞を、PBSで洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドおよびPBSで固定した。標識された細胞を、ProLong(登録商標)Gold試薬(Life Technologies)にマウントし、蛍光顕微鏡イメージングに使用した。
Mito(−)細胞の調製
ミトコンドリア毒性についてのモデルを作製するために、20%の集密度のHuh 7細胞およびSK Hep1細胞を、10μMの2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)(Sigma−Aldrich)に、3週間にわたり曝露した(Chariot P、Drogou Iら、JHepatol、1999年、30巻:156〜160頁)。細胞を、抗生剤/抗真菌剤溶液、10%の透析FBS、2mMのL−グルタミン、100mg/mlのピルビン酸ナトリウム(Thermo Fisher Scientific)、および50mg/mlのウリジン(Sigma−Aldrich)を補充したDMEM(Hashiguchi K、Zhang-Akiyama QM、Methods Mol Biol、2009年、554巻:383〜391頁)中で維持した。ミトコンドリアDNAレベルは、qPCRにより、様々な時点で決定し、検出可能なミトコンドリアDNAを欠く細胞を、Mito(−)と名づけた。Huh 7−Mito(−)細胞およびSK Hep1−Mito(−)細胞は、必要とされるまで、−80℃で凍結させた。
AsGR取込みアッセイ
細胞は、アッセイの2〜3日前に、組織培養プレート上または滅菌カバースリップ上に、50%の集密度で播種した。95%集密度になったら、細胞を、PBS(Mg2+−およびCa2+ −非含有)で洗浄し、高グルコースを含む、リン酸塩非含有DMEM(Thermo Fisher Scientific)中で、16時間にわたり維持した。製造元の指示に従い、哺乳動物細胞用のミトコンドリア単離キット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、ミトコンドリアを、ドナー細胞(HTC細胞またはHuh7細胞またはHTC mito−GFP細胞)から単離し、ミトコンドリア単離キット試薬C中、氷上で保存した。取込みアッセイは、20μg/mlのミトコンドリア単独、4μg/mlのFl−AsOR−PL単独、25μl/mlのFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体、25μl/mlのFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体+0.15μg/mlのAsOR−LLOコンジュゲート、25μl/mlのFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体+200μg/mlのAsOR(取込みの4分前に100倍のモル過剰量を添加)、または25μl/mlのFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体+0.15μg/mlのAsOR−LLOコンジュゲート+200μg/mlのAsOR(取込みの4分前に100倍のモル過剰量を添加)のいずれかを添加したDMEM、2.8mMのCa2+(Hui Eら、Cell、2009年、138巻:709〜721頁)中、37℃または4℃で行った。細胞を、各時点で、または、長時間にわたる実験では2時間後で、氷冷PBS(Mg2+およびCa2+非含有)中の10mMのEDTA、続いて、氷冷PBSで、3回洗浄した。細胞を、0.05%のトリプシン−EDTA(Thermo Fisher Scientific)でトリプシン処理し、800rpm、4℃で4分間にわたる遠心分離により回収するか、または200μlの溶解緩衝液(緩衝液A、ミトコンドリア単離キット、Thermo Fisher Scientific)で溶解させた。溶解させた細胞における、Fl−AsOR−PLの蛍光強度は、XFLUOR4SAFIREII Version:V 4.62n分光光度計を使用して測定した。qPCRにより、ドナーミトコンドリアDNAレベルを決定および定量するのに、トリプシン処理した細胞または細胞溶解物を使用した。実験は、3連で、少なくとも3回ずつ反復して行い、平均±標準誤差は、等しい数の細胞当たりの任意の蛍光単位として表した。
エンドサイトーシスの阻害剤
コルヒチンの影響を決定するために、細胞を、1μMのコルヒチンと共に、取込みの前および取込みアッセイ中、2時間にわたりインキュベートした(Piasek A、Thyberg J.、JCell Biol、1979年、81巻:426〜437頁)。低温の影響を決定するために、氷冷のリン酸塩および重炭酸塩非含有DMEMを使用して、4℃で、取込み研究を実施した。
定量的PCR(qPCR)
ミトコンドリアの取込みを測定するために、プライマー3(Untergasser Aら(et al., a, al,)、Nucleic Acids Res、2012年、40巻:e115頁)およびプライマー−BLAST(Ye Jら、BMC Bioinformatics、2012年、13巻:134頁)を使用し、ヒトHuh 7ミトコンドリアDNAまたはラット肝臓(HTC)ミトコンドリアDNAを特異的に増幅して、ドナーミトコンドリアを、宿主細胞ミトコンドリアから識別するように、プライマー(表1)をデザインした。プライマーの特異性は、製造元の指示に従い、QIAamp DNAミニキット(Qiagen、Valencia、CA)を用いて、Huh 7細胞およびHTC細胞から抽出されたDNAを使用して、PCRにより決定した。
qPCRによる、ミトコンドリアおよび核DNAの定量
取込み研究のために、QIAamp DNAミニキット(Qiagen)を使用して、全細胞DNAを単離し、製造元の指示に従い、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems、Thermo Fisher Scientific)を用いるqPCRにより、ミトコンドリアDNAレベルを定量した。ヒト乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)特異的プライマーを使用して、ヒトLDHAのDNAレベルを定量し、結果を使用して、ミトコンドリアDNAレベルを正規化した(表1)。qPCR条件は、50℃で2分間および95℃で10分間の1サイクル;95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクルに続く、55℃で10分間の1サイクルであった。溶融曲線は、各qPCR後に得、反応の特異性は、以下の条件下で解析した:95℃で15秒間、60℃で15秒間、および95℃で15秒間。アッセイは、3回の独立した反復を繰り返し(repeated with 3 independent replicates)、結果は、非処置対照と比較した、細胞内のミトコンドリアDNAレベルの倍数変化としての平均±標準誤差、および細胞1個当たりのミトコンドリアDNAコピー数の推定値として表した。
細胞増殖アッセイ
細胞を、取込み後、2時間にわたり、抗生剤/抗真菌剤溶液、1%の透析FBSを補充したDMEM中で維持した。DNAレベルは、各時点において、製造元の指示に従い、CyQUANT細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes、Thermo Fisher Scientific)で決定した。実験は、3連で行い、2回ずつ反復した。結果は、等しい数の細胞当たりの任意の蛍光強度単位についての平均±標準誤差として表した。
共焦点顕微鏡法
AsOR−PL−Mito−GFP複合体、Mito−GFP、およびAsOR−PL−Mito−GFP複合体+AsOR−LLOコンジュゲートを、細胞と共に、個々に、37℃で、2時間にわたりインキュベートした。細胞を、EDTA−PBSで洗浄し、抗生剤/抗真菌剤溶液および10%のFBSを補充したDMEM中で、6時間にわたり維持した。細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで、30分間にわたり固定し、PBS中0.25%のTriton X−100(Sigma−Aldrich)で、10分間にわたり透過性を上げた後、25℃で、1時間にわたりブロッキング溶液(1%のヤギ血清、5%のBSA、0.3Mのグリシン)で処理した。細胞を、抗EEA1抗体[1G11](早期エンドソームマーカー)(Abcam Inc、Cambridge、MA、USA)と共に、4℃で、一晩にわたりインキュベートした。Alexa Fluor 594ヤギ抗マウス(Thermo Fisher Scientific)二次抗体を、1時間にわたり添加した。核を、DAPI(Thermo Fisher Scientific)で、20分間にわたり染色した。細胞をマウントし、共焦点顕微鏡下でイメージングし、画像を、Image Jで解析した。一次抗体を伴わない細胞を、対照として用いた。Z平面内の、エンドソームおよびミトコンドリアの局在化を決定するために、4つの領域を、共焦点顕微鏡法で撮影された画像上で、ランダムに選択し、GFPおよびAlexa Fluor 594の強度を、画像のZ−stackの各スライスから測定した。強度を、スライス番号に対してプロットした。GFPおよびAlexa Fluor 594の両方が近接することによる高蛍光強度は、Z平面内の、HTCミトコンドリアと、早期エンドソームとの共局在化を表すと理解された。
37℃で、1時間にわたる、Fl−AsOR−PLの取込みの後、細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで、10分間にわたり固定し、DAPIで、20分間にわたり染色した。細胞をマウントし、蛍光顕微鏡下でイメージングし、単一の波長として提示し、波長画像として合体させた。
ミトコンドリア呼吸アッセイ
細胞は、取込みアッセイの2日前に、XF24細胞培養マイクロプレート(Seahorse Bioscience、North Billerica、MA)に播種した。複合体化ミトコンドリアおよび対照を、細胞と共に、2時間にわたりインキュベートした。細胞を洗浄し、製造元の指示に従い、様々な時点で、XF Cell Mito Stress Kit(Seahorse Bioscience、North Billerica、MA)を使用して実施される呼吸アッセイのために、抗生剤/抗真菌剤溶液、1%の透析FBSを補充したDMEM中で維持した。DNAレベルに対して正規化された、ウェル1つ当たりの酸素消費速度(OCR)を決定した。アッセイは、3連で実施し、結果は、各時点におけるDNAレベル当たりのピコモル/分単位による、群1つ当たりのOCRについての、平均±標準誤差として表した。
結果
ミトコンドリアに結合するアシアロ糖タンパク質コンジュゲート
アシアロオロソムコイド(AsOR)を蛍光標識し(Fl−AsOR)、ポリ−L−リシン(PL)に、共有結合によって連結し、Fl−AsOR−PLを作製した。精製の後、AsORおよびAsOR−PLは、蛍光標識されていることが示された(図3)。質量分析データは、Fl−AsOR−PL分子1つ当たり、平均2つの蛍光タグおよび2つのPL鎖が結合していることを示した(図4)。アガロースゲルは、AsORおよびFl−AsORは、負に帯電していることを示した。しかし、Fl−AsOR−PLは、正に帯電していた(図5)。
結論:ポリリシンなどのポリカチオンの共有結合による連結により、AsORなど、負に帯電した糖タンパク質を、正に帯電した糖タンパク質に転換することができる。
PLの、AsORへの化学的連結が、AsG受容体によるAsORの認識を変更しえたかどうかについて調べるため、[AsG受容体(+)]細胞、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞を使用して、AsOR−PLの、AsG受容体への結合について研究した。Fl−AsOR−PLを、細胞と共に、37℃で1時間(h)にわたりインキュベートし、蛍光顕微鏡法を実施した。DAPIを使用して、核を、AsORの色(赤)と比較して異なる色(緑)に染色した。Fl−AsOR−PLと共にインキュベートされたHuh7[AsG受容体(+)]細胞は、多数の小型で赤色の斑点状構造を結果としてもたらした(図6上左パネル)。一部の構造が、下パネルに示された核を取り囲んでいたことから、これらの構造は、細胞内にあり、サイズは、エンドソーム小胞を示唆したことが指し示された(図6下左パネル)。これに対し、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞は、検出可能な小型で赤色の斑点状構造を欠いた(図6上右および下右パネル)。
結論:斑点状のパターンは、AsOR−PLの、エンドソームへの侵入と符合する。蛍光は、Huh7[AsG受容体(+)]細胞においてのみ出現し、SK Hep1[AsG受容体(−)]細胞では出現しなかったが、これは、AsOR−PLの、AsG受容体による取込みと符合する。
単離HTC(ラット)ミトコンドリアを、Fl−AsOR−PLと混合して、複合体を形成させた。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の安定性は、新鮮培地中での複合体の遠心分離および再懸濁の反復により決定した。図1Aに示す通り、ペレット化したミトコンドリアと関連するFl−AsOR−PLの蛍光は、2回目の遠心の後で、約15%減少し、次いで、3回の遠心を通して、約27,000単位で、一定を維持した。これに対し、ミトコンドリアを、Fl−AsOR(PLを欠く)と混合した後における、ミトコンドリアペレットと関連する蛍光は、有意に低度な4,000単位であった。上清は、1回目の遠心の後で、Fl−AsOR単独の蛍光の>90%を含有したが、2回目および3回目の遠心の後のペレット化したミトコンドリアでは、もはや、蛍光は検出されなかった(図7A)。ミトコンドリアと混合されたFl−AsOR−PLの上清中の蛍光は、1回目の遠心後に、上清中で、32000単位から7900単位に、24%まで減少し、後続の遠心においても、低量のままであった(図7B)。結論:これらのデータは、Fl−AsOR−PLがミトコンドリアに結合したこと、および結合が再懸濁および遠心分離の条件下で安定的であったことを示唆する。ミトコンドリア単独についての粒子サイズ解析が、700±57.8nmの平均直径を明らかにしたのに対し、精製されたFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体は、1000±62nmの平均直径を有した(図8)。結論:インキュベーションに続く、遠心分離および再懸濁の反復は、平均直径が、ミトコンドリア単独の平均直径より約30%大きいFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体を結果としてもたらした。直径が、700nmの倍数でなかったという事実は、サイズの増大が、ミトコンドリアの凝集に起因したものではなかったことを示唆する。
AsGRによる、ミトコンドリアの、肝細胞への特異的なターゲティング
複合体化ミトコンドリアが、AsGRにより認識されうるかどうかを決定するために、Huh 7細胞およびSK Hep1細胞を、Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体、ミトコンドリア単独、Fl−AsORタンパク質単独、または過剰量のAsORを有するFl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共に、個々に、37℃でインキュベートした。Fl−AsOR単独と共にインキュベートされたHuh 7 AsGR(+)細胞における蛍光レベルは、15分で、約15,000単位であり、60分で、20,000単位超に、有意に(p<0.001)増大した(図10A)。同様に、Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共にインキュベートされたHuh 7細胞における蛍光は、15分で、20,000単位であり、60分で、35,000単位超に、有意に(p<0.001)増大した。予期される通り、ミトコンドリア単独のインキュベーション後のHuh 7細胞では、蛍光は検出されなかった。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体の中の大モル過剰量のAsORは、15分および60分の両方において、Huh 7細胞における蛍光レベルを、2,500単位未満に低下させた(図2A)。SK Hep1 AsGR(−)細胞における蛍光は、全ての条件下で、ほとんど検出可能でなかった(図10B)。結論:Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と関連する蛍光は、AsGR(+)細胞でのみ増大し、AsGR(−)細胞では増大しなかった。過剰量の遊離AsORによる競合は、AsGRの関与を裏付ける。
しかし、蛍光タグを、Fl−AsOR−PLキャリア上に存在していたため、ミトコンドリアなしのキャリア単独を内部移行させることが可能であった。複合体化ミトコンドリアが、Huh 7細胞により、実際に取り込まれたかどうかを決定するために、プライマーをデザインした(表1)ところ、ラットミトコンドリアDNAを、Huh 7(ヒト)ミトコンドリアDNAから特異的に識別することが示された(図9)。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共にインキュベートされたHuh 7細胞は、15分で、無処理細胞と比較して、HTCミトコンドリアDNAレベルの990倍である、細胞1個当たり約6〜14個のHTCミトコンドリア(ミトコンドリア1個当たりのミトコンドリアDNAの報告コピー数に基づく)という有意な(p<0.004)増大を結果としてもたらし、60分で、これを、2倍超(細胞1個当たり約14〜36個のHTCミトコンドリア)に増大させた(p<0.001)(図10C)。ミトコンドリア単独またはFl−AsOR単独のいずれかと共にインキュベートされたHuh 7細胞は、有意なHTCミトコンドリアDNAレベルを有さなかった。Huh 7細胞の、過剰量の遊離AsORを伴う、Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体への曝露は、過剰量のAsORを伴わない複合体より76%(p<0.001)低いHuh 7細胞におけるHTCミトコンドリアDNAレベルを結果としてもたらした。これに対し、SK Hep1細胞におけるHTCミトコンドリアDNAレベルは、いかなる条件下でも、ほとんど検出可能でなかった(図10D)。結論:データは、複合体化ミトコンドリアのAsOR−PL成分だけでなく、複合体の形態にあるHTCドナーミトコンドリアDNAにより決定される通り、ミトコンドリア自体も、AsGRにより特異的に媒介されるHuh 7細胞により取り込まれたことを示唆する。
エンドソーム溶解剤および肝細胞におけるミトコンドリアの細胞質送達
AsGR媒介性エンドサイトーシスは、分解経路である。したがって、Huh 7細胞により内部移行されたミトコンドリアは、リソソーム酵素により消化されることが予期される(図1)。リソソームによる消化の前における、内部移行したミトコンドリアの、エンドソームから細胞質への脱出を容易とするために、エンドソーム内に存在する条件下で、エンドソーム膜に小孔を施す細菌タンパク質であるリステリオリシンO(LLO)を利用した。このような小孔は、内容物を細胞質に放出するエンドソームの破裂を結果としてもたらす(図11)。LLOを、肝細胞エンドソームにターゲティングするために、ジスルフィドリンカーを使用してAsORをLLOに化学的にカップリングさせた、AsOR−LLOコンジュゲートの、エンドソームの還元条件下での切断を可能とした(図12)。エンドソーム内の還元条件を模擬するDTTの存在下で、ASOR−LLOを、その構成要素に完全に切断した。膜破壊活性の尺度としての溶血を使用したところ、pH5.6におけるLLO単独は、赤血球の32.8%の溶血を結果としてもたらし、これは、還元剤であるDTTの存在下で、88.6%に、有意に(p<0.001)増大した(表2)。
AsOR−LLOコンジュゲートが、肝細胞への、ミトコンドリアの細胞質内送達を増強しえたかどうかを決定するために、AsOR−LLOコンジュゲート有りまたは無しで、Huh 7細胞およびSK Hep1細胞を使用して、複合体化ミトコンドリアの取込みアッセイを実施した。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体単独とのインキュベーション後、Huh 7細胞における蛍光レベルは、15分で、13,400単位であり、120分で、30,000単位超に増大した(図14A)。しかし、AsOR−LLOコンジュゲートの、複合体化ミトコンドリアとの共投与は、Huh 7細胞における蛍光レベルを、15分での13,000単位から、120分で約50,000単位に、有意に(p<0.001)増大させた。大モル過剰量のAsORのプレインキュベーションは、AsOR−LLO有りまたは無しで、複合体化ミトコンドリアに曝露されたHuh 7細胞における蛍光の>90%の低下を結果としてもたらした。これに対し、SK Hep1細胞は、いかなる条件下または時点においても、有意なレベルの蛍光を有さなかった(図14B)。AsOR−LLOコンジュゲートの、複合体化ミトコンドリアとの共投与はまた、Huh 7細胞におけるHTCミトコンドリアDNAレベルの、15分での、非処置対照の110倍(細胞1個当たり約1〜2個のHTCミトコンドリア)から、120分で約23,800倍(細胞1個当たり約140〜340個のHTCミトコンドリア)への有意な(p<0.001)増大も結果としてもたらした(図14C)。Fl−AsOR−PL−ミトコンドリア複合体単独のインキュベーションは、Huh 7細胞内のHTCミトコンドリアDNAレベルの、15分で、非処置対照の690倍(p<0.004)(細胞1個当たり約4〜10個のHTCミトコンドリア)から、120分で7,500倍(p<0.001)(細胞1個当たり約40〜110個のHTCミトコンドリア)への、有意であるが低度な増大をもたらした。過剰量のAsORとのインキュベーションは、AsOR−LLO有りまたは無しで、複合体化ミトコンドリアに曝露されたHuh 7細胞におけるHTCミトコンドリアDNAレベルを、75%低下させた。いかなる条件下でも、SK Hep1細胞では、有意なレベルのHTCミトコンドリアDNAは見出されなかった(図14D)。0℃におけるHuh7細胞(図14E)およびコルヒチンの存在下におけるHuh7細胞(図14F)は、有意なレベルのミトコンドリアDNAを有さなかった。
内部移行されたミトコンドリアの局在化
複合体化ミトコンドリアの細胞内の分布を決定するために、GFPで標識したミトコンドリアを安定的に発現させる細胞系であるHTC Mito−GFPを、取込み実験のための、ミトコンドリアの供給源として使用した。GFPで標識したミトコンドリアを安定的に発現させるHTC細胞を、FACSで分取して、HTC mito−GFP細胞系を確立し、これを、その後、選択のために、1.5mg/mlのG418培地中で維持した(図15)。Huh 7細胞を、複合体および対照と共に、120分間にわたりインキュベートし、EDTA−PBSで洗浄し、10%FBSを含むDMEM中で維持した。6時間後、細胞を、早期エンドソームマーカー(EEA1−Alexa Fluor 594)で染色した。GFPで標識したHTCミトコンドリア単独と共にインキュベートされたHuh 7細胞は、エンドソーム染色(図16A1)を示したが、GFP染色(図16B1)は示さなかった。AsOR−PL−ミトコンドリア複合体と共にインキュベートされた細胞は、エンドソーム染色(図16A2)およびある程度のGFP蛍光(図16B2)を示した。存在するGFP染色構造が、合体させた図において、GFPおよびAlexa Fluor 594がオーバーラップすること(黄)を明らかにした(図17D2)ことから、ミトコンドリアとエンドソームとの共局在化が示唆された。GFPとAlexa Fluor 594との共局在化は、ランダムな視野からの細胞画像のZ軸における蛍光プロットの強度により、さらに裏付けられた(図18)。AsOR−PL−ミトコンドリア複合体およびAsOR−LLOコンジュゲートの両方と共にインキュベートされた細胞もまた、エンドソーム染色(図16A3)と、Alexa Fluor 594染色にオーバーラップする(図17D3)、ある程度のGFP染色(図16B3)とを示した。しかし、合体させた図ではまた、核を取り囲む、大量のオーバーラップしていないGFPも存在した(図17D3)ことから、エンドソームと共局在化しないミトコンドリアの存在が示唆された。早期エンドソームマーカーEEA1およびGFP−ミトコンドリアの蛍光強度についてのプロットは、AsOR−PL−ミトコンドリア−GFP複合体との、37℃でのインキュベーションの6時間で、Huh 7細胞の、EEA1についての共焦点顕微鏡画像のピークスタック番号と、GFPについての共焦点顕微鏡画像のピークスタック番号との一致を示した(図18)。結論:AsOR−LLOの非存在下では、ミトコンドリアと会合したGFPは、エンドソームマーカーと共局在化した。AsOR−LLOの、複合体化ミトコンドリアとの共投与が、GFPとエンドソームマーカーとの分離を結果としてもたらしたことから、ミトコンドリアの、エンドソームからの脱出が裏付けられた。
Huh7細胞と共に、37℃で2時間にわたりインキュベートされ、次いで、添加剤を含まない培地中で、6時間にわたりインキュベートされたミトコンドリア−GFP単独の別の例を、図18に示す。細胞を、核についてDAPIで、および早期エンドソームマーカーについてEEA1−Alexa 594で染色した。図18Aは、エンドソーム染色を示したが、GFP染色を示さなかった(図18B)。図18Cは、DAPI核を示し、図18Dは、合体させた図を示す。
Huh7細胞と共に、37℃で2時間にわたりインキュベートされ、次いで、添加剤を含まない培地中で、6時間にわたりインキュベートされたAsOR−PL−ミトコンドリア−GFPの別の例を、図19に示す。エンドソーム染色が認められ(図19A)(抗EEA1−Alexa Fluor 594)、ある程度のGFP染色が認められた(図19B)。しかし、合体させた図である図18Dは、図19Bにおいて認められるGFP染色が、EEA1−Alexa Fluor 594と合体している(merged with)ことを示した(図19D)。
Huh7細胞と共に、37℃で2時間にわたりインキュベートされ、次いで、添加剤を含まない培地中で、6時間にわたりインキュベートされたAsOR−PL−ミトコンドリア−GFPおよびASOR−LLOの別の例を、図20に示す。エンドソーム染色が認められ(図20A)、かなりのGFP染色が存在した(図20B)。しかし、GFP染色の大部分は、EEA1−Alexa Fluor 594と合体しなかった(合体させた図20D)。
複合体化ミトコンドリアの、Mito(−)細胞への曝露の後における、AsG関連蛍光レベルおよびミトコンドリアDNAレベルの変化
ミトコンドリアDNAを欠くHuh 7−Mito(−)細胞およびSK Hep1−Mito(−)細胞は、細胞の、ddCとのインキュベーションにより作製した。ミトコンドリアDNAは、低下し、9日目までに、PCRにより検出不能となった(図22)。これらの細胞は、生存するための、補完的栄養物質を含有する補充培地を必要とした。複合体化させた、Huh 7由来のミトコンドリア単独の、Huh 7−Mito(−)細胞への投与は、蛍光レベルの、60分での6,400単位から、120分で11,000単位超への、有意な(p<0.01)増大を結果としてもたらした。複合体化ミトコンドリアの、AsOR−LLOコンジュゲートとの共投与の後で、Huh 7−Mito(−)細胞における蛍光レベルは、60分での14,000単位から、120分で30,000単位超に、有意に(p<0.001)増大した。これらの蛍光レベルは、過剰量のAsORとのインキュベーションの後で、>90%低下した(図23A)。しかし、Huh 7−Mito(−)細胞における蛍光レベルは、安定せず、12時間での7,000単位から、7日までに、300単位に低下し続けた。複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの共投与は、蛍光レベルの、12時間での27,000単位から、10日で11,000単位への低下を結果としてもたらした(図23B)。過剰量のAsORは、AsOR−LLOコンジュゲート有りまたは無しで、複合体化ミトコンドリアに曝露した後のHuh 7−Mito(−)細胞において、有意なレベルの蛍光を結果としてもたらさなかった。SK Hep1−Mito(−)細胞において、いかなる条件下においても、有意な蛍光が認められなかった(図23Cおよび図23D)。結論:AsOR−LLOの、複合体化ミトコンドリアとの共投与は、タンパク質標識およびミトコンドリアDNAの両方により測定される取込みを増大させた。
複合体化ミトコンドリアの、Mito(−)細胞への曝露の後における、AsG関連蛍光レベルおよびDNAレベルの変化
ミトコンドリアDNAレベルが、蛍光と同様の様式で低下したかどうかを決定するために、Huh 7のミトコンドリアDNAレベルを、qPCRによりアッセイした。蛍光データとは対照的に、AsOR−LLOコンジュゲートと共に、Huh 7−Mito(−)細胞に共投与された複合体化ミトコンドリアは、12時間で、ミトコンドリアDNAレベルの、対照の5,300倍(細胞1個当たり30〜70個のミトコンドリア)から、7日における、対照の9,700倍(細胞1個当たり60〜140個のミトコンドリア)超(p<0.001)への、有意な(p<0.001)増大を結果としてもたらし、栄養補助剤非含有培地中、最大10日まで、安定を維持した。AsOR−LLOコンジュゲートの非存在下における、複合体化ミトコンドリアへの曝露は、12時間で、対照の900倍のミトコンドリアDNAレベル(細胞1個当たり5〜10個のミトコンドリア)を結果としてもたらし、24時間では、ほとんど検出可能なレベルをもたらさなかった(図23E)。SK Hep1−Mito(−)細胞におけるミトコンドリアDNAレベルは、いかなる条件下でも、ほとんど検出可能でなかった(図23F)。結論:複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの共投与後において、タンパク質マーカーは減少したが、ミトコンドリアDNAレベルは増大したことから、タンパク質キャリアの細胞内運命と、内部移行されたミトコンドリアの細胞内運命とは、内部移行後8時間以内のある時点における、2つの成分の分離におそらく起因して異なることが指し示される。
複合体化ミトコンドリアに曝露されたMito(−)細胞の細胞増殖
Mito(−)細胞によるミトコンドリアの取込みが、栄養補助剤非含有培地中の細胞増殖に影響を及ぼしたかどうかを決定するために、細胞数を、複合体化ミトコンドリアへの曝露の後における、時間の関数としての細胞DNAによりアッセイした。Mito(−)細胞からの補充培地の除去は、Huh 7−Mito(−)およびSK Hep1−Mito(−)の両方について、ミトコンドリアDNAの85%の低下を結果としてもたらした。Mito(+)細胞は、正常に成長した(図24)。複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの共投与は、10日までに、細胞DNAの、ベースラインの3.5倍の有意な増大(p<0.001)を結果としてもたらした(図25A)。これに対し、無処理細胞では、DNAは、ベースラインの0.03倍に減少した(p<0.004)。いずれの条件下でも、SK Hep1−Mito(−)細胞の数は、減少した(図25B)。データは、複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの、Huh 7−Mito(−)細胞への共投与は、栄養補助剤非含有培地中の細胞数を増大させることを示唆した。レスキューされたHuh 7−Mito(−)細胞を増殖させ、栄養補助剤非含有培地中で、少なくとも8週間にわたり継代培養した(データは示さない)。
複合体化ミトコンドリアに曝露されたMito(−)細胞の好気性呼吸
移植されたミトコンドリアが、機能的であるとすれば、それらは、レシピエント細胞の酸素消費に影響を及ぼすはずである。したがって、酸素消費速度(OCR)を測定して、細胞におけるミトコンドリア呼吸レベルを定量した。Huh 7−Mito(−)細胞およびSK Hep1−Mito(−)細胞が、測定可能なミトコンドリア呼吸を示さなかったのに対し、Huh 7細胞およびSK Hep1細胞は、高度な基礎OCRを示したが、これは、オリゴマイシン、カルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニル−ヒドラゾン(FCCP)、およびロテノンの添加により変化し、ミトコンドリア呼吸と符合した(図26A)。複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの、Huh 7−Mito(−)細胞への共投与の12時間後において、OCRの、親Mito(+)細胞と比較した70%への増大が存在した。この増大は、大モル過剰量のAsORにより遮断された(図26B)。複合体化ミトコンドリアと、AsOR−LLOコンジュゲートとの共投与の10日後において、Huh 7−Mito(−)細胞は、親Huh 7細胞のものと同等な(>90%)、細胞1個当たりのミトコンドリア呼吸レベルを有した(図26C)。
考察
本実施例は、ミトコンドリアを、特異的な細胞型による取込みについてターゲティングすることができること、およびエンドソーム溶解性タンパク質の共内部移行が、機能的なミトコンドリアの細胞内放出を結果としてもたらすことができることを示す。AsGR(+)細胞の、単離されたミトコンドリア単独への曝露、および複合体化ミトコンドリアの、AsGR(−)細胞への曝露の両方が、同一の条件下における内部移行を結果としてもたらさなかったという事実により、観察されるミトコンドリアの内部移行は、単に食作用に起因するものではなかったことが指し示される。ミトコンドリアの、AsGR(+)Mito(−)細胞への、標的化移植についてのデータは、これらの細胞が、栄養補助剤非含有培地中で生存することが可能であるだけでなく、増殖することも可能であることを示した。細胞1個当たりのミトコンドリアDNAの量もまた、増大した。
低pHにおける、ミトコンドリアの、LLOコンジュゲートへの曝露は、還元条件の非存在下では、ミトコンドリア膜の有意な損傷を引き起こさなかった。還元条件と、低pHとの組合せが、試験管内で、ある程度のミトコンドリア膜の損傷を結果としてもたらしたことから、放出されると、LLOは、濃度依存的な様式で、ミトコンドリア膜を損傷しうることが示唆される。しかし、複合体化ミトコンドリアと、LLOコンジュゲートとの共内部移行が、酸素消費が正常な内部移行ミトコンドリアを結果としてもたらしたという事実は、標的化ミトコンドリアへの損傷が生じていた場合、影響は、これらのミトコンドリアが、宿主細胞のエネルギー要求を満たすことを妨げるのに十分でなかったことを示唆する。
バックグラウンドの宿主ミトコンドリアDNAを最小化することに加えて、ddCの使用は、実薬誘導性ミトコンドリア毒性についてのモデルとしての働きをした。ddCは、最初はFDAにより承認され、ミトコンドリア損傷に起因する実質的な副作用が観察されるまで、臨床的に使用されていたが、現在では、その使用が大幅に制限されている薬剤である。モデルの限界は、最新の研究におけるミトコンドリア損傷の程度が、臨床的な薬物反応において典型的に観察される程度を超えるということである。しかし、標的化ミトコンドリア移植は、検出可能な既存のミトコンドリアDNAを伴わずに、細胞をレスキューすることが可能であったという事実は、極端な毒性が少ない、細胞内の標的化ミトコンドリア移植であれば、薬物誘導性ミトコンドリア毒性の作用からの、少なくとも同様のレスキューを結果としてもたらしうることを示唆する。
培養中の肝細胞による、複合体化ミトコンドリアおよび標的化エンドソーム溶解剤の共内部移行は、そのミトコンドリアが、薬物毒性により損傷された細胞をレスキューすることが可能な、機能的なミトコンドリアの内部移行を結果としてもたらしうる。このような移植システムは、正常状態および病理学的状態におけるミトコンドリアの増殖および機能の調節についての研究において有用でありうる。
他の実施形態
前出の記載は、本発明の例示的な実施形態だけを開示する。
本発明について、その詳細な記載と共に記載してきたが、前出の記載は、付属の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および改変は、付属の特許請求の範囲内にある。したがって、本発明のある特定の特色だけについて例示および記載してきたが、当業者は、多くの改変および変更に想到する。したがって、付属の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に収まるものとして全てのこのような改変および変更を包含することを意図することを理解されたい。
Claims (27)
- ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質(AsG)と;
少なくとも部分的に精製された機能的な哺乳動物ミトコンドリアと
を含む医薬組成物であって、
ポリカチオンに共有結合によって付着している該AsGが該ミトコンドリアに静電的に複合体化している、医薬組成物。 - 前記AsGが、アシアロオロソムコイド(AsOR)を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリカチオンが、高度に正に帯電し、ポリリシン(PL)、ポリアルギニン、およびポリオルニチンからなるポリカチオンの群から選択される、請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリカチオンが、ポリリシン(PL)である、請求項3に記載の組成物。
- エンドソーム溶解剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記エンドソーム溶解剤が、リステリオリシンである、請求項5に記載の組成物。
- 前記エンドソーム溶解剤が、エンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンの断片、またはエンドソーム溶解活性を有するリステリオリシンペプチドである、請求項5に記載の組成物。
- 前記エンドソーム溶解剤が、エンドソーム内に存在する条件下で切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着している、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
- エンドソーム内に存在する条件下で切断可能な前記結合が、ジスルフィド結合および酸不安定性結合である、請求項8に記載の組成物。
- 前記酸不安定性結合が、イミノ結合、アセタール結合、またはラクトン結合である、請求項9に記載の組成物。
- 前記ミトコンドリアが、健常ドナーに由来する細胞から得られるか、または哺乳動物細胞もしくは組織から単離される、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
- ドナー哺乳動物細胞が、肝細胞、白血球、幹細胞、または組織である、請求項11に記載の組成物。
- 前記ミトコンドリアが、ヒトまたはラットミトコンドリアである、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
- 組成物を作製する方法であって、
細胞から機能的なミトコンドリアを少なくとも部分的に精製するステップと;
AsGを、高度に正に帯電したポリカチオンに共有結合によって付着させるステップと;
高度に正に帯電したポリカチオンに共有結合によって付着している該AsGを該ミトコンドリアに静電的に複合体化させるステップと
を含む方法。 - 前記ポリカチオンが、ポリリシン(PL)である、請求項14に記載の方法。
- 前記AsGが、アシアロオロソムコイド(AsOR)を含む、請求項14から15のいずれか一項に記載の方法。
- エンドソーム溶解剤を、エンドソーム内の条件で切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着させるステップをさらに含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エンドソーム溶解剤が、リステリオリシンである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エンドソーム溶解剤が、リステリオリシン(LLO)、エンドソーム溶解活性を有するLLOの断片、およびエンドソーム溶解活性を有するLLOペプチドからなる群から選択される、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
- ミトコンドリアを肝細胞に移植する方法であって、AsG−PLと静電的に複合体化している機能的な哺乳動物ミトコンドリアと、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着しているエンドソーム溶解剤とを用意するステップと;
前記組成物を肝細胞に送達するステップと
を含む方法。 - 前記AsGが、アシアロオロソムコイド(AsOR)を含む、請求項20に記載の方法。
- 前記エンドソーム溶解剤が、リステリオリシンである、請求項20から21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エンドソーム溶解剤が、リステリオリシン(LLO)、エンドソーム溶解活性を有するLLOの断片、およびエンドソーム溶解活性を有するLLOペプチドからなる群から選択される、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
- ポリカチオンに共有結合によって付着しているアシアロ糖タンパク質(AsG)と;少なくとも部分的に精製された機能的な哺乳動物ミトコンドリアとを含む医薬組成物と;該組成物を使用して肝疾患を処置するための指示とを含むキット。
- 前記組成物が、切断可能な結合によりAsGに共有結合によって付着しているエンドソーム溶解剤をさらに含む、請求項24に記載のキット。
- 肝疾患を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法。
- 前記患者が、ヒト患者である、請求項26に記載の方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US201562126068P | 2015-02-27 | 2015-02-27 | |
US62/126,068 | 2015-02-27 | ||
PCT/US2016/019845 WO2016138420A1 (en) | 2015-02-27 | 2016-02-26 | Targeted transplantation of mitochondria to hepatocytes |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018507865A true JP2018507865A (ja) | 2018-03-22 |
Family
ID=55587354
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017544947A Pending JP2018507865A (ja) | 2015-02-27 | 2016-02-26 | 肝細胞へのミトコンドリアの標的化移植 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US10537594B2 (ja) |
EP (1) | EP3261677B1 (ja) |
JP (1) | JP2018507865A (ja) |
MA (1) | MA41757A (ja) |
WO (1) | WO2016138420A1 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013035101A1 (en) | 2011-09-11 | 2013-03-14 | Minovia Therapeutics Ltd. | Compositions of functional mitochondria and uses thereof |
WO2019028469A1 (en) * | 2017-08-04 | 2019-02-07 | The Methodist Hospital | FUNCTIONALIZED POLYMER MITOCHONDRIAL COMPOSITIONS AND METHODS OF USE IN CELL TRANSPLANTATION AND FOR MODIFYING METABOLIC PHENOTYPE |
US11951135B2 (en) | 2018-07-22 | 2024-04-09 | Minovia Therapeutics Ltd. | Mitochondrial augmentation therapy of muscle diseases |
WO2020021537A1 (en) * | 2018-07-22 | 2020-01-30 | Minovia Therapeutics Ltd. | Mitochondrial augmentation therapy of liver diseases |
US20220145330A1 (en) * | 2019-02-10 | 2022-05-12 | The J. David Gladstone Institutes, a testamentary trust established under the Will of J. David Glads | Modified mitochondrion and methods of use thereof |
TWI780431B (zh) * | 2020-05-08 | 2022-10-11 | 台灣粒線體應用技術股份有限公司 | 新穎性醫藥組合物及其於修復肝臟損傷、治療肝臟損傷相關疾病與提升肝臟功能之用途 |
WO2024076572A1 (en) * | 2022-10-06 | 2024-04-11 | Mitrix Bio Inc. | Formulations and methods for cellular therapies involving chimeric antigen receptors |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5166320A (en) * | 1987-04-22 | 1992-11-24 | University Of Connecticut | Carrier system and method for the introduction of genes into mammalian cells |
US5728399A (en) | 1994-06-29 | 1998-03-17 | University Of Conn. | Use of a bacterial component to enhance targeted delivery of polynucleotides to cells |
TWI404801B (zh) * | 2011-06-15 | 2013-08-11 | 胜肽粒線體移植系統方法及其用途 | |
WO2013035101A1 (en) | 2011-09-11 | 2013-03-14 | Minovia Therapeutics Ltd. | Compositions of functional mitochondria and uses thereof |
US8648034B2 (en) * | 2011-12-09 | 2014-02-11 | Changhua Christian Hospital | Method and applications of peptide-mediated mitochondrial delivery system |
-
2016
- 2016-02-26 US US15/553,717 patent/US10537594B2/en active Active
- 2016-02-26 WO PCT/US2016/019845 patent/WO2016138420A1/en active Application Filing
- 2016-02-26 MA MA041757A patent/MA41757A/fr unknown
- 2016-02-26 EP EP16711064.2A patent/EP3261677B1/en active Active
- 2016-02-26 JP JP2017544947A patent/JP2018507865A/ja active Pending
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2016138420A1 (en) | 2016-09-01 |
MA41757A (fr) | 2018-01-03 |
EP3261677A1 (en) | 2018-01-03 |
US10537594B2 (en) | 2020-01-21 |
EP3261677B1 (en) | 2019-04-10 |
US20180036344A1 (en) | 2018-02-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2018507865A (ja) | 肝細胞へのミトコンドリアの標的化移植 | |
Zhang et al. | Supramolecular nanofibers containing arginine-glycine-aspartate (RGD) peptides boost therapeutic efficacy of extracellular vesicles in kidney repair | |
Choi et al. | The systemic delivery of siRNAs by a cell penetrating peptide, low molecular weight protamine | |
Karagiannis et al. | Rational design of a biomimetic cell penetrating peptide library | |
Peeler et al. | pH-sensitive polymer micelles provide selective and potentiated lytic capacity to venom peptides for effective intracellular delivery | |
CN103703140B (zh) | 用于靶向哺乳动物中的脂肪细胞的方法和组合物 | |
JP7014857B2 (ja) | 血液脳関門を通過して輸送するための組成物及び方法 | |
JP2008526749A (ja) | 自己アセンブリするペプチドナノファイバーを用いたpdgfの徐放性の送達 | |
JPH10504709A (ja) | ポリヌクレオチドの細胞への標的を定めた送達を増大させるための細菌成分の利用 | |
Ouyang et al. | Brain‐Penetration and Neuron‐Targeting DNA Nanoflowers Co‐Delivering miR‐124 and Rutin for Synergistic Therapy of Alzheimer's Disease | |
CN106619515A (zh) | 脂质体组合物及其用途 | |
JP2017501710A (ja) | 形質導入 | |
Ding et al. | Robust anticancer efficacy of a biologically synthesized tumor acidity-responsive and autophagy-inducing functional Beclin 1 | |
Jayasinghe et al. | Surface-engineered extracellular vesicles for targeted delivery of therapeutic RNAs and peptides for cancer therapy | |
Clemons et al. | Examining efficacy of “tat-less” delivery of a peptide against the L-type calcium channel in cardiac ischemia–reperfusion injury | |
Tan et al. | Cell penetrating polymers containing guanidinium trigger apoptosis in human hepatocellular carcinoma cells unless conjugated to a targeting N-acetyl-galactosamine block | |
Kubat et al. | Requirements for successful mitochondrial transplantation | |
CN111093718A (zh) | 治疗性纳米缀合物及其用途 | |
Choi et al. | Tonsil-derived mesenchymal stem cells incorporated in reactive oxygen species-releasing hydrogel promote bone formation by increasing the translocation of cell surface GRP78 | |
Labrak et al. | Impact of anti-PDGFRα antibody surface functionalization on LNC uptake by oligodendrocyte progenitor cells | |
Amory et al. | Melphalan, alone or conjugated to an FSH-β peptide, kills murine testicular cells in vitro and transiently suppresses murine spermatogenesis in vivo | |
US20220127317A1 (en) | Antitumor cell comprising a charge modified globin | |
Haroon et al. | Engineered exosomes mediated targeted delivery of neuroprotective peptide NR2B9c for the treatment of traumatic brain injury | |
Greschner et al. | PEGylation of a Peptide-Based Amphiphilic Delivery Agent and Influence on Protein Delivery to Cells | |
US20230079439A1 (en) | Compositions and Methods for Enhancing Beta Cell Maturation, Health and Function |