JP2018504936A - 真菌株および使用方法 - Google Patents

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Abstract

改善された真菌株およびそれらの使用が提供され、ここで前記真菌株は、変化したレベルの関心対象のタンパク質、酵素、変異体および他の基質を生成することができる。【選択図】 図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、現在係属中の2015年2月9日に出願された米国仮特許出願第62/113,905号明細書および2015年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/173,511号明細書に対する優先権の利益を主張するものである。
本開示は、変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え、形質転換または誘導真菌株、および変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成する能力を有するように真菌株を遺伝子組換えする方法に関する。さらに、本開示は、この組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程によって生成される関心対象のタンパク質およびこの関心対象のタンパク質を含む組成物に関する。さらに、本開示は、組換え、形質転換または誘導真菌株を使用して関心対象のタンパク質を生成する方法、ならびにこの関心対象のタンパク質を含む組成物を生成および使用する方法に関する。本明細書の関心対象のタンパク質は、内因性タンパク質または異種タンパク質であってよい。本開示はさらに、親菌株に比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定または選択するための方法に関する。
配列表の参照
「40733−PCT−SEQ_Listing.txt」との名称が付けられた配列表のテキストファイルの電子的提出の内容は、2015年2月8日に作成され、サイズは30KBであり、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
生物学的材料の寄託についての言及
本出願は、その寄託が参照により本明細書に組み込まれる生物学的材料の寄託についての言及を含有する。詳細には、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)菌株RLP37 Nik1(M743T)であるCBS140022は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約にしたがって、オランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)の機関であるCentraalbureau voor Schimmelcultures,Fungal Biodiversity Centre(Uppsalalaan 8,3584 CT Utrecht,the Netherlands)に寄託された。
真菌は、それらの内因性タンパク質のための工業製品として、および工業的に有用なタンパク質を生成するための発現宿主としての両方のそれらの商業的用途のために公知である。真菌の直接的工業使用の例では、糸状菌株、例えばトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)などは、セルロース性バイオマスに、そのような材料のセルロース成分およびセミセルロース成分を工業的に有用な物質にさらに加工できる小さなポリマー糖および/またはモノマー糖に分解するのに役立つように直接的に適用されてきた。しかしそのような直接使用は、これまでのところ、特に例えばセルロース性バイオマスなどの扱いにくい基質を分解するために必要とされるであろう高レベルの酵素活性によって相殺される場合、主としてこれらの生物によって生成される可能性がある全タンパク質/酵素の量には固有の限界があるために、経済的に高度に貴重であるとは証明されてこなかった。
他方、関心対象のタンパク質のための生成宿主としての真菌株の使用は、長年にわたり経済的に実行可能であると見なされてきて、しばらくの間は商業的環境において広範に使用されてきた。糸状菌が、三次元構造およびジスルフィド結合に正確に折り畳まれ、翻訳後に精密にタンパク質分解性でクリッピングされ、n−結合およびo−結合グリコシル化反応を用いて相当に予想通りにグリコシル化されたそれらの複合タンパク質を分泌する能力は、これらの生物を分泌タンパク質を生成するための高度に魅力的な宿主にさせる(MacKenzie,D.A.et al.,J Gen Microbiol(1993)139:2295−2307;Peberdy,J.F.,Trends in BioTechnology(1994)12:50−57)。真菌は、バイオマス加水分解、食品および飼料添加物、織物用途、穀物加工、クリーニングおよびその他の工業的使用のために効率的な酵素生産菌であることが公知である。
工業プロセスのための真菌発現タンパク質の使用は広まっており、特に非石油再生可能材料または起源から燃料および化学物質を生成するための酵素を含む工業プロセスを使用することに関する現在の関心の高まりを前提に、着実に増加しつつある。当分野では、タンパク質の発現を改善する様々な技術が開発されてきた。それらの技術には、例えば、伝統的な菌株改善法、例えば菌株を複数回の突然変異誘発および高生産菌の選択、ゲノム内に挿入された高コピー数の関心対象の遺伝子を含む生産菌株の構築または遺伝子組換えが含まれる。これらの方法の多数は菌株の生産性を改善することに有効ではあるが、それらには、典型的には各個別生成物を作成するために必要とされる菌株構築精度の労働集約性を含む制限がある。このため、単一の関心対象のタンパク質、または一団の関心対象のタンパク質、または内因性タンパク質さえの増加したタンパク質生産が可能な改善された真菌株を入手することへの必要が依然として存在する。
本開示は、変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え、形質転換または誘導真菌株、および変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成する能力を有するように真菌株を遺伝子組換えする方法に関する。さらに、本開示は、この組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程によって生成される関心対象のタンパク質およびこの関心対象のタンパク質を含む組成物に関する。さらに、本開示は、組換え、形質転換または誘導真菌株を使用して関心対象のタンパク質を生成する方法、ならびに関心対象のタンパク質を含む組成物を生成および使用する方法に関する。本開示はさらに、親菌株に比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定または選択するための方法に関する。
第一態様では、本開示は、親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼを発現する組換え真菌株を提供する。
一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である。一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型遺伝子の変異体である。所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、外部浸透圧に反応するシグナル伝達経路の一部として機能するポリペプチドをコードする。ヒスチジンキナーゼにおける突然変異を含む菌株は、例えば、培地中のイプロジオンまたはフルジオキソニルなどの高レベルのジカルボキシイミド系殺真菌剤の存在下で、所定の抗真菌化合物に対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異もまた有益な可能性があることも予測すべきである。これらの成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルのソルビトールまたは塩の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。このため、これに関連して、本開示はさらに、工業的に有用な分子を生成するために有用な宿主生物として恵まれている、浸透圧ストレスに対して耐性または感受性を有する真菌株を同定する方法も提供する。
所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1または配列番号43と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるが、配列番号1または配列番号43と100%同一ではないアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
所定の実施形態では、この態様の組換え真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態では、配列番号1の743位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基とを置換する突然変異、つまりM743Tである。
他の実施形態では、この態様の組換え真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態では、配列番号1の786位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基とを置換する突然変異、つまりM786Tである。
一部の実施形態では、この態様の組換え真菌株の親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である。特定の実施形態では、親菌株は、糸状菌株である。これに関連して、組換え真菌株は、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされた変異ヒスチジンキナーゼであって、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異または配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列を含む変異ヒスチジンキナーゼを含む。
一部の実施形態では、この態様の組換え真菌株は、その親菌株と比較して、はるかに大量の関心対象のタンパク質を生成することができる。例えば、組換え真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%またはいっそう少なくとも約150%多い量の関心対象のタンパク質を生成することができる。
第二態様では、本開示は、親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる形質転換真菌株またはその誘導真菌株であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む形質転換真菌株またはその誘導真菌株を提供する。
一部の実施形態では、形質転換真菌株またはその誘導真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である。一部の実施形態では、形質転換真菌株またはその誘導真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である。所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、外部浸透圧に反応するシグナル伝達経路の一部として機能するポリペプチドをコードする。このヒスチジンキナーゼにおける突然変異を含む菌株は、例えば、培地中のイプロジオンまたはフルジオキソニルなどの高レベルのジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤の存在下で、所定の抗真菌化合物に対する耐性または感受性について選択またはスクリーニングすることによって同定できる。このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異もまた有益な可能性があることも予測すべきである。これらの成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルのソルビトールまたは塩の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。
所定の実施形態では、この態様の形質転換真菌株またはその誘導真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1または配列番号43と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるが、配列番号1または配列番号43と100%同一ではないアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。例えば、所定の実施形態では、この態様の組換え真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態では、配列番号1の743位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基との置換、つまりM743Tである。他の実施形態では、この態様の組換え真菌株の変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態では、配列番号43の786位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基とを置換する突然変異、つまりM786Tである。
一部の実施形態では、この態様の組換え真菌株の親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である。特定の実施形態では、親菌株は、糸状菌株である。これに関連して、組換え真菌株は、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされた変異ヒスチジンキナーゼであって、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異または配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列を含む変異ヒスチジンキナーゼを含む。
一部の実施形態では、この態様の形質転換真菌株または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、はるかに大量の関心対象のタンパク質を生成することができる。例えば、この態様の形質転換真菌株または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%またはいっそう少なくとも約150%多い量の関心対象のタンパク質を生成することができる。
第三態様では、本開示は、その親菌株と比較して、組換え、形質転換または誘導真菌株によるタンパク質生成を改善するための方法であって、その組換え、形質転換または誘導真菌株が変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む方法を提供する。
一部の実施形態では、この態様の方法において使用される変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である。一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である。所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、外部浸透圧に反応するシグナル伝達経路の一部として機能するポリペプチドをコードする。このヒスチジンキナーゼにおける突然変異を含む菌株は、例えば、培地中のイプロジオンまたはフルジオキソニルなどの高レベルのジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤の存在下で、所定の抗真菌化合物に対する耐性または感受性について選択またはスクリーニングすることによって同定できる。このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異もまた有益な可能性があることも予測すべきである。これらの成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルのソルビトールまたは塩の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。
所定の実施形態では、この態様の方法において使用される変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1または配列番号43と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるが、配列番号1または配列番号43と100%同一ではないアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。例えば、この態様の方法において使用される変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1および配列番号1の743位または配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列をコードする。所定の特定の実施形態では、配列番号1の743位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基とを置換する突然変異、つまりM743Tである。他の実施形態では、配列番号43の786位での突然変異は、その位置でのメチオニン残基とトレオニン残基とを置換する突然変異、つまりM786Tである。
一部の実施形態では、この態様の方法において使用される組換え真菌株の親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である。特定の実施形態では、親菌株は、糸状菌株である。これに関連して、組換え真菌株は、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされた変異ヒスチジンキナーゼであって、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異または配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列を含む変異ヒスチジンキナーゼを含む。
一部の実施形態では、この態様の方法において使用される組換え、形質転換または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、はるかに大量の関心対象のタンパク質を生成することができる。例えば、組換え、形質転換または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%またはいっそう少なくとも約150%多い量の関心対象のタンパク質を生成することができる。
また別の態様では、本開示は、本明細書に開示した組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程を含む関心対象のタンパク質を生成する方法であって、その組換え、形質転換または誘導真菌株は、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされたヒスチジンキナーゼを発現し、関心対象のタンパク質を分泌する方法を提供する。
さらにまた別の態様では、本開示は、本明細書に記載した真菌株などの組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程によって生成される関心対象のタンパク質であって、組換え、形質転換または誘導真菌株は変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされるヒスチジンキナーゼを発現する関心対象のタンパク質を提供する。
本発明の態様のいずれかの実施形態では、関心対象のタンパク質は、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、それらの混合物、それらの機能的断片または1つ以上の酵素またはそれらの機能的断片の混合物であってよい。タンパク質の非限定的例は、さらに、デンプン代謝に含まれるタンパク質または酵素、グリコゲン代謝に含まれるタンパク質または酵素、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリサーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:02−オキシドレダクターゼ、EC1.1.3.5)、それらの変異体、それらの機能的断片またはそれらの組み合わせを含むことができる。関心対象のタンパクは、さらにまたペプチドホルモン、増殖因子、凝固因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、抗体、受容体、接着分子、微生物抗原(例えば、HBV表面抗原、HPV E7など)、またはそれらの変異体、機能的断片または2つ以上の上記の物質の混合物であってよい。
所定の関連態様では、本開示は、本明細書に記載したいずれかの態様の関心対象のタンパク質を含む組成物を提供する。本開示はさらに、バイオマス加水分解、クリーニング用途、穀物加工、動物栄養、食品組成物、織物処理などにおいてそのような組成物を使用する方法を提供する。
また別の態様では、本開示は、親菌株に比較して(比べて)変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定またはスクリーニングするための方法であって、
(a)菌株を寒天プレートの表面上に浸透物質および/またはジカルボキシイミド系殺真菌剤とともに接種する工程;および
(b)親菌株より迅速または緩徐に増殖する菌株をスクリーニングまたは選択する工程を含む方法を提供する。
例えば、所定の実施形態では、浸透物質には、糖、糖アルコールおよび塩が含まれるがそれらに限定されない。所定の実施形態では、浸透物質は、グルコース、スクロース、フルクトース、オリゴフルクトース、フルクト−オリゴ糖、転化糖などを含むがそれらに限定されない糖である。所定の他の実施形態では、浸透物質は、ソルビトール、キシリトール、ガラクトシロソルビトール(galactosylosorbitol)などを含むがそれらに限定されない糖アルコールである。さらに他の実施形態では、浸透物質は、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムを含むがそれらに限定されない塩である。別の実施形態では、殺真菌剤は、ジカルボキシイミドまたはフェニルピロールである。特定の実施形態では、殺真菌剤は、イプロジオンまたはフルジオキソニルである。
この態様の一部の実施形態では、親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株は、親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む。しかし理論によって拘束することを望まなくても、このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異は、さらにそのような真菌株の生産性にとって個別的または集合的に有益であると予測することができる。このシグナル伝達経路の好適な他の成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。
この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルのソルビトールまたは塩の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。
一部の実施形態では、この態様の組換え真菌株の親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である。特定の実施形態では、親菌株は、糸状菌株である。
好適な浸透物質は、糖、糖アルコールまたは塩の1つまたは組み合わせを含むことができる。例えば、浸透物質は、グルコース、スクロース、フルクトース、オリゴフルクトース、フルクト−オリゴ糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、ガラクトシロソルビトール(galactosylosorbitol)、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムの1つ以上であってよい。
TrNik−1のドメイン構造の略図を示す図である。 nik1M743T対立遺伝子を含有する遺伝子置換カセットを備えるpRRAB nik1M743Tのマップを示す図である。 様々な培地上のRLP37、RLP37 Nik1M743TおよびRLP37 ΔNik1のコロニー表現型を比較する図である。図3Aは、Vogelの最少培地上のRLP37 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図3Bは、Vogelの最少培地上のRLP37のコロニー表現型を示す。図3Cは、ソルビトールを含むVogelの最少培地上のRLP37 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図3Dは、ソルビトールを含むVogelの最少培地上のRLP37のコロニー表現型を示す。図3Eは、Vogelの最少培地上のRLP37 ΔNik1のコロニー表現型を示す。図3Fは、ソルビトールを含むVogelの最少培地上のRLP37 ΔNik1のコロニー表現型を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵でのRLP37およびRLP37 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図4Aは、RLP37およびRLP37 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図4Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵でのRLP37およびRLP37 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図4Aは、RLP37およびRLP37 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図4Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 14Lスケールの標準真菌発酵でのRLP37およびRLP37 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図5Aは、RLP37およびRLP37 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図5Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 14Lスケールの標準真菌発酵でのRLP37およびRLP37 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図5Aは、RLP37およびRLP37 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図5Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 Δnik1::hph遺伝子欠失カセットを含有するpRRAB Δnik1のプラスミドマップを示す図である。 DASGIPの2Lスケール発酵中のRLP37およびRLP37 Δnik1のタンパク質生成を比較する図である。図7Aは、RLP37およびRLP37 Δnik1の全タンパク質比生成率を示す。図7Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Δnik1の供給糖に対する比収率を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵中のRLP37およびRLP37 Δnik1のタンパク質生成を比較する図である。図7Aは、RLP37およびRLP37 Δnik1の全タンパク質比生成率を示す。図7Bは、同一条件下で発酵中のRLP37およびRLP37 Δnik1の供給糖に対する比収率を示す。 様々な培地上の様々な菌株のコロニー表現型を比較する図である。図8Aは、ウリジンを含むVogelの最少培地上のNoCbh1 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図8Bは、ウリジンを含むVogelの最少培地上のNoCbh1のコロニー表現型を示す。図8Cは、ウリジンおよびソルビトールを含むVogelの最少培地上のNoCbh1 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図8Dは、ウリジンおよびソルビトールを含むVogelの最少培地上のNoCbh1のコロニー表現型を示す。図8Eは、ウリジンを含むVogelの最少培地上のCbh1 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図8Fは、ウリジンを含むVogelの最少培地上のCbh1のコロニー表現型を示す。図8Gは、ウリジンおよびソルビトールを含むVogelの最少培地上のCbh1 Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図8Hは、ウリジンおよびソルビトールを含むVogelの最少培地上のCbh1のコロニー表現型を示す。図8Iは、Vogelの最少培地上のTR Nik1WTのコロニー表現型を示す。図8Jは、Vogelの最少培地上のTR Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。図8Kは、ソルビトールを含むVogelの最少培地上のTR Nik1WTのコロニー表現型を示す。図8Lは、ソルビトールを含むVogelの最少培地上のTR Nik1M743Tのコロニー表現型を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵でのCbh1およびCbh1 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図9Aは、Cbh1およびCbh1 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図9Bは、同一条件下で発酵中のCbh1およびCbh1 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵でのCbh1およびCbh1 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図9Aは、Cbh1およびCbh1 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図9Bは、同一条件下で発酵中のCbh1およびCbh1 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 14Lスケールの標準真菌発酵でのCbh1およびCbh1 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図10Aは、Cbh1およびCbh1 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図10Bは、同一条件下で発酵中のCbh1およびCbh1 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 14Lスケールの標準真菌発酵でのCbh1およびCbh1 Nik1M743Tのタンパク質生成を比較する図である。図10Aは、Cbh1およびCbh1 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率を示す。図10Bは、同一条件下で発酵中のCbh1およびCbh1 Nik1M743Tの供給糖に対する比収率を示す。 nik1WT対立遺伝子を含有する遺伝子置換カセットを備えるpRRAB nik1WTのマップを示す図である。 DASGIPの2Lスケール発酵でのTR Nik1M743Tにとっての親菌株であるRLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTのタンパク質生成を比較する図である。図12Aは、RLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTの全タンパク質比生成率を示す。図12Bは、同一条件下で発酵中のRLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTの供給糖に対する比収率を示す。 DASGIPの2Lスケール発酵でのTR Nik1M743Tにとっての親菌株であるRLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTのタンパク質生成を比較する図である。図12Aは、RLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTの全タンパク質比生成率を示す。図12Bは、同一条件下で発酵中のRLP37、TR Nik1M743TおよびTR Nik1WTの供給糖に対する比収率を示す。 殺真菌剤を含む、または含まない培地上のT.リーゼイ(T.reesei)菌株であるRLP37およびRLP37 Nik1M743Tの表現型を示す図である。図13Aは、Vogelの最少培地上のRLP37、図13Bは、Vogelの最少培地上のRLP37 Nik1M743T、図13Cは、0.15%のDMSOを含むVogelの最少培地上のRLP37、図13Dは、0.15%のDMSOを含むVogelの最少培地上のRLP37 Nik1M743T、図13Eは、45μMのイプロジオンを含むVogelの最少培地上のRLP37、図13Fは、45μMのイプロジオンを含むVogelの最少培地上のRLP37 Nik1M743T アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)nik1M786T対立遺伝子を含有する遺伝子置換カセットを備えるpRNnik1M786Tのマップを示す図である。 振とうフラスコスケールで、野生型nik1対立遺伝子(コントロール)を含有する菌株GICC2071ならびにnik1M786T対立遺伝子を含有するGICC2071 Nik1M786T突然変異体菌株99番、117番および121番のタンパク質生成を比較する図である。振とうフラスコからの上清はSDS−PAGE上で作業した。 振とうフラスコスケールで、野生型nik1対立遺伝子を含有する菌株GICC2071ならびにnik1M786T対立遺伝子を含有するGICC2071 Nik1M786T突然変異体菌株99番、117番および121番間のPNPGに対する上清酵素活性を比較する図である。相対吸光度は、GICC2071コントロールに比して標準化した。エラーバーは標準偏差を表す。
I.概説
本菌株および本方法は、その野生型親糸状菌細胞から変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含むように、および/またはその変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされる変異ヒスチジンキナーゼを発現するように遺伝子組換えされている変異または突然変異糸状菌細胞であって、その細胞のヒスチジンキナーゼ媒介性シグナル伝達機序が実質的に変更または排除されている変異または突然変異糸状菌細胞に関する。そのような菌株は、改善された生産性レベルで関心対象のタンパク質の大規模生産するために良好に適する。
II.定義
本菌株、本組成物および本方法について記載する前に、下記の用語および語句について定義する。定義されていない用語は、当分野において使用されるそれらの通例の意味に一致するはずである。
ある範囲の数値が提供される場合、状況が明確に他のことを指示しない限り、その範囲の上限と下限の間にある下限値の単位の10分の1までの各介在値、およびその範囲内の任意の他の記載された値または介在値は、本発明の組成物および方法の範囲内に含まれると理解されている。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲内に含まれてよく、同様に上記の範囲内の任意の限度が特別に除外されることを前提として、本発明の組成物および方法内に含まれる。上記の範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限度のいずれかまたは両方を排除する範囲もまた、本発明の組成物および方法の中に含まれる。
所定の範囲は、用語「約」が先行する数値を用いて提示される。用語「約」は、本明細書では、それが先行する正確な数ならびにその用語が先行する数に近い、または近似する数についての文字による支持を提供するために使用される。ある数が特定した数に近いか否か、または略同じであるか否かの決定においては、その近いか略同じと記載されていない数が、それが示されている文脈において、その特定の数と実質的に等価なものを提供する数であり得る。例えば、数値に関連して、「約」という用語は、別段の定義がされていない限り、その数値の−10%〜+10%の範囲を指す。別の例では、「約6のpH値」という句は、pH値が別段特に定義されていない限り、5.4〜6.6のpH値を指す。
本明細書に提供した見出しは、全体として本明細書を参照することによって得ることのできる本組成物および本方法の様々な態様または実施形態を制限するものではない。したがって、直下に定義した用語は、明細書全体を参照することにより、より十分に定義される。
本明細書は読みやすくするために数多くの項で構成されている。しかしながら、読者は1つの項での記載が他の項にも適用されることは認識していよう。このように、本開示の異なる項で使用されている見出しは、限定するものであると解釈すべきではない。
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明の組成物および方法が属する分野の当業者であれば一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものに類似しているかまたは同じである方法および材料もまた、本組成物および本方法の実施または試験に使用することができるが、代表的な事例的方法および材料を以下に記載する。
本明細書に引用されている全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が、具体的および個別に、参照により組み込まれ、それらの刊行物が関連して引用している方法および/または材料を開示し記載するよう指示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。あらゆる刊行物の引用は、出願日前の開示のためであり、先行発明のために、本組成物および本方法がその公開に先行する権利がないと認めたものであると解釈されるべきではない。さらに、示された公開日は、実際の公開日と異なる可能性があり、それらは独立して確認する必要があり得る。
この詳細な説明においては、以下の略語および定義が適用される。明らかに別段の記載がされていない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数の対象を包含することに留意されたい。したがって、例えば、「酵素(an enzyme)」との言及は、複数の酵素を含み、「用量(the dosage)」との言及は、1種以上の用量および当業者に知られたその同等物を含む。
さらに、特許請求の範囲が任意選択による要素を排除することを選択し得ることに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の構成要素の列挙に関連した「唯一(solely)」、「ただ〜のみ(only)」などの排他的用語を使用するための、または「負」の限定を使用するための先行文として機能することが意図されている。
さらに、本明細書で使用する用語「から本質的になる」は、この用語の後の成分が、全組成物の30重量%未満の総量にあってこの成分の作用または活性に寄与しない、または妨害しない他の公知の成分の存在下で存在する組成物を意味することに留意されたい。
さらに、本明細書で使用する用語「含んでいる」は、それには限定されないその用語の後の成分を「含んでいる」ことを含むことを意味する。用語「含んでいる」の後の成分は、必要とされる、または必須であるが、これらの成分を含んでいる組成物は、さらに他の非必須または任意選択的成分を含むことができる。
さらに、本明細書で使用する用語「からなる」は、その用語の後の成分「からなる」ことを含むことを意味し、それに限定される。用語「からなる」の後の成分は、このため必要とされる、または必須であり、本組成物中には他の成分が全く存在しない。
当業者には本開示を読めば明白であるように、本明細書に記載および例示した個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載した本発明の組成物および方法の範囲または精神から逸脱せずに他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴とは容易に分離することができる、または組み合わせることができる別個の成分および特徴を有する。任意の言及した方法は、言及した事象の順に、または論理的に可能である任意の他の順に実施することができる。
本明細書で使用する用語「関心対象のタンパク質」は、任意選択的に高レベルで、および商業化の目的で糸状菌内で発現させることが望ましいポリペプチドを意味する。そのようなタンパク質は、酵素、基質結合タンパク質、界面活性タンパク質、構造的タンパク質などであってよい。
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを意味するために互換的に使用される。本明細書では、アミノ酸残基についての慣習的な1文字または3文字コードが使用される。ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状であってよく、改変アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって分断されてよい。これらの用語は、さらに、自然に、または、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または例えば標識化成分との共役結合などの任意の他の操作または改変などのインターベンションによって改変されているアミノ酸ポリマーも含んでいる。さらにこの定義の範囲内に含まれるのは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上のアナログを含有するポリペプチド、ならびに当分野において公知の他の改変である。
本明細書で使用する用語「変異(体)」は、ポリペプチドと結び付けて使用される場合は、1つ以上のアミノ酸の置換、付加または欠失によって、典型的には組換えDNA技術を適用することによって親(または参照)ポリペプチドから引き出されるポリペプチドを指す。変異ポリペプチドは、親ポリペプチドとは1つ以上、または数個(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)のアミノ酸残基が異なる場合がある。変異ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較したアミノ酸の一次配列の相同性(homology)/同一性(identity)のレベルによって定義することができる。好ましくは、変異ポリペプチドは、親または参照ポリペプチドとの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%またはいっそう少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。変異ポリペプチドは、典型的には、親/参照ポリペプチドのアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含んでいない。
用語「変異(体)」は、ポリヌクレオチドまたは遺伝子と結び付けて使用される場合は、親または参照ポリヌクレオチドまたは遺伝子と特定程度の相同性/同一性を有する、またはストリンジェント条件下で親または参照ポリヌクレオチドまたは遺伝子配列またはそれらの補体にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを指す。例えば、変異ポリヌクレオチドは、適切に、親ポリヌクレオチドとの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%またはいっそう少なくとも約99%のヌクレオチド配列同一性を有することができる。変異ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、典型的には、親/参照ポリヌクレオチドまたは遺伝子のヌクレオチド配列と100%同一であるヌクレオチド配列を含んでいない。
本明細書で使用する用語「ヒスチジンキナーゼ」は、ヒスチジンリン酸化を媒介する、細菌、酵母、糸状菌および植物中に存在するシグナル伝達因子を指す。ヒスチジンキナーゼは、大部分が膜貫通受容体であり、これらの実質的少数は、可溶性細胞質タンパク質である。いずれかの形態で、これらのキナーゼは、様々な感覚ドメインに連結した高度に保存された触媒伝達物質領域を含むモジュール式である。受容体ヒスチジンキナーゼは、膜貫通ドメインを通してその感覚ドメインを細胞質伝達物質領域に連結させる。伝達物質領域は、2つのドメイン:N末端DHp(二量化およびヒスチジンリン酸転移)ドメインおよびC末端CA(触媒性およびATP結合)ドメインからなる(Stock,A.M.,et al.Ann.Rev.Biochem.(2000)69:183−215)。ヒスチジンキナーゼは、少数の例外を除いてホモ二量体として機能し、それらの二量体化は、4ヘリックスバンドルを形成するDHpドメインによって媒介される(Goodman et al.,Genes Dev.(2009)23:249−59)。
本明細書で使用する用語「ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ」は、ヒスチジンキナーゼドメインと反応調節因子ドメインが同一タンパク質中に存在するヒスチジンキナーゼの1つの型である。酵母のサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)では、ゲノム内に1つのハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ遺伝子(SLN1)しか存在しない(Ota,I.M.,et al.,Science(1993)262,566−569)。酵母では、Sln1は高浸透圧反応に関係している。この反応は、細胞内の主要適合溶質としてのグリセロールの蓄積を含んでいる(Posas,F.,et al.,Cell(1996)86,865−875)。植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)においては、ゲノム内に9つのハイブリッド型および3つの従来型ヒスチジンキナーゼ遺伝子が存在し、12中2つのヒスチジンキナーゼ遺伝子は、酵母sln1突然変異体を補完することができる(Reiser,V.,et al.J.Cell Biol.(2003)161,1035−1040)。アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)もまた、酵母sln1突然変異体を補完できるSLN1ホモログを有する(Furukawa,K.,et al.,Appl.Environ.Microbiol.(2002)68,5304−5310)。糸状菌のニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)では、Sln1ホモログとは異なるハイブリッド型ヒスチジンキナーゼOs−1/Nik−1がos(浸透圧感受性)シグナル伝達経路に関係しており、高浸透圧条件に順応するために必要とされている(Alex,L.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93,3416−3421)。
本明細書で使用する用語「第III群ヒスチジンキナーゼ」は、ヒスチジンキナーゼ、アデニリルシクラーゼ、メチル基受容化学走性タンパク質およびホスファターゼを含むシグナル伝達関連タンパク質内で見いだされるHAMPドメイン反復配列からなる固有のN末端領域を有するヒスチジンキナーゼを指す(Aravind L,Ponting CP.FEMS Microbiol Lett(1999)176:111−116)。例えば、N.クラッサ(N.crassa)Os−1p(Nik1pとしても公知)、B.フケリアナ(B.fuckeliana)Daf1p(BcOs1pとしても公知)およびC.ヘテロストロフス(C.heterostrophus)Dic1p(ChNik1pとしても公知)は、HAMPドメイン反復配列からなる固有のN末端領域によって特徴付けられる(Catlett,N.L.,et al.Cell(2003)2,1151−1161)。系統発生的分析は、真正子嚢菌(euascomycete)(C.ヘテロストロフス(C.heterostrophus)、G.モリニフォルミス(G.moniliformis)、N.クラッサ(N.crassa)およびB.フケリアナ(B.fuckeliana))ヒスチジンキナーゼの11の主要群を解明した。これらの群の多数は、糸状子嚢菌内で高度に保存されているヒスチジンキナーゼを含有する。他の群は、種内で拡大していて種間での明確なオルトログをほとんど有していない遺伝子ファミリーを含有していて、より相違する。これらの分類は、数種のヒスチジンキナーゼ遺伝子が大多数または全部の子嚢菌(ascomycetes)が共有する基本的機能(例えば、浸透圧感知)のために必要であるが、他の遺伝子は病原体の生活様式の特定態様に順応するために進化してきた可能性があることを示唆している。これらのドメインの正確な機能は知られていない。しかし、NIK1 HAMP反復配列領域内の突然変異は、最も重度の浸透圧感受性およびジカルボキシイミド耐性表現型の原因となっている(Miller,T.K.,et al.,Fungal Genet.Biol.(2002)35:147−155)。
本明細書で使用する用語「真菌」は、例えば酵母およびカビなどの微生物ならびにキノコを含む大きな群の真核生物の任意のメンバーを指す。これらの生物は、植物、動物、原生生物および細菌とは別個の独特な真菌界として分類される。1つの主要な相違は、真菌細胞が、セルロースを含有する植物および一部の原生生物の細胞壁とは異なり、および細菌の細胞壁とは異なり、キチンを含有する細胞壁を有することである。
本明細書で使用する用語「子嚢菌(Ascomycete)真菌株」は、真菌界内の子嚢菌門(Division Ascomycota)内の任意の生物を意味する。子嚢菌(Ascomycete)真菌細胞の例には、例えば、トリコデルマ種(Trichoderma spp)、アスペルギルス種(Aspergillus spp)、ミセリオフトラ種(Myceliophthora spp)およびペニシリウム種(Penicillium spp)などのチャワンタケ亜門(subphylum Pezizomycotina)内の糸状菌が含まれるがそれらに限定されない。
本明細書で使用する「糸状菌」は、真菌植物(Eumycota)亜門および卵菌類(Oomycota)亜門の全ての糸状菌形を指す。例えば、糸状菌には、制限なく、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、エメリセラ(Emericella)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、シタリジウム(Scytalidium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)またはトリコデルマ(Trichoderma)種が含まれる。一部の実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)であってよい。一部の実施形態では、糸状菌は、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)またはフザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)である。一部の実施形態では、糸状菌は、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)またはチエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)である。一部の実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、例えばRL−P37(Sheir−Neiss et al.,Appl.Microbiol.Biotechnology,20(1984)pp.46−53;Montenecourt B.S.,Can.,1−20,1987)、QM9414(ATCC No.26921)、NRRL 15709、ATCC 13631、56764、56466、56767またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、例えばATCC 32098および32086である。一部の実施形態では、糸状菌は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションからトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ATCC 56765として入手できるトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)RutC30である。これに関連して、一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載した糸状菌のいずれか1つの全細胞ブロス調製物を提供する。
「異種」核酸構築物または核酸配列は、その中で発現する細胞にとって天然形ではない、または天然形で存在しない配列の一部分を有する。制御配列に関して「異種」は、それの発現を現在調節している同一遺伝子を調節するために自然には機能しない制御配列(すなわち、プロモーターまたはエンハンサー)に関する。一般に、異種核酸配列は、細胞またはそれらがその中に存在するゲノムの一部にとって内因性ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられている。「異種」核酸構築物は、天然細胞内で見いだされる制御配列/DNAコーディング配列の組み合わせと同一である、または異なる制御配列/DNAコーディング配列の組み合わせを含有することができる。
本明細書で使用する用語「宿主細胞」は、単細胞生物、多細胞生物に由来して組織培養中に配置された細胞または本発明による核酸構築物を用いた形質転換を受けやすい多細胞生物の一部として存在する細胞のいずれであろうと、好適には任意の真菌の細胞であってよい。例えば酵母および他の真菌細胞などの宿主細胞は、DNAを複製して、本発明において使用するヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを生成するために使用できる。好適な細胞は、一般に糸状菌または酵母である。特に好ましいのは、糸状菌由来の細胞、好ましくは、例えばA.ニガー(A.niger)およびA.ツビンゲンシス(A.tubingensis)などのアスペルギルス(Aspergillus)属由来の細胞である。他の好ましい生物には、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、A.アワモリ(A.awamori)、ミセリオプトラ・サーモフィル(Myceliophthora thermophile)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、T.ビリジエ(T.viride)またはT.ロンギブラキアタム(T.longibrachiatum)が含まれる。
本明細書で使用する用語「ベクター」は、異なる宿主細胞間の移入のために設計された核酸構築物を意味する。「発現ベクター」は、異種細胞内に異種DNA断片を組み込んで発現させる能力を有するベクターを意味する。多数の原核生物および真核生物発現ベクターは、市販で入手できる。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内に含まれる。
本明細書で使用する用語「組換え真菌株」は、遺伝子組換えテクノロジーを使用して構築された真菌株を指す。
本明細書で使用する用語「親菌株」は、組換え菌株を生成するためにそのゲノムを1回、2回またはそれ以上突然変異させることのできる微生物菌株を指す。
本明細書で使用する用語「形質転換(された)」は、細胞が組換えDNA技術の使用によって形質転換されていることを意味する。形質転換は、典型的には細胞内への1つ以上のヌクレオチド配列の挿入によって発生する。挿入されたヌクレオチド配列は、異種ヌクレオチド配列であってよい、すなわち、例えば融合タンパク質などの形質転換されなければならない細胞にとって自然ではない配列である。
用語「誘導(された)」には、「に由来した」、「得られた」、「入手可能」および「作成された」が含まれ、一般には、1つの特定の材料がまた別の材料中にその起源が見いだされる、または他の特定の材料を参照して記載できる特徴を有する。
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、コーディング領域に先行する、またはコーディング領域の次に来る領域を含んでいても含んでいなくてもよい、ポリペプチドを生成する際に含まれるDNAのセグメント、例えば5’未翻訳(5’UTR)または「リーダー」配列および3’UTRまたは「トレーラー」配列ならびに個別コーディングセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を意味する。所定の実施形態では、遺伝子は、商業的に重要な工業用タンパク質またはペプチド、例えば、酵素、例えばプロテアーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼまたはリパーゼなどをコードする。関心対象の遺伝子は、天然型遺伝子、突然変異遺伝子または合成遺伝子であってよい。
本明細書で使用する用語「突然変異」は、核酸配列内の任意の変更または変化を指す。点突然変異、フレームシフト突然変異およびスプライシング突然変異を含む数種のタイプの突然変異が存在する。突然変異は、特異的に(例えば、部位特異的突然変異誘発)または無作為に(例えば、化学薬品、修復マイナス細菌株の通過によって)実施することができる。
本明細書で使用する用語「タンパク質生成を改善する工程」は、それによりその工程から生成されるタンパク質量が増加するタンパク質生成工程を指す。このように生成されたタンパク質は、培養培地内または宿主細胞内で生成できるが、しかし、前者が好ましい。増加した生成は、例えば親宿主生物と比較して、生成されるセルラーゼまたはヘミセルラーゼ活性などのタンパク質または酵素活性または全細胞外タンパク質のより高い最高レベルとして検出することができる。
本明細書で使用する用語「比生産性」は、所定の期間にわたって単位細胞当たり、単位時間当たり生成されるタンパク質の総量を指す。
本明細書で使用する用語「同一性率(%)」は、用語「相同性率(%)」と互換的に使用され、どちらも配列アラインメントプログラムを使用して整列させた場合に、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドのアミノ酸配列のいずれか1つをコードする核酸配列間の核酸配列またはアミノ酸配列の同一性のレベルを意味する。
III.改善されたタンパク質生成を有する組換え真菌株
本開示は、第一態様では、変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え、形質転換または誘導真菌株に関し、および第二態様では、変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成する能力を有するように真菌株を遺伝子組換えする方法に関する。さらに、本開示は、そのような組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程によって生成される関心対象のタンパク質、およびさらにこうして生成された関心対象のタンパク質を含む組成物に関する。さらに、本開示は、組換え、形質転換または誘導真菌株を使用して関心対象のタンパク質を生成する方法、ならびに関心対象のタンパク質を含む組成物を生成および使用する方法に関する。本開示はさらに、親菌株に比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定または選択するための方法に関する。
第一態様では、本開示は、親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を発現することができる組換え真菌株を提供する。一部の実施形態では、本開示は、その親菌株と比較して、有意に大量の関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を提供する。例えば、組換え真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%またはいっそう少なくとも約150%多い量の関心対象のタンパク質を生成することができる。
第二態様では、本開示は、親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる形質転換真菌株またはその誘導真菌株であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を発現することができる形質転換真菌株またはその誘導真菌株を提供する。
第三態様では、本開示は、その天然型、非組換え、非形質転換または非誘導親菌株と比較して、組換え、形質転換または誘導真菌株によるタンパク質生成を改善するための方法であって、組換え、形質転換または誘導真菌株を使用する工程を含み、その組換え、形質転換または誘導真菌株が変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼを発現することができる方法を提供する。
本明細書に提示した態様のいずれかでは、変異ヒスチジンキナーゼは、野生型ヒスチジンキナーゼの変異体である。一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号1と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるが、配列番号1と100%同一ではないポリペプチドまたはアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号43と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるが、配列番号43と100%同一ではないポリペプチドまたはアミノ酸配列を含む。例えば、変異ヒスチジンキナーゼは、適切には変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子によってコードされた変異ヒスチジンキナーゼであって、変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号1および配列番号1の743位での突然変異または配列番号43および配列番号43の786位での突然変異と少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはいっそうそれ以上の%)同一であるアミノ酸配列を含む。
A.ヒスチジンキナーゼ
ヒスチジンキナーゼは、外部シグナルを検出して外部シグナルを形質導入可能な細胞事象に形質変換させることのできるセンサータンパク質である。外部刺激の検出および適切に反応するために細胞内のこれらのシグナルの伝達は、生物にとって生物のライフサイクル中の様々な環境条件に順応するために極めて重要である。シグナル伝達機序は、より複雑な生物では二成分系またはリン酸リレー系として全ての生細胞において見いだされる。そのような系は、ホスホリル基の頻回に膜結合したヒスチジンキナーゼから反応調節因子タンパク質へのシグナル伝達を付与し、したがって様々な生理学的反応を始動させる。リン酸化は、オリゴマー化(Weiss,V.,F.Claverie−Martin,and B.Magasanik.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992)89:5088−5092;Webber,C.A.,and R.J.Kadner.Mol.Microbiol.(1997)24:1039−1048)、二量体化(Cobb,M.H.,and E.J.Goldsmith.Trends Biochem.Sci.(2000)25:7−9)、他のタンパク質との相互作用(Blat,Y.,and M.Eisenbach.Biochemistry(1994)33:902−906;Newton,A.C.Chem.Rev.(2001)101:2353−2364)、DNAとの相互作用(Aiba,H.,F.Nakasai,S.Mizushima,and T.Mizuno.J.Biochem.(1989)106:5−7)またはこれらの機序の組み合わせ(Harlocker,S.L.,L.Bergstrom,and M.Inouye.J.Biol.Chem.(1995)270:26849−26856)を促進できる。リン酸リレー系は、病原性および非病原性細菌および真菌における分化工程、走化性、二次代謝産物産生ならびに毒性関連工程の原因に関連付けられてきた(Grebe,T.W.,and J.B.Stock.Adv.Microb.Physiol.(1999)41:139−227;Wolanin,P.M.,P.A.Thomason,and J.B.Stock.Genome Biol.(2002)3:Reviews 3013)。
塩基性シグナル伝達因子としての2つの成分:自己リン酸化ヒスチジンキナーゼおよびそれからリン酸を受容して情報を下流領域に送る反応調節因子からなるリン酸リレーシグナル伝達系であるハイブリッド型ヒスチジンキナーゼは、植物、粘菌、真菌および細菌における数種のシグナル伝達経路に含まれるが動物においては含まれない(Catlett,N.L.,et al.Cell(2003)2,1151−1161)。それらは、環境刺激に対する反応において極めて重要な役割を果たし、植物および動物病原体における毒性を含む様々な工程を調節する(Wolanin,P.M.,P.A.Thomason,and J.B.Stock.2002.Genome Biol.(2002)3:Reviews 3013)。
真菌においては、ヒスチジンキナーゼは、第11群に分類される(Catlett,N.L.,et al.Cell(2003)2,1151−1161)。典型的には、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、HisKAドメインに加えて、REC(シグナル受信体)ドメイン(PF00072)、HATPase(ヒスチジン様ATPase;PF02518)ドメインおよび様々なシグナル伝達ドメイン、例えば、HAMP−(ヒスチジンキナーゼ、アデニリルシクラーゼ、メチル基受容タンパク質およびホスファターゼ;PF00672)およびATPaseドメイン(PF13191)を含有する。第III群ヒスチジンキナーゼは、HKs、アデニリルシクラーゼ、メチル基受容化学走性タンパク質およびホスファターゼを含むシグナル伝達関連タンパク質において見いだされるHAMPドメイン反復配列からなる固有のN末端領域を有する(Aravind L,Ponting CP.FEMS Microbiol Lett(1999)176:111−116)。
第III群ヒスチジンキナーゼは、環境ストレス反応、病原性、菌糸発達および胞子形成の媒介因子として公知であった(Li,S.,et al.EMBO J.(1998)17:6952−6962.;Hohmann,S.Mol.Biol.Rev.(2002)66:300−372.;Nemecek,J.C.,et al.Science(2006)312:583−588.;Viaud,M.,et al.Mol.Plant Microbe Interact.(2006)19:1042−1050;Islas−Flores,et al.Asian J.Biochem.(2011)6:1−14)。これらのヒスチジンキナーゼ遺伝子の突然変異は、フェニルピロール系およびジカルボキシイミド系殺真菌剤に対する耐性ならびにさらに浸透圧感受性の増加も生じさせた(Cui,W.;Beever,R.E.,Parkes,S.L.,Weeds,P.L.& Templeton,M.D.Fungal Genet.Biol.(2002),36,187−198;Ochiai,N.;Fujimura,M.,Motoyama,T.,Ichiishi,A.,Usami,R.,Horikoshi,K.& Yamaguchi,I.Pest.Manag.Sci.,(2001)57,437−442)。C.ヘトロストロフス(C.heterostrophus)では、dic1に対するヌル突然変異体およびHAMPドメイン反復配列内の欠失または点突然変異を含む突然変異体は、浸透圧ストレスに対して高度に感受性であり、以前に挙げた殺真菌剤に対して高度に耐性であった(Yoshimi A,Tsuda M,Tanaka C Mol Genet Gennomics(2004)271:228−236)。突然変異の結果として生じる類似の効果は、N.クラッサ(N.crassa)os−1およびB.フケリアナ(B.fuckeliana)daf1において観察された(Cui,W.;Beever,R.E.,Parkes,S.L.,Weeds,P.L.& Templeton,M.D.Fungal Genet.Biol.(2002),36,187−198;Ochiai,N.;Fujimura,M.,Motoyama,T.,Ichiishi,A.,Usami,R.,Horikoshi,K.& Yamaguchi,I.Pest.Manag.Sci.,(2001)57,437−442)。C.ヘテロストロフス(C.heterostrophus)dic1のキナーゼドメインまたは調節因子ドメイン内の単一アミノ酸変化は、浸透圧ストレスに対する感受性を変化させ、殺真菌剤に対する中等度の耐性を付与した。したがって、第III群ヒスチジンキナーゼは、推定浸透圧センサーであると考えられる(Schumacher,M.et al.,CURR MICROBIOL(1997)34,340−347)。さらに、第III群ヒスチジンキナーゼのメンバーは、例えばフルジオキソニル、イプロジオンなどの市販の殺虫剤および抗真菌性天然産物であるアンブルチシンの標的であると考えられる(Motoyama,T.;Ohira,T.,Kadokura,K.,Ichiishi,A.,Fujimura,M.,Yamaguchi,I.& Kubo,T.Curr.Genet.,(2005b)47,298−306;Dongo A,Bataille−Simoneau N,Campion C,Guillemette T,Hamon B,et al.Appl,Environ.Microbiol.(2009)75:127−134)。
1つの例では、T.リーゼイ(T.reesei)ヒスチジンキナーゼ遺伝子(TrNik−1)のドメイン構造は、本開示においてはバイオインフォマティクスによって分析し、TrNik−1が5つのHAMP機能的ドメイン、1つのHisKA機能的ドメイン、1つのHATPaseドメインおよび1つのREC機能的ドメインを含有することが証明された(図1)。ドメイン構造によると、TrNik−1は、第III群ヒスチジンキナーゼに属する。トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ヒスチジンキナーゼのアミノ酸またはポリペプチド配列は、本明細書では下記に配列番号1として提示した:
Figure 2018504936
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ヒスチジンキナーゼ(AnNik1)のアミノ酸またはポリペプチド配列は、本明細書では下記に配列番号43として提示した:
Figure 2018504936
B.突然変異またはノックアウトヒスチジンキナーゼを含む組換え真菌株
1つの実施形態では、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)天然nik1ヒスチジンキナーゼ対立遺伝子の改変は、分泌タンパク質の量の増加を誘発することができる。nik1改変は、Nik1タンパク質の743位のアミノ酸をMet(ATG)からThr(ACG)へ変化させるオープンリーディングフレーム(ORF)(配列番号1)内の単一ヌクレオチドTからCへの置換であった。
改変nik1M743Tヒスチジンキナーゼ対立遺伝子を含有する菌株とnik1野生型(天然)対立遺伝子を含有する宿主菌株とのタンパク質生成の比較は実施されており、RLP37 Nik1M743Tの全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率はRLP37に比した有意な改善を示すことが見いだされた(図4)。これは、宿主T.リーゼイ(T.reesei)菌株内への改変nik1ヒスチジンキナーゼの導入がタンパク質生成の増加を誘発することを示した。
他の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)天然nik1ヒスチジンキナーゼ対立遺伝子の改変は、分泌タンパク質の量の増加を誘発することができる。nik1改変は、Nik1タンパク質の786位のアミノ酸をMet(ATG)からThr(ACG)へ変化させるオープンリーディングフレーム(ORF)(配列番号43)内の単一ヌクレオチドTからCへの置換であった。
改変nik1M786Tヒスチジンキナーゼ対立遺伝子を含有する菌株とnik1野生型(天然)対立遺伝子を含有する宿主菌株とのタンパク質生成の比較は実施されており、GICC2071 Nik1M786Tのタンパク質生成およびp−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド(PNPG)基質に対する酵素活性は、野生型親GICC2071に比して改善を示すことが見いだされた(図15および16)。これは、宿主A.ニガー(A.niger)菌株内への改変nik1ヒスチジンキナーゼの導入がタンパク質生成の増加を誘発することを示した。
一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼは、任意の種類の突然変異、例えば、単一および多重(例えば、少数、つまり1、2、3、4、5、6、7、8、9またはいっそう10以上さえの)突然変異、例えば、置換、挿入、欠失、転位、終結(終止コドンが導入される)および点突然変異を含むという点で、天然ヒスチジンキナーゼの変異体である。所定の例では、それにより単一ヌクレオチド塩基が同一位置で異なるヌクレオチド塩基と置換される単一塩基対置換が、DNAの他方の鎖上の相補的塩基の対応する置換を伴って発生する可能性がある。任意のそのような単一塩基対置換は、本明細書では本発明の1つの実施形態として企図されており、したがって、変異ヒスチジンキナーゼは、野生型の親ヒスチジンキナーゼ遺伝子と比較して単一塩基対置換を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる可能性がある。変異ポリヌクレオチドの突然変異は、タンパク質コーディング領域内またはリボソームまたはトランスファーRNAをコードする領域内で出現する可能性がある。
突然変異は、当分野において公知の任意の突然変異誘発手法、例えば部位特異的突然変異誘発法、合成遺伝子構築法、半合成遺伝子組換え法、ランダム突然変異誘発法、シャッフリング法などを使用して調製できる。
部位特異的突然変異誘発法は、1つ以上(例えば、数個)の突然変異が親をコードするポリヌクレオチド内の1つ以上の規定部位で導入される技術である。部位特異的突然変異誘発法は、所望の突然変異を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの使用を含むPCRによってin vitroで実施することができる。部位特異的突然変異誘発法は、さらにin vitroで、親をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド内の1つの部位での制限酵素による切断およびその後にポリヌクレオチド内の突然変異を含有するオリゴヌクレオチドのライゲーションを含むカセット突然変異誘発法によって実施することもできる。通常は、プラスミドおよびオリゴヌクレオチドを消化する制限酵素は同一であり、プラスミドおよびインサートの付着末端が相互にライゲートすることを許容する。例えば、Scherer and Davis,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979)76:4949−4955;およびBarton et al.,Nucleic Acids Res.(1990)18:7349−4966を参照されたい。部位特異的突然変異誘発法はさらに、当分野において公知の方法によってin vivoで実施することもできる。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号明細書;Storici et al.,Nature Biotechnol.(2001)19:773−776;Kren et al.,Nat.Med.(1998)4:285−290;およびCalissano and Macino,Fungal Genet.Newslett.(1996)43:15−16を参照されたい。本発明では、任意の部位特異的突然変異誘発手技を使用することができる。変異体を調製するために使用できる、多数の市販のキットが存在する。
ランダム突然変異誘発法は、様々な手段の1つを通して実施できる。1つの方法は、例えば、特に2−アミノプリン(2AP)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)またはエチルメタンスルホネート(EMS)などの突然変異誘発試薬の存在下での成果による化学的突然変異誘発法である(Foster,P.L.Methods Enzymol(1991)204:114−125.)。化学的突然変異誘発のための方法は、当分野において周知であり、Miller,J.H.(A short course in bacterial genetics:a laboratory manual and handbook for Escherichia coli and related bacteria.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.1992)によって詳細に記載されている。突然変異誘発は、さらにまたSelifonova et al.(Appl Environ.Microbio.(2001)l67:3645−3649)によって記載されたように、プラスミドのmutD5 offなどの突然変異誘発遺伝子を発現させることによっても実施できる。細胞ゲノムは、さらにまたトランスポゾン突然変異誘発、ゲノムシャッフリング、プラスミド由来の遺伝子の過剰発現または他の細胞工学技術を通して操作することもできる(Kleckner,N.,Bender,J.,and Gottesman,S.,Methods Enzymol(1991)204:139−180;Patnaik,R.,Biotechnol.Prog.(2008)24:38−47)。突然変異細胞は、さらにまたMiroux and Walkerの方法(米国特許第6,361,966号明細書)におけるように、細胞を単純により大きく増殖させ、複製エラーを自然に発生させることによっても生成できる。さらにより優れた突然変異体を得るためには、2ラウンド以上の突然変異誘発が実施することができ、各ラウンドは、同一または異なる突然変異誘発法を使用することができる。
所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、変異第III群ヒスチジンキナーゼであり、配列番号1または配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%またはいっそう少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するTrNik−1またはAnNik−1の天然型変異体であってよいが、この変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号1または配列番号43と100%同一の配列を有していない。
所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼは、例えば、培地中のイプロジオンまたはフルジオキソニルなどの高レベルのジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤の存在下で、所定の抗真菌化合物に対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。
一部の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ではない真菌株から入手することができ、変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号1または配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%またはいっそう少なくとも約99%同一であるポリペプチド配列を含むが、この変異ヒスチジンキナーゼは、配列番号1または配列番号43と100%同一ではない。
一部の実施形態では、ヒスチジンキナーゼは、トリコデルマ種(Trichoderma spp.)、特にトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(ロンギブラキアタム(longibrachiatum))由来である。ヒスチジンキナーゼは、さらに例えば、アブシディア種(Absidia spp.);アクレモニウム種(Acremoniυm spp.);アガンカス種(Agancus spp.)、アナエロミセス種(Anaeromyces spp.);A.アウクレアタス(A.auculeatus)、A.アワモリ(A.awamori)、A.フラバス(A.flavus)、A.フォエティダス(A.foetidus)、A.フマリカス(A.fumaricus)、A.フミガーツス(A.fumigatus)、A.ニデュランス(A.nidulans)、A.ニガー(A.niger)、A.オリザエ(A.oryzae)、A.テレウス(A.terreus)およびA.バーシカラー(A.versicolor)を含むアスペルギルス種(Aspergillus spp.);オイロバシジウム種(Aeurobasidium spp.);セファロスポラム種(Cephalosporum spp.);カエトミウム種(Chaetomium spp.);クリソスポリウム種)Chrysosporium spp.);コプリヌス種(Coprinus spp.);ダクチルム種(Dactyllum spp.);F.コングロメランス(F.conglomerans)、F.デセムセルラレ(F.decemcellulare)、F.ジャバニカム(F.javanicum)、F.リム(F.lim)、F.オキシスポラム(Foxysporum)およびF.ソラニ(F.solani)を含むフザリウム種(Fusarium spp.);グリオクラジウム種(Gliocladium spp.);H.インソレンス(H.insolens)およびH.ラヌギノサ(H.lanuginosa)を含むフミコラ種(Humicola spp.);ムコール種(Mucor spp.);M.サーモフィラ(M.thermophila)を含むミセリオフトラ種(Myceliophthora spp.);N.クラッサ(N.crassa)およびN.シトフィラ(N.sitophila)を含むニューロスポラ種(Neurospora spp.);ネオカリマスティックス種(Neocallimastix spp.);オルピノミセス種(Orpinomyces spp.);ペニシリウム種(Penicillium spp.);ファネロケーテ種(Phanerochaete spp.);フレビア種(Phlebia spp.);ピロミセス種(Piromyces spp.);シュードモナス種(Pseudomonas spp.);リゾプス種(Rhizopus spp.);シゾフィラム種(Schizophyllum spp.);トラメテス種(Trametes spp.);T.リーゼイ(T.reesei)、T.リーゼイ(T.reesei(ロンギブラキアタム(longibrachiatum))およびT.ビンデ(T.vinde)を含むトリコデルマ種(Trichoderma spp.);またはジゴリンクス種(Zygorhynchus spp.)などの他の真菌に由来してよい。同様に、ヒスチジンキナーゼは、例えば、バチルス種(Bacillus spp.)、セルロモナス種(Cellulomonas spp.);クロストリジウム種(Clostridium spp.)、ミセリオフトラ種(Myceliophthora spp.);サーモモノスポラ種(Thermomonospora sppp.);ストレプトミセス種(Streptomyces spp.)、S.オリボクロモゲネス(S.olivochromogenes);フィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)などの細菌およびカンジダ・トレスン(Candida torresn)、C.パラシロシス(C.parapsllosis);C.サケ(C.sake);C.ゼイラノイデス(C.zeylanoides)、ピチア・ミヌタ(Pichia minuta);ロードトルーラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis);R.ムチラギノーザ(R.mucilaginosa)またはスポロボロミセス・ロゼウス(Sporobolomyces roseus)を含む酵母の中に見いだすことができる。
1つの例では、nik1M743T対立遺伝子が機能獲得または機能消失を生じさせるかどうかを決定するために、Nik1欠失菌株(RLP37 ΔNik1)が構築された。RLP37 ΔNik1菌株と野生型対立遺伝子を含有するRLP37宿主菌株とのタンパク質生成および他の特徴についての比較は、nik1M743T対立遺伝子が機能獲得表現型を生じさせる機能獲得対立遺伝子であることを証明した(図12)。
所定の実施形態では、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、外部浸透圧に反応するシグナル伝達経路の一部として機能するポリペプチドをコードする。このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異もまた有益な可能性があると予測することができる。これらの成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルのソルビトールまたは塩の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。
本発明のためには、用語「浸透圧」は、糸状菌の細胞膜を横断する正味の水の流れを停止させるために必要とされる静水圧を指す。例えば、真菌細胞に曝露させられる浸透圧は、真菌細胞が培養される増殖培地中の塩またはソルビトールなどの成分の(例えば、1.2Mと高い)濃度によって変動する可能性がある。細胞が高浸透圧に抵抗する能力は有益であり、細胞がより大量の関心対象のタンパク質を生成する能力と結び付けることができる。この考え方に沿うと、本発明の組換え真菌株または誘導真菌株は、それらの親菌株と比較して改善された浸透圧に抵抗する能力を有する。
C.タンパク質生成の検出
組換え真菌株が改善されたレベルの関心対象のタンパク質を生成する能力を有することを確証するために、様々なスクリーニング法を実施することができる。発現ベクターは、検出可能な標識として機能する標的タンパク質へのポリペプチド融合をコードできる、または標的タンパク質自体が選択可能またはスクリーニング可能なマーカーとして機能できる可能性がある。標識タンパク質は、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング(ウェブサイトのCold Spring Harbor Protocolsから入手できる方法)、ELISA、または標識がGFPである場合は、全細胞蛍光法またはFACSによって検出することができる。例えば、6−ヒスチジンタグは標的タンパク質への融合体として含まれ、このタグがウェスタンブロッティングによって検出されるであろう。標的タンパク質が十分に高いレベルで発現すると、野生型に比した突然変異体発現の増加を検出するためには、クマシー/銀染色と組み合わせたSDS−PAGEを実施することができ、その場合には標識が必要とされない。さらに、関心対象のタンパク質の改善されたレベルを確証するためには、培養または発酵がより長期間にわたり効率的に持続することを可能にする、例えば細胞毎のタンパク質活性または量、培地1mL当たりのタンパク質活性または量の増加の検出などの他の方法、またはこれらの方法の組み合わせを使用できる。
比生産性の検出は、タンパク質生成を評価するためのまた別の方法である。比生産性(Qp)は、下記の方程式:
Qp=gP/gDCW・hr
(式中、「gP」はタンク内で生成されたタンパク質のグラム数であり、「gDCW」はタンク内の乾燥細胞重量(DCW)のグラム数であり、「hr」は、生成時間ならびに増殖時間を含む接種時点からの発酵時間(時間)である)によって決定できる。
一部の実施形態では、組換え、形質転換または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約0.5%、例えば、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.7%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2.0%、少なくとも約2.5%またはいっそう少なくとも約3%以上多い関心対象のタンパク質を生成することができる。
D.関心対象のタンパク質を生成するために組換え、形質転換または誘導真菌株を使用する
1つの態様では、本開示は、組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程を含む関心対象のタンパク質を生成する方法であって、組換え、形質転換または誘導真菌株が関心対象のタンパク質を分泌し、組換え、形質転換または誘導真菌株がそのヒスチジンキナーゼ遺伝子内に突然変異を含む方法を提供する。
真菌を形質転換させてその真菌を培養するための標準技術は、当分野において周知であり、組換えタンパク質を生成するために本発明の改善された宿主を形質転換させるために使用できる。宿主細胞内へのDNA構築物またはベクターの導入には、例えば、形質転換法;エレクトロポレーション法;核マイクロインジェクション法;形質導入法;トランスフェクション法、例えば、リポフェクション媒介性およびDEAE−デキストリン媒介性トランスフェクション法;リン酸カルシウムDNA沈降物とのインキュベーション法;DNA被覆微粒子弾丸を用いた高速衝撃法;遺伝子銃またはバイオリスティック形質転換法およびプロトプラスト融合法などの技術が含まれる。一般的形質転換技術は、当分野において公知である。例えば、Ausubel et al.(1987),supra,chapter 9;Sambrook et al.(2001),supra;およびCampbell et al.,Curr.Genet.(1989)16:53−56を参照されたい。トリコデルマ(Trichoderma)属の異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書;同第6,268,328号明細書;Harkki et al.,Enzyme Microb.Technol.(1991)13:227−233;Harkki et al.,BioTechnol.(1989)7:596−603;欧州特許第244,234号明細書および同第215,594号明細書に記載されている。さらに、アスペルギルス(Aspergillus)属菌株の形質転換については、さらにCao et al.,Science(2000)9:991−1001も参照されたい。
通常、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)の形質転換は、典型的には10〜10/mL、特に2×10/mLの密度での透過性処理を受けているプロトプラストまたは細胞が使用される。適切な溶液(例えば、1.2Mのソルビトールおよび50mMのCaCl)中の体積100μLのこれらのプロトプラストまたは細胞が所望のDNAと混合される。一般には、高濃度のポリエチレングリコール(PEG)が取込み溶液に加えられる。例えば、ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウムなどの添加物もまた、形質転換を促進するために取込み溶液に加えられてよい。他の真菌宿主細胞に対しても類似の手技を利用できる。例えば、どちらも参照により組み込まれる米国特許第6,022,725号明細書および同第6,268,328号明細書を参照されたい。
一部の実施形態では、本発明は、組換え真菌株または形質転換真菌株および誘導真菌株を発酵させる工程を含む関心対象のタンパク質を生成する方法であって、組換えまたは形質転換および誘導真菌株が関心対象のタンパク質を分泌する方法を提供する。当分野において周知の発酵方法は、組換えまたは形質転換または誘導真菌株を発酵させるために使用できる。一部の実施形態では、真菌細胞は、バッチまたは連続発酵条件下で増殖させられる。伝統的なバッチ発酵は、培地の組成が発酵の開始時に設定されて発酵中には変更されない閉鎖系である。発酵の開始時に、培地には所望の生物が接種される。この方法では、発酵は、この系に任意の成分を添加せずに発酵が許容される。典型的には、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、例えばpHおよび酸素濃度などの因子を制御する試みが頻回に企てられる。バッチ系の代謝産物およびバイオマス組成は、発酵が停止する時点まで常に変化する。バッチ培養内では、細胞は静的誘導期を経由して高増殖対数期へ進行し、最終的には増殖率が減少または停止する静止期に進む。未処理のまま放置すると、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期にある細胞は、生成物の大量生産に寄与する。
標準バッチ系に関する好適な変形形態は、「フェドバッチ発酵」系である。典型的なバッチ系のこの変形形態では、基質が発酵の進行につれて徐々に加えられる。フェドバッチ系は、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を抑制する可能性が高い場合、および培地中で限定量の基質を有することが所望である場合に有用である。フェドバッチ系内での実際の基質濃度の測定は困難であるので、このため例えばpH、溶存酸素およびCOなどの排気ガスの部分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチおよびフェドバッチ発酵は、当分野において一般的で周知である。
連続発酵は、定義された発酵培地がバイオリアクターに連続的に加えられ、加工処理のために等量の馴化培地が同時に除去される開放系である。連続発酵は、一般に、細胞が主として対数期増殖にある一定の高密度で培養を維持する。連続発酵は、細胞増殖および/または生成物濃度に影響を及ぼす1つ以上の因子の調節を許容する。例えば、1つの実施形態では、炭素源または窒素源などの制限的栄養物質は、一定比率に維持することができ、他の全てのパラメーターは調節することが許容される。他の系では、増殖に影響を及ぼす多数の因子を連続的に変化させることができ、その間に培地濁度によって測定される細胞濃度は一定に維持される。連続系は、定常状態増殖条件を維持しようと努力する。したがって、除去される培地に起因する細胞消失は、発酵中の細胞増殖率に対してバランスが取られなければならない。連続発酵工程のための栄養分および増殖因子を調節する方法ならびに生成物形成速度を最大化するための技術は、工業微生物学の分野において周知である。
E.組換え、形質転換または誘導菌株によって生成される関心対象のタンパク質
所定の態様では、本開示は、組換え、形質転換または誘導真菌株を発酵させる工程によって生成される関心対象のタンパク質であって、組換え、形質転換または誘導真菌株が変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼを発現できる関心対象のタンパク質を提供する。
関心対象のタンパク質は、任意の内因性および異種タンパク質であってよい。そのタンパク質は、1つ以上のジスルフィド架橋を含有することができる、またはその機能的形態がモノマーまたはマルチマーであるタンパク質である。すなわち、そのタンパク質は四次構造を有し、複数の同一(同種)または非同一(異種)サブユニットから構成され、このとき関心対象のタンパク質は、好ましくは関心対象の特性を備えるタンパク質である。関心対象のタンパク質または関心対象の変異タンパク質は、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、これらの酵素の2つ以上の混合物、それらの酵素のいずれかの機能的断片またはこれらの酵素およびそれらの機能的断片のいずれかの混合物であってよい。関心対象のタンパク質または変異タンパク質の非限定的例は、さらに、デンプン代謝に含まれるタンパク質または酵素、グリコゲン代謝に含まれるタンパク質または酵素、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリサーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、a−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:02−オキシドレダクターゼ、EC1.1.3.5)、それらの変異体、それらの機能的断片またはそれらの組み合わせを含むことができる。
関心対象のタンパクは、さらにまた好適には、ペプチドホルモン、増殖因子、凝固因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、抗体、受容体、接着分子、微生物抗原(例えば、HBV表面抗原、HPV E7など)、またはそれらの変異体、それらの機能的断片またはこれらの上記の物質のいずれかの混合物であってよい。
他のタイプの関心対象のタンパク質または変異体は、食品または作物に栄養価を提供できるタンパク質または変異体を含むことができる。非限定的例には、栄養分吸収阻止因子の形成を阻害できる植物性タンパク質およびより望ましいアミノ酸組成物(例えば、非トランスジェニック植物より高いリシン含量)を有する植物性タンパク質が含まれる。
F.このように作成された組成物の使用
所定の態様では、本開示は、組換え真菌細胞によって生成された関心対象のタンパク質を含む組成物であって、組換え真菌細胞が変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む、および/または変異ヒスチジンキナーゼを発現できる組成物を提供する。この組成物は、好適には、本明細書に提供した方法を使用して生成される。本組成物は、本明細書に記載した方法を使用して発現させた、関心対象の遺伝子によってコードされた関心対象のタンパク質を含む。本組成物は、例えばバイオマス加水分解、クリーニング用途、穀物加工、動物栄養、食品組成物、織物処理などの様々な有用な工業用途において使用することができる。
例えば、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、リグノセルロース系バイオマス加水分解において使用できる。世界最大の再生可能なバイオマス源であるリグノセルロースは、主として、リグニン、セルロースおよびその大部分がキシランであるヘミセルロースから構成される。リグノセルロース系供給原料からエタノールへの変換は、大量の供給原料の容易な入手可能性、材料の燃焼または埋立処分を回避できるという望ましさおよびエタノール燃料の清浄度という長所を有する。木材、農業残留物、草本作物および都市固形廃棄物は、エタノール製造のための供給原料であると見なされてきた。リグノセルロースがいったん発酵性糖、例えばグルコースに転換されると、発酵性糖は、酵母によって容易にエタノールに発酵させられる。セルロースは、β−1,4−結合によって共有結合された単糖であるグルコースのポリマーである。多数の微生物は、β結合グルカンを加水分解する酵素を生成する。これらの酵素には、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびβ−グルコシダーゼが含まれる。キシランは、1,4−β−グルコシド結合D−キシロピラノースから形成された多糖である。キシラン(例えば、エンド−1,4−β−キシラナーゼ、EC3.2.1.8)は、キシラン内の内部β−1,4−キシロシド結合を加水分解して、より低分子量のキシロースおよびキシロ−オリゴマーを生成する。本開示は、そのようなリグノセルロース系バイオマス使用にとっての関心対象の工業用酵素、変異体および混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
また別の例では、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、クリーニング用途に使用できる。酵素的クリーニング成分は、それらが、さもなければ従来型の化学的洗剤によっては容易には除去されない汚れ、染みおよび他の砕片を分解する能力のために人気が高い。クリーニングのために有用な周知の酵素には、例えば、それぞれが一連の様々な機能性を提供するリパーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、さらに所定のセルラーゼさえなどの他の酵素とともに、プロテアーゼおよびアミラーゼが含まれる。プロテアーゼは、タンパク質をベースとする染みに有効である;アミラーゼは炭水化物やデンプンに働く;およびリパーゼは、例えば、脂質または脂肪を分解する。本開示は、クリーニング用途におけるそのような使用にとっての関心対象の工業用酵素、変異体および混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
また別の例では、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、穀物加工において使用できる。デンプンは、植物自体ならびに微生物および高等生物によって使用される、植物における最も一般的な貯蔵炭水化物である。極めて様々な酵素がデンプン加水分解を触媒することができる。全ての植物源からのデンプンは穀物の形態で発生するが、植物源の種に依存して、デンプンは顕著に様々なサイズおよび物理的特徴で存在する。デンプンの酸加水分解は以前には広範に使用されていたが、この工程は、現在では、耐蝕性材料やその他の利点を必要とすることが少なく、加熱のために必要とするエネルギーが少なく、酸性工程よりも制御するのが相当に容易であることが知られている酵素的工程に取って代わられている。本開示は、例えばデンプン分解および穀粒加工におけるそのような使用にとっての関心対象の工業用酵素、変異体および混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
また別の例では、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、食品用途において使用できる。細菌、酵母およびカビによって生成された酵素は、何千年にもわたり、例えばパン、チーズ、ビールおよびワインなどの食品を製造するために食品用途において使用されてきた。現在、酵素は、パン製造、チーズ製造、デンプン加工および果汁や他の飲料の製造において使用され、そのような改善された質感、外観および栄養価を提供し、所望の香味および芳香などを生成する。食品用酵素は、典型的には、動物および植物(例えば、デンプン消化酵素、アミラーゼは、発芽大麦種子から入手できる)ならびにある範囲の有益な微生物を起源とする。酵素は、多数の工程における合成化学物質に取って代わって、伝統的な化学物質に基づく技術にとっての実行可能で所望である代替品であると思われる。酵素は、エネルギー消費を減少させて、廃棄物または副生成物の生分解性を改善する、食品製造加工の環境的性能を改善することに役立つことができる。酵素は、それらの作用において合成化学物質よりも特異的である傾向があり、したがって、酵素的加工はより少ない副反応および廃棄物または副生成物を生じさせ、結果としてより高品質の生成物を生成して、汚染の可能性を減少させる傾向がある。酵素的加工は、唯一の可能な加工であることも多い。これの1つの例は、酵素であるペクチナーゼの使用に依存する透明リンゴ果汁濃縮液の製造にある。食品用酵素の大多数は、微生物、例えばバチラス(Bacillus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属またはクルイベロミセス(Kluyveromyces)属から生成される。本開示は、食品用途におけるそのような使用にとっての関心対象の工業用酵素、変異体および混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
また別の例では、例えば、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、動物飼料添加物において使用できる。セルラーゼ、キシラナーゼ、β−グルカナーゼ、α−アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、フィターゼおよび他のカルボヒドラーゼは、動物飼料工業において広範に使用されてきた。多数の植物をベースとする供給原料は動物の成長を低下させる栄養阻害因子を含む物質を含有するので、そのような供給原料に加えられる酵素は、繊維、タンパク質、デンプンおよびフィチン酸塩を分解し、それらを動物がより消化し易くし、肉、卵またはミルク生産性を最大化しながら、より安価で頻回に地元で製造される供給原料の使用を可能にすることによってこれらの栄養阻害因子の消化性を改善する。同時に、そのような供給原料に加えられる酵素は、さらに腸の健康および動物の性能強化を支持する利点を提供することもできる。本開示は、動物飼料用途におけるそのような使用にとっての関心対象の工業用酵素、変異体および混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
さらになお別の例では、本開示の組換え宿主細胞によって、および/または本明細書に提供した方法または工程を使用して生成された組成物は、織物用途において使用できる。酵素は、織物加工の不可欠な部分になっている。織物工業においては、2つの明確に確立された酵素用途がある。第一に、例えばアミラーゼなどの酵素は、一般に湯通しのための予備仕上げ領域において使用される。第二に、例えばセルラーゼなどの酵素は、一般に、柔軟化、バイオストーン加工および綿製品のピリング傾向を低下させるための仕上げ領域で使用される。例えば、ペクチナーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼなどの他の酵素もまた織物加工において使用される。さらに、デニムや非デニムのフェーディング、バイオスカーリング、バイオポリッシング、ウール仕上げ、過酸化物除去、染料の脱色などに含まれた酵素を必要とする様々な用途がある(Cavaco−Paulo A and Guebitz GM.Textile Processing with Enzymes,2003,1st Edition;Chelikani P,Fita I,Loewen PC.Cell Mol Life Sci.(2004)61:192−208; Nalankilli.G.,Colourage,1998,XLV(10),17−19;Shenai,V.A.and Saraf,N.M.Technology of Finishing,(1990),Vol.X.II Edition)。本開示は、織物用途におけるそのような使用にとってのおよび関心対象の工業用酵素、変異体混合物の生産菌として好適および有利である、改善されたタンパク質生成を証明した形質転換真菌細胞を提供する。
G.変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる真菌株を同定するためのスクリーニング法
また別の態様では、本開示は、親菌株に比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定または選択するための方法であって、
(a)菌株を寒天プレートの表面上に浸透物質および/またはジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤とともに接種する工程;および
(b)親菌株より迅速または緩徐に増殖する菌株を選択またはスクリーニングする工程を含む方法を提供する。
一部の実施形態では、親(未変化)菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株は、親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む。
一部の実施形態では、親(未変化)菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株は、親菌株と比較してジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む。
一部の実施形態では、親(未変化)菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株は、親菌株と比較して浸透圧に対する変化した感受性または耐性およびジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系殺真菌剤に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む。
このシグナル伝達経路の他の成分における突然変異もまた真菌株の生産性にとって有益な可能性があろうと考えられる。これらの成分には、制限なく、浸透圧に反応して他の遺伝子の発現を調節するMAPキナーゼタンパク質および転写因子が含まれる。
この経路における突然変異を含む菌株は、例えば、培地中の高レベルの浸透物質の存在下で、浸透圧ストレスに対する耐性または感受性についてスクリーニングすることによって同定できる。一般に、菌株は、例えば1つ以上の糖、糖アルコールまたは塩(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、オリゴフルクトース、フルクト−オリゴ糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、ガラクトシロソルビトール(galactosylosorbitol)、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)のうちの1つまたは組み合わせであってよい様々なレベルの浸透物質とともに、個別コロニーが発生し、培養後には識別可能となるように、栄養寒天プレートの表面上に接種させられる。突然変異体の増殖は、有意に損傷した;突然変異体は、超分岐して膨潤した不規則な形状の菌糸の小集団を形成する傾向があった。これらの結果は、突然変異体が高浸透圧の条件下では輪郭のはっきりした菌糸体を形成できないことを示した。
変化した感受性は、高浸透圧の条件下での親の非突然変異細胞(すなわち、高浸透圧に対して耐性)より速く増殖する能力として、または高浸透圧の条件下での親の非突然変異細胞(すなわち、高浸透圧に対して感受性)に比較して低下した増殖率として現れる可能性がある。
親のタイプより迅速または緩徐に増殖する個別コロニーは、液中(液体培地)での同一条件下での増殖によるさらなる評価のために選別し、それらの全分泌タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を比較した。この方法で、親菌株と比較して浸透圧に対する変化した感受性および増加した分泌タンパク質生成率を有する突然変異真菌株が同定される。
本発明の菌株、組成物および方法の態様は、限定するものと見なすべきではない下記の実施例を考慮に入れると、より明確に理解することができる。材料および方法の改変は、当業者には明白であろう。
実施例1
nik1遺伝子内に1つの突然変異を含む組換え真菌株を創出する
1.1.nik1M743T遺伝子置換カセットの生成
遺伝子置換構築物は、nik1遺伝子座の上流の5’領域を含有する1つのDNA断片、loxP−隣接ハイグロマイシンB耐性マーカーカセットならびにプロモーターおよびnik1遺伝子を含有する2つのDNA断片(743位のアミノ酸をメチオニンからトレオニンに変化させるTからCへの置換を含む)を、2μの骨格含有酵母ベクターpRS426(大腸菌(E.coli)内のpRS426ファージミド(ATCC(登録商標)77107(商標))由来)を用いて融合させることによって作成した(図2)。
下記のプライマーは、Integrated DNA Technologies,Inc.(Coralville,IA,USA)によって調製された。
RRab88(フォワード)−
5’−
CGATTAAGTTGGGTAACGCCAGGGCCTAGGTGGCTTTGAGCGGTGTTGATGTGTA−3’(配列番号2)、プラスミドpRRabnik1M743TのためのAvrII制限部位およびベクター骨格末端突出部を備えるnik1の上流のDNA配列(5’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab89(リバース)−5’−
TACACATCAACACCGCTCAAAGCCACCTAGGCCCTGGCGTTACCCAACTTAATCG−3’(配列番号3)、プラスミドpRRabnik1M743TのためのAvrII制限部位および5’隣接末端突出部を備えるベクター骨格を増幅させるために使用された。
RRab90(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabnik1M743TのためのAvrII制限部位および3’隣接断片2末端突出部を備えるベクター骨格を増幅させるために使用された。
RRab91(リバース)−5’−GCCAAGCGCGCAATTAACCCTCACCCTAGGCTCGCTCACGGTTCTTCTCGAGCAG−3’(配列番号5)、プラスミドpRRabnik1M743TのためのAvrII制限部位およびベクター骨格末端突出部を備えるnik1 DNA配列(3’隣接、断片2)を増幅させるために使用された。
RRab92(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabnik1M743TのためのSwaI制限部位および5’隣接末端突出部と一緒にloxP部位を備えるハイグロマイシン耐性マーカーを増幅させるために使用された。
RRab93(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabnik1M743TのためのSwaI制限部位およびhph+loxP部位末端突出部を備えるnik1の上流のDNA配列(5’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab94(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabnik1M743TのためのNotI制限部位およびhph+loxP部位末端突出部を備えるnik1遺伝子(3’隣接断片1)を増幅させるために使用された。
RRab95(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabnik1M743TのためのNotI制限部位および3’隣接断片1末端突出部と一緒にloxP部位を備えるハイグロマイシン耐性マーカーを増幅させるために使用された。
RRab110(フォワード)−5’−GAAATTGCCTCCGTCACAACAGCCGTCGCTCACGGCGATCTGACAAAGAA−3’(配列番号10)、プラスミドpRRabnik1M743Tのための3’隣接断片1突出部を備えるnik1 DNA配列(3’隣接断片2)を増幅させるために使用された。
RRab111(リバース)−5’−TTCTTTGTCAGATCGCCGTGAGCGACGGCTGTTGTGACGGAGGCAATTTC−3’(配列番号11)、プラスミドpRRabnik1M743Tのための3’隣接断片2突出部を備えるnik1遺伝子(3’隣接断片1)を増幅させるために使用された。
PCR増幅は、PfuUltraII Fusion HS DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)およびTetrad 2サーマルサイクラー(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用して実施した。PCR産物は、EXゲル(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)上で分離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して正確な長さの断片を精製した。4つのDNA断片のそれぞれは、組換えのために十分な長さの相同配列を提供するために隣接DNA断片に相補的である5’プライマー伸長を有しており、全部が酵母の天然組換え機構を使用してサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株YPH499(ATCC 76625)における最終構築物に組み換えられた。酵母形質転換のためには、Frozen EZ Yeast Transformation II(商標)キット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用した。ウリジン栄養素要求性の相補性を選択するために、形質転換体をSD−Uプレート上で平板培養した。Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために、形質転換プレートからの個別コロニーを選択した。各Miniprepから1μLをOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)細胞(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)内に直接的に形質転換させ、カルベニシリンを含むLBプレート上で平板培養した。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために形質転換プレートから個別コロニーを選択した。この方法で得られたDNAは、Sequetech Corporation(Mountain View,CA,USA)でシーケンシングされ、正確な配列を含むプラスミドがDNA増幅のために選択された。遺伝子置換カセットは、下記のプライマー:
RRab156(5’−TGGCTTTGAGCGGTGTTGATGTGTA−3’)(配列番号12);および
RRab157(5’−CTCGCTCACGGTTCTTCTCGAGCAG−3’)(配列番号13)を使用してPCRにより増幅させた。
PCR産物は、QIAquick PCR精製キット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して精製および濃縮した。
1.2.nik1M743T対立遺伝子含有遺伝子置換カセットを用いたRLP37宿主菌株の形質転換、候補選択、検証および特性解析
精製濃縮遺伝子置換カセットは、PEG媒介性形質転換法(Penttila et al.,Gene,61(2):155−64(1987))を使用してT.リーゼイ(T.reesei)宿主菌株RLP37内に形質転換させた(Sheir−Neiss,et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.20:46−53(1984)によって記載された)。形質転換体は、100μg/mLのハイグロマイシンを含有するVogelの培地(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))上でオーバーレイ方式で平板培養し、28℃でインキュベートした。ハイグロマイシンBに耐性の安定性形質転換体由来のゲノムDNAは、NucleoSpin(登録商標)PlantIIキット(Machery−Nagel,Bethlehem,PA,USA)を使用して抽出した。次に、天然nik1遺伝子座での遺伝子置換の相同組換えを確証するためにこのゲノムDNAを診断的PCRのための鋳型として使用した。診断的PCRのために使用されたプライマー対RRab117およびRRab167を下記に明記する。
RRab117(5’−CGAACTGTGACCTTTCAAGT−3’)(配列番号14);および
RRab167(5’−GCACACACATCTCGGCCTTA−3’)(配列番号15)。
nik1M743T含有遺伝子置換カセットの検証された相同的組込みを含む菌株である標識RLP37 Nik1M743Tを選択し、芽胞精製した。芽胞精製は、水中でのPDAプレート培養上で生成された成熟気中分生子を収穫し、分生子懸濁液の10倍連続希釈液を作成し、PDAプレート上で懸濁液の連続希釈液を平板培養し、それらを28℃で一晩インキュベートすることによって実施した。選択した芽胞精製菌株は、タンパク質生成に遺伝子置換が及ぼす効果を決定するため、および残りの実験のために使用した。PDAプレート上のRLP37 Nik1M743T菌株の表現型は、宿主RLP37菌株と比較して、より緩徐な増殖およびより低い分生子の収率から構成された(図3Aおよび3B)。ソルビトールをVogelの最少培地に加えた場合、この菌株のコロニー増殖はRLP37と比較して制限されたが、これはソルビトールに対する感受性が浸透圧ストレスに対する反応を調節する能力がないことに起因する可能性が最も高いことを示した(図3Cおよび3D)。
1.3.全タンパク質生成を評価するためのT.リーゼイ(T.reesei)RLP37 Nik1M743Tの発酵
トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)菌株RLP37 Nik1M743TおよびRLP37を液中(液体培地)の同一条件下で増殖させ、それらの全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を2L(DASGIP)および14Lの発酵槽内で比較した。
種培養を創出するために、250mLフラスコ内の50mLのクエン酸最少培地に各菌株の芽胞を個別に加えた。この培養を振とう培養器内の30℃および170rpmで48時間にわたり増殖させた。48時間後、145.6mLの50%グルコースおよびpH3.5に調整した0.6g/kgのCaClに種培養を接種した。その後、温度を30℃およびpHを3.5で維持した。その後にグルコース−ソホロース供給材料を導入すると、温度は25℃に低下し、pHは4.8に上昇した。
乾燥細胞重量、全タンパク質濃度およびその他のパラメーターを計測し、全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を計算した。天然遺伝子座でnik1M743T対立遺伝子を含有するRLP37 Nik1M743T菌株は、天然nik1対立遺伝子を含有するRLP37宿主に比較して、全タンパク質比生成率(図4A)および供給糖に対する収率(図4B)の改善を示した。
14Lの発酵のためには、菌株RLP37 Nik1M743TおよびRLP37を液中(液体培地)の同一条件下で増殖させ、それらの全タンパク質生成率およびタンパク質比生成率もまた比較した。発酵作業は、同様に調製した種培養を使用して14L発酵槽内で実施した。発酵後、全タンパク質生成率およびタンパク質比生成率を比較した。
RLP37 Nik1M743T菌株は、全タンパク質比生成率の101%増加(図5A)、および供給糖に対する収率における46%改善(図5B)を証明したが、これは宿主T.リーゼイ(T.reesei)菌株内へ改変nik1ヒスチジンキナーゼを導入する工程がタンパク質生成の増加を誘発することを示している。
実施例2
nik1遺伝子欠失を含む真菌株を創出する
2.1.Δnik1::hph欠失カセットの設計および創出
遺伝子置換構築物は、nik1遺伝子の5’隣接を含有する1つのDNA断片、loxP−隣接ハイグロマイシンB耐性マーカーカセットおよびnik1遺伝子の3’隣接を含有する1つのDNA断片を、2μの骨格含有酵母ベクターpRS426(大腸菌(E.coli)内のpRS426ファージミド(ATCC(登録商標)77107(商標))由来)を用いて融合させることによって作成した(図6)。下記のプライマーは、Integrated DNA Technologies,Inc.(Coralville,IA,USA)によって作成された。
RRab266(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのSacI制限部位および5’隣接末端突出部と一緒にloxP部位を備えるハイグロマイシン耐性マーカーを増幅させるために使用された。
RRab267(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのSexAI制限部位および3’隣接末端突出部と一緒にloxP部位を備えるハイグロマイシン耐性マーカーを増幅させるために使用された。
RRab268(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのSexAI制限部位およびhph+loxP部位末端突出部を備えるnik1の下流のDNA配列(3’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab269(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのSfiI制限部位およびベクター骨格末端突出部を備えるnik1の下流のDNA配列(3’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab270(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのSfiI制限部位および3’隣接末端突出部を備えるベクター骨格を増幅させるために使用された。
RRab271(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのHindIII制限部位およびベクター骨格末端突出部を備えるnik1の上流のDNA配列(5’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab272(フォワード)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabΔnik1のためのHindIII制限部位およびベクター骨格末端突出部を備えるnik1の上流のDNA配列(5’隣接)を増幅させるために使用された。
RRab273(リバース)−5’−
Figure 2018504936
、プラスミドpRRabDelta nik1のためにSacI制限部位およびhph+loxP部位末端突出部を備えるnik1の上流のDNA配列(5’隣接)を増幅させるために使用された。
PCR増幅は、PfuUltraII Fusion HS DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)およびTetrad 2サーマルサイクラー(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用して実施した。PCR産物は、EXゲル(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)上で分離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して正確な長さの断片を精製した。4つのDNA断片のそれぞれは、組換えのために十分な長さの相同配列を提供するために隣接DNA断片に相補的である5’プライマー伸長を有しており、全部が酵母の天然組換え機構を使用してサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株YPH499(ATCC 76625)における最終構築物に組み換えられた。酵母形質転換のためには、Frozen EZ Yeast Transformation II(商標)キット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用した。ウリジン栄養素要求性の相補性を選択するために、形質転換体をSD−Uプレート上で平板培養した。Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために、形質転換プレートからの個別コロニーを選択した。各Miniprepから1μLをOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)細胞(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)内に直接的に形質転換させ、カルベニシリンを含むLBプレート上で平板培養した。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために形質転換プレートから個別コロニーを選択した。この方法で得られたDNAは、Sequetech Corporation(Mountain View,CA,USA)でシーケンシングし、DNA増幅のために正確な配列を含むプラスミドを選択した。遺伝子欠失カセットは、プライマーRRab 296およびRRab297を使用して増幅させた。
RRab296 (フォワード)5’−CACAGTTCGATCTACCTTACCTACA−3’(配列番号24)
RRab297 (リバース)5’−GCTGGGTTCTGAACCTGTAAAGTAC−3’(配列番号25)
PCR産物は、QIAquick PCR purificationキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して精製および濃縮した。
2.2.Δnik1::hph欠失カセットを用いたRLP37宿主菌株の形質転換、候補選択、検証および特性解析
精製濃縮Δnik1::hphカセットは、PEG媒介性形質転換法を使用してT.リーゼイ(T.reesei)宿主菌株RLP37内に形質転換させた(Penttila,M.,Nevalainen,H.,Ratto,M.,Salminen,E.,and Knowles,J.A versatile transformation system for the cellulolytic filamentous fungus Trichoderma reesei.Gene(1987)61:155−164.)。形質転換体は、100μg/mLのハイグロマイシンBを含有するVogelの最少培地上でオーバーレイ方式で平板培養し、28℃でインキュベートした。ハイグロマイシンBに耐性の安定性形質転換体由来のゲノムDNAは、NucleoSpin(登録商標)PlantIIキット(Machery−Nagel,Bethlehem,PA,USA)を使用して抽出した。次に、天然nik1遺伝子座での欠失カセットの相同組換えを確証するために、このゲノムDNAを診断的PCRのための鋳型として使用した。
Δnik1::hph欠失カセットの検証された相同的組込みを含む菌株である標識RLP37 Nik1M743Tを選択し、芽胞精製した。芽胞精製は、水中でのPDAプレート培養上で生成された成熟気中分生子を収穫し、分生子懸濁液の10倍連続希釈液を作成し、PDAプレート上で懸濁液の連続希釈液を平板培養し、それらを28℃で一晩インキュベートすることによって実施した。選択した芽胞精製菌株は、タンパク質生成に遺伝子置換が及ぼす効果を決定するため、および残りの実験のために使用した。PDAプレート上のRLP37ΔNik1菌株の表現型は、宿主RLP37菌株と比較して、より緩徐な増殖およびより低い分生子の収率から構成された(図3Bおよび3E)。ソルビトールをVogelの最少培地に加えた場合、この菌株のコロニー増殖は菌株RLP37と比較して制限されたが、これはソルビトールに対する感受性が浸透圧ストレスに対する反応を調節する能力がないことに起因する可能性が高いことを示した(図3Dおよび3F)。
2.3.全タンパク質生成を評価するためのT.リーゼイ(T.reesei)RLP37Δnik1の発酵
RLP37宿主菌株およびRLP37ΔNik1菌株を全タンパク質生成率および供給糖に対する収率について2LのDASGIP発酵槽内で試験した。種培養および発酵手技は、上記の実施例1に記載した同一方法にしたがって実施した。
乾燥細胞重量、全タンパク質濃度およびその他のパラメーターを計測し、全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を計算した。RLP37コントロール菌株と比較して、菌株RLP37ΔNik1の全タンパク質生成率は85%、供給糖に対する収率は39%減少した。これは、nik1遺伝子の欠失が全タンパク質生成にとって有害であることを示しており、天然nik1対立遺伝子とnik1M743T対立遺伝子との置換と同一の効果を有していないことを示している。これはさらに、nik1M743T対立遺伝子が機能獲得表現型を生じさせる機能獲得対立遺伝子であることを示している(図7)。
実施例3
関心対象のセルラーゼの発現宿主としての組換え真菌株
3.1.nik1M743T対立遺伝子含有遺伝子置換カセットを用いたT.リーゼイ(T.reesei)宿主菌株の形質転換、候補選択、検証および特性解析
実施例1.1に記載した精製濃縮遺伝子置換カセットは、PEG媒介性形質転換法を使用して、CBH1を過剰発現するT.リーゼイ(T.reesei)宿主菌株内に形質転換させた(Penttila et al.,Gene,61(2):155−64(1987))。形質転換体は、30μg/mLのハイグロマイシンBを含有するVogelの最少培地上でオーバーレイ方式で平板培養し、28℃でインキュベートした。100μg/mLのハイグロマイシンBに耐性の安定性形質転換体由来のゲノムDNAは、NucleoSpin(登録商標)PlantIIキット(Machery−Nagel,Bethlehem,PA,USA)を使用して抽出した。次に、天然nik1遺伝子座での遺伝子置換の相同組換えを確証するために、このゲノムDNAを診断的PCRのための鋳型として使用した。プライマー対RRab117(配列番号14)およびRRab167(配列番号15)を診断的PCRのために使用した。
nik1M743T含有遺伝子置換カセットの検証された相同的組込みを備える菌株である標識CbhI Nik1M743Tを選択し、芽胞精製した。芽胞精製は、水中でのPDAプレート培養上で生成された成熟気中分生子を収穫し、分生子懸濁液の10倍連続希釈液を作成し、PDAプレート上で懸濁液の連続希釈液を平板培養し、それらを28℃で一晩インキュベートすることによって実施した。選択した芽胞精製菌株は、タンパク質生成に遺伝子置換が及ぼす効果を決定するため、および残りの実験のために使用した。
ソルビトールをVogelの最少培地に加えた場合、CbhI Nik1M743T菌株のコロニー増殖は制限されたが、これはソルビトールに対する感受性が浸透圧ストレスに対する反応を調節する能力がないことに起因する可能性が高いことを示した(図8E〜8H)。天然nik1WTは、CBH1セルラーゼ(NoCbh1)を過剰発現しないT.リーゼイ(T.reesei)菌株内のnik1M743T対立遺伝子と置換された。これはソルビトールに対する同一反応を示し、nik1M743Tがこの反応の原因であることを確証した(図8A〜8D)。
3.2.全タンパク質生成を評価するためのT.リーゼイ(T.reesei)Cbh1 nik1M743Tの発酵
上述のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)CBH1過剰発現菌株およびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Cbh1 Nik1M743Tは、液中(液体)培地中の同一条件下で増殖させた。各全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を、2L(DASGIP)および14Lスケールの発酵槽内で比較した。
種培養を創出するために、250mLフラスコ内の50mLのクエン酸最少培地に各菌株の芽胞を個別に加えた。この培養を振とう培養器内の30℃および170rpmで48時間にわたり増殖させた。48時間後、145.6mLの50%グルコースおよびpH3.5に調整した0.6g/kgのCaClに種培養を接種した。その後、温度を32℃、およびpHを3.5で維持した。その後にグルコース−ソホロース供給材料を導入すると、温度は28℃に低下し、pHは4.5に上昇した。
乾燥細胞重量、全タンパク質濃度およびその他のパラメーターを計測し、全タンパク質比生成率および供給糖類に対する収率を計算した。Cbh1 Nik1M743T菌株は、菌株Cbh1に比して、全タンパク質比生成率における19%の改善および供給糖に対する収率の46%の改善を証明した(図9)。
14Lの発酵のためには、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Cbh1菌株およびトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Cbh1 Nik1M743Tを液中(液体培地)の同一条件下で増殖させ、それらの全タンパク質生成率およびタンパク質比生成率を比較した。発酵作業は、同様に調製した種培養を使用して14L発酵槽内で実施した。発酵後、全タンパク質生成率およびタンパク質比生成率を比較した。
Cbh1 Nik1M743T菌株は、Cbh1菌株に比して、全タンパク質比生成率の30%の増加(図10A)、および供給糖に対する収率における20%の改善(図10B)を証明したが、これは宿主T.リーゼイ(T.reesei)CBH1過剰発現菌株内へ改変nik1ヒスチジンキナーゼを導入する工程がタンパク質生成の増加を誘発することを示している。
実施例4
T.リーゼイ(T.reesei)宿主内のnik1M743T対立遺伝子のnik1wt対立遺伝子との置換による機能獲得表現型の復帰
4.1.nik1WT遺伝子置換カセットの設計および創出
遺伝子置換構築物は、nik1遺伝子座の上流の5’領域を含有する1つのDNA断片、loxP−隣接ハイグロマイシンB耐性マーカーカセットならびにプロモーターおよびnik1野生型遺伝子を含有する1つのDNA断片を、2μの骨格含有酵母ベクターpRS426(大腸菌(E.coli)内のpRS426ファージミド(ATCC(登録商標)77107(商標))由来)を用いて融合させることによって作成した(図11)。
プライマー対RRab88(配列番号2)およびRRab89(配列番号3);RRab90(配列番号4)およびRRab91(配列番号5);RRab92(配列番号6)およびRRab93(配列番号7);RRab94(配列番号8)およびRRab95(配列番号9);RRab110(配列番号10)およびRRab111(配列番号11)を使用して、(上記の実施例1.1に記載した)DNA断片を増幅させた。
PCR増幅は、PfuUltraII Fusion HS DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)およびTetrad 2サーマルサイクラー(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用して実施した。PCR産物は、EXゲル(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)上で分離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して正確な長さの断片を精製した。4つのDNA断片のそれぞれは、組換えのために十分な長さの相同配列を提供するために隣接DNA断片に相補的である5’プライマー伸長を有しており、全部が酵母の天然組換え機構を使用してサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株YPH499(ATCC 76625)における最終構築物に組み換えられた。酵母形質転換のためには、Frozen EZ Yeast Transformation II(商標)キット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用した。ウリジン栄養素要求性の相補性を選択するために、形質転換体をSD−Uプレート上で平板培養した。Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために、形質転換プレートからの個別コロニーを選択した。
各Miniprepから1μLをOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)細胞(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)内に直接的に形質転換させ、カルベニシリンを含むLBプレート上で平板培養した。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために、形質転換プレートから個別コロニーを選択した。この方法で得られたDNAは、Sequetech Corporation(Mountain View,CA,USA)でシーケンシングし、DNA増幅のために正確な配列を含むプラスミドを選択した。遺伝子置換カセットは、プライマーRRa156(配列番号12)およびRRab157(配列番号13)を使用して増幅させ、PCR産物は、QIAquick PCR purificationキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して精製および濃縮した。
4.2.nik1WT対立遺伝子含有遺伝子置換カセットを用いたT.リーゼイ(T.reesei)菌株TR Nik1M743Tの形質転換、候補選択、検証および特性解析
精製濃縮nik1WT含有遺伝子置換カセットは、PEG媒介性形質転換法を使用して、天然nik1遺伝子座でnik1M743Tを含有するT.リーゼイ(T.reesei)TR Nik1M743T宿主菌株内に形質転換させた(Penttila et al.,Gene,61(2):155−64(1987))。TR Nik1M743T宿主菌株は、菌株RLP37に由来した。形質転換体は、30μg/mLのハイグロマイシンBを含有するVogelの最少培地(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))上でオーバーレイ方式で平板培養し、28℃でインキュベートした。100μg/mLのハイグロマイシンBに耐性の安定性形質転換体由来のゲノムDNAは、NucleoSpin(登録商標)PlantIIキット(Machery−Nagel,Bethlehem,PA,USA)を使用して抽出した。次に、天然nik1遺伝子座での遺伝子置換の相同組換えを確証するために、このゲノムDNAを診断的PCRのための鋳型として使用した。プライマー対RRab117(配列番号14)およびRRab167(配列番号15)を診断的PCRのために使用した。
天然nik1遺伝子座でのnik1WT含有遺伝子置換カセットの検証された相同的組込みを含む菌株である標識TR Nik1WTを選択し、芽胞精製した。芽胞精製は、水中でのPDAプレート培養上で生成された成熟気中分生子を収穫し、分生子懸濁液の10倍連続希釈液を作成し、PDAプレート上で懸濁液の連続希釈液を平板培養し、それらを28℃で一晩インキュベートすることによって実施した。選択した芽胞精製菌株は、タンパク質生成に遺伝子置換が及ぼす効果を決定するため、および残りの実験のために使用した。Vogelの最少培地プレート上のTR Nik1WT菌株の表現型は、TR Nik1M743T菌株と比較して、より迅速な増殖およびより高い分生子の収率から構成された(図8Iおよび8J)。
ソルビトールをVogelの最少培地に加えた場合、この菌株のコロニー増殖はTR Nik1M743Tと比較して制限されなかったが、これはソルビトールに対する感受性が浸透圧ストレスに対する反応を調節する能力がないことに起因する可能性があることを示した(図8Kおよび8L)。
4.3.全タンパク質生成を評価するためのT.リーゼイ(T.reesei)Nik1WTの発酵
トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)菌株TR Nik1WTおよびTR Nik1M743Tを液中(液体)培地の同一条件下で増殖させ、それらの全タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を2L(DASGIP)の発酵槽内で比較した。
種培養を創出するために、250mLフラスコ内の50mLのクエン酸最少培地に各菌株の芽胞を個別に加えた。この培養を振とう培養器内の30℃および170rpmで48時間にわたり増殖させた。48時間後、145.6mLの50%グルコースおよびpH3.5に調整した0.6g/kgのCaClに種培養を接種した。その後、温度を30℃およびpHを3.5で維持した。その後にグルコース−ソホロース供給材料を導入すると、温度は25℃に低下し、pHは4.8に上昇した。
乾燥細胞重量、全タンパク質濃度およびその他のパラメーターを計測し、全タンパク質比生成率および供給糖の収率を計算した。天然nik1遺伝子座でnik1WT対立遺伝子を含有するTR Nik1WT菌株は、nik1遺伝子座でnik1M743T対立遺伝子を含有するTR Nik1M743T菌株に比較して、全タンパク質比生成率の36%減少および供給糖に対する収率の29%減少を示した(図12)。これは、nik1M743T対立遺伝子と天然nik1WT対立遺伝子との置換が機能獲得表現型を野生型表現型に復帰させることを証明し、nik1M743T対立遺伝子単独が改善された全タンパク質生成率および供給糖に対する収率の原因であることを確証した。
実施例5
浸透圧感受性または耐性についてのスクリーニングおよび改善された分泌タンパク質生産性
1集団のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)突然変異細胞を創出するためには任意の方法を使用できる。例えば、分生子は、T.リーゼイ(T.reesei)の菌株から入手して、UV照射、X線照射、γ線照射または例えばNTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)またはEMS(エチルメタンスルホネート)などの突然変異誘発剤を用いる化学的突然変異誘発法を用いる処理にかけた(Davis,R.H.and De Serres,F.J.(1970)Genetic and microbiological research techniques for Neurospora crassa.In,Methods in Enzymology Vol17A.Eds.Tabor,H.and Tabor,C.W.pp79−143)。または、自然突然変異に依存することができる。さらに、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換による挿入突然変異誘発法などの突然変異誘発の分子生物学的方法を使用することができる(Sugui,J.A.,Chang,Y.C.and Kwon−Chung,K.J.(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:1798−17802)。
突然変異細胞の集団は、高浸透圧に対する変化した感受性を備える突然変異細胞を同定するためのスクリーニングにかける。変化した感受性は、高浸透圧の条件下で親の非突然変異細胞より迅速に増殖する能力(すなわち、高浸透圧に対する耐性)または高浸透圧の条件下で親の非突然変異細胞に比較して減少した増殖率(すなわち、高浸透圧に対する感受性)として現れる可能性がある。
高浸透圧に対する変化した感受性についてスクリーニングするために、T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、個別コロニーが発生し、培養後に識別できるように、様々なレベルの添加された糖、糖アルコールまたは塩を含む栄養寒天プレートの表面に接種する。栄養寒天は、グルコースを含むVogelの最少培地である(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))。この培地に、1M〜1.2Mのソルビトール、または0.7M〜1.4Mの塩化ナトリウム、または0.5M〜1.4Mの塩化カリウムが補給されている。親のタイプより迅速または緩徐に増殖する個別コロニーは、液中(液体培地)での同一条件下での増殖ならびに比較したそれらの全分泌タンパク質比生成率および供給糖に対する収率によるさらなる評価のために選別した。この方法で、T.リーゼイ(T.reesei)の突然変異菌株は、親菌株と比較して浸透圧に対する変化した感受性および増加した分泌タンパク質生成率を有すると同定される。
実施例6
殺真菌剤に対する耐性および改善された分泌タンパク質生産性についてのスクリーニングまたは選択
1集団のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)突然変異細胞を創出するためには任意の方法を使用できる。例えば、分生子は、T.リーゼイ(T.reesei)の菌株から入手して、UV照射、X線照射、γ線照射または例えばNTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)またはEMS(エチルメタンスルホネート)などの突然変異誘発剤を用いる化学的突然変異誘発法を用いる処理にかけた(Davis,R.H.and De Serres,F.J.(1970)Genetic and microbiological research techniques for Neurospora crassa.In,Methods in Enzymology Vol17A.Eds.Tabor,H.and Tabor,C.W.pp79−143)。または、自然突然変異に依存することができる。さらに、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換による挿入突然変異誘発法などの突然変異誘発の分子生物学的方法を使用することができる(Sugui,J.A.,Chang,Y.C.and Kwon−Chung,K.J.(2005)Appl.Environ.Microbiol.71:1798−17802)。
突然変異細胞の集団は、さらに、培地中の例えばイプロジオンまたはフルジオキソニルなどのジカルボキシイミド系およびフェニルピロール系殺真菌剤に対する変化した感受性を備える突然変異細胞を同定するためのスクリーニングにかけることもできる。変化した感受性は、殺真菌剤の存在下で親の非突然変異細胞より迅速に増殖する能力(すなわち、殺真菌剤に対する耐性)または殺真菌剤の存在下で親の非突然変異細胞に比較して減少した増殖率(すなわち、殺真菌剤に対する感受性)として現れる可能性がある。
イプロジオンまたはフルジオキソニルに対する耐性を選択するために、T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、個別コロニーが発生し、培養後に識別できるように、様々なレベルのこれらの殺真菌剤を含む栄養寒天プレートの表面に接種する。栄養寒天は、グルコースを含むVogelの最少培地である(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))。親のタイプより迅速に増殖する個別コロニーは、液中(液体培地)での同一条件下での増殖によるさらなる評価のために選別し、それらの全分泌タンパク質比生成率および供給糖に対する収率を比較した。この方法で、T.リーゼイ(T.reesei)の突然変異菌株は、イプロジオンもしくはフルジオキソニルに対して耐性であり、親菌株と比較して増加した分泌タンパク質生成率を有すると同定される。
液体培地殺真菌剤スクリーンにおいて使用するために、T.リーゼイ(T.reesei)菌株RLP37およびRLP37 Nik1M743T由来の分生子を収穫し、10,000/mLの濃度に希釈した。同等数の芽胞を0、11.25、22.5、45もしくは90μMのイプロジオンもしくはフルジオキソニルを含有する液体YEG培地(5g/Lの酵母抽出物、22g/Lのグルコース、H2O)内に接種し、28℃で一晩発芽させた。RLP37分生子は、イプロジオンもしくはフルジオキソニルを含有しない培地中で発芽して伸長した菌糸を生成した。11.25μMのイプロジオンもしくはフルジオキソニルでは、この菌株の発芽は明白であったが、菌糸成長については明白な阻害が見られた。イプロジオンまたはフルジオキソニルの上記の11.25μMの濃度では、菌株RLP37を用いた発芽および増殖の完全な阻害が生じた。これとは対照的に、RLP37 Nik1M743T分生子は、試験したイプロジオンまたはフルジオキソニルの全濃度で発芽して伸長した菌糸を生成した。これは明白に、Nik1M743T突然変異が殺真菌剤イプロジオンおよびフルジオキソニルに対する耐性を付与することを証明した。さらに、RLP37の感受性およびRLP37 Nik1M743Tの耐性は、接種培養が芽胞10個/mLまで拡大された場合に持続した。
寒天(固体)培地中の殺真菌剤スクリーニングまたは選択に使用するために、T.リーゼイ(T.reesei)菌株RLP37およびRLP37 Nik1M743T由来の分生子を収穫し、グルコースを含む栄養寒天Vogelの最少培地を含有する10cmプレート当たりに公知の数の芽胞を平板培養するような濃度に希釈した(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))。各菌株の同等数の芽胞は、0、11.25、22.5、45または90μMのイプロジオンを含有する栄養寒天プレートの表面上に塗り広げ、32℃で3日間にわたり増殖させた。11.25および22.5μMでは、RLP37コロニーはピン先のサイズより大きく増殖することはできなかった。45μM以上では、RLP37コロニーは全く増殖できなかった。これとは対照的に、RLP37 Nik1M743Tコロニーは、イプロジオンを含まない栄養寒天プレートの表面上で増殖するコロニーと同様に増殖した。これは明白に、nik1M743T突然変異が固体寒天培地中でイプロジオンに対する耐性を付与することを証明した(図13)。野生型nik1を含有する細胞の大集団においては余り発生しないnik1突然変異体を選択する際のイプロジオンの感受性を確立するために、公知の数のRLP37 Nik1M743T芽胞(芽胞5個まで減らして)を公知の、はるかに多数(10〜10)のRLP37に混合した。この混合集団の芽胞を45μMのイプロジオンを含有するVogelの最少培地上に塗り広げ、32℃で3日間増殖させた。コロニーを計数し、PCRおよびシーケンシング(Sequentech, Mountain View,CA,USA)によってnik1M743T突然変異の存在について、下記のプライマー:
RRab126(フォワード)5’−CGGCATGGCCATGAACCTCA−3’(配列番号40)
RRab161(リバース)5’−GCACTGAAGCCGGTTAGTTC−3’(配列番号41)
RRab128(フォワード)5’−CTGTCCAGCTTCTGCTACGA−3’(配列番号42)を使用して評価した。
45μMのイプロジオン上の選択的平板培養は、野生型芽胞10個中5個という少数の突然変異体を検出するために十分感受性である。10cmプレート当たり10個より多い芽胞を平板培養すると、高い偽陽性率が発生する。
nik1M743T突然変異はソルビトール感受性ならびにイプロジオン耐性を付与するので、非ソルビトール感受性芽胞の欠失は、所望の特徴を備えるnik1突然変異体を富化する可能性がある。RLP37およびRLP37 Nik1M743Tは、1.2Mのソルビトールを含有するYEG中において28℃で一晩増殖させ、その後に4層のMiracloth(VWR,Radnor,PA,USA)に通して濾過し、その後に45μMのイプロジオンを含有するVogelの最少培地寒天上で公知の数の芽胞を平板培養した。Miraclothによる濾過は、未濾過RLP37と比較してRLP37コロニー数の98%減少を生じさせた。これとは対照的に、濾過後RLP37 Nik1M743Tについては2〜8%の減少しか観察されなかった。しかし、>90%のRLP37 Nik1M743T芽胞はMiraclothフィルターを通過したが、プレート上で回収することができたのは濾過されたRLP37 Nik1M743T芽胞のたった1〜2%に過ぎなかった。nik1における自然突然変異の頻度に依存して、この欠失法は、イプロジオンを含有する寒天プレート上での選択前に利点を付与することができる。十分な突然変異体が蓄積すると、ソルビトール欠失が大多数の突然変異体を排除する可能性はあるが、ソルビトール下で発芽する野生型胞子の濾過から擬陽性の減少も生じるので、このため潜在的スループットが増加する。ソルビトール感受性およびジカルボキシイミド系殺真菌剤耐性はどちらもタンパク質生産性における所望の結果に関連する特徴であるので、ソルビトール欠失法を殺真菌剤プレート上の選択と組み合わせることによって、スループットの潜在的増加は所望の比生産性を備える自然突然変異体を同定する機会を改善することができる。
殺真菌剤耐性を有する自然突然変異した細胞を選択するために、T.リーゼイ(T.reesei)菌株RLP37由来の分生子を収穫し、45μMのイプロジオンを含有する各栄養寒天プレートの表面上に10個の芽胞を塗り広げた。栄養寒天は、グルコースを含むVogelの最少培地である(Vogel,Microbial Genet.Bull.13:42−43(1956);Vogel,Am.Nat.98:435−446(1964))。増殖した個別コロニーは、nik1遺伝子座のシーケンシングによって詳細に評価するために選定した。殺真菌剤に耐性のコロニーは、nik1のコーディング領域内に少なくとも1つの突然変異を含有していた。この方法によって、nik1内に突然変異を含有するT.リーゼイ(T.reesei)のイプロジオン耐性突然変異菌株を入手した。
実施例7
nik1遺伝子内に1つの突然変異を含む組換えアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)菌株を創出する
7.1.nik1M786T遺伝子置換カセットの生成
遺伝子置換構築物は、nik1遺伝子座の上流の5’領域を含有する1つのDNA断片、pyrGマーカーカセットならびにプロモーターおよびnik1遺伝子を含有する3つのDNA断片(786位のアミノ酸をメチオニンからトレオニンに変化させるTからCへの置換を含む)を、2μの骨格含有酵母ベクターpRS426(大腸菌(E.coli)内のpRS426ファージミド(ATCC(登録商標)77107(商標))由来)を用いて融合させることによって作成した(図14)。
下記のプライマーは、Integrated DNA Technologies,Inc.(Coralville,IA,USA)によって調製された:
RN0286(フォワード)−5’−CGATAAGCTTGATATCGAATTCCTGGTTCCTGAATAGACTTGGGGTTG−3’(配列番号26)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1の上流のDNA断片(5’隣接)を増幅させるために使用され、ベクター骨格末端突出部を含有する。
RN0508(リバース)−5’−CCGGGTACCGAGCTCGAATTCGTAATCATGGGCCCAGTACTAGATAGATACCTG−3’(配列番号27)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1の上流のDNA断片(5’断片)を増幅させるために使用され、pyrGマーカーカセット末端突出部を含有する。
RN0428(フォワード)−5’−GCCAGTGCCAAGCTTATCACC−3’(配列番号28)、プラスミドpRNnik1M786TのためのpyrGマーカーカセットを増幅させるために使用された。
RN0172(リバース)−5’−CCATGATTACGAATTCGAGCT−3’(配列番号29)、プラスミドpRNnik1M786TのためのpyrGマーカーカセットを増幅させるために使用された。
RN0509(フォワード)−5’−GATAAGGGACGGTGATAAGCTTGGCACTGGCGGATTTGCTGCCAGCTTTAC−3’(配列番号30)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1およびnik1の5’末端の上流のDNA配列(3’断片1)を増幅させるために使用され、pyrGカセット末端突出部を含有する。
RN489(リバース)−5’−CTTCAACTCTGCGATCTCTCC−3’(配列番号31)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1およびnik1の5’末端の上流のDNA配列(3’断片1)を増幅させるために使用された。
RN0495(フォワード)−5’−CACGGTTACCAAGGCTGTGG−3’(配列番号32)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1(3’断片2)を増幅させるために使用された。
RN0498(リバース)−5’−CCAATGATACCGTTCGTGGGCGTCCGGATCTCG−3’(配列番号33)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1(3’断片2)を増幅させ、M786T突然変異を組み込むために使用された。
RN0161(フォワード)−5’−CCGGACGCCCACGAACGGTATCATTGGTATGACGCAGTTGAC−3’(配列番号34)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1(3’断片3)を増幅させ、M786T突然変異を組み込むために使用された。
RN0182(リバース)−5’−CGGTGGCGGCCGCTCTAGAACTAGTGGATCGGGTGCATTTCACCACTACTTGAG−3’(配列番号35)、プラスミドpRNnik1M786Tのためのnik1(3’断片3)を増幅させるために使用され、ベクター骨格突出部を含有する。
PCR増幅は、PfuUltraII Fusion HS DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)およびTetrad 2サーマルサイクラー(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用して実施した。PCR産物は、E−gels(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)上で分離し、QIAquick Gel ExtractionキットまたはQIAquick PCR Purificationキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用して正確な長さの断片を精製した。ベクター骨格はBamHI(Thermo Scientific,Grand Island,NY,USA)を用いる消化により線形化し、その後にアルカリホスファターゼによる脱リン酸化(Roche,Indianapolis,IN,USA)およびQIAquick PCR Purificationキットを使用する精製を実施した。
5つのDNA断片のそれぞれは、組換えのために十分な長さの相同配列を提供するために隣接DNA断片に重複する両端上に配列を含有しており、全部が酵母の天然組換え機構を使用してサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株YPH499(ATCC 76625)における最終構築物に組み換えられた。酵母形質転換のためには、Frozen EZ Yeast Transformation II(商標)キット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用した。ウリジン栄養素要求性の相補性を選択するために、形質転換体をSD−Uプレート上で平板培養した。形質転換プレートからの個別コロニーは、Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(Zymo Research,Orange,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために選択した。各Miniprepから1μLをOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)細胞(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)内に直接的に形質転換させ、カルベニシリンを含むLBプレート上で平板培養した。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドDNAを抽出するために形質転換プレートから個別コロニーを選択した。この方法で得られたDNAは、Sequetech Corporation(Mountain View,CA,USA)でシーケンシングし、正確な配列は、SnaBI(Thermo Scientific,Grand Island,NY,USA)を用いた制限消化により線形化し、その後にアルカリホスファターゼ(Roche,Indianapolis,IN,USA)による脱リン酸化を実施した。生じた遺伝子置換カセットは、QIAquick PCR Purificationキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA,USA)またはエタノール沈降法を使用して精製した。
7.2.nik1M786T対立遺伝子含有遺伝子置換カセットを用いたGICC2071宿主菌株の形質転換、候補選択、検証および特性解析
精製濃縮遺伝子置換カセットは、PEG媒介性形質転換法を使用して、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主菌株GICC2071(それ自体はアスペルギルス・ニガー変種アワモリ(Aspergillus niger var.awamori)NRRL3112に由来するグルコアミラーゼ過剰生成突然変異体UVK143fに由来する、不活性pyrG遺伝子を有する非組換え菌株)内に形質転換させた(Campbell et al.,“Improved transformation efficiency of Aspergillus niger using the homologous niaD gene for nitrate reductase”,Current Genetics,16:53−56,1989)。形質転換体は、ウリジンを含まない最少培地上でオーバーレイ方式で平板培養し、32℃でインキュベートした。形質転換体由来のゲノムDNAは、CelLytic(商標)Y細胞溶解試薬(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO,USA)を使用して抽出した。次に、天然nik1遺伝子座での遺伝子置換の相同組換えを確証するために、このゲノムDNAを診断的PCRのための鋳型として使用した。診断的PCRのために使用したプライマー対は下記に明記した。
RN0591(5’−GACGTGAATACGATGGCCGA−3’)(配列番号36);および
RN0592(5’−AACGTTTGGGCTTGCGAGG−3’)(配列番号37)。
RN0577(5’−AGGTCGACTATCCGGTTAGAC−3’)(配列番号38);および
RN0583(5’−GCGACTCCCAAGCAGAAGC−3’)(配列番号39)。
nik1M786T突然変異の組込みは、シーケンシングによって確証された(Sequetech,Mountain View,CA,USA)。
nik1M786T含有遺伝子置換カセットの検証された相同的組込みを含む菌株である標識GICC2071 Nik1M786T突然変異体99番、117番および121番を選択した。選択した菌株を使用して、タンパク質生成に遺伝子置換が及ぼす効果を決定した。
7.3.全タンパク質生成を評価するためのA.ニガー(A.niger)GICC2071 Nik1M786Tの発酵
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)コントロール菌株GICC2071およびGICC2071 NikM786T突然変異体99番、117番および121番は、50mLの液中(液体)培養中の同一条件下で増殖させ、それらの全タンパク質生成を振とうフラスコ内で比較した。
種培養を創出するために、250mLフラスコ内の50mLのYEG(5g/Lの酵母抽出物、22g/Lのグルコース、HO)に各菌株の芽胞を個別に加えた。培養は、振とう培養器内で24時間にわたり37℃および200rpmで増殖させた。24時間後、タンパク質生成のために、5mLの種培養を250mLの4バッフル付き振とうフラスコ内で45mLのPromosoy特殊培地(Ward,M.et al.(2004)Appl.Environ.Microbiol.70:2567−2576)に3回ずつ加えた。フラスコは、4日間にわたり200rpmで振とうしながら37℃でインキュベートした。分泌タンパク質は、培養をEppendorf 5804R(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA,USA)内で4,000rpmで25分間にわたり遠沈させ、上清を収集することによって収穫した。
全タンパク質生成は、SDS−PAGE(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)によって、およびタンパク質をトリクロロ酢酸(TCA)を用いて沈降させ、その後にBCAタンパク質アッセイ(ThermoFisher Scientific,Grand Island,NY,USA)を実施することによって評価した。p−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO,USA)を基質としてして使用する、例えばグルコアミラーゼなどのタンパク質の活性を同様に評価した。
野生型nik1対立遺伝子を含有するコントロール菌株GICC2071ならびにGICC2071 Nik1M786T突然変異体99番、117番および121番のそれぞれからの体積4μLの上清を製造業者が提供したプロトコールに基づいて4〜12%のNuPAGEゲル(Life Technologies,Life Technologies,Grand Island,NY,USA)上で作業した。SDS−PAGEは、GICC Nik1M786T突然変異体菌株99番がGICC2071コントロールより低いレベルでタンパク質を生成するが、他方GICC Nik1M786T突然変異体117番および121番は、天然nik1対立遺伝子を含有するGICC2071コントロールに比した全タンパク質の改善を示すことを明らかにした(図15)。
BCAタンパク質アッセイのためには、コントロール菌株GICC2071、GICC2071 Nik1M786T突然変異体99番、117番および121番由来の上清をトリクロロ酢酸中で沈降させ、0.1Nの水酸化ナトリウム中に再懸濁させ、その後にBCAタンパク質アッセイにかけた。BCAタンパク質アッセイは、製造業者のプロトコールにしたがって実施した。GICC Nik1M786T突然変異体99番および121番は、天然nik1対立遺伝子を含有するGICCコントロールに比較して減少した全タンパク質を示し、突然変異体117番はGICC2071コントロールに比較して同等の全タンパク質を有した。
p−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド−PNPG基質(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO,USA)上の上清酵素の活性を評価した。コントロール菌株GICC2071ならびにGICC2071 Nik1M786T突然変異体99番、117番および121番由来の上清を96ウエルプレート(Corning,Corning,NY,USA)のウエル内に等分し、その後に8分45秒間にわたりPNPGとともにインキュベートした。酵素反応は、0.1Mのホウ酸塩溶液(pH9.2)を添加して停止させ、吸光度を400nmで読み取った。GICC Nik1M786T突然変異体99番は、野生型nik1対立遺伝子を含有するGICC2071と比較してPNPG基質上の減少した上清酵素活性を示したが、他方GICC Nik1M786T突然変異体117番および121番はGICC2071コントロールと比較してPNPG基質上のより高い上清酵素活性を示した(図16)。
GICC2071 Nik1M786T突然変異体117番は、SDSゲル上で見られたように、GICC2071コントロールより高いタンパク質生成(図15)ならびにより高いPNPG活性(図16)を示したが、これは、突然変異nik1M786Tヒスチジンキナーゼ遺伝子対立遺伝子をアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)へ導入する工程がタンパク質生成の増加を誘発できることを示唆している。

Claims (55)

  1. 親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子を含む組換え真菌株。
  2. 親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株であって、前記親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む組換え真菌株。
  3. 親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株であって、前記親菌株と比較して殺真菌剤に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む組換え真菌株。
  4. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  5. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  6. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1の743位で突然変異を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、配列番号1と少なくとも60%の同一性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  7. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号43の786位で突然変異を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、配列番号43と少なくとも60%の同一性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  8. 743位での前記突然変異は、その位置の前記メチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM743Tである、請求項6に記載の組換え真菌株。
  9. 786位での前記突然変異は、その位置の前記メチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM786Tである、請求項7に記載の組換え真菌株。
  10. 前記親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  11. 前記親菌株は、糸状菌株である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  12. その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%または少なくとも約100%以上の関心対象のタンパク質を生成できる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組換え真菌株。
  13. 親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる形質転換真菌株または誘導真菌株であって、前記親菌株と比較して、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子または外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む形質転換真菌株または誘導真菌株。
  14. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項13に記載の真菌株。
  15. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項13または14に記載の真菌株。
  16. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1の743位で突然変異を含むポリペプチドをコードし、配列番号1と少なくとも60%同一性であるアミノ酸配列を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の真菌株。
  17. 743位での前記突然変異は、その位置でメチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM743Tである、請求項16に記載の真菌株。
  18. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号43の786位で突然変異を含むポリペプチドをコードし、配列番号43と少なくとも60%同一性であるアミノ酸配列を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の真菌株。
  19. 786位での前記突然変異は、その位置で前記メチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM786Tである、請求項18に記載の真菌株。
  20. 前記親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である、請求項13〜19のいずれか一項に記載の真菌株。
  21. 前記親菌株は、糸状菌株である、請求項13〜19のいずれか一項に記載の真菌株。
  22. その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%または少なくとも約100%以上の関心対象のタンパク質を生成できる、請求項13〜21のいずれか一項に記載の真菌株。
  23. タンパク質生成を改善するための方法であって、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子、または親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む、組換え、形質転換または誘導真菌株を使用する工程を含む方法。
  24. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、第III群ヒスチジンキナーゼをコードする野生型ヒスチジンキナーゼ遺伝子の変異体である、請求項23または24に記載の方法。
  26. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号1の743位で突然変異を含むポリペプチド、および配列番号1と少なくとも60%同一性であるアミノ酸配列をコードする、請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 743位での前記突然変異は、その位置で前記メチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM743Tである、請求項26に記載の方法。
  28. 前記変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子は、配列番号43の786位で突然変異を含むポリペプチドおよび配列番号43と少なくとも60%同一性であるアミノ酸配列をコードする、請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
  29. 786位での前記突然変異は、その位置で前記メチオニン残基をトレオニン残基と置換する突然変異、つまりM786Tである、請求項28に記載の方法。
  30. 前記親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記親菌株は、糸状菌株である、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記組換え、形質転換または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%または少なくとも約100%以上の関心対象のタンパク質を生成できる、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
  33. 関心対象のタンパク質を生成する方法であって、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組換え真菌株または請求項13〜22のいずれか一項に記載の形質転換真菌株または誘導真菌株を発酵させる工程を含み、前記組換え、形質転換または誘導真菌株は、前記関心対象のタンパク質を分泌し、前記組換え、形質転換または誘導真菌株は、変異ヒスチジンキナーゼ遺伝子、または親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む方法。
  34. 前記関心対象のタンパク質は、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、それらの機能的断片またはそれらの酵素および断片の1つ以上の混合物である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記関心対象のタンパク質は、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリサーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、それらの機能的断片またはそれらの1つ以上の混合物である、請求項33または34に記載の方法。
  36. 前記関心対象のタンパク質は、ペプチドホルモン、増殖因子、凝固因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、抗体、受容体、接着分子、微生物抗原、それらの機能的断片またはそれらの1つ以上の混合物である、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 請求項33〜36のいずれか一項に記載の方法を適用することによって生成される関心対象のタンパク質。
  38. 請求項37に記載の関心対象のタンパク質を含む組成物。
  39. バイオマス加水分解、クリーニング用途、穀粒加工、動物栄養、食品組成物または織物処理における請求項38に記載の組成物を使用する方法。
  40. 親菌株に比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる組換え真菌株を同定または選択するための方法であって、
    (a)前記菌株を寒天プレートの表面上に浸透物質とともに接種する工程;および
    (b)前記親菌株より迅速または緩徐に増殖する前記菌株を選択する工程を含む方法。
  41. 親菌株と比較して変化したレベルの関心対象のタンパク質を生成できる前記組換え真菌株は、前記親菌株と比較して外部浸透圧に対する変化した感受性または耐性を誘発する突然変異を含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記親菌株は、子嚢菌(Ascomycete)真菌株である、請求項40または41に記載の方法。
  43. 前記親菌株は、糸状菌株である、請求項42に記載の方法。
  44. 前記組換え、形質転換または誘導真菌株は、その親菌株と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%または少なくとも約100%以上の関心対象のタンパク質を生成できる、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記浸透物質は、糖、糖アルコールまたは塩のうちの1つ以上を含む、請求項40〜44のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記糖は、グルコース、スクロース、フルクトース、オリゴフルクトース、フルクト−オリゴ糖または転化糖であってよい、請求項45に記載の方法。
  47. 前記糖アルコールは、ソルビトール、キシリトールまたはガラクトシロソルビトール(galactosylosorbitol)であってよい、請求項45に記載の方法。
  48. 前記塩は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである、請求項45に記載の方法。
  49. 液中培養中および/または固体寒天培地中での殺真菌剤耐性を使用して増加した比生産性を備える突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  50. 液中培養中および/または固体寒天培地中での殺真菌剤耐性を使用して浸透圧恒常性の調節に関係するヒスチジンキナーゼまたは他の遺伝子における改変を含む突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  51. 液中培養中および/または固体寒天培地中での殺真菌剤耐性を使用してnik1遺伝子の改変を含む突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  52. 液中培養中および/または固体寒天培地中での浸透圧感受性および殺真菌剤耐性を同時または連続的に組み合わせて増加した比生産性を備える突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  53. 液中培養中および/または固体寒天培地中での浸透圧感受性および殺真菌剤耐性を同時または連続的に組み合わせて浸透圧恒常性の調節に関係するヒスチジンキナーゼまたは他の遺伝子における改変を含む突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  54. 液中培養中および/または固体寒天培地中での浸透圧感受性および殺真菌剤耐性を同時または連続的に組み合わせてnik1遺伝子の改変を含む突然変異体をスクリーニングまたは選択する方法。
  55. 前記殺真菌剤は、ジカルボキシイミド系またはフェニルピロール系、例えばイプロジオンまたはフルジオキソニルである、請求項49〜54に記載の方法。
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