JP2018502823A - 退行性骨格筋疾患の治療におけるカンナビノイドの使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、退行性骨格筋疾患の治療におけるカンナビノイドの使用に関する。具体的には、退行性骨格筋疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。好ましくは、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたは複数である。

Description

本発明は、退行性骨格筋疾患の治療におけるカンナビノイドの使用に関する。具体的には、退行性骨格筋疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
好ましくは、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたは複数である。
骨格筋形成は、筋芽細胞を増殖して筋管に分化させる多数の遺伝子の発現における協調的変化を必要とする厳密に調節された過程である(Shieh,2013)。この過程は様々なミオパシー、とりわけデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に変化し、骨格筋前駆細胞(衛星)の再生能力が失われる。成熟した機能的な筋管へのこれらの分化能力の低下は、慢性変性による進行性筋力低下を引き起こす。
内在性カンナビノイド系によって生じる多数の機能が存在するが、骨格筋細胞再生および分化におけるその機能についてはほとんど知られていない。最近、内在性カンナビノイド2−AGが、CB1依存性の機序を介してマウスおよびヒトの筋芽細胞の分化を阻害することが分かった(Iannotti et al.2013)。
骨格筋の発達は、高度に制御された多因子過程であり、この過程は、細胞周期から離れて筋芽細胞の増殖を引き起こし、続いて融合して大きい多核化筋芽細胞の秩序配列になり、更に成熟筋線維に分化する多数の遺伝子の協調的調節を伴う(Iannotti et al.2010)。
様々なクラスのイオンチャンネルの発現および機能的活性化の変化が筋芽細胞から筋管への移行と関係していると思われる(Cooper,2001)。
マウスC2C12細胞をin vitroの骨格筋形成の実験モデルに使用することができ、この方法を使用して骨格筋細胞分化過程に与える化合物の潜在的効果を判定することができる。
ヒト衛星細胞を使用する更なるモデルもまた、細胞分化を検討するためにin vitro試験として使用することができる。衛星細胞は、分化した骨格筋細胞をもたらすことができる骨格筋細胞の前駆体である。活性化すると衛星細胞は再び細胞周期に入って増殖し、筋芽細胞に分化することができる。
筋細胞は、筋組織中に見出される細胞の種類である。これらは、筋形成として知られている過程において筋芽細胞から発達して筋を形成する長い管状の細胞である。様々な特性を有する様々な特殊な形態の筋芽細胞、すなわち心臓細胞、骨格細胞、および平滑筋細胞が存在する。
幾つかの異なる型の退行性骨格筋疾患が存在し、そのうちでデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)が非常に一般的である。他の型の退行性骨格筋疾患には、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、先天性筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリ・ドレヒュス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)、筋緊張性ジストロフィー、および眼咽頭筋ジストロフィーが挙げられる。
DMDは、一般には男児のみに発症し(ごく稀な例外を除く)、小児が歩き始めるときに臨床的に明確になる。10歳までにその小児は歩行のためにブレースを必要とする可能性があり、12歳までに大部分の患者は歩くことができなくなる。
DMD患者の寿命は15〜51歳の範囲にある。1990年代初頭、研究者は、それが存在しない場合にDMDを引き起こす、タンパク質ジストロフィンの遺伝子を同定した。ジストロフィンの量がこの疾患の重症度と相関する(すなわち、存在するジストロフィンの量が少ないほど表現型は重症である)。
この遺伝子はX染色体上に存在するため、この障害は主に男性で発症し、およびキャリアである女性はより軽い症状を呈する。この遺伝子の散発性の突然変異はしばしば起こり、症例の三分の一を占める。症例の残りの三分の二は劣性様式で遺伝的に受け継がれる。
ジストロフィンは、幾つかの他のタンパク質成分と関係する複雑な構造体の一部である。「ジストロフィン−糖タンパク質複合体」は、各細胞の外膜(筋鞘)を貫通して、各細胞を取り囲む組織の外郭構造(細胞外マトリックス)に筋細胞内の構造躯体(細胞骨格)を固定することを促進する。この集合体の欠陥が原因で、筋肉の収縮が筋細胞の外膜の断裂と、結果としての筋力低下および筋消耗とを引き起こす。
糖質コルチコイド、より正確にはプレドニゾンおよびデフラザコートがDMDの主な薬物治療である。これらは20年超にわたって使用されており、筋力の増加が示されている唯一の薬物療法である。
糖質コルチコイドは、抗炎症剤かつ免疫抑制剤であるため、これらの化合物の長期間の使用は多くの有害な副作用をもたらす可能性がある。免疫抑制は、糖質コルチコイドの長期使用者にとって大きい問題であり、これは患者の免疫系が機能しにくくなって患者を重篤な感染症に罹りやすくすることを意味し得る。加えて、創傷の治癒は一定量の炎症を必要とし、これが糖質コルチコイド療法中に遅れる可能性がある。
糖質コルチコイドは血糖も上昇させ、次にそれが糖尿病を発症させる可能性がある。カルシウム吸収が抑制され、骨粗鬆症が起こることがある。また、長期の糖質コルチコイド療法により筋の委縮が起こる可能性もある。
DMDなどの退行性骨格筋疾患を治療するには、衛星細胞の筋芽細胞への分化および筋芽細胞の筋管への分化を可能にする薬物療法が重要である。CB1活性化はまた、筋芽細胞の増殖、したがってまた内在性カンナビノイドを刺激することが知られている。それは、この内在性カンナビノイドが「いつ」および「どこで」作用し、細胞周期および細胞可塑性に影響を及ぼすことにより筋肉の形成を阻害しかつ刺激し得るかによって決まる。
植物性カンナビノイドは、CB1受容体に直接的または間接的に作用して、その活性化の影響を弱めることができる。植物性カンナビノイドはまた炎症反応、例えばDMDで起こる炎症反応を弱めることができる。これらの炎症反応は、正常に機能しない筋分化の結果を著しく悪化させ、したがってDMD患者の平均余命を減少させる。加えて、植物性カンナビノイドは、内在性カンナビノイドの不活性化を阻害する可能性がある。
植物性カンナビノイド、具体的には植物性カンナビノイドであるCBDおよびCBDVは、衛星細胞の筋芽細胞への分化および筋芽細胞の筋管への分化を可能にする点で効果的である。それらの化合物はCB1活性化合物ではないため、これは驚くべきことである。
本発明の第1の態様によれば、退行性骨格筋疾患の治療に使用するための、植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたはそれらの組合せが提供される。
一実施形態では、その植物性カンナビノイドはCBDである。
更なる実施形態では、その植物性カンナビノイドはCBDVである。
代替の実施形態では、その植物性カンナビノイドはTHCVである。
更なる実施形態では、その植物性カンナビノイドは更に、THCV、およびCBD、および/またはCBDVの組合せである。
好ましくは、退行性骨格筋疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
好ましくは、植物性カンナビノイドの用量は1日当たり1〜1000mg/kgである。
更なる実施形態では、植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたはそれらの組合せと、1つまたは複数の賦形剤とを含む医薬製剤が提供される。
本発明の第2の態様によれば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している患者を治療する方法が提供され、この方法は、植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたはそれらの組合せを、それを必要とする患者に投与することを含む。
本発明の実施形態を、添付図面を参照して以下で更に説明する。
C2C12細胞分化に与える1および3μMのCBDA、CBG、およびTHCVの効果を示す。 C2C12細胞分化に与える1および3μMのCBDおよびCBDVの効果を示す。 C2C12筋芽細胞をCBDに短期間暴露する効果を示す。 衛星細胞分化に与えるCBD、CBDV、およびTHCVの効果を示す。 CBD、CBDV、およびTHCVで4日間処理した衛星細胞の代表的な位相コントラスト画像を示す。 CBD、CBDV、およびTHCVで4日間処理した衛星細胞の代表的な位相コントラスト画像を示す。 16週間後のMDXマウスの体質量の変化を示す。 リアルタイムPCRによるDMD遺伝子マーカーの発現を示す。 CD8炎症細胞の数を示す。
図の説明文を下記でより詳細に説明する。
図1:C2C12細胞を表示濃度のDM+CBDA(A)、CBG(B)、またはTHCV(C)に24時間暴露した後、ミオゲニン(Myog)およびトロポニン(Tnnt−1)mRNAの発現レベルをqPCRによって定量化した。各バーは、少なくとも4回の別々の実験の平均値±S.E.M.を表す。は、それぞれのビヒクルグループ(白色のカラム)に対するp≦0.05である。
図2:C2C12筋芽細胞を表示濃度のDM+CBD(A)およびCBDV(B)に24時間暴露した後、ミオゲニン(Myog)およびトロポニン(Tnnt−1)mRNAの発現レベルをqPCRによって定量化した。各バーは、少なくとも4回の別々の実験の平均値±S.E.M.を表す。は、それぞれのビヒクルグループ(白色のカラム)に対するp≦0.05である。(C)1μMのCBDで処理したC2C12細胞を分化させたときのMyHCタンパク質レベルのウェスタンブロット分析。MyHCタンパク質のおよその分子質量(KDaで表した)を示す代表的なブロット(上部)、およびαチューブリンのOD値に正規化されたMyHCの平均OD値の数量化(下部)である。は、それぞれのビヒクルグループ(GM)に対するp≦0.05である。各データポイントは、少なくとも4回の独立した測定に基づく。
図3:DM+1μM CBDに10分間暴露した筋芽細胞におけるミオゲニン(Myog)およびトロポニン(Tnnt−1)mRNAの発現レベルを定量化し、次いでCBDなしのDM中で続いて3時間および24時間保持した。
図4:衛星細胞分化に与えるCBD、CBDV、およびTHCVの効果。SCをDM+CBD(淡い灰色のカラム)、CBDV(濃い灰色のカラム)、およびTHCV(白色のカラム)に5日間暴露した後、ミオゲニン(Myog)、トロポニン(Tnnt−1)、およびミオシン重鎖(MyHC)mRNAの発現レベルをqPCRによって定量化した。各バーは、少なくとも4回の別々の実験の平均値±S.E.M.を表す。は、それぞれのビヒクルグループ(白色のカラム)に対するp≦0.05である。
図5:CBD(1μM)、CBDV(3μM)、およびTHCV(3μM)で処理した衛星細胞の代表的な位相コントラスト画像。細胞を植物性カンナビノイドの存在下または不在下でDMに4日間暴露した画像が撮影された。
図6:CBD(1μM)、CBDV(3μM)、およびTHCV(3μM)で処理した衛星細胞の代表的な位相コントラスト画像。細胞を植物性カンナビノイドの存在下または不在下でDMに5日間暴露した画像が撮影された。
図7:4週間後、ビヒクルのみのコホートの総体質量は、CBDで処理したmdxマウスより有意に大きく、およびビヒクルとCBDとの両方がDFZで処理したマウスより有意に大きかった(15週目にビヒクル=31.17g、CBD=29.42g、DFX=26.26g、5.6%および15.8%の差、p<0.05)。
図8:4週目に腓腹筋を回収し、相対的な遺伝子発現を測定した。(a)サーチュイン−1(Sirt1)は、CBDコホートのみにおいて有意に上向き調節される(84.9%、n=9、p<0.05)。(b)PGC1aは、CBDコホートのみにおいて有意に上向き調節される(125.8%、n=9、p<0.001)。(c)ミトコンドリアにコードされたNADH脱水素酵素2(MT−ND2)は、CBDコホートのみにおいて有意に上向き調節される(253.2%、n=4、p<0.05)。
図9:4週目に脾臓を回収し、CD8陽性細胞を分析した。CD8集団の総比率はDFZによって影響されなかったが、そのCD8集団の総比率は10.9%(ビヒクル)から8.7%(CBD)に有意に減少し、19.7%の差(n=9、p<0.001)であった。
定義
本発明を説明するために使用される幾つかの用語の定義を下記に詳述する。
本出願において説明されるカンナビノイドを、それらの省略形と共に下記に列挙する。
上記の表は網羅的ではなく、参照のために本出願において特定されるカンナビノイドを単に詳述するに過ぎない。これまでに60種類を超える様々なカンナビノイドが同定されており、それらのカンナビノイドは、異なるグループ、すなわち植物性カンナビノイド、内在性カンナビノイド、および合成カンナビノイド(これは新規なカンナビノイド、または合成的に作られた植物性カンナビノイドもしくは内在性カンナビノイドであることができる)に分けることができる。
「植物性カンナビノイド」は、天然由来のカンナビノイドであり、大麻植物中に見出すことができる。植物性カンナビノイドは、植物から単離して高度に精製された抽出物を生成することもでき、または合成的に複製することもできる。
「高度に精製されたカンナビノイド」は、大麻植物から抽出され、かつその高度に精製されたカンナビノイドの純度が98%(w/w)以上になるようにカンナビノイドと一緒に共抽出される他のカンナビノイドおよび非カンナビノイド成分が除去される程度まで精製されたカンナビノイドと定義される。
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイドの構造またはカンナビノイドに類似した構造を有し、かつ植物によるのではなく化学的手段を使用して製造される化合物である。
植物性カンナビノイドは、そのカンナビノイドを抽出するために使用される方法に応じて中性(脱炭酸形態)またはカルボン酸の形態のいずれかとして得ることができる。例えばカルボン酸の形態を加熱することにより、そのカルボン酸の形態の大部分を脱炭酸して中性の形態にすることが知られている。
下記の実施例1は、筋芽細胞分化のマウスモデルにおける植物性カンナビノイドCBD、CBDV、CBDA、THCV、およびCBGの使用について述べる。
実施例2は、次にヒト衛星細胞のモデルにおけるCBD、CBDV、およびTHCVの使用について述べる。
実施例3は、DMDの哺乳動物モデルのin vivoでの検討におけるCBDの使用について述べる。
本明細書中で提供されるデータは、驚くべきことにCBDAおよびCBGではなく、植物性カンナビノイドのCBD、CBDV、およびTHCVが、DMDなどの不可逆的な退行性骨格筋疾患を治療する新しい薬理学的機会を与え得ることを実証する。なぜなら、後者はすべて3つの異なるマーカーの分化を刺激し得るからである。
実施例1:マウスC2C12筋芽細胞の分化に与える植物性カンナビノイドの効果
材料および方法
細胞培養および試薬
マウスC2C12筋芽細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、50U/mLのペニシリン+50μg/mLのストレプトマイシン、および1%のL−グルタミン(Invitrogen、Milan、Italy)を追加したダルベッコ変法イーグル培地から構成される成長培地(GM)中で、空気95%/CO5%の加湿雰囲気で37℃において繁殖させた。
C2C12はマウス筋芽細胞株である。これらの細胞は分化する能力があり、筋芽細胞および骨芽細胞の分化を研究し、様々なタンパク質を発現させ、かつ機構的経路を調べるための有用なツールである。
C2C12細胞を、より低い濃度(10%から0.1%まで)のFBS(その上に5μg/mLのインスリンおよび5μg/mLのトランスフェリンを添加した分化培地(DM))に24〜72時間暴露して増殖させることにより、それらの分化を誘発させて筋管にした。
細胞生存
C2C12細胞を、24ウェルのプラスチックプレートに密度2×10細胞/cmで播種した。塗布の1日後、その培養培地にスタチン(単独または植物性カンナビノイドの存在下で)を24時間加えた。細胞の生存を3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT、5mg/mL、Sigma−Aldrich)還元アッセイにより評価し、生きている細胞のミトコンドリアによるMTT還元時のホルマザン塩の形成を分光光度法により595nmにおいて検出した。
ウェスタンブロット分析
細胞を冷PBS中で2回洗浄し、溶解溶液(150mM NaCl、1mM EDTA(pH7.4)、10mM Tris−HCl(pH8)、1%SDS、およびプロテアーゼ阻害剤)で溶解した。ライゼート(50〜60μg)をレムリSDSローディングバッファー中で5分間煮沸し、8%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。フィルターをマウス抗MyHC(1:1000希釈、Millipore)と一緒に4℃で一晩インキュベートした。
抗チューブリン抗体(1:5000希釈、Sigma−Aldrich)を使用して同等のタンパク質量を調べた。反応性バンドを化学発光(ECL−plus、GE Healthcare)によって検出した。画像をChemiDoc装置上でQuantity oneソフトウェア(Bio−Rad、Segrate、Italy)により分析した。
mRNAの抽出および定量PCR(qPCR)分析
TRI−Reagent(Life Technology、Milan、Italy)を使用することによって全RNAを天然組織から単離し、製造業者の取扱説明書に従ってDNase−I(1U/μL、Sigma−Aldrich)と反応させ、次いで分光光度分析によって定量した。
海馬の両側を分析した。RNAの最終準備は、260/280nmの読取り値の比が>1.7である場合にDNAおよびタンパク質を含まないとみなした。精製されたmRNAを逆転写酵素(酵素VILO)(Life Technology、Milan、Italy)を使用して逆転写した。定量リアルタイムPCRはCFX384リアルタイムで行った。
SYBR Green検出法(Bio−Rad、Segrate、MI、Italy)を使用した特異的プライマーによるPCR検出システム(Bio−Rad、Segrate、MI、Italy)。試料は、汚染またはプライマー二量体の形成を制御するために、1回のアッセイの実行において各プライマー対の非鋳型対照ブランクを含む4組が同時に増幅され、各実験グループについてct値(サイクル閾値)が決定された。
ハウスキーピング遺伝子(リボソームタンパク質S16)が、2−dCt式を用いてct値を正規化するための内部対照として使用され、グループ間のmRNA含有量の違いは、前述(Iannotti et al.2013)と同様に2−ddctとして表された。
材料
この実施例では、高度に精製された植物性カンナビノイドCBD、CBDV、CBDA、THCV、およびCBGがテストされた。
統計値
データは、所与の実験数(n)の平均値±S.E.M.として表される。データセットは、適合するスチューデントのt検定を使用して、または必要に応じて一元配置分散分析、続いてニューマン・コイル検定を使用して比較された。統計的有意差は、pが<0.05である場合に受容された。
結果
筋芽細胞分化に与える植物性カンナビノイドの潜在効果についての情報を得るために、C2C12細胞を、様々な植物性カンナビノイドの存在下または不在下のDM中において24〜48時間分化するように誘導した。
次いでqPCR分析を利用して、発生学的に調節されるカノニカル骨格マーカーMyogおよびTnnt−1の発現レベルを評価した。
図1Aおよび図1Bに示すようにCBDA(1および3μM)またはCBG(3μM)の存在下で分化させた筋芽細胞のMyogおよびTnnt−1 mRNAの発現レベルは有意に低下した。一方、THCV(1および3μM)は、有意な効果をもたらさなかった(図1C)。
これとは対照的にCBD(1μM)およびCBDV(1および3μM)は、MyogおよびTnnt−1 mRNAの発現の有意な増加によって示されるように筋芽細胞の分化を促進した(図2Aおよび図2B)。
筋管形成に与えるCBD 1μMの効果は、ウェスタンブロット分析によって確かめられた。細胞をDM+1μM CBDに72時間暴露することにより、ミオシン重鎖(MyHC)タンパク質の発現は、対照条件と比較して有意に増加した(図2C)。
1μMのCBDへの短期間暴露のC2C12細胞分化に与える潜在効果もテストされた。
塗布の翌日、C2C12筋芽細胞を1μMのCBDの存在下または不在下でDMに10分間暴露した。その後、DMを更新し、細胞を洗浄してからそれらをDM(薬物なし)に3および24時間暴露した。qPCR分析は、この3時間後および24時間後の両方でCBD 1μMに暴露したC2C12細胞が、MyogおよびTnnt−1の両方で有意に高い転写レベルを有することを示した(図3)。これらの結果は、CBDへの短時間の暴露が筋芽細胞の分化過程を促進させるのに十分であることを示す。
結論
これらのデータは、植物性カンナビノイドCBD、CBDV、およびTHCVが骨格筋細胞の分化を調節し得ることを初めて示した。
具体的には、植物性カンナビノイドCBDおよびCBDVは、図2Aおよび2Bに示すように筋芽細胞分化の統計的に有意な増加(その他のカンナビノイドとは対照的に)をもたらした。
それは、これらの特定の植物性カンナビノイドまたはそれらの組合せが、分化過程の変質と、それに続く骨格筋組織の変性とによって引き起こされる慢性または退行性骨格筋疾患、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを含めたジストロフィーの治療または予防に有用であることを証明し得ることを意味する。
実施例2:ヒト衛星細胞の分化に与える植物性カンナビノイドの効果
材料および方法
細胞培養および試薬
初代ヒト衛星細胞(SC)をInnoprot Inc(Bizkaia−Spain)から購入し、必須および非必須アミノ酸、ビタミン類、有機および無機成分、ホルモン類、成長因子、微量元素、および低濃度のウシ胎児血清(5%)を含有する成長培地(GM)(Innoprot Inc/Bizkaia−Spain)中で、空気95%/CO5%の加湿雰囲気において37℃で繁殖させた。
衛星細胞を、より低い濃度(10%から0.1%まで)のFBS(その上に5μg/mLのインスリンおよび5μg/mLのトランスフェリンを添加した分化培地(DM))に4〜5日間暴露して増殖させることにより、それらの分化を誘発して筋管にした。
mRNAの抽出および定量PCR(qPCR)分析
実施例1で述べたものと同様である。
材料
この実施例では、高度に精製された植物性カンナビノイドCBD、CBDV、およびTHCVがテストされた。
統計値
実施例1で述べたものと同様である。
結果
ヒト骨格筋前駆細胞の分化に与えるカンナビノイドCBD、CBDV、およびTHCVの効果を更に調べるためにqPCR分析が使用された。
具体的には、ミオゲニン(Myog)、トロポニン(Tnnt−1)、およびミオシン重鎖(MyHC)の転写レベルを測定することによって骨格筋細胞の分化を定量した。これらのすべてが筋管形成に必要とされる筋特異的マーカーであることは広く認められている。
qPCR分析は、SCを1μMのCBD、3μMのCBDV、または3μMのTHCVの存在下で分化培地に暴露して5日後、Myog、Tnnt−1、およびMyHCなどのカノニカル骨格筋分化マーカーの転写レベルが有意に増加することを明らかにした(図4)。
初代ヒト衛星細胞の分化がまた、通常の光学顕微鏡法によって位相コントラスト様式で試験された。図5および6にそれぞれ示すように、1μMのCBD、3μMのCBDV、および3μMのTHCVの存在下でDMに4および5日間暴露した後、SCの分化はビヒクル(DMSO)で処理した対照グループと比較して明白な形態学的相違を示した。具体的には、植物性カンナビノイドの存在下でインキュベートして5日後、細胞はより融合したと思われ、成熟筋管のサイズはより大きくなった。
この後者の相違は、THCVで処理した細胞ではより明白である(図6)。
初代ヒト骨格筋前駆細胞に見出されるこれらの効果は、マウスC2C12細胞で観察される効果よりもはるかに顕著である(実施例1)。
結論
データは、CBD、CBDV、またはTHCVへの暴露が前駆細胞の筋管への分化を増進させるのに貢献することを示す。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの退行性骨格筋障害において、骨格筋前駆(衛星)細胞の再生能力の減損および成熟した機能性筋管に分化する能力の低下は、慢性変性による進行性筋力低下を引き起こす。植物性カンナビノイドCBD、CBDV、およびTHCVはすべて(カンナビノイドCBDAおよびCBGとは対照的に)、ヒト骨格筋前駆細胞の分化を増進させるのに有効であることは明らかであり、したがって、そのような状態を有する患者の治療の選択肢と考えるべきである。
実施例3:DMDの哺乳動物モデルにおけるカンナビジオール(CBD)の効果
材料および方法
動物:
mdxマウスを英国内務省規則(Home Office regulations)に従って飼育し保管した。6週齢の時点で雌性mdxマウスのグループ(対照はn=18、デフラザコートはn=18、CBDはn=19)を、飲料水に溶かした3.5%Kolliphor/水(v/v)に順応させた。
対照グループは、この検討の継続期間にわたり3.5%Kolliphorで維持された。デフラザコート(DFZ)グループは、2週間にわたり3.5%Kolliphorで維持され、次いで16週間にわたり3.5%Kolliphorに溶かした1.2mg/kg/日のDFZで維持された(n=8)。
CBDグループは、3.5%Kolliphorに7日間順応させた。7日目から、3日間にわたり3.5%Kolliphorに75mg/kg/日のCBDが追加され、次いで16週間にわたりCBDを120mg/kg/日に増加した(n=8)。
マウスおよび瓶を週に2回計量して体質量および消費量を監視した。マウスはグループ単位で保管され、したがって平均消費量が計算される。
リアルタイムPCR:
4週目に腓腹筋を回収し、相対的な遺伝子発現を測定した。
CBDで処理した後の細胞からRNAを抽出した。対照RNAは対照グループから抽出された(RNeasy kit、Qiagen)。各試料からの2μgのRNAを、オリゴdTプライマー(rt nanoscript2、Primer Design)を使用して逆転写させた。
安定な内在性対照遺伝子(Pak1lip1、Htatfs1)を、マウスGeNorm Kit qbase+ソフトウェア(Primer Design)を使用して同定した。
リアルタイムPCRは、AB Biosystems Thermocycler上でSYBR green(Life Technologies)を使用して行った。すべてのリアルタイムPCR実験は次の反応条件、すなわち初期は95℃で10分間、続いて95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクル、続いて融解曲線の分析で行った。
遺伝子発現の相対的レベルは標準曲線法を使用して求められ、内在性対照の平均を基準にして表される。
炎症マーカー:
4週目に脾臓を回収し、CD8陽性細胞を分析した。
結果:
図7は、この検討の16週間にわたるマウスの体重を詳述する。図に見られるようにビヒクルグループとCBDグループとの間の総体質量は4週目まで差がなかったが、デフラザコートグループは有意に軽くなった(8.9%、p<0.05)。
4週の終了後、ビヒクルのみのコホートの総体質量はCBD処理mdxマウスよりも有意に大きく、およびビヒクルとCBDとの両方がデフラザコート処理マウスよりも有意に大きかった(15週目にビヒクル=31.17g、CBD=29.42g、DFX=26.26g、5.6%および15.8%の差、p<0.05)。
図8は、4週目の腓腹筋のリアルタイムPCRおよびその相対的遺伝子発現を詳述する。図8(a)は、CBDコホートのみにおいてサーチュイン−1(Sirt1)が有意に上向き調節されることを示す(84.9%、n=9、p<0.05)。
図8(b)は、CBDコホートのみにおいてPGC1αが有意に上向き調節されることを示す(125.8%、n=9、p<0.001)。
図8(c)は、CBDコホートのみにおいてミトコンドリアにコードされたNADH脱水素酵素2(MT−ND2)が有意に上向き調節されることを示す(253.2%、n=4、p<0.05)。
図9は、この動物の脾臓中のCD8陽性細胞のレベルを明らかにする。CD8集団の総比率はデフラザコートによって影響を受けなかったが、CD8集団の総比率は10.9%(ビヒクル)から8.7%(CBD)に有意に減少し、19.7%の差(n=9、p<0.001)であることが分かる。
結論:
上記in vivoのデータは、CBDがDMDを治療し得ることを実証する。
DMDのマウスモデルからのリアルタイムPCRデータは、3つすべての遺伝子、Sirt−1、PGC1α、およびND2が上向き調節されることを実証する。これらの遺伝子は、下記のようにDMDの重要なマーカーである。
サーチュイン−1(Sirt−1)は、ヒトおよび他の哺乳動物中で見出され、食料およびエネルギーが乏しいときに細胞を保護することにより、生存の促進に役立つ遺伝子である。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ、すなわち活性化補助因子1α(PGC1α)は、CBDが骨格筋細胞における酸化代謝および脈管形成表現型を増進させることが初めて実証されたエネルギー代謝に関与する遺伝子を調節する転写活性化補助因子である。
ミトコンドリアにコードされたNADH脱水素酵素2(MT−ND2)は、代謝に関係する遺伝子である。
CBDで処理したDMDマウスにおけるこれらのすべての遺伝子の統計的に有意な増加は、筋肉の増加をもたらす遺伝子の上向き調節をCBDが促進し得ることを示唆し、したがってDMDの有用な治療であることを示唆する。
また、CBDによる炎症マーカーの減少は、この治療がDMDなどの疾患の治療に役立つ抗炎症作用を更にもたらすことを示唆する。
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Claims (9)

  1. 退行性骨格筋疾患の治療に使用するための、植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたはそれらの組合せ。
  2. 前記植物性カンナビノイドがCBDである、請求項1に記載の使用のための植物性カンナビノイドのうちの1つまたはそれらの組合せ。
  3. 前記植物性カンナビノイドがCBDVである、請求項1に記載の使用のための植物性カンナビノイドのうちの1つまたはそれらの組合せ。
  4. 前記植物性カンナビノイドがTHCVである、請求項1に記載の使用のための植物性カンナビノイドのうちの1つまたはそれらの組合せ。
  5. 前記植物性カンナビノイドが、THCV、およびCBD、および/またはCBDVである、請求項1に記載の使用のための植物性カンナビノイドの組合せ。
  6. 前記退行性骨格筋疾患がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のための植物性カンナビノイドのうちの1つまたはそれらの組合せ。
  7. 前記植物性カンナビノイドの用量が1日当たり1〜1000mg/kgである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用のための植物性カンナビノイドのうちの1つまたはそれらの組合せ。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つまたは複数の植物性カンナビノイドと、1つまたは複数の賦形剤とを含む医薬製剤。
  9. デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している対象を治療する方法であって、植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)、およびテトラヒドロカンナビバリン(THCV)のうちの1つまたはそれらの組合せを、それを必要とする前記対象に投与することを含む、方法。
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