JP2018203723A - 摩擦低減用であるコンタクトレンズ用点眼剤、その使用方法、および装用中のコンタクトレンズの摩擦低減方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】装用中のコンタクトレンズにおける摩擦を低減させる摩擦低減用のコンタクトレンズ用点眼剤を提供。【解決手段】(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンを0.001〜5w/v%と、(B)ホウ酸、リン酸、クエン酸およびそれらの塩からなる群より選択される緩衝剤を0.001〜10w/v%含有する眼部の摩擦低減用のコンタクトレンズ用点眼剤。【選択図】なし

Description

本発明は、摩擦を低減させる、とりわけ摩擦低減を持続させる摩擦低減用のコンタクトレンズ用点眼剤に関する。
眼部においては、眼瞼、角膜、結膜の間で瞬き等の運動が加わった場合に摩擦が発生し、これが、角結膜や、涙液膜、眼瞼部の異常の原因になるといわれているが、特に、コンタクトレンズを装用している場合であれば、コンタクトレンズとこれらの組織間において摩擦が発生し、この摩擦がコンタクトレンズの装用感の悪化につながると考えられる。
コンタクトレンズの摩擦を低減させる方法としては、従来、20℃における2w/w%水溶液の粘度が5.1mPa・s以下のヒプロメロースが0.5〜1.5w/v%の濃度、20℃における4w/w%水溶液の粘度が10〜35mPa・sであるポリビニルアルコールが0.8〜2w/v%の濃度で含まれており、かつ20℃における動粘度が3.0〜8.0mm2 /sであるコンタクトレンズ用組成物等が知られていた(特許文献1)。
特開2012−198538号公報
コンタクトレンズ装用者にとって、より効果的でかつ利便性の高い摩擦の低減方法が求められている。本発明は、摩擦を低減させる、とりわけ摩擦低減を持続させるために用いられるコンタクトレンズの摩擦低減用であるコンタクトレンズ用点眼剤、その使用方法、および装用中のコンタクトレンズの摩擦低減方法を提供することをその目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コンタクトレンズ用点眼剤の成分として、ポリビニルピロリドンのなかでも、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンを選択し、これに(B)緩衝剤を含有させることによって、得られるコンタクトレンズ用点眼剤は、意外にも、装用中のコンタクトレンズにおける摩擦を顕著に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供する。
[1] (A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有する摩擦低減用であるコンタクトレンズ用点眼剤。
[2] 上記(A)成分がポリビニルピロリドンK90である、[1]記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[3] 上記(A)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜5w/v%である、[1]または[2]に記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[4] 上記(B)成分が、ホウ酸、リン酸、クエン酸およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれかに記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[5] 上記(B)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜10w/v%である、[1]〜[4]のいずれかに記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[6] さらに(C)塩類を含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[7] 上記(C)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜5w/v%である、[6]記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載のコンタクトレンズ用点眼剤を用いた使用方法であって、1回の点眼投与量が10〜200μLであるコンタクトレンズ用点眼剤の使用方法。
[9] コンタクトレンズ装用中に、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有するコンタクトレンズ用点眼剤を点眼することによる、摩擦を低減する方法。
本発明のコンタクトレンズ用点眼剤は、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有することにより、摩擦を効果的に抑制できる点眼剤を提供することが可能となる。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限るものではない。
本明細書において、含有量の単位である「w/v%」は、容積に対する質量の割合を示すものであり、「g/100mL」と同義である。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POE」はポリオキシエチレンを意味する。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
本実施形態に係るコンタクトレンズ用点眼剤(以下、「点眼剤」と略すことがある)は、装用中のコンタクトレンズの摩擦低減用であり、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有する。以下、各成分について説明する。
<(A)成分>
上記(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンとは、非イオン性の水溶性ポリマーであって、K値は、第十七改正日本薬局方「ポビドン」に記載の方法に準じて算出される。
上記(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンとしては、例えば、ポリビニルピロリドンK80、ポリビニルピロリドンK85、ポリビニルピロリドンK90、ポリビニルピロリドンK120等があげられる。
これらのなかでも、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、K値が80以上のポリビニルピロリドンが好ましく、K値が90以上のポリビニルピロリドンがより好ましく、K値が90〜120であるポリビニルピロリドンがさらに好ましい。なかでも、ポリビニルピロリドンK90が特に好ましく用いられる。ここで、K値は、第十七改正日本薬局方「ポビドン」のK値に関する記載に準じて、表示K値の90〜108%であることから、例えば、「K90」とは、K値(粘性特性値)が81.0〜97.2の範囲にあるものをいう。
なお、上記ポリビニルピロリドンK90は、公知の方法により合成してもよいが、アイフタクトK−90(第一工業製薬社製)、コリドンK90(BASFジャパン社製)、プラスドンK90(アイエスピー・ジャパン社製)、ポビドンK90(DSP五協フード&ケミカル社製)等の市販品を用いてもよい。そして、これらは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、上記(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準として、(A)成分の含有量が、0.001〜5w/v%であることが好ましく、0.005〜3w/v%であることがより好ましく、0.01〜2.5w/v%であることがさらに好ましく、0.02〜2w/v%がさらにより好ましく、0.03〜1.5w/v%が特に好ましく、0.05〜1w/v%が最も好ましい。上記(A)成分の含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から好適である。
<(B)成分>
(B)緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
このような(B)緩衝剤としては、例えば、ホウ酸系緩衝剤、リン酸系緩衝剤、炭酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤、酢酸系緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、L−グルタミン酸ナトリウム等があげられる。これら(B)緩衝剤は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
ホウ酸系緩衝剤としては、ホウ酸またはその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。リン酸系緩衝剤としては、リン酸またはその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。炭酸系緩衝剤としては、炭酸またはその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。クエン酸系緩衝剤としては、クエン酸またはその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。酢酸系緩衝剤としては、酢酸またはその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。
また、ホウ酸系緩衝剤、リン酸系緩衝剤、炭酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤または酢酸系緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、またはL−グルタミン酸ナトリウムの水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸系緩衝剤として、ホウ酸またはその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸系緩衝剤として、リン酸またはその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸系緩衝剤として、炭酸またはその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸系緩衝剤として、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸系緩衝剤として、酢酸またはその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤のなかでも、ホウ酸系緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸系緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)、クエン酸系緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、L−グルタミン酸ナトリウムが好ましく、ホウ酸系緩衝剤、リン酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤がより好ましく、ホウ酸系緩衝剤(ホウ酸およびその塩の少なくとも1種)がさらに好ましい。
上記(B)緩衝剤の含有量は、(B)緩衝剤の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。(B)緩衝剤の含有量としては、点眼剤の全量を基準として、0.001〜10w/v%であることが好ましく、0.005〜5w/v%であることがより好ましく、0.01〜2.5w/v%であることがさらに好ましく、0.04〜2w/v%であることがさらにより好ましい。
本実施形態に係る点眼剤における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分および(B)成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、点眼剤の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る点眼剤に含まれる(A)成分の含有量1質量部に対して、(B)成分の含有量が、0.0001〜500質量部であることが好ましく、0.001〜300質量部であることがより好ましく、0.01〜100質量部であることがさらに好ましく、0.1〜50質量部であることがさらにより好ましく、0.4〜25質量部であることが特に好ましい。
<(C)成分>
また、本実施形態に係る点眼剤には、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、さらに、(C)塩類を含有させることが好ましい。
上記(C)塩類としては、無機塩類、有機塩類のいずれも用いることができる(但し、上記(B)成分を除く)。上記無機塩類としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムがあげられる。上記有機塩類としては、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等があげられる。(C)塩類のなかでも無機塩類が好ましく、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムがより好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがさらに好ましい。
これら(C)塩類は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記(C)塩類を含有する場合、その含有量は、(C)塩類の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。(C)塩類の含有量としては、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準として、0.001〜5w/v%であることが好ましく、0.01〜3w/v%であることがより好ましく、0.05〜2w/v%であることがさらに好ましく、0.1〜1w/v%であることがさらにより好ましく、0.4〜0.8w/v%であることが特に好ましい。
本実施形態に係る点眼剤における、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分および(C)成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、点眼剤の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る点眼剤に含まれる(A)成分の含有量1質量部に対して、(C)成分の含有量が、0.001〜500質量部であることが好ましく、0.01〜100質量部であることがより好ましく、0.05〜50質量部であることがさらに好ましく、0.1〜20質量部であることがさらにより好ましい。
<その他の任意成分>
本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分以外に、さらに(B)成分以外のアミノ酸類を含有することができる。アミノ酸類とは、分子内にアミノ基とカルボキシ基もしくはスルホ基とを有する化合物またはその誘導体を意味する。具体的には、アミノ酸およびムコ多糖、並びにそれらの塩が例示される。アミノ酸類のうち、アミノ酸およびその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸およびそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸およびそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)等の誘導体およびそれらの塩があげられる。アミノ酸およびその塩としては、L体、D体、DL体のいずれであってもよく、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウムおよびL−アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物等が例示される。また、アミノ酸類のうち、ムコ多糖およびその誘導体、並びにそれらの塩としては、例えば、酸性ムコ多糖として、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸等の誘導体およびそれらの塩があげられる。アミノ酸の塩またはムコ多糖の塩は、医薬上、薬理学的にまたは生理学的に許容される塩を含む。そのような塩としては、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)等]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が例示でき、化合物によって適宜選択される。例えば、モノアミノジカルボン酸の場合は、無機塩基との塩が好ましく、特にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
このようなアミノ酸類のなかでも、特に、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物、アミノエチルスルホン酸、ムコ多糖が好ましく、ムコ多糖がより好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムがさらに好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムがとりわけ好ましい。
これらアミノ酸類は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記アミノ酸類の含有量は特に限定されず、アミノ酸類の種類、併用する(A)成分、(B)成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。アミノ酸類の含有量としては、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準として、アミノ酸類の含有量が、0.01〜8w/v%であることが好ましく、0.02〜5w/v%であることがより好ましく、0.05〜3w/v%であることがさらに好ましく、0.1〜2w/v%であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分以外に、さらに増粘剤を含有することができる。このような増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(2208、2906、2910等)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースまたはそれらの塩等]、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70等)等が例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体、デキストラン(70)であり、より好ましくは、セルロース誘導体であり、さらに好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、さらにより好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910である。
これら増粘剤は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記増粘剤を含有する場合、その含有量は、増粘剤の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。増粘剤の含有量としては、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準として、増粘剤の含有量が、0.0001〜5w/v%であることが好ましく、0.001〜3w/v%であることがより好ましく、0.01〜2w/v%であることがさらに好ましく、0.1〜1w/v%であることが特に好ましい。
そして、本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分以外に、さらに非イオン界面活性剤を含有することができる。非イオン界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。
本実施形態に係る点眼剤に用いることのできる非イオン界面活性剤として、具体的には、モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(3)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油3)、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(20)POP(20)グリコール(プルロニックL44)、POE(42)POP(67)グリコール(ポロクサマー403、プルロニックP123)、POE(54)POP(39)グリコール(ポロクサマー235、プルロニックP85)、POE(120)POP(40)グリコール(プルロニックF87)、POE(160)POP(30)グリコール(ポロクサマー188、プルロニックF68)、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等があげられる。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。
上記非イオン界面活性剤のなかでも、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコールまたはPOE・POPグリコールが好ましく、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40、ポロクサマー188またはポロクサマー407がより好ましい。
これら非イオン界面活性剤は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記非イオン界面活性剤を含有する場合、その含有量は、用いる非イオン界面活性剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、点眼剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準に、非イオン界面活性剤の含有量が、0.001〜3w/v%であることが好ましく、0.005〜2w/v%であることがより好ましく、0.01〜1w/v%であることがさらに好ましく、0.05〜0.5w/v%であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分以外に、さらに清涼化剤を含有することができる。清涼化剤は、点眼剤に清涼感を付与する物質であれば、特に制限されない。例えば、テルペノイド、テルペノイドを含有する精油(例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミントおよびハッカ油等)等があげられる。テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル(「ショウノウ」または「樟脳」ともいう)、ボルネオール(「リュウノウ」または「竜脳」ともいう)、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロールおよび酢酸リナリルがあげられる。テルペノイドはd体、l体およびdl体のいずれであってもよく、l−メントール、d−メントール、dl−メントール、dl−カンフル、d−カンフル、dl−ボルネオールおよびd−ボルネオールが例示される。本発明の効果をより顕著に奏する観点から、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオールまたはハッカ油が好適であり、l−メントール、d−カンフル、dl−カンフルまたはd−ボルネオールがより好適であり、l−メントールが特に好適である。
これら清涼化剤は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記清涼化剤の含有量は特に限定されず、清涼化剤の種類、併用する(A)成分、(B)成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。清涼化剤の含有量としては、テルペノイドとして測定することができ、例えば、本実施形態に係る点眼剤の全量を基準として、清涼化剤(テルペノイドとして)の含有量が、0.00001〜1w/v%であることが好ましく、0.00005〜0.5w/v%であることがより好ましく、0.0001〜0.2w/v%であることがさらに好ましく、0.0005〜0.1w/v%であることが特に好ましく、0.001〜0.05w/v%であることが特により好ましい。上記清涼化剤の含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好適である。
本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分以外に、さらに多価アルコールを含有することができる。多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(400、4000、6000等)、プロピレングリコール、グリセリン等があげられる。多価アルコールとして、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。そして、多価アルコールとして、市販のものを用いることもできる。
これら多価アルコールは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本実施形態に係る点眼剤に用いることのできる、多価アルコールの含有量は、特に限定されず、多価アルコールの種類、他の配合成分の種類および含有量、点眼剤の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。多価アルコールの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、点眼剤の全量を基準として、多価アルコールの含有量が、0.01〜5w/v%であることが好ましく、0.05〜2w/v%であることがより好ましく、0.1〜1w/v%であることがさらに好ましく、0.1〜0.75w/v%であることが特に好ましい。
なお、本実施形態に係る点眼剤のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。点眼剤のpHとしては、例えば、4.0〜9.5であることが好ましく、5.0〜9.0であることがより好ましく、5.5〜8.5であることがさらに好ましく、6.5〜8.0であることがさらにより好ましい。
また、本実施形態に係る点眼剤の浸透圧比については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。点眼剤の浸透圧比としては、例えば、0.5〜5.0であることが好ましく、0.6〜3.0であることがより好ましく、0.7〜2.0であることがさらに好ましく、0.8〜1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコールまたは糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
本実施形態に係る点眼剤の粘度については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34'×R24)で測定した25℃における粘度が、例えば、1〜1000mPa・sであることが好ましく、1〜100mPa・sであることがより好ましく、1〜50mPa・sであることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る点眼剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分または生理活性成分を、適宜選択し、1種または2種以上を併用して適当量含有していてもよい。このような成分は、特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分を例示することができる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分として、以下の成分があげられる。
・抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジン、塩酸レボカバスチン等。
・抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト等。
・ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
・充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl−塩酸メチルエフェドリン等。
・眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等。
・消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、プラノプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、リゾチーム、甘草等。
・収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
・ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等。
・局所麻酔剤:例えば、リドカイン等。
・その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
また、本実施形態に係る点眼剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途または製剤形態に応じて、常法にしたがい、様々な添加物を適宜選択し、1種または2種以上を併用して適当量含有していてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分としてつぎの添加物があげられる。
・担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
・糖類:例えば、ブドウ糖、シクロデキストリン等。
・糖アルコール:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体またはdl体のいずれでもよい。
・安定化剤:例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、エデト酸およびその塩(エデト酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン等。
・陰イオン界面活性剤:例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸等。
・防腐剤、殺菌剤または抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサニドまたはその塩酸塩等)、塩化ポリドロニウム、グローキル(ローディア社製商品名)等。
・pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
・油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
本実施形態に係る点眼剤は、上記(A)および(B)成分と、必要に応じて他の任意成分とを、所望の含有量となるように担体に含有させることにより調製される。上記担体としては医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。
そして、例えば、精製水で、これらの成分を溶解または懸濁させ、所定のpHおよび浸透圧比に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することにより、本実施形態に係る点眼剤を調製することができる。
本実施形態に係る点眼剤は、点眼剤の全量に対して、水の含有量が85w/v%以上であり、90w/v%以上であることが好ましく、92w/v%以上であることがより好ましく、94w/v%以上であることがさらに好ましく、95w/v%以上であることが特に好ましい。
本実施形態に係る点眼剤は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤等があげられる。本実施形態に係る点眼剤は、液剤であることが好ましい。
本実施形態に係る点眼剤は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る点眼剤を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドおよびこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものがあげられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る点眼剤を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器および有色透明容器の双方が含まれる。本実施形態に係る点眼剤は、例えば、有色透明のプラスチック製容器等に、繰り返し使用可能なマルチドーズの形態で収容して使用できる。また、別の態様として、ユニットドーズの形態で収容して使用することもできる。
また、本実施形態に係る点眼剤の用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、使用方法としては、1回の点眼投与量が10〜200μLであることが本発明の効果の点から好ましく、さらに、20〜150μLであることがより好ましい。1回の点眼投与量とは、例えば、成人(15歳以上)および7歳以上の小児の場合、約15分間以上の間隔(涙液の入れ替わり時間)をあけた場合の、1回使用時の点眼投与量(滴下量)をいい、通常1〜3滴の滴下量に相当する量をいう。
また、点眼回数としては、1日に3〜6回(例えば、朝、昼、夕方および就寝前等)が好ましく、さらに5〜6回であることがより好ましい。
そして、本実施形態に係る点眼剤は、医薬品または医薬部外品の製剤として使用でき、コンタクトレンズ装用中に点眼可能なコンタクトレンズ用点眼剤である。なお、本発明のコンタクトレンズ用点眼剤は、コンタクトレンズを装用している時以外に、コンタクトレンズ装用前後を含め、コンタクトレンズを装用していない時でも点眼の目的で使用することができる。また、本発明のコンタクトレンズ用点眼剤は、点眼して使用する態様を包含していればよく、よって、例えば、上記態様と共に、装着前のコンタクトレンズに直接滴下して使用する態様をも併せ持つコンタクトレンズ装着点眼液でもよい。
また、本実施形態に係る点眼剤はコンタクトレンズのなかでも、ソフトコンタクトレンズに用いるのが好適である。なかでも、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類におけるグループI〜IVに分類されるいずれのソフトコンタクトレンズにも適用することができるが、なかでもグループIV(含水率が50%以上、イオン性)に分類されるソフトコンタクトレンズに適用されることが特に好ましい。ここで、イオン性とは、コンタクトレンズにおけるイオン性成分の含有率が1mol%以上であることをいう。
上記グループIVに分類されるソフトコンタクトレンズとしては、例えば、米国認証名(United States Approved Names)におけるエタフィルコンA、メタフィルコンA、メタフィルコンB、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オキュフィルコンE、フェムフィルコンA、ビフィルコンA等があげられ、これらの装用中は、本発明の効果がより顕著に奏されるため、本実施形態に係る点眼剤を好ましく使用することができる。特に好ましくは、エタフィルコンAである。
また、ソフトコンタクトレンズのなかでも、表面に色や模様がプリント等の方法で施されたカラーコンタクトレンズは、カラーコンタクトレンズ以外のコンタクトレンズに比べて、コンタクトレンズ表面の摩擦が大きいことから、カラーコンタクトレンズ用点眼剤であることも好ましい。
本実施形態に係る点眼剤は、コンタクトレンズ装用時の、コンタクトレンズのすべての面(表面[装用時に外界に接する面]、裏面[装用時に眼球に接する面]およびエッジ部分を含む)における摩擦を低減することが可能になるため、コンタクトレンズと角膜、コンタクトレンズと結膜の間に発生する摩擦を効果的に低減させる。よって、コンタクトレンズ装用中における異物感を低減させ、また、瞬きのしやすさや快適性を向上させることができる。
同時に、本実施形態における点眼剤は、該点眼剤と接触する眼部組織(結膜[眼瞼縁の結膜:lid wiperを含む]間や、結膜と角膜の間等)において、瞬目時等に発生する摩擦抵抗が低減されて滑らかになるため、眼部における不快感がより顕著に軽減されるという効果を奏する。
さらに、本実施形態における点眼剤は、コンタクトレンズの摩擦接触を低減することから、コンタクトレンズの摩擦(角膜・結膜・ゴミとの接触摩擦)により生じるコンタクトレンズ自体のキズの発生を防止することができる。コンタクトレンズにキズが存在する場合には、矯正視力の低下を招くのみでなく、コンタクトレンズに汚れや細菌等が付着し易くなったり、角膜や結膜の損傷を引き起こす恐れがあることから、コンタクトレンズのキズの発生を防止することによって、これらの問題も防ぐことができる。
また、涙液水層の入れ替わり時間は通常15分間程度であるところ、点眼後にそれ以上の時間が経過すると、涙液が完全に入れ替わることに伴い点眼剤も入れ替わることから、通常は眼部における摩擦低減効果は激減する。しかし、本実施形態に係る点眼剤は、点眼後涙液が入れ替わった場合でも、摩擦低減効果を持続することができる。
したがって、本発明の一実施形態として、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有し、摩擦を低減させる、とりわけ摩擦低減を持続させるために用いられる眼部の摩擦低減用のコンタクトレンズ用点眼剤が提供される。
さらに、本発明の一実施形態として、コンタクトレンズ装用中の、コンタクトレンズの摩擦低減方法であって、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有する点眼剤を点眼するステップを含む方法が提供される。なお、「コンタクトレンズ装用中」には、コンタクトレンズを装着している状態であればよく、コンタクトレンズ装着直後であると、コンタクトレンズを装着したまま一定時間経過後であるとを問わない。
コンタクトレンズの摩擦低減手法としては、点眼剤以外に、摩擦低減効果を有する物質を、コンタクトレンズのパッケージング液に配合したりコンタクトレンズ自体に練り込んだりする方法等が考えられるが、これらの方法は、コンタクトレンズをケースから取り出す際のハンドリング性が低下することがあり、また、連続装用によって摩擦低減効果が低下したり、摩擦を感知した際にすぐに対処することができないという課題があった。これに対し、本実施形態における点眼剤および摩擦低減方法は、対象となるコンタクトレンズの種類に関わらずに汎用的に適用でき、また、摩擦感を感じた際に適用することによって、症状を感知した際にすぐにその症状を解消することができる。また、装用により脂質やタンパク質などの汚れが付着したコンタクトレンズに点眼剤を適用することで、摩擦低減効果を顕著に奏することができる。
本実施形態に係る点眼剤の(A)および(B)成分の少なくとも1種は、有効成分として含有されていてもよい。
以下に、実施例および試験例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
後記の表における各成分量の単位は、全て「w/v%」である。また、表中における「適量」は、所定のpHを得る量を示す。
<試験例1:摩擦低減性の評価>
ソフトコンタクトレンズ〔製品名:ワンデーアキュビュー(エタフィルコンA(etafilcon A))、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類:グループIV、ジョンソン&ジョンソン社製〕1枚を、リン酸緩衝生理食塩水(塩化ナトリウム:0.8w/v%、リン酸水素ナトリウム12水和物:0.6w/v%、リン酸二水素ナトリウム2水和物:0.053w/v%)ですすぎ、表面に付着した余分な液を拭き取った後、下記の表1に示す脂質−タンパク質汚れ液を12wellプレート(ポリスチレン製)に2mLずつ充填したものに、1枚ずつ浸漬させ、34℃振とう条件下、72分間保存した(脂質−タンパク汚れ液処理)。
Figure 2018203723
その後、下記表2に記載の各処方液を、12wellプレート(ポリスチレン製)に2mLずつ充填したものを用意し、上記脂質−タンパク汚れ液処理を行った後のコンタクトレンズを15分間浸漬させた。
その後、コンタクトレンズを取り出し、摩擦感テスター(Tribomaster TL201Ts、トリニティラボ社製)の接触子にソフトコンタクトレンズを接着させた。一方、生理食塩水に1時間浸漬した人工皮革を摩擦感テスターの移動テーブルに張り付け、人工皮革上に生理食塩水4mLを、接触子が移動しうる全面に充分に行き渡るように広げた。つぎに測定ユニットに20gの錘を装着した。ソフトコンタクトレンズを接着させた接触子を、測定ユニットに取り付け、1秒あたり100回、20秒間測定を行った。測定開始後5〜20秒間の測定結果から得られた摩擦係数の平均値を算出し、その製剤の摩擦係数(μk)とした。
得られた摩擦係数の値について、下記式1を用いて、対応する比較例に対する摩擦低減率(%)を算出した。なお、対応する比較例とは、実施例1−1−1,1−1−2については比較例1−1、実施例1−2については比較例1−2、実施例1−3については比較例1−3、実施例1−4については比較例1−4、実施例1−5については比較例1−5である。
〔式1〕
摩擦低減率(%)=(1−測定するサンプルの摩擦係数/対応する比較例の摩擦係数)×100
Figure 2018203723
ポリビニルピロリドンK90およびホウ酸緩衝剤を含有する組成物を、一定時間装用後のコンタクトレンズに点眼した場合を模した試験において、上記表2の実施例1−1−1とそれに対応する比較例1−1との対比からわかるように、実施例の組成とすることにより、摩擦係数が顕著に低下する傾向が確認された。同様に、ポリビニルピロリドンK90の配合量を変化させた場合、緩衝剤や塩類の種類や濃度、pH等の条件を変化させた場合にも同様に、摩擦低減効果を得られることが確認された。
<試験例2:摩擦低減持続性の評価>
ソフトコンタクトレンズ〔製品名:ワンデーアキュビュー(エタフィルコンA(etafilcon A)、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類:グループIV、ジョンソン&ジョンソン社製)1枚を、リン酸緩衝生理食塩水(塩化ナトリウム:0.8w/v%、リン酸水素ナトリウム12水和物:0.6w/v%、リン酸二水素ナトリウム2水和物:0.053w/v%)ですすぎ、表面に付着した余分な液を拭き取った後に、前記の表1に示す脂質−タンパク質汚れ液を12wellプレート(ポリスチレン製)に2mLずつ充填したものに、1枚ずつ浸漬させ、34℃振とう条件下、36分間保存した(脂質−タンパク汚れ液処理)。
その後、下記表3に記載の各処方液を、12wellプレート(ポリスチレン製)に2mLずつ充填したものを用意し、脂質−タンパク汚れ液処理を行った後のコンタクトレンズを浸漬させ、34℃振とう条件下、15分間保存した。
そして、上記コンタクトレンズの表面を生理食塩水で充分にすすいだ後、新たに、前記表1に示す脂質−タンパク質汚れ液を12wellプレート(ポリスチレン製)に2mLずつ充填したものに、1枚ずつ浸漬させ、34℃振とう条件下、36分間保存した(処方液浸漬後に再度脂質−タンパク汚れ液処理)。
その後、試験例1と同様の条件で、処理済のコンタクトレンズにおける摩擦係数を測定し、前記式1を用いて、摩擦低減率(%)を算出した。
ここで、対応する比較例は、実施例2−1については比較例2−1、実施例2−2については比較例2−2、実施例2−3については比較例2−3である。
Figure 2018203723
上記表3より、処方液浸漬後に再度脂質−タンパク汚れ液で処理したコンタクトレンズにおいても、摩擦係数が低減されている傾向が確認できた。この結果より、装用中のコンタクトレンズにおいて、点眼後一定時間経過した後のコンタクトレンズにおいても摩擦低減効果、すなわち摩擦低減持続効果を奏することが確認できた。
<試験例3:使用感試験(1)>
下記の表4に示す処方例にしたがい、各点眼剤を調製し、内容積14.2mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器に13mL無菌充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製ノズルを装着した。ソフトコンタクトレンズ(製品名:ワンデーアキュビュー(エタフィルコンA(etafilcon A)、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類:グループIV、ジョンソン&ジョンソン社製)を装用した被験者10名において、コンタクトレンズ装用後8時間後に、各点眼剤を、左右の眼にそれぞれ1滴(40μL)ずつ点眼させた。そして、下記の方法にしたがって、点眼後の使用感を項目ごとにVAS(Visual analog scale:視覚的評価スケール)によって評価させ、点眼前後のスコアの変化量(点眼後−点眼前)を求めた。その結果を下記の表4に併せて示した。なお、試験は被験者の左右の目の状態に差がないことを確認した後に実施した。
〔使用感の評価〕
100mmの線が引いてある自覚症状調査シート上に、点眼直後において、
・瞬きが非常にしやすい場合を100mm、瞬きが非常にしにくい場合を0mm、
・異物感を非常に感じる場合を100mm、異物感が全くない場合を0mm、
・コンタクトレンズの装用感が非常に良い場合を100mm、非常に悪い場合を0mm、として、被験者が感じた項目の程度のところに印を付けた。この長さ(mm)をVAS値とした。
すなわち、瞬きのしやすさについては、VAS値の変化量がプラスになるほど、点眼による瞬きのしやすさが改善し、異物感に関してはVAS値がマイナスになるほど、点眼による異物感が低下、すなわち改善し、コンタクトレンズの装用感については、VAS値がプラスになるほど、点眼によるコンタクトレンズの装用感が改善するということになる。
Figure 2018203723
コンタクトレンズ装用8時間後の点眼において、上記表4の実施例3−1においては、比較例3−1と比較して、瞬きのしやすさの変化量が高く、異物感の変化量が低く、コンタクトレンズ装用感の変化量が高いため、実施例の方が点眼によって、より瞬きがしやすく、異物感を解消し、コンタクトレンズ装用感を改善することが確認できた。
また、ポリビニルピロリドンK90が0.05w/v%であること以外は実施例3−1と同様の処方例(実施例3−1')を用いて、同様に試験を行ったところ、比較例3−1と比較して実施例3−1'の方が瞬きをしやすいと感じられる傾向があることが確認できた。
<試験例4:使用感試験(2)>
下記の表5に示す処方例にしたがい、各点眼剤を調製したこと、点眼およびその前後における評価をコンタクトレンズ装用後1時間後にしたこと、試験項目を瞬きのしやすさとコンタクトレンズの装用感のみとしたこと以外は試験例3と同様の方法で、点眼によるそれらの項目に関する変化量を調べた。
Figure 2018203723
コンタクトレンズ装用1時間後の評価において、上記表5の実施例4−1においては、比較例4−1と比較して、瞬きのしやすさの変化量が高く、コンタクトレンズ装用感の変化量が高いため、実施例の方が点眼によって、より瞬きがしやすく、コンタクトレンズ装用感を改善することが確認できた。
なお、1日の点眼回数を5回とした場合、上記実施例群と同様、コンタクトレンズ装用感等を改善することが確認できた。
<製剤例>
下記表6〜9に記載の処方で、常法によりコンタクトレンズ(CL)用点眼剤(製剤例1〜34)を調製する。表中における各成分量の単位は、表中に記載があるもの以外は全て「w/v%」である。
Figure 2018203723
Figure 2018203723
Figure 2018203723
Figure 2018203723
本発明は、装用中のコンタクトレンズ摩擦低減用のコンタクトレンズ用点眼剤として、広く利用することができる。

Claims (9)

  1. (A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有する摩擦低減用であるコンタクトレンズ用点眼剤。
  2. 上記(A)成分がポリビニルピロリドンK90である、請求項1記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  3. 上記(A)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜5w/v%である、請求項1または2に記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  4. 上記(B)成分が、ホウ酸、リン酸、クエン酸およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  5. 上記(B)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜10w/v%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  6. さらに(C)塩類を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  7. 上記(C)成分の含有量が、点眼剤の全量を基準として、0.001〜5w/v%である、請求項6記載のコンタクトレンズ用点眼剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ用点眼剤を用いた使用方法であって、1回の点眼投与量が10〜200μLであるコンタクトレンズ用点眼剤の使用方法。
  9. コンタクトレンズ装用中に、(A)K値が70以上であるポリビニルピロリドンと、(B)緩衝剤とを含有するコンタクトレンズ用点眼剤を点眼することによる、摩擦を低減する方法。
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