JP2018200102A - プーリ構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
つまり、特許文献1のプーリ構造体において、支持溝部の溝内周壁面をエンドミル加工面にすると、溝内周壁面に関するプーリ構造体の品質及び生産性を阻害することになる。
従来のように、溝内周壁面が支持溝部の溝底面に向かうほどその径が大きくなる方向に軸方向に対して傾斜していると、支持溝部の溝底面とねじりコイルばねの他端側領域との接触状態を維持できず、ねじりコイルばねの姿勢が不安定となる場合がある。一方、本発明では、支持溝部の溝底面とねじりコイルばねの他端側領域との接触状態を維持しやすい。よって、ねじりコイルばねの他端側領域における外回転体及び内回転体の他方に対する固定力を増大させることができる。したがって、外回転体と内回転体との相対回転によってねじりコイルばねが拡径方向にねじれた場合に、振動等の外的要因がプーリ構造体に作用しても、ねじりコイルばねの姿勢が安定し、ねじりコイルばねが安定してねじり変形できる。このように、本発明は、従来よりも溝内周壁面に関するプーリ構造体の品質を向上できる。
本発明の第1実施形態に係るプーリ構造体1について、図1〜図4を参照しつつ説明する。プーリ構造体1は、例えば、自動車の補機駆動システム(図示略)において、オルタネータの駆動軸S(図1参照)に取り付けられる。補機駆動システムは、エンジンのクランク軸に取り付けられた駆動プーリと、オルタネータ等の補機を駆動する従動プーリ及びプーリ構造体1と、これらプーリ及びプーリ構造体1に巻回されたベルトB(図1参照)とを含む。クランク軸の回転がベルトBを介して従動プーリ及びプーリ構造体1に伝達されることで、オルタネータ等の補機が駆動される。クランク軸の回転速度がエンジンの燃焼に応じて変動するのに伴い、ベルトBの走行速度も変動する。
また、外回転体2の他端の内周面は、段付内周面になっている。内回転体3の外筒部3bの外周面は、前記段付内周面に対向する向きの段付外周面になっている。これにより、滑り軸受6は、径方向及び軸方向に保持される。
これらにより、滑り軸受6は若干縮径された状態で、かつ、スリット部に隙間がほとんど生じていない状態で、外回転体2の他端(内周面)に組付けられる(圧入して装着される)。このため、滑り軸受6の拡径方向の自己弾性復元力によって、滑り軸受6は、外回転体2の他端の内周面に圧接し、外回転体2に対して相対回転不能となり、滑り軸受6の内面が、滑り軸受6における摺動面として機能する。
この場合、仮に、滑り軸受6のスリット部に隙間が明らかに生じている状態では、外回転体2の回転時に、外回転体2が起振され、異音が発生することが考えられるが、本実施形態のように、滑り軸受6のスリット部に隙間がほとんど生じていない状態にすることによって、外回転体2の回転時に、外回転体2が起振され、異音が発生するのを抑制できる。
支持溝部3xの溝内周壁面3axは、旋盤加工面である。つまり、旋盤加工によって完成寸法に形成され(仕上げ加工される)。旋盤加工とは、ワーク(例えば内回転体となる部品)を回転させながら、バイトと呼ばれる工具の先端部に固定されたチップ(刃物)を加工面に押し当てて、ワークを切削する加工である。
そのため、従来のように溝内周壁面をエンドミル加工によって完成寸法に形成する(仕上げ加工する)場合と比べて、切削速度に依らず刃物剛性が高いため、この溝内周壁面3axを完成寸法どおりに精度よく形成できる。つまり、従来のように、溝内周壁面をエンドミル加工によって完成寸法に形成する(仕上げ加工する)場合には、刃物の移動速度を充分に落とさないと、溝内周壁面が支持溝部の溝底面に向かうほどその径が大きくなる方向に軸方向に対して傾斜してしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、溝内周壁面3axを旋盤加工によって完成寸法に形成する(仕上げ加工する)ため、溝内周壁面3axが支持溝部3xの溝底面3cxに向かうほどその径が大きくなる方向に軸方向に対して傾斜してしまうことがない。
もし、溝内周壁面が支持溝部の溝底面に向かうほどその径が大きくなる方向に軸方向に対して傾斜していると、支持溝部の溝底面とねじりコイルばねの他端側領域との接触状態を維持できず、ねじりコイルばねの姿勢が不安定となる場合がある。一方、本実施形態では、支持溝部3xの溝底面3cxとねじりコイルばね4の他端側領域4bとの接触状態を維持しやすい。よって、ねじりコイルばね4の他端側領域4bにおける内回転体3に対する固定力を増大させることができる。したがって、外回転体2と内回転体3との相対回転によってねじりコイルばね4が拡径方向にねじれた場合に、振動等の外的要因がプーリ構造体1に作用しても、ねじりコイルばね4の姿勢が安定し、ねじりコイルばね4が安定してねじり変形できる。このように、本実施形態は、従来よりも溝内周壁面3axに関するプーリ構造体の品質を向上できる。
次に、本発明の第2実施形態について図5及び図6を用いて説明する。
支持溝部203xの溝内周壁面203axは、支持溝部203xの溝底面に向かうほど径が小さくなるように、軸方向に対して傾斜する傾斜面である。この構成によると、ねじりコイルばね4の他端側領域4bの内周面が、縮径方向の自己弾性復元力によって、軸方向に対して傾斜する溝内周壁面203ax(傾斜面203ax)に圧接される。この圧接力は、傾斜面203axに沿って溝底面3cxに向かう方向の分力と、傾斜面203axに垂直な方向の分力に分けられる。そのため、ねじりコイルばね4が拡径方向にねじれる過程において、ばね4の他端側領域4bのうち、まだ傾斜面203axから離れずに、縮径方向の自己弾性復元力によって傾斜面203axに圧接されている部分は、傾斜面203axに沿った方向の分力によって、支持溝部203xの溝底面3cx側に押圧される。そのため、ねじりコイルばね4の他端側領域4bを支持溝部203xの溝底面3cxに押し付ける力が増し、ねじりコイルばね4の他端側領域4bが支持溝部203xの溝底に押し付けられたまま離れない状態が維持され易くなる。したがって、ねじりコイルばね4の他端側領域4bにおける内回転体3に対する固定力をさらに増大させることができる。その結果、外回転体2と内回転体3との相対回転によってねじりコイルばね4が拡径方向にねじれた場合に、振動等の外的要因がプーリ構造体201に作用しても、ねじりコイルばね4の姿勢がより安定し、ねじりコイルばね4がより安定してねじり変形できる。
実施例1のプーリ構造体は、上述の第1実施形態のプーリ構造体1と同じ構造とした。つまり、実施例1の溝内周壁面(3ax)の傾斜角度は、プーリ構造体(1)に外力が付与されていない状態において、0°であった。実施例2のプーリ構造体は、上述の第2実施形態のプーリ構造体201と同じ構造とした。ここで、溝内周壁面(203ax)が支持溝部(203x)の溝底面(3cx)に向かうほど径が小さくなるように軸方向に対して傾斜するときの軸方向に対する傾斜角度を正とする。実施例2の溝内周壁面(203ax)の傾斜角度(α)は、プーリ構造体(201)に外力が付与されていない状態において、1°であった。
従来例1及び比較例1のプーリ構造体の溝内周壁面は、エンドミル加工面とした。図7(a)に示すように、従来例1の支持溝部80xの溝内周壁面80axの傾斜角度は、プーリ構造体に外力が付与されていない状態において、0°であった。図7(b)に示すように、比較例1の支持溝部90xの溝内周壁面90axの傾斜角度は、プーリ構造体に外力が付与されていない状態において、−0.3°であった。つまり、比較例1の溝内周壁面90axは、支持溝部90xの溝底面90cxに向かうほど径が大きくなるように軸方向に対して傾斜する。また、図8に示すように、従来例1及び比較例1の支持溝部80x、90xにおいて、溝内周壁面80ax、90axと溝外周壁面80bx、90bxは溝端壁面80dx、90dxでつながっており、図2に示す溝3fのような溝は形成されていない。これらの構成以外は、従来例1及び比較例1のプーリ構造体の構成は、実施例1、2のプーリ構造体の構成と同じとした。
まず、上述の第1実施形態(実施例1)及び第2実施形態(実施例2)と同じく、ワークに対して、複合旋盤等の工作機械を用いて、エンドミル加工で切削加工(粗加工)を行った。これにより、支持溝部80x、90xの溝内周壁面80ax、90ax以外の部分を、完成寸法に形成した。
次に、ワークを工作機械にセットした状態のままで、エンドミル加工で切削加工(仕上げ加工)して、溝内周壁面80ax、90axを、完成寸法に形成した。従来例1及び比較例1では、ワークを回転させる旋盤加工を行っていないため、溝3f(図2参照)のような溝は形成されない。
従来例1では、溝内周壁面80axの仕上げ加工の際、刃物剛性が確保できる程度まで、刃物(エンドミル)の移動速度を充分に落として溝内周壁面80axを仕上げた。それにより、従来例1の溝内周壁面80axは、完成寸法通り、軸方向と平行な面に形成された。
比較例1では、溝内周壁面90axの仕上げ加工の際、従来例1よりも4割強も速い刃物(エンドミル)の移動速度で切削加工された。このため、比較例1の溝内周壁面90axは、軸方向に平行な面として加工指図されていても、加工時の刃物剛性不足により、溝内周壁面90axは溝底面90cxに向かうほどその径が大きくなる方向(負の方向)に、軸方向に対して若干(0.3°)傾斜した面に形成されてしまった。
[1]溝内周壁面の傾斜角度(品質)
実施例1、2、従来例1及び比較例1の溝内周壁面の傾斜角度の計測値の評価結果を表1に示す。評価の判定基準は、以下の通りである。
傾斜角度が、負の方向の角度、つまり溝内周壁面が溝底面に向かうほどその径が大きくなる方向に、軸方向に対し傾斜している場合は、評価×とした。評価×にする理由は、この場合、溝底面からねじりコイルばねの他端側領域が離れ易くなり、振動等の外的要因によって、ねじりコイルばねが安定してねじり変形(拡径変形)できない虞があるからである。傾斜角度が、0°以上0.5°未満である場合は、評価〇とした。評価〇とする理由は、ねじりコイルばねの他端側領域に対する溝底面への押し付け力を増す効果は比較的小さいものの、溝底面からねじりコイルばねの他端側領域が離れ易くなる虞は極めて小さいと考えられるからである。傾斜角度が、0.5°以上1°以下である場合は、評価◎とした。評価◎とする理由は、上記押し付け力を増す効果が大きく、振動等の外的要因がプーリ構造体に作用しても、ねじりコイルばねが安定してねじり変形(拡径変形)できる効果が得られる可能性が高く、且つ、ねじりコイルばねの素線倒れが生じる虞が極めて小さいと考えられるからである。傾斜角度が、1°を超えた場合は、評価△とした。評価△とする理由は、上記押し付け力を増す効果がさらに大となるが、ねじりコイルばねの素線倒れが生じる虞があるからである。
実施例1、2、従来例1及び比較例1について、溝内周壁面の仕上げ加工時間を測定し、従来例1に係る溝内周壁面の仕上げ加工時間を100とした場合の相対値(指数)をそれぞれ算出した。各例の指数とその評価結果を表2に示す。なお、実施例1、2における溝内周壁面の仕上げ加工時間とは、旋盤加工の合計時間、つまり、溝加工用チップを用いた切削加工に要した時間と、仕上げ加工用チップを用いた切削加工に要した時間の合計時間である。指数が小さいほど、溝内周壁面の仕上げ加工時間が短いことを示す。評価の判定基準は、以下の通りである。
仕上げ加工時間の指数が、120以上(即ち、100を上回るレベル)の場合は、評価×とした。仕上げ加工時間の指数が、80より大きく120未満(即ち、100と同レベル)の場合は、評価△とした。仕上げ加工時間の指数が、50より大きく80以下(即ち、100を大幅ではないが明らかに下回るレベル)の場合は、評価○とした。仕上げ加工時間の指数が、50未満(即ち、100を大幅に下回るレベル)の場合は、評価◎とした。この場合、仕上げ加工時間を短縮する効果が最も大きい。
実施例1、2、従来例1及び比較例1について、溝内周壁面の仕上げ加工用刃物の交換頻度を測定し、従来例1に係る仕上げ加工用刃物の交換頻度を1/100とした場合の相対値をそれぞれ算出した。各例の指数とその評価結果を表3に示す。なお、交換頻度の指数1/100は、ワークの個数の指数100に対して1個の割合で刃物を交換することを意味する。指数の値が小さいほど、溝内周壁面の仕上げ加工用刃物の交換頻度が低いことを示す。評価の判定基準は、以下の通りである。
交換頻度の指数が、1/80以上(即ち、1/100を上回るレベル)の場合、評価×とした。交換頻度の指数が、1/120より大きく1/80未満(即ち、1/100と同レベル)の場合、評価△とした。交換頻度の指数が、1/200より大きく1/120以下(即ち、1/100を明らかに下回るレベル)の場合、評価○とした。交換頻度の指数が、1/200以下(即ち、1/100顕著に下回るレベル)を、評価◎とした。この場合、仕上げ加工用刃物の交換頻度の抑制する効果が最も大きい。
3つの項目のうち1つでも評価×が含まれていた場合には、総合評価×とした。3つの項目の評価が△、○、◎のいずれかであって、1つでも評価△が含まれていた場合には、総合評価△とした。3つの項目の評価が○、◎のいずれかであって、1つでも評価○が含まれていた場合には、総合評価○とした。3つの項目の評価が全て◎の場合、総合評価◎とした。
また、溝内周壁面が、支持持溝部の溝底面に向かうほどその径が小さくなるように、軸方向に対して傾斜する旋盤加工面とした実施例2は、溝内周壁面が軸方向と平行に形成された旋盤加工面とする実施例1と比べて、同等のプーリ構造体の生産性を維持しつつ、プーリ構造体の品質を向上できる可能性がある。即ち、ねじりコイルばねが拡径変形した場合、振動等の外的要因がプーリ構造体に作用しても、ねじりコイルばねの姿勢がより安定し、ねじりコイルばねがより安定してねじり変形できる可能性がある。
2 外回転体
3 内回転体
3x、203x 支持溝部
3ax、203ax 溝内周壁面
3cx 溝底面
4 ねじりコイルばね
4a 一端側領域
4b 他端側領域
4c 中領域
B ベルト
Claims (2)
- ベルトが巻回される筒状の外回転体と、
前記外回転体の内側に設けられ、前記外回転体に対して前記外回転体と同一の回転軸を中心として相対回転可能な内回転体と、
前記外回転体と前記内回転体との間に設けられたねじりコイルばねとを備えたプーリ構造体であって、
前記ねじりコイルばねは、前記回転軸に沿った軸方向に圧縮されており、前記軸方向の一端側で前記外回転体及び前記内回転体の一方に接触する一端側領域と、前記軸方向の他端側で、前記プーリ構造体に外力が付与されていない状態において前記外回転体及び前記内回転体の他方に接触する他端側領域と、前記一端側領域及び前記他端側領域の間であって、前記プーリ構造体に外力が付与されていない状態において前記外回転体及び前記内回転体のいずれにも接触しない中領域とを有し、
前記外回転体及び前記内回転体の他方は、前記ねじりコイルばねの前記他端側領域を前記軸方向及び前記回転軸の径方向に支持する支持溝部を有し、
前記支持溝部は、前記プーリ構造体に外力が付与されていない状態において前記ねじりコイルばねの前記他端側領域の内周面と接触する溝内周壁面を有し、
前記外回転体と前記内回転体との相対回転によって前記ねじりコイルばねが拡径方向にねじれた場合に、前記ねじりコイルばねの前記他端側領域の少なくとも一部分が前記外回転体及び前記内回転体の他方から離れるように構成されており、
前記支持溝部の前記溝内周壁面が、旋盤加工面である、ことを特徴とする、プーリ構造体。 - 前記支持溝部の前記溝内周壁面が、前記支持溝部の溝底面に向かうほど径が小さくなるように、前記軸方向に対して傾斜する傾斜面であることを特徴とする、請求項1に記載のプーリ構造体。
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