JP2018200036A - 内燃機関の可変動弁装置 - Google Patents

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崇史 高尾
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Abstract

【課題】内部EGRのための新規な可変機構の動作方法を実現する。【解決手段】内燃機関の可変動弁装置は、排気弁の開弁時期を可変とするための可変機構と、可変機構を制御するように構成された制御ユニットとを備える。制御ユニットは、内燃機関の排気行程中に排気弁の開弁時期を進角させて排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、可変機構を進角動作させる。【選択図】図4

Description

本発明は内燃機関の可変動弁装置に係り、特に、内燃機関の排気弁のバルブタイミングを変更するための可変動弁装置に関する。
内燃機関の排気弁のバルブタイミングを可変とするための可変機構(排気VVTという)が公知である(例えば特許文献1参照)。この排気VVTを備えた内燃機関においては、排気弁の開弁時期が内燃機関の運転状態に応じて適切に制御される。
特開平10−252575号公報 特開2000−204984号公報 特開2016−011589号公報
他方、内燃機関において、NOx(窒素酸化物)およびPM(排気微粒子:Particulate Matter)の低減を目的として、いわゆる内部EGRを行うことがある。内部EGRは、燃焼室内部に残留する排気ガス量を増加するものである。内部EGRを積極的に行うため、排気弁のバルブタイミングを進角または遅角することがある。内部EGRは、排気通路から吸気通路へ配管を通じて排気ガスを環流させる外部EGRとは対照的である。
排気VVTを内部EGRのために進角動作させる場合、通常は、あるエンジンサイクルから一乃至複数回後のエンジンサイクルまでの間に、進角動作を行い、その後、その進角状態を保持するという動作方法が一般的である。
これに対し、本発明者は、内部EGRのための従来と異なる新規な排気VVTの動作方法を着想するに至った。
そこで本発明は、上記事情に鑑みて創案され、その目的は、内部EGRのための新規な可変機構の動作方法を実現できる内燃機関の可変動弁装置を提供することにある。
本発明の一の態様によれば、
排気弁の開弁時期を可変とするための可変機構と、
前記可変機構を制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
内燃機関の排気行程中に前記排気弁の開弁時期を進角させて排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、前記可変機構を進角動作させる
ことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置が提供される。
好ましくは、前記制御ユニットは、前記可変機構を進角動作させる際、前記可変機構の所定の遅角位置から所定の進角位置まで、前記可変機構を進角動作させる。
好ましくは、前記所定の遅角位置が最遅角位置であり、前記所定の進角位置が最進角位置である。
好ましくは、前記制御ユニットは、前記可変機構を進角動作させる際、前記排気弁がリフト中でかつ最大リフトに達する前に、前記可変機構の進角動作を開始する。
好ましくは、前記制御ユニットは、前記可変機構の進角動作を排気行程中に終了する。
好ましくは、前記制御ユニットは、前記可変機構の進角動作後に前記排気弁が閉弁した後、次の膨張行程前に前記排気弁の開弁時期を進角前の元の時期に戻すよう、前記可変機構を遅角動作させる。
好ましくは、前記可変機構は、クランクシャフトに連結された回転可能なハウジングと、排気カムシャフトに連結され、前記ハウジング内に相対回転可能に配置されたロータとを備える。
本発明によれば、内部EGRのための新規な可変機構の動作方法を実現できる。
内燃機関を示す概略図である。 可変機構を示す断面図である。 図2のIII−III断面図である。 排気弁バルブタイミングの変化の様子を示すグラフである。 制御ルーチンのフローチャートである。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し本発明は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
図1は、本実施形態の可変動弁装置が適用された内燃機関を示す。内燃機関(エンジンともいう)1は、車両(図示せず)に搭載された多気筒エンジンである。本実施形態において、車両はトラック等の大型車両であり、これに搭載される車両動力源としてのエンジン1は直列4気筒ディーゼルエンジンである。しかしながら、車両および内燃機関の種類、形式、用途等に特に限定はなく、例えば車両は乗用車等の小型車両であってもよいし、エンジン1はガソリンエンジンであってもよい。
エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2に接続された吸気通路3および排気通路4と、ターボチャージャ14と、燃料噴射装置5とを備える。エンジン本体2は、シリンダヘッド、シリンダブロック、クランクケース等の構造部品と、その内部に収容されたピストン、クランクシャフト、バルブ等の可動部品とを含む。
燃料噴射装置5は、コモンレール式燃料噴射装置からなり、各気筒に設けられた燃料噴射弁すなわちインジェクタ7と、インジェクタ7に接続されたコモンレール8とを備える。インジェクタ7は、シリンダ9内すなわち燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内インジェクタである。コモンレール8は、インジェクタ7から噴射される燃料を高圧状態で貯留する。
吸気通路3は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド)に接続された吸気マニホールド10と、吸気マニホールド10の上流端に接続された吸気管11とにより主に画成される。吸気マニホールド10は、吸気管11から送られてきた吸気を各気筒の吸気ポートに分配供給する。吸気管11には、上流側から順に、エアクリーナ12、エアフローメータ13、ターボチャージャ14のコンプレッサ14C、インタークーラ15、および電子制御式の吸気スロットルバルブ16が設けられる。エアフローメータ13は、エンジン1の単位時間当たりの吸入空気量すなわち吸気流量を検出するためのセンサであり、マスエアフロー(MAF)センサ等とも称される。
排気通路4は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド)に接続された排気マニホールド20と、排気マニホールド20の下流側に接続された排気管21とにより主に画成される。排気マニホールド20は、各気筒の排気ポートから送られてきた排気ガスを集合させる。排気管21、もしくは排気マニホールド20と排気管21の間には、ターボチャージャ14のタービン14Tが設けられる。タービン14Tより下流側の排気通路4には、上流側から順に、酸化触媒22、フィルタ23、選択還元型NOx触媒(SCR)24およびアンモニア酸化触媒26が設けられる。これらは排気後処理を実行する後処理部材をなす。フィルタ23とNOx触媒24の間の排気通路4には、還元剤としての尿素水を添加する添加弁25が設けられる。
酸化触媒22は、排気中の未燃成分(炭化水素HCおよび一酸化炭素CO)を酸化して浄化すると共に、このときの反応熱で排気ガスを加熱昇温する。フィルタ23は、所謂連続再生式ディーゼルパティキュレートフィルタであり、排気中に含まれる粒子状物質(PMとも称す)を捕集すると共に、その捕集したPMを貴金属と反応させて連続的に燃焼除去する。フィルタ23には、ハニカム構造の基材の両端開口を互い違いに市松状に閉塞した所謂ウォールフロータイプのものが用いられる。
NOx触媒24は、添加弁25から添加された尿素水に由来するアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元浄化する。アンモニア酸化触媒26は、NOx触媒24から排出された余剰アンモニアを酸化して浄化する。なおNOx触媒24は吸蔵還元型NOx触媒(LNT)であってもよい。
エンジン1はEGR装置30をも備える。EGR装置30は、排気通路4内(特に排気マニホールド20内)の排気ガスの一部(EGRガスという)を吸気通路3内(特に吸気マニホールド10内)に還流させるためのEGR通路31と、EGR通路31を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ32と、EGRガスの流量を調節するためのEGR弁33とを備える。EGR装置30は外部EGRを実行するためのものである。
加えて本実施形態は、排気弁(図示せず)の開弁時期(開弁開始時期をいう)を可変とするための可変機構36(所謂排気VVT)を備える。本実施形態の場合、排気弁の最大リフトおよび作動角を一定に保ったまま、開弁時期および閉弁時期(開弁終了時期をいう)を連続的に可変とするよう、可変機構36が構成されている。その作動特性については後に詳述する。
また、本実施形態は、それぞれ排気通路4に設けられた電子制御式の排気スロットルバルブ37と、排気インジェクタ38とを備える。本実施形態において、これらはタービン14Tと酸化触媒22の間の排気通路4に設けられ、排気スロットルバルブ37より下流側に排気インジェクタ38が配置される。但しこれらの設置位置は変更可能である。排気インジェクタ38は、排気通路4内に燃料を噴射するためのインジェクタである。
このエンジン1を制御するための制御装置が車両に搭載されている。制御装置は、制御ユニットもしくはコントローラをなす電子制御ユニット(ECUと称す)100を有する。ECU100はCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含む。ECU100は、筒内インジェクタ7、吸気スロットルバルブ16、添加弁25、EGR弁33、可変機構36、排気スロットルバルブ37および排気インジェクタ38を制御するように構成され、プログラムされている。なお特に断らない限り、吸気スロットルバルブ16および排気スロットルバルブ37は全開に制御されているものとする。
制御装置は、以下のセンサ類も有する。このセンサ類に関して、上述のエアフローメータ13の他、エンジンの回転速度、具体的には毎分当たりの回転数(rpm)を検出するための回転速度センサ40と、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ41とが設けられる。また、酸化触媒22、フィルタ23、NOx触媒24およびアンモニア酸化触媒26の各々の入口部の排気温度(入口ガス温度)を検出するための排気温センサ42,43,44,46が設けられている。また、フィルタ23の入口部および出口部の排気圧の差圧を検出するための差圧センサ45が設けられている。また、運転者により手動操作される手動再生スイッチ47が設けられている。これらセンサ類の出力信号はECU100に送られる。
図2および図3に可変機構36の構成を示す。本実施形態のエンジンは4バルブDOHCエンジンであり、吸気弁を駆動するための吸気カムシャフトと、排気弁を駆動するための排気カムシャフト102とを備える。本実施形態の可変機構36は排気カムシャフト102に適用され、全気筒の排気弁のバルブタイミングを一律且つ同時に変更するよう構成されている。但し付加的に、別の可変機構が吸気カムシャフトに適用されてもよい。
図2において、排気カムシャフト102の中心軸C1の方向(軸方向)における一端側(図の左側)を前、他端側(図の右側)を後とする。これら前後方向は、エンジンおよび車両の前後方向と一致する(エンジンは縦置きされる)。但し必ずしも一致しなくてもよい。
排気カムシャフト102の外周部には管状の軸受部材121が回転可能に嵌合されている。軸受部材121は、下側のカムキャリア123と、上側のシリンダヘッド124との間に挟まれてラジアル方向に回転可能に支持される。軸受部材121には、カムキャリア23およびシリンダヘッド124を軸方向に挟んで自身をスラスト方向に位置決めするフランジ125,126が設けられる。
排気カムシャフト102の後端部には、クランクシャフトに対する排気カムシャフト102の相対的な回転位相を変化させるための可変機構36が設けられる。可変機構36は、軸受部材121に同軸に固設されたハウジング131と、排気カムシャフト102に同軸に固設されたロータ132とを有する。
図3にも示すように、ハウジング131は、軸受部材121の後端に形成されたフランジ部133と、フランジ部133の後面に複数(4本)のボルト134により組み付けられ、ドリブンギヤ104と共締めされる管状のハウジング本体135とを有する。ドリブンギヤ104に、図示しないギヤ列からなる動力伝達機構を通じて、クランクシャフトからの回転駆動力が伝達される。ロータ132は、排気カムシャフト102の後端部にインロー嵌合され、中心軸C1上のボルト136により組み付けられる。137は、ドリブンギヤ104の中心穴138を塞ぐワッシャである。ロータ132はハウジング131内に相対回転可能に配置される。
図3に示すように、ハウジング131には半径方向内側に突出する複数(4つ)のハウジングベーン141が周方向等間隔で形成され、これらハウジングベーン141の間に油圧室142が形成される。他方、ロータ132には半径方向外側に突出する複数(4つ)のロータベーン143が周方向等間隔で設けられ、これらロータベーン143は各油圧室142を回転方向(図中矢示)の前後に仕切る。なお図示例ではロータベーン143をロータ132に一体に形成しているが、ロータベーン143をロータ132と別体で形成し、ロータ132に固定しても構わない。ロータベーン143をより単純な板状としてもよい。仕切られた油圧室142のうち、回転方向後方に位置するのは進角室144であり、回転方向前方に位置するのは遅角室145である。進角室144の油圧が遅角室145の油圧より高くなると、ロータ132がハウジング131に対し進角され、ひいては排気カムシャフト102がクランクシャフトに対し進角される。他方、遅角室145の油圧が進角室144の油圧より高くなると、ロータ132がハウジング131に対し遅角され、ひいては排気カムシャフト102がクランクシャフトに対し遅角される。
図2に示すように、排気カムシャフト102には排気カム147が圧入等により固定されている。本実施形態では、1気筒当たりに二つの排気カム147および排気弁が設けられる。他方、図示しないが吸気側においても、1気筒当たりに二つの吸気カムおよび吸気弁が設けられ、所謂4バルブエンジンの構成がなされている。これらカムはロッカーアームを介してバルブを駆動する。ここでバルブとは吸気弁および排気弁の総称をいう。
なお、本実施形態では吸気側に可変機構が設けられないので、吸気弁は一定のバルブタイミングで開閉動作を行う。
ロータ132の内部には、進角室144に連通された進角用第1オイル通路151と、遅角室145に連通された遅角用第1オイル通路152とが形成される。排気カムシャフト102の内部には、進角用第1オイル通路151に連通された進角用第1内側油穴153と、遅角用第1オイル通路152に連通された遅角用第1内側油穴154とが形成される。これら油穴153,154の入口部には、それぞれ、排気カムシャフト102の外表面部に形成された周溝155,156が設けられる。軸受部材121の内部には、周溝155を介して進角用第1内側油穴153に連通された進角用第1外側油穴157と、周溝156を介して遅角用第1内側油穴154に連通された遅角用第1外側油穴(図示せず)とが形成される。これら油穴の入口部には、それぞれ、軸受部材121の外表面部に形成された周溝159,160が設けられる。このように排気カムシャフト102および軸受部材121に形成された進角用および遅角用の油穴等を総称して進角用第1中間通路および遅角用第1中間通路という。
シリンダヘッド124の内部には、進角用第1中間通路に連通された進角用第1オイル供給穴161が形成される。進角用第1オイル供給穴161は周溝159に開口している。またカムキャリア123の内部には、遅角用第1中間通路に連通された遅角用第1オイル供給穴162が形成される。遅角用第1オイル供給穴162は周溝160に開口している。
進角用第1オイル供給穴161および遅角用第1オイル供給穴162には、シリンダブロックに形成されたオイルギャラリ163内の高圧の油圧が、オイルコントロールバルブ(OCVという)164を介して選択的に供給される。OCV164はECU100により制御される。
進角時、ECU100は、進角用第1オイル供給穴161に油圧を供給し、進角用第1中間通路および進角用第1オイル通路151を通じて進角室144に油圧を供給するよう、OCV164を制御する。また同時に、ECU100は、遅角用第1オイル供給穴162から油圧を排出し、遅角用第1中間通路および遅角用第1オイル通路152を通じて遅角室145から油圧を排出するよう、OCV164を制御する。これにより、進角室144の油圧が遅角室145の油圧より高くなり、可変機構36が進角動作される。
他方、遅角時、ECU100は、遅角用第1オイル供給穴162に油圧を供給し、遅角用第1中間通路および遅角用第1オイル通路152を通じて遅角室145に油圧を供給するよう、OCV164を制御する。また同時に、ECU100は、進角用第1オイル供給穴161から油圧を排出し、進角用第1中間通路および進角用第1オイル通路151を通じて進角室144から油圧を排出するよう、OCV164を制御する。これにより、遅角室145の油圧が進角室144の油圧より高くなり、可変機構36が遅角動作される。
また、クランクシャフトに対する排気カムシャフト102の相対位相を一定に保持するときには、ECU100は、進角用第1オイル供給穴161および遅角用第1オイル供給穴162の両方に油圧を供給し、進角室144および遅角室145の両方に油圧を供給するよう、OCV164を制御する。これにより、進角室144の油圧と遅角室145の油圧とが等しくなり、クランクシャフトに対する排気カムシャフト102の相対位相は一定に保持される。
次に、本実施形態の制御について説明する。
図4は、ある1気筒の排気弁のバルブタイミング変化の様子を示す。横軸はクランク角θ(°CA)、縦軸はバルブリフトLである。クランク角増大方向である右側が遅角側、クランク角減少方向である左側が進角側である。TDCおよびBDCは上死点および下死点を意味する。
可変機構36の動作により、排気弁のバルブタイミングは、線aで示す最遅角状態から線bで示す最進角状態まで連続的に可変である。ここでは線aで示す最遅角状態を基準状態とし、この基準状態からバルブタイミングを所定量進角させる。なお前述したように排気弁は、その最大リフトおよび作動角(開弁時期から閉弁時期までの間のクランク角の大きさ)を一定に保ったまま、その開弁時期(開弁開始時期をいう)および閉弁時期(開弁終了時期をいう)が連続的に変化させられる。最遅角状態から最進角状態までの最大進角量は、種々の制約や条件等を考慮して任意に定めることができる。図には参考までに吸気弁のバルブリフトカーブも線cで示す。
線aの排気弁の最遅角状態は、可変機構36が最遅角位置にあるときに実現される。可変機構36の最遅角位置とは、図3を参照して、ロータ132がハウジング131に対し矢示回転方向の最も後方(遅角側)に位置され、ロータベーン143の回転方向後面がハウジングベーン141の回転方向前面に当接した可変機構36の位置ないし状態をいう。
同様に、線bの排気弁の最進角状態は、可変機構36が最進角位置にあるときに実現される。可変機構36の最進角位置とは、図3を参照して、ロータ132がハウジング131に対し矢示回転方向の最も前方(進角側)に位置され、ロータベーン143の回転方向前面がハウジングベーン141の回転方向後面に当接した可変機構36の位置ないし状態をいう。
線aの最遅角状態にあるときの排気弁の開弁時期はOa、閉弁時期はCaである。同様に、線bの最進角状態にあるときの排気弁の開弁時期はOb、閉弁時期はCbである。線cで示すように吸気弁の開弁時期はOc、閉弁時期はCcである。
本実施形態において、開弁時期Oa、Obは共に膨張行程内にある。閉弁時期Caは吸気行程内にあり、吸気弁開弁時期Ocと排気TDC(θ=360°CA)を挟んで対称的な時期にあり、比較的大きな吸排気弁オーバーラップを実現する。閉弁時期Cbも吸気行程内にあるが、排気TDCに近く、比較的小さな吸排気弁オーバーラップしか実現しない。
なお、これら各弁の開弁時期および閉弁時期はあくまで一例であり、適宜変更可能である。
さて、本実施形態は、基準の最遅角状態(a)のときよりも内部EGR量を増すため、次の制御を実行する。すなわち、ECU100は、図4に矢印dで示すように、エンジンの排気行程中に排気弁の開弁時期を進角させて排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、可変機構36を進角動作させる。
これについて以下詳述する。排気弁の開弁前、例えば圧縮TDC(θ=0°CA)の時点において、可変機構36は最遅角位置に制御されている。その後エンジンの運転により、クランク角θが、最遅角位置に対応する開弁時期Oaに達すると、排気弁が開き始める。なおエンジン運転中のクランク角θの値は、クランクシャフトの回転に応じてパルス信号を発生する回転速度センサ40の出力に基づき、ECU100が常時モニタしている。
次にクランク角θが、排気行程中の進角開始時期ADに達した時、ECU100は、可変機構36の進角動作を開始する。このときECU100は、図4に矢印dで示すように、排気弁の開弁時期を最進角状態の開弁時期Obに進角させ、排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、可変機構36を最進角位置に進角動作させる。特にECU100は、排気弁の開弁時期を開弁時期Oaから開弁時期Obに瞬時に進角させるよう、可変機構36を瞬時に、もしくはハード上許容される最高の動作速度で、進角動作させる。
仮にこうした進角動作が一瞬で行われるなら、排気弁のバルブリフトカーブは実線eで示す如くなる。しかし実際には一瞬での動作は不可能なので、できるだけ実線eに近いバルブリフトカーブが得られるよう、可変機構36が瞬時にもしくは最速で進角動作される。
このようにECU100は、可変機構36を進角動作させる際、可変機構36を最遅角位置から最進角位置まで進角動作させる。
進角開始時期ADは、最遅角状態のバルブリフトカーブ(a)と最進角状態のバルブリフトカーブ(b)とが交差するクランク角に設定されている。より詳細には、進角開始時期ADは、最遅角状態のバルブリフトカーブ(a)のリフト増大区間と、最進角状態のバルブリフトカーブ(b)のリフト減少区間との交点が存在するクランク角に設定されている。また進角開始時期ADは排気行程内に設定されている。
従ってECU100は、可変機構36を進角動作させる際、排気弁がリフト中でかつ最大リフトに達する前に、可変機構36の進角動作を開始する。
またECU100は、可変機構36の進角動作を排気行程中に終了する。より詳細には、ECU100は、クランク角θが排気TDC(θ=360°CA)に到達する以前の比較的早い時期に可変機構36の最進角位置への進角動作を終了させる。
こうした進角動作を行うと、クランク角θが進角開始時期ADに達するまでは、排気弁は最遅角状態のバルブリフトカーブ(a)に沿って徐々にリフト量を増大する。またクランク角θが進角開始時期ADに達すると、瞬時的な進角動作が行われるので、排気弁は最進角状態のバルブリフトカーブ(b)に乗り移り、これに沿って徐々にリフト量を減少する。そして閉弁時期Cbで閉弁する。
前述の排気弁開弁量は、排気弁のバルブリフトLをクランク角θで積分(もしくは積算)して得られるパラメータである。バルブリフトLが大きいほど、また積分期間が長いほど、排気弁開弁量が大きくなるが、このときには排気弁を通過して排気ガスが燃焼室から排気ポートに流出し易く、内部EGR量は減少する傾向にある。逆に、バルブリフトLが小さいほど、また積分期間が短いほど、排気弁開弁量が小さくなるが、このときには排気弁を通過して排気ガスが燃焼室から排気ポートに流出し難く、内部EGR量は増大する傾向にある。従って排気弁開弁量は、内部EGR量に相関する好適なパラメータといえる。
線aと線eを比較すれば明らかなように、ピストンが上昇する排気行程中(180°CA≦θ≦360°CA)の排気弁開弁量は、基準の最遅角状態(a)より、本実施形態の進角制御を行った場合(e)の方が少ない。よって本実施形態の進角制御を行うことにより、基準の最遅角状態に比べ、内部EGR量を増加することができる。そして筒内燃焼室からの排気ガスの流出を抑制すると共にその残留を促進し、次の膨張行程で燃焼される残留ガス量を増大し、NOxおよびPMの低減を図れる。
他方、排気弁の閉弁後は、次のエンジンサイクルで最遅角状態から排気弁の開弁を開始するため、元の最遅角位置に可変機構36を戻しておく必要がある。よってECU100は、排気弁閉弁後、次の膨張行程前に排気弁の開弁時期を進角前の元の時期に戻すよう、可変機構36を遅角動作させる。これにより次のエンジンサイクルでの開弁および進角動作を支障なく行うことができる。
このように本実施形態では、可変機構36の進角動作と遅角動作とがエンジンサイクル毎に繰り返し行われる。
ところで排気行程中の可変機構36の進角動作は、可変機構36の所定且つ任意の遅角位置から、可変機構36の所定且つ任意の進角位置まで行うことができる。本実施形態は当該遅角位置が最遅角位置、当該進角位置が最進角位置の場合であるが、こうすると次の利点がある。すなわち、本実施形態の進角動作は排気行程中の極短い時間内に瞬時に行わなければならないが、進角後の位置を最進角位置とすると、ロータベーン143がハウジングベーン141にぶつかるまで、進角を行うことができるので、進角速度を高速化してもロータ132を容易かつ正確に位置決めできる利点がある。また、元の位置に遅角動作させる場合は、進角動作に比べやや時間的余裕があるが、このときも、ロータベーン143がハウジングベーン141にぶつかるまで、遅角を行うことができるので、遅角速度を高速化してもロータ132を容易かつ正確に位置決めできる利点がある。このように、本実施形態の如くエンジンサイクル毎に進角動作と遅角動作を高速で繰り返す場合には、最遅角位置と最進角位置の間で進角・遅角動作を行うのが有利である。
本実施形態の進角制御は、内部EGR量の確保または増大の要請のある任意のエンジン運転領域で行うことができる。例えば、エンジンの常用域(通常頻繁に使用される領域)に、本実施形態の進角制御を行う実行領域を予め定めておき、エンジン運転状態が実行領域になければ通常通り可変機構36を最遅角位置に保持し、エンジン運転状態が実行領域にあれば本実施形態の進角制御を行うことができる。
このように本実施形態によれば、エンジンの排気行程中に排気弁の開弁時期を進角させて排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、可変機構を進角動作させるので、内部EGRのための新規な可変機構の動作方法を実現することが可能である。
図5は、本実施形態の進角制御のルーチンを示すフローチャートである。図示するルーチンはECU100により1エンジンサイクル(=720°CA)毎に繰り返し実行される。
ルーチンは、可変機構36が最遅角位置にあり、クランク角θが所定の基準クランク角(本実施形態では圧縮TDC(θ=0°CA))にある時から開始する。
ステップS101でECU100は、エンジン運転状態が実行領域にあるか否かを判断する。エンジン運転状態はエンジン回転数と、エンジン負荷を表すパラメータ、例えば目標燃料噴射量とで表される。
ECU100は、回転速度センサ40およびアクセル開度センサ41により実際のエンジン回転数Neおよびアクセル開度Acを検出し、これらに基づいて図示しないマップから目標燃料噴射量を算出する。次にECU100は、エンジン回転数Neおよび目標燃料噴射量で表されるエンジン運転状態が所定の実行領域にあるか否かを図示しない所定のマップを用いて判断する。
ECU100は、実行領域になければ待機し、実行領域にあればステップS102に進む。
ステップS102でECU100は、回転速度センサ40により検出された実際のクランク角θが、排気行程中の進角開始時期ADに達したか否かを判断する。達してなければ待機し、達したらステップS103に進んで可変機構36を最進角位置まで瞬時に進角動作させる。この進角動作は当然に排気行程中に終了する。
その後、ステップS104でECU100は、クランク角θが、最進角位置の場合の排気弁閉弁時期Cbに達したか否かを判断する。達してなければ待機し、達したらステップS105に進んで可変機構36を最遅角位置まで遅角動作させる。この遅角動作は進角動作と同様に瞬時に行ってもよいし、進角動作よりも遅い速度で行ってもよい。遅角動作は、できるだけ速やかに終了するのが好ましいが、遅くとも次のエンジンサイクルの膨張行程前には終了する。こうしてECU100はルーチンを終える。
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明は他にも様々な実施形態が可能である。
(1)例えば可変機構は、上記実施形態のようなハウジング131とロータ132を備えたものに限らず、他の構成の可変機構、例えば気筒毎に個別に排気弁を駆動する電磁アクチュエータまたは流体圧アクチュエータを備えたものであってもよい。
(2)また可変機構は、排気弁の開弁時期のみならず、排気弁の最大リフトおよび作動角の少なくとも一方を併せて可変にするものであってもよい。
(3)可変機構36の進角動作を開始する進角開始時期ADは、必ずしも、最遅角状態のバルブリフトカーブ(a)と最進角状態のバルブリフトカーブ(b)とが交差するクランク角に設定する必要はなく、それよりずらして設定してもよい。進角開始時期ADは、排気行程中の排気弁開弁量を減少する排気行程中の任意の時期に設定できる。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
1 内燃機関(エンジン)
36 可変機構
100 電子制御ユニット(ECU)
102 排気カムシャフト
131 ハウジング
132 ロータ

Claims (7)

  1. 排気弁の開弁時期を可変とするための可変機構と、
    前記可変機構を制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
    前記制御ユニットは、
    内燃機関の排気行程中に前記排気弁の開弁時期を進角させて排気行程中の排気弁開弁量を減少するよう、前記可変機構を進角動作させる
    ことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
  2. 前記制御ユニットは、前記可変機構を進角動作させる際、前記可変機構の所定の遅角位置から所定の進角位置まで、前記可変機構を進角動作させる
    請求項1に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  3. 前記所定の遅角位置が最遅角位置であり、前記所定の進角位置が最進角位置である
    請求項2に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  4. 前記制御ユニットは、前記可変機構を進角動作させる際、前記排気弁がリフト中でかつ最大リフトに達する前に、前記可変機構の進角動作を開始する
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  5. 前記制御ユニットは、前記可変機構の進角動作を排気行程中に終了する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  6. 前記制御ユニットは、前記可変機構の進角動作後に前記排気弁が閉弁した後、次の膨張行程前に前記排気弁の開弁時期を進角前の元の時期に戻すよう、前記可変機構を遅角動作させる
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  7. 前記可変機構は、クランクシャフトに連結された回転可能なハウジングと、排気カムシャフトに連結され、前記ハウジング内に相対回転可能に配置されたロータとを備える
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
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