JP2018199967A - 梁部材のむくりによるスラスト力が導入された柱梁接合構造 - Google Patents
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Abstract
Description
また、冬期にグラウトが凍結する恐れがあるため、外気温が5℃以下の場合にはグラウトの施工が禁止されているから、工事完成するまでの工程が更に長くなってしまう。そこで、加熱装置(ジェットヒータ等)を設置して加温するという方法が採られているが、大規模な装置構成が必要となることから、施工作業そのものが大掛かりになり製作に伴うコストが増大してしまう要因ともなる。
また、特許文献1の図3に示されているようなRC造とする柱梁接合部において、配筋の混雑さという問題だけではなく、柱梁接合部の水平方向にプレストレスが付与されていないため、地震時に斜めひび割れの発生やせん断破壊が生じ、建物構造全体が崩壊に至る恐れがある。
ようするに、柱梁接合部(パネルゾーン)が現場打ちコンクリートで構築される場合には、縦横3次元的にプレストレスを付与してPC構造とすることが構造性能上では好ましいが、二次ケーブルの緊張工事とグラウト工事で現場手間とコストがかかるという問題がある。一方で、二次ケーブルを無くして梁端から鉄筋を出して、現場打ちコンクリートで柱と梁を一体化接合する方法があるが、形成された柱梁接合部がRC造となり、構造性能、特に耐震性能が劣るため、構造全体(柱、梁)がPC構造とする場合には採用できない。
δ/L=5/10000〜20/10000
の範囲を満足させる構造にすること、を付加的要件として含むものである。
2.緊張用二次ケーブルを無くして、換わりに柱梁接合部にスラスト力を導入したことによって、従来のRC造よりも構造性能が大幅に改善され、パネルゾーンに斜めひび割れの発生やせん断破壊等を防ぐことができる。
3、また、二次ケーブルを無くすことによって、冬期グラウト工事を行うことなく、冬期施工の工期が大幅に短縮することができる。
図1に示したように、梁の中央部にむくり(上向きの変形量)を形成して全体的にアーチ状になる梁が両端にピン支点で支持される状態とする。梁の上に荷重aが作用すると、梁が下向きのたわむ方向に弾性変形をしようとするが、両端にピン支点でその弾性変形が拘束されているため、梁の両端に支点鉛直反力bが発生すると共に、水平方向にも支点水平反力cが発生する。それらの反作用力として等しい力がピン支点に作用する。本願では、その中の支点水平反力cの反作用力dを着目して生かすこととし、それをスラスト力dと呼ぶ。
後述する実施の形態において示されるように、PC柱1としては顎2付き柱を使用し、該PC柱1の顎2に端部を載置して柱梁接合部(パネルゾーン)13で接合されるPC梁3とする。この場合には、スラスト力dが柱梁接合部に作用することになる。
PC梁3のむくりを付与する手段として、図2(a)(b)に示したように、PC梁3は、その中央断面において中立軸(重心軸)X−Xよりも下側に偏心させて一次ケーブル4の図心を配設し、緊張定着することによってPC梁3に偏心プレストレスを導入する。
なお、一次ケーブル4は、複数のPCケーブルを合成したものとする。
ようするに、従来の二次ケーブルによるプレストレス力の換わりに、反らせた梁端の水平変形拘束によって生じさせたスラスト力dで柱梁接合部に与えることが可能になる。
そして、PC梁3について、一次PCケーブル4を設定された緊張力で緊張定着してアーチ状に形成する工程では、工場内で行うので、構築予定の建造物に使用される全てのPC梁3について、工場管理によって均等なむくりを形成して同じアーチ状になるように偏心プレストレスを付与することができるのである。
外周柱の柱梁接合部(パネルゾーン)13において、縦方向にはPC鋼棒10の緊張力によってプレストレスPが付与される。水平方向には、片側にPC梁3の梁端からスラスト力dが付与されると共に、反対側にはPC柱1の拘束力eが付与され、結果的に中柱と同じように3次元的にプレストレス力と同様な圧縮力が付与されることになる。
なお、PC梁3は、固定荷重及び積載荷重aが掛かっても一次ケーブル4の緊張力で支持されると共に、前述したように、δとLとの関係は、概ね5/10000〜20/10000の範囲内にしておけば、水平状態以上に下がらない(下向きのたわみが生じない)のである。
この実施の形態については、免震装置を取り付けた免震建造物である点で前記第1の実施の形態と相違するのであって、その建造物における主要の構造については、実質的に同一であるので、同一部分については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
免震建造物の免震装置により、地震時に建造物の上部構造に作用される地震力が耐震構造に比べ大幅に小さくなるから、柱梁接合部に必要なプレストレス導入力も小さくなる。従って、免震構造物の上部構造をPC構造としてPC柱とPC梁を用いて構築する場合には、柱梁接合部に従来の緊張用二次ケーブルを無くしてスラスト力を導入することで所要の構造性能が充分に得られるから、より合理的かつ経済的な構造となり、本願のスラスト力導入法は免震PC構造物に最も適用するものである。
上部構造の外周PC柱1の柱梁接続部(パネルゾーン)13について、外周のPC柱1に負担をかけずに柱梁の安定した接合ができるように、前記第1の実施の形態に係る他の実施例として図示した図8の構成と同じように、凹部21を形成しシース22を配設し、該シース内に2次ケーブル23を挿通し、その端部を定着具24で緊張定着するのであるから、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態については、基礎コンクリートとしては、前記した第1、第1の実施例のいずれとしてよいので、図示は省略する。また、同様な詳細についてその説明は省略する。
この実施の形態において、前記第一、第二の実施例との異なる点としては、柱梁接合部にはスラスト力dと二次ケーブル28によるプレストレスPを併用して導入することとし、従来の二次ケーブルを減らすことができる。
この点については、図13に示したように、柱梁接合部13をプレキャストPC柱1と一体化して形成したものにも適用できる。具体的に説明すると、柱梁接合部(パネルゾーン)13をプレキャストPC柱1と一体化し、前記実施例と同様に、所定のむくりが形成されたアーチ状になるプレキャストPC梁3をPC柱1の顎2に載せて、梁端と柱梁接合部に目地を設けて、目地モルタル29を充填して硬化させる。目地モルタル29が硬化した後に、二次ケーブル28を緊張定着してプレストレスPを与えて梁と柱をPC圧着接合する。その後に、前記実施例と同様に固定荷重及び積載荷重aを梁に作用することによって、梁端部に生じさせられたスラスト力dとプレストレス力Pとの合力P+dが柱梁接合部13に導入され、同じくその合力P+dに対抗する柱の上下方向の緊張定着によるプレストレス力Pによる柱の拘束力eと二次ケーブルのプレストレス力Pによる合力P+eが柱梁接合部13に導入される。こうすることによって、二次ケーブルによるプレストレス力Pと反らせた梁の弾性変形によるスラスト力d及び柱の拘束力eとが併用した形で柱梁接合部に導入されることになり、より強固な耐震接合構造になると共に、従来の二次ケーブルを減らすことができる。
2 顎
3 PC梁
3a、3b,3c、14 鉄筋
4 一次ケーブル
5 基礎杭
6 フーチング
7 基礎梁
8 台座ブロック
9、12、24,30 定着具
10 PC鋼棒
11、15 カプラー
13 柱梁接合部(パネルゾーン)
14 上端鉄筋
16 連結用鋼棒
17 現場打ちコンクリート
18 スラブ
19,20 鉄筋
21 凹部
22 シース
23、28 二次ケーブル
25 立ち上がりコンクリート基礎
26 マットスラブ
27 免震装置
a 荷重(固定荷重及び積載荷重)
b 支点鉛直反力
c 支点水平反力
d スラスト力
e 柱の拘束力
P プレストレス力
L 柱間隔(スパン)
l 梁の支点間距離
Claims (2)
- 基礎コンクリート上に所要間隔(スパン)をもって複数立設されたプレキャストコンクリート柱の梁受け顎に、緊張用一次ケーブルでプレストレスが付与されたプレキャストコンクリート梁の端部が設置され、該梁端部の柱梁接合部に現場打ちコンクリートが打設された柱梁接合構造であって、
前記スパンの中央において、前記プレキャストコンクリート梁に所定のむくりを形成して梁全体がアーチ状に形成され、
前記柱梁接合部の現場打ちコンクリートが硬化した後に形成されたスラブや仕上げ等による固定荷重および建物供用時の積載荷重が該梁に作用し、
該梁が水平状態に弾性変形することによって梁端部に生じさせられたスラスト力がプレストレス力として前記柱梁接合部に導入されること
を特徴とする柱梁接合構造。 - 前記柱の所要間隔(スパン)をLとし、前記梁のむくりをδとして、次式
δ/L=5/10000〜20/10000
の範囲を満足させる構造にすること
を特徴とする請求項1に記載の柱梁接合構造。
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