JP2018193313A - 精巣障害予防及び/又は改善剤 - Google Patents
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その対策として、生殖補助医療が行われている。人工授精、体外受精、顕微授精の件数は、年々急増し、今では年間40万件近くも行われている。人工授精等の費用は、1回に約30万〜40万円もする。しかし、1回で成功することが少なく、家計への経済的負担が大きい。なによりも女性への肉体的・精神的負担が大きい。
男性不妊症は造精機能障害によるものが約90%を占める。男性不妊症の原因は、精索静脈瘤や精巣炎の発症、精巣温度の上昇、血流障害等であると言われている。しかし、昨今の世界的な精子数減少を考えると、体内で酸化ストレスに変換される様々なストレスもその要因と予想される。
また、成熟精子となって精巣上体尾部に蓄えられ、精巣に熱ストレスを含む種々のストレスがかかっても、精子の運動能力や受精能力が低下する。
特に、夏季の高温・高湿度による暑熱ストレスは、家畜の生殖能力を低下させる。これは夏季不妊と呼ばれる。周産期病による繁殖力低下と共に畜産業では深刻な問題となっている。
例えば、食用植物由来の精子機能改善剤が開発されている(特許文献1)。該精子機能改善剤は、アシタバ抽出物に含まれるキサントアンゲロール、4−ヒドロキシデリシン有効成分として含有する。
該精子機能改善剤は食品や飼料に配合すればよく、経口投与できる。よって、不妊の男性、家畜は容易に摂取できる。
本発明において、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物は、例えば、オレウロペイン、オレウロペイン誘導体又はヒドロキシチロソールである。これらは、例えば、オリーブに含有されている。
また、本発明は、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された、精巣障害予防及び/又は改善用医薬品、精巣障害予防及び/又は改善用飲食品及び精巣障害予防及び/又は改善用飼料も提供する。
更に、本発明は、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物を動物の雄に投与することを含む、精巣障害予防及び/又は改善方法も提供する。動物には、ヒトを含んでも含まなくてもよい。
更にまた、本発明は、精巣障害を予防及び/又は改善剤の製造におけるヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物の使用、精巣障害予防及び/又は改善のために使用するヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物、という表現で表すこともできる。
本発明の精巣障害予防及び/又は改善剤の有効成分は、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物である。ヒドロキシチロソール及びチロソールは、様々な天然物に存在するフェノール系の抗酸化物質である。
ヒドロキシチロソール骨格は下記構造式(I)で示される。
オレウロペインは、下記式(III)の構造を有する。
本発明の医薬品は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤等として経口的に、或いは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液又は懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。本発明の医薬品の剤形は特に限定されないが、投与容易性の点から経口剤であることが好ましい。
医薬品への配合量は、例えば、オリーブ又はその抽出物(乾燥物換算)で、通常1〜95質量%、さらに5〜90質量%、特に10〜50質量%とするのが好ましい。
投与対象が目的の効果を得る1日あたりの投与量は、例えば、オリーブ又はその抽出物(乾燥物換算)として、一日あたり5〜6000mg/60kg体重とするのが好ましく、さらに10〜3000mg/60kg体重、特に20〜1000mg/60kg体重とするのが好ましく、30〜200mg/60kg体重とするのが最も好ましい。
本発明の飲食品は、例えば、飲料、粉末、粉末飲料、錠剤、サプリメント、ゼリー、ハードカプセル又はソフトカプセル等の形状にすることができ、その形状は経口摂取に適したものである。
例えば飲料の場合では、飲料中にオリーブ又はその抽出物は、0.001〜0.5質量%、さらに0.005〜0.25質量%、特に0.02〜0.15質量%とするのが好ましい。
カプセル、タブレット等のサプリメントの場合では、オリーブ又はその抽出物を1〜95質量%、さらに5〜90質量%、特に10〜50質量%含有しているものが好ましい。
本発明の飼料は、上記不妊治療剤と、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、わら類等と混合することにより得ることができる。
ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物を男性又はヒト以外の動物の雄に投与することにより、精巣障害を予防及び/又は改善することができる。
具体的には、上記医薬品、飲食品、飼料を上述した投与量で投与対象に摂取させればよい。
投与対象、症状等にもよるが、投与期間は、例えば1週間〜1年程、継続的に投与することが好ましい。
また、実験動物としてマウスを用い、不妊原因を家畜において深刻な熱ストレスによるものとした。
〔1〕マウスへのオレウロペイン投与と暑熱ストレス負荷
成熟雄マウスを、
(1)室温処理(室温処理)・オレウロペイン非投与
(2)暑熱処理(42℃)・オレウロペイン非投与
(3)暑熱処理(42℃)・オレウロペイン投与
の3群に分けた。
オレウロペイン(Extrasynthese社(フランス)、Cat.No.SSX0204)は、暑熱処理の5日前から毎日経口投与(5 mg/kg/day)した。
暑熱処理は、マウスの精巣及び精巣上体尾部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露することにより行った。室温処理(コントロール)は、マウスを恒温槽に入れず室温に静置した。温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、両群において同条件とした。
暑熱処理及び室温処理から24時間後に精巣上体尾部に存在する成熟精子を採取し、以下の解析を行った。
採取した精子を、37℃の加温盤上に設置した精子用Buffer(2.2 mM HEPES、1.2 mM MgCl2、100 mM NaCl、4.7 mM KCl、1 mM Pyruvic acid、4.8 mM Lactic acid hemi calcium salt、5.5 mM D-Glucose、20 mM Sodium bicarbonate、pH 7.35)にて培養し、15分後に精子培養液を回収した。
精子培養液を遠心(条件:100 g、1 min)し、上清中の精子を測定した。精子濃度の測定には精子運動解析装置SMAS(Sperm Motility Analysis System)(ディテクト社(日本))を用いた。1サンプルにつき200匹以上の精子を測定し、平均値を結果とした。
精子濃度の測定結果を図1に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子濃度が低下した。一方、暑熱処理の5日前からオレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等の精子濃度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に精子濃度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の減少を抑え、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
精子の運動率は、精子運動解析システム SMAS(Sperm Motility Analysis System)(ディテクト社(日本))を用いて、該システムの操作手順に従って測定した。
精子運動率の測定結果を図2に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子運動率が低下した。一方、オレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の精子運動率であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に精子運動率が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の運動率の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
運動精子濃度についても、コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は顕著に低下していたが、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の良好な結果であった。また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に運動精子濃度が高かった。
精子の直線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
精子の直線速度の測定結果を図4に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに直線速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の直線速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に直線速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の直線速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
精子の曲線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
精子の曲線速度の測定結果を図5に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに曲線速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の曲線速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に曲線速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の曲線速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
精子の曲線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
精子の平均速度の測定結果を図6に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに平均速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の平均速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に平均速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の平均速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
精子の頭部振幅は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
精子の頭部振幅の測定結果を図7に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに頭部振幅が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等の頭部振幅であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に頭部振幅していた。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の頭部振幅の低下を抑え、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
暑熱処理を15分行い、その後マウスを室温で飼育した他は、オレウロペイン投与のタイミング、投与量等を上記<6.オレウロペインによる成熟精子障害の改善効果の検討>と同様に行い、28日後に精巣、及び精巣上体尾部に存在する精子を採取し、以下の解析を行った。
採取した精巣とマウスの重量を測定し、マウス体重あたりの精巣重量比を算出した。
精巣重量比の算出結果を図8に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群では精巣重量比が減少する傾向を示した。一方、暑熱処理の5日前からオレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールとほぼ同等の精巣重量比であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも精巣重量比が増加する傾向を示した。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる精子形成能の低下を予防、改善できることが明らかとなった。
上記精子濃度の測定方法と同じ方法で行った。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子濃度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の精子濃度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に高い精子濃度であった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる精子形成能の低下を予防、改善できることが明らかとなった。
上記精子運動率の測定方法と同じ方法で行った。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群及び暑熱処理・オレウロペイン投与群は精子運動率が低下する傾向を示した。
運動精子濃度についても、コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は顕著に低下していたが、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の良好な結果であった。また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に運動精子濃度が高かった。
Claims (9)
- ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された精巣障害予防及び/又は改善剤。
- 前記化合物はオレウロペイン、オレウロペイン誘導体及びヒドロキシチロソールからなる群から選択される、請求項1に記載の精巣障害予防及び/又は改善剤。
- 前記化合物はオリーブに含有されているものである、請求項1又は2に記載の精巣障害予防及び/又は改善剤。
- ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された、精巣障害予防及び/又は改善用医薬品。
- ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された精巣障害予防及び/又は改善用飲食品。
- ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された精巣障害予防及び/又は改善用飼料。
- ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物を雄に投与することを含む、動物(ヒトを除く)の精巣障害を予防及び/又は改善する方法。
- 精巣障害を予防及び/又は改善剤の製造におけるヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物の使用。
- 精巣障害予防及び/又は改善のために使用するヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物。
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JP2009191012A (ja) * | 2008-02-14 | 2009-08-27 | Univ Of Tsukuba | オレウロペイン、オレウロペイン誘導体又はヒドロキシチロソールを有効成分として含有する不妊治療剤 |
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Non-Patent Citations (3)
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