(施術装置の概略)
図1(a)は、本開示の実施形態に係る施術装置1の側面図である。図1(b)は、施術装置1を示す平面図である。図1(c)は、図1(b)とは反対側から見た施術装置1の平面図である。
施術装置1は、例えば、体表から人体に超音波及び電気刺激を与えることなどにより、治療又は美容等に利用されるものである。施術装置1は、全体として長尺状に構成されている。その長さは、例えば、30cm以上である。図では、50cm以上60cm以下の長さの施術装置1が例示されている。
マッサージ法の一つとして、生地を広げる麺棒のような部材を比較的強い力で体表に押し付けつつ、当該部材を体表に対して摺動させるもの(以下、麺棒マッサージ)が知られている。施術装置1は、そのような麺棒マッサージにも利用可能に構成されている。
施術装置1のうちy軸方向正側の面が体表に当接される面である。なお、以下では、便宜上、施術装置1のうちy軸方向正側の面を当接面1a、その背面を背面1b、z軸方向の正側の端部を先端部1c、その反対側の端部を根元部1dということがある。また、複数の部材の位置関係を説明するときに、当接面1aが体表に当接されている状態を前提として、「体表側」又はこれと同義で「人体側」の語を用いることがある。
図1(b)に示すように、当接面1aには、超音波を出力する1以上(図示の例では4つ)の超音波素子3と、電気刺激を出力する1対の電極5と、脂肪厚を検出するセンサ7とが露出している。脂肪厚の検出結果は、例えば、電気刺激の調整に利用される。
図1(c)に示すように、背面1bには、施術者の操作を受け付ける操作部9と、施術者に適宜な情報を表示する表示部11とが露出している。
施術者(例えば医師又はエステティシャン)は、例えば、根元部1dを把持したり、背面1bを手で抑えたりすることにより、当接面1aを被施術者(例えば患者又は客)の体表に押し当てたり、摺動させたりする。施術装置1は、例えば、少なくとも当接面1aが体表に当接されている間、超音波及び電気刺激を継続的に出力する。
なお、施術装置1は、施術者が自らの体に対して施術を行うように運用されても構わない。また、当接面1aと体表との間にジェルが配されてもよい。ただし、以下では、基本的にジェルの影響は無視して説明する。
(施術装置の全体構造)
図2は、施術装置1の分解斜視図である。
施術装置1は、ケース13(符号は図1)を有している。ケース13は、例えば、図2に示すように、互いに対向して固定される体表側ケース15及び背面側ケース17によって構成されている。
また、施術装置1は、センサ7を保護するセンサカバー19、超音波素子3の保持等に寄与するフレーム21、種々の電子部品を有しているアセンブリ23、アセンブリ23等に電力を供給するためのバッテリ25を有している。
1対の電極5は、例えば、ケース13(体表側ケース15)の当接面1aを構成する外面に重ねられてケース13に固定されている。なお、当該固定は適宜になされてよく、例えば、ねじ、爪(係合部)及び/又は接着剤によってなされてよい。
超音波素子3、センサ7、センサカバー19、フレーム21、アセンブリ23は、例えば、ケース13の内部(体表側ケース15及び背面側ケース17の間)に配置されている。そして、超音波素子3及びセンサカバー19は、例えば、ケース13(体表側ケース15)の当接面1aを構成する面に形成された開口を介して外部に露出している。
バッテリ25は、例えば、背面側ケース17の背面側(y軸方向負側)に形成された凹部に嵌合される。当該凹部は、蓋27によって塞がれる。蓋27は、例えば、ねじ及び/又は爪(係合部)によって背面側ケース17に着脱可能に固定される。
なお、センサカバー19は、センサ7の一部として捉えられてもよいし、ケース13又は体表側ケース15の一部として捉えられてもよい。蓋27は、ケース13又は背面側ケース17の一部として捉えられてもよく、以下では、便宜上、ケース13の一部であって背面側ケース17とは別の部材として言及することがある。
(ケース)
ケース13は、施術装置1の外形を構成する主な部材であり、施術装置1が既述のように30cm以上の長尺状であることに対応して、ケース13の外形は、30cm以上の長尺状となっている。
なお、本開示において、長尺状は、幅(x軸方向)及び厚さ(y軸方向)に対して長さ(z軸方向)が十分に長い形状である。例えば、長さが幅及び厚さのうち大きい方に対して、5倍以上であれば長尺状と判定されてよい。図では、厚さよりも大きい幅に対して、長さが9倍以上10倍未満の施術装置1(ケース13)が例示されている。
また、本開示において、長尺状という場合、横断面(長手方向(z軸方向)に直交する断面)の形状は問わない。具体的には、例えば、横断面は、円形でもよいし、多角形でもよいし、回転対称又は線対称の形状であってもよいし、そのような対称性を有する形状でなくてもよい。幅(x軸方向)及び厚さ(y軸方向)はいずれが大きくてもよいし、横断面における縦横比の大きさも任意である。
本実施形態では、ケース13の形状は、概略、四角柱とされており、その側面の一つ(長尺形状の外周面のうち軸回りの一部の範囲)によって当接面1aが構成され、その反対側の側面によって背面1bが構成されている。図示の例では、幅は、厚さよりも若干大きくされている。
なお、当接面1a(ケース13及び電極5等によって構成されている)は、x軸方向に見て、及び/又はz軸方向に見て、外側に膨らむ曲面状に形成されていてもよい。当接面1aと当該当接面1aに交差する側面(x軸に略直交する面)とがなす角部は、適宜に曲面等によって面取りがなされてよい。
ケース13(施術装置1)の直径(幅及び厚さ)は、例えば、手で握るのに適した大きさとされてよい。具体的には、例えば、幅及び厚さのうち大きい方は、2cm以上8cm以下とされてよい。図では、幅が5cm以上6cm以下、厚さが3.5cm以上4.5cm以下の施術装置1(ケース13)が例示されている。
ケース13(体表側ケース15、背面側ケース17及び蓋27)は、例えば、主として樹脂によって構成されている。樹脂としては、例えば、ABS(Acrylonitrile、Butadiene、Styrene)樹脂などの強度が比較的高いものが選択されてよい。これにより、例えば、麺棒マッサージへの適用が実現される。なお、ケース13は、繊維強化プラスチックによって構成されてもよいし、樹脂内に金属(板金)が埋設されて構成されてもよい。
体表側ケース15及び背面側ケース17それぞれは、例えば、概略、互いに対向する側を凹とする箱状に形成されている。そして、両者は、不図示のねじ等によって互いに固定されている。
体表側ケース15の外面には、電極5が嵌合する凹部が形成されている。これにより、当接面1aにおいて、電極5の外面と、体表側ケース15の外面(電極5の非配置領域)とは概ね連続する(概ね面一となる)。また、体表側ケース15には、超音波素子3及びセンサカバー19を露出させる開口が形成されている。超音波素子3及びセンサカバー19の露出面と、体表側ケース15の外面(開口の非配置位置)とは概ね連続する(概ね面一となる)。
(電極)
電極5は、アルミニウム等の金属により構成されている。1対の電極5は、例えば、当接面1aにおいて、幅方向(x軸方向)の両側に、互いに離れて位置している。各電極5は、例えば、長尺状のケース13(施術装置1)の長手方向に並列に延びる長尺状に形成されている。本開示における長尺状の意味については、既に述べたとおりである。
また、各電極5は、例えば、長手方向(z軸方向)に見て、概ねL字に形成されている。すなわち、各電極5は、当接面1aに沿って広がる部分と、当接面1aに交差する側面(x軸方向に略直交する面)に沿って広がる部分とを有している。なお、L字の角部は、曲面等によって適宜に面取りがなされてよい。
各電極5の長さ(z軸方向)及び幅(x軸方向又はy軸方向)、並びに1対の電極5間の距離等の各種寸法は、施術の目的等に応じて適宜に設定されてよい。各電極5のケース13に対する相対的な大きさ及び位置についても同様である。図示の例では、長手方向(z軸方向)において、1対の電極5は、根元部1d側の一部を除いて、ケース13の概ね全体に亘って配置されている。根元部1d側の電極5の非配置領域の長さ(z軸方向)は、例えば、人の拳の幅程度(例えば8cm以上12cm以下)である。これにより、例えば、電極5に触れずに根元部1dを把持することが可能になっている。
電極5の厚さも適宜に設定されよい。例えば、電極5は、比較的厚くされてもよい。具体的には、例えば、電極5は、0.5mm以上又は1mm以上とされてよい。電極5は、比較的厚くされることによって、ケース13を補強する部材としての機能が増加する。もちろん、電極5は、そのような補強の効果を狙わずに、比較的薄くされてもよい。
(センサ及びセンサカバー)
センサ7は、例えば、当接面1aにおいて、電極5の長手方向(z軸方向)の中央側(別の観点では施術装置1の長手方向の中央側)に位置しているとともに、1対の電極5の間に位置している。なお、ここでいう長手方向の中央側は、例えば、施術装置1(又は電極5)の全長を3等分したときの中央の部分であり、この中央の部分にセンサ7の全体又は中心が位置していれば、センサ7は長手方向の中央側に位置していると判定されてよい。なお、センサ7は、超音波素子3に対しては、例えば、複数の超音波素子3の間に位置している。
脂肪厚を検出するセンサ7は、例えば、光学式のものであり、図1(b)及び図2に示すように、発光部29及び受光部31を有している。また、センサカバー19は、発光部29によって生成された光を透過可能な透光性の材料(例えば樹脂又はガラス)によって構成されている。
発光部29は、例えば、LED(light emitting diode)を含んで構成されており、近赤外光を生成する。ここで用いられる近赤外光は、例えば、波長が650nm以上1100nm以下のものである。生成された近赤外光は、センサカバー19を介して施術装置1の外部へ出力される。
受光部31は、例えば、フォトダイオードを含んで構成されており、受光量に応じた強度の電気信号を出力する。受光部31には、施術装置1の外部からセンサカバー19を介して光が入力される。
当接面1a(センサカバー19)を体表に近接又は密着させて発光部29から近赤外光を出力することにより、体表に近赤外光が照射される。近赤外光は、一部が人体に吸収されるとともに、他の一部は人体によって反射されて受光部31によって受光される。このとき、脂肪厚が厚いほど受光量は多くなる。この原理を利用して、脂肪厚を検出することができる(パナソニック電工技報Vol.58 No2)。
発光部29及び受光部31の数及び配置は適宜に設定されてよい。図示の例では、1つの発光部29の両側に等距離で2つの受光部31が設けられている。その並び方向は、例えば、施術装置1の長手方向とされている。
(アセンブリ、操作部及び表示部)
アセンブリ23は、例えば、リジッド式の回路基板33に種々の電子部品が実装されることによって構成されている。種々の電子部品は、例えば、特に図示しないが、IC(Integrated Circuit)、発振器、抵抗体、キャパシタ及び/又はインダクタである。これらの電子部品は、例えば、駆動部(ドライバ)、制御部(制御回路)及び/又は電源回路を構成している。
図1(c)に示した操作部9は、例えば、回路基板33のy軸方向負側に設けられた不図示の1以上のスイッチによって構成されている。特に図示しないが、スイッチ又はスイッチ上の操作用部材は、例えば、背面側ケース17に設けられた開口を介して背面1bに露出している。操作部9に設けられるスイッチの形式(押圧式・スライド式等)及び役割等は適宜に設定されてよい。例えば、操作部9には、施術装置1の駆動開始及び駆動停止を指示するためのスイッチ(電源スイッチ)、超音波又は電気刺激の態様(強さ等)を調整するためのスイッチが設けられてよい。
また、図1(c)に示した表示部11は、例えば、回路基板33のy軸方向負側に設けられた複数のLED、セグメント表示を行う液晶表示装置、及び/又は任意の画像を表示可能な画像表示装置(例えば液晶表示装置又は有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ)によって構成されている。タッチパネル式のディスプレイが用いられ、操作部9及び表示部11が一体的に構成されていてもよい。特に図示しないが、表示部11は、例えば、背面側ケース17に設けられた開口を介して直接に視認可能、又は前記の開口を覆う透光性のパネル(背面側ケース17の一部)を介して視認可能となっている。
表示部11が表示する情報は適宜なものとされてよい。例えば、表示部11は、所定の周期で継続的にセンサ7によって検出されている脂肪厚を即時に表示したり(すなわちリアルタイムに脂肪厚を表示したり)、現在の超音波及び/又は電気刺激の態様(強さ等)を表示したり、施術を行っている時間(後述する時間ts)を表示したりしてよい。なお、脂肪厚の表示は、m単位系(mmなど)でなされてもよいし、他の単位又は指標でなされてもよい。他の単位又は指標としては、例えば、脂肪厚が略3mm大きくなる毎に1大きくなるレベルを挙げることができる。数値の表示に際して、適宜に四捨五入等がなされてよいことはもちろんである。
(フレーム)
フレーム21は、例えば、樹脂によって構成されている。フレーム21は、例えば、体表側ケース15及び/又は背面側ケース17内に嵌合してxz方向においてケース13に対して位置決めされる。また、フレーム21は、アセンブリ23とともに、又は単独で、互いに固定された体表側ケース15及び背面側ケース17に挟持されてy軸方向において位置決めされる。なお、フレーム21は、ねじ又は爪(係合部)によってケース13に対して固定されてもよい。
フレーム21は、適宜に開口、凹部及び/又は凸部からなる位置決め部を有している。そして、超音波素子3、センサ7及びセンサカバー19は、その位置決め部に係合して位置決めされたり、フレーム21と体表側ケース15とによって挟まれたりすることによってケース13に対して固定される。その具体的な構造は適宜に設計されてよい。なお、超音波素子3、センサ7及びセンサカバー19は、これらに直接に関わる、ねじ、爪及び/又は接着剤によってフレーム21等に固定されてもよい。
(バッテリ)
バッテリ25は、例えば、充電式のものである。バッテリ25の配置位置は、例えば、長尺状の施術装置1の根元部1dである。なお、施術装置1は、バッテリ25に加えて、又は代えて、商用電源に接続されるアダプターを有していたり、アダプターが着脱可能とされていたりしてもよい。
(超音波素子)
複数の超音波素子3は、例えば、当接面1aにおいて長尺状のケース13の長手方向に配列されている。また、各超音波素子3は、例えば、1対の電極5間(別の観点では当接面1aの幅方向中央)に位置している。複数の超音波素子3の数及び間隔等は適宜に設定されてよく、図示の例では、4つの超音波素子3がセンサ7に対して対称に配置されている。
超音波素子3が複数設けられているのは、例えば、超音波を体表へ出力する面積を増加させるため、及び/又は干渉波を利用するためである。ただし、本実施形態の説明では、基本的に、個々の超音波素子3からの超音波のみに着目する。
複数の超音波素子3の構成(寸法含む)は、例えば、互いに同一である。ただし、互いに異なる構成とされてもよい。また、複数の超音波素子3が出力する超音波の態様(周波数及び強度(波高)等)は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。一例を挙げると、例えば、4つの超音波素子3間において、超音波の周波数は互いに同一である。また、中央側の2つの超音波素子3間において、超音波の強度は互いに同一であり、外側の2つの超音波素子3間において、超音波の強度は互いに同一である。中央側の2つの超音波素子3の超音波の強度は、外側の2つの超音波素子3の超音波よりも強い(例えば約2倍である)。
図3は、超音波素子3を体表側から見た分解斜視図である。図4は、超音波素子3を体表側とは反対側から見た分解斜視図である。図5(a)は図3のV−V線に対応する超音波素子3の断面図である。図5(b)は音の集束を説明するための模式図である。
超音波素子3は、例えば、超音波を生成する振動素子35と、振動素子35に対して体表側に位置しており、振動素子35が生成した超音波を集束させる音響レンズ37(以下、単に「レンズ37」ということがある。)と、レンズ37の体表側を覆い、体表に当接されるカバー39とを有している。
(振動素子)
振動素子35は、図5(a)に示すように、例えば、圧電体41と、圧電体41を挟む1対の励振電極43とを有している。なお、特に図示しないが、1対の励振電極43は、絶縁層(例えばソルダーレジスト)によって覆われている。
圧電体41は、例えば、分極方向において1対の励振電極43に挟まれている。従って、1対の励振電極43に交流電圧が印加されると、圧電体41は厚さ方向において伸縮する。すなわち、圧電体41は振動する。そして、交流電圧の周波数を超音波の周波数(例えば20kHz以上)とすることにより、圧電体41の振動によって超音波が生成される。
圧電体41及び励振電極43の具体的な材料、形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、圧電体41は、分極方向を厚さ方向とする板状である。その板の厚さは概ね一定であり、板の平面形状は、例えば、円形である。圧電体41の材料は、単結晶体であってもよいし、多結晶体であってもよく、代表的な材料としてはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を挙げることができる。1対の励振電極43は、圧電体41の1対の主面(板状の最も広い面)の略全面に概ね一定の厚さで形成された金属層によって構成されている。
なお、上記では、振動素子35として、圧電体41の分極方向における変形(圧電縦効果)を利用する態様のものを例示した。ただし、振動素子35は、他の形式のものであってもよい。例えば、振動素子35は、分極方向(厚さ方向)に直交する方向における圧電体41の変形(圧電横効果)が規制されることによって厚さ方向に撓み変形を生じる、ユニモルフ型又はバイモルフ型のものであってもよい。
1対の励振電極43に印加される交流電圧は、例えば、1対の励振電極43間で極性(基準電位に対する正負)が交互に逆転するものであってもよいし、一方の励振電極43は基準電位とされ、他方の励振電極43の電位のみが変化するものであってもよい。前記の他方の励振電極43の電位は、基準電位に対して正負に変動してもよいし、正及び負の一方のみに変動してもよい。電圧の波形(sin波、矩形波、三角波又は鋸波等)も適宜に設定されてよい。
(音響レンズ)
レンズ37は、例えば、振動素子35側に平面37pを有し、体表側に凹面37r(凹部37a)を有する平凹型とされている。従って、図5(b)に示すように、レンズ37の軸に沿って概ね平行な音波が平面37pに入射し、かつレンズ37の体表側の媒質(本実施形態ではカバー39)における音速がレンズ37における音速よりも遅い場合においては、上記の平行な音波は凹面37rにおける屈折によって集束される。
なお、音速は、厳密には、媒質の形状(横波の影響)及び温度等が影響するが、本実施形態の説明においては、そのような影響は無視するものとする。以下において、参考までに種々の媒質における音速を例示することがあるが、その値についても同様である。
レンズ37の形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、y軸方向に見て、レンズ37及び凹面37rの形状(平面形状)は、互いに同一(相似)であり、凹部37aは、レンズ37よりも小さい。なお、両者の平面形状は合同であってもよい。また、レンズ37及び凹面37rの平面形状は、例えば、円形であり、別の観点では、振動素子35の平面形状と相似又は合同である。凹面37rは、断面視において、円弧であってもよいし、円弧でなくてもよい。本実施形態では、凹面37rは概ね球面である。
レンズ37は、例えば、その全体が同一の材料によって一体的に形成されている。レンズ37の材料は、人体における音速よりも速い音速で音波を伝える材料によって構成されている。なお、人体における音速は、例えば、脂肪における音速(約1450m/s)を基準としてよい(以下、同様。)。具体的には、例えば、レンズ37の材料としては、金属を挙げることができる。一般に、金属は、弾性率が高いことなどによって、樹脂などの他の材料に比較して音速が速い。金属は、例えば、アルミニウム(音速:6300〜6500m/s)又はステンレス鋼(音速:6600〜6800m/s)である。ただし、レンズ37の材料は、金属以外の材料(例えば比較的硬質の樹脂)とされてもよい。
レンズ37(平面37p)は、例えば、振動素子35に対して当接されている。ただし、両者の間には、接着剤又はその他の部材が介在していてもよいし、気体(空気)が介在していてもよい(両者は離れていてもよい)。レンズ37と振動素子35との固定は適宜になされてよい。例えば、両者がそれぞれフレーム21に固定されることによってなされてもよいし、両者の間に接着剤が配置されてもよい。
(カバー)
カバー39は、例えば、レンズ37における音速よりも人体における音速に近い音速で音波を伝える材料によって構成されている。なお、上記のように、本実施形態では、レンズ37の材料における音速は、人体における音速よりも速いから、人体における音速に近い音速は、レンズ37の材料における音速よりも遅い音速である。また、カバー39の材料における音速は、人体における音速に対して、速くても、同等でも、遅くてもよいが、例えば、僅かに速い音速である。
人体における音速とカバー39の材料における音速との差は、適宜な大きさであってよい。例えば、当該差は、人体における音速とレンズ37の材料における音速との差の半分以下若しくは1/5以下である。及び/又は、人体における音速とカバー39の材料における音速との差は、2000m/s以下、1000m/s以下若しくは500m/s以下である。なお、空気中の音速(約340m/s)と人体における音速との差が1000m強であることに照らして、人体における音速とカバー39の材料における音速との差が500m/s以下の場合、両者は十分に近いといえる。
上記のような音速に係る要件を満たすカバー39の材料としては、例えば、レンズ37の材料が金属である場合、エラストマー、ゴム及びその他の樹脂を挙げることができる。なお、本開示でいうエラストマーは、狭義のエラストマー(熱可塑性エラストマー)であり、また、スチレン系、オレフィン/アルケン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などのエラストマーのいずれであってもよい。また、ゴムは、例えば、シリコーンゴム又はウレタンゴムである。これらのエラストマー又はゴムは、その組成によっては、人体における音速と同程度の音速を実現することができる。一般的な超音波診断装置のプローブの整合層又は当該プローブの音響レンズの材料がカバー39の材料として用いられてもよい。
カバー39は、例えば、その全体が同一の材料によって一体的に形成されている。ただし、例えば、カバー39の表面等に紫外線の入射を抑制するコーティングがなされたりしてもよい。また、カバー39は、レンズ37の凹部37aに嵌合する内側部39aと、内側部39aの体表側に位置し、内側部39aよりも広い中間部39bと、中間部39bから体表側へ突出する外側部39cとを有している。
内側部39aは、凹部37aに嵌合する部分であるから、その形状及び大きさは、凹部37aの形状及び大きさに対応したものとなっている。本実施形態では、凹面37rが球面であることに対応して、内側部39aの外面は球面である。
中間部39bは、例えば、内側部39a及び外側部39cよりも外側に広がる、概ね一定厚さのフランジ39fを有している。フランジ39fは、レンズ37の上面(凹部37aの周囲)に重なる。フランジ39fには、孔39eが形成されている。体表側から孔39eに挿通されてフランジ39fに係合する不図示のねじがレンズ37に設けられた雌ねじ37eに螺合されることによって、カバー39は、レンズ37に固定される。ただし、ねじに代えて、又は加えて、カバー39(内側部39a及び/又は中間部39b)とレンズ37との間に介在する接着剤が用いられてもよい。中間部39b(フランジ39f)の平面形状は適宜な形状とされてよく、図示の例では円形である。
外側部39cは、ケース13(体表側ケース15)の体表側の面に形成された開口(符号省略)に嵌合する。そして、外側部39cの表面は、ケース13の体表側の面と概ね連続し(面一となり)、ケース13及び電極5等とともに施術装置1の当接面1aを構成する。
外側部39cの形状は適宜なものとされてよい。図示の例では、外側部39cの平面形状は、円の一部が1対の電極5によって切り取られたような形状(長円形)とされている。その他、外側部39cの平面形状は、円形、楕円形、多角形等とされてもよい。また、外側部39cの表面(当接面1aを構成する面)は、平面状であってもよいし、外側に僅かに膨らむ曲面状であってもよい。
フランジ39fは、例えば、レンズ37よりも外側に広がっている。超音波素子3は、例えば、フレーム21に設けられた開口(符号省略)に対して体表側からレンズ37が嵌合され、この際、フランジ39fは、フレーム21の開口周囲に対して体表側から係合する。また、体表側ケース15の、外側部39cが嵌合する開口の周囲部分は、体表側からフランジ39fに重なり、フランジ39fをフレーム21に押し付ける。すなわち、フランジ39fは、超音波素子3のケース13に対する固定にも寄与している。
(レンズの焦点)
図5(b)に示すように、レンズ37の焦点P1は、カバー39を体表に当接させたときに人体内(カバー39の外側)に位置するように設定されている。なお、理論上、カバー39における音速と、人体における音速とが同等の場合においては、図示の例のように、カバー39と人体との界面において屈折は生じない。また、カバー39における音速が人体における音速よりも速い場合は、焦点P1は図示の例よりも界面から離れ、逆の場合は、焦点P1は図示の例よりも界面に近づく。
焦点P1の具体的な位置は、施術の目的等に応じて適宜に設定されてよい。一例として、焦点P1は、体表下約4mmの深さに位置する。この場合、例えば、表皮及び真皮の厚みは平均で2mm程度であることから、皮下脂肪に超音波を照射することができる。
レンズ37は、音波を1点に集束させずに、所定範囲に音波を集束させてもよい。例えば、直径3mm程度の球状に音波を集束させてもよい。このような場合、例えば、施術の目的に合致しないほどに音波が集中し過ぎるおそれが低減される。
なお、本開示において、上記のように音波を所定範囲に集束させる場合、又は意図しない収差によって音波が所定範囲に集束してしまう場合、焦点P1は、例えば、その所定範囲内の最も音波のエネルギーが高くなる点、又は所定範囲の体積中心として特定されてよい。
また、例えば、単に焦点P1がカバー39の外側に位置しているか否かを判定するだけの場合において、上記の所定範囲の全体がカバー39の外側に位置しているときは、1点としての焦点P1を特定する必要はない。別の観点では、上記の所定範囲が焦点P1として扱われてもよい。
(電気刺激に係る基本的事項)
図6(a)は、1対の電極5に入力されるパルス信号(別の観点では1対の電極5から人体に与えられる電気刺激)を説明するための模式図である。同図において、横軸は、経過時間tを示している。縦軸は、パルス信号の強度S(電気刺激の強度)を示している。
パルス信号は、電気信号の一種であり、その信号強度が時間経過に対して所定の波形で繰り返し変化する信号である。このような脈動する電気信号が1対の電極5に入力されることによって、強度が周期的に変化する電気刺激が人体に付与される。パルス信号は、矩形波に限定されず、例えば、三角波、鋸波又はsin波であってもよい。
1対の電極5の電位に着目したとき、パルス信号は、1対の電極5間で電位の極性(基準電位に対する正負)が交互に逆転するものであってもよいし、一方の電極5が基準電位とされ、他方の電極5の電位のみが変化するものであってもよい。前記の他方の電極5の電位は、基準電位に対して正負に変動してもよいし、正及び負の一方のみに変動してもよい。
パルス信号の強度Sは、例えば、1対の電極5間を流れる電流、又は1対の電極5間に印加される電圧である。換言すれば、施術装置1は、例えば、定電流回路によって所望の電流の電気刺激を人体に与えるものであってもよいし、定電圧回路によって所望の電圧の電気刺激を人体に与えるものであってもよい。その他、施術装置1は、例えば、所望の電力の電気刺激を人体に与えるものであってもよい。
(電気刺激に係るバースト波)
図6(b)は、図6(a)の領域VIbを時間軸方向に拡大した模式図である。
図6(a)及び図6(b)間においてパルス幅Wpを比較することにより理解されるように、パルス信号は、微視的に見たときに、パルス信号の周波数(1/Tp)よりも周波数が高いバースト波信号によって実現されていてもよい。このようにすることにより、痛み等を低減しつつ強い電気刺激を人体に付与可能であることは公知である。
バースト波信号は、一種のパルス信号であるが、本開示においてパルス信号という場合は、特に断りがない限りは、バースト波信号のことではなく、施術装置1が本来的に目的としている周波数のパルス信号のことをいうものとする。
なお、パルス信号の周波数(及びバースト波信号が利用される場合はその周波数)は、施術の目的等に応じて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、パルス信号の周波数は、1000Hz以上3000Hz以下(いわゆる中周波の周波数)であり、バースト波信号の周波数は、25kHzである。もちろん、パルス信号の周波数は、上記の中周波の周波数よりも低くてもよいし、高くてもよい。
(電気刺激に係る周波数の調整)
施術装置1は、例えば、センサ7が検出した脂肪厚に基づいて、1対の電極5に出力するパルス信号の周波数f(=1/Tp)を調整する。具体的には、例えば、検出された脂肪厚が厚いほど、パルス信号の周波数fを高くする。
この調整は、例えば、リアルタイムで行われる。すなわち、所定の周期Tcで返し、脂肪厚の検出と、その検出結果に基づく周波数fの調整とが行われる。なお、所定の周期Tcは、当然に、パルス信号の周期Tpよりは長く、例えば、0.1秒以上1秒以下である。また、所定の周期Tcで繰り返し周波数fの調整が行われるといっても、検出された脂肪厚が前回の検出値から変化せず、結果として周波数が調整されないことがあってもよいことはもちろんである。
図7(a)は、上記のようなパルス信号の周波数fの調整における、脂肪厚Dと周波数fとの関係の一例を示す模式図である。同図において、横軸は脂肪厚Dを示し、縦軸は周波数fを示している。
この例では、周波数fは、概略、脂肪厚Dに対して線形の関係となるように調整される。ただし、ファジィ制御のように、周波数fは、脂肪厚Dの変化に対して階段状に変化するように調整されている。
図7(a)における横軸及び縦軸の具体的な数値は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、脂肪厚Dが6mm増加するごとに周波数fは400Hz高くされる。また、脂肪厚Dが0mm以上6mm未満の範囲内の場合には、周波数fは1000Hzとされ、脂肪厚Dが30mm以上となる場合には、周波数fは3000Hzとされる。
なお、図7(a)はあくまで一例である。従って、例えば、脂肪厚Dと周波数fとは線形の関係でなくてもよい。また、例えば、周波数fの変化は階段状でなく、脂肪厚Dの変化に対して連続的であってもよい(直線又は曲線で表わされてもよい)。
脂肪厚Dと周波数fと相対関係は、施術装置1の製造者によって設定されてもよいし、その一部又は全部が施術者によって設定されてもよい。後者の場合、例えば、施術者が操作部9に対する操作によって標準の周波数を設定し、その標準の周波数に対する増減が、予め製造者によって設定された調整量で、脂肪厚Dの変化に基づいて、施術装置1によってなされてもよい。
(電気刺激に係る強度の調整)
施術装置1は、例えば、上記のようにパルス信号の周波数fを調整するとき、これに付随してパルス信号の強度(図6(a)に示す波高Hp)も調整する。具体的には、例えば、周波数fが高くなるほど、波高Hpを高くする(強度を強くする)。この調整は、例えば、周波数の調整がリアルタイムで行われることに対応して、リアルタイムで行われる。すなわち、所定の周期で繰り返し行われる。なお、脂肪厚に応じてパルス信号の強度が調整されていると捉えられてもよい。
図7(b)は、上記のようなパルス信号の波高Hpの調整における、パルス信号の周波数fと波高Hpとの関係の一例を示す模式図である。同図において、横軸は周波数fを示し、縦軸は波高Hpを示している。
この例では、波高Hpは、概略、周波数fに対して線形の関係となるように調整される。ただし、図7(b)は、図7(a)のように周波数fの変化が離散的である態様に対応しており、周波数fと波高Hpとの関係は、線ではなく、複数の点で表わされている。
なお、図7(b)はあくまで一例である。従って、例えば、周波数fと波高Hpとは線形の関係でなくてもよい。また、例えば、周波数fの変化が連続的なものである場合において、波高Hpの変化は、階段状であってもよいし、連続的であってもよい。
周波数fと波高Hpとの相対関係は、施術装置1の製造者によって設定されてもよいし、その一部又は全部が施術者によって設定されてもよい。後者の場合、例えば、施術者が操作部9に対する操作によって標準の波高Hpを設定し、その標準の波高Hpに対する増減が、予め製造者によって設定された調整量で、周波数fの変化に基づいて、施術装置1によってなされてもよい。
(電気刺激に係る初期動作)
施術装置1は、例えば、1対の電極5が体表に当接された直後は、比較的弱い強度で電気刺激を人体に与え、その後、電気刺激の強度を相対的に強くする。これにより、例えば、被施術者(患者等)が心理的に衝撃を受けるおそれが低減される。
図7(c)は、そのような電気刺激に係る初期動作における、時間tとパルス信号の強度(波高Hp)との関係の一例を示す模式図である。同図において、横軸は時間tを示し、縦軸は波高Hpを示している。
この例において、時点t0よりも前においては、施術装置1は、人体に電気刺激を与えるためのパルス信号を1対の電極5に出力していない。そして、施術装置1は、時点t0において、1対の電極5が体表に当接されたことを検出すると、波高Hpが初期値Hp0とされたパルス信号を1対の電極5に出力する。続いて、施術装置1は、時間tの経過に伴い、徐々に波高Hpを大きくしていき、時点t1以後においては、波高Hpを設定値Hp1とする。1対の電極5が体表から離れたことが検出された場合おいては、時点t0の前の状態に戻る。
設定値Hp1は、例えば、図7(b)を参照して説明した、周波数fに応じて調整された波高Hpである。従って、図7(c)に示された範囲では、設定値Hp1は一定となっているが、調整に応じて設定値Hp1は変化する。
初期値Hp0及び助走時間Ta(時点t0〜t1までの時間長さ)は、適宜な大きさとされてよく、絶対的な値であってもよいし、設定値Hp1等に応じて変化する値であってもよい。また、そのような絶対的な値又は設定値Hp1等に応じた変化量は、施術装置1の製造者によって予め設定されていてもよいし、施術者の操作部9に対する操作等によって設定されてもよい。
1対の電極5の体表への接触の検出は、適宜になされてよい。例えば、施術装置1は、1対の電極5の通電の有無によって体表への接触の有無を判定してもよい。この場合の通電の有無を検出するための信号は、人体に電気刺激を与えるためのパルス信号と同じものであってもよいし、通電を検出するための専用の電気信号であってもよい。前者の場合において、時点t0よりも前の波高Hpは、初期値Hp0以下の適宜な大きさとされてよい。
なお、上記のような初期動作は、電気刺激だけでなく、超音波についても適用されてもよい。例えば、時点t0よりも前においては超音波を出力しないようにしたり、及び/又は時点t0から超音波の強度を徐々に設定値へ上昇させたりしてもよい。
(施術ユニット)
図8は、施術装置1を含む施術ユニット101の構成を示す斜視図である。ただし、同図において、施術装置1は2点鎖線で示されている。
施術ユニット101は、施術装置1に加えて、施術装置1が使用されていないときに施術装置1を配置しておく保持機器103を備えている。
保持機器103は、例えば、施術装置1の置き場を有しており、施術装置1は、保持機器103に対して所定の位置関係とされる。具体的には、図示の例では、保持機器103は、置き場を構成する溝103rを有しており、施術装置1は、溝103rに嵌合されている。溝103rは、例えば、鉛直方向又は鉛直方向に所定の角度で傾斜する方向に延びており、施術装置1は、立てられた状態で保持される。
また、保持機器103は、例えば、施術装置1のバッテリ25を充電する充電器として機能する。具体的には、例えば、保持機器103は、不図示のコード及びプラグを介して商用電源に接続される。また、施術装置1を溝103rに配置すると、施術装置1の不図示の端子が保持機器103の不図示の端子に当接し、保持機器103から施術装置1へ電力を供給可能となる。そして、施術装置1は、商用電源からの交流電力を適宜な電圧の直流電力に変換してバッテリ25へ供給する。なお、そのような端子を介した充電に代えて、電界及び/又は磁界を利用した無線充電が行われてもよい。
施術装置1は、既述のように、バッテリ25に加えて、又は代えて、商用電源からの電力がアダプターを介して供給されてもよい。保持機器103は、そのようなアダプターとして機能してもよい。例えば、施術装置1と保持機器103とは、コードによって接続され、保持機器103は、商用電源からの交流電力を適宜な電圧の直流電力に変換して前記のコードに供給する。なお、コードは、施術装置1及び保持機器103の一方又は双方に対して、固定されていてもよいし、着脱可能であってもよい。
また、保持機器103は、施術装置1の当接面1a(別の観点ではカバー39及び電極5)を加熱及び保温する機能を有している。具体的には、例えば、保持機器103は、施術装置1が溝103rに配置されたときに、当接面1aに対向する位置にヒータ105を有している。そして、施術装置1は、当接面1aの温度又はヒータ105の温度を検出する温度センサの検出値が目標温度に収束するようにフィードバック制御を行う。なお、目標温度は、施術装置1の製造者によって予め設定されていてもよいし、保持機器103の不図示の操作部に対する施術者の操作等によって設定されてもよい。
なお、特に図示しないが、保持機器103は、操作部及び表示部を有していてよい。操作部は、例えば、保持機器103の起動及び停止を指示するための電源スイッチ、及び/又はヒータ105による加熱及び保温の開始又は停止を指示するためのスイッチを含んでいる。表示部は、例えば、充電中か否か、加熱中(保温のための加熱を除く)か否か、及び/又は保温中か否かの情報を表示する。
(ブロック図)
図9は、施術ユニット101の信号処理系の構成の要部を示すブロック図である。
施術装置1は、種々の制御を行う制御部51を有している。制御部51は、例えば、アセンブリ23によって構成され、振動素子35、電極5、センサ7、操作部9及び表示部11と接続されている。
制御部51は、例えば、振動素子35に交流電圧を印加するための指令を生成して出力する超音波制御部53と、超音波制御部53からの指令に応じた交流電圧を生成して振動素子35に印加する駆動部55とを有している。
また、制御部51は、例えば、パルス信号を生成するための指令を生成して出力するパルス制御部57と、パルス制御部57からの指令に応じたパルス信号を生成して1対の電極5に出力する駆動部59とを有している。なお、パルス制御部57は、図7(a)〜図7(c)等を参照して説明したように、センサ7からの信号に基づいてパルス信号の態様を変化させる。
その他、特に図示しないが、制御部51は、例えば、適宜な情報を表示部11に表示させるための信号を出力するための処理部、当接面1aが体表に当接されたことを検出するための処理を行う処理部等を有している。
保持機器103は、例えば、既述のヒータ105に加えて、当接面1a又はヒータ105の温度を検出するための温度センサ107、バッテリ25を充電するための充電部109及びこれらを制御するための制御部111を有している。
(処理手順の一例)
図10は、施術装置1(制御部51)が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。同図において、2箇所に示された、丸で囲まれた1の記号は互いに繋がる部分を示している。同様に、図中、2箇所に示された、丸で囲まれた2の記号は互いに繋がる部分を示している。
このフローチャートでは、具体的には、電気刺激の態様のリアルタイムでの調整(図7(a)及び図7(b))及び電気刺激の初期動作(図7(c))のための処理が示されている。また、施術装置1は、当接面1aが体表に当接している時間を加算していき、当該時間が所定の設定時間に到達すると施術を終了する機能を有してよく、このための処理も示されている。
このフローチャートは、例えば、操作部9に対して施術の開始を指示する操作(例えば電源スイッチをONする操作)がなされたときに開始される。
ステップST1では、制御部51は、種々のパラメータの初期設定を行う。例えば、経過時間tc、ts、taを初期値(例えば0)とする。これらの経過時間の意味については、以後の説明で明らかになる。
ステップST2以後(ステップST2〜ST15)の処理は、所定の周期で繰り返される。当該周期は適宜に設定されてよいが、ステップST2のTc及びステップST12のTaに比較して短い。
ステップST2では、制御部51は、経過時間tcが予め設定されている周期Tcに到達したか否か判定する。そして、制御部51は、肯定判定のときはステップST3に進み、否定判定のときはステップST7に進む。
ステップST3〜ST5では、図7(a)及び図7(b)を参照して説明したパルス信号の調整が行われる。具体的には、制御部51は、センサ7からの信号に基づいて、現在のセンサ7下における脂肪厚Dを特定し(ステップST3)、その特定した脂肪厚Dに基づいてパルス信号の周波数fを設定し(ステップST4)、また、その周波数fに応じたパルス信号の強度S(波高Hp)を設定する。
ステップST6では、制御部51は、経過時間tcを初期値にリセットする。一方、ステップST7では、制御部51は、経過時間tcをステップST2〜ST15の繰り返し周期だけ増加させる。従って、ステップST2では、周期Tcが到来する毎に肯定判定がなされ、ひいては、ステップST3〜ST5が実行される。なお、周期Tcの長さは、施術装置1の製造者によって設定されてもよいし、施術者の操作部9に対する操作によって設定されてもよい。
ステップST8では、制御部51は、当接面1aが体表に接触したか否か判定する。そして、制御部51は、肯定判定のときはステップST9に進み、否定判定のときはステップST11に進む。
ステップST9では、制御部51は、経過時間tsをステップST2〜ST15の繰り返し周期だけ増加させる。同様に、ステップST10では、制御部51は、経過時間taをステップST2〜ST15の繰り返さし周期だけ増加させる。一方、ステップST11では、制御部51は、経過時間taを初期値にリセットする。
ここで、経過時間tsは、ステップST2〜ST15ではリセットされない。従って、経過時間tsは、当接面1aが体表に当接している時間を積算したものに相当する。また、経過時間taは、当接面1aが体表に当接している間に増加され、当接していないときはリセットされるから、図7(c)における時点t0からの経過時間に相当する。
ステップST12では、制御部51は、経過時間taが所定の助走時間Ta(図7(c))に到達したか否か判定する。そして、制御部51は、否定判定のときは、ステップST5で設定されたパルス信号の強度(波高Hp)に対して、図7(c)を参照して説明した調整を行った強度を特定する。一方、制御部51は、肯定判定のときは、ステップST13をスキップする。
ステップST14では、制御部51は、経過時間tsが所定の設定時間Tsに到達したか否か判定する。設定時間Tsは、例えば、施術者の操作部9に対する操作によって設定されている。そして、制御部51は、否定判定のときはステップST15に進み、肯定判定のときはステップST16に進む。
ステップST15では、制御部51は、パルス信号の出力を継続するための処理(最初にステップST15が行われるときはパルス信号の出力を開始するための処理)を行う。このとき出力されるパルス信号は、ステップST4で設定された周波数を有し、かつステップST5で設定された強度、又はステップST13が実行されたときはステップST13で補正された強度を有している。
一方、ステップST16では、制御部51は、パルス信号の出力を停止する処理を行う。また、特に図示しないが、超音波素子3に対する電圧印加を停止する処理も行う。従って、施術がなされた時間tsが設定時間Tsに到達したことにより、施術が終了される。
以上のとおり、超音波に着目した第1の観点においては、本実施形態に係る施術装置1は、人体に超音波を与える超音波装置であって、超音波を生成する振動素子35と、人体側に凹部37aを有しており、振動素子35からの超音波を人体側へ集束させる音響レンズ37と、凹部37aに嵌合しており、人体に当接されるカバー39と、を有している。レンズ37の人体側の焦点P1は、カバー39よりも人体側に位置している。レンズ37は、脂肪における音速よりも速い音速で超音波を伝える第1材料(一例として金属)により構成されている。カバー39は、上記の第1材料における音速よりも脂肪における音速に近い音速で超音波を伝える第2材料(一例としてエラストマー)により構成されている。
従って、例えば、まず、振動素子35からの超音波を体表下に集束させることができる。その結果、例えば、体表下の特定の部位のみに比較的強い超音波を照射して、前記の特定の部位以外に超音波が影響を及ぼすおそれを低減できる。
また、例えば、レンズ37における音速よりも人体における音速に近い音速で音波を伝えるのカバー39がレンズ37と体表との間に介在することから、焦点P1を所望の位置に設定することが容易化される。具体的には、例えば、カバー39における音速が人体における音速と同等である場合においては、理論上、図5(b)に示したように、カバー39と人体との界面において屈折は生じない。従って、例えば、レンズ37の凹面37rにおける屈折のみによって、焦点P1を設定することができ(カバー39の体表側の面の形状は任意であり)、設計が容易である。また、例えば、当接面1aを体表に押し付ける圧力によって、カバー39と人体との界面の形状が変化しても、これによる焦点P1のずれは低減される。ひいては、麺棒マッサージによる圧力が焦点P1のずれに及ぼす影響も低減される。カバー39における音速が人体における音速と同等である場合を例に挙げたが、カバー39における音速がレンズ37における音速よりも人体における音速に近いことによって、多少なりとも上記のような効果が奏される。
また、例えば、カバー39が設けられていない場合においては、超音波が伝わる媒質は、順に、レンズ37、凹部37a内の空気(大気圧を基準としてよい。)、人体となる。空気における音速は、人体における音速よりも遅く、また、通常、固体材料(カバー39)における音速は、空気における音速よりも速い。従って、カバー39が設けられていない場合の焦点P1は、凹面37rにおける相対的に大きな屈曲及び体表における屈曲によって、カバー39が設けられている場合の焦点P1よりもカバー39側に位置する。このことから、カバー39が設けられていることによって、より深い位置へ超音波を集束させることが容易化されていると考えることができる。
また、本実施形態においては、カバー39の材料における音速は、脂肪における音速よりも速い。
従って、例えば、逆の場合に比較して、焦点P1はカバー39から離れる。その結果、例えば、より深い位置へ超音波を集束させることが容易化されていると考えることができる。また、音速は、弾性率が高いほど速くなるから、カバー39の材料として、弾性率の高い材料を選択することができる。その結果、例えば、麺棒マッサージによる圧力がカバー39と人体との界面の形状に及ぼす影響が低減される。
また、本実施形態においては、レンズ37の材料は、例えば、金属であり、カバー39の材料は、例えば、エラストマーである。
これらの材料であれば、上述したようなレンズ37、カバー39及び人体の間の音速の関係を満たすことが容易である。また、ゴムでなく、エラストマーを用いることによって、例えば、射出成形によってカバー39を形成することができ、生産性が向上する。
また、電気刺激に着目した第2の観点においては、本実施形態に係る施術装置1は、人体に電気刺激を与える電気刺激装置であって、体表に当接される当接面1aに露出している電極群(一例として1対の電極5)と、当接面1aに当接されている体表下の脂肪厚を検出するセンサ7と、センサ7が検出した脂肪厚に応じた態様(例えば周波数)のパルス信号を1対の電極5に出力する制御部51と、を有している。
従って、脂肪厚に応じて適切な態様の電気刺激を人体に与えることが可能になる。その結果、例えば、施術者が、施術が施される部位の事情に応じて好適な電気刺激の態様を判断してパルス信号を手動で調整する場合に比較して、施術者の技量によらずに、一定の効果を期待することができ、また、施術者の負担も軽減される。
また、本実施形態では、制御部51は、センサ7が検出した脂肪厚が厚いほど、パルス信号の周波数を高くする。
電気刺激の周波数を高くすると、電気刺激が体表下の深い位置まで到達しやすくなる傾向があることが知られている。その理由としては、例えば、細胞膜が構成するキャパシタのインピーダンスが周波数の上昇によって低下することが挙げられている。従って、電気刺激は、脂肪厚が厚いほど深い位置に到達するように自動的にその態様が変化することになり、施術が好適化及び/又は容易化される。
また、本実施形態では、制御部51は、所定の周期Tcで繰り返し、センサ7が検出した脂肪厚に応じてパルス信号の態様(例えば周波数)を変化させる。すなわち、当接面1a下の脂肪厚に応じてリアルタイムに電気刺激を変化させる。
従って、例えば、操作部9に対して所定の操作が行われたときに、脂肪厚を検出してパルス信号の態様を変化させる装置(このような装置も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、当接面1aの体表に対する摺動に電気刺激の態様の変化を好適に及び/又は容易に追従させることができる。このような摺動に対して電気刺激の調整を追従させる思想は従来なく、また、従来の装置では、たとえ施術者の技量が高くても摺動に電気刺激の調整を追従させることは不可能である。このことに照らして、本実施形態の施術装置1は画期的である。
また、本実施形態では、施術装置1は、長さ30cm以上の長尺状に構成されているケース13を有している。超音波に着目すると、ケース13は、外周面からカバー39を露出させるようにして振動素子35、レンズ37及びカバー39を保持している。また、電気刺激に着目すると、ケース13は、外周面のうち軸回りの一部範囲である当接面1aに1対の電極5を露出させ、かつ当接面1a下の脂肪厚を検出するように、電極5及びセンサ7を保持している。
従って、例えば、麺棒マッサージを行うと同時に、超音波及び/又は電気刺激を人体に与えることができる。その結果、例えば、これらを順次行う場合に比較して、施術の時間を短縮することができる。また、麺棒マッサージによる加圧と、電気刺激による筋肉の運動とが同時になされる場合においては、いわゆる加圧トレーニングのような効果も期待できる。
また、本実施形態では、電気刺激のための電極群は、上記のような長尺状のケース13の長手方向に沿って並列に延びる長尺状の1対の電極5を含んでいる。
従って、例えば、麺棒マッサージを行いつつ、人体の広い範囲に電気刺激を与えることができる。また、通常、電極5は金属からなり、ケース13は樹脂からなり、前者の方が弾性率が高い。従って、長尺状の電極5によってケース13の撓み変形に対する剛性を向上させることができる。その結果、施術装置1の麺棒マッサージに対する耐久性が向上する。
また、本実施形態では、上記のような長尺状の1対の電極5それぞれは、ケース13の長手方向に見て、当接面1aに交差する側面(x軸方向に略直交する面)に沿って広がっている部分を含む。
従って、例えば、電極5は、そのような側面に沿う部分を有さない装置(当該装置も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、x軸方向に見て、y軸方向への撓み変形に対する剛性が高くなる。その結果、例えば、麺棒マッサージに対する耐久性が更に向上する。また、例えば、電極5の縁部が体表に当接しにくくなるから、電極5の体表に対する摺動も滑らかになる。
また、本実施形態では、超音波ユニット又は電気刺激ユニットとしての施術ユニット101は、施術装置1と、施術装置1の置き場(溝103r)を有する保持機器103とを有している。施術装置1は、制御部51(振動素子35及び電極5)に電力を供給するバッテリ25を有している。保持機器103は、バッテリ25を充電する充電部109と、当接面1a(カバー39及び電極5)を加熱するヒータ105と、を有している。
従って、例えば、バッテリ25を充電している間に、当接面1aの温度を気温よりも高くしておくことができる。その結果、例えば、当接面1aを体表に当接させたときに、温度が低い当接面1aが被施術者に不快感を感させてしまうおそれを低減できる。
なお、以上の実施形態において、施術装置1は超音波装置の一例であり、金属は第1材料の一例であり、エラストマーは第2材料の一例であり、施術ユニット101は超音波ユニットの一例であり、溝103rは置き場の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、超音波装置(施術装置)は、体表に電気刺激を与えるための構成を有していなくてもよいし、麺棒マッサージに利用できない構成であってもよい。
音響レンズは、平凹レンズ以外の凹レンズであってもよく、例えば、両凹レンズ又は凹メニスカスレンズであってもよい。ただし、実施形態の構成であれば、平板状の圧電素子を音響レンズの平面に近接又は当接させることが容易である等のメリットがある。また、音響レンズは、フレネルレンズのように分割して構成されてもよいし、1つの振動素子に対して比較的小さい複数の音響レンズが配列されてもよい。また、音響レンズは、x軸方向及びz軸方向の双方に関して音波を集束させる作用を有していなくてもよく、シリンドリカルレンズのように構成されていてもよい。また、音響レンズ(凹部)の平面形状(y軸方向に見た形状)は、円形に限定されず、例えば、体表から見て長方形であってもよい。
脂肪厚を検出するセンサは、光学式のものに限定されない。例えば、超音波式のものであってもよい。超音波式のセンサは、例えば、超音波診断装置と同様に、送信したエコー信号の反射信号を受信して画像を生成し、画像解析から筋肉と脂肪との境界を特定し、エコー信号の送信から、特定した境界に対応する反射信号を受信するまでの時間と、予め入力されている音速とに基づいて脂肪厚を計算する。
実施形態では、センサの検出した脂肪厚に応じて、パルス信号の周波数(1/Tp)及び強度(波高Hp)が変化した。ただし、周波数のみ、又は強度のみが変化してもよい。また、これらに加えて、又は代えて、例えば、パルス幅Wp(別の観点ではデューティー比)及び/又は波形(矩形波、三角波、鋸波若しくはsin波等の形状)が変化してもよい。
電極群は、1対の電極からなるものに限定されず、3以上の電極から構成されるものであってもよい。3以上の電極は、電気刺激を与える面積を増加させる、又は切り換える目的で設けられてもよいし、干渉波を利用する目的で設けられてもよい。脂肪厚に応じて、3以上の電極のうち現に電気刺激を付与する電極、又は電極間の役割が変化してもよい。