以下、添付図面を参照して本発明にかかる誘導加熱調理器の実施の形態を説明する。各実施の形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、「上方」、「下方」、「右」および「左」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。
また、本明細書において、同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を指す。
図面は、概略的なものに過ぎず、限定的なものではない。図面中の要素のサイズは、説明のために誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。
また、本願における「非接触給電」の用語は、特に明示しない限り、電磁誘導型、磁界共鳴型、磁界共振型などの非接触給電を含む磁界結合型の非接触給電を指す。本願における「非接触」の用語は、コイル同士が電気的、および物理的に結合(直接的に接続)されていない状態をいう。つまり、「非接触」の状態は、コイルを含む装置同士が単に接触している状態、誘導加熱装置上に被加熱物や受電機器などの装置が載置されている状態も含む。
実施の形態1.
図1〜図14cを参照しながら、本発明にかかる誘導加熱調理器の実施の形態1について説明する。図1は、全体が1で表される、本発明の実施の形態1にかかる誘導加熱調理器の全体を概略的に示す斜視図である。誘導加熱調理器1は、筐体2と、筐体2の上側表面の略全体を覆うガラスなどで形成されたトッププレート3とを含む。トッププレート3の上には、左右に配置された加熱部(コンロ)9、10と、加熱部9、10の後方に配置された別の加熱部11がある。筐体2の内部には、調理用グリル4が配置されている。加熱部9、10は、IH加熱部であり、その下方には、磁界発生コイル(図示せず)が配置されている。加熱部11は、ラジエントヒータなどの抵抗発熱体を用いた加熱源でもよく、誘導加熱を用いたIH加熱部でもよい。
なお、本明細書では、図1において左側に示す加熱部10が本発明にかかるIH加熱部であるとして例示的に説明するが、他の加熱部9または加熱部11が本発明にかかるIH加熱部であってもよい。IH加熱部の数および配置は図1に記載のものに限定されず、加熱部が1口、2口、または図1に示す3口より多いものであってもよい。また加熱部9〜11は、横一列に配置されても、逆三角形状に配置されてもよい。本明細書では、調理用グリル4が筐体2の略中央に配置された、いわゆるセンターグリル構造を有する誘導加熱調理器1について例示的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、調理用グリル4がいずれか一方の側面に偏った、または調理用グリル4を有さない誘導加熱調理器にも同様に適用されてもよい。
誘導加熱調理器1は、各加熱部9、10、11および調理用グリル4を操作するためにユーザにより用いられる操作部5、6を含む。操作部6は、例えば、火力(出力)などを調整する調整ダイヤルである。操作部5は、設定された火力の大きさを示すLEDなどの表示器を含んでもよい。誘導加熱調理器1は、これらの制御状態や操作ガイドなどを表示するための液晶などの表示部7、トッププレート3上の後方の端部付近に配置された吸排気窓8を更に含む。さらに、誘導加熱調理器1には、IH加熱部9、10に高周波電流を供給する駆動部40を含む電源部(図示せず)が内蔵されている。なお本発明は、図に示す各構成要素の配置や数に限定されない。
図2aは、全体が100で表される、本発明の実施の形態1にかかる磁界発生コイル100をトッププレート3に平行な面で切断した場合の断面図である。磁界発生コイル100は、トッププレート3の下に、トッププレート3に略隣接して配置されている。例えば、磁界発生コイル100は、トッププレート3の3mm下方に配置されている。磁界発生コイル100は、複数のコイル101〜106を含む。中央のコイル101は、例えば温度センサを取り付けるための20mm程度の間隙を設けて、コイル102と直列に接続されている。コイル101、102の周辺には、コイル102の外周に沿うように、4つのコイル103〜106が配置されている。
コイル101〜106に囲まれた各間隙部に、温度または光などを検出するための1つ以上のセンサ600を設けてもよい。例えば、センサ600は、温度を検出する温度センサであり、磁界発生コイル100上に載置された負荷の温度を検出する。あるいは、センサ600は、光を検出する光学センサであり、磁界発生コイル100上に載置された負荷の有無を検出する。
なお、本明細書において、鍋、受電コイル、または受電機器等が「磁界発生コイル100上に」載置されたという場合には、それらが磁界発生コイル100上に、トッププレート3を介して、磁界発生コイル100に対向して載置された場合を表す。
なお、ここで示す間隙寸法などの値は、本発明の範囲を限定するものではない。また、上では1つのコンロ内に複数のコイルが配置された磁界発生コイルの例を示したが、別の例では、磁界発生コイルは、異なる複数のコンロに配置されたコイルで構成されたものであってもよい。
図2bは、図2aの磁界発生コイル100をIIb−IIb方向に見た場合の断面図である。図2bでは、図が煩雑になるのを避けるために、図2aに配置され得るセンサ600は、省略されている。磁界発生コイル100は、磁束の漏洩を抑制するためのフェライトなどの磁性材料から成る複数の磁性体90、アルミニウムなどからなる磁界キャンセルリング91、または絶縁材料から成るコイル支持体92などを含んでもよい。
図3は、磁界発生コイル100に接続される各部の構成およびトッププレート3上に載置されて用いられる受電機器Eの構成を概略的に示す。図3に示すように、コイル101、102は、駆動回路41に、コイル103、105は、駆動回路42に、コイル104、106は、駆動回路43に、それぞれ接続されている。各駆動回路41〜43と各コイル101〜106との間には共振コンデンサ81〜83が接続され、共振回路が形成されている。例えば、駆動回路41とコイル101、102との間には共振コンデンサ81が接続されている。別の例では、駆動回路の数に制限がない場合は、コイル101〜106のそれぞれは、個別の駆動回路に接続されてもよい。
駆動回路41〜43は、代表的には、スイッチング素子2個が直列に接続された回路を一組のアームとして、一組のアームで構成されるハーフブリッジ回路、または二組のアームを組み合わせて構成されるフルブリッジ回路など、一般的に良く知られているインバータ回路で構成されるが、コイル100に高周波電流を供給することができるその他の回路で構成されてもよい。
図3では、検出回路61は駆動回路41に、検出回路62は駆動回路42に、検出回路63は駆動回路43に、それぞれ接続されている。検出回路61〜63は、接続されたコイルに流れる高周波電流の大きさを検出する電流検出機能、および接続された駆動回路41〜43の駆動電圧を検出する駆動電圧検出機能を有する。検出された高周波電流および駆動電圧は、共に、トッププレート3上に載置された負荷の状態(位置や材質)を判定するための電気出力特性情報として利用される。
図3では、コイル103およびコイル105は、直列に接続され、コイル104およびコイル106は、直列に接続されているが、別の例では、それぞれは並列に接続されてもよい。
図3のように、制御部50は、駆動部40と、検出部60と、操作部5、6と、表示部7とに接続されている。各コイルに供給される高周波電流の大きさは、操作部5、6を用いてユーザにより設定された火力の設定値に基づいて、制御部50よって制御される。このとき、駆動回路41〜43は、制御部50によって個別に制御され、コイル101、102およびコイル103〜106には、各々、異なるまたは等しい大きさの高周波電流が供給される。
次に、受電機器Eの構成について説明する。図3には、コイル101、102およびコイル104、106上に、受電機器Eに取り付けられた被加熱物(調理皿D)が載置され、コイル103、105上に受電コイル200a、200bが載置されている様子が示されている。なお、図3は、後述の「最初の状態」を示している。受電機器Eの受電コイル200a、200bには、共振コンデンサ84が接続され、共振回路が形成されている。この共振回路には、負荷部、例えば食材を輻射熱で加熱する発熱体であるヒータ300が接続されている。受電機器Eには、検出手段64が備えられている。検出手段64は、受電コイル200に流れる高周波電流を含む受電側電気特性を検出する。具体的には、検出手段64は、受電コイル200が、磁界発生コイル100が発生した磁束と鎖交することによって発生する誘導電流を検出する。なお、図3では、共振コンデンサ84は、受電コイル200と並列に接続されているが、受電コイルと直列に接続されてもよい。
受電機器Eは、電源部(図示せず)と、内部の温度などを検出するセンサ(図示せず)と、検出された高周波電流または温度に対応した制御を行う制御部(図示せず)と、本体1との間で、センサ情報や検出情報等の通信を行う通信部(図示せず)と、耐熱性の外郭(図示せず)などを更に含む。磁界発生コイル100に高周波電流が供給されて磁界が発生した場合、後述のように、受電機器Eは、この磁界によって動作し、加熱調理器としての機能を発揮する。
図4aおよび図4bは、受電機器Eに内蔵されている受電回路の構成例を示すブロック図である。図4aは、受電コイル200aおよび受電コイル200bが直列に接続された部分と、共振コンデンサ84と、負荷であるヒータ300とが並列に接続された回路400の構成例を示している。図4bは、受電コイル200aおよび共振コンデンサ84aが並列に接続された部分と、受電コイル200bおよび共振コンデンサ84bが並列に接続された部分があり、それぞれが負荷であるヒータ300と並列に接続された回路410の構成例を示している。
図4a、図4bでは、受電コイル200と共振コンデンサ84とヒータ300とが並列に接続された構成例を示したが、それぞれが直列に接続された構成であってもよい。さらに、コイルの数やコンデンサの数は、上述の数に限定されない。上記の構成は一例であり、本発明の実施の形態を限定するものではない。受電機器Eの構造に合わせて最適な構成を選択することができる。
トッププレート3のコンロ10上に何らかの負荷が載置されると、後述のように、載置された負荷が、受電機器Eか、鍋Pか、それ以外の物体であるかの判定が行われる。
検出部60によって検出された情報に基づいて、磁界発生コイル100上に載置された負荷が通常の調理器具である鍋Pであると判定された場合、制御部50は、鍋Pを誘導加熱するように駆動部40を制御する。この場合、図3に示したように、ユーザが操作部5、6を操作して火力(あるいは温度)を設定すると、制御部50は、駆動部40を制御し、設定された火力に応じた高周波電流を、磁界発生コイルのうち鍋Pと結合している(すなわち、鍋Pの下方にある)コイルに供給し、発生した磁界によって鍋Pを誘導加熱する。
一方、検出部60によって検出された情報に基づいて、磁界発生コイル100上に載置された負荷が受電機器Eであると判定された場合、ユーザが操作部5、6を操作して設定した電力(あるいは温度)に応じた高周波電流が磁界発生コイル100に供給される。その結果発生する磁界によって、受電機器Eの内部に配設された調理皿Dが誘導加熱される。さらに、同時に、この磁界によって、受電コイル200は、電磁誘導され、ヒータ300は、電磁誘導によって受電した電力で発熱する(非接触給電)。
磁界発生コイル100上に載置された負荷が、受電機器Eか、鍋Pかの判定は、磁界発生コイル100を構成する各コイルに接続された駆動回路毎に、検出部60によって検出された駆動部40の各駆動回路の電気出力特性に基づいて、制御部50によって行われる。
例えば、駆動部40の出力に設けられた検出部60で、各駆動回路の電圧等から直接的に、または変形した値を、所定の値と比較しまたは直接的に判定して、磁界発生コイル上に載置された負荷が被加熱物であるか否かを判断する。検出方法は、鍋の有無および加熱可能な負荷であるか否かを識別できる方法であれば、電流の大きさから判定するなどの従来の一般的な方法であってもよい。
図5aは、磁界発生コイル100をトッププレート3に平行な面で切断した断面図を示し、図5bは、受電機器Eの内部に収納されている一組の受電コイル200をトッププレート3に平行な面で切断した断面図を示している。図5aのA−B線と、図5bのA−B線は、一致する。受電コイル200a、200bは、磁界発生コイル100のコイル103、105とほぼ同じ形状をしている。受電コイル200aは、磁界発生コイル100のコイル103と対向する位置に配置され、受電コイル200bは、コイル105と対向する位置に配置されている(以下、この配置状態を「最初の状態」という。)。図示しないが、図5aは、磁性体90と、キャンセルリング91と、コイル支持体92とを含む。
図5cは、「最初の状態」を上から(受電機器E側から)見た図を示している。図5cでは、磁界発生コイル100は破線で、受電コイル200は斜線で示されている。
図5dは、図5cの構成をVd−Vd方向に見た場合の断面図を示している。
図5cに示す「最初の状態」では、磁界発生コイル100のコイル103およびコイル105から生じる磁束は、受電コイル200のコイル200aおよびコイル200bと鎖交する。その結果、受電コイル200に磁束の量に応じた誘導電流が流れ、受電コイル200の両端に起電力が発生し、ヒータ300が給電され、発熱する。磁界の結合が良好となるように、送電コイルであるコイル103、105と受電コイル200a、200bとは同一形状であることが好ましい。また、受電コイルの巻数および形状等は、必要な大きさの受電電力が得られるように決定されてもよい。受電コイルだけでなく、受電コイルと送電コイルと共振コンデンサとの電気特性の関係性を考慮し、それぞれの巻き数および形状等が決定されてもよい。
本明細書において、「送電モード」とは、この場合のように、受電コイル200と鎖交する磁束を発生させて、受電コイル200の両端に起電力を発生させるコイル(例えば、図5cに示す「最初の状態」における磁界発生コイル100のコイル103、105。以下、「送電コイル」という。)またはそのコイルを駆動する駆動回路の動作状態または機能を指す。
他方、本明細書において、「誘導加熱モード」とは、鍋Pなどの被加熱物に渦電流を形成して加熱するコイル(例えば、図5cに示す「最初の状態」における磁界発生コイル100のコイル104、106。以下、「誘導加熱コイル」という。)またはそのコイルを駆動する駆動回路の動作状態または機能を指す。
図6aは、磁界発生コイル100上に受電機器Eが載置された場合の、磁界発生コイル100と、受電コイル200と、および調理皿Dとの位置関係の一例を表した図である。図6aは、磁界発生コイル100と受電機器Eが位置ずれを起こしていない状態(上記の最初の状態)を示した図である。図6aでは、磁界発生コイル100の各コイル101〜106は、破線で、受電コイル200のコイル200a、200bは、斜線で、調理皿Dは、実線で示されている。便宜上、調理皿Dの下部にあるコイル101、102、104、および106の全部または一部も図示している。
図6bは、図6aの受電機器Eのうち、調理皿Dに着目した図である。図6bには、直交する2方向における調理皿Dの断面図も示されている。調理皿Dは、凹部Aを有してもよい。代わりに、調理皿Dは、底面であるコイルとの対向面が誘導加熱に適した磁性体で構成され、その上の凹部が高い熱伝導性を有する金属体で埋められ、更にその上に、金属体に接するように、食材を乗せるための略平面状の天板が設けられた構成であってもよい。このような構成により、誘導加熱された磁性体からの熱が、熱伝導が高い金属体から伝えられ、天板を、さらには天板上の食材を加熱することができる。
図6cは、調理皿D、磁界発生コイル100の各コイル、および受電コイル200に着目した、図6aのVIc−VIc方向に見た場合の断面図である。図6cは、受電機器E内に設置された調理皿Dと受電コイル200との位置関係を示している。
調理皿Dの一部は、誘導加熱に適した材質からなり、調理皿Dと対向したコイルによって誘導加熱される。調理皿Dは、誘導加熱コイル101、102およびコイル104、106(図示せず)に対向するようにトッププレート3上に載置されている。なお、図6cでは、調理皿Dは凹部を有するが、上述のように、凹部を熱伝導性の良い金属材料で充填し、それに接するように平面状の金属を組み合わせ、調理物を載せるように構成されてもよい。
図7は、その上方に調理皿Dが載置されている磁界発生コイルの駆動回路の負荷抵抗の周波数特性(i)、およびその上方に受電コイル200が載置されている磁界発生コイルの駆動回路の負荷抵抗の周波数特性(ii)を示している。例えば「最初の状態」では、図7の(i)は、その上方に調理皿Dが載置されている磁界発生コイル104、106の駆動回路43の負荷抵抗の周波数特性を示し、図7の(ii)は、その上方に受電コイル200が載置されている磁界発生コイル103、105の駆動回路42の負荷抵抗の周波数特性を示す。図7の横軸は周波数、縦軸は負荷抵抗Rの大きさを示している。図7の縦軸の負荷抵抗は、例えば特許第5473837号に開示されたような公知の検出方法によって算出された、駆動回路42の電気出力特性のひとつである。駆動回路42の負荷抵抗とは、コイル103、105と受電コイル200とが磁気的に結合している場合に得られる回路インピーダンスの実部と虚部のうちの実部に相当する。
負荷抵抗の周波数特性とは、駆動回路の負荷抵抗と周波数との関係をいい、制御部50が駆動部40を駆動する高周波電流の周波数を変化(スイープ)させながら負荷抵抗を計測することにより得られる特性である。
駆動回路の電気出力特性とは、例えば、図3において、磁界発生コイル104、106に高周波電流が流れた場合に駆動回路43に印加される駆動電圧の大きさ、磁界発生コイル104、106に流れる高周波電流の大きさ、磁界発生コイル104、106がその上に載置された負荷と結合した場合の駆動回路43の共振周波数、負荷インピーダンス、磁界発生コイル104、106と負荷の結合の強さを表す結合係数、または温度センサなどを用いて検出した負荷の温度情報などである。
以下、図7のような周波数特性データの取得方法の一例について説明する。図7において、横軸は、駆動部40の駆動周波数を示している。図7において、縦軸は、磁界発生コイル100の各コイルに高周波電流を供給する駆動部40の出力負荷特性であるインピーダンスのうち、負荷抵抗値の周波数特性を示している。
まず、制御部50は、磁界発生コイル100に対して検出用の高周波電流を供給するように、駆動部40を制御する。例えば、制御部50は、受電コイル200が磁界発生コイル103、105に載置された場合、駆動部40を制御して、1kHz刻みで変化するように検出周波数をスイープさせる。この検出用の高周波電流は、トッププレート3上に載置された負荷に電力を供給するための高周波電流より小さく、加熱には不十分である。周波数をスイープさせて検出回路61〜63により検出された駆動部40の電気出力特性データから、図7のような周波数特性が求められる。
電気出力特性データから周波数特性を求めるための回路構成は、一般的に知られている回路構成であってもよい。例えば、検出部60が、駆動部40の出力側の駆動電圧Vおよび駆動電流Iから、駆動部40の電気出力特性を検出し、トッププレート3上に載置された負荷を判別することができるものであれば、公知の回路構成が採用されてもよい。好適には、周波数特性を求めるための回路構成は、例えば特許第5473837号に開示されたような公知の負荷検出部と同様の回路構成である。
次に、上記のように取得された周波数特性データから、磁界発生コイル100上に載置された負荷の材質や形状を判別する方法について、コイル103および受電コイル200aを例に説明する。
磁界発生コイル103上に受電コイル200aが載置されると、上記のように取得された周波数特性データは、ある周波数において負荷抵抗値Rがピークを示すような曲線となる。他方、図7(i)に示すように、磁界発生コイル103上に調理皿Dが載置されると、上記のように取得された周波数特性データは、周波数が高くなるにつれて単調増加する曲線となる。このように両者に違いがあるため、制御部50は、その上に載置されたものが、受電コイル200aであるか、被加熱物である調理皿Dであるかを判別することができる。制御部50は、検出回路が検出した駆動回路の電気出力特性を、あらかじめ設定された判定値であって、制御部50に設けられたメモリ等に記憶された判定値と比較して負荷を判別する。
なお、負荷抵抗値Rがピークを示す周波数は、駆動回路に接続されたコイルおよび共振コンデンサから構成される共振回路の共振周波数に相当する。
次に、上記にように負荷を判別した後に行われる動作について説明する。
判別の後、制御部50は、コイル103の上に調理皿Dが載置されている場合は、コイル103を誘導加熱コイルとして動作させ、コイル103の上に受電コイル200aが載置されている場合は、コイル103を送電コイルとして動作させる。
ここではコイル103と受電コイル200aを用いて説明したが、コイル104、105、106、受電コイル200bについても同様である。
誘導加熱コイルに供給される高周波電流の大きさと、送電コイルに供給される高周波電流の大きさは、制御部50により別々に制御されるが、同じ大きさであってもよい。一例として、ユーザが操作部5、6を使用して調理皿Dの火力(あるいは温度)を設定した場合、制御部50は、誘導加熱コイルとして動作するコイルに、設定された火力に応じた大きさの高周波電流を供給するように駆動部40を制御する。または、一例として、ユーザがヒータ300の火力を設定した場合、制御部50は、送電コイルとして動作するコイルに、ヒータ300が設定された火力を出力するために必要な大きさの高周波電流を供給するように駆動部40を制御する。
例えば、コイル101、102、104、106の上に調理皿Dが載置されている場合(「最初の状態」の場合)において、ユーザが操作部5、6を使用して調理皿Dへの火力を弱める/強めるように設定したときは、制御部50は、コイル101、102、104、106へ供給する高周波電流を小さく/大きくするように駆動回路41および駆動回路43を制御する。また、例えば、この場合において、ユーザがヒータ300の火力を弱める/強めるように設定したときは、制御部50は、コイル103、105へ供給する高周波電流を小さく/大きくするように駆動回路42を制御する。
なお、高周波電流の周波数は、検出部60の検出回路で検出された複数の電気出力特性から算出した共振周波数のうち最も高い周波数を基準として決定される。その後、駆動部40の複数のスイッチング素子は、制御部50によって、決定された駆動周波数(同一の周波数)で駆動される。
駆動周波数の決定方法の一例としては、複数の駆動回路から算出された複数の共振周波数のうち、最も高い共振周波数に、あらかじめ設定しておいた所定の周波数(オフセット周波数)の値を加えた値を駆動周波数として決定する。例えば、最も高い共振周波数が20kHzであり、オフセット周波数が2kHzであるとすると、駆動部40のスイッチング素子は、22kHzの周波数で駆動される。オフセット周波数の値は、電気出力特性に応じた任意の値としてもよい。
図8a、図8bは、磁界発生コイル100上に受電機器Eが載置された場合の、磁界発生コイル100と、受電コイル200と、および調理皿Dとの位置関係の一例を表した図である。図8a、図8bでは、磁界発生コイル100の各コイル101〜106は、破線で、受電コイル200のコイル200a、200bは、斜線で、調理皿Dは、実線で示されている。便宜上、調理皿Dの下部にある磁界発生コイル100の各コイルの全部または一部も図示している。
図8aは、磁界発生コイル100と受電機器Eが位置ずれを起こしていない状態(上記の最初の状態)を示した図である。図8aの状態では、コイル100上には受電機器Eが載置されているので、コイル103およびコイル105は、送電コイルとして機能する。
図8bは、磁界発生コイル100上で受電機器Eの位置が「最初の状態」から時計回りの方向にθだけずれて(時計回りにθだけ回転して)、コイル103、105と受電コイル200a、200bとが位置ずれを起こした場合の位置関係を示している。図8bに示す位置ずれ量θは、回転ずれがないとき(「最初の状態」のとき)にθ=0°であり、時計回りの方向を正方向とする。図8bでは、受電機器Eが回転し、受電コイル200の位置が、磁界発生コイル100に対して、受電コイル200a、200bとそれぞれ対向したコイル104、106の上の領域内に侵入している。
これを負荷抵抗値Rについてみる。図8cは、θが15°、30°、45°と変化した場合の駆動回路42の負荷抵抗値Rを示す。図8cにおいて、縦軸は、駆動回路42の出力負荷特性であるインピーダンスのうち、負荷抵抗値Rを示し、横軸は、駆動回路42の駆動周波数を示す。位置ずれ量θが、0°から15°、30°、45°と大きくなるに従って、受電コイル200aとコイル103とが重なる面積が減少していき、コイル103の駆動回路42の負荷抵抗値のピークが小さくなっていく。これと同時に、図示しないが、受電コイル200aとコイル104とが重なる面積が増加していくため、コイル104の駆動回路43の負荷抵抗値Rのピークは逆に大きくなっていく。このように、負荷抵抗値のピークの変化を観察することで、位置ずれ量θを把握することができる。つまり、本発明の実施の形態1において、誘導加熱調理器1は、位置ずれ判別手段を有する。
このようにして、制御部50は、負荷抵抗値の周波数特性から位置ずれを判別し、受電コイル200との位置ずれ量が小さいコイルを送電コイルとするように駆動回路を制御する。図8bに示すように、制御部50は、位置ずれ量θがあらかじめ設定した所定の判定値より大きいと判断した場合、送電コイル(コイル103、105)を誘導加熱コイルに、誘導加熱コイル(コイル104、106)を送電コイルに切り替えるように駆動部40を制御する。その結果、駆動部40は、誘導加熱用の電力に応じた高周波電流をコイル103、105に、ヒータ300の電力に応じた高周波電流を104、106に供給する。
このように、コイル104、106は、位置ずれの前には誘導加熱コイルとして、位置ずれの後には送電コイルとして機能する。他方、コイル103、105は、位置ずれの前には送電コイルとして、位置ずれの後には誘導加熱コイルとして機能する。
なお、図8dに示すように、図8cがピークを有するのとは対照的に、調理皿Dなどの被加熱物に対向する磁界発生コイル100を駆動する駆動回路41、42または43の負荷抵抗値は、駆動周波数が増加すると大きくなる単調増加の傾向を示す。この負荷抵抗値は、位置ずれθが発生すると、位置ずれがない場合に比べて減少する。図8dの実線は、位置ずれがない場合の負荷抵抗値を示し、破線は、位置ずれがある場合の負荷抵抗値を示している。
以下、磁界発生コイルの各コイルの機能を決定する具体的な方法について更に説明する。
図8aを再び参照すると、位置ずれがない場合(θ=0°)、受電コイル200のうち200aが磁界発生コイル100のコイル103と、受電コイル200bが磁界発生コイル100のコイル105と対向している。トッププレート3上の受電機器Eが磁界発生コイル100に対して回転してずれて、位置ずれ量θが大きくなるほど、受電コイル200aと磁界発生コイル103とが重なる面積が減少する一方で、受電コイル200aと磁界発生コイル104とが重なる面積が増加する。
図9a、図9bを参照して、この場合の受電コイル200およびコイル103、104の位置関係と、駆動部40の負荷特性との相関について説明する。図9aにおいて、横軸は、駆動回路42の駆動周波数を示し、縦軸は、駆動回路42の出力負荷特性であるインピーダンスのうち、負荷抵抗値R1を示している。図9bにおいては、横軸は、駆動回路43の駆動周波数を示し、縦軸は、駆動回路43の出力負荷特性であるインピーダンスのうち、負荷抵抗値R2を示している。
図9aは、コイル103を駆動する駆動回路42の負荷抵抗値R1の周波数特性図であり、図9bは、コイル104を駆動する駆動回路43の負荷抵抗値R2の周波数特性図である。図9a、図9bの負荷抵抗値の周波数特性は、図8cにも示したように、ある周波数においてピークを有する。
図8aを参照すると、位置ずれ量θ=0°の時点では、コイル104上には調理皿Dが載っており、コイル103上に受電コイル200aが対向している。θが大きくなるに連れて、受電コイル200aがコイル104上に近づいていき、θ=90°では、受電コイル200aがコイル104上に存在する。なお、図9aには図示しないが、調理皿Dは、θ=0°の時はコイル104、106上にあり、θ=90°の時はコイル103、105上にある。なお、位置ずれがあってもなくても(位置ずれ量θがいかなる値であっても)、中央のコイル101、102の上方には調理皿Dがある。
再び図9aを参照して、これをコイル103を駆動する駆動回路42の負荷抵抗値R1についてみると、位置ずれ量θ=0°の時点では、R1は最大値を有する。θが(90°以下の場合は)大きくなるに連れて、受電コイル200aとコイル103とが重なる面積が減少していくため、R1のピークは、小さくなっていく。
他方、図9bを参照して、コイル104を駆動する駆動回路43の負荷抵抗値R2に着目すると、位置ずれ量θが(90°以下の場合は)0°から大きくなるに連れて、受電コイル200aとコイル104とが重なる面積が増加していくため、R2のピークは、大きくなっていく。そして、θ=90°のとき、R2は、最大となる。換言すれば、コイル104と受電コイル200aの位置ずれ量φが0°であることを意味する。ここで、位置ずれ量φは、図8bに示すように、(θがコイル103と受電コイル200aの位置ずれ量を指すのに対して)コイル104と受電コイル200aの位置ずれ量を指し、(θが90°以下の場合は)θと以下の関係にある。
φ=90°−θ
このように、負荷抵抗値のピークの変化を観察することで、位置ずれ量を把握することができる。
位置ずれ量θと負荷抵抗値R1、R2のピーク値の変化の関係を図10a、bに示す。図10aの左側の図は、図9aで示したコイル103を駆動する駆動回路42の負荷抵抗値R1の周波数特性を示すグラフであり、右側の図は、横軸を位置ずれ量θとして、R1のピーク値のみをプロットしたコイル103の負荷特性カーブTを示すグラフである。図10bの左側の図は、図9bで示したコイル104を駆動する駆動回路43の負荷抵抗値R2の周波数特性を示すグラフであり、右側の図は、横軸を位置ずれ量θとして、R2のピーク値のみをプロットしたコイル104の負荷特性カーブUを示すグラフである。
コイル103と受電コイル200aの位置ずれ量θが増加する(すなわち、コイル104と受電コイル200aの位置ずれ量φが減少する)に連れて、図10aに示すようにR1のピーク値が減少する一方で、図10bに示すようにR2が増加する。制御部50は、この負荷抵抗値R1、R2の変化の方向を観測することによって、位置ずれ量θ、φを把握し、磁界発生コイル100のうち、受電コイル200との位置ずれ量θ、φが最も少ないコイルを検出し、このコイルを送電コイルとして動作させることができる。
図10a、bを参照して、各コイルを送電コイルから誘導加熱コイルへ、または誘導加熱コイルから送電コイルへ切り替える判断基準の一例を説明する。
図10aでは、コイル103(105)に関連する負荷特性カーブTがあらかじめ設定した第一の閾値より大きい場合、制御部50は、コイル103(105)を送電コイルとして動作させる。一方、位置ずれ量θが大きくなり、負荷特性カーブTがあらかじめ設定した第二の閾値より小さくなったことを検出すると、制御部50は、コイル103(105)を誘導加熱コイルとして動作させる。つまり、負荷特性カーブTが第二の閾値より小さくなる領域は、コイル103、105上に調理皿Dが対向するように載置された状態であることを示す。
負荷特性カーブTが第一の閾値と第二の閾値との間にある場合、送電コイル103(105)と受電コイル200a(200b)との位置ずれ量θが大きい状態であり、受電電力が十分に得られない可能性がある。そこで負荷特性カーブTが第一の閾値と第二の閾値との間にある場合においては、制御部50は、コイル103(105)の駆動を停止するように制御して、受電機器を動作させなくてもよい。これにより、効率の良い給電動作を行うことができる状態でのみ機器を動作させることになるため、効率の良い送受電動作を実現することができる。なお、動作停止期間は食材への加熱動作が停止するため、調理が行われない可能性がある。そこで、制御部50は、表示部7等を介して、使用者にずれを修正するよう報知してもよい。これによって、位置ずれが修正された状態で、加熱を継続することができ、調理の仕上がり状態を損なわない。
つまり、コイル103、105の負荷特性カーブTにおいて、第一の閾値より大きな負荷特性が得られる領域は、非接触給電動作領域であり、第二の閾値より小さい負荷特性が得られる領域は、誘導加熱動作領域であり、両者の間の領域は、動作停止領域であるといえる。
コイル103、105の動作停止領域において、コイル101、102は、動作を継続するように制御されてもよい。あるいは、磁界発生コイル100の全てのコイルの駆動が停止されてもよい。
なお、第一の閾値および第二の閾値は、給電動作、あるいは誘導加熱動作の状態、たとえば効率等によって調理が適正に行える電力が得られるように求めた値でもよい。また、第一の閾値および第二の閾値は、位置ずれ量の値であってもよい。
図10bでは、コイル104(106)に関連する負荷特性カーブUがあらかじめ設定した第四の閾値より小さい場合、制御部50は、コイル104(106)を誘導加熱コイルとして動作させる。一方、位置ずれ量θが大きくなり、負荷特性カーブUがあらかじめ設定した第三の閾値より大きくなったことを検出すると、制御部50は、コイル104(106)を送電コイルとして動作させる。ここで、第三の閾値の大きさは、第四の閾値以上である。
負荷特性カーブUが第三の閾値と第四の閾値との間にある場合は、送電コイル104(106)と受電コイル200aとの位置ずれ量θが大きい状態であり、受電電力が十分に得られない可能性がある。そこで負荷特性カーブUが第三の閾値と第四の閾値との間にある場合においては、制御部50は、コイル104(106)の駆動を停止するように制御して、受電機器を動作させなくてもよい。これにより、効率の良い給電動作を行うことができる状態でのみ機器を動作させることになるため、効率の良い送受電動作を実現することができる。なお、動作停止期間は食材への加熱動作が停止するため、調理が行われない可能性がある。そこで、制御部50は、表示部7等を介して、使用者にずれを修正するよう報知してもよい。これによって、位置ずれが修正された状態で、加熱を継続することができ、調理の仕上がり状態を損なわない。
つまり、コイル104、106の負荷特性カーブUにおいて、第三の閾値より大きな負荷特性が得られる領域は、非接触給電動作領域であり、第四の閾値より小さい負荷特性が得られる領域は、誘導加熱動作領域であり、両者の間の領域は、動作停止領域であるといえる。
コイル104、106の動作停止領域において、コイル101、102は、動作を継続するように制御されてもよい。あるいは、磁界発生コイル100の全てのコイルの駆動が停止されてもよい。
第一の閾値は、第三の閾値と同じ値に設定されても、異なる値に設定されてもよい。同様に、第二の閾値は、第四の閾値と同じ値に設定されても、異なる値に設定されてもよい。
同じ値を設定した場合、コイル103、105およびコイル104、106の動作モードは、同時に切り替わる(相補関係となる)ように制御されてもよい。
異なる値を設定する場合において、例えば、位置ずれに対する誘導加熱動作の許容範囲を大きくしてもよいときは、負荷特性カーブUの第三の閾値と第四の閾値との差が小さくなるように、つまり、コイル104、106の動作停止期間が短くなるように設定してもよい。
逆に、例えば、ヒータへの給電動作を優先したいときは、負荷特性カーブTの第一の閾値と第二の閾値との差が小さくなるように、つまり、コイル103、105の動作停止期間が短くなるように設定してもよい。
なお、位置ずれ量θが大きくなっても磁界発生コイル100の各コイルが駆動させ続けられた場合において、例えば誘導加熱コイルとして動作していたコイル104、106が受電コイル200に近づいて行ったときは、受電コイル200は、誘導加熱コイル104、106から発生する磁場により受電することも可能である。
逆に、位置ずれによって送電コイルとして動作していたコイル103、105が調理皿Dに近づいて行ったときは、送電コイル103、105から発生する磁場により調理皿Dが誘導加熱される。
このように、位置ずれ状態に関係なく、磁界発生コイル100を駆動し続けることによって、誘導加熱動作および給電動作が途切れないようにしてもよい。
以上のように、磁界発生コイル100のどのコイルを送電コイルと誘導加熱コイルのどちらとして動作させるかを、駆動部40の電気出力特性に応じて決定することで、効率の良い誘導加熱動作または給電動作をすることができる。また、受電機器Eの位置ずれに応じて、磁界発生コイル100の機能を切り替えることで、位置ずれが発生しても、受電機器E内の食材を加熱するのに必要な電力を供給し続ける事ができ、調理の仕上がりに影響が出ないようにすることができる。また、上記では、受電コイル200との位置ずれ量と、駆動回路の負荷抵抗のピーク値のみをプロットした負荷特性カーブを用い、負荷特性カーブと第一から第四の閾値との関係によりコイル動作を切り替えるように説明したが、図8dに示した、調理皿Dを誘導加熱する磁界発生コイル100を駆動する駆動回路の負荷抵抗値の周波数特性と位置ずれとの関係を用い、所定の閾値を設けて、磁界発生コイルの動作を決定してもよい。
上記の説明では、時計回りに位置ずれした例を説明したが、本発明の実施の形態1にかかる誘導加熱調理器は、反時計回りに位置ずれした場合も同様に動作することができる。
図11a、bは、磁界発生コイル100と受電機器Eの位置関係を模式的に表した図である。図11a、bは、コイル101〜106の6つのコイルで構成された磁界発生コイル100と、受電機器Eの内部に収納された調理皿Dと、および受電コイル200との位置関係を示した図である。図11aは、位置ずれがない状態(最初の状態)を示している。
図11aでは、調理皿Dは、駆動回路41によって駆動されるコイル101、102および駆動回路43によって駆動されるコイル104、106の4つのコイルが発生する磁界によって誘導加熱される。つまり、コイル101、102、104、106は、誘導加熱コイルとして機能している。ヒータ300は、駆動回路42によって駆動されるコイル103、105が発生する磁界から、受電コイル200が受電した電力によって発熱する。つまり、コイル103、105は、送電コイルとして機能している。
図11bは、受電機器Eと磁界発生コイル100との間に位置ずれがある状態を示している。この状態は、図8bの状態に対応する。
位置ずれが発生すると、磁界発生コイル100の各コイルと、調理皿Dおよび受電コイル200との位置関係にずれが発生する。例えば、誘導加熱コイルとして動作しているコイル104上に、受電コイル200aが対向することになる。例えば、調理皿Dは、送電コイルとして動作しているコイル105と対向することになる。
なお、調理皿Dは、磁性体で構成されており、図11a、bにおいては抵抗および1ターンのコイルで模擬している。図11a、bでは、コイル101とコイル102、コイル103とコイル105、コイル104とコイル106は、それぞれ直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。コンデンサ81〜83は、図11a、bではコイルと直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。受電コイル200aと受電コイル200bは、図11a、bでは直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。また、コンデンサ84は、図11a、bでは受電コイル200と並列に接続されているが、直列に接続されてもよい。つまり、調理皿Dやヒータ300に所望の電力を供給できる構成であれば、図11a、bに示す構成に限定されない。
図11bのように位置ずれがある状態では、調理皿Dを加熱する電力およびヒータ300が発熱するのに必要な電力が供給されず、調理の仕上がりが不十分となる。そこで、図8a、bで説明したように、制御部50は、検出部60の検出回路で位置ずれを検出し、磁界発生コイル100の各コイルの機能を切り替える。
例えば、調理皿Dを加熱する電力を供給する高周波電流をId、および受電コイル200を電磁誘導させてヒータ300を発熱させるために必要な高周波電流Ihとすると、位置ずれがない状態では、コイル103、105にはIhが供給され、コイル104、106にはIdが供給される。他方、位置ずれが発生した状態では、コイル104、106にはIhが、コイル103、105にはIdが供給される。
なお、図11a、bでは、説明の便宜上、磁界発生コイル100および受電機器Eの各構成要素を模式的に表すように、各コイルの位置は、直線上に並べて表示されている。そのため、磁界発生コイル100および受電機器Eの各構成要素の図11a、bにおける位置は、実際の位置、例えば図8a、bが示す位置とは異なっている。例えば、位置ずれ状態を示す図11bでは、コイル103は、受電コイル200bと対向し、図8bが示す位置と合致しない。しかし、これは説明の便宜上の、図面上の差にすぎないものであると理解されるべきである。
なお、回転方向に位置ずれがあっても、調理皿Dと、コイル101、102とは、常に対向する。換言すれば、調理皿Dは、コイル101、102との関係では位置ずれが発生しない。したがって、駆動回路41は、回転方向の位置ずれが発生してもしなくても、誘導加熱コイルとしての動作を継続する。
上記のようにコイル機能を切り替える場合、制御部50は、磁界発生コイルまたは受電機器Eへ影響(例えば、駆動部40の急激な負荷の変動による損失発生など)を抑制するため、コイルへの高周波電流の供給を一旦停止するように駆動部40を制御する。その後、再び磁界発生コイル100に高周波電流を供給する際は、検出部60により負荷検出動作が行われ、検出された負荷特性に応じて駆動周波数が再度決定され、位置ずれ発生以前と同等の電力が受電機器Eの各構成要素に供給される。
以上の各コイルの動作の例を、図12のチャート図を参照して説明する。図12は、コイル101、102およびコイル104、106によって調理皿Dを加熱し、コイル103、105によって受電コイルに送電する例を示すチャート図である。
図12において、白抜きのブロックは、コイルが誘導加熱コイルとして動作していることを示し、斜線のブロックは、コイルが送電コイルとして動作していることを示している。また、図12には、駆動回路41〜43の駆動状態(駆動または停止)も示されている。
図12を参照して、位置ずれがない状態(動作Aの区間)について説明する。動作Aの区間では、コイル101、102およびコイル104、106は、駆動回路41、43により、誘導加熱コイルとして動作している一方で、コイル103、105は、駆動回路42により、送電コイルとして動作している。なお、駆動部40の駆動回路41〜43は、ここでは図示しない制御部50によって、図12に示すような動作をするように制御されている。
ここでは図示しないが、位置ずれがない場合において、受電機器E内の食材を、調理皿Dを誘導加熱させる動作のみによって加熱する場合は、駆動回路41および43は、コイル101、102、104、および106に高周波電流を供給するように、制御部50によって制御される。また、受電機器E内の食材をヒータ300による加熱動作のみによって加熱する場合は、駆動回路42は、コイル103、105に高周波電流を供給するように、制御部50によって制御される。
さらに、コイル101、102およびコイル104、106は、単独で動作することが可能である。例えば、食材が小さく、調理皿Dの中央付近にのみ食材を載せて加熱する場合、食材の乗っている部分に対応するコイル101、102のみを誘導加熱コイルにし、食材の乗っていない部分のコイル104、106を停止させることにより、電力消費を低減できる。逆に、大きな食材の場合は、コイル101、102およびコイル104、106のすべてを使用して誘導加熱動作を行うことで、ムラなく食材を加熱することができる。さらに、ヒータ300だけで上面から食材を加熱する場合は、ヒータ300を発熱させるため、駆動回路42を駆動してコイル103、105を送電コイルとして動作させればよい。
次に、位置ずれが発生した場合について説明する。この場合、受電コイル200aおよび200bの一部または全部が、コイル104、106と対向する位置にある。この場合、検出部60は、位置ずれ量を検出し、制御部50は、所定の判定値に基づいて、コイル104、106およびコイル103、105を、送電コイルとして動作させるか、誘導加熱コイルとして動作させるかを判断する。図12の動作Bの区間では、コイル104、106が送電コイルとして、コイル103、105が誘導加熱コイルとして動作する例について示す。
動作Cは、位置ずれが発生した状態で、受電機器E内の食材をヒータのみによって加熱する例を示している。この状態では、制御部50は、駆動回路41、43の動作を停止させ、コイル101、102およびコイル103、105への高周波電流の供給を停止させる。他方、制御部50は、駆動回路42を駆動し、コイル104、106に高周波電流を供給して送電コイルとして動作させる。このようにして、ヒータ300には受電コイル200a、200bを通じて非接触で電力が供給される。なお、位置ずれが無い場合に、ヒータ300のみを動作させるときは、コイル103、105のみが駆動されるのは言うまでも無い。
動作Dは、位置ずれが発生した状態で、コイル101、102、およびコイル103、105が誘導加熱コイルとして動作している場合を示している。この場合、受電機器E内の調理皿Dは、誘導加熱によって電力を供給され、食材を加熱している。動作Dでは、駆動回路42は、制御部50によって停止され、コイル104、106には高周波電流は供給されず、ヒータ300は発熱しない。なお、位置ずれが無い場合に、調理皿Dのみを加熱させるときは、コイル101、102、104、106のみが駆動されるのは言うまでも無い。
磁界発生コイル100を構成するコイルの数は、以上に示したものに限定されない。一例として、図13は、中央のコイル111と、コイル111の周囲を取り囲むように配置された小径のコイル112〜119とを含む磁界発生コイル110を示す。各々のコイルを独立または同時に駆動させる駆動回路を設け、検出回路によって負荷が載置されている位置や大きさを検出することによって、必要なコイルだけを駆動させることができる。図13に示すコイルの配置および数は、一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。また、磁界発生コイル110のそれぞれのコイルの間隙部に、各種のセンサが配置されてもよい。
図14a〜cは、コンロ10に配設されたコイル120が4つの小径のコイルから構成されている場合を示している。図14aは、これらの複数のコイル121〜124が連携して被加熱物L1を加熱する様子を示している。なお、図中の×印は、コイル120の中心軸を示すもので、説明の便宜上、付加した記号である。
図14bは、ここでは図示しないトッププレート3を介して、コイル120上に複数の負荷L1、L2が載置されている様子を示している。図14bは、位置ずれのない「最初の状態」を表している。制御部50は、検出部60によって受電機器Eの位置を検出し、あらかじめ設定された判定値と比較して、コイル121、123には負荷が十分に載置されていないと判断すると、制御部50は、コイル121、123の駆動を停止させる。
図14cは、受電機器Eが、「最初の状態」から、コイル100上で、図14aに示したコイル120の中心軸×を回転中心(回転軸)として、反時計回りに90°回転した状態を示している。この場合、制御部50は、検出部60によって受電機器Eの位置を検出し、あらかじめ設定された判定値と比較して、コイル122、124には負荷が十分に載置されていないと判断すると、駆動部40を制御して、コイル122、124の駆動を停止させる。なお、上記で示した受電機器Eの回転方向や回転の角度は、説明の便宜上のものであり、本発明の実施の形態1を限定するものではない。
図14cのように、受電機器EのL1(調理皿D)と受電コイルL2の位置がずれるなどして変わると、検出部60がこの変化を検出し、制御部は、駆動するコイルを切り替えるように動作する。例えば、受電機器Eが最初の状態から反時計回りに90°回転して位置ずれする前の時点で、負荷L1と対向するコイル124に高周波電流I1が、負荷L2と対向するコイル122に高周波電流I2が供給されていたとすると、位置ずれ後は、負荷L1と対向するコイル123にはI1が、また負荷L2と対向するコイル121にはI2が供給される。このように、調理皿Dおよびヒータは、回転する直前に加えられていた電力と同じ電力で加熱される。
以上で述べたように、誘導加熱調理器の検出部によって位置ずれを検出し、位置ずれの状態に応じて適切に誘導加熱コイルの動作を切り替えるように制御することにより、位置ずれ前と同じ電力で、調理皿またはヒータによる食材の加熱調理を継続することができるので、位置ずれによる調理の仕上がりへの影響を抑制することができる。また、位置ずれが発生しても、ユーザが電力を設定し直す必要がない。したがって、利便性の良い調理器を得る事ができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1と同様の誘導加熱調理器1を用いるが、磁界発生コイル100の各コイル101〜106を、誘電加熱用コイルから送電コイルへ、または送電コイルから誘電加熱用コイルへと切り替える条件について実施の形態1とは異なる。以下では、実施の形態1と異なる点を中心に説明し、その他の部分については実施の形態1と同様であるため、原則として重複説明を省略する。
図15を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図15は、受電機器Eが磁界発生コイル100に対して回転ずれを起こした場合における、送電コイルと受電コイルとの間の送電効率の変化を示した実測データをプロットした図である。図15において、縦軸は、送電効率、横軸は、位置ずれ量θである。
本発明の実施の形態2では、磁界発生コイル100の各コイル101〜106を、誘電加熱用コイルから送電コイルへ、または送電コイルから誘電加熱用コイルへ切り替えるか否かは、送電効率の値に応じて判断される。換言すれば、位置ずれの有無または位置ずれ量の大小は、送電効率の値に基づいて判断される。
ここで、「送電効率」とは、検出部60により検出される駆動部40の電気出力特性から導かれる送電コイル側の電力に対する、受電機器E内の検出手段64により検出される電気出力特性から導かれる受電コイル側の電力の割合を指す。「送電効率」は、通常、給電効率または単に効率とも呼ばれる。
例えば、磁界発生コイル100と受電機器Eとの間の位置ずれ量が大きくなればなるほど、送電コイルとして動作しているコイルと受電コイルとの間の磁気結合が弱くなり、送電効率が低下する。このようにして、送電効率があらかじめ設定した所定の値より低くなった場合、コイルの動作の切替えがされてもよい。
あらかじめ設定した所定の値と比較する代わりに、駆動回路の1つ以上を送電モードにした各場合のうち、最も送電効率が高い場合が選択されて、その状態により調理がされてもよい。代わりに、駆動回路の1つ以上を送電モードにした場合、例えば「最初の状態」における送電効率と、現在の送電効率とを比較して、各コイルの動作モードが切り替えられてもよい。例えば、「最初の状態」では、図8aのように、コイル103、105が送電コイルであり、コイル104、106が誘導加熱コイルであったとすると、送電効率が、位置ずれによって、位置ずれがない場合の50%以下になった場合に、コイル103、105が誘導加熱コイルに、コイル104、106が送電コイルに切り替えられてもよい。
このように、送電効率の変化に応じてコイル動作の切替えを判断することにより、効率のよい加熱調理を継続することができるので、位置ずれによる調理の仕上がりへの影響を抑制することができる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、本発明の実施の形態1と同様の誘導加熱調理器1を用いるが、磁界発生コイル100の各コイル101〜106を、誘電加熱用コイルから送電コイルへ、または送電コイルから誘電加熱用コイルへと切り替える条件について実施の形態1とは異なる。以下では、実施の形態1と異なる点を中心に説明し、その他の部分については実施の形態1と同様であるため、原則として重複説明を省略する。
本発明の実施の形態3では、送電コイルの駆動部および誘導加熱コイルの駆動部のそれぞれの電気出力特性を検出し、この電気出力特性の変化を検出することによって、位置ずれの有無または位置ずれ量の大小を検出する。これによって、実際の状態に応じて判定するので、位置ずれの判断基準をあらかじめ設定しておく必要がなく、精度のよい判定が可能となる。
図16a、bを参照して、実施の形態3について説明する。図16a、bは、コイルを駆動する駆動回路の負荷抵抗値の周波数特性を表すグラフであり、縦軸は負荷抵抗値、横軸は駆動周波数を表す。
図16aは、トッププレート3上に受電機器Eが載置され、位置ずれがない場合のコイル103、105を駆動する駆動回路42の負荷抵抗値R1の周波数特性(特性カーブV)、およびコイル104、106を駆動する駆動回路43の負荷抵抗値R2の周波数特性(特性カーブW)を示している。横軸は、(負荷の検知時にスイープさせた)駆動周波数である。負荷抵抗値R1は、特定の周波数f0で最大値(ピーク値)を有するように変化する。なお、特定の周波数f0は、磁界発生コイル100上に受電機器Eが載置された場合に、送電コイル103、105と受電機器Eに内蔵された受電コイル200a、200bが結合して得られるインダクタンスと共振コンデンサによって求まる共振周波数である。他方、調理皿Dと対向したコイル104、106を駆動する駆動回路43の負荷抵抗値R2は、周波数の増大に伴って単調増加する。したがって、制御部50は、負荷を検出することにより、図16a、bに示す周波数−負荷特性の関係を用いて、受電機器Eの載置状態を瞬時に判断することができる。
その負荷検出方法について説明する。制御部50は、加熱に不十分であるが負荷特性を検出できる程度の高周波電流を各磁界発生コイルに供給し、高周波電流の周波数を任意のステップで、例えば1kHz刻みで、変化させることにより周波数掃引(スイープ)させながら、負荷特性を検出することで、負荷特性の検出動作を行う。このようにして負荷の周波数特性が得られる。
図16bは、位置ずれが生じた場合の負荷抵抗R1、R2の周波数特性を示している。位置ずれが発生すると、特性カーブVのピークは低下し、逆に特性カーブWには、ピークを持つ点が現れる。検出部60により、一方の特性カーブにおいて負荷抵抗値が低下し、または他方の特性カーブにおいてピーク点が出現してきたことが検出されると、制御部50は、各磁界発生コイル100の動作モードを変更するか否かを判定する。換言すれば、制御部50は、位置ずれ前後の特性カーブの変化という検出結果に基づき、位置ずれ量を判定することができる。なお、ピークの出現などの特性カーブの変化の有無の判断は、あらかじめ設定した値と比較することによってされてもよい。
ところで、広範囲の周波数領域をスイープして検出することは、処理時間がかかる可能性があるため、検出範囲は限定されるほうが好ましい。したがって、負荷特性カーブにおいてピークが出現する周波数f0があらかじめ判明している場合は、定期的な負荷特性の検出は、周波数f0±αの周波数範囲のみをスイープすることによって行われてもよい。このようにすることでピークを検出するための処理時間が短縮可能となる。ここで、αは、周波数f0±αの周波数範囲をスイープすることによって負荷特性のピークを検出することができる周波数範囲であり、可能な限り小さい値であることが好ましい。
この負荷特性のピークの出現(変化)を検出する事によって、誘導加熱動作中でも位置ずれの発生を検出することが可能となる。位置ずれを検出した場合は、ピーク値の大きさに応じて、一旦駆動が停止され、再度、受電機器の検出動作が実行されてもよい。あるいは、あらかじめ設定した位置ずれ量の許容範囲内であれば、駆動は、停止されず、継続されてもよい。
なお、以上では、各コイルの動作モードの初期状態として、コイル103、105を送電コイル、コイル101、102およびコイル104、106を誘導加熱コイルとして説明したが、これは、本発明を限定するものではない。例えば、受電機器Eの調理皿Dの向きによっては、コイル104、106を送電コイル、コイル103、105を誘導加熱コイルとしてもよい。
以上で述べたように、特性カーブが互いに異なる形状に変化したことを検出することによって位置ずれを検出し、その検出結果を用いてコイルの動作モードを切り替えるか否かが決定されるという簡単な判定方法で、動作モードを決定することができる。したがって、実際の状態に応じて判定するので、ずれの判断基準をあらかじめ設定しておく必要がなく、精度のよい判定が可能となり、磁界発生コイルの動作の制御を適切に行う事ができる。したがって、位置ずれによる加熱調理への影響を最小限に抑制することができ、食材の加熱調理の仕上がりを損なうことなく調理を継続できる誘導加熱調理器を実現することができる。