JP2018189448A - 動的設備の診断システムとその方法とそのプログラム - Google Patents

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弦也 松田
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Abstract

【課題】低速で回転駆動される動的設備の診断を高ノイズ環境下においても高精度に行うことが可能なシステムとその方法とそのプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の動的設備の診断システム1は、診断対象物からAE波を検出するAEセンサ2と、AEセンサ2の出力信号をデジタル化してAE信号を生成する測定装置3と、AE信号を処理する処理装置4と、閾値等を設定するための入力装置5と、内部にAE信号データベース6a、スペクトルデータベース6b、モデルデータベース6c、評価データベース6dが構築された記憶装置6と、各種の信号や処理結果等を出力する出力装置7を備えており、処理装置4は、高速フーリエ変換処理部4aと、平滑処理部4bと、モデリング部4cと、残差演算部4dと、評価部4e,4fによって構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転機械などの動的設備の状態を監視してその診断を行うシステムとその方法及びそのプログラムに係り、特に、診断対象物から放出されるAE(Acoustic Emission )波を解析することにより、初期の損傷の兆候の発見と、その発生箇所の特定を可能とした動的設備の診断システムとその方法とそのプログラムに関する。
化学プラントや食品製造工場において、製品の原材料を垂直搬送する設備として使用されているバケットエレベータでは、原材料への潤滑油の混入を防ぐため、一般に、チェーン−スプロケット系が無潤滑で運転されている。また、バケットエレベータでは、チェーンに固定されたバケットから運搬物が排出される際に、運搬物が搬出口に衝突することによってノイズが発生する。
回転機械では、運転時に発生する振動を検出し、その信号に基づいて、異常の有無等の判断が行われることが多い。これに対し、バケットエレベータのような低速回転機械では、検出される信号そのものが微弱であることに加え、損傷の発生を示す信号がチェーン−スプロケット系の運転時や運搬物の搬出時に発生する高いノイズの中に埋もれ易い。そのため、高ノイズ環境下で使用される低速回転機械について、その状態監視と診断を正確に行うことは、従来、困難であった。
回転機械の診断を行う装置としては、例えば、特許文献1に「データ収集装置及び該データ収集装置を備えた設備機器の診断装置」という名称で、低速回転や高速回転を行う種々の設備機器の異常診断分析を行う装置とそれに用いられるデータを収集する装置に関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示された発明は、複数のセンサからの出力信号からセンサごとにデータを取り込むデータ取り込み回路と、センサごとにサンプリング時間及びサンプリング周波数を設定できるサンプリング条件設定手段と、サンプリングしたデータを外部へ送信するデータ送信手段を備えたことを特徴としている。
このような構造によれば、回転機器から振動波形等のデータをサンプリングする場合に、サンプリング時間やデータ点数等の条件を回転速度に応じて容易に変更できるため、作業性が良い。
特開2011−27452号公報
しかしながら、回転機器の回転速度が遅い場合には、異常を示す信号自体が微弱なものとなるため、特許文献1に開示された発明では、そのような信号を検出することが困難であるという課題があった。また、当該発明では、設備機器に関する異常の有無の判断が時系列信号に基づいて行われることから、検出しようとする信号以外に同期信号が必要となり、信号の処理が煩雑になるという課題があった。
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、低速で回転駆動される機械設備の診断を高ノイズ環境下においても高精度に行うことが可能なシステムとその方法とそのプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る動的設備の診断システムは、診断対象物から発生するAE波を検出してアナログの電気信号に変換するAEセンサと、電気信号をデジタル化してAE信号を生成する測定装置と、AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る高速フーリエ変換処理部と、パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域での自己回帰モデルを構築するモデリング部と、自己回帰モデルにパワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する残差演算部と、残差信号から診断対象物の異常の有無を判断する評価部と、を備えたことを特徴とするものである。
AEとは、材料に変形や亀裂が生じる際に、内部に蓄えられていた微小なエネルギーが弾性波として放出される現象であるが、本発明の動的設備の診断システムは、この弾性波(AE波)をAEセンサによって検出する構成となっている。したがって、本発明においては、診断対象物における異常の発生を示す情報がAE波とともに取得されるという作用を有する。
また、本発明は、周波数領域で構築した自己回帰モデルに対して、検出したAE波から生成したパワースペクトル信号を入力して、その入力信号と出力信号から残差信号を取得する構成となっているため、残差信号のSN比が向上するという作用を有する。
さらに、本発明では、周波数領域で自己回帰モデルを構築する構成となっていることから、時間領域で自己回帰モデルを構築する場合とは異なり、データの平均化を行う際に用いられる同期を取るための参照信号を必要としないという作用を有する。
また、第2の発明は、第1の発明において、モデリング部は、AICに基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、自己回帰モデルを構築することを特徴とするものである。
AEセンサによって検出されたAE波から得られたパワースペクトル信号は、高周波帯域の場合であっても時系列信号に比べて、変動の周期が大きいため、モデルの追従が容易である。したがって、AICを周波数領域に用いることを特徴とする本発明に係る動的設備の診断システムにおいては、低次数で高精度なモデリングが実現可能となる。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、高速フーリエ変換処理によって得られたパワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う平滑処理部を備えたことを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断システムでは、平滑処理の際の畳み込み演算により異常成分が強調されることから、第1の発明又は第2の発明の作用に加えて、残差演算部の演算によって、ノイズ成分が除去されるとともに、異常成分が強調された状態で含まれる残差信号が得られるという作用を有する。
第4の発明に係る動的設備の診断方法は、診断対象物から発生するAE波をAEセンサによって検出してデジタルデータからなるAE信号を生成する工程と、AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る工程と、パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域で自己回帰モデルを構築する工程と、自己回帰モデルにパワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する工程と、残差信号から診断対象物の異常の有無を判断する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断方法においては、第1の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであり、その作用は第1の発明と同様である。
第5の発明は、第4の発明において、AICに基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、自己回帰モデルを構築することを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断方法においては、第2の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであり、その作用は第2の発明と同様である。
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明において、高速フーリエ変換処理によって得られたパワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う工程を備え、この平滑処理がなされたパワースペクトル信号を第1の信号及び第2の信号として用いることを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断方法においては、第3の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであり、その作用は第3の発明と同様である。
第7の発明は、AE波に基づいて診断対象物の異常の有無を判断するために、コンピュータによって実行される動的設備の診断プログラムであって、診断対象物から発生するAE波をAEセンサによって検出してデジタルデータからなるAE信号を生成する工程と、AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る工程と、パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域での自己回帰モデルを構築する工程と、自己回帰モデルにパワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する工程と、残差信号から診断対象物の異常の有無を判断する工程と、を実行させることを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断プログラムにおいては、第4の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであり、その作用は第4の発明と同様である。
第8の発明は、第7の発明において、AICに基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、自己回帰モデルを構築することを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断プログラムにおいては、第5の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであり、その作用は第5の発明と同様である。
第9の発明は、第7の発明又は第8の発明において、高速フーリエ変換処理によって得られたパワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う工程を備え、この平滑処理がなされたパワースペクトル信号を第1の信号及び第2の信号として用いることを特徴とするものである。
上記構成の動的設備の診断プログラムにおいては、第6の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであり、その作用は第6の発明と同様である。
なお、上述の第1の発明と第4の発明と第7の発明における「異常の発生を示す情報を含む」とは、「異常の発生を示す情報を含んでいると疑われる」場合も含むものとする。すなわち、「第1の信号」は、異常の発生を示す情報を含んでいないことが明らかな信号であるが、「第2の信号」には、診断の結果、異常を示す情報が抽出されなかった信号も含まれるからである。
以上説明したように、第1の発明によれば、診断対象物に異常が発生しているか否かの評価に用いる残差信号のSN比が高いため、高周波帯域のパワースペクトル信号から損傷の初期状態に表れる兆候を抽出することができるとともに、低周波数帯域のパワースペクトル信号に基づいて損傷個所の同定を行うことが可能である。また、同期信号を取るためのチャンネルを測定装置に設ける必要がないため、AE波の測定を簡便に行うことができる。
第2の発明によれば、低次数で高精度な自己回帰モデルの構築が可能となることから、診断対象物について異常の発生を示す情報をAE信号から抽出し、損傷の進展具合に関する判断や損傷の発生箇所の同定を第1の発明の場合よりもさらに高精度に行うことができる。
第3の発明によれば、診断対象物について異常の発生に関する情報を示す異常成分が強調された状態で残差信号に含まれることから、第1の発明又は第2の発明の効果がより一層発揮される。
第4の発明は、第1の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであるため、その効果は第1の発明と同様である。
第5の発明は、第2の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであるため、その効果は第2の発明と同様である。
第6の発明は、第3の発明に係る動的設備の診断システムを方法発明として捉えたものであるため、その効果は第3の発明と同様である。
第7の発明は、第4の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであるため、その効果は第4の発明と同様である。
第8の発明は、第5の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであるため、その効果は第5の発明と同様である。
第9の発明は、第6の発明に係る動的設備の診断方法をプログラム発明として捉えたものであるため、その効果は第6の発明と同様である。
本発明の実施の形態に係る動的設備の診断システムのシステム構成図である。 本実施の形態に係る動的設備の診断システムにおける信号処理のフローチャートである。 (a)は本発明の実施例の動的設備の診断システムの試験に用いたバケットエレベータの外観図であり、(b)はバケットエレベータの中に設置されているチェーン−スプロケット機構の外観図である。 軸受箱にAEセンサが設置された状態を示す転がり軸受の外観図である。 (a)及び(b)はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号を示したグラフである。 (a)及び(b)はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号を示したグラフである。 モデリング次数を90次として周波数別にAIC値を計算した結果を示したグラフである。 モデリング次数を90次として周波数が120.98(kHz)の場合についてAIC値を計算した結果を示したグラフである。 (a)乃至(c)はそれぞれARモデルに図5(b)と図6(a)及び図6(b)に示した3種類のパワースペクトル信号を入力して得られた残差信号を示すグラフである。 4種類の軸受に関する残差信号を絶対値処理して求めた面積値を表すヒストグラムである。 (a)及び(b)はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号を示したグラフである。 (a)及び(b)はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号を示したグラフである。 (a)及び(b)はそれぞれ軸受Aのパワースペクトル信号に基づいてモデリング次数の上限値を10次及び20次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。 (a)及び(b)はそれぞれ軸受Aのパワースペクトル信号に基づいてモデリング次数の上限値を30次及び40次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。 軸受Aのパワースペクトル信号に基づいてモデリング次数の上限値を50次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。 軸受Aのパワースペクトル信号に基づいてモデリング次数の上限値を1〜10次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。 (a)及び(b)はそれぞれ表3に示した自己回帰係数を用いて構築したARモデルに図11(a)及び図11(b)に示したパワースペクトル信号を入力して得られた残差信号を示すグラフである。 (a)及び(b)はそれぞれ表3に示した自己回帰係数を用いて構築したARモデルに図12(a)及び図12(b)に示したパワースペクトル信号を入力して得られた残差信号を示すグラフである。
本発明の動的設備の診断システムとその診断方法及びそれに用いられる診断プログラムは、診断対象物から発生するAE波をAEセンサによって検出し、その出力信号をデジタル化した「AE信号」用いて周波数領域で自己回帰モデル(以下、ARモデルという)を構築することを特徴としている。なお、ARモデルを構築する際には、AIC(赤池情報量基準)に基づいて最適なモデリング次数を決定している。
本発明の実施の形態に係る動的設備の診断システムについて、図1乃至図4を参照しながら説明し、さらに、高周波帯域のAE信号に基づく簡易診断及び低周波帯域のAE信号に基づく精密診断の手法について、図5乃至図10及び図11乃至図18を用いてそれぞれ詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る動的設備の診断システムのシステム構成図であり、図2は本実施の形態に係る動的設備の診断システムにおける信号処理のフローチャートである。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る動的設備の診断システム1は、診断対象物から発生したAE波を検出してアナログの電気信号に変換するAEセンサ2と、増幅機能、A/D変換機能及び周波数弁別機能を有し、AEセンサ2の出力信号をデジタル化して所定の帯域の周波数成分を有するAE信号を生成する測定装置3と、測定装置3が出力したAE信号を処理する処理装置4と、診断対象物について異常の有無の判断を行う際に用いられる閾値12a,12b(図2参照)の設定等に用いられる入力装置5と、処理装置4による処理の結果等が格納される記憶装置6と、ディスプレイやプリンタなどからなり、処理装置4の処理に用いられる信号やその処理によって生成された信号等を出力する出力装置7を備えている。
処理装置4は、高速フーリエ変換処理部4aと、平滑処理部4bと、モデリング部4cと、残差演算部4dと、評価部4e,4fによって構成されており、記憶装置6は、AE信号データベース6a、スペクトルデータベース6b、モデルデータベース6c、評価データベース6dが内部に構築されている。
図2に示すように、測定装置3が出力したAE信号8は、高速フーリエ変換処理部4aに送られるとともに、記憶装置6のAE信号データベース6aへ読み出し可能に格納される(ステップS1)。
高速フーリエ変換処理部4aは、測定装置3から直接受け取るか若しくはAE信号データベース6aから読み出したAE信号8を周波数領域に変換してスペクトル信号9を生成し、さらに、このスペクトル信号9の実効値(二乗平均値)を演算して、パワースペクトル信号10aを生成する(ステップS2a及びステップS2b)。このようにして得られたスペクトル信号9とパワースペクトル信号10aは、記憶装置6のスペクトルデータベース6bへ読み出し可能に格納される(ステップS2a及びステップS2b)。
平滑処理部4bは、高速フーリエ変換処理部4aから直接受け取るか若しくはスペクトルデータベース6bから読み出したパワースペクトル信号10aに対して、移動平均による平滑処理を行うとともに、必要に応じてデータの間引き処理を行って、パワースペクトル信号10bを生成する(ステップS3a及びステップS3b)。さらに、このパワースペクトル信号10bをスペクトルデータベース6bへ読み出し可能に格納する(ステップS3a及びステップS3b)。
モデリング部4cは、平滑処理部4bから直接受け取るか若しくはスペクトルデータベース6bから読み出したパワースペクトル信号10bに対し、次の式(1)及び式(2)を用いて周波数領域でARモデルを構築する。ただし、式(1)及び式(2)において、yとyn−iはそれぞれ周波数nにおける予測出力及び周波数n−iにおける測定値であり、aはモデリング次数iにおける自己回帰係数、mはモデリング次数の上限値、vは正規分布に従う白色雑音である。また、Nは総データ点数であり、AICとPはそれぞれモデリング次数がmのときのAIC値及び測定値の分散である。なお、自己回帰係数はBurg法によって算出する。
Figure 2018189448
Figure 2018189448
まず、式(2)を用いて、モデリング次数別にAIC値を算出し、AIC値が最小となるモデリング次数を選択する(ステップS4a)。つぎに、そのモデリング次数に対しAIC値が最小となる周波数を選択する(ステップS4b)。さらに、その周波数に対しAIC値が最小となる次数を求め、これをモデリング次数の上限値とする(ステップS4c)。最後に、スペクトルデータベース6bから読み出した「異常の発生を示す情報を含まないパワースペクトル信号10b」を用いて各モデリング次数に対応する自己回帰係数を演算によって求め、式(1)に従ってARモデルを構築する。そして、モデリング次数の上限値と各モデリング次数に対応する上述の自己回帰係数をモデルデータベース6cへ読み出し可能に格納する(ステップS5)。
残差演算部4dは、ステップS5において生成したARモデルに、スペクトルデータベース6bから読み出した「異常の発生を示す情報を含むパワースペクトル信号10b」を入力して、その入力信号と出力信号の差分を求め、これを残差信号11として評価データベース6dへ読み出し可能に格納する(ステップS6)。
評価部4eは、残差演算部4dから直接受け取るか若しくは評価データベース6dから読み出した残差信号11を、予め評価データベース6dに格納されている閾値12aと比較する。そして、残差信号11が閾値12aを超えていない場合には、診断対象物に異常が発生していないと判断し、残差信号11が閾値12aを超えている場合には、診断対象物に異常が発生していると判断する(ステップS7)。さらに、その判断結果を評価データベース6dへ読み出し可能に格納する。
つぎに、動的設備の診断システム1を用いた精密診断について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、図1及び図2に示した構成要素については同一の符号を付して、説明する。また、図2を用いて既に説明した工程については、適宜その説明を省略する。
図2に示すように、動的設備の精密診断を行う場合にも平滑処理部4bは、高速フーリエ変換処理部4aから直接受け取るか若しくはスペクトルデータベース6bから読み出したパワースペクトル信号10aに対して、移動平均による平滑処理を行う(ステップS3a)。ただし、診断対象である動的設備が回転機械である場合には、後述の式(3)に従って算出されるパス周波数が存在し、その整数倍となる複数のピークがパワースペクトル10aに出現する。したがって、平滑処理によって、それらのピークが消失してしまわないように、ステップS3aでは、最も間隔が狭い2つのピークの間に少なくとも3点以上のデータが存在するように平滑化点数を設定することが望ましい。
また、動的設備の診断システム1を用いた精密診断で扱うパワースペクトル信号10bは、低周波数帯域のものであるため、データの間引きによって周波数分解能が低下すると、その信号に含まれる異常の発生を示す情報を正確に抽出できなくなるおそれがある。したがって、ステップS3bの平滑処理部4bによる間引き処理については、適宜省略しても良い。
なお、動的設備の診断システム1においては、観測可能な周波数帯域の下限値(下限周波数)が、ARモデルのモデリング次数の上限値と周波数分解能の積として表される。すなわち、低周波数帯域でパワースペクトル信号10bに基づいて動的設備の精密診断を行う場合には、上述の下限周波数が低いため、周波数分解能との関係で、モデリング次数の上限値をむやみに大きな値とすることができない。そこで、低周波数帯域で動的設備の診断システム1を用いて精密診断を行う場合には、モデリング部4cがステップS4a〜ステップS4cにおいて、観測可能な周波数帯域の下限値と周波数分解能を考慮してモデリング次数の上限値を決定する。
ステップS7では、評価部4eの代わりに、評価部4fが予め評価データベース6dに格納されている閾値12bと残差信号11を比較して、診断対象物における異常の有無を判断し、その判断結果を評価データベース6dへ読み出し可能に格納する。
本実施の形態においては、動的設備の診断システム1について図1及び図2を参照しながら説明したが、他の実施の形態としては、動的設備の診断方法と、その方法をコンピュータで実行するためのプログラムとして捉えた動的設備の診断プログラムがある。
これらの他の実施の形態の内容については図2に記載されるステップ(工程)の流れに示すとおりである。
すなわち、ステップS1からステップS7までのステップを実行することで動的設備の診断方法に関する実施の形態となり、さらに、これらの工程をコンピュータで実行させることで動的設備の診断プログラムとなるのである。
以下、それについて具体的に説明するが、各工程における処理の内容に関する説明は、既に動的設備の診断システム1について行ったものと同じであるため、適宜省略する。
具体的には、図2に示すように、ステップS1において測定装置3によって生成されたAE信号8を高速フーリエ変換処理部4aが、ステップS2aにおいて、周波数領域に変換してスペクトル信号9を生成し、さらに、ステップS2bにおいてスペクトル信号9からパワースペクトル信号10aを生成する。そして、スペクトル信号9とパワースペクトル信号10aをスペクトルデータベース6bへ読み出し可能に格納する。
ステップS3a及びステップS3bでは、平滑処理部4bがパワースペクトル信号10aに対して移動平均による平滑処理とデータの間引き処理を行ってパワースペクトル信号10bを生成し、このパワースペクトル信号10bをスペクトルデータベース6bへ読み出し可能に格納する。
ステップS4a〜ステップS5では、モデリング部4cが前述の式(1)及び式(2)を用いてモデリング次数の上限値を求めた後、スペクトルデータベース6bから読み出した「異常の発生を示す情報を含まないパワースペクトル信号10b」を用いて各モデリング次数に対応する自己回帰係数を演算によって求め、式(1)に従ってARモデルを構築する。そして、モデリング次数の上限値と各モデリング次数に対応する上述の自己回帰係数をモデルデータベース6cへ読み出し可能に格納する。
ステップS6では、残差演算部4dがステップS5において生成したARモデルに、スペクトルデータベース6bから読み出した「異常の発生を示す情報を含むパワースペクトル信号10b」を入力して、その入力信号と出力信号の差分を求め、これを残差信号11として評価データベース6dへ読み出し可能に格納する。
ステップS7では、評価部4e,4fが予め評価データベース6dに格納されている閾値12aと残差信号11を比較して、診断対象物における異常の有無を判断し、その結果を評価データベース6dへ読み出し可能に格納する。
以上説明したとおり、本実施の形態に係る動的設備の診断システムあるいはその方法及びそのプログラム(以下、本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムという。)においては、材料に変形や亀裂が生じる際に、内部に蓄えられていた微小なエネルギーが弾性波として放出される現象(AE)に着目し、その弾性波(AE波)を検出することで、診断対象物における異常の発生を示す情報を得るものである。
そして、AEセンサによって検出されたAE波から得られたパワースペクトル信号は、高周波帯域の場合であっても時系列信号に比べて変動の周期が大きく、モデルの追従が容易であることから、AICを周波数領域に用いることを特徴とする本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムにおいては、低次数で高精度なARモデルの構築が可能となっている。
また、本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムにおいては、周波数領域で構築した自己回帰モデルに対して、検出したAE波から生成したパワースペクトル信号を入力して、その入力信号と出力信号から残差信号を取得する構成となっているため、残差信号のSN比が向上するという作用を有している。さらに、本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムにおいては、平滑処理の際の畳み込み演算により異常成分が強調されることから、残差演算部の演算によって、ノイズ成分が除去されるとともに、異常成分が強調された状態で含まれる残差信号が得られるという作用を有している。
したがって、本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムによれば、診断対象物に異常が発生しているか否かの評価に用いる残差信号のSN比が高いため、高周波帯域のパワースペクトル信号から損傷の初期状態に表れる兆候を抽出することができるとともに、低周波数帯域のパワースペクトル信号に基づいて損傷個所の同定を行うことが可能である。
加えて、本発明の診断システム、診断方法及び診断プログラムにおいては、周波数領域で自己回帰モデルを構築する構成であるため、時間領域で自己回帰モデルを構築する場合とは異なり、データの平均化を行う際に用いられる同期を取るための参照信号を必要としない。したがって、同期信号を取るためのチャンネルを測定装置に設ける必要がないため、AE波の測定を簡便に行うことができる。
本発明の実施例に係る動的設備の診断システム1について、図3乃至図18を参照しながら説明する。
図3(a)は本発明の実施例の動的設備の診断システムの試験に用いたバケットエレベータの外観図であり、図3(b)はそのバケットエレベータの中に設置されているチェーン−スプロケット機構の外観図である。また、図4は軸受箱にAEセンサが設置された状態を示す転がり軸受の外観図である。なお、図3(b)では、図が煩雑になるのを避けるために、1つのバケットについてのみ符号を付している。
図3(a)及び図3(b)に示すように、バケットエレベータ13は、チェーン−スプロケット機構14によって、搬入口13aから搬入された運搬物が垂直に搬送されて搬出口13bから排出される構造となっている。そして、チェーン−スプロケット機構14は、上下方向へ所定の間隔をあけて配置され、転がり軸受15(図4参照)によってそれぞれ回転自在に支持される一対のスプロケット16,16と、環状をなしてスプロケット16,16に巻回されるチェーン17と、このチェーン17に対し、等間隔に設置される24個のバケット18などによって構成されている。
バケットエレベータ13は主軸の回転数が18(rpm)であり、転がり軸受15はNTN製UCT207である。また、AEセンサ2はPZT型広帯域AEセンサであり、上方に配置されたスプロケット16の反駆動側に設置されている転がり軸受15の軸受箱19(図4参照)に取り付けられている。
そして、診断対象物である転がり軸受15には、グリース有の正常軸受(軸受A)と、グリース無の正常軸受(軸受B)と、グリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)と、グリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)の4種類を用いた。
なお、軸受Dのパス周波数(転動体が傷を通過する際の周波数)fは次の式(3)によって算出される。ただし、D及びdはそれぞれ軸受ピッチ円及び軸受転動体の直径(mm)であり、αは接触角(rad)、fは軸受回転周波数(Hz)、Bは転動体の個数である。
Figure 2018189448
40(kHz)〜200(kHz)の高周波数帯域におけるAE波を表1に示した条件で測定した結果について説明する。なお、この帯域では急峻な周波数の変化が少ないため、前述したとおり、移動平均による平滑化とデータの間引きを行った。
Figure 2018189448
図5及び図6はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号10bを示したグラフである。なお、図5(a)及び図5(b)はそれぞれグリース有の正常軸受(軸受A)及びグリース無の正常軸受(軸受B)に対するものであり、図6(a)及び図6(b)はそれぞれグリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)及びグリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)に対するものである。また、これらの図に示したデータはいずれもそれぞれ5回分の測定結果の算術平均値である。
図5(a)及び図5(b)と図6(a)及び図6(b)を見ると、軸受Cではパワーが増加しているが、他の軸受についてはパワーに大差がないことがわかる。
つぎに、図5(a)に示した軸受Aのパワースペクトル信号10bについて、10次、20次、40次、60次、90次の5種類のモデリング次数別にAIC値を算出したところ、モデリング次数が増加するに連れてAIC値が減少し、モデリング次数が90次のときにAIC値が最小となった。そこで、モデリング次数を90次として周波数別にAIC値を求めた。図7は、その計算結果を示したグラフである。
図7より、AIC値は120.98(kHz)の周波数において最小となることがわかる。
さらに、モデリング次数を90次として周波数が120.98(kHz)の場合についてAIC値を求めた。図8は、その計算結果を示したグラフである。
図8に示すように、次数が81次の場合にAIC値が最小となっている。そこで、本実施例では、モデリング次数の上限を81次として、この次数に対応する自己回帰係数を用いて式(1)に示すARモデルを構築した。
図9(a)乃至図9(c)はそれぞれ上記ARモデルに図5(b)と図6(a)及び図6(b)に示した3種類のパワースペクトル信号10bを入力することによって得られた残差信号11を示すグラフである。なお、図9(a)乃至図9(c)は軸受B、軸受D及び軸受Cにそれぞれ対応している。
図9(a)乃至図9(c)より、グリース無の正常軸受(軸受B)<グリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)<グリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)の順に残差が大きいことがわかる。なお、図9には示していないが、グリース有の正常軸受(軸受A)の残差はグリース無の正常軸受(軸受B)の残差よりも小さいことがわかっている。
図10は上述の4種類の残差信号11を絶対値処理して求めた面積値を表すヒストグラムであり、表2は面積値の比を示したものである。参考までに、モデリング次数が40次の場合についても示している。
Figure 2018189448
図10を見ると、グリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)よりもグリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)の方が残差の面積値が大きい結果となっている。この結果から、軸受Cでは損傷が進展しており、周波数の高いAE波が活発に発生しているのに対し、軸受Dでは外輪傷として損傷は存在しているものの、軸受Cに比べると損傷が進んでおらず、AE波が発生していないと考えられる。
つぎに、0(Hz)〜40(Hz)の低周波数帯域におけるAE波を表3に示した条件で測定した結果について説明する。
Figure 2018189448
図11及び図12はARモデルに入力される周波数領域のパワースペクトル信号10bを示したグラフである。なお、図11(a)及び図11(b)はそれぞれ正常軸受(軸受A)及びグリース無の正常軸受(軸受B)に対するものであり、図12(a)及び図12(b)はそれぞれグリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)及びグリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)に対するものである。また、これらの図に示したデータはいずれもそれぞれ5回分の測定結果の算術平均値である。
図11(a)及び図11(b)と図12(a)及び図12(b)を見ると、図11(b)及び図12(b)では、バケットがスプロケットと接触する周波数(2.48Hz)の2次成分(4.96Hz)とその高調波が観測されていることが分かる。一方、グリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)に対応するパス周波数(1.08Hz)は観測されていない。
グリース有の正常軸受(軸受A)のパワースペクトル信号10bを基準としてARモデルを構築する。図13はグリース有の正常軸受(軸受A)のパワースペクトル信号10bを基準としてARモデルを構築した場合のモデリング次数別のAIC値である。すなわち、図13(a)及び図13(b)はそれぞれ軸受Aのパワースペクトル信号10bに基づいてモデリング次数の上限値を10次及び20次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフであり、図14(a)及び図14(b)はそれぞれ軸受Aのパワースペクトル信号10bに基づいてモデリング次数の上限値を30次及び40次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。また、図15は軸受Aのパワースペクトル信号10bに基づいてモデリング次数の上限値を50次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。
モデリング次数を20次以上に設定すると、ARモデルの畳み込み演算の際に過去の20点以上のデータが必要となるため、予測可能な周波数帯の下限周波数は約1.2(Hz)となる。この場合、パス周波数1.08Hzにおいてパワースペクトル信号10bが極大となる現象をとらえることができない。
図13〜図15を見ると、モデリング次数の上限値が10次の場合に、1.65(Hz)の周波数に対して、AIC値が最小となることがわかる。
また、図16はグリース有の正常軸受(軸受A)のパワースペクトル信号10bに基づいてモデリング次数の上限値を1〜10次としてARモデルを構築した場合のAIC値を示すグラフである。図16を見ると、モデリング次数の増加に伴ってAIC値が減少する傾向があることがわかる。
表4はモデリング次数の上限値を10次とした場合の、各モデリング次数に対応する自己回帰係数を示したものである。また、図17及び図18は、表4に示した自己回帰係数を用いて構築したARモデルに図11と図12に示した4種類のパワースペクトル信号10bを入力して得られた残差信号11を示すグラフである。なお、図17(a)及び図17(b)はそれぞれグリース有の正常軸受(軸受A)及びグリース無の正常軸受(軸受B)に対するものであり、図18(a)及び図18(b)はそれぞれグリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)及びグリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)に対するものである。
Figure 2018189448
図17(a)及び図17(b)を見ると、いずれもバケットがスプロケットに接触する周波数2.48(Hz)の2次成分4.96(Hz)とその高調波が強調された状態で抽出されていることがわかる。ただし、他の周波数成分については明瞭なピークが認められない。これは、グリース有の正常軸受(軸受A)とグリース無の正常軸受(軸受B)では損傷が存在しないため、それに相当するパス周波数成分が観測されないことを意味している。
一方、図18(a)では、特定の周波数についての顕著なピークは認められない。これは、ARモデルに入力されたグリース有の正常軸受(軸受A)とグリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)のパワースペクトル信号が低周波帯域では類似していることが原因と考えられる(図11(a)と図12(a)を参照)。
また、グリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)では、図10を用いて既に説明したように、高周波帯域の初期損傷に関する解析では、異常の発生に関する情報を示す異常成分が最も強調された状態で残差信号に含まれていることが観測されていることから、微小な損傷は進行しているようである。しかしながら、図18(a)より、グリース有で軸受に過度の負荷を作用させて軽度の損傷を発生させた損傷軸受(軸受C)の損傷は、低周波帯域においてパス周波数成分が観測されるほどには大きく進展していないものと考えられる。
図18(b)より、グリース有で外輪軌道面に直径4mmのキリ穴を開けた損傷軸受(軸受D)では、バケットがスプロケットに接触する周波数2.48(Hz)の2次成分である4.96(Hz)に加えて、軸受外輪傷のパス周波数に対応する周波数1.08(Hz)及びその2次成分である2.16(Hz)においてピークが観測されている。一方、ARモデルに入力された軸受Dのパワースペクトル信号10bでは上記パス周波数成分を確認することができない。すなわち、図18(b)は、本発明の動的設備の診断システムにおいて「異常の発生に関する情報を示す異常成分が強調された状態で残差信号に含まれる」という作用が発揮されることを示している。また、このように損傷が進展している場合であれば、式(3)に基づいて、損傷箇所を同定することができる。
このように、本発明の動的設備の診断システムは、初期状態の損傷の予兆を捉える簡易診断に加え、損傷の発生箇所を同定する精密診断にも適用が可能である。
本発明は、特に高ノイズ環境下において使用され、低速で回転する回転機械等に取り付けられた軸受について、状態監視や診断を行う場合に適用可能である。
1…動的設備の診断システム 2…AEセンサ 3…測定装置 4…処理装置 4a…高速フーリエ変換処理部 4b…平滑処理部 4c…モデリング部 4d…残差演算部 4e,4f…評価部 5…入力装置 6…記憶装置 6a…AE信号データベース 6b…スペクトルデータベース 6c…モデルデータベース 6d…評価データベース 7…出力装置 8…AE信号 9…スペクトル信号 10a,10b…パワースペクトル信号 11…残差信号 12a,12b…閾値 13…バケットエレベータ 13a…搬入口 13b…搬出口 14…チェーン−スプロケット機構 15…転がり軸受 16…スプロケット 17…チェーン 18…バケット 19…軸受箱

Claims (9)

  1. 診断対象物から発生するAE波を検出してアナログの電気信号に変換するAEセンサと、
    前記電気信号をデジタル化してAE信号を生成する測定装置と、
    前記AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る高速フーリエ変換処理部と、
    前記パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域での自己回帰モデルを構築するモデリング部と、
    前記自己回帰モデルに前記パワースペクトル信号のうち前記異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する残差演算部と、
    前記残差信号から前記診断対象物の異常の有無を判断する評価部と、を備えたことを特徴とする動的設備の診断システム。
  2. 前記モデリング部は、AIC値に基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、前記モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、前記自己回帰モデルを構築することを特徴とする請求項1記載の動的設備の診断システム。
  3. 前記高速フーリエ変換処理によって得られた前記パワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う平滑処理部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動的設備の診断システム。
  4. 診断対象物から発生するAE波をAEセンサによって検出してデジタルデータからなるAE信号を生成する工程と、
    前記AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る工程と、
    前記パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域で自己回帰モデルを構築する工程と、
    前記自己回帰モデルに前記パワースペクトル信号のうち前記異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する工程と、
    前記残差信号から前記診断対象物の異常の有無を判断する工程と、を備えたことを特徴とする動的設備の診断方法。
  5. AIC値に基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、前記モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、前記自己回帰モデルを構築することを特徴とする請求項4記載の動的設備の診断方法。
  6. 前記高速フーリエ変換処理によって得られた前記パワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う工程を備え、
    この平滑処理がなされた前記パワースペクトル信号を前記第1の信号及び前記第2の信号として用いることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の動的設備の診断方法。
  7. AE波に基づいて診断対象物の異常の有無を判断するために、コンピュータによって実行される動的設備の診断プログラムであって、
    前記診断対象物から発生する前記AE波をAEセンサによって検出してデジタルデータからなるAE信号を生成する工程と、
    前記AE信号を高速フーリエ変換処理してパワースペクトル信号を得る工程と、
    前記パワースペクトル信号のうち異常の発生を示す情報を含まない第1の信号に基づいて周波数領域での自己回帰モデルを構築する工程と、
    前記自己回帰モデルに前記パワースペクトル信号のうち前記異常の発生を示す情報を含む第2の信号を入力してその入力信号と出力信号から残差信号を取得する工程と、
    前記残差信号から前記診断対象物の異常の有無を判断する工程と、を実行させることを特徴とする動的設備の診断プログラム。
  8. AIC値に基づいてモデリング次数の上限値を決定するとともに、前記モデリング次数に対応する自己回帰係数を求めて、前記自己回帰モデルを構築することを特徴とする請求項7記載の動的設備の診断プログラム。
  9. 前記高速フーリエ変換処理によって得られた前記パワースペクトル信号に対して移動平均による平滑処理を行う工程を備え、
    この平滑処理がなされた前記パワースペクトル信号を前記第1の信号及び前記第2の信号として用いることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の動的設備の診断プログラム。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102580433B1 (ko) * 2023-05-23 2023-09-18 호서대학교 산학협력단 이상 예측을 위한 분석 대상 데이터의 특징을 검출하기 위한 장치 및 이를 위한 방법

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