JP2018188596A - ゴム組成物、及び、加硫ゴム製品 - Google Patents

ゴム組成物、及び、加硫ゴム製品 Download PDF

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智行 酒井
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Abstract

【課題】亜鉛化合物の含有量を低減した場合であっても、加硫反応を十分に進行させることができるゴム組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、加硫ゴム製品を提供することも課題とする。
【解決手段】ジエン系ゴムと、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体と、を含有し、複合体の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜30質量部である、ゴム組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物、及び、加硫ゴム製品に関する。
ジエン系ゴム、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、及び加硫剤を含むゴム組成物が知られている。上記ゴム組成物は、加熱により速やかに架橋する(加硫する)ため、様々な加硫ゴム製品の製造に利用されてきた。
例えば、特許文献1には、「ジエン系ゴム及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群から選択された少なくとも1種をゴム成分とし、前記ゴム成分100重量部に対して、BET法により測定された比表面積が10〜200m/gである微粒子亜鉛華を1〜20重量部含有することを特徴とする防振ゴム組成物。」が記載されている。
特開2006−193621号公報
近年、亜鉛が魚毒性を有すること等の理由から、亜鉛の含有量が低減されたゴム組成物が求められている。本発明者らは、特許文献1に記載されたゴム組成物から微粒子亜鉛華(酸化亜鉛)を除いて、ゴム組成物を作製し、そのゴム組成物を加硫したところ、所定時間内に加硫が十分に進行しないことを知見した。
そこで、本発明は、亜鉛化合物の含有量を低減した場合であっても、加硫反応を十分に進行させることができる(以下「本発明の効果を有する」ともいう。)ゴム組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、加硫ゴム製品を提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
[1] ジエン系ゴムと、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体と、を含有し、複合体の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜30質量部である、ゴム組成物。
[2] 硫黄の同素体の原子数が4〜6である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] ゼオライトが、AEL、AFI、AFO、AFR、AFS、AFY、AHT、APD、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、AVL、*BEA、BEC、BOF、BOG、BOZ、BPH、BSV、CAN、CFI、CGF、CGS、−CHI、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、EAB、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETL、EUO、EZT、FAU、FER、GME、GON、HEU、IFR、IFW、IFY、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、*−ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSN、JSR、JST、LAU、LEV、LTA、LTF、LTJ、LTL、MAZ、MEI、MEL、MER、MFI、MFS、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MTT、MTW、MWW、NES、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、−PAR、PCR、PON、POS、PSI、PUN、−RON、RRO、RTE、RTH、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SBE、SBN、SBS、SEW、SFE、SFF、SFG、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SOF、SOS、*−SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、−SVR、SZR、TER、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、USI、UWY、VET、WEI、及び、YUGからなる群から選択される結晶構造を有する1種の化合物又は2種以上の混合物である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 細孔径が5.0〜7.1オングストロームである、[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5] 複合体中における、硫黄の含有量が、複合体の全質量に対して1〜30質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] 実質的に亜鉛を含有しない、[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
[7] 更に、カーボンブラック、及び、シリカからなる群から選択される少なくとも1種を、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜150質量部含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム組成物。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載のゴム組成物を加硫して得られた、加硫ゴム製品。
本発明によれば、亜鉛化合物の含有量を低減した場合であっても、加硫反応を十分に進行させることができるゴム組成物を提供することができる。また、本発明は、加硫ゴム製品を提供することができる。
(a)硫黄粉末、及び、(b)複合体1の質量分析の結果を表すマススペクトルである。 複合体2の質量分析の結果を表すマススペクトルである。 複合体4の質量分析の結果を表すマススペクトルである。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書においてオングストロームとは、0.1nmを意図する。
また、本明細書において、亜鉛とは金属亜鉛、及び、亜鉛化合物(典型的には酸化亜鉛等)を意図する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体を所定量含有する。本明細書において担持とは、ゼオライトに硫黄の同素体が付着した状態で支持されていることを意図する。硫黄の同素体がゼオライトに付着する形態としては特に制限されず、ゼオライトの表面に硫黄の同素体が付着していてもよいし、ゼオライトの有する細孔内に硫黄の同素体が保持されていてもよく、その両方であってもよい。上記複合体としては、少なくとも、ゼオライトの有する細孔内に硫黄の同素体が保持されていることが好ましい。
また、硫黄の同素体とゼオライトとは化学的、及び/又は、物理的な結合を形成していてもよい。
硫黄は元素として多数の同素体を有することが知られている。加硫を目的としてゴム組成物に配合される硫黄分子は、一般に硫黄原子数8の硫黄分子(以下、「S」ともいう。)である。Sは熱的に安定であり、Sを含むゴム組成物は、混練、及び成型加工中に加熱されても容易には反応しないため十分なスコーチタイムを得ることができる点で優れている。
ところが、Sを酸化亜鉛及び加硫促進剤を含まないゴム組成物に添加した場合には、所定条件(例えば下記実施例に記載した条件)で加硫した場合に、所定時間(例えば下記実施例に記載した条件)内に十分に加硫反応が進行しないという問題がある。
上記ゴム組成物は、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体を所定量含有する。一般に原子数3〜6の硫黄の同素体は反応性が高く不安定であると考えられているが、本発明者らの検討によれば、ゼオライトに担持された上記硫黄の同素体は安定化されることを知見している。
また驚くべきことに上記ゴム組成物を、通常の条件で加硫させると、亜鉛(酸化亜鉛等)を含有しないか、その含有量が低減されていても十分に加硫反応が進行することが本発明者らの鋭意の検討により明らかになった。本発明は上記の知見をもとに完成された物である。以下では、上記ゴム組成物に含有される各成分について説明する。
〔ジエン系ゴム〕
上記ゴム組成物はジエン系ゴムを含む。ジエン系ゴムとしては特に制限されず、公知のジエン系ゴムを用いることができる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、及びニトリルゴムなどが挙げられる。ジエン系ゴムは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のジエン系ゴムを併用する場合には、合計含有量をジエン系ゴム100質量部として計算する。
〔複合体〕
上記ゴム組成物は、細孔径4.0〜8.0オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体(以下、単に「複合体」ともいう。)をジエン系ゴム100質量部に対して1〜30質量部含有する。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、複合体の含有量としては1.0〜10質量部が好ましい。複合体は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の複合体を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
複合体中における硫黄の含有量としては特に制限されないが、一般に、複合体の全質量に対して、1.0〜99質量%が好ましく、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、1.0〜30質量%が好ましく、5.0〜30質量%がより好ましい。
<ゼオライト>
上記複合体は、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトを含有する。
本明細書において、細孔径とは、細孔の形状が円状の場合には直径を意図し、楕円状の場合には長径と短径の算術平均を意図する。また、複数種の異なるサイズの細孔をもつゼオライトの場合には、その中で最も大きな種類の細孔の径の算術平均を細孔径とする。
細孔径としては、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、下限値としては、5.0オングストローム以上が好ましく、5.2オングストローム以上がより好ましい。一方、上限値としては、7.1オングストローム以下が好ましく、6.8オングストローム以下がより好ましい。なお、細孔径の下限値が5.0オングストローム以上であり、上限値が7.0オングストローム以下であると、硫黄の同素体の中でも、より反応性が高い原子数4〜6の硫黄の同素体をより担持しやすくなり、更に優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる。
ゼオライトの細孔構造としては特に制限されず、1〜3次元のいずれであってもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、細孔の構造としては3次元が好ましい。
ゼオライトは、上記細孔径を有していれば特に制限されず、公知のゼオライトを用いることができる。なお、ゼオライトは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ゼオライトは、AEL、AFI、AFO、AFR、AFS、AFY、AHT、APD、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、AVL、*BEA、BEC、BOF、BOG、BOZ、BPH、BSV、CAN、CFI、CGF、CGS、−CHI、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、EAB、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETL、EUO、EZT、FAU、FER、GME、GON、HEU、IFR、IFW、IFY、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、*−ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSN、JSR、JST、LAU、LEV、LTA、LTF、LTJ、LTL、MAZ、MEI、MEL、MER、MFI、MFS、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MTT、MTW、MWW、NES、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、−PAR、PCR、PON、POS、PSI、PUN、−RON、RRO、RTE、RTH、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SBE、SBN、SBS、SEW、SFE、SFF、SFG、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SOF、SOS、*−SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、−SVR、SZR、TER、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、USI、UWY、VET、WEI、及び、YUGからなる群から選択される結晶構造を有する1種の化合物又は2種以上の混合物が好ましく、AEL、AFR、AFS、AFY、AHT、ATO、ATS、*BEA、BEC、BOF、BOG、BOZ、BPH、CAN、CON、CSV、CZP、EON、EZT、GME、GON、IFR、IFW、IMF、ISV、ITG、ITH、*−ITN、ITR、IWR、IWV、IWW、JRY、JSR、JST、LTL、MEI、MEL、MFI、MFS、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MTW、NES、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、−PAR、PCR、PON、PSI、PUN、RRO、RWY、SAF、SAO、SBN、SBS、SEW、SFE、SFF、SFG、SFO、SFS、*SFV、SOF、SOS、*−SSO、SSY、STF、STW、−SVR、TER、TON、TUN、UOV、USI、UWY、及び、VETからなる群から選択される結晶構造を有する1種の化合物又は2種以上の混合物がより好ましく、AEL、AFR、AFY、ATO、*BEA、BOF、BOZ、BPH、CAN、CON、CSV、CZP、EON、GON、IFR、IFW、IMF、ISV、ITG、*−ITN、ITR、IWR、IWV、IWW、JSR、JST、MEL、MFI、MFS、MOR、*MRE、MSE、MTW、NES、OFF、OKO、OSI、OSO、−PAR、PCR、PSI、RRO、SEW、SFE、SFF、SFG、*SFV、SOS、*−SSO、SSY、STF、STW、−SVR、TUN、USI、及び、VETからなる群から選択される結晶構造を有する1種の化合物又は2種以上の混合物が更に好ましい。なお、上記分類は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードによる分類である。
ゼオライト中におけるアルミナ(Al)の含有量に対するシリカ(SiO)の含有量の含有モル比(以下、「シリカ/アルミナ」ともいう。)としては特に制限されないが、一般に、15〜1500が好ましい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、ゼオライトのシリカ/アルミナ比としては、15〜100がより好ましく、15〜80が更に好ましい。
ゼオライトの平均一次粒子径としては特に制限されないが、一般に0.5〜30μmが好ましい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、ゼオライトの平均一次粒子径としては、5〜20μmが好ましい。
なお、本明細書において、平均一次粒子径とは、一次粒子の平均粒子径を意図する。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって一次粒子を無作為に100個以上観察し、観察された一次粒子の水平フェレ径の平均値から求めることができる。
なお、本明細書における平均一次粒子径とは、SEM観察において複数の一次粒子の凝集体として観察される粒子、いわゆる二次粒子(双晶粒子)の粒子径を平均して求まる平均二次粒子径、及び、一次粒子や二次粒子が物理的な力で凝集した凝集粒子の凝集径を平均して求まる平均凝集子径とは異なるものである。
ゼオライトのBET比表面積としては特に制限されないが、一般に100〜1000m/gが好ましい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゴム組成物が得られる点で、ゼオライトのBET比表面積としては、200〜600m/gが好ましい。
なお、本明細書において、BET比表面積はJIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。
上記ゼオライトは天然産のものでもよく、人工的に製造されたものであってもよい。上記ゼオライトを人工的に製造する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
<原子数3〜6の硫黄の同素体>
上記複合体は、原子数3〜6の硫黄の同素体を含有する。硫黄の同素体の原子数としては3〜6であれば特に制限されない。なかでも、より反応性が高く、上記ゴム組成物の加硫がより効率的に進行する点で、原子数は4〜6が好ましく、6がより好ましい。
硫黄の同素体の分子構造としては、特に制限されず、鎖状硫黄、又は、環状硫黄のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。なかでも、硫黄の同素体自体がより優れた保存安定性を有する点、及び、上記ゴム組成物がより優れたスコーチタイムを有する点で、環状硫黄が好ましく、なかでも原子数6の環状硫黄(以下、「環状S」ともいう。)がより好ましい。
なお、上記硫黄の同素体は1種を単独で用いても、原子数及び/又は分子構造の異なる2種以上の硫黄の同素体を併用してもよい。また、2種以上の硫黄の同素体の混合物に含有される硫黄の同素の形態は上記のとおりである。2種以上の硫黄の同素体を併用する場合、硫黄の同素体は環状Sを含有することが好ましく、硫黄の同素体の全質量中、環状Sの含有量は、30〜99質量%が好ましい。
上記複合体において、硫黄の同素体はゼオライトの細孔内に担持されていることが好ましい。上記複合体は、硫黄の同素体の分子の大きさに見合った細孔径を有するゼオライトを含有するため、一般に不安定とされる原子数3〜6の硫黄の同素体を、安定して保持することができるものと推測される。
硫黄の同素体の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、環状Sは、チオ硫酸ナトリウムに塩酸を加えることによって得ることができる。また四硫化ナトリウムと二塩化二硫黄との反応でも収率高く合成が可能である。
また、後述する複合体の製造方法によれば、ゼオライトと硫黄とを複合化する過程において、原子数3〜6の硫黄の同素体を生成することができる、
複合体に担持されている硫黄の原子数は、複合体の色をもって推測することもできる。すなわち、ゼオライトが、NaSのような塩を含有すると群青色の複合体が得られることが知られている。これは、ウルトラマリン顔料等として知られ、特表2007−537122号公報の0001段落等にも記載されている。
一方、ゼオライトが、原子数3〜6の硫黄の同素体を担持する場合、複合体は淡黄、淡褐色又は琥珀色になり、群青色にはならないことを本発明者らは知見している。
なお、本明細書において、複合体に担持された硫黄の原子数は、質量分析法によって決定されたものを意図する。具体的には、複合体を不活性ガス雰囲気(ヘリウムガスを用いることができる。)において加熱することにより、複合体に担持されている硫黄が気体として脱離する。この脱離した硫黄ガスを質量分析法によって分析することで、複合体に担持された硫黄の原子数が決定される。
上記複合体中における硫黄の含有量としては特に制限されないが、一般に複合体の全質量に対して0.1〜99質量%であることが好ましく、硫黄量と反応性が共に高くなり、ゴム組成物に配合した際、加硫反応がより進行しやすい点で、1〜30質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
なお、複合体中における硫黄の含有量は、元素分析法によって測定することができる。
なお、本明細書において元素分析法とは、元素分析装置を用いる方法を意味し、通常、単位質量あたり、硫黄を1〜数mg程度含有していれば測定が可能である。複合体中における硫黄の含有量は、複合体を酸素気流中で完全燃焼させ、硫黄酸化物(二酸化硫黄)として取り出すことにより定量できる。具体的には、複合体を燃焼させ、ガス化後して、還元管を通して、硫黄以外の元素のうち、炭素の場合は二酸化炭素として、窒素の場合は窒素ガス、水素の場合は水としてそれぞれ区別して検出することが可能である。
元素分析装置としては、例えば、2400II全自動元素分析装置(CHNS/O)(Perkin Elmer 社製)を用いることが出来る。
上記複合体は、波長532nmのレーザを照射して検出されるラマン強度分布特性においてベースラインから計測したラマンシフト475cm−1に対する460cm−1の吸収強度比(以下、「460/475」ともいう。)が0.15〜0.8であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましい。
460/475が0.15〜0.8である複合体はより優れた本発明の効果を有する。これは、460/475が0.15〜0.8であると、複合体において、ゼオライトに担持される硫黄の同素体として、原子数6の硫黄(S6)が多くなるためだと推測される。
<複合体の製造方法>
上記複合体の製造方法としては特に制限されないが、より簡便に上記複合体を製造することができる点で、細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、200〜400℃の硫黄蒸気を接触させて複合体を得る方法が好ましい。
ゼオライトと硫黄蒸気を接触させる方法としては特に制限されず、例えば、ゼオライトに硫黄蒸気を吹き付けてもよいし、硫黄蒸気中にゼオライトを投入してもよい。
より均一な複合体がより簡便に得られる点で、閉鎖、又は、開放系において、ゼオライト、及び、固体状の硫黄を近接させた状態としたうえで、それぞれ又は両方を加熱することが好ましい。なかでも、ゼオライトと固体状の硫黄とを混合して混合物を得て、その混合物を加熱して硫黄蒸気を発生させ、発生した硫黄蒸気をゼオライトと接触させる方法がより好ましい。なかでも、より均一な複合体が得られる点で、ゼオライトと固体状の硫黄を混合し混合物を得て、混合物を容器中に密閉し、密閉容器内で上記混合物を加熱して硫黄蒸気を発生させ、発生した硫黄蒸気をゼオライトと接触させる方法が更に好ましい。
ゼオライトに接触させる硫黄蒸気の温度は200〜400℃が好ましく、240℃〜350℃が更に好ましい。硫黄蒸気の温度が200℃以下であると、硫黄蒸気が発生しにくく、400℃以上であると、ゼオライトの構造が壊れることがあり、また、硫黄蒸気中に含有される原子数3〜6の硫黄の同素体の含有量が少なくなりやすい。硫黄蒸気の発生方法としては特に制限されず、例えば、固体状の硫黄を加熱する方法等が挙げられる。
ゼオライトと硫黄蒸気は、大気中で接触させてもよいし、不活性ガス中(例えば、窒素ガス、及び、アルゴンガス等)で接触させてもよい。なかでも、より均一な複合体が得られる点で、減圧下で接触させることが好ましい。なお、本明細書において、減圧下とは、圧力が100kPa未満となることを意図し、圧力が10kPa以下が好ましい。
ゼオライトと硫黄とを接触させる時間としては特に制限されず、一般に30秒〜48時間が好ましく、10分〜24時間がより好ましい。
ゼオライトは、硫黄蒸気と接触する前に乾燥されることが好ましい。ゼオライトを乾燥する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
ゼオライトを乾燥させる方法としては、ゼオライトを加熱する方法が挙げられ、例えばゼオライトを、100〜400℃で、2〜24時間加熱する方法が挙げられる。
また、ゼオライトを乾燥させる際、減圧してもよく、また、窒素置換してもよい。
上記複合体の製造方法の好適形態としては、より簡便に、より均一な複合体を得られる点で、以下の工程を有することが好ましい。
工程A:細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトを乾燥させる工程
工程B:細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトと固体状の硫黄とを混合し、混合物を得る工程
工程C:混合物を加熱し、200〜400℃の硫黄蒸気を発生させる工程
工程D:発生した硫黄蒸気を細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトと接触させる工程
工程A〜Dはこの順に実施してもよいし、各工程の順序を入れ替えてもよい。例えば、B−A−C−Dの順で実施してもよく、また、工程Cと工程Dとを同時に実施してもよい。なお、工程Dは減圧下で行われることが好ましく、更に、工程A〜Cも減圧下で行われてもよい。
〔任意成分〕
上記ゴム組成物は、既に説明したジエン系ゴム、及び、複合体以外にも本発明の効果を奏する限りにおいて他の成分(任意成分)を含有していてもよい。以下では、任意成分について説明する。
<カーボンブラック及びシリカ>
上記ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含有することが好ましい。カーボンブラック及び/又はシリカを含むゴム組成物は、ゴム組成物の加硫物(以下「加硫ゴム」という。)がより優れた機械特性等を有する。
カーボンブラックとしては特に制限されず、公知のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、及び、SRF等のカーボンブラックが挙げられる。なお、カーボンブラックは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリカとしては特に制限されず、公知のシリカを用いることができる。シリカとしては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、及び、コロイダルシリカ等が挙げられる。なお、シリカは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、カーボンブラック及びシリカを併用してもよい。
カーボンブラック及び/又はシリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜150質量部が好ましい。カーボンブラック及び/又はシリカの含有量が上記範囲内であると、上記組成物の加硫物はより優れた機械的特性を有する。なお、2種以上のカーボンブラックを併用する場合、2種以上のシリカを併用する場合、並びにカーボンブラック及びシリカを併用する場合には、カーボンブラック及びシリカの総合計量が上記範囲内であることが好ましい。
なかでも、加硫ゴムがより優れた機械的応力を有する点で、カーボンブラック及び/又はシリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜150質量部がより好ましい。
<その他の成分>
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド−アンモニア系、アルデヒド−アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、及び、上記の混合物等が挙げられる。なかでも、亜鉛(典型的には、酸化亜鉛)を含有しない加硫促進剤が好ましい。
上記加硫促進剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
上記ゴム組成物は、上記以外の任意成分を含んでもよい。上記以外の任意成分としては、例えば、老化防止剤、ステアリン酸、充填材(カーボンブラック及びシリカを除く)、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、加硫遅延剤、アロマオイル、及び、接着助剤等が挙げられる。これらの任意成分としては、亜鉛を含有しないことが好ましい。
〔ゴム組成物の製造方法〕
上記ゴム組成物の製造方法は特に制限されない。上記ゴム組成物の製造方法は、上記各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、及びロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
[加硫ゴム製品]
本発明の実施態様に係る加硫ゴム製品は、上記ゴム組成物を用いて作製された加硫ゴム製品である。なお、本明細書において、加硫ゴム製品とは、加硫ゴムを用いた製品であれば特に制限されず、例えば、空気入りタイヤ、コンベヤベルト、ホース、ゴルフボール、免震ゴム等の土木資材、工業用シール材、防舷材、及び医療機器等が挙げられる。
上記加硫ゴム製品の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔複合体1の作製〕
ZSM−5型ゼオライト(東ソー社製、細孔径5.8オングストローム)を準備し、ガラス製容器に入れた。次に、減圧下で、ゼオライトをガラス製容器ごと加熱し、350℃で、2時間保持して、ゼオライトを乾燥させた。次に、乾燥後のゼオライトと、硫黄粉末(関東化学社製)とを、質量比で、ゼオライト:硫黄=5:1となるよう、混合し、混合物を得た。次に、混合物をガラス製容器にいて、容器内の圧力が0.001kPaとなるまで減圧し、そのまま封をして、密閉容器を得た。次に、密閉容器を250℃に加熱したオーブン内に載置し、24時間保持し、その後冷却して、複合体1を得た。得られた複合体は、淡黄色だった。
〔複合体2〜4の作製〕
ZSM−5型ゼオライトに代えて、それぞれ以下のゼオライト(いずれも東ソー社製)を用いたことを除いては、複合体1の作製と同様にして、複合体2〜4を作製した。なお、複合体2〜4の色は、それぞれ以下のとおりだった。
・複合体2:MOR型ゼオライト(細孔径7.0オングストローム)、琥珀色
・複合体3:LTA型ゼオライト(細孔径8.0オングストローム)、白色
・複合体4:FAU型ゼオライト(細孔径9.0オングストローム)、淡黄色
〔複合体5の作成〕
ZSM−5型ゼオライトに変えて、以下のゼオライトを用いたことを除いては、複合体1の作製と同様にして複合体5を作製した。なお、作製した複合体5は淡黄色だった。元素分析法で測定した複合体5中における硫黄の含有量は16.1質量%であった。
・複合体5:LTA型ゼオライト(細孔径4.0オングストローム)、淡黄色
〔複合体6の作成〕
LTA型ゼオライト(細孔径4.0オングストローム)の10gに、硫黄2gとチオ硫酸ナトリウム3gを加え均一に混ぜた後、2N硫酸3mlを加えて均一になるまで混合した後、これをアンプル内につめて封管し、アルミ箔につつんで炉に入れ、2時間かけて210℃まで加熱し、そのまま3時間210℃に保った。冷却後、アンプルを割って、充分の水でよく洗浄したところ、青紫色の粉末が得られた。なお、複合体6中における硫黄の含有量は0.167質量%であった。
〔質量分析による複合体に担持された硫黄の同素体の同定〕
各複合体に担持された硫黄の同素体は、以下の方法により測定した。なお、比較のために硫黄粉末(S)についても同様の方法で測定した。
まず、各複合体を約3mg準備し、測定試料とした。測定用の容器は高温加熱中でも安定なプラチナ製容器を用いた。キャリアーガスとしてヘリウム(純度99.999995%以上,G1グレード)を300mL/minで流通させながら、温度速度20℃/minにおいて測定試料を30℃〜600℃まで昇温し、各温度での重量変化とマススペクトルを測定した。図1〜3は、硫黄の脱離(重量減少)が確認された258℃において測定されたマススペクトルである。測定機器は、示差熱天秤−光イオン化質量分析同時測定システム(ThermoMass, Rigaku)を用いた。
図1には、硫黄粉末(S)、及び、複合体1の測定結果を示した。表中、m/zの最大値が試料の分子量に相当する。硫黄粉末では、m/zの最大値は256であることから、硫黄粉末がSであることがわかる。硫黄粉末の測定結果では、m/zが256であるシグナルの他に、SからSの分子量に相当するm/zのシグナルも得られているが、これらはSのフラグメント・ピークであり、測定対象物の分子量を表すものではない。一方、図1に示した複合体1の測定結果によれば、m/zの最大値は192であり、複合体1が含有するゼオライトには、Sが担持されていることが示された。
図2には複合体2の測定結果を示した。これによれば、複合体2においても、複合体1と同様に、m/zの最大値は192であった。ここから、複合体2が含有するゼオライトには、Sが担持されていることが示された。
図3には、複合体4の測定結果を示した。これによれば、複合体4においては、m/zの最大値は256であった。ここから、複合体3が含有するゼオライトにはSが担持されていることが示された。
表1には、複合体1〜4に波長532nmのレーザを照射して検出されるラマン強度分布特性においてベースラインから計測したラマンシフト475cm−1に対する460cm−1の吸収強度比の測定結果、及び、元素分析法により求めた複合体中における硫黄含有量を示した。なお、表1中における「細孔径」とは複合体が含有するゼオライトの細孔径(単位はオングストローム)を意図する。また、硫黄含有量とは、複合体の全質量中の硫黄含有量(単位は質量%)を意図する。
〔ゴム組成物の作製〕
表2に示した成分をガラス容器に封入して、液状のゴム組成物を得た。次に、液状のゴム組成物が入った容器に撹拌子を入れ、マグネチックスターラーで170℃に加温しながら1時間撹拌して、ゴム組成物の加硫物を得た。得られたゴム組成物の加硫物について、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。結果を表2に示した。
なお、表2中、各成分の含有量はジエン系ゴム(いずれも、イソプレンゴム)100質量部に対する質量部として示した。また、表1中の「(硫黄)」は、各複合体に含有される硫黄の同素体の含有量を、ジエン系ゴム100質量部に対する質量部として示したものである。
表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・イソプレンゴム(クラレ社製 LIR−30)
・硫黄(関東化学社製)
・加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーCZ−G」)
・酸化亜鉛(正同化学工業社製 「酸化亜鉛 3種」)
・ステアリン酸(千葉脂肪酸社製 「ビーズステアリン酸 桐」)
表2に記載した結果から、所定の複合体を含有し、実質的に亜鉛を含有しない実施例1及び実施例2のゴム組成物は、上記条件で加硫しても、加硫物の重量平均分子量が十分に上昇しており、所望の効果が得られた。一方、所定の複合体を含有しない、比較例1のゴム組成物は、加硫物の重量平均分子量が上昇せず、本発明の効果が得られなかった。
また、青紫色の複合体6を配合した比較例5のゴム組成物は、上記条件で加硫しても重量平均分子量が充分に上昇しなかった。これは、複合体6に含有されるゼオライトにはSが担持されていないからと推測される。

Claims (8)

  1. ジエン系ゴムと、
    細孔径4.0〜7.5オングストロームのゼオライトに、原子数3〜6の硫黄の同素体が担持された複合体と、を含有し、
    前記複合体の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜30質量部である、ゴム組成物。
  2. 前記硫黄の同素体の原子数が4〜6である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記ゼオライトが、AEL、AFI、AFO、AFR、AFS、AFY、AHT、APD、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、AVL、*BEA、BEC、BOF、BOG、BOZ、BPH、BSV、CAN、CFI、CGF、CGS、−CHI、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、EAB、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETL、EUO、EZT、FAU、FER、GME、GON、HEU、IFR、IFW、IFY、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、*−ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSN、JSR、JST、LAU、LEV、LTA、LTF、LTJ、LTL、MAZ、MEI、MEL、MER、MFI、MFS、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MTT、MTW、MWW、NES、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、−PAR、PCR、PON、POS、PSI、PUN、−RON、RRO、RTE、RTH、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SBE、SBN、SBS、SEW、SFE、SFF、SFG、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SOF、SOS、*−SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、−SVR、SZR、TER、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、USI、UWY、VET、WEI、及び、YUGからなる群から選択される結晶構造を有する1種の化合物又は2種以上の混合物である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記細孔径が5.0〜7.1オングストロームである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  5. 前記複合体中における、硫黄の含有量が、前記複合体の全質量に対して1〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  6. 実質的に亜鉛を含有しない、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  7. 更に、カーボンブラック、及び、シリカからなる群から選択される少なくとも1種を、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜150質量部含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物を加硫して得られた、加硫ゴム製品。
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