以下、本発明の第1の実施の形態にかかる電動工具の一例であるインパクトレンチ1について、図1乃至図5に基づき説明する。インパクトレンチ1は、被加工材(鉄鋼、木材等)に止具(ボルトやナット、ネジ等)を締結するための電動式の電動工具である。
以下の説明において、図1に示されている「上」を上方向、「下」を下方向、「前」を前方向、「後」を後方向と定義する。また、インパクトレンチ1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。本明細書において寸法、数値等に言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく、略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」等についても同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」等を含むものとする。
図1に示されているインパクトレンチ1は、電動式の締結工具である。インパクトレンチ1は、モータ2と、ギヤ機構3と、インパクト機構4と、アンビル5と、制御部6とを有している。
インパクトレンチ1の外郭は、モータ2を収容するハウジング7と、ギヤ機構3及びインパクト機構4を収容するハンマケース8と、ハンマケース8の外周面を覆うカバー9とによって構成されている。
ハウジング7は、樹脂製であり、胴体部71と、ハンドル部72とを有している。胴体部71は略筒状をなしており、ハンマケース8と共働して、モータ2、ギヤ機構3、インパクト機構4及びアンビル5を前方に向かう方向において当該順序で収容している。
ハンドル部72は、胴体部71の下面前端部から下方に向けて延出し、胴体部71と一体に構成されている。ハンドル部72の延出方向先端位置には、商用交流電源を接続可能な電源コード7Aが延出している。
ハンマケース8は、アルミニウム製であり、図1及び図2に示されているように、胴体部71の前方に設けられ、第1円筒部81、第2円筒部82、接続部83及び突出部84を有している。ハンマケース8乃至ハンマケース8の各構成要素の詳細については後述する。
カバー9は、樹脂製であり、ハンマケース8の前側外周面を覆うように配置されている。言い換えると、カバー9は、ハンマケース8の少なくとも一部を収容している。カバー9は、突出部91及び円筒部92を有している。
円筒部92は、略円筒状に形成され、ハンマケース8の第1円筒部81、接続部83、第2円筒部82に亘って前後方向に延びている。
突出部91は、前面視略円環状をなしており、円筒部92の前端部からアンビル5の径方向内方に突出している。突出部91の延出端面によって、カバー開口91aが形成されている。
図1に示されているように、モータ2は、ブラシレスモータであり、回転軸21と、ロータ22と、ステータ23と、ファン24とを有している。
回転軸21は、前後方向に延び、軸受を介して胴体部71に回転可能に支承されている。
ロータ22は、図示せぬ複数の永久磁石を有する回転子であり、前後方向に延びている。ロータ22は、回転軸21と一体に回転するように回転軸21に固定されている。
ステータ23は、図示せぬ複数のステータ巻線を有する固定子である。ステータ23は、ロータ22を囲むように、胴体部71に固定されている。
ファン24は、回転軸21のロータ22の前面よりも前方に位置する箇所に設けられている。ファン24は、回転軸21と一体に回転するように回転軸21に固定されている。
図1に示されているように、ギヤ機構3は、モータ2の回転軸21の前端部に設けられたピニオンギヤ31と、ピニオンギヤ31と噛合している複数のギヤ32と、ギヤ32と噛合しているアウターギヤ33とを有している。ギヤ機構3は、ピニオンギヤ31を太陽ギヤとし、複数のギヤ32を遊星ギヤとする遊星ギヤ機構であり、ピニオンギヤ31からの回転を減速してインパクト機構4に伝達可能に構成されている。
インパクト機構4は、スピンドル41と、ボール42と、ストッパ43と、スプリング44と、ワッシャ45と、球46と、ハンマ47とを有している。
スピンドル41は、前後方向に延びるとともに、略V字状の一対の溝41aがスピンドル41の回転軸心に対して互いに対向するように形成されている。溝41aには、ボール42が、当該溝に沿って移動可能に設けられている。また、スピンドル41の前端部には、嵌合部41Aが設けられている。
ストッパ43は、略円筒形状であって、スピンドル41が挿通されている。
ワッシャ45は、前面視略円環状であって、球46とスプリング44との間に設けられている。
スプリング44は、コイルスプリングであって、スピンドル41に外装されている。スプリング44の後端はストッパ43に着座し、前端はワッシャ45に当接している。これにより、スプリング44は、ワッシャ45を介してハンマ47を前方に付勢している。
球46は、ワッシャ45とハンマ47との間において、回転可能に支持されている。球46が回転することによって、ワッシャ45及びスプリング44はハンマ47に対して相対回転可能である。
ハンマ47は、ハンマケース8内に回転可能に配置され、ハンマ本体部47Aと、当該ハンマ本体部47Aの前端に突設される一対の爪部47Bとを有している。ハンマ47は、スプリング44によって前方に付勢される一方、当該付勢力に抗して後方に移動することも可能に配置されている。また、ハンマ47は、ストッパ43の前端面と当接可能に構成され、ハンマ47が所定量以上に後退することが規制されている。ハンマ47は、本発明における「第1回転部」の一例である。
図2に示されているように、ハンマ本体部47Aの前方の内周部には、ハンマ本体部47Aの径方向内方に窪んだ2つの溝47aが形成されている。各溝47aは、スピンドル41の各溝41aに対向する位置に形成されていて、溝41aとともにボール42を支持している。これにより、ハンマ47がスピンドル41に対して保持されるとともに、ボール42が溝41aを移動することによってハンマ47がスピンドル41に対して相対的に前後方向及び周方向に移動することが可能である。
アンビル5は、ハンマケース8内に配置され、アンビル本体部51、一対の羽根部52、工具保持部53及び延出部54を有している。アンビル5乃至アンビル5の各構成要素の詳細については後述する。アンビル5は、本発明における「第2回転部」の一例である。
制御部6は、スイッチ機構61、平滑回路62、トリガ63、制御回路基板64及び電源回路基板65を備え、インパクトレンチ1全体の制御を行う。
トリガ63は、ハンドル部72の前部上部に設けられている。本実施の形態のインパクトレンチ1では、トリガ63は、タンブラスイッチである。トリガ63は、スイッチ機構61と接続されている。
スイッチ機構61は、ハンドル部72内に収容されている。スイッチ機構61は、トリガ63が引操作すなわち始動操作された場合(例えば、作業者の指によって、トリガ63がその上下方向の中央部分を支点として上側または下側を操作、すなわちハンドル部72内に押圧された場合)、モータ2を始動させるための工具始動信号を制御回路基板64に出力し、トリガ63に対する引操作が解除すなわち停止操作された場合(例えば、作業者がトリガ63から指を離して引操作を解除した場合)、工具始動信号の出力を停止するように構成されている。
平滑回路62は、ハンドル部72内に収容されている。平滑回路62は、複数の平滑コンデンサを有し、ノイズや電圧変動の影響を抑えて安定したモータ制御を行うために設けられている。
制御回路基板64は、ハンドル部72の下部に収容されている。制御回路基板64は、トリガ63がその上下方向の中央部分を支点として上側または下側を操作、すなわち押圧されることに伴い、モータ2の回転方向を切り替える。また、トリガ63の操作量に応じてモータ2に供給する電力量を調整することによって、モータ2の回転速度を制御可能に構成されている。
電源回路基板65は、胴体部71内においてモータ2の下方に配置されている。電源回路基板65は、ステータ23から引き出された図示せぬコイルによってモータ2に接続されるとともに、スイッチ機構61、平滑回路62及び制御回路基板64に接続されている。
次に、本実施の形態にかかるインパクトレンチ1におけるハンマケース8及びアンビル5の詳細について図2乃至図4を参照しながら説明する
上述のように、ハンマケース8は、第1円筒部81、第2円筒部82、接続部83及び突出部84を有している。
図2に示されているように、第1円筒部81は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。
第2円筒部82は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。第2円筒部82は、第1円筒部81よりも小径に構成されている。第2円筒部82の内周面には、軸受メタル10が圧入により固定されている。軸受メタル10の後部には、軸受メタル10の内周面から軸受メタル10の径方向外方に窪むとともに周方向に延びる油受溝10aが形成されている。また、図2に示されているように、軸受メタル10の前端部の内周面によって軸受メタル開口10bが形成されている。
接続部83は、前面視略円環状をなしており、第1円筒部81の前端部と第2円筒部82の後部とを接続している。
突出部84は、前面視略円環状をなしており、第2円筒部82の前端部からアンビル5の径方向内方に突出している。突出部84は、アンビル5に関してハンマ47とは反対側に位置している。突出部84の後側面には、当接面84Aが規定されている。また、突出部84の延出端面によって、ハンマケース開口84aが形成されている。突出部84は、本発明における「突出部」の一例である。当接面84Aは、本発明における「対向面」の一例である。
ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10は、本発明における「収容部」の一例である。
上述のように、アンビル5は、アンビル本体部51、一対の羽根部52、工具保持部53、延出部54を有している。
アンビル本体部51は、前後方向に延び、その前部を軸受メタル10に嵌挿された状態で回転可能に支承されている。図3に示されているように、アンビル本体部51は、第1大径部51B、第2大径部51C及び薄肉部51Dを有している。アンビル本体部51は、本発明における「軸部」の一例である。
第1大径部51Bは、アンビル本体部51の前部に位置し、アンビル5の回転軸心を中心とする略円柱状に形成され、前後方向に延びている。第1大径部51Bの前面によって略円環状の当接面51Aが規定されている。当接面51Aは、ハンマケース8の突出部84の当接面84Aと前後方向において対向する位置に位置している。すなわち、ハンマケース8の突出部84(当接面84A)は、第1大径部51Bの最外径よりも径方向内側に位置している。前後方向は、本発明における「所定方向」の一例である。
第2大径部51Cは、アンビル本体部51の後部に位置し、アンビル5の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。第2大径部51Cの外径は、第1大径部51Bの外径と略同一に構成されている。第1大径部51B及び第2大径部51Cは、本発明における「第1部分」の一例である。
薄肉部51Dは、アンビル5の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。薄肉部51Dの前端は第1大径部51Bの後端と連続し、薄肉部51Dの後端は第2大径部51Cの前端と連続している。薄肉部51Dの外径は、略同一の外径を有する第1大径部51B及び第2大径部51Cの外径よりも小さく構成されている。図3(b)に示されているように、薄肉部51Dには、アンビル5の径方向に薄肉部51Dを貫通する油供給口51bが形成されている。なお、図3(b)は、図3(a)のI−I線断面矢視図である。薄肉部51Dは、本発明における「第2部分」の一例である。
また、図3に示されているように、第1大径部51Bの後面、第2大径部51Cの前面及び薄肉部51Dの外周面によって略環状の油供給溝51aが形成されている。油供給溝51aは、アンビル本体部51の全周に亘り形成されている。また、油供給溝51aは、アンビル5の径方向において、軸受メタル10の油受溝10aと対向する位置に位置している。油供給溝51aは、本発明における「溝」の一例である。
アンビル5には、後端部に開口部を有するように前後方向に延びる孔5aが形成されている。製造過程において、潤滑油を孔5aに注入したうえでスピンドル41の嵌合部41Aが圧入により孔5aに固定されることによって、潤滑油が封入された油封入空間5bが画成されている。油封入空間5bに封入された潤滑油は、油供給口51bを介して油供給溝51aに充填される。潤滑油は、本発明における「油」の一例である。
一対の羽根部52は、第2大径部51Cの後端部に第2大径部51Cの径方向外方に突出するように設けられている。羽根部52は、アンビル本体部51と一体に構成され、アンビル本体部51の回転軸心に対してアンビル5の直径方向の互いに反対側に配置されている。
延出部54は、アンビル5の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部51の前端から、前方に延びている。延出部54は、軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aを介して外部に露出している。軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aは、本発明における「開口」の一例である。
工具保持部53は、延出部54の前端から前方に突出している。工具保持部53は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。本実施の形態では、工具保持部53は、四角柱形状をなしている。工具保持部53は、前面視における各辺の長さが、延出部54の前後方向の略中央における各辺よりも僅かに小さく構成されている。延出部54及び工具保持部53は、本発明における「装着部」の一例である。なお、工具保持部53と延出部54の寸法関係はこれに限定されるものではない。
ソケットPは、円筒部P1及びソケット部P2を備えている、円筒部P1は、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。円筒部P1の内周面は、前後方向に延びて断面が工具保持部53と略同形状の多角柱形状、すなわち四角柱形状に切り欠かれている。ソケット部P2は、インパクトレンチ1による止具の締付作業時に止具に係合する部分である。なお、ソケット部P2の形状はこれに限定されない。止具の形状に応じて、様々な形状のソケット部有するソケットを工具保持部53に装着して使用可能である。
次に、本実施の形態にかかるアンビル5の各構成要素間の関係を基礎づけるねじりの断面係数について説明する。
ここで、ねじりの断面係数とは、ある断面のねじりに対する形状的な強さと定義される。例えば、図3に示されている中空の円形断面であるI−I線断面のねじりの断面係数Zpは、以下の式で表される。
Zp=π(d0 4−di 4)/16d0 [m3]
ここで、d0は薄肉部51Dの外径であり、diは薄肉部51Dの内径である(図3(b)参照)。
本実施の形態においては、薄肉部51DのI−I線断面の断面係数は、第1大径部51B、第2大径部51C、工具保持部53及び延出部54のアンビル5の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されている。
次に、図1乃至図4を参照しながら、本発明の実施の形態によるインパクトレンチ1を用いた締付作業について説明する。
スピンドル41がモータ2によって回転されると、ハンマ47とアンビル5がスピンドル41と共に一体的に回転し、ボルト等の締付作業が開始する。
締付作業が進むにつれてアンビル5の負荷が重くなると、ハンマ47はスプリング44の付勢力に抗して回転しながら後退する。このとき、ボール42は、溝41a内を後方に移動する。そして爪部47Bが羽根部52を乗り越えると、ハンマ47とアンビル5との噛み合いが解除され、ハンマ47がアンビル5から離脱する。その後、スプリング44に蓄えられた弾性エネルギーが解放されて、ハンマ47は、ボール42を介して、スピンドル41に対して相対回転しながら前方に移動する。それによって、ハンマ47の一方の爪部47Bとアンビル5の一方の羽根部52とが衝突すると同時に、他方の爪部47Bと他方の羽根部52とが衝突して、ハンマ47とアンビル5とが噛み合う。これにより、羽根部52に打撃が与えられ、ハンマ47の回転力がアンビル5に伝達される。また、爪部47Bと羽根部52との衝突後、ハンマ47はスプリング44の付勢力に抗して回転しながら後退する。このとき、ボール42は、溝41a内を後方に移動する。そして爪部47Bが羽根部52を乗り越えると、ハンマ47とアンビル5との噛み合いが解除され、ハンマ47がアンビル5から離脱する。その後、スプリング44に蓄えられた弾性エネルギーが解放されて、ハンマ47は、ボール42を介して、スピンドル41に対して相対回転しながら前方に移動し、再び爪部47Bと羽根部52とが衝突し、ハンマ47の回転力がアンビル5に伝達される。このように、ハンマ47からの回転打撃によって、アンビル5は工具保持部53に装着されたソケットPとともに回転し、インパクトレンチ1は、ソケットPによるビスやボルト等の止具の締付作業を行う。
また、アンビル5の回転の伴い、油供給溝51aに充填された潤滑油が軸受メタル10の油受溝10aを介してアンビル本体部51と軸受メタル10の摺動面に供給され、アンビル5を軸受メタル10に対して好適に摺動させることが可能となる。
次に、本発明の効果について図5及び図13に示す比較例を参照しながら説明する。比較例は、従来のインパクトレンチ900である。
まず、比較例である従来のインパクトレンチ900について、図13を参照しながら簡単に説明する。
図13に示されているように、インパクトレンチ900は、インパクト機構94、アンビル95、ハンマケース98、カバー99及び軸受メタル910を有している。
ハンマケース98は、インパクト機構94及びアンビル95を収容している。ハンマケース98の前端部には、アンビル95の径方向内方に突出する前面視環形状の突出部981が設けられている。突出部981の延出端面によってハンマケース開口981aが形成されている。
カバー99は、ハンマケース98の外周面を覆っている。カバー99の前端部には、アンビル95の径方向内方に突出する前面視環形状の突出部991が設けられている。突出部991の延出端面によってカバー開口991aが形成されている。
軸受メタル910は、ハンマケース98の前部の内部に圧入により固定されている。軸受メタル910の前端部の内周面によって、軸受メタル開口910aが形成されている。
インパクト機構94は、スピンドル941及びハンマ947を有している。
アンビル95は、アンビル本体部951、一対の羽根部952、工具保持部953及び延出部954を有している。
アンビル本体部951は、略円筒状に形成され、前後方向に延びている。アンビル本体部951の前面によって略円環状の当接面951Aが規定されている。図13に示されているように、ハンマケース98、カバー99及び軸受メタル910のいずれも、当接面951Aと対向する面を有していない。
一対の羽根部952は、アンビル本体部951の後端部にアンビル本体部951の径方向外方に突出するように設けられている。羽根部52は、アンビル本体部951と一体に構成され、アンビル本体部51の回転軸心に対してアンビル95の直径方向の互いに反対側に配置されている。
延出部954は、アンビル95の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部951の前方に延びている。延出部954は、軸受メタル開口910b、ハンマケース開口981a及びカバー開口991aを介して外部に露出している。
工具保持部953は、延出部954の前端から前方に延びている。工具保持部953は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。
また、工具保持部953のアンビル95の軸方向に直交するいずれかの断面の断面係数は、アンビル本体部951及び延出部954のアンビル95の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されている。
上述のように、インパクトレンチを用いて高負荷の締付作業を行う場合、ハンマがアンビルに衝突し、ソケットに大きな締付トルクを発生させることによって、止具(ボルトやナット、ネジ等)を締め付ける。
しかしながら、従来のインパクトレンチ900では、上述のように、工具保持部953のアンビル5の軸方向に直交するいずれかの断面の断面係数の方が、アンビル本体部951及び延出部954のアンビル5の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されているため、より断面係数の小さい工具保持部953の断面で破断してしまい、破断面から先の工具保持部953の一部分がソケットPとともにインパクト工具本体から脱落してしまう可能性があった。
これに対して、図5に示されているように、本実施の形態にかかるインパクトレンチ1では、薄肉部51Dが、第1大径部51B、第2大径部51C、工具保持部53及び延出部54のアンビル5の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さい断面係数の断面を有しているため、より断面係数の小さい薄肉部51Dの断面に関して破断する。また、ハンマケース8がアンビル5の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部51の当接面51Aと対向する当接面84Aを有している。これにより、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合において、当接面51Aと当接面84Aが当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル5の一部分が先端工具とともにインパクト工具本体から脱落することを防止することが可能となる。
上述のように、本発明の第1の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ1は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部51とアンビル本体部51から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部54及び工具保持部53)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル5と、を備え、アンビル本体部51は、第1大径部51B、第2大径部51C、工具保持部53及び延出部54のアンビル本体部51の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部51の軸方向に直交する断面を有する薄肉部51Dを有し、収容部は、アンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84は、アンビル本体部51に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部51と対向する当接面84Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル5に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル5が破断する場合には、第1大径部51B,第2大径部51C、延出部54及び工具保持部53の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部54Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部51と対向する当接面84Aを有しているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、アンビル本体部51と突出部84が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部84がハンマケース8に設けられているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、薄肉部51Dは、アンビル本体部51の回転方向に延び、アンビル本体部51の径方向に窪む油供給溝51aを形成し、油供給溝51aに潤滑油が充填されている。これによれば、薄肉部51Dに潤滑油が充填される油供給溝51aが形成されているため、電動工具本体の全長を大きくすることなく、好適にアンビル5と軸受メタル10との摺動面に潤滑油を供給することが可能となる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第2の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ100について説明する。インパクトレンチ100は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図6に示されているように、インパクトレンチ100は、ハンマケース8に替えてハンマケース18を有し、軸受メタル10に替えて軸受メタル110を有している。
ハンマケース18は、第1円筒部181、第2円筒部182、接続部183を有している。
第1円筒部181は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。
第2円筒部182は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。第2円筒部182は、第1円筒部181よりも小径に構成されている。
接続部183は、前面視略円環状をなしており、第1円筒部の前端部の内周面と第2円筒部182の後部の外周面とを接続している。
軸受メタル110は、第2円筒部182の内周面に圧入により固定されている。軸受メタル110は、延出部110C、突出部110A及び軸受メタル本体部110Dを有している。また、軸受メタル110の後部には、軸受メタル110の内周面から軸受メタル110の径方向外方に窪むとともに周方向に延びる油受溝110aが形成されている。
軸受メタル本体部110Dは、略円筒状に形成されている。
延出部110Cは、略円筒状に形成され、軸受メタル本体部110Dの前端から前方に延びている。
突出部110Aは、前面視環形状に形成され、延出部110Cからアンビル5の径方向内方に突出している。突出部110Aは、アンビル5に関してハンマ47とは反対側に位置している。突出部110Aの後側面には、当接面110Bが規定されている。当接面110Bは、アンビル本体部51の当接面51Aと前後方向において対向する位置に位置している。すなわち、突出部110A(当接面110B)は、第1大径部51Bの最外径よりも径方向内側に位置している。また、突出部110Aの延出端面によって軸受メタル開口110bが形成されている。
上述のように、本発明の第2の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ100は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース18、カバー9及び軸受メタル110)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部51とアンビル本体部51から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部54及び工具保持部53)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル5と、を備え、アンビル本体部51は、第1大径部51B、第2大径部51C、工具保持部53及び延出部54のアンビル本体部51の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部51の軸方向に直交する断面を有する薄肉部51Dを有し、収容部は、アンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部110Aを有し、突出部110Aは、アンビル本体部51に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部51と対向する当接面110Bを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル5に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル5が破断する場合には、第1大径部51B,第2大径部51C、延出部54及び工具保持部53の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部51Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部110Aを有し、突出部110Aはアンビル本体部51と対向する当接面110Bを有しているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、アンビル本体部51と突出部110Aが当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部110Aが軸受メタル110に設けられているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
次に、図7を参照しながら、本発明の第3の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ200について説明する。インパクトレンチ200は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図7に示されているように、インパクトレンチ200は、ハンマケース8に替えてハンマケース28を有し、カバー9に替えてカバー29を有している。
ハンマケース28は、第1円筒部281、第2円筒部282、接続部283及び突出部284を有している。
第1円筒部281は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。
第2円筒部282は、略円筒状に形成され前後方向に延びている。第2円筒部282は、第1円筒部281よりも小径に構成されている。第2円筒部282の内周面には、軸受メタル10が圧入により固定されている。
接続部283は、前面視略円環状をなしており、第1円筒部281の前端部と第2円筒部282の後部とを接続している。
突出部284は、前面視略円環状をなしており、第2円筒部282の前端部からアンビル5の径方向内方に突出している。突出部284の延出端面によって、ハンマケース開口284aが形成されている。
カバー29は、樹脂製であり、ハンマケース28の前側外周面を覆うように配置されている。言い換えると、カバー29は、ハンマケース28の少なくとも一部を収容している。カバー9は、突出部291及び円筒部292を有している。
円筒部292は、略円筒状に形成され、前後方向に延びている。
突出部291は、前面視略円環状をなしており、円筒部292の前端部からアンビル5の径方向内方に突出している。突出部291は、アンビル5に関してハンマ47とは反対側に位置している。突出部291の後側面には、当接面291Aが規定されている。当接面291Aは、アンビル本体部51の当接面51Aと前後方向において対向する位置に位置している。すなわち、突出部291(当接面291A)は、第1大径部51Bの最外径よりも径方向内側に位置している。突出部291の延出端面によって、カバー開口291aが形成されている。
上述のように、本発明の第3の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ200は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース28、カバー29及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部51とアンビル本体部51から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部54及び工具保持部53)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル5と、を備え、アンビル本体部51は、第1大径部51B、第2大径部51C、工具保持部53及び延出部54のアンビル本体部51の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部51の軸方向に直交する断面を有する薄肉部51Dを有し、収容部は、アンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部291を有し、突出部291は、アンビル本体部51に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部51と対向する当接面291Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル5に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル5が破断する場合には、第1大径部51B,第2大径部51C、延出部54及び工具保持部53の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部51Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部51の径方向内方に突出する突出部291を有し、突出部291はアンビル本体部51と対向する当接面291Aを有しているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、アンビル本体部51と突出部291が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部291がカバー29に設けられているため、アンビル本体部51が薄肉部51Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル5の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
次に、図8を参照しながら、本発明の第4の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ300について説明する。インパクトレンチ300は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図8に示されているように、インパクトレンチ300は、アンビル5に替えてアンビル350を有しており、それ以外の構成についてはインパクトレンチ1と同一である。
アンビル350は、アンビル本体部351、一対の羽根部352、工具保持部353及び延出部354を有している。
アンビル本体部351は、前後方向に延び、その前部を軸受メタル10に嵌挿された状態で回転可能に支承されている。図8に示されているように、アンビル本体部351は、第1大径部351B、第2大径部351C及び薄肉部351Dを有している。
第1大径部351Bは、アンビル本体部351の前部に位置し、アンビル350の回転軸心を中心とする略円柱状に形成され、前後方向に延びている。第1大径部351Bの前面によって略円環状の当接面351Aが規定されている。当接面351Aは、ハンマケース8の突出部84の当接面84Aと前後方向において対向する位置に位置している。
第2大径部351Cは、アンビル本体部351の後部に位置し、アンビル350の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。第2大径部351Cの外径は、第1大径部351Bの外径と略同一に構成されている。
図8に示されているように、薄肉部351Dは、アンビル350の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。薄肉部351Dの前端は第1大径部351Bの後端と連続し、薄肉部351Dの後端は第2大径部351Cの前端と連続している。図8(b)に示されているように、薄肉部351Dには、アンビル350の径方向に貫通する油供給口351cが形成されている。また、薄肉部351Dは、アンビル350の径方向に直交する面351H及び面351Iを有している。なお、図8(b)は、図8(a)のII−II線断面矢視図である。
面351H及び面351Iは、アンビル350の径方向おいてアンビル350の回転軸心に関して略対称な位置に位置している。面351Hと面351Iとの距離は、第1大径部351B及び第2大径部351Cの外径よりも小さく構成されている。
第1大径部351Bの後面、第2大径部351Cの前面及び面351Hによって、第1油供給溝351aが形成されている。また、第1大径部351Bの後面、第2大径部351Cの前面及び面351Iによって、第2油供給溝351bが形成されている。油封入空間35bに封入された潤滑油は、油供給口351cを介して第1油供給溝351a及び第2油供給溝351bに充填される。
アンビル350には、後端部に開口部を有するように前後方向に延びる孔35aが形成されている。製造過程において、潤滑油を孔35aに注入したうえでスピンドル41の嵌合部41Aが孔35aに圧入により固定されることによって、潤滑油が封入された油封入空間35bが画成されている。
一対の羽根部352は、第2大径部351Cの後端部に第2大径部351Cの径方向外方に突出するように設けられている。羽根部352は、アンビル本体部351と一体に構成され、アンビル本体部351の回転軸心に対して対極に配置されている。
延出部354は、アンビル350の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部351の前端から連続し、前後方向に延びている。延出部354は、軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aを介して外部に露出している。
工具保持部353は、延出部354の前端から連続している。工具保持部353は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。本実施の形態では、工具保持部353は、四角柱形状をなしている。
本実施の形態においては、薄肉部351DのII−II断面の断面係数は、第1大径部351B、第2大径部351C、工具保持部353及び延出部354のアンビル350の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されている。
上述のように、本発明の第4の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ300は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部351とアンビル本体部351から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部354及び工具保持部353)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル350と、を備え、アンビル本体部351は、第1大径部351B、第2大径部351C、工具保持部353及び延出部354のアンビル本体部351の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部351の軸方向に直交する断面を有する薄肉部351Dを有し、収容部は、アンビル本体部351の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84は、アンビル本体部351に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部351と対向する当接面84Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル350に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル350が破断する場合には、第1大径部351B、第2大径部351C、延出部354及び工具保持部353の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部354Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部351の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部351と対向する当接面84Aを有しているため、アンビル本体部351が薄肉部351Dで破断した場合でも、アンビル本体部351と突出部84が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル350の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部84がハンマケース8に設けられているため、アンビル本体部351が薄肉部351Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル350の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、薄肉部351Dは、第1油供給溝351a及び第2油供給溝351bを形成し、第1油供給溝351a及び第2油供給溝351bに潤滑油が充填されている。これによれば、電動工具本体の全長を大きくすることなく、好適にアンビル350と軸受メタル10との摺動面に潤滑油を供給することが可能となる。
次に、図9を参照しながら、本発明の第5の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ400について説明する。インパクトレンチ400は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図9に示されているように、インパクトレンチ400は、アンビル5に替えてアンビル450を有しており、それ以外の構成についてはインパクトレンチ1と同一である。
アンビル450は、アンビル本体部451、一対の羽根部452、工具保持部453及び延出部454を有している。
アンビル本体部451は、前後方向に延び、その前部を軸受メタル10に嵌挿された状態で回転可能に支承されている。図9に示されているように、アンビル本体部451は、第1大径部451B、第2大径部451C及び薄肉部451Dを有している。
第1大径部451Bは、アンビル本体部451の前部に位置し、アンビル450の回転軸心を中心とする略円柱状に形成され、前後方向に延びている。第1大径部451Bの前面によって略円環状の当接面451Aが規定されている。当接面451Aは、ハンマケース8の突出部84の当接面84Aと前後方向において対向する位置に位置している。
第2大径部451Cは、アンビル本体部451の後部に位置し、アンビル450の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。第2大径部451Cの外径は、第1大径部451Bの外径と略同一に構成されている。
薄肉部451Dは、アンビル450の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。薄肉部451Dの前端は第1大径部451Bの後端と連続し、薄肉部451Dの後端は第2大径部451Cの前端と連続している。薄肉部451Dの外径は、第1大径部451B、第2大径部451Cの外径と略同一に構成されている。薄肉部451Dの内径は、第2大径部451Cの内径よりも大きく構成されている。図9(b)に示されているように、薄肉部451Dには、アンビル450の径方向に貫通する油供給口451bが形成されている。なお、図9(b)は、図9(a)のIII−III線断面矢視図である。
また、図9に示されているように、第1大径部451Bの後面、第2大径部451Cの前面及び薄肉部451Dの内周面によって油供給溝451aが形成されている。油供給溝451aは、アンビル本体部451の全周に亘り形成されている。
アンビル450には、後端部に開口部を有するように前後方向に延びる孔45aが形成されている。製造過程において、潤滑油を孔45aに注入したうえでスピンドル41の嵌合部41Aが圧入により孔45aに固定されることによって、潤滑油が封入された油封入空間45bが画成されている。油封入空間45bに封入された潤滑油は、油供給溝451aに充填される。
一対の羽根部452は、第2大径部451Cの後端部に第2大径部451Cの径方向外方に突出するように設けられている。羽根部452は、アンビル本体部451と一体に構成され、アンビル本体部451の回転軸心に対して対極に配置されている。
延出部454は、アンビル450の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部451の前端から連続し、前後方向に延びている。延出部454は、軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aを介して外部に露出している。
工具保持部453は、延出部454の前端から連続している。工具保持部453は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。本実施の形態では、工具保持部453は、四角柱形状をなしている。
本実施の形態においては、薄肉部451DのIII−III線断面の断面係数は、第1大径部451B、第2大径部451C、工具保持部453及び延出部454のアンビル450の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されている。
上述のように、本発明の第5の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ400は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部451とアンビル本体部451から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部454及び工具保持部453)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル450と、を備え、アンビル本体部451は、第1大径部451B、第2大径部451C、工具保持部453及び延出部454のアンビル本体部451の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部451の軸方向に直交する断面を有する薄肉部451Dを有し、収容部は、アンビル本体部451の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84は、アンビル本体部451に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部451と対向する当接面84Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル450に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル450が破断する場合には、第1大径部451B、第2大径部451C、延出部454及び工具保持部453の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部454Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部451の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部451と対向する当接面84Aを有しているため、アンビル本体部451が薄肉部451Dで破断した場合でも、アンビル本体部451と突出部84が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル450の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部84がハンマケース8に設けられているため、アンビル本体部451が薄肉部451Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル450の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、薄肉部451Dは、油供給溝451aを形成し、油供給溝451aに潤滑油が充填されている。これによれば、電動工具本体の全長を大きくすることなく、好適にアンビル450と軸受メタル10との摺動面に油供給口451bを介して潤滑油を供給することが可能となる。
次に、図10を参照しながら、本発明の第6の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ500について説明する。インパクトレンチ500は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図10に示されているように、インパクトレンチ500は、アンビル5に替えてアンビル550を有しており、それ以外の構成についてはインパクトレンチ1と同一である。
アンビル550は、アンビル本体部551、一対の羽根部552、工具保持部553及び延出部554を有している。
アンビル本体部551は、前後方向に延び、その前部を軸受メタル10に嵌挿された状態で回転可能に支承されている。図10に示されているように、アンビル本体部551は、第1大径部551B、第2大径部551C及び薄肉部551Dを有している。
第1大径部551Bは、アンビル本体部551の前部に位置し、アンビル550の回転軸心を中心とする略円柱形状に形成され、前後方向に延びている、第1大径部551Bの前面によって略円環状の当接面551Aが規定されている。当接面551Aは、ハンマケース8の突出部84の当接面84Aと前後方向において対向する位置に位置している。
第2大径部551Cは、アンビル本体部551の後部に位置し、アンビル550の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。第2大径部451Cの外径は、第1大径部551Bの外径と略同一に構成されている。
薄肉部551Dは、アンビル550の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。薄肉部551Dの前端は第1大径部551Bの後端と連続し、薄肉部551Dの後端は第2大径部551Cの前端と連続している。図10(b)に示されているように、薄肉部551Dには、アンビル550の径方向に延びる油供給溝551aが、アンビル550の周方向に略90度毎に形成されている。なお、図10(b)は、図10(a)のIV−IV線断面矢視図である。
アンビル550には、後端部に開口部を有するように前後方向に延びる孔35aが形成されている。製造過程において、潤滑油を孔55aに注入したうえでスピンドル41の嵌合部41Aが圧入により孔55aに固定されることによって、潤滑油が封入された油封入空間55bが画成されている。油封入空間55bに封入された潤滑油は、油供給溝551bに充填される。
一対の羽根部552は、第2大径部551Cの後端部に第2大径部551Cの径方向外方に突出するように設けられている。羽根部552は、アンビル本体部551と一体に構成され、アンビル本体部551の回転軸心に対して対極に配置されている。
延出部554は、アンビル550の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部551の前端から連続し、前後方向に延びている。延出部554は、軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aを介して外部に露出している。
工具保持部553は、延出部554の前端から連続している。工具保持部553は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。本実施の形態では、工具保持部553は、四角柱形状をなしている。
本実施の形態においては、薄肉部551DのIV−IV線断面の断面係数は、第1大径部551B、第2大径部551C、工具保持部553及び延出部554のアンビル550の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも小さく構成されている。
上述のように、本発明の第6の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ500は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部551とアンビル本体部551から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部554及び工具保持部553)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル550と、を備え、アンビル本体部551は、第1大径部551B、第2大径部551C、工具保持部553及び延出部554のアンビル本体部551の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部551の軸方向に直交する断面を有する薄肉部551Dを有し、収容部は、アンビル本体部551の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84は、アンビル本体部551に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部551と対向する当接面84Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル550に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル550が破断する場合には、第1大径部551B、第2大径部551C、延出部554及び工具保持部553の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部554Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部551の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部551と対向する当接面84Aを有しているため、アンビル本体部551が薄肉部551Dで破断した場合でも、アンビル本体部551と突出部84が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル550の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部84がハンマケース8に設けられているため、アンビル本体部551が薄肉部551Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル550の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、薄肉部551Dは、油供給溝551aを形成し、油供給溝551aに潤滑油が充填されている。これによれば、電動工具本体の全長を大きくすることなく、好適にアンビル550と軸受メタル10との摺動面に潤滑油を供給することが可能となる。
次に、図11及び図12を参照しながら、本発明の第7の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ600について説明する。インパクトレンチ600は、基本的に、第1の実施の形態によるインパクトレンチ1と同一の構成を有しており、インパクトレンチ1の構成と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略し、相違する構成について主に説明する。
図11及び図12に示されているように、インパクトレンチ600は、アンビル5に替えてアンビル650を有し、スピンドル41に替えて全部に略コ字状の嵌合溝641aが形成されたスピンドル641を有している。
アンビル650は、アンビル本体部651、一対の羽根部652、工具保持部653、延出部654及び嵌合部655を有している。
アンビル本体部651は、前後方向に延び、その前部を軸受メタル10に嵌挿された状態で回転可能に支承されている。図11に示されているように、アンビル本体部651は、第1大径部651B、第2大径部651C及び薄肉部651Dを有している。
第1大径部651Bは、アンビル本体部651の前部に位置し、アンビル650の回転軸心を中心とする略円柱状に形成され、前後方向に延びている。第1大径部651Bの前面によって略円環状の当接面651Aが規定されている。当接面651Aは、ハンマケース8の突出部84の当接面84Aと前後方向において対向する位置に位置している。
第2大径部651Cは、アンビル本体部651の後部に位置し、アンビル650の回転軸心を中心とする略円筒状に形成され、前後方向に延びている。第2大径部651Cの外径は、第1大径部651Bの外径と略同一に構成されている。
薄肉部651Dは、アンビル650の回転軸心を中心とする略円柱状に形成され、前後方向に延びている。薄肉部651Dの前端は第1大径部651Bの後端と連続し、薄肉部651Dの後端は第2大径部651Cの前端と連続している。薄肉部651Dの外径は、略同一の外径を有する第1大径部651B、第2大径部651Cの外径よりも小さく構成されている。
また、図11及び図12に示されているように、第1大径部651Bの後面、第2大径部651Cの前面及び薄肉部651Dの外周面によって油供給溝651aが形成されている。油供給溝651aは、アンビル本体部651の全周に亘り形成されている。また、油供給溝651aは、アンビル650の径方向において、軸受メタル10の油受溝10aと対向する位置に位置している。油供給溝651aには、潤滑油が充填されている。
一対の羽根部652は、第2大径部651Cの後端部に第2大径部651Cの径方向外方に突出するように設けられている。羽根部652は、アンビル本体部651と一体に構成され、アンビル本体部651の回転軸心に対して対極に配置されている。
延出部654は、アンビル650の回転軸心を中心とする円柱状に形成され、アンビル本体部651の前端から連続し、前後方向に延びている。延出部654は、軸受メタル開口10b、ハンマケース開口84a及びカバー開口91aを介して外部に露出している。延出部654の前後方向の略中央における外径は、薄肉部651Dの外径よりも大きく構成されている。
工具保持部653は、延出部654の前端から連続している。工具保持部653は、ソケットP等の先端工具が装着される部分であり、前後方向に延びる多角柱形状をなしている。本実施の形態では、工具保持部653は、四角柱形状をなしている。工具保持部653は、前面視における各辺の長さが、薄肉部651Dの外径よりも大きく構成されている。
嵌合部655は、アンビル本体部651の後端から後方に延出し、前後方向に延びている。嵌合部655は、スピンドル641の嵌合溝641aに圧入により固定されている。
本実施の形態においては、薄肉部651Dは、第1大径部651B、第2大径部651C、工具保持部653及び延出部654のアンビル650の軸方向に直交するいずれの断面よりも断面係数の小さい断面を有している。
上述のように、本発明の第7の実施の形態による電動工具の一例であるインパクトレンチ600は、ハンマ47と、ハンマ47を収容し開口が形成された収容部(ハンマケース8、カバー9及び軸受メタル10)と、収容部に収容され前後方向に延びるアンビル本体部651とアンビル本体部651から収容部の開口を介して収容部の外に延出しソケットPを装着可能な装着部(延出部654及び工具保持部653)とを有しハンマ47の回転によって回転可能なアンビル650と、を備え、アンビル本体部651は、第1大径部651B、第2大径部651C、工具保持部653及び延出部654のアンビル本体部651の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さいアンビル本体部651の軸方向に直交する断面を有する薄肉部651Dを有し、収容部は、アンビル本体部651の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84は、アンビル本体部651に関してハンマ47とは反対側に位置し、前後方向においてアンビル本体部651と対向する当接面84Aを有している。これによれば、ハンマ47が回転することによってアンビル650に衝突することに起因して、又は他の要因によりアンビル650が破断する場合には、第1大径部651B、第2大径部651C、延出部654及び工具保持部653の軸方向に直交するいずれの断面の断面係数よりも断面係数の小さい断面を有する薄肉部654Dの断面で破断する。また、収容部がアンビル本体部651の径方向内方に突出する突出部84を有し、突出部84はアンビル本体部651と対向する当接面84Aを有しているため、アンビル本体部651が薄肉部651Dで破断した場合でも、アンビル本体部651と突出部84が当接することによって、破断面より前方に位置するアンビル650の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、突出部84がハンマケース8に設けられているため、アンビル本体部651が薄肉部651Dで破断した場合でも、簡易な構成で破断面より前方位置するアンビル650の一部分がソケットPとともに脱落することを防止することが可能となる。
また、薄肉部651Dには、油供給溝651aが形成され、油供給溝651aに潤滑油が充填されている。これによれば、電動工具本体の全長を大きくすることなく、好適にアンビル650と軸受メタル10との摺動面に潤滑油を供給することが可能となる。
本実施の形態においては、インパクトレンチ1、100、200、300、400、500及び600を例に説明したが、本発明はインパクトレンチ以外のモータで駆動される電動工具、例えば、インパクトドライバ、オイルパルスドライバ、ハンマ、ハンマドリル等の電動工具にも適用可能である。