詳細な説明
図面を参照し、具体的な言葉を使用して、開示の様々な態様を記載する。このような図面と記載の使用は、開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。追加の態様は、請求項を含む開示を考慮すると明らかである、または、実践によって習得されてよい。
X線管において、電子は、一般的に、電子エミッタを使用して生成され、電子エミッタは、一般的に、陰極のフィラメントを用いて実装される。電圧差の存在下で、次に、電子は、陽極上の焦点またはターゲットに向けられてよく、ターゲットに衝突すると、陽極との電子の衝突によって発生したエネルギーの一部が、X線に変換される。そして、X線管によって生成されたX線が、分析または治療のために、患者または物体に向けられてよい。
状況によっては、陰極によって生成される電子量を増加させること、または、陰極によって電子が放出される割合を増加させることが望ましい場合がある。これは、陽極に衝突する電子の数を増加させ、それによって、X線管から生成、放出されるX線の量を増加させる。X線管から放出されるX線量の増加は、X線撮像に様々な利点を提供し得る。例えば、物体または患者をより速くスキャンするために、X線放出率の増加が使用されてよい。
陰極によって生成される電子量は、X線管の様々な特性に左右され得る。例えば、電子放出は、フィラメントの表面積を大きくすることによって増加させてよい。フィラメントの表面積は、フィラメントのサイズまたは形状等、フィラメントの寸法を変化させることによって大きくしてよい。別の例においては、電子放出は、フィラメントに供給する電流を増やすことによって増加させてよい。さらに別の例においては、電子放出は、X線管の電圧(または、電圧差)を大きくすることにより増加させてよい。
実際には、X線管の設計は、コストに関する制限、製造の制限、並びに、既存のX線管及び撮像システムとの互換性によって制約を受けることが多い。従って、多くの状況において、例えば、フィラメントに供給する電流を増やすことによって、X線管の電圧を上げることによって、または、フィラメントのサイズもしくは表面積を大きくすることによって、電子を増やすことは適切ではない。さらに、X線管は、特定の、フィラメントの寸法、陰極サイズ、陽極サイズ、及び、それらの間の間隔に関する空間電荷の制限によって本質的に制限され得るので、フィラメントの電流の増加によってX線放出が増加しない場合がある。
X線管で使用されるフィラメントの種類の1つは、コイルフィラメントである。コイルフィラメントは、一般的に、渦巻またはらせん構造に配置された線によって形成される。X線管で使用され得る別の種類のフィラメントは、平らな、または、平面のフィラメントである。コイルフィラメントの1つの利点は、コストが抑えられ、X線管で幅広く使用されることである。コイルフィラメントの別の利点は、低電圧で電子ビームを選択的に「カットオフ」する能力が高いことで、これについては以下により詳細に記載する。従って、状況によっては、X線管にコイルフィラメントを実装すると有利な場合がある。
状況によっては、例えば、フィラメントのサイズまたは表面積を大きくすることによってフィラメントからの電子放出を増やすことは、陽極上の焦点サイズを大きくし、その結果、X線画像の品質を低下させ得るので、実際的でない場合がある。別の例においては、フィラメントへの電流を増加させることも、撮像用途によっては不適切なサイズに焦点を拡大し得るので、実際的でない場合がある。さらに、フィラメントへの電流を増加させることは、フィラメントの動作寿命を減少させる場合がある。
さらに、多くのX線管は、電子流を誘導または集束させる構成を含む。例えば、X線管の中には、陰極上または陰極周辺の構成要素にグリッド電圧を印加することによって、電子ビームを誘導するものがある。しかしながら、構成によっては、フィラメントサイズ、または、フィラメントに供給する電流を増やすことによって電子ビームを増加させることは、電子ビームの効果的な誘導に必要なグリッド電圧を著しく増加させ得るので、実用的でない場合がある。
開示の実施形態は、陰極によって生成される電子の数を増加させること、及び/または、陰極によって電子が放出される割合を増加させることを容易にし得る。実施形態によっては、陰極が、同じ焦点及び/または焦点領域に向けられる電子を同時に生成する2つ以上のフィラメントを含んでよい。陰極は、両方のフィラメントによって生成される電子を同じ焦点及び/または同じ焦点領域に同時に向けることによって、より多くの電子を生成する。このような構成によって、どちらのフィラメント表面積も増やすことなく、電子放出を増やすことを可能にし得る。このような構成は、どちらのフィラメントの形状も変更することなく、電子放出を増やすことも可能にし得る。さらに、または、代わりに、このような構成によって、フィラメントに供給する電流もX線管の電圧も増加させることなく、電子放出を増やすことを可能にし得る。さらに、このような構成は、低コストのコイルフィラメントを使用して実装し得る。
開示の実施形態は、X線管の撮像特性も向上させ得る。例えば、開示の実施形態は、より強い強度の焦点を生成し、それによって、スキャン時間を速くし得る、及び/または、撮像侵入深さ(imaging penetration)が向上し得る。別の例においては、開示の実施形態は、強度がより均一に分布した焦点を陽極に生成し得る、それによって、画像解像度は向上する。
さらに、開示の実施形態は、陰極によって生成される電子ビームの誘導を容易にし得る。例えば、フィラメントサイズ、または、フィラメントに供給される電流が増加しないので、電子ビームを誘導するためのグリッド電圧の上昇を必要としない。
以前の陰極設計は、複数のフィラメントを含んでいたが、以前の構成では、各フィラメントは、交互に、作動された。このような構成では、一度にフィラメントの1つのみが作動され、1つのフィラメントからの電子放出は、他のフィラメントから電子が放出される前に、停止することになる。
図1A〜図1Cは、本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態を実施し得るX線管100の一例の図である。詳細には、図1Aは、X線管100の斜視図を示し、図1Bは、X線管100の側面図を示し、そして図1Cは、X線管100の断面図を示す。図1A〜図1Cに示すX線管100は、動作環境の例を表し、本明細書に開示の実施形態を限定するものではない。
一般的に、X線はX線管100内で生成されて、その一部がX線管100を出て1つまたは複数の用途に利用される。X線管100は、X線管100の外側構造として作用し得る真空エンクロージャ構造102を含んでよい。真空エンクロージャ構造102は、陰極ハウジング104と陽極ハウジング106を含んでよい。図1Cに示すように、陰極ハウジング104は、陽極ハウジング106に固定されてよく、それによって、内部の陰極室103が陰極ハウジング104によって画定され、内部の陽極室105が陽極ハウジング106によって画定され、それぞれ、真空エンクロージャ102を画定するように結合される。
図1A及び1Cに示すように、X線管100は、X線透過窓108を含んでよい。X線管100で生成されるX線の一部は、窓108を通って出射しよい。窓108は、ベリリウムまたは他の適切なX線透過性材料で構成されてよい。
図1Cを参照すると、陰極ハウジング104は、陰極アセンブリ110と呼ばれるX線管の一部を形成する。陰極アセンブリ110は、通常、集まって電子ビーム112を形成する電子の生成に関連する構成要素を含む。例えば、陰極アセンブリ110は、陰極ヘッド115を含んでよく、陰極ヘッド115の端に電子エミッタシステム122が配置されている。
陽極ハウジング106によって画定される陽極内部室105内には、陽極114が配置されている。陽極114は、陰極アセンブリ110と間隔を置いて、反対側にある。電子エミッタシステム122は、電流が電子エミッタシステム122に印加されると熱電子放出を介して電子を放出する構成であり、電子は集まって電子ビーム112を形成し、電子ビーム112は電圧差の存在下で加速して陽極114のターゲット128に向かう。
電子エミッタシステム122が放出した電子は、電子ビーム112を形成し、加速領域126に入って、横断し、加速して、陽極114に向かう。より詳細には、図1A〜図1Cに含まれる任意に定義された座標系従うと、電子ビーム112は電子エミッタシステム122から離れて加速領域126を通る方向であるz方向に加速してよい。
図示の構成において、陽極114は、ベアリングアセンブリ164または他の適切な構造に結合された回転可能に取り付けられたシャフトを介して回転するように構成された回転陽極である。電子ビーム112が電子エミッタシステム122から放出されると、電子は陽極114のターゲット128に衝突する。本実施形態においては、ターゲット128は、回転陽極114に配置された環状リングとして形成される。電子ビーム112をなす密集した電子がターゲット表面128に衝突する領域は、焦点として知られている。ターゲット表面128は、タングステン、または、高い原子(「高いZ」)番号を有する類似の材料で構成されてよい。高い原子番号を有する材料が、ターゲット128に使用されてよく、その材料は、衝突電子と相互作用してX線を生成し得る「高い」電子殻に電子を相応に含むようになっている。本実施形態においては、陽極114は回転陽極であるが、本明細書に記載の概念は、固定陽極等、他の陽極構成に適用されてよい。
X線管100の動作中、陽極114及び電子エミッタシステム122は、電気回路で接続される。電気回路は、陽極114と電子エミッタシステム122の間に高い電位(または、電圧差)の適用を可能にする。さらに、電子エミッタシステム122は電源に接続され、電源は、電子エミッタシステム122のフィラメントまたはエミッタに電流を導いて、熱電子放出によって電子を生成させる。陽極114と電子エミッタシステム122の間に高い電圧差を印加することによって、放出された電子に電子ビーム112を形成させ、電子ビーム112は、加速領域126を通って加速し、ターゲット128に向かう。電子ビーム112内の電子が加速するにつれて、電子ビーム112は、運動エネルギーを得る。ターゲット128に衝突すると、この運動エネルギーの一部はX線に変換される。ターゲット128は、X線が窓108を通過し、窓108を介してX線管100から出射し得るように配向される。
実施形態によっては、真空エンクロージャ102は、外部ハウジング(図示せず)内に配置されてよく、外部ハウジング内では、真空エンクロージャ102の外側表面から熱を放散するように、液体または空気等の冷却剤が循環される。外部熱交換器(図示せず)は、冷却剤から熱を取り除くように、また、外部ハウジング内で冷却剤を再循環させるように動作可能に接続されてよい。構成によっては、陰極ハウジング104、陽極ハウジング106、または、X線管100の構成要素は、冷却剤通路を含んでよい。
実施形態によっては、X線管100は、1つまたは複数の電子ビーム操作構成要素を含んでよい。このような構成要素を実装して、電子ビーム112が領域126を横断する前に、電子ビームを「集束」、「誘導」、及び/または、「偏向」することができ、それによって、ターゲット表面128上の焦点の寸法及び/または位置を操作または「切り替える(toggling)」。さらに、または、代わりに、操作構成要素またはシステムを使用して、電子ビームの断面形状(例えば、長さ及び/または幅)を変更、または、「集束」でき、それによって、ターゲット128上の焦点の形状及び寸法を変更できる。構成によっては、電子ビームを「集束」、「誘導」、及び/または、「偏向」するように構成された構成要素は、陰極ヘッド115及び/または陰極アセンブリ110に置かれてよい。図1A〜図1Cに示す実施形態においては、電子ビームの集束及び誘導は、図2に示すように、集束タブ220によって提供される。
図2は、陰極アセンブリ110の実施形態の斜視図である。図2を参照して、陰極アセンブリ110の態様をさらに詳細に記載する。図に示すように、陰極アセンブリ110は、底部分260、中間部分262、及び、上部分280を含む。上部分280は、開口284が形成された表面282を含む。上部分280は内部空洞を画定し、内部空洞に陰極ヘッド115が配置される。このような構成において、上部分280は、陰極シールドと呼ばれてよい。陰極ヘッド115の電子エミッタシステム122は、シールド開口284を通して電子を放出し、電子がビーム112の形で陽極114に向かうように配置、配向される(図1C参照)。
上記のように、集束タブ220は、ビームを集束及び/または誘導してよい。集束タブ220は、上部分280の表面282に配置されて、開口284内に延びてよい。実施形態によっては、陰極ヘッド115の各対応するフィラメントまたはエミッタに対して、集束タブ220の対が含まれてよい。集束タブ220の各対は、所望の焦点形状とサイズを提供することによって電子ビームを集束するように、対応する電子ビームに空間的制限を課すように構成されてよい。さらに、または、代わりに、集束タブ220の各対は、陽極ターゲットに焦点を位置させることによって、対応する電子ビームを誘導するように構成されてよい。他の構成においては、集束タブ220は、陰極アセンブリ110の一部として含まれなくてもよく、集束及び/または誘導構造が、陰極ヘッド自体に備えられてよい。このような構造を図3A〜図3D、図4A、図4B、図5A〜図5C、図6A〜図6Cに示し、以下に記載する。
図3A及び図3Bは、陰極ヘッド300の実施形態の例を示す。図3Aは、陰極ヘッド300の斜視図であり、図3Bは、陰極ヘッド300の断面図である。陰極ヘッド300は、図1A〜図1C、及び、図2のX線管100に実装されてよい。さらに、または、代わりに、陰極ヘッド300に関して記載される任意の適切な態様は、本明細書に記載の他の実施形態に含まれてよい。
図に示すように、陰極ヘッド300は、陰極本体302、第1のフィラメント304、及び、第2のフィラメント306を含む(本開示を通して、「フィラメント」を「電子エミッタ」と呼ぶ場合もある)。図示の構成において、フィラメント304、306は、渦巻またはらせん構造に配置された線で形成されたコイルフィラメントである。フィラメント304、306は、実質的に同じサイズで、互いに間隔を置いている。他の構成においては、フィラメント304、306は、異なるサイズであってよい。
陰極本体302は、ここではフィラメントスロット314として実施される第1のフィラメント凹部と、フィラメントスロット316として示される第2のフィラメント凹部とを画定する。フィラメント304はフィラメントスロット314内に少なくとも部分的に配置され、第2のフィラメント306はフィラメントスロット316内に少なくとも部分的に配置される。陰極本体302は、集束スロット310として示される第1の集束凹部と、集束スロット312として例に示される第2の集束凹部も画定する。図示の実施形態において、フィラメント304及びフィラメントスロット314は集束スロット310の内側に配置され、フィラメント306及びフィラメントスロット316は集束スロット312の内側に配置される。第1の集束スロット310は、フィラメント304によって生成された電子ビームを集束するようなサイズ、形状であってよく、第2の集束スロット312は、フィラメント306によって生成された電子ビームを集束するようなサイズ、形状であってよい。さらに、または、代わりに、第1の集束スロット310は、フィラメント304によって生成された電子ビームをターゲットに向けるようなサイズ、形状であってよく、第2の集束スロット312は、フィラメント306によって生成された電子ビームをターゲットに向けるようなサイズ、形状であってよい。
図3Bに示すように、陰極本体302は、前後方向軸A1をおおまかに画定してよい。図示の構成において、前後方向軸A1は、陰極本体302によって画定された平面の陰極面303に対して垂直であるが、他の構成を実施してもよい。集束スロット310、312は、陰極面303を貫通する。フィラメント304、フィラメントスロット314、及び/または、集束スロット310は、前後方向軸A2を中心とするように配向されてよい。同様に、フィラメント306、フィラメントスロット316、及び/または、集束スロット312は、前後方向軸A3を中心とするように配向されてよい。図示の構成において、フィラメント304、フィラメントスロット314、及び、集束スロット310は、それぞれ、共通の軸である前後方向軸A2を共有するように、互いに対して整列している。さらに、フィラメント306、フィラメントスロット316、及び、集束スロット312は、それぞれ、共通の軸である前後方向軸A3を共有するように、互いに対して整列している。しかしながら、他の構成においては、フィラメント304、フィラメントスロット314、集束スロット310、フィラメント306、フィラメントスロット316、及び、集束スロット312は、整列しなくてもよく、他の適切な構成で配向されてよい。
図3A及び3Bに示す構成において、フィラメント304、306は、同時に動作するように構成され、陽極のターゲットに同時に電子を向けるように構成される(例えば、図1C参照)。フィラメント304、306、フィラメントスロット314、316、及び、集束スロット310、312は、共通のターゲットの方に配向される。詳細には、集束スロット310は、フィラメント304からの電子ビームとフィラメント306からの電子ビームがほぼ共通のターゲットで交差するように、共通のターゲットに向かって集束スロット312に対して角度をなしてよい。同様に、フィラメントスロット314は、フィラメント304からの電子ビームとフィラメント306からの電子ビームが共通のターゲットに向けられるように、フィラメントスロット316に対して角度をなしてよい。
図3Bを参照すると、構成によっては、共通のターゲットは、軸A2と軸A3との実質的に交差点、または、その近辺に位置してよい。従って、軸A2は、軸A3を横断してよい。軸A2は、軸A1を横断してよく、及び/または、軸A3は、軸A1を横断してよい。例示の図において、軸A2及び軸A3は、互いと軸A1とに一点で交差することが示されている。従って、軸A2は軸A3を横断してよい。しかしながら、現実には、軸は、陰極ヘッド300とその構成要素の製造公差のために、図に示すようには実際には整列していない場合がある。さらに、他の構成においては、軸A2及びA3は、軸A1からオフセットした点で交差するように配向されてよい。
フィラメント304は、距離D1によって示すように、フィラメント306と間隔を置いている。距離D1と、軸A2と軸A3との角度とは、フィラメント304、306が陽極のターゲットの所望の焦点に向かう電子流を生成するように、選択されてよい。例えば、距離D1と、軸A2とA3の角度とは、フィラメント304、306から焦点までの距離に基づいて選択されてよい。
上記のように、フィラメント304はフィラメントスロット314内に少なくとも部分的に配置され、第2のフィラメント306はフィラメントスロット316内に少なくとも部分的に配置される。図3Bに示すように、フィラメント304はフィラメントスロット314の外に距離D2だけ延びてよく、フィラメント306はフィラメントスロット316の外に距離D3だけ延びてよい。
フィラメント304、306がそれらの個々のフィラメントスロット314、316の外に延びる距離は、フィラメント304、306が生成する電子ビームの様々な特性を決定する。詳細には、フィラメントは、通常、対応するフィラメントスロットの外に延びるフィラメントの上面から電子を放出する。フィラメントスロットの外に延びるフィラメントの距離が大きくなると、フィラメントスロットの外に延びるフィラメントの上面も増加し、それによって、電子を放出するフィラメントの表面積を増加させる。詳細には、フィラメントスロットの外に延びるフィラメントの距離を増加させることによって、(例えば、陰極と陽極の間の)高勾配のポテンシャルギャップにさらされるフィラメントの表面積を増加させ、その結果、熱電子放出に関与するように利用できる電子の数を増やして、放出電流を増加させる。
さらに、または、代わりに、フィラメントが対応するフィラメントスロットの外に延びる距離を増加させることによって、フィラメントによって生成される電子ビームの断面を大きくし、それによって、陽極のターゲット上の焦点のサイズを大きくし得る。詳細には、電子を放出するフィラメントの表面積を増加させることによって、より幅の広い、または、より広がった(例えば、断面の少なくとも1つの寸法がより大きい)電子ビームとなる。より幅の広い電子ビームは、一般に、陽極のターゲットにより大きい焦点を生成する。
図3Bに示すように、フィラメント306は、フィラメント304がフィラメントスロット314の外に延びるより大きくフィラメントスロット316の外に延びる。従って、距離D3は、距離D2より大きい。このような構成において、フィラメント306で電子を放出する表面積は、フィラメント304、306のサイズが実質的に同じであっても、フィラメント304で電子を放出する表面積より大きい。従って、フィラメント306は、フィラメント304によって生成される電子ビームの断面より大きい断面を有する電子ビームを生成する。詳細には、フィラメント306によって生成される電子ビームは、フィラメントによって生成される電子ビームより広い、または、広がっている。そして、フィラメント306によってターゲットに生成される焦点は、フィラメント304によって生成される焦点より大きくなり得る。
距離D3と距離D2との差は、陰極ヘッド300によって放出される電子全体を増やすためには有益であるが、フィラメントスロット314の外に延びるフィラメント304の距離D2を減らすこと(または、フィラメントスロット314のより奥にフィラメント304を配置すること)は、フィラメント304から放出される電子を減らし得、または、ターゲット上の焦点のサイズ(例えば、幅)を減らし得、それによって、状況によっては、画像の品質に負の影響を与える場合がある。従って、距離D3及び距離D2(従って、D3とD2との差)は、放出される電子、及び/または、ターゲット上の焦点のサイズの望ましくない減少を避けるように選択されてよい。このような構成において、距離D3と距離D2との差は、陰極ヘッド300の他の寸法に比較して小さくてよい。ある例においては、距離D3と距離D2との差は、陰極ヘッド300の製造公差より大きくてよい。別の例においては、距離D3と距離D2との差は、5ミクロン(μm)と25μmとの間であってよい。
電源は、フィラメント304とフィラメント306に電気的に結合されてよい。電源は、フィラメント304、306が陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、フィラメント304、306に同時に電流を導いてよい。構成によっては、電源は、実質的に同じ電流レベル及び/または電圧レベルでフィラメント304、306を動作させるように構成されてよいが、他の構成を実施してもよい。フィラメント304、306は、所望の構成に応じて、直列または並列に電源に接続されてよい。
図3Cは、陰極ヘッド300によって作られた焦点の概略図である。上記のように、フィラメント304とフィラメント306は、共通のターゲット350の方に配向される。フィラメント304からの電子ビームは第1の焦点354でターゲット350に衝突し、フィラメント306からの電子ビームは、第2の焦点356でターゲット350に衝突する。図に示すように、焦点356は、焦点354を越えて広がる。従って、焦点354は、完全に焦点356内に位置する、または、実質的に焦点356内に位置する。焦点354と焦点356は、合成焦点358を形成する。
上記のように、フィラメント306は、フィラメント304がフィラメントスロット314の外に位置するより長くフィラメントスロット316の外に位置するので、フィラメント306が生成する電子ビームは、フィラメント304が生成する電子ビームの断面より大きい断面を有する。詳細には、フィラメント306が生成する電子ビームは、フィラメント304が生成する電子ビームの対応する断面より大きい少なくとも1つの断面寸法を有する。これは、フィラメント304、306が、実質的に同じサイズ及び形状を有することに関わらない。次に、フィラメント306が生成する焦点356は、フィラメント304が生成する焦点354の対応する断面寸法より大きい少なくとも1つの断面寸法を有する。
上記のように、フィラメント306が、フィラメント304より、対応するフィラメントスロットの外に長く位置することは、陰極ヘッド300が放出する電子全体を増やすためには有益であり得る。しかしながら、フィラメントスロット314の外に延びるフィラメント304の距離を減らすこと(または、フィラメント304をフィラメントスロット314のより奥に配置すること)は、フィラメント304から放出される電子を減らし得る、または、ターゲット350上の焦点354のサイズ(例えば、幅)を減らし得る、また、状況によっては、これは、355で示す、焦点356が焦点354と重ならないターゲット350の部分に関して、特に画質を低下させ得る。従って、フィラメント304、306が対応するフィラメントスロット314、316の外に延びる距離は、放出される電子、及び/または、ターゲット350上の焦点354、356のサイズの望ましくない減少を避けるように選択されてよい。
例えば、距離D3と距離D2との差は、焦点354が焦点356の面積の70%から99%をカバーするように、または、重なるようにされてよい。別の例においては、距離D3と距離D2との差は、焦点354が焦点356の面積の80%から99%をカバーするように、または、重なるようにされてよい。別の例においては、距離D3と距離D2との差は、焦点354が焦点356の面積の90%から99%をカバーするように、または、重なるようにされてよい。
図3Cに示すように、焦点354は幅W1を含み、焦点356は幅W2を含む。フィラメント306からの電子放出は、フィラメント304からの電子放出より広く広がるので、幅W2は、幅W1より大きい。また、焦点354は高さH1を含み、焦点356は、高さH2を含む。高さH1と高さH2の寸法は、対応するフィラメント304、306のコイル長に少なくとも部分的に依存してよい。フィラメント304、306のコイル長は、実質的に等しいので、高さH1と高さH2は、実質的に同じである。とはいえ、他の構成も実施してよい。
合成焦点358は、焦点354及び356の外側寸法によって画定される。従って、焦点354は、完全に焦点356内に位置する、または、実質的に焦点356内に位置するので、合成焦点358は、幅W2と高さH2を含む。図に示すように、焦点354は、焦点356内の中央にある。焦点354及び356は、同心であってよい。
図3Cにおいて、焦点354、356は長方形で表され、長方形は、各電子ビームの電子がターゲット350に衝突する場所をおおまかに表している。とはいえ、電子ビームから外れてターゲット350の他の部分に衝突し得る電子があることは理解される。さらに、他の構成においては、焦点354、356は、実質的に長方形でなくてもよく、他の形状及びサイズの焦点を有してよい。さらに、または、代わりに、焦点354、356は、各電子ビームがターゲット350に衝突する際の各電子ビームの寸法を表し得るので、ターゲット350における各電子ビームの断面を表してよい。
ターゲット350は、図1Cの陽極114のターゲット128を表してよい。詳細には、陽極114は、回転陽極であり、ターゲット128は環状リングなので、ターゲット350は、所与の時に電子ビーム(複数可)を受けるターゲット128の特定の部分を表す。あるいは、ターゲット350は、固定陽極上の固定ターゲットを表してよい。
上記のように、焦点354と焦点356は、焦点354及び356の外側寸法によって画定される合成焦点358を形成する。本明細書に開示の構成を用いることによって、1つのフィラメントによって生成される焦点と比較して、より均一な強度を有する合成焦点が生じ得る。図3Dは、1つのフィラメントによって形成される焦点359と合成焦点358を比較した焦点強度の図である。詳細には、図は、一方向のターゲット上の位置に関する電子ビーム強度を示す。
図に示すように、1つのフィラメントによって形成される焦点359は、焦点の端の方に位置するピーク359a、359bと、焦点の中央の方に位置する谷部359cとを含む。従って、焦点359は、あまり均一な濃度を示さず、その結果、X線画像解像度が低くなり得る。
対照的に、合成焦点356は、電子ビーム分布において大きなピークや谷部が無く、より均一な電子ビーム強度を示す。大きい方の焦点356内に小さい方の焦点354を完全に位置させることによって、均一なビーム分布を容易にしてよく、これについては、図3C及び図3Dを合わせて参照して説明する。詳細には、焦点354、356のいずれか、または、両方は、焦点359に関して示すピーク及び谷部と同様のピーク及び谷部を個々に示し得る。しかしながら、大きい方の焦点356内に小さい方の焦点354を完全に位置させることによって、電子分布を組み合わせると、より均一な強度のプロファイルを生成する。例えば、大きい方の焦点356によって形成され得る谷部は、そのサイズ(例えば、ほぼ谷部のサイズ)、及び/または、位置(例えば、大きい方の焦点356のほぼ中心)に基づいて、小さい方の焦点354からの電子ビームによって少なくとも部分的に埋められてよい。同様に、小さい方の焦点354によって形成され得る谷部は、大きい方の焦点356からの電子ビームによって少なくとも部分的に軽減されてよい。従って、合成されると、焦点354、356は、より均一な電子ビーム強度を有する合成焦点358を作成し得る。
さらに、状況によっては、例えば、製造公差によって、2つのフィラメントから放出される焦点を正確に位置付けることは難しい場合がある。従って、均一な焦点強度を維持しながら、焦点を並べて配置すること、または、互いに重なるようにすることは難しい場合がある。対照的に、大きい方の焦点356内に小さい方の焦点354を位置させることは、製造公差が原因の焦点サイズと位置のばらつきを補償するのを容易にし得る。従って、記載の実施形態は、製造公差に関わらず、均一な焦点を形成するのを容易にする。これは、陰極ヘッドとX線管の信頼性も向上させ得る。
図4A及び図4Bは、陰極ヘッド400の実施形態の別の例を示す。図4Aは陰極ヘッド400の斜視図であり、図4Bは陰極ヘッド400の断面図である。陰極ヘッド400は、陰極ヘッド300に関して上述した態様を含み、このような構成要素は、図3A及び図3Bに関して上述した同じ番号で示される。陰極ヘッド400は、図1A〜図1C及び図2のX線管100に実装されてよい。さらに、または、代わりに、陰極ヘッド400に関して記載された任意の適切な態様は、本明細書に記載の他の実施形態に含まれてよい。
陰極ヘッド400は、第1のフィラメント304と、第2のフィラメント306と、さらには第1のフィラメント304と第2のフィラメント306との間の第3のフィラメント404を含む。フィラメント404は、渦巻またはらせん構造に配置された線で形成されたコイルフィラメントである。フィラメント304、306は、実質的に同じサイズで、フィラメント404は、フィラメント304、306より小さいが、他の構成を実施してもよい。
陰極ヘッド400は、陰極本体402を含み、陰極本体402は、ここでは、フィラメントスロット314として示される第1のフィラメント凹部と、フィラメントスロット316として示される第2のフィラメント凹部と、フィラメントスロット406として実施される第3のフィラメント凹部とを画定する。フィラメント404は、フィラメントスロット406内に少なくとも部分的に配置される。陰極本体402は、第1の集束スロット310と第2の集束スロット312と共に、集束スロット408として示される第3の集束スロットも画定する。フィラメント404とフィラメントスロット406は、集束スロット408の内側に配置される。
集束スロット408は、フィラメント404が生成する電子ビームを集束及び/または方向付けるようなサイズ及び形状であってよい。フィラメント404、フィラメントスロット406、及び、集束スロット408は、それぞれ、共通の軸を共有するように、互いに対して整列してよい。構成によっては、共通の軸は、陰極本体402の前後方向軸であってよい。フィラメント404、フィラメントスロット406、及び、集束スロット408は、フィラメント304、306として、同じ共通の焦点の方に配向されてよい。
上記のように、フィラメント404は、フィラメント304、306より小さくてよい。フィラメント404は、フィラメント304及び/またはフィラメント306より小さい少なくとも1つの寸法を含んでよい。例えば、フィラメント404は、フィラメント304及び/またはフィラメント306の対応する寸法より小さい全長、コイル長、フィラメント径、コイル径、または、他の寸法を含んでよい。さらに、または、代わりに、フィラメント404は、フィラメント304、306と異なる電流レベル及び/または電圧レベルで動作してよい。従って、フィラメント404によって生成される焦点は、フィラメント304、306によって生成される焦点、または、フィラメント304、306の両方によって生成される合成焦点とは異なるサイズ(例えば、より小さい1つまたは複数の寸法)であってよい。
上記のように、フィラメント304、306は、同時に動作するように構成され、且つ、陽極上のターゲットに電子を同時に向けるように構成される(例えば、図1C参照)。対照的に、フィラメント404は、フィラメント304、306とは独立して動作するように構成されてよい。従って、フィラメント404は、フィラメント304、306が停止される時、作動するように構成されてよく、逆もまた同様である。にもかかわらず、フィラメント404、フィラメントスロット406、及び、集束スロット408は、フィラメント304、306によって形成された焦点と同じまたは類似の面積で、ターゲット上に焦点を形成するように構成されてよい。従って、フィラメント304、306、404、フィラメントスロット314、316、406、及び、集束スロット310、312、408は、共通のターゲットの方に配向される。詳細には、集束スロット310、312は、フィラメント304、306、及び、404からの電子ビームが共通のターゲットにほぼ向けられるように、共通のターゲットの方に角度が合わせられてよい。
電源は、フィラメント304、フィラメント306、及び、フィラメント404に電気的に結合されてよい。電源は、フィラメント304、306が、陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、フィラメント304、306に同時に電流を導いてよい。電源は、フィラメント304、306とは独立して、フィラメント404に電流を導いてよい。その結果、フィラメント304、306が作動されない時は、フィラメント404が電子を製造し、逆も同様である。構成によっては、電源は、フィラメント404と異なる電流及び/または電圧レベルで、フィラメント304、306を動作させるように構成されてよい。
他の構成においては、フィラメント304、306、及び、404の3つ全てが、同時に動作してよい。このような構成において、電源は、フィラメント304、306、404が、陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、フィラメント304、306、404に同時に電流を導いてよい。このような構成においては、フィラメント304、306、404の3つ全てが、実質的に同じサイズ及び形状であってよいが、他の構成を実施してもよい。フィラメント304、306、404は、所望の構成に応じて、直列または並列に電源に接続されてよい。
図5A〜図5Cは、陰極ヘッド500の実施形態の別の例を示す。図5Aは、陰極ヘッド500の上面斜視図で、図5Bは、陰極ヘッド500の底面斜視図で、図5Cは、陰極ヘッド500の断面図である。陰極ヘッド500は、陰極ヘッド300及び400に関して上述したものと類似した態様を含み、類似の構成要素には類似の番号が使用される。陰極ヘッド300及び400に関して記載した任意の適切な態様が、陰極ヘッド500に関して適用されてよい。さらに、または、代わりに、陰極ヘッド500に関して記載される任意の適切な態様が、本明細書に記載の他の実施形態に含まれてよい。
図に示すように、陰極ヘッド500は、陰極本体502、第1のフィラメント504、及び、第2のフィラメント506を含む。図示の構成において、フィラメント504及び506は、渦巻またはらせん構造に配置された線で形成されたコイルフィラメントである。フィラメント504及び506は、実質的に同じサイズで、互いに間隔を置いている。他の構成においては、フィラメント504及び506は、異なるサイズであってよい。
陰極本体502は、フィラメントスロット514で示す第1のフィラメント凹部と、フィラメントスロット516で示す第2のフィラメント凹部とを画定する。フィラメント504は、フィラメントスロット514の内側に少なくとも部分的に配置され、第2のフィラメント506は、フィラメントスロット516の内側に少なくとも部分的に配置される。陰極本体502は、集束スロット510で示される第1の集束凹部と、集束スロット512で示される第2の集束凹部も画定する。フィラメント504及びフィラメントスロット514は集束スロット510の内側に配置され、フィラメント506及びフィラメントスロット516は集束スロット512の内側に配置される。第1の集束スロット510はフィラメント504が生成する電子ビームを集束するようなサイズ、形状であってよく、第2の集束スロット512はフィラメント506が生成する電子ビームを集束するようなサイズ、形状であってよい。さらに、または、代わりに、第1の集束スロット510はフィラメント504によって生成された電子ビームをターゲットに向けるようなサイズ、形状であってよく、第2の集束スロット512はフィラメント506によって生成された電子ビームをターゲットに向けるようなサイズ、形状であってよい。
構成によっては、フィラメント504、フィラメントスロット514、及び、集束スロット510は、それぞれ、共通の軸を共有するように、互いに対して整列してよい。同様に、フィラメント506、フィラメントスロット516、及び、集束スロット512は、それぞれ、第2の共通の軸を共有するように、互いに対して整列してよい。他の構成においては、フィラメント504、フィラメントスロット514、及び、集束スロット510と、フィラメント506、フィラメントスロット516、及び、集束スロット512は、整列しなくてもよく、他の適切な構成で配向されてよい。
図5A及び図5Bに示す構成において、フィラメント504及び506は、互いに間隔を置き、同時に動作するように構成され、且つ、陽極上のターゲットに電子を同時に向けるように構成される(例えば、図1Cを参照)。フィラメント504、506、フィラメントスロット514、516と集束スロット510、512は、共通のターゲットの方に配向される。詳細には、集束スロット510は、フィラメント504からの電子ビームとフィラメント506からの電子ビームが、ほぼ共通のターゲットで交差するように、共通のターゲットの方に集束スロット512に対して角度をなしてよい。同様に、フィラメントスロット514は、フィラメント504からの電子ビームとフィラメント506からの電子ビームが共通のターゲットに向けられるように、フィラメントスロット516に対して角度をなしてよい。共通のターゲットの方に配向することに関する追加の詳細は、上述の通りである(図3A及び3Bの記載を参照)。
上記のように、フィラメント504は、フィラメントスロット514内に少なくとも部分的に配置され、第2のフィラメント506は、フィラメントスロット516内に少なくとも部分的に配置される。図5Cに示すように、フィラメント506は、フィラメント504がフィラメントスロット514の外に延びるより長くフィラメントスロット516の外に延びる。このような構成においては、フィラメント504、506のサイズが実質的に同じであったとしても、フィラメント506で電子を放出する表面積は、フィラメント504で電子を放出する表面積より大きい。従って、フィラメント506は、フィラメント504によって生成される電子ビームの断面より大きい断面を有する電子ビームを生成する。詳細には、フィラメント506によって生成される電子ビームは、フィラメントによって生成される電子ビームより広い、または、より広がる。次に、フィラメント506によってターゲット上に生成される焦点は、フィラメント504によって生成される焦点より大きくてよい。フィラメントスロットに関するフィラメントの位置決めに関する追加の詳細は、上述の通りである(図3A及び3Bの記載を参照)。
陰極本体502は、陰極面503を画定する。図3A及び図3Bに示す平面の陰極面303と対照的に、陰極面503は、単一面に沿って広がっていない。代わりに、陰極面503は、第1の傾斜部503aと第2の傾斜部503bを含む。傾斜部503aは、フィラメント504、フィラメントスロット514、及び、集束スロット510を通して延びる前後方向軸を横断して、または、その前後方向軸にほぼ垂直に延びてよい。傾斜部503bは、フィラメント506、フィラメントスロット516、及び、集束スロット512を通って延びる前後方向軸を横断して、または、その前後方向軸にほぼ垂直に延びてよい。
構成によっては、陰極ヘッド500は、集束及び/または誘導構造(一般的に「集束構造」と呼ばれる)を含んでよい。「集束」は、所望の焦点形状とサイズを提供してよく、「誘導」は、陽極ターゲット上の焦点の位置を変更し得る。集束構造は、フィラメント504、506を少なくとも部分的に囲んでよく、且つ、電場及び/または空間的制限を電子ビームに課すことによって、フィラメント504、506が放出する電子ビームを集束及び/または誘導してよい。
図示の構成において、集束構造は、集束グリッド540を含み、集束グリッド540は、第1のグリッド部材542、第2のグリッド部材544、及び、第3のグリッド部材546を含む。第1のグリッド部材542及び第2のグリッド部材544の組み合わせは第1の集束グリッド対を形成し、第2のグリッド部材544及び第3のグリッド部材546の組み合わせは第2の集束グリッド対を形成する。図5Cに最もよく示されるように、第1のグリッド部材542及び第2のグリッド部材544はそれらの間に配置されたフィラメント504を含み、第3のグリッド部材546及び第2のグリッド部材544はそれらの間に配置されたフィラメント506を含む。集束グリッド540は、グリッド電圧を受けて、フィラメント504、506によって放出される電子を集束するように構成されてよい。詳細には、集束グリッド540は、ビーム経路に垂直な一方向に電子ビームを集束してよく、及び/または、ビーム経路に垂直なその同じ方向にビームを誘導してよい。グリッド部材542、544、546の電圧は、所与の寸法のビームを提供するように調節することができる。詳細には、各コイルフィラメントの2つのグリッド部材間の電圧差は、電子ビームの1つまたは複数の断面寸法を変更するように調節されてよい。
さらに、または、代わりに、集束構造は、第2の集束グリッド520を含んでよい。集束グリッド520は、フィラメント504、506のそれぞれに対応する集束タブ対を含んでよい。フィラメント504は、第1のタブ522と第2のタブ524で形成される第1のタブ対の間に配置されてよい。フィラメント506は、第3のタブ526と第4のタブ526で形成される第1のタブ対の間に配置されてよい。集束グリッド520は、グリッド電圧を受けて、フィラメント504、506によって放出される電子を集束するように構成されてよい。集束タブ522、524、526及び528は、集束グリッド対を形成してよく、電圧差を受けて、集束グリッド540に直交する方向に電子ビームを集束及び/または誘導してよい。集束タブ522、524、526及び528の電圧は、所与の寸法のビームを提供するように調節できる。詳細には、各コイルフィラメントの2つのタブ間の電圧差は、電子ビームの1つまたは複数の断面寸法を変えるように調節されてよい。他の構成においては、集束タブ522、524、526及び528は、静電的に集束及び/または誘導するよりも、対応する電子ビームに空間的制限を課してよい。
状況によっては、集束グリッド520及び/または集束グリッド540を使用して、電子ビームがターゲット及び/または焦点に到達するのを防ぐのに十分な大きさの電圧を提供することによって、電子ビームを「カットオフ」してよい。電子ビーム(複数可)の「カットオフ」は、X線スキャン中、患者または物体が受ける総X線量の制御に使用されてよい。例えば、電子ビーム(複数可)のカットオフを使用して、スキャン中、患者または物体が受けるX線の量を制限してよい。これは、例えば、患者の心スキャン中、有用であり得る。従って、集束グリッド520及び/または集束グリッド540を使用して、フィラメント504、506からの電子ビームをカットオフすることによって、X線管からのX線放出を制御してよい。集束グリッド520及び/または集束グリッド540を使用して、フィラメント504、506両方の電子ビームを集束、方向付け、及び/または、カットオフしてよい。有利には、同じ集束構造を使用して、フィラメント504、506の両方の電子ビームを集束、方向付け、及び/または、カットオフしてよい。
2つのフィラメントを同時に動作させる構成においては、集束構造を実装及び使用して電子ビームを集束及び/または誘導する方が容易な場合がある。詳細には、両方のフィラメントから電子が集められるので、各フィラメントは、電子強度のより大きい焦点の作成に必要な電流及び/または電圧がより少なくてよい。フィラメントは、より低い電流レベル及び電圧レベルで動作しているので、電子ビームを十分に集束及び/または誘導するために集束グリッドに必要な電圧はより少なくてよい。同様に、電子ビームの「カットオフ」に必要な電圧もより低くてよい。対照的に、より大きいフィラメントを使用し、または、より大きい電流または電圧をフィラメントに印加する構成においては、電子ビームの集束及び/または誘導により大きいグリッド電圧を必要とし得る。さらに、2つの類似もしくは同じフィラメントが同時に動作される時、単一のグリッド電圧を使用して、電子ビームの両方を集束及び/または誘導してよい。対照的に、異なるサイズのフィラメントは、各々に対して別個のグリッド電圧を使用してよい。状況によっては、同時に複数のエミッタを使用することは、生成される電子ビームに所望の方法で影響を与えるのに十分な程度に、エミッタに対してグリッド構成要素(例えば、グリッド表面)を適切に近くに置くことを可能にする。
本明細書に記載の実施形態は、空間的、磁気的、静電的、または、それらの組み合わせ等の、任意の適切な集束構造を用いて実施されてよい。記載された実施形態は、単一の静電集束グリッドまたは複数のグリッド構成(例えば、二重グリッド)を用いて実施されてよい。他の構成においては、実施形態は、静電集束を含まなくてもよく、空間的、及び/または、磁気的等の他の適切な集束構造に依存してよい。図示の構成においては、集束構造は、2つの集束グリッドを含むが、他の構成においては、1つのみを含んでよい。さらに、または、代わりに、本明細書に記載の集束構造等、任意の適切な集束構造は、陰極ヘッド300及び400に実装されてよい。
図5Bに最もよく示されるように、陰極ヘッド500は、電気的カップリング530a、530b、530c及び530dを含んでよい。電源は、電気的カップリング530a〜530dを介してフィラメント504及びフィラメント506に電気的に結合されてよい。詳細には、電気的カップリング530a〜530dは、陰極本体502を貫通して、フィラメント504、506を結合してよい。フィラメント504、506は、それぞれ、電気的カップリングの対応する対を含んでよい。例えば、電気的カップリング530a及び530bは、フィラメント504に対応してよく、電気的カップリング530c及び530dは、フィラメント506に対応してよい。図には示されていないが、集束構造を電気的に結合する電気的カップリングが備えられてよい。さらに、電気的カップリングは、陰極ヘッド400及び500に関しては図に示されていないが、陰極ヘッド400及び500も、適切な電気的カップリングを通常、含むことは理解されたい。
電源は、フィラメント504、506が陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、フィラメント504、506に同時に電流を導いてよい。構成によっては、電源は、実質的に同じ電流レベル及び/または電圧レベルで、フィラメント504、506を動作させるように構成されてよいが、他の構成を実施してもよい。フィラメント504、506は、所望の構成に応じて、直列または並列に電源に接続されてよい。
図6A〜図6Cは、陰極ヘッド600の実施形態の別の例を示す。図6Aは、陰極ヘッド600の上面斜視図であり、図6Bは、陰極ヘッド600の底面斜視図であり、図6Cは、陰極ヘッド600の断面図である。陰極ヘッド600は、陰極ヘッド500に関して上述した態様を含み、このような構成要素は、図5A〜図5Cに関して上述した同じ番号を用いて示される。陰極ヘッド600は、図1A〜図1C及び図2のX線管100に実装されてよい。さらに、または、代わりに、陰極ヘッド600に関して記載した任意の適切な態様は、本明細書に記載の他の実施形態に含まれてよい。
陰極ヘッド600は、第1のフィラメント504及び第2のフィラメント506と、さらには第1のフィラメント504と第2のフィラメント506との間に配置された第3のフィラメント604を含む。フィラメント604は、渦巻またはらせん構成で配置された線で形成されたコイルフィラメントである。フィラメント504及び506は、実質的に同じサイズで、フィラメント604は、フィラメント504、506より小さいが、他の構成も実施されてよい。
陰極ヘッド600は、陰極本体602を含み、陰極本体602は、フィラメントスロット514で示される第1のフィラメント凹部と、フィラメントスロット516で示される第2のフィラメント凹部と、フィラメントスロット606で示される第3のフィラメント凹部とを含む。フィラメント604は、フィラメントスロット606内に少なくとも部分的に配置される。陰極本体602は、(集束スロット510及び512として示される)第1の集束凹部及び第2の集束凹部と共に、集束スロット608で示される第3の集束スロットも画定する。フィラメント604及びフィラメントスロット606は、集束スロット608の内側に配置される。
集束スロット608は、フィラメント604によって生成される電子ビームを集束及び/または方向付けるようなサイズ、形状であってよい。フィラメント604、フィラメントスロット606、及び、集束スロット608は、それぞれ、共通の軸を共有するように互いに対して整列してよい。構成によっては、共通の軸は、陰極本体602の前後方向軸であってよい。フィラメント604、フィラメントスロット606、及び、集束スロット608は、フィラメント504及び506と同じ共通の焦点の方に配向されてよい。
上記のように、フィラメント604は、フィラメント504、506より小さくてよい。フィラメント604は、フィラメント504及び/またはフィラメント506より小さい少なくとも1つの寸法を含んでよい。例えば、フィラメント604は、フィラメント504及び/またはフィラメント506の対応する寸法より小さい全長、コイル長、フィラメント径、コイル径、または、他の寸法を含んでよい。さらに、または、代わりに、フィラメント604は、フィラメント504、506と異なる電流レベル及び/または電圧レベルで動作してよい。従って、フィラメント604によって生成される焦点は、フィラメント504、506によって生成される焦点、または、フィラメント504、506の両方によって生成される合成焦点とは異なるサイズ(例えば、より小さい1つまたは複数の寸法)であってよい。
上記のように、フィラメント504及び506は、同時に動作するように構成され、且つ、電子を同時に陽極上のターゲットに向けるように構成される(例えば、図1C参照)。対照的に、フィラメント604は、フィラメント504及び506とは独立して動作するように構成されてよい。従って、フィラメント604は、フィラメント504及び506が停止される時、作動するように構成されてよく、逆も同様である。にもかかわらず、フィラメント604、フィラメントスロット506、及び、集束スロット508は、フィラメント504及び506によって形成される焦点と同じまたは類似の面積で、ターゲット上に焦点を形成するように構成されてよい。従って、フィラメント504、506、604と、フィラメントスロット514、516、606と、集束スロット510、512、608とが、共通のターゲットの方に配向される。詳細には、集束スロット510、512は、フィラメント504、506、及び、604からの電子ビームが共通のターゲットにほぼ向けられるように、共通のターゲットの方に向けられてよい。
陰極ヘッド600は、集束構造を含んでよい。集束構造は、フィラメント504、506、604を少なくとも部分的に囲んでよく、電子ビームに電場及び/または空間的制限を課すことによって、フィラメント504、506、604によって放出される電子ビームを集束及び/または誘導してよい。
図示の構成において、集束構造は、集束グリッド640を含み、集束グリッド640は、第1のグリッド部材642、第2のグリッド部材644、第3のグリッド部材645、及び、第4のグリッド部材646を含む。第1のグリッド部材642と第2のグリッド部材644の組み合わせは、第1の集束グリッド対を形成し、第2のグリッド部材644と第3のグリッド部材645の組み合わせは、第2の集束グリッド対を形成し、第2のグリッド部材645と第3のグリッド部材646の組み合わせは、第3の集束グリッド対を形成する。
図6Cに最もよく示されるように、第1のグリッド部材642及び第2のグリッド部材644は、それらの間に配置されたフィラメント504を含み、第2のグリッド部材644及び第3のグリッド部材は、それらの間に配置されたフィラメント604を含み、第3のグリッド部材645及び第4のグリッド部材646は、それらの間に配置されたフィラメント506を含む。集束グリッド640は、グリッド電圧を受けて、フィラメント504、506、604によって放出される電子を集束するように構成されてよい。詳細には、集束グリッド640は、ビーム経路に垂直な一方向に電子ビームを集束してよく、及び/または、ビーム経路に垂直なその同じ方向にビームを誘導してよい。グリッド部材642、644、645、及び、646の電圧は、所与の寸法のビームを提供するように調節されてよい。詳細には、各コイルフィラメントの2つのグリッド部材間の電圧差は、電子ビームの1つまたは複数の断面寸法を変更するように調節されてよい。
さらに、または、代わりに、集束構造は、第2の集束グリッド620を含んでよい。集束グリッド620は、フィラメント504、506、604のそれぞれに対応する集束タブ対を含んでよい。詳細には、集束グリッド620は、上記のように、第1のタブ522、第2のタブ524、第3のタブ526、及び、第4のタブ528から形成される集束タブ対を含んでよい。さらに、集束グリッド620は、第5のタブ640及び第6のタブ642から形成された第3のタブ対と、それらの間に配置されたフィラメント604とを含む。
集束グリッド620は、グリッド電圧を受けて、フィラメント504、506、604によって放出される電子を集束するように構成されてよい。集束タブ522、524、526、528、640、及び、642は、集束グリッド対を形成してよく、集束グリッド520に関して上述したように、電圧差を受けて、電子ビームを集束及び/または誘導してよい。
集束グリッド520、540に関して上述した方法で、集束グリッド620及び/または集束グリッド640を使用して、3つのフィラメント504、506、及び、604の全ての電子ビームを集束、方向付け、及び/または、カットオフしてよい。構成によっては、2つのフィラメント504、506が動作している時、1つのグリッド電圧を使用してよく、1つのフィラメント604が動作している時、異なるグリッド電圧を使用してよい。さらに、1つのカットオフ電圧を使用して、2つのフィラメント504、506の電子ビームをカットオフしてよく、異なるカットオフ電圧を使用して1つのフィラメント604の電子ビームをカットオフしてよい。有利には、同じ集束構造を使用して、3つのフィラメント504、506、及び、604の全ての電子ビームを集束、方向付け、及び/または、カットオフしてよい。
本明細書に記載の実施形態は、磁気的、静電的、または、それらの組み合わせ等、任意の適切な集束構造を用いて実施してよい。上記実施形態は、1つの静電集束グリッドまたは複数のグリッド構成(例えば、二重グリッド)を用いて実施されてよい。図示の構成においては、集束構造は2つの集束グリッドを含むが、他の構成においては、一方または他方のみを含んでよい。さらに、または、代わりに、本明細書に記載の集束構造等、任意の適切な集束構造が、陰極ヘッド300、400、及び、500に実装されてよい。
図6Bに最もよく示されるように、陰極ヘッド500は、電気的カップリング530a〜530dに加えて、電気的カップリング530e及び530fを含んでよい。電気的カップリング530e及び530fは、陰極本体を貫通して、フィラメント604を結合してよい。電源は、電気的カップリング530aから530eを介してフィラメント504、フィラメント506、及び、フィラメント604に電気的に結合されてよい。フィラメント504、506が陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、電源は、フィラメント504、506に同時に電流を導いてよい。電源は、フィラメント504、506と独立して、電流をフィラメント604に導いてよく、それによって、フィラメント504、506が作動されていない時にフィラメント604が電子を生成し、逆も同様である。構成によっては、電源は、フィラメント604と異なる電流レベル及び/または電圧レベルで、フィラメント504、506を動作させるように構成されてよい。図には示されていないが、集束構造を電気的に結合する電気的カップリングが備えられてよい。
他の構成においては、3つのフィラメント504、506、及び、604は全て、同時に動作してよい。このような構成においては、フィラメント504、506、604が陽極上の焦点またはターゲットに向けられる電子を同時に生成するように、電源は、フィラメント504、506、604に同時に電流を導いてよい。このような構成においては、フィラメント504、506、604の3つ全ては、実質的に同じサイズ及び形状であってよいが、他の構成を実施してもよい。フィラメント504、506、604は、所望の構成に応じて、直列または並列に電源に接続されてよい。
一実施形態においては、X線管(100)の陰極(300、400、500、600)は、第1の電子エミッタ(304、504)、第2の電子エミッタ(306、506)、及び、陰極本体(302、402、502、602)を含む。第2の電子エミッタ(306、506)は、第1の電子エミッタ(304、504)と間隔を置く。陰極本体(302、402、502、602)は、第1の凹部(314、514)と第2の凹部(316、516)とを画定する。第1の凹部(314、514)は、第1の凹部の中に少なくとも部分的に配置された第1の電子エミッタ(304、504)を含み、第2の凹部(316、516)は、第2の凹部の中に少なくとも部分的に配置された第2の電子エミッタ(306、506)を含む。第2の電子エミッタ(306、506)は、第1の電子エミッタ(304、504)が第1の凹部(314、514)の外に延びているよりも長く第2の凹部(316、516)の外に延びている。第1の電子エミッタ(304、504)と第2の電子エミッタ(306、506)とは、陽極(114)上のターゲット(128)に電子を同時に向けるように構成されてよい。
態様によっては、第1の電子エミッタ(304、504)は第1の凹部(314、514)の外に第1の距離だけ延びており、第2の電子エミッタ(306、506)は第2の凹部(316、516)の外に第2の距離だけ延びており、第1の距離と第2の距離との差は5ミクロンと25ミクロンの間である、または、第1の距離と第2の距離との差は、陰極ヘッド(300)の製造公差より大きい。
別の態様において、第1の電子エミッタ(304、504)は、ターゲット(128)上に第1の焦点を生成するように構成されており、第2の電子エミッタ(306、506)はターゲット(128)上に第2の焦点を生成するように構成されており、第1の焦点は第2の焦点内に位置する。さらに別の態様においては、第2の焦点は第1の焦点より大きい。さらなる態様においては、第1の焦点は第2の焦点の面積の70%から99%に重なる。
さらに別の態様においては、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)は実質的に同じサイズである。さらなる態様においては、第1の電子エミッタ(304、504)は第1の電子ビームを生成するように構成されており、第2の電子エミッタ(306、506)は第2の電子ビームを生成するように構成されており、第2の電子ビームはターゲット(128)において第1の電子ビームの断面より大きい断面を有する。
さらなる態様においては、陰極本体(302、402、502、602)は第3の凹部(310、510)及び第4の凹部(312、512)をさらに画定する。第1の凹部(314、514)は第3の凹部(310、510)内に位置し、第2の凹部(316、516)は第4の凹部(312、512)内に位置する。第3の凹部(310、510)は、第1の電子エミッタ(304、504)からの電子をターゲット(128)に向けるようなサイズ、形状であり、第4の凹部(312、512)は、第2の電子エミッタ(306、506)からの電子をターゲット(128)に向けるようなサイズ及び形状である。
さらなる態様は、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)に電気的に結合された電源を含む。電源は、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)が陽極(114)上の焦点に向けられる電子を同時に生成するように、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)に同時に電流を導くように構成されている。
さらなる態様においては、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)は、陽極(114)上のターゲット(128)の方に向けられている。
さらなる態様は、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)を少なくとも部分的に囲む集束構造を含む。集束構造は、グリッド電圧を受けて、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)によって放出される電子を集束するように構成されている。
さらなる態様は、第1の電子エミッタ(304、504)と第2の電子エミッタ(306、506)との間に配置された第3の電子エミッタ(404、604)を含む。態様によっては、第3の電子エミッタ(404、604)は、第1の電子エミッタ(304、504)または第2の電子エミッタ(306、506)より小さい少なくとも1つの寸法を含む。
別の実施形態においては、X線管(100)の陰極(300、400、500、600)は、第1の電子エミッタ(304、504)と第2の電子エミッタ(306、506)とを含む。第1の電子エミッタ(304、504)は、陽極(114)のターゲット(128)上に第1の焦点を生成するように配向されている。第2の電子エミッタ(306、506)は、第1の電子エミッタ(304、504)と間隔を置き、陽極(114)のターゲット(128)上に第2の焦点を生成するように配向されている。第1の焦点は第2の焦点内に位置し、第2の焦点は第1の焦点より大きい。
態様によっては、第1の電子エミッタ(304、504)と第2の電子エミッタ(306、506)とは、実質的に同じサイズである。
さらなる態様は、集束グリッド(520、540、620、640)を含み、集束グリッド(520、540、620、640)は、十分に大きい電圧が印加されると電子が第1の焦点または第2の焦点に到達するのを防ぐように構成されている。
さらに別の実施形態においては、X線管(100)は陽極(114)と陰極(300、400、500、600)とを含む。陽極(114)はターゲット(128)を含む。陰極(300、400、500、600)は陽極(114)と間隔を置いている。陰極(300、400、500、600)は、第1の電子エミッタ(304、504)、第2の電子エミッタ(306、506)、及び、陰極本体(302、402、502、602)を含む。第1の電子エミッタ(304、504)は、陽極(114)のターゲット(128)の方に配向されている。第2の電子エミッタ(306、506)は、第1の電子エミッタ(304、504)と間隔を置き、陽極(114)のターゲット(128)の方に配向されている。陰極本体(302、402、502、602)は、第1の凹部(314、514)と第2の凹部(316、516)とを画定する。第1の凹部(314、514)は、第1の凹部の中に少なくとも部分的に配置された第1の電子エミッタ(304、504)を含み、第2の凹部(316、516)は、第2の凹部の中に少なくとも部分的に配置された第2の電子エミッタ(306、506)を含む。第1の電子エミッタ(304、504)は第1の凹部(314、514)の外に第1の距離だけ延びており、第2の電子エミッタ(306、506)は第2の凹部(316、516)の外に第2の距離だけ延びており、第2の距離は第1の距離より大きい。
さらなる態様は、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)に電気的に結合されて第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)に同時に電流を導く電源を含み、それによって、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)は、陽極(114)のターゲット(128)に向けられる電子を同時に生成する。
さらなる態様においては、第1の電子エミッタ(304、504)はターゲット(128)上に第1の焦点を生成するように構成されており、第2の電子エミッタ(306、506)はターゲット(128)上に第2の焦点を生成するように構成されている。第2の焦点は第1の焦点より大きく、第1の焦点は完全に第2の焦点内に位置する。さらなる態様においては、第1の電子エミッタ(304、504)及び第2の電子エミッタ(306、506)は実質的に同じサイズである。
本記載及び請求項で使用される用語と言葉は、文献的な意味に限定されず、単に開示を明瞭に一貫して理解できるように使用される。単数形「a」「an」及び「the」は、文脈上、明らかに別段の意味でない限り、複数の指示対象を含むことを理解されたい。従って、例えば、「a component surface(構成要素表面)」という言及は、構成要素表面の1つまたは複数への言及を含む。
「実質的に」という語によって、記載された特徴、パラメータ、または、値は、正確に達成される必要はないが、例えば、公差、測定誤差、測定精度の限界、及び、当業者に既知の他の要素を含む、偏差またはばらつきは、特徴が提供しようと意図した効果を妨げない量で生じてよいことを意味する。
本開示の態様は、その精神または不可欠な特徴を逸脱することなく、他の形態で実現されてよい。記載された態様は、あらゆる点で、限定的ではなく、説明的なものとみなすべきである。請求の主題は、上述の記載によってはなく、添付の請求項によって示される。請求項と等価な意味と範囲内にある全ての変更は、請求項の範囲内に含まれるべきである。