JP2018184687A - 導電層付きニット、歪みセンサおよびウェアラブルセンサ並びに導電層付きニットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニットが備えた快適な装着感を有しながら、抵抗値変化を検出でき、ニットが伸張しても導電層が断線し難い導電層付きニットを提供すること。
【解決手段】
ニット12に導電層13が積層した導電層付きニット10について、前記ニット12は、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層13は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、かつ、ニットの表層部Fの撚糸上および導電層13の伸張方向にニット12が伸びた状態で表出する内層部I表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透しているものとした。
【選択図】図1
【解決手段】
ニット12に導電層13が積層した導電層付きニット10について、前記ニット12は、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層13は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、かつ、ニットの表層部Fの撚糸上および導電層13の伸張方向にニット12が伸びた状態で表出する内層部I表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透しているものとした。
【選択図】図1
Description
本発明は、導電層を備えたニット(編み物)である導電層付きニットおよびその導電層付きニットを用いた歪みセンサ、ウェアラブルセンサと、導電層付きニットの製造方法に関する。
近年、脈拍などの体の状態や動きを計測するためのセンサが搭載されスマートウォッチや活量計、脈拍計などのウェアラブルデバイスの開発が盛んになっているが、従来のウェアラブルデバイスは、リジット基板に半導体素子が配置され導電回路が形成されたユニットを用いることが多かった。しかし、リジット基板を用いたウェアラブルデバイスは硬く身体の動きに追従しないため快適な装着感が得られなかった。そこで、弾性体や衣類に導電回路を形成することでフレキシブルなウェアラブルデバイスを得る技術が開発されている。こうした技術は、例えば、特開2016−076531号公報(特許文献1)や、特開2005−137456号公報(特許文献2)、特開2000−148290号公報(特許文献3)、国際公開2016/114339号(特許文献4)などに記載されている。
特開2016−076531号公報(特許文献1)によれば、配線層が配設されたエラストマからなるウェアラブル筐体が開示され、「簡易な構造で、ウェアラブル端末等に適用可能な伸縮性及び耐衝撃性に優れ、信頼性の高い複合モジュール」(段落[0018]参照)が得られる。また、特開2005−137456号公報(特許文献2)によれば、開裂誘導部を備えた基材フィルムの一面に回路が印刷された身体装着用電極装置が開示され、「患者の体型に合わせて電極の装着位置を容易かつ正確に調整することができ、しかも患者が長時間装着していても違和感が少ない」(段落[0020]参照)という効果が得られる。ところが、エラストマや樹脂フィルムを基材として構成されたウェアラブルデバイスは、基材が汗を吸収しないことや、通気性を備えないため、長時間の利用では必ずしも快適とは言えない。
それに対して特開2000−148290号公報(特許文献3)では、「縫い糸に複数の超極細導体を撚り込むことや、生地自体に超極細導体を織り込むこと」(段落[0033]参照)でシャツやズボンなどの衣服にネットワーク用配線を形成することが記載されている。このように導電糸を用いて生地に回路を形成する場合には、生地が吸汗性や通気性を備えるため、長時間の利用でも快適と考えられる。
しかしながら、特開2000−148290号公報(特許文献3)に記載の技術にも次の課題があった。第1に複雑な回路の形成には、回路縫付け工程に長時間かかるためコスト高になる。第2に導電糸は比較的高い導電性を有しているが、糸自体の伸張性に課題があるため、伸張させる用途では千鳥がけ(ジグザグ縫い)やオーバーロックミシンを用いた伸張可能な縫い目を形成しなければならない。このような縫い目は、ある程度の縫い幅(面積)を必要とするため、複雑な回路形成には不向きである。加えて、糸自体を伸ばすわけではないため、伸張によって抵抗値変化を示さず、センサとして用いることができない。
一方、国際公開2016/114339号(特許文献4)には、導電性高分子や銀ペーストで配線を形成した衣服が伸張した際に配線にクラックが入る課題を解決するために、伸び止めの役割を果たす層が記載されている(段落[0017][0021]参照)。しかしながら、伸びを抑制することで、伸張するための応力が大きくなり装着感も損なわれるだけではなく、センサとして利用範囲が限定される。加えて、伸びを抑制する技術は、クラックが生じる伸張率を改善するものではなかった。
即ち、フレキシブルなウェアラブルデバイスの中でもエラストマや樹脂フィルムなどの弾性体を基材として構成されたウェアラブルデバイスに比べ、衣類などの布地は通気性がよく着用感が良好であるが、布地の表面には凹凸や空孔があるため、導電層の形成が困難であり、また布地の伸張時に導電層が断線し易く、これを解決するために好適な技術は得られていない。
そこで本発明は、ニットが備えた快適な装着感を有しながら、抵抗値変化を検出でき、ニットが伸張しても導電層が断線し難い導電層付きニットと、これを用いた歪みセンサやウェアラブルセンサを提供するものである。また、本発明はこうした導電層付きニットの製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために本発明は以下のように構成される。即ち本発明は、ニットに導電層が積層した導電層付きニットであって、前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、かつ、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透している導電層付きニットを提供する。
ニットに導電層が積層した導電層付きニットであるため、基材としてのニットを利用することでニット特有の伸縮性や柔軟性、保湿性を備える肌触りの良い製品とすることができる。また、前記ニットは複数の単糸で撚られた撚糸で編立されているため、単糸間の間隙に導電層が浸漬することができ、ニットに対する固着性に優れた導電層とすることができる。
前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであるため、導電層の抵抗値を検出し、その抵抗値の変化から導電層の伸張程度を推し量ることができる。
前記導電層は、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透している導電層付きニットとすることができる。ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透させたため、ニットから簡単には剥離せず、ニットの伸張に対して破断し難い導電層とすることができる。
前記導電層の長手方向がニットの表層部が連続する方向と交差方向に形成されている導電層付きニットとすることができる。導電層の長手方向がニットの表層部が連続する方向と交差方向に形成されている導電層付きニットとしたため、比較的導電層が破断し易い方向においても導電層が破断し難い導電層付きニットとすることができる。
前記導電層は、架橋ゴムまたは熱可塑性エラストマに導電性粉末が分散した導電性ペーストの硬化体である導電層付きニットとすることができる。前記導電層を架橋ゴムまたは熱可塑性エラストマに導電性粉末が分散した導電性ペーストの硬化体としたため、ニット表面にこの導電性ペーストを印刷することで導電層付きニットを形成することができる。また、伸ばすことで抵抗値が変化する導電層とすることができる。
前記ニットが平編み、ゴム編み、若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層の長手方向が、前記ニットのコース方向である導電層付きニットとすることができる。前記ニットを平編み、ゴム編み、若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットとし、そのニットのコース方向を前記導電層の長手方向として形成したため、こうした種類のニット上に伸張しても破断し難い導電層を有する導電層付きニットとすることができる。
前記ニットがパール編み若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層の長手方向が、前記ニットのウェール方向である導電層付きニットとすることができる。前記ニットをパール編み若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットとし、そのニットのウェール方向を前記導電層の長手方向として形成したため、こうした種類のニット上に伸張しても破断し難い導電層を有する導電層付きニットとすることができる。
前記ニットが2wayトリコット若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層がシンカー面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのコース方向であるか、または前記導電層がニードル面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのウェール方向である導電層付きニットとすることができる。前記ニットを2wayトリコット若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットとし、前記導電層がシンカー面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのコース方向であるか、または前記導電層がニードル面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのウェール方向であるものとしたため、2wayトリコット上に伸張しても破断し難い導電層を有する導電層付きニットとすることができる。
前記何れかの導電層付きニットを有してなり前記導電層の伸縮により抵抗値変化を起こす歪みセンサとすることができる。前記何れかの導電層付きニットを有してなり前記導電層の伸縮により抵抗値変化を起こす歪みセンサとしたため、ニットの伸張を計測するセンサとして利用することができる。
前記歪みセンサを有するウェアラブルセンサとすることができる。前記歪みセンサを有するウェアラブルセンサとしたため、ニットで衣類を形成し、身体の動きを計測するセンサとして利用することができる。
前記ニットでコンプレッションウェアやタイツ、サポータ、グローブ、ソックスの少なくとも何れかを形成しているウェアラブルセンサとすることができる。前記ニットでコンプレッションウェアやタイツ、サポータ、グローブ、ソックスの少なくとも何れかを形成したため、これらの衣類によって被覆された身体の部分の動きを捉えるウェアラブルセンサとすることができる。
本発明はまた、ニットに導電層が積層した導電層付きニットの製造方法であって、
前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであって、前記導電層の長さ方向に前記ニットを10〜50%伸張し、前記導電層となる原料組成物を塗布し、その後当該原料組成物を硬化させて、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで前記導電層を浸透させた導電層付きニットの製造方法を提供する。
前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであって、前記導電層の長さ方向に前記ニットを10〜50%伸張し、前記導電層となる原料組成物を塗布し、その後当該原料組成物を硬化させて、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで前記導電層を浸透させた導電層付きニットの製造方法を提供する。
ニットに導電層が積層した導電層付きニットの製造方法について、前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであって、前記導電層の長さ方向に前記ニットを10〜50%伸張し、前記導電層となる原料組成物を塗布し、その後当該原料組成物を硬化させて、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで前記導電層を浸透させたため、ニットの編み目の方向に影響されずに、ニットの伸張によって導電層が破断し難い導電層付きニットを製造することができる。
本発明の導電層付きニット、歪みセンサおよびウェアラブルセンサによれば、ニットが備えた快適な装着感を有しており、また、導電層が抵抗値変化を検出できる。また、ニットが伸張しても導電層の断線が生じ難い。さらに本発明の導電層付きニットの製造方法によれば、ニットが伸張しても導電層の断線が生じ難い導電層付きニットを製造することができる。
本発明の導電層付きニットについてその実施形態に基づいて説明する。本発明の導電層付きニットは、ニットに導電層が積層した導電層付きニットであって、前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、かつニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透していることを特徴とする。次にはこの導電層付きニットを構成する各部位について説明する。
<ニット>
一般に布は、織物とニット(編み物)とに分類される。この中で、縦糸と横糸を交差させて織った織物は、伸縮する糸を用いた場合を除いて、糸目方向への伸縮性に乏しいが、ニットに比べてハリや腰があり、型崩れしにくく引っ張りに強いなどの特徴があるため、ジャケットやズボンなどの衣類や、敷物などの生活用品など、多くの繊維製品に用いられている。
一般に布は、織物とニット(編み物)とに分類される。この中で、縦糸と横糸を交差させて織った織物は、伸縮する糸を用いた場合を除いて、糸目方向への伸縮性に乏しいが、ニットに比べてハリや腰があり、型崩れしにくく引っ張りに強いなどの特徴があるため、ジャケットやズボンなどの衣類や、敷物などの生活用品など、多くの繊維製品に用いられている。
一方、ニットは繊維でループ(編み目)を作り、このループどうしの絡まりでなる連続した生地(編地)で形成されている。このループどうしの絡まり部分では、繊維が比較的自由に動くことができることに加え、編み目が形成する立体的な構成によって、生地は大きく伸張することができる。このためニットは織物と比べて伸張性が大きく、しなやかで柔らかい質感、立体的な編み目に起因する保温性や通気性の高さなどの特徴を備える。そのため、防寒具や肌着、フィット感が必要となる靴下、しなやかさを生かした運動着などに好適に利用されている。
ニットは、横編と縦編に分類でき、ループが横方向に進んで編地を作るのが横編みで、ループを縦方向に編み上げていくのが縦編である。またニットでは、生地の縦方向に並んだループの列を「ウェール」、横方向に並んだループの列を「コース」と言い、1インチ間におけるループの数をゲージで表す。換言すれば、ウェール方向のゲージ数は1インチ当たりのコース方向の糸の本数であり、コース方向のゲージ数は、1インチ当りのループの数とすることができる。例えば、1インチ四方に後述の図1(a)のパターンがある場合には、ウェール方向が4ゲージ、コース方向が3ゲージとなる。このゲージ数は、目視または光学顕微鏡で観察して計測することができる。
ニットには種々の編み方により、種々の立体的に交差した編み目が形成されるため、そのうちの代表的ないくつかの編地の例について説明する。
平編み:
図1にニットの代表的な編み目である平編み1の模式図を示す。図1(a)はその平面図、図1(b)はその断面図である。図1では便宜的に横方向に延びる4本の繊維について、3ループ分の繰り返しの様子を示しているが、実際には、このようなパターンが上下左右に繰り返されることで編地を形成している。図1(a)では、その横方向(図1(a)のX方向)に向かう繊維方向が、ループどうしが絡み合うコース方向になり、コース方向に対して垂直な方向(図1(a)のY方向)がウェール方向になる。
図1にニットの代表的な編み目である平編み1の模式図を示す。図1(a)はその平面図、図1(b)はその断面図である。図1では便宜的に横方向に延びる4本の繊維について、3ループ分の繰り返しの様子を示しているが、実際には、このようなパターンが上下左右に繰り返されることで編地を形成している。図1(a)では、その横方向(図1(a)のX方向)に向かう繊維方向が、ループどうしが絡み合うコース方向になり、コース方向に対して垂直な方向(図1(a)のY方向)がウェール方向になる。
図2及び図3は、平編み1の繊維を伸ばした様子を示す模式図である。図1(a)を初期状態として、ウェール方向に伸ばしたときの状態を図2に、コース方向に伸ばしたときの状態を図3に示す。図2及び図3で示すように、平編み1ではウェール方向よりもコース方向への伸張が大きくなる。なお、平編み1の裏面は、表面とは異なる形状となる。
ゴム編み:
図4にはゴム編み2の模式図を示す。図4(a)はその平面図、図4(b)はその断面図である。ゴム編み2はコース方向への伸縮性が大きいことが特徴の編み目である。図5及び図6は、ゴム編み2の繊維を伸ばした様子を示す模式図である。図4(a)を初期状態として、ウェール方向に伸ばしたときの状態を図5に、コース方向に伸ばしたときの状態を図6に示す。図5及び図6で示すように、ゴム編み2では平編みと同様にウェール方向よりもコース方向への伸張が大きくなるが、平編み1以上にコース方向の伸張が大きい。図4から図6へのコース方向の変化では、生地全体の伸張が130%(横方向に初期の1.3倍の長さ)であり、図4(a)に示す隙間T1から図6に示す隙間T2への変化は、T1を100%とするとT2は250%にも及ぶ。他方、ウェール方向の伸張は、図5に示すように生地全体が概ね均一に伸張する。また、このときコース方向の寸法は小さくなる傾向がある。ゴム編み2では表裏で同じパターンを形成する。
図4にはゴム編み2の模式図を示す。図4(a)はその平面図、図4(b)はその断面図である。ゴム編み2はコース方向への伸縮性が大きいことが特徴の編み目である。図5及び図6は、ゴム編み2の繊維を伸ばした様子を示す模式図である。図4(a)を初期状態として、ウェール方向に伸ばしたときの状態を図5に、コース方向に伸ばしたときの状態を図6に示す。図5及び図6で示すように、ゴム編み2では平編みと同様にウェール方向よりもコース方向への伸張が大きくなるが、平編み1以上にコース方向の伸張が大きい。図4から図6へのコース方向の変化では、生地全体の伸張が130%(横方向に初期の1.3倍の長さ)であり、図4(a)に示す隙間T1から図6に示す隙間T2への変化は、T1を100%とするとT2は250%にも及ぶ。他方、ウェール方向の伸張は、図5に示すように生地全体が概ね均一に伸張する。また、このときコース方向の寸法は小さくなる傾向がある。ゴム編み2では表裏で同じパターンを形成する。
パール編み:
図7にはパール編み3の模式図を示す。図7(a)はその平面図、図7(b)はその断面図である。パール編み3ではウェール方向への伸縮性が大きいことが特徴の編み目である。図8及び図9は、パール編み3の繊維を伸ばした様子を示す模式図である。図7(a)を初期状態として、ウェール方向に伸ばしたときの状態を図8に、コース方向に伸ばしたときの状態を図9に示す。図8及び図9で示すように、パール編み3では平編み1やゴム編み2と異なり、コース方向よりもウェール方向への伸張が大きくなる。パール編み3では表裏で同じパターンを形成する。
図7にはパール編み3の模式図を示す。図7(a)はその平面図、図7(b)はその断面図である。パール編み3ではウェール方向への伸縮性が大きいことが特徴の編み目である。図8及び図9は、パール編み3の繊維を伸ばした様子を示す模式図である。図7(a)を初期状態として、ウェール方向に伸ばしたときの状態を図8に、コース方向に伸ばしたときの状態を図9に示す。図8及び図9で示すように、パール編み3では平編み1やゴム編み2と異なり、コース方向よりもウェール方向への伸張が大きくなる。パール編み3では表裏で同じパターンを形成する。
2wayトリコット:
2wayトリコットについては図示しないが、その表裏面のうちの一方面をシンカー面、他方面をニードル面といい、要求に応じて、どちらかの面も表面として利用できる編み目である。
2wayトリコットについては図示しないが、その表裏面のうちの一方面をシンカー面、他方面をニードル面といい、要求に応じて、どちらかの面も表面として利用できる編み目である。
スムース編み:
ゴム編みの変形としてスムース編みがある。スムース編みについては図示しないが、2つのゴム編みの裏面どうしを合せたような生地であり、生地の両面がゴム編みの表面と略同じ編み目となる編み方である。そのため、表裏両面が同様に表れる。例えば、所定の厚みのこの生地を用い、生地の両面に同方向の導電層を形成すれば、生地の表裏の導電層の伸びの差によって湾曲度合いの違いを検出することができる。
ゴム編みの変形としてスムース編みがある。スムース編みについては図示しないが、2つのゴム編みの裏面どうしを合せたような生地であり、生地の両面がゴム編みの表面と略同じ編み目となる編み方である。そのため、表裏両面が同様に表れる。例えば、所定の厚みのこの生地を用い、生地の両面に同方向の導電層を形成すれば、生地の表裏の導電層の伸びの差によって湾曲度合いの違いを検出することができる。
こうした編地の他にもデンビー編みやバンダイク編み、コード編みなど、その他種々の編地があり、種々の変化組織を含むものも存在する。
次に、ニットに表れる表面形状について説明する。ニットは、繊維(撚糸)のループ(編み目)によって形成されているが、繊維どうしの重なり部分で、表面に表れる繊維と裏面に隠れる繊維とで積層構造を形成している。例えば図1〜図3で示す平編み1では、図1(b)の左側を編地の表とすると、表側が第1層1aとなり裏側が第2層1bとなる2つの層を有する。また、図4〜図6で示すゴム編み2では、図4(b)に示される表側の第1層2aと中間の第2層2b、そして裏側の第3層2cの3つの層を有する。図7〜図9で示すパール編み3では、図7(b)に示される表側の第1層3aと中間の第2層3b、そして裏側の第3層3cの3つの層を有する。これらの中で表側の第1層1a,2a,3aで構成される部分を表層部Fと呼び、表層部Fに対して裏側に位置する第2層以下1b,2b,2c,3b,3cで構成される部分を内層部Iと呼ぶこととする。また、こうした表層部Fと内層部Iの積層構造によって、編地ごとに特有のパターンを形成しているが、表層部Fに着目すると、編地を何れかの方向に伸ばしてもこの表層部Fが連続する部分が存在し、この表層部Fが連続する方向を表層部Fの連続方向というものとする。
平編み1は、図1で示すように、編地を伸ばさない状態では表層部Fがその表面のほぼ全面に表れ、表層部Fが上下左右の何れの方向にも連続する一方で、図3で示すように、コース方向に生地を伸ばすと表層部Fどうしの間に内層部Iが表出する。このため、上下方向には表層部Fが連続しても、コース方向には表層部Fが連続しない。換言すれば、図3で示す状態では、「ノ」字状と逆「ノ」字状に表面に表れて上下方向に連続する表層部Fが形成される一方で、その左右には表層部Fを分断する内層部Iが表出する。図2で示すウェール方向に編地を伸ばした状態でも表層部Fが上下方向に連続する。こうした平編み1の性質から、平編み1では、図1(a)の上下方向であるウェール方向が、表層部Fの連続方向と一致する。
一方、ゴム編み2でも図4〜図6で示すように、繊維の表側に表れる「ノ」字状のパターンが上下方向に連続する表層部Fと、逆「ノ」字状のパターンが上下方向に連続する表層部Fとが左右方向に繰り返し形成されるが、「ノ」字状と逆「ノ」字状で形成される一組の表層部Fとそれに隣接する別の一組の表層部Fとの間に内層部Iが表出し、谷となる部分が構成される。そのため、ゴム編み2では、編地を伸ばしても伸ばさなくても、表面が浮き上がった部分と凹んだ部分がコース方向に交互に表れる表面凹凸模様を形成する。ゴム編み2では図4(a)のウェール方向が表層部Fの連続方向となる。
パール編み3では図7(a)で示されるように、繊維の表側には「ワ」字状と逆「ワ」字状のパターンが左右方向に連続する表層部Fが形成され、この表層部Fとそれに隣接する別の表層部Fとの間に内層部Iが表出し、谷となる部分が形成される。そのため、パール編み3では表面が浮き上がった部分と凹んだ部分が交互に表れる点でゴム編み2と同一であり、表層部Fと谷となる内層部Iがウェール方向に交互に表れる点でゴム編み2と異なる。パール編み3では図7(a)のコース方向が表層部Fの連続方向となる。
ニットの種類については、前述のように種々の編地がある中でどのような編地を用いても良いが、編み目の大きさについては好適な大きさがある。後述する導電層を導電性ペーストで形成する場合には、10ゲージ以上のいわゆるハイゲージと呼ばれる比較的目の細かい編み目を備えたニットを用いることが好ましい。10ゲージよりも粗い編み目のニットを用いた場合には、以下の不具合が生じるおそれがあるからである。
第1に、繊維が太い場合にはニット表面の凹凸が大きくなりすぎ、印刷がし難くなるおそれがある。また、編み目の繰り返し単位が大きくなることで、伸張における伸びの不均一性が大きくなるおそれがある。第2に、繊維が細い場合には、繊維間の隙間が大きくなることから、導電性ペーストが浸透し易くなり、非浸透部を形成することが困難になる。加えて導電性ペーストがニットの肉厚を貫通して印刷機の定盤を汚し、連続印刷が困難になるおそれがある。一方、10ゲージ以上のニットに所定の導電性ペーストを印刷すれば、上記のような不具合が生じ難く、伸張しても断線し難い導電層を形成することができる。
ニットに用いる繊維の種類は特に限定されず、一般的な天然繊維や合成繊維を用いることができ、また、ガラス繊維のような無機繊維を用いることができるが、絶縁性があり、しなやかな性質を持つ綿、ウール、レーヨン、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維等が好ましい。但し、複数の単糸で撚られた撚糸で形成されたものであることが必要である。単糸で形成されると導電層となる液状塗布物の染み込みが不十分となり、繊維の伸縮時に繊維との密着が保てなくなるからである。撚糸の直径は、0.01〜1.0mm程度が好ましい。1.0mmよりも太ければ生じる編み目の空隙が大きくなりすぎ導電層を形成し難くなるからであり、0.01mmよりも細ければ、導電層付きニットを形成する点で問題は生じないが、編み目の空隙が小さくなりすぎることからニットとしての特徴が得られにくく、ニットを採用する用途に使い難いからである。
<導電層>
導電層は、前記ニットの表面に形成される導電性の部位である。また、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上にこの撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透している。こうした導電層は、主として導電性を発現させる導電性充填材と、導電性充填材を保持する高分子マトリクスとからなるものであり、伸張性を備えたバインダー樹脂に導電性材料が分散した液状導電性組成物をニット上に塗布して形成することができる。図10には、ニット上に導電層を設けた模式図を示す。図10(a)は平面図、図10(b)は断面図である。
導電層は、前記ニットの表面に形成される導電性の部位である。また、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上にこの撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透している。こうした導電層は、主として導電性を発現させる導電性充填材と、導電性充填材を保持する高分子マトリクスとからなるものであり、伸張性を備えたバインダー樹脂に導電性材料が分散した液状導電性組成物をニット上に塗布して形成することができる。図10には、ニット上に導電層を設けた模式図を示す。図10(a)は平面図、図10(b)は断面図である。
導電層を形成する材質について説明する。伸張性を備えた前記マトリクスとしては、架橋ゴムや熱可塑性エラストマを用いることができる。例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の架橋ゴムや、スチレン系熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性エラストマ、エステル系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、アミド系熱可塑性エラストマ、塩化ビニル系熱可塑性エラストマ、フッ素系熱可塑性エラストマなどの熱可塑性エラストマが挙げられる。これらの材質の中でも、シリコーンゴムは極めて柔軟な導電層を形成することができ、比較的耐候性が高いため、ウェアラブルセンサの用途に好適である。
マトリクスの硬さは、JIS K6253で規定されるA硬度で5〜80の範囲が好ましい。A5未満では、柔軟すぎるため耐久性の点で懸念が生じる。一方、A80を越えると、硬すぎてほとんど伸張することができず伸縮させる用途として好適ではない。なお、近年では人にやさしい触感が求められていることから、この好ましい範囲内でも柔軟な素材を用いることがより好ましい。
導電性充填材としては、カーボンや金属等の導電性粉末を用いることできるが、電力や信号を伝える配線とする場合には、低抵抗の金属粉末を用いることが好ましい。また、金属粉末の中でも、ある程度の耐候性と極めて低い抵抗値を有する銀粉末が特に好適である。導電性充填材の形状は特に限定されないが、繊維状のものは比較的少ない充填量で低抵抗にすることができる。また、フレーク状粉末の導電性充填材は比較的少ない充填量で低抵抗にすることができるとともに、伸縮したときの抵抗率変化が小さくなる。
こうした導電性充填材は、導電層中で15〜50体積%を占めるように配合することが好ましい。15体積%未満では、抵抗値が高くなりすぎるおそれがあり、50体積%を超えると、導電性充填材を保持するマトリクスの割合が少なくなりすぎ、伸張したときに導電層に亀裂等が生じて断線するおそれが高まる。
一方、伸縮による抵抗値変化の大きな導電層の形成を欲する場合には、カーボン粉末を用いることが好ましい。伸縮による抵抗値変化の大きな導電層の一例としては、シリコーン100質量部に対して、ケッチェンブラックを3.8〜15質量部(導電層中で3.6〜23体積%)、黒鉛を0〜45質量部(導電層中で0〜48体積%)含む導電性樹脂からなる導電層が好ましい一形態である。ケッチェンブラックの添加量が3.8質量部よりも少ないと所望の導電性や耐久性が得られ難い。また15質量部を超えるとシリコーンとの混合組成物の粘度が高くなり、また導電層を伸張したときにクラックが生じ易くなる。また、黒鉛の添加量が30質量部よりも少ないと導電層の伸張に伴う適度な抵抗変化率が得られ難い。また45質量部を超えるとシリコーンとの混合組成物の粘度が高くなり、また導電層の伸張に対する耐久性が悪くなる。
導電層は、液状の導電性ペーストを用いて印刷形成することが好ましい。この導電性ペーストには、前記マトリクスとなるバインダーと導電性充填材を含む液状組成物を用いることができる。液状組成物の具体例としては、前述の導電性粉末を、硬化可能な液状樹脂であるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの組合せや、ポリウレタンポリオールとイソシアネートの組合せたもの、各種ゴムやエラストマを溶剤に溶かしたものに分散したものとすることができる。また、導電性ペーストには溶剤を含むことができる。溶剤を用いることで黒鉛やケッチェンブラックの分散性、基材表面への塗布性、そして粘度を調整することができる。
導電層を導電性ペーストで印刷形成する場合には、微粒子導電性粉末、繊維状導電性粉末、鱗片状導電性粉末のうち少なくとも1種の導電性粉末を含むことが好ましい。この理由は、これらのいずれか1種を含むことで、所定の導電性ペーストのチキソ比を3〜30に調整することができ、しかも固化後には所定の抵抗値範囲の導電層が得られるためである。特に、チキソ比をこの範囲にすることで、導電性ペーストが必要以上にニットに浸み込むことを抑制できるため、高品位なパターニングが可能となる。
なお、本発明における粘度は、別途説明がない限り、粘度計(BROOKFIELD回転粘度計DV−E)でスピンドルSC4−14の回転子を用い、回転速度10rpmで測定した25℃における粘度を示すものとする。また、上記チキソ比は、粘度計の回転速度10rpmにおける測定値μ10rpmと、回転速度100rpmにおける測定値μ100rpmの比(μ10rpm/μ100rpm)である。
導電性ペーストまたは導電層には、生産性、耐候性、耐熱性など種々の性質を高める目的で種々の添加材を含むことができる。そうした添加材を例示すれば、可塑剤、補強材、着色剤、耐熱向上剤、難燃剤、触媒、硬化遅延剤、劣化防止剤など、種々の機能性向上剤が挙げられる。
<導電層のニットへの染み込み>
ニット表面への導電層の積層は、導電層の一部がニットに浸み込むことでなされている。導電層がニットに浸み込まず、導電層とニットとが互いの表面で固着している場合には、ニットに対する導電層の密着性が劣り、導電層が簡単に剥離するか、導電層が切断され易いからである。しかし、導電層のニットへの浸み込みは、導電層のニットに対する密着性を高めるとういうメリットがある一方で、ニットに浸み込んだ導電層は、導電層中の導電性材料どうしの接触がニットの繊維によって阻害され導電層の抵抗値が高まるおそれある。
ニット表面への導電層の積層は、導電層の一部がニットに浸み込むことでなされている。導電層がニットに浸み込まず、導電層とニットとが互いの表面で固着している場合には、ニットに対する導電層の密着性が劣り、導電層が簡単に剥離するか、導電層が切断され易いからである。しかし、導電層のニットへの浸み込みは、導電層のニットに対する密着性を高めるとういうメリットがある一方で、ニットに浸み込んだ導電層は、導電層中の導電性材料どうしの接触がニットの繊維によって阻害され導電層の抵抗値が高まるおそれある。
また、図4〜図6で示すゴム編みについて、導電層を設けずに単に生地のみを伸張する場合には、前述のとおり、コース方向には生地の伸張が130%であるときに表層部間の伸張が250%におよぶ。一方、ウェール方向には生地の伸張がそれほどではなく表層部も連続している。そのため、ウェール方向を長手方向とした導電層を設けてウェール方向に生地を伸張すると、生地の伸張と同程度まで導電層が伸びるため、導電層は伸張による影響を受け難いが、コース方向を長手方向とした導電層を設けてコース方向に生地を伸張すると、表層部どうしの間で導電層にクラックが生じる可能性が高かった。パール編みでは生地の伸張がウェール方向の方がコース方向よりも大きく、そのウェール方向の伸張で表層部の間隔が開くため、ウェール方向を長手方向とした導電層を設けてウェール方向に生地を伸張すると、表層部どうしの間で導電層にクラックが生じる可能性が高かった。
図10(b)で示すように、導電層13のうち、ニット12に浸み込んだ部分である浸透部13aと、ニット12の表面にある部分である非浸透部13bとに区別すると、非浸透部13bの厚みは、50〜1000μmであることが好ましい。50μm未満の場合には、ニット12の種類にもよるが導電層13にクラックが生じ易くなるおそれがある。また、1000μmを超えると、導電層13に柔軟な材質を用いた場合でも、伸縮の応力が大きくなり、装着感を損ねるおそれがある。一方、浸透部13aの厚みは、表層部Fの撚糸上にその撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透していることが好ましい。10%未満の場合は導電層13の切断や剥離を起こし易くなるおそれがある。また50%を超えると、導電層13の断線に対する補強効果は既に十分であるのに対し、ニット12の柔らかな風合いを損ね、ニット12を拘束してその伸縮が起こり難くなるからである。
さらに、浸透部13aについては、導電層13の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部I表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透していることが好ましい。10%未満の場合は、ニットを伸ばした際にこの内層部Iに十分に浸透していない導電層13が切断や剥離を起こし易くなるからである。また50%を超えると、内層部に導電層Iが染み込み過ぎ表層部Fでの導電層13の断線や剥離が生じ易くなるからである。
導電層の幅は、必要に応じて適切な大きさに形成できるが、0.1mm以上であることが好ましい。0.1mm未満であると、導電層の幅が細すぎ、所望の導電性が得られにくいだけでなく、破断する可能性が高まるからである。導電層の幅の上限は制限されない。
導電層は、ニットの表面のみに設ける場合に限らず、そのニットの表面とともに裏面にも設ける態様を採ることができる。そして、例えば生地の一方面に設けた導電層に対して、生地の他方面に設ける導電層を平面視で垂直に交差する方向に設けると、単一方向だけではない平面内の変位を検出するセンサとすることができる。即ち、この表裏両面に設けた導電層の抵抗値変化の比から、伸びの方向まで検出することができる。
導電層付きニットの表面には必要に応じて種々の機能層を積層することも可能である。例えば図11で示す導電層付きニット20では、導電層13を設けた側のニット12の表面に導電層13とその周囲のニット12表面を覆うような保護層14を設けることができる。保護層14は透明な可撓性のある樹脂材で形成することが好ましく、導電層13表面を保護し、導電層13のニット12への固着をより確実にすることができる。
また、図12や図13で示すように、導電層付きニット30の表裏少なくとも何れかの面に粘着層15を設けることができる。図12で示す導電層付きニット30aは、粘着層15aを、導電層13を設けた側の表面に形成している。粘着層15aが保護層14を兼ねることができ、粘着層15a側を皮膚に付着させるように用いることで、導電層13をニット12の表面から見えなくすることができる。そのため、ニット12の装飾性を損なわず、導電性付きニット30aを利用することができる。また、粘着層15aを介して身体と導電層13とを密に接触させるため、身体の曲げ等による体表面の伸張と導電層の伸びのズレを少なくして、正確なセンシングを可能にすることができる。加えて、粘着層15aによって汗の浸透を抑制することができる。そのため、粘着層15aがない場合と比較して、導電層15a近傍の水分量の変化を少なくすることができ、汗によるセンサ感度の変化を小さなものとすることができる。
また、図13で示す導電層付きニット30bは、粘着層15bを、導電層13を設けた側とは反対の表面に形成している。粘着層15b側を皮膚に付着させるように用いることで、身体から見て導電層13をニット12の外側に出すことができ、導電部13がヒトから生じる汗の影響を受け難くすることができる。また、身体との擦れによる導電層13の劣化を防止でき、更には身体との接触によるノイズの混入を防止し、より正確な抵抗値変化を検出し易くすることができる。
粘着層15には、絆創膏やシップに用いる材質と同様の材質を用いることができ、アクリル系の粘着剤や高分子ゲルなどを利用することができる。このように粘着層15を設けることで、導電層付きニット30を皮膚に付着させて、身体への密着性を高める用途に好適に利用することができる。
<導電層付きニットの製造方法>
導電層付きニットを製造するには、ニットを準備し、導電層の長手方向とする方向にニットを10〜50%程度伸張し、そのニット上に導電層となる導電性ペースト等の原料組成物を印刷等の方法で塗布する。そして、ニットの伸張を解いた後、塗布した原料組成物を硬化させる。保護層や粘着層等の機能層を設ける際は、さらにこれらの機能層を所望のニット表面にこれらの機能層となる原料組成物を塗布、硬化させることで導電層付きニットが得られる。
導電層付きニットを製造するには、ニットを準備し、導電層の長手方向とする方向にニットを10〜50%程度伸張し、そのニット上に導電層となる導電性ペースト等の原料組成物を印刷等の方法で塗布する。そして、ニットの伸張を解いた後、塗布した原料組成物を硬化させる。保護層や粘着層等の機能層を設ける際は、さらにこれらの機能層を所望のニット表面にこれらの機能層となる原料組成物を塗布、硬化させることで導電層付きニットが得られる。
<導電層付きニットの利用>
コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類:
導電層付きニットは、コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類の一部として利用することができる。こうした衣類は、日常で使用する以外にも、特にスポーツの分野では関節のサポートやパフォーマンスを高めるために用いられるものである。この種の衣類は、特定の方向の伸縮性を所定範囲にすることで体の動きを制限するものや、優れた伸縮性を備え体の動き妨げないものがあるが、ともに人体に密着する程度に伸縮性のある生地が用いられる。そして、身体表面の動きに追従して伸縮することで常に身体に密着した状態で着用される。
コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類:
導電層付きニットは、コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類の一部として利用することができる。こうした衣類は、日常で使用する以外にも、特にスポーツの分野では関節のサポートやパフォーマンスを高めるために用いられるものである。この種の衣類は、特定の方向の伸縮性を所定範囲にすることで体の動きを制限するものや、優れた伸縮性を備え体の動き妨げないものがあるが、ともに人体に密着する程度に伸縮性のある生地が用いられる。そして、身体表面の動きに追従して伸縮することで常に身体に密着した状態で着用される。
こうした衣類において、人体の関節や筋肉の動きに対応する箇所に導電層を配置する。より具体的に肘関節や膝関節を例に挙げると、これらの関節の伸ばされる側の表面に手足の長さ方向に沿って導電層を配置する。こうした導電層を形成することで、関節の動きに伴って抵抗値が変化するウェアラブルセンサを構成することができる。
この場合の好適な態様としては、手足の長さ方向(伸縮の大きい方向)にニットの表層部が連続する方向に対する垂直方向が向くように衣類を縫製し、そのニットの表層部が連続する方向に交差してセンサ電極としての導電層を形成することができる。ここで、伸縮の大きい方向にニットの表層部が連続する方向に対する垂直方向が向くように衣類を縫製する理由は、表層部が連続する方向に対する垂直方向は、表層部が連続する方向よりも伸張性が大きくなる傾向があるためである。
このような、コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類として構成したウェアラブルセンサを用いれば、例えばスポーツ時の体の動きをモニタすることができる。また、逆に関節の動きをモニタリングして所定時間動きがない場合に通知することでエコノミークラス症候群の予防などに用いることもできる。
グローブやソックス:
導電層付きニットをグローブやソックスに利用することができる。この場合は、手首や足首、または手や足の関節の動きを検出するセンサ電極としての導電層を形成する。具体的には、手首や足首、それぞれの指に対応するか所に、手足の長さ方向と導電層の長さ方向が一致するように導電部を形成する。好ましい一態様としては、手足の長手方向にニットの表層部が連続する方向に対して交差する方向に合わせて縫製したグローブやソックスを作製し、それらの関節の外側となる部分に導電層を表層部が連続する方向に交差して形成することで、この導電層が関節の動きに追従して伸縮して抵抗値が変化するウェアラブルセンサを構成することができる。
導電層付きニットをグローブやソックスに利用することができる。この場合は、手首や足首、または手や足の関節の動きを検出するセンサ電極としての導電層を形成する。具体的には、手首や足首、それぞれの指に対応するか所に、手足の長さ方向と導電層の長さ方向が一致するように導電部を形成する。好ましい一態様としては、手足の長手方向にニットの表層部が連続する方向に対して交差する方向に合わせて縫製したグローブやソックスを作製し、それらの関節の外側となる部分に導電層を表層部が連続する方向に交差して形成することで、この導電層が関節の動きに追従して伸縮して抵抗値が変化するウェアラブルセンサを構成することができる。
このウェアラブルセンサによって、手や足の関節の動きを検知することによって、例えばVRシステムやゲーム機の入力インターフェイスとして利用することができる。また、前記コンプレッションウェアやタイツ、サポータなどの体に密着する衣類と合せて、スポーツ時の体の動きをモニタするセンサとして有用である。
導電層付きニットのウェアラブルセンサとして利用する場合に、導電層の両端に配線を接続し、その配線を制御モジュールに接続することができる。制御モジュールは電池や無線通信部、制御部を有し、導電層の伸縮によって変化する抵抗値変化を検知して別途備えるウェアラブルウオッチなどのウェアラブル操作端末やパーソナルコンピュータ等にその信号を送信するものである。コンパクトな制御モジュールや配線をニットに組み付けて用いることができる。
<試料の作製>
以下に説明する試料1〜9の導電層付きニットの試験片を作製し、これを伸張したときの抵抗値変化と導電層が破断した際の伸張率を測定した。各試料は表1に記載したとおり、生地の種類と、導電層を形成する向きを変更したものである。
以下に説明する試料1〜9の導電層付きニットの試験片を作製し、これを伸張したときの抵抗値変化と導電層が破断した際の伸張率を測定した。各試料は表1に記載したとおり、生地の種類と、導電層を形成する向きを変更したものである。
試料1と試料6に用いた生地(ニット1)は、ポリエステル繊維の撚糸からなり、ウェール方向30ゲージ、コース方向30ゲージのスムース編みの生地である。試料2と試料7に用いた生地(ニット2)は、繊維の撚糸の材質は綿で、ウェール方向20ゲージ、コース方向20ゲージのゴム編み(2目ゴム編み)の生地である。試料3,4,8,9に用いた生地(ニット3)は、ナイロン85%、ポリウレタン15%の繊維の撚糸でなり、ウェール方向40ゲージ、コース方向70ゲージの2wayトリコットの生地である。試料5は、生地以外の例として、厚さ1mmのシリコーンゴムシートである。
試料5以外の生地については、ウェール方向70mm×コース方向20mmの大きさとしたもの(試料1a〜4a,6a〜9a)と、ウェール方向20mm×コース方向70mmとしたもの(試料1b〜4b,6b〜9b)を準備した。試料5のシリコーンゴムシートについては、70mm×20mmの大きさとしたものを準備した。
導電層となる導電性ペーストは、付加反応型液状シリコーン(粘度100Pa・s、硬度後の硬さA25)100質量部に対して、ケッチェンブラック(粒径40nm)15質量部を混合し、25℃における粘度100Pa・s(回転速度10rpm)、チキソ比29となるものを作製した。
試料1〜試料5の試験片への導電層の形成は、各試料の生地を印刷台の上に固定し、その生地の中央に幅1.0mm、長さ25mmの大きさのセンサパターンとなるように前述の導電性ペーストを、メタルマスクを用いてスクリーン印刷し、120℃で30分加熱して行った。また、試料6〜試料9の試験片への導電層の形成は、まず生地の長手方向にその生地を40%伸張させマスキングテープで固定した。次に、各生地の中央に幅1.0mm、長さ25mmの大きさのセンサパターンとなるように前述の導電性ペーストを、メタルマスクを用いてスクリーン印刷し、マスキングテープを剥がして生地を初期長に戻した後、120℃で30分加熱して行った。この試料6〜試料9における導電層の印刷方法を伸張印刷というものとする。
<各試料の伸長と抵抗値の測定>
導電層の両端をデジタルマルチメータ(横河メータ&インスツルメンツ社製73201)に接続した後に、各試験片の長手方向両端部を治具に固定し、一方端をロードセルでその長手方向に引っ張りながら表1に示す各伸張状態のときの抵抗値を読み取った。
導電層の両端をデジタルマルチメータ(横河メータ&インスツルメンツ社製73201)に接続した後に、各試験片の長手方向両端部を治具に固定し、一方端をロードセルでその長手方向に引っ張りながら表1に示す各伸張状態のときの抵抗値を読み取った。
表1において、各試験片の初期状態の抵抗値(各試験片を伸張せずに測定した抵抗値)を「初期」欄に示した。また、導電層の初期状態の長さ25mmを1.2倍に伸ばして30mmとしたときの抵抗値を「120%」の欄に、1.5倍に伸ばして37.5mmとしたときの抵抗値を「150%」の欄に、2倍に伸ばして500mmとしたときの抵抗値を「200%」の欄にそれぞれ示した。このとき、導電層の抵抗値がデジタルマルチメータの測定限界を超えたものは「断線」と示した。ただし、導電層の断線が、生地の破損(やぶれたり、ちぎれたりしたもの)と同時のものは「材破」と示した。
また、前記所定の伸張率における抵抗値の測定とは別に導電層の伸張長さの限界を評価した。これは抵抗値がデジタルマルチメータの測定限界である40MΩを超えたときにおける導電層の伸張率(導電層の初期長さ100%に対する測定限界を超えたときの導電層の長さの百分率)を「断線時の長さ(%)」として表1に記載した。ただし、その測定限界を超えたとき導電層の断線が、生地の破損と同時の場合は「材破」と補足している。生地の「材破」を区別した理由は、本発明は導電層の伸張性を高めることが特徴であるところ、生地の限界が小さい場合には、導電層の伸張性の限界を評価できないからである。なお、検討していない条件については表1中に「−」で示した。
例えば、ウェール方向70mm×コース方向20mmの大きさとしたニット1(試料1a)をウェール方向に1.2倍に伸ばして30mmとしたときの抵抗値は、表1において試料1の「抵抗値(kΩ)」「ウェール方向」「120%」の欄に示し、16.7kΩであることがわかる。また、コース方向70mm×ウェール方向20mmの大きさとしたニット2(試料2b)をコース方向に伸ばし、抵抗値がデジタルマルチメータの測定限界を超えたときの導電層の伸張率は、試料2の「断線時の長さ(%)」「コース方向」の欄に示し、160%、即ち、導電層が40mmまで伸びたときであることがわかる。
また、各試料において、ニットの表層部にある撚糸に対する導電層の染み込みと、ニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸に対する導電層の染み込みとを電子顕微鏡で観察し、その染み込み度合いが撚糸の厚みに対してどのくらいあるかについて計測した。より具体的には、ニットの表層部の撚糸上の3か所、および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上の3か所について計測し、それぞれの3か所での計測値の最大値と最小値を表1に示した。
<各試料の評価>
ニット1について:
スムース編みによるニット1で伸張印刷をしないでウェール方向に導電層を設けた試料1aの抵抗値は、シリコーンゴムシートに導電層を設けた試料5の抵抗値と同程度であり好ましい特性であった。また、導電層を240%伸張させたときにニットがちぎれてしまったが、ちぎれた箇所以外にクラックも生じておらず、導電層はそれ以上に伸張できるように見えた。導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%(3か所計測の最大値が50%で最小値が40%)であったが、生地を伸張しない場合には表面に表出しない内層部では5〜10%であった。
ニット1について:
スムース編みによるニット1で伸張印刷をしないでウェール方向に導電層を設けた試料1aの抵抗値は、シリコーンゴムシートに導電層を設けた試料5の抵抗値と同程度であり好ましい特性であった。また、導電層を240%伸張させたときにニットがちぎれてしまったが、ちぎれた箇所以外にクラックも生じておらず、導電層はそれ以上に伸張できるように見えた。導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%(3か所計測の最大値が50%で最小値が40%)であったが、生地を伸張しない場合には表面に表出しない内層部では5〜10%であった。
一方、同じニット1で伸張印刷をしないでコース方向に導電層を設けた試料1bでは、導電層を160%伸張させたときにデジタルマルチメータの測定限界を超えた。このときの導電層の様子を観察すると、表層部と表層部の間となる内層部に多数の亀裂が生じていた。導電層の撚糸への浸透具合を計ってみると、表層部では40〜50%であったが、導電層の塗布時にはほとんど表に表れない内層部では5〜10%であり、内層部への導電層の浸透が少ないことがわかった。
一方、試料1bと導電層の形成方向は同じでも導電層を伸張印刷した試料6bでは、200%伸張させたときの抵抗値も測定可能であった。試料6bでは伸張印刷により、表面に表れた内層部に導電性ペーストが塗布されたため、その部分での導電性ペーストの撚糸への染み込みが多かったと考えられる。換言すれば、伸長印刷しない試料1bでは、内層部への導電層の染み込みが薄かったのに対し、試料6bでは、印刷時には伸張していた生地を導電性ペーストの固化前に収縮させて伸長を解くことで、生地の内層部に落ちていた導電性ペーストが収縮した範囲に集まり、その部分で導電層の厚みが増し、この部分が厚くなって補強され、断線し難くなったものと考えられる。このコース方向に伸張印刷した試料6bにおける導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%であり、生地を伸張した場合には表面に表出する内層部では30〜50%であった。
ニット2について:
ゴム編みによるニット2で伸張印刷をしないでウェール方向に導電層を設けた試料2aの抵抗値は、シリコーンゴムシートに導電層を設けた試料5と比較して、伸張率が150%までは同程度であったが、200%に達するとニットがちぎれてしまった。また、同じニット2で伸張印刷をしないでコース方向に導電層を設けた試料2bの抵抗値は、ウェール方向に導電層を設けた試料2aの抵抗値に比べてやや大きな値となり、また160%のときには導電層が断線してしまった。したがって、表層部の連続方向となるウェール方向に導電層を形成した方が、導電層がより伸張し得ることが分かった。
ゴム編みによるニット2で伸張印刷をしないでウェール方向に導電層を設けた試料2aの抵抗値は、シリコーンゴムシートに導電層を設けた試料5と比較して、伸張率が150%までは同程度であったが、200%に達するとニットがちぎれてしまった。また、同じニット2で伸張印刷をしないでコース方向に導電層を設けた試料2bの抵抗値は、ウェール方向に導電層を設けた試料2aの抵抗値に比べてやや大きな値となり、また160%のときには導電層が断線してしまった。したがって、表層部の連続方向となるウェール方向に導電層を形成した方が、導電層がより伸張し得ることが分かった。
一方、試料2bと導電層の形成方向はコース方向で同じであるが伸張印刷した試料7bでは、150%伸張させたときでも断線となった。これは伸張印刷により撚糸の厚み全体に導電性ペーストが染み込んで固化し導電層が撚糸を固めてしまったため、内層部がほとんど伸びなくなることで表層部の導電層に負荷が集中し、表層部において破断し易くなったと考えられる。試料7bにおける導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%であり、生地を伸張した場合に表面に表出する内層部では60〜80%であった。
ニット3について:
2wayトリコット編みのシンカー面のウェール方向に導電層を設けた試料3aやこれと導電層の形成方向は同じで伸張印刷した試料8aでは、導電層の伸張率が200%のときに導電層が断線した。これは伸長印刷をしても内層部が表面に表れ難く内層部への導電性ペーストの染み込みが十分ではなかったため、試料3aと試料8aで同様の結果になったものと思われる。一方で、コース方向に導電層を設けた試料3bでは100%で断線したのに対しこれと導電層の形成方向は同じで伸張印刷した試料8bでは良好な結果となった。これは伸長印刷によって内層部が表面に表れ、内層部への導電性ペーストの染み込みが好適に行われたためと思われる。試料8bにおける導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%であり、生地を伸張した場合に表面に表出する内層部では30〜50%であった。
2wayトリコット編みのシンカー面のウェール方向に導電層を設けた試料3aやこれと導電層の形成方向は同じで伸張印刷した試料8aでは、導電層の伸張率が200%のときに導電層が断線した。これは伸長印刷をしても内層部が表面に表れ難く内層部への導電性ペーストの染み込みが十分ではなかったため、試料3aと試料8aで同様の結果になったものと思われる。一方で、コース方向に導電層を設けた試料3bでは100%で断線したのに対しこれと導電層の形成方向は同じで伸張印刷した試料8bでは良好な結果となった。これは伸長印刷によって内層部が表面に表れ、内層部への導電性ペーストの染み込みが好適に行われたためと思われる。試料8bにおける導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%であり、生地を伸張した場合に表面に表出する内層部では30〜50%であった。
また、2wayトリコット編みのシンカー面のコース方向に導電層を設けた試料3bにおいては初期状態から断線したが、導電層の様子を観察すると、うっすらと亀裂のようなものが生じていた。こうした亀裂が生じる理由は、繊維がナイロンであることから、導電性ペーストの濡れ性が悪いことに加え、連続する表層部と他の表層部の隙間が広いため、その部分に導電性ペーストが付着し難かったことが原因であると思われる。
2wayトリコット編みのニードル面のウェール方向に伸張印刷しないで導電層を設けた試料4aおよび同じくニードル面のコース方向に伸張印刷しないで導電層を設けた試料4bとも200%以上伸張可能であった。また、抵抗値も同程度だった。これらについて200%を超えて伸張すると、ウェール方向に導電層を設けた試料4aでは伸張率が240%になったときに導電層が断線し、コース方向に導電層を設けた試料4bでは伸張率が340%になったときに導電層が断線した。したがって、試料4においても表層部の連続する方向(コース方向)に導電層を形成した方が、導電層の伸張に対する許容性が高いことが分かった。
一方、試料4と導電層の形成方向は同じであっても伸張印刷した試料9では、ウェール方向へ伸張印刷して導電層を形成した試料9aもコース方向へ伸張印刷して導電層を形成した試料9bのいずれも200%伸張で断線してしまった。この場合も、生地を伸長させて導電部を印刷すると撚糸の厚み全体に導電性ペーストが染み込んで固化し導電層が撚糸を固めてしまったため、表層部の導電層に負荷が集中した結果、撚糸の表層部の導電層が破断したと考えられる。試料9aおよび試料9bにおける導電層の撚糸への浸透は、表層部では40〜50%であり、生地を伸張した場合に表面に表出する内層部では50〜60%であった。
ゴムシートについて:
試料5では、導電層の伸張率が400%の時点でシリコーンゴムシートが材破してしまったが、それまで導電層にクラックが生じた様子は見られなかった。したがって、導電層自体は少なくとも400%までの伸張率に対しても破断しない性質を有しているものである。
試料5では、導電層の伸張率が400%の時点でシリコーンゴムシートが材破してしまったが、それまで導電層にクラックが生じた様子は見られなかった。したがって、導電層自体は少なくとも400%までの伸張率に対しても破断しない性質を有しているものである。
<考察>
ゴムシートに設けた導電層は400%まで断線せずに伸張できるのに対し、ニットに設けた導電層は200%までで断線する場合もあるため、ニットへの導電層の形成について考察した。ニットでは伸縮を可能とする構造を撚糸の編み目によって構成するため、撚糸が表面に表れる部分と裏側に隠れる部分が存在し、それにより表面に凹凸が形成される。図14の模式図で示すように、表面の凸部分に印刷形成された導電層はニットに浸透し密着するのに対して、凹部分には印刷されないか、印刷されてもニットに浸透する部分は少なくニットに密着しない。そして生地が伸ばされると、ゴムシート上に形成された導電層が均一に伸ばされるのに対して、ニットでは伸びる領域と伸びない領域が存在し、凸部分に形成された導電層はニットに拘束されて伸び難いのに対し、凹部分に形成された導電層は生地の伸張に伴って大きく伸張しなければならなくなる(T1→T2)。その結果、図14の右側図で示すようにニットの凹部分の導電層が破断し易くなる。
ゴムシートに設けた導電層は400%まで断線せずに伸張できるのに対し、ニットに設けた導電層は200%までで断線する場合もあるため、ニットへの導電層の形成について考察した。ニットでは伸縮を可能とする構造を撚糸の編み目によって構成するため、撚糸が表面に表れる部分と裏側に隠れる部分が存在し、それにより表面に凹凸が形成される。図14の模式図で示すように、表面の凸部分に印刷形成された導電層はニットに浸透し密着するのに対して、凹部分には印刷されないか、印刷されてもニットに浸透する部分は少なくニットに密着しない。そして生地が伸ばされると、ゴムシート上に形成された導電層が均一に伸ばされるのに対して、ニットでは伸びる領域と伸びない領域が存在し、凸部分に形成された導電層はニットに拘束されて伸び難いのに対し、凹部分に形成された導電層は生地の伸張に伴って大きく伸張しなければならなくなる(T1→T2)。その結果、図14の右側図で示すようにニットの凹部分の導電層が破断し易くなる。
したがって、破断し易い凹部分でニットに対する導電層の密着性を高めれば良いと考えられるのだが、伸張印刷して凹部分への導電層の密着を図っても導電層が破断し易くなる場合もある。この場合について断線した導電層付きニットの断面を顕微鏡で観察したところ、凸部分で導電層が断線していた。そこでこれらの現象について考察したところ次のような結論に至った。まず、伸張印刷により導電層が断線し難くなった場合は、もともと断線し易かった凹部分に形成される導電層が厚く補強されていた。一方で導電層が断線した場合は、ニットの裏側近くまで導電層が染み込んでおり、導電層がニットそのものを固めてしまっていた。これによりニットの凹部分が伸び難くなった反面、ニットの凸部分の薄い導電層に負荷が集中し、その部分で導電層が破断したと考えられる。以上の結果より、導電層を補強する一方で導電層によるニットの拘束をしすぎないことが必要であることから、伸張印刷する場合でも、ニットの内層部への導電層の浸透割合を、内層部を形成する撚糸の厚みの10〜50%とした。
1 平編み
1a 第1層
1b 第2層
2 ゴム編み
2a 第1層
2b 第2層
2c 第3層
3 パール編み
3a 第1層
3b 第2層
3c 第3層
10,20,30,30a,30b 導電層付きニット
12 ニット
12a 表面
13 導電層
13a 浸透部
13b 非浸透部
14 保護層
15,15a,15b 粘着層
F 表層部
I 内層部
1a 第1層
1b 第2層
2 ゴム編み
2a 第1層
2b 第2層
2c 第3層
3 パール編み
3a 第1層
3b 第2層
3c 第3層
10,20,30,30a,30b 導電層付きニット
12 ニット
12a 表面
13 導電層
13a 浸透部
13b 非浸透部
14 保護層
15,15a,15b 粘着層
F 表層部
I 内層部
Claims (10)
- ニットに導電層が積層した導電層付きニットであって、
前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、
前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであり、かつ、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで浸透している導電層付きニット。
- 前記導電層の長手方向がニットの表層部が連続する方向と交差方向に形成されている請求項1記載の導電層付きニット。
- 前記導電層は、架橋ゴムまたは熱可塑性エラストマに導電性粉末が分散した導電性ペーストの硬化体である請求項1または請求項2記載の導電層付きニット。
- 前記ニットが平編み、ゴム編み、若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層の長手方向が、前記ニットのコース方向である請求項1〜請求項3何れか1項記載の導電層付きニット。
- 前記ニットがパール編み若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層の長手方向が、前記ニットのウェール方向である請求項1〜請求項3何れか1項記載の導電層付きニット。
- 前記ニットが2wayトリコット若しくはその変化組織のいずれか一種または組合せから選択される少なくとも一のニットであり、前記導電層がシンカー面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのコース方向であるか、または前記導電層がニードル面に設けられたものであってその長手方向が前記ニットのウェール方向である請求項1〜請求項3何れか1項記載の導電層付きニット。
- 請求項1〜請求項6何れか1項記載の導電層付きニットを有してなり前記導電層の伸縮により抵抗値変化を起こす歪みセンサ。
- 請求項7記載の歪みセンサを有するウェアラブルセンサ。
- 前記ニットでコンプレッションウェアやタイツ、サポータ、グローブ、ソックスの少なくとも何れかを形成している請求項8記載のウェアラブルセンサ。
- ニットに導電層が積層した導電層付きニットの製造方法であって、
前記ニットは、複数の単糸で撚られた撚糸で編立されたものであり、
前記導電層は、伸張可能であって伸張によって抵抗値変化を起こすものであって、
前記導電層の長さ方向に前記ニットを10〜50%伸張し、前記導電層となる原料組成物を塗布し、その後当該原料組成物を硬化させて、ニットの表層部の撚糸上および導電層の伸張方向にニットが伸びた状態で表出する内層部表面の撚糸上に当該撚糸の厚みの10〜50%の深さで前記導電層を浸透させた導電層付きニットの製造方法。
1
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017088568A JP2018184687A (ja) | 2017-04-27 | 2017-04-27 | 導電層付きニット、歪みセンサおよびウェアラブルセンサ並びに導電層付きニットの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017088568A JP2018184687A (ja) | 2017-04-27 | 2017-04-27 | 導電層付きニット、歪みセンサおよびウェアラブルセンサ並びに導電層付きニットの製造方法 |
Publications (1)
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---|---|
JP2018184687A true JP2018184687A (ja) | 2018-11-22 |
Family
ID=64355575
Family Applications (1)
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JP2017088568A Pending JP2018184687A (ja) | 2017-04-27 | 2017-04-27 | 導電層付きニット、歪みセンサおよびウェアラブルセンサ並びに導電層付きニットの製造方法 |
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JP (1) | JP2018184687A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022075129A1 (ja) * | 2020-10-07 | 2022-04-14 | Nok株式会社 | 導電性ゴム引布 |
JP7346152B2 (ja) | 2019-08-13 | 2023-09-19 | リンテック株式会社 | シート状導電部材及びその製造方法 |
-
2017
- 2017-04-27 JP JP2017088568A patent/JP2018184687A/ja active Pending
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