(第1実施形態)
以下、本発明に係る駆動回路を車載モータ制御システムに適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、制御システムは、バッテリ10、インバータ20、回転電機21及び制御装置22を備えている。バッテリ10は、例えば100V以上の端子間電圧を有している。バッテリ10は、具体的には例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。バッテリ10には、コンデンサ11が並列接続されている。なお本実施形態において、コンデンサ11が直流電源に相当する。
回転電機21は、車載主機となる回転電機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機21として、3相のものを用いている。回転電機21は、例えば永久磁石同期機である。
インバータ20は、コンデンサ11から入力される直流電力を交流電力に変換して回転電機21に出力する電力変換器である。本実施形態において、インバータ20は、3相のものである。インバータ20は、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を3相分備えている。
インバータ20は、各相において、第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とを備えている。第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とは並列接続されている。本実施形態において、各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2は、電圧制御型の半導体スイッチ素子であり、具体的にはIGBTである。このため、各スイッチにおいて、制御端子はゲートであり、入力端子はコレクタであり、出力端子はエミッタである。
第1上アームスイッチSH1には、第1上アームダイオードDH1が逆並列に接続されており、第1下アームスイッチSL1には、第1下アームダイオードDL1が逆並列に接続されている。第2上アームスイッチSH2には、第2上アームダイオードDH2が逆並列に接続されており、第2下アームスイッチSL2には、第2下アームダイオードDL2が逆並列に接続されている。
なお、各ダイオードDH1,DH2,DL1,DL2は、各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2と一体化されてダイオード内蔵IGBTとされていてもよいし、各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2に対して外付けされていてもよい。
本実施形態において、第1上アームスイッチSH1、第1上アームダイオードDH1、第1下アームスイッチSL1及び第1下アームダイオードDL1は、収容ケースに収容されて半導体モジュールMSとして一体化されている。また、第2上アームスイッチSH2、第2上アームダイオードDH2、第2下アームスイッチSL2及び第2下アームダイオードDL2は、収容ケースに収容されて半導体モジュールMSとして一体化されている。半導体モジュールMSは、スイッチ高圧端子TP、スイッチ低圧端子TN及び中間端子TOを備えている。スイッチ高圧端子TPは、上アームスイッチのコレクタに接続されている。スイッチ低圧端子TNは、下アームスイッチのエミッタに接続されている。中間端子TOは、上アームスイッチのエミッタと、下アームスイッチのコレクタとに接続されている。
各半導体モジュールMSのスイッチ高圧端子TPには、高圧導電部材Bpを介して、コンデンサ11の高電位側端子である高圧電源端子TCP端子が接続されている。高圧導電部材Bpは、例えばバスバーを含む。各半導体モジュールMSのスイッチ低圧端子TNには、低圧導電部材Bnを介して、コンデンサ11の低電位側端子である低圧電源端子TCNが接続されている。低圧導電部材Bnは、例えばバスバーを含む。バッテリ10の正極端子には、高圧電源端子TCPが接続され、バッテリ10の負極端子には、低圧電源端子TCNが接続されている。
各相において、2つの半導体モジュールMSそれぞれの中間端子TOには、モータ導電部材Bmを介して、回転電機21の巻線21Aの第1端が接続されている。各相の巻線21Aの第2端は、中性点で接続されている。巻線21Aは、誘導性負荷である。なお、モータ導電部材Bmは、例えばバスバーを含む。
図2に示すように、インバータ20は、各相において、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2を駆動対象とする上アーム駆動回路DrHと、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2を駆動対象とする下アーム駆動回路DrLとを備えている。
制御システムは、コンデンサ11の端子間電圧を電源電圧値VHrとして検出する電圧検出部23を備えている。電圧検出部23により検出された電源電圧値VHrは、制御装置22に入力される。
制御装置22は、回転電機21の制御量をその指令値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSH1,SH2,SL1,SL2をオンオフ駆動する。制御量は、例えばトルクである。制御装置22は、各相において、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2に対応する上アーム駆動信号GHを上アーム駆動回路DrHに対して出力する。制御装置22は、各相において、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2に対応する下アーム駆動信号GLを下アーム駆動回路DrLに対して出力する。制御装置22は、例えば、電気角で位相が120°ずれた3相指令電圧と三角波等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM処理により、各駆動回路DrH,DrLに対応する各駆動信号GH,GLを生成する。各駆動信号GH,GLは、スイッチのオン状態への切り替えを指示するオン駆動指令と、オフ状態への切り替えを指示するオフ駆動指令とのいずれかをとる。各相において、上アーム駆動信号GHと下アーム駆動信号GLとは、互いに相補的な信号となっている。このため各相において、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2と、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2とは、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態とされる。
続いて、図2を用いて、上アーム駆動回路DrH及び下アーム駆動回路DrLについて説明する。
上アーム駆動回路DrHは、上側電源30、上側電圧可変部31、上側充電スイッチ32及び上側充電抵抗体33を備えている。上側電圧可変部31は、上側電源30の出力電圧を変圧して出力する機能を有する。上側電圧可変部31には、上側充電スイッチ32を介して上側充電抵抗体33の第1端が接続されている。上側充電抵抗体33の第2端には、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2それぞれのゲートが接続されている。
上アーム駆動回路DrHは、上側放電抵抗体34及び上側放電スイッチ35を備えている。上側放電抵抗体34の第1端には、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2それぞれのゲートが接続されている。上側放電抵抗体34の第2端には、上側放電スイッチ35を介して、上アーム駆動回路DrHのグランドGNDHが接続されている。グランドGNDHには、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2それぞれのエミッタが接続されている。
上アーム駆動回路DrHは、上側制御部CTHを備えている。上側制御部CTHは、制御装置22から取得した上アーム駆動信号GHに基づいて、充電処理及び放電処理を交互に行うことで各上アームスイッチSH1,SH2をオンオフ駆動する。詳しくは、上側制御部CTHは、充電処理として、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令になっていると判定している場合、上側充電スイッチ32をオン状態とし、上側放電スイッチ35をオフ状態とする処理を行う。これにより、上側電源30を電力供給源として各上アームスイッチSH1,SH2のゲートに充電電流が流れ、各上アームスイッチSH1,SH2のゲート電圧がスレッショルド電圧以上となる。その結果、各上アームスイッチSH1,SH2がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
一方、上側制御部CTHは、放電処理として、上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令になっていると判定している場合、上側充電スイッチ32をオフ状態とし、上側放電スイッチ35をオン状態とする処理を行う。これにより、各上アームスイッチSH1,SH2のゲートからエミッタへと放電電流が流れ、各上アームスイッチSH1,SH2のゲート電圧がスレッショルド電圧未満となる。その結果、各上アームスイッチSH1,SH2がオン状態からオフ状態に切り替えられる。
なお、上アーム駆動回路DrHは、制御基板を備えている。制御基板には、上側電源30、上側電圧可変部31、上側充電スイッチ32、上側充電抵抗体33、上側放電抵抗体34、上側放電スイッチ35及び上側制御部CTHが備えられている。
下アーム駆動回路DrLは、下側電源70、下側充電スイッチ72及び下側充電抵抗体73を備えている。下側電源70には、下側充電スイッチ72を介して下側充電抵抗体73の第1端が接続されている。下側充電抵抗体73の第2端には、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのゲートが接続されている。
下アーム駆動回路DrLは、下側放電抵抗体74及び下側放電スイッチ75を備えている。下側放電抵抗体74の第1端には、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのゲートが接続されている。下側放電抵抗体74の第2端には、下側放電スイッチ75を介して、下アーム駆動回路DrLのグランドGNDLが接続されている。グランドGNDLには、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのエミッタが接続されている。
下アーム駆動回路DrLは、下側制御部CTLを備えている。下側制御部CTLは、制御装置22から取得した下アーム駆動信号GLに基づいて、充電処理及び放電処理を交互に行うことで各下アームスイッチSL1,SL2をオンオフ駆動する。詳しくは、下側制御部CTLは、充電処理として、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令になっていると判定している場合、下側充電スイッチ72をオン状態とし、下側放電スイッチ75をオフ状態とする処理を行う。これにより、下側電源70を電力供給源として各下アームスイッチSL1,SL2のゲートに充電電流が流れ、各下アームスイッチSL1,SL2のゲート電圧がスレッショルド電圧以上となる。その結果、各下アームスイッチSL1,SL2がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
一方、下側制御部CTLは、放電処理として、下アーム駆動信号GLがオフ駆動指令になっていると判定している場合、下側充電スイッチ72をオフ状態とし、下側放電スイッチ75をオン状態とする処理を行う。これにより、各下アームスイッチSL1,SL2のゲートからエミッタへと放電電流が流れ、各下アームスイッチSL1,SL2のゲート電圧がスレッショルド電圧未満となる。その結果、各下アームスイッチSL1,SL2がオン状態からオフ状態に切り替えられる。
下側制御部CTLと上側制御部CTHとは、図示しない絶縁素子を介して情報伝達が可能とされている。絶縁素子は、例えば、フォトカプラ等の光絶縁素子、又は磁気カプラ等の磁気絶縁素子である。
第1下アームダイオードDL1は、第1下側端子DLaを備えている。第1下側端子DLaには、第1下アームダイオードDL1に流れる電流と正の相関を有する微小電流が流れる。第2下アームダイオードDL2は、第2下側端子DLbを備えている。第2下側端子DLbには、第2下アームダイオードDL2に流れる電流と正の相関を有する微小電流が流れる。
下アーム駆動回路DrLは、下側検出回路80を備えている。下側検出回路80は、第1下側センス抵抗体80a、第2下側センス抵抗体80b及び下側増幅器81を備えている。第1下側センス抵抗体80aの第1端には、第1下アームスイッチSL1のエミッタが接続され、第1下側センス抵抗体80aの第2端には、第1下側端子DLaが接続されている。これにより、第1下側端子DLaに流れる微少電流によって第1下側センス抵抗体80aに電圧降下が生じる。このため、第1下側センス抵抗体80aにおける電圧降下量である下側第1電位差VLaを、第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値の相関値として用いることができる。
第2下側センス抵抗体80bの第1端には、第2下アームスイッチSL2のエミッタが接続され、第2下側センス抵抗体80bの第2端には、第2下側端子DLbが接続されている。これにより、第2下側端子DLbに流れる微少電流によって第2下側センス抵抗体80bに電圧降下が生じる。このため、第2下側センス抵抗体80bにおける電圧降下量である下側第2電位差VLbを、第2下アームダイオードDL2に流れる還流電流値の相関値として用いることができる。
下側増幅器81は、下側第1電位差VLaと下側第2電位差VLbとの差を増幅し、下アーム電圧値ΔVDLとして出力する。下アーム電圧値ΔVDLは、第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値と第2下アームダイオードDL2に流れる還流電流値との差の相関値であり、アンバランス電流値に相当する。
なお、下アーム駆動回路DrLは、制御基板を備えている。制御基板には、下側電源70、下側充電スイッチ72、下側充電抵抗体73、下側放電抵抗体74、下側放電スイッチ75、下側検出回路80及び下側制御部CTLが備えられている。
ちなみに本実施形態において、第1下側センス抵抗体80a、第2下側センス抵抗体80b、第1下側端子DLa及び第2下側端子DLbが電流検出部に相当し、下側増幅器81が電流算出部に相当する。
ここで、各ダイオードDH1,DH2,DL1,DL2は、図3に示すように、還流電流値に対する自身の電圧降下量Vfの関係を示す電流電圧特性を有している。この特性は、通常、量産されたダイオードそれぞれでばらつく。このため、量産されたダイオードには、図3に示すように、最大特性Vfmaxを有するダイオードと、最小特性Vfminを有するダイオードとが含まれ得る。最大特性Vfmaxは、ある還流電流値に対してダイオードの電圧降下量が最大となる電流電圧特性である。最小特性Vfminは、ある還流電流値に対してダイオードの電圧降下量が最小となる電流電圧特性である。なお図3には、ダイオードの電圧降下量が最小特性Vfmin及び最大特性Vfmaxの中央値となる中央特性Vftypも示す。
電流電圧特性がばらつくため、第1下アームダイオードDL1及び第2下アームダイオードDL2のうち、ある還流電流値に対して一方が電圧降下量の小さいダイオードとなり、他方が電圧降下量の大きいダイオードとなることがある。特に本実施形態では、第2下アームダイオードDL2が最大特性Vfmaxを有するダイオードとなり、第1下アームダイオードDL1が最小特性Vfminを有するダイオードとなる場合を想定する。
図4に、3相のうちいずれか1相分の各スイッチSH1,SL1,SH2,SL2を示す。なお図4では、第1上,下アームスイッチSH1,SL1を含む半導体モジュールMSの中間端子TOと、第2上,下アームスイッチSH2,SL2を含む半導体モジュールMSの中間端子TOとを1つの中間端子TOで示す等、構成を簡略化して示している。
図4には、低圧電源端子TCNから第1,第2下アームダイオードDL1,DL2を介して中間端子TOへと還流電流が流れる場合を示す。図4において、第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値をI1にて示し、第2下アームダイオードDL2に流れる還流電流値をI2にて示す。第1下アームダイオードDL1と第2下アームダイオードDL2とは並列接続されているため、第1下アームダイオードDL1の電圧降下量Vf1(I1)と、第2下アームダイオードDL2の電圧降下量Vf2(I2)とは等しくなる。この場合、図3に示すように、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のうち、電圧降下量の小さい第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値が大きくなる。その結果、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2に流れる還流電流値の差が大きくなるアンバランス現象が生じる。
アンバランス現象が生じている状態において、図5に示すように、時刻t1で第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン状態に切り替えられると、時刻t2,t3で示すように、リカバリ電流値の絶対値が減少し始めるタイミングが大きくずれる。その結果、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのエミッタ間の電位差が大きく変動するおそれがある。
図6〜図9を用いて、エミッタ間の電位差が大きく変動する理由を説明する。なお、図6には、制御システムに存在する各インダクタンス成分を記載している。詳しくは、LP1は、高圧電源端子TCPから高圧導電部材Bpを介して第1上アームスイッチSH1のコレクタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LP2は、高圧電源端子TCPから高圧導電部材Bpを介して第2上アームスイッチSH2のコレクタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LM1は、半導体モジュールMSにおいて第1上アームスイッチSH1のエミッタから第1下アームスイッチSL1のコレクタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LM2は、半導体モジュールMSにおいて第2上アームスイッチSH2のエミッタから第2下アームスイッチSL2のコレクタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LO1は、半導体モジュールMSにおいて第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の接続点から中間端子TOに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LO2は、半導体モジュールMSにおいて第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の接続点から中間端子TOに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LN1は、低圧電源端子TCNから低圧導電部材Bnを介して第1下アームスイッチSL1のエミッタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。LN2は、低圧電源端子TCNから低圧導電部材Bnを介して第2下アームスイッチSL2のエミッタに至るまでの電気経路に存在するインダクタンス成分を示す。
図6には、3相のうちいずれか1相分について、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン状態とされ、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2がオフ状態とされている例を示す。図6に示す例では、高圧電源端子TCPから、第1上アームスイッチSH1、中間端子TO、回転電機21を構成する2相分の巻線21A、及び図示しない他の相の第1,第2下アームスイッチを介して低圧電源端子TCNへと電流が流れる。また図6に示す例では、高圧電源端子TCPから、第2上アームスイッチSH2、中間端子TO、2相分の巻線21A、及び図示しない他の相の第1,第2下アームスイッチを介して低圧電源端子TCNへと電流が流れる。
図7には、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオフ状態に切り替えられ、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2がオン状態に切り替えられる例を示す。図7に示す例では、誘導性負荷としての巻線21Aの存在に起因して、第1下アームダイオードDL1、中間端子TO、巻線21A、及び図示しない他の相の第1,第2下アームスイッチを有するループ経路に電流が流れ続ける。また図7に示す例では、第2下アームダイオードDL2、中間端子TO、巻線21A、及び図示しない他の相の第1,第2下アームスイッチを有するループ経路に電流が流れ続ける。
図8には、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2が再度オン状態に切り替えられ、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2が再度オフ状態に切り替えられる例を示す。図8に示す例では、第2下アームダイオードDL2に逆電圧が印加されることに起因して、第2下アームダイオードDL2にリカバリ電流が流れる。その後、リカバリ電流の流通が完了することに起因して、低圧導電部材Bnにサージ電圧が発生する。このサージ電圧は、リカバリ電流の減少速度dI/dtと低圧導電部材Bn等のインダクタンスとの乗算値に比例する。サージ電圧の発生に起因して、第2下アームスイッチSL2のエミッタ電位VE2が、第1下アームスイッチSL1のエミッタ電位VE1よりも相対的に低くなる。
その後、図9に示すように、第1下アームダイオードDL1に逆電圧が印加されることに起因して、第1下アームダイオードDL1にリカバリ電流が流れる。その後、リカバリ電流の流通が完了することに起因して、低圧導電部材Bnにサージ電圧が発生する。サージ電圧の発生に起因して、第1下アームスイッチSL1のエミッタ電位VE1が、第2下アームスイッチSL2のエミッタ電位VE2よりも相対的に低くなる。このように、リカバリ電流の流通完了タイミングが大きくずれることにより、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのエミッタ間の電位差が大きく変動する。
エミッタ間の電位差が大きく変動すると、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のゲート端子及びエミッタ等の印加電圧がその定格値を超え、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2が誤動作したり、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2が劣化したりするといった問題が生じる。
なお、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2がオン状態に切り替えられるとともに、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオフ状態に切り替えられる場合においても、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2それぞれのエミッタ間の電位差が大きく変動する。
ちなみに、先の図6の構成を参照して、図10には、各相において上アームスイッチ及び下アームスイッチがそれぞれ1つ設けられている構成を示す。この場合、リカバリ電流の流通の完了に起因してサージ電圧が発生したとしても、第1下アームスイッチSL1及び第2下アームスイッチSL2それぞれのエミッタ間の電位差は大きく変動しない。これは、サージ電圧が発生したとしても、第2下アームスイッチSL2のエミッタ電位VE2と、下側放電スイッチ75の両端のうち下側放電抵抗体74とは反対側の電位VE3とに差が発生しないためである。
本実施形態では、各下アームスイッチSL1,SL2それぞれのエミッタ間の電位差の変動を抑制するために、下側制御部CTL及び上側制御部CTHは、スイッチの駆動制御処理として、変動抑制処理を行う。なお本実施形態において、第1、第2下アームダイオードDL1,DL2それぞれが下ダイオード部及び自ダイオード部に相当し、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2それぞれが自アームスイッチに相当する。また、第1、第2上アームダイオードDH1,DH2それぞれが上ダイオード部及び対向ダイオード部に相当し、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2それぞれが対向アームスイッチに相当する。
図11は、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS10では、取得した下アーム駆動信号GLがオン駆動指令であるか否かを判定する。
ステップS10においてオン駆動指令であると判定した場合には、ステップS11に進み、下側増幅器81から出力された下アーム電圧値ΔVDLを取得する。そして、取得した下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいか否かを判定する。この処理は、アンバランス現象が生じているか否かを判定するための処理である。
なお下アーム閾値VLthは、例えば図12に示すように、第2下アームダイオードDL2が最大特性Vfmaxを有するダイオードとなり、第1下アームダイオードDL1が最小特性Vfminを有するダイオードとなる場合において、第1下アームダイオードDL1の電圧降下量Vf1と第2下アームダイオードDL2の電圧降下量Vf2との差が取り得る最大値Vpに基づいて設定されればよい。具体的には例えば、下アーム閾値VLthは、上記最大値Vpに設定されてもよいし、上記最大値よりも小さい値に設定されてもよい。
先の図11の説明に戻り、ステップS11において下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLth以下であると判定した場合には、アンバランス現象が生じていないと判定し、ステップS12に進む。ステップS12では、上アーム駆動信号GHが次回オン駆動指令に切り替えられる場合の第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度を通常モードとする。通常モードでは、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力されない。このため通常モードでは、図13に示すように、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgが第1電圧値V1とされる。
一方、ステップS11において肯定判定した場合には、アンバランス現象が生じていると判定し、ステップS13に進む。ステップS13では、図13に示すように、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを第2電圧値V2(<V1)に変更する指令を上側制御部CTHに出力する。本実施形態において、ステップS13の処理が制御部に相当する。
ちなみに、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと複数回判定した場合にステップS23の処理を行ってもよい。この場合、アンバランス現象が生じていることの判定精度を高めることができる。
上側電圧可変部31の出力電圧値Vgが第2電圧値V2に設定される場合、出力電圧値Vgが第1電圧値V1に設定される場合よりも第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のゲート電荷の充電速度が低くなり、スイッチング速度が低くなる。
図14は、上側制御部CTHにより実行される変動抑制処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS20では、取得した上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令であるか否かを判定する。
ステップS20においてオフ駆動指令であると判定した場合には、ステップS21に進み、下側制御部CTLからのスイッチング速度の変更指令があるか否かを判定する。図11のステップS13の処理が行われた場合、ステップS21において肯定判定される。
ステップS21において変更指令がないと判定した場合には、ステップS22に進み、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを第1電圧値V1に設定する。一方、ステップS21において変更指令があると判定した場合には、ステップS23に進み、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを第2電圧値V2に設定する。
ステップS20において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令であると判定した場合には、ステップS24に進み、上側電圧可変部31の出力電圧値VgをステップS22又はS23で設定した電圧値とした状態で充電処理を行う。これにより、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2がオン状態に切り替えられる。
ちなみに本実施形態において、図11及び図14に示す処理がソフトウェアにより実現される例を示したがこれに限らない。例えば、図11及び図14に示す処理が、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせにより実現されてもよい。なお、ハードウェアである電子回路は、例えば、多数の論理回路を含むデジタル回路、及びアナログ回路の少なくとも一方により実現される。
図15に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。ここで図15(a),(b)は、上,下アーム駆動信号GH,GLの推移を示し、図15(c)は、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のゲート電圧値VgH1,VgH1の推移を示す。図15(d)は、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のゲート電圧値VgL1,VgL1の推移を示し、図15(e)は、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2に流れる還流電流値IFL1,IFL2の推移を示す。なお図15(a),(b)では、デッドタイムの図示が省略されている。
時刻t1において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられることにより、その後第1,第2下アームダイオードDL1,DL2にリカバリ電流が流れる。
その後時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力される。これにより、上側制御部CTHは、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgの設定を第1電圧値V1から第2電圧値V2に切り替える。
その後時刻t3において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる。上側制御部CTHは、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合よりも低いスイッチング速度で第1,第2上アームスイッチSH1,SH2をオン駆動する。このため、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2に流れる還流電流値IFL1,IFL2の低下速度が、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合の各還流電流値IFL1,IFL2の低下速度よりも低くなる。その結果、リカバリ電流の流通の完了に起因して生じるサージ電圧を低減できる。これにより、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間に生じる電位差の変動の抑制度合いを大きくできる。
本実施形態において、上下アームのうち、下アームにおける各ダイオードDL1,DL2に流れる還流電流値が検出される構成を採用しているのは、エミッタ間に生じる電位差の変動の抑制効果を高めつつ、インバータ20の小型化及びコスト低減を図るためである。以下、このことについて説明する。
図16に、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2にリカバリ電流が流れる場合を示す。この場合において、リカバリ電流流通の完了に起因して生じるサージ電圧の大きさに主に影響を及ぼすインダクタンスはLN1,LN2である。図17に、第1,第2上アームダイオードDH1,DH2にリカバリ電流が流れる場合を示す。この場合において、リカバリ電流流通の完了に起因して生じるサージ電圧の大きさに主に影響を及ぼすインダクタンスはLM1,LM2である。
エミッタ間の電位差の変動量は、サージ電圧が大きいほど大きくなり、サージ電圧は、インダクタンスが大きいほど大きくなる。本実施形態では、図16及び図17に示すように、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタから低圧導電部材Bnを介して低圧電源端子TCNに至るまでの電気経路のインダクタンスLN1,LN2が、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のエミッタから第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のコレクタに至るまでの電気経路のインダクタンスLM1,LM2よりも大きくされている。このため、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2がオン駆動に切り替えられる場合に第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のエミッタ間に生じる電位差の変動量よりも、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン駆動に切り替えられる場合に第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間に生じる電位差の変動量の方が大きい。したがって本実施形態では、下アームにおける各ダイオードDL1,DL2に流れる還流電流値が検出される構成を採用した。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
下アーム電圧値ΔVDLが下アーム閾値VLthよりも大きいと判定された場合、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2が次回オン駆動される場合のスイッチング速度を低くした。これにより、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間の電位差の変動を抑制できる。また、下アーム電圧値ΔVDLが下アーム閾値VLth以下であると判定された場合、スイッチング速度を低くしないようにした。このため、アンバランス現象が生じていることを的確に把握して変動抑制処理を行うことができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、スイッチング速度の切り替えにヒステリシスを持たせる。
図18に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図18において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS10においてオン駆動指令であると判定した場合には、ステップS30に進み、低圧フラグFLが0であるか否かを判定する。なお本実施形態において、低圧フラグFLの初期値は0とされている。
ステップS30において低圧フラグFLが0であると判定した場合には、ステップS31に進み、取得した下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第1下アーム閾値VLαよりも大きいか否かを判定する。ここで第1下アーム閾値VLαは、図19に示すように、上記第1実施形態の下アーム閾値Vthよりも大きい値に設定されている。
ステップS31において下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第1下アーム閾値VLα以下であると判定した場合には、ステップS12に進む。一方、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第1下アーム閾値VLαよりも大きいと判定した場合には、ステップS32に進み、低圧フラグFLを1にする。その後ステップS13に進む。
ステップS30において低圧フラグFLが1であると判定した場合には、ステップS33に進み、取得した下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第2下アーム閾値VLβ未満であるか否かを判定する。ここで第2下アーム閾値VLβは、図19に示すように、上記第1実施形態の下アーム閾値Vthよりも小さい値に設定されている。
ステップS33において下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第2下アーム閾値VLβ以上であると判定した場合には、ステップS13に進む。一方、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第2下アーム閾値VLβ未満であると判定した場合には、ステップS34に進み、低圧フラグFLを0にする。その後ステップS12に進む。
なお本実施形態において、上側制御部CTHは、先の図14に示した処理を行う。
以上説明した本実施形態によれば、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値Vth近傍で変動する場合であっても、スイッチング速度が頻繁に切り替えられることを抑制できる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、上記第1,第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ゲート電圧に代えて、上側電源30からゲートに至るまでの電気経路の抵抗値を変更することにより、スイッチング速度を変更する。
図20に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図20において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図20に示すように、上アーム駆動回路DrHは、上側電圧可変部31を備えていない。上アーム駆動回路DrHは、上側放電抵抗体36を備えている。本実施形態において、上側放電抵抗体36は、その抵抗値RHが上側制御部CTHからの指令によって可変とされる。上側電源30には、上側充電スイッチ32及び上側放電抵抗体36を介して第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2それぞれのゲートが接続されている。
続いて、下側制御部CTLが行う変動抑制処理について、先の図11に示した処理との相違点を中心に説明する。
ステップS12では、上アーム駆動信号GHが次回オン駆動指令に切り替えられる場合の第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度を通常モードとする。通常モードでは、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力されない。このため通常モードでは、図21に示すように、上側放電抵抗体36の抵抗値RHが第1抵抗値R1とされる。
ステップS13では、図21に示すように、上側放電抵抗体36の抵抗値RHを第2抵抗値R2(>R1)に変更する指令を上側制御部CTHに出力する。上側放電抵抗体36の抵抗値RHが第2抵抗値R2に設定される場合、抵抗値RHが第1抵抗値R1に設定される場合よりも第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のゲート電荷の充電速度が低くなり、スイッチング速度が低くなる。
続いて、上側制御部CTHが行う変動抑制処理について、先の図14に示した処理との相違点を中心に説明する。
ステップS22では、上側放電抵抗体36の抵抗値RHを第1抵抗値R1に設定する。ステップS23では、上側放電抵抗体36の抵抗値RHを第2抵抗値R2に設定する。ステップS24では、上側放電抵抗体36の抵抗値RHをステップS22又はS23で設定した抵抗値に設定した状態で充電処理を行う。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
なお本実施形態において、上記第2実施形態で説明したヒステリシスを持たせたスイッチング速度の変更が行われてもよい。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図22に示すように、スイッチング速度を3段階に切り替える。
下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第1閾値VL1以下であると判定した場合、通常モードに設定する。通常モードでは、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgが第1電圧値V1とされる。
下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第1閾値VL1よりも大きくてかつ第2閾値VL2(>VL1)以下であると判定した場合、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを第2電圧値V2に変更する指令を上側制御部CTHに出力する。このため、その後上側制御部CTHにより、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgが第1電圧値V1に設定される。
下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が第2閾値VL2よりも大きいと判定した場合、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを第3電圧値V3(<V2)に変更する指令を上側制御部CTHに出力する。このため、その後上側制御部CTHにより、上側電圧可変部31の出力電圧値Vgが第3電圧値V3に設定される。
以上説明した本実施形態によれば、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値に応じてスイッチング速度を上記第1実施形態よりも細かく切り替えることができる。このため、エミッタ間の電位差の変動量を抑制しつつ、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン駆動される場合に生じるスイッチング損失の増加を抑制できる。
ちなみにスイッチング速度としては、3段階に限らず、4段階以上に切り替えられてもよい。
また、ゲート電圧が3段階以上に切り替えられる構成に限らず、上記第3実施形態のように、上側放電抵抗体36の抵抗値RHが3段階以上に切り替えられる構成であってもよい。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、上記第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図23に示すように、スイッチング速度を、段階的ではなく、連続的に変更する。
下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、スイッチング速度を低くする指令を上側制御部CTHに出力する。例えば、下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、先の図20に示す上側放電抵抗体36の抵抗値RH大きくする指令を上側制御部CTHに出力する。また例えば、下側制御部CTLは、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、先の図2に示す上側電圧可変部31の出力電圧値Vgを小さくする指令を上側制御部CTHに出力する。
以上説明した本実施形態によれば、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値に応じてスイッチング速度を上記第4実施形態よりも細かく切り替えることができる。このため、エミッタ間の電位差の変動量を抑制しつつ、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン駆動される場合に生じるスイッチング損失の増加を好適に抑制できる。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のうち、還流電流値が大きい方のダイオードを選択する。そして第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち、選択した下アームダイオードに対して対向アーム側の上アームスイッチのスイッチング速度を高くする。
図24に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図24において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
上アーム駆動回路DrHは、第1上側電源30a、第2上側電源30b、第1上側電圧可変部31a、第2上側電圧可変部31b、第1上側充電スイッチ32a、第2上側充電スイッチ32b、第1上側充電抵抗体33a及び第2上側充電抵抗体33bを備えている。第1,第2上側電圧可変部31a,31bは、第1,第2上側電源30a,30bの出力電圧を変圧して出力する機能を有する。
第1上側電圧可変部31aには、第1上側充電スイッチ32aを介して第1上側充電抵抗体33aの第1端が接続されている。第1上側充電抵抗体33aの第2端には、第1上アームスイッチSH1のゲートが接続されている。第2上側電圧可変部31bには、第2上側充電スイッチ32bを介して第2上側充電抵抗体33bの第1端が接続されている。第2上側充電抵抗体33bの第2端には、第2上アームスイッチSH2のゲートが接続されている。
上アーム駆動回路DrHは、第1上側放電抵抗体34a、第2上側放電抵抗体34b、第1上側放電スイッチ35a及び第2上側放電スイッチ35bを備えている。第1上側放電抵抗体34aの第1端には、第1上アームスイッチSH1のゲートが接続されている。第1上側放電抵抗体34aの第2端には、第1上側放電スイッチ35aを介して、上アーム駆動回路DrHのグランドGNDHが接続されている。第2上側放電抵抗体34bの第1端には、第2上アームスイッチSH2のゲートが接続されている。第2上側放電抵抗体34bの第2端には、第2上側放電スイッチ35bを介して、上アーム駆動回路DrHのグランドGNDHが接続されている。
上側制御部CTHは、充電処理として、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令になっていると判定している場合、第1,第2上側充電スイッチ32a,32bをオン状態とし、第1,第2上側放電スイッチ35a,35bをオフ状態とする処理を行う。一方、上側制御部CTHは、放電処理として、上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令になっていると判定している場合、第1,第2上側充電スイッチ32a,32bをオフ状態とし、第1,第2上側放電スイッチ35a,35bをオン状態とする処理を行う。
下アーム駆動回路DrLにおいて、第1下側センス抵抗体80a及び第2下側センス抵抗体80bそれぞれの第2端は、下側制御部CTLに接続されている。
図25に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図25において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS40に進み、下側第1電位差VLa及び下側第2電位差VLbを取得する。そして、下側第1電位差VLaと下側第2電位差VLbとの差の絶対値として下アーム電圧値ΔVDLを算出する。その後ステップS11に進む。
ステップS11においてアンバランス現象が生じていると判定した場合には、ステップS41に進み、下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも大きいか否かを判定する。本実施形態において、ステップS41の処理が最大選択部に相当する。
ステップS41において下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも大きいと判定した場合には、ステップS42に進み、第1,第2上側電圧可変部31a,31bのうち第1上側電圧可変部31aのみについて、出力電圧値を高速側電圧値Vhsに変更する指令を上側制御部CTHに出力する。第2上側電圧可変部31bの出力電圧値の変更指令は出力されない。この場合、第2上側電圧可変部31bの出力電圧値は低速側電圧値Vhl(<Vhs)とされる。
一方、ステップS41において下側第2電位差VLbが下側第1電位差VLaよりも大きいと判定した場合には、ステップS43に進み、第1,第2上側電圧可変部31a,31bのうち第2上側電圧可変部31bのみについて、出力電圧値を高速側電圧値Vhsに変更する指令を上側制御部CTHに出力する。第1上側電圧可変部31aの出力電圧値の変更指令は出力されない。
ステップS11において否定判定した場合には、ステップS44に進み、上アーム駆動信号GHが次回オン駆動指令に切り替えられる場合の第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度を通常モードとする。通常モードでは、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力されない。このため通常モードでは、第1,第2上側電圧可変部31a,31bの出力電圧値が低速側電圧値Vhlとされる。
図26は、上側制御部CTHにより実行される変動抑制処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図26において、先の図14に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS20においてオフ駆動指令であると判定した場合には、ステップS50に進み、下側制御部CTLから第1上側電圧可変部31aの出力電圧値の変更指令があるか否かを判定する。図25のステップS42の処理が実行されると、ステップS50において肯定判定される。
ステップS50において肯定判定した場合には、ステップS51に進み、第1上側電圧可変部31aの出力電圧値を高速側電圧値Vhsに設定する。また、第2上側電圧可変部31bの出力電圧値を低速側電圧値Vhlに設定する。
ステップS50において否定判定した場合には、ステップS52に進み、下側制御部CTLから第2上側電圧可変部31bの出力電圧値の変更指令があるか否かを判定する。図25のステップS43の処理が実行されると、ステップS52において肯定判定される。
ステップS52において肯定判定した場合には、ステップS53に進み、第2上側電圧可変部31bの出力電圧値を高速側電圧値Vhsに設定する。また、第1上側電圧可変部31aの出力電圧値を低速側電圧値Vhlに設定する。
ステップS52において否定判定した場合には、ステップS54に進み、第1,第22上側電圧可変部31a,31bの出力電圧値を低速側電圧値Vhlに設定する。
ステップS24では、第1,第2上側電圧可変部31a,31bの出力電圧値をステップS51、S53又はS54で設定した電圧値に設定した状態で充電処理を行う。
図27に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。なお図27は、先の図15に対応している。
時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。また、下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも大きいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHに対して、第1上アームスイッチSH1のスイッチング速度の変更指令が出力される。これにより、上側制御部CTHは、第1上側電圧可変部31aの出力電圧値の設定を低速側電圧値Vhlから高速側電圧値Vhsに切り替える。
その後時刻t3において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる。上側制御部CTHは、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合よりも低いスイッチング速度で第1上アームスイッチSH1をオン駆動する。このため、第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値IFL1の低下速度が、第2下アームダイオードDL2に流れる還流電流値IFL2の低下速度よりも高くなる。その結果、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
また本実施形態によれば、スイッチング速度を高めて電位差の変動を抑制するため、第1上アームスイッチSH1がオン駆動に切り替えられる場合に生じるスイッチング損失を低減できる。
なお本実施形態において、上記第2実施形態で説明したヒステリシスを持たせたスイッチング速度の変更が行われてもよい。
また本実施形態において、上記第4,第5実施形態で説明したように、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、スイッチング速度が段階的又は連続的に小さく変更されてもよい。
また本実施形態において、ゲート電圧が変更される構成に限らず、上記第3実施形態のように、上側放電抵抗体の抵抗値が変更される構成であってもよい。
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について、上記第6実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のうち、還流電流値が小さい方のダイオードを選択する。そして第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち、選択した下アームダイオードに対して対向アーム側の上アームスイッチのスイッチング速度を低くする。
図28に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図28において、先の図25に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS11においてアンバランス現象が生じていると判定した場合には、ステップS50に進み、下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも小さいか否かを判定する。本実施形態において、ステップS50の処理が最小選択部に相当する。
ステップS50において下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも小さいと判定した場合には、ステップS51に進み、第1,第2上側電圧可変部31a,31bのうち第1上側電圧可変部31aのみについて、出力電圧値を低速側電圧値Vhlに変更する指令を上側制御部CTHに出力する。第2上側電圧可変部31bの出力電圧値の変更指令は出力されない。この場合、第2上側電圧可変部31bの出力電圧値は高速側電圧値Vhsとされる。
一方、ステップS50において下側第2電位差VLbが下側第1電位差VLaよりも小さいと判定した場合には、ステップS52に進み、第1,第2上側電圧可変部31a,31bのうち第2上側電圧可変部31bのみについて、出力電圧値を低速側電圧値Vhlに変更する指令を上側制御部CTHに出力する。第1上側電圧可変部31aの出力電圧値の変更指令は出力されない。
ステップS11において否定判定した場合には、ステップS53に進み、上アーム駆動信号GHが次回オン駆動指令に切り替えられる場合の第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度を通常モードとする。通常モードでは、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力されない。このため通常モードでは、第1,第2上側電圧可変部31a,31bの出力電圧値が高速側電圧値Vhsとされる。
図29に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。なお図29は、先の図27に対応している。
時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。また、下側第2電位差VLbが下側第1電位差VLaよりも小さいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHに対して、第2上アームスイッチSH2のスイッチング速度の変更指令が出力される。これにより、上側制御部CTHは、第2上側電圧可変部31bの出力電圧値の設定を高速側電圧値Vhsから低速側電圧値Vhlに切り替える。
その後時刻t3において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる。上側制御部CTHは、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合よりも低いスイッチング速度で第2上アームスイッチSH2をオン駆動する。このため、第2下アームダイオードDL2に流れる還流電流値IFL2の低下速度が、第1下アームダイオードDL1に流れる還流電流値IFL1の低下速度よりも低くなる。その結果、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(第8実施形態)
以下、第8実施形態について、上記各実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、上下アームそれぞれに対してエミッタ間の電位差の変動を抑制する。図30に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図30において、先の図2等に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
第1上アームダイオードDH1は、第1上側端子DHaを備えている。第1上側端子DHaには、第1上アームダイオードDH1に流れる電流と正の相関を有する微小電流が流れる。第2上アームダイオードDH2は、第2上側端子DHbを備えている。第2上側端子DHbには、第2上アームダイオードDH2に流れる電流と正の相関を有する微小電流が流れる。
上アーム駆動回路DrHは、上側検出回路40を備えている。上側検出回路40は、第1上側センス抵抗体40a、第2上側センス抵抗体40b及び上側増幅器41を備えている。第1上側センス抵抗体40aの第1端には、第1上アームスイッチSH1のエミッタが接続され、第1上側センス抵抗体40aの第2端には、第1上側端子DHaが接続されている。これにより、第1上側端子DHaに流れる微少電流によって第1上側センス抵抗体40aに電圧降下が生じる。このため、第1上側センス抵抗体40aにおける電圧降下量である上側第1電位差VHaを、第1上アームダイオードDH1に流れる還流電流の相関値として用いることができる。
第2上側センス抵抗体40bの第1端には、第2上アームスイッチSH2のエミッタが接続され、第2上側センス抵抗体40bの第2端には、第2上側端子DHbが接続されている。これにより、第2上側端子DHbに流れる微少電流によって第2上側センス抵抗体40bに電圧降下が生じる。このため、第2上側センス抵抗体40bにおける電圧降下量である上側第2電位差VHbを、第2上アームダイオードDH2に流れる還流電流の相関値として用いることができる。
上側増幅器41は、上側第1電位差VHaと上側第2電位差VHbとの差を増幅し、上アーム電圧値ΔVDHとして出力する。上アーム電圧値ΔVDHは、第1上アームダイオードDH1に流れる還流電流値と第2上アームダイオードDH2に流れる還流電流値との差の相関値であり、上アーム電流値に相当する。
なお本実施形態において、第1上側端子DHa,第2上側端子DHb,第1上側センス抵抗体40a及び第2上側センス抵抗体40bが上アーム検出部に相当し、第1下側端子DLa,第2下側端子DLb,第1下側センス抵抗体80a及び第2下側センス抵抗体80bが下アーム検出部に相当する。また本実施形態において、上側増幅器41が上アーム算出部に相当し、下アーム電流値に相当する下アーム電圧値ΔVDLを出力する下側増幅器81が下アーム算出部に相当する。
下アーム駆動回路DrLは、下側電圧可変部71を備えている。下側電圧可変部71は、下側電源70の出力電圧を変圧して出力する機能を有する。下側電圧可変部71には、下側充電スイッチ72を介して上側充電抵抗体33の第1端が接続されている。
上側制御部CTHは、先の図14に示した処理に加えて、図31に示す処理を行う。下側制御部CTLは、先の図11に示した処理に加えて、図32に示す処理を行う。
図31は、上側制御部CTHにより実行される変動抑制処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS60では、取得した上アーム駆動信号GHがオン駆動指令であるか否かを判定する。
ステップS60においてオン駆動指令であると判定した場合には、ステップS61に進み、上側増幅器41から出力された上アーム電圧値ΔVDHを取得する。そして、取得した上アーム電圧値ΔVDHの絶対値が上アーム閾値VHthよりも大きいか否かを判定する。この処理は、アンバランス現象が生じているか否かを判定するための処理である。なお上アーム閾値VHthは、下アーム閾値VLthと同じ値に設定されていてもよいし、下アーム閾値VLthと異なる値に設定されていてもよい。
ステップS61において否定判定した場合には、ステップS62に進み、下アーム駆動信号GLが次回オン駆動指令に切り替えられる場合の第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のスイッチング速度を通常モードとする。通常モードでは、上側制御部CTHから下側制御部CTLにスイッチング速度の変更指令が出力されない。このため、通常モードでは、下側電圧可変部71の出力電圧値が第1電圧値V1とされる。
一方、ステップS61において肯定判定した場合には、アンバランス現象が生じていると判定し、ステップS63に進む。ステップS63では、下側電圧可変部71の出力電圧値を第2電圧値V2に変更する指令を下側制御部CTLに出力する。
図32は、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS70では、取得した下アーム駆動信号GLがオフ駆動指令であるか否かを判定する。ステップS70においてオフ駆動指令であると判定した場合には、ステップS71に進み、上側制御部CTHからのスイッチング速度の変更指令があるか否かを判定する。
ステップS71において変更指令がないと判定した場合には、ステップS72に進み、下側電圧可変部71の出力電圧値を第1電圧値V1に設定する。一方、ステップS71において変更指令があると判定した場合には、ステップS73に進み、下側電圧可変部71の出力電圧値を第2電圧値V2に設定する。
ステップS70において下アーム駆動信号GLがオン駆動指令であると判定した場合には、ステップS74に進み、下側電圧可変部71の出力電圧値をステップS72又はS73で設定した電圧値に設定した状態で充電処理を行う。これにより、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2がオン状態に切り替えられる。
図33に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。ここで図33(e)は、第1,第2上アームダイオードDH1,DH2に流れる還流電流値IFH1,IFH2の推移を示す。
時刻t1において下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられることにより、その後第1,第2上アームダイオードDH1,DH2にリカバリ電流が流れる。なお、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間においては、先の図11に示した処理が行われる。
その後時刻t2において、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる。そして、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間において、上アーム電圧値ΔVDHの絶対値が上アーム閾値VHthよりも大きいと判定される。このため、上側制御部CTHから下側制御部CTLにスイッチング速度の変更指令が出力される。これにより、下側制御部CTLは、下側電圧可変部71の出力電圧値の設定を第1電圧値V1から第2電圧値V2に切り替える。なお、下アーム駆動信号GLがオフ駆動指令とされている期間においては、先の図14に示した処理が行われる。
その後時刻t3において下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。下側制御部CTLは、下アーム駆動信号GLが前回オン駆動指令とされた場合よりも低いスイッチング速度で第1,第2下アームスイッチSL1,SL2をオン駆動する。このため、第1,第2上アームダイオードDH1,DH2に流れる還流電流値IFH1,IFH2の低下速度が、下アーム駆動信号GLが前回オン駆動指令とされた場合の各還流電流値IFH1,IFH2の低下速度よりも低くなる。その結果、リカバリ電流の流通の完了に起因して生じるサージ電圧を低減でき、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のエミッタ間に生じる電位差の変動を抑制できる。
以上説明した本実施形態によれば、上下アームそれぞれで生じるエミッタ間の電位差の変動を抑制することができる。
ちなみに本実施形態において、上記第2〜第8実施形態で説明した構成が適用されてもよい。
また図30に示した構成から、下側検出回路80が除去されてもよい。この場合、上アームにおいて生じる第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のエミッタ間の電位差の変動を抑制できる。なお、この場合、第1、第2上アームダイオードDH1,DH2が自アームダイオードに相当し、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2が自アームスイッチに相当する。また、第1、第2下アームダイオードDL1,DL2が対向アームダイオードに相当し、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2が対向アームスイッチに相当する。
(第9実施形態)
以下、第9実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、アンバランス現象が生じている場合、スイッチング速度に代えて、対向アームスイッチのオン駆動タイミングを変更する。
図34に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図34において、先の図24に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。上アーム駆動回路DrHにおいて、先の図24に示す構成から、第1,第2上側電圧可変部31a,31bが除去されている。
図35に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図35において、先の図25に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS41において下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも大きいと判定した場合には、ステップS80に進む。ステップS80では、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングのみを早める指令を上側制御部CTHに出力する。第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングの変更指令は出力されない。この場合、第2上アームスイッチSH2は、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間に渡ってオン駆動される。
一方、ステップS41において下側第2電位差VLbが下側第1電位差VLaよりも大きいと判定した場合には、ステップS81に進み、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングのみを早める指令を上側制御部CTHに出力する。第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングの変更指令は出力されない。
ステップS11において否定判定した場合には、ステップS82に進み、通常モードに設定する。このモードでは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2は、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間に渡ってオン駆動される。
ちなみに、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、第1基準タイミングに対して上アームスイッチのオン駆動タイミングを早める時間であるシフト時間が段階的又は連続的に長くされてもよい。ここで第1基準タイミングは、例えば、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられるタイミングに設定されればよい。
また、シフト時間に基づいて、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2をオフ駆動に切り替えるタイミングを早めるのが望ましい。これは、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2と、上アームスイッチとの双方がオンされて上下アーム短絡が生じることを防止するためである。例えば、下アーム駆動信号GLのオフ駆動指令に従って第1,第2下アームスイッチSL1,SL2をオフ駆動に切り替えるタイミングを、シフト時間、又はシフト時間よりも長い時間だけ早めてもよい。
上側制御部CTHが行う変動抑制処理について説明する。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち少なくとも一方のオン駆動タイミングを早める指令が下側制御部CTLからあるか否かを判定する。上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2それぞれのオン駆動タイミングを早める指令がないと判定した場合、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間に渡って第1,第2上側充電スイッチ32a,32bをオン状態にする。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第1上アームスイッチSH1のみのオン駆動タイミングを早める指令があると判定した場合、上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令からオン駆動指令に切り替えられるタイミングに対して、第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングを早める。詳しくは、上側制御部CTHは、第2上側充電スイッチ32bよりも先に第1上側充電スイッチ32aをオン状態に切り替える。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第2上アームスイッチSH2のみのオン駆動タイミングを早める指令があると判定した場合、上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令からオン駆動指令に切り替えられるタイミングに対して、第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングを早める。詳しくは、上側制御部CTHは、第1上側充電スイッチ32aよりも先に第2上側充電スイッチ32bをオン状態に切り替える。
図36に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。ここで図36は、先の図15に対応している。
時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。また、下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも大きいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHに第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングの変更指令が出力される。
その後、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる時刻t4よりも上記シフト時間だけ前の時刻t3において、第1上側充電スイッチ32aがオン状態に切り替えられ、第1上アームスイッチSH1がオン駆動される。なお図36に示す例では、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のオフ駆動タイミングが上記シフト時間だけ早められている。その後時刻t4において、第2上アームスイッチSH2がオン駆動に切り替えられる。
以上説明した本実施形態によれば、スイッチング速度を低下させることなく、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくできる。これにより、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング損失を増加させることなく、第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(第10実施形態)
以下、第10実施形態について、上記第9実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、対向アームスイッチのオン駆動タイミングの変更方法を変更する。詳しくは、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のうち還流電流値が小さい方のダイオードを選択する。そして、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち、選択した下アームダイオードに対して対向アーム側の上アームスイッチのオン駆動タイミングを遅らせる。
図37に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図37において、先の図35に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS83に進み、下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも小さいか否かを判定する。
ステップS83において下側第1電位差VLaが下側第2電位差VLbよりも小さいと判定した場合には、ステップS84に進み、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングのみを遅らす指令を上側制御部CTHに出力する。第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングの変更指令は出力されない。この場合、第2上アームスイッチSH2は、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間に渡ってオン駆動される。
一方、ステップS83において否定判定した場合には、ステップS85に進み、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングのみを遅らす指令を上側制御部CTHに出力する。第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングの変更指令は出力されない。
ちなみに、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が大きいほど、第2基準タイミングに対して上アームスイッチのオン駆動タイミングを遅らす時間が段階的又は連続的に長くされてもよい。ここで第2基準タイミングは、例えば、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられるタイミングに設定されればよい。
上側制御部CTHが行う変動抑制処理について説明する。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち少なくとも一方のオン駆動タイミングを遅らす指令が下側制御部CTLからあるか否かを判定する。上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2それぞれのオン駆動タイミングを遅らす指令がないと判定した場合、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令とされている期間に渡って第1,第2上側充電スイッチ32a,32bをオン状態にする。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第1上アームスイッチSH1のみのオン駆動タイミングを遅らす指令があると判定した場合、第2基準タイミングに対して、第1上アームスイッチSH1のオン駆動タイミングを遅らす。
上側制御部CTHは、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のうち第2上アームスイッチSH2のみのオン駆動タイミングを遅らす指令があると判定した場合、第2基準タイミングに対して、第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングを遅らす。
図38に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。ここで図38は、先の図36に対応している。
時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。また、下側第2電位差VLbが下側第1電位差VLaよりも小さいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHに第2上アームスイッチSH2のオン駆動タイミングの変更指令が出力される。
その後、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる時刻t3において、第1上側充電スイッチ32aがオン状態に切り替えられ、第1上アームスイッチSH1がオン駆動される。その後時刻t4において、第2上アームスイッチSH2がオン駆動に切り替えられる。
以上説明した本実施形態によれば、第1,第2下アームダイオードDL1,DL2のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくできる。これにより、上記第9実施形態の効果に準じた効果を得ることができる。
(第11実施形態)
以下、第11実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、アンバランス現象が生じている場合であっても、特定の条件を満たす場合には変動抑制処理を行わない。
図39に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図39において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
インバータ20は、第1上アームスイッチSH1及び第2上アームスイッチSH2の温度を検出する温度検出部24を備えている。温度検出部24は、例えば、感温ダイオード又はサーミスタである。温度検出部24により検出された温度であるスイッチ温度TDswは、上側制御部CTHを介して下側制御部CTLに入力される。下側制御部CTLは、制御装置22から電源電圧値VHrを取得する。
図40に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図40において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS90に進み、電源電圧値VHr及びスイッチ温度TDswを取得する。なお本実施形態において、ステップS90の処理が電圧取得部及び温度取得部に相当する。
続くステップS91では、取得した電源電圧値VHrが下限電圧閾値VLL未満であるとの条件、又は取得したスイッチ温度TDswが上限温度閾値TULを超えているとの条件のいずれかが成立しているか否かを判定する。ステップS91の処理は、アンバランス現象が生じていると判定された場合であっても、オン駆動される場合の第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度が低くなるときには、変動抑制処理を行わないための処理である。
つまり、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2の温度が高いほど、スイッチング速度が低くなる傾向にある。また、コンデンサ11の端子間電圧が低いほど、スイッチング速度が低くなる傾向にある。スイッチング速度が低くなると、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2がオン駆動される場合に生じるサージ電圧が低くなる。サージ電圧が低くなる状況下においては、アンバランス現象が生じている場合であっても、その現象がエミッタ間の電位差の変動に及ぼす影響は小さいと考えられる。このため本実施形態では、ステップS91において否定判定した場合には、ステップS12に進み、変動抑制処理を行わない。
ちなみに、下限電圧閾値VLLは、スイッチ温度TDswに基づいて可変設定されてもよい。これは、変動抑制処理を行わないことを判定する下限電圧閾値VLLが、上アームスイッチSH1,SH2の温度に依存し得るためである。例えば、下限電圧閾値VLLは、スイッチ温度TDswが高いほど、大きい値に設定されればよい。
また、上限温度閾値TULは、電源電圧値VHrに基づいて可変設定されてもよい。これは、変動抑制処理を行わないことを判定する上限温度閾値TULが、コンデンサ11の端子間電圧に依存し得るためである。例えば、上限温度閾値TULは、電源電圧値VHrが低いほど、大きい値に設定されればよい。
ステップS91において肯定判定した場合には、ステップS13に進む。ちなみにステップS13において、図41に示すように、電源電圧値VHrが小さいほど、第1電圧値V1及び第2電圧値V2を大きく設定してもよい。またステップS13において、スイッチ温度TDswが高いほど、第1電圧値V1及び第2電圧値V2を大きく設定してもよい。この処理は、電源電圧値VHrが小さかったり、スイッチ温度TDswが高かったりするほど、スイッチング速度を高くしても、エミッタ間の電位差の変動量が過度に大きくならないことに基づく。
以上説明した本実施形態において、ステップS91において肯定判定された場合、第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のスイッチング速度が低下されない。このため、第2上アームスイッチSH1,SH2がオン駆動される場合のスイッチング損失の増加を抑制できる。
ちなみに図40のステップS91において、電源電圧値VHrに関する条件、又はスイッチ温度TDswに関する条件のいずれかが除去されてもよい。またステップS13において、先の図41に示した処理が行われなくてもよい。
また、本実施形態の構成が、上記第2〜第10実施形態で説明した構成に適用されてもよい。
(第12実施形態)
以下、第12実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図42に示すように、上,下アームそれぞれが3つのスイッチにより構成されている。なお図42は、インバータ20の1相分の構成を示す図である。なお図42において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
インバータ20は、各相において、さらに第3上アームスイッチSH3及び第3下アームスイッチSL3の直列接続体を備えている。本実施形態において、各スイッチSH3,SL3は、電圧制御型の半導体スイッチ素子であり、具体的にはIGBTである。
第3上アームスイッチSH3には、第3上アームダイオードDH3が逆並列に接続されており、第3下アームスイッチSL3には、第3下アームダイオードDL3が逆並列に接続されている。なお、各ダイオードDH3,DL3は、各スイッチSH3,SL3と一体化されてダイオード内蔵IGBTとされていてもよいし、各スイッチSH3,SL3に対して外付けされていてもよい。また本実施形態において、第3上アームスイッチSH3、第3上アームダイオードDH3、第3下アームスイッチSL3及び第3下アームダイオードDL3は、収容ケースに収容されて半導体モジュールMSとして一体化されている。
各相において、3つの半導体モジュールMSそれぞれの中間端子TOには、モータ導電部材Bmを介して、回転電機21の巻線21Aの第1端が接続されている。
図43に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図43において、先の図2等に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
上アーム駆動回路DrHにおいて、上側充電抵抗体33の第2端には、第3上アームスイッチSH3のゲートが接続されている。第3上アームスイッチSH3のゲートには、上側放電抵抗体34の第1端が接続されている。
下アーム駆動回路DrLにおいて、下側充電抵抗体73の第2端には、第3下アームスイッチSL3のゲートが接続されている。第3下アームスイッチSL3のゲートには、下側放電抵抗体74の第1端が接続されている。
第3下アームダイオードDL3は、第3下側端子DLcを備えている。第3下側端子DLcには、第3下アームダイオードDL3に流れる電流と正の相関を有する微小電流が流れる。
下側検出回路80は、第3下側センス抵抗体80cを備えている。第3下側センス抵抗体80cの第1端には、第3下アームスイッチSL3のエミッタが接続され、第3下側センス抵抗体80cの第2端には、第3下側端子DLcが接続されている。これにより、第3下側端子DLcに流れる微少電流によって第3下側センス抵抗体80cに電圧降下が生じる。このため、第3下側センス抵抗体80cにおける電圧降下量である下側第3電位差VLcを、第3下アームダイオードDL3に流れる還流電流値の相関値として用いることができる。なお、各センス抵抗体80a〜80cの第2端は、下側制御部CTLに接続されている。
図44に、下側制御部CTLにより実行される変動抑制処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお図44において、先の図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS100に進み、下側第1電位差VLa、下側第2電位差VLb及び下側第3電位差VLcを取得する。そして、取得した各電位差VLa〜VLcの中から最大の電位差VMAXを選択する。続くステップS101では、取得した各電位差VLa〜VLcの中から最小の電位差VMINを選択する。
続くステップS102では、最大の電位差VMAXと最小の電位差VMINとの差を下アーム電圧値ΔVDLとして算出する。その後、ステップS11に進む。
図45に、変動抑制処理が行われる場合のタイムチャートを示す。ここで図45(e)は、第1,第2,第3下アームダイオードDL1,DL2,DL3に流れる還流電流値IFL1,IFL2,IFL3の推移を示す。
時刻t2において、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令に切り替えられる。そして、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間において、ステップS100〜S102の処理が行われる。そして、下アーム電圧値ΔVDLの絶対値が下アーム閾値VLthよりも大きいと判定される。このため、下側制御部CTLから上側制御部CTHにスイッチング速度の変更指令が出力される。
その後時刻t3において上アーム駆動信号GHがオン駆動指令に切り替えられる。上側制御部CTHは、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合よりも低いスイッチング速度で第1,第2,第3上アームスイッチSH1,SH2,SH3をオン駆動する。このため、各還流電流値IFL1,IFL2,IFL3の低下速度が、上アーム駆動信号GHが前回オン駆動指令とされた場合の各還流電流値IFL1,IFL2,IFL3の低下速度よりも低くなる。その結果、リカバリ電流の流通の完了に起因して生じるサージ電圧を低減できる。これにより、第1,第2,第3下アームスイッチSL1,SL2,SL3のエミッタ間に生じる電位差の変動を抑制できる。
ちなみに、上,下アームそれぞれが4つ以上のスイッチにより構成されていてもよい。
(第13実施形態)
以下、第13実施形態について、上記第12実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、駆動回路の構成を変更する。
図46に、本実施形態に係る各駆動回路DrH,DrLを示す。なお図46において、先の図34等に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
上アーム駆動回路DrHは、第3上側電源30c、第3上側電圧可変部31c、第3上側電圧可変部31c、第3上側充電スイッチ32c及び第3上側充電抵抗体33cを備えている。第3上側電圧可変部31cは、第3上側電源30cの出力電圧を変圧して出力する機能を有する。第3上側電圧可変部31cには、第3上側充電スイッチ32cを介して第3上側充電抵抗体33cの第1端が接続されている。第3上側充電抵抗体33cの第2端には、第3上アームスイッチSH3のゲートが接続されている。
上アーム駆動回路DrHは、第3上側放電抵抗体34c及び第3上側放電スイッチ35cを備えている。第3上側放電抵抗体34cの第1端には、第3上アームスイッチSH3のゲートが接続されている。第3上側放電抵抗体34cの第2端には、第3上側放電スイッチ35cを介して、上アーム駆動回路DrHのグランドGNDHが接続されている。
上側制御部CTHは、充電処理として、上アーム駆動信号GHがオン駆動指令になっていると判定している場合、第1,第2,第3上側充電スイッチ32a,32b,32cをオン状態とし、第1,第2,第3上側放電スイッチ35a,35b,35cをオフ状態とする処理を行う。一方、上側制御部CTHは、放電処理として、上アーム駆動信号GHがオフ駆動指令になっていると判定している場合、第1,第2,第3上側充電スイッチ32a,32b,32cをオフ状態とし、第1,第2,第3上側放電スイッチ35a,35b,35cをオン状態とする処理を行う。
下側制御部CTLは、アンバランス現象が生じていると判定している場合において、例えば以下(A)〜(F)に説明する変動抑制処理を行うことができる。
(A)下側制御部CTLは、下側第1電位差VLa〜下側第3電位差VLcの中から、最大の電位差VMAXを選択する。下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から、選択した最大の電位差VMAXに対応する下アームダイオードに対して対向アーム側の上アームスイッチを上アーム最大スイッチとして選択する。下側制御部CTLは、上アーム最大スイッチのスイッチング速度を、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3のうち上アーム最大スイッチ以外のスイッチのスイッチング速度よりも高くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。ここで、スイッチング速度は、第1〜第3上側電圧可変部31a〜31cの出力電圧値の変更により変更されればよい。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(B)下側制御部CTLは、下側第1電位差VLa〜下側第3電位差VLcの中から、最小の電位差VMINを選択する。下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から、選択した最小の電位差VMINに対応する下アームダイオードに対して対向アーム側の上アームスイッチを上アーム最小スイッチとして選択する。下側制御部CTLは、上アーム最小スイッチのスイッチング速度を、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3のうち上アーム最小スイッチ以外のスイッチのスイッチング速度よりも低くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。ここで、スイッチング速度は、第1〜第3上側電圧可変部31a〜31cの出力電圧値の変更により変更されればよい。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(C)下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から、上述した上アーム最小スイッチ及び上アーム最大スイッチを選択する。下側制御部CTLは、上アーム最小スイッチのスイッチング速度を、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も低くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。また、下側制御部CTLは、上アーム最大スイッチのスイッチング速度を、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も高くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれをいっそう小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動をいっそう抑制できる。
(D)下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から上アーム最大スイッチを選択する。下側制御部CTLは、上アーム最大スイッチのオン駆動タイミングを、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も早くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。ここで、オン駆動タイミングは、第1〜第3上側充電スイッチ32a〜32cのオン状態への切り替えタイミングの変更により変更されればよい。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(E)下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から上アーム最小スイッチを選択する。下側制御部CTLは、上アーム最小スイッチのオン駆動タイミングを、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も遅くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれを小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動を抑制できる。
(F)下側制御部CTLは、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中から、上アーム最小スイッチ及び上アーム最大スイッチを選択する。下側制御部CTLは、上アーム最大スイッチのオン駆動タイミングを、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も早くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。また、下側制御部CTLは、上アーム最小スイッチのオン駆動タイミングを、第1〜第3上アームスイッチSH1〜SH3の中で最も遅くする変更指令を上側制御部CTHに出力する。
これにより、第1〜第3下アームダイオードDL1〜DL3のリカバリ電流の流通完了タイミングのずれをいっそう小さくでき、第1〜第3下アームスイッチSL1〜SL3のエミッタ間で生じる電位差の変動をいっそう抑制できる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・各上アームスイッチそれぞれに複数個ずつ上アームダイオードが逆並列に接続され、各下アームスイッチそれぞれに複数個ずつ下アームダイオードが逆並列に接続されていてもよい。図47に、インバータ20の1相分の構成において、各スイッチに2つずつダイオードが逆並列接続されている例を示す。なお図47において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
第1上アームスイッチSH1には、第1A上アームダイオードDH1A及び第1B上アームダイオードDH1Bのそれぞれが逆並列に接続されており、第2上アームスイッチSH2には、第2A上アームダイオードDH2A及び第2B上アームダイオードDH2Bのそれぞれが逆並列に接続されている。第1下アームスイッチSL1には、第1A下アームダイオードDL1A及び第1B下アームダイオードDL1Bのそれぞれが逆並列に接続されており、第2下アームスイッチSL2には、第2A下アームダイオードDL2A及び第2B下アームダイオードDL2Bのそれぞれが逆並列に接続されている。
図47に示す構成では、第1A,第2A上アームダイオードDH1A,DH2A及び第1A,第2A下アームダイオードDL1A,DL2Aとして、SiCのショットキーバリアダイオード(以下、SiC−SBD)が用いられている。また、第1B,第2B上アームダイオードDH1B,DH2B及び第1B,第2B下アームダイオードDL1B,DL2Bとして、Si−PiNダイオード(以下、Si−PND)が用いられている。
U相下アームを例にして説明すると、下アーム駆動回路DrLの電流検出部は、第1下アームスイッチSL1に対応する2つのダイオード群DL1A,DL1Bに流れる還流電流値の合計値を第1還流電流検出値として検出し、第2下アームスイッチSL2に対応する2つのダイオード群DL2A,DL2Bに流れる還流電流値の合計値を第2還流電流検出値として検出する。下アーム駆動回路DrLの下側駆動部CTNは、第1還流電流検出値と第2還流電流検出値との差をアンバランス電流値として算出する。ちなみに、先の図25,図28に示す処理において、下側第1電位差VLaに相当する値として第1還流電流検出値が用いられ、下側第2電位差VLbに相当する値として第2還流電流検出値が用いられればよい。
なお、SiC−SBD及びSi−PNDの電圧電流特性は、例えば特開2014−90179号公報の図3に示されているように、順方向電圧値に対する電流値の特性が似ている。このため、SiC−SBD及びSi−PNDそれぞれに流れる電流比率を制御しやすく、ダイオード群で還流電流値を捉えてアンバランス現象を解消しやすい。
ちなみに、各スイッチに逆並列接続されるダイオードの数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
・上記第1実施形態において、下側制御部CTLは、下アーム駆動信号GLがオン駆動指令とされている期間における下アーム電圧値ΔVDLの時間平均値の絶対値を算出し、この絶対値を図11のステップS11で用いてもよい。
・上記第1実施形態では、図11のステップS13の処理が行われた場合、その直後に出現する上アーム駆動信号GHのオン駆動指令期間において、上側制御部CTHが変動抑制処理を行ったがこれに限らない。例えば、図11のステップS13の処理が行われた場合、その直後に出現する上アーム駆動信号GHのオン駆動指令期間の次に出現する上アーム駆動信号GHのオン駆動指令期間において、上側制御部CTHが変動抑制処理を行ってもよい。
・上側制御部CTH及び下側制御部CTLが1つの制御部とされていてもよい。
・インバータを構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、制御端子はゲートであり、入力端子はドレインであり、出力端子はソースである。
・電力変換器としては、3相のものに限らず、2相、又は4相以上のものであってもよい。
・電流検出部としては、センス抵抗体が用いられる構成に限らない。
・駆動回路としては、車両に搭載されるものに限らない。