JP2018180429A - 光学フィルタ及び光量調整装置並びに撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電による異物付着を抑制した光学フィルタを提供する。また、異物による画質劣化を抑制した撮像光学系及び撮像装置を提供する。【解決手段】本発明の光学フィルタは、基板上に屈折率の異なる誘電体薄膜を積層した誘電体薄膜積層体が設けられたフィルタ基材と、前記フィルタ基材の前記誘電体薄膜積層体上に設けられたフィルタ最上層となる帯電防止層と、を備え、前記帯電防止層の少なくとも最表層は、多孔質の層構造内に水分を担持した含水膜から形成され、前記含水膜内の水分は、外気との間で出入りが可能であることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、光学フィルタ、及びこの光学フィルタを備えた光量調整装置、並びにこの光量調整装置を備えた撮像装置に関するものである。
カメラやビデオカメラなどの撮像光学系は、撮像光学系を透過してきた光を電気信号に変換する、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等から成る撮像素子を有する。
人の目の感度特性とは異なる特性を有しており、従来からこの感度特性を人の目の感度に極力合わせるために所望の光波長の透過を制限する光学フィルタ、例えば撮影に不要な近赤外波長領域の透過光量を減衰する赤外カットフィルタや、紫外波長領域の透過光量を減衰する紫外線カットフィルタ等が撮像光学系に配置される。
更に、赤外カットフィルタや紫外線カットフィルタの光路への挿入の有無による光路差の変化を補正するために所望の光波長領域に反射防止機能を持たせたAR(Anti−Reflection)フィルタが搭載されることもある。
これらの光学フィルタは、一般的に、基板と基板上に蒸着法等により形成された屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜を積層した誘電体薄膜積層体とからなる。しかし、誘電体薄膜積層体は帯電しやすく、埃や異物を引き寄せやすい。
このため、カメラなどの撮像光学系に光学フィルタを組み込んだ際に、光学フィルタに付着する埃や異物が撮影した画像に映り込んでしまい、画質の劣化を引き起こすことがあった。
このような光学フィルタの帯電による異物付着防止を目的に、最表層を低密度のSiO2膜とした光学フィルタが知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1では光学フィルタの最表層を低密度SiO2層とすることで電荷が移動しやすくなるという記載があるものの、低密度SiO2層において電荷の移動に直接的に関わっている成分の記載がなく、また十分な帯電防止効果を得られてはいなかった。
近年は、撮像素子の高感度化・高画素化が進んでおり、異物による画質の劣化がより顕著に表れるようになってきており、従来以上に異物による画質の劣化を低減することが求められている。
本発明は、撮像素子の高感度化・高画素化に対応し、良好な帯電防止効果を有する光学フィルタを提供することである。
本発明の光学フィルタは、基板上に屈折率の異なる誘電体薄膜を積層した誘電体薄膜積層体が設けられたフィルタ基材と、前記フィルタ基材の前記誘電体薄膜積層体上に設けられたフィルタ最上層となる帯電防止層と、を備え、前記帯電防止層の少なくとも最表層は、多孔質の層構造内に水分を担持した含水膜から形成され、前記含水膜内の水分は、外気との間で出入りが可能であることを特徴とする。
本発明によれば、像素子の高感度化・高画素化に対応し、良好な帯電防止効果を有する光学フィルタを実現することができる。
具体的には詳述するが、光学フィルタの最表層となる含水膜が持つ水分により、光学フィルタの表面に電荷が溜まりにくく帯電しにくくなり、異物付着の少ない光学フィルタを実現することができる。更に、本発明に関わる撮像装置は、光学フィルタに付着した異物による画質劣化を極力抑えた映像を得ることができる。
具体的には詳述するが、光学フィルタの最表層となる含水膜が持つ水分により、光学フィルタの表面に電荷が溜まりにくく帯電しにくくなり、異物付着の少ない光学フィルタを実現することができる。更に、本発明に関わる撮像装置は、光学フィルタに付着した異物による画質劣化を極力抑えた映像を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明にかかわる光学フィルタの断面図を示したものである。本発明の光学フィルタは、基板1上に屈折率の異なる複数の誘電体薄膜から構成される誘電体薄膜積層体2と誘電体薄膜積層体2上に、光学フィルタの最上層となるように帯電防止層3とが形成されており、帯電防止層3は少なくとも多孔質構造中に水分を含有させた含水膜4が最表層となるように設けられている。
本発明において、図2のように最上層である含水膜4の直下に隣接して透明導電膜5を配置し、帯電防止層3とすることが好ましい。このような配置とすることで、光学フィルタの表面である含水膜4から電荷が移動しやすくなるため、より効果的に光学フィルタ表面の帯電を防ぐことができる。
また、図3のように帯電防止層3と誘電体薄膜積層体2との間に水蒸気バリア膜6を形成することが好ましい。水蒸気バリア膜6を形成することで、含水膜4に水分を吸着させる工程において、誘電体薄膜積層体2が水分を吸着するのを抑制することができる。
誘電体薄膜積層体2が水分を吸着すると、水の屈折率が空気の屈折率よりも大きいことに起因し、見かけ上の屈折率が大きくなり、分光特性の変化を引き起こす。水蒸気バリア膜6は水蒸気透過率の小さい膜であり、水蒸気バリア膜6を誘電体薄膜積層体2よりも表層側に形成することで、含水膜4に水分を吸着させる工程において、誘電体薄膜積層体2が水分を吸着するのを抑制することができ、誘電体薄膜積層体2の分光特性が大きく変化することを防ぐことが出来る。
(基板)
本発明に使用する基板としては、実質的に透明な基板であれば、任意の基板を使用することが可能であり、例えばガラスや水晶などの無機材料からなる基板や、ポリエステル系、ノルボルネン系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)系、ポリスルホン系、PEN(ポリエチレンナフタレート)系、PC(ポリカーボネート)系、及びポリイミド系などの様々な合成樹脂基板を使用することができる。
本発明に使用する基板としては、実質的に透明な基板であれば、任意の基板を使用することが可能であり、例えばガラスや水晶などの無機材料からなる基板や、ポリエステル系、ノルボルネン系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)系、ポリスルホン系、PEN(ポリエチレンナフタレート)系、PC(ポリカーボネート)系、及びポリイミド系などの様々な合成樹脂基板を使用することができる。
合成樹脂基板は、ガラスなどの無機基板に比べ、柔軟で軽く、加工性が良いが、膜応力や熱応力による変形や、水分による特性変化を起こしやすい。このため、合成樹脂基板を用いる場合は、高耐熱性(ガラス転移温度Tgが高い)、高曲げ弾性率、低吸水性の材料を用いることが望ましい。
例えば、高耐熱性基板としてポリイミド系やPES系、高曲げ弾性率が大きい基板としてはPET、低吸水性基材としてはノルボルネン系などが挙げられる。また、必要に応じてシルセスキオキサン骨格を有する基板などの有機‐無機ハイブリッド材料からなる基材を用いてもよい。
なお、実質的に透明な基板とは、光学フィルタの光透過波長において、実質的に光吸収を持たないことをさし、光学フィルタの光不透過帯域においては光吸収特性を持っていてもよい。
例えば、近赤外波長領域を光不透過帯域とする場合には、近赤外波長領域に光吸収特性を有する銅イオンなどを分散した基板などを使用することもできるし、紫外線領域を光不透過とする場合は紫外線吸収剤を練りこんだ紫外線領域に光吸収性を有する基板を使用することもできる。
基板の厚みとしては、剛性が確保される範囲でできるだけ薄い方が好ましく、具体的には20μm〜1mm、25μm〜400μm程度がより好ましい。
(誘電体薄膜積層体)
誘電体薄膜積層体について説明する。本発明の誘電体薄膜積層体は、実質的に透明で、屈折率の異なる複数の誘電体薄膜からなる。誘電体薄膜は蒸着によって形成され、屈折率の異なる複数の誘電体薄膜によって光干渉を起こし、これを利用して任意の光学特性を得る。
誘電体薄膜積層体について説明する。本発明の誘電体薄膜積層体は、実質的に透明で、屈折率の異なる複数の誘電体薄膜からなる。誘電体薄膜は蒸着によって形成され、屈折率の異なる複数の誘電体薄膜によって光干渉を起こし、これを利用して任意の光学特性を得る。
誘電体薄膜積層体の形成方法を、一般的な低屈折率膜であるSiO2膜と高屈折膜であるTiO2膜とで説明する。坩堝にSiO2の蒸着材料であるSiOx(0<x≦2)、TiO2の蒸着材料であるTiOx(0<x≦2)を充填し、ハースライナーにセットする。
チャンバー内の真空度が任意の値になったら、SiOxを電子銃より放出された電子ビームによって過熱し、昇華させてSiO2膜を得る。SiO2膜の膜厚が任意の値となったら、電子ビームの照射を止め、SiOxの充填された坩堝をシャッターで覆い、必要以上にSiO2膜が形成されるのを防ぐ。
次に、TiOxの充填された坩堝を電子銃より放出された電子ビームによって過熱し、溶融・飛散させる。形成されるTiO2膜の厚みが任意の膜厚となったら、電子ビームの照射を止め、TiOxの充填された坩堝をシャッターで覆い、必要以上にTiO2膜が形成されるのを防ぐ。この作業を繰り返し、所望の光学特性を有する誘電体薄膜積層体を形成する。なお、必要に応じて誘電体薄膜形成時に不活性ガスまたは反応性ガスを導入してもよい。
誘電体薄膜としては、SiO2やTiO2に限らず、MgF2、Al2O3、SiO、MgO、ZrO2、LaTiO3、WO3、Ta2O5、Nb2O5などの様々な誘電体薄膜を、所望の分光特性や成膜条件に合わせ適宜選択することができる。
また、本実施形態では真空蒸着法により誘電体薄膜を形成しているが、これに限らずイオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等の成膜方法によっても成膜が可能であり、目的や条件に最も適した成膜方法を選択すればよい。
(帯電防止層)
本発明の帯電防止層は、少なくとも多孔質構造中に水分を含有した含水膜が最表層に形成されている。含水膜は光学フィルタの最上層となるため、表面反射を考慮し、低屈折率材料であることが好ましい。例えば、SiO2やMgF2などが挙げられ、これらは蒸着などにより形成される実質的に最も屈折率の小さい材料であり好適である。
本発明の帯電防止層は、少なくとも多孔質構造中に水分を含有した含水膜が最表層に形成されている。含水膜は光学フィルタの最上層となるため、表面反射を考慮し、低屈折率材料であることが好ましい。例えば、SiO2やMgF2などが挙げられ、これらは蒸着などにより形成される実質的に最も屈折率の小さい材料であり好適である。
含水膜は、光学フィルタの透過波長帯域において反射率が小さくなるような膜厚とすることが好ましい。具体的には光学フィルタの透過波長帯域の中心波長をλときに、含水膜の屈折率と物理膜厚の積で表される光学膜厚をλ/4程度とすることが好ましい。
また、含水膜は膜厚方向で連続的に屈折率(密度)が変化する構造となっていてもよい。例えば、最表面に向かって徐々に屈折率が小さくなるように成膜することで、含水膜の有する界面での屈折率差が小さくなり、反射を抑制することが出来る。一方、最表面に向かって徐々に密度を高くすると、含水層に水分を含水させた後に、含水層から水分が出ていきにくくすることが出来る。
本発明における、多孔質構造を有する膜(以下多孔質膜)の細孔径は1〜25nm程度であることが好ましい。細孔径が1nmよりも小さいと、多孔質膜中に水分を含有させるのが困難になる。一方、細孔径が25nmよりも大きくなると、毛管凝縮が起こりにくくなり、多孔質膜中への水分の物理吸着が起きにくくなる。
SiO2のように多孔質膜表面に水酸基を有するような膜の場合、細孔径は1〜5nm程度であることが更に好ましい。SiO2などの材料の場合、水分の吸着作用としては、表面吸着と毛管凝縮の2つの作用が働く。
表面吸着は、SiO2表面でファンデルワールス力や水素結合により化学的に水分を吸着する作用であり、低湿度において比較吸着量が大きい。毛管凝縮は、毛細管現象で水分が物理的に吸着される現象であり、高湿度環境において比較的大きな吸着力を発揮する。細孔径を1〜5nm程度とすることで、多孔質の表面積が大きくなるため表面吸着が支配的となり、湿度の低い環境であっても、比較的水分を吸着しやすく、脱水しにくい構成とすることができる。
含水膜の多孔質構造の作製方法について説明する。本実施形態では、含水膜の多孔質構造を真空蒸着法で作製した。MgF2を基に具体的に説明する。MgF2膜の蒸着材料であるMgF2を坩堝に充填、ハースライナーにセットし、真空蒸着機のチャンバー内圧力が所定の圧力となったら、電子銃から放出される電子ビームによって、MgF2を加熱し飛散させた。
この時、チャンバー内にガスを導入することで形成されるMgF2膜を以下多孔質膜とすることが出来る。ここで導入するガス種としてはたとえば、O2、Ar、N2、H2Oなどのガスを単独あるいは混合したものを用いることができる。
H2Oガスを使用した場合、多孔質膜中に一定量の水分(水分子)が含まれるため、特に好ましい。H2Oガスのように常温において液体である材料を気化して使用する場合は、液体材料を内蔵する気化タンクより発生したガスを、高湿用のマスフローコントローラーで流量調整しチャンバー内へ拡散させるとよい。
導入するガス量は、成膜時のチャンバー内圧力で調整する。水分を含水させたときに十分な帯電防止機能を持たせるためには、成膜時の圧力が5.0×10−2Pa〜1.0×10−3Pa程度となるようにガス量を調整することが好ましい。
成膜時の圧力が5.0×10−2Pa以上では成膜速度が低下し、生産性を著しく低下させてしまう。一方、成膜時の圧力が1.0×10−3Pa以下では、成膜した膜が水分を含有させるのに十分な多孔質構造とならずに、十分な帯電防止機能を得ることが困難となる。
含水膜の膜厚方向で屈折率を段階的に変化させるには、導入ガス量を調整し、連続的に成膜時の圧力が変化させればよい。含水膜の表面に向かって連続的に屈折率を低くさせる場合は、成膜時の圧力を徐々に高くすることで作製できる。
反対に含水膜の表面に向かって連続的に屈折率を高くさせる場合には、成膜時の圧力を徐々に低くすることで作製できる。また、多孔質膜の細孔径は、成膜圧力や成膜温度、成膜レートなどの条件を、材料に合わせて適宜決定することで調整することができる。多孔質膜の形成には真空蒸着法に限らず、例えばパッタリング法やゾルゲル法などによって形成することもできる。
次に、多孔質膜に水分を吸着させる。水分の吸着は、例えば高温高湿槽(60℃90%)に一定時間投入することで達成できる。この際、高温高湿槽に投入することで、光学フィルタが結露するのを防ぐため、光学フィルタを高温高湿槽に投入後、高温高湿槽内の温度のみを上昇させ、光学フィルタが十分に温まってから、湿度を徐々に上昇させた。
また、高温高湿槽から光学フィルタを取り出す際は、高温高湿槽内の温度を保ったままで、湿度のみを減衰させた。多孔質膜への水分の吸着方法は、前述の条件に特に限定されるものではなく、多孔質膜に水分を吸着させることが出来れば、任意の手段・条件とすることができる。
吸水させると、多孔質膜の見かけの屈折率が大きくなるため、光学膜厚が大きくなり、分光特性も変化する。このことを考慮し、多孔質構造を有する膜の物理膜厚を決定することで、より所望の分光特性に近い光学フィルタとすることができる。
本発明の帯電防止層は、含水層の直下に隣接するように透明導電膜が形成されていることが好ましい。このように透明導電膜を配置することで、含水膜表面の電荷が、透明導電膜方向へと移動しやすくなり、光学フィルタの表面に電荷が溜まることを抑制することができる。
透明導電膜としては、In2O3にSnをドープしたITO、In2O3とZnOからなるIZO、ZnOにAlまたはGaをそれぞれドープしたAZO、GZO、SnO2にF、Ta、SbをドープしたFTO、TTO、ATO、TiO2にNbをドープしたNTOなどの、すでに公知の様々な材料を用いることができる。
透明導電膜は、誘電体薄膜と比較すると可視光波長領域における吸収が大きい。このため、透明導電膜は、光学フィルタの透過帯における透過率を著しく低下させない程度の膜厚、具体的には、光学フィルタの透過帯における透過率が90%以上となるような膜厚とすることが好ましい。
光学フィルタの透過帯における反射率や散乱による透過率損失が約2%程度あることを考慮すると、透明導電膜の光吸収量が8%程度以下となる膜厚とすることが好ましい。光学フィルタによる透過帯の透過率減衰を抑制することで、撮像光学系に組み込んだ際に、明るい映像を得ることができる。
透明導電膜は可視光波長領域において短波長側、すなわち400〜450nm程度の領域に比較的強い光吸収性を有する。このため、透明導電膜を厚く成膜すると、帯電防止機能を向上させることはできるが、カラーバランスの悪い光学フィルタとなってしまう。
ここで、カラーバランスについて説明する。カラーバランスとは、被写体の実際の色味と撮像装置によって映像化された撮影画像の色味との整合性のことである。撮像装置では、レンズや光学フィルタ等を透過した光が撮像素子に入射し、この光が電気信号へと変換され映像化される。つまり、撮像素子に入射した光はレンズや光学フィルタの影響により、実際の被写体の色味とは異なっている。
そのため、画素間補完・色空間変換・ガンマ特性変換などの画像処理を行い、色調・コントラスト・ノイズなどを調整している。しかし、光量が極端に少ない波長領域があると、画像処理でその波長領域における色味を復元しても、色調変化の滑らかさが損なわれ、カラーバランスが保てなくなってしまう。
光波長400〜450nmをλ1、450〜500nmをλ2、500〜550nmをλ3、550〜600nmをλ4、600〜650nmをλ5、650〜700nmをλ6とした時の光学フィルタの透過波長領域におけるλ1〜λ6の平均透過率をTλ1、Tλ2、Tλ3、Tλ4、Tλ5、Tλ6とし、Tλ1〜Tλ6の最大値をTλmax、最小値をTλminとした時、下記の式1を満たすことで、良好なカラーバランスを得られる光学フィルタとすることが出来る。
0.9≦Tλmin/Tλmax ・・・・・・・・・・(式1)
すなわち、本実施形態の光学フィルタにおいて、透明導電膜は光学フィルタが式1を満たすような膜厚とすることが好ましい。
また、透明導電膜は導電性を向上させるためには、緻密な膜とすることが好ましいが、緻密な膜とすることで、膜応力が強くなる。合成樹脂基板などの剛性の小さい基板を用いる場合は特に、膜応力による光学フィルタのうねりや反りが発生しやすい。このような基材を使用する際は、透明導電膜の膜厚を光学フィルタのうねりや反りが問題にならない程度の膜厚とすることが好ましい。
透明導電膜の成膜には、誘電体薄膜積層体と同様に真空蒸着法やイオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等の様々な成膜方法を用いることが出来るが、緻密な高密度膜とするために、スパッタリング法やイオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法などで成膜することが好ましい。また、成膜後にアニール処理を行い、結晶化を促進することで導電性を向上させてもよい。
(水蒸気バリア膜)
多孔質膜に水分を吸着させて含水膜を形成する際に、誘電体薄膜積層体が水分を吸着し、分光変化を引き起こすことを抑制するために、含水膜を含む帯電防止層と誘電体薄膜積層体との間に水蒸気バリア膜を形成することが好ましい。
多孔質膜に水分を吸着させて含水膜を形成する際に、誘電体薄膜積層体が水分を吸着し、分光変化を引き起こすことを抑制するために、含水膜を含む帯電防止層と誘電体薄膜積層体との間に水蒸気バリア膜を形成することが好ましい。
水蒸気バリア膜としては、実質的に透明で、水蒸気透過率が小さい膜がよく、具体的にはAl2O3膜、Si3N4膜、SiOxNy膜であることが好ましい。特にスパッタリング法で誘電体薄膜積層体を形成する場合は、誘電体薄膜積層体の低屈折率膜をSiO2膜とし、水蒸気バリア膜をSi3N4膜またはSiOxNy膜とすることが好ましい。
このようにすることで、成膜時に導入するガス種を変更するだけで、誘電体薄膜積層体の低屈折率膜と水蒸気バリア膜を形成する際に使用するターゲット材料を同一とすることができ、製造が簡易となるためである。
水蒸気バリア膜は真空蒸着法やイオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等の様々な成膜方法を用いることができるが、緻密な高密度膜とすることで水蒸気バリア機能を高めることが出来る。このため、スパッタリング法やイオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法などで成膜することが特に好ましい。
水蒸気バリア膜は水蒸気バリア機能を有する膜厚以上であれば、所望の分光を得るために任意の膜厚とすることができる。具体的には80Å以上であることが好ましい。80Åよりも薄いと、水蒸気バリア膜が完全な層を形成することが出来ずに、十分な水蒸気バリア機能を得られない虞がある。
なお、水蒸気バリア膜は少なくとも1層含水膜と誘電体薄膜積層体との間に形成されていればよいが、複数設けられていてもよい。また、誘電体薄膜積層体を構成する誘電体薄膜の一部に、水蒸気バリア膜を用いることもできる。
本発明の光学フィルタは撮像光学系に配置される光学フィルタであって、具体的にはARフィルタやUVカットフィルタ、IRカットフィルタとして撮像光学系に組み込むことが出来る。以下に、それぞれの光学フィルタについて説明する。
≪ARフィルタ≫
ARフィルタは、一般的に可視光波長における反射を抑制し、同領域において高透過率を実現するものである。しかし、近年は、近赤外領域を利用した撮像装置にも配置されることがあり、近赤外光波長領域においても高透過率としたARフィルタ(以下、Wide_ARフィルタ)の要望も出てきている。ARフィルタとWide_ARフィルタの一般的な分光特性を図4に示す。
ARフィルタは、一般的に可視光波長における反射を抑制し、同領域において高透過率を実現するものである。しかし、近年は、近赤外領域を利用した撮像装置にも配置されることがあり、近赤外光波長領域においても高透過率としたARフィルタ(以下、Wide_ARフィルタ)の要望も出てきている。ARフィルタとWide_ARフィルタの一般的な分光特性を図4に示す。
ARフィルタを構成する誘電体積層体は、先に挙げた任意の誘電体薄膜を適宜選択可能であるが、特にAl2O3膜とLaTiO3膜であることが好ましい。Al2O3膜とLaTiO3膜は可視光波長から近赤外光波長において、非常に光吸収が小さく、特に高透過率の求められるARフィルタに最適な誘電体薄膜であるためである。
帯電防止層を形成する含水膜としては、先に挙げたSiO2やMgF2などの多孔質膜に水分を吸着させたものを任意に選択して使用できる。更に、含水膜の直下に隣接して、透明導電膜を形成することで、さらなる帯電防止効果を得ることが出来る。
また、水蒸気バリア膜を誘電体薄膜積層体と帯電防止層との間に配置してもよい。誘電体薄膜積層体と帯電防止層、水蒸気バリア膜等を総合して、所望の分光特性となるように膜設計を行えばよい。
≪UVカットフィルタ≫
UVカットフィルタは図5に示すように、可視光波長よりも短い光波長の透過を遮蔽するフィルタであり、主に誘電体薄膜積層体により、遮蔽光波長領域の光を反射させ、不透過とする。
UVカットフィルタは図5に示すように、可視光波長よりも短い光波長の透過を遮蔽するフィルタであり、主に誘電体薄膜積層体により、遮蔽光波長領域の光を反射させ、不透過とする。
誘電体薄膜積層体は、遮蔽領域の中心波長をλとしたとき、誘電体薄膜の光学膜厚がλ/4程度ずつ、具体的には0.7〜1.3λ/4程度の薄膜を積層した構成を基本構成としている。但し、透過帯域のリップルを低減するためにλ/4から大きく離れた層を有していても良い。
UVカットフィルタを構成する誘電体薄膜積層体は、先に挙げた任意の誘電体薄膜を適宜選択可能であるが、特にSiO2膜とTiO2膜とからなることが好ましい。SiO2膜とTiO2膜の組み合わせは、実質的に屈折率差の最も大きい組み合わせの一つであり、所望の光学特性を得るために必要となる薄膜の積層数を少なくできるためである。
帯電防止層を形成する含水膜としては、先に挙げたSiO2やMgF2などの多孔質膜に水分を吸着させたものを任意に選択して使用できる。更に、含水膜の直下に隣接して、透明導電膜を形成することで、さらなる帯電防止効果を得ることが出来る。
また、水蒸気バリア膜を誘電体薄膜積層体と帯電防止層との間に配置してもよい。誘電体薄膜積層体と帯電防止層、水蒸気バリア膜等を総合して、所望の分光特性となるように膜設計を行えばよい。
≪IRカットフィルタ≫
IRカットフィルタは図6に示すように、近赤外光波長の光を遮蔽するフィルタである。
IRカットフィルタは図6に示すように、近赤外光波長の光を遮蔽するフィルタである。
誘電体薄膜積層体は、遮蔽領域の中心波長をλとしたとき、誘電体薄膜の光学膜厚がλ/4程度ずつ、具体的には0.7〜1.3λ/4程度の薄膜を積層した構成を基本構成としている。但し、透過帯域のリップルを低減するためにλ/4から大きく離れた層を有していても良い。
IRカット機能を有する誘電体薄膜積層体は、所望の分光を得るために特に積層数を多く必要とする。このため、基板に合成樹脂基板や薄い基板を用いる場合には、膜応力などによるフィルタの変形を抑制するために、図7に示すように基板の両面に誘電体薄膜積層体を形成することが好ましい。
この際、図8に示すような分光特性を有する誘電体薄膜積層体を、基板の両面に形成することができる。誘電体薄膜積層体A2′と誘電体薄膜積層体B2′′は遮蔽する近赤外波長領域が異なり、遮蔽領域の一部が重なるようになっている。遮蔽領域を一部重なるようにすることで、生産バラつきなどにより、誘電体薄膜積層体の分光特性が多少変化しても、近赤外遮蔽領域における遮蔽機能を維持可能となる。
更に、基板として、合成樹脂基板を用いる場合は、成膜時に発生する熱による基板の変形を抑制するために、冷却機構を有する成膜装置を用いることが有効である。IRカットフィルタは前述のように積層数が多く、成膜時には、電子銃から発生される電子ビームにより加熱された蒸着材料の輻射熱によって、フィルタの温度が向上し、熱変形等を起こす虞があるためである。
また、基材として銅イオンなどの光吸収特性を利用した、図9に示すような光学特性を有する赤外吸収基板を用いることもできる。赤外吸収基板を用いる場合は、誘電体薄膜積層体によって光波長600〜750nmの間に形成される、光透過帯域から光不透過帯域へと遷移する透過不透過遷移波長領域内に存在する透過率と反射率が略50%となる波長が、赤外吸収基板の光波長600〜750nmの間に存在する透過率が略50%となる波長よりも長波長側にあることが好ましい。赤外吸収基板に比べ、誘電体薄膜積層体の方が製造プロセスや経時変化による光学特性のバラつきが大きくなりやすい。IRカットフィルタは、そのカット特性を透過率が50%となる波長(以下IR半値波長)で管理するが、IR半値波長を赤外吸収基板によって略決定することで、IR半値波長のバラつきの小さいIRカットフィルタとすることができる。
また、更に紫外線を遮蔽する誘電体薄膜積層体を形成して、UV−IRカットフィルタとすることもできる。このような構成とすることで、1枚のフィルタでUVカット機能とIRカット機能とを実現することが可能となり、撮像光学系の小型化に貢献することができる。
IRカットフィルタを構成する誘電体薄膜積層体は、先に挙げた任意の誘電体薄膜を適宜選択可能であるが、特にSiO2膜とTiO2膜とからなることが好ましい。SiO2膜とTiO2膜の組み合わせは、実質的に屈折率差の最も大きい組み合わせの一つであり、所望の光学特性を得るために必要となる薄膜の積層数を少なくできるためである。
帯電防止層を形成する含水膜としては、先に挙げたSiO2やMgF2などの多孔質膜に水分を吸着させたものを任意に選択して使用できる。更に、含水膜の直下に隣接して、透明導電膜を形成することで、さらなる帯電防止効果を得ることが出来る。
また、水蒸気バリア膜を誘電体薄膜積層体と帯電防止層との間に配置してもよい。誘電体薄膜積層体と帯電防止層、水蒸気バリア膜等を総合して、所望の分光特性となるように膜設計を行えばよい。
ところで、IRカットフィルタの誘電体薄膜積層体によって光波長600〜750nmの間に形成される光透過帯域から光不透過帯域へと遷移する透過不透過遷移波長領域はゴースト強度が強くなる。
ゴースト光について、誘電体薄膜積層体の透過率と反射率が略50%となる波長で説明する。この波長において、被写体方向からIRカットフィルタに入射した光のうち、誘電体薄膜積層体により50%が透過させられる。IRカットフィルタを透過した光は、撮像素子表面などによってその一部が反射され、再びIRカットフィルタに到達する。
IRカットフィルタに再度到達した光はIRカットフィルタによりその50%が撮像素子側へと反射される。このIRカットフィルタと撮像素子との間で繰り返される多重反射がゴースト光となる。すなわち、IRカットフィルタの透過率と反射率の積が大きくなる誘電体薄膜積層体の透過不透過遷移波長領域でゴーストが発生しやすい。
簡易的にゴースト強度は、(IRカットフィルタの透過率)×(IRカットフィルタの反射率)×(撮像素子の感度)で表される。一般的に、監視カメラなどで使用される撮像素子の感度は図10のように光波長600〜750nmにおいて比較的強い感度を持っているため、この領域におけるゴーストが特に目立ってしまう。
基板として誘電体薄膜積層体の光波長600〜750nmの間に形成される透過不透過遷移波長領域に光吸収特性を有する赤外吸収基板を用いることで、IRカットフィルタに起因するゴーストを低減することができる。
赤外吸収基板は光波長600〜750nmの領域に光吸収性を有しており、誘電体薄膜積層体の光波長600〜750nmの間に形成される透過不透過遷移波長領域において、IRカットフィルタの透過率と反射率の積を小さくできるためである。
なお、赤外吸収基板を用いたIRカットフィルタを撮像光学系に搭載する際は、光波長600〜750nmの間に形成される透過不透過遷移波長領域を形成する誘電体薄膜積層体と撮像素子との間に赤外吸収基板が配置されるように搭載することが望ましい。
このような配置にすることで、IRカットフィルタを透過し、撮像素子表面などで反射された光が、再びIRカットフィルタに入射した際に、光波長600〜750nmの間に形成される透過不透過遷移波長領域を形成する誘電体薄膜積層体によって反射される前に赤外吸収基板を通ることで減衰される。
また、再度、光波長600〜750nmの間に形成される透過不透過遷移波長領域を形成する誘電体薄膜積層体によって光が反射されても、撮像素子に入射するまでの間に、再び赤外吸収基板を通ることでその強度が減衰される。よって、このような配置にすることで、効果的にゴースト強度を低減することができる。
本発明の光学フィルタを搭載した撮像光学系について説明する。
図11は本発明に係る撮像光学系を示した図である。入射光はレンズ11、16〜18、絞り羽根12a、12bやNDフィルタ13、光学フィルタ14等から形成される光量調整装置21を通り、CCDやCMOSセンサから成る撮像素子19へと入射して電気信号に変換され映像化される。
絞り羽根12a、12bの位置情報は光量制御部20へと伝達され、光量制御部20は撮像素子19からの光量情報と絞り羽根12a、12bの位置情報から最適な開口となるように絞り羽根12a、12bを駆動させる。
光学フィルタ14には、例えば本実施形態で作製した光学フィルタが挿入され、光学フィルタ14は撮像素子19に入射する光量によって光学フィルタ14を自由に駆動させる光学フィルタ駆動部15によって、光路へ進退させられる。
光学フィルタ14に本発明に関わるIRカットフィルタを配置した構成を説明する。昼間のように可視光波長の光量が十分の時、撮影は、可視光波長を利用して行われる。
この際、撮像素子19の持つ感度特製のうち、近赤外光波長の感度は不必要であり、この領域の光が撮像素子19に入射すると、実際に人の目で感じる色味とは異なる色彩となってしまう。そこで、IRカットフィルタを光路上に挿入し、近赤外光波長の光を遮蔽し、撮像素子に近赤外光波長の光が入射しないようにする。
一方、夜のように、可視光波長の光量が不十分の時は、近赤外光波長領域を利用した撮影が行われる。この場合、IRカットフィルタは光路から退避させられる。この時、近赤外光波長の光を透過させる光学フィルタをIRカットフィルタの代わりに光路に配置してもよい。
このような光学フィルタを配置することで、IRカットフィルタの有無による光路差の変化を低減することができる。なお、近赤外光波長の光を透過させる光学フィルタの基板の厚みはIRカットフィルタの基板の厚みと略同等であることが好ましい。
更に、光学フィルタ14の帯電防止層を有する面が、撮像素子側に向けられていることが好ましい。撮像光学系では、撮像素子19に近づくにつれ、画像に影響を与える異物の大きさが小さくなる。光学フィルタ14の帯電防止層を有する面、すなわち帯電による異物の付着しにくい面を撮像素子側に向けることで、効果的に異物付着による画質の低下を防止することが出来る。
本実施形態では、光学フィルタとしてIRカットフィルタを使用した構成で説明したが、光学フィルタとしてはIRカットフィルタに限らず、本発明に関わる光学フィルタ、例えばARフィルタやUVカットフィルタなどの光学フィルタを用いることが出来る。この場合、光学フィルタの特性と撮影条件とから、光学フィルタの光路への進退を決定することが出来る。
以下に、本発明に関わる光学フィルタの実施例について説明する。但し、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、更に誘電体薄膜積層体上に多孔質SiO2膜を形成し、IRカットフィルタとした。これを、高温高湿槽(60℃90%)に24時間放置し、多孔質SiO2膜に水分を吸着させ、含水膜とした。
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、更に誘電体薄膜積層体上に多孔質SiO2膜を形成し、IRカットフィルタとした。これを、高温高湿槽(60℃90%)に24時間放置し、多孔質SiO2膜に水分を吸着させ、含水膜とした。
以下に、各膜の成膜条件を示す。
<SiO2膜>
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:1.0×10−3〜1.0×10−4Pa(ガス導入なし)
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:1.0×10−3〜1.0×10−4Pa(ガス導入なし)
<TiO2膜>
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:5.0×10−3Pa(O2ガス導入)
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:5.0×10−3Pa(O2ガス導入)
<多孔質SiO2膜>
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:5.0×10−3Pa(O2ガス導入)
成膜温度 :150℃
成膜レート:3Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:5.0×10−3Pa(O2ガス導入)
(実施例2)
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成した。誘電体薄膜積層体上に透明導電膜であるITO膜、多孔質SiO2膜をこの順で成膜し、IRカットフィルタとした。これを高温高湿槽(60℃90%)に24時間放置し、多孔質SiO2膜に水分を吸着させ、含水膜とした。なお、ITO膜の膜厚は300Å程度としている。
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成した。誘電体薄膜積層体上に透明導電膜であるITO膜、多孔質SiO2膜をこの順で成膜し、IRカットフィルタとした。これを高温高湿槽(60℃90%)に24時間放置し、多孔質SiO2膜に水分を吸着させ、含水膜とした。なお、ITO膜の膜厚は300Å程度としている。
以下に、ITO膜の成膜条件を示す。尚、ITO膜以外の成膜条件は実施例1と同様である。
<ITO膜>
成膜温度 :150℃
成膜レート:2Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:3.0×10−3Pa(O2ガス導入)
成膜温度 :150℃
成膜レート:2Å/sec
加速電圧 :6kV
成膜時圧力:3.0×10−3Pa(O2ガス導入)
(比較例1)
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、更に誘電体薄膜積層体上に多孔質SiO2膜を形成し、IRカットフィルタを作製した。SiO2膜とTiO2膜、多孔質SiO2膜の成膜条件は実施例1と同様の条件で成膜した。
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、更に誘電体薄膜積層体上に多孔質SiO2膜を形成し、IRカットフィルタを作製した。SiO2膜とTiO2膜、多孔質SiO2膜の成膜条件は実施例1と同様の条件で成膜した。
(比較例2)
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、表層がSiO2膜である、IRカットフィルタを作製した。各膜の成膜条件は実施例1と同様である。
ガラス基板上に、SiO2膜とTiO2膜とを交互に積層した誘電体薄膜積層体を形成し、表層がSiO2膜である、IRカットフィルタを作製した。各膜の成膜条件は実施例1と同様である。
≪帯電性の評価≫
実施例1、2、比較例1,2の光学フィルタの帯電性評価として、光学フィルタの表面抵抗(Ω/□)の測定、関東ローム層粉体を用いた粉体付着評価を行った。各測定・評価について説明する。
実施例1、2、比較例1,2の光学フィルタの帯電性評価として、光学フィルタの表面抵抗(Ω/□)の測定、関東ローム層粉体を用いた粉体付着評価を行った。各測定・評価について説明する。
(表面抵抗の測定)
光学フィルタの表面抵抗を測定した。表面抵抗の測定には、Hiresta−UX MCP−HT8000(三菱化学アナリテック社製)を用いた。測定条件は、印過電圧1000V、測定時間30秒である。尚、測定環境は温度25℃、湿度55%である。
光学フィルタの表面抵抗を測定した。表面抵抗の測定には、Hiresta−UX MCP−HT8000(三菱化学アナリテック社製)を用いた。測定条件は、印過電圧1000V、測定時間30秒である。尚、測定環境は温度25℃、湿度55%である。
帯電防止機能としては、表面抵抗の値が小さい方がよい。一般的に、静電気を除去するのには、1010Ω/□台程度以下の表面抵抗である必要がある。
(粉体付着評価)
実施例1,2、比較例1,2で作製した光学フィルタをベンコットでこすり、表面電位が2000V程度となるように帯電させた後、関東ローム層粉体に近づけ、光学フィルタに付着した関東ローム層粉体の付着の有無を評価した。関東ローム層粉体と光学フィルタとの距離は1mmとしている。
実施例1,2、比較例1,2で作製した光学フィルタをベンコットでこすり、表面電位が2000V程度となるように帯電させた後、関東ローム層粉体に近づけ、光学フィルタに付着した関東ローム層粉体の付着の有無を評価した。関東ローム層粉体と光学フィルタとの距離は1mmとしている。
なお、関東ローム層粉体はJIS試験粉体7種、8種を使用した。7種、8種はそれぞれ、中位径21〜31μm、6.6〜8.6μmである。また、評価環境は温度25℃、湿度55%である。
画素数にもよるが、一般に撮像光学系に搭載される光学フィルタにおいて、異物が20μmよりも大きいと異物により画素がつぶれてしまう虞がある。すなわち、20μmより大きい異物が付着しないように帯電防止機能を持たせる必要がある。
表1は、光学フィルタの表面抵抗(Ω/□)の測定、関東ローム層粉体を用いた粉体付着評価の結果をまとめた表である。尚、関東ローム層粉体を用いた粉体付着評価では、関東ローム層粉体の付着が全くないものを○、1〜5個付着したものを△、6個以上付着したものを×としている。
表1より、実施例1、2では表面抵抗率がそれぞれ5.88×1010Ω/□、1.94×108Ω/□となっており、帯電防止機能として良好な値が得られていることがわかる。一方、比較例1、2では表面抵抗率がそれぞれ1.87×1012Ω/□、6.08×1013Ω/□であり、十分な帯電防止機能が得られていない。
また、関東ローム層粉体を用いた粉体付着評価では、実施例1では関東ローム層JIS試験粉体8種で、やや付着が確認されたものの、光学撮像系用途においては、実質的に問題にならない粉体の大きさである。
実施例2では関東ローム層JIS試験粉体7種、8種ともに粉体の付着が確認できず、非常に良好な結果となっている。
比較例1,2では関東ローム層JIS試験粉体7種の付着が発生してしまっており、撮像光学系に搭載した際には、画素を潰してしまう虞があり、帯電防止機能としては不十分であることが確認できた。
以上より、実施例1,2で示したような本発明に関わる光学フィルタは、従来の光学フィルタと比較し、帯電による異物付着をより低減することができる。
また、本発明に関わる光学フィルタを搭載した撮像光学系は、従来よりも異物による画質劣化を抑制した撮像光学系とすることができる。すなわち、本発明に関わる撮像光学系を有する撮像装置によれば、従来以上に異物による画質劣化の少ない映像を得ることができる。
1 基材
2 誘電体薄膜積層体
2′ 誘電体薄膜積層体A
2′′ 誘電体薄膜積層体B
3 帯電防止層
4 含水膜
5 透明導電膜
6 水蒸気バリア膜
2 誘電体薄膜積層体
2′ 誘電体薄膜積層体A
2′′ 誘電体薄膜積層体B
3 帯電防止層
4 含水膜
5 透明導電膜
6 水蒸気バリア膜
Claims (8)
- 基板上に屈折率の異なる誘電体薄膜を積層した誘電体薄膜積層体が設けられたフィルタ基材と、
前記フィルタ基材の前記誘電体薄膜積層体上に設けられたフィルタ最上層となる帯電防止層と、を備え、
前記帯電防止層の少なくとも最表層は、多孔質の層構造内に水分を担持した含水膜から形成され、
前記含水膜内の水分は、外気との間で出入りが可能であることを特徴とする光学フィルタ。 - 前記含水層と隣接して透明導電膜が形成されていることを特徴とした請求項1に記載の光学フィルタ。
- 前記含水層が、SiO2またはMgF2により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
- 前記透明基板と前記含水層との間に水蒸気バリア膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
- 前記水蒸気バリア膜が、Al2O3、Si3N4、SiOxNyからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
- 前記光学フィルタが、ARフィルタ、UVカットフィルタ、IRカットフィルタのいずれかのフィルタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルタを、絞り羽根が形成する絞り開口を通過する光路に配置したことを特徴とする光量調整装置。
- 請求項7に記載の光量調整装置を有することを特徴とする撮像装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017083479A JP2018180429A (ja) | 2017-04-20 | 2017-04-20 | 光学フィルタ及び光量調整装置並びに撮像装置 |
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JP7415949B2 (ja) | 2018-12-21 | 2024-01-17 | コニカミノルタ株式会社 | 誘電体膜、その製造方法及びそれを用いた光学部材 |
-
2017
- 2017-04-20 JP JP2017083479A patent/JP2018180429A/ja active Pending
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