<本発明の表面検査装置について>
図1Aおよび図1Bは、被検査体5の周表面5aを検査する表面検査装置1の構成を示した概略図である。被検査体5は、例えば鉄や鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、それらの合金等でなり、外径が20〜450[mm]、長手方向に延びる軸方向xの長さが1000〜15000[mm]で円柱状または円筒状に形成されている。被検査体5は、回転機構7によりその場で周方向Cに回転され、表面検査装置1により全周全長に亘って周表面5aが検査される。なお、図1Aおよび図1Bでは、被検査体5の軸方向xと直交する高さ方向をzとし、軸方向xおよび高さ方向zに直交する幅方向をyとする。
この実施形態の場合、回転機構7には、一対のターニングローラ7a,7bが複数設けられており、各一対のターニングローラ7a,7b間に被検査体5が配置される。これにより、各一対のターニングローラ7a,7bの表面には、被検査体5の周表面5aが当接する。回転機構7は、一対のターニングローラ7a,7bが同じ方向(例えば、時計回り方向)に回転することで、被検査体5の周表面5aに一方向の回転力を与え、被検査体5を一方向(例えば、逆時計回り方向)に回転させる。この場合、回転機構7は、例えば被検査体5を回転周波数0.5[Hz]で回転させる。
表面検査装置1は、回転する被検査体5の周表面5a上に配置される抑え機構2と、画像処理部3と、駆動部4とを備えている。抑え機構2は、被検査体5の周表面5aに光を照射する光源部11と、光が照射された周表面5aを撮像する撮像部10と、回転する被検査体5の周表面5aに当接させる移動体13と、被検査体5を検知する第1材検センサ12aおよび第2材検センサ12bとが、本体2aに設置されている。本体2aは、撮像部10と光源部11が対向配置された構成を有し、光源部11から発した光を斜め上方から周表面5aに照射し、光が照射された周表面5aを斜め上方から撮像部10により撮像し得る。
この実施形態の場合、撮像部10と光源部11は、図1Aに示すように、撮像部10および光源部11間の中心鉛直線z1上に、被検査体5の軸方向xに延びる中心軸が配置されており、撮像部10の撮像視野中心線z2および中心鉛直線z1間の受光角度θ1と、光源部11の光照射中心線z3および中心鉛直線z1間の投光角度θ2とが同じ角度に設定されている。この場合、受光角度θ1および投光角度θ2は、0度超90度未満、より好ましくは25度以上60度以下であることが望ましく、このような角度に設定することで、後述する疵判定処理において有害疵と無害疵とで輝度分布の相違が明確になり、一段と容易に有害疵の判定を行え得る。
かかる構成に加えて抑え機構2は、例えばボールローラでなる移動体13が本体2aの下端部に設定された構成を有し、回転している被検査体5の周表面5aに移動体13を当接させ得る。移動体13は、回転している被検査体5の周表面5aを抑え、回転の遠心力によって生じる被検査体5の歪みや曲がり等による周表面5aの位置ズレを防止し得る。なお、この実施形態の場合、抑え機構2は、自重により被検査体5の周表面5aに移動体13を押し付け、被検査体5を抑えている。ただし、その他の抑え機構2としては、例えば、押圧機構から与えられる外力によって、移動体13を被検査体5に押し付け、周表面5aを抑えるようにしてもよい。
かくして、抑え機構2は、本体2aの移動体13により周表面5aを抑えつつ、同じく本体2aに設けられた撮像部10により当該周表面5aを撮像し得る。ここで、本体2aには、四辺の角部に移動体13がそれぞれ配置されており、複数の移動体13で囲まれた領域内に撮像部10および光源部11が設置されている。これにより、撮像部10は、移動体13により四隅が抑えられている領域内を撮像し得、撮像部10に対して位置ズレが防止された周表面5aを確実に、かつ安定して撮像し得る。
また、撮像部10は、移動体13を介して周表面5aに当接する本体2aに設置されていることから、周表面5aまでの撮像距離や、周表面5aに対する撮像視野が常に一定となり、最適な状態で周表面5aを撮像し続けることができる。なお、撮像部10は、抑え機構2の本体2aに上下移動機構(図示せず)を介在して設けられており、当該上下移動機構によって本体2aにおいて高さ方向zに移動し得、必要に応じて撮像距離を調整し得る。また、光源部11も、移動体13を介して周表面5aに当接する本体2aに設置されていることから、周表面5aまでの光照射距離や、周表面5aに対する光照射角度が常に一定となり、撮像に最適な光を常に周表面5aに照射し続けることができる。
抑え機構2は、回転している被検査体5の周表面5aを移動体13により抑えたまま、回転している被検査体5の軸方向xに沿って移動され得る。この実施形態の場合、抑え機構2には、駆動部4が接続されており、当該駆動部4により軸方向xに移動され得る。これにより撮像部10は、回転する被検査体5の周表面5aをスパイラル状に撮像してゆき、得られた画像を画像処理部3に送出する。画像処理部3は、撮像部10から受け取った画像に対して、後述する画像補正処理および疵判定処理を実行し得る。
なお、撮像部10の一例としては、例えば撮影視野28.672[mm]、撮影距離17[mm]、被写体深度0.5[mm]のモノクロラインカメラ(2048[bits]、画素サイズ14×14[μm]、セルフォックレンズ構造の正立等倍撮影)を用いることができる。また、撮影条件の一例としては、スキャン速度3590[Hz]、撮像部10の軸方向xへの走査速度13[mm/sec]とすることができる。
ここで、本体2aには、第1材検センサ12aおよび第2材検センサ12bが被検査体5の軸方向xに沿って設けられており、これら第1材検センサ12aおよび第2材検センサ12b間に撮像部10および光源部11が配置されている。抑え機構2は、回転している被検査体5の周表面5aに移動体13を押し付けて軸方向xに沿って移動する際、図1Bとの対応部分に同一符号を付して示す図2Aのように、被検査体5の一方の端部(以下、始端と呼ぶ)5bを第1材検センサ12aにより検知し得る。撮像部10は、第1材検センサ12aにおける始端5bの検知結果に応じて撮像を開始し、被検査体5の始端5bから周表面5aを撮像し得る。
この場合、第1材検センサ12aは、撮像部10の撮像視野x1内に周表面5aが入る前に、被検査体5の始端5bを検知し得る位置に設けられている。これにより、撮像部10は、第1材検センサ12aの検知結果に基づいて、被検査体5の始端5bから周表面5aを確実に撮像し得る。なお、光源部11の光照射範囲x2は、撮像部10の撮像視野x1よりも広く、第1材検センサ12aの検知位置まで光が照射されるように設定されている。
より具体的には、撮像部10による撮影範囲内での輝度ムラを抑制するため、例えば28〜29[mm]の撮像視野x1に対して、光源部11の光照射範囲x2が撮像視野x1よりも両端50[mm]程長く設定される。なお、光源部11の一例としては、例えば、棒状照明であるLEDライン照明を用いることができ、光源が配置された長手方向を被検査体5の軸方向xと平行に配置し、さらにロッドレンズ、拡散フィルムにより、周表面5aに対し直線状に均一に集光させる。
抑え機構2は、被検査体5の軸方向xに沿って進み、第2材検センサ12bが被検査体5の始端5bを通過した後、図1Bとの対応部分に同一符号を付して示す図2Bのように、第2材検センサ12bにより被検査体5の他方の端部(以下、終端と呼ぶ)5cを検知し得る。撮像部10は、第2材検センサ12bにおける終端5cの検知結果に応じて撮像を終了し、被検査体5の始端5bから終端5cまで全長全周の周表面5aを撮像し得る。この場合、第2材検センサ12bは、撮像部10の撮像視野x1から周表面5aが外れた後に、被検査体5の終端5cを検知し得る位置に設けられている。これにより、撮像部10は、第2材検センサ12bの検知結果に基づいて、被検査体5の終端5cまで周表面5aを確実に撮像し得る。
因みに、図1Aとの対応部分に同一符号を付して示す図3Aと、図1Bとの対応部分に同一符号を付して示す図3Bのように、表面検査装置1には、材径追従機構15が設けられている。材径追従機構15は、被検査体5とは径が異なる他の被検査体6が、回転機構7に設置されても、当該被検査体6の径に合わせて抑え機構2を高さ方向zに移動し、径が異なる他の被検査体6の周表面6a上に抑え機構2を設置し得る。
<画像処理部の構成について>
次に、画像処理部3について以下説明する。図4に示すように、画像処理部3は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータ構成の制御部21と、画像取得部22と、センサ情報取得部23と、撮像指示部24と、記憶部25と、疵候補検出部26と、画像補正部27と、表示部28と、疵判定部29(後述する)と、がバス36を介して相互に接続された構成を有する。
制御部21は、図示しない操作部を介して、作業者から各種操作命令が与えられると、ROMに予め格納している画像補正処理プログラムや、疵判定処理プログラム等を、操作命令に基づき適宜読み出してRAMに展開することにより、画像補正処理プログラムや疵判定処理プログラム等に従って各回路部を制御する。制御部21は、各種プログラムの実行結果を表示部28に表示し、例えば、表示部28を介して、被検査体5における周表面5aの検査結果を作業者に把握させ得る。
ここで、画像取得部22は、撮像部10(図1Aおよび図1B)に接続されており、当該撮像部10から画像を取得する。センサ情報取得部23は、第1材検センサ12aおよび第2材検センサ12bに接続され、撮像指示部24は、撮像部10に接続されている。撮像指示部24は、被検査体5の始端5bの検知結果をセンサ情報取得部23が第1材検センサ12aから受け取ると、これに応じて撮像開示指示を撮像部10に送出し、撮像部10による撮像を開始させ得る。撮像指示部24は、被検査体5の終端5cの検知結果をセンサ情報取得部23が第2材検センサ12bから受け取ると、これに応じて撮像終了指示を撮像部10に送出し、撮像部10による撮像を終了させ得る。
疵候補検出部26は、例えば、被検査体5の1回転毎に撮像部10から取得した画像毎に輝度分布を測定してゆき、当該輝度分布の変化状態から疵と推測される疵候補を検出し得る。ここで、撮像部10は、図5に示すように、被検査体5の周表面5aを撮像してゆく際、1回転毎に1つの画像を順次取得してゆき、周表面5aの全長全周を複数の画像に区分けして撮像してゆく。このようにして、撮像部10は、被検査体5の始端5bから終端5cまで1回転する毎に得られた画像を画像処理部3に順次送出する。なお、この場合、撮像部10は、回転する被検査体5の周表面5aを軸方向xに移動しながら撮像してゆき、周表面5aをスパイラル状に撮像してゆくため、周表面5aの斜め方向の画像を取得する。
図6に示すように、例えば被検査体5の周表面5aの所定位置に疵41a,41bがある場合には、回転する被検査体5の軸方向xに沿って撮像部10が移動してゆき、撮像部10によって、撮像視野x1で1回転毎に1つの画像を取得してゆくことで、所定タイミングで得られた画像内に疵41a,41bが写される。ここで、1回転毎に1つの画像を順次取得してゆくことから、被検査体5の軸方向xにおける周表面5aの画像の連続性が欠如してしまう。加えて、被検査体5を回転させつつ、撮像部10を被検査体5の軸方向xに走査することから、撮像部10で撮像される周表面5aの画像にもズレが生じる恐れがある。
そして、このように被検査体5の周方向C及び軸方向xにおいて画像の連続性が欠如している状態において、例えば時系列順に取得した画像間に周表面5aの疵41bがあると、時系列順に並ぶ2つの画像に亘って疵41bが写されてしまい、疵の過剰検出となる可能性もある。そこで、画像処理部3は、時系列順に取得された2つの画像に亘って疵41bが撮像されても、後述する画像補正処理によって、画像の位置合わせをし、これら画像を時系列順に連結した連続画像を生成する。これにより、画像処理部3は、連続画像によって、疵41bの正確な形状や位置を特定し得るようになされている。
<画像補正処理について>
図7Aは、撮像部10によって、被検査体5の1回転毎に取得していった複数の画像42a,42b,42c,42d,42eを示す。撮像部10は、被検査体5の周表面5aを撮像してゆく際、図7Aに示すように、例えば、一の画像(例えば、被検査体5の2回転目の画像)42b内の縁部分に写された周表面5aを、次の画像(例えば、被検査体5の3回転目の画像)42c内にも写してゆく。これにより、時系列順に取得される、隣接する画像42b,42cには、同じ周表面5aが写るようにしたラップ領域43b,43aが設けられる。
すなわち、図7Aに示すように、例えば一の画像42aには、次の画像42bと隣接する縁部分にラップ領域43bがあり、次の画像42bには、前の画像42aと隣接する縁部分にラップ領域43aがあり、これらラップ領域43a,43bには、ともに同じ周表面5aの領域が写るように、撮像部10により周表面5aが撮像される。疵候補検出部26(図4)は、これら各画像42a,42b,42c,42d,42e毎にそれぞれ輝度分布を測定してゆき、予め記憶部25に記憶していた基準輝度以下の暗い輝度領域が、各画像42a,42b,42c,42d,42e内にあるか否かを判断する。
ここで、被検査体5の周表面5aに疵がある場合、当該疵が写った画像には、一般的に疵部分が暗く写る。疵候補検出部26は、画像内のこのような輝度分布の変化を目安に、画像内において周表面5aの疵を識別することができる。かくして、疵候補検出部26は、疵を示す基準輝度を目安に、画像42a,42b,42c,42d,42e内から、疵と推測される疵候補45a,45b,46a,46bを検出し得る。この際、疵候補検出部26は、例えば、時系列順に並ぶ隣接する画像42b,42c(42c,42d)のラップ領域43b,43a内で、基準輝度以下となる疵候補45a,45b(46a,46b)を検出すると、これらラップ領域43b,43a内にある疵候補45a,45b(46a,46b)の形状や位置を、輝度分布の変化状態から検出する。
画像補正部27は、例えば画像42bにおけるラップ領域43b内の疵候補45aの形状および位置と、この画像42bと隣接する次の画像42cにおける一のラップ領域43a内の疵候補45bの形状および位置とが一致するように、隣接する画像42b,42cをそれぞれ移動し、位置調整する。さらに、この際、画像補正部27は、隣接する画像42b,42cの位置調整だけでなく、さらに、画像42cにおける他のラップ領域43b内の疵候補46aの形状および位置と、この画像42cと他方で隣接する次の画像42dにおけるラップ領域43a内の疵候補46bの形状および位置とについても一致するように、隣接する画像42c,42dを移動し、位置調整する。
これにより、画像補正部27は、これら画像42b,42c(42c,42d)の隣接するラップ領域43b,43a同士を重ねて、図7Bに示すように、1つの統合ラップ領域48を生成する。このようにして画像補正部27は、各ラップ領域43b,43a内の疵候補45a,45b(46a,46b)を合体させた1つの疵候補45(46)を統合ラップ領域48内に生成し、統合ラップ領域48によって画像42a,42b,42c,…が連結した連続画像50aを生成し得る。なお、図7Aでは、ラップ領域43b,43a内の疵候補45a,45b(46a,46b)がズレておらず、隣接する画像42b,42c(42c,42d)同士に位置ズレが生じていないことから、予め設定したラップ領域43b,43aを単に重ねて統合ラップ領域48を形成し、隣接する画像42b,42c(42c,42d)同士を連結するだけで良い。
ここで、図8Aは、隣接する画像42b,42c(42c,42d)間において、周方向Cおよび軸方向xに大きな位置ズレが生じ、これら画像42b,42c(42c,42d)のラップ領域43b,43a内における疵候補51a,51b(52a,52b)の位置や表示形態も大きく異なっているときの一例を示す。このような場合でも、画像補正部27は、上述と同様に、時系列に並ぶ画像42b,42c,42dの各ラップ領域43b,43a内の輝度分布を基に、これらラップ領域43b,43a内の疵候補51a,51b,52a,52bの形状と位置が一致するように、これら画像42b,42c,42dを移動させる。
これにより、画像補正部27は、これら画像42b,42c(42c,42d)の隣接するラップ領域43b,43a同士を重ねて、図8Bに示すように、1つの統合ラップ領域48a(48b)を生成する。このようにして画像補正部27は、各ラップ領域43b,43a内の疵候補51a,51b(52a,52b)を合体させた1つの疵候補51(52)を統合ラップ領域48a(48b)内に生成し、統合ラップ領域48,48a,48bによって画像42a,42b,42c,…が連結した連続画像50bを生成し得る。
なお、統合ラップ領域48aは、隣接する画像42b,42cが周方向C(図8B中、上下方向)に位置調整されつつ、隣接するラップ領域43b,43aが重ねられて形成されたものである。一方、統合ラップ領域48bは、隣接する画像42c,42dが周方向Cだけでなく軸方向x(図8B中、左右方向)にも位置調整されつつ、隣接するラップ領域43b,43aの一部のみが重ねられて形成されたものである。
そして、画像補正部27は、図7Bおよび図8Bに示すような連続画像50a,50bを表示部28に表示させるとともに、疵判定部29において後述する疵判定処理を実行させる。
なお、図7Bおよび図8Bでは、疵候補がない他の画像42a,42eについても、時系列順に画像42a,42b,…を連結して、連続画像50a,50bとしている。但し、ラップ領域43a,43b以外の領域にのみ疵候補を検出した画像(図示せず)や、疵候補がない他の画像42a,42eについては、連続画像を生成することなく、これら画像をそのまま表示部28に表示させ、後述する疵判定処理に移行してもよい。例えば、ラップ領域43b,43a以外の領域にのみ疵候補を検出した画像では、疵の過剰検出の確率も低いため、連続画像を生成しなくても、当該画像内において疵候補を正確に検出できる。
また、図8Bに示すように、統合ラップ領域48a(48b)を生成する過程で、画像42a,42b,42d,42eに比べ、画像42cだけ画像の上下位置がずれてしまうことがある。ここで、疵候補の形状や位置を特定して連続画像を生成する際には、疵候補部分のみを検出できればよい。従って、疵候補のない領域については、疵候補の位置補正する際、データとして不要である。
そこで、画像補正部27は、例えば、画像42cを上下に移動させたことにより生じた凹み領域43cを、画像データとして疵候補のない領域と同じ任意の値で補完し、凹み領域43c部分を画像42a,42b,42d,42eの辺に合わせるようにしてもよい。また、画像補正部27は、例えば、画像42cを上下に移動させたことにより生じた突出領域43dを削除し、突出領域43d部分を画像42a,42b,42d,42eの辺に合わせるようにしてもよい。これにより、画像補正部27は、画像42cを上下に移動させたことによって生じた、画像42a,42b,42d,42eに対する画像42cのズレ部分をなくし、画像42a〜42eの辺を揃え、長方形の一枚の連続画像を生成できる。
<疵判定処理について>
次に疵判定処理について以下説明する。ここで、被検査体5の周表面5aに形成される疵としては、有害疵と無害疵とがある。有害疵とは、被検査体5の圧延時に周表面5aに形成される、まくれ込みによる疵や、内部応力不均一による割れ疵であり、次工程の圧延等の追加加工時や、機械加工時に、強度不足等により割れ疵として残存してしまう疵であり、周表面5aに対する表面手入れ工程が必要となるものである。一方、無害疵とは、単なる凹凸であり、次工程の圧延等の追加加工時や、機械加工時に、修正されて無害化する疵であり、周表面5aに対する表面手入れ工程は不要なものである。
被検査体5の周表面5aに生じる微小な有害疵は、例えば100×100[μm]程度と非常に微小であり、被検査体5の生産時に付与される汚れや、微小な凹凸疵でなる無害疵と非常に酷似する場合がある。有害疵だけでなく無害疵についても過剰検出すると、表面手入れ工程が過多になり、その分、歩留まりが低下するといった問題が生じる。そこで、この疵判定処理では、輝度分布の違いから、有害疵と無害疵とを識別して、有害疵のみを検出し、有害疵に対してのみ表面手入れ工程を実行させ、歩留まり低下を防止し得るようになされている。
この場合、画像処理部3(図4)は、例えば画像内において疵候補が検出されると、疵判定部29により、画像内において検出した疵候補が有害疵か無害疵かを判定する疵判定処理を実行し得る。なお、この実施形態においては、疵候補の補正を行った連続画像を生成した後、この連続画像に対して疵判定処理を実行する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、連続画像を生成することなく、時系列順に並ぶ各画像毎に対して疵判定処理を実行するようにしてもよい。この疵判定処理の説明では、連続画像の他、時系列順に並ぶ各画像毎も含め、単に画像として以下説明する。
疵判定部29は、シェーディング処理部30と、2値化処理部31と、膨張処理部32と、輝度算出部33と、有害疵特定部34とを備えている。ここで、圧延時における、まくれ込みや、内部応力不均一による割れ等に起因した有害疵は、無害疵と比して、内部のメタルフロー(粒子レベルでの向きの違い)等に違いが生じており、その表面性状が、他の周表面5aや無害疵とは異なっていることから、光沢性に違いが生じている。疵判定部29は、このような有害疵の特性を利用して、有害疵と無害疵とを識別し得るようになされている。
ここで、有害疵と無害疵について表面性状の違いについて確認した確認試験について説明する。ここでは有害疵がある円柱状金属材と、無害疵がある円柱状金属材とを用意し、図1に示すような抑え機構2により、円柱状金属材の各周表面をカメラ(撮像部10)により撮像した。撮像部10の受光角度θ1と光源部11の投光角度θ2はそれぞれ45度とした。図9Aは、円柱状金属材の周表面に形成された有害疵56を撮像部10により撮像した写真であり、図9Bは、同じく円柱状金属材の周表面に形成された無害疵55を撮像部10により撮像した写真である。有害疵56または無害疵55に関わらず、正反射光学系による確認試験であるため、凹み部は影として撮影された。図9A内における56aは、有害疵56に形成された凹み部を示す。
図9Aに示す有害疵56部分について縦線α1に沿って輝度分布を調べたところ、図10Aに示すような結果が得られた。また、図9Bに示す無害疵55部分についても縦線α2に沿って輝度分布を調べたところ、図10Bに示すような結果が得られた。これは、被検査体5の表層近傍でメタルフロー等の違いによって、表面性状が、他の周表面5aや無害疵とは異なっているために生じたものである。
図10Aおよび図10Bから、メタルフロー等の違いが生じていた有害疵56では、メタルフロー等の違いが生じていなかった無害疵55に比して、受光強度が高い部位があり、光沢性が上がっていることが確認できた。有害疵56および無害疵55から外れた領域では、輝度分布にバラツキがあるものの、およそ同等と言える。このような輝度分布の違いを利用することで、有害疵56と無害疵55との識別が可能であることが確認できた。
なお、ここでは、有害疵周辺の光沢性が上がる例を用いて説明しているが、本発明は光沢性が上がる場合に限定されるものではない。材料の種類、表面性状により、被検査体5に生じる光沢性は変化するものであるため、光沢性が下がるような場合であっても、同様に、輝度分布の変化により疵判定が可能である。
ここで、被検査体5の周表面5aには、照度が均一なライン照明(光源部11)により光が照射されているが、撮像部10により撮像した周表面5aの画像内には微小な輝度ムラが発生してしまう恐れがある。そこで、疵判定部29では、疵候補について有害疵56または無害疵55の判定を行う際、シェーディング処理部30により、シェーディング処理を実行し、輝度ムラを排除して画像全体が平均的に一様な明るさとなるように補正した画像を生成する。具体的には、例えば撮像部10から得られる画像内の枠周辺部が中心部に比べて暗い等の輝度ムラの特性を予め記憶しておき、シェーディング処理部30によって、この輝度ムラの特性に従ってシェーディング処理を実行し、輝度ムラを排除した画像を生成する。
2値化処理部31は、シェーディング処理を実行した画像に対して、2値化処理を実行し、例えば輝度分布を所定輝度以下(例えば輝度100以下)にした2値化画像を生成する。ここで、図11Aは、有害疵56がある画像に対してシェーディング処理を実行し、輝度ムラが排除された画像61aの概略図を示す。図11Bは、図11Aの画像61aに対して2値化処理した画像(以下、2値化画像とも呼ぶ)61bの概略図を示す。図11Aに示すように、2値化処理前の画像61aでは、周表面5aに形成された、凹み部56aを有する有害疵56が表示されるが、2値化処理した、図11Bの画像61bでは、有害疵56における輝度ムラが緩和され、輝度分布差が特に大きい凹み部56aが疵部57として明確に表示される。
なお、図11Cは、無害疵55しかない画像に対してシェーディング処理を実行し、輝度ムラを排除した画像61cを示す。図11Dは、図11Cの画像61cに対して2値化処理した画像(以下、2値化画像とも呼ぶ)61dを示す。図11Dに示すように、無害疵55でも、凹凸により輝度分布差が特に大きい箇所が疵部57として表示される。
膨張処理部32は、図11Bおよび図11Dに示すように、2値化画像61b,61d内の輝度分布を基に、例えば所定基準輝度以下で表示された疵部57を特定し、図12に示すように、当該疵部57に対応する領域を疵部領域ER2として規定する。
膨張処理部32は、2値化画像61b,61d内から見つけた疵部領域ER2を抽出し、当該疵部領域ER2に対し、公知の膨張処理を用いる。ここでは、膨張処理の一例として、疵部領域ER2を構成する注目画素の周辺画素(周辺1画素等)を、注目画素に置き換える処理を実行する。この場合、膨張処理部32は、例えば、2回膨張処理を実行して、疵部領域ER2を膨張させた疵部膨張領域ER1を生成する。輝度算出部33は、膨張処理部32で膨張させた領域内の輝度を算出することで、有害疵56による輝度上昇分を捕らえることができる。
この場合、輝度算出部33は、内部に設けられた周辺領域抽出部(図示せず)によって、図12に示すように、疵部膨張領域ER1から、膨張処理前の疵部領域ER2を削除して、周囲領域ER3を抽出する。輝度算出部33は、疵部領域ER2の平均輝度(以下、疵部平均輝度と呼ぶ)と、周囲領域ER3の平均輝度(以下、周囲平均輝度と呼ぶ)と、を算出する。
例えば、上述した図9Aおよび図9Bを用いて確認試験を行ったところ、図13に示すように、有害疵56では、疵部平均輝度が42.6、周囲平均輝度が200.6となり、無害疵55では、疵部平均輝度が49.5、周囲平均輝度が116.5となることを確認した。また、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)は、有害疵で4.71、無害疵で2.35となった。このように、有害疵56では、周囲平均輝度や、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)がそれぞれ無害疵55よりも高くなる。
有害疵特定部34は、このような周囲平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)を、輝度算出部33により算出し、得られた算出結果から、疵部57が有害疵56であるか否かを判定し得る。具体的には、有害疵特定部34は、有害疵56であるとの判定が得られる、周辺平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)の閾値(輝度)を、予め記憶しておく。これにより、有害疵特定部34は、輝度算出部33で算出した、周辺平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)の算出結果を、予め記憶しておいた所定の閾値と照らし合わせることで、疵部57が有害疵56であるか否かを判定し得る。
例えば、周辺平均輝度が無害疵55よりも高い傾向にある有害疵56の有無を判断する場合には、輝度算出部33で求めた周辺平均輝度が、有害疵56を示す所定の閾値を超えると、疵部領域ER2が有害疵56であると判断される。一方、周辺平均輝度が無害疵55よりも低い傾向にある有害疵56の有無を判断する場合には、輝度算出部33で求めた周辺平均輝度が、閾値未満であると、疵部領域ER2が有害疵56であると判断される。
また、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が無害疵55よりも高い傾向にある有害疵56の有無を判断する場合には、輝度算出部33で求めた周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が、有害疵56を示す所定の閾値を超えると、疵部領域ER2が有害疵56であると判断される。一方、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が無害疵55よりも低い傾向にある有害疵56の有無を判断する場合には、輝度算出部33で求めた周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が、閾値未満であると、疵部領域ER2が有害疵56であると判断される。
<有害疵の輝度分布について>
次に、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2とを変えてゆき、有害疵56の輝度分布がどのように変化するかについて調べた結果について以下説明する。ここでは、図1に示すように、抑え機構2に設置された撮像部10により、円柱状金属材の周表面5aに形成された有害疵56を撮像した。この際、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2とを、25度、35度、45度、60度に変えて、撮像部10によりそれぞれ得られた画像内の輝度分布について調べたところ、図14に示すような結果が得られた。
図14から、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2は、角度を大きくするに従って輝度分布の輝度0のピーク周辺における変化が大きくなることが確認できた。また、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2とを、25度、35度、45度、60度と変えてゆき、それぞれ得られた画像毎に、シェーディング処理、2値化処理、および2回の膨張処理を実行した後、周囲平均輝度(疵部膨張領域ER1のうち疵部領域ER2を取り除いた残りの周囲領域)を調べたところ、図15に示すような結果が得られた。図15から、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2(図15中、投光受光角度)を大きくするに従って、周囲平均輝度が次第に高くなることが確認できた。
以上より、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2が大きくなるに従って、有害疵部分の輝度分布でのバラツキが比較的大きく、輝度も高くなってゆき、有害疵56の判定がし易いことが確認できた。なお、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2は、0度とすると、有害疵部を影として撮影することができないため、有害疵56の撮像が難しく、また、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2は、90度とすると、投光された光を被検査体5の周表面5aに照射することなく受光するため、有害疵56の撮像が難しくなる。よって、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2は、0度超90度未満であることが望ましい。
<表面検査手順>
次に、上述した被検査体5の表面検査手順について、図16に示すフローチャートを用いて以下簡単に説明する。図16に示すように、回転機構7に被検査体5が設置されると、開始ステップRT1から表面検査手順を開始し、次のステップSP1に移る。ステップ1において、材径追従機構15は、抑え機構2の移動体13が被検査体5の周表面5aに当接するように、当該抑え機構2を被検査体5上に設置し、次のステップSP2に移る。
ステップSP2において、回転機構7は、その場で中心軸を中心に被検査体5を周方向Cに回転させ、次のステップSP3に移る。ステップ3において、駆動部4は、移動体13を周表面5aに当接させた状態のまま、回転する被検査体5の軸方向xに抑え機構2を移動させ、次のステップSP4に移る。ステップSP4において、画像処理部3は、第1材検センサ12aにより、被検査体5の始端5bを検知したか否かを判断する。ここで、否定結果が得られると、このことは第1材検センサ12aが、被検査体5の始端5bに未だ到達しておらず、始端5bを検知していないことを表しており、このときステップ4において肯定結果が得られるまで待ち受ける。
これに対して、ステップSP4において肯定結果が得られると、このことは、第1材検センサ12aが被検査体5の始端5bに到達して始端5bを検知したことを表しており、このとき画像処理部3は、次のステップSP5に移る。ステップSP5において、撮像部10は、周表面5aの撮像を開始し、次のステップ6に移る。ステップSP6において、画像処理部3は、第2材検センサ12bにより、被検査体5の終端5cを検知したか否かを判断する。ここで、否定結果が得られると、このことは第2材検センサ12bが、被検査体5の終端5cに未だ到達しておらず、終端5cを検知していないことを表しており、このときステップ6において肯定結果が得られるまで待ち受ける。
これに対して、ステップSP6において肯定結果が得られると、このことは、第2材検センサ12bが被検査体5の終端5cに到達して、終端5cを検知したことを表しており、このとき画像処理部3は、次のステップSP7に移る。ステップSP7において、撮像部10は、周表面5aの撮像を終了し、次のサブルーチンSRT1に移る。サブルーチンSRT1において、画像処理部3は、画像補正処理を実行して、被検査体5の1回転毎に取得した画像を時系列順に連結して連続画像を生成し、次のサブルーチンSRT2に移る。サブルーチンSRT2において、画像処理部3は、疵判定処理を実行して、周表面5aに有害疵56があるか否かの判定を行い、次のステップSP8に移り、上述した表面検査手順を終了する。
ここで、画像補正処理を実行するサブルーチンSRT1は、図17に示すように、開始ステップRT2から開始し、次のステップSP11に移る。ステップSP11において、疵候補検出部26は、1回転毎に取得した各画像毎にそれぞれ輝度分布を測定し、次のステップSP12に移る。ステップSP12において、疵候補検出部26は、輝度分布の変化状態から、各画像42a,42b,…のラップ領域43b,43a内に疵候補を検出したか否かを判断する。ここで、否定結果が得られると、このことは、いずれの画像42a,42b,…のラップ領域43b,43a内からも疵候補を検出しなかったこと、すなわち時系列順に取得していった画像の切れ目に疵候補が表示されていないことを表しており、このとき疵候補検出部26は、次のステップ14に移り、画像補正処理を終了する。
これに対して、ステップSP12において肯定結果が得られると、このことは、いずれかの画像42a,42b,…のラップ領域43b,43a内から疵候補を検出したこと、すなわち時系列順に取得していった画像の切れ目に疵候補が表示されていたことを表しており、このとき疵候補検出部26は、次のステップ13に移る。ステップSP13において、画像補正部27は、疵候補を検出した隣接するラップ領域43b,43a内の疵候補同士の形状や位置が一致するように、隣接するラップ領域43b,43aの位置合わせを行い、連続画像50a,50bを生成し、次のステップ14に移り、画像補正処理を終了する。
疵判定処理を実行するサブルーチンSRT2は、図18に示すように、開始ステップRT3から開始し、次のステップSP21に移る。ステップSP21において、シェーディング処理部30は、画像補正部27により生成された連続画像や、画像補正部27により補正が行われなかったものの疵候補が生じされた各画像に、シェーディング処理を実行して輝度ムラを排除し、次のステップSP22に移る。ステップSP22において、2値化処理部31は、シェーディング処理が実行された画像に対して2値化処理を実行して2値化画像を生成し、次のステップSP23に移る。
ステップSP23において、膨張処理部32は、膨張処理として、各2値化画像内の輝度分布を測定して、そのうち所定基準輝度以下で表示された疵部57を特定した後、当該疵部57に対応した疵部領域ER2を規定する。次いで、ステップSP23において、膨張処理部32は、膨張処理として、2値化画像内から疵部領域ER2を抽出した後、当該疵部領域ER2を膨張させ、疵部膨張領域ER1を生成し、次のステップSP24に移る。
ステップSP24において、輝度算出部33は、膨張処理前の疵部領域ER2の疵部平均輝度と、疵部膨張領域ER1から疵部領域ER2を削除した、残りの周囲領域ER3の周囲平均輝度と、を算出する輝度算出処理を実行し、次のステップSP25に移る。ステップSP25において、有害疵特定部34は、周囲平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)と、予め設定された閾値輝度とを比較して、有害疵であるか否かを判定する。ここで、肯定結果が得られると、このことは、例えば、周囲平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が、閾値輝度以上であり、疵部周囲に有害疵56があることを表しており、このとき有害疵特定部34は、次のステップSPSP26に移る。
ステップSP26において、有害疵特定部34は、例えば検出した疵部周囲に有害疵56があることを、表示部28を介して作業者に呈示し、次のステップSP28に移り、上述した疵判定処理を終了する。これに対して、ステップSP25において、否定結果が得られると、このことは、例えば、周囲平均輝度、および/または、周囲平均輝度(B)/疵部平均輝度(A)が、閾値輝度未満であり、疵部周囲に無害疵55があることを表しており、このとき有害疵特定部34は、次のステップSPSP27に移る。ステップSP27において、有害疵特定部34は、例えば検出した疵部箇所に無害疵55があることを、表示部28を介して作業者に呈示し、次のステップSP28に移り、上述した疵判定処理を終了する。
<作用および効果>
以上の構成において、表面検査装置1では、周方向Cに回転している被検査体5の周表面5aを抑え機構2により抑えるようにした。また、表面検査装置1では、周表面5aに光を照射する光源部11と、光が照射された周表面5aを撮像する撮像部10と、を抑え機構2に設け、周表面5aを抑えている抑え機構2を、周方向Cに回転している被検査体5の軸方向xに沿ってそのまま移動させるようにした。
このように、表面検査装置1では、撮像部10を備えた抑え機構2によって、回転する被検査体5を抑えることで、回転時に生じる被検査体5の位置ズレを防止でき、かくして、被検査体5のブレが抑制された画像を基に、被検査体5の周表面5aを安定して検査し得る。また、表面検査装置1では、周表面5aから撮像部10までの距離や、周表面5aを撮像する撮像視野を常に一定に維持できるので、同じ条件で周表面5aを確実に撮像でき、その分、画像を基に被検査体5の周表面5aを精度良く検査し得る。
また、表面検査装置1では、被検査体5の周表面5aを撮像部10によってスパイラル状に撮像してゆき、1回転毎に取得した各画像毎に、周表面5aの疵と推測される疵候補を検出するようにした。また、表面検査装置1では、検出した疵候補を基に、時系列順に得られた画像を時系列順に連結し、被検査体5の軸方向xに沿った、周表面5aの連続画像を生成するようにした。これにより表面検査装置1では、1回転毎に取得していった時系列順の画像間にズレが生じても、当該画像のズレを補正でき、かくして、疵候補がズレることにより生じる恐れのある、疵候補の過剰検出を防止し得る。また、表面検査装置1では、実物に似た違和感のない連続画像を表示部28に表示させることにより、作業者が目視観察を行う際に違和感がなく、疵候補を容易に確認させることができる。
さらに、表面検査装置1では、被検査体5の表面性状に応じて画像内に生じる輝度分布の変化を検出し、この輝度分布の変化を基に周表面5aの疵が有害疵56であるか否かを判定するようにした。これにより、表面検査装置1では、周表面5aにある疵のうち有害疵56だけを検出し、無害疵55の過剰検出を抑制できることから、次工程にて有害疵56に対してのみ表面手入れ工程を実行し得、その分、歩留まり低下を防止できる。
<他の実施形態>
なお、上述した実施形態においては、回転機構として、一対のターニングローラ7a,7bを複数備えた回転機構7を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スキューローラを備えた回転機構、被検査体5の始端5bおよび終端5cを固定して回転させる両端固定式の回転機構等、その他種々の回転機構を適用してもよい。
また、上述した実施形態においては、移動体として、ローラボールでなる移動体13を適用したが、本発明はこれに限らず、摩擦が低い材料からなり、周表面5aを摺接する移動体等、周表面5aを抑えている抑え機構2を、回転している被検査体5の軸方向xに沿って移動できれば、その他種々の移動体を適用してもよい。
また、上述した実施形態においては、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2を同じ角度とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、撮像部10の受光角度θ1と、光源部11の投光角度θ2を異なる角度としてもよい。
また、上述した実施形態においては、被検査体5の1回転毎に1つの画像を取得してゆき、時系列順に並ぶ画像を順次取得するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、被検査体5の1/4回転毎、半回転毎、2/3回転毎、2回転毎等、その他種々の所定回転数毎に1つの画像を取得してゆき、時系列順に並ぶ画像を順次取得するようにしてもよい。