JP2018178598A - 掘削空間における底盤構造及びその構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被圧地下水による揚圧力を支持するにあたって、掘削底盤における地盤改良の厚みを抑制する。【解決手段】掘削空間における底盤構造1において、地盤改良領域11は、各土留め壁4の直下に位置する直下改良域12,12と、該直下改良域に連続一体化された壁際改良域13,13と、該各壁際改良域にそれぞれ連続一体化された中央改良域14とからなり、直下改良域12は、その上面15に土留め壁4の下端16が全面で当接されるように形成してあり、掘削空間5の下方から揚圧力が作用したとき、土留め壁4の下端から反力をとりつつ、壁際改良域13との鉛直境界面に沿って該壁際改良域に鉛直下向きのせん断力を作用させることにより、掘削底盤6の自重とともに、せん断抵抗力として揚圧力を支持するようになっている。【選択図】図1
Description
本発明は、シールドマシンの発進到達立坑や開削トンネルをはじめ、種々の用途に供される地下空間を特に開削方式で掘削形成する際に適用される掘削空間における底盤構造及びその構築方法に関する。
掘削工事を行うにあたっては、土留め壁に加わる側圧に対する安全性確保のほか、掘削底面における安全性の確保が必要不可欠であって、被圧地下水による揚圧力が掘削底面下方から作用する場合には、掘削底面が持ち上げられる、いわゆる盤ぶくれが生じることがないよう、適切な対策を講じる必要がある。
盤ぶくれは、揚圧力が作用する深さ位置、すなわち不透水層あるいは難透水層(以下、これらをまとめて単に不透水層と呼ぶ)下面から掘削底面である根切り底までの間に拡がる土塊(以下、掘削底盤)の自重が、所定の安全率をもって該揚圧力を上回るか否かでその安全性が基本的に判断されるが、揚圧力に対する抵抗力としては、かかる掘削底盤の自重のほか、掘削底盤と土留め壁との摩擦抵抗力や不透水層のせん断抵抗力があり、これらの寄与が大きい場合には、掘削底盤の自重のみならず、上記摩擦抵抗力やせん断抵抗力を盤ぶくれの抵抗力として評価することが合理的である。
盤ぶくれに対する安全性は、上述した3つの抵抗力を大きくすることでその向上を図ることが可能であって、例えば土留め壁を、最も上方に位置する不透水層に根入れするのではなく、該不透水層よりも下方に位置する不透水層まで延ばした上、該不透水層に根入れして揚圧力の作用位置を深くすることにより、掘削底盤を深さ方向に拡張してその自重を大きくすることができる。
しかしながら、この対策では、土留め壁の根入れ深さが大きくなってその構築に時間と費用を要するという問題を生じていた。
また、揚圧力の抵抗力として摩擦力を見込む場合には、摩擦抵抗力が確実に発現するよう、土留め壁が根入れされた深さ範囲にわたって地盤改良を施し、地盤強度を高める必要がある。
そのため、摩擦抵抗力の寄与を大きくしようとすると、安全率が高いことも相俟って、地盤改良すべき厚みが非常に大きくなり、地盤改良のコスト負担が増大するという問題も生じる。
なお、特許文献1には、山留め壁11の下端に鍵状部12を形成して該鍵状部に揚圧力の一部を伝達させる構成が提案されているが、水中コンクリートによる構築となるため、鍵状部12を予定の形状に形成することは必ずしも容易ではない。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、被圧地下水による揚圧力を支持するにあたって、掘削底盤における地盤改良の厚みを抑制することが可能な掘削空間における底盤構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る掘削空間における底盤構造は請求項1に記載したように、一対の土留め壁を地盤内に対向配置してそれらの間に掘削空間を形成してなる掘削空間における底盤構造において、
前記一対の土留め壁を構成する各土留め壁の直下に拡がる領域を地盤改良することにより、該各土留め壁の下端が上面に当接されてなる直下改良域をそれぞれ形成するとともに、前記各土留め壁の対向側に拡がる領域を地盤改良することにより、下面が前記各直下改良域の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに上面が前記各土留め壁の下端とほぼ同一か又はそれよりも上方の深さに位置しかつ前記各直下改良域に連続一体化されてなる壁際改良域をそれぞれ形成し、前記一対の土留め壁に挟まれた中間近傍に拡がる領域を地盤改良することにより、前記各壁際改良域にそれぞれ連続一体化されてなる中央改良域を形成したものである。
前記一対の土留め壁を構成する各土留め壁の直下に拡がる領域を地盤改良することにより、該各土留め壁の下端が上面に当接されてなる直下改良域をそれぞれ形成するとともに、前記各土留め壁の対向側に拡がる領域を地盤改良することにより、下面が前記各直下改良域の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに上面が前記各土留め壁の下端とほぼ同一か又はそれよりも上方の深さに位置しかつ前記各直下改良域に連続一体化されてなる壁際改良域をそれぞれ形成し、前記一対の土留め壁に挟まれた中間近傍に拡がる領域を地盤改良することにより、前記各壁際改良域にそれぞれ連続一体化されてなる中央改良域を形成したものである。
また、本発明に係る掘削空間における底盤構造は、前記各壁際改良域を、上面が前記各土留め壁の下端よりも上方の深さに位置するようにかつ前記一対の土留め壁の対向面にそれぞれ当接されるように形成したものである。
また、本発明に係る掘削空間における底盤構造は、前記中央改良域を、下面が前記土留め壁の下端とほぼ同一の深さに位置するように、上面が前記土留め壁の下端よりも上方の深さであって前記壁際改良域の上面とほぼ同一高さとなるように構成したものである。
また、本発明に係る掘削空間における底盤構造の構築方法は請求項4に記載したように、請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の掘削空間における底盤構造を構築する構築方法において、
前記直下改良域を形成する際、前記一対の土留め壁に挟まれた地盤領域であって該各土留め壁の対向面近傍に中空ロッドをそれぞれ挿入し、該中空ロッドの吐出口が前記土留め壁の下端よりも深くなる位置で該吐出口から固化材を高圧噴射するものである。
前記直下改良域を形成する際、前記一対の土留め壁に挟まれた地盤領域であって該各土留め壁の対向面近傍に中空ロッドをそれぞれ挿入し、該中空ロッドの吐出口が前記土留め壁の下端よりも深くなる位置で該吐出口から固化材を高圧噴射するものである。
本発明に係る掘削空間における底盤構造においては、各土留め壁の直下に拡がる領域を地盤改良することにより、該各土留め壁の下端が上面に当接されてなる直下改良域をそれぞれ形成するとともに、各土留め壁の対向側に拡がる領域を地盤改良することにより、下面が各直下改良域の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに上面が各土留め壁の下端とほぼ同一か又はそれよりも上方の深さに位置しかつ各直下改良域に連続一体化されてなる壁際改良域をそれぞれ形成してある。
このようにすると、掘削空間の下方から揚圧力が上向きに作用したとき、直下改良域は、土留め壁の下端から反力をとりつつ、壁際改良域との鉛直境界面に沿って該壁際改良域に鉛直下向きのせん断力を作用させる。
そのため、かかるせん断力が抵抗力となって揚圧力の一部が確実に支持されるとともに、せん断抵抗力については、摩擦抵抗力よりも安全率を小さくみる、例えば摩擦抵抗力の安全率の1/2とみることができるため、壁際改良域と直下改良域との鉛直境界面の高さ、換言すれば直下改良域の厚みは、摩擦抵抗力に負担させる場合に比べて1/2で足り、かくして改良すべき地盤の厚みを抑制することが可能となる。
盤ぶくれ対策における従来の地盤改良は、一対の土留め壁の対向面において摩擦抵抗力が確実に発現されるよう、該一対の土留め壁の間であってそれらの下端よりも上方の範囲で行われるのが一般的であり、土留め壁の下端より下方の範囲については、摩擦抵抗力の向上には寄与しないし、土留め壁の背面に作用する土圧を支持する作用も奏し得ないため、ほとんど地盤改良が行われてこなかった。
かかる状況下、本発明に係る掘削空間における底盤構造は、地盤改良される範囲を土留め壁の直下にも及ぼしめることにより、被圧地下水による揚圧力の一部をせん断力の形で中央改良域及び壁際改良域から直下改良域へと伝達させ、さらに該直下改良域を介して土留め壁の下端に伝達させるとともに、最終的には、土留め壁の自重や該土留め壁の背面に作用する十分な大きさの土圧下での摩擦抵抗力に支持させるようにしたものであり、かかる構成によれば、揚圧力に対する抵抗力として摩擦抵抗力及びせん断抵抗力の両方を見込む際、安全率を高くとらねばならないがゆえに地盤改良の厚みが大きくなる摩擦抵抗力の一部又は全部を、安全率を小さくみることができるせん断抵抗力に置換することにより、地盤改良の厚みを抑制することが可能となる。
土留め壁は、連続地中壁、ソイルセメント柱列壁など任意の構造で構築することができる。また、土留め壁は、その下端を難透水層又は不透水層に根入れする必要があるが、本発明の直下改良域、壁際改良域及び中央改良域が難透水性又は不透水性となるように形成することで、これらを難透水層又は不透水層に代えることが可能である。
直下改良域は、その上面に土留め壁の下端が当接されることにより、該土留め壁の下端との間で鉛直方向荷重が確実に伝達される限り、その具体的な構成は任意であるが、少なくとも土留め壁の壁厚範囲である対向面から非対向面(背面)までを水平範囲としかつ各土留め壁の下端がその全面で上面に当接されるように構成されるのが望ましいし、より確実な荷重伝達のためには、土留め壁の背面を越えて水平に突設されるのがより望ましい。
壁際改良域は、直下改良域に連続一体化されてなるものであって、下面が各直下改良域の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに、上面が各土留め壁の下端とほぼ同一か又はそれよりも上方の深さに位置する限り、その具体的構成は任意であって、上面が各土留め壁の下端とほぼ同一の深さに位置する構成としてもよい。
この場合、壁際改良域は、直下改良域とともに平板状の改良体となるが、さらに中央改良域とも平板状をなす構成とすれば、これら中央改良域、壁際改良域及び直下改良域は、全体としてより大きな平板状改良体となって一対の土留め壁の下端に当接配置される形となり、揚圧力に対する抵抗力としては、摩擦抵抗力による寄与分がなくなり、そのすべてがせん断抵抗力に置換される。また、この場合の平板状改良体の厚みは、摩擦抵抗力による寄与分のみの場合の改良厚をHとすると、そのすべてがせん断抵抗力に置換されることから、上述の安全率の比率であれば、H/2となる。
一方、揚圧力に対する抵抗力を、掘削底盤の自重のほか、摩擦抵抗力とせん断抵抗力の両方で支持する場合には、各壁際改良域を、上面が各土留め壁の下端よりも上方の深さに位置するようにかつ一対の土留め壁の対向面にそれぞれ当接されるように形成すればよい。
この場合には、壁際改良域のうち、土留め壁の対向面と当接する立ち上がり部で摩擦抵抗力が発生するので、該立ち上がり部の高さ(壁際改良域の鉛直方向の厚みから直下改良域の厚みを差し引いた寸法)と直下改良域の厚みの割合を適宜設定することで、揚圧力に対する摩擦抵抗力とせん断抵抗力の寄与割合を調整することができる。
また、この場合、摩擦抵抗力及びせん断抵抗力に対する摩擦抵抗力の寄与割合をa(0<a<1)とすると、壁際改良域の立ち上がり部の厚みはaH、直下改良域の厚みは(1−a)H/2、合計で(a+1)H/2となる。
直下改良域や壁際改良域の厚みが、揚圧力に対する土留め壁近傍での押し抜き抵抗から評価されるのに対し、中央改良域は、揚圧力によって生じる曲げ応力でその厚みが決定されるが、上述の押し抜き抵抗で定まる厚みを中央改良域にも適用することが合理的である場合には、上述した通り、その厚みをH/2とし、あるいは(a+1)H/2とすればよい。
ここで、中央改良域の厚みを直下改良域の厚みと同じ、上述の例でいえばH/2とする場合、該中央改良域の深さ位置を直下改良域の深さ位置と揃える必要はなく、例えば下面が土留め壁の下端とほぼ同一の深さに位置するように、上面が土留め壁の下端よりも上方の深さであって壁際改良域の上面とほぼ同一高さとなるように構成してもかまわない。
この場合、中央改良域、壁際改良域及び直下改良域は、全体として見れば、中央改良域が上方にずれた断面形状となるが、該中央改良域は、壁際改良域を介して土留め壁の対向面に当接した状態となるため、土留め壁の背面に作用する土圧を支持して該土留め壁を安定させる役割を果たすことが可能となる。
本願発明に係る掘削空間における底盤構造は、任意の方法で構築することが可能であり、例えば、直下改良域を形成する際、前記一対の土留め壁に挟まれた地盤領域であって該各土留め壁の対向面近傍に中空ロッドをそれぞれ挿入し、該中空ロッドの吐出口が前記土留め壁の下端よりも深くなる位置で該吐出口から固化材を高圧噴射する工程を採用することが可能である。
以下、本発明に係る掘削空間における底盤構造及びその構築方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造を示した鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造1は、地盤2内に対向配置され下端近傍が該地盤内の不透水層3に根入れされた一対の土留め壁4,4の間に掘削空間5を形成するとともに該掘削空間の下方に掘削底盤6を形成してなる。
掘削空間5は例えば、鉄道や道路を用途とした開削トンネルが構築されるための空間や、シールドマシンの発進到達立坑が構築されるための空間として供されるものであり、前者の場合には、紙面直交方向に延びる溝状空間として形成され、後者の場合には、土留め壁4,4とそれに直交配置された図示されていない一対の土留め壁とによって周囲が包囲される水平断面が矩形状の空間として形成されるが、本実施形態では、便宜上、紙面直交方向に延びる溝状空間として説明する。
各土留め壁4は、例えば連続地中壁で構成すればよい。
掘削底盤6は、地盤2のうち、土留め壁4,4の間に挟まれた領域を水平範囲、不透水層3の直下に拡がる被圧帯水層7の上面から根切り底までの高さhを鉛直範囲とした土塊であり、その自重Wは、被圧帯水層7の被圧地下水によって不透水層3の下面に作用する揚圧力Uの一部を支持する。
一方、地盤2には、同図(b)のハッチングに示されている通り、地盤改良領域11が形成されており、各土留め壁4の直下に拡がる領域がそれぞれ地盤改良されて形成された直下改良域12,12と、該直下改良域に連続一体化されるように各土留め壁4の対向側に拡がる領域がそれぞれ地盤改良されて形成された壁際改良域13,13と、該各壁際改良域にそれぞれ連続一体化されるように一対の土留め壁4,4に挟まれた中間近傍に拡がる領域が地盤改良されて形成された中央改良域14とからなり、該中央改良域の上面は、掘削空間5の根切り底を形成し、直下改良域12,12を除く壁際改良域13,13及び中央改良域14は、掘削底盤6に属する形で形成される。
ここで、各直下改良域12は、土留め壁4の壁厚範囲である対向面から非対向面(背面)を越えて該背面から若干突出する位置まで水平に延びており、該直下改良域の上面15に土留め壁4の下端16がその全面で当接されるように形成してある。
また、各壁際改良域13は、その下面18が直下改良域12の下面17とほぼ同一の深さに位置するとともに、その上面20が土留め壁4の下端16よりも上方の深さに位置するようにかつ土留め壁4の対向面22に当接されるように形成してある。
また、中央改良域14は、その下面19が各土留め壁4の下端16とほぼ同一の深さに位置するように、上面21が各土留め壁4の下端16よりも上方の深さであって各壁際改良域13の上面20とほぼ同一高さとなるように構成してある。
すなわち、直下改良域12,12、壁際改良域13,13及び中央改良域14からなる地盤改良領域11は、壁際改良域13,13が段差部となって中央改良域14が上方にずれることにより、全体が上方に凸で、下方に凹の横断面形状をなすように形成してある。
本実施形態に係る掘削空間における底盤構造1においては、上述したように各土留め壁4,4の下端が上面に当接されてなる直下改良域12,12をそれぞれ形成するとともに、下面が各直下改良域13,13の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに上面が各土留め壁4,4の下端よりも上方の深さに位置しかつ各直下改良域12,12に連続一体化されてなる壁際改良域13,13をそれぞれ形成してある。
このようにすると、図2に示すように、被圧帯水層7の被圧地下水による揚圧力Uが掘削空間5の下方から上向きに作用したとき、各直下改良域12は、土留め壁4の下端から反力をとりつつ、壁際改良域13との鉛直境界面(同図では破線で図示)に沿って該壁際改良域に鉛直下向きのせん断力を作用させ、該せん断力は、掘削底盤6の自重Wとともに、せん断抵抗力Sとして揚圧力Uを支持する。
ここで、せん断抵抗力Sについては、摩擦抵抗力Fよりも安全率を小さくみる、例えば摩擦抵抗力Fの安全率の1/2とみることができる。
そのため、図3(a)に示すように、揚圧力作用時に土留め壁4,4の対向面に摩擦抵抗力Fが生じるよう、該土留め壁で挟まれた地盤を地盤改良して地盤改良領域31を形成した構成において、摩擦抵抗力Fが掘削底盤6の自重Wとともに揚圧力Uを支持するのに必要な地盤改良領域31の厚みがHであるとすると、摩擦抵抗力Fのすべてをせん断抵抗力Sに置換するのであれば、該せん断抵抗力に必要な厚みはH/2で足りる。
したがって、本実施形態においては、同図(b)に示すように、壁際改良域13と直下改良域12との鉛直境界面の高さ、換言すれば直下改良域12の鉛直方向厚みはH/2となる。
なお、本実施形態は、土留め壁4,4の離間距離等の関係で、中央改良域14の中間位置近傍で揚圧力Uによる曲げ応力が卓越する場合を想定する必要がなく、土留め壁4近傍で必要な押し抜きに対する抵抗力を地盤改良領域11全体に適用することが可能であるとの前提に立っており、よって中央改良域14の厚みもH/2となる。また、本実施形態では、壁際改良域13と土留め壁4との間に生じる摩擦力は、揚圧力Uを支持する抵抗力に含めないものとした。
本実施形態に係る掘削空間における底盤構造を構築するには、図4に示すように、まず、連続地中壁工法等によって土留め壁4,4を地盤2内に対向配置し、次いで、高圧噴射攪拌工法により地盤改良領域11を形成した後、土留め壁4,4に挟まれた地盤領域を掘り下げて掘削空間5を形成するが、直下改良域12を形成するにあたっては、同図(b)でよくわかるように、一対の土留め壁4,4に挟まれた地盤領域であって該各土留め壁の対向面近傍に中空ロッド41をそれぞれ挿入し、該中空ロッドの吐出口42が土留め壁4の下端16よりも深くなる位置で該吐出口からセメントミルクからなる固化材を高圧噴射すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造1によれば、被圧帯水層7の被圧地下水によって不透水層3の下面に揚圧力Uが作用したとき、直下改良域12が、土留め壁4の下端から反力をとりつつ、壁際改良域13との鉛直境界面に沿って該壁際改良域に鉛直下向きのせん断力を作用させるので、かかるせん断力がせん断抵抗力Sとなって揚圧力Uの一部を確実に支持することができるとともに、揚圧力Uによる掘削底盤6の盤ぶくれに抵抗する力として摩擦抵抗力F及びせん断抵抗力Sの両方を見込む際、安全率を高くとらねばならないがゆえに地盤改良の厚みが大きくなる摩擦抵抗力Fの一部又は全部を、安全率を小さくみることができるせん断抵抗力Sに置換することにより、地盤改良の厚みを抑制することが可能となる。
特に、本実施形態においては、摩擦抵抗力Fの全部をせん断抵抗力Sに置換するようにしたので、直下改良域12や中央改良域14の厚みは、摩擦抵抗力Fに負担させる場合に比べて1/2で足り、かくして地盤改良すべき厚みを半分に抑制することができる。
また、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造1によれば、直下改良域12を、土留め壁4の壁厚範囲である対向面から非対向面(背面)を越えて該背面から若干突出する位置まで水平に延設するようにしたので、土留め壁4の下端16をその全面で直下改良域12の上面15に当接させることが可能となり、かくして直下改良域12と土留め壁4の下端との荷重伝達を確実に行うことができる。
また、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造1によれば、壁際改良域13を、その上面20が土留め壁4の下端16よりも上方の深さに位置するように形成するとともに、該土留め壁の下端位置よりも上方の部分、いわば立ち上がり部を土留め壁4の対向面22に当接するように形成したので、中央改良域14とともに土留め壁4,4の背面に作用する土圧を支持して該土留め壁を安定させることが可能となる。
また、本実施形態に係る掘削空間における底盤構造の構築方法によれば、高圧噴射攪拌工法によって土留め壁4の直下を地盤改良するようにしたので、該土留め壁の直下であっても直下改良域12を確実に形成することが可能となる。
本実施形態では、土留め壁4,4の下端を不透水層3に根入れするように構成したが、高圧噴射攪拌工法によるセメントミルクと地山との混合攪拌によって、地盤改良領域11自体が不透水層あるいは難透水層となる。そのため、不透水層への根入れに代えて、不圧帯水層や被圧帯水層に該土留め壁の下端を位置決めするようにしてもかまわない。かかる構成においては、地盤改良領域11の下面に揚圧力が直接作用するが、その点以外は、上述の実施形態と構成や作用効果は同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態では、直下改良域12を、土留め壁4の壁厚範囲である対向面から非対向面(背面)を越えて該背面から若干突出する位置まで水平に延設するようにしたが、土留め壁4の下端16と直下改良域12との当接が確保されるのであれば、直下改良域12の施工範囲を土留め壁4の壁厚範囲とすることが可能である。
また、本実施形態では、壁際改良域13の立ち上がり部と土留め壁4の対向面22との間で生じる摩擦力を揚圧力Uの抵抗力に含めないようにしたが、かかる構成に代えて、揚圧力Uの抵抗力に含めるようにしてもかまわない。
例えば、せん断抵抗力Sの寄与がゼロとした場合に摩擦抵抗力Fに必要となる改良厚みがHであるとし、該摩擦抵抗力の半分をせん断抵抗力Sに振り分けるとすると、上述した安全率の比率であれば、摩擦抵抗力Fに必要な改良厚みはH/2、せん断抵抗力に必要な改良厚みはH/4となるので、図5(a)に示すように、直下改良域12a、壁際改良域13a及び中央改良域14aに必要な厚みは、それぞれH/4、3H/4、3H/4となる。
かかる構成においては、揚圧力Uの一部を摩擦抵抗力Fに負担させた分、上述の実施形態ほどは、改良厚抑制の効果が発揮されていないが、土留め壁4の下端よりも下方で地盤改良を行うことがなかった従来技術に比べれば、地盤改良の厚みを、Hから3H/4に軽減することが可能である。
また、本実施形態では、壁際改良域13に立ち上がり部を設け該立ち上がり部を土留め壁4の対向面22に当接させることで、中央改良域14とともに土留め壁4,4の背面に作用する土圧を支持できるように構成したが、土留め壁4,4の背面土圧支持を別途行うのであれば、上述の構成に代えて、図5(b)に示すように、上面が土留め壁4の下端16とほぼ同一の深さに位置するように形成されてなる壁際改良域13bとしてもよい。
この場合、壁際改良域13bは、直下改良域12及び中央改良域14とともに、全体が平板状をなす地盤改良領域11bとなり、揚圧力Uに対する抵抗力としては、摩擦抵抗力Fによる寄与分がなくなり、そのすべてがせん断抵抗力Sに置換される。また、この場合の地盤改良領域11bの厚みは、そのすべてがせん断抵抗力Sに置換されることから、上述した安全率の比率であれば、H/2となる。
1 掘削空間における底盤構造
2 地盤
4 土留め壁
5 掘削空間
6 掘削底盤
11,11a,11b 地盤改良領域
12,12a 直下改良域
13,13a,13b 壁際改良域
14,14a 中央改良域
15 直下改良域12の上面
16 土留め壁4の下端
17 直下改良域12の下面
18 壁際改良域13の下面
19 中央改良域14の下面
20 壁際改良域13の上面
21 中央改良域14の上面
22 土留め壁4の対向面
2 地盤
4 土留め壁
5 掘削空間
6 掘削底盤
11,11a,11b 地盤改良領域
12,12a 直下改良域
13,13a,13b 壁際改良域
14,14a 中央改良域
15 直下改良域12の上面
16 土留め壁4の下端
17 直下改良域12の下面
18 壁際改良域13の下面
19 中央改良域14の下面
20 壁際改良域13の上面
21 中央改良域14の上面
22 土留め壁4の対向面
Claims (4)
- 一対の土留め壁を地盤内に対向配置してそれらの間に掘削空間を形成してなる掘削空間における底盤構造において、
前記一対の土留め壁を構成する各土留め壁の直下に拡がる領域を地盤改良することにより、該各土留め壁の下端が上面に当接されてなる直下改良域をそれぞれ形成するとともに、前記各土留め壁の対向側に拡がる領域を地盤改良することにより、下面が前記各直下改良域の下面とほぼ同一の深さに位置するとともに上面が前記各土留め壁の下端とほぼ同一か又はそれよりも上方の深さに位置しかつ前記各直下改良域に連続一体化されてなる壁際改良域をそれぞれ形成し、前記一対の土留め壁に挟まれた中間近傍に拡がる領域を地盤改良することにより、前記各壁際改良域にそれぞれ連続一体化されてなる中央改良域を形成したことを特徴とする掘削空間における底盤構造。 - 前記各壁際改良域を、上面が前記各土留め壁の下端よりも上方の深さに位置するようにかつ前記一対の土留め壁の対向面にそれぞれ当接されるように形成した請求項1記載の掘削空間における底盤構造。
- 前記中央改良域を、下面が前記土留め壁の下端とほぼ同一の深さに位置するように、上面が前記土留め壁の下端よりも上方の深さであって前記壁際改良域の上面とほぼ同一高さとなるように構成した請求項2記載の掘削空間における底盤構造。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の掘削空間における底盤構造を構築する構築方法において、
前記直下改良域を形成する際、前記一対の土留め壁に挟まれた地盤領域であって該各土留め壁の対向面近傍に中空ロッドをそれぞれ挿入し、該中空ロッドの吐出口が前記土留め壁の下端よりも深くなる位置で該吐出口から固化材を高圧噴射することを特徴とする底盤構造の構築方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017081781A JP2018178598A (ja) | 2017-04-18 | 2017-04-18 | 掘削空間における底盤構造及びその構築方法 |
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JP2017081781A JP2018178598A (ja) | 2017-04-18 | 2017-04-18 | 掘削空間における底盤構造及びその構築方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020190099A (ja) * | 2019-05-21 | 2020-11-26 | 株式会社竹中工務店 | 浮上り抑制構造及び山留め工法 |
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2017
- 2017-04-18 JP JP2017081781A patent/JP2018178598A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020190099A (ja) * | 2019-05-21 | 2020-11-26 | 株式会社竹中工務店 | 浮上り抑制構造及び山留め工法 |
JP7326679B2 (ja) | 2019-05-21 | 2023-08-16 | 株式会社竹中工務店 | 山留め工法 |
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