JP2018176112A - アルミダイカスト品の絶縁塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被塗物であるアルミダイカスト品上に、第1の粉体塗料を静電方式で塗着させ、高周波誘導加熱方式で焼付け乾燥して下側の粉体塗膜を形成した後に、その上に第2の粉体塗料を同様に塗着させ、焼付け乾燥する。第2の粉体塗料も融解して塗膜が形成されるので、ピンホールの無い平滑な塗面が得られる。
【選択図】 無し
Description
アルミダイカスト品は比較的軽量で且つ複雑な形状が作り易いことから、自動車等のホイール、機械部品、門扉等の金物、建築部材等に広く利用されており、その中には、特許文献1に記載のように、強度や靱性の向上のために、上記した粉体焼付け塗装が施されているものもある。
而して、複数のバッテリーを固定するものとして従来からアルミ製が利用されているが、いずれも圧延材であり、複雑な形状に対応できるダイカスト品に代替できれば、バッテリーシステム全体の構造の自由度も大きくなり、技術開発に大きく貢献できるものと考えられる。
一方、ダイカスト品には元々多数の巣穴が形成されていることもあり、ピンホールの無い塗膜を形成することは難しく、予め空焼きするか、溶剤塗料や粉体塗料のプライマー等を予備塗装した上で粉体焼付け塗装をしているが、それでもピンホールの発生を高い精度で阻止することは難しい。そのため、従来は絶縁目的では250〜400μm程度と比較的膜厚を大きくしてその膜厚効果を利用しており、190μm以下の薄い膜厚では絶縁塗装に成功した例を未だ聞いたことがない。
第1の粉体塗料を、第2の粉体塗料と同等又はより厚く塗着することを特徴とする絶縁塗装方法である。
<被塗物>
本発明の対象となっている被塗物はアルミダイカスト品である。
アルミダイカスト品は、ダイカスト鋳造用の化学組成のアルミニウム合金溶湯を脱ガス、脱滓処理した後、ダイカスト鋳造したものである。その内部には、引け巣や巻き込み巣が形成されている。これらは、形成原因は異なるが、いずれも空洞であり、まとめて巣穴と呼ばれている。
アルミダイカスト品は金型から取り出した後に、表面処理を施して、この段階でできる限りのピンホール対策を施す。
先ず、金型の離型剤がアルミダイカスト品に付着しているので、脱脂処理を施す。
次に、アルミダイカスト品にはバリや凹凸が出るので、大きいバリは切削で除去し、更にショットブラストにより小さいバリを除去すると共に平滑にする。
そして、上記した処理の後には、ゴミや埃が付着しないよう、静電気付着対策としてイオナイザーを作動した雰囲気下においておく。
上記前処理されたアルミダイカスト品を、粉体焼付け塗装に供する。
粉体塗料には、塗膜の主成分となる樹脂が含まれるが、これには、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシポリエステル樹脂等があり、用途に応じて使い分けられているが、本発明の場合には、電気絶縁が要求される用途なので、現在その用途での主流となっているエポキシ樹脂が含まれるものを使用する。
なお、後述するように、本発明では、2回塗装するため、1回目と2回目で、粉体の大きさを変えたり、塗料どうしの相性が良ければ種類を変えたりすることも可能である。
この段階でのピンホール対策としては、従来から、予め被塗物を空焼きするか、溶剤や粉体のプライマー等を使用して予備塗装することが提案されているが、本発明では、これらの対策は取らない。
高周波誘導加熱方式では、高周波を利用して被塗物を加熱し、被塗物に付着した粉体塗料を被塗物に接触する側から融解し化学反応によりネットワーク状の組織を形成するようになっている。
しかしながら、本発明では、2コート2ベーク目を実施しており、2ベーク段階で誘導加熱を有効に働かせることで、塗着した2コート目の粉体塗料が融解し、ピンホールも無く、且つ表面平滑性も良い塗膜を形成することに成功している。1ベーク目で発生したピンホールが埋められたのか、もしくは空洞として内部に残されているのかは不明であるが、2ベーク後の塗面にはそのピンホールの痕跡は残っていない。
1コート目の粉体塗料の焼付け温度を、標準焼付け温度よりも稍高い温度にし、2コート目の粉体塗料の焼付け温度を、標準焼付け温度程度にすることが好ましい。
従って、粉体塗料の種類が同じであれば、1コート目の粉体塗料の焼付け温度を、2コート目の粉体塗料の焼付け温度より、20〜50℃程度高くすることが推奨される。
また、1コート目の粉体塗料の塗着膜厚を厚く、2コート目の粉体塗料の塗着膜厚を薄くすることが好ましい。
具体的には、1コート目で粉体塗料の塗着膜厚を70〜120μmにして、2コート目で粉体塗料の塗着膜厚を30〜70μmにすることが好ましい。
1ベーク目を高い温度で行うことで、ガスの出し尽くし効果が期待され、更に、1コート目を厚くすることで、2ベーク段階でのガス発生抑制効果が期待される。従って、温度と膜厚の調節を共に行った場合に、より良い効果が期待される。
なお、1ベーク目を高い温度で行うといっても、高周波誘導加熱方式による焼付け乾燥の許容範囲内であることが前提となっている。
上記した絶縁塗装方法を実施するための粉体焼付け塗装装置1の一例を以下に示す。
図1は、粉体焼付け塗装装置1の全体的な構成図である。
この装置で処理される被塗物としてのアルミダイカスト品3の一例は、図2に示すバッテリー用の絶縁カートリッジの一部をなすものであり、矩形プレート状で多数の装着孔5が形成されている。
このアルミダイカスト品3の長手方向両端側には複数のボルト孔7が設けられており、この部分のマスキングが必要になっている。
符号19は上記とは別のマスキング治具を示す。このマスキング治具19は支え軸13を設けられていないだけで、その他の構成はマスキング治具9と同じになっている。
アルミダイカスト品3の長手方向両端側からそれぞれマスキング治具9、19をスライド移動させアルミダイカスト品3を挟み込む。その状態では、連通孔17がアルミダイカスト品3のボルト孔7と連通しているので、そこにボルト20を通して締めることで、連結させる。
なお、図2は、ボルト孔7と連通孔17は、孔縁が視認し易くなるよう、孔縁の輪郭線が実線で示されている。
粉体焼付け塗装装置1には、環状軌道の搬送ライン21に、塗装部23が二か所、加熱部25が二か所、エア吹き落とし部27が二か所設けられており、第1コートベーク部(塗装部23〜加熱部25〜エア吹き落とし部27)〜第2コートベーク部(塗装部23〜加熱部25〜エア吹き落とし部27)の順に配置されており、そこを通過するときに各処理が施される。
従って、アルミダイカスト品3は搬送ライン21を一周すると、2コート2ベークが完了したことになる。
塗装部23では、塗装ガン24が下側を向いており、アルミダイカスト品3がその下方を通過するようになっている。アルミダイカスト品3はそこで軸周りに回転するので両板面及び両板部の表面に粉体塗料が万遍無く吹き付けられ塗着する。なお、部室内はバキュームを使用して負圧に維持され、且つイオナイザーが併用されており、塗装装置に粉体塗料が付着しないようになっている。
加熱部25では、平面状ワークコイル26、26で上下から挟むようになっており、ワークコイル26への高周波電源の供給により、アルミダイカスト品3が誘導加熱される。
エア吹き落とし部27では、エアを吹き付けて、マスキング治具9、19上に乗っている余分な粉体塗料が落とされて清掃される。
ベークの後には、次の処理部まで、搬送ライン21上に間隔が開けられており、そこで放冷される。すなわち、冷却部29として働く。
なお、加熱部は、昇温速度は大きく、約150秒で240℃まで昇温できるものとした。使用した粉体塗料は、高周波誘導加熱方式に適用する場合には、220℃を最適焼付け温度とし、そのプラスマイナス20℃以内が標準焼付け温度の範囲となっている。
(実施条件1)
第1コートベーク部では、塗装無しで、260℃まで加熱した後冷却して、空焼き効果を狙った。
第2コートベーク部では、120〜150μmに塗着し、220℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。なお、粉体塗料の流動性を良くするため、他の実施条件よりも細かくした粉体塗料を使用した。
第1コートベーク部では、50〜80μmに塗着し、230℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第2コートベーク部では、80〜100μmに塗着し、230℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
(実施条件3)
第1コートベーク部では、50〜80μmに塗着し、240℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第2コートベーク部では、60〜100μmに塗着し、220℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第1コートベーク部では、50〜80μmに塗着し、210℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第2コートベーク部では、60〜100μmに塗着し、240℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
(実施条件5)
第1コートベーク部では、40〜50μmに塗着し、210℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第2コートベーク部では、100〜120μmに塗着し、240℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第1コートベーク部では、70〜120μmに塗着し、240℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
第2コートベーク部では、30〜70μmに塗着し、220℃まで加熱した後、清掃し、冷却して処理を終了した。
(実施条件2)〜(実施条件5)では、ピンホールは殆ど認められず、絶縁効果も期待できた。
(実施条件6)では、ピンホールは確認できず、圧延材に処理した場合に匹敵する表面平滑性が得られ、格段の絶縁効果が期待できた。
9…マスキング治具 11…受け部 13…支え軸 15…包持部
17…連通孔 19…別のマスキング治具 20…ボルト
21…搬送ライン 23…塗装部 24…塗装ガン
25…加熱部 26…ワークコイル 27…エア吹き落とし部
Claims (5)
- 被塗物であるアルミダイカスト品上に、第1の粉体塗料を静電方式で塗着させ、高周波誘導加熱方式で焼付け乾燥して下側の粉体塗膜を形成した後に、その上に第2の粉体塗料を静電方式で塗着させ、高周波誘導加熱方式で焼付け乾燥して上側の粉体塗膜を形成することで、絶縁性を付与したことを特徴とするアルミダイカスト品の絶縁塗装方法。
- 請求項1に記載したアルミダイカスト品の絶縁塗装方法において、
第1の粉体塗料の焼付け温度を、標準焼付け温度よりも高い温度にし、第2の粉体塗料の焼付け温度を、標準焼付け温度にすることを特徴とする絶縁塗装方法。 - 請求項2に記載したアルミダイカスト品の絶縁塗装方法において、
第1の粉体塗料と第2の粉体塗料を同じ種類のものとし、
第1の粉体塗料の焼付け温度を、第2の粉体塗料の焼付け温度より、20〜50℃高くすることを特徴とする絶縁塗装方法。 - 請求項1から3のいずれかに記載したアルミダイカスト品の絶縁塗装方法において、
第1の粉体塗料を、第2の粉体塗料と同等又はより厚く塗着することを特徴とする絶縁塗装方法。 - 請求項4に記載したアルミダイカスト品の絶縁塗装方法において、
第1の粉体塗料を70〜120μm、第2の粉体塗料を30〜70μmの厚さでそれぞれ塗着することを特徴とする絶縁塗装方法。
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