以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
<1.全体構成>
図1は本発明に係るスクロール流体機械の少なくとも一実施形態に係るスクロール圧縮機1の外観を示す斜視図であり、図2は図1のスクロール圧縮機1の駆動軸22を通る鉛直断面図であり、図3は図1のスクロール圧縮機1の駆動軸22を通る水平断面図である。以下の説明では、図2及び図3において左側を前方、右側を後方と称して述べる。
スクロール圧縮機1は、空気等の気体を圧縮するための圧縮機であり、圧縮対象となる気体を吸い込んで浄化するためのフィルタユニット2と、フィルタユニット2で浄化された気体を圧縮するための圧縮機本体4と、動力源(不図示)からの動力をスクロール圧縮機1の各部に伝達するための動力伝達ユニット6と、スクロール圧縮機1の冷却風を送風するための送風ユニット8と、を備える。フィルタユニット2はスクロール圧縮機1の前方上部に配置されており、その後方に、圧縮機本体4、動力伝達ユニット6及び送風ユニット8が前方から順に配置されている。
フィルタユニット2は、筐体として中空状のフィルタケーシング10を有する。図2に示されるように、フィルタケーシング10は、略円筒形状を有する円筒部10aと、円筒部10aの後方において、圧縮機本体4の外表面に向けて傾斜する傾斜部10bとを含んで構成されている。本実施形態では、フィルタケーシング10のうち傾斜部10bの上面には、圧縮対象となる気体を外部から吸い込むための吸気口12が設けられている。吸気口12は、左右方向に沿って互いに平行に延在する複数のスリット状に形成されている。なお、必ずしも吸気口12を設ける必要はない。その場合、圧縮対象となる気体は、送風ファン52から供給される(後述を参照)。
フィルタケーシング10内には、吸気口12から吸い込まれた気体に含まれる埃や塵等の異物を除去するためのフィルタエレメント14が配置されている。吸気口12から導入された気体は、フィルタエレメント14を通過して浄化され、下流側に位置する圧縮機本体4に供給される。
圧縮機本体4は、圧縮機ハウジング16を備える。圧縮機ハウジング16は、例えばアルミ合金等で成形される。圧縮機ハウジング16の前方上部は、上述のフィルタユニット2に接続されており、フィルタエレメント14を通過した気体が導入路15を介して、圧縮機本体4の内部に導入されるように構成されている。また圧縮機ハウジング16の後方は、複数のボルト(不図示)により、動力伝達ユニット6を構成するベアリングケース42に接続されている。
圧縮機ハウジング16内には、固定スクロール18及び旋回スクロール20が収容されている。固定スクロール18は圧縮機ハウジング16に固定されており、旋回スクロール20は圧縮機ハウジング16内に、固定スクロール18に対向するように配置されている。旋回スクロール20は、駆動軸22の先端に設けられた偏心軸部23に枢支されており、動力伝達ユニット6から伝達される動力によって回転駆動される。
固定スクロール18は、略円板形状の固定端板19を備える。固定端板19のうち旋回スクロール20に対向する第1面には、渦巻き状の固定ラップ21が立設されている。固定端板19のうち第1面とは反対側の第2面には、放熱用の放熱フィン24が設けられている。放熱フィン24には、後述するように、送風ユニット8から送られる冷却風が供給され、固定スクロール18の冷却が行われる。
旋回スクロール20は、略円板形状の旋回端板26を備える。旋回端板26のうち固定スクロール18に対向する第1面には、渦巻き状の旋回ラップ28が立設されている。旋回端板26のうち第1面とは反対側の第2面には、放熱用の放熱フィン30が設けられている。放熱フィン30には、後述するように、送風ユニット8から供給される冷却風が導入され、固定スクロール18の冷却が行われる。
なお、本実施形態を含む各実施形態において、固定スクロール18の固定ラップ21の長さと、旋回スクロール20の旋回ラップ28の長さと、は異なっている。すなわち、各実施形態に係るスクロール圧縮機1は、いわゆる非対称ラップ形スクロール圧縮機である。しかし、本願発明は、非対称ラップ形スクロール圧縮機には限定されず、固定ラップ21の長さと旋回ラップ28の長さとが同一の、いわゆる対称ラップ形スクロール圧縮機であってもよい。
旋回スクロール20の後方側には、略円板形状を有する旋回プレート32が、駆動軸22の偏心軸部23に直結された状態で固定される。旋回プレート32には軸受部37が一体的に形成されている。軸受部37には、駆動軸22の先端に設けられた偏心軸部23を回転可能に支持するための回転軸受33が配置されている。旋回プレート32と圧縮機ハウジング16との間には、旋回スクロール20の自転運動を阻止しつつ公転運動させるための複数の自転防止機構34が旋回プレート32、すなわち旋回スクロール20の周方向に沿って略等間隔で設けられる。
動力伝達ユニット6からの動力によって駆動軸22が回転駆動されると、旋回スクロール20は公転運動を行い、これに伴って、固定スクロール18及び旋回スクロール20間に形成される圧縮室36の容積が外周側から内周側に向かって漸次減少し、吸入、圧縮が行われる。このような圧縮室36は、より詳しくは、固定ラップ21と旋回ラップ28とにより仕切られることにより、略三日月状に形成される。これにより、導入路15から圧縮機本体4に導入された気体は、内周側に向かって漸次圧縮される。圧縮室36で生成された加圧気体は、固定スクロール18の中心部に設けられた吐出口38から吐出される。
ここで圧縮機ハウジング16の前方には、平板状の蓋部53が固定されている。蓋部53は更に前方からカバー63によって覆われており、蓋部53とカバー63との間に、送風ユニット8からの冷却風の一部が導入可能な導風空間57が形成されている。
カバー63の外表面には、外部にある加圧気体の供給先に接続される吐出プラグ67が設けられている。吐出プラグ67は、カバー63の内側にて、導風空間57を貫通するように配設された吐出管59を介して、固定スクロール18の中心部に設けられた吐出口38に接続されている。これにより、圧縮室36で生成された加圧気体は、吐出口38から吐出管59を介して外部に吐出される。
動力伝達ユニット6は、外部の動力源(不図示)から供給される動力を、スクロール圧縮機1の各部に伝達する機能を有するユニットである。本実施形態では、動力伝達ユニット6は、送風ユニット8の後方に突出する駆動軸22の後端部に、外部の動力源からの動力が入力可能な従動プーリ40を有する。従動プーリ40には、例えば、スクロール圧縮機1の下方に設置される電動機やエンジン等の動力源の出力軸に止着された主動プーリ(図示略)に下部が掛け回された無端状の伝動ベルト(不図示)の上部が掛け回されることにより、動力源の回転が駆動軸22に伝達される。従動プーリ40に入力された動力は駆動軸22を回転させ、圧縮機本体4及び送風ユニット8などのスクロール圧縮機1の各部にそれぞれ伝達される。
尚、動力伝達ユニット6の筐体を構成するベアリングケース42は、圧縮機ハウジング16に比べて高強度の例えば鋳物等によって成形される。ベアリングケース42内には、前後方向へ互いに所定量離間して設けられるボールベアリング44、46が配置されており、駆動軸22が回転可能に支持されている。
尚、駆動軸22の前端側には、前述の偏心軸部23が設けられる。また、偏心軸部23の前部外周には、図2に示されるように、旋回スクロール20側のバランスを調整するためのバランスウエイト48が設けられている。
送風ユニット8は、ファンケーシング50内に送風ファン52を収容してなる。送風ファン52は、駆動軸22に接続されており、動力伝達ユニット6から伝達される動力によって回転駆動可能に構成されている。送風ファン52は例えばシロッコファンである。
送風ファン52が駆動すると、送風ユニット8はファンケーシング50の前方に設けられた開口部55から外気(空気)を吸い込み、送風ファン52の下流側に設けられたダクト54に向けて外気が圧送される。ダクト54は、略円筒形状を有する管状部材であり、図3に示されるように、ファンケーシング50の側方から、動力伝達ユニット6の側方を迂回し、圧縮機本体4に対して側方から接続されるように構成されている。これにより、送風ユニット8からダクト54に送られた外気は、圧縮機本体4に対して冷却風として供給される。
ダクト54から圧縮機本体4に導入された冷却風は、図3に示されるように、圧縮機ハウジング16の内部にて、第1の送風通路56、第2の送風通路58及び第3の送風通路60にそれぞれ分岐される。第1の送風通路56は、旋回端板26の第2面側に設けられた放熱フィン30に冷却風を供給するための通路であり、主に旋回スクロール20を冷却する。第2の送風通路58は、固定端板19の第2面側に設けられた放熱フィン24に冷却風を供給するための通路であり、主に固定スクロール18を冷却する。第3の送風通路60は、圧縮機ハウジング16の前方に設けられた導風空間57に冷却風を供給するための通路である。
<2.固定スクロール及び旋回スクロールにおける放熱フィンの構成>
続いて、本実施形態に係るスクロール圧縮機1における、固定スクロール18及び旋回スクロール20にそれぞれ設けられた放熱フィン24及び30の構成について詳しく説明する。ここでは主に、旋回スクロール20に形成された放熱フィン30について説明するが、特段の記載がない限りにおいて、固定スクロール18に形成された放熱フィン24についても同様である。
図4は図1の圧縮機本体4が備える旋回スクロール20を第1面側から示す平面図であり、図5は図4の旋回スクロール20を第2面側から示す平面図である。図4に示されるように、旋回スクロール20の第1面側には、旋回端板26上に渦巻状の旋回ラップ28が立設されている。旋回ラップ28の先端には、旋回ラップ28の長さ方向に沿って、固定スクロール18との間の隙間を封止するためのチップシール(不図示)が篏合可能な溝部61が形成されている。
また図5に示されるように、旋回スクロール20の第2面側には、旋回端板26上に複数の放熱フィン30が立設されている。複数の放熱フィン30には、第1の送風通路56(図3を参照)を介して、ダクト54から冷却風が導入される。旋回端板26上に設けられた複数の放熱フィン30は、略ストレート形状を有しており、第1の送風通路56から導入される冷却風の流れ方向に沿って略平行に延在している。
ここで図6は、図5の比較例である。従来のスクロール圧縮機では、図6に示されるように、旋回端板26’上に設けられる複数の放熱フィン30’は、波型に湾曲した非ストレート形状(波型形状)を有していた。このような非ストレート形状を有する放熱フィン30’では、波型に湾曲したラインに沿って乱流が発生したり、通気抵抗が増加してしまう。これに対して本実施形態では、図5のように略ストレート形状を有する放熱フィン30を用いることで、第1の送風通路56からの冷却風の流れが妨げられず、放熱フィン30との熱交換率を向上できるため、良好な冷却性能が得られる。
また放熱フィン30に導入される冷却風は、所定長さを有するダクト54を介して離れた位置にある送風ファン52から供給されるため、圧損によって風力が少なからず弱められた状態で放熱フィン30に導入される。しかしながら、本実施形態では上述のように放熱フィン30が略ストレート形状を有するため、このように風力が弱められた冷却風であっても良好な熱交換が可能であり、優れた冷却作用が得られる。例えば、この種のスクロール圧縮機1では、動力源として電動モータを動力伝達ユニット6と一体的に組み込む場合があるが、この場合、動力伝達ユニット6が大型化することに伴いダクト54も長くなってしまう。このようにダクト54が長くなると、ダクト54を通過する冷却風が圧損の影響を受けやすくなるが、上記作用によって良好な冷却効果を確保できる。
また図6に示されるように、従来の放熱フィン30’は、典型的には、冷却風の送風方向に沿って略均等間隔で複数設けられている。そのため、第1の送風通路56から導入される冷却風は、放熱フィン30’の上流側では比較的良好な冷却作用が得られるが、下流側では冷却風の温度が次第に上昇し、冷却作用が低下してしまう。その結果、このような冷却作用の偏りによって、旋回スクロール20上に温度差が生じ、歪みをもたらす要因となってしまう。
これに対して本実施形態では、図5に示されるように、複数の放熱フィン30は、冷却風の下流側において上流側より密になるように配置される。図5の例では特に、複数の放熱フィン30は、隣り合う放熱フィン30間のピッチ距離が、冷却風の上流側が下流側より大きくなるように構成されている。具体的に説明すると、上流側のピッチ距離L1が下流側のピッチ距離L2より大きくなるように構成されている。そのため、第1の送風通路56から導入される冷却風は、下流側になるに従って風速が増加し(すなわち、上流側の流速V1に比べて下流側の流速V2が大きくなる)、上流側と下流側との間の冷却作用の偏りを緩和することができる。その結果、旋回スクロール20の均一な冷却が可能となり、旋回スクロール20に歪みが生じることを効果的に抑制できる。
尚、複数の放熱フィン30は、冷却風の上流側より下流側が厚くなることによって、冷却風の下流側において上流側より密になるように構成されてもよい。この場合もまた図5と同様に、下流側になるほど放熱フィン30間の隙間が狭くなるため、下流側ほど冷却風の流速が増加し、上記と同様の効果を得ることができる。
図7は図5の他の変形例である。図7に示されるように、複数の放熱フィン30は、旋回スクロール20の外周側より中心側で疎になるように配置されていてもよい。上述したように、圧縮室36の加圧気体の温度は、圧縮室36が中心部に近づくに従って高温になるため、このように、内側ほど放熱フィン30を疎に配置することにより、内側(すなわち中心側)により多くの冷却風を取り入れることができるため、温度が上昇しやすい内側ほど高い冷却効果が得られる。これにより、旋回スクロール20の熱負荷分布に応じた冷却を行うことができ、旋回スクロール20における歪み発生をより効果的に抑制できる。
このように上記では旋回スクロール20における放熱フィン30について詳述したが、固定スクロール18における放熱フィン24についても同様の思想が適用可能である。例えば図8を参照して、固定スクロール18における放熱フィン24の一例を代表的に説明すると、固定スクロール18における放熱フィン24には、第2の送風通路58を介して冷却風が導入されるため、固定スクロール18の第2面上には、当該冷却風に沿って互いに略平行に延在する略ストレート形状の放熱フィン24が配置されている。これら放熱フィン24は第2の送風通路58から供給される冷却風の下流側において上流側より密、かつ中心側において外周側より疎になるように配置されており、上述の旋回スクロール20の放熱フィン30と同様の各変形例を適用可能である。
<3.旋回スクロールの補強構造>
続いて、本実施形態に係るスクロール圧縮機1における、旋回スクロール20の補強構造について詳しく説明する。この種のスクロール圧縮機1では、旋回スクロール20は駆動軸22のトルクによって回転駆動されるため、圧縮機ハウジング16に対して固定される固定スクロール18に比べて歪みが生じやすい。そこで、本実施形態では、旋回スクロール20に後述の補強構造を採用することで機械的強度を向上させ、旋回スクロール20の歪みを抑制できる。
ここで本実施形態に係る補強構造の前提として、比較例に係る補強構造について説明する。図9は図6(比較例)の旋回スクロール20’の中心軸を通る断面図である。比較例の旋回スクロール20’では、均一な厚さを有する旋回端板26上に補強リブ70が設けられている。この補強リブ70は、放熱フィン30が設けられる第2面上において旋回端板26の中心部を通り、且つ、放熱フィン30に略垂直な方向に沿って延在するように形成されている。
しかしながら、このような直線的な補強リブ70は、補強リブ70の近傍では比較的有効な補強効果を奏するが、補強リブ70から離れた領域では十分な補強効果が得られにくく、旋回スクロール20を全体的に十分に補強できるに至っていない。また図9に示されるように、補強リブ70は第2面上で凸状に突出した形状を有するため、第1の送風通路56からの冷却風が補強リブ70の側面側から衝突し、冷却風の流れを妨げてしまい、旋回スクロール20の冷却性能を低下させてしまうおそれがある。
本実施形態では、旋回端板26は第2面が連続的に盛り上がる凸形状80を有する。図10は図4の旋回スクロール20の中心軸を通る断面図であり、図11は旋回スクロール20の第2面上における旋回端板26の等高線分布である。旋回端板26は頂部81を中心に高さが増加するように不均一な厚さを有しており、緩やかな山型の断面形状を有する。これにより、従来(図9を参照)のような均一な厚さを有する旋回端板26に比べて、旋回スクロール20の厚さが増加し、強度が向上する。また、このような凸形状80は連続的に(滑らかに)盛り上がるように形成されるため、第1の送風通路56からの冷却風の流れを妨げず、放熱フィン30と良好な熱交換を実現できる。このように、冷却性能を確保しつつ、コンパクトな構成で旋回スクロール20の補強が可能となっている。
旋回端板26上の凸形状80は、図11に示されるように、旋回スクロール20の重心82が、旋回端板26の中心Oから偏心した旋回中心に一致するように形成される。具体的に説明すると、図11の例では、凸形状80の頂部81は旋回端板26の中心Oより左上に偏心しており、その結果、重心82もまた中心Oより偏心するように形成されている。一般的に、旋回スクロール20は偏心して回転駆動されるため、従来、旋回スクロール20の微細なバランス調整を行うために旋回スクロール20に対してバランス(駄肉)を付加する処理が行われていたが、これは装置構成が複雑したり、作業負担が増える要因となっていた。その点、本構成では、第2面上の凸形状80を形成することで旋回スクロール20の重心82の位置を任意に調整できるため、このような問題点を簡易な構成で解消することができる。
また旋回端板26の第2面上の凸形状80は中心Oを含む領域にわたって形成されてもよい。このように広い領域にわたって凸形状80を形成することで、凸形状80の傾斜が緩やかとなる。その結果、冷却風がより通過しやすくなり、良好な冷却性能を発揮できる。
このような凸形状80を有する第2面上には、前述したように、冷却風の送風方向に沿って延在する複数の放熱フィン30が形成されている。旋回スクロール20では、上述したように、旋回端板26の第2面上に凸形状80が設けられることで厚みが増加するため、熱容量もまた増加するが、このような放熱フィン30を設けることで熱容量が大きな旋回スクロール20を効果的に冷却できる。また放熱フィン30を設けることで、旋回スクロール20の強度も更に向上できる。
尚、第2面上における複数の放熱フィン30の配置に関しては、図5、図6及び図7を参照して上述した通りであるが、その他の態様として、複数の放熱フィン30は、第2面上において旋回端板26の厚さが大きくなるに従って密になるように配置されていてもよい。つまり、凸形状80を有する旋回端板26において、厚さが大きな領域ほど放熱フィン30の配置密度が大きくなる。これにより、単位面積当たりの熱容量に応じて冷却量を配分することができ、旋回スクロール20の広い領域にわたって均一な冷却が可能となり、旋回スクロール20の歪みをより効果的に抑制できる。
また旋回スクロール20の第1面は、固定スクロール18と接触しない非接触領域90の少なくとも一部に凹状の減肉部92を有してもよい。図12は図4の変形例である。旋回スクロール20の第1面側は固定スクロール18と対向配置され、固定スクロール18とともに圧縮室36を形成する。ここで旋回スクロール20が駆動軸22によって旋回駆動された際に、図12に示されるように、固定スクロール18側と接触しない非接触領域90が存在する。この非接触領域90は、旋回スクロール20の旋回端板26の第1面のうち、少なくとも最外周の旋回ラップ28(旋回ラップ28のうち、最外端から一巻分に対応する部分)より外周側の領域である。
尚、図12では非接触領域90の全体を凹状の減肉部92として形成した場合を例示しているが、非接触領域90の一部を部分的に凹状の減肉部92として形成してもよい。
上述の各実施形態では旋回スクロール20のうち第2面に凸形状80を設けることで、旋回端板26の重量を増やす方向でバランス調整が行われるが、本構成では、減肉部92を設けることによって逆に重量を減らす方向で旋回スクロール20のバランス調整を行うことができる。これにより、より微細な旋回スクロール20のバランス調整が可能となる。また減肉部92を第1面側に設けることによって圧縮室36の容量を少なからず拡大することもできる。
尚、上記では旋回スクロール20の第1面に減肉部92を設けてもよいことを述べたが、減肉部92は固定スクロール18の第1面に形成してもよい。この場合、固定スクロール18は圧縮機ハウジング16に対して固定されているためバランス調整という効果は得られないが、減肉部92を形成することで固定スクロール18の重量を低減でき、また圧縮室36の容量増加に少なからず貢献できるというメリットがある。
<4.加圧気体の冷却構造>
続いて圧縮機本体4から吐出される加圧気体の冷却構造について説明する。図2に示されるように、圧縮機本体4の固定スクロール19(蓋部53)とカバー63との間には、第3の送風通路60を介して冷却風が導入可能な導風空間57が設けられている。この導風空間57には、圧縮機本体4の吐出口38から吐出される加圧気体が流れる吐出管59が外部に向けて貫通するように配置されている。
吐出管59は、導風空間57を流れる冷却風に外部から接触するように構成されており、吐出管59を流れる高温の加圧気体は導風空間57に導入される冷却風と熱交換することによって冷却される。従来、圧縮機本体4から吐出される高温の加圧気体は、外部に用意されたアフタークーラで冷却された後、需要先に供給されていたが、本実施形態では、このように導風空間57にて加圧気体を冷却できるので、アフタークーラのような外部装置が不要であり、システム全体のコンパクト化に有利である。
ここで吐出管59のうち導風空間57に露出する熱交換部59aは、その周囲に比べて熱伝導率が高くなるように構成されていてもよい。例えば熱交換部59aは、部分的に熱電率の高い材料(例えばアルミニウム等)で形成されていてもよいし、部分的に管厚が小さく形成されていてもよい。このように、圧縮機本体4からの高温の加圧気体が流れる吐出管59は、導風空間57に露出する熱交換部59aが高い熱伝導率を有することで、導風空間57に導入される冷却風との熱交換を促進し、より効果的に吐出気体を冷却できる。
図13は図2の一変形例である。この変形例では、吐出管59の一部が拡径された拡径部97を有しており、当該拡径部97内に、吐出気体の逆流を防止するための逆止弁98が内蔵されている。この種のスクロール圧縮機1では、圧縮運転を停止した場合に、一時的に吐出管59に残存する加圧気体が圧縮機本体4に向けて逆流する現象が生じる。このような逆流現象の発生を抑制するために、従来から吐出口38の下流側に逆止弁を設ける構成が用いられていたが、この種の逆止弁は使用温度域が限定されており、吐出口38から吐出される高温の加圧気体に耐えることができなかった。そのため、上述したように下流側に設置されたアフタークーラによって冷却し、その下流側に逆止弁を配置する必要があり、システムが大型化する傾向にあった。その点、本実施形態では、吐出管59の加圧気体は導風空間57によって冷却されるため、吐出管59に設けられた拡径部97内に逆止弁98を内蔵することができる。これにより、システム全体を効果的にコンパクト化することができる。
図14は図2の他の変形例であり、図15は図14において吐出管59の外表面に設けられた冷却フィン95をカバー63の内側から示す模式図である。この変形例では、吐出管59の外表面に冷却フィン95が設けられている。このような冷却フィン95を設けることで、導風空間57に導入される冷却風との熱交換面積を増やすことができ、より効果的に吐出気体の温度を抑制できる。またこのような冷却フィン95は、高圧の加圧気体が流れる吐出管59の機械的強度を補強する点においても有効である。特に上述のように吐出管59の管厚を部分的に薄く形成した場合には、吐出管59自体の強度が低下するが、このような冷却フィン95を設けることで、強度を賄うことができる。
また、この変形例では、冷却フィン95は、第3の送風通路60を介して導風空間57に導入される冷却風の流れ方向(左右方向)に沿って延在しており、冷却風の流れを妨げないように構成されている。その結果、吐出気体と冷却風との熱交換が促進され、より効果的に吐出気体の温度を抑制できる。
<5.中間冷却器>
上記実施形態では、単段で気体圧縮を行うスクロール圧縮機1について説明したが、スクロール圧縮機1は複数段にわたって気体圧縮を行う多段式圧縮機として構成されていてもよい。以下の実施形態では、スクロール圧縮機1が単巻き2段式のスクロール圧縮機として構成された場合について説明する。
図16は、単巻き2段式のスクロール圧縮機1における固定スクロール18及び旋回スクロール20を示す平面図である。このスクロール圧縮機1では、固定スクロール18の固定端板19上に立設された固定ラップ21によって形成される渦巻状溝に、低圧側圧縮室36a及び高圧側圧縮室36bを区画するための隔壁102が設けられる。すなわち、隔壁102は固定ラップ21により形成される渦巻状溝が、途中で閉塞するように、固定端板19上にボス状に形成されている。このような隔壁102によって圧縮室36の加圧気体の流路を遮断することで、圧縮室36は低圧側圧縮室36a及び高圧側圧縮室36bに区画される。
尚、隔壁102は、固定端板19と一体的に形成されていてもよいし、別部材として形成されていてもよい。
渦巻状溝100のうち隔壁102の両側(すなわち、低圧側圧縮室36aの内側、及び、高圧側圧縮室36bの外側)には、それぞれ、低圧側吐出口104及び高圧側吸込口106が設けられている。低圧側吐出口104及び高圧側吸込口106は、固定スクロール18の中心軸線に対して略平行に、固定端板19を貫通するように形成されている。低圧側圧縮室36aは、高圧側圧縮室36bに比べて外側に位置しており、導入路15から圧縮対象となる気体(外気)が導入される。低圧側圧縮室36aで加圧された加圧気体は低圧側吐出口104から吐出され、後述する中間冷却器110で冷却された後、高圧側圧縮室36bの高圧側吸込口106に導入される。高圧側圧縮室36bでは、中間冷却器110で冷却された加圧気体が更に圧縮され、加圧気体は最終的に固定端板19の中心側に設けられた吐出口38から吐出される。
ここで図17は本実施形態に係るスクロール圧縮機1においてカバー63を取り外した状態を示す斜視図であり、図18は図17のスクロール圧縮機1にカバー63を取り付けた状態における駆動軸22を通る鉛直断面図である。
スクロール圧縮機1は、低圧側圧縮室36aから吐出された加圧気体を冷却し、冷却後の加圧気体を高圧側圧縮室36bに戻すように構成された中間冷却器110を備える。中間冷却器110は空冷式であり、冷却風が導入される導風空間57と、導風空間57の内部に配置され、低圧側圧縮室36aから吐出された加圧気体が流れる放熱管112と、を備える。
導風空間57は上述したように固定スクロールに対して固定された蓋部53と、蓋部53を覆うカバー63によって形成されており、当該導風空間57には第3の送風通路60を介して冷却風が導入される。また導風空間57の内壁のうち蓋部53上には、低圧側圧縮室36aの低圧側吐出口104と、高圧側圧縮室36bの高圧側吸込口106とを接続する放熱管112が配置されている。放熱管112は、導風空間57において蓋部53の縁部近傍に形成された開口100を介して、第3の送風通路60から導入される冷却風にさらされることにより、放熱管112を流れる高温の加圧気体が冷却される。このように、導風空間57に導入される冷却風を利用して加圧気体を冷却するための中間冷却器110を圧縮機本体4と一体的に構成できる。このような構成は、従来に比べて簡易であり、設備全体の設置スペース及び製造コストを効果的に低減できる。
放熱管112は、例えばアルミニウムのような熱伝導性に優れた金属材料から形成される。また放熱管112は、蓋部53上に凸状に設けられており、導風空間57に導入される冷却風との接触面積が大きくなるように構成されている。
また放熱管112は、図17に示されるように、蓋部53上において所定パターンで折り返すように配設される。放熱管112は、このような折り返し形状を有することで、導風空間57に導入された冷却風との接触面積を広く確保でき、良好な冷却作用が得られるようになっている。
放熱管112の構成について更に具体的に説明すると、放熱管112は、第3の送風通路60から導入される冷却風に沿って延在する複数の放熱部113が、複数の放熱部113より低く形成された複数の折返部114を介して連結された形状を有する。放熱管112は、このような折り返し形状を有することで、蓋部53上の限られたスペースに長い放熱管112をコンパクトに配置することができる。また複数の放熱部113は送風方向に沿って延在するため、冷却風の流れを妨げず、また折返部114が放熱部113より低く形成されることにより、隣り合う放熱部113間に外気がスムーズに導入されるようになっている。このようにして放熱管112では、良好な冷却作用が得られる。
尚、本実施形態では、導風空間57の内壁を構成する蓋部53上において、低圧側吐出口104は、高圧側吸込口106に比べて冷却風の下流側に配置されている。そして図17にて放熱管112中の加圧気体の流路を破線で示したように、放熱管112は低圧側吐出口104から蓋部53の中心部より下流側を通り、中心部を囲むように上流側を迂回して高圧側吸込口106に接続されるように構成されている。これにより、放熱管112を流れる加圧気体は図17に矢印で示されるように、下流側から上流側に向けて流れる。その結果、冷却風の上流側では、下流側に比べて放熱管112を流れる加圧気体の温度が低下する。そのため、上流側では冷却風は比較的低温な加圧気体と熱交換することとなり、比較的高温な加圧気体が流れる下流側の放熱管112にまで温度が低い冷却風を供給できる。これにより、放熱管112全体にわたって良好な冷却作用が得られる。
尚、中間冷却器110を構成する導風空間57は、前述の実施形態のように、吐出管59を通過する加圧気体を冷却するためにも使用されてもよい。この場合、中間冷却器110を構成する導風空間57を利用して、吐出管59から吐出される加圧気体の冷却も兼用することで、例えばアフタークーラ等の外部装置が不要となり、システム規模を抑え、設置スペースや製造コストを効果的に節約できる。
また図14及び図15に示されるように、吐出管59の外表面に放熱フィン97が設けられる場合には、放熱フィン97の配置パターンと、中間冷却器110の放熱管112の配置パターンとを対応させることで、第3の送風通路60から導入される冷却風の通気性を向上させてもよい。
尚、放熱管112は、図5を参照して上述した放熱フィン30に倣って、第3の送風通路60を介して導入される冷却風に対して下流側が上流側より密に配置されていてもよい。これにより、放熱管112に導入される冷却風は、上流側から下流側に向けて流路面積が減少するため、冷却風の温度が高くなる下流側ほど流速が早くなる。その結果、放熱管112全体において均一な冷却効果が得られる。
<6.冷却風の過給構造>
上述の実施形態では、圧縮機本体4で圧縮される気体を、フィルタユニット2の給気口から直接導入する自然吸気式を採用していたが、以下に説明する実施形態のように、過給式を採用してもよい。図19は過給式のスクロール圧縮機1の鉛直断面図である。
尚、図19は図2の変形例であり、対応する構成には共通の符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略する。
図19の実施形態では、圧縮対象となる気体は、送風ユニット8の開口部55から吸い込まれる。すなわち本実施形態では、送風ユニット8から吸い込まれた外気の一部が圧縮対象の気体となるとともに、残りが圧縮機本体4の冷却風として使用される。尚、図2に示されるフィルタユニット2の吸気口12は、本実施形態では封止されている。
このスクロール圧縮機1では、駆動軸22によって送風ファン52が駆動されると、送風ユニット8の開口部55から外気が吸い込まれる。開口部55から取り込まれた外気は、送風ユニット8の側方に接続されたダクト54を介して圧縮機本体4に送られる。ダクト54は、圧縮機本体4の側方に接続されており、上述の実施形態と同様に、第1の送風通路56、第2の送風通路58及び第3の送風通路60に分岐する。このうち第1の送風通路56及び第2の送風通路58に導入された外気は、それぞれ固定スクロール18及び旋回スクロール20の背面側に設けられた放熱フィン24及び30に供給されることで、固定スクロール18及び旋回スクロール20を冷却する。
一方、第3の送風通路60に導入された外気は、圧縮機本体4の導入路15に対して過給される。ここで蓋部53及びカバー63により形成される導風空間57は、その上方に配置されたフィルタユニット2のフィルタケーシング10に連通している(つまりフィルタケーシング10の下方には、導風空間57に連通するように開口部120が設けられている)。そのため、第3の送風通路60から供給される外気は、導風空間57を経由してフィルタユニット2に送られる。フィルタユニット2では、導風空間57から送られた外気がフィルタエレメント14を通過することにより異物が除去された後、圧縮機本体4に対して過給される。
このように固定スクロール18及び旋回スクロール20を冷却するために送風ファン52から供給される冷却風の一部が、圧縮機本体4に過給されるように構成される。つまり、固定スクロール18及び旋回スクロール20の冷却用として用いられる冷却風の一部を利用して過給できるので、簡易な構成ながらも、固定スクロール18及び旋回スクロール20の温度上昇を抑制しつつ、良好な圧縮効率が得られるスクロール圧縮機1を実現できる。
ここで圧縮機本体4に過給される冷却風は、導風空間57を介して過給される。このように導風空間57を経由することで、ダクト54からの冷却風が有する動圧が静圧に変換されて圧縮機本体4に過給される。そのため、ダクト54からの供給気体に脈動のようなバラツキがある場合であっても、安定的な過給を実現できる。特に導風空間57は、ダクト54より大きな流路面積を有するように形成されているため、ダクト54から送られる冷却風の動圧を静圧に良好に変換でき、安定的な過給が可能となっている。
また導風空間57を構成するカバー63は、導風空間57に導入される冷却風を圧縮機本体4の導入路15に向けて整流するように曲面状の内壁を有する。これにより、第3の送風通路60を介して導風空間57に導入される冷却風が、圧縮機本体4の導入路15に効率的に導かれ、良好な過給が可能となる。
尚、本実施形態では、導風空間57は圧縮機本体4に対して第3の送風通路60からの外気を過給するために用いられているが、上述の実施形態と同様に、吐出管59を通過する加圧気体を冷却するために兼用されてもよい。このように導風空間57が複数の機能を実現するように構成することで、システム規模を抑え、設置スペースや製造コストを効果的に節約できる。
以上に、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に変形可能である。
例えば、上記各実施形態は、電動機やエンジン等の動力源によって回転する伝動ベルトを介して駆動軸22が回転する、いわゆるベルト駆動タイプのスクロール流体機械である。しかし、本発明は、ベルト駆動タイプのスクロール流体機械に限定されない。本願発明は、例えば、動力源の駆動軸の一端に旋回プレート32が直結され、駆動軸の他端に送風ファン52が固定された、いわゆる動力源直結タイプのスクロール流体機械に対しても適用可能である。