JP2018170091A - X線管装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置を提供する。【解決手段】X線管装置10は、X線管30と、第1磁気偏向部110と、を備える。X線管30は、陰極36と、ターゲット面35bを有する陽極ターゲット35と、反跳電子コレクタ38と、真空外囲器31と、を具備する。反跳電子コレクタ38は、陽極ターゲット35に印加される電圧よりも低い電圧が印加される複数のコレクタ電極38a,38b,38cを有し、複数のコレクタ電極により反跳電子の少なくとも一部を減速させかつ捕集する。第1磁気偏向部は、第1磁場H1を陽極ターゲット35の表面の近傍の空間につくる。第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3は、第1平面S1に沿った方向である。角度αは、10°以上20°以下である。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、X線管装置に関する。
X線管装置は、X線管を備えている。X線管は、陽極ターゲットに電子ビームを衝突しX線を発生する構成である。X線管装置は、医療用の診断装置あるいは工業用の非破壊検査装置や材料分析装置など、多くの用途に利用されている。
X線管では、陰極から放射された電子は、陰極と陽極ターゲットとの間の電位勾配により加速され、集束され、電子ビームとなる。電子ビームは、典型的には50〜500keVのエネルギを持って、陽極ターゲットのターゲット面に衝突してX線発生源となる焦点を形成する。電子ビームは、陽極ターゲットのターゲット面に略垂直(90°±20°)に衝突する。焦点に高いエネルギを持った電子ビームが衝突すると、電子ビームは、ターゲット材により急速に減速され、X線を放出する。X線に変換される割合は、陽極ターゲットに衝突する電子の運動エネルギの中の1%以下である。残りの電子の運動エネルギは熱に変換される。
このような従来X線管に比べてX線強度を増大させる改良X線管が開示されている(特許文献4乃至8)。この改良X線管は、従来X線管よりもターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成する。これにより、X線窓から放出されるX線強度を増大させている。特許文献6の表を参照すると、焦点温度を同一とした条件において、改良X線管は、従来X線管に比べてX線強度を、X線管電圧である50kV、150kV、300kV、500kVのそれぞれに対応して、最大で1.4倍、1.6倍、2.0倍、2.4倍に増大させることができることが示されている。
また、特許文献6の表を参照すると、X線出力を同一とする条件においては、改良X線管は、従来X線管に比べて焦点の熱負荷を、X線管電圧である50kV、150kV、300kV、500kVのそれぞれに対応して、最大で0.71倍、0.63倍、0.50倍、0.42倍に減少させることができることが示されている。
実公平1−45082号公報 特開平3−149740号公報 特開2014−22185号公報 米国特許第3719846号明細書 米国特許第4607380号明細書 米国特許第5128977号明細書 米国特許第5828727号明細書 米国特許第6421422号明細書
MODERN DIAGNOSTIC X-RAY SOURCES:Rolf Behling, 2016 CRC Press
本実施形態は、ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置を提供する。
一実施形態に係るX線管装置は、
第1方向に電子ビームを放出する電子放出源を有し負の高電圧が印加される陰極と、第2方向から前記電子ビームが入射されることにより反跳電子が多く散乱する側となる第3方向に利用X線束を放出する焦点が形成されるターゲット面を有し接地され若しくは正の高電圧が印加される陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに印加される電圧よりも低い電圧が印加される複数のコレクタ電極を有し前記複数のコレクタ電極により前記反跳電子の少なくとも一部を減速させかつ捕集する反跳電子コレクタと、前記陰極と前記陽極ターゲットと前記反跳電子コレクタとを収容し前記利用X線束を透過させるX線放射窓を有し内部が真空状態である真空外囲器と、を具備したX線管と、
前記真空外囲器の外側に配置され、前記焦点から前記X線放射窓側に向かって放出される前記反跳電子を偏向させて前記反跳電子を前記反跳電子コレクタに入射させる第1磁場を前記陽極ターゲットの表面の近傍の空間につくる第1磁気偏向部と、を備え、
前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向は、第1平面に沿った方向であり、
前記焦点が形成される位置の前記ターゲット面に接する第2平面から前記第2方向がなす角度は、10°以上20°以下である。
図1は、第1の実施形態の実施例1に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図2は、上記第1の実施形態の実施例2に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図3は、上記第1の実施形態の実施例3に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図4は、上記第1の実施形態の実施例4に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図5は、上記第1の実施形態の実施例5に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図6は、上記第1の実施形態の実施例6に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図7は、上記第1の実施形態の実施例7に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図8は、上記第1の実施形態の実施例8に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。 図9は、上記第1の実施形態の各種平面、各種方向などを説明するための斜視図である。 図10は、上記第1の実施形態を説明するための図であり、反跳電子の放出数の角度分布をグラフで示す図である。 図11は、上記第1の実施形態を説明するための他の図であり、ターゲット面で吸収されるエネルギの、ターゲット面に対する電子ビームの入射角の依存性を示す図である。 図12は、上記実施例1乃至4及び6乃至8のX線管装置において、上方に偏向された反跳電子(反跳電子コレクタに入射する59%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記59%の反跳電子の総運動エネルギの実質55%が回生されることを説明するための図である。 図13は、上記実施例2乃至4及び6乃至8のX線管装置において、上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向された反跳電子(残りの41%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質31%が回生されることを説明するための図である。 図14は、上記実施例5のX線管装置において、上方に偏向された反跳電子(反跳電子コレクタに入射する59%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記59%の反跳電子の総運動エネルギの実質62%が回生されることを説明するための図である。 図15は、上記実施例5のX線管装置において、上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向された反跳電子(残りの41%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質26%が回生されることを説明するための図である。 図16は、第2の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。 図17は、図16に示したX線管を示す断面図である。 図18は、図16に示したX線管を示す他の断面図である。 図19は、第3の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図である。 図20は、第4の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図である。 図21は、第5の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図である。 図22は、比較例1のX線管装置のX線管を示す断面図である。
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
特許文献6(米国特許第5128977号明細書)の表に記載されているように、焦点温度を同一とした条件において、改良X線管のX線管電流を、比較例のX線管のX線管電流の2倍に増大させる必要がある。この場合、消費電力は増大する。なお、上記改良X線管は、ターゲット面に浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成するX線管である。上記比較例のX線管は、ターゲット面に略垂直に電子ビームを入射させて焦点を形成するX線管である。上記X線管電流は、陽極ターゲットに入射する電子ビームの電流であり、以下、管電流と称する。
また、特許文献6の表に記載されているように、X線出力を同一とする条件において、上記比較例のX線管の管電流に対する上記改良X線管の管電流の比率iを、X線管電圧50kV、150kVに対応して、それぞれ1.42、1.26とする必要があり、やはり消費電力は増加傾向を示すことになる。ここで、上記X線管電圧は、X線管の陽極ターゲットと陰極との間に加えられる電位差であり、以下、管電圧と称する。上記比率iは、管電圧が300kV、500kVに対しては、それずれ1.00、0.82である。上記の場合、消費電力は減少傾向を示すが、その効果は限定的である。
上記のことから、ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成するX線管装置においても、低消費電力化を図ることのできる技術が求められている。
そこで、本発明の実施形態においては、消費電力が増大する問題を解決することにより、ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成することができ、上記比較例のX線管を備えるX線管装置に比べて消費電力を低減できるX線管装置を得ることができるものである。次に、上記問題を解決するための手段及び手法について説明する。
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
又、上述した特許文献6の表に基づく比率iの数値は、後述する角度αが10°である改良X線管を仮定している。一方、特許文献8の図3によれば、改良X線管は、αの値が10°≦α≦20°の範囲でほぼ同一のX線出力増大効果が得られることが示されている。このことは、ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成させた場合、管電流値とX線出力値の関係は10°≦α≦20°の範囲ではほとんど変わらないことを示唆している。そこで、以下では上述した特許文献6の表に基づく比率iの数値は、αが10°≦α≦20°の範囲で同一であるものと仮定する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るX線管装置について詳細に説明する。第1の実施形態では、X線管装置の基本的な概念を説明する。また、第1の実施形態では、実施例1乃至実施例8のX線管装置を例に説明する。
(実施例1)
まず、実施例1に係るX線管装置について説明する。図1は、実施例1に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。
図1に示すように、X線管装置10は、X線管30と、高電圧電源16と、磁気偏向部110と、偏向電源115とを備えている。実施例1のX線管30は、陽極接地方式のX線管である。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、反跳電子コレクタ(反跳電子コレクタユニット)38と、集束電極37と、真空外囲器31とを備えている。
陰極36は、電子放出源36aと、集束電極(集束カップ)36bとを有している。電子放出源36aは、第1方向d1に電子ビームを放出する。実施例1において、第1方向d1はZ方向と平行である。電子放出源36aは、平板状又はコイル状のフィラメント等で形成されている熱電子放出源である。集束電極36bは、環状に形成され、電子放出源36aから陽極ターゲット35に向かう電子の軌道を囲んでいる。集束電極36bは電子ビームを集束し、電子ビーム(電子の分布形状)を整形(適正化)する。
陰極36には、負の高電圧が印加される。電子ビームを整形するため、集束電極36bには電子放出源36aに印加される電圧を基準として+10kV以下の電圧が電源E1によりさらに印加されている。集束電極36bに与える電圧値を変更可能であるとより好ましい。上記電圧値の変更により、電子ビームの形状を変更させ、後述する焦点Fのサイズを調整することができる。電子放出源36aは陰極36に印加される電圧Vcが印加され、電源E2により電流が供給されて加熱される。
陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられたターゲット面35bを有している。ターゲット面35bは、第1方向d1に垂直ではなく、後述するX線放射窓33と対向する方向に傾斜している。ターゲット面35bには、第2方向d2から電子ビームが入射されることにより、反跳電子が多く散乱する側となる第3方向d3に利用X線束を放出する焦点Fが形成される。実施例1において、第3方向d3はX方向に平行である。なお、第3方向d3は、X線の進行方向に平行な方向であり、利用X線束の中心を通る。そして、第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3は、第1平面S1に沿った方向である。
また、実施例1において、焦点F及び電子放出源36aは、第1平面S1に平行な方向を長手方向とする矩形もしくは長円形状である。ここで、上記長円は、角丸長方形であり、同一の長さを持つ平行な一対の線と、同一の半径を持つ一対の半円と、を有している。
ターゲット面35bは平面である。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。ターゲット面35bは、タングステンやタングステン合金など陽極ターゲット35より融点の高い金属で形成されている。陽極ターゲット35は、接地(接地電位に設定)され若しくは正の高電圧が印加される。実施例1において、陽極ターゲット35は接地されている。
真空外囲器31は、陽極ターゲット35、陰極36、集束電極37及び反跳電子コレクタ38を収容している。真空外囲器31は、真空容器32、及びX線放射窓33を有している。真空外囲器31の内部は真空状態である。真空外囲器31の内部に後述する磁場H1,H2の作用を許可するため、真空容器32(真空外囲器31)は、銅、ステンレス、アルミニウム等の非磁性の金属、及びガラス、セラミクス等の絶縁物で形成されている。実施例1において、真空容器32は銅で形成されている。真空容器32は側壁32aを有している。
X線放射窓33は、側壁32aの開口部に気密に設けられている。X線放射窓33は利用X線束を透過させるものである。この実施形態において、X線放射窓33は、ベリリウムで形成されている。X線放射窓33のX線透過方向の厚みは、例えば0.1乃至3mmである。その他、X線放射窓33は、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム鋼、鉄合金、ガラス、セラミクスのうちの何れか1つを主成分として形成することも可能である。上記のように、X線放射窓33を形成する材料は、ベリリウムより安価な材料に代替可能である。
磁気偏向部110は、真空外囲器31の外側に配置されている。実施例1では、第1磁気偏向部及び第2磁気偏向部は、共用されている。言い換えると、実施例1の磁気偏向部110は、第1磁気偏向部及び第2磁気偏向部として機能している。但し、実施例1と異なり、第1磁気偏向部及び第2磁気偏向部は、互いに独立して設けられていてもよい。
磁気偏向部(第1磁気偏向部)110は、焦点FからX線放射窓33に向かって放出される反跳電子を偏向させ反跳電子を反跳電子コレクタ38に入射させる磁場(第1磁場)H1を陽極ターゲット35の表面の近傍の空間につくる。実施例1では、磁気偏向部(第1磁気偏向部)110は、焦点FからX線放射窓33側に向かって放出される反跳電子を第1方向d1と反対方向(Z方向)に偏向させて反跳電子コレクタ38に入射させる。
第1方向d1及び第2方向d2が下方を示すようにX線放射窓33側から磁場H1に視点をおいた場合を仮定すると、磁気偏向部(第1磁気偏向部)110は、第1平面S1に垂直な左向きの磁場H1を反跳電子に作用させる。
磁気偏向部(第2磁気偏向部)110は、陰極36から陽極ターゲット35に向かう電子ビームを偏向させ上記電子ビームの進行方向を第1方向d1から第2方向d2に連続的に変化させる磁場(第2磁場)H2を陽極ターゲット35の表面の近傍の空間につくる。実施例1において、第1方向d1は、陽極ターゲット35に向かう方向であり、第3方向d3に垂直な方向である。
第1方向d1及び第2方向d2が下方を示すようにX線放射窓33側から磁場H2に視点をおいた場合を仮定すると、磁気偏向部(第2磁気偏向部)110は、第1平面S1に垂直な左向きの磁場H2を電子ビームに作用させる。
実施例1において、磁場H1及び磁場H2の向きは第5方向d5(Y方向に平行な方向)であり、第5方向d5は第1方向d1及び第3方向d3とそれぞれ直交する方向である。
磁気偏向部110は、図示しない2個の磁極と、磁極を接続したヨーク112と、ヨーク112に巻かれたコイル113とを有している。実施例1において、磁気偏向部110は、電磁石を利用しているが、これに限定されるものではなく永久磁石を利用するものであってもよい。
偏向電源115は、磁気偏向部110のコイル113に電流を供給するものである。磁気偏向部110及び偏向電源115は、偏向磁場発生ユニットを形成している。
磁気偏向部110は、磁場H2により電子ビームに作用するローレンツ力を利用するものである。電子ビームは磁場H2の影響を常に受けるため、電子ビームの進行方向は第1方向d1から第2方向d2に連続的に変化し、電子ビームをターゲット面35bに対して浅い角度で入射させることができる。電子ビームの軌道は、サイクロイド曲線もしくは円軌道となる。実施例1では、電子ビームの軌道はほぼ円軌道である。なお、一様な電界空間または無電界空間で一様な磁界がある場合に、電子ビームの軌道がサイクロイド曲線または円軌道となることは、例えば下記の文献に示されている。
基礎電子管工学(山本賢三監訳、昭和41年廣川書店発行)
原著:Principles of Electron Tubes ( J.W.GEWARTOWSKI ,H.A.WATSON ,1965 , D.VAN NOSTRAND COMPANY,Inc.)
なお、ターゲット面35bへの電子ビームの入射角(第2方向d2の向き)は、磁場H2の大きさを調整することにより、目的とする角度(向き)に設定可能である。
ここで、焦点Fが形成される位置のターゲット面35bに接する平面を第2平面S2とする。第2平面S2から第2方向d2がなす角度をαとする。第2平面S2から第3方向d3がなす角度をβとする。
角度αは、10°以上20°以下である(10°≦α≦20°)。なお、実施例1おいて、角度αは、第1方向d1の向き及び磁場H2の大きさに依存している。角度βは、特に限定されるものではないが、例えば、0°より大きく20°以下である(0°<β≦20°)。実施例1において、角度αは10°〜20°であり、角度βは10°である。
角度αは、磁場H2の大きさを予め調整することにより、目的とする値に設定可能である。電子ビームの入射位置や入射角の組立上の誤差は、磁気偏向部110の配置位置を微調整することにより解消することが可能である。
高電圧電源16は、陰極36と陽極ターゲット35との間に高電圧を供給するためのものである。実施例1において、高電圧電源16は、直列に接続された4個の電源16a,16b,16c,16dを有し、陰極36のみに高電圧(負の高電圧)である電圧Vcを供給する。
X線管30の陰極36及び陽極ターゲット35間に、管電圧Vが印加されている。陽極ターゲット35の電位をVA、陰極36の電位をVCとすると、管電圧Vは、VA−VCである。管電圧Vは、50kV乃至500kVである。言い換えると、陰極36に印加される負の高電圧は、陽極ターゲット35に印加される電圧を基準として−50乃至−500kVの範囲内である。
実施例1において、陽極ターゲット35は接地されているため、陰極36に印加される電圧Vcは、−50乃至−500kVの範囲内である。
反跳電子コレクタ38は、陽極ターゲットに印加される電圧よりも負の電圧が印加される複数のコレクタ電極を有している。実施例1の反跳電子コレクタ38は、3個のコレクタ電極38a,38b、38cを有している。複数のコレクタ電極38a,38b、38cは、互いに電気的に絶縁されている。実施例1のコレクタ電極38a,38b、38cは、真空容器32の内部に収容されているが、これに限らず、真空容器32とともに真空外囲器31を形成してもよい。反跳電子コレクタ38は、複数のコレクタ電極38a,38b、38cにより反跳電子の少なくとも一部を減速させかつ捕集するように構成されている。
コレクタ電極38aは、陽極ターゲット35とコレクタ電極38bとの間に位置し、電源16aの負極に接続され、電圧V1が印加される。コレクタ電極38bは、コレクタ電極38aとコレクタ電極38cとの間に位置し、電源16bの負極に接続され、電圧V1より負の電圧V2が印加される。コレクタ電極38cは、コレクタ電極38a及びコレクタ電極38bより陽極ターゲット35から離れて位置し、電源16cの負極に接続され、電圧V2より負の電圧V3が印加される。
集束電極37は、陰極36と陽極ターゲット35との間に位置し、かつ、コレクタ電極38aと陽極ターゲット35との間に位置している。実施例1の集束電極37は、真空容器32の内部に収容されているが、これに限らず、真空容器32とともに真空外囲器31を形成してもよい。集束電極37は、真空容器32とともに接地されている。
集束電極37は、陰極36から陽極ターゲット35に向かう電子ビームが通過する貫通孔を有している。上記貫通孔は、円形であり、集束電極37の第1筒部の内部に形成されている。第1筒部は、電子ビームの軌道を取囲み、テーパ筒形状を有し、陰極36に向かって凸となる。第1筒部は、陽極ターゲット35から陰極36に向かって内径が次第に小さくなる筒状に形成されている。第1筒部において、陽極ターゲット35側の開口面積は、陰極36側の開口面積より大きい。集束電極37の第1筒部は、電子ビームを集束するように構成されている。なお、実施例1において、集束電極37の第1筒部は、陽極ターゲット35から陰極36に向かう反跳電子を捕捉するようにも構成されている。
さらに、集束電極37は、陽極ターゲット35からコレクタ電極38a,38b、38cに向かう反跳電子が通過する他の貫通孔を有している。上記他の貫通孔は、円形であり、集束電極37の第2筒部の内部に形成されている。同様に、コレクタ電極38a,38bは、それぞれ陽極ターゲット35からコレクタ電極38cに向かう反跳電子が通過する貫通孔を有している。各貫通孔は、円形であり、コレクタ電極38a,38bの筒部の内部に形成されている。反跳電子が通過する集束電極37及びコレクタ電極38a,38bの各筒部は、陽極ターゲット35からコレクタ電極38cに向かう反跳電子の軌道を取囲み、テーパ筒形状を有し、陽極ターゲット35に向かって凸となる。上記各筒部において、コレクタ電極38c側の開口面積は、陽極ターゲット35側の開口面積より大きい。
上述したように構成されたX線管30では、例えば、陰極36に−50kVか−50kVより負の電圧Vcを印加する。陽極ターゲット35、集束電極37及び真空外囲器31は接地されている。陰極36の電子放出源36aには加熱するための電流が与えられる。
これにより陰極36から放出される電子ビームは、磁気偏向部110により連続的に偏向され、陽極ターゲット35のターゲット面35bに入射される。そして、ターゲット面35bに形成される焦点FからX線が放射され、X線はX線放射窓33を透過して外部へ放射される。焦点Fから放出される反跳電子は、磁気偏向部110により偏向され、反跳電子コレクタ38で捕集される。
(実施例2)
次に、実施例2に係るX線管装置について説明する。図2は、実施例2に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。実施例2では、上記実施例1に係るX線管装置との相違点について説明する。
図2に示すように、集束電極37とコレクタ電極38aとは、一体に形成されている。言い換えると、集束電極37とコレクタ電極38aとは、単個の電極を共用している。高電圧電源16は、直列に接続された4個の電源16a,16b,16c,16dを有している。コレクタ電極38a(集束電極37)は、電源16aの負極に接続され、電圧V1が印加される。
(実施例3)
次に、実施例3に係るX線管装置について説明する。図3は、実施例3に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。実施例3では、上記実施例1に係るX線管装置との相違点について説明する。
図3に示すように、X線管装置10は、集束電極37無しに形成されている。陰極36は、引出電極36cをさらに備えている。引出電極36cには電圧が電源E3によりさらに印加されている。引出電極36cは、電子放出源36aに電界を作用させることができる。実施例3では、電子ビームの軌道はサイクロイド曲線である。
実施例3では、電子放出源36aにコールドエミッタを使用している。比較例のX線管でコールドエミッタを電子放出源として使用すると、焦点近傍で発生した正イオンが電界の作用でコールドエミッタを衝撃してコールドエミッタが劣化又は破壊する恐れがあった。これに対し、実施例3のX線管30では、コールドエミッタと焦点Fとは互いにX方向にずれて配置されている。このため、実施例3では、焦点F近傍で正イオンが発生した場合でも、正イオンがコールドエミッタを衝撃する恐れがない。電子放出源36aとしてフィラメントを使用する場合に比べて、フィラメント加熱に要する電力が不要となるメリットを有する。このため、実施例3のX線管装置10は、電源E2無しに形成されている。
実施例3の高電圧電源16は、上記実施例1及び実施例2と同様に、直列に接続された4個の電源16a,16b,16c,16dを有している。
(実施例4)
次に、実施例4に係るX線管装置について説明する。図4は、実施例4に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。実施例4では、上記実施例1に係るX線管装置との相違点について説明する。
図4に示すように、X線管装置10は、集束電極37無しに形成されている。第1方向d1は第2方向d2と平行であり、第1方向d1の向きは第2方向d2の向きと同一である。第1方向d1及び第2方向d2が上記の関係になるように、陰極36が構成され、配置されている。電子ビームの軌道は直線である。このため、実施例4の磁気偏向部110は、第1磁気偏向部として機能しているが、第2磁気偏向部として機能していない。
X線管装置10は、集束筒34を有している。集束筒34は、陽極ターゲット35に取り付けられ、金属で形成され、陽極ターゲット35と同電位となる。集束筒34の中心軸は、電子ビームの軌道と一致している。陰極36の陰極カップを集束筒34と同軸的に配置し、上記陰極カップを集束筒34の入り口に対向させている。これにより、電子放出源36aから放射された電子ビームは集束筒により加速及び集束されて、ターゲット面35bに対して浅い角度αで入射させることができる。
実施例4の高電圧電源16は、上記実施例2などと同様に、直列に接続された4個の電源16a,16b,16c,16dを有している。
(実施例5)
次に、実施例5に係るX線管装置について説明する。図5は、実施例5に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。
図5に示すように、実施例5に係るX線管装置10は、中性点接地方式のX線管30を有している以外、上記実施例1と同様に構成されている。X線管装置10は、高電圧電源15をさらに備えている。実施例5において、高電圧電源15は、陽極ターゲット35に高電圧(正の高電圧)である電圧Vaを供給する。
集束電極37はコレクタ電極の一つを構成しており、印加される電圧V1は接地電位である。コレクタ電極38aは、電源16aの負極に接続され、電圧V1より負の電圧V2が印加される。コレクタ電極38bは、電源16bの負極に接続され、電圧V2より負の電圧V3が印加される。コレクタ電極38cは、電源16cの負極に接続され、電圧V3より負の電圧V4が印加される。V1>V2>V3>V4である。なお、管電圧Vは、50kV乃至500kVである。
(実施例6)
次に、実施例6に係るX線管装置について説明する。図6は、実施例6に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。
図6に示すように、実施例6に係るX線管装置10は、中性点接地方式のX線管30を有している以外、上記実施例2と同様に構成されている。
(実施例7)
次に、実施例7に係るX線管装置について説明する。図7は、実施例7に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。
図7に示すように、実施例7に係るX線管装置10は、中性点接地方式のX線管30を有している以外、上記実施例3と同様に構成されている。
(実施例8)
次に、実施例8に係るX線管装置について説明する。図8は、実施例8に係るX線管装置を示す模式図であり、ターゲット面に沿った方向から見た図である。
図8に示すように、実施例8に係るX線管装置10は、中性点接地方式のX線管30を有している以外、上記実施例4と同様に構成されている。
次に、第1の実施形態において、ターゲット面に対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点を形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得るための要件1、要件2及び要件3について説明する。
(要件1)
要件1は、大まかに、ターゲット面35bに浅い角度で電子ビームを入射することである。図9は、上記第1の実施形態の各種平面、各種方向などを説明するための斜視図である。
図9に示すように、第4方向d4は、焦点Fを通りターゲット面35bの上方を向き第2平面S2に垂直な方向である。第2方向d2及び第4方向d4に沿った仮想上の平面を第1仮想平面P1とする。第3方向d3及び第4方向d4に沿った仮想上の平面を第2仮想平面P2とする。第1仮想平面P1と第2仮想平面P2とがなす角度を角度γとする。
本実施形態において、第1方向d1は、第1仮想平面P1上の方向である。角度γは180°(=0°)である。第1仮想平面P1及び第2仮想平面P2は、同一の第1平面S1上にある。第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3は、同一の第1平面S1上の互いに異なる方向である。上述したように、第1の実施形態では、10°≦α≦20°であり、0°<β≦20°である。
反跳電子の飛散方向の分布は、入射する電子ビームがターゲット面35bで正反射する方向に最も多くなる。その詳細を図10に示す。なお、図10は、非特許文献1(MODERN DIAGNOSTIC X-RAY SOURCES:Rolf Behling, 2016 CRC Press)に示されている。
図10に示すように、impact angle が80°(α=20°)であるグラフで示される面積(上記グラフの下方の総面積)のうち、Take-off angleが45°以上90°以下の範囲の面積A1を右下がりの斜線で示し、Take-off angleが45°未満の範囲の面積A2を右上がりの斜線で示している。
ここで、
A1/(A1+A2)=p=0.59であり、
A2/(A1+A2)=0.41である。
ターゲット面35bに同一量の電子ビームを入射した場合、10°≦α≦20°である第1の実施形態に係るX線管装置10における反跳電子の放出総数は、α=90°〜80°である比較例のX線管装置における反跳電子の放出総数よりも増加する。
また、Take-off angleが45°から90°の、言い換えるとターゲット面35bからの仰角が45°から0°の狭い前方域に含まれる反跳電子の放出数の割合pは、比較例の14%から59%へと増加する。なお、上記14%は角度αが90°〜80°である場合の値であり、上記59%は角度αが20°である場合の値である。
角度αが90°〜80°である場合と角度αが20°以下である場合との比較では、上記割合pの値はより高くなると予想されるが、具体的な計算データはない。このため、本願発明の実施形態の効果を過小評価することになるが、上記割合pの値として、以下、59%を流用する。
ターゲット面35bに同一量の電子ビームを入射した場合、電子ビームが入射した時点でターゲット面35bに吸収されるエネルギの割合E/E=eは、図11に示したグラフから求めることができる。ここで、Eは陽極ターゲット35に吸収されるエネルギであり、Eは陽極ターゲット35に入射する電子ビームのエネルギである。なお、図11に示したグラフは、上記特許文献6の図4に示されている。図11から分かるように、上記割合E/Eは、α=10°の場合、比較例の60%から実質30%へと減少し、α=20°の場合、比較例の60%から実質38%へと減少する。なお、要件1における数値は、以降も適宜、使用される。
上述したことから、要件1を満たすことにより、ターゲット面35bで吸収されるエネルギを減少させることができ、X線放射窓33側に向かう反跳電子の放出数を増加させることができる。
(要件2)
要件2は、大まかに、X線放射窓33側に向かう反跳電子を磁場H1で偏向させることである。
ターゲット面35bからの仰角が45°から0°の狭い前方域に放出された反跳電子の束は、磁場H1により、上方(すなわちZ方向側)に偏向させることができる。ターゲット面35bから放出される反跳電子のうち59%もの多くの反跳電子を上方に偏向させることができる。反跳電子を反跳電子コレクタ38に入射させることにより、反跳電子のエネルギの一部を回生することができる。
ターゲット面35bから放出される反跳電子のうち、残りの41%の反跳電子はターゲット面35bからの仰角が45°から180°の後方域に放出されるものであり、上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向される。そのため、41%の反跳電子は、反跳電子コレクタ38に入射しない。なお、要件2における数値は、以降も適宜、使用される。
上述したことから、要件2を満たすことにより、反跳電子のエネルギの一部を回生することができる。
(要件3)
要件3は、大まかに、X線管30に反跳電子コレクタ38を設置することである。
以下、実施例1〜4および実施例6〜8の場合を例として説明する。
上方に偏向された59%の反跳電子が、複数のコレクタ電極38a,38b、38cを有する反跳電子コレクタ38に入射することにより、反跳電子のエネルギの一部を回生することが可能となる。コレクタ電極38a,38b、38cは、Z方向に互いに近接して並べられ、互いに平行となるように配置されている。コレクタ電極38a,38bの筒部は、同軸的に設けられている。反跳電子は、コレクタ電極38a,38bの筒部の内部を進行することが可能となる。実施例1及び5では、反跳電子は、さらに、集束電極37の第2筒部の内部を進行することが可能となる。
陽極ターゲット35から最も遠い位置のコレクタ電極38cは、板形状を有し、貫通孔を有していない。コレクタ電極38cは、真空外囲器31への反跳電子の衝突を抑制する機能も有している。上記のように、反跳電子コレクタ38には、電圧V1,V2,V3が印加される。V1>V2>V3である。上記した形状のコレクタ電極38a,38bは、Z方向に進行する反跳電子を集束させるように上記反跳電子に電界を作用させる。一方、コレクタ電極38a,38bは、Z方向と反対方向に進行する反跳電子(跳ね返される電子)を発散させるように上記反跳電子に電界を作用させる。反跳電子コレクタ38の作用は下記の通りであるが、実施例5の場合は集束電極37もコレクタ電極の一つである。
次に、上記実施例1を例に、反跳電子コレクタ38の作用について、図1を参照しながら説明する。
反跳電子がコレクタ電極38aに入射する際、反跳電子は電圧V1により減速される。減速された反跳電子のうちでエネルギがV1よりも小さい反跳電子は、コレクタ電極38aの入り口で速度が負となり、コレクタ電極38aを通過することができず、押し返される。このような反跳電子は、接地電位である陽極ターゲット35又は接地電位である集束電極37に衝突して熱に変換される。一方、速度が正の反跳電子は、コレクタ電極38aを通過してコレクタ電極38bに入射する。
コレクタ電極38aを通過した反跳電子がコレクタ電極38bに入射する際、反跳電子は電圧V2により減速される。減速された反跳電子のうちでエネルギがV2よりも小さい反跳電子は、コレクタ電極38bの入り口で速度が負となり、コレクタ電極38bを通過することができず、押し返される。このような反跳電子は、コレクタ電極38aで捕集され、熱に変換される。一方、速度が正の反跳電子は、コレクタ電極38bを通過してコレクタ電極38cに入射する。
コレクタ電極38bを通過した反跳電子がコレクタ電極38cに入射する際、反跳電子は電圧V3により減速される。減速された反跳電子のうちでエネルギがV3よりも小さい反跳電子は、コレクタ電極38cの手前で速度が負となり、コレクタ電極38cに入射することができず、押し返される。このような反跳電子は、コレクタ電極38bで捕集され、熱に変換される。一方、速度が正の反跳電子は、コレクタ電極38cに入射し、熱に変換される。
上記のように、反跳電子は、そのエネルギに依存して反跳電子コレクタ38により分類され、減速または捕集される。反跳電子コレクタ38により減速されたエネルギ分だけ電源16が与える電力が少なくなる。そのため、通常、電力(またはエネルギ)が回生された、あるいは電源16に電力(またはエネルギ)が返されたと表現することができる。なお、回生されなかった残りのエネルギを有する反跳電子は、陽極ターゲット35及び集束電極37に衝突したり、コレクタ電極38a,38bで捕集されたり、コレクタ電極38cに入射したりして、残りのエネルギは熱に変換される。
上述したことから、上記要件2の場合と同様、要件3を満たすことにより、反跳電子のエネルギの一部を回生することができる。
(上記実施例1の省エネ効果)
次に、上記実施例1のX線管装置10の省エネ効果について説明する。まず、上記実施例1のX線管装置10の消費電力と、比較例のX線管装置の消費電力と、を対比する。上記比較例のX線管装置は、角度αが80°〜90°であり、ターゲット面35bから放出される反跳電子のエネルギの一部を回生するように構成されていない。言い換えると、上記比較例のX線管装置は、反跳電子コレクタ38及び磁気偏向部110無しに形成されている。なお、ここでは、上記実施例1の電圧V1,V2,V3,Vcの関係を次のように仮定する。
V1/Vc=60%
V2/Vc=80%
V3/Vc=95%
なお、上記電圧V1,V2,V3,Vcの関係は、上記実施例2乃至4の場合においても同様である。
ここで、図12を参照する。図12は、上記実施例1乃至4及び6乃至8のX線管装置10において、上方に偏向された反跳電子(反跳電子コレクタ38に入射する59%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記59%の反跳電子の総運動エネルギの実質55%が回生されることを説明するための図である。なお、図12の曲線グラフは、上記非特許文献1に示されている。
図12に示すように、ハッチングが記載された領域の総面積と、曲線グラフで示される総面積(上記曲線グラフの下方の総面積)と、の比(面積比)qは、実質55%であった。なお、図中、コレクタ電極38aで回生されるエネルギを表す領域には右上がりに延びたハッチングを記載し、コレクタ電極38bで回生されるエネルギを表す領域には左右に延びたハッチングを記載し、コレクタ電極38cで回生されるエネルギを表す領域には右下がりに延びたハッチングを記載している。
上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向された41%の反跳電子は、接地電位の集束電極37に入射してそのほとんどが熱に変換される。言い換えると、実施例1において、上記41%の反跳電子のエネルギは、回生されない。
上述したことから、実施例1のX線管装置10が出力するX線強度と、上記比較例のX線管装置が出力するX線強度と、が同一であると仮定し、上記比較例のX線管装置の消費電力を1.00とすると、実施例1のX線管装置10の消費電力P1は、次のように見積もられる。
P1=i×{e+(1−e)×[(1−p)+p×(1−q)]}
ここで、上記消費電力P1を算出するため、上記比率i、上記割合E/E=e、上記割合p、及び上記比(面積比)qを導入する。なお、消費電力P1は規格化された値であり、消費電力P1が1.00未満となれば省エネ効果が得られるものである。
まず、角度αが10°である場合に注目する。
・角度α=10°であり、管電圧=50kVである場合:
P1=1.42×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=1.10
・角度α=10°であり、管電圧=150kVである場合:
P1=1.26×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=0.97
・角度α=10°であり、管電圧=300kVである場合:
P1=1.00×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=0.77
・角度α=10°であり、管電圧=500kVである場合:
P1=0.82×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=0.63
中間の管電圧の場合の消費電力P1に関しては、内挿により求めることができる。実施例1では、200kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P1は91%乃至63%に低減できることなどが分かる。
次に、角度αが20°である場合に注目する。
・角度α=20°であり、管電圧=50kVである場合:
P1=1.42×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=1.13
・角度α=20°であり、管電圧=150kVである場合:
P1=1.26×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=1.01
・角度α=20°であり、管電圧=300kVである場合:
P1=1.00×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=0.80
・角度α=20°であり、管電圧=500kVである場合:
P1=0.82×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)+0.59×(1−0.55)]}
=0.66
中間の管電圧の場合の消費電力P1に関しては、内挿により求めることができる。実施例1では、200kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P1は94%乃至66%に低減できることなどが分かる。
(上記実施例2乃至4の省エネ効果)
次に、上記実施例2乃至4のX線管装置10の省エネ効果について説明する。まず、上記実施例2乃至4のX線管装置10の各々の消費電力と、比較例のX線管装置の消費電力と、を対比する。
図12に示すように、実施例2乃至4のX線管装置10においても、上方に偏向された反跳電子(反跳電子コレクタ38に入射する59%の反跳電子)の総運動エネルギの実質55%は回生される。
ここで、図13を参照する。図13は、上記実施例2乃至4及び6乃至8のX線管装置10において、上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向された反跳電子(残りの41%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質31%が回生されることを説明するための図である。なお、図13の曲線グラフは、図12の曲線グラフと同様であり、上記非特許文献1に示されている。
図13に示すように、ハッチングが記載された領域の面積と、曲線グラフで示される総面積(上記曲線グラフの下方の総面積)と、の比(面積比)rは、実質31%であった。なお、図中、コレクタ電極38aで回生されるエネルギを表す領域には右上がりに延びたハッチングを記載している。このため、実施例2乃至4のX線管装置10において、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質31%は回生される。
上述したことから、実施例2乃至4のX線管装置10が出力する各々のX線強度と、上記比較例のX線管装置が出力するX線強度と、が同一であると仮定し、上記比較例のX線管装置の消費電力を1.00とすると、実施例2乃至4の各々のX線管装置10の消費電力P2は、次のように見積もられる。
P2=i×{e+(1−e)×[(1−p)×(1−r)+p×(1−q)]}
ここで、上記消費電力P2を算出するため、上記比率i、上記割合E/E=e、上記割合p、上記比(面積比)r及び上記比(面積比)qを導入している。なお、消費電力P2は規格化された値であり、消費電力P2が1.00未満となれば省エネ効果が得られるものである。
まず、角度αが10°である場合に注目する。
・角度α=10°であり、管電圧=50kVである場合:
P2=1.42×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.97
・角度α=10°であり、管電圧=150kVである場合:
P2=1.26×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.86
・角度α=10°であり、管電圧=300kVである場合:
P2=1.00×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.68
・角度α=10°であり、管電圧=500kVである場合:
P2=0.82×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.56
中間の管電圧の場合の消費電力P2に関しては、内挿により求めることができる。実施例2乃至4では、100kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P2は92%乃至56%に低減できることなどが分かる。
次に、角度αが20°である場合に注目する。
・角度α=20°であり、管電圧=50kVである場合:
P2=1.42×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=1.02
・角度α=20°であり、管電圧=150kVである場合:
P2=1.26×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.91
・角度α=20°であり、管電圧=300kVである場合:
P2=1.00×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.72
・角度α=20°であり、管電圧=500kVである場合:
P2=0.82×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.31)+0.59×(1−0.55)]}
=0.59
中間の管電圧の場合の消費電力P2に関しては、内挿により求めることができる。実施例2乃至4では、150kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P2は91%乃至59%に低減できることなどが分かる。
(上記実施例6乃至8の省エネ効果)
次に、上記実施例6乃至8のX線管装置10の省エネ効果について説明する。ここで、上記実施例6乃至8の電圧V1,V2,V3,Vc,Vaの関係を次のように仮定する。
(V1−Va)/(Vc−Va)=60%
(V2−Va)/(Vc−Va)=80%
(V3−Va)/(Vc−Va)=95%
そして、実施例6乃至8のX線管装置10の消費電力P3は、実施例2乃至4のX線管装置10の消費電力P2と同一である。
(上記実施例5の省エネ効果)
次に、上記実施例5のX線管装置10の省エネ効果について説明する。まず、上記実施例5のX線管装置10の消費電力と、比較例のX線管装置の消費電力と、を対比する。ここで、上記実施例5の電圧V1,V2,V3,V4,Vc,Vaの関係を次のように仮定する。
(V1−Va)/(Vc−Va)=50%
(V2−Va)/(Vc−Va)=65%
(V3−Va)/(Vc−Va)=80%
(V4−Va)/(Vc−Va)=95%
ここで、図14を参照する。図14は、上記実施例5のX線管装置10において、上方に偏向された反跳電子(反跳電子コレクタ38に入射する59%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記59%の反跳電子の総運動エネルギの実質62%が回生されることを説明するための図である。なお、図14の曲線グラフは、上記非特許文献1に示されている。
図14に示すように、ハッチングが記載された領域の総面積と、曲線グラフで示される総面積(上記曲線グラフの下方の総面積)と、の比(面積比)qは、実質62%であった。なお、図中、集束電極37で回生されるエネルギを表す領域には上下に延びたハッチングを記載し、コレクタ電極38aで回生されるエネルギを表す領域には右上がりに延びたハッチングを記載し、コレクタ電極38bで回生されるエネルギを表す領域には左右に延びたハッチングを記載し、コレクタ電極38cで回生されるエネルギを表す領域には右下がりに延びたハッチングを記載している。このため、実施例5のX線管装置10において、上記59%の反跳電子の総運動エネルギの実質62%は回生される。
次に、図15を参照する。図15は、上記実施例5のX線管装置10において、上方よりも入射電子側に逸れた方向に偏向された反跳電子(残りの41%の反跳電子)のエネルギ分布を示す曲線グラフであり、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質26%が回生されることを説明するための図である。なお、図15の曲線グラフは、図14の曲線グラフと同様であり、上記非特許文献1に示されている。
図15に示すように、ハッチングが記載された領域の面積と、曲線グラフで示される総面積(上記曲線グラフの下方の総面積)と、の比(面積比)rは、実質26%であった。なお、図中、集束電極37で回生されるエネルギを表す領域には上下に延びたハッチングを記載している。このため、実施例5のX線管装置10において、上記41%の反跳電子の総運動エネルギの実質26%は回生される。
上述したことから、実施例5のX線管装置10が出力するX線強度と、上記比較例のX線管装置が出力するX線強度と、が同一であると仮定し、上記比較例のX線管装置の消費電力を1.00とすると、実施例5のX線管装置10の消費電力P4は、次のように見積もられる。
P4=i×{e+(1−e)×[(1−p)×(1−r)+p×(1−q)]}
ここで、上記消費電力P4を算出するため、上記比率i、上記割合E/E=e、上記割合p、上記比(面積比)r及び上記比(面積比)qを導入している。なお、消費電力P4は規格化された値であり、消費電力P4が1.00未満となれば省エネ効果が得られるものである。
まず、角度αが10°である場合に注目する。
・角度α=10°であり、管電圧=50kVである場合:
P4=1.42×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.95
・角度α=10°であり、管電圧=150kVである場合:
P4=1.26×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.84
・角度α=10°であり、管電圧=300kVである場合:
P4=1.00×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.67
・角度α=10°であり、管電圧=500kVである場合:
P4=0.82×{0.30+(1−0.30)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.55
中間の管電圧の場合の消費電力P4に関しては、内挿により求めることができる。実施例5では、50kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P4は95%乃至55%に低減できることなどが分かる。
次に、角度αが20°である場合に注目する。
・角度α=20°であり、管電圧=50kVである場合:
P4=1.42×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=1.00
・角度α=20°であり、管電圧=150kVである場合:
P4=1.26×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.89
・角度α=20°であり、管電圧=300kVである場合:
P4=1.00×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.71
・角度α=20°であり、管電圧=500kVである場合:
P4=0.82×{0.38+(1−0.38)×[(1−0.59)×(1−0.26)+0.59×(1−0.62)]}
=0.58
中間の管電圧の場合の消費電力P4に関しては、内挿により求めることができる。実施例5では、100kV乃至500kVの管電圧の範囲で、消費電力P4は95%乃至58%に低減できることなどが分かる。
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、磁気偏向部110と、を備えている。X線管30は、陽極ターゲット35と、陰極36と、反跳電子コレクタ38と、真空外囲器31とを備えている。
陰極36は、第1方向d1に電子ビームを放出する電子放出源36aを有し負の高電圧が印加される。
陽極ターゲット35は、ターゲット面35bを有し、接地され若しくは正の高電圧が印加される。ターゲット面35bには、第2方向d2から電子ビームが入射されることにより反跳電子が多く散乱する側となる第3方向d3に利用X線束を放出する焦点Fが形成される。
反跳電子コレクタ38は、陽極ターゲット35に印加される電圧よりも負の電圧が印加される複数のコレクタ電極38a,38b,38cを有し、コレクタ電極38a,38b,38cにより反跳電子の少なくとも一部を減速させかつ捕集する。
真空外囲器31は、陰極36と陽極ターゲット35と反跳電子コレクタ38とを収容し、利用X線束を透過させるX線放射窓33を有し、内部が真空状態である。
磁気偏向部110は、真空外囲器31の外側に配置され、焦点FからX線放射窓33側に向かって放出される反跳電子を偏向させて反跳電子を反跳電子コレクタ38に入射させる磁場H1を陽極ターゲット35の表面の近傍の空間につくる。
第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3は、第1平面S1に沿った方向である。角度αは10°以上20°以下である。
ターゲット面35bに対して比較的浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより、X線出力を同一とする条件において、従来に比べて焦点の熱負荷を低減することができる。
反跳電子は、入射電子があたかもターゲット面35bで鏡面反射する方向に最も多く散乱することから、焦点FからX線放射窓33に向かう方向に多くなるような角度分布をもって飛び出すことになる。そこで、本実施形態において、磁気偏向部110による磁場H1の作用により、X線放射窓33側に向かう反跳電子を偏向させ、反跳電子を反跳電子コレクタ38に入射させることができる。これにより、反跳電子のエネルギの一部を回生することができ、低消費電力化に寄与することができる。
また、上記のように磁場H1を利用することにより、X線放射窓33への反跳電子の直撃を防止することができ、X線放射窓33の加熱を抑制することができる。即ち、X線放射窓33の温度上昇を確実に低減することができる。そして、X線放射窓33の破損を防止することができ、ひいては真空外囲器31の真空破壊を防止することができる。
そして、より頻繁にX線を放出させたり、より長時間に亘ってX線を連続的に放出させたりすることが可能となる。さらに、X線放射窓33の厚みを減少させたり、X線放射窓33を形成する材料を、より安価なアルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム鋼、鉄合金、ガラス、セラミクスのうちの何れか1つに代替したりすることが可能となる。
上記のことから、ターゲット面35bに対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。ここで、本実施形態に係るX線管装置10は、上記第1の実施形態に係るX線管装置の実施例1に相当する。
図16は、第2の実施形態に係るX線管装置を示す断面図であり、X−Z断面を示す図である。なお、X−Z断面とは、X方向及びY方向を含むX−Y平面に平行な断面を指すものである。第2の実施形態において、X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交している。
図16に示すように、X線管装置10は、X線管30、磁気偏向部110、タンク102、高電圧発生器103、電気絶縁用流体104、X線放射口105、エアファン106、リング状ハンドル107、リング状ベース108、及び隔壁109を備えている。第2の実施形態において、X線管装置10は固定陽極型X線管装置であり、X線管30は固定陽極型X線管である。
X線管30は、真空外囲器31、陰極36、陽極ターゲット35、反跳電子コレクタ38などを備えている。真空外囲器31は、例えば、絶縁筒5、陰極構体1、陽極構体2、コレクタ電極構体3、及びフランジ12で構成されている。電子放出源36aは、フィラメントであり、陰極構体1に備えられ、真空外囲器31の内部に配置されている。陽極ターゲット35は、陽極構体2に備えられ、真空外囲器31の内部に配置されている。絶縁筒5及び陰極構体1は、タンク102の内部に配置されている。円盤状のフランジ12の内側には、陽極構体2が挿通され、固定されている。また、フランジ12の下側の面にタンク102の内面が固定されている。すなわち、真空外囲器31は、フランジ12及びO−リング12bを介して、タンク102に固定されている。なお、陽極構体2は、タンク102の下方へ延出している。
磁気偏向部110は、真空外囲器31の外側に配置され、真空外囲器31の内部に磁場H1,H2を発生させる。なお、磁場H1,H2は、上記実施例1と同様であり、図1に示した通りである。磁場H2は、電子放出源36aと陽極ターゲット35との間で、陽極ターゲット35に近接して形成されている。図示した例では、磁気偏向部110は、陽極構体2に対向し、タンク102の下側に配置されている。磁気偏向部110の位置調整や交換の容易性の観点から、磁気偏向部110は、X線管30の外側に配置されていることが望ましく、タンク102の外側に配置されていることが望ましい。
タンク102は、胴部102a、上部102b及び下部102cを備えている。胴部102aは、筒状に形成されており、胴部102aの内部空洞は、Z方向に延在している。胴部102aのうち、上方に位置する開口端は上部102bによって密閉され、下方に位置する開口端は下部102cによって密閉されている。上部102bは、例えばろう接や溶接によって、胴部102aに気密に固定されている。下部102cも、胴部102aに気密に固定されている。下部102cは、例えば中央に開口部を有し、この開口部を貫通するようにX線管30が配置されている。下部102cの開口部には、フランジ12がO−リング12bを介して気密に固定されている。フランジ12の内周部には、陽極構体2が気密に固定されている。このため、タンク102の内部は、密閉状態を維持することができる。
高電圧発生器103は、タンク102の内部に配置されている。高電圧発生器103は、高電圧電源16を有している。高電圧発生器103は、高電圧ケーブル40を介し、陰極構体1及び反跳電子コレクタ38のコレクタ電極38a,38b,38cの各々の充電露出部に接続されている。高電圧発生器103は、陰極構体1に電圧Vcを印加し、コレクタ電極38aに電圧V1を印加し、コレクタ電極38bに電圧V2を印加し、コレクタ電極38cに電圧V3を印加する。電圧Vcは、例えば、−150kV乃至−500kVである。またV1=0.6×Vc、V2=0.8×Vc、及びV3=0.95×Vcである。
X線管装置10がX線を出力している間、電子放出源36aと陽極ターゲット35との間には、管電流が流れる。この管電流は、真空外囲器31中の真空を介した伝導であるために低電流であり、例えば、管電流の値は、3mAである。タンク102の内部には、電気絶縁用流体104が、タンク102の外側の雰囲気圧以上の圧力で封入され、X線管30及び高電圧発生器103を囲んでいる。電気絶縁用流体104は、六フッ化硫黄などの大気よりも電気絶縁性の高いガスで形成され、高電圧発生器103をタンク102から電気的に絶縁している。また、電気絶縁用流体104は、X線管30及び高電圧発生器103を冷却する機能も有している。
X線放射口105は、タンク102の下方に配置され、X方向に陽極構体2と対向している。X線放射窓33を通してX線管30から放射されるX線は、X線放射口105を通してX線管装置10から放射される。
リング状ハンドル107は、タンク102の上方に配置され、タンク102の上部102bに接続されている。リング状ハンドル107は、把持部107aと、把持部107aからタンク102へ延出する複数の支柱107bと、を備えている。X線管装置10は、可搬性を有し、運搬時には把持部107aを把持して移動させることができる。
リング状ベース108は、タンク102の下方に配置され、タンク102の下部102cに接続されている。リング状ベース108は、土台部108aと、土台部108aからタンク102へ延出する複数の支柱108bとを備えている。例えば、X線管装置10は、土台部108aを足にして設置場所に設置される。これにより、X線管装置10は、X線の放射位置を固定することができる。複数の支柱107bは、互いに間隔を空けて配置されている。複数の支柱108bも、互いに間隔を空けて配置されている。
隔壁109は、リング状ベース108の内側に配置され、陽極構体2を囲んでいる。図示した例において、隔壁109は、隔壁109とタンク102の間、及び土台部108a側に複数の間隙を有している。隔壁109の内側には、エアファン106が配置されている。エアファン106は、隔壁109の内側に気流を形成し陽極構体2を冷却するガス冷却装置である。後述するが、陽極構体2を冷却する冷却装置は、ガス冷却装置に限定されるものではなく、例えば、液体冷却装置であってもよく、ペルチェ冷却装置などであってもよい。
図17は、図16に示したX線管30を示す断面図であり、X−Z断面を示す図である。第2の実施形態に係るX線管30は、図1に示した構成を有している。
絶縁筒5は3個の絶縁筒5A,5B,5Cを有し、これらの絶縁筒5A,5B,5Cは絶縁材料を利用して筒状に形成されている。絶縁筒5の内部空洞は、Z方向に延在している。絶縁筒5を形成する絶縁材料は、例えば、アルミナ等のセラミックである。陰極構体1と陽極構体2とは、絶縁筒5を介して所定の間隔で対向配置されている。陰極構体1は、絶縁筒5Cの上側に位置する一端5Caに固定されている。陽極構体2は、絶縁筒5Aの下側に位置する一端5Abに固定され、絶縁筒5の外側に延出している。
陽極構体2は、封止金属リング4を介して、絶縁筒5に固定されている。例えば、封止金属リング4は、コバールで形成されている。陰極構体1は、電子放出源36aと、集束電極(集束カップ)36bとを備えている。陽極構体2は、陽極ターゲット35、陽極室11、及びフランジ12を備えている。3個の絶縁筒5A,5B,5Cの互いに対向する端面には封止金属リングMがろう接され、これら封止金属リングMの当接部を全周にわたって溶接することにより3個の絶縁筒5A,5B,5Cを一体化している。
絶縁筒5A,5B,5Cの外面には、陰極構体1から陽極構体2までの沿面距離を長くするため、上記一端5Ab付近を除いて複数のヒダ13が形成されている。陰極構体1は、絶縁筒5と気密に接合されている。集束電極36bの形状は、下方に開口部を有するカップ状である。電子放出源36aは、集束電極36bの内部に配置され、陽極ターゲット35とZ方向に対向している。集束電極36bは、フィラメントであり、例えばタングステンなどの、高融点の金属で形成されている。
封止金属リング4の直線部4aとは反対側の直線部4bには、フランジ12が固定されている。フランジ12は、封止金属リング4を介して絶縁筒5Aと気密に接合されている。なお、絶縁筒5Aは、フランジ12の上側の面に固定されている。陽極室11は、フランジ12の内周部に気密に接合されている。
陽極室11は、陽極フード11a、X線放射窓33、及びチャンバ11cを有し、箱状に形成されている。X線放射窓33は、チャンバ11cの側面に形成された開口部を閉塞している。陽極ターゲット35は、チャンバ11cの内部に配置されている。なお、陽極室11は、陽極ターゲット35に電気的に接続され、陽極ターゲット35と同電位である。以上のように気密に形成された真空外囲器31の内部空間は、減圧され、真空状態となっている。
陽極ターゲット35は、例えば、Z方向に電子放出源36a及び集束電極36bと対向している。フランジ12がタンク102に電気的に接続されているため、陽極構体2に備えられた陽極ターゲット35は、フランジ12を介して電気的に接地されている。また、陰極構体1は、図16に示した高電圧発生器103によって負の高電圧が印加されるため、電子放出源36a及び集束電極36bを有する陰極36と陽極ターゲット35との間に電位勾配が形成される。電子放出源36aから放出された電子は、陰極36と陽極ターゲット35との間の電位勾配によって、陽極ターゲット35に向かって加速され、電子ビームを形成する。すなわち、電子ビームは、電子放出源36aから上記第1方向d1に出射される。
ターゲット面35bは、第1方向d1と交差する方向でチャンバ11cに取り囲まれている。また、陽極フード11aは、第1方向d1の電子ビームの軌道を取り囲んでいる。電子放出源36aの近傍には、電子ビームを集束させる集束装置が配置されていてもよい。このような集束装置は、例えば、集束電極36bに相当するものであり、電場によって電子ビームの断面形状を変化させる。
陽極室11と陽極ターゲット35とは、共に電気的に接地され同電位である。そのため、陽極室11及び陽極ターゲット35で囲まれた領域は、ほとんど電界が存在しない無電界空間となっている。陽極ターゲット35は、電子放出源36aと対向する側にターゲット面35bを有している。ターゲット面35bにおいて、電子ビームが入射してX線を放出する焦点Fが形成される。ターゲット面35bは、真空外囲器31の内部に位置し、無電界空間に面している。
磁気偏向部110は、ターゲット面35bを含む無電界空間に磁場H2をつくり、ローレンツ力を利用して電子ビームの進行方向を変化させる。このとき、電子ビームの軌道は、第1方向d1から上記第2方向d2へ連続的に偏向し、ターゲット面35bには第2方向d2の電子ビームが入射する。電子ビームは、典型的には50〜500keVのエネルギを持って、ターゲット面35bに衝突する。高いエネルギを持った電子ビームが陽極ターゲット35への入射によって急速に減速されることにより、X線が放出される。X線放射窓33は、焦点Fから上記第3方向d3に放出されるX線を透過させる。
図18は、図16に示したX線管30を示す他の断面図であり、Y−Z断面を示す図である。
図18に示すように、第2の実施形態において、磁気偏向部110は、永久磁石であり、N極である磁極121と、S極である磁極122と、ヨーク123とを備えている。磁極121は、Y方向で磁極122と対向している。ターゲット面35bは、磁極121と磁極122との間に位置している。ヨーク123は、磁極121と磁極122とを接続している。
図18のY−Z断面において、陽極ターゲット35を下側、反跳電子コレクタ38を上側とした場合、電子ビームは、ターゲット面35bに対して上方から入射している。すなわち、ここで図示するY−Z断面は、電子ビームの進行方向である第1方向d1及び第2方向d2が下方を示すように視点を置いた場合の断面であり、図17においてX線放射窓33側から焦点Fに視点を置いた場合の断面である。このような視点を仮定すると、磁気偏向部110は、前述した第1仮想平面P1に垂直な左向き(第5方向d5)の磁場H1,H2を発生させる。なお、磁気偏向部110は、永久磁石に限定されるものではなく、電磁石であってもよい。電磁石を利用した場合、磁気偏向部110は、磁場H1,H2の強度を容易に調整することができる。また、磁気偏向部110に、永久磁石と電磁石とを併用してもよい。
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、大まかに、上記実施例1と同様に構成され、X線管30と、磁気偏向部110と、を備えている。このため、第2の実施形態に係るX線管装置10は、上記実施例1のX線管装置と同様の効果を得ることができる。
既に説明したように、同一のX線出力に必要な電力は、図22に示す比較例1のX線管装置の消費電力に比べて、第2の実施形態のX線管装置10の消費電力を低減することが可能である。また、X線出力を同一とする条件において、第2の実施形態の焦点Fの温度は、上記比較例1(図22)の焦点Fの温度に比べて低減することができる。
また、第2の実施形態において、磁気偏向部110は、永久磁石である。永久磁石は、メンテナンス性が良好であり、電力を消費せずに磁場H1,H2をつくることができるため、X線管装置10は、ランニングコストの上昇を抑制することができる。
X線管装置10は、タンク102を備えている。タンク102は、少なくとも陰極36、複数のコレクタ電極38a,38b,38cの充電露出部、陽極ターゲット35の充電露出部及び高電圧発生器103を収納している。タンク102に陰極構体1の充電露出部及び高電圧発生器103を収容し、タンク102内に陽圧に充填された電気絶縁用流体104を備えている。このため、負の高電圧を生成する高電圧発生器103とタンク102との間の電気的な短絡を防止することができる。
上記のことから、第2の実施形態においても、ターゲット面35bに対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第2の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。ここで、本実施形態に係るX線管装置10は、上記第1の実施形態に係るX線管装置の実施例3に相当する。図19は、第3の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図であり、X−Z断面を示す図である。
図19に示すように、第3の実施形態において、電子放出源36aとしてコールドエミッタを使用している。本実施形態においても、電子放出源36aと焦点FとはX方向に互いにずれて配置されている。このため、第3の実施形態では、焦点F近傍で正イオンが発生した場合でも、正イオンがコールドエミッタを衝撃する恐れがない。電子放出源36aとしてフィラメントを使用する場合に比べて、フィラメント加熱に要する電力が不要となるメリットを有する。
陽極室11は、陽極フード11a無しに形成されている。そして、チャンバ11cは、陽極ターゲット35が固定される底壁と、磁気偏向部110と対向る側壁と、を有しているが、反跳電子コレクタ38側の天井壁を有していない。
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、大まかに、上記実施例3と同様に構成され、X線管30と、磁気偏向部110と、を備えている。このため、第3の実施形態に係るX線管装置10は、上記実施例3のX線管装置と同様の効果を得ることができる。また、第3の実施形態に係るX線管装置10は、上記第2の実施形態のX線管装置と同様の効果を得ることができる。
上記のことから、第3の実施形態においても、ターゲット面35bに対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第2の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。ここで、本実施形態に係るX線管装置10は、上記第1の実施形態に係るX線管装置の実施例5に相当する。図20は、第4の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図であり、X−Z断面を示す図である。
図20に示すように、第4の実施形態のX線管装置10は、中性点接地方式のX線管30を有している。X線管30は、X線透過ユニット20を備えている。X線透過ユニット20は、絶縁筒5、絶縁筒6などとともに真空外囲器31を形成している。X線透過ユニット20は、枠部材21と、X線放射窓33と、第1筒部22と、第2筒部23とを有している。枠部材21は、Z方向に延在し枠状に形成されている。絶縁筒5は枠部材21の上側の面に固定され、絶縁筒6は枠部材21の下側の面に固定されている。枠部材21にはX方向に延在した貫通孔が形成され、上記貫通孔はX線放射窓33で気密に塞がれている。
第1筒部22は、枠部材21の内側に設けられ、陰極36から陽極ターゲット35に向かう電子ビームの軌道を取囲んでいる。第2筒部23は、枠部材21の内側に設けられ、陽極ターゲット35から反跳電子コレクタ38に向かう偏向された反跳電子の軌道を取囲んでいる。枠部材21、第1筒部22及び第2筒部23は、同電位(接地電位)に設定される。本実施形態において、枠部材21、第1筒部22及び第2筒部23は、同一の金属材料で一体に形成されている。
陽極ターゲット35は、陽極支持体39に固定されている。陽極支持体39は、絶縁筒6の開口を通って絶縁筒6の外側に延出し、上記開口を気密に塞いでいる。陽極ターゲット35に印加する電圧Vaは、陽極支持体39などを介して高電圧発生器103から与えられる。図示しないが、タンク102は、X線管30及び高電圧発生器103を囲んでいる。このため、タンク102は、陽極支持体39、絶縁筒6なども内部に収容している。タンク102の内部には、上記電気絶縁用流体104が封入されている。
なお、第4の実施形態と異なり、X線管装置10は、電圧Vc,V1,V2,V3,V4などを与える高電圧発生器103と、電圧Vaを与える別の高電圧発生器とを備えていてもよい。この場合、タンク102は、上記別の高電圧発生器も内部に収容している。又は、X線管装置10は、絶縁筒5、高電圧発生器103などを内部に収容するタンク102と、絶縁筒6、上記別の高電圧発生器などを内部に収容する別のタンクとを備えている。
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、大まかに、上記実施例5と同様に構成され、X線管30と、磁気偏向部110と、を備えている。このため、第4の実施形態に係るX線管装置10は、上記実施例5のX線管装置と同様の効果を得ることができる。また、第4の実施形態に係るX線管装置10は、上記第2の実施形態のX線管装置と同様の効果を得ることができる。
上記のことから、第4の実施形態においても、ターゲット面35bに対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第4の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。ここで、本実施形態に係るX線管装置10は、上記第1の実施形態に係るX線管装置の実施例7に相当する。図21は、第5の実施形態に係るX線管装置のX線管を示す断面図であり、X−Z断面を示す図である。
図21に示すように、第5の実施形態において、X線透過ユニット20は、枠部材21及びX線放射窓33を有し、第1筒部22及び第2筒部23を有していない。電子放出源36aとしてコールドエミッタを使用している。
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線管装置によれば、X線管装置10は、大まかに、上記実施例7と同様に構成され、X線管30と、磁気偏向部110と、を備えている。このため、第5の実施形態に係るX線管装置10は、上記実施例7のX線管装置と同様の効果を得ることができる。また、第5の実施形態に係るX線管装置10は、上記第4の実施形態のX線管装置と同様の効果を得ることができる。
上記のことから、第5の実施形態においても、ターゲット面35bに対して浅い角度で電子ビームを入射させて焦点Fを形成することにより従来に比べて焦点の熱負荷の低減を図るとともに、同時に低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることができる。
(比較例1)
次に、比較例1のX線管装置について説明する。
図22に示すように、比較例1のX線管装置10は、磁気偏向部110及び反跳電子コレクタ38無しに形成されている。電子ビームは、偏向されること無くターゲット層35bに入射する。比較例1において、上記角度αは、80°乃至90°である。すなわち、電子放出源36aから出射した電子ビームの進行方向と、ターゲット面35bに入射する電子ビームの進行方向とは、一致している。また、反跳電子は、陽極ターゲット35同じ接地電位の陽極室11を衝撃する。そのため回生される電力は全くなく、入射電子の運動エネルギは、X線に変換される分を除き、そのほとんどが熱に変換される。
上記のことから、比較例1において、焦点の熱負荷を低減させることは困難である。また、低消費電力化を図ることができるX線管装置10を得ることは、困難である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。必要に応じて、複数の実施形態を組合せることも可能である。
例えば、電気絶縁用流体104として、絶縁油などの電気絶縁性液体を使用してもよい。また、電気絶縁用流体104にかえて、シリコーン樹脂などからなる固体の電気絶縁材を使用してもよい。
上述した各実施形態では、コレクタ電極38a,38b,38cに印加する電圧を限定したが、上記電圧の値は例示であり、電圧は任意に選定することが可能である。反跳電子コレクタ38の備えるコレクタ電極の数は、3極又は4極の場合を例示したが、2極とすることも、5極以上とすることも可能である。反跳電子コレクタ38の極数を増やす程、反跳電子コレクタ38による電力回生量をより増やすことが可能となる。
また、上述した各実施形態では、反電子コレクタ38の中心軸はZ軸に平行であるしたが、反電子コレクタ38の中心軸は、陰極36や真空外囲器31と干渉し合わない範囲で、Z軸に対して傾斜させても良い。
更にまた、上述した実施形態では固定陽極型のX線管装置について説明したが、上述した実施形態は、回転陽極型のX線管装置にも適用可能である。
10…X線管装置、
15,16…高電圧電源、16a,16b,16c…電源、
30…X線管、36…陰極、36a…電子放出源、36b…集束電極、
31…真空外囲器、33…X線放射窓、35…陽極ターゲット、35b…ターゲット面、
37…集束電極、38…反跳電子コレクタ、38a,38b,38c…コレクタ電極、
102…タンク、103…高電圧発生器、104…電気絶縁用流体、
110…磁気偏向部、
S1…第1平面、S2…第2平面、F…焦点、H1,H2…磁場、Α,β…角度、
Va,Vc,V1,V2,V3,V4…電圧、
d1,d2,d3,d4,d5…第1方向。

Claims (12)

  1. 第1方向に電子ビームを放出する電子放出源を有し負の高電圧が印加される陰極と、第2方向から前記電子ビームが入射されることにより反跳電子が多く散乱する側となる第3方向に利用X線束を放出する焦点が形成されるターゲット面を有し接地され若しくは正の高電圧が印加される陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに印加される電圧よりも低い電圧が印加される複数のコレクタ電極を有し前記複数のコレクタ電極により前記反跳電子の少なくとも一部を減速させかつ捕集する反跳電子コレクタと、前記陰極と前記陽極ターゲットと前記反跳電子コレクタとを収容し前記利用X線束を透過させるX線放射窓を有し内部が真空状態である真空外囲器と、を具備したX線管と、
    前記真空外囲器の外側に配置され、前記焦点から前記X線放射窓側に向かって放出される前記反跳電子を偏向させて前記反跳電子を前記反跳電子コレクタに入射させる第1磁場を前記陽極ターゲットの表面の近傍の空間につくる第1磁気偏向部と、を備え、
    前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向は、第1平面に沿った方向であり、
    前記焦点が形成される位置の前記ターゲット面に接する第2平面から前記第2方向がなす角度は、10°以上20°以下である、
    X線管装置。
  2. 前記第1磁気偏向部は、前記焦点から前記X線放射窓側に向かって放出される前記反跳電子を前記第1方向と反対方向に偏向させて前記反跳電子コレクタに入射させる、
    請求項1に記載のX線管装置。
  3. 前記第1方向及び前記第2方向が下方を示すように前記X線放射窓側から前記第1磁場に視点をおいた場合を仮定すると、前記第1磁気偏向部は、前記第1平面に垂直な左向きの前記第1磁場を前記反跳電子に作用させる、
    請求項1に記載のX線管装置。
  4. 前記第1方向と前記第2方向とは、同一である、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線管装置。
  5. 前記真空外囲器の外側に配置され、前記電子ビームを偏向させ前記電子ビームの進行方向を前記第1方向から前記第2方向に連続的に変化させる第2磁場を前記陽極ターゲットの表面の近傍の空間につくる第2磁気偏向部をさらに備え、
    前記第1方向は、前記陽極ターゲットに向かう方向であり、前記第3方向に垂直な方向である、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線管装置。
  6. 前記第1方向及び前記第2方向が下方を示すように前記X線放射窓側から前記第2磁場に視点をおいた場合を仮定すると、前記第2磁気偏向部は、前記第1平面に垂直な左向きの前記第2磁場を前記電子ビームに作用させる、
    請求項5に記載のX線管装置。
  7. 前記電子放出源は、コールドエミッタである、
    請求項5に記載のX線管装置。
  8. 前記第1磁気偏向部及び前記第2磁気偏向部は、共用されている、
    請求項5に記載のX線管装置。
  9. 前記焦点及び前記電子放出源は、前記第1平面に平行な方向を長手方向とする矩形もしくは長円形状である、
    請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線管装置。
  10. 前記陰極に印加される前記負の高電圧は、前記陽極ターゲットに印加される電圧を基準として−50乃至−500kVの範囲内である、
    請求項1乃至9の何れか1項に記載のX線管装置。
  11. 前記第1磁気偏向部は、永久磁石である、
    請求項1に記載のX線管装置。
  12. 前記陰極、前記複数のコレクタ電極及び前記陽極ターゲットに高電圧を印加する高電圧発生器と、
    少なくとも前記陰極、前記複数のコレクタ電極の充電露出部、前記陽極ターゲットの充電露出部及び前記高電圧発生器を収納するタンクと、
    前記タンク内に充填された電気絶縁材と、をさらに備える、
    請求項1乃至11の何れか1項に記載のX線管装置。
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