JP2018166303A - 緊急停止用リモコン - Google Patents

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Abstract

【課題】自律走行中の作業車両の緊急停止を確実に指示できる緊急停止用リモコンを提供する。【解決手段】緊急停止用リモコン71は、自律走行する作業車両と通信する通信インターフェース152と、トラクタ1の自律走行を停止させる緊急停止ボタン72と、通信インターフェース152による通信動作を制御する制御部153とを備えており、作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態を報知する報知部81,155を備えている。【選択図】図9

Description

本発明は、作業車両を自律走行させる際に操作する緊急停止用リモコンに関する。
近年、圃場での農作業を効率よく簡便に行うため、オペレータが搭乗していない無人の作業車両を自律的に走行させる自律走行システムが開発されている(特許文献1参照)。特許文献1の自律走行システムは、作業車両と離れた住居などに設置されたサーバ装置により遠隔操作するものであり、作業車両の作業状態を目視することができず、緊急時の対応が困難である。そのため、圃場等の作業場で作業車両の自律走行を操作するべく、無線通信端末装置による操作端末を利用した自律走行システムが開発されている(特許文献2及び3参照)。
特開2011−254704号公報 特開2016−093127号公報 特開2016−168883号公報
しかしながら、タブレット型のパーソナルコンピュータなどのようなタッチパネル操作による操作端末を利用した自律走行システムにおいては、タッチパネル上の操作ボタンを目視で探さねばならず、緊急対応時の操作に遅延が生じる恐れがある。また、自律走行システムにおいて、緊急対応時の安全性を確保するために、作業車両を確実に停止させなければならず、緊急停止用のスイッチの故障を確認できることが好ましい。更に、オペレータが操作端末を携行しやすいよう、操作端末の小型化が求められている。
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、自律走行中の作業車両を安全に操作できる緊急停止用リモコンを提供することを技術的課題としている。
本発明は、自律走行する作業車両と通信する通信インターフェースと、前記作業車両の自律走行を停止させる緊急停止ボタンと、前記通信インターフェースによる通信動作を制御する制御部とを備えた緊急停止用リモコンであって、前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態を報知する報知部を備えているというものである。
上記緊急停止用リモコンにおいて、前記報知部として、複数の発光態様で発光する発光部と、複数の音声を出力する音声出力部を備えており、前記発光部による発光態様と前記音声出力部の音声の組み合わせにより、前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態を報知するものとしてもよい。
上記緊急停止用リモコンにおいて、電源として電池を搭載しており、電池残量が所定値以下となったことを前記制御部が確認すると、前記報知部により電池残量の低下を示唆する報知を実行するものと判定するものとしてもよい。
上記緊急停止用リモコンにおいて、前記制御部が、前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態のいずれかに異常を確認し、且つ、電池残量の低下を確認した場合、前記発光部及び前記音声出力部の一方が、前記作業車両との通信異常又は前記作業車両の動作異常を示唆する報知を実行するとともに、前記発光部及び前記音声出力の他方が電池残量の低下を示唆する報知を実行可能であるものとしてもよい。
本発明によれば、報知部を備えることにより、作業車両との通信状態が報知されるため、オペレータは、緊急停止用リモコンによる遠隔操作が可能であることを容易に認識できる。また、報知部により作業車両の動作状態も報知されることで、オペレータから離れた位置に作業車両がある場合であっても、作業車両の走行状態を把握でき、作業車両の自律走行を安全に操作できる。
また、本発明によれば、緊急停止用リモコンの報知部により電池残量低下を確認できるため、緊急停止用リモコンの電池残量を確認するための別装置が不要となり、作業車両を圃場で操作する前に緊急停止用リモコンの電池残量を認識して、電池交換できるなど、操作中での電池切れを未然に防止できる。
実施形態におけるロボットトラクタの全体側面図である。 ロボットトラクタの平面図である。 ロボットトラクタの機能ブロック図である。 遠隔操作装置の正面図、平面図及び右側面図である。 遠隔操作装置の背面図である。 緊急停止用リモコンの一例の正面図、平面図、底面図、左側面図及び右側面図である。 無線通信端末装置の一実施形態の正面図である。 緊急停止用リモコンの着脱状態を説明するための正面図及び平面図である。 緊急停止用リモコンの機能ブロック図である。 緊急停止用リモコンの緊急停止ボタンへの操作に基づく動作を示すタイミングチャートである。 電源投入後の緊急停止用リモコンにおける動作状態を示すタイミングチャートである。 緊急停止用リモコンの状態通知動作を示すフローチャートである。 緊急停止用リモコンの電池残量の検知動作を示すフローチャートである。
<自律走行システム>
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず始めに、本発明に係る作業車の一例であるロボットトラクタ1(以下、「ロボットトラクタ」を単に「トラクタ」と称し、又は「無人トラクタ」と称する場合がある。)について説明する。トラクタ1は、圃場を自律走行する機体2を備える。機体2には、図1及び図2に示すように作業機3が着脱可能に備えられる。当該作業機3は農作業に用いられる。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して機体2に装着することができる。機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
本明細書において自律走行とは、図3に示すようにトラクタ1が備える自律走行制御装置51等によって、当該トラクタ1が走行のために備える構成が制御され、予め定められた経路に沿ってトラクタ1が走行することを意味する。また、本明細書において自律作業とは、トラクタ1が作業のために備える構成が自律走行制御装置51等によって制御され、予め定められた経路に沿ってトラクタ1が作業を行うことを意味する。
<トラクタ>
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。トラクタ1の機体である機体2は、図1に示すように、その前部が左右一対の前輪7,7で支持され、その後部が左右一対の後輪8,8で支持されている。前輪7,7及び後輪8,8が走行部を構成している。
機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル12と、オペレータが座ることが可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、農業用作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
図示は省略するが、上記の操作装置としては、例えばモニタ装置、スロットルレバー、主変速レバー、昇降レバー、PTOスイッチ、PTO変速レバー及び複数の油圧変速レバー等が挙げられる。これら操作装置は、座席13の近傍又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバーは、エンジン10の回転速度を設定するものである。主変速レバーは、ミッションケース22の変速比を変更操作するものである。昇降レバーは、機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するものである。PTOスイッチは、ミッションケース2
2の後端側から外向きに突出したPTO軸(動力取出軸)への動力伝達を継断操作するものである。すなわち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止する。PTO変速レバーは、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバーは、油圧外部取出バルブを切換操作するものである。
図1に示すように、機体2の下部には、その骨組を構成するシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、ミッションケース22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。ミッションケース22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、ミッションケース22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、ミッションケース22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図3に示すように、トラクタ1は、機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動、及び停止等)を制御するための制御部として、車両バス回線18を介して相互に通信可能としたエンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17を備える。エンジン制御装置15が、エンジン10に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されており、変速機制御装置16が、エンジン10からの動力を変速させる油圧式変速装置などを含む変速装置42と電気的に接続されている。また、作業機制御装置17が、作業機昇降アクチュエータ44と電気的に接続されている。更に、トラクタ1は、サービスマンにより操作されるコンピュータなどのサービスツール19を車両バス回線18に対して電気的に接続可能に構成されている。
コモンレール装置41は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブがエンジン制御装置15で開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置41に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。
変速装置42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、ミッションケース22に備えられている。変速装置42を変速機制御装置16により制御して斜板の角度を適宜に調整することにより、ミッションケース22の変速比を所望の変速比にすることができる。
昇降アクチュエータ44は、例えば作業機3を機体2に連結している三点リンク機構を動作させることにより、作業機3を退避位置(農作業を行わない位置)又は作業位置(農作業を行う位置)の何れかに上げ下げするものである。昇降アクチュエータ44を作業機制御装置17により制御して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、例えば圃場領域の所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。
また、エンジン制御装置15には、エンジン10の回転速度を検出する回転速度センサ31、後輪8の回転速度を検出する車速センサ32、ハンドル12の回動角度(操舵角)
を検出する操舵角センサ33等のセンサの検出値が検出信号に変換されて送信される。
上述のような制御装置15〜17を備えるトラクタ1は、キャビン11内に搭乗したオペレータの各種操作に基づき、制御装置15〜17が車両バス回線18を介して相互に通信して、トラクタ1の各部(機体2、作業機3等)を制御することで、圃場内を走行しながら農作業を実行可能に構成されている。加えて、実施形態のトラクタ1は、例えばオペレータが搭乗しなくても、遠隔操作装置70により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行させることが可能となっている。
具体的には、図3に示すように、このトラクタ1は自律走行を可能とするための自律走行制御装置51等の各種の構成が追加されている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の機体)の位置情報を取得するために必要な測位アンテナ6等の各種の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行のためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、図1及び図3に示すように、自律走行制御装置51、操舵制御装置52、測位測量装置53、無線通信ルータ(小電力データ通信装置)54、リモコン受信機(特定小電力無線装置)55、操舵アクチュエータ43、測位アンテナ6、及び無線通信アンテナユニット48等を備える。
自律走行制御装置51及び操舵制御装置52は、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと相互に通信可能に構成されている。また、自律走行制御装置51は、車両バス回線18による操縦用通信系統とは別系統となる自律走行用通信系統における自律走行バス回線56を介して、測位測量装置53、無線通信ルータ54、及びリモコン受信機55それぞれと相互通信可能となっている。
操舵アクチュエータ43は、例えば、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリング軸)の中途部に設けられ、ステアリングハンドル12の回動角度(操舵角)を調整するものである。予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、操舵制御装置52は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を算出し、算出した回動角度でステアリングハンドル12が回動するように操舵アクチュエータ43を制御する。また、操舵制御装置52は、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと通信することで、トラクタ1の車速に応じた操舵を実行できる。なお、操舵アクチュエータ43はステアリングハンドル12の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪7の操舵角を調整するものであってもよく、その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回転しない。
測位アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位アンテナ6は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位アンテナ6で受信された信号は、図3に示す測位測量装置53に入力されて、測位測量装置53でトラクタ1(厳密には、測位アンテナ6)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該測位測量装置53で算出された位置情報は、自律走行制御装置51により取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
測位測量装置53は、無線通信アンテナユニット48における第1無線通信アンテナ48aと電気的に接続しており、特定小電力無線による第1無線通信ネットワーク(例えば
、920MHz帯の無線通信ネットワーク)を通じて、後述する基準局(可搬型基準局)60と通信を行う。図1に示すように、無線通信アンテナユニット48は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位測量装置53は、第1無線通信アンテナ48aを介して、圃場近接位置に設置された基準局60から補正情報(測位補正情報)を受信することによりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
本実施形態では、例えば、RTK測位を適用しており、移動局側となるトラクタ1に測位アンテナ6を備えるのに加えて、基準局測位アンテナ61を備えた基準局60が備えられている。基準局60は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局60の設置位置となる基準点の位置情報は予め設定されている。基準局60には、トラクタ1の測位測量装置53及び第1無線通信アンテナ48aによる通信装置との間で構築される第1無線通信ネットワークを介して通信可能な基準局通信装置62が備えられている。
RTK測位では、基準点に設置された基準局60と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1の測位アンテナ6との両方で測位衛星63からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局60では、測位衛星63から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局通信装置62からトラクタ1の第1無線通信アンテナ48aに補正情報を送信している。トラクタ1(移動局に相当する)の測位測量装置53は、測位アンテナ6にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムを利用しているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。GNSS−RTKは、位置のわかっている基準局の情報に基づいて、補正して精度を高めた測位方式で、基準局からの情報の配信方法の違いで複数の方式が存在する。本発明はGNSS−RTK方式には依存しないので、本実施例では詳細は割愛する。
また、測位測量装置53は、衛星測位によるトラクタ1(機体2)の位置情報だけでなく、慣性測量による前後左右の傾斜角情報を計測可能になっている。測位測量装置53で計測された傾斜角情報は、自律走行制御装置51により位置情報(緯度・経度情報)と対応付けた状態で取得されて、トラクタ1の制御に利用される。なお、測位測量装置53は、圃場面に対する測位アンテナ6の高さ位置、ひいてはトラクタ1(機体2)の車高を計測することも可能である。
無線通信アンテナユニット48は、トラクタ1のキャビン11の屋根14の上面に配置されており、周波数帯域の異なる第1〜第3無線通信ネットワークと通信接続する第1〜第3無線通信アンテナ48a〜48cを備えている。第1無線通信ネットワークは、基準局60による測位補正情報を通信させるべく、例えば、データ伝送速度の速い920MHz帯の特定小電力無線などで構築される。第2無線通信ネットワークは、画像データなどのデータ容量の多いデータを高速で通信でさせるべく、例えば、2.4GHz帯の小電力データ通信システムなどで構築される。第3無線通信ネットワークは、第2無線通信ネットワークと比べてデータ伝送量が少ないため、例えば、400MHz帯の特定小電力無線などで構築される。なお、アンテナ48a〜48cの一部はキャビン11内に配置してもよい。
第1無線通信アンテナ48aは、測位測量装置53と電気的に接続しており、第2無線通信アンテナ48bは、無線通信ルータ54と電気的に接続しており、第3無線通信アンテナ48cは、リモコン受信機55と電気的に接続している。第2無線通信アンテナ48bと接続された無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部のオペレータにより操作される画像表示可能な遠隔操作装置70と通信を行う。無線通信ルータ54は、遠隔操作装置70からの制御信号を受信し、自律走行バス回線56を介して自律走行制御装置51に送信する。第3無線通信アンテナ48cと接続されたリモコン受信機55は、第3無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部のオペレータにより操作される緊急停止用リモコン71と通信を行う。リモコン受信機55は、緊急停止用リモコン71からの制御信号を受信し、自律走行バス回線56を介して自律走行制御装置51に送信する。
遠隔操作装置70は、具体的には、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、遠隔操作装置70のタッチパネルに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認することができる。また、オペレータは、遠隔操作装置70を操作して、トラクタ1の自律走行制御装置51に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信する。なお、実施形態の遠隔操作装置70はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、トラクタ1とは異なる他のトラクタに搭載されるモニタ装置を遠隔操作装置とすることもできる。
自律走行制御装置51は、遠隔操作装置70により生成された走行経路とトラクタ1の位置情報とを比較し、トラクタ1を走行経路に沿って所定の作業を行わせながら所定の走行速度にて自律走行させるために、トラクタ1の操舵角、目標のエンジン回転数や変速比等を算出して、車両バス回線18を通じて、各制御装置15〜17,52と通信する。これにより、トラクタ1は、当該走行経路に沿って自律走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。このように、トラクタ1が自律走行する圃場領域(走行領域)内の経路を、以下の説明において「走行経路」と称する場合がある。また、圃場領域(走行領域)においてトラクタ1の作業機3による農作業の対象となる領域(作業領域)は、圃場領域の全体から枕地及び余裕代を除いた領域として定められ、オペレータ等が後述の登録点の登録作業を実行したときにこれら登録点とトラクタ1の作業幅とに基づいて設定される。
緊急停止用リモコン71は、トラクタ1を緊急停止させるためのリモコンスイッチであって、遠隔操作装置70を操作するオペレータにより所有され、当該オペレータによりスイッチ操作がなされたときに、緊急停止の制御信号を送信する。緊急停止用リモコン71は、オペレータが緊急停止ボタン72を押すことで、緊急停止の制御信号を送信する。更に、緊急停止用リモコン71は、遠隔操作装置70に着脱自在に構成されるとともに、オペレータの首に掛けるなど身体に密着させるべく、ストラップ(紐状部材)を取り付け可能に構成されている。
自律走行制御装置51は、緊急停止用リモコン71における緊急停止ボタン72へのオペレータの操作に基づいて、エンジン制御装置15との通信により、コモンレール装置41における燃料噴射を停止させるとともに、変速機制御装置16との通信により、変速装置42を中立状態とした上で、後述のブレーキ装置26による制動動作を作用させる。このとき、自律走行制御装置51は、操舵制御装置52との通信により、ハンドル12を中立位置とするように操舵アクチュエータ43を制御して、左右の前輪7,7の方向を直進方向に向けるものとしてもよい。
自律走行制御装置51は、測位測量装置53における基準局60との通信状態(第1通信ネットワークにおける通信状態)、無線通信ルータ54における遠隔操作装置70との通信状態(第2通信ネットワークにおける通信状態)、及び、リモコン受信機55による緊急停止用リモコン71との通信状態(第3通信ネットワークにおける通信状態)それぞれを、自律走行バス回線56を介して確認する。自律走行制御装置51は、第1〜第3通信ネットワークのいずれかでの通信状態が遮断されたことを確認すると、エンジン制御装置15及び変速機制御装置16などと通信することで、トラクタ1の自律走行を緊急停止させる。なお、自律走行制御装置51は、測位測量装置53、無線通信ルータ54、及びリモコン受信機55がそれぞれ、通信相手からの信号を所定期間以上受信しない場合に、当該通信相手との通信が遮断されたものと判定する。
更に、トラクタ1には、ブレーキペダルや駐車ブレーキレバーの操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後輪8,8にブレーキを掛ける左右一対のブレーキ装置26,26を設けている。すなわち、左右両方のブレーキ装置26,26は、ブレーキペダル(又は駐車ブレーキレバー)の制動方向への操作によって、左右両方の後輪8,8にブレーキを掛けるように構成されている。また、ハンドル12の回動角度が所定角度以上になれば、変速機制御装置16の指令によって、旋回内側の後輪8に対するブレーキ装置26が自動的に制動動作をするように構成されている(いわゆるオートブレーキ)。
可搬型基準局60は、補正情報を配信する基準局無線通信アンテナ64と、測位衛星63からの信号を受信する基準局測位アンテナ61と、無線通信アンテナ64及び測位アンテナ61それぞれと電気的に接続された基準局通信装置62とを備える。可搬型基準局60は、移動局となるトラクタ(作業車両)1の位置特定における基準点に設置される。可搬型基準局60は、複数部材に分解可能に構成されており、分解した各部材は、所定のケースに収容して運搬可能な大きさに構成される。
分解部材を組み立てて、基準点に設置された可搬型基準局60は、基準局測位アンテナ61で受信した測位衛星63からの信号を基準局通信装置62に送り、基準局通信装置62において、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成する。そして、可搬型基準局60は、基準局通信装置62で生成した補正情報を、第1無線通信ネットワークを介して配信する。
<無線通信端末装置(遠隔操作装置及び緊急停止用リモコン)>
次に、図4〜図8を参照しながら、無線通信端末装置88の実施形態について説明する。図7に示すように、自律走行作業車両である無人トラクタ1を操作する無線通信端末装置88として、トラクタ1と無線通信を実行する遠隔操作装置(端末装置本体)70及び緊急停止用リモコン71を備えている。そして、遠隔操作装置70及び緊急停止用リモコン71はそれぞれ、通信方式の異なる無線通信ネットワークによりトラクタ1と通信を実行する。また、遠隔操作装置70は、タッチパネル操作可能なディスプレイ74を備えており、緊急停止用リモコン71は、遠隔操作装置70の外枠に対して着脱自在に構成されている。また、緊急停止用リモコン71は、トラクタ1の自律走行を停止させる緊急停止ボタン72と、トラクタ1の自律走行を再開するためのスタートボタン(開始ボタン)73とを具備する。緊急停止ボタン72及びスタートボタン73はそれぞれ、押下時に接点を導通させるモーメンタリ方式のスイッチで構成されており、緊急停止ボタン72は、電源投入スイッチとしても機能するものである。なお、「トラクタ1の自律走行を再開する」とは、遠隔操作装置70により自律走行が開始された後、自律走行が一時停止された後に、再び自律走行を開始することである。自律走行の一時停止は、遠隔操作装置70により行われてもよいし、緊急停止用リモコン71により行われてもよい。緊急停止用リモコン71による自律走行の一時停止は例えばスタートボタン73への操作により実行されるものであってもよいし、緊急停止用リモコン71とは別の一時停止用リモコンが使用され
るものとしてもよい。
図4及び図5に示すように、遠隔操作装置70は、前面70aにディスプレイ74を備え、背面70bにカメラ75を備え、右側面70cに電源接続用端子の端子カバー76を備え、左側面70dにUSB等を接続可能な外部接続端子の端子カバー77を備える。また、遠隔操作装置70の右上部位の外周部分には、前面70aから上面70eを介して裏面70bにまたがってリモコン取付け部79が着脱可能に取り付けられる。リモコン取付け部79は、断面形状が略U字状であり、その上面に、基端部側ほど幅が狭いテーパ状の凸条部80を備える。
図6に示すように、緊急停止用リモコン71は、縦長の略直方体形状を有し、前面71aに、緊急停止ボタン72と、スタートボタン73と、ランプ81を備える。ランプ81は、LEDで構成されており、例えば消灯や点灯、点滅、色の変化などで、トラクタ1の状態を告知する。また、緊急停止用リモコン71は、音声でトラクタ1の状態を告知するブザー155(図9参照)を内蔵している。オペレータは、緊急停止用リモコン71単体を携帯している場合に、自律走行するトラクタ1から少し離れた状況でも、ランプ81及びブザー155の報知動作によりトラクタ1の状態を認識でき、安全性を向上できる。
緊急停止用リモコン71の一端面71bに、ストラップ等の吊り下げ部材82を取付け可能な吊り下げ部材取付け部83が設けられている。緊急停止用リモコン71の一側面71cに、リモコン取付け部79の凸条部80に係合する取付け溝84が設けられる。取付け溝84は、一側面71cの中途部から一端面71bにわたって形成され、一側面71c側ほど狭くなるテーパ形状を有し、一側面71c側の端部が解放されている。なお、本実施形態において吊り下げ部材取付部83は、緊急停止用リモコン71において緊急停止ボタン72が配されている一端面71bに設けられることとしたが、他端面(即ち、緊急停止用リモコン71において開始ボタン73が設けられている側)に設けられることとしてもよい。
図7及び図8に示すように、緊急停止用リモコン71は、遠隔操作装置70に取り付けられたリモコン取付け部79の凸条部80に取付け溝84が係合されることで、遠隔操作装置70に着脱可能に取り付けられる。緊急停止用リモコン71は、前面71aが遠隔操作装置70の前面70aと同じ方向を向くようにリモコン取付け部79に取り付けられる。
また、遠隔操作装置70のディスプレイ74の右上部位に、トラクタ1の自律走行を停止させる緊急停止ボタン画像86が表示されるとともに、トラクタ1の自律走行を開始又は停止するための開始又は停止ボタン画像87がディスプレイ74の左上部位に表示される。このように、ディスプレイ74において、緊急停止ボタン画像86が緊急停止用リモコン71の取付け位置の近傍に表示されることで、緊急停止ボタン72及び緊急停止ボタン画像86をまとめて配置することができ、オペレータがトラクタ1を緊急停止させたいときに緊急停止ボタン72及び緊急停止ボタン画像86の位置を認識しやすくなるので、緊急停止操作の遅延及び誤操作を抑制できる。
また、トラクタ1との無線通信の開始は、緊急に行うものではないので、緊急停止用リモコン71が遠隔操作装置70に取り付けられた状態で、開始ボタン73と、開始又は停止ボタン画像87が互いに離れた位置に配置されていても、誤操作を起こすおそれは低く、特に問題は生じない。
また、緊急停止ボタン画像86の操作は、タッチパネル式のディスプレイ74を押す(触る)ことになるので、オペレータにとって押し操作をした感触がないが、緊急停止ボタ
ン72はしっかりと押せる構造なので、オペレータは押し操作をした感触が得られる。なお、オペレータは、トラクタ1を緊急停止させる際に、緊急停止ボタン72と緊急停止ボタン画像86のどちらを用いてもよい。
ところで、トラクタ1が通信可能な緊急停止用リモコン71は、1台に限られるものではなく、複数の緊急停止用リモコン71と通信可能である。そして、遠隔操作装置70を操作するオペレータ以外の他のオペレータ(同じ圃場で作業している作業者を含む)は、緊急停止用リモコン71を携帯することで、ランプ81やブザー155の告知によりトラクタ1の状態を認識できるとともに、緊急時には緊急停止用リモコン71の緊急停止ボタン72を操作できるので、自律走行するトラクタ1の監視体制を向上させて、圃場での作業者の安全性を向上できる。
<緊急停止用リモコン>
次いで、緊急停止用リモコン71について、その内部構成及び各動作について、図9〜図13を参照して以下に説明する。図9に示す如く、緊急停止用リモコン71は、トラクタ1におけるリモコン受信機55と通信可能とすべく、第3無線通信ネットワークに通信接続する無線通信アンテナ151及び通信インターフェース152を備えている。また、緊急停止用リモコン71は、緊急停止用リモコン71内の各部を制御する制御部153と、通信相手となるリモコン受信機55の受信機IDなどを記憶するメモリ154とを備えている。更に、緊急停止用リモコン71は、オペレータにより操作される緊急停止ボタン72及びスタートボタン73と、オペレータへの報知動作を行うランプ81及びブザー155とを備える。
緊急停止ボタン72への操作に基づく接点の接離により、スイッチング信号が生成されて、制御部153に入力されると、制御部153は、スイッチング信号の状態に基づいて、電力投入又は緊急停止を判定する。また、スタートボタン73への操作に基づく接点の接離により、スイッチング信号が生成されて、制御部153に入力されると、制御部153は、リモコン受信機55との相互認証処理(ペアリング処理)を実行する。制御部153は、通信インターフェース152を制御することにより、リモコン受信機55との通信を実行する。そして、制御部153は、リモコン受信機55からの信号に基づくトラクタ1の状態や緊急停止用リモコン71における電池残量に応じて、ランプ81及びブザー155を動作させる。
図10に示す如く、緊急停止用リモコン71は、オペレータにより緊急停止ボタン72が操作されることにより、制御部153に電源投入されて、通信インターフェース152による通信動作を開始する。すなわち、オペレータにより緊急停止ボタン72を構成するスイッチの接点が接続した後に離間することで、緊急停止ボタン72の接離に基づく立ち上がりと立ち下がりを備えたスイッチング信号が制御部153に入力されると、制御部153は、電源投入が指示されたものと判定し、制御部153への電源投入を実行するとともに、通信インターフェース152による通信動作を開始する。
緊急停止用リモコン71は、制御部153への電源投入後、オペレータにより緊急停止ボタン72が操作されると、制御部153は、トラクタ1の緊急停止が指示されたものと判定する。そして、緊急停止用リモコン71は、通信インターフェース152より緊急停止信号を、トラクタ1のリモコン受信機55に送信する。すなわち、オペレータにより緊急停止ボタン72を構成するスイッチの接点が接続して、緊急停止ボタン72の接続に基づく立ち上がりを備えたスイッチング信号が制御部153に入力されると、制御部153は、トラクタ1の緊急停止が指示されたものと直ちに判定し、通信インターフェース152より緊急停止信号をリモコン受信機55に送信する。
緊急停止用リモコン71は、緊急停止ボタン72が、押下時に接点を導通させるスイッチで構成されるとともに、電源投入スイッチとしても機能するものである。そして、制御部153は、緊急停止ボタン72の接点が接続された後に離間された場合に電源投入を実行し、電源投入後は、緊急停止ボタン72の接点が接続された際に通信インターフェース152を通じてトラクタ1へ停止信号を送信し、トラクタ1の自律走行を停止させる。これにより、緊急停止ボタン72に二つの機能を具備させることができ、緊急停止用リモコン71に設けるスイッチ類の個数を少数として、緊急停止用リモコン71を小型化できる。
また、緊急停止ボタン72の接点に酸化膜が形成されて、緊急停止ボタン72が押下されたときであっても導通しない場合、緊急停止ボタン72の操作による電源投入が不可能となる.従って、緊急停止用リモコン71を動作させることなく、緊急停止用リモコン71の電源投入前に、緊急停止ボタン72の不具合を確認できるため、トラクタ1の自律走行を開始する前に、緊急停止用リモコン71への操作による緊急停止が不可能であることをオペレータに認識させることができる。
なお、緊急停止ボタン72の故障により押下されても戻らない状態となった場合、電源投入のために緊急停止ボタン72を操作された時に、緊急停止ボタン72の接点が接続された状態が続く。このとき、制御部153は、緊急停止ボタン72の接点の接続(スイッチング信号の立ち上がり)を確認した後に、所定時間が経過しても緊急停止ボタン72の接点の離間(スイッチング信号の立ち下がり)を確認しない場合は、電源投入を実行することがないものとしてもよい。これにより、緊急停止用リモコン71の電源投入前に、緊急停止ボタン72の不具合を確認できるため、トラクタ1の自律走行を開始する前に、緊急停止用リモコン71への操作による緊急停止が不可能であることをオペレータに認識させることができる。
上述のように、緊急停止用リモコン71は、自律走行する作業車両と通信する通信インターフェース152と、トラクタ1の自律走行を停止させる緊急停止ボタン72と、通信インターフェース152による通信動作を制御する制御部153とを備えており、緊急停止ボタン72が、接点が接離するスイッチで構成されるとともに、電源投入スイッチとしても機能する。緊急停止ボタン72が電源投入スイッチと兼用であることから、オペレータは、緊急停止ボタン72の操作に基づく電源投入の可否を確認することで、電源投入時に故障の有無や電力不足などを確認できる。そのため、トラクタ1の自律走行を開始させる前に、不具合のある緊急停止用リモコン71の使用を禁止するなどして、トラクタ1の自動走行時における緊急停止用リモコン71の故障に基づく事故を未然に防止できる。また、緊急停止ボタン72を電源投入スイッチと兼用とすることで、緊急停止のための操作時間を短縮できるだけでなく、オペレータが携帯しやすくなるように、緊急停止用リモコン71をコンパクトに構成できる。
制御部153は、電源投入前に緊急停止ボタン72への操作が第1基準を満たした場合に、電源を投入する一方、電源投入後に緊急停止ボタン72への操作が第2基準を満たした場合に、トラクタ1の自律走行を停止させる停止信号を通信インターフェース152より送信させる。そして、緊急停止ボタン72の操作が第1基準を満たすまでの時間が、緊急停止ボタン72の操作が第2基準を満たすまでの時間よりも長い。電源投入のための緊急停止ボタン72への操作時間に比べて、停止信号送信のための緊急停止ボタン72への操作時間を短くすることで、緊急性の高い停止信号の送信動作について、緊急停止ボタン72への操作に即応できる。従って、トラクタ1の自律走行時に緊急停止ボタン72を操作する際に、トラクタ1を停止させる時間を短縮できるため、トラクタ1の自律走行時における安全性を保障できる。一方、電源投入のための緊急停止ボタン72への操作時間を長くすることで、オペレータに緊急停止用リモコン71の状態を認識させることができる
制御部153は、緊急停止ボタン72における接点の接離の両方を検知したときに第1基準を満たしたものと判定する一方、緊急停止ボタン72における接点の接離の一方(本実施形態では接点の接続)を検知したときに前記第2基準を満たしたものと判定する。緊急停止ボタン72が物理的に固着した場合や不用意な接触により、緊急停止用リモコン71の電源が投入されることを防止できるものでありながら、電源投入後にはトラクタ1の確実な緊急停止が指示でき、安全性を保障できる。
図11に示す如く、緊急停止用リモコン71は、制御部153への電源投入が実行されると、電源投入を報知した後、所定時間Tx(例えば、1秒)毎に、動作時間(ウェークアップ時間)Tx1(Tx1<Tx、例えば、0.3秒)だけ制御部153へ電力供給して、通信インターフェース152により受信動作可能な状態(ウェークアップ状態)とする。そして、所定時間Txにおける動作時間Tx1以外のスリープ時間Tx2(=Tx−Tx1)の間は、緊急停止用リモコン71は、制御部153を通信インターフェース152により受信動作しない状態(スリープ状態)として、電源投入後の電力消費を低減する。このとき、動作時間Tx1をスリープ時間Tx2よりも短い時間とすることで、電源投入後の緊急停止用リモコン71の消費電力を大幅に低減できると同時に、所定時間Tx毎にリモコン受信機55から送信される通信確立確認信号(ハートビート信号)を確実に受信できる。
次いで、緊急停止用リモコン71の状態通知動作について、図12及び図13のフローチャートに従って以下に説明する。緊急停止用リモコン71は、トラクタ1の動作状態及びリモコン受信機(無線通信装置)55との通信状態それぞれを報知できる報知部として、ランプ81及びブザー155を備えている。報知部としてランプ81及びブザー155を備えることにより、リモコン受信機55との通信状態が報知されるため、オペレータは、緊急停止用リモコン71による遠隔操作が可能であることを容易に認識できる。また、トラクタ1の動作状態も報知されることで、オペレータから離れた位置にトラクタ1がある場合であっても、トラクタ1の走行状態を把握できる。
ランプ81は、複数の発光態様で発光するLED(発光部)により構成されており、ブザー155は、複数の音声を出力する音声出力部として構成されている。緊急停止用リモコン71は、ランプ81による発光態様とブザー155の音声の組み合わせにより、トラクタ1の正常動作、トラクタ1の停止、リモコン受信機55との通信異常、及び電池残量の低下それぞれを報知する。ランプ81とブザー155とによる動作を変化させることで、正常動作時、通信異常時、及びトラクタ1の停止時それぞれを報知可能に構成しているため、緊急停止用リモコン71をコンパクトに構成して、携行可能にするものでありながら、オペレータに効果的に通信状態及び走行状態を把握させることができる。
図12に示す如く、緊急停止用リモコン71は、電源オフ状態において緊急停止ボタン72への操作が第1基準を満たすと(即ち電源投入操作が行われると)(STEP1でYes)、制御部153により電源が投入されて、無線通信アンテナ151及び通信インターフェース152による通信が可能な状態となる(STEP2)。制御部153は、電源投入されたことを報知すべく、ランプ81を点灯させるとともに、ブザー155より音声出力させる(STEP3)。このとき、例えば、ランプ81が、第1色(緑色)で所定時間Ty1(2秒間)点灯した後に所定時間Ty2(1秒間)消灯するとともに、ブザー155が、所定時間Tz1(0.1秒)発報する。なお、電源投入の報知動作を実行する際、制御部153は、ウェークアップ状態を保持して、スリープ状態への移行を禁止する。
緊急停止用リモコン71は、ウェークアップ状態となり、所定時間T(例えば、1秒)
が経過するまでに、通信インターフェース152で、トラクタ1のリモコン受信機55から送信されるハートビート信号を受信すると、リモコン受信機55との通信が確立したことを報知する(STEP4〜STEP6)。すなわち、制御部153は、トラクタ1のリモコン受信機55からのハートビート信号を受信することで、リモコン受信機55との通信が正常であることを確認し、通信が確立されたことを報知すべく、ランプ81を点灯させるとともに、ブザー155より音声出力させる。
STEP6において、例えば、緊急停止用リモコン71がウェークアップ状態となっている動作時間Tx1の間、ランプ81が、第1色(緑色)で点灯するとともに、ブザー155が、所定時間Tz2(0.1秒)の発報を間欠的に繰り返す。すなわち、緊急停止用リモコン71は、リモコン受信機55との通信が確立されると、ランプ81が時間Tx毎の第1色(緑色)による点滅を開始するとともに、ブザー155が、通信確立直後のウェークアップ状態のときに繰り返し発報する。
緊急停止用リモコン71は、リモコン受信機55との通信が確立した後、時間Tx毎にリモコン受信機55からのハートビート信号の受信を確認し、所定時間Txの経過前にハートビート信号を受信した場合は、トラクタ1の動作状態を確認する(STEP7〜STEP9)。このとき、トラクタ1が正常に作業動作を実行している場合は(STEP9でNo)、緊急停止用リモコン71は、トラクタ1の自律走行が正常であること(正常動作)を報知し(STEP10)、STEP7へ移行する。STEP10において、例えば、緊急停止用リモコン71がウェークアップ状態となっている動作時間Tx1の間、ランプ81が、第1色(緑色)で点灯する。すなわち、緊急停止用リモコン71は、リモコン受信機55との通信が確立されると、ランプ81が時間Tx毎に第1色(緑色)で点滅する。
また、トラクタ1が停止している場合は(STEP9でYes)、緊急停止用リモコン71は、トラクタ1が停止していること(トラクタ1の停止)を報知する(STEP11)。STEP11において、例えば、ランプ81が、第2色(赤色)で所定時間Ty2毎に点滅するとともに、ブザー155が、所定時間Tz2(Tz2>Tz1)発報する。このとき、ランプ81の第2色による点滅周期Ty2を所定時間Txと同時間とするとともに、点滅周期毎の点灯時間を動作時間Tx1と同時間とするとともに、N周期分(例えば、3周期分)だけスリープ状態への移行を禁止し、ブザー155の発報時間Tz2を時間N×Tx+Tx1としても構わない。これにより、トラクタ1の停止を認識した直後に、N周期分だけ、ランプ81を第2色で点滅させると同時に、ブザー155を発報させた後は、ウェークアップ状態とスリープ状態を繰り返すと共に、ウェークアップ状態においてランプ81のみを第2色で点灯させることで、トラクタ1の停止を報知する。
緊急停止用リモコン71は、リモコン受信機55からのハートビート信号が受信不能となった場合は(STEP5でNo、又はSTEP7でNo)、トラクタ1のリモコン受信機55との通信が遮断されたこと(通信異常)を報知する(STEP12)。STEP12において、例えば、ランプ81が、第3色(黄色)で所定時間Ty3毎に点滅するとともに、ブザー155が、所定時間Tz3(Tz3>Tz1)発報する。このとき、トラクタ1の停止を報知する場合と同様、ランプ81の第3色による点滅周期Ty3を所定時間Txと同時間とするとともに、点滅周期毎の点灯時間を動作時間Tx1と同時間とするとともに、N周期分(例えば、3周期分)だけスリープ状態への移行を禁止し、ブザー155の発報時間Tz3を時間N×Tx+Tx1としても構わない。
緊急停止用リモコン71は、電源として電池(図示省略)を搭載しており、制御部153により電池残量を検出して、電池残量が僅かとなったときに、ランプ81及びブザー155による報知部による電池容量の低下を報知させる。図13に示す如く、制御部153
は、電源投入後の通電時において、電源電圧及び電源電流を検知して、その電源電圧及び電源電流の変化量などから電池残量を算出する(STEP21)。
緊急停止用リモコン71は、制御部153で算出した電池残量を、無線通信アンテナ151及び通信インターフェース152を通じて、トラクタ1のリモコン受信機55に通知する(STEP22)。トラクタ1は、第3無線通信アンテナ48c及びリモコン受信機55で電池残量通知信号を受信して、緊急停止用リモコン71の電池残量を確認すると、第2無線通信アンテナ48b及び無線通信ルータ54を通じて、遠隔操作装置70に電池残量通知信号を送信する。遠隔操作装置70は、受信した電池残量通知信号に基づいて、緊急停止用リモコン71の電池残量を認識し、ディスプレイ74に緊急停止用リモコン71の電池残量を表示する。
緊急停止用リモコン71は、制御部153において、算出した電池残量が所定量X%(例えば、5%)以下であると判定したときに、電池残量の低下を報知する(STEP23〜STEP24)。STEP24において、例えば、緊急停止用リモコン71がウェークアップ状態となっている動作時間Tx1の間、ランプ81が、第2色(赤色)で点灯するとともに、ブザー155が、所定時間Tz4(0.1秒)の発報を間欠的に繰り返す。すなわち、緊急停止用リモコン71は、電池残量の低下を確認すると、ランプ81が時間Tx毎の第2色(赤色)による点滅を開始するとともに、ブザー155が、通信確立直後のウェークアップ状態のときに複数回(例えば、2回)発報する。
上述したように、緊急停止用リモコン71は、電池により電力供給されるものであって、電池残量が所定値以下となった場合に、ランプ81及びブザー155による報知部が、電池残量の低下を示唆する所定の報知を行う。従って、緊急停止用リモコン71の報知部により電池残量低下を確認できるため、緊急停止用リモコン71の電池残量を確認するための別装置(遠隔操作装置70)が不要となり、トラクタ1を圃場で操作する前に緊急停止用リモコン71の電池残量を認識して、電池交換できるなど、操作中での電池切れを未然に防止できる。
緊急停止用リモコン71は、通信異常及びトラクタ1の停止の何れか一方が発生し、且つ、電池残量が所定値以下(電池残量低下)となった場合、以下の制御を行う。ランプ81及びブザー155の一方に、通信異常及びトラクタ1の停止を示唆する報知を実行させ、ランプ81及びブザー155の他方に電池残量の低下を示唆する報知を行わせる。ブザー155による音声とランプ81による発光とで、異なる事象(通信異常又はトラクタ1停止と電池残量)を報知することで、オペレータは、複数の問題が生じていることを認識することができる。
本実施形態における緊急停止用リモコン71は、制御部153が、トラクタ1の停止と電池残量低下とを同時に認識しているとき、まず、トラクタ1の停止を報知するべく、ランプ81を第2色(赤色)で所定時間Ty2(動作時間Tx1と同一時間)毎に点滅すると同時に、ブザー155が、所定時間Tz2発報する。その後、緊急停止用リモコン71がウェークアップ状態となっている動作時間Tx1の間、ランプ81が、第2色(赤色)で点灯するとともに、ブザー155が、所定時間Tz4(0.1秒)の発報を間欠的に繰り返し、電池残量低下を報知する。これにより、優先度の高いトラクタの停止を報知した後に、電池残量低下を報知し続けることができ、オペレータは、トラクタ1の停止に即座に対応することができるとともに、緊急停止用リモコン71の電池交換を認識できる。
また、制御部153が、リモコン受信機55との通信異常と電池残量低下とを同時に認識しているとき、まず、通信異常を報知するべく、ランプ81を第2色(赤色)で所定時間Ty3(動作時間Tx1と同一時間)毎に点滅すると同時に、ブザー155が、所定時
間Tz3発報する。その後、緊急停止用リモコン71がウェークアップ状態となっている動作時間Tx1の間、ランプ81が、第2色(赤色)で点灯して、通信以上を報知しながら、ブザー155が、所定時間Tz4(0.1秒)の発報を間欠的に繰り返し、電池残量低下を報知する。これにより、優先度の高い通信異常を報知した後に、電池残量低下を報知し続けることができ、オペレータは、トラクタ1の停止に即座に対応することができるとともに、緊急停止用リモコン71の電池交換を認識できる。
本実施形態における自律走行システムでは、1台のトラクタ1に対して複数個の緊急停止用リモコン71が使用できる。すなわち、自律走行システムに使用できる緊急停止用リモコン71を3個とした場合、3人のオペレータが緊急停止用リモコン71でトラクタ1の緊急停止を操作するとともに、3人のオペレータのうちの一人が遠隔操作装置70と緊急停止用リモコン71とを操作する。
このとき、トラクタ1は、1台の遠隔操作装置70及び3個の緊急停止用リモコン71のうちのいずれかと通信不能となった場合に停止する。トラクタ1の自律走行を開始した後、3個の緊急停止用リモコン71のうちの一つがトラクタ1と通信不能となった場合、通信不能となった緊急停止用リモコン71は、ランプ81を第3色(黄色)として、通信異常を報知する一方、残り2つの緊急停止用リモコン71は、ランプ81を第2色(赤色)として、トラクタ1の停止を報知する。言い換えれば、複数の緊急停止用リモコン71の内、トラクタ1と通信不能となった緊急停止用リモコン71はランプ81を第3色とし、トラクタ1との通信が確立している緊急停止用リモコン71は、ランプを第2色とするものである。
また、トラクタ1から遠隔操作装置70に対して、通信不能となった緊急停止用リモコン71のリモコン番号を送信することで、遠隔操作装置70のディスプレイに、通信不能となった緊急停止用リモコン71を表示できる。これにより、通信異常となった緊急停止用リモコン71を操作するオペレータだけでなく、遠隔操作装置70を操作するオペレータもいずれの緊急停止用リモコン71が通信不能となったかを認識でき、トラクタ1の停止に対して安全に対処できる。
更に、トラクタ1から遠隔操作装置70に対して、複数(3個)の緊急停止用リモコン71それぞれの電池残量をリモコン番号と共に送信することで、遠隔操作装置70は、リモコン番号毎に電池残量を認識することで、複数の緊急停止用リモコン71それぞれの電池残量をディスプレイ74に表示できる。そのため、遠隔操作装置70を操作するオペレータは、複数の緊急停止用リモコン71それぞれの電池残量を認識することで、緊急停止用リモコン71が電池残量低下を報知する前に、電池交換が必要な緊急停止用リモコン71を確認し、緊急停止用リモコン71の電池切れを未然に防いで、トラクタ1の自律走行を安定して継続できる。
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
1 ロボットトラクタ(作業車両)
48 無線通信アンテナユニット
48a 第1アンテナ
48b 第2アンテナ
48c 第3アンテナ
51 自律走行制御装置
52 操舵制御装置
53 測位側量装置
54 無線通信ルータ
55 リモコン受信機
56 自律走行バス回線
70 遠隔操作装置(装置本体)
71 緊急停止用リモコン
72 緊急停止ボタン
73 スタートボタン(開始ボタン)
74 ディスプレイ
81 ランプ(告知部)
151 無線通信アンテナ
152 通信インターフェース
153 制御部
154 メモリ
155 ブザー

Claims (4)

  1. 自律走行する作業車両と通信する通信インターフェースと、前記作業車両の自律走行を停止させる緊急停止ボタンと、前記通信インターフェースによる通信動作を制御する制御部とを備えた緊急停止用リモコンであって、
    前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態を報知する報知部を備えていることを特徴とする緊急停止用リモコン。
  2. 前記報知部として、複数の発光態様で発光する発光部と、複数の音声を出力する音声出力部を備えており、
    前記発光部による発光態様と前記音声出力部の音声の組み合わせにより、前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態を報知することを特徴とする請求項1に記載の緊急停止用リモコン。
  3. 電源として電池を搭載しており、電池残量が所定値以下となったことを前記制御部が確認すると、前記報知部により電池残量の低下を示唆する報知を実行することを特徴とする請求項2に記載の緊急停止用リモコン。
  4. 前記制御部が、前記作業車両との通信状態及び前記作業車両の動作状態のいずれかに異常を確認し、且つ、電池残量の低下を確認した場合、前記発光部及び前記音声出力部の一方が、前記作業車両との通信異常又は前記作業車両の動作異常を示唆する報知を実行するとともに、前記発光部及び前記音声出力の他方が電池残量の低下を示唆する報知を実行可能であることを特徴とする請求項3に記載の緊急停止用リモコン。
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