各図に示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向Zである。各図に示すX軸方向は、上下方向Zと直交する前後方向Xである。各図に示すY軸方向は、上下方向Zおよび前後方向Xの両方と直交する左右方向Yである。なお、上下方向、前後方向、左右方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態の樹脂成形金型1は、例えば、スプールバルブSVを成形するための金型である。スプールバルブSVは、上下方向Zに延びる中心軸Jに沿って配置される多段の円柱状である。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。スプールバルブSVは、第1小径部SD1と、第1大径部BD1と、第2小径部SD2と、第2大径部BD2と、第3小径部SD3と、を下側から上側に向かってこの順に有する。
第1小径部SD1は、スプールバルブSVの下側の端部である。第3小径部SD3は、スプールバルブSVの上側の端部である。第1大径部BD1の外径と第2大径部BD2の外径とは、第1小径部SD1の外径、第2小径部SD2の外径および第3小径部SD3の外径よりも大きく、互いに同じである。
樹脂成形金型1は、スプールバルブSVの外形状の母型となるキャビティ1aを有する。キャビティ1aに溶融した樹脂が流し込まれて、冷却されることでスプールバルブSVが成形される。樹脂成形金型1は、第1金型部材10と、第2金型部材20と、第3金型部材30と、を有する。
第1金型部材10は、基台11と、第1保持部材12と、成形部13と、成形部14と、栓体15と、を有する。すなわち、樹脂成形金型1は、基台11と、第1保持部材12と、成形部13と、成形部14と、栓体15と、を備える。基台11は、中心軸Jに沿って基台11を上下方向Zに貫通する貫通孔11aを有する。貫通孔11aは、キャビティ1aの下側の端部に繋がる。
第1保持部材12は、第1保持部材12を上下方向Zに貫通する第1保持孔12aを有する。成形部13は、第1保持孔12aの内部に保持される。成形部13は、第1小径部SD1を成形する部分である。成形部14は、成形部13の上側において第1保持孔12aの内部に保持される。成形部14は、第1大径部BD1を成形する部分である。栓体15は、上下方向Zに延びる円柱状である。栓体15は、貫通孔11aに嵌め合わされ、貫通孔11aを閉塞する。栓体15の上端面は、キャビティ1aの底面を構成する。
第2金型部材20は、第1金型部材10の上側に固定される。第1金型部材10と第2金型部材20との上下方向Zの間には、中心軸Jを通って樹脂成形金型1を左右方向Yに貫通する挿入孔1cが設けられる。第2金型部材20は、第2保持部材21と、成形部40と、成形部22と、を有する。すなわち、樹脂成形金型1は、第2保持部材21と、成形部40と、成形部22と、を備える。
第2保持部材21は、第2保持部材21を上下方向Zに貫通する第2保持孔21aを有する。成形部40は、第2保持孔21aの内部に保持される。成形部40は、第2大径部BD2を成形する部分である。成形部22は、成形部40の上側において第2保持孔21aの内部に保持される。成形部22は、第3小径部SD3を成形する部分である。成形部22は、上側に開口する樹脂注入孔部1bを有する。樹脂注入孔部1bは、キャビティ1aの上端に繋がる。キャビティ1aには、樹脂注入孔部1bから樹脂材料が流し込まれる。樹脂注入孔部1bの内径は、上側から下側に向かうに従って小さくなる。
第3金型部材30は、左右方向Yに延びる一対の成形部31を有する。すなわち、樹脂成形金型1は、一対の成形部31を有する。一対の成形部31は、互いに左右方向Yに隙間を対向して配置される。一対の成形部31は、それぞれ挿入孔1cの左右方向Yの両側から挿入される。一対の成形部31の左右方向Yの隙間は、キャビティ1aのうち第2小径部SD2を成形する部分である。
成形部31は、成形部31の上面から下側に窪む溝部32を有する。溝部32は、左右方向Yに延びる。溝部32の径方向内端部は、成形部40の後述する空洞部44よりも径方向外側に位置する。溝部32の径方向内端部の上側には、成形部40が配置される。溝部32の径方向外端部は、第1金型部材10および第2金型部材20よりも径方向外側に位置し、樹脂成形金型1の外部に露出する。
図2から図6に示すように、成形部40は、成形部本体40aと、鍔部40bと、を有する。成形部本体40aは、略直方体状である。図3に示すように、成形部本体40aの上下方向Zに沿って視た形状は、左右方向Yに長い角丸長方形状である。図2および図4に示すように、鍔部40bは、成形部本体40aの上端部から左右方向Yの両側に突出する。鍔部40bは、前後方向Xに長い直方体状である。
図2から図5に示すように、成形部40は、成形部本体40aを上下方向Zに貫通する空洞部44を有する。空洞部44は、中心軸Jに沿って配置される。空洞部44の内側面は、中心軸Jを中心とする円筒状である。本実施形態において空洞部44の上下方向Zと直交する方向の寸法、すなわち空洞部44の内径は、上下方向Zに沿って一様である。なお、本明細書において「寸法が一様」であるとは、寸法が厳密に同じであることに加えて、寸法が略同じであることを含む。空洞部44は、キャビティ1aのうち第2大径部BD2を成形する部分である。すなわち、空洞部44には、樹脂材料が流し込まれる。
図3および図5に示すように、成形部40は、溝部40cを有する。溝部40cは、成形部40の下面から上側に窪む。溝部40cは、成形部40の左右方向Yの一端から他端まで左右方向Yに延びる。図3に示すように、溝部40cは、成形部40の下面における前後方向Xの中央に設けられる。溝部40cの下側から視た形状は、左右方向Yに長い長方形状である。溝部40cの前後方向Xの寸法は、空洞部44の内径よりも小さい。溝部40cは、空洞部44によって左右方向Yの両側に分断される。
図5に示すように、成形部40は、上下方向Zに積層される複数の層部を有する。複数の層部は、第1層部41と、第2層部42と、第3層部43と、を含む。本実施形態において、成形部40は、第1層部41と、第2層部42と、第3層部43と、が上下方向Zに積層されて構成される。第1層部41は、最も下側に配置される層部である。第2層部42は、第1層部41の上側に積層される層部である。第3層部43は、第2層部42の上側に積層される層部である。第3層部43は、最も上側に配置される層部である。
第1層部41は、第1層部41を上下方向Zに貫通する第1貫通孔41aを有する。第2層部42は、第2層部42を上下方向Zに貫通する第2貫通孔42aを有する。第3層部43は、第3層部43を上下方向Zに貫通する第3貫通孔43aを有する。第1貫通孔41aと第2貫通孔42aと第3貫通孔43aとは、互いに繋がり、上述した空洞部44を構成する。すなわち、空洞部44は、上下方向Zに延び、第1層部41と第2層部42と第3層部43とに跨って配置される。
第2層部42の気体の透過率は、第1層部41の気体の透過率および第3層部43の気体の透過率と異なる。ここで、本明細書において「気体の透過率」とは、気体の通りやすさを示す指標であり、例えば、漏れ試験によって計測される。すなわち、ある対象に対して漏れ試験を行った場合に、気体の漏れ量が多いほど気体の透過率は大きく、気体の漏れ量が少ないほど気体の透過率は小さい。漏れ試験としては、特に限定されず、例えば、JIS2332:2012に規定される圧力変化による漏れ試験方法を用いることができる。
例えば、樹脂成形金型を用いて、樹脂成形品として上下方向Zに延びる柱状部材を成形する場合、上下方向Zの一部において柱状部材にヒケが生じて、部分的に柱状部材の成型精度が低下する場合があった。上下方向Zの一部において柱状部材にヒケが生じる原因としては、例えば、樹脂材料が流し込まれる空洞部内に空気が残留し、樹脂材料が充填されにくい部分が生じること、空洞部を有する成形部の温度が上下方向Zで異なる箇所があり、部分的に成形収縮率が大きくなる部分が生じること、等が考えられる。
これに対して、本実施形態によれば、第1層部41と第3層部43との上下方向Zの間に配置される第2層部42の気体の透過率が、第1層部41の気体の透過率および第3層部43の気体の透過率と異なる。そのため、第1層部41から第3層部43においては、上下方向Zに隣り合う層部同士の気体の透過率が異なる。これにより、各層部の気体の透過率を柱状部材のヒケが生じやすい部分に合わせた値としやすい。
具体的には、成形される柱状部材、すなわち本実施形態では第2大径部BD2においてヒケが生じやすい部分を成形する層部の気体の透過率を大きくすることで、層部内を通して、空洞部44内から空気を抜くことができる。これにより、空洞部44内に空気が残留しにくく、空洞部44内において樹脂材料が充填されにくい部分が生じることを抑制できる。したがって、成形される第2大径部BD2に部分的にヒケが生じることを抑制できる。
また、例えば、層部の気体の透過率を大きくする場合、層部の材質を多孔性として気孔率を大きくすることが考えられる。気孔率が大きくなるほど、物質の熱伝導率は小さくなる。熱伝導率が小さくなると、成形時の層部の温度が低くなりやすく、樹脂成形品の成形収縮率を小さくできる。これにより、第2大径部BD2においてヒケが生じやすい部分を成形する層部の気体の透過率を大きくすることで、層部の熱伝導率を小さくでき、当該層部によって成形される部分の成形収縮率を小さくできる。したがって、成形される第2大径部BD2において部分的に成形収縮率が大きくなることを抑制でき、第2大径部BD2に部分的にヒケが生じることを抑制できる。
以上のようにして、本実施形態によれば、成形される柱状部材の上下方向Zの一部においてヒケが生じることを抑制できる。これにより、柱状部材、すなわち本実施形態では第2大径部BD2を延びる方向の全体に亘って精度よく成形できる樹脂成形金型1が得られる。
本実施形態において第2層部42の気体の透過率は、第1層部41の気体の透過率および第3層部43の気体の透過率よりも大きい。例えば、成形される柱状部材においてヒケが生じやすい部分は、柱状部材における上端部と下端部との間の中間部分となりやすい。そのため、第2層部42の気体の透過率を大きくすることで、柱状部材の中間部分にヒケが生じることを抑制できる。したがって、第2大径部BD2を上下方向Zの全体に亘ってより精度よく成形できる。第1層部41の気体の透過率と第3層部43の気体の透過率とは、例えば、同じである。
第2層部42の上下方向Zの寸法H2は、第1層部41の上下方向Zの寸法H1よりも小さい。第3層部43の上下方向Zの寸法H3は、第2層部42の上下方向Zの寸法H2よりも小さい。第1層部41の上下方向Zの寸法H1は、空洞部44の第1層部41に配置される部分における上下方向Zの寸法である。第2層部42の上下方向Zの寸法H2は、空洞部44の第2層部42に配置される部分における上下方向Zの寸法である。第3層部43の上下方向Zの寸法H3は、空洞部44の第3層部43に配置される部分における上下方向Zの寸法である。すなわち、空洞部44の第1層部41に配置される部分における上下方向Zの寸法H1は、空洞部44の第3層部43に配置される部分における上下方向Zの寸法H3よりも大きい。これにより、第2層部42は、成形部40において上下方向Zの中心よりも上側寄りに配置される。
ここで、本発明者らの実験等により、柱状部材においてヒケが生じやすい中間部分は、上下方向Zの中心よりも上側寄りになりやすいことが分かった。そのため、第1層部41および第3層部43よりも気体の透過率が大きい第2層部42を上側寄りに配置することで、より効果的にヒケが生じることを抑制することができる。したがって、第2大径部BD2を上下方向Zの全体に亘ってより精度よく成形できる。
また、例えば、成形される柱状部材が円柱状である場合に、ヒケが生じる部分が上下方向Zの中間部分となりやすく、特に中心よりも上側寄りになりやすい。そのため、本実施形態のように円柱状の第2大径部BD2を成形するために空洞部44の内側面が円筒状である場合に、第2層部42の気体の透過率を大きくすることで、特に効果的にヒケを抑制しやすい。
また、本実施形態の成形部40によって成形される第2大径部BD2は、スプールバルブSVにおいて摺動する部分であり、外径が上下方向Zの全体に亘って精度よく一様であることが求められる。そのため、摺動する円柱状の部材を成形するために空洞部44の内径が上下方向Zに沿って一様である場合に、柱状部材を上下方向Zの全体に亘って精度よく成形できる効果は、特に有用である。
本実施形態において複数の層部の少なくとも一つは、多孔性を有する。本実施形態では、第1層部41と第2層部42と第3層部43とのうちの第2層部42が多孔性を有する。これにより、第2層部42の気体の透過率を容易かつ好適に大きくすることができる。したがって、よりヒケが生じることを抑制できる。
第2層部42は、第2貫通孔42aの内周面が空洞部44内に露出する。すなわち、第2層部42は、多孔性を有し、一部が空洞部44内に露出する多孔質部である。これにより、成形部40は、多孔質部を有する。ここで、本明細書において「層部の一部が空洞部内に露出する」とは、層部の一部が空洞部の内側面の一部を構成することを含む。
成形部40は、多孔質部である第2層部42と成形部40の外部とを繋ぐ穴部47を有する。例えば、空洞部44内に空気が残留すると、上述したように樹脂成形品にヒケが生じる場合がある他、残留した空気が圧縮されて燃焼し、樹脂成形品の一部が炭化するガス焼けが生じる場合がある。これに対して、例えば、成形部を分割して分割された成形部同士の分割面に排気孔を設けて、空洞部内の排気を行うことが考えられる。しかし、この場合、充填される樹脂材料が分割面を超えると排気孔が閉塞され、空洞部内の排気が不十分になる場合があった。また、排気孔にも樹脂材料が充填され、バリが生じる場合もあった。
これに対して、本実施形態によれば、空洞部44内の空気を、多孔質部である第2層部42の空洞部44内に露出する部分から、穴部47を介して、成形部40の外部に排気することができる。そのため、空洞部44内に露出する多孔質部の部分をヒケおよびガス焼けが生じやすい箇所に配置することで、成形時に空洞部44内の排気を十分に行うことができる。したがって、樹脂成形品の成形時に空洞部44内に空気が残留することを抑制でき、樹脂成形品にヒケが生じることを抑制できるとともに、ガス焼けが生じることを抑制できる。また、空洞部44内に露出する部分は、多孔性を有する多孔質部であるため樹脂材料が充填されることを抑制でき、樹脂成形品にバリが生じることも抑制できる。また、上述したように第2層部42は、気体の透過率が比較的高いため、第2層部42に穴部47が繋がることで、より空洞部44内の排気を行いやすい。
穴部47は、第1穴部45と、第2穴部46と、を有する。第1穴部45は、上下方向Zに延びる。第1穴部45は、空洞部44よりも径方向外側において、成形部40の上側の面と成形部40の下側の面とのうちの少なくとも一方に開口する。本実施形態では、第1穴部45は、成形部40の下側の面に開口する。これにより、空洞部44内から第2層部42を介して穴部47に流入した空気を成形部40の下側から排出できる。
図1に示すように、本実施形態では、第1穴部45の下側の開口は、溝部32に面する。そのため、第1穴部45の下側の開口から排出された空気は、溝部32を通って樹脂成形金型1の外部に排出される。このように、成形部40の上下方向Zのいずれか一方側から空気を排出できることで、本実施形態のように複数の成形部が上下方向Zに積層される場合に、成形部同士の間に溝部32等を設けて成形部40から排出された空気を容易に樹脂成形金型1の外部に排出できる。
図5に示すように、第1穴部45は、第2層部42と繋がる。そのため、空洞部44から第2層部42内に流入した空気を、直接的に第1穴部45を介して成形部40の外部に排出できる。第1穴部45は、第2層部42の上端部から直線状に下側に延びて、成形部40の下面に開口する。図2から図4に示すように、第1穴部45の下側の開口は、溝部40cの底面に開口する。ここで、溝部40cは、第3金型部材30における溝部32と上下方向Zに対向して配置される。これにより、第1穴部45の下側の開口から排出された空気を溝部40cおよび溝部32を介して樹脂成形金型1の外部に排出することができ、より空気を排出しやすい。
図5に示すように、第1穴部45の上端部は、上側に凸となる半円状である。第1穴部45は、複数設けられる。図3に示すように、本実施形態では、第1穴部45は、例えば、2つ設けられる。2つの第1穴部45は、中心軸Jを挟んで左右方向Yの両側に配置される。第1穴部45の上下方向Zと直交する断面形状は、円形状である。第1穴部45の内径は、空洞部44の内径よりも小さい。
図5および図6に示すように、第2穴部46は、第1穴部45と繋がる。第2穴部46は、上下方向Zに沿って複数並んで設けられる。本実施形態において第2穴部46は、第2穴部46aと、第2穴部46bと、第2穴部46cと、の3つ設けられる。第2穴部46aと第2穴部46bと第2穴部46cとは、下側から上側に向かってこの順に等間隔に並んで配置される。各第2穴部46a〜46cは、空洞部44の径方向外側を囲む環状である。より詳細には、第2穴部46a〜46cは、中心軸Jを中心とする円環状である。第2穴部46a〜46cの周方向と直交する断面形状は、円形状である。第2穴部46aと第2穴部46bと第2穴部46cとは、上下方向Zに重なり合う。
第2穴部46aは、第1層部41に配置される。第2穴部46bおよび第2穴部46cは、多孔質部である第2層部42に配置される。そのため、第2穴部46b,46cによって第2層部42の周方向全体から空気を穴部47内に取り込むことができ、取り込んだ空気を、第1穴部45を介して成形部40の外部に排出することができる。したがって、より空洞部44内の排気を行いやすい。
図3に示すように、第2穴部46は、上下方向Zに沿って視て第1穴部45と重なる。図5および図6に示すように、各第1穴部45は、それぞれ複数の第2穴部46を繋ぐ。そのため、複数の第2穴部46から穴部47内に取り込んだ空気を、第1穴部45を介して成形部40の外部に排出することができる。これにより、より空洞部44内の排気を行いやすい。
本実施形態において成形部40は、単一の部材である。すなわち、各層部は、それぞれ単一の部材である成形部40の部分である。そのため、上下方向Zに隣り合う各層部同士の間に隙間が生じることがなく、成形される第2大径部BD2の成形精度を向上できる。成形部40は、例えば、3Dプリンターを用いて製造される。その際、各層部の気体の透過率は、成形部40を製造するための金属粉末等の素材に照射されるレーザーの出力を変化させることで、層部ごとに異ならせることができる。具体的には、レーザーの出力を小さくするほど、層部の気体の透過率が高くなる。そのため、本実施形態の成形部40を製造する際には、比較的高いレーザーの出力で第1層部41を成形した後に、レーザーの出力を低下させて第2層部42を成形し、再びレーザーの出力を上昇させて第3層部43を成形する。
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明においては、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
成形部40は、一部が空洞部44に露出し穴部47に繋がる多孔質部を有するならば、特に限定されない。第2層部42における空洞部44の露出する一部のみが多孔質部であってもよい。また、第1層部41および第3層部43の少なくとも一方は、多孔質部であってもよい。また、第1層部41および第3層部43の少なくとも一方の一部のみが、多孔質部であってもよい。第1層部41および第3層部43の少なくとも一部が空洞部44に露出する多孔質部であるならば、第2層部42は多孔質部でなくてもよい。また、第1層部41、第2層部42および第3層部43の全体が、多孔質部であってもよい。この場合、空洞部44の内側面を構成する部分の全体が多孔質部となり、空洞部44内の排気をより行いやすい。
また、各層部の気体の透過率は、特に限定されない。第2層部42の気体の透過率が第1層部41の気体の透過率および第3層部43の気体の透過率より小さくてもよい。また、第1層部41の気体の透過率と第3層部43の気体の透過率は、互いに異なってもよい。また、各層部の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、各層部の上下方向Zの寸法H1,H2,H3は特に限定されない。
また、穴部47は、多孔質部と成形部40の外部とを繋ぐならば特に限定されない。第1穴部45は、成形部40の上側の面に開口してもよいし、成形部40の下側の面と成形部40の上側の面との両方に開口してもよい。また、第1穴部45の数および第2穴部46の数は、特に限定されない。
また、成形部40以外の成形部13,14,22,31が、成形部40と同様の構成を有してもよい。これにより、スプールバルブSVの全体においてヒケおよびガス焼けが生じることを抑制でき、スプールバルブSVの全体を精度よく成形できる。
また、成形部40は、図7および図8に示す成形部140のように、複数の層部を有しなくてもよい。図7および図8に示す成形部140は、気体の透過率が全体に亘って一様な単一の部材である。成形部140の全体は多孔質部である。そのため、空洞部44の内側面を構成する部分の全体を多孔質部とでき、空洞部44内の排気をより行いやすい。
図7に示すように、成形部140において穴部147の第1穴部145は、周方向に沿って複数並んで設けられる。複数の第1穴部145は、周方向に沿って一周の全体に亘って等間隔に設けられる。図8に示すように、複数の第1穴部145のそれぞれは、複数の第2穴部146を繋ぐ。そのため、複数の第1穴部145と複数の第2穴部146とによって格子状の穴部147を構成できる。これにより、空洞部44内から穴部147内に空気をより流入しやすくでき、空洞部44内の排気をより行いやすい。
図7に示すように、第1穴部145としては、2つの第1穴部145aと、6つの第1穴部145bと、が設けられる。図8に示すように、第2穴部146としては、下側から上側に向かって順に、第2穴部146aと、第2穴部146bと、第2穴部146cと、が設けられる。成形部140においては、すべての第2穴部146a〜146cが、多孔質部に配置される。
図7に示すように、2つの第1穴部145aは、上述した第1穴部45と同様に、中心軸Jを挟んで左右方向Yの両側に配置される。第1穴部145aのそれぞれは、周方向に隣り合う第1穴部145b同士の間に配置される。図8に示すように、第1穴部145aは、最も上側に配置される第2穴部146cから下側に延びて成形部140の下側の面に開口する。第1穴部145bは、最も上側に配置される第2穴部146cから最も下側に配置される第2穴部146aまで上下方向Zに延びる。第1穴部145bは、上下方向Zの両側のいずれにも開口しない。成形部140は、上述した成形部40と異なり、溝部40cを有しない。
<第2実施形態>
図9から図12に示す本実施形態の成形部240は、図9に示す樹脂成形品Mを成形するための樹脂成形金型の一部である。成形部240は、樹脂成形品Mの上端樹脂部MUを成形する部分である。上端樹脂部MUは、突出する複数の突起部として突起部Ma,Mb,Mc等を有する。
図10に示すように、成形部240の軸方向に沿って視た形状は、正方形状である。成形部240は、成形部240を上下方向Zに貫通する貫通孔249を有する。図12に示すように、貫通孔249の上下方向Zに沿って視た形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。図9に示すように、成形部240は、第1層部241と、第2層部242と、第3層部243と、を有する。第2層部242は、多孔質部であり、第1層部241および第3層部243よりも気体の透過率が大きい。
図12に示すように、本実施形態において空洞部244は、貫通孔249の径方向外側に複数設けられる。複数の空洞部244は、貫通孔249の径方向外側を囲む。複数の空洞部244は、突起部Maが成形される空洞部244aと、突起部Mbが成形される空洞部244bと、突起部Mcが成形される空洞部244cと、を含む。
図9に示すように、空洞部244aは、上下方向Zに延びる。空洞部244aは、突起部Maの外形状の母型となる成形空洞部244dと、樹脂材料が注入される樹脂注入孔部244eと、を有する。成形空洞部244dは、第1層部241の下側の面から上側に窪む凹部である。成形空洞部244dの上端部は、第2層部242に配置される。成形空洞部244dの上側には、第2層部242の一部が配置される。樹脂注入孔部244eは、第3層部243の上側の面に開口する。樹脂注入孔部244eの下端は、凹部である成形空洞部244dの底面に開口する。成形空洞部244dには、樹脂注入孔部244eから樹脂材料が流し込まれる。樹脂注入孔部244eの内径は、上側から下側に向かうに従って小さくなる。
空洞部244aは、成形空洞部244dが第1層部241と第2層部242とに跨って配置され、樹脂注入孔部244eが第2層部242と第3層部243とに跨って配置されることで、第1層部241と第2層部242と第3層部243とに跨って配置される。成形空洞部244dの上端部は第2層部242に配置されるため、成形空洞部244dの上端部内には、第2層部242が露出する。これにより、成形空洞部244d内の空気を多孔質部である第2層部242を介して成形部240の外部に排出できる。
上端樹脂部MUのような複数の突起部Ma,Mb,Mcを有する複雑な形状は、成形時にヒケが生じやすい問題があった。これに対して、突起部Maを成形する成形空洞部244dの上端部に空気抜き用の穴を開口させることも考えられるが、樹脂注入孔部244eが成形空洞部244dの上端部に繋がるため、空気抜き用の穴を開口させにくい。
これに対して、本実施形態によれば、成形空洞部244dの上端部を多孔質部である第2層部242に配置することで、空気抜き用の穴を成形空洞部244dの上端部に開口させることなく、第2層部242を介して成形空洞部244d内の空気を抜くことができる。これにより、ヒケが生じることを抑制でき、複雑な形状を有する上端樹脂部MUを精度よく成形することができる。
空洞部244bは、空洞部244aと同様に、成形空洞部244fと、樹脂注入孔部244gと、を有する。図示は省略するが、空洞部244cも、空洞部244a,244bと同様に、成形空洞部と、樹脂注入孔部と、を有する。
なお、図12においては、成形部240を下側から視た際に、第2層部242が露出する部分を網掛けして示す。より詳細には、図12において網掛けして示す部分は、第2層部242の一部で構成される成形空洞部の底面である。
図10に示すように、穴部247は、多孔質部である第2層部242と繋がる第3穴部248を有する。本実施形態において第3穴部248は、第2層部242に設けられる。第3穴部248は、複数設けられる。複数の第3穴部248は、第3穴部248aと、第3穴部248bと、第3穴部248cと、を含む。第3穴部248a,248bは、成形部240の上下方向Zと直交する方向のうち前後方向Xの側面に開口する。第3穴部248cは、成形部240の上下方向Zと直交する方向のうち左右方向Yの側面に開口する。これにより、空洞部244から穴部247に流入した空気を、第3穴部248を介して上下方向Zと直交する方向に排出できる。これにより、他の成形部が成形部240の上下方向Zに積層される場合であっても、穴部247から樹脂成形金型の外部に空気を排出しやすい。
図11および図12に示すように、第3穴部248aは、前後方向Xに延びる。第3穴部248aは、成形部240の前後方向Xの一方側の端部から他方側の端部まで延びる。第3穴部248aは、貫通孔249を左右方向Yに挟んで2つ設けられる。第3穴部248aの前後方向Xと直交する断面形状は、円形状である。
第3穴部248bは、径方向のうちの前後方向Xに延びる。第3穴部248bは、2つの第3穴部248a同士の間において、第2層部242における左右方向Yの中心に配置される。第3穴部248bは、前後方向Xに沿って視て中心軸Jと重なる。第3穴部248bは、貫通孔249を前後方向Xに挟んで2つ設けられる。第3穴部248bの径方向内側の端部は、貫通孔249から径方向外側に離れて配置される。第3穴部248bの前後方向Xに直交する断面形状は、円形状である。第3穴部248bの中心は、第3穴部248aの中心よりも上側に位置する。
第3穴部248cは、径方向のうちの左右方向Yに延びる。第3穴部248cは、第2層部242における前後方向Xの中心に配置される。第3穴部248cは、左右方向Yに沿って視て中心軸Jと重なる。第3穴部248cは、貫通孔249を左右方向Yに挟んで2つ設けられる。第3穴部248cの径方向内側の端部は、貫通孔249から径方向外側に離れて配置される。第3穴部248cの左右方向Yに直交する断面形状は、円形状である。第3穴部248cの中心における上下方向Zの位置は、第3穴部248bの中心における上下方向Zの位置と同じである。
図12に示すように、第3穴部248a,248b,248cの一部は、空洞部244a,244b,244cと上下方向Zに重なる位置に配置される。そのため、空洞部244a,244b,244c内の空気を第2層部242から第3穴部248a,248b,248cに流入しやすくできる。これにより、空洞部244a,244b,244c内の排気をより行いやすい。本実施形態では、第3穴部248a,248b,248cの一部は、成形空洞部244d,244fの上側に配置される。
上述した各実施形態においては、穴部は多孔質部である第2層部に設けられる部分を有したが、これに限られない。穴部は、多孔質部に繋がればよく、例えば、多孔質部の表面に開口する構成でもよい。具体的には、例えば第1実施形態の成形部40において、穴部が第1層部41のみに配置され、穴部が第2層部42の下側の面に開口してもよい。また、各層部は、互いに別部材であってもよい。
また、上述した各実施形態においては、複数の層部として第1層部、第2層部および第3層部が設けられる場合、空洞部は、第1層部と第2層部と第3層部とに跨って配置される構成としたが、これに限られない。空洞部は、第1層部と第2層部と第3層部とのうちのいずれか2つの層に跨って配置されてもよいし、1つの層のみに配置されてもよい。
また、上述した各実施形態の樹脂成形金型によって成形される樹脂成形品は、特に限定されない。上述した各実施形態の成形部で成形される樹脂成形品の部分の形状は、特に限定されない。また、樹脂成形金型は、1つの成形部のみで構成されてもよい。また、上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。