JP2018162865A - 低温流体用ポンプおよび低温流体移送装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温流体の気化を抑制することが可能な低温流体用ポンプおよび低温流体移送装置を提供する。【解決手段】低温流体用ポンプ100は、インペラと、回転軸9と、筐体と、磁気軸受11とを備える。回転軸9はインペラに接続される。筐体は、回転軸9を内部に保持する。磁気軸受11は、回転軸9を筐体に対して回転可能に支持する。磁気軸受11は、ヨークと少なくとも1つのコイル11bとを含む。ヨークは磁気回路11eの少なくとも一部を構成する。少なくとも1つのコイル11bはヨークの一部を囲む。ヨークは、磁気回路11eの一部を構成する位置に配置された少なくとも1つの永久磁石11cを含む。【選択図】図4
Description
この発明は、低温流体用ポンプおよび低温流体移送装置に関する。
従来、低温液化ガスなどを送液する低温流体用ポンプが知られている。このような低温流体用ポンプにおいて、特に長期間連続運転が要求される超電導機器の冷却用に使用するポンプのように、故障やメンテナンス等でポンプを停止させることができない用途に使用されるポンプでは、軸受としてメンテナンス不要な磁気軸受が採用される。たとえば、特開2013−57250号公報(特許文献1)では、軸受としてメンテナンスが不要な磁気軸受を採用した構成の低温流体用ポンプが開示されている。当該特許文献1に開示された低温流体用ポンプでは、発熱源であるモータの上部シャフトと下部シャフトとを磁気継手によって非接触状態で磁気結合することにより、モータからシャフトを通してインペラ側への熱侵入を抑制している。これは、インペラ側へ熱侵入があると、低温液化ガスに熱が伝わり当該低温液化ガスが気化することや、当該気化したガスがポンプのインペラ側へ逆流して送液される低温液化ガスに脈動が発生するといった問題が発生するためである。
上述した従来の低温流体用ポンプでは、インペラにおいて低温流体の圧力変動などの外乱が発生する場合がある。特に、高吐出圧が得られるような低温流体用ポンプでは、インペラ周囲の圧力バランスの変動によりインペラに大きな負荷(外乱)が作用することがあった。従来、磁気軸受の制御安定性を向上させるために、磁気軸受を構成する電磁石コイルに一定の電流(バイアス電流)を印加しておく構成が多く採用されていた。そして、上記のような大きな外乱が想定される場合には、当該負荷に対応するため上記バイアス電流の値を大きくする必要があった。
しかし、このように磁気軸受の電磁石コイルに印加されるバイアス電流は、磁気軸受における発熱の原因となり、結果的に低温流体の気化やポンプの効率低下といった問題を発生させていた。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、低温流体の気化を抑制することが可能な低温流体用ポンプおよび低温流体移送装置を提供することである。
本開示に従った低温流体用ポンプは、インペラと、回転軸と、筐体と、磁気軸受とを備える。回転軸はインペラに接続される。筐体は、回転軸を内部に保持する。磁気軸受は、回転軸を筐体に対して回転可能に支持する。磁気軸受は、ヨークと少なくとも1つのコイルとを含む。ヨークは磁気回路の少なくとも一部を構成する。少なくとも1つのコイルはヨークの一部を囲む。ヨークは、磁気回路の一部を構成する位置に配置された少なくとも1つの永久磁石を含む。
本開示に従った低温流体移送装置は、低温流体を収容する容器と、上記低温流体用ポンプと、流通管路とを備える。上記低温流体用ポンプは、インペラが容器の内部に配置されるように、容器に設置される。流通管路は、容器と接続されており、低温流体用ポンプにより運動エネルギーが付与された低温流体を流通させるためのものである。
上記によれば、磁気軸受のヨークにおける磁気回路を構成する部分に永久磁石を配置することで、バイアス電流を流すことなく、磁気軸受における制御電流に対する発生力を線形化することができる。この結果、低温流体の気化を抑制することが可能な低温流体用ポンプおよび低温流体移送装置が得られる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
<低温流体移送装置の構成>
図1に示されるように、低温流体移送装置1は、低温流体用ポンプ100と、容器2と、流入部3と、流出部4とを主に備える。
<低温流体移送装置の構成>
図1に示されるように、低温流体移送装置1は、低温流体用ポンプ100と、容器2と、流入部3と、流出部4とを主に備える。
低温流体用ポンプ100は、容器2の外部に配置されている部分と、容器2の内部に配置されている部分とを含む。低温流体用ポンプ100は、容器2の圧力壁5に取り付けられている。低温流体用ポンプ100の詳細は後述する。
容器2は、低温液化ガスなどの低温流体を内部に貯留するためのものである。低温流体は、例えば液体窒素(LN2)である。容器2は、耐圧容器として構成されており、内部に低温流体を貯留する本体部と、圧力壁5とを含む。本体部はたとえば上部に開口部が形成されている。圧力壁5は本体部の開口部を塞ぐように、本体部に接続されている。圧力壁5は、容器2において低温流体を貯留する内部空間に面している。圧力壁5は、図1に示すように例えば容器2の上記内部空間の上方に配置されている。図2に示すように、圧力壁5には、貫通孔5aが形成されている。圧力壁5の当該貫通孔5aには、低温流体用ポンプ100において容器2の内部に配置されている部分が挿通されている。貫通孔5aの孔軸は、例えば後述するポンプ100のシャフト9を構成する第1軸の中心軸と同軸状に配置されている。
貫通孔5aの周囲に位置する圧力壁5の部分には、圧力壁5の外周面5bに対して内周面側に向かって凹んでいる凹部が配置されている。当該凹部は、後述する固定部材14がねじ込まれる部分である。圧力壁5を構成する材料は、法令等によって高圧ガスの収容容器の構成材料としての使用が認められている材料であり、例えばステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム(Al)を含む。
流入部3は、容器2の上記内部空間と接続されている管路を含む。低温流体は、流入部3の当該管路を通って容器2内に流入する。流出部4は、容器2の上記内部空間と接続されている管路を含む。低温流体は、流出部4の当該管路を通って容器2内から流出する。
流入部3および流出部4は、低温流体が流通する流通管路の一部として構成されている。当該流通管路は、図示しないリザーバタンクおよび図示しない冷凍機を含む。流入部3は、例えばリザーバタンクに接続されている。流出部4は、例えば冷凍機と接続されている。
また、異なる観点から言えば、上述した低温流体移送装置は、低温流体を収容する容器2と、上記低温流体用ポンプ100と、流入部3および流出部4を含む流通管路とを備える。低温流体用ポンプ100は、図2に示すようにインペラ8が容器2の内部に配置されるように、容器2に設置される。流通管路は、容器2と接続されており、低温流体用ポンプ100により運動エネルギーが付与された低温流体LGを流通させるためのものである。
<低温流体用ポンプの構成>
図2〜図4に示す、実施の形態1に係る低温流体用ポンプ100(以下、単にポンプとも呼ぶ)は、図1に示した低温流体移送装置1に適用されたものであって、容器2の圧力壁5に配置された貫通孔5aを塞ぐように配置される。ポンプ100は、外郭部材である筐体として、容器2の内部に配置される第1筐体部6と、容器2の外部に配置される第2筐体部7とを備えている。ここで、容器2の内部とは、容器2の圧力壁5の外周面5bに対して内側に位置する部分を意味する。また、容器2の外部とは、容器2の圧力壁5の外周面5bに対して外側に位置する部分を意味する。第1筐体部6および第2筐体部7は、容器2の圧力壁5と別体として構成されている。
図2〜図4に示す、実施の形態1に係る低温流体用ポンプ100(以下、単にポンプとも呼ぶ)は、図1に示した低温流体移送装置1に適用されたものであって、容器2の圧力壁5に配置された貫通孔5aを塞ぐように配置される。ポンプ100は、外郭部材である筐体として、容器2の内部に配置される第1筐体部6と、容器2の外部に配置される第2筐体部7とを備えている。ここで、容器2の内部とは、容器2の圧力壁5の外周面5bに対して内側に位置する部分を意味する。また、容器2の外部とは、容器2の圧力壁5の外周面5bに対して外側に位置する部分を意味する。第1筐体部6および第2筐体部7は、容器2の圧力壁5と別体として構成されている。
図2に示されるように、第1筐体部6は、インペラ8、シャフト9の第1部9aを内部に収容している。第1筐体部6には、開口部としての流入口6aおよび流出口6bが配置されている。流入口6aは、第1筐体部6の下方端部に配置され、下方に開口している。流出口6bは、インペラ8の中心軸の延在方向(シャフト9の中心軸の延在方向)から見たインペラ8の外周面の接線方向に開口している。
第1筐体部6の上方端部は、第2筐体部7の下方端部と接続され、固定されている。具体的には、第1筐体部6の上方端部の上面において外周側に位置する部分が、第2筐体部7の下方端部の下面に接続され、固定されている。
第2筐体部7の下方端部は、容器2の圧力壁5に配置された貫通孔5a内に配置される。第2筐体部7の下方端部は、貫通孔5aの大部分を塞ぐように構成されている。第2筐体部7の下方端部は、上記延在方向に垂直な径方向(ラジアル方向)において、貫通孔5aの内周端面と対向する外周側面を有している。
図2に示されるように、第2筐体部7は、シャフト9の第2部9b、モータ10、ラジアル磁気軸受11、およびスラスト磁気軸受12を内部に収容している。なお、ラジアル磁気軸受11の詳細な構成は後述する。第2筐体部7は、その下方端部よりも上方において、上記径方向の外側に突出しているフランジ部7aを含む。フランジ部7aは、上記周方向に連なっている。フランジ部7aには、複数の固定用貫通孔が配置されている。
複数の固定用貫通孔の各々は、シャフト9の中心軸に対する周方向に互いに間隔を隔てて配置されている。各固定用貫通孔の孔軸は、例えば上記中心軸に沿っている。各固定用貫通孔の一端はフランジ部7aの下面に配置されており、各固定用貫通孔の他端はフランジ部7aの上面に配置されている。フランジ部7aの下面は、圧力壁5の外周面5bにおいて貫通孔5aの全周を囲む部分と、上記中心軸に沿った方向において対向している。固定用貫通孔の一端と対向する圧力壁5の外周面5bには、凹部が形成されている。固定用貫通孔と凹部とに固定部材14としてのネジが挿入・固定されている。このようにして、フランジ部7aは、圧力壁5の外周面5bと接続されている。
第2筐体部7は、例えば第3筐体部7cと第4筐体部7dとを含む。第3筐体部7cは筒状部材である。第4筐体部7dは、第3筐体部7cの上方端部を覆うように構成された、蓋状部材である。第3筐体部7cの下方端部が、第2筐体部7の下方端部を構成している。第3筐体部7cの上方端部は、第4筐体部7dの下方端部と接触され、固定されている。第3筐体部7cの上方端部および第4筐体部7dの下方端部には、それぞれフランジ部が形成されている。第3筐体部7cのフランジ部と第4筐体部7dのフランジ部とは重なるように配置されている。これらのフランジ部には、貫通孔が形成されている。当該貫通孔に固定部材としてのネジが挿入・固定されている。第2筐体部7の外周面は、例えば大気に曝されている。
第1筐体部6および第2筐体部7を構成する材料は、法令等によって高圧ガスの収容容器の構成材料としての使用が認められている材料であり、例えばステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム(Al)を含む。
インペラ8は、シャフト9が回転することにより回転し、容器2内の低温流体LGに運動エネルギーを付与する。インペラ8は、例えば遠心羽根車として構成されている。インペラ8は、シャフト9の第1部9aの一端に接続されている。
シャフト9は、第1部9aおよび第2部9bを含む。上記延在方向において、第1部9aの一端はインペラ8に接続されており、第1部9aの他端は第2部9bの一端に接続されている。第1部9aの中心軸は、第2部9bの中心軸と同軸状に配置されている。シャフト9の中心軸は、第1部9aおよび第2部9bの中心軸であって、インペラ8の中心軸と同軸状に配置されている。シャフト9は、モータ10により回転駆動される。シャフト9の第2部9bは、ラジアル磁気軸受11およびスラスト磁気軸受12により非接触で支持されている。シャフト9は、その中心軸がモータ10の回転軸と同軸となるように支持されている。シャフト9の中心軸の上記延在方向は、例えば鉛直方向に沿っている。
ラジアル磁気軸受11は、例えば上記延在方向においてモータ10の両側に2つ配置されている。スラスト磁気軸受12は、シャフト9の第2部9bの他端よりも上方に配置されている。シャフト9、モータ10、ラジアル磁気軸受11およびスラスト磁気軸受12は、インペラ8を回転駆動する駆動部を構成している。
また、異なる観点から言えば、上記低温流体用ポンプ100は、インペラ8と、回転軸としてのシャフト9と、筐体としての第1筐体部6および第2筐体部7と、磁気軸受としてのラジアル磁気軸受11とを主に備える。シャフト9はインペラ8に接続される。第1筐体部6および第2筐体部7は、シャフト9を内部に保持する。ラジアル磁気軸受11は、シャフト9を第2筐体部7に対して回転可能に支持する。ラジアル磁気軸受11は、ヨークと、少なくとも1つのコイル11bとを含む。ヨークは磁気回路11eの少なくとも一部を構成する。少なくとも1つのコイル11bはヨークの一部を囲む。ヨークは、磁気回路11eの一部を構成する位置に配置された少なくとも1つの永久磁石11cを含む。
図3および図4に示すように、上記低温流体用ポンプにおいて、ヨークは、ベース部11aと、第1〜第4の突出部11d1〜11d4を有する複数の突出部11dとを含む。ベース部11aは、シャフト9の外周側においてシャフト9の表面から間隔を隔てて、シャフト9の周方向に沿って延びるように配置される。また異なる観点から言えば、ベース部11aはシャフト9の外周を周方向に囲むような円環形状である。
第1〜第4の突出部11d1〜11d4を含む複数の突出部11dは、ベース部11aからシャフト9に向けて突出するとともに、シャフト9の周方向において互いに間隔を隔てて配置される。複数の突出部11dはシャフト9の周方向において等間隔に配置されている。少なくとも1つの永久磁石11cは、第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2とを含む。第1の永久磁石11c1は、ベース部11aにおいて第1の突出部と第2の突出部との間に配置される。第2の永久磁石11c2は、ベース部11aにおいて第3の突出部11d3と第4の突出部11d4との間に配置される。図4に示すように、複数の突出部11dのうちの隣接する突出部11dの間に、それぞれ永久磁石11cが配置されている。第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2とは、周方向において隣り合う端部に同じ極が位置するように配置されている。図4では、第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2との隣り合う端部は同じN極となっている。また、周方向において間隔を隔ててベース部11aに配置された複数の永久磁石11cでは、周方向において隣り合う端部が当該周方向において隣り合う永久磁石11cの端部と同じ極性になっている。なお、永久磁石11cとして使用出来る磁石は、主にネオジム(Nd−Fe−B)磁石、サマコバ(Sm−Co)磁石、アルニコ(Al−Ni−Co)磁石である。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの作用効果>
この場合、ラジアル磁気軸受11が磁気回路11eの一部に永久磁石11cを含む永久磁石併用方式となっているため、ラジアル磁気軸受11の電磁石コイルであるコイル11bにバイアス電流を流すことなく、ラジアル磁気軸受11における制御電流に対する発生力を線形化することができる。このため、上記バイアス電流を流すことに起因するラジアル磁気軸受11での熱の発生を防止できる。この結果、低温流体用ポンプ100が適用される低温流体LGが当該熱によって気化することや、当該低温流体LGの気化に伴い低温流体用ポンプ100の効率が低下することを防止できる。
この場合、ラジアル磁気軸受11が磁気回路11eの一部に永久磁石11cを含む永久磁石併用方式となっているため、ラジアル磁気軸受11の電磁石コイルであるコイル11bにバイアス電流を流すことなく、ラジアル磁気軸受11における制御電流に対する発生力を線形化することができる。このため、上記バイアス電流を流すことに起因するラジアル磁気軸受11での熱の発生を防止できる。この結果、低温流体用ポンプ100が適用される低温流体LGが当該熱によって気化することや、当該低温流体LGの気化に伴い低温流体用ポンプ100の効率が低下することを防止できる。
具体的には、上述した本実施の形態に係るラジアル磁気軸受11については、図6に示すような構成により制御を行うことが考えられる。図6は、図2〜図4に示したラジアル磁気軸受11の制御を説明するための制御機構の一例を示す模式図である。制御機構は、ラジアル磁気軸受11のコイル11bへ制御用の電流ic1、ic2を供給するためにコイル11bへ接続されたアンプ41、42と、これらのアンプ41、42を制御する制御部40とを主に含む。制御部40からの制御信号により、アンプ41は1つのコイル11bへ制御用の電流ic1を供給する。また、制御部40からの制御信号により、アンプ42は他のコイル11bへ制御用の電流ic2を供給する。本発明の実施の形態1では、ラジアル磁気軸受11において永久磁石11cを配置することで、上述のようにバイアス電流を流す必要がない。なお、アンプ41、42としては、双方向の電流を流すHブリッジ回路を備えるアンプを用いることができる。
一方、本実施の形態のように永久磁石11cを用いない場合、たとえば図5に示すようにヨークのベース部11aに永久磁石を配置しない構成のラジアル磁気軸受を用いる場合を考える。ここで、図5は比較例としての低温流体用ポンプの部分断面模式図であって、当該比較例としての低温流体用ポンプは、ラジアル磁気軸受11が永久磁石を備えていない点、および図7に示すようにバイアス電流をコイル11bに供給するような制御機構を有する点が図1〜図4に示した低温流体用ポンプ100と異なっている。図7に示した比較例としての低温流体用ポンプのラジアル磁気軸受の制御機構は、基本的には図6に示した制御機構と同様の構成を備えるが、バイアス電流の電源部23がアンプ51、52の出力線に接続されている点が図6に示した制御機構と異なっている。図7に示した制御機構では、電源部23から出力されたバイアス電流ibがアンプ51、52からの電流ic1、ic2に加えられてコイル11bへ供給されている。このバイアス電流ibにより比較例の低温流体用ポンプのラジアル磁気軸受では、制御電流に対する発生力を線形化している。以下、当該バイアス電流による発生力の線形化について、図8〜図10を用いて説明する。
図8は、電磁石においてコイル電流と磁気力の関係を説明するための模式図である。図8(a)はシャフト9にラジアル磁気軸受に相当する電磁石を対向配置した状態を示す模式図である。図8(b)は、図8(a)に示した構成においてコイル11bに流される電流iと当該電磁石において発生する磁気力Fとの関係を示すグラフである。図8(b)において、横軸は電流iを示し、縦軸は磁気力Fを示す。電流iと磁気力Fとの関係は、下記の数式(1)で示すように2次の関数である。
なお、上記数式(1)において、Bは磁束密度、Sは磁路断面積、Nはコイル巻き数、iはコイルに供給される電流、xは図6に示した電磁石とシャフト9とのギャップをそれぞれ意味する。
図9は、ラジアル磁気軸受に用いられる電磁石を、シャフト9を挟むように、対向して配置した場合を示す模式図である。図9(a)は、電磁石をシャフト9を挟むようにして対向配置した状態を示す模式図である。図9(b)は、図9(a)に示した構成において、コイル11bに流れる電流iと電磁石において発生する磁気力Fとの関係を示すグラフである。図9(b)のグラフにおける縦軸及び横軸は図8(b)のグラフと同様である。
図9(b)からわかるように、図9(a)の構成では、電流iがゼロ付近での磁気力Fの傾きが小さいため磁気軸受としての剛性が相対的に低くなっている。また、電流iと磁気力Fとの関係が非線形のため、制御系の安定性検証に用いられるボード線図が利用できないなどの問題がある。さらに、磁気軸受に対して負荷が発生した際、コイル11bに制御電流が流れると、磁気軸受と磁気軸受で支持されたシャフト9とからなる制御対象において作用する力の状態が大きく変化してしまうため、制御上の安定性を確保することが困難である。
このような問題を回避するため、本実施形態では、永久磁石11cをラジアル磁気軸受11に適用している。本実施の形態において採用した永久磁石併用方式での磁気回路における起磁力は、下記の数式(2)で示される。
ここで、上記数式(2)において、liは磁路長、lpは図6に示す永久磁石11cの長さ、Hは永久磁石内部の磁界の強さをそれぞれ意味する。
上記数式(2)からわかるように、永久磁石の起磁力が加算され、磁束密度は(Ni−Hlp)の関数となる。つまり、本実施の形態に係るラジアル磁気軸受11においては、コイルの電流iで磁気力を制御することができる。
上記のような永久磁石併用方式の効果を図10に示す。図10のグラフにおける横軸および縦軸は、図8(b)のグラフと同様である。図10では、永久磁石11cによって発生するバイアス磁束による、コイルの電流iと磁気力Fの線形化の状態が示されている。本実施の形態に係るラジアル磁気軸受11では、たとえばバイアス磁束により発生する磁気力Fの2倍の領域までコイルの電流iと磁気力Fの関係を線形化することができる。
また、第1の永久磁石11c1からベース部11aの一部、第1の突出部11d1および第2の突出部11d2と周回する第1の磁気回路と、第2の永久磁石11c2からベース部11aの一部、第3の突出部11d3および第4の突出部11d4と周回する第2の磁気回路とを形成できる。さらに、上記のように第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2とは周方向において隣り合う端部が同じ極となっているため、第1の永久磁石11c1の上記端部と第2の永久磁石11c2の上記端部との間に位置する突出部の組(たとえば第2の突出部11d2と第3の突出部11d3との組)では、シャフト9に対向する内周部の極性が同じになっている。この結果、シャフト9が回転したときに第2の突出部11d2と第3の突出部11d3とで磁極が切り替わることがない。この結果、第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2との周方向において隣り合う端部が異なる極となっている場合(つまり第2の突出部11d2と第3の突出部11d3とで極性が異なる場合)に比べて、ヨークでの磁極の切り替わり回数、つまりシャフト9が回転したときにシャフト9の周方向におけるヨークの磁極の切り替わり回数を低減できる。この結果、当該磁極の切り替わりに起因するロータであるシャフト9での損失を低減できるので、低温流体用ポンプ100の効率の低下を抑制できる。また、上記のような低温流体用ポンプ100を用いた低温流体移送装置1では、低温流体用ポンプ100のラジアル磁気軸受11から低温流体への熱の流入を抑制できるので、低温流体の気化や効率の低下が抑制される。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの変形例の構成および作用効果>
図11に示す低温流体用ポンプは、図1に示した低温流体移送装置に適用されるとともに、基本的には図2〜図4に示した低温流体用ポンプと同様の構成を備えるが、ヨークのベース部11aおよび永久磁石11cの形状が図2〜図4に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図11に示した低温流体用ポンプでは、第1および第2の永久磁石11c1、11c2を含む複数の永久磁石11cの、周方向に対して垂直な方向である径方向に沿った断面での断面積が、ベース部11aにおいて第1〜第4の突出部11d1〜11d4を含む複数の突出部11dが接続された領域の、径方向に沿った断面での断面積より大きくなっている。また、ベース部11aは、径方向に沿った断面での断面積が、第1および第2の永久磁石11c1、11c2の少なくともいずれか一方に近づくにつれて、あるいは複数の永久磁石11cの少なくとも1つに近づくにつれて大きくなるように構成されている。また異なる観点から言えば、ベース部11aにおいて永久磁石11cに隣接する部分のシャフト9に面する内周面は、永久磁石11cに近づくにつれて内周側(シャフト9側)へ近づくように、周方向に対して傾斜している。なお、ベース部11aの外周面の、シャフト9の延在方向から見た形状は図11に示すように円形状である。
図11に示す低温流体用ポンプは、図1に示した低温流体移送装置に適用されるとともに、基本的には図2〜図4に示した低温流体用ポンプと同様の構成を備えるが、ヨークのベース部11aおよび永久磁石11cの形状が図2〜図4に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図11に示した低温流体用ポンプでは、第1および第2の永久磁石11c1、11c2を含む複数の永久磁石11cの、周方向に対して垂直な方向である径方向に沿った断面での断面積が、ベース部11aにおいて第1〜第4の突出部11d1〜11d4を含む複数の突出部11dが接続された領域の、径方向に沿った断面での断面積より大きくなっている。また、ベース部11aは、径方向に沿った断面での断面積が、第1および第2の永久磁石11c1、11c2の少なくともいずれか一方に近づくにつれて、あるいは複数の永久磁石11cの少なくとも1つに近づくにつれて大きくなるように構成されている。また異なる観点から言えば、ベース部11aにおいて永久磁石11cに隣接する部分のシャフト9に面する内周面は、永久磁石11cに近づくにつれて内周側(シャフト9側)へ近づくように、周方向に対して傾斜している。なお、ベース部11aの外周面の、シャフト9の延在方向から見た形状は図11に示すように円形状である。
この場合、第1および第2の永久磁石11c1、11c2を含む少なくとも1つの永久磁石11cの径方向に沿った断面における断面積を、図4に示した構成における永久磁石11cの断面積よりも相対的に大きくできるので、永久磁石11cの起磁力を維持したまま周方向における永久磁石11cの厚みを相対的に薄くできる。この結果、永久磁石11cにおける磁気回路での磁気抵抗を、当該永久磁石11cの周方向における厚みが図4に示すように相対的に厚い場合より低減できる。この結果、ラジアル磁気軸受11の制御性を向上させることができるとともに、負荷が加えられたときのラジアル磁気軸受11の制御電流値を低減できる。
(実施の形態2)
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの構成>
図12および図13に示したラジアル磁気軸受11を含む低温流体用ポンプは、図1に示す低温流体移送装置に適用され得るポンプであって、基本的に図1〜図4に示した低温流体用ポンプ100と同様の構成を備えるが、ラジアル磁気軸受11(図2参照)を構成するヨークの形状が図1〜図4に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図12および図13に示した低温流体用ポンプでは、ヨークが、シャフト9の外周を囲むように、シャフト9の周方向に間隔を隔てて配置された複数の部分を含んでいる。つまり、ヨークは、第1および第2のベース部11a1、11a2を含む複数のベース部11aと、第1〜第4の突出部11d1〜11d4とを含む。第1および第2のベース部11a1、11a2を含む複数のベース部11aは、図13に示すようにシャフト9の外周側においてシャフト9の周方向に沿って間隔を隔てて配置される。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの構成>
図12および図13に示したラジアル磁気軸受11を含む低温流体用ポンプは、図1に示す低温流体移送装置に適用され得るポンプであって、基本的に図1〜図4に示した低温流体用ポンプ100と同様の構成を備えるが、ラジアル磁気軸受11(図2参照)を構成するヨークの形状が図1〜図4に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図12および図13に示した低温流体用ポンプでは、ヨークが、シャフト9の外周を囲むように、シャフト9の周方向に間隔を隔てて配置された複数の部分を含んでいる。つまり、ヨークは、第1および第2のベース部11a1、11a2を含む複数のベース部11aと、第1〜第4の突出部11d1〜11d4とを含む。第1および第2のベース部11a1、11a2を含む複数のベース部11aは、図13に示すようにシャフト9の外周側においてシャフト9の周方向に沿って間隔を隔てて配置される。
第1および第2の突出部11d1、11d2は、第1のベース部11a1からシャフト9に向けて突出するとともに、シャフト9の軸方向において互いに間隔を隔てて配置される。第3の突出部11d3は、第2のベース部11a2からシャフト9に向けて突出するとともに、シャフト9の軸方向において第1のベース部11a1の中央から見て第1の突出部11d1と同じ側に配置される。第4の突出部11d4は、第3の突出部11d3からシャフト9の軸方向において間隔を隔てて配置される。第4の突出部11d4は、第2のベース部11a2からシャフト9に向けて突出するように形成される。第1〜第4の突出部11d1〜11d4には、コイル11bが巻回されている。
少なくとも1つの永久磁石11cは、第1および第2の永久磁石11c1、11c2を含む。第1の永久磁石11c1は、第1のベース部11a1において第1の突出部11d1と第2の突出部11d2との間に配置される。第2の永久磁石11c2は、第2のベース部11a2において第3の突出部11d3と第4の突出部11d4との間に配置される。第1の永久磁石11c1と第2の永久磁石11c2とは、軸方向において第1の突出部11d1側の端部に同じ極(図12ではN極)が位置するように配置されている。また、上記のような永久磁石11cが中央部に配置されたベース部11aと、当該ベース部11aの軸方向における両端に配置された2つの突出部11dと、当該2つの突出部11dをそれぞれ巻回するように配置された2つのコイル11bとからなるユニットは、図13に示すようにシャフト9の外周に沿って周方向に間隔を隔てて並ぶように複数個配置されている。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの作用効果>
図12および図13に示したラジアル磁気軸受11を備える低温流体用ポンプおよび当該低温流体用ポンプを備えた低温流体移送装置では、基本的に図1〜図4に示した低温流体移送装置および低温流体用ポンプと同様の効果を得ることができる。また、シャフト9に外周に沿って複数のユニットが間隔を隔てて配置され、また図12に示すように第1の突出部11d1と第3の突出部11d3とが同じ極性(たとえばN極)の磁極となっている。つまりラジアル磁気軸受11がいわゆるホモポーラ型のラジアル磁気軸受となっている。そして、上記のような構成とすることで、ホモポーラ型のラジアル磁気軸受11についても永久磁石併用方式を適用することができる。つまり、図14に示す参考例としてのホモポーラ型のラジアル磁気軸受では、永久磁石がヨークのベース部11aに配置されていないので、上述した実施の形態1の図5に示したラジアル磁気軸受と同様に、発生力の線形化のためバイアス電流を流す必要がある。なお、図14に示したラジアル磁気軸受は、永久磁石を備えていない点を除いて図12および図13に示したラジアル磁気軸受と同様の構成を備える。図14に示したラジアル磁気軸受におけるバイアス電流は、発熱の原因となり、低温流体の気化の要因となり得る。しかし、本実施の形態では、永久磁石11cを用いることで上記のようなバイアス電流を不要としており、実施の形態1と同様の効果をえることができる。
図12および図13に示したラジアル磁気軸受11を備える低温流体用ポンプおよび当該低温流体用ポンプを備えた低温流体移送装置では、基本的に図1〜図4に示した低温流体移送装置および低温流体用ポンプと同様の効果を得ることができる。また、シャフト9に外周に沿って複数のユニットが間隔を隔てて配置され、また図12に示すように第1の突出部11d1と第3の突出部11d3とが同じ極性(たとえばN極)の磁極となっている。つまりラジアル磁気軸受11がいわゆるホモポーラ型のラジアル磁気軸受となっている。そして、上記のような構成とすることで、ホモポーラ型のラジアル磁気軸受11についても永久磁石併用方式を適用することができる。つまり、図14に示す参考例としてのホモポーラ型のラジアル磁気軸受では、永久磁石がヨークのベース部11aに配置されていないので、上述した実施の形態1の図5に示したラジアル磁気軸受と同様に、発生力の線形化のためバイアス電流を流す必要がある。なお、図14に示したラジアル磁気軸受は、永久磁石を備えていない点を除いて図12および図13に示したラジアル磁気軸受と同様の構成を備える。図14に示したラジアル磁気軸受におけるバイアス電流は、発熱の原因となり、低温流体の気化の要因となり得る。しかし、本実施の形態では、永久磁石11cを用いることで上記のようなバイアス電流を不要としており、実施の形態1と同様の効果をえることができる。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの変形例の構成および作用効果>
図15および図16に示すラジアル磁気軸受11を備える低温流体用ポンプは、図1に示した低温流体移送装置に適用可能なポンプであって、図12および図13に示した低温流体用ポンプの変形例である。図15および図16に示した低温流体用ポンプは、基本的には図12および図13に示した低温流体用ポンプと同様の構成を備えるが、ラジアル磁気軸受11におけるコイル11bの配置が図12および図13に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図15および図16に示した低温流体用ポンプにおいて、少なくとも1つのコイル11bは、第1のコイル11b1と第2のコイル11b2とを含む。第1のコイル11b1は、第1の永久磁石11c1の周囲を囲むように配置される。第2のコイル11b2は、第2の永久磁石11c2の周囲を囲むように配置される。また、図16に示すように、シャフト9の外周を囲むように配置されたラジアル磁気軸受11の各ユニットでは、永久磁石11cの周囲を囲むようにコイル11bが配置されている。
図15および図16に示すラジアル磁気軸受11を備える低温流体用ポンプは、図1に示した低温流体移送装置に適用可能なポンプであって、図12および図13に示した低温流体用ポンプの変形例である。図15および図16に示した低温流体用ポンプは、基本的には図12および図13に示した低温流体用ポンプと同様の構成を備えるが、ラジアル磁気軸受11におけるコイル11bの配置が図12および図13に示した低温流体用ポンプと異なっている。すなわち、図15および図16に示した低温流体用ポンプにおいて、少なくとも1つのコイル11bは、第1のコイル11b1と第2のコイル11b2とを含む。第1のコイル11b1は、第1の永久磁石11c1の周囲を囲むように配置される。第2のコイル11b2は、第2の永久磁石11c2の周囲を囲むように配置される。また、図16に示すように、シャフト9の外周を囲むように配置されたラジアル磁気軸受11の各ユニットでは、永久磁石11cの周囲を囲むようにコイル11bが配置されている。
この場合、図12および図13に示した低温流体用ポンプと同様の効果が得られる。さらに、第1および第2の永久磁石11c1、11c2が配置された部分の磁気抵抗(磁路抵抗とも呼ぶ)は、実質的に空気の磁気抵抗と同様となり、ベース部11aにおける他の部分と比較して漏れ磁束が発生しやすい。このため、第1および第2の永久磁石11c1、11c2の周囲を囲むように第1および第2のコイル11b1、11b2を配置することで、第1および第2の永久磁石11c1、11c2における漏れ磁束を抑制できる。この結果、漏れ磁束に起因するラジアル磁気軸受11の特性の劣化を抑制できる。
(実施の形態3)
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの構成>
図17および図18に示した低温流体移送装置1は、基本的には図1に示した低温流体移送装置1と同様の構成を備えるが、低温流体用ポンプ100の構成が図1に示した低温流体移送装置1と異なっている。すなわち、図17および図18に示した低温流体移送装置1では、低温流体用ポンプ100のモータ30が圧力壁5の外側に配置されるとともに、第1軸としてのシャフト9がモータ30の第2軸31と磁気継手20により回転力を伝達可能に結合されている。また、2つのラジアル磁気軸受11により支持されたシャフト9が容器2の内部に配置されている。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの構成>
図17および図18に示した低温流体移送装置1は、基本的には図1に示した低温流体移送装置1と同様の構成を備えるが、低温流体用ポンプ100の構成が図1に示した低温流体移送装置1と異なっている。すなわち、図17および図18に示した低温流体移送装置1では、低温流体用ポンプ100のモータ30が圧力壁5の外側に配置されるとともに、第1軸としてのシャフト9がモータ30の第2軸31と磁気継手20により回転力を伝達可能に結合されている。また、2つのラジアル磁気軸受11により支持されたシャフト9が容器2の内部に配置されている。
すなわち、図17および図18に示した実施の形態3に係る低温流体用ポンプ100は、図1〜図4に示した低温流体用ポンプ100と同様に容器2の圧力壁5に配置された貫通孔5aを塞ぐように配置される。低温流体用ポンプ100は、インペラ8と、第1軸としてのシャフト9および第2軸31を含む回転軸と、筐体と、磁気軸受としてのラジアル磁気軸受11と、第2軸31を回転駆動するモータ30とを主に備える。
回転軸を構成するシャフト9と第2軸31とは磁気継手20により非接触で回転力を伝達可能に結合されている。2つのラジアル磁気軸受11はシャフト9を筐体に対して回転可能に支持する。2つのラジアル磁気軸受11は、シャフト9の延在方向において互いに間隔を隔てて配置されている。磁気継手20は、シャフト9の端部に固定された第1継手部材22と、第2軸31の端部に固定された第2継手部材21とを含む。第2継手部材21はカップ状の形状を有している。第1継手部材22は第2継手部材21の内側に配置されている。第1継手部材22と第2継手部材21との対向する部分には磁石が配置されている。この磁石が発生させる磁力により、第1継手部材22と第2継手部材21とは非接触で回転力を伝達できる。
シャフト9において第1継手部材22に隣接する位置にスラスト磁気軸受12が配置されている。また、シャフト9において、スラスト磁気軸受12から見て第1継手部材22と反対側に位置する部分にラジアル磁気軸受11が配置されている。
筐体は、第1筐体部と第2筐体部7と蓋体18とを含む。第1筐体部は、筐体部分6fとフランジ部6cとインペラ軸カバー6dとインペラカバー6eとを含む。筐体部分6fの上方端部は、圧力壁5の貫通穴5b内に配置される。フランジ部6cは筐体部分6fの上方端部に接続されている。第1筐体部は、フランジ部6cが圧力壁5の外周面5b上に延在するように配置される。第2筐体部7は筒状の形状を有するとともに、インペラ8側の端部にフランジ部が形成されている。第2筐体部7のフランジ部は、第1筐体部のフランジ部6cと重なるように配置される。第2筐体部7のフランジ部と第1筐体部のフランジ部6cとには、それぞれ固定部材14を通すための貫通穴が形成されている。この貫通穴は、圧力壁5の外周面5bに形成された凹部と重なるように配置される。そして、この貫通穴および凹部に固定部材14がねじ込まれて固定されることにより、第1筐体部と第2筐体部7とが圧力壁5に対して固定される。
第2筐体部7の上方には開口部が形成されている。第2筐体部7の開口部を塞ぐように蓋体18が配置されている。蓋体18と第2筐体部7とにより囲まれた筐体の内部領域には磁気継手20が配置されている。蓋体18の外周側にはモータ30が設置されている。モータ30には第2軸31が接続されている。蓋体18にはモータ30の一部を挿入する開口部が形成されている。当該開口部にモータ30の一部が挿入固定されている。モータ30において上記開口部に挿入された部分から第2軸31が第2筐体部7の内周側に向けて突出するように配置されている。
第1筐体部の筐体部分6fとインペラ軸カバー6dとインペラカバー6eとは、容器2の内部に配置されている。筐体部分6fは筒状の形状を有する。インペラ軸カバー6dは筐体部分6fにおいてインペラ8に対向する側に位置し、筐体部分6fに接続される。インペラカバー6eはインペラ軸カバー6dに接続されるとともに、インペラ8を囲むように配置されている。インペラカバー6eには、図2に示した低温流体用ポンプ100と同様に、開口部としての流入口6aおよび流出口6bが配置されている。
筐体部分6fにはラジアル磁気軸受11が接続される。ラジアル磁気軸受11としては、上述した実施の形態1または実施の形態2におけるラジアル磁気軸受11を適用できる。回転軸はインペラ8を回転駆動するためのものである。シャフト9の先端部であってインペラ軸カバー6dに囲まれた部分はインペラ8に接続されている。シャフト9の延在方向はたとえば重力方向(鉛直方向)である。筐体は、回転軸としてのシャフト9と第2軸31とを内部に保持する。ラジアル磁気軸受11は、回転軸を構成するシャフト9を筐体である筐体部分6fに対して回転可能に支持する。回転軸、モータ30、ラジアル磁気軸受11およびスラスト磁気軸受12は、インペラ8を回転駆動する駆動部を構成している。
<低温流体移送装置および低温流体用ポンプの作用効果>
図17および図18に示した低温流体移送装置1および低温流体用ポンプ100によれば、図1〜図4に示した低温流体移送装置1および低温流体用ポンプ100と同様の効果を得られる。さらに、図17および図18に示した低温流体移送装置1では、低温流体用ポンプ100のラジアル磁気軸受11が容器2の内部に配置されている。このような構成では、ラジアル磁気軸受11に上述した本発明の実施の形態1または実施の形態2に係るラジアル磁気軸受11を適用するので、従来のようにラジアル磁気軸受11のコイルにバイアス電流を流すことなく、ラジアル磁気軸受11の制御電流に対する発生力を線形化できるとともに、バイアス電流に起因する発熱を防止できるので、容器2内部の低温流体の気化を抑制する効果が顕著である。
図17および図18に示した低温流体移送装置1および低温流体用ポンプ100によれば、図1〜図4に示した低温流体移送装置1および低温流体用ポンプ100と同様の効果を得られる。さらに、図17および図18に示した低温流体移送装置1では、低温流体用ポンプ100のラジアル磁気軸受11が容器2の内部に配置されている。このような構成では、ラジアル磁気軸受11に上述した本発明の実施の形態1または実施の形態2に係るラジアル磁気軸受11を適用するので、従来のようにラジアル磁気軸受11のコイルにバイアス電流を流すことなく、ラジアル磁気軸受11の制御電流に対する発生力を線形化できるとともに、バイアス電流に起因する発熱を防止できるので、容器2内部の低温流体の気化を抑制する効果が顕著である。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
本発明は、超電導機器の冷却用に用いる低温流体を移送するためのポンプや移送装置に適用することができる。
1 低温流体移送装置、2 容器、3 流入部、4 流出部、5 圧力壁、5a 貫通孔、5b 外周面、6 第1筐体部、6a 流入口、6b 流出口、6c,6d インペラ軸カバー、6e インペラカバー、6f 筐体部分、7 第2筐体部、7a フランジ部、7c 第3筐体部、7d 第4筐体部、8 インペラ、9 シャフト、9a 第1部、9b 第2部、10,30 モータ、11d 突出部、11 ラジアル磁気軸受、11a1 第1のベース部、11a2 第2のベース部、11a ベース部、11b コイル、11b1 第1のコイル、11b2 第2のコイル、11c1 第1の永久磁石、11c2 第2の永久磁石、11c 永久磁石、11d3 第3の突出部、11d4 第4の突出部、11d1 第1の突出部、11d2 第2の突出部、11e 磁気回路、12 スラスト磁気軸受、14 固定部材、18 蓋体、20 磁気継手、21 第2継手部材、22 第1継手部材、23 電源部、31 第2軸、40 制御部、41,42 アンプ、100 低温流体用ポンプ。
Claims (6)
- インペラと、
前記インペラに接続された回転軸と、
前記回転軸を内部に保持する筐体と、
前記回転軸を前記筐体に対して回転可能に支持する磁気軸受とを備え、
前記磁気軸受は、
磁気回路の少なくとも一部を構成するヨークと、
前記ヨークの一部を囲む少なくとも1つのコイルとを含み、
前記ヨークは、前記磁気回路の一部を構成する位置に配置された少なくとも1つの永久磁石を含む、低温流体用ポンプ。 - 前記ヨークは、
前記回転軸の外周側において前記回転軸の周方向に沿って配置されたベース部と、
前記ベース部から前記回転軸に向けて突出するとともに、前記回転軸の前記周方向において互いに間隔を隔てて配置された第1〜第4の突出部とを含み、
前記少なくとも1つの永久磁石は、前記ベース部において前記第1の突出部と前記第2の突出部との間に配置された第1の永久磁石と、前記ベース部において前記第3の突出部と前記第4の突出部との間に配置された第2の永久磁石とを含み、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石とは、前記周方向において対向する端部に同じ極が位置するように配置されている、請求項1に記載の低温流体用ポンプ。 - 前記第1および第2の永久磁石の、前記周方向に対して垂直な方向である径方向に沿った断面での断面積は、前記ベース部において前記第1〜第4の突出部が接続された領域の、前記径方向に沿った断面での断面積より大きくなっている、請求項2に記載の低温流体用ポンプ。
- 前記ヨークは、
前記回転軸の外周側において前記回転軸の周方向に沿って間隔を隔てて配置された第1および第2のベース部と、
前記第1のベース部から前記回転軸に向けて突出するとともに、前記回転軸の前記軸方向において互いに間隔を隔てて配置された第1および第2の突出部と、
前記第2のベース部から前記回転軸に向けて突出するとともに、前記回転軸の前記軸方向において前記第1のベース部の中央から見て前記第1の突出部と同じ側に配置された第3の突出部と、前記第3の突出部から前記軸方向において間隔を隔てて配置された第4の突出部と、を含み、
前記少なくとも1つの永久磁石は、前記第1のベース部において前記第1の突出部と前記第2の突出部との間に配置された第1の永久磁石と、前記第2のベース部において前記第3の突出部と前記第4の突出部との間に配置された第2の永久磁石とを含み、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石とは、前記軸方向において前記第1の突出部側の端部に同じ極が位置するように配置されている、請求項1に記載の低温流体用ポンプ。 - 前記少なくとも1つのコイルは、前記第1の永久磁石の周囲を囲むように配置された第1のコイルと、前記第2の永久磁石の周囲を囲むように配置された第2のコイルとを含む、請求項4に記載の低温流体用ポンプ。
- 低温流体を収容する容器と、
前記インペラが前記容器の内部に配置されるように、前記容器に設置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の低温流体用ポンプと、
前記容器と接続されており、前記低温流体用ポンプにより運動エネルギーが付与された前記低温流体を流通させるための流通管路とを備える、低温流体移送装置。
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