JP2018159126A - チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐凝着性、耐摩耗性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れたチタン管用成形ロールを提供する。【解決手段】質量%で、C:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%、を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物から成る鋼組成を有する基材と、基材上に形成されたCrN皮膜と、Cr膜と、中間膜と、ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)とを備え、DLC膜において、ラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で0.5〜0.7、DLC膜とCrN皮膜との界面から20%深さの範囲で0.3〜0.5である。【選択図】なし
Description
本発明は、チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法に関するものである。
通常、鋼管その他の金属管を製造する場合、高精度の外径および真円度の確保、ならびに管の曲がり矯正を目的として、溶接後に成形ロールによる成形工程を行う。
成形ロールの摩耗が激しいと、精度の良い成形ができなくなり、成形する鋼管において高精度な真円度を確保できなくなる。そのため、成形ロールには、ロール表面の状態を長期間にわたって維持できる優れた耐摩耗性が要求される。
さらに近年では、鋼管の生産性の向上を図るべく、成形工程における通搬速度を増加させた過酷な条件で成形することが多い。このような条件で操業すると、鋼管表面と成形ロール表面との聞の周速差によって、その部分において凝着(焼付き)が生じやすくなり、焼付き痕が発生するおそれがある。このように、成形ロールと鋼管との間で凝着が発生すると、鋼管表面に疵が残り商品価値を下げてしまうため、摩耗や凝着が起きる前に成形ロールの交換を行わなければならない。
よって、鋼管を成形するロールには、耐摩耗性と、焼き付き疵を低減させうる耐凝着性を両立させ、ロールの交換頻度を低減できる長寿命なロールが要求される。
このような成形ロールに対する耐摩耗性及び耐凝着性の要求に対して、従来、様々な技術が検討されてきている。
例えば、ロール表面にセラミックス皮膜を成膜し硬度を確保する方法(特許文献1)、ロール表面に、浸硫窒化層、窒化層及びTiCから選ばれる1種の表面硬化層を形成させ硬度を向上させる方法(特許文献2)、表面に硬質皮膜を備えたロールにおいて、ロール表層に分散する炭化物を微細化してロールと硬質皮膜との密着性を確保し、硬質皮膜の剥離を防止することで耐摩耗性と耐凝着性を確保する方法(特許文献3)、等が検討されている。
また一般に、成形ロールの材質としてダイス鋼などの工具鋼が使用される場合が多いが、耐摩耗性や耐凝着性を向上させるために、工具鋼の代わりに超硬合金を使用する対策も取られている。
ここで、チタンは他の金属材料と比較して、各種環境中における耐食性が著しく優れていることから、各種化学用の反応塔や容器、配管などの構成材料として発展してきた。近年では、火力・原子力発電所等の蒸気タービン復水器や蒸発法海水淡水化装置の伝熱管としてもチタン管が多く使用されている。
上述のように、鋼管を成形する際の成形ロールの耐摩耗性及び耐凝着性については、上記の通り様々な検討がされている。しかし、チタン管を成形する成形ロール特性についてはほとんど言及されてきていない。さらに、チタン管成形時の成形ロールに対し、上記のような従来技術を採用しても、耐摩耗性及び耐凝着性が不十分である場合があった。
また近年では、ロールの表面性状を良好に維持できることから、チタン管成形ロールの材質として銅合金を用いることが多いが、銅合金では硬度が不十分なことから、十分な耐摩耗性を確保できない場合があった。
また近年では、ロールの表面性状を良好に維持できることから、チタン管成形ロールの材質として銅合金を用いることが多いが、銅合金では硬度が不十分なことから、十分な耐摩耗性を確保できない場合があった。
一般的に、チタン管を成形する場合、搬送方向に対して複数配置された多段の成形ロールにて成形することで、真円度や残留応力の制御を行う。
複数の成形ロールはおおまかに、駆動ロールと無駆動ロールに大別される。駆動ロールは上下に対向配置された一対のロールからなり、この上下ロールに駆動回転力を付与して駆動させてチタン管を搬送方向へ引っ張るロールであり、一方の無駆動ロールは左右に対向配置された一対のロールからなり、駆動回転力は付与されない。
複数の成形ロールはおおまかに、駆動ロールと無駆動ロールに大別される。駆動ロールは上下に対向配置された一対のロールからなり、この上下ロールに駆動回転力を付与して駆動させてチタン管を搬送方向へ引っ張るロールであり、一方の無駆動ロールは左右に対向配置された一対のロールからなり、駆動回転力は付与されない。
ここで、本発明者らは駆動ロールと無駆動ロールに要求される特性についてより詳細に調査した。その結果、駆動ロールは無駆動ロールよりもロールの周速差が大きいことから、特にフランジの部分でロール表面が剥離、成形対象物であるチタン管にも疵が付きやすいことが分かった。さらに、ロール表面の硬質化を目的として硬質膜を付与した場合でも、駆動ロールは無駆動ロールによりもその硬質膜が剥離しやすく、ロール寿命が短くなることが分かった。
つまり、駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール表面の優れたすべり性、つまり低摩擦性が求められることが分かった。更に、チタン管の生産性を高める観点から、ロール表面の低摩耗性が長期間にわたって維持されることが望まれる。
つまり、駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール表面の優れたすべり性、つまり低摩擦性が求められることが分かった。更に、チタン管の生産性を高める観点から、ロール表面の低摩耗性が長期間にわたって維持されることが望まれる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、チタン管を成形、造管する際に用いるロールにおいて、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れ、かつ安価なチタン管成形ロール、ならびにロールの長寿命化を図り得るチタン管成形装置、チタン管の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、安価でかつ耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性およびロール表面の摩擦係数に優れ、ロール寿命の長いチタン管成形ロールを検討した結果、通常、成形ロールの材質として用いられる合金工具鋼鋼材を基材とし、当該基材上に、窒化層、さらにはチタンとの親和性の低いCrN皮膜を形成し、さらにその上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、更にはCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜の間にCr膜と中間膜を配置することで、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性およびロール表面の低摩擦性を両立でき、ロールの交換頻度を低減できる長寿命なロールを提供できることが分かつた。
本発明の要旨は、以下の通りである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 質量%で、
C:1.00〜2.30%、
Si:0.10〜0.60%、
Mn:0.20〜0.80%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:4.80〜13.00%、
Mo:0〜1.20%、
V:0〜1.00%、
W:0〜0.80%を含有し、
残部が鉄および不純物である化学組成を有する基材と、
前記基材上の少なくとも圧延面に形成された窒化層と、
前記窒化層上に形成されたCrN皮膜と、
前記CrN皮膜上に形成されたCr膜と、
前記Cr膜上に形成された中間膜と、
前記中間膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、を備え、
前記基材のビッカース硬さが600〜700であり、
前記窒化層のビッカース硬さが800〜1200であり、
前記CrN皮膜のビッカース硬さが800〜2000であり、
前記中間膜はCr及び炭素を含み、Crと炭素の合計を100質量%としたとき、前記Cr膜側の界面におけるCr濃度が80質量%以上であり、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側の界面におけるC濃度が80質量%以上であり、前記Cr膜側から前記ダイヤモンドライクカーボン膜側に向かう膜厚方向に沿ってCr濃度が徐々に減少する膜であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜のビッカース硬さが、膜表面から0.20t(ただし、tは膜厚)までの領域において3000〜3500、前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において1500〜3000であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、0.20tまでの領域において0.5〜0.7、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において0.3〜0.5であるチタン管成形ロール。
(2) 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の厚さが0.5μm〜2.0μmである、(1)に記載のチタン管成形ロール。
(3) 前記CrN皮膜の厚さが0.5μm〜5.0μmである、(1)または(2)に記載のチタン管成形ロール。
(4) 前記窒化層の厚さが0.5μm〜50.0μmである、(1)乃至(3)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(5) 前記窒化層の平均窒素濃度が0.10〜0.50質量%である、(1)乃至(3)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(6) 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有する、(1)乃至(5)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(7) 前記基材が、質量%で、
Mo:0.70〜1.20%、
V:0.15〜1.00%、
W:0.60〜0.80%から選択される一種以上を含有する、(1)乃至(6)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(8) 前記Cr膜の厚さが5nm〜200nmである、(1)乃至(7)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(9) 前記中間膜の厚さが20nm〜1000nmである、(1)乃至(8)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(10) ロール本体の全周に渡って断面視半円状のロール凹部を設けた孔型ロールであって、
前記圧延面が、前記ロール凹部表面である、(1)乃至(9)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(11) 前記ロール本体が、ロール中央部と、前記ロール中央部の両側に配置されて前記ロール中央部に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部とを備え、
前記ロール凹部が、前記ロール中央部と前記回動フランジ部とによって分割されている、(10)に記載のチタン管成形ロール。
(12) 前記ロール中央部は、前記ロール本体を駆動する回転軸に固定されており、前記回動フランジ部は前記回転軸及び前記ロール中央部に対して回動自在とされている、(11)に記載のチタン管成形ロール。
(13) 前記ロール凹部の曲率半径をR1としたとき、前記ロール中央部における前記ロール凹部の幅は、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲である、(11)または(12)に記載のチタン管成形ロール。
(14) 前記ロール中央部には、基部と、前記基部のロール幅方向中央部からロール外周方向に向けて突出された突出部とが備えられ、
前記回動フランジ部は、前記基部上にあって前記突出部のロール幅方向両側に配置され、
前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間に、第1軸受部が設けられている、(11)乃至(13)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(15) 前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第1軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、(14)に記載のチタン管成形ロール。
(16) 一対の前記回動フランジ部のロール幅方向両側に配置されて前記ロール中央部に固定された固定フランジ部と、前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間に配置された第2軸受部と、を備える、(11)乃至(15)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(17) 前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第2軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、(16)に記載のチタン管成形ロール。
(18) 前記固定フランジ部に、前記回動フランジ部を引き寄せて固定する引きねじ部が設けられている、(16)または(17)に記載のチタン管成形ロール。
(19) (10)乃至(18)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールが2つ備えられ、
2つの前記チタン管成形ロールは、それぞれの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、前記の各ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置されている、チタン管成形装置。
(20) 前記基材からなるロール本体を備え、
前記ロール本体には、その全周に渡って設けられた断面視円弧状のロール凹部と、前記ロール凹部の幅方向両側に設けられ、前記ロール本体のロール幅方向外側に向けてロール本体の回転軸側に傾斜する傾斜部と、を有しており、
前記ロール凹部表面が前記圧延面であって、前記ロール凹部表面に、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられ、
更に、前記傾斜部の表面にも、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられている、(1)乃至(9)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(21) 前記ロール凸部と前記傾斜部との境界に、凸曲面部が設けられており、前記凸曲面部の曲率半径Rfr(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、Rfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係にあることを特徴とする(20)に記載のチタン管成形ロール。
(22) (20)または(21)に記載のチタン管成形ロールが4つ備えられ、
4つの前記チタン管成形ロールのうち、2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、別の2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置され、かつ、4つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置され、更に、相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士が対向している、チタン管成形装置。
(23) 相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士のクリアランスC(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、C=α×R1(ただし、0≦α≦0.02)の関係にあることを特徴とする(22)に記載のチタン管成形装置。
(24) (1)乃至(18)、(20)または(21)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを備えたチタン管成形装置であって、前記チタン管成形ロールの一部分に対し、チタン管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有する、チタン管成形装置。
(25) チタン管の成形サイズに合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、(24)に記載のチタン管成形装置。
(26) 前記チタン管成形ロールの径に合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、(24)または(25)に記載のチタン管成形装置。
(27) 前記潤滑ノズルの位置および向きを任意に調整できる、(24)乃至(26)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(28) 前記潤滑ノズルは、内径0.5〜3.0mmのチューブである、(24)乃至(27)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(29) 前記潤滑剤としてソリユブル油系潤滑剤を用い、該潤滑剤を1.0〜20.0ml/hr以下で微量滴下して供給する、(24)乃至(28)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(30) (1)乃至(18)、(20)または(21)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを用いて成形する、チタン管の製造方法。
(31) (19)または(22)乃至(29)の何れか一項に記載のチタン管成形装置を用いて成形する、チタン管の製造方法。
C:1.00〜2.30%、
Si:0.10〜0.60%、
Mn:0.20〜0.80%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:4.80〜13.00%、
Mo:0〜1.20%、
V:0〜1.00%、
W:0〜0.80%を含有し、
残部が鉄および不純物である化学組成を有する基材と、
前記基材上の少なくとも圧延面に形成された窒化層と、
前記窒化層上に形成されたCrN皮膜と、
前記CrN皮膜上に形成されたCr膜と、
前記Cr膜上に形成された中間膜と、
前記中間膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、を備え、
前記基材のビッカース硬さが600〜700であり、
前記窒化層のビッカース硬さが800〜1200であり、
前記CrN皮膜のビッカース硬さが800〜2000であり、
前記中間膜はCr及び炭素を含み、Crと炭素の合計を100質量%としたとき、前記Cr膜側の界面におけるCr濃度が80質量%以上であり、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側の界面におけるC濃度が80質量%以上であり、前記Cr膜側から前記ダイヤモンドライクカーボン膜側に向かう膜厚方向に沿ってCr濃度が徐々に減少する膜であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜のビッカース硬さが、膜表面から0.20t(ただし、tは膜厚)までの領域において3000〜3500、前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において1500〜3000であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、0.20tまでの領域において0.5〜0.7、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において0.3〜0.5であるチタン管成形ロール。
(2) 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の厚さが0.5μm〜2.0μmである、(1)に記載のチタン管成形ロール。
(3) 前記CrN皮膜の厚さが0.5μm〜5.0μmである、(1)または(2)に記載のチタン管成形ロール。
(4) 前記窒化層の厚さが0.5μm〜50.0μmである、(1)乃至(3)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(5) 前記窒化層の平均窒素濃度が0.10〜0.50質量%である、(1)乃至(3)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(6) 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有する、(1)乃至(5)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(7) 前記基材が、質量%で、
Mo:0.70〜1.20%、
V:0.15〜1.00%、
W:0.60〜0.80%から選択される一種以上を含有する、(1)乃至(6)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(8) 前記Cr膜の厚さが5nm〜200nmである、(1)乃至(7)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(9) 前記中間膜の厚さが20nm〜1000nmである、(1)乃至(8)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(10) ロール本体の全周に渡って断面視半円状のロール凹部を設けた孔型ロールであって、
前記圧延面が、前記ロール凹部表面である、(1)乃至(9)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(11) 前記ロール本体が、ロール中央部と、前記ロール中央部の両側に配置されて前記ロール中央部に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部とを備え、
前記ロール凹部が、前記ロール中央部と前記回動フランジ部とによって分割されている、(10)に記載のチタン管成形ロール。
(12) 前記ロール中央部は、前記ロール本体を駆動する回転軸に固定されており、前記回動フランジ部は前記回転軸及び前記ロール中央部に対して回動自在とされている、(11)に記載のチタン管成形ロール。
(13) 前記ロール凹部の曲率半径をR1としたとき、前記ロール中央部における前記ロール凹部の幅は、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲である、(11)または(12)に記載のチタン管成形ロール。
(14) 前記ロール中央部には、基部と、前記基部のロール幅方向中央部からロール外周方向に向けて突出された突出部とが備えられ、
前記回動フランジ部は、前記基部上にあって前記突出部のロール幅方向両側に配置され、
前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間に、第1軸受部が設けられている、(11)乃至(13)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(15) 前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第1軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、(14)に記載のチタン管成形ロール。
(16) 一対の前記回動フランジ部のロール幅方向両側に配置されて前記ロール中央部に固定された固定フランジ部と、前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間に配置された第2軸受部と、を備える、(11)乃至(15)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(17) 前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第2軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、(16)に記載のチタン管成形ロール。
(18) 前記固定フランジ部に、前記回動フランジ部を引き寄せて固定する引きねじ部が設けられている、(16)または(17)に記載のチタン管成形ロール。
(19) (10)乃至(18)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールが2つ備えられ、
2つの前記チタン管成形ロールは、それぞれの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、前記の各ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置されている、チタン管成形装置。
(20) 前記基材からなるロール本体を備え、
前記ロール本体には、その全周に渡って設けられた断面視円弧状のロール凹部と、前記ロール凹部の幅方向両側に設けられ、前記ロール本体のロール幅方向外側に向けてロール本体の回転軸側に傾斜する傾斜部と、を有しており、
前記ロール凹部表面が前記圧延面であって、前記ロール凹部表面に、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられ、
更に、前記傾斜部の表面にも、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられている、(1)乃至(9)の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
(21) 前記ロール凸部と前記傾斜部との境界に、凸曲面部が設けられており、前記凸曲面部の曲率半径Rfr(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、Rfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係にあることを特徴とする(20)に記載のチタン管成形ロール。
(22) (20)または(21)に記載のチタン管成形ロールが4つ備えられ、
4つの前記チタン管成形ロールのうち、2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、別の2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置され、かつ、4つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置され、更に、相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士が対向している、チタン管成形装置。
(23) 相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士のクリアランスC(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、C=α×R1(ただし、0≦α≦0.02)の関係にあることを特徴とする(22)に記載のチタン管成形装置。
(24) (1)乃至(18)、(20)または(21)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを備えたチタン管成形装置であって、前記チタン管成形ロールの一部分に対し、チタン管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有する、チタン管成形装置。
(25) チタン管の成形サイズに合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、(24)に記載のチタン管成形装置。
(26) 前記チタン管成形ロールの径に合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、(24)または(25)に記載のチタン管成形装置。
(27) 前記潤滑ノズルの位置および向きを任意に調整できる、(24)乃至(26)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(28) 前記潤滑ノズルは、内径0.5〜3.0mmのチューブである、(24)乃至(27)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(29) 前記潤滑剤としてソリユブル油系潤滑剤を用い、該潤滑剤を1.0〜20.0ml/hr以下で微量滴下して供給する、(24)乃至(28)の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
(30) (1)乃至(18)、(20)または(21)の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを用いて成形する、チタン管の製造方法。
(31) (19)または(22)乃至(29)の何れか一項に記載のチタン管成形装置を用いて成形する、チタン管の製造方法。
本発明によれば、チタン管を成形、造管する際に用いるロールにおいて、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れ、かつ安価なチタン管成形ロール、ならびにロールの長寿命化を図り得るチタン管成形装置、チタン管の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態であるチタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管の製造方法について説明する。
なお、本実施形態は、本発明のチタン管成形ロールの趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
なお、本実施形態は、本発明のチタン管成形ロールの趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
[チタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管の製造方法の第1の例]
図1に、本実施形態の第1の例である、チタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管成形ロールを用いたチタン管の製造方法の側面模式図を示す。また、図2には、チタン管成形ロールの正面模式図を示す。図1及び図2に示すように、本実施形態のチタン管成形ロール1は、所謂孔型ロールであり、鋼材からなるロール本体2と、ロール本体2に挿通された回転軸3とが備えられている。ロール本体2のロール面2aには、断面視円弧状、より具体的には半円状に成形されたロール凹部4がロール本体2の全周に渡って設けられている。また、ロール凹部4の表面には、基材上に、CrN皮膜と、CrN膜上に形成されたCr膜と、Cr膜上に形成された中間膜と、中間膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
図1に、本実施形態の第1の例である、チタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管成形ロールを用いたチタン管の製造方法の側面模式図を示す。また、図2には、チタン管成形ロールの正面模式図を示す。図1及び図2に示すように、本実施形態のチタン管成形ロール1は、所謂孔型ロールであり、鋼材からなるロール本体2と、ロール本体2に挿通された回転軸3とが備えられている。ロール本体2のロール面2aには、断面視円弧状、より具体的には半円状に成形されたロール凹部4がロール本体2の全周に渡って設けられている。また、ロール凹部4の表面には、基材上に、CrN皮膜と、CrN膜上に形成されたCr膜と、Cr膜上に形成された中間膜と、中間膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
図1に示すように、中空の円筒管であるチタン管10を真円に成形する際には、一対のチタン管成形ロール1の回転軸3をそれぞれ水平に配置し、かつ、各回転軸3が平行になるように配置する。このようにして各チタン管成形ロール1を上下方向に対向して配置させる。このようにしてチタン管成形装置を構成する。図1のチタン管成形装置は、2つのチタン管成形ロール1からなり、各チタン管成形ロール1は、ロール凹部4が相互に向き合うように配置されるとともに、各ロール凹部4が成形対象のチタン管10の外周面の同一円周上に接するように配置されている。そして、上下に配置した一対のチタン管成形ロール1の間に成形前のチタン管10を通過させる。一対のチタン管成形ロール1の間には、各チタン管成形ロール1のロール凹部4によって、正面側から視た場合に真円形状となる孔部が設けられており、この孔部をチタン管10が通過する際にチタン管10が真円状に成形される。なお、チタン管成形ロール1の配置は上下方向に限らず、水平方向でも斜め方向でもよい。また、図1に示すように、一対のチタン管成形ロール1の回転軸3をそれぞれ水平に配置し、かつ、各回転軸3が平行になるように配置することで、金属管成形装置の主要部が構成される。
チタン管成形ロール1の回転軸3は、駆動手段によって駆動される駆動軸でもよく、無駆動軸でもよい。本実施形態のチタン管成形ロール1は駆動軸に接続されたとしても、CrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられているために、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れたものとなる。
本実施形態に係るチタン管成形ロール1のロール本体2の基材は、質量%で、C:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%、を含有し、残部が鉄及び不純物から成る鋼組成を有する鋼材からなる。この基材からなるチタン管成形ロール1の少なくともロール凹部4の表面にCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられる。ダイヤモンドライクカーボン膜においては、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で(0.20t(tは膜厚)の領域)0.5〜0.7となり、ダイヤモンドライクカーボン膜と中間膜との界面から20%深さの範囲(0.20t(tは膜厚)の領域)では比I1380/I1540が0.3〜0.5となっている。
以下に、本実施形態におけるチタン管成形ロールについて詳しく説明する。
以下に、本実施形態におけるチタン管成形ロールについて詳しく説明する。
[基材の組成]
まず、本実施形態のチタン管成形ロール1における基材成分組成に関し、各元素の限定理由について詳述する。
なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。また、以下に示す基本成分及び選択元素の残部は、鉄及び不可避的不純物からなる。
まず、本実施形態のチタン管成形ロール1における基材成分組成に関し、各元素の限定理由について詳述する。
なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。また、以下に示す基本成分及び選択元素の残部は、鉄及び不可避的不純物からなる。
(C:炭素) 1.00〜2.30%
Cは、炭化物の形成および硬さの確保に必要な元素である。また、Cr、Mo、V等と結合して硬い炭化物を形成するので、焼入れ焼き戻し硬さを高め、耐摩耗性を構成させる元素として重要である。そのため、本実施形態ではCを1.00%以上含有させる。硬さの確保の観点から、1.4%以上含有させることが好ましい。
一方、C含有量が2.30%を超えると、靱性を著しく劣化させる。そこで、本実施形態では、C含有量は2.30%以下と限定する。なお、靭性確保の観点から、C含有量の上限は、2.20%であることが好ましく、2.00%以下であることがさらに好ましい。
Cは、炭化物の形成および硬さの確保に必要な元素である。また、Cr、Mo、V等と結合して硬い炭化物を形成するので、焼入れ焼き戻し硬さを高め、耐摩耗性を構成させる元素として重要である。そのため、本実施形態ではCを1.00%以上含有させる。硬さの確保の観点から、1.4%以上含有させることが好ましい。
一方、C含有量が2.30%を超えると、靱性を著しく劣化させる。そこで、本実施形態では、C含有量は2.30%以下と限定する。なお、靭性確保の観点から、C含有量の上限は、2.20%であることが好ましく、2.00%以下であることがさらに好ましい。
(Si:ケイ素) 0.10〜0.60%
Siは、脱酸剤として含有される。また、Siは、高温焼戻し中の軟化抵抗性を高める作用があるため含有される。これらの観点から、Siは0.10%以上含有させる。一方、Si含有量が0.60%を超えると、熱間加工性や靱性を低下させるほか、非金属介在物が増加するおそれがある。そのため、Si含有量は0.60%以下とする。なお、靭性確保の観点から、Si含有量の上限は0.50%であることが好ましい。
Siは、脱酸剤として含有される。また、Siは、高温焼戻し中の軟化抵抗性を高める作用があるため含有される。これらの観点から、Siは0.10%以上含有させる。一方、Si含有量が0.60%を超えると、熱間加工性や靱性を低下させるほか、非金属介在物が増加するおそれがある。そのため、Si含有量は0.60%以下とする。なお、靭性確保の観点から、Si含有量の上限は0.50%であることが好ましい。
(Mn:マンガン) 0.20〜0.80%
Mnは、Siと同様に脱酸効果のある元素であり、焼入れ性を向上させると同時に、残留オーステナイトを増加させる元素である。この観点から、Mnは0.20%以上含有させる。なお、硬度確保の観点から、0.30以上含有させることが好ましい。なお、靭性とのバランスを考慮し、本実施形態ではMn量の上限を0.8%とする。好ましくは、0.6%以下である。
Mnは、Siと同様に脱酸効果のある元素であり、焼入れ性を向上させると同時に、残留オーステナイトを増加させる元素である。この観点から、Mnは0.20%以上含有させる。なお、硬度確保の観点から、0.30以上含有させることが好ましい。なお、靭性とのバランスを考慮し、本実施形態ではMn量の上限を0.8%とする。好ましくは、0.6%以下である。
(P:リン) 0.030%以下
(S:硫黄) 0.030%以下
P,Sともに、鋼中に存在しない方が好ましい不純物元素である。このことから、P,Sともに、その含有量を0.030%以下に制限する。なお好ましくは、0.020%以下に制限する。
(S:硫黄) 0.030%以下
P,Sともに、鋼中に存在しない方が好ましい不純物元素である。このことから、P,Sともに、その含有量を0.030%以下に制限する。なお好ましくは、0.020%以下に制限する。
(Cr:クロム) 4.80〜13.00%
CrはCと結合して、結合して炭化物を形成することにより、耐摩耗性を向上させる需要な元素である。また、本実施形態ではチタン管成形ロール1の基材上にCrN皮膜(硬質皮膜)を形成することから、当該CrN皮膜との密着性を確保する上でも非常に重要である。これらの観点から、Cr量は4.80%以上とし、好ましくは8.00%以上、さらに好ましくは11.00%以上とする。
一方、Crを過剰に添加すると、粗大な炭化物の生成によって靭性が劣化するおそれがあるので、Cr量の上限を13.00%とする。なお、好ましくは12.50%以下である。
CrはCと結合して、結合して炭化物を形成することにより、耐摩耗性を向上させる需要な元素である。また、本実施形態ではチタン管成形ロール1の基材上にCrN皮膜(硬質皮膜)を形成することから、当該CrN皮膜との密着性を確保する上でも非常に重要である。これらの観点から、Cr量は4.80%以上とし、好ましくは8.00%以上、さらに好ましくは11.00%以上とする。
一方、Crを過剰に添加すると、粗大な炭化物の生成によって靭性が劣化するおそれがあるので、Cr量の上限を13.00%とする。なお、好ましくは12.50%以下である。
なお、本実施形態では、上記成分組成にさらに、Mo:0〜1.20%及びV:0〜1.00%、を含有させてもよい。
(Mo:モリブデン) 0〜1.20%
Moは、焼戻し軟化抵抗性を向上させるとともに、炭化物の形成により耐摩耗性を付与する効果も有する。これらの観点から、Moは0.70%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.80%以上である。
一方、Moを過剰に添加すると靱性を劣化させるおそれがある。このことから、Moは1.20%以下含有させることが好ましく、より好ましくは1.10%以下である。
Moは、焼戻し軟化抵抗性を向上させるとともに、炭化物の形成により耐摩耗性を付与する効果も有する。これらの観点から、Moは0.70%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.80%以上である。
一方、Moを過剰に添加すると靱性を劣化させるおそれがある。このことから、Moは1.20%以下含有させることが好ましく、より好ましくは1.10%以下である。
(V:バナジウム) 0〜1.00%
Vは、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Vは0.15%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。
一方、Vを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Vは1.00%以下含有させることが好ましく、より好ましくは0.50%以下である。
Vは、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Vは0.15%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。
一方、Vを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Vは1.00%以下含有させることが好ましく、より好ましくは0.50%以下である。
また、本実施形態では、上記成分組成にさらに、W:0〜0.80%を含有させてもよい。
(W:タングステン) 0〜0.80%
Wは、Vと同様に、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Wは0.6%以上含有させることが好ましい。一方、Wを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Wは0.80%以下含有させることが好ましい。
Wは、Vと同様に、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Wは0.6%以上含有させることが好ましい。一方、Wを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Wは0.80%以下含有させることが好ましい。
本実施形態においては、上記した元素以外の残部は実質的にFeからなり、不純物をはじめ、本発明の作用効果を害さない元素を微量に添加することができる。
なお、本実施形態のチタン管成形ロール1においては、基材の材質として上記成分組成を有するものを用いるが、その中でも、より安価でかつ耐摩耗性と耐凝着性をバランスよく確保する観点から、JIS G 4404にて規定されている、SKD1,SKD2,SKD10,SKD11もしくはSKD12(いずれも上記成分組成範囲内)を用いることが好ましく、これらの中でも特に、SKD11を用いることがより好ましい。
上記成分組成を有するような基材の硬度は、ビッカース硬さで約600〜700である。つまり、上記基材上に皮膜等を形成せず、基材ままの状態でチタン管10を成形した場合、基材自体の硬度は確保できていることから耐摩耗性に関しては比較的良好な結果が得られるが、耐凝着性に関しては、チタン管の材料が基材に焼付いてしまい、チタン管成形ロール1に多数の疵が生じてしまう。
そのため、本実施形態では、Tiとの親和性が非常に低く、基材中のCrとの連続性(素材連続性)保つことができることから、基材表面(圧延面)にCrN皮膜を形成することが重要である。基材表面上にCrN皮膜を形成することにより、チタン管10とチタン管成形ロール1との密着性を確保でき、耐凝着性を向上させることができる。しかしながら、高硬度(ビッカース硬さで800〜2000)のCrN層と比較的軟質な基材との間(界面)では硬度格差(強度の不連続性)が生じる。その結果、CrN層と基材との界面において応力が集中しやすくなり、CrN皮膜の厚みによってはCrN皮膜と基材との密着性が十分に確保できない場合がある。
そこで、本発明者らが検討した結果、高硬度なCrN皮膜と、比較的軟質な基材との間に、CrN皮膜と基材とを連結させうる窒化層を設けることで、硬度格差を緩和させることができ、CrN皮膜と基材との密着性、及びチタン管成形ロール1の強度を両立させうることを知見した。
以上のことから、基材とCrN層との聞に、基材表層をプラズマ窒化処理することによって得られる窒化層を設けることが好ましい。このように、基材の表層に窒化層を形成することで、CrN皮膜と基材との間の硬度差を緩和することができ、応力の集中を抑制することができる。その結果、CrN皮膜と基材との密着性、ならびに強度を向上させることができ、CrN皮膜の剥離を低減し、耐凝着性を向上させることが可能となる。
[窒化層]
本実施形態に係るチタン管成形ロール1は、基材上に窒化層を形成し、その上にCrN皮膜、Cr膜、中間膜および高硬度なダイヤモンドカーボン膜を成膜することで、チタン管成形ロール1の耐摩耗性、耐疑着性、低摩擦性を確保する。
本実施形態に係るチタン管成形ロール1は、基材上に窒化層を形成し、その上にCrN皮膜、Cr膜、中間膜および高硬度なダイヤモンドカーボン膜を成膜することで、チタン管成形ロール1の耐摩耗性、耐疑着性、低摩擦性を確保する。
窒化層のビッカース硬さは、800〜1200である。ビッカース硬さが、800未満では、CrN皮膜との硬度差が大きくなりすぎ、また、1200を超えると、基材との硬度差が大きくなる。
窒化層の厚さは特に限定しないが、本実施形態では、0.5μm〜50.0μmとすることが好ましい。
高硬度のCrN皮膜と比較的軟質な基材との間における強度の差を低減するためには、窒化層の厚みを0.5μm以上確保することが好ましい。より好ましくは1.0μm以上である。一方、窒化層の厚みを過度に厚くしすぎることは、プラズマ窒化処理に要する時間が長くなり生産性を低下させるほか、製造コストも高くなる。また、窒化層の厚みを過度に厚くすると、基材の表面粗度が大きくなってしまい、CrN皮膜の成膜前に基材表面を研磨する必要が生じる。これらの観点から、窒化層の厚みは50.0μm以下とすることが好ましい。
高硬度のCrN皮膜と比較的軟質な基材との間における強度の差を低減するためには、窒化層の厚みを0.5μm以上確保することが好ましい。より好ましくは1.0μm以上である。一方、窒化層の厚みを過度に厚くしすぎることは、プラズマ窒化処理に要する時間が長くなり生産性を低下させるほか、製造コストも高くなる。また、窒化層の厚みを過度に厚くすると、基材の表面粗度が大きくなってしまい、CrN皮膜の成膜前に基材表面を研磨する必要が生じる。これらの観点から、窒化層の厚みは50.0μm以下とすることが好ましい。
窒化層中の平均窒素濃度は、0.10〜0.50質量%とすることが好ましい。
窒化層中の窒素濃度が低すぎると、強度向上の効果が小さく、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあるため、窒化層中の平均窒素濃度は0.10質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.20%以上である。
窒化層中の窒素濃度が低すぎると、強度向上の効果が小さく、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあるため、窒化層中の平均窒素濃度は0.10質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.20%以上である。
一方、窒化層中の窒素濃度が高すぎると、窒化層表面が脆化する傾向となりやすく、割れが生じるおそれがある。このことから、窒化層中の平均窒素濃度は0.50質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.40%以下である。
また、窒化層における窒素の濃度分布が、窒化層表層から深さ方向に向かって減少するような濃度勾配を有することが好ましい。
上述したように、ロール内部で強度格差が生じることは、CrN皮膜と基材との密着性、及び強度の観点から好ましくない。従って、CrN皮膜、基材表層、基材内部それぞれの間の強度の格差、すなわちロール内部の深さ方向に沿った強度勾配は緩やかにすることが好ましい。そのためには、CrN皮膜と基材との間に形成する窒化層内の窒素の濃度分布を、窒化層表層から基材側に向かって減少するような濃度勾配となるよう制御することが好ましい。
上述したように、ロール内部で強度格差が生じることは、CrN皮膜と基材との密着性、及び強度の観点から好ましくない。従って、CrN皮膜、基材表層、基材内部それぞれの間の強度の格差、すなわちロール内部の深さ方向に沿った強度勾配は緩やかにすることが好ましい。そのためには、CrN皮膜と基材との間に形成する窒化層内の窒素の濃度分布を、窒化層表層から基材側に向かって減少するような濃度勾配となるよう制御することが好ましい。
なお、窒素の濃度分布を、窒化層表層から深さ方向に向かって減少する勾配となるよう制御するためには、窒化層を形成するための基材表層に対するプラズマ窒化処理を複数回に分け、かつ、各回の処理を異なる条件で行うことにより、窒化層内における窒素の濃度分布を調整すればよい。
なお、「窒化層」の判別(基材と「窒化層」との境界の判定)は、グロー放電発光分析装置(GDS)によって行うことができる。具体的には、まず、上記プラズマ窒化処理によって窒化させた基材表層において、分析領域を直径1mmとし、通常のグロー放電発光分析を行う。引き続き、深さ方向に分析を進め、分析領域の窒素量が母材(基材)の平均窒素濃度を超えているところまでの領域を「窒化層」とする。つまり、グロー放電発光分析を深さ方向に行い、窒素量が基材の平均窒素濃度まで下がった地点を基材と「窒化層」との境界の判定することとする。
また、窒化層中の平均窒素濃度についても、GDSを用いて測定することができる。なお、本実施形態では、分析領域を直径1mmとし、GDSを用いて深さ方向に分析を行い、JIS K 0150に規定されているQDP(Quantitative Depth Profile)法を適用し、深さ50nmごとの窒素濃度を測定する。これにより、窒化層における窒素の濃度分布を得る事ができる。また、窒化層全体の平均窒素濃度は、深さ50nmごとの各窒素濃度の平均を算出することで求めることができる。
窒化層の形成前には、ロール(基材)表面を鏡面研磨することが望ましい。また、ショットブラストを行うことが望ましい。これにより、ロール表面性状を良好なものとし、CrN皮膜と基材との密着性を向上させることができ、結果、優れた耐凝着性を得ることが可能となる。
[CrN皮膜(硬質皮膜)]
CrN皮膜のビッカース硬さは800〜2000の範囲内とすることが好ましい。
CrN皮膜の硬度は、チタン管成形ロール1の耐摩耗性を向上させる観点から、高硬度とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、CrN皮膜のビッカース硬さを800以上とすることが好ましく、1500以上とすることがより好ましい。一方、CrN皮膜の硬度の過度な上昇は、クラックの発生を招くおそれがあることから、CrN皮膜のビッカース硬さは2000以下とすることが好ましい。
CrN皮膜のビッカース硬さは800〜2000の範囲内とすることが好ましい。
CrN皮膜の硬度は、チタン管成形ロール1の耐摩耗性を向上させる観点から、高硬度とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、CrN皮膜のビッカース硬さを800以上とすることが好ましく、1500以上とすることがより好ましい。一方、CrN皮膜の硬度の過度な上昇は、クラックの発生を招くおそれがあることから、CrN皮膜のビッカース硬さは2000以下とすることが好ましい。
CrN皮膜の厚さは特に限定しないが、0.5μm〜5.0μmとすることができる。
CrN皮膜を薄くしすぎると、皮膜形成時にムラが生じ、耐凝着性が不十分となるおそれがある。また、CrN皮膜を過度に厚くすると、硬度は向上する一方で、皮膜にき裂(クラック)が生じやすくなり、脆くなるおそれがあるほか、経済的観点から製造コストが高くなり好ましくない。これらのことから、CrN皮膜の厚さは0.5μm〜5.0μmとすることが好ましい。
CrN皮膜を薄くしすぎると、皮膜形成時にムラが生じ、耐凝着性が不十分となるおそれがある。また、CrN皮膜を過度に厚くすると、硬度は向上する一方で、皮膜にき裂(クラック)が生じやすくなり、脆くなるおそれがあるほか、経済的観点から製造コストが高くなり好ましくない。これらのことから、CrN皮膜の厚さは0.5μm〜5.0μmとすることが好ましい。
CrN皮膜の成膜方法に関しては特に限定しないが、基材との密着性を確保でき、更に成膜した皮膜の硬度を向上させうることから、PVD法(物理蒸着法)を用いることが好ましい。他の蒸着法(例えばCVD法)によっても本実施形態に係るCrN皮膜は形成できるが、硬度が不十分であったり、CrN皮膜の膜厚が過度に厚くなったりするおそれがあるため、CrN皮膜の成膜法としてはPVD法を用いることが好ましい。
なお、CrN皮膜は単層構造でもよく、2層以上積層する複層構造でもよい。しかし、上述したように、CrN皮膜の膜厚が厚くなりすぎるとクラックが生じるおそれがあるほか、複層構造とすることで、生産性の低下、製造コストの上昇を招くことから、CrN皮膜は単層構造とすることが好ましい。
[Cr膜及び中間膜]
本実施形態では、CrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜との間に、Cr膜及び中間膜を配置することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン膜はCrN膜に対して比較的高い密着性を有するものの、本実施形態のチタン管成形ロール1に対してチタン管10を繰り返し通管させると、ダイヤモンドライクカーボン膜に繰り返し衝撃が加わり、これにより、ダイヤモンドライクカーボン膜がCrN膜から剥離するおそれがある。そこで、CrN膜上にCr膜を形成し、Cr膜上に中間膜を形成し、更にその上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成することにより、繰り返し衝撃を受けた場合でもダイヤモンドライクカーボン膜の剥離を抑制する。また、中間膜を設けることで、CrからC単体への傾斜構造を持たせることができ、耐久性を高めることができる。
本実施形態では、CrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜との間に、Cr膜及び中間膜を配置することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン膜はCrN膜に対して比較的高い密着性を有するものの、本実施形態のチタン管成形ロール1に対してチタン管10を繰り返し通管させると、ダイヤモンドライクカーボン膜に繰り返し衝撃が加わり、これにより、ダイヤモンドライクカーボン膜がCrN膜から剥離するおそれがある。そこで、CrN膜上にCr膜を形成し、Cr膜上に中間膜を形成し、更にその上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成することにより、繰り返し衝撃を受けた場合でもダイヤモンドライクカーボン膜の剥離を抑制する。また、中間膜を設けることで、CrからC単体への傾斜構造を持たせることができ、耐久性を高めることができる。
Cr膜は、厚みが5nm〜200nmの範囲が好ましく、10nm〜100nmの範囲がより好ましく、10nm〜70nmの範囲が更に好ましく、10nm〜40nmの範囲が特に好ましい。Cr膜の厚みが薄すぎると、ダイヤモンドライクカーボン膜の剥離を抑制できなくなる。また、Cr膜の厚みが厚すぎると、DLC膜が剥離した際に焼き付きが起きてしまうので好ましくない。CrN膜とCr膜の界面は、厚さ方向のCr濃度分布を測定することで容易に判別できる。CrN膜におけるCr濃度は81質量%程度であり、Cr膜におけるCr濃度は100%であるので、厚さ方向のCr濃度を分析してCr濃度が急激に変化する位置を界面とすればよい。Cr濃度が相互に近いことから、Cr膜はCrN膜に対して高い密着性を示すものとなる。Crの分析手法としては、電子線が透過できる程度の厚みの薄膜試料を作成し、走査透過電子顕微鏡観察(STEM:SCANNING TRANSMISSION ELECTRON MICROSCOPY)及び特性X線分析により分析を行う。
中間膜は、Cr及び炭素を含み、Crと炭素の合計を100%としたとき、Cr膜側からダイヤモンドライクカーボン膜側に向かう膜厚方向に沿ってCr濃度が徐々に減少する膜である。この中間膜は、例えば、Cr膜との界面におけるCr量が80〜100質量%であり、ダイヤモンドライクカーボン膜との界面におけるCr量が0〜20質量%未満となっている。言い換えると、この中間膜は、Cr皮膜との界面におけるC量が0〜20質量%未満であり、ダイヤモンドライクカーボン膜との界面におけるC量が80〜100質量%となっている。中間膜中においてCr濃度及びC濃度は厚み方向に沿って徐々に変化している。Cr濃度及びC濃度の厚み方向の変化率は、各濃度が直線状に連続して変化してもよく、曲線状に連続して変化してもよく、階段状に不連続的に変化してもよい。
中間膜は、Cr膜との界面におけるCr量が80〜100質量%となっているため、100%CrからなるCr膜との親和性が高く、中間膜はCr膜に対して高い密着性を示す。また、中間膜は、ダイヤモンドライクカーボン膜との界面におけるCr量が0〜20質量%未満であり、C量が80〜100質量%となっているため、100%Cからなるダイヤモンドライクカーボン膜との親和性が高く、中間膜はダイヤモンドライクカーボン膜に対しても高い密着性を示す。このように中間膜は、Cr膜とダイヤモンドライクカーボン膜との間に介在してこれらの膜の密着性を高めている。
中間膜の厚みは20nm〜1000nmの範囲が好ましく、30nm〜500nmの範囲がより好ましく、50nm〜250nmの範囲が更に好ましく、60nm〜180nmの範囲が特に好ましい。中間膜の厚みが薄すぎると、厚み方向に沿ったCr濃度及びC濃度の変化が急激になり、Cr膜とダイヤモンドライクカーボン膜の密着性を確保できないおそれがある。また、中間膜の厚みが厚すぎると、膜が脆くなり、耐久性が低下するので好ましくない。
中間膜とCr膜の界面は、厚さ方向のCr濃度分布を測定することで容易に判別できる。ここで、Cr膜のCr濃度はほぼ100質量%であり、中間膜ではダイヤモンドライクカーボン膜側に向かうに従ってCr濃度が減少するので、厚さ方向のCr濃度を測定してCr濃度が減少し始めた位置を界面とすればよい。
また、中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜の界面についても、厚さ方向のCr濃度分布を測定することで容易に判別できる。中間膜ではダイヤモンドライクカーボン膜側に向かうに従ってCr濃度が減少し、ダイヤモンドライクカーボン膜ではCr濃度が0質量%になるので、厚さ方向のCr濃度を分析してCr濃度が0%になった位置を界面とすればよい。Crの分析手法は、Cr膜の場合と同様に、薄膜試料を用いた走査透過電子顕微鏡観察(STEM:SCANNING TRANSMISSION ELECTRON MICROSCOPY)及び特性X線分析により分析を行う。
また、中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜の界面についても、厚さ方向のCr濃度分布を測定することで容易に判別できる。中間膜ではダイヤモンドライクカーボン膜側に向かうに従ってCr濃度が減少し、ダイヤモンドライクカーボン膜ではCr濃度が0質量%になるので、厚さ方向のCr濃度を分析してCr濃度が0%になった位置を界面とすればよい。Crの分析手法は、Cr膜の場合と同様に、薄膜試料を用いた走査透過電子顕微鏡観察(STEM:SCANNING TRANSMISSION ELECTRON MICROSCOPY)及び特性X線分析により分析を行う。
CrN膜上にCr膜及び中間膜を配置することで、繰り返し衝撃が加わった場合でもダイヤモンドライクカーボン膜の剥離が抑制される。
Cr膜の成膜方法に関しては特に限定しないが、CrN皮膜との密着性を確保できることから、PVD法(物理蒸着法)を用いることが好ましい。
また、中間膜の成膜方法は、Cr膜と同様に、PVD法(物理蒸着法)を用いることが好ましい。この場合、Cr及び炭素のターゲットをそれぞれ用意してスパッタリング法により中間膜を成長させ、膜の成長途中で各ターゲットに対するスパッタリング条件を変化させることにより、Cr膜からダイヤモンドライクカーボン膜側に向かってCr濃度を減少させるとともにC濃度を増加させればよい。
また、中間膜の成膜方法は、Cr膜と同様に、PVD法(物理蒸着法)を用いることが好ましい。この場合、Cr及び炭素のターゲットをそれぞれ用意してスパッタリング法により中間膜を成長させ、膜の成長途中で各ターゲットに対するスパッタリング条件を変化させることにより、Cr膜からダイヤモンドライクカーボン膜側に向かってCr濃度を減少させるとともにC濃度を増加させればよい。
[ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)]
チタン管成形ロール1のうち、チタン管10を搬送方向へ引張る役割の駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境・使用条件が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール凹部4の表面の優れた低摩擦性がより求められる。
チタン管成形ロール1のうち、チタン管10を搬送方向へ引張る役割の駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境・使用条件が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール凹部4の表面の優れた低摩擦性がより求められる。
本実施形態では、CrN皮膜上にCr膜及び中間膜を積層し、更に、sp2混成軌道の炭素(sp2構造)とsp3混成軌道の炭素(sp3構造)からなる高硬度なダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を成膜する。
中間膜はCrと炭素を含む膜であるため、中間膜における炭素の結晶構造はDLC膜における炭素の結晶構造とは異なっており、中間膜はDLC膜に対して硬度が低くなっている。このため、中間膜上に高硬度なDLC膜を成膜しただけでは、中間膜とDLC膜との間(界面)で硬度格差(強度の不連続性)が生じ、中間膜とDLC膜との界面において応力が集中しやすくなる結果、中間膜とDLC膜との密着性が十分に確保できなくなり、チタン管10の成形中にDLC膜が剥離するおそれがある。
そこで、CrN膜に対するDC膜の密着性を高めるため、DLC膜中間膜とDLC膜との間における硬度の格差を緩和させるようDLC膜の膜厚方向の硬度分布(硬度傾斜)を制御することが重要である。
中間膜はCrと炭素を含む膜であるため、中間膜における炭素の結晶構造はDLC膜における炭素の結晶構造とは異なっており、中間膜はDLC膜に対して硬度が低くなっている。このため、中間膜上に高硬度なDLC膜を成膜しただけでは、中間膜とDLC膜との間(界面)で硬度格差(強度の不連続性)が生じ、中間膜とDLC膜との界面において応力が集中しやすくなる結果、中間膜とDLC膜との密着性が十分に確保できなくなり、チタン管10の成形中にDLC膜が剥離するおそれがある。
そこで、CrN膜に対するDC膜の密着性を高めるため、DLC膜中間膜とDLC膜との間における硬度の格差を緩和させるようDLC膜の膜厚方向の硬度分布(硬度傾斜)を制御することが重要である。
具体的には、ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540を、膜表面から膜厚の20%深さの領域(0.20t(膜厚)までの領域)(上層領域)で0.5〜0.7、DLC膜と中間膜との界面から20%深さの領域(0.20t(膜厚)までの領域)(下層領域)で0.3〜0.5となるよう制御し、膜表面から中間膜側に向かってsp3構造の割合が減少(硬度が減少)するような硬度傾斜を付与する。
なお、前述のとおり、I1380とはラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度、いわゆる「Dバンド」であり、他方のI1540とはラマン分光法におり測定された波数1540cm−1における吸収強度、いわゆる「Gバンド」であり、I1380/I1540(D/G)を算出することでsp3構造性の目安とすることができる。
ダイヤモンドライクカーボンは、sp3混成軌道(ダイヤモンド構造)の炭素の割合が比較的多いものと、sp2混成軌道(グラファイト構造)の炭素の割合が比較的多いものが混在したものである。つまりsp3構造が多くなるとダイヤモンド寄りの性質(高硬度)となり、sp2構造が多くなるとグラファイト寄りの性質(軟質)となる。
したがって、中間膜側の下層領域は軟質、膜表面側である上層領域は硬質なものとなるよう、DLC膜におけるsp3構造とsp2構造の割合を制御することで、DLC膜の膜厚方向における硬度の傾斜をつけ、中間膜とDLC膜との間における硬度格差を緩和させることができる。
中間膜のDLC膜側の界面におけるビッカース硬度は1200〜2400程度であるので、DLC膜の下層領域はビッカース硬度で1500〜3000程度、上層領域は3000〜3500程度とすることが望ましい。
中間膜のDLC膜側の界面におけるビッカース硬度は1200〜2400程度であるので、DLC膜の下層領域はビッカース硬度で1500〜3000程度、上層領域は3000〜3500程度とすることが望ましい。
このように、DLC膜の上層領域をsp3構造の割合を高めた硬質なものとすることで、チタン管10に対し優れた耐摩耗性を発揮できる上、この上層領域はsp2混成軌道(グラファイト構造)の炭素も多少含んでいることから低摩擦性をも確保できる。一方で、DLC膜の下層領域をsp3構造の割合を抑えた軟質なものとすることで、中間膜との硬度格差を緩和でき、耐剥離性を確保できる。
さらに、DLC膜はチタンとの親和性が低いことから、耐凝着性も良好なものとできる。
さらに、DLC膜はチタンとの親和性が低いことから、耐凝着性も良好なものとできる。
なお、I1380/I1540は、ラマン分光分析法によって測定できる。ラマン分光分析法は、試料表面にレーザー光等を照射し、それによって発せられるラマン散乱光を分光し、入射光とラマン散乱光との波長の差から試料表面の分子の構造および結合状態を明らかにする手法である。
DLC膜の膜厚については特に限定せず、0.5μm〜2.0μmの範囲内とすることが望ましいが、製法やその条件、チタン管成形ロール1の使用環境等により適宜決定してよい。
本実施形態に係るDLC膜は、プラズマCVD法によって成膜できる。
DLC膜におけるsp3構造とsp2構造の割合を上記のように制御するためには、プラズマCVD法の各条件(成膜条件)を調整すればよい。具体的には、反応ガスの種類や割合、基板温度、陰極電圧、真空度等を適宜調整することで、DLC膜におけるsp3構造とsp2構造の割合を調整できる。つまり、DLC膜の膜厚方向に上記のような硬度傾斜が付与されるのであれば、成膜条件を適宜調整しながら成膜してもよく、成膜開始から一定の条件の下で成膜してもよい。
DLC膜におけるsp3構造とsp2構造の割合を上記のように制御するためには、プラズマCVD法の各条件(成膜条件)を調整すればよい。具体的には、反応ガスの種類や割合、基板温度、陰極電圧、真空度等を適宜調整することで、DLC膜におけるsp3構造とsp2構造の割合を調整できる。つまり、DLC膜の膜厚方向に上記のような硬度傾斜が付与されるのであれば、成膜条件を適宜調整しながら成膜してもよく、成膜開始から一定の条件の下で成膜してもよい。
反応ガスはCH4とH2の混合ガス、あるいはCH4ガスのみとすることができる。反応ガスとして混合ガスを用いる場合は、各ガスの流量を調整することでsp3構造とsp2構造の割合を調整でき、CH4ガスのみを用いる場合は他の各条件を調整すればよい。
また、本実施形態におけるDLC膜は、sp3構造とsp2構造を所望の割合とすることが重要であるため、膜中にH(水素)が多量に混入することは好ましくない。そのため、反応ガスとしてH2は適当な量に抑えるほうがよい。
以上述べた成膜条件は、用いるプラズマCVD装置の種類、スペック等に影響されるため、生成させているDLC膜のラマンピークを調べながらsp3構造とsp2構造の割合を調整すればよい。
また、本実施形態におけるDLC膜は、sp3構造とsp2構造を所望の割合とすることが重要であるため、膜中にH(水素)が多量に混入することは好ましくない。そのため、反応ガスとしてH2は適当な量に抑えるほうがよい。
以上述べた成膜条件は、用いるプラズマCVD装置の種類、スペック等に影響されるため、生成させているDLC膜のラマンピークを調べながらsp3構造とsp2構造の割合を調整すればよい。
本実施形態に係るDLC膜は、上記のほか、アンバランストマグネト口ンスバッタ(UBMS)法によって成膜することもできる。このとき、メタンガスとArガスとの流量比を変更することにより、CrN皮膜との界面から表面に向かつて膜の硬さが徐々に増加するようすることが可能である。
また、基材上に中間膜を成膜し、DLC膜を成膜するまでの間、中間膜表面に汚れが付着する場合がある。そのため本実施形態では、DLC膜を成膜する前に中間膜表面に対しプラズマクリーニングを施し、表面の汚れを分解・除去した上でDLC膜を成膜することが望ましい。これにより、中間膜とDLC膜との密着性をより向上させることができる。
以上、本実施形態に係るチタン管成形ロール1について説明したが、チタン管10を製造する際には、水または通常チタン管の成形で用いられるエマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いれば、チタン管10とチタン管成形ロール1の間の摩擦が更に低減するので好ましい。潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
[チタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第2の例]
次に、本発明の実施形態であるチタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第2の例について、図3〜8を参照して説明する。
次に、本発明の実施形態であるチタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第2の例について、図3〜8を参照して説明する。
図3及び図4には、本実施形態の第2の例であるチタン管成形ロール11を示す。図3及び図4に示すチタン管成形ロール11は、所謂孔型ロールであり、鋼材からなるロール本体12と、ロール本体12に挿通された回転軸3とが備えられている。ロール本体12のロール面12aには、断面視半円状に成形されたロール凹部14がロール本体12の全周に渡って設けられている。また、圧延面であるロール凹部14の表面には、窒化層とCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが順次積層されている。図1の場合と同様に、図3及び図4に示すチタン管成形ロール11を2つ用意し、それぞれのロール凹部14が相互に向き合うように配置させ、各ロール凹部14が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置させることで、チタン管形成装置を構成する。
ロール本体12は、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22と、一対の固定フランジ部23とが備えられている。ロール凹部14は、ロール中央部21と回動フランジ部22とによって分割されている。また、ロール中央部21と回動フランジ部22との間には第1軸受部24が備えられ、固定フランジ部23と回動フランジ部22との間には第2軸受部25が備えられている。更に、ロール中央部21と固定フランジ部23とは、固定ボルト26によって相互に固定されている。
ロール中央部21は、ロール本体12を駆動する回転軸3に固定されている。一方、回動フランジ部22は回転軸3及びロール中央部21に対して回動自在とされている。固定フランジ部23は固定ボルト26によってロール中央部21に固定されている。すなわち、固定フランジ部23は、ロール中央部21と一体になって回転軸3に固定されている。
回転軸3が回転することでロール中央部21と固定フランジ部23とが回転する。一方、回動フランジ部22は、第1、第2軸受部24、25によってロール中央部21及び固定フランジ部23に対して回動自在とされているため、ロール中央部21及び固定フランジ部23とは連動しない。以下、各部について詳細に説明する。
回転軸3が回転することでロール中央部21と固定フランジ部23とが回転する。一方、回動フランジ部22は、第1、第2軸受部24、25によってロール中央部21及び固定フランジ部23に対して回動自在とされているため、ロール中央部21及び固定フランジ部23とは連動しない。以下、各部について詳細に説明する。
ロール中央部21は、回転軸3が挿通される円筒状の基部21aと、基部21aのロール幅方向中央から突出する突出部21bとからなる。基部21aには、回転軸3を挿通させるための挿通孔21cが設けられている。突出部21bの上面21dは、回転軸3側に凹み、かつロール本体12の全周に渡って連続する丸溝状に成形されており、この上面21dがロール凹部14の一部を構成している。ロール中央部21は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、ロール中央部21の上面21dには、第1の例で説明した窒化層とCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
回動フランジ部22は、略リング状の部材であり、ロール中央部21の基部21aの外周側かつ突出部21bのロール幅方向両側に嵌められている。このように、回動フランジ部22は、基部21aの上にあって突出部21bのロール幅方向両側に配置される。ロール中央部21の基部21aと回転フランジ部22との間には第1軸受24が配設されている。また、ロール中央部21の突出部21bの側壁面21b1と、回転フランジ部22との間には0.1mm程度の隙間が設けられている。この隙間と、第1軸受部24とにより、回転フランジ部22はロール中央部21に対して摺動することなく回動自在になっている。また、回転フランジ部22の外周傾斜面22aは、断面視したときに凹んだ円弧面に成形されており、ロール中央部21の上面21dと連続する円弧面になっている。これにより、回動フランジ部22の外周傾斜面22aとロール中央部21の上面21dとによってロール凹部14が構成される。
また、回動フランジ部22を断面視してわかるように、回動フランジ部22の外周傾斜面22aを含む先端部22dは、突出部21bの先端に覆い被さるように屈曲している。
これにより、回動フランジ部22がチタン管10からの荷重を受けた際に、荷重を十分に受け止めることが可能になっている。
これにより、回動フランジ部22がチタン管10からの荷重を受けた際に、荷重を十分に受け止めることが可能になっている。
回動フランジ部22は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、回動フランジ部22の外周傾斜面22aには、第1の例で説明したCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。また、回転フランジ部22の表面全面に、窒化層とCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられていてもよい。
次に、第1軸受部24は、図示略の針状ころからなる転動体と、複数の転動体を保持する図示略の保持器とを備えている。そして、第1軸受部24に隣接する面である、ロール中央部21の基部21aの外周面21a1と、回転フランジ部22の内周面22bとが、第1軸受部24の転動体の軌道面となっている。言い換えると、ロール中央部21の基部21aと回転フランジ部22とがそれぞれ、第1軸受部24の内周レース及び外周レースになっている。本実施形態では、これらの外周面21a1と内周面22bにも、第1の例で説明した窒化層とCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
次に、固定フランジ部23は、略円板状の部材であって、中央に回転軸3が挿通可能な挿通孔23aが設けられている部材である。固定フランジ部23は、ロール本体12のロール幅方向両側に配置されている。固定フランジ部23の回転軸寄りの部分は固定ボルト26によってロール中央部21の基部21aに固定されている。また、固定フランジ部23の外周寄りの部分は、回転フランジ部22のロール幅方向両側に位置しており、回転フランジ部22と対向している。固定フランジ部23と回動フランジ部22との間には第2軸受部25が配置されている。
固定フランジ部23は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、固定フランジ部23のうち、回転フランジ部22と対向する対向面23bに、第1の例で説明した窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が備えられていてもよい。
第2軸受部25は、図示略の針状ころからなる転動体と、複数の転動体を保持する図示略の保持器とからなる。一方、第2軸受部25に隣接する面である、固定フランジ部23の対向面23bと、回動フランジ部22の側面22cとは、第2軸受部25の転動体の軌道面となっている。言い換えると、固定フランジ部23の対向面23bと回動フランジ部22の側面22cとがそれぞれ、第2軸受部25のレースになっている。本実施形態では、これらの対向面23bと側面22cにも、第1の例と同様に、基材上に、窒化層とCrN皮膜とCr膜と中間膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
なお、図4に示すように、本例のチタン管成形ロール1は、固定ボルト26を取り外すことにより、ロール本体12を、ロール中央部21、回動フランジ部22、固定フランジ部23、第1軸受部24及び第2軸受部25に分解可能となっている。
以上の構成により、チタン管10を成形する際には、回転軸3の回転駆動によってロール中央部21及び固定フランジ部23を回転させる。この状態でチタン管10を一対のチタン管成形ロール1の間に挿通させると、ロール中央部21の上面21dがチタン管10に接触してチタン管10に回転軸3の回転トルクを伝達する。一方、回動フランジ部22の外周傾斜面22aにもチタン管10が接触するが、回動フランジ部22はチタン管10の動きに合わせてチタン管10によって回動させられる。このとき、外周傾斜面22aの周速度はロール中央部の上面21dの周速度より小さくなるため、回動フランジ部22の回転速度はロール中央部21の回転速度よりも小さくなる。回動フランジ部22は、第1、第2軸受部24、25とによってそれぞれ、ロール中央部21及び固定フランジ部23に対して回動自在とされており、また、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には0.1mm程度の隙間があるため、回動フランジ部22は、ロール中央部21の回転速度よりも小さな回転速度で回動する。これにより、チタン管10に対するロールの滑り率が全体的に小さくなり、チタン管10における疵の発生が抑制される。
また、一対のチタン管成形ロール1の間にチタン管10が挿入されて、ロール凹部14にチタン管10が侵入すると、回転フランジ部22がロール幅方向外側に僅かに押されて固定フランジ部23に押しつけられる一方で、回転フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には0.1mm程度の隙間が確保される。これにより、回転フランジ部22と突出部21bとが擦れ合うことなく回動フランジ部22が円滑に回転する。
次に、ロール中央部21の突出部21bの幅の好適範囲とロールの滑り率について、図5及び図6により説明する。
図5に示すように、ロール中央部21の突出部21bの上面21dの幅Wは、ワークとなるチタン管の外径をDとしたとき、0.7D〜0.87Dの範囲であることが好ましい。言い換えると、ロール凹部14の曲率半径をR1としたとき、ロール中央部21におけるロール凹部14の幅Wは、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲であることが好ましい。ここで、図5に示すように、ロール中央部21の上面21dと回動フランジ部22の外周傾斜面22aとの境界位置をAとし、チタン管10の中心軸Oから境界位置Aに向かう方向と水平方向とのなす角度をθとしたとき、幅Wが0.7D(0.7×2R1)の場合の境界位置Aはθ=45°の位置となり、また、幅Wが0.87D(0.87×2R1)の場合の境界位置Aはθ=30°の位置となる。すなわち、本実施形態では、角度θが30〜45°の範囲になるように境界位置Aを設定するとよい。この理由を以下に説明する。
図5に示すように、ロール中央部21の突出部21bの上面21dの幅Wは、ワークとなるチタン管の外径をDとしたとき、0.7D〜0.87Dの範囲であることが好ましい。言い換えると、ロール凹部14の曲率半径をR1としたとき、ロール中央部21におけるロール凹部14の幅Wは、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲であることが好ましい。ここで、図5に示すように、ロール中央部21の上面21dと回動フランジ部22の外周傾斜面22aとの境界位置をAとし、チタン管10の中心軸Oから境界位置Aに向かう方向と水平方向とのなす角度をθとしたとき、幅Wが0.7D(0.7×2R1)の場合の境界位置Aはθ=45°の位置となり、また、幅Wが0.87D(0.87×2R1)の場合の境界位置Aはθ=30°の位置となる。すなわち、本実施形態では、角度θが30〜45°の範囲になるように境界位置Aを設定するとよい。この理由を以下に説明する。
図6(a)は非分割型の駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図である。駆動ロールの場合、チタン管10に対して最も効率よく回転トルクを伝達できるピンチ位置は、ロール凹部4の最底部になる。そこで、ロール凹部14の最底部におけるロール径をRdとし、ピンチ位置におけるロール径をRpとし、ロールのフランジ部上面におけるロール径をRfとすると、フランジ部上面近傍におけるチタン管に対する滑り率は以下の通りとなる。
(フランジ部)滑り率=(Rf−Rp)/Rp …(1)
例えばチタン管の外径D(2R1)を25mmとし、Rd=50mm、Rf=62.25mmとした場合、RpはRdにほぼ一致するから(Rp=Rd=50mm)、駆動ロールにおける滑り率は0.245になる。
次に、図6(b)は非分割型の無駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図である。
無駆動ロールの場合のピンチ位置は、ロール凹部4の最底部と、フランジ部の上面との間の中間になる。この場合のフランジ部の上面近傍におけるチタン管に対する滑り率は、例えばチタン管の外径D(2R1)を25mmとし、Rd=50mm、Rf=62.25mm、Rp=56.125mmとなるから、これらを上記式(1)に導入すると、無駆動ロールにおける滑り率は0.109になる。
無駆動ロールの場合のピンチ位置は、ロール凹部4の最底部と、フランジ部の上面との間の中間になる。この場合のフランジ部の上面近傍におけるチタン管に対する滑り率は、例えばチタン管の外径D(2R1)を25mmとし、Rd=50mm、Rf=62.25mm、Rp=56.125mmとなるから、これらを上記式(1)に導入すると、無駆動ロールにおける滑り率は0.109になる。
図6(a)と図6(b)との対比から明らかなように、駆動ロールは無駆動ロールに比べて滑り率が大きく、チタン管10に疵が発生しやすく、ロール自体も摩耗しやすい。
次に、図6(c)に示すように、本実施形態の分割型の駆動ロールについて検討する。
本実施形態のチタン管成形ロール11においては、ロール中央部21が駆動ロールとして機能し、回動フランジ部22が無駆動ロールとして機能する。そうすると、Rf、Rp及びRdは図6(c)に図示した通りになる。
本実施形態のチタン管成形ロール11においては、ロール中央部21が駆動ロールとして機能し、回動フランジ部22が無駆動ロールとして機能する。そうすると、Rf、Rp及びRdは図6(c)に図示した通りになる。
ここで、図5に示すように境界位置Aがθ=30°の位置にある場合、ロール中央部21における滑り率は0.1225となり、回動フランジ部22における滑り率は0.0517となり、いずれも図6(b)における非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも小さくなる。しかしながら、角度θが30°未満になると、非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも滑り率が大きくなってしまう。
また、図5に示すように境界位置Aがθ=45°の位置にある場合は、ロール中央部21における滑り率は0.073となり、回動フランジ部22における滑り率は0.076となり、いずれも図6(b)における非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも大幅に小さくなる。しかしながら、角度θが45°を超えると、回動フランジ部22の外周傾斜面22aの幅が小さくなりすぎ、チタン管10の荷重を十分に受け止めきれなくなり、回動フランジ部22が破損するおそれがある。
以上のことから、図5に示す角度θは30〜45°の範囲が好ましい。これをロール中央部21の突出部21bの上面21dの幅Wで表すと、ワークとなるチタン管10の外径をDとしたときに、幅Wは0.7D〜0.87Dの範囲となる。すなわち、ロール凹部14の曲率半径をR1としたとき、ロール中央部21におけるロール凹部14の幅Wは、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲となる。この範囲であれば、チタン管10に疵を生じさせることなく成形が可能になり、かつ、回動フランジ部22の破損も防止される。
以上説明したように、本実施形態の第2の例のチタン管成形ロール11によれば、ロール本体12が、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22とからなり、ロール凹部14が、ロール中央部21と回動フランジ部22とによって分割されているので、回動フランジ部22とチタン管10とが互いに滑りにくくなり、これにより、チタン管10に疵が発生しにくくなり、また、回動フランジ部22に形成したCrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜が剥がれにくくなる。このように本例のチタン管成形ロール1によれば、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性が向上し、ロール表面の摩擦係数を小さくできる。
また、ロール中央部21がロール本体12を駆動する回転軸3に固定される一方で、回動フランジ部22が回転軸3及びロール中央部21に対して回動自在とされているので、回転軸3が駆動軸となる場合にはロール中央部21が駆動ロールとなり、回動フランジ部22が無駆動ロールとなり、無駆動ロールとなる回動フランジ部22における滑り率が小さくなるので、チタン管10における疵発生を防止し、また、回動フランジ部22に形成したCrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜の剥がれを抑制できる。これにより、チタン管成形ロール1の耐久性を向上でき、メンテナンスの頻度を低減できる。
また、ロール凹部14の曲率半径をR1としたとき、ロール中央部21におけるロール凹部14の幅を0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲とすることで、チタン管10に対する滑り率を低減し、かつ、回動フランジ部22の破損を防止できる。
更に、ロール中央部21に基部21aと突出部21bとが備えられ、回動フランジ部22が基部21a上にあって突出部21bのロール幅方向両側に配置され、基部21aと回動フランジ部22との間に第1軸受部24が設けられることで、回動フランジ部22をロール中央部21に対して円滑に回動させることができる。
また、ロール凹部14にチタン管10が侵入した際に回転フランジ部22がロール幅方向外側に僅かに押され、回転フランジ部22と突出部21bとの間に0.1mm程度の隙間が確保されることで、回転フランジ部22と突出部21bとが擦れ合うことなく回動フランジ部22を円滑に回転させることができる。
また、ロール中央部21の基部21aと回動フランジ部22との間で互いに対向する対向面が第1軸受部24の転動体の軌道面とされており、これら対向面にCrN皮膜とCr膜と中間膜とDLC膜とが備えられているので、第1軸受部24の長寿命化を図ることができる。また、第1軸受部24自体を小型にすることができるため、ロール本体12を小さくして設備のコンパクト化が図れる。
更に、ロール本体12には、固定フランジ部23と第2軸受部25とが備えられており、固定フランジ部23によってロール中央部21からの回動フランジ部22の脱落を防止しつつ、第2軸受け部25によって回動フランジ部22を円滑に回動させることができる。
また、固定フランジ部23と回動フランジ部22との間で互いに対向する対向面が第2軸受部25の転動体の軌道面とされており、これら対向面にCrN皮膜とCr膜と中間膜とDLC膜とが備えられているので、第2軸受部25の長寿命化を図ることができる。また、第2軸受部25自体を小型にすることができるため、ロール本体12を小さくして設備のコンパクト化が図れる。
更に、図4に示したように、本例のチタン管成形ロール1は、固定ボルト26を取り外すことで、ロール本体12を、ロール中央部21、回動フランジ部22、固定フランジ部23、第1軸受部24及び第2軸受部25に分解可能となっているため、保守作業を容易に行うことができる。例えば、回動フランジ部22のみが摩耗してCrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜が剥がれた場合は、予備の回動フランジ部22に交換することで、直ちに使用可能な状態になり、チタン管の成形加工を継続することができる。また、取り外した回動フランジ部22については、補修が必要な箇所に窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜を形成するだけで、再利用可能な状態にすることができる。
また、本実施形態に係る窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜は、ロール凹部14の表面のみならず、あらゆる部分に成膜することで、チタン管成形ロール1の寿命を延長することができる。例えば、上述したように、第1、第2軸受部24,25の転動体の軌道面となる箇所に窒化層、CrN膜とDLC膜を形成することで、本来は耐摩耗性や対疲労性に優れた軸受用の素材を適用すべき箇所であっても、ロール本体14の素材に窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜を形成することで転動体の軌道面とすることができるようになる。また、ロール中央部21の突出部21bと回動フランジ部22とが対向する面にも窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜を形成することで、突出部21bと回動フランジ部22との摩耗を防止できる。
なおさらに加えて、水または通常チタン管の成形で用いられるエマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いれば、チタン管10とチタン管成形ロール11の間の摩擦が更に低減するので好ましい。また、エマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いることで、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22との間の摩擦もさらに低減されるので好ましい。なお、潤滑剤を用いる場合は、潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
以上、第2の例のチタン管成形ロール11について説明したが、本例では、図7または図8に示す変形例を採用してもよい。
図7に示す変形例では、ロール本体12を断面視した際に、回動フランジ部22と突出部21bとの境界面がロール本体12の外周方向に向けて真っ直ぐに伸びている。図7の例によれば、回動フランジ部22及び突出部21bの形状を図3の場合よりも比較的単純な形状にすることができ、がたつきが起きにくくなり、チタン管10の成形精度を高めることができる。この図7の例では、チタン管10から受ける荷重が比較的小さい場合に適用できる。
図7に示す変形例では、ロール本体12を断面視した際に、回動フランジ部22と突出部21bとの境界面がロール本体12の外周方向に向けて真っ直ぐに伸びている。図7の例によれば、回動フランジ部22及び突出部21bの形状を図3の場合よりも比較的単純な形状にすることができ、がたつきが起きにくくなり、チタン管10の成形精度を高めることができる。この図7の例では、チタン管10から受ける荷重が比較的小さい場合に適用できる。
また、図8に示す変形例では、ロール本体12を断面視した際に、回動フランジ部22の先端部22dが、ほぼ真横に屈曲している。図8の例においても、回動フランジ部22及び突出部21bの形状を図3の場合よりも比較的単純な形状にすることができ、がたつきが起きにくくなり、チタン管10の成形精度を高めることができる。図8の例についても、チタン管10から受ける荷重が比較的小さい場合に適用できる。
[チタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第3の例]
次に、本発明の実施形態であるチタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第3の例について、図9を参照して説明する。図9に示すチタン管成形ロール31と、図3〜図4に示す第2の例のチタン管成形ロール11との違いは、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定するための機構が備えられた点であり、その他の点には違いがない。以下の説明では、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定する機構について説明する。
次に、本発明の実施形態であるチタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第3の例について、図9を参照して説明する。図9に示すチタン管成形ロール31と、図3〜図4に示す第2の例のチタン管成形ロール11との違いは、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定するための機構が備えられた点であり、その他の点には違いがない。以下の説明では、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定する機構について説明する。
図9には、本実施形態の第3の例であるチタン管成形ロール31を示す。このチタン管成形ロール31には、固定フランジ部23に、回動フランジ部22を引き寄せて固定する引きねじ部32が設けられている。引きねじ部32は例えば、固定フランジ部23の3箇所に備えられている。引きねじ部32は、着脱ボルト32aと、この着脱ボルト32aが挿入されるねじ穴32bとから構成されている。ねじ穴32bは、固定フランジ部23及び回動フランジ部22にそれぞれ設けられている。
チタン管10を成形する際には、着脱ボルト32aを取り外して、回動フランジ部22を固定フランジ部23及びロール中央部21に対して回動自在な状態にする。
一方、チタン管成形ロール31のロール凹部14を補修する際には、着脱ボルト32aをねじ穴32bに挿入してねじ締めする。これにより回動フランジ部22は、固定フランジ部23側に引き寄せられて固定フランジ部23と密着する一方で、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には0.1mm程度の隙間が生じる。この状態は、チタン管10を成形加工中に回動フランジ部32が固定フランジ部23側に押された状態とほぼ同じになる。そして、回動フランジ部22と固定フランジ部23とが密着した状態で、ロール凹部14の補修を行う。補修内容として具体的には、ロール凹部14が部分的に摩耗して真円度が低下した場合に、真円度を回復させるようにロール凹部14の内面を研磨加工する。すなわち、回動フランジ部22を固定フランジ部23側に引き寄せてチタン管10を成形加工する場合と同じ状態にして、補修を行う。
以上説明したように、本例のチタン管成形ロール31には、回動フランジ部22と固定フランジ部23とを密着した状態で固定する引きねじ部32が備えられており、ロール凹部14を補修する際に、回動フランジ部22を、チタン管10を成形加工する場合と同じ状態することができるので、補修後のロール凹部の真円度を高めることができる。
[チタン管の製造方法および装置]
本実施形態に係るチタン管成形装置は、図1、図3または図9に示すチタン管成形ロール1、11、31のいずれかを備えるとともに、チタン管成形ロール1、11、31の一部分に対し、チタン管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備える。なお、潤滑剤の使用及びここで示す潤滑ノズルの使用は望ましいが、必要に応じて、潤滑剤を使用するか否か、及び潤滑ノズルの使用をするか否か、適宜選択して良い。また、潤滑剤を使用する場合、潤滑剤を布に浸して塗布する、潤滑剤をスプレーで吹き付ける等の他の方法でも良い。
本実施形態に係るチタン管成形装置は、図1、図3または図9に示すチタン管成形ロール1、11、31のいずれかを備えるとともに、チタン管成形ロール1、11、31の一部分に対し、チタン管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備える。なお、潤滑剤の使用及びここで示す潤滑ノズルの使用は望ましいが、必要に応じて、潤滑剤を使用するか否か、及び潤滑ノズルの使用をするか否か、適宜選択して良い。また、潤滑剤を使用する場合、潤滑剤を布に浸して塗布する、潤滑剤をスプレーで吹き付ける等の他の方法でも良い。
一般的に、実際にチタン管を造管するに際し、チタン管溶接後の定型工程では、パイプ疵の防止および冷却のために水溶性の潤滑剤が用いられることが多い。
そこで、本実施形態に係るチタン管成形ロールの更なる寿命の向上およびロール表面のロールマーク・疵を防止するためにも、本実施形態に係るチタン管成形装置においては、チタン管成形ロールに対して潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備えることが好ましい。
以下、潤滑ノズルを備えたチタン管成形装置の一例について図面を用いて説明するが、尚、以下に示す図面は、チタン管成形装置の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の加熱炉の寸法関係等とは異なる場合がある。
なお、チタン管の溶接には様々な方法が適用可能だが、TIG溶接が好ましい。
そこで、本実施形態に係るチタン管成形ロールの更なる寿命の向上およびロール表面のロールマーク・疵を防止するためにも、本実施形態に係るチタン管成形装置においては、チタン管成形ロールに対して潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備えることが好ましい。
以下、潤滑ノズルを備えたチタン管成形装置の一例について図面を用いて説明するが、尚、以下に示す図面は、チタン管成形装置の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の加熱炉の寸法関係等とは異なる場合がある。
なお、チタン管の溶接には様々な方法が適用可能だが、TIG溶接が好ましい。
図10は、本実施形態に係るチタン管成形装置を示す図であって、(a)は正面概略図であり、(b)は潤滑ノズル101の近傍の構成を示す側面図であり、(c)は潤滑ノズル101の近傍の構成を示す断面図である。図11は、潤滑ノズル101の配置例を説明するための図であって、(a)は正面模式図であり、(b)は側面模式図である。図12は、潤滑ノズル101の幅方向調整機構、上下方向調整機構を詳細に説明するための図であって、(a)はチタン管成形装置の上面概略図であり、(b)は側面概略図である。
チタン管10は、上下に対向するように配置されたチタン管成形ロール1,11、31により成形されながら搬送される。図1の場合と同様に、本実施形態に係るチタン管成形装置は、チタン管成形ロール1,11、31を2つ用意し、それぞれのロール凹部が相互に向き合うように配置させ、各ロール凹部が成形対象のチタン管10の外周面の同一円周上に接するように配置させる。
このとき、成形ロール1、11、31とチタン管10が接するロールフランジ部(孔型の終端のロール平行部)近傍では、他の部位よりも摩擦による摩耗、疵の発生が起こりやすくなっている。そのため、チタン管10を成形するに際し、潤滑剤は、ロールフランジ部近傍に滴下することが必要である。
このとき、成形ロール1、11、31とチタン管10が接するロールフランジ部(孔型の終端のロール平行部)近傍では、他の部位よりも摩擦による摩耗、疵の発生が起こりやすくなっている。そのため、チタン管10を成形するに際し、潤滑剤は、ロールフランジ部近傍に滴下することが必要である。
しかしながら、ロールフランジ部は、チタン管成形ロール1,11、31の径の変更等によってその都度その位置が変わる。そのため、潤滑剤を滴下するための潤滑ノズル101の位置もその都度調整しなければならない。したがって本実施形態においては、潤滑剤を滴下するための潤滑ノズル101を配置する際は、潤滑剤の滴下位置を幅方向および上下方向に調整できるような拡縮機構を設けることが好ましい。
本実施形態に係る潤滑ノズル101を幅方向に拡縮する機構について説明する。
図10に示すように、幅移動溝(長溝)118が設けられたパイプ状の水平移動ガイド103が成形ロール1、11、31の前方に配置されており、この水平移動ガイド103上には、幅移動溝118内に嵌め込まれた幅移動ガイド119を介して、潤滑ノズル固定台102ならびに潤滑ノズル固定台102上に載置された潤滑ノズル101が設けられている。スライド可能に設けてある潤滑ノズル角度調整冶具109に接続した幅移動用ガイド部品115が、幅調整用ねじ(中心から左・右をそれぞれ正・逆ねじとし、調整ねじを回転させるとその左・右のガイド部115が対称的に反対方向に移動する)114(図12参照)により幅方向に拡縮する機構を有している。
図10に示すように、幅移動溝(長溝)118が設けられたパイプ状の水平移動ガイド103が成形ロール1、11、31の前方に配置されており、この水平移動ガイド103上には、幅移動溝118内に嵌め込まれた幅移動ガイド119を介して、潤滑ノズル固定台102ならびに潤滑ノズル固定台102上に載置された潤滑ノズル101が設けられている。スライド可能に設けてある潤滑ノズル角度調整冶具109に接続した幅移動用ガイド部品115が、幅調整用ねじ(中心から左・右をそれぞれ正・逆ねじとし、調整ねじを回転させるとその左・右のガイド部115が対称的に反対方向に移動する)114(図12参照)により幅方向に拡縮する機構を有している。
また、潤滑ノズル101を上下方向に拡縮する機構としては、成形スタンド支柱117に固定されたあり型台座107と、あり型台座107に対して上下方向にスライド可能に設けられた中心位置調整冶具106と、中心位置調整冶具106に差し込まれた上下移動ねじ116とにて潤滑ノズル101の上下位置を調整する。中心位置調整冶具106は水平移動ガイド103とも連結しているため、あり型台座107上をこの中心位置調整冶具106が上下方向に移動すると、水平移動ガイド103、すなわち潤滑ノズル101も同じように上下方向に移動することとなる。
なお、上下移動ねじ116は上下位置調整ハンドル104と連結しており、この上下位置調整ハンドル104を回すことで、中心位置調整冶具106の上下方向の移動を制御でき、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の上下方向の調整が可能となっている。
なお、上下移動ねじ116は上下位置調整ハンドル104と連結しており、この上下位置調整ハンドル104を回すことで、中心位置調整冶具106の上下方向の移動を制御でき、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の上下方向の調整が可能となっている。
また、チタン管成形ロール1、21、31の径の変動によるチタン管10との接触を考慮した潤滑ノズル101の位置合わせのための角度調整は、潤滑ノズル挟み込み冶具(潤滑ノズル前後調整冶具)113と潤滑ノズル角度調整冶具109を潤滑ノズル角度固定ねじ112にて回転させることで調整が可能である。
潤滑ノズル101が前後する機構は潤滑ノズル挟み込み冶具(潤滑ノズル前後調整冶具)113を有する装置にて、潤滑ノズル角度固定ねじ112によって調整ができる。
これらの機構によりチタン管成形ロール1、21、31とチタン管10が接するロールフランジ部近傍に潤滑剤が滴下をすることができる。
潤滑ノズル101が前後する機構は潤滑ノズル挟み込み冶具(潤滑ノズル前後調整冶具)113を有する装置にて、潤滑ノズル角度固定ねじ112によって調整ができる。
これらの機構によりチタン管成形ロール1、21、31とチタン管10が接するロールフランジ部近傍に潤滑剤が滴下をすることができる。
ここで、潤滑剤としては、潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
潤滑ノズル101は、チタン管サイズ(ロールフランジ幅)に応じて適宜、ロールフランジ部に対応するようその配置位置を調節する必要がある。また、ロール潤滑の状況によりチタン管成形ロール1、21、31のうち上部ロールへはロールの上からの滴下も必要となる。
図11は潤滑ノズル101の配置例を説明するための正面模式図であるが、上述にて説明したような、チタン管成装置には潤滑ノズル101の前後・上下ならびに左右の調整機構が備えられているので、チタン管成形ロール1、21、31のフランジ幅の大小に合わせて、潤滑ノズル101の位置を所望の位置へ適宜変更できる。
図11は潤滑ノズル101の配置例を説明するための正面模式図であるが、上述にて説明したような、チタン管成装置には潤滑ノズル101の前後・上下ならびに左右の調整機構が備えられているので、チタン管成形ロール1、21、31のフランジ幅の大小に合わせて、潤滑ノズル101の位置を所望の位置へ適宜変更できる。
図12を用いて、潤滑ノズル101の幅方向調整機構、上下方向調整機構を詳細に説明する。
なお、潤滑ノズル101の各方向調整機構を説明しやすくするため、図12中において、一部の部材については記載を省略している。
パイプ状の水平移動ガイド103内の略中央部分には、正逆反転する2つの幅調整用ねじ114(左、右ねじ)が配置されている。そしてこの幅調整用ねじ114は、水平移動ガイド103内に敷設された左右位置調整ハンドル105と連結しており、左右位置調整ハンドル105を回すことで水平移動ガイド103を水平方向に移動させることができ、結果、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の幅方向拡縮が調整できる。
また、幅調整用ねじ114を中心に移動すること、ならびにあり型台座107に設けられた中心位置調整冶具106を調整することで、チタン管成形ロール1、21、31の中央位置を合わせることができる。
なお、潤滑ノズル101の各方向調整機構を説明しやすくするため、図12中において、一部の部材については記載を省略している。
パイプ状の水平移動ガイド103内の略中央部分には、正逆反転する2つの幅調整用ねじ114(左、右ねじ)が配置されている。そしてこの幅調整用ねじ114は、水平移動ガイド103内に敷設された左右位置調整ハンドル105と連結しており、左右位置調整ハンドル105を回すことで水平移動ガイド103を水平方向に移動させることができ、結果、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の幅方向拡縮が調整できる。
また、幅調整用ねじ114を中心に移動すること、ならびにあり型台座107に設けられた中心位置調整冶具106を調整することで、チタン管成形ロール1、21、31の中央位置を合わせることができる。
また、図12の側面図に示すように、潤滑ノズル101の前後調整、拡縮移動位置調整により、自在に潤滑剤の滴下位置を変えることができ、チタン管10とチタン管成形ロール1、21、31との接触部への潤滑剤の滴下位置の調整が可能となっている。
なお、あり型台座107はスタンド支柱取付冶具108を介して成形スタンド支柱117に固定されているが、成形スタンド支柱117にスタンド支柱取付冶具108を固定する際は、スタンド固定ねじ120により容易に装着できるような片持ち形式となっている。
図13に、潤滑ノズル101を用いて潤滑剤を微量滴下するためのローラーポンプ(潤滑剤供給装置)の構造を示す図である。
潤滑剤は、原液と同等な濃い潤滑剤をロールに微量添付するため、チューブポンプといわれるチューブ132を、中心軸131を中心に自公転するローラー130で押しつぶしながら搬送する。
潤滑方法としては、内径3mm以下のチューブ132を用いて、滴下速度が20ml/hr以下の汚染のないチューブ(ローラー)ポンプを用いた微量滴下する方法となっている。
潤滑剤は、原液と同等な濃い潤滑剤をロールに微量添付するため、チューブポンプといわれるチューブ132を、中心軸131を中心に自公転するローラー130で押しつぶしながら搬送する。
潤滑方法としては、内径3mm以下のチューブ132を用いて、滴下速度が20ml/hr以下の汚染のないチューブ(ローラー)ポンプを用いた微量滴下する方法となっている。
ここで、潤滑ノズル101としては、内径0.5mm以上3mm以下のチューブを用いるのが、潤滑剤を適量供給する上で適切である。
さらに、該潤滑剤を1ml/hr以上20ml/hr以下の滴下速度で微量滴下して該潤滑剤を供給することが適している。
該潤滑剤の供給速度が1ml/hr未満では、潤滑剤としての機能を十分に発揮できず、一方、その供給速度が20ml/hrを超えると潤滑剤としての機能は飽和し、むしろチタン管成形ロール1、21、31の空転を招き、チタン管成形に支障が出たり、最終製品から除去すべき潤滑剤が多量となり、製造コストが嵩むことになる。
該潤滑剤の供給速度が1ml/hr未満では、潤滑剤としての機能を十分に発揮できず、一方、その供給速度が20ml/hrを超えると潤滑剤としての機能は飽和し、むしろチタン管成形ロール1、21、31の空転を招き、チタン管成形に支障が出たり、最終製品から除去すべき潤滑剤が多量となり、製造コストが嵩むことになる。
[チタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第4の例]
次に、チタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第4の例について図面を参照して説明する。
図14及び図15に、本実施形態の第4の例である、チタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管成形ロールを用いたチタン管の製造方法の模式図を示す。図14はチタン管成形ロールを備えたチタン管成形装置の正面図であり、図15は側面図である。また、図16には、チタン管成形装置の要部の正面図を示す。更に、図17には、チタン管成形装置に備えられるチタン管成形ロールを示す。図17(a)は、チタン管成形ロールの部分断面図であり、図17(b)はチタン管成形ロールの側面図である。
次に、チタン管成形ロール及びチタン管の製造方法の第4の例について図面を参照して説明する。
図14及び図15に、本実施形態の第4の例である、チタン管成形ロール、チタン管成形装置及びチタン管成形ロールを用いたチタン管の製造方法の模式図を示す。図14はチタン管成形ロールを備えたチタン管成形装置の正面図であり、図15は側面図である。また、図16には、チタン管成形装置の要部の正面図を示す。更に、図17には、チタン管成形装置に備えられるチタン管成形ロールを示す。図17(a)は、チタン管成形ロールの部分断面図であり、図17(b)はチタン管成形ロールの側面図である。
図14〜図17に示すように、本実施形態のチタン管成形ロール41は、所謂孔型ロールであり、鋼材からなるロール本体42と、ロール本体42に挿通された回転軸43とが備えられている。ロール本体42にはその全周に渡ってロール面42aが設けられており、このロール面42aには、ロール凹部44及び傾斜部45が設けられている。ロール凹部44及び傾斜部45はロール本体42の全周に設けられている。なお、ロール本体42を構成する鋼材は、第1の例で説明した鋼であることが好ましい。
ロール面42aに設けられたロール凹部44は、チタン管10を成形する際の圧延面とされており、回転軸43側に向けて凹んだ形状となっており、図17(a)に示すようにロール本体42を断面視した形状が円弧状となっている。ロール凹部44は、ロール本体42の幅方向中央部分に形成されている。なお、ロール本体42の回転軸43と平行な方向をロール本体42の幅方向という。図17(a)及び図17(b)に示すように、ロール凹部44は成形対象のチタン管10が接触する面になる。ロール凹部44の表面には、第1の例において説明した窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
傾斜部45は、ロール面42aにあってロール凹部44の幅方向両側に設けられている。傾斜部45は、ロール本体42の幅方向外側に向けてロール本体42の回転軸43側に傾斜した傾斜面とされている。傾斜部45の傾斜角度は、例えば、回転軸43の軸方向に対して45°の角度とされている。傾斜部45は、後述するように、隣接する他のチタン管成形ロール41の傾斜部45に接触する可能性がある面である。このため、傾斜部45の表面にも、第1の例において説明した窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
ロール凸部44と傾斜部45との境界には、凸曲面部46が設けられている。凹曲面部46は、ロール本体42の全周に渡って設けられている。ここで、凸曲面部46の曲率半径Rfr(単位:mm)と、ロール凹部44の曲率半径R1(単位:mm)との関係は、Rfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係にある。この関係式については後述する。凸曲面部46にも、第1の例において説明した窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
図14及び図15に示すチタン管成形装置51には、先に説明した4つのチタン管成形ロール41と、各チタン管成形ロール41を回転自在に支持する軸受け部52と、軸受け部52に連結されてチタン管成形ロール41の位置を調整する第1調整装置53と、4つの第1調整装置53を固定する板状の基体部54と、板状の基体部54を垂直に立たせて支持する支持筐体55と、支持筐体55における基体部54の位置を上下させる第2調整装置56と、から構成されている。成形対象のチタン管10は、支持筐体55の正面側(図15の支持筐体55の左側)から支持筐体55の裏面側(図15の支持筐体55の右側)に向けてチタン管成形装置51を通過する際に、4方に配置されたチタン管成形ロール41によって断面形状が真円になるように成形される。
支持筐体55は、例えば、チタン管製造工場の地盤面に設置されている。支持筐体55には、その表面から突出する第1フランジ部55aと第2フランジ部55bとが設けられている。第1フランジ部55aは支持筐体55の下部に位置しており、第2フランジ部55bは支持筐体55の上部に位置している。第1フランジ部55aと第2フランジ部55bとの間に、基体部54が配置されている。支持筐体55には、チタン管10が通過するための通過孔55cが設けられている。
基体部54は、正面視略八角形状に成形されている。基体部54に、第1調整装置53、軸受け部52及びチタン管成形ロール41が備えられている。基体部54のほぼ中央には、チタン管が通過するための貫通孔54aが設けられている。この貫通孔54aは、支持筐体55に設けられたチタン管10の通過孔55cに連通している。以下、チタン管10が通過する領域をチタン管10の通過領域という。チタン管成形ロール41は、チタン管10を4方から囲むように配置されている。より詳細には、4つのチタン管成形ロール41のうち、2つのチタン管成形ロール41のロール凹部44が、チタン管10の通過領域において相互に向き合うように配置されるとともに、別の2つのチタン管成形ロール41のロール凹部44がチタン管10の通過領域において相互に向き合うように配置されている。ロール凹部44が相互に向き合う一対のチタン管成形ロール41同士は、それぞれの回転軸43が平行になるように配置されている。一方、ロール凹部44が相互に向き合わないチタン管成形ロール41同士、すなわち隣接するチタン管成形ロール41同士は、それぞれの回転軸43の軸方向が直交するように配置されている。
また、4つのチタン管成形ロール41のロール凹部44が成形対象のチタン管10の外周面の同一円周上に接するように配置されている。1つのチタン管成形ロール41は、チタン管10の外周面の円周の1/4に接するように配置されている。すなわち、チタン管成形ロール41のロール凹部44のロール幅方向に沿う長さLは、チタン管10の外周面の円周の1/4の長さにほぼ等しくなっている。これにより、4つのチタン管成形ロール41によって、成形対象となるチタン管10の外周面の円周全部を同時に成形できるようになっている。
更に、チタン管10の通過領域の近傍において、相互に隣接するチタン管成形ロール41は、それぞれの傾斜部45同士が対向している。図14及び図16においては、傾斜部45同士が接している状態で図示されているが、傾斜部45同士は所定のクリアランスを空けるように位置決めされている。本実施形態のチタン管成形装置51は、傾斜部45の表面に、窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が形成されており、これらの被膜によって傾斜部45同士が接触した場合でも傾斜部45同士の潤滑性が保たれるため、傾斜部45同士の焼き付きが起きるおそれがない。そのため、本実施形態では、傾斜部45同士のクリアランスを大幅に小さくすることができる。より具体的には、隣接するチタン管成形ロール41の傾斜部45同士のクリアランスC(単位:mm)と、ロール凹部44の曲率半径R1(単位:mm)との関係は、C=α×R1(ただし、0≦α≦0.02)の関係にすることができる。αを0.02以下にすることにより、傾斜部45同士のクリアランスCが過大にならず、チタン管10の真円度を高めることができる。また、αは小さければ小さいほどよく、0でもよいが、真円度調整のための各ロール一を相対位置を調整する場合や入り側径の変化に対応して外径寸法調整をする場合を考慮すると、より好ましくは0.007以上が良い。αを0.007以上にすることで、傾斜部45同士が焼き付くおそれを低減できるようになる。
なお、クリアランスC(単位:mm)は、チタン管10の肉厚t(単位:mm)未満であることが好ましい。クリアランスCをチタン管10の肉厚未満とすることで、成形後のチタン管の真円度をより高めることができる。
なお、クリアランスC(単位:mm)は、チタン管10の肉厚t(単位:mm)未満であることが好ましい。クリアランスCをチタン管10の肉厚未満とすることで、成形後のチタン管の真円度をより高めることができる。
チタン管成形ロール41は、軸受け部52によって回転自在に支持されている。軸受け部52は、基体部54には直接取り付けらず、第1調整装置53を介して基体部54に取り付けられている。第1調整装置53は、基体部54に取り付けられた位置調整用フランジ部53aと、位置調整用フランジ部53aに設けられた雌ねじ穴53bと、雌ねじ穴53bに挿入された調整ボルト53cと、軸受け部52に設けられた雌ねじ穴52aとにより構成されている。位置調整用フランジ部53aは、例えば金属板が折り曲げられて構成されており、基体部54の表面に溶接されている。調整ボルト53cには雄ねじ部が形成されており、位置調整用フランジ部53aの雌ねじ穴53bと、軸受け部52に設けられた雌ねじ穴52aとに挿入されている。調整ボルト53cを回転させることで、位置調整用フランジ部53aと軸受け部52との距離を調整できるようになっており、これにより、チタン管成形ロール41の相対位置を調整できるようになっている。より具体的には、傾斜部45同士のクリアランスは第1調整装置53によって調整可能である。また、4つのチタン管成形ロール41のロール凹部44の位置も、第1調整装置53によって調整可能であり、ロール凹部44の曲率半径の中心位置が成形対象のチタン管10の中心軸と一致するように調整するとよい。
次に、第2調整装置56について説明する。支持基体55の第2フランジ部55bに、貫通孔55cが設けられており、貫通孔55cの内面には雌ねじ部が設けられている。また、基体部54の表面の上端側に別の位置調整用フランジ部54bが設けられている。この位置調整用フランジ部54bにも貫通孔54cが設けられ、その内面には雌ねじ部が設けられている。そして、支持基体55の第2フランジ部55bの貫通孔55cと、位置調整用フランジ部54bの貫通孔54cには、雄ねじ部を有するボルト56aが鉛直方向から挿入されている。このように、第2調整装置56は、貫通孔55cを有する第2フランジ部55b、貫通孔54cを有する位置調整用フランジ部54b、及びボルト56aによって構成されている。鉛直方向に挿入されたボルト56aを回転させることで、第2フランジ部55bと位置調整用フランジ部54bとの間隔を調整することができ、これにより、支持筐体55における基体部54の位置を上下させることが可能になる。これにより、チタン管成形装置51の前段または後段にある他の成形ロールとの相対位置を調整可能になる。
次に、図15〜図17に示したチタン管成形ロール41及びチタン管成形装置55による、チタン管10の成形方法を説明する。
チタン管10を成形する際には、4つのチタン管成形ロール41のロール凹部44によって形成された孔部に、チタン管10を挿通させる。これにより、チタン管10の外周面が、その円周方向の同一位置においてチタン管成形ロール41に接触し、真円形状に成形される。
チタン管10を成形する際には、4つのチタン管成形ロール41のロール凹部44によって形成された孔部に、チタン管10を挿通させる。これにより、チタン管10の外周面が、その円周方向の同一位置においてチタン管成形ロール41に接触し、真円形状に成形される。
ここで、本例と第3の例との違いについて説明すると、第3の例では、ロール中央部21と回転フランジ部22がチタン管10を成形する際に、ロール中央部21及び回転フランジ部22の回転軸が同じであるため、ロール中央部21と回転フランジ部22は同じ方向に回転する。ロール中央部21では、チタン管10に当たる面が回転軸と平行に近い向きになっているが、回転フランジ部22では、チタン管10に当たる面が回転軸に対して垂直に近い向きになっている。このため、回転フランジ部22では、チタン管10への当たり方が複雑になり、ロール中央部21に比べてチタン管10に疵を発生させる可能性が若干高くなる。また、ロール中央部21及び回転フランジ部22ではチタン管10に与える荷重量が異なってくるため、チタン管10に与える荷重にばらつきが生じる可能性がある。一方、本例では、第3の例における回転フランジ部22に相当するロール面を、隣接する他のチタン管成形ロール41が担っており、この隣接するチタン管成形ロール41同士の回転軸が平行ではないため、第3の例のようにロール中央部21と回転フランジ部22とが同軸で回転することによるチタン管10における疵発生やチタン管10への荷重の不均一性が解消され、より理想的な状態でチタン管10を成形できる。
また、本例では、隣接するチタン管成形ロール41の傾斜部45同士のクリアランスを従来よりも小さく設定できるため、チタン管10の真円度をより高められる。
更に、本例では、ロール凹部44と傾斜部45との間に凸曲面部46が設けられており、この凸曲面部46の曲率半径Rfr(単位:mm)は、従来の4方ロールに比べて大幅に小さくなっている。凸曲面部46の曲率半径が相対的に大きいと、図18に示すように、チタン管10においてロール凹部44に接触しない部分が拡大してチタン管10の真円度が低くなるおそれがある。一方、凸曲面部46の曲率半径が相対的に小さいと、チタン管10に疵を生じさせるおそれが高まる。図19(a)及び図19(b)には、チタン管10が図中右側から左側に移動する様子を示しているが、チタン管10の外周面の円周方向に付与した補助線mの位置と、チタン管成形ロール41の凸曲面部56とに注目すると、チタン管成形ロール41のうち、チタン管10が最初に接触する箇所は凸曲面部56であり、チタン管10に接触した際の面圧が大きくなる。凸曲面部46の曲率半径が相対的に小さいと、面圧が集中して疵発生のおそれが高まる。
しかしながら、本例では、凸曲面部46にも窒化層、CrN皮膜、Cr膜、中間膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が形成されているため、凸曲面部46における潤滑性が向上し、凸曲面部46の曲率半径が相対的に小さくなって面圧が集中したとしても、疵が発生するおそれが低くなる。このため、本例では、凸曲面部46の曲率半径Rfr(単位:mm)を、ロール凹部44の曲率半径R1(単位:mm)との関係で、Rfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係に設定できる。βを0.02以下にすることにより、凸曲面部46の曲率半径Rfrが十分小さくなり、チタン管10の真円度を高めることができる。また、βは0超であればよく、より好ましくはクリアランスがある場合および面圧による疵防止を考慮すると0.01以上が良い。βを0超、若しくは0.01以上にすることで、凸曲面部46への面圧集中を抑制してチタン管10の疵発生を防止できるようになる。
また、本例においては、ロール凹部14の最底部におけるロール半径をRdとしたとき、Rd/Rfrが大きいほど、チタン管の管軸方向に対する凸曲面部46の当たり方が緩やかになり、疵がより発生しにくくなる。従って、疵発生をより効果的に抑制するためには、ロール凹部14の最底部におけるロール半径Rdを大きくすることが好ましい。
以上説明したような、本発明に係るチタン管成形ロールによれば、基材上に、CrN皮膜、Cr膜、中間膜ならびにダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を形成するため、耐摩耗性及び耐凝着性を向上させることができる。またDLC膜において、DLC膜の膜厚方向に硬度の傾斜をつけることで、中間膜とDLC膜との間における硬度の格差を緩和させることができる。その結果、DLC膜の上層領域は、硬質なものとすることで、チタン管に対し優れた耐摩耗性を発揮できる上、sp2混成軌道(グラファイト構造)の炭素も多少含んでおり低摩擦性を確保できる。一方の下層領域は軟質なものとすることで、中間膜との硬度格差を緩和でき、耐剥離性の確保できる。
また、チタン管を成形する際、潤滑剤を成形ロールの一部に微量滴下しながら成形することで、成形ロール、特に駆動ロールの摩擦係数を低減することができる。その効果による、周速差の大きい(すべりの大きい)ことによる、ロールフランジ部の凝着を防止することにより、駆動ロールで発生するロールフランジ部の疵や、ロールマークの発生を抑えることができる。
すなわち、本発明に係るチタン管成形ロール、チタン管成形装置、チタン管の製造方法によれば、成形ロール寿命を格段に向上でき、成形ロールの交換頻度を低減でき、製造コストを大幅に削減できる。また、成形ロール寿命の向上による成形ロールの交換頻度を低減によって、ロール交換時のロール調整(位置調整等)に伴う歩留まり低下の防止、及び、成形寸法精度向上による歩留まり向上(高精度化)を達成することができる。
次に、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
<成形ロール>
(実施例1)
まず、成形ロールの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。
次に、得られた基材表面に対して、窒化処理を行い、基材表層に、25μm厚、平均窒素濃度が0.20質量%である窒化層を形成した。
なお、窒化処理は、アンモニアと水素の混合ガス雰囲気中(NH3、H2、Ar)で直流グロー放電により生じた反応性の高い活性種を利用し窒化するラジカル窒化処理を用いた。処理温度は500℃とし3時間の処理を施した。
(実施例1)
まず、成形ロールの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11(C,Si,Mn,Cr,Mo,V,P,S,残部鉄及び不純物を本発明の範囲で含む鋼)を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。
次に、得られた基材表面に対して、窒化処理を行い、基材表層に、25μm厚、平均窒素濃度が0.20質量%である窒化層を形成した。
なお、窒化処理は、アンモニアと水素の混合ガス雰囲気中(NH3、H2、Ar)で直流グロー放電により生じた反応性の高い活性種を利用し窒化するラジカル窒化処理を用いた。処理温度は500℃とし3時間の処理を施した。
次に、窒化処理を施した基材表層(窒化層)上に、PVD蒸着法により、1.5μmのCrN皮膜(単層)を成膜した。
次に、CrN皮膜を形成した基材を、孔型R:12.6mm、ロール底径Dr:100mm、ロール外径Do:124mm、ロール幅W:60.0mmの寸法でロールに加工し、図2に示す成形ロールを製造した。
次に、CrN皮膜を形成した基材を、孔型R:12.6mm、ロール底径Dr:100mm、ロール外径Do:124mm、ロール幅W:60.0mmの寸法でロールに加工し、図2に示す成形ロールを製造した。
成形ロールについて、CrN皮膜表面から深さ方向に、グロー放電発光分析装置(GDS)を用いて成分分析を行った。分析結果を図20〜22に示す。図20〜22における横軸は、CrN層表面からの深さ(μm)、縦軸は各成分の濃度(質量%)を示す。
図20及び図21に示すように、基材表層に、厚さ1.5μmのCrN層が形成されていることが分かる。また、図22は、微量に含有する元素の深さ方向への濃度挙動を確認するために、図20のグラフの縦軸範囲を変化させ表したグラフである。図22のグラフより、CrN皮膜と基材との間には、窒化層が形成されていることが分かる。また、グラフからも明らかなように、CrN皮膜側から基材側に向けて窒素濃度が緩やかに減少する勾配を示しており、窒化層内における深さ方向に対する硬さ変動も緩やかであることが分かる。
図20及び図21に示すように、基材表層に、厚さ1.5μmのCrN層が形成されていることが分かる。また、図22は、微量に含有する元素の深さ方向への濃度挙動を確認するために、図20のグラフの縦軸範囲を変化させ表したグラフである。図22のグラフより、CrN皮膜と基材との間には、窒化層が形成されていることが分かる。また、グラフからも明らかなように、CrN皮膜側から基材側に向けて窒素濃度が緩やかに減少する勾配を示しており、窒化層内における深さ方向に対する硬さ変動も緩やかであることが分かる。
次に、予め上記成形ロールの表面(CrN皮膜)に対してプラズマクリーニングを施し汚れを除去した上で、PVD法により、Cr膜及び中間膜を成膜した。Cr膜の厚みを10〜40nmとし、中間膜の厚みを60〜180nmとした。また、中間膜は、Cr濃度とC濃度の合計を100質量%としたときに、Cr膜との界面におけるCr濃度が100質量%となり、最表面(ダイヤモンドライクカーボン膜との界面になる面)におけるCr濃度が0質量%となるように、膜厚方向に沿ってCr濃度及びC濃度は直線的に変化するように成膜した。
次いで、中間膜表面に対してプラズマクリーニングを施し汚れを除去した上で、中間膜上にダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を成膜した。膜厚は1.0μmとした。
DLC膜はプラズマCVD法によって成膜した。装置は容量結合型高周波プラズマCVD装置を用い、温度は500℃とした。プラズマ発生用電源には、13.56MHzの高周波電源を用いた。反応ガスとしては、CH4とH2の混合ガスを用いた。このとき、CH4とH2の混合ガスの混合比を変えることにより、中間膜との界面から表面に向かって膜の硬さが徐々に増加するようにした。
DLC膜はプラズマCVD法によって成膜した。装置は容量結合型高周波プラズマCVD装置を用い、温度は500℃とした。プラズマ発生用電源には、13.56MHzの高周波電源を用いた。反応ガスとしては、CH4とH2の混合ガスを用いた。このとき、CH4とH2の混合ガスの混合比を変えることにより、中間膜との界面から表面に向かって膜の硬さが徐々に増加するようにした。
(比較例1)
実施例1で採用した工具鋼SKD11を基材とし、実施例1と同様に、窒化層およびCrN皮膜(単層)ロールに加工し成形ロールを製造した。
次に、CrN皮膜上に、イオンプレーティング法によりダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を1.0μmの厚さで成膜した。
実施例1で採用した工具鋼SKD11を基材とし、実施例1と同様に、窒化層およびCrN皮膜(単層)ロールに加工し成形ロールを製造した。
次に、CrN皮膜上に、イオンプレーティング法によりダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を1.0μmの厚さで成膜した。
<ラマン分光法>
実施例1および比較例で得られた成形ロールの表層の、sp2混成軌道の炭素とsp3混成軌道の炭素の割合(sp3/sp2)をラマン分光分析によって測定した。
結果を図23(a)〜(c)及び図24(a)〜(c)、表1、2に示す。
実施例1および比較例で得られた成形ロールの表層の、sp2混成軌道の炭素とsp3混成軌道の炭素の割合(sp3/sp2)をラマン分光分析によって測定した。
結果を図23(a)〜(c)及び図24(a)〜(c)、表1、2に示す。
図23(a)は、実施例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図23(b)、23(c)は実施例1の成形ロールのDLC膜のラマンスペクトルを示す。図24(a)は比較例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図24(b)、24(c)は比較例1の成形ロールのDLC膜のラマンスペクトルを示す。なお、図中の「表面付近」とはDLC膜の表層、「DLC膜内部」とはDLC膜の内部、「界面付近」とはDLC膜と中間膜との界面付近のラマンスペクトルである。
また表1に、実施例1のラマンバンドパラメータを、表2に比較例1のラマンバンドパラメータを示す。
また表1に、実施例1のラマンバンドパラメータを、表2に比較例1のラマンバンドパラメータを示す。
図23(a)〜(c)、表1から明らかなように、実施例1で得られたDLC膜は、中間膜からDLC膜に向かうにしたがい、I1380/I1540が大きくなっている。
つまり、中間膜からDLC膜に向かうにしたがい硬度が大きくなる硬度傾斜となっていることが分かる。
つまり、中間膜からDLC膜に向かうにしたがい硬度が大きくなる硬度傾斜となっていることが分かる。
つまり、中間膜からDLC膜に向かうにしたがい硬度が大きくなる硬度傾斜となっていることが分かる。
つまり、中間膜からDLC膜に向かうにしたがい硬度が大きくなる硬度傾斜となっていることが分かる。
一方、図24(a)〜(c)、表2から明らかなように、比較例1で得られたDLC膜は、「表面付近」、「DLC膜内部」ともにI1380/I1540が大きく、膜厚方向において硬度傾斜が付与されていないことが分かる。
次に、実施例1および比較例1で得られた窒化層、CrN皮膜、ならびにDLC膜のビッカース硬さについて測定した。基材および窒化層については、マイク口ビッ力一ス硬度計により測定した。また、CrN皮膜Cr膜、中間膜およびDLC膜については、ナノインデンテーション(押込み)法によって、極低荷重の押込み試験を行い、ビッ力一ス硬さに換算した。具体的には、ナノインデンテーション(押込み)法に従い、三角錐型圧子(パーコピッチ圧子)を用いて、0.005〜0.1mNの荷重を20秒負荷したとき(負荷20s、保持5s、除荷20s)の押し込み硬さをナノインデンテーション硬さとして求めた。このとき、押し込み深さの10倍以上になる条件で測定した。
また、面研削による測定と埋め込み研磨による側面(断面)押し込みを併用した。得られたナノインデンテーション硬さから、下記の換算式によってビッ力一ス硬さを求めた。
Hv=0.0945×HIT
ただし、上記式中のHvはビッ力一ス硬さを、HITはナノインデンテーション硬さをそれぞれ意味する。
また、面研削による測定と埋め込み研磨による側面(断面)押し込みを併用した。得られたナノインデンテーション硬さから、下記の換算式によってビッ力一ス硬さを求めた。
Hv=0.0945×HIT
ただし、上記式中のHvはビッ力一ス硬さを、HITはナノインデンテーション硬さをそれぞれ意味する。
何れの層、膜においても、断面において3点測定しその平均をもって「ビッカース硬さ」とした。窒化層については基材との界面近傍(2μm深さまでの領域:内側領域)およびCrN皮膜との界面近傍(2μm深さまでの領域:外側領域)において測定した。DLC膜は、膜表面から0.20tまでの領域(表面付近)、DLC膜と中間膜との界面から0.20tまでの領域(界面付近)、およびDLC膜の膜厚方向中心部(DLC膜内部)の計3か所において測定した。
その結果を表3に示す。表3に示すように、実施例1では、各層・各膜の平均ビッカース硬さはそれぞれ、窒化層は1000、CrN皮膜は2000、Cr膜は1200(表3に記載せず)、中間膜は2000(表3に記載せず)、DLC膜の「界面付近」は2500、「DLC膜内部」は3000、DLC膜の「表面付近」は3500となり、Cr膜からDLC膜の膜厚方向において硬度傾斜が付与されていた。
その結果を表3に示す。表3に示すように、実施例1では、各層・各膜の平均ビッカース硬さはそれぞれ、窒化層は1000、CrN皮膜は2000、Cr膜は1200(表3に記載せず)、中間膜は2000(表3に記載せず)、DLC膜の「界面付近」は2500、「DLC膜内部」は3000、DLC膜の「表面付近」は3500となり、Cr膜からDLC膜の膜厚方向において硬度傾斜が付与されていた。
また、表3に示すように、比較例1で得られたDLC膜の「表面付近」、「DLC膜内部」、「界面付近」それぞれおいて実施例1と同様にビッカース硬度を測定したところ、「界面付近」は4000、「DLC膜内部」は4000、「界面付近」は4000となり、膜厚方向において均一な硬度分布であった。
<機械特性評価>
実施例1及び比較例の各成形ロールにおいて、機械特性を評価した。評価条件は、径25.0mm、0.5mm厚のJIS3種チタン金属管を用い、TIG溶接による造管速度を6/min分として、溶接後に図10に示す成形装置を用いて成形を行った。このとき、潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。
その結果、実施例1は、成形時間が24時間経過しても、ロール疵は発生せず、耐凝着性、耐摩耗性は良好であり、ロールフランジ部の疵、ロールマークの発生を抑制できた。
一方、比較例のロールを用いJIS3種チタン管の成形を行うと、30分も立たずにロール疵、膜剥離が発生し、CrN皮膜が露出した。
実施例1及び比較例の各成形ロールにおいて、機械特性を評価した。評価条件は、径25.0mm、0.5mm厚のJIS3種チタン金属管を用い、TIG溶接による造管速度を6/min分として、溶接後に図10に示す成形装置を用いて成形を行った。このとき、潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。
その結果、実施例1は、成形時間が24時間経過しても、ロール疵は発生せず、耐凝着性、耐摩耗性は良好であり、ロールフランジ部の疵、ロールマークの発生を抑制できた。
一方、比較例のロールを用いJIS3種チタン管の成形を行うと、30分も立たずにロール疵、膜剥離が発生し、CrN皮膜が露出した。
(実施例2、3)
実施例2として、図3に示す成形ロールを製造した。その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を50μmに調整した。
また、実施例3として、図3に示す成形ロールを製造し、その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整した。各成形ロールにおける窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜の品質は、実施例1と同等であった。
実施例2として、図3に示す成形ロールを製造した。その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を50μmに調整した。
また、実施例3として、図3に示す成形ロールを製造し、その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整した。各成形ロールにおける窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜の品質は、実施例1と同等であった。
これら実施例2及び3の成形ロールを用いて、径25.0mm、0.5mm厚のJIS3種チタン管を成形した。成形条件は、JIS3種チタンを用いてTIG溶接し、造管速度を6/min分とし、TIG溶接後に図10に示す成形装置に図3のロールを用い、潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。成形後のチタン管の真円度の評価結果を図25に示す。図25には、300時間連続製造の成形後のチタン管の真円度の測定結果を実線で示し、製品としての真円度の許容範囲を三重円(点線)で示している。三重円のうちの内側と外側の円が許容範囲を示しており、残りの円は成形目標を示している。
図25に示すように、実施例2(図25(a))、実施例3(図25(b))とも真円度は良好で、製品としての真円度の許容範囲内であったが、実施例3のほうがより高い真円度を示した。また、実施例2では、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間によって、チタン管の表面に製品として許容できる程度の疵が生じた。
また、実施例2、3においては、チタン管に対するロールとの焼き付きや、ロール中央部または固定フランジ部と回動フランジ部と間の焼き付きは、300時間連続製管後も発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
よって、実施例3のように、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整することは、それらが製管中に互いに摺動したとしても、窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜による摩擦係数の低減により、互いに磨耗することがなく、問題がなく連続製管することができ、チタン管製品の真円度を保ち、疵発生を防ぐ点から望ましいことがわかる。
また、実施例2、3においては、チタン管に対するロールとの焼き付きや、ロール中央部または固定フランジ部と回動フランジ部と間の焼き付きは、300時間連続製管後も発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
よって、実施例3のように、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整することは、それらが製管中に互いに摺動したとしても、窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜による摩擦係数の低減により、互いに磨耗することがなく、問題がなく連続製管することができ、チタン管製品の真円度を保ち、疵発生を防ぐ点から望ましいことがわかる。
(実施例4)
実施例4として、図14〜図17に示すチタン管成形ロール及びチタン管成形装置を製造した。その際、傾斜部同士のクリアランスCを100μm(0.1mm)とし、凸面部の曲率半径Rfrを0.3mmとした。ロール凹部の曲率半径R1は30.25mmであるので、α=0.003、β=0.01となり、C=α×R1(ただし0≦α≦0.02)及びRfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係式は満たしていた。窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜は実施例1と同様にした。
実施例4として、図14〜図17に示すチタン管成形ロール及びチタン管成形装置を製造した。その際、傾斜部同士のクリアランスCを100μm(0.1mm)とし、凸面部の曲率半径Rfrを0.3mmとした。ロール凹部の曲率半径R1は30.25mmであるので、α=0.003、β=0.01となり、C=α×R1(ただし0≦α≦0.02)及びRfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係式は満たしていた。窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜は実施例1と同様にした。
これら実施例4の成形ロールを用いて、径60.5mm、1.0mm厚のJIS1種チタン管を成形した。成形条件は、JIS1種チタンを用いてTIG溶接し、造管速度を6/min分とし、TIG溶接後に、図14及び図15に示すチタン管成形装置に挿通させた。潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。成形後のチタン管の真円度の評価結果を図26に示す。図26には、300時間連続製造の成形後のチタン管の真円度の測定結果を実線で示し、製品としての真円度の許容範囲を三重円(点線)で示している。三重円のうちの内側と外側の円が許容範囲を示しており、残りの円は成形目標を示している。
図26に示すように、実施例4の真円度は良好で、製品としての真円度の許容範囲内であった。また、図26に示す4つの矢印は、チタン管ロールの凸曲面部が当接する位置であるとともに、クリアランスの位置であったが、真円度に大きな乱れはなかった。
また、実施例4においては、チタン管に対するチタン管成形ロールとの焼き付きや、チタン管成形ロールの傾斜部同士の焼き付きは、300時間連続製管後も発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
よって、実施例4のように、4つのチタン成形ロールによって4方からチタン管を成形する際に、傾斜部同士のクリアランスCを100μmに調整し、凸面部の曲率半径Rfrを0.3mmに調整したとしても、窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜による摩擦係数の低減により、互いに磨耗することがなく、問題がなく連続製管することができ、チタン管製品の真円度を保ち、疵発生を防ぐ点から望ましいことがわかる。
また、実施例4においては、チタン管に対するチタン管成形ロールとの焼き付きや、チタン管成形ロールの傾斜部同士の焼き付きは、300時間連続製管後も発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
よって、実施例4のように、4つのチタン成形ロールによって4方からチタン管を成形する際に、傾斜部同士のクリアランスCを100μmに調整し、凸面部の曲率半径Rfrを0.3mmに調整したとしても、窒化層、CrN膜、Cr膜、中間膜及びDLC膜による摩擦係数の低減により、互いに磨耗することがなく、問題がなく連続製管することができ、チタン管製品の真円度を保ち、疵発生を防ぐ点から望ましいことがわかる。
1、21、31…チタン管成形ロール、3…回転軸、10…チタン管、12…ロール本体、4、14…ロール凹部、21…ロール中央部、21a1…外周面(対向面)、21a…基部、21b…突出部、22…回動フランジ部、22b…内周面(対向面)、22c…外側面(対向面)、23…固定フランジ部、23b…対向面、32…引きねじ部、101…潤滑ノズル、102…潤滑ノズル固定台、103…水平移動ガイド、104…上下位置調整ハンドル、105…左右位置調整ハンドル、106…中心位置調整冶具、107…あり型台座、108…スタンド支柱取り付け冶具、109…潤滑ノズル角度調整冶具、112…潤滑ノズル角度固定ねじ、113…潤滑ノズル前後調整冶具、114…幅調整用ねじ(正・ねじ使用)、115…幅移動用ガイド部品、116…上下移動ねじ、117…成形スタンド支柱、118…幅移動溝、119…幅移動ガイド、120…スタンド固定ねじ、130…ローラー、131…中心軸、132…シリコンチューブ。
Claims (31)
- 質量%で、
C:1.00〜2.30%、
Si:0.10〜0.60%、
Mn:0.20〜0.80%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:4.80〜13.00%、
Mo:0〜1.20%、
V:0〜1.00%、
W:0〜0.80%を含有し、
残部が鉄および不純物である化学組成を有する基材と、
前記基材上の少なくとも圧延面に形成された窒化層と、
前記窒化層上に形成されたCrN皮膜と、
前記CrN皮膜上に形成されたCr膜と、
前記Cr膜上に形成された中間膜と、
前記中間膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、を備え、
前記基材のビッカース硬さが600〜700であり、
前記窒化層のビッカース硬さが800〜1200であり、
前記CrN皮膜のビッカース硬さが800〜2000であり、
前記中間膜はCr及び炭素を含み、Crと炭素の合計を100質量%としたとき、前記Cr膜側の界面におけるCr濃度が80質量%以上であり、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側の界面におけるC濃度が80質量%以上であり、前記Cr膜側から前記ダイヤモンドライクカーボン膜側に向かう膜厚方向に沿ってCr濃度が徐々に減少する膜であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜のビッカース硬さが、膜表面から0.20t(ただし、tは膜厚)までの領域において3000〜3500、前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において1500〜3000であり、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、0.20tまでの領域において0.5〜0.7、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記中間膜との界面から0.20tまでの領域において0.3〜0.5であるチタン管成形ロール。 - 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の厚さが0.5μm〜2.0μmである、請求項1に記載のチタン管成形ロール。
- 前記CrN皮膜の厚さが0.5μm〜5.0μmである、請求項1または請求項2に記載のチタン管成形ロール。
- 前記窒化層の厚さが0.5μm〜50.0μmである、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- 前記窒化層の平均窒素濃度が0.10〜0.50質量%である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有する、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- 前記基材が、質量%で、
Mo:0.70〜1.20%、
V:0.15〜1.00%、
W:0.60〜0.80%から選択される一種以上を含有する、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。 - 前記Cr膜の厚さが5nm〜200nmである、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- 前記中間膜の厚さが20nm〜1000nmである、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- ロール本体の全周に渡って断面視半円状のロール凹部を設けた孔型ロールであって、
前記圧延面が、前記ロール凹部表面である、請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。 - 前記ロール本体が、ロール中央部と、前記ロール中央部の両側に配置されて前記ロール中央部に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部とを備え、
前記ロール凹部が、前記ロール中央部と前記回動フランジ部とによって分割されている、請求項10に記載のチタン管成形ロール。 - 前記ロール中央部は、前記ロール本体を駆動する回転軸に固定されており、前記回動フランジ部は前記回転軸及び前記ロール中央部に対して回動自在とされている、請求項11に記載のチタン管成形ロール。
- 前記ロール凹部の曲率半径をR1としたとき、前記ロール中央部における前記ロール凹部の幅は、0.7×2R1〜0.87×2R1の範囲である、請求項11または請求項12に記載のチタン管成形ロール。
- 前記ロール中央部には、基部と、前記基部のロール幅方向中央部からロール外周方向に向けて突出された突出部とが備えられ、
前記回動フランジ部は、前記基部上にあって前記突出部のロール幅方向両側に配置され、
前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間に、第1軸受部が設けられている、請求項11乃至請求項13の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。 - 前記ロール中央部の前記基部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第1軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、請求項14に記載のチタン管成形ロール。
- 一対の前記回動フランジ部のロール幅方向両側に配置されて前記ロール中央部に固定された固定フランジ部と、前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間に配置された第2軸受部と、を備える、請求項11乃至請求項15の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。
- 前記固定フランジ部と前記回動フランジ部との間で互いに対向する対向面がそれぞれ、前記第2軸受部の転動体の軌道面とされており、前記対向面が、前記窒化層と、前記CrN皮膜と、前記Cr膜と、前記中間膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜を備える、請求項16に記載のチタン管成形ロール。
- 前記固定フランジ部に、前記回動フランジ部を引き寄せて固定する引きねじ部が設けられている、請求項16または請求項17に記載のチタン管成形ロール。
- 請求項10乃至請求項18の何れか一項に記載のチタン管成形ロールが2つ備えられ、
2つの前記チタン管成形ロールは、それぞれの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、前記の各ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置されている、チタン管成形装置。 - 前記基材からなるロール本体を備え、
前記ロール本体には、その全周に渡って設けられた断面視円弧状のロール凹部と、前記ロール凹部の幅方向両側に設けられ、前記ロール本体のロール幅方向外側に向けてロール本体の回転軸側に傾斜する傾斜部と、を有しており、
前記ロール凹部表面が前記圧延面であって、前記ロール凹部表面に、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられ、
更に、前記傾斜部の表面にも、前記窒化層、前記CrN皮膜、前記Cr膜、前記中間膜及び前記ダイヤモンドライクカーボン膜が備えられている、請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載のチタン管成形ロール。 - 前記ロール凸部と前記傾斜部との境界に、凸曲面部が設けられており、前記凸曲面部の曲率半径Rfr(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、Rfr=β×R1(ただし、0<β≦0.02)の関係にあることを特徴とする請求項20に記載のチタン管成形ロール。
- 請求項20または請求項21に記載のチタン管成形ロールが4つ備えられ、
4つの前記チタン管成形ロールのうち、2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置されるとともに、別の2つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が相互に向き合うように配置され、かつ、4つの前記チタン管成形ロールの前記ロール凹部が成形対象のチタン管外周面の同一円周上に接するように配置され、更に、相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士が対向している、チタン管成形装置。 - 相互に隣接する前記チタン管成形ロールの前記傾斜部同士のクリアランスC(単位:mm)と、前記ロール凹部の曲率半径R1(単位:mm)との関係が、C=α×R1(ただし、0≦α≦0.02)の関係にあることを特徴とする請求項22に記載のチタン管成形装置。
- 請求項1乃至請求項18、請求項20または請求項21の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを備えたチタン管成形装置であって、前記チタン管成形ロールの一部分に対し、チタン管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有する、チタン管成形装置。
- チタン管の成形サイズに合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、請求項24に記載のチタン管成形装置。
- 前記チタン管成形ロールの径に合わせて前記潤滑ノズルの位置を可変できる、請求項24または請求項25に記載のチタン管成形装置。
- 前記潤滑ノズルの位置および向きを任意に調整できる、請求項24乃至請求項26の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
- 前記潤滑ノズルは、内径0.5〜3.0mmのチューブである、請求項24乃至請求項27の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
- 前記潤滑剤としてソリユブル油系潤滑剤を用い、該潤滑剤を1.0〜20.0ml/hr以下で微量滴下して供給する、請求項24乃至請求項28の何れか一項に記載のチタン管成形装置。
- 請求項1乃至請求項18、請求項20または請求項21の何れか一項に記載のチタン管成形ロールを用いて成形する、チタン管の製造方法。
- 請求項19または請求項22乃至請求項29の何れか一項に記載のチタン管成形装置を用いて成形する、チタン管の製造方法。
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