以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、電子ビーム積層造形装置およびこれに具備された排気システムに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電子ビーム積層造形装置の概略図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における電子ビーム積層造形装置100の構成について説明する。
図1に示すように、電子ビーム積層造形装置100は、真空容器としてのチャンバ110と、電子ビーム発生源としての電子銃120と、金属造形物400を積層造形する部位である積層造形部130と、軽ガス供給源としてのヘリウムガス供給源200と、後述する本実施の形態における排気システム1Aとを主として備えている。
チャンバ110は、電子銃120、ビームアライメント121、集束レンズ122、対物レンズ123および偏光器124が配置された空間を規定する第1チャンバ部111と、積層造形部130が設けられた空間を規定する第2チャンバ部112とを有している。第1チャンバ部111の内部の空間は、電子銃室排気システム(不図示)により、超高真空状態に維持されている。一方、第2チャンバ部112の内部の空間は、排気システム1Aにより、積層造形時において、補助ガスである軽ガスとしてのヘリウムガスの分圧が相対的に高く保たれつつも、非軽ガスの分圧が相対的に低く保たれた真空状態に維持される。
電子銃120は、カソードおよびアノードを含んでおり、これらの間には所定の高電圧が印加できるように構成されている。カソードは、図示しない加熱機構によって高温の状態に加熱できるように構成されている。
電子ビームEBは、カソードが加熱機構によって加熱されることで熱電子が発生する環境下に置かれた状態において、さらにアノードとカソード間に高電圧が印加されることにより、カソードにおいて発生した熱電子がアノードによって引き出されることで発生する。
ビームアライメント121は、電子ビームEBに電磁的に作用することにより、電子銃120から出射された電子ビームEBの光軸を集束レンズ122の光軸と一致させるためのものである。
集束レンズ122および対物レンズ123は、電子ビームEBに電磁的に作用することにより、電子ビームEBを後述する金属粉末床の狭い範囲に集中して照射させるためのものである。
偏光器124は、電子ビームEBに電磁的に作用することにより、電子ビームEBを曲げることでこれを金属粉末床上において走査させるためのものである。なお、偏光器124は、電子銃120から出射された電子ビームEBをその進行方向と交差する方向に自由に曲げることができるものであるが、図中においてはその様子を模式的に矢印DR1にて示している。
積層造形部130は、ステージ131と、ホッパ132と、レーキ133と、ステージ131を昇降可能に駆動する図示しないステージ駆動機構とを主として有している。
ステージ131は、第2チャンバ部112の内部であって電子ビームEBが照射可能な位置に配置されている。ステージ131は、その主面上に金属粉末300が敷き詰められることにより、これによって形成された該金属粉末床を支持する部材であり、上述したステージ駆動機構によって図中に示す矢印DR2方向に昇降可能に支持されている。
ホッパ132およびレーキ133は、第2チャンバ部112の内部に配置されており、金属粉末300をハンドリングするためのものである。ホッパ132は、金属粉末300を内部に貯留しており、必要なタイミングで必要な量だけ金属粉末300をステージ131上に向けて供給する。レーキ133は、図中に示す矢印DR3方向に往復動することにより、ホッパ132からステージ131上に供給された金属粉末300をステージ131上に厚みが均一になるように敷き詰める。
ヘリウムガス供給源200は、第2チャンバ部112に開閉弁201を介して接続されている。ヘリウムガス供給源200は、第2チャンバ部112内にヘリウムガスを導入するためのものであり、開閉弁201が開閉されることにより、ヘリウムガスが第2チャンバ部112内に必要なタイミングにおいて必要な量だけ供給される。
排気システム1Aは、第2チャンバ部112に調整弁202を介して接続されている。排気システム1Aは、第2チャンバ部112内に存在する気体分子を外部に排気することにより、第2チャンバ部112内に真空状態を作り出すためのものである。
本実施の形態における電子ビーム積層造形装置100においては、これらヘリウムガス供給源200および排気システム1Aが適切に稼働されることにより、積層造形の前段階において、軽ガスの分圧と非軽ガスの分圧とが共に低く保たれた真空状態が早期に作り出されるとともに、積層造形時において、ヘリウムガスの分圧が相対的に高く保たれつつも非軽ガスの分圧が相対的に低く保たれた真空状態が維持される。
なお、第2チャンバ部112には、真空計210が設置されており、第2チャンバ部112内の真空度は、当該真空計210によって常時計測される。この真空計210によって計測された真空度に基づき、ヘリウムガス供給源200および排気システム1Aが適切に稼働されることにより、上述した真空状態が実現される。
積層造形時においては、まず、ホッパ132からステージ131上に供給された直径数[μm]〜数十[μm]の金属粒子からなる金属粉末300が、レーキ133によってステージ131上に薄く敷き詰められることで金属粉末床が形成される。金属粉末床の厚みは、たとえば10[μm]〜100[μm]程度とされる。
次に、電子ビームEBが、ステージ131上に形成された金属粉末床に照射される。電子銃120から出射された電子ビームEBは、金属粉末床のうちの狭い範囲に部分的に照射され、このとき、偏光器124によって電子ビームEBが走査されることにより、金属粉末床のうち、積層造形すべき金属造形物400の形状に対応した位置にのみ電子ビームEBが照射される。
これにより、電子ビームEBが照射された部分に位置する金属粉末が加熱されて溶融し、その後、加熱が解除されることでこれが凝固する。なお、金属粉末床のうち、電子ビームEBが照射されていない範囲に位置する金属粉末は、その粉末の状態が維持されることになる。
次に、図示しないステージ駆動機構により、ステージ131が下方に向けて移動される。その際の移動量は、上述した金属粉末床の厚みと同じとされる。
上述したステップが繰り返し実施されることにより、ステージ131上において金属造形物400が徐々に積層造形されていくことになり、金属造形物400の積層造形が完了した時点で、上述したステップの繰り返しの実施が停止される。
なお、上述した電子ビームEBの照射ステップにおいては、電子ビームEBが照射されることによって金属粒子が溶融して凝固する過程において、既にその下層において形成されている金属造形物400の表面も共に溶融して凝固することになり、これによって各層において形成された金属凝固体が一体となって金属造形物が積層造形されることになる。
図2は、本実施の形態における排気システムの構成を概略的に示した図である。次に、この図2を参照して、本実施の形態における排気システム1Aの構成について説明する。
図2に示すように、排気システム1Aは、必要に応じて互いに排気管等にて接続された複合分子ポンプ10A、補助真空ポンプ20、三方弁30を主として備えている。このうち、複合分子ポンプ10Aは、ターボ分子ポンプ10aおよびねじ溝真空ポンプ10bを含む複合ポンプとして構成されており、補助真空ポンプ20は、たとえば油回転真空ポンプにて構成されている。
複合分子ポンプ10Aは、排気システム1Aに設けられた排気路の上流側の位置に設置されており、補助真空ポンプ20は、排気システム1Aに設けられた排気路の下流側の位置に設置されている。三方弁30は、複合分子ポンプ10Aと補助真空ポンプ20とを接続する部分の排気路の所定位置に設置されている。
複合分子ポンプ10Aに含まれるターボ分子ポンプ10aは、複合分子ポンプ10A内に形成される排気路の上流側の部分を構成しており、複合分子ポンプ10Aに含まれるねじ溝真空ポンプ10bは、複合分子ポンプ10A内に形成される排気路の下流側の部分を構成している。
ここで、図2に示すように、ターボ分子ポンプ10aは、第1吸気口IL1および第1排気口OL1を有しており、ねじ溝真空ポンプ10bは、第2吸気口IL2および第2排気口OL2を有している。一方、補助真空ポンプ20は、第3吸気口IL3および第3排気口OL3を有しており、三方弁30は、第1ポートP1、第2ポートP2および第3ポートP3を有している。
ターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1は、複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPを構成しており、上述した調整弁202を介して第2チャンバ部112に接続されている。ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1は、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2に接続されている。
ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2は、上述したようにターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1に接続されている。ねじ溝真空ポンプ10bの第2排気口OL2は、複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1を構成しており、三方弁30の第1ポートP1に接続されている。
複合分子ポンプ10Aのうち、ターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1からターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1およびねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2を経由してねじ溝真空ポンプ10bの第2排気口OL2に至る部分の排気路の途中位置には、中間排気口OL5が設けられている。
中間排気口OL5は、複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2を構成しており、三方弁30の第2ポートP2に接続されている。本実施の形態においては、中間排気口OL5は、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1とねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2とを接続する部分の排気路に設けられている。
補助真空ポンプ20の第3吸気口IL3は、三方弁30の第3ポートP3に接続されている。補助真空ポンプ20の第3排気口OL3は、大気開放されている。
ここで、本実施の形態における排気システム1Aにおいては、三方弁30が、第1ポートP1と第3ポートP3とを接続する第1排気状態と、第2ポートP2と第3ポートP3とを接続する第2排気状態とに選択的にその切り替えが可能に構成されている。
このように構成することにより、上記第1排気状態において、軽ガスおよび非軽ガスが同時に複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されるとともに、上記第2排気状態において、主として非軽ガスが複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになるが、その詳細については後述することとする。
図3は、図2に示す複合分子ポンプの模式断面図である。次に、この図3を参照して、本実施の形態における排気システム1Aに具備された複合分子ポンプ10Aの構成について説明する。なお、上述したように、複合分子ポンプ10Aは、ターボ分子ポンプ10aおよびねじ溝真空ポンプ10bを含む複合ポンプとして構成されたものであり、具体的には、ターボ分子ポンプ10aのロータとねじ溝真空ポンプ10bのロータとが一体化されたものである。
図3に示すように、複合分子ポンプ10Aは、ベース11と、ステータ12と、ケーシング13と、ロータ14と、ロータ駆動機構15とを主として有している。複合分子ポンプ10Aの外殻は、このうちのベース11、ステータ12およびケーシング13によって構成されており、これらベース11、ステータ12およびケーシングによって構成される外殻の内側には、残るロータ14およびロータ駆動機構15が収容されている。
ベース11は、ステータ12およびロータ駆動機構15を支持するためのものであり、略円盤状の形状を有する金属製の部材にて構成されている。ベース11の所定位置には、複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1を構成する第1排気管18が取付けられている。
ロータ駆動機構15は、ロータ14を高速で回転させるためのものであり、ベース11の略中央部上に設置されている。ロータ駆動機構15は、モータと磁気軸受とを含んでおり、これらモータおよび磁気軸受が収容されたハウジング15aと、出力軸として回転シャフト15bとをさらに含んでいる。
回転シャフト15bは、その下端側の部分がハウジング15aの内部に位置しており、その上端側の部分は、当該ハウジング15aの外部に露出している。回転シャフト15bの露出した部分には、ロータ14が固定されている。
ハウジング15aの内部に収容されたモータは、ロータ14が固定された回転シャフト15bを回転駆動するものであり、ハウジング15aの内部に収容された磁気軸受は、回転シャフト15bを回転可能に支承するものである。これらモータおよび磁気軸受が駆動することにより、回転シャフト15bが高速で回転し、これによってロータ14が複合分子ポンプ10Aの内部において高速で回転することになる。
ロータ14は、金属製の部材にて構成されており、ロータ駆動機構15の回転シャフト15bに固定された略円柱状の上部側ロータ部14aと、略円筒状の下部側ロータ部14bとを有している。上部側ロータ部14aの外周部には、軸方向に沿って間隔をあけて複数の動翼16が設けられており、当該複数の動翼16は、それぞれ径方向外側に向かって突出して位置している。一方、下部側ロータ部14bは、上述したロータ駆動機構15のハウジング15aを取り囲むように上部側ロータ部14aの下端から下方に向けて延設されている。
ステータ12は、略円筒状の形状を有する金属製の部材にて構成されており、ベース11の周縁部上に設置されている。ステータ12は、ロータ14の下部側ロータ部14bを取り囲むように、下部側ロータ部14bの外周面に対向して位置している。ステータ12の所定位置には、複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2を構成する第2排気管19が取付けられている。
ステータ12の内周面には、雌ねじ形状のねじ溝12aが設けられている。当該ねじ溝12aは、下部側ロータ部14bの外周面に所定の距離をもって位置している。
これにより、ステータ12およびこれに対向する部分の下部側ロータ部14bによってねじ溝真空ポンプ10bが構成されることになる。このねじ溝真空ポンプ10bは、複合分子ポンプ10Aの作動時においてロータ14が高速で回転することにより、排気機能を発揮する。
ケーシング13は、略円筒状の形状を有する金属製の部材にて構成されており、ステータ12上に設置されている。ケーシング13は、ロータ14の上部側ロータ部14aを取り囲むように位置している。ケーシング13の上部に設けられた開口部は、複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPを構成している。
ケーシング13の内周面上には、複数のスペーサ兼支持部材13aが設けられており、当該複数のスペーサ兼支持部材13aによって複数の静翼17が支持されている。複数の静翼17は、軸方向に沿って間隔をあけて設けられており、それぞれ径方向内側に向かって突出して位置している。
上述した複数の動翼16および複数の静翼17は、それぞれが異なる方向に向けて傾斜するタービン翼を有している。また、上述した複数の動翼16および複数の静翼17は、これらが軸方向に沿って互い違いに位置することとなるように配設されている。
これにより、複数の動翼16および複数の静翼17によってターボ分子ポンプ10aが構成されることになる。このターボ分子ポンプ10aは、複合分子ポンプ10Aの作動時においてロータ14が高速に回転することにより、排気機能を発揮する。
上述した構成の複合分子ポンプ10Aにおいては、複数の動翼16および複数の静翼17のうちの最上段に配置された翼の上面位置においてターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1が構成されることになり、複数の動翼16および複数の静翼17のうちの最下段に配置された翼の下面位置においてターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1が構成されることになる。
また、上述した構成の複合分子ポンプ10Aにおいては、ステータ12とロータ14の下部側ロータ部14bとの間に設けられた隙間の上端位置においてねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2が構成されることになり、ステータ12とロータ14の下部側ロータ部14bとの間に設けられた隙間の下端位置においてねじ溝真空ポンプ10bの第2排気口OL2が構成されることになる。
さらに、上述した構成の複合分子ポンプ10Aにおいては、ステータ12に設けられた通気路の上端位置において中間排気口OL5が構成されることになる。
ここで、ターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1は、ケーシング13の内部の空間を介して、ケーシング13の上部に設けられた複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPに連通している。一方、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1は、ケーシング13の内部の空間を介して、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2に連通しているとともに、ケーシング13の内部の空間を介して、中間排気口OL5に連通し、さらにステータ12に設けられた通気路を介して、ステータ12に接続された第2排気管19によって構成された複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2に連通している。
また、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2は、ケーシング13の内部の空間を介して、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1に連通しているとともに、ケーシング13の内部の空間を介して、中間排気口OL5に連通し、さらにステータ12に設けられた通気路を介して、ステータ12に接続された第2排気管19によって構成された複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2に連通している。一方、ねじ溝真空ポンプ10bの第2排気口OL2は、ステータ12の内部の空間およびベース11に設けられた通気路を介して、ベース11に接続された第1排気管18によって構成された複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1に連通している。
これにより、上述したように、ターボ分子ポンプ10aが、複合分子ポンプ10A内に形成される排気路の上流側の部分を構成することになり、ねじ溝真空ポンプ10bが、複合分子ポンプ10A内に形成される排気路の下流側の部分を構成することになる。
換言すれば、複合分子ポンプ10Aにおいては、吸気ポートIPが、ターボ分子ポンプ10aおよびねじ溝真空ポンプ10bを介して第1排気ポートOP1に接続されている一方で、当該吸気ポートIPは、ターボ分子ポンプ10aのみを介して第2排気ポートOP2にも接続されている。
なお、ベース11とステータ12との間、ステータ12とケーシング13との間、ベース11と第1排気管18との間、ステータ12と第2排気管19との間等には、それぞれOリング等のシール部材が介在されている。これにより、吸気ポートIPと第1排気ポートOP1および第2排気ポートOP2との間に位置する部分の排気路の気密性が確保されることになり、当該排気路からの漏気の発生が防止できる。
図4および図5は、それぞれ本実施の形態における排気システムにおける上述した第1排気状態および第2排気状態を示した図である。次に、これら図4および図5を参照して、上述した第1排気状態および第2排気状態について詳説する。
図4に示すように、第1排気状態においては、三方弁30が切り替えられることにより、当該三方弁30の第1ポートP1および第3ポートP3が接続された状態となる。当該第1排気状態においては、複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1と補助真空ポンプ20の第3吸気口IL3とが三方弁30を介して接続された状態となる。
これにより、排気システム1Aにおいては、ターボ分子ポンプ10a、ねじ溝真空ポンプ10bおよび補助真空ポンプ20が上流側からこの順で接続された状態となり、これによって図中に示す第1排気経路EP1が形成されることになる。より詳細には、第1排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2吸気口IL2、第1排気ポートOP1として構成された第2排気口OL2および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。
図5に示すように、第2排気状態においては、三方弁30が切り替えられることにより、当該三方弁30の第2ポートP2および第3ポートP3が接続された状態となる。当該第2排気状態においては、複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2と補助真空ポンプ20の第3吸気口IL3とが三方弁30を介して接続された状態となる。
これにより、排気システム1Aにおいては、ターボ分子ポンプ10aおよび補助真空ポンプ20が上流側からこの順で接続された状態となり、これによって図中に示す第2排気経路EP2が形成されることになる。より詳細には、第2排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2排気ポートOP2として構成された中間排気口OL5および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。すなわち、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスは、上記第1排気状態とは異なり、第2吸気口IL2および第1排気ポートOP1として構成された第2排気口OL2を経ることはない。
ここで、一般に、ターボ分子ポンプは、吸気口側での排気速度が排気口側での補助排気速度に相当程度に依存し、排気口側での補助排気速度が大きい場合に、吸気口側での排気速度も大きくなる傾向にあり、排気口側での補助排気速度が小さい場合に、吸気口側での排気速度も小さくなる傾向にある。また、その依存の程度は、排気するガスの種類によっても大きく異なり、軽ガスに対する依存の程度は、非軽ガスに対する依存の程度よりも大きい。なお、ここで言う補助排気速度は、ターボ分子ポンプの排気口とその下流側に配置された真空ポンプとの間の排気路のコンダクタンスが十分に大きい場合には、当該ターボ分子ポンプの下流側に配置された真空ポンプの吸気口側での排気速度と基本的に等価となる。すなわち、上記補助排気速度は、上述した第1排気状態においては、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2側での排気速度と等価であり、上述した第2排気状態においては、補助真空ポンプ20の第3吸気口IL3側での排気速度と等価である。
また、通常、油回転真空ポンプからなる補助真空ポンプ20の第3吸気口IL3側での排気速度は、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2側での排気速度に比べて、桁違いに小さい。
そのため、三方弁30が切り替えられることにより、第2排気状態におけるターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1での補助排気速度は、第1排気状態におけるターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1での補助排気速度よりも桁違いに小さくなる。その結果、第2排気状態におけるターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1での排気速度は、非軽ガスに対しては第1排気状態における排気速度と遜色がないものとなるのに対し、軽ガスに対しては第1排気状態における排気速度と比較して著しく小さくなる。
したがって、第1排気状態においては、軽ガスおよび非軽ガスが同時に複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPから吸気されて上記第1排気経路EP1を経由して補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになり、第2排気状態においては、主として非軽ガスが複合分子ポンプ10Aの吸気ポートIPから吸気されて上記第2排気経路EP2を経由して補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになる。すなわち、第2排気状態においては、軽ガスとしてのヘリウムガスの排気量が第1排気状態に比べて著しく小さくなる反面、非軽ガスの排気量は第1排気状態とほぼ同等に維持される。
これにより、上述した図1に示す電子ビーム積層造形装置100において、積層造形の前段階において、ヘリウムガス供給源200による第2チャンバ部112内へのヘリウムガスの導入を停止しつつ、排気システム1Aを用いて上記第1排気状態にて第2チャンバ部112内の排気を行なうことにより、短時間のうちに高真空状態を作り出すことができ、その後、積層造形時において、ヘリウムガス供給源200による第2チャンバ部112内へのヘリウムガスの導入を行ないつつ、排気システム1Aを用いて上記第2排気状態にて第2チャンバ部112内の排気を行なうことにより、ヘリウムガスの分圧が相対的に高く保たれつつも非軽ガスの分圧が相対的に低く保たれた真空状態が維持できることになる。
ここで、第2排気状態においては、排気システム1Aによって排気される軽ガスとしてのヘリウムガスの排気量が僅かであるため、ヘリウムガス供給源200によって第2チャンバ部112内へ導入すべきヘリウムガスの量も大幅に少なくて済む。そのため、ヘリウムガスの消費量を大幅に抑制しつつも、第2チャンバ部112内のヘリウムガスの分圧を相対的に高く保つことができる。
したがって、上述した本実施の形態における排気システム1Aを適用することにより、軽ガスおよび非軽ガスを同時に排気することができる一方で、非軽ガスを選択的に主として排気することもできる排気システムの実現が可能になり、また、当該排気システム1Aを備えた電子ビーム積層造形装置100とすることにより、造形速度や造形精度に優れつつも補助ガスとしてのヘリウムガスの消費量を抑制することができる電子ビーム積層造形装置の実現が可能になる。
ここで、上述したターボ分子ポンプ10aを構成する動翼16および静翼17の合計段数は、10段以上12段以下であることが好ましい。本実施の形態においては、これを6段の動翼16と5段の静翼17との合計11段で構成している。このように構成することにより、第1吸気口IL1側でのヘリウムガスに対する排気速度が、排気口側での補助排気速度に依存する程度を増大させることができ(すなわち、第2排気状態におけるヘリウムガスの排気量をさらに抑制することができ)、非軽ガスの選択排気を促進できることになる。
なお、通常のターボ分子ポンプの動翼および静翼の合計段数は、15段以上とされるため、上述のとおりこれらの合計段数を10段以上12段以下とした場合には、非軽ガスの選択排気が促進できるばかりでなく、ターボ分子ポンプ10aを大幅に小型化することもできる。
また、上述したねじ溝真空ポンプ10bを構成するステータ12に設けられるねじ溝12aの深さの勾配は、0より大きく0.04以下とされることが好ましい。このように構成することにより、上記第1排気状態における第1排気口OL1でのヘリウムガスに対する補助排気速度をより大きくすることができるため、第1排気状態におけるヘリウムガスの排気量を増大させることができる。
以下においては、本実施の形態における排気システム1Aを適用することにより、軽ガスおよび非軽ガスを同時に排気することができる一方で、非軽ガスを選択的に主として排気することも可能になるメカニズムについて、より詳細に説明する。
一般に、高真空状態において、チャンバの内壁面等から脱離するガス分子は、水蒸気(H2O)が最も多い。そのため、ここでは、放出ガスが水蒸気のみであると仮定する。
補助ガスをヘリウムガスとし、放出ガス(不純物)を水蒸気と仮定した場合には、チャンバ内の不純物比αは、チャンバ内のヘリウムガスの分圧をPHeとし、チャンバ内の水蒸気の分圧をPH2Oとすると、下記式(1)で定義される。
ここで、チャンバ内へのヘリウムガスの供給流量をQHeとし、チャンバの内壁面等からの水蒸気の放出量をQH2Oとし、ターボ分子ポンプの吸気口でのヘリウムガスの排気速度をSHeとし、ターボ分子ポンプの吸気口での水蒸気の排気速度をSH2Oとすると、上記式(1)は、下記式(2)のとおりに書き換えることができる。
したがって、上記式(2)より、不純物比αを小さくするためには、ターボ分子ポンプの吸気口での水蒸気の排気速度SH2Oに対して、ターボ分子ポンプの吸気口でのヘリウムガスの排気速度SHeを小さくすればよいことになる。
一般に、自由分子領域においては、ターボ分子ポンプのある気体に対する吸気口での排気速度Sは、その気体に対する最大排気速度Smaxと、その気体に対する最大圧縮比Kmaxと、ターボ分子ポンプの排気口でのその気体に対する排気速度(補助排気速度)Sforeとを用いて、下記式(3)で表わされる。
ここで、上記気体が非軽ガスである場合には、Kmax>>1の条件が成立するため、上記式(3)は、下記式(4−1)に示すε1を用いて下記式(4−2)に書き換えることができる。
一方、上記気体が軽ガスであり、かつ、Sforeが十分に大きな場合には、Kmax>1かつSmax>Sforeの条件が成立するため、上記式(3)は、下記式(5−1)に示すε2を用いて下記式(5−2)に書き換えることができる。
他方、上記気体が軽ガスであり、かつ、Sforeが十分に小さい場合には、Kmax>1かつSmax>>Sforeの条件が成立するため、上記式(3)は、下記式(6−1)に示すε3を用いて下記式(6−2)に書き換えることができる。
なお、SmaxおよびKmaxは、ガス種ごとにターボ分子ポンプの設計で決まる値であり、Sforeは、上述したとおりターボ分子ポンプの下流側に配置される真空ポンプの能力およびターボ分子ポンプと当該真空ポンプとを接続する排気路のコンダクタンスによって決まる。また、原理的に、軽ガス(ここではヘリウムガス)のKmaxは、非軽ガス(ここでは水蒸気)のKmaxよりも桁違いに小さい。
以上を勘案すれば、以下の条件を満たすように排気システムを構築することにより、ヘリウムガスおよび水蒸気を同時に排気することができる一方で、水蒸気のみを選択的に主として排気することもできる排気システムが実現できることになる。
第1の条件は、ヘリウムガスおよび水蒸気を同時により多く排気するために、上述したSHe,SH2Oをいずれも大きくすることである。SH2Oを大きくするためには、上記式(4−2)に従ってSをSmaxに近づければよく、結果としてε1を十分に小さくすればよい。SHeを大きくするためには、上記式(5−2)に従ってSをSmaxに近づければよく、結果としてε2を十分に小さくすればよい。
第2の条件は、水蒸気のみを選択的に主として排気するために、上述したSHeを小さくしつつSH2Oを大きくすることである。SH2Oを大きくするためには、上述したように上記式(4−2)に従ってSをSmaxに近づければよく、結果としてε1を十分に小さくすればよい。SHeを小さくするためには、上記式(6−2)に従ってSをSfore×Kmaxに近づければよく、結果としてε3を十分に小さくすればよい。
このうち、ε1を小さくすることは、ターボ分子ポンプの設計如何によって実現できるものであり、比較的容易にその設計が可能である。一方、ε2およびε3は、ターボ分子ポンプの下流側に設置される真空ポンプの能力およびターボ分子ポンプと当該真空ポンプとを接続する排気路のコンダクタンスに依存し、また単一の真空ポンプにてこれらε2およびε3をいずれも小さくすることはできないため、ターボ分子ポンプの下流側に分岐路を形成し、そのそれぞれに異なる能力の真空ポンプを配置することで実現できる。なお、ε2を小さくするためには、ヘリウムガスに対する排気速度が大きい真空ポンプを用いればよく、ε3を小さくするためには、ヘリウムガスに対する排気速度が小さい真空ポンプを用いればよい。
以上により、上述した本実施の形態における排気システム1Aのように、第1排気状態として、ターボ分子ポンプ10aの下流側にヘリウムガスに対する排気速度が大きいねじ溝真空ポンプ10bが接続され、第2排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの下流側にヘリウムガスに対する排気速度が小さい油回転真空ポンプからなる補助真空ポンプ20が接続されるように構成するとともに、これら第1排気状態および第2排気状態を三方弁30によって選択的に切り替え可能に構成することにより、軽ガスおよび非軽ガスを同時に排気することができる一方で、非軽ガスを選択的に主として排気することもできる排気システムの実現が可能になる。
図6は、実施例A,Bに係るターボ分子ポンプの排気特性を示したグラフである。以下、この図6を参照して、本実施の形態における排気システム1Aに具備されるべきターボ分子ポンプ10aの排気特性について説明する。
上述したように、ターボ分子ポンプにおいては、吸気口側での排気速度が排気口側での補助排気速度に相当程度に依存する。図6に示すグラフは、この依存の程度を示したグラフであり、実施例A,Bに係るターボ分子ポンプの各々について、ヘリウムガスおよび窒素ガスに対する吸気口側での排気速度と、排気口側での補助排気速度との関係を示したものである。なお、当該グラフでは、縦軸をヘリウムガスおよび窒素ガスに対する吸気口側での排気速度S[L/s]とし、横軸を排気口側での補助排気速度Sfore[L/s]としている。
実施例Aは、吸気口での排気速度が3000[L/s]程度の標準的なターボ分子ポンプであり、静翼段および動翼段の合計段数が17段のものである。一方、実施例Bは、当該標準的なターボ分子ポンプにおいて、静翼段および動翼段の合計段数を11段に減らしたものである。
図6を参照して、実施例A,Bに係るターボ分子ポンプのいずれにおいても、非軽ガスである窒素ガスに対しては、排気口側での補助排気速度の変化に対する吸気口側での補助排気速度に大きな変化はなく、おおよそその吸気口側での排気速度が3100[L/s]に保たれていることが理解できる。
一方で、実施例A,Bに係るターボ分子ポンプのいずれにおいても、軽ガスであるヘリウムガスに対しては、排気口側での補助排気速度の変化に対する吸気口側での補助排気速度に大きな変化があり、排気口側での補助排気速度が減少するにつれて吸気口側での排気速度も減少する傾向があることが理解できる。
このように、実施例A,Bに係るターボ分子ポンプのいずれを用いた場合にも、排気口側での補助排気速度を変化させることにより、非軽ガスである窒素ガスに対する吸気口側での排気速度を同等程度に維持しつつ、軽ガスであるヘリウムガスに対する吸気口側での排気速度を大きくしたり小さくしたりすることができる。したがって、このような排気特性を有する限りにおいては、どのようなターボ分子ポンプであっても、本実施の形態における排気システム1Aに具備させることができる。
ここで、実施例Aに係るターボ分子ポンプにおいては、排気口側での補助排気速度が約60〜400[L/s]の場合に、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が約2800〜3000程度に維持されているのに対し、排気口側での補助排気速度が約60[L/s]を下回った場合に、急激に吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が減少し、排気口側での補助排気速度が約10[L/s]の場合に、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が約1800[L/s]程度にまで減少している。
一方、実施例Bに係るターボ分子ポンプにおいては、排気口側での補助排気速度が400[L/s]よりも小さい範囲において、排気口側での補助排気速度が減少するにつれてより滑らかに吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が減少し、排気口側での補助排気速度が約10[L/s]の場合に、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が約300[L/s]程度にまで減少している。
そのため、実施例Aに係るターボ分子ポンプにおいては、排気口側での補助排気速度の変化に応じて、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が敏感に変化してしまうことになり、安定的な制御が難しくなるおそれがあり、また、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度自体も、極端には小さくできないおそれがある。
これに対し、実施例Bに係るターボ分子ポンプにおいては、排気口側での補助排気速度の変化に応じて、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度が徐々に変化することになり、より安定的な制御が行なえるばかりでなく、吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度自体も、これを十分に小さくできる。
したがって、上述したように、本実施の形態における排気システム1Aに具備させるターボ分子ポンプ10aとしては、動翼16および静翼17の合計段数が10段以上12段以下であるものがより好適であると言える。
図7は、実施例a,b,cに係るねじ溝真空ポンプのねじ溝の形状を示した模式断面図であり、図8は、実施例a,b,c,dに係るねじ溝真空ポンプのねじ溝の深さの勾配を示した表である。図9は、実施例a,b,cに係るねじ溝真空ポンプの排気特性を示したグラフであり、図10は、実施例a,b,cに係るねじ溝真空ポンプと実施例Bに係るターボ分子ポンプとを組み合わせた場合の排気特性を纏めた表である。また、図11は、実施例c,dに係るねじ溝真空ポンプの排気特性を示したグラフであり、図12は、実施例c,dに係るねじ溝真空ポンプと実施例Bに係るターボ分子ポンプとを組み合わせた場合の排気特性を纏めた表である。以下、これら図7ないし図12を参照して、本実施の形態における排気システム1Aに具備されるべきねじ溝真空ポンプ10bの排気特性について説明する。
上述したように、本実施の形態における排気システム1Aにおいては、第1排気状態において、非軽ガスのみならず軽ガスであるヘリウムガスについてもその排気量を大きく確保することが求められる。そのため、ねじ溝真空ポンプ10bにおいては、ヘリウムガスに対する排気速度を可能な限り大きくすることが必要になる。
ねじ溝真空ポンプの排気特性は、ねじ溝の深さの勾配によって大きくその影響を受ける。ここでは、ねじ溝の深さの勾配や軸長が異なる実施例a,b,c,dの合計で4種類のモデルを想定して、それぞれにおけるヘリウムガスに対する排気速度を検討する。
図7および図8に示すように、実施例a,b,cに係るねじ溝真空ポンプにおいては、ねじ溝12aが形成される部分のステータ12の軸長をいずれも128.0[mm]とし、ねじ溝12aの上流側端部における深さをいずれも11.0[mm]とし、ねじ溝12aの下流側端部における深さをそれぞれ1.5[mm]、3.0[mm]、6.0[mm]とした。実施例a,b,cに係るねじ溝真空ポンプのねじ溝12aの深さの勾配は、それぞれ0.074[−]、0.063[−]、0.039[−]である。
一方、図8に示すように、実施例dに係るねじ溝真空ポンプにおいては、ねじ溝12aが形成される部分のステータ12の軸長を168.0[mm]とし、ねじ溝12aの上流側端部における深さを12.56[mm]とし、ねじ溝12aの下流側端部における深さをそれぞれ6.0[mm]とした。実施例dに係るねじ溝真空ポンプのねじ溝12aの深さの勾配は、0.039[−]である。
なお、実施例dに係るねじ溝真空ポンプは、実施例cに係るねじ溝真空ポンプにおいて、ねじ溝12aの深さの勾配を維持しつつ、ねじ溝12aの上流側端部を40.0[mm]だけ上流側に延長したものである。当該構成は、標準的な複合分子ポンプにおいて、ターボ分子ポンプの動翼および静翼の合計段数を減少させた場合に得られるスペースに、ねじ溝真空ポンプを延設させることを想定したものである。
図9に示すグラフは、ねじ溝の深さの勾配を変化させた場合に、軽ガスとしてのヘリウムガスおよび非軽ガスとしての窒素ガスに対するねじ溝真空ポンプの排気特性がどのように変化するかを示したものである。なお、当該グラフは、ヘリウムガスまたは窒素ガスがねじ溝内を一定量(10[sccm](20[℃]換算で18.1[Pa・L/s])流れている場合(第2チャンバ部112において分圧が6.0×10-3[Pa]程度の場合)の、ねじ溝の上流側端部における圧力と、ねじ溝の下流側端部における圧力(いわゆる背圧)との関係を示したものである。当該グラフでは、縦軸をねじ溝の上流側端部における圧力Ps[Pa]とし、横軸をねじ溝の下流側端部における圧力Pb[Pa]としている。
実施例aに係るねじ溝真空ポンプにおいては、他のねじ溝真空ポンプに比べてねじ溝の深さの勾配が大きく、耐背圧性能が向上する反面、Pbが低い場合のヘリウムガスに対する排気速度が小さい(すなわちPsが高い)ことが分かる。
一方、実施例bに係るねじ溝真空ポンプにおいては、実施例aに係るねじ溝真空ポンプに比べてねじ溝の深さの勾配が小さく、耐背圧性能が多少劣るものの、Pbが低い場合のヘリウムガスに対する排気速度が大きい(すなわちPsが低い)ことが分かる。
また、実施例cに係るねじ溝真空ポンプにおいては、実施例bに係るねじ溝真空ポンプに比べてねじ溝の深さの勾配がさらに小さく、耐背圧性能がより劣ったものとなるものの、Pbが低い場合のヘリウムガスに対する排気速度が非常に大きい(すなわちPsが非常に低い)ことが分かる。
ここで、図10は、ねじ溝真空ポンプの上流側に設置されるターボ分子ポンプを上述した実施例Bのものとし、ねじ溝真空ポンプの下流側に設置される補助真空ポンプの排気速度を100[L/s]とし、ヘリウムガスがねじ溝内を10[sccm]流れている場合における実施例a,b,cの排気特性を示したものである。ここで、図9に示すグラフからねじ溝の上流側端部におけるヘリウムガスの圧力Ps[Pa]が読み取れ、これに基づいてターボ分子ポンプの第1排気口での補助排気速度Sfore[L/S]が算出され、さらにこれに基づいて、図6に示すグラフからターボ分子ポンプの第1吸気口でのヘリウムガスに対する排気速度SHe[L/s]が読み取れる。
図10に示すように、実施例a,b,cでは、それぞれターボ分子ポンプの第1吸気口でのヘリウムガスに対する排気速度SHeが、2060[L/s]、2150[L/s]、2230[L/s]となることが分かる。このようにねじ溝真空ポンプのねじ溝の深さの勾配をより小さくすることにより、第1排気状態において、軽ガスであるヘリウムガスの排気量をより大きく確保することが可能になる。
図11に示すグラフは、ねじ溝の軸長を変化させた場合に、軽ガスとしてのヘリウムガスおよび非軽ガスとしての窒素ガスに対するねじ溝真空ポンプの排気特性がどのように変化するかを示したものである。なお、当該グラフは、ヘリウムガスまたは窒素ガスがねじ溝内を一定量(10[sccm])流れている場合(排気過程において分圧が6.0×10-3[Pa]程度の場合)の、ねじ溝の上流側端部における圧力と、ねじ溝の下流側端部における圧力(いわゆる背圧)との関係を示したものである。当該グラフでは、縦軸をねじ溝の上流側端部における圧力Ps[Pa]とし、横軸をねじ溝の下流側端部における圧力Pb[Pa]としている。
実施例dに係るねじ溝真空ポンプにおいては、実施例cに係るねじ溝真空ポンプに比べてねじ溝の軸長が長く、Pbが低い場合のヘリウムガスに対する排気速度がより大きい(すなわちPsが低い)ことが分かる。
ここで、図12は、ねじ溝真空ポンプの上流側に設置されるターボ分子ポンプを上述した実施例Bのものとし、ねじ溝真空ポンプの下流側に設置される補助真空ポンプの排気速度を100[L/s]とし、ヘリウムガスがねじ溝内を10[sccm]流れている場合における実施例c,dの排気特性を示したものである。ここで、図11に示すグラフからねじ溝の上流側端部におけるヘリウムガスの圧力Ps[Pa]が読み取れ、これに基づいてターボ分子ポンプの第1排気口での補助排気速度Sfore[L/S]が算出され、さらにこれに基づいて、図6に示すグラフからターボ分子ポンプの第1吸気口でのヘリウムガスに対する排気速度SHe[L/s]が読み取れる。
図12に示すように、実施例c,dでは、それぞれターボ分子ポンプの第1吸気口でのヘリウムガスに対する排気速度SHeが、2230[L/s]、2300[L/s]となることが分かる。このようにねじ溝真空ポンプのねじ溝の軸長をより長くすることにより、第1排気状態において、軽ガスであるヘリウムガスの排気量をより大きく確保することができることになる。
したがって、上述したように、本実施の形態における排気システム1Aに具備させるねじ溝真空ポンプ10bとしては、ねじ溝の深さの勾配が0より大きく0.04以下とされたものがより好適であると言え、また、ねじ溝の軸長がより長いものがより好適であると言える。
一方で、実施例a,b,c,dに係るねじ溝真空ポンプのいずれを用いた場合にも、相当程度にヘリウムガスに対する排気速度を大きくすることはできるため、これをターボ分子ポンプの下流側に接続することにより、低真空状態を作り出す補助真空ポンプをターボ分子ポンプの下流側に接続する場合よりも、ターボ分子ポンプの排気口側での補助排気速度を高くすることができる。そのため、このような排気特性を有する限りにおいては、どのようなねじ溝真空ポンプであっても、本実施の形態における排気システム1Aに具備させることができる。
(第1変形例)
図13は、第1変形例に係る排気システムの構成を概略的に示した図である。以下、この図13を参照して、本実施の形態に基づいた第1変形例に係る排気システム1Bについて説明する。
図13に示す排気システム1Bは、上述した排気システム1Aに代えて、本実施の形態における電子ビーム積層造形装置100に具備されるものである。排気システム1Bは、上述した排気システム1Aと比較した場合に、オリフィス40をさらに有している点においてのみ、その構成が相違している。
図13に示すように、オリフィス40は、複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2と、三方弁30の第2ポートP2とを接続する部分の排気路に設けられている。当該オリフィス40は、第2排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1でのヘリウムガスに対する補助排気速度を適正化するためのものである。
当該オリフィス40が設けられることにより、第2排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2排気ポートOP2として構成された中間排気口OL5、オリフィス40および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。
以下、オリフィス40を設けることにより、第2排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1でのヘリウムガスに対する補助排気速度が適正化する理由について説明する。
たとえば、ターボ分子ポンプ10aとして上述した実施例Bの如くのターボ分子ポンプを用い、補助真空ポンプ20としてその排気速度が100[L/s]のものを用いた場合を想定する。その場合、仮にオリフィス40を設けなければ、図6を参照して、ターボ分子ポンプの吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度は、約1750[L/s]となり、第2排気状態におけるヘリウムガスの排気量が比較的大きくなってしまう。
この場合において、たとえばターボ分子ポンプの吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度を687[L/s]に設定するためには、オリフィス40として、ヘリウムガスに対するコンダクタンスCHeが29.4[L/s]のものを用いればよい。これにより、ターボ分子ポンプの排気口側でのヘリウムガスに対する補助排気速度が22.7[L/s]にまで下がるため、ターボ分子ポンプの吸気口側でのヘリウムガスに対する排気速度を687[L/s]に設定することが可能になる。
したがって、上述のとおりオリフィス40を設けることにより、第2排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1でのヘリウムガスに対する補助排気速度を適正化することができる。
なお、この場合、このオリフィス40の窒素ガスに対するコンダクタンスCN2は、11.1[L/s]であるため、ターボ分子ポンプの排気口側での窒素ガスに対する補助排気速度が10.0[L/s]となり、ターボ分子ポンプの吸気口側での窒素ガスに対する排気速度は、3058[L/s]となる。したがって、第2排気状態において、ヘリウムガスの排気を抑えて窒素ガスを選択的に主として排気することが可能になる。
なお、オリフィス40を設けることに代えて、複合分子ポンプ10Aの第2排気ポートOP2と三方弁30の第2ポートP2とを接続する部分の排気路を、当該オリフィス40と同等のコンダクタンスを有する細い配管にて構成することとしてもよい。
(第2変形例)
図14は、第2変形例に係る排気システムの構成を概略的に示した図である。以下、この図14を参照して、本実施の形態に基づいた第2変形例に係る排気システム1Cについて説明する。
図14に示す排気システム1Cは、上述した排気システム1Aに代えて、本実施の形態における電子ビーム積層造形装置100に具備されるものである。排気システム1Cは、上述した排気システム1Aと比較した場合に、ブースタ真空ポンプ50をさらに有している点においてのみ、その構成が相違している。
図14に示すように、ブースタ真空ポンプ50は、複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1と、三方弁30の第1ポートP1とを接続する部分の排気路に設けられている。より詳細には、ブースタ真空ポンプ50は、第4吸気口IL4および第4排気口OL4を有しており、第4吸気口IL4が、複合分子ポンプ10Aの第1排気ポートOP1として構成されたねじ溝真空ポンプ10bの第2排気口OL2に接続されており、第4排気口OL4が、三方弁の第1ポートP1に接続されている。
当該ブースタ真空ポンプ50は、第1排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1での補助排気速度を適正化するためのものである。なお、ブースタ真空ポンプとしては、ルーツ型真空ポンプ等が適切である。
当該ブースタ真空ポンプ50が設けられることにより、第1排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2吸気口IL2、第1排気ポートOP1として構成された第2排気口OL2、第4吸気口IL4、第4排気口OL4および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。
以下、ブースタ真空ポンプ50を設けることにより、第1排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1での補助排気速度が適正化する理由について説明する。
たとえば、ターボ分子ポンプ10aとして上述した実施例Bの如くのターボ分子ポンプを用い、ねじ溝真空ポンプ10bとして上述した実施例cの如くのねじ溝真空ポンプを用い、補助真空ポンプとしてその排気速度が22.7[L/s]のものを用いた場合を想定する。その場合、仮にブースタ真空ポンプ50を設けなければ、第1排気状態におけるねじ溝真空ポンプの排気口側でのヘリウムガスに対する補助排気速度は、22.7[L/s]となり、ヘリウムガスの流量がたとえば10[sccm](20[℃]換算で18.1[Pa・L/s])のときのねじ溝真空ポンプの排気口側の圧力は、0.80[Pa]となるため、ねじ溝真空ポンプの吸気口側での圧力は、図11から0.12[Pa]となることが分かり、ターボ分子ポンプの排気口でのヘリウムに対する補助排気速度は、151[L/s]となる。したがって、図6に基づけば、この時のターボ分子ポンプの吸気口での排気速度は、2000[L/s]となり、第1排気状態における排気量が図12の場合に比べて小さくなってしまう。
そのため、この場合において、たとえばねじ溝真空ポンプの排気口側での補助排気速度を100[L/s]に設定するためには、排気速度が100[L/s]のブースタ真空ポンプ50を設置すればよいことになる。
したがって、上述のとおりブースタ真空ポンプ50を設けることにより、第1排気状態において、ターボ分子ポンプ10aの第1排気口OL1での補助排気速度を適正化することができる。
なお、第2排気状態においては、ブースタ真空ポンプ50を停止させてもよいし、そのまま稼働させてもよい。
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2における排気システムの構成を概略的に示した図であり、図16は、図15に示す複合分子ポンプの模式断面図である。以下、これら図15および図16を参照して、本実施の形態における排気システム1Dおよびこれに具備された複合分子ポンプ10Bの構成について説明する。
図15に示す排気システム1Dは、上述した実施の形態1における排気システム1Aに代えて、上述した実施の形態における電子ビーム積層造形装置100に具備されるものである。排気システム1Dは、上述した排気システム1Aと比較した場合に、中間排気口OL5が形成された位置が異なる点において、主としてその構成が相違している。
図15に示すように、排気システム1Dにおいては、複合分子ポンプ10Bの第2排気ポートOP2を構成する中間排気口OL5が、ターボ分子ポンプ10aの途中位置に設けられている。より詳細には、ターボ分子ポンプ10aの第1吸気口IL1と第1排気口OL1とを接続する部分の排気路に、中間排気口OL5が設けられている。
具体的には、図16に示すように、複合分子ポンプ10Bは、上述した実施の形態における複合分子ポンプ10Aと同様に、ベース11、ステータ12、ケーシング13、ロータ14およびロータ駆動機構15を主として有しているが、当該複合分子ポンプ10Aとは異なり、ステータ12に第2排気管19が取付けられておらず、代わりにケーシング13に第2排気管19が取付けられている。
これに伴い、ケーシング13の第2排気管19が取付けられた部分には、ケーシング13の内部の空間と第2排気管19とを連通する開口部が設けられている。これにより、ケーシング13に設けられた当該開口部において中間排気口OL5が構成されることになる。なお、この場合、第1吸気口IL1と中間排気口OL5との間に含まれる動翼段および静翼段の合計段数は、10段以上12段以下であることが好ましい。
このように構成された排気システム1Dにおいては、第1排気状態において、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2吸気口IL2、第1排気ポートOP1として構成された第2排気口OL2および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになり、第2排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第2排気ポートOP2として構成された中間排気口OL5および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。
したがって、第1排気状態においては、軽ガスとしてのヘリウムガスおよび当該ヘリウムガスよりも重い非軽ガスが同時に複合分子ポンプ10Bの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになり、第2排気状態においては、主として非軽ガスが複合分子ポンプ10Bの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになる。すなわち、第2排気状態においては、軽ガスとしてのヘリウムガスの排気量が第1排気状態に比べて著しく小さくなる反面、非軽ガスの排気量は第1排気状態とほぼ同等に維持される。
そのため、本実施の形態における排気システム1Dとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果が得られることになり、軽ガスおよび非軽ガスを同時に排気することができる一方で、非軽ガスを選択的に主として排気することもできる排気システムとすることができ、また、当該排気システム1Dを備えた電子ビーム積層造形装置とすることにより、造形速度や造形精度に優れつつも補助ガスとしてのヘリウムガスの消費量を抑制することができる電子ビーム積層造形装置とすることができる。
(実施の形態3)
図17は、実施の形態3における排気システムの構成を概略的に示した図であり、図18は、図17に示す複合分子ポンプの模式断面図である。以下、これら図17および図18を参照して、本実施の形態における排気システム1Eおよびこれに具備された複合分子ポンプ10Cの構成について説明する。
図17に示す排気システム1Eは、上述した実施の形態1における排気システム1Aに代えて、上述した実施の形態における電子ビーム積層造形装置100に具備されるものである。排気システム1Eは、上述した排気システム1Aと比較した場合に、中間排気口OL5が形成された位置が異なる点において、主としてその構成が相違している。
図17に示すように、排気システム1Eにおいては、複合分子ポンプ10Cの第2排気ポートOP2を構成する中間排気口OL5が、ねじ溝真空ポンプ10bの途中位置に設けられている。より詳細には、ねじ溝真空ポンプ10bの第2吸気口IL2と第2排気口OL2とを接続する部分の排気路に、中間排気口OL5が設けられている。
具体的には、図18に示すように、複合分子ポンプ10Cは、上述した実施の形態における複合分子ポンプ10Aと同様に、ベース11、ステータ12、ケーシング13、ロータ14およびロータ駆動機構15を主として有しているが、当該複合分子ポンプ10Aとは異なり、ステータ12が、外側ステータ部12Aと内側ステータ部12Bとに分割されており、このうちの外側ステータ部12Aに第2排気管19が取付けられている。
外側ステータ部12Aは、略円筒状の形状を有する金属製の部材にて構成されており、ベース11の周縁部上に設置されている。内側ステータ部12Bは、略円筒状の形状を有する金属製部材にて構成されており、外側ステータ部12Aの内側に設置されている。内側ステータ部12Bは、外側ステータ部12Aに固定されている。
外側ステータ部12Aは、ロータ14の下部側ロータ部14bを取り囲むように、下部側ロータ部14bの外周面に対向して位置している。ロータ14の下部側ロータ部14bは、内側ステータ部12Bを取り囲むように位置しており、これにより内側ステータ部12Bは、ロータ14の下部側ロータ部14bの内周面に対向している。
外側ステータ部12Aの内周面には、ねじ溝12aの上流側部分を構成する雌ねじ形状の一次側ねじ溝部12a1が設けられており、内側ステータ部12Bの外周面には、ねじ溝12aの下流側部分を構成する雄ねじ形状の二次側ねじ溝部12a2が設けられている。一次側ねじ溝部12a1は、下部側ロータ部14bの外周面に所定の距離をもって位置しており、二次側ねじ溝部12a2は、下部側ロータ部14bの内周面に所定の距離をもって位置している。
内側ステータ部12Bは、下部側ロータ部14bの下端を覆うように位置しており、これにより一次側ねじ溝部12a1と下部側ロータ部14bとの間に形成される排気路と、二次側ねじ溝部12a2と下部側ロータ部14bとの間に形成される排気路とが連通可能に接続されている。
以上により、外側ステータ部12Aおよび内側ステータ部12Bとこれに対向する部分のロータ14とによってねじ溝真空ポンプ10bが構成されることになる。
上述したように、第2排気管19は、外側ステータ部12Aに取付けられており、外側ステータ部12Aの第2排気管19が取付けられた部分には、ねじ溝真空ポンプ10bによって構成される排気路の途中位置と連通するように通気路が設けられている。これにより、外側ステータ部12Aに設けられた当該通気路の内側端部において中間排気口OL5が構成されることになる。
このように構成された排気システム1Eにおいては、第1排気状態において、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2吸気口IL2、第1排気ポートOP1として構成された第2排気口OL2および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになり、第2排気状態においては、吸気ポートIPとして構成された第1吸気口IL1から吸気されたガスが、第1排気口OL1、第2吸気口IL2、第2排気ポートOP2として構成された中間排気口OL5および第3吸気口IL3をこの順で経由して、第3排気口OL3から排気されることになる。
したがって、第1排気状態においては、軽ガスとしてのヘリウムガスおよび当該ヘリウムガスよりも重い非軽ガスが同時に複合分子ポンプ10Cの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになり、第2排気状態においては、主として非軽ガスが複合分子ポンプ10Cの吸気ポートIPから吸気されて補助真空ポンプ20の第3排気口OL3から排気されることになる。すなわち、第2排気状態においては、軽ガスとしてのヘリウムガスの排気量が第1排気状態に比べて著しく小さくなる反面、非軽ガスの排気量は第1排気状態とほぼ同等に維持される。
そのため、本実施の形態における排気システム1Eとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果が得られることになり、軽ガスおよび非軽ガスを同時に排気することができる一方で、非軽ガスを選択的に主として排気することもできる排気システムとすることができ、また、当該排気システム1Eを備えた電子ビーム積層造形装置とすることにより、造形速度や造形精度に優れつつも補助ガスとしてのヘリウムガスの消費量を抑制することができる電子ビーム積層造形装置とすることができる。
上述した実施の形態1ないし3およびその変形例においては、ターボ分子ポンプとネジ溝真空ポンプとが一体化されたいわゆる複合分子ポンプを用いて排気システムを構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこれらが一体化されている必要はなく、これらが別個の真空ポンプとして構成されて接続される構成としてもよい。
また、上述した実施の形態1ないし3およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然にその組み合わせが可能である。
また、上述した実施の形態1ないし3およびその変形例においては、本発明に係る排気システムを電子ビーム積層造形装置に適用した場合を例示して説明を行なったが、電子ビーム積層造形装置以外の装置(たとえばヘリウムリーク検査装置等)に適用することも当然に可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。