以下に、図面を参照して、本発明にかかる画像処理方法、画像処理プログラム、及び画像処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態にかかる画像処理方法の一実施例)
図1は、実施の形態にかかる画像処理方法の一実施例を示す説明図である。図1において、画像処理装置100は、画像から対象が映った領域を抽出するためのコンピュータである。画像は、例えば、河川を撮像し、河川の水面が映った領域を含む画像である。対象は、例えば、河川の水面である。対象は、例えば、河原であってもよい。
ここで、河川の増水や氾濫を監視し、水害対策を行う監視システムがある。この監視システムでは、例えば、河川に水位計を設置し、その水位計の計測値に基づいて河川の増水や氾濫を監視する場合がある。しかしながら、この場合、水位計を設置する作業によって、監視システムの作業員の作業負担の増大化を招いたり、監視システムにかかるコストの増大化を招く可能性がある。
これに対し、画像から、河川の水面に対応する所定の特徴を有する領域を抽出することにより、河川の水面が映った領域を抽出することが考えられる。しかしながら、画像に、河川の水面が映った領域と色彩や輝度が類似する他の領域がある場合に、他の領域も、河川の水面が映った領域として抽出してしまうことがあり、河川の水面が映った領域を精度よく抽出することが難しい。例えば、画像に、河川の水面が映った領域と色彩や輝度が類似する空が映った領域がある場合、空が映った領域を抽出してしまうことがある。
そこで、本実施の形態では、画像から、指定された位置と色彩や輝度などが類似し、かつ、指定された位置を内部に含む領域に制限した領域を抽出することにより、対象が映った領域を精度よく抽出することができる画像処理方法について説明する。
(1−1)画像処理装置100は、画像110上のいずれかの位置の指定を受け付ける。画像処理装置100は、例えば、利用者の操作入力に基づいて、画像110上の位置111の指定を受け付ける。指定の位置は、少なくとも対象が映ったと判断される領域内の位置である。指定の位置は、1つの点又は複数の点の集合であり、1つの画素又は複数の画素を示す。指定の位置は、例えば、点、線、又は矩形などを用いて指定された位置であり、点、線、又は矩形上にある画素を示す。画素はノイズを含む場合があるため、指定の位置は、線や矩形などを用いて指定されることが好ましい。
(1−2)画像処理装置100は、指定を受け付けた位置111に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて類似判定基準を生成する。色彩は、例えば、明度、色相、彩度によって表現される。画像処理装置100は、例えば、受け付けた位置111が1つの点であれば、その位置111が示す画素の輝度を中心にする所定の大きさの範囲を、類似判定基準になる輝度の基準範囲として生成する。また、画像処理装置100は、例えば、受け付けた位置111が複数の点であれば、その位置111が示す複数の画素の輝度の最大値から最小値までの範囲を、類似判定基準になる輝度の基準範囲として生成する。
画像処理装置100は、生成した類似判定基準を用いて、指定を受け付けた位置111に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定を受け付けた位置111を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う。画像処理装置100は、例えば、画像110のうち、生成した輝度の基準範囲に含まれる輝度を有する画素の集合であって、指定を受け付けた位置111を内部に含む領域101を抽出する。一方で、画像処理装置100は、例えば、画像110のうち、指定を受け付けた位置111を内部に含まない領域102を抽出しない。領域の抽出の具体例は、例えば、図6〜図9を用いて後述する。
これにより、画像処理装置100は、画像110のうち、指定を受け付けた位置111を内部に含む領域に制限して、対象が映った領域を抽出することができ、対象が映った領域とは分断された対象が映っていない領域を抽出することを防止することができる。このため、画像処理装置100は、対象が映った領域を抽出する精度の向上を図ることができる。
ここでは、対象が、河川の水面や河原などである場合について説明したが、これに限らない。例えば、対象が、海岸の水面や浜辺などである場合があってもよい。例えば、対象が、道路である場合があってもよい。例えば、対象が、服である場合があってもよい。例えば、対象が、人間の顔である場合があってもよい。
(画像処理システム200の一例)
次に、図2を用いて、図1に示した画像処理装置100を適用した、画像処理システム200の一例について説明する。
図2は、画像処理システム200の一例を示す説明図である。図2において、画像処理システム200は、画像処理装置100と撮像装置201とを含む。画像処理システム200は、撮像装置201を複数含んでもよい。
画像処理システム200において、画像処理装置100と撮像装置201とは、有線又は無線のネットワーク210を介して接続される。ネットワーク210は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどである。
画像処理装置100は、撮像装置201が撮像した画像を、撮像装置201から受信する。画像は、例えば、動画像に含まれる1フレーム分の画像であってもよい。画像処理装置100は、撮像装置201が撮像した画像に対する位置の指定を受け付け、その位置を含む領域に制限した領域の抽出を行う。画像処理装置100は、例えば、サーバ、PC(Personal Computer)、ノートPC、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末などである。
撮像装置201は、対象を含む撮像範囲を撮像するコンピュータである。撮像装置201は、例えば、河川の付近に設けられ、河川を含む撮像範囲を撮像し、撮像した画像を画像処理装置100に送信する。撮像装置201は、例えば、カメラである。
ここでは、画像処理装置100と撮像装置201とが別の装置である場合について説明したが、これに限らない。例えば、画像処理装置100は、撮像装置201と一体であってもよい。
画像処理システム200は、例えば、河川の増水や氾濫を監視する監視システムに適用される場合がある。この場合、撮像装置201は、例えば、対象として河川の水面や河原などを含む撮像範囲を撮像する。一方で、画像処理装置100は、例えば、河川の水面が映った領域を抽出し、抽出した結果に基づいて、河川の増水や氾濫を監視する作業員を支援したり、河川にいる人間に対して警報を発したりすることができる。
また、画像処理システム200は、例えば、海岸の増水を監視する監視システムや海岸の潮の満ち引きを観測する観測システムなどに適用される場合があってもよい。また、画像処理システム200は、例えば、道路を監視する監視システムに適用される場合があってもよい。また、画像処理システム200は、例えば、個人認証システムに適用される場合があってもよい。
(画像処理装置100のハードウェア構成例)
次に、図3を用いて、図2に示す画像処理システム200に含まれる画像処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
図3は、画像処理装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3において、画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、ネットワークI/F(Interface)303と、記録媒体I/F304と、記録媒体305とを有する。また、各構成部は、バス300によってそれぞれ接続される。
ここで、CPU301は、画像処理装置100の全体の制御を司る。メモリ302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU301のワークエリアとして使用される。メモリ302に記憶されるプログラムは、CPU301にロードされることで、コーディングされている処理をCPU301に実行させる。
メモリ302は、例えば、撮像装置201から受信した画像を記憶する。メモリ302は、例えば、画像に対して指定を受け付けた位置を記憶する。メモリ302は、例えば、領域を抽出する過程における処理結果を記憶する。メモリ302は、例えば、抽出した領域を記憶する。
ネットワークI/F303は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他のコンピュータに接続される。そして、ネットワークI/F303は、ネットワーク210と内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F303には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
記録媒体I/F304は、CPU301の制御に従って記録媒体305に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体I/F304は、例えば、ディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)ポートなどである。記録媒体305は、記録媒体I/F304の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発メモリである。記録媒体305は、例えば、ディスク、半導体メモリ、USBメモリなどである。記録媒体305は、画像処理装置100から着脱可能であってもよい。
画像処理装置100は、上述した構成部のほか、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイなどを有してもよい。また、画像処理装置100は、記録媒体I/F304や記録媒体305を有していなくてもよい。
(撮像装置201のハードウェア構成例)
次に、図4を用いて、図2に示す画像処理システム200に含まれる撮像装置201のハードウェア構成例について説明する。
図4は、撮像装置201のハードウェア構成例を示すブロック図である。図4において、撮像装置201は、CPU401と、メモリ402と、ネットワークI/F403と、撮像部404とを有する。また、各構成部は、バス400によってそれぞれ接続される。
ここで、CPU401は、撮像装置201の全体の制御を司る。メモリ402は、例えば、ROM、RAM及びフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU401のワークエリアとして使用される。メモリ402に記憶されるプログラムは、CPU401にロードされることで、コーディングされている処理をCPU401に実行させる。
ネットワークI/F403は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他のコンピュータに接続される。そして、ネットワークI/F403は、ネットワーク210と内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F403には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。撮像部404は、対象を含む撮像範囲を撮像し、撮像した画像をメモリ402に記憶する。
撮像装置201は、上述した構成部のほか、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカーなどを有してもよい。また、撮像装置201は、記録媒体I/Fや記録媒体を有してもよい。
(画像処理装置100の機能的構成例)
次に、図5を用いて、画像処理装置100の機能的構成例について説明する。
図5は、画像処理装置100の機能的構成例を示すブロック図である。画像処理装置100は、記憶部500と、受付部501と、生成部502と、画像処理部503と、出力部504とを含む。
記憶部500は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域によって実現される。受付部501〜出力部504は、制御部となる機能である。受付部501〜出力部504は、具体的には、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、又は、ネットワークI/F303により、その機能を実現する。各機能部の処理結果は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶される。
記憶部500は、画像を記憶する。記憶部500は、例えば、画像に対応する画素群のそれぞれの画素の色特徴を記憶する。色特徴は、例えば、RGBカラーモデルに基づく、赤(R)と緑(G)と青(B)との値である。これにより、記憶部500は、処理対象の画像を記憶し、生成部502が参照可能にすることができる。
記憶部500は、画像に対して指定を受け付けた位置を記憶する。記憶部500は、例えば、利用者の操作入力によって画像上でなぞられた線上にある画素の座標を記憶する。記憶部500は、例えば、利用者の操作入力によって画像上で設定された矩形内にある画素の座標を記憶してもよい。これにより、記憶部500は、少なくとも対象が映ったと判断される位置を生成部502が参照可能にすることができる。
記憶部500は、エッジの位置を記憶する。記憶部500は、例えば、エッジの位置を示す座標を記憶する。これにより、記憶部500は、対象が映った領域ではない可能性が大きいエッジの位置を生成部502が参照可能にすることができる。
記憶部500は、基準領域を記憶し、拡張中の基準領域を記憶する。記憶部500は、例えば、指定を受け付けた位置に基づく、最初の基準領域を記憶する。記憶部500は、例えば、基準領域に他の領域を順次追加することにより、拡張中である基準領域を記憶する。これにより、記憶部500は、対象が映った領域になる基準領域を記憶しておくことができる。
記憶部500は、抽出した領域を記憶する。記憶部500は、基準領域を拡張した結果、対象が映った領域として抽出した基準領域を記憶する。これにより、記憶部500は、対象が映った領域として抽出した基準領域を記憶しておくことができる。
受付部501は、処理対象の画像を受け付ける。受付部501は、例えば、画像を撮像装置201から受信し、その画像を記憶部500に記憶する。受付部501は、処理対象の画像を含む動画像を撮像装置201から受信し、その動画像を記憶部500に記憶してもよい。これにより、受付部501は、処理対象の画像を、生成部502が参照可能にすることができる。
受付部501は、受付部501が受け付けた画像に対する位置の指定をさらに受け付ける。受付部501は、例えば、利用者の操作入力によって、画像上でなぞられた線に基づいて、その線上の位置を、指定された位置として受け付ける。受付部501は、具体的には、画像をカーソルと共に表示し、利用者の操作入力によって画像上でのカーソルの移動と選択が行われた結果、画像上で選択された線上の位置を、指定された位置として受け付ける。これにより、受付部501は、少なくとも対象が映ったと判断される位置を特定可能にすることができる。
受付部501は、例えば、利用者の操作入力によって、画像上の水面に対応する位置を、指定された位置として受け付ける。これにより、受付部501は、少なくとも対象となる河川の水面が映ったと判断される位置を特定可能にすることができる。
ここで、撮像装置201は、撮像範囲の中心付近に対象が映るように設置される傾向がある。このため、受付部501は、画像の中心付近の位置を、自動で、指定された位置として受け付ける場合があってもよい。これにより、受付部501は、利用者の作業負担を低減することができる。
生成部502は、指定を受け付けた位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて、類似判定基準を生成する。類似判定基準は、画像内の位置について、少なくとも対象が映ったと判断される位置と色特徴が類似するか否かを判定する際に用いられる基準である。類似判定基準を満たせば、画像内の位置について、少なくとも対象が映ったと判断される位置と色特徴が類似することを示し、同様に対象が映った位置である可能性が大きいことを示す。類似判定基準は、例えば、後述する式(1)及び式(2)によって表現される。
生成部502は、例えば、指定を受け付けた線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に基づいて、類似判定基準を生成する。生成部502は、具体的には、指定を受け付けた線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に所定のマージンを加えた範囲を、類似判定基準として生成する。指定を受け付けた線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲は、例えば、指定を受け付けた線上の画素の輝度及び/又は色彩を示す値の最大値から最小値までの範囲である。これにより、生成部502は、画像内の位置について、少なくとも対象が映ったと判断される位置と色特徴が類似するか否かを判定する際に用いられる基準を生成し、画像処理部503が参照可能にすることができる。
画像処理部503は、生成部502が生成した類似判定基準を用いて、画像から領域の抽出を行う。画像処理部503は、例えば、画像から、指定された位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う。画像処理部503は、具体的には、指定された位置を内部に含む領域を順次拡張し、拡張した領域の抽出を行う。
画像処理部503は、より具体的には、指定された位置を内部に含む領域を、基準領域に設定する。画像処理部503は、設定した基準領域を、その基準領域の外周の一部に隣接し、指定された位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似し、かつ、外周の一部に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域を含む領域へと順次拡張する。画像処理部503は、拡張した基準領域の抽出を行う。これにより、画像処理部503は、対象が映った領域を精度よく抽出することができる。
画像処理部503は、例えば、画像に含まれるエッジを検出し、画像に含まれるエッジに基づいて、画像から領域の抽出を行ってもよい。画像処理部503は、具体的には、基準領域を拡張する際、その基準領域の外周の一部に隣接していても、エッジを含む領域であれば、基準領域に追加しないようにする。これにより、画像処理部503は、エッジを含み、対象が映った領域ではないと判断される領域を、基準領域に追加せず、対象が映った領域を抽出する精度の向上を図ることができる。
出力部504は、画像処理部503が抽出した領域を出力する。出力形式は、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタへの印刷出力、ネットワークI/F303による外部装置への送信、又は、メモリ302や記録媒体305などの記憶領域への記憶などである。
出力部504は、例えば、画像処理部503が抽出した領域に関する情報を出力してもよい。領域に関する情報は、例えば、画像の面積に対する領域の面積の割合である。また、出力部504は、例えば、画像処理部503が抽出した領域に関する情報に基づいて河川の増水や氾濫の有無などを判定した結果を出力してもよい。
(画像処理装置100の動作例)
次に、図6〜図9を用いて、画像処理装置100の動作例について説明する。
図6〜図9は、画像処理装置100の動作例を示す説明図である。図6において、撮像装置201は、対象となる河川の水面を含む撮像範囲を撮像し、撮像した画像600を画像処理装置100に送信する。画像処理装置100は、画像600を撮像装置201から受信する。画像処理装置100は、中央値フィルタを用いて、画像600からノイズを除去する。
画像処理装置100は、ノイズを除去した画像600に対する位置の指定を受け付ける。画像処理装置100は、例えば、利用者の操作入力によって画像600上でなぞられた基準線601上の位置を、指定された位置として受け付ける。これにより、画像処理装置100は、少なくとも対象となる河川の水面が映ったと判断される位置の指定を受け付け、少なくとも対象となる河川の水面が映ったと判断される位置を特定可能にすることができる。次に、図7の説明に移行する。
図7において、画像処理装置100は、ノイズを除去した画像600からエッジを抽出する。図7の画像700は、エッジを抽出した結果を示す画像である。図7の画像700の白線部分が、エッジとして抽出された部分である。ここで、画像処理装置100は、抽出したエッジの位置を記憶しておく。画像処理装置100は、例えば、抽出したエッジの位置を示す座標(i1,j1)、(i2,j2)、・・・、(in,jn)を記憶しておく。nは自然数である。次に、図8の説明に移行する。
図8において、画像処理装置100は、ノイズを除去した画像600を色変換する。画像処理装置100は、例えば、画像600を、RGBカラーモデルからHSVカラーモデルに色変換する。RGBカラーモデルは、色彩を、赤(R)と緑(G)と青(B)との加法混合により表現する表現方法である。HSVカラーモデルは、色彩を、色相(H)と彩度(S)と明度(V)とにより表現する表現方法である。ここで、画像600に対する位置の指定は、色変換の後に行われてもよい。色変換した画像600の具体例は、図示を省略する。
画像処理装置100は、色変換した画像600から、指定を受け付けた基準線601が示す基準領域上の色特徴を抽出する。画像処理装置100は、例えば、基準領域上の画素の色相と彩度と明度とを、基準領域上の色特徴として抽出する。画像処理装置100は、抽出した基準領域上の画素の色相と彩度と明度との最大値と最小値とを算出し、類似判定基準を生成する際に用いられる情報として記憶しておく。
そして、画像処理装置100は、以下に示す動作を行うことにより、現在の基準領域を、その基準領域を内部に含み、その基準領域の近傍にあり類似判定基準を用いて特定される近傍領域をさらに含む、新たな基準領域へと順次拡張していく。ここで、基準領域を順次拡張する具体的な動作について、図8の画像800を用いて説明する。図8の画像800は、色変換した画像600のうち、指定を受け付けた基準線601が示す基準領域を含む部分画像である。
画像処理装置100は、具体的には、基準領域の外周上にある座標(x,y)の注目画素801を選択する。また、画像処理装置100は、選択した注目画素801の近傍にある座標(a,b)の近傍画素802を選択する。近傍画素802は、例えば、注目画素801の上下左右斜めにある8画素のいずれかである。
そして、画像処理装置100は、選択した近傍画素802の色特徴が基準領域の色特徴と類似するか否かを判定し、選択した近傍画素802を基準領域に追加するか否かを判定するために、類似判定基準を生成する。類似判定基準は、例えば、下記式(1)及び下記式(2)によって表現される。
(|H(x,y)−H(a,b)|<α)∧(|S(x,y)−S(a,b)|<α)∧(|V(x,y)−V(a,b)|<α) ・・・(1)
ここで、H(x,y)とS(x,y)とV(x,y)とは、それぞれ、座標(x,y)にある注目画素801の色相と彩度と明度とを示す。H(a,b)とS(a,b)とV(a,b)とは、それぞれ、座標(a,b)にある近傍画素802の色相と彩度と明度とを示す。αは閾値である。∧は、論理積(かつ)である。
上記式(1)を満たせば、近傍画素802は、河川の水面の一部である注目画素801と連続し、かつ、河川の水面の一部である注目画素801と色特徴が類似することになる。このため、上記式(1)を満たせば、近傍画素802は、注目画素801と同じく河川の水面の一部である可能性が大きく、基準領域に追加することが好ましいと判断される。次に、式(2)を示す。
(Hmin<H(a,b)<Hmax)∧(Smin<S(a,b)<Smax)∧(Vmin<V(a,b)<Vmax) ・・・(2)
ここで、HminとSminとVminとは、それぞれ、最初の基準領域上の色相と彩度と明度との最小値を示す。HmaxとSmaxとVmaxとは、それぞれ、最初の基準領域上の色相と彩度と明度との最大値を示す。H(a,b)の範囲は、上記Hmin〜Hmaxの範囲よりも広い範囲が設定されてもよく、例えば、マージンmを用いてHmin−m〜Hmax+mの範囲であってもよい。S(a,b)の範囲やV(a,b)の範囲も同様に、上記範囲よりも広い範囲が設定されてもよい。
上記式(2)を満たせば、近傍画素802は、河川の水面の一部である最初の基準領域と連続し、かつ、河川の水面の一部である最初の基準領域と色特徴が類似することになる。このため、上記式(2)を満たせば、近傍画素802は、最初の基準領域と同じく河川の水面の一部である可能性が大きく、基準領域に追加することが好ましいと判断される。
また、例えば、基準領域が拡張されるにつれ、その基準領域の外周の座標(x,y)にある注目画素801と、最初の基準領域との色特徴の差異が増大化してしまう場合が考えられる。この場合でも、画像処理装置100は、上記式(1)に加え、上記式(2)を用いるため、近傍画素802が、注目画素801と同じく河川の水面の一部である可能性が大きいか否かを精度よく判断することができる。
画像処理装置100は、類似判定基準になる上記式(1)及び上記式(2)を満たす場合、さらに下記式(3)を満たすか否かを判定してもよい。
(a,b)⊆(i1,j1)、(i2,j2)、・・・、(in,jn)・・・(3)
上記式(3)を満たせば、近傍画素802は、エッジ上に存在することになる。このため、上記式(3)を満たせば、近傍画素802は、基準領域とは異なり、河川の水面の一部である可能性が小さく、基準領域に追加することが好ましくないと判断される。
画像処理装置100は、類似判定基準になる上記式(1)及び上記式(2)を満たし、かつ、上記式(3)を満たさない場合、現在の基準領域に近傍画素802を追加すると判定する。画像処理装置100は、現在の基準領域に近傍画素802を追加すると判定した場合、現在の基準領域に近傍画素802を追加し、現在の基準領域を拡張する。
画像処理装置100は、選択した注目画素801の近傍に、選択していない近傍画素があれば、その近傍画素についても同様に、上記式(1)、上記式(2)、及び上記式(3)を満たすか否かを判定し、判定した結果に応じて基準領域に追加する。
その後、画像処理装置100は、基準領域の外周上に、選択していない注目画素があれば、その注目画素についても同様に、上述した動作を行う。この際、画像処理装置100は、基準領域に追加した近傍画素を、新たに注目画素として選択することもありうる。
ここでは、画像処理装置100が、上記式(1)、上記式(2)、及び上記式(3)を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、画像処理装置100が、上記式(1)、上記式(2)、及び上記式(3)のいずれかを用いる場合があってもよい。また、画像処理装置100が、上記式(1)、上記式(2)、及び上記式(3)の2つを用いる場合があってもよい。次に、図9の説明に移行する。
図9において、画像処理装置100は、基準領域を順次拡張した結果、拡張した基準領域を河川の水面が映った領域として抽出する。図9の画像900は、河川の水面が映った領域として抽出した基準領域901を示す画像である。画像処理装置100は、画像の面積に対する、河川の水面が映った領域として抽出した基準領域901の面積の割合「23.2%」を算出する。画像処理装置100は、算出した割合「23.2%」を出力する。
これにより、画像処理装置100は、対象となる河川の水面が映った領域を精度よく抽出し、画像の面積に対する、抽出した領域の面積の割合を算出することができる。また、画像処理装置100は、河川の増水や氾濫の発生時の、画像の面積に対する、河川の水面が映った領域の面積の割合を記憶しておき、算出した割合と比較することができる。
このため、画像処理装置100は、比較した結果に基づいて、自動で、河川の増水や氾濫の発生を検知することができ、河川の増水や氾濫を監視する作業負担の低減化を図ることができる。また、画像処理装置100は、河川の増水や氾濫の発生を検知した場合、撮像装置201のスピーカーから警告を発するように撮像装置201を制御し、河川の近くにいる人間の安全性の向上を図ってもよい。
ここでは、画像処理装置100が、河川の増水や氾濫の発生時の、画像の面積に対する、河川の水面が映った領域の面積の割合に基づいて、河川の増水や氾濫の発生を検知する場合について説明したが、これに限らない。例えば、画像処理装置100が、河川の増水や氾濫の発生時の、画像の面積に対する、河原が映った領域の面積の割合に基づいて、河川の増水や氾濫の発生を検知する場合があってもよい。
ここでは、画像処理装置100が、基準領域内の注目画素801と、その注目画素801の近傍にある近傍画素802との比較によって、基準領域を画素単位で拡張する場合について説明したが、これに限らない。例えば、画像処理装置100は、基準領域内の注目領域と、その注目領域の近傍にある近傍領域との比較によって、基準領域を領域単位で拡張する場合があってもよい。この場合、画像処理装置100は、画素単位で拡張する場合に比べ、画素にノイズがあっても、そのノイズの影響を受けづらくすることができる。
(全体処理手順の一例)
次に、図10を用いて、画像処理装置100が実行する全体処理手順の一例について説明する。
図10は、全体処理手順の一例を示すフローチャートである。図10において、画像処理装置100は、画像を受け付ける(ステップS1001)。次に、画像処理装置100は、中央値フィルタを用いて、受け付けた画像からノイズを除去する(ステップS1002)。そして、画像処理装置100は、除去後の画像からエッジを抽出する(ステップS1003)。
次に、画像処理装置100は、画像を色変換する(ステップS1004)。そして、画像処理装置100は、画像に対する基準線の指定を受け付ける(ステップS1005)。次に、画像処理装置100は、色変換後の画像から、指定を受け付けた基準線が示す基準領域上の色特徴を抽出する(ステップS1006)。そして、画像処理装置100は、図11に後述する拡張処理を実行する(ステップS1007)。
次に、画像処理装置100は、拡張処理の結果に基づいて、水面の割合を算出する(ステップS1008)。そして、画像処理装置100は、算出した結果を出力する(ステップS1009)。その後、画像処理装置100は、全体処理を終了する。これにより、画像処理装置100は、対象となる水面が映った領域を抽出し、対象となる水面が映った領域の割合を出力することができ、河川の増水や氾濫を監視する支援を行うことができる。
(拡張処理手順の一例)
次に、図11を用いて、画像処理装置100が実行する拡張処理手順の一例について説明する。
図11は、拡張処理手順の一例を示すフローチャートである。図11において、画像処理装置100は、指定を受け付けた基準線が示す基準領域の外周部分にある注目画素を格納した注目画素キューを作成する(ステップS1101)。
次に、画像処理装置100は、注目画素キューのいずれかの注目画素を取り出す(ステップS1102)。そして、画像処理装置100は、基準領域外で注目画素の近傍にある近傍画素のいずれかの近傍画素を選択する(ステップS1103)。
次に、画像処理装置100は、選択した近傍画素がエッジ上であるか否かを判定する(ステップS1104)。ここで、エッジ上である場合(ステップS1104:Yes)、画像処理装置100は、ステップS1109の処理に移行する。
一方で、エッジ上ではない場合(ステップS1104:No)、画像処理装置100は、注目画素と、選択した近傍画素との色彩や輝度などが類似するか否かを判定する(ステップS1105)。ここで、類似しない場合(ステップS1105:No)、画像処理装置100は、ステップS1109の処理に移行する。
一方で、類似する場合(ステップS1105:Yes)、画像処理装置100は、選択した近傍画素の色彩や輝度などが、基準領域の色彩や輝度などに基づく基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS1106)。ここで、基準範囲内ではない場合(ステップS1106:No)、画像処理装置100は、ステップS1109の処理に移行する。
一方で、基準範囲内である場合(ステップS1106:Yes)、画像処理装置100は、選択した近傍画素を基準領域に追加し、基準領域を拡張する(ステップS1107)。次に、画像処理装置100は、注目画素キューに、選択した近傍画素を追加する(ステップS1108)。
そして、画像処理装置100は、注目画素の近傍にある近傍画素すべてを選択したか否かを判定する(ステップS1109)。ここで、すべてを選択していない場合(ステップS1109:No)、画像処理装置100は、ステップS1103の処理に戻る。
一方で、すべてを選択した場合(ステップS1109:Yes)、画像処理装置100は、注目画素キューが空であるか否かを判定する(ステップS1110)。ここで、空ではない場合(ステップS1110:No)、画像処理装置100は、ステップS1102の処理に戻る。
一方で、空である場合(ステップS1110:Yes)、画像処理装置100は、拡張処理を終了する。これにより、画像処理装置100は、対象が映った領域を精度よく抽出することができる。
以上説明したように、画像処理装置100によれば、画像上のいずれかの位置の指定を受け付けることができる。画像処理装置100によれば、指定を受け付けた位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて類似判定基準を生成することができる。画像処理装置100によれば、生成した類似判定基準を用いて、指定を受け付けた位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行うことができる。これにより、画像処理装置100は、対象が映った領域を精度よく抽出することができる。
また、画像処理装置100によれば、指定された位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う場合、画像に含まれるエッジに基づいて抽出することができる。これにより、画像処理装置100は、エッジに基づいて、ある領域が、対象が映った領域である可能性が大きいか否かを判定可能になり、対象が映った領域を精度よく抽出しやすくすることができる。
また、画像処理装置100によれば、画像上でなぞられた線に基づいて位置の指定を受け付けることができる。画像処理装置100によれば、類似判定基準を、線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に基づいて生成することができる。これにより、画像処理装置100は、点によって位置の指定を受け付けてしまい、その点にノイズが含まれ、対象が映った領域を抽出する精度が低下してしまうことを抑制することができる。
また、画像処理装置100によれば、画像上でなぞられた線に基づいて位置の指定を受け付けることができる。画像処理装置100によれば、類似判定基準として、線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に所定のマージンを加えた範囲を生成することができる。これにより、画像処理装置100は、指定を受け付けた線から離れた領域でも、その線に対応する画素と色特徴が類似する領域を抽出することができ、対象が映った領域を精度よく抽出することができる。
また、画像処理装置100によれば、画像上の水面に対応する位置の指定を受け付けることができる。これにより、画像処理装置100は、対象として水面が映った領域を精度よく抽出することができ、河川の増水や氾濫を監視する支援を行うことができる。
また、画像処理装置100によれば、類似判定基準を用いて、位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された位置を内部に含み、エッジを内部に含まない領域に制限した領域の抽出を行うことができる。これにより、画像処理装置100は、対象が映った領域である可能性が比較的小さい、エッジを内部に含む領域については抽出せず、対象が映った領域を精度よく抽出することができる。
また、画像処理装置100によれば、画像から抽出済みである領域に隣接し、その領域に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似し、かつ、指定を受け付けた位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域を順次抽出することができる。これにより、画像処理装置100は、対象が映った領域を抽出する精度の向上を図ることができる。
なお、本実施の形態で説明した画像処理方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本実施の形態で説明した画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、本実施の形態で説明した画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)画像上のいずれかの位置の指定を受け付け、
受け付けた前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて生成した類似判定基準を用いて、前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された前記位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする画像処理方法。
(付記2)指定された前記位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う場合、前記画像に含まれるエッジに基づいて抽出する処理をコンピュータが実行することを特徴とする付記1に記載の画像処理方法。
(付記3)前記位置は、前記画像上でなぞられた線であり、前記類似判定基準は、前記線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に基づいて生成される、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の画像処理方法。
(付記4)前記位置は、前記画像上でなぞられた線であり、前記類似判定基準は、前記線に対応する画素の輝度及び/又は色彩の範囲に所定のマージンを加えた範囲である、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理方法。
(付記5)前記位置は、前記画像上の水面に対応する位置である、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理方法。
(付記6)前記類似判定基準を用いて、前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された前記位置を内部に含み、前記エッジを内部に含まない領域に制限した領域の抽出を行う処理をコンピュータが実行することを特徴とする付記2に記載の画像処理方法。
(付記7)前記画像から未抽出である領域のうち、前記画像から抽出済みである領域に隣接し、前記画像から抽出済みである領域に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似し、かつ、前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域を順次抽出する処理をコンピュータが実行することを特徴とする付記1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理方法。
(付記8)画像上のいずれかの位置の指定を受け付け、
受け付けた前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて生成した類似判定基準を用いて、前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された前記位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
(付記9)画像上のいずれかの位置の指定を受け付け、
受け付けた前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に基づいて生成した類似判定基準を用いて、前記位置に対応する画素の輝度及び/又は色彩に類似する領域であって、指定された前記位置を内部に含む領域に制限した領域の抽出を行う、
制御部を有することを特徴とする画像処理装置。