ここで、乾式又は予作動式のスプリンクラ消火設備は、湿式の設備も同様ではあるが、警報弁の二次側の配管が各防護区画に向けて複数の分岐管に分岐しており、それら複数の分岐管のそれぞれにスプリンクラヘッドが設けられている。
そのような乾式又は予作動式のスプリンクラ消火設備において、警報弁が誤開放した際には、その設備復旧時、二次側の配管に流れた消火水の水抜きの作業をする必要があるが、複数の分岐管まで流れた消火水の水抜きの作業をするのは煩雑であり、容易ではないという問題がある。
また、火災により警報弁が正常に開放した際には、複数の分岐管の全てに消火水が流れるため、開作動したスプリンクラヘッドが接続されている分岐管が最も末端に位置するものであった場合、その分岐管が充水状態になるまで時間が掛かってしまい、開作動したスプリンクラヘッドからの放水の開始が遅くなるという問題がある。
なお、設備設計上は、火災によるスプリンクラヘッドの開作動から1分以内に複数の分岐管の全てが充水状態になるようにしており、遅くなったとしても、その開作動から1分以内に放水が開始されるようにしている。しかしながら、消火水を圧送する消火ポンプとして容量の大きなものを使用しなければならず、設備コストが高くなっている。
この発明は、上記の事情に鑑み、配管からの水抜きの作業を容易にすることができると共に、スプリンクラヘッドからの放水の開始を早くすることができるスプリンクラ消火設備を提供することを目的とする。
この発明は、常時は閉止している警報弁の二次側に位置して設けられ、該警報弁の二次側に基端側が接続された二次側本管を有すると共に、該二次側本管から分岐し、それぞれにスプリンクラヘッドが接続された複数の分岐管を有する二次側配管を備え、常時は該二次側配管内に加圧気体が充填されて第1圧力に保持されるスプリンクラ消火設備において、前記二次側配管内には、消火水が前記警報弁を介して前記第1圧力より高い第2圧力に制御されて供給されるものとすると共に、前記複数の分岐管のそれぞれの基端側に、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力に保持されている際には閉止している一方、一次側圧力が二次側圧力よりも高くなる際に、一次側と二次側との間に所定の大きさの差圧が発生することにより開放する開放弁を設け、該開放弁は、前記警報弁が開放して一次側圧力が前記第2圧力になる際に、二次側のスプリンクラヘッドが開作動しておらず、二次側圧力が前記第1圧力に保持されているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧では開放しない一方、前記警報弁が開放して一次側圧力が前記第2圧力になる際に、二次側のスプリンクラヘッドが開作動し、二次側圧力が大気圧に低下しているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧で開放することを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
また、この発明は、前記二次側本管における前記警報弁近傍の位置に、前記複数の分岐管のそれぞれの基端側に設けたのと同様の開放弁をさらに設けたことを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
また、この発明は、前記二次側本管を、前記警報弁の二次側に基端側が接続された二次側元本管と、その二次側元本管から分岐する複数の二次側分岐本管とを有するものとして、該複数の二次側分岐本管のそれぞれの基端側に、前記複数の分岐管のそれぞれの基端側に設けたのと同様の開放弁をさらに設けたことを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
前記開放弁は、その弁体が一次側受圧部の受圧面積よりも二次側受圧部の受圧面積の方が所定の比で大きくなるように形成されており、それにより開閉動作が制御されることを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
前記開放弁は、前記弁体の一次側受圧部と二次側受圧部との間を貫通し、一次側と二次側とを連通する連通口が設けられており、該連通口には、常時は該連通口を開放する一方、前記弁体が閉止している状態で一次側圧力が前記第2圧力になる際には該連通口を閉止する補助弁が設けられていることを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
前記開放弁は、前記弁体が着座するシート部に設けられた中間室であって、前記弁体が着座している際に、前記一次側受圧部の周囲部分に対向する開口を有すると共に、弁箱外部に連通する連通部を有する中間室が設けられており、該連通部には、弁箱外部側の末端開口に、常時は該末端開口を開放して該中間室を大気開放する一方、前記弁体が開放して前記第2圧力の消火水が流入する際には該末端開口を閉止する空気抜き弁が設けられていることを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
この発明においては、開放弁により、開作動したスプリンクラヘッドが設けられている分岐管内に向けて選択的に消火水が流れるようにすることができる。
それにより、警報弁が誤開放したとしても、スプリンクラヘッドが開作動していない限り、複数の分岐管内にまで消火水が流れることなく、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業を容易にすることができる。また、火災時には、複数の分岐管内のうち、スプリンクラヘッドが開作動した分岐管内に向けてのみ消火水が流れることとなり、その分岐管内の充水に要する時間を短くすることができ、その開作動したスプリンクラヘッドからの放水の開始を早くすることができる。
したがって、この発明によれば、配管からの水抜きの作業を容易にすることができると共に、スプリンクラヘッドからの放水の開始を早くすることができるスプリンクラ消火設備を提供することができる。
なお、この発明においては、常時の二次側配管内の加圧気体の第1圧力を低くすることができる。それにより、設備設計上、二次側配管の耐圧性能を低くすることができ、設備コストを安くすることができる。
また、この発明においては、二次側本管における警報弁近傍の位置にも開放弁を設けることにより、警報弁が誤開放したとしても、スプリンクラヘッドが開作動していない限り、消火水が流れるのはその警報弁近傍の位置に設けた開放弁までとすることができ、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業をさらに容易にすることができる。なお、警報弁は、排水弁が設けられたものとすることができ、水抜きの作業は、その警報弁に設けられた排水弁を開放することにより行うようにすることができる。
また、この発明においては、二次側本管を、警報弁の二次側に接続された二次側元本管と、その二次側元本管から分岐する複数の二次側分岐本管とを有するものとすることができるが、そのようにする場合でも、複数の二次側分岐本管のそれぞれの基端側にも開放弁を設けることにより、それら複数の二次側分岐本管内を含めて、スプリンクラヘッドが開作動した分岐管内に向けて選択的に消火水が流れるようにすることができる。すなわち、そのようにする場合でも、警報弁が誤開放したとしても、配管からの水抜きの作業を容易にすることができると共に、火災時には、スプリンクラヘッドが開作動した分岐管内の充水に要する時間を短くすることができ、その開作動したスプリンクラヘッドからの放水の開始を早くすることができる。
また、この発明においては、開放弁を、その弁体が一次側受圧部の受圧面積よりも二次側受圧部の受圧面積の方が所定の比で大きくなるように形成されたものとし、それにより開閉動作が制御されるものとすることにより、開放弁を、簡単な構造のものでありながら、前記の通り、開作動したスプリンクラヘッドが設けられている分岐管内に向けて選択的に消火水が流れるように制御するものとすることができる。
また、この発明においては、開放弁を、弁体の一次側受圧部と二次側受圧部との間を貫通し、一次側と二次側とを連通する連通口が設けられており、その連通口には、常時は連通口を開放する一方、弁体が閉止している状態で一次側圧力が第2圧力になる際には連通口を閉止する補助弁が設けられているものとすることにより、常時の二次側配管内の加圧気体による第1圧力を低くしつつも、二次側配管内に供給する加圧気体を連通口を介して流通させることができ、二次側配管内に加圧気体を容易に充填させることができると共に、その管内圧力を容易に第1圧力に保持することができる。また、弁体が閉止している状態で一次側圧力が第2圧力になる際には連通口を閉止するので、二次側のスプリンクラヘッドが開作動していない状態で、警報弁が誤開放した際には、開放弁の一次側に消火水が流入したとしても、その二次側に流れないようにすることができる。
また、この発明においては、開放弁を、弁体が着座するシート部に設けられた中間室であって、弁体が着座している際に、一次側受圧部の周囲部分に対向する開口を有すると共に、弁箱外部に連通する連通部を有する中間室が設けられており、連通部には、弁箱外部側の末端開口に、常時は末端開口を開放して中間室を大気開放する一方、弁体が開放して第2圧力の消火水が流入する際には末端開口を閉止する空気抜き弁が設けられているものとすることにより、一次側と二次側との間に生じる所定の設計差圧を基準として、弁体を開閉することができると共に、弁体が開放した際には、中間室に流入する消火水を末端開口から外部に排出することを防止することができる。
この発明のスプリンクラ消火設備の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、この発明のスプリンクラ消火設備は、警報弁の二次側配管内に常時、加圧気体が充填される乾式の設備又は予作動式の設備に適用が可能なものである。図1乃至図3はいずれも、この発明のスプリンクラ消火設備における配管系統の一例を概略的に示した配管系統図であるが、その設備構成は、乾式の設備とする場合に対応するものであるのはもちろん、火災感知器等を別途備える予作動式の設備とする場合にも対応するものである。また、図4に示した開放弁も、乾式の設備とする場合にも、火災感知器等を別途備える予作動式の設備とする場合にも対応するものである。
図1乃至図3において、スプリンクラ消火設備1は、常時は閉止している警報弁2と、警報弁2の一次側に位置する一次側配管3と、警報弁2の二次側に位置する二次側配管4とを備えている。そして、一次側配管3は、末端側が警報弁2の一次側に接続されており、基端側に給水源(図示省略)からの消火水を圧送するための消火ポンプPが接続されている。また、二次側配管4は、基端側が警報弁2の二次側に接続されている二次側本管5と、二次側本管5から各防護区画に向けて分岐して、複数のスプリンクラヘッド7がそれぞれに接続された複数のスプリンクラ分岐管(複数の分岐管の一例)6とを有している。
図1は、常時の監視状態を示したものである。同図に示したように、常時の監視状態においては、一次側配管3内は、消火ポンプPにより加圧供給される消火水により充水しており(充水部分を塗りつぶして示している。)、管内圧力の監視手段や消火ポンプPの起動・停止の制御手段等(何れも図示省略)により所定の圧力(以下「一次側監視圧」ともいう。)に保持される。また、二次側配管4内は、加圧気体導入手段の一例であるコンプレッサCPにより加圧供給される加圧気体が末端のスプリンクラヘッド7に至るまで充填されており、一次側配管3内と同様、管内圧力の監視手段やコンプレッサCPの起動・停止の制御手段(何れも図示省略)により所定の圧力(第1圧力の一例であり、以下「二次側監視圧」ともいう。)に保持される。
そして、スプリンクラ消火設備1は、警報弁2が開放した際に、警報弁2を介して消火水が二次側監視圧よりも高い給水圧力(第2圧力の一例であり、以下「二次側給水圧力」ともいう。)に制御されて二次側配管4内に供給されるものとしている。また、複数のスプリンクラ分岐管6のそれぞれの基端側に、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力に保持されている際には閉止している一方、一次側圧力が二次側圧力よりも高くなる際に、一次側と二次側との間に所定の大きさの差圧が発生することにより開放する開放弁Kを設けたものとしている。具体的には、開放弁Kは、警報弁2が開放して一次側圧力が二次側給水圧力になる際に、二次側のスプリンクラヘッド7が開作動しておらず、二次側圧力が二次側監視圧に保持されているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧では開放しない一方、警報弁2が開放して一次側圧力が二次側給水圧になる際に、二次側のスプリンクラヘッド7が開作動し、二次側圧力が大気圧に低下しているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧で開放するものとしている。
つまり、スプリンクラ消火設備1は、警報弁2が開放した際に、開放弁Kにより、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けて選択的に消火水が流れるものとしている。
これにより、スプリンクラ消火設備1においては、警報弁2が誤開放したとしても、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していない限り、複数のスプリンクラ分岐管6内にまで消火水が流れることなく、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業を容易にすることができる。また、火災時には、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れることとなり、そのスプリンクラ分岐管6内の充水に要する時間を短くすることができ、その開作動したスプリンクラヘッド7からの放水の開始を早くすることができる。
ここで、開放弁Kは、複数のスプリンクラ配管6のそれぞれの基端側にのみ設けたものとしてもよいが、本実施形態の場合、二次側本管5を、警報弁2の二次側に接続されている二次側元本管5’と、その二次側元本管5’から各スプリンクラ分岐管6に向けて分岐する複数の二次側分岐本管5’’とからなるものとして、複数のスプリンクラ分岐管6を、それら複数の二次側分岐本管5’’から分岐するものとしており、その二次側元本管5’にも前記と同様の開放弁Kを設けたものとしていると共に、それら複数の二次側分岐本管5’’のそれぞれの基端側にも前記と同様の開放弁Kを設けたものとしている。なお、加圧気体導入手段の一例であるコンプレッサCPは、警報弁2の二次側において、最も上流側に位置する二次側元本管5’に設けられている開放弁Kの上流側に、例えばオリフィスを介して接続されたものとしている。
すなわち、スプリンクラ消火設備1は、本実施形態の場合、警報弁2が開放した際に、開放弁Kにより、二次側元本管5’と複数の二次側分岐本管5’’内を含めて、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けて選択的に消火水が流れるものとしている。
このスプリンクラ消火設備1は、警報弁2が開放した際に、開放弁Kにより、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けて選択的に消火水が流れるようにしていることにより、前記の通り、火災時において、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れることになるが、複数の二次側分岐本管5’’内を含めて、そのようにしていることにより、火災時において、複数の二次側分岐本管5’’内を含めて、複数のスプリンクラ分岐管6のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れることになる。
具体的には、本実施形態の場合、火災時、その火災が発生した防護区画内にあるスプリンクラヘッド7のいずれかが開作動した際には、先ずは、開作動したスプリンクラヘッド7からそのスプリンクラヘッド7のあるスプリンクラ分岐管6内の加圧気体が外部に放出されて、その管内圧力が大気圧まで低下する。そのスプリンクラ分岐管6内の管内圧力の低下に伴って、基端側の開放弁Kが開放し、上流側の二次側分岐本管5’’内の加圧気体が外部に放出されて、その管内圧力が大気圧まで低下し、さらに上流側の警報弁2に接続されている二次側元本管5’内まで順次同様に、加圧気体が外部に放出されて、その管内圧力が大気圧まで低下する。一方、開作動したスプリンクラヘッド7のない他のスプリンクラ分岐管6内はいずれも、管内圧力が低下せず、二次側監視圧が維持される。また、開作動したスプリンクラヘッド7のあるスプリンクラ分岐管6が下流側にない二次側分岐本管5’’内もいずれも、管内圧力が低下せず、二次側監視圧に維持される。
それにより、警報弁2が開放した際に、二次側配管4内を流れる消火水は、スプリンクラヘッド7が開作動し、管内圧力が大気圧まで低下しているスプリンクラ分岐管6内に向けては、その上流側に位置する二次側分岐本管5’’内と二次側元本管5’内を含めて、それら配管に設けられている開放弁Kが二次側給水圧により開放して、それら開放弁Kを越えて消火水が流れることになる一方、スプリンクラヘッド7が開作動しておらず、二次側監視圧が維持されている他のスプリンクラ分岐管6に向けては、開作動したスプリンクラヘッド7のあるスプリンクラ分岐管6が下流側にない二次側分岐本管5’’内を含めて、それら配管に設けられている開放弁Kは開放せず、それら開放弁Kを越えては流れないことになる。すなわち、二次側元本管5’内から複数の二次側分岐本管5’’内を含めて、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れることになる。
図2は、火災時の作動状態を示したものであり、警報弁2が開放した際のスプリンクラヘッド7に向けての消火水の流れの様子を示したものである(流水部分に斜線を付して示している。)。本実施形態の場合、例えば、この図2に示したような選択的な経路で複数の二次側分岐本管5’’内を流れて、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れることになる。
スプリンクラ消火設備1においては、前記の通り、火災時において、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れるようにしていることにより、そのスプリンクラ分岐管6内の充水に要する時間を短くすることができ、その開作動したスプリンクラヘッド7からの放水の開始を早くすることができるものであるが、本実施形態のように、二次側元本管5’から複数の二次側分岐本管5’’内を含めて、複数のスプリンクラ分岐管6内のうち、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けてのみ消火水が流れるようになっていることにより、そのスプリンクラ分岐管6内の充水に要する時間を、複数のスプリンクラ分岐管6のみに開放弁Kを設けた場合と比較して、さらに短くすることができ、その開作動したスプリンクラヘッド7からの放水の開始をさらに早くすることができる。
さらに、このスプリンクラ消火設備1は、警報弁2が開放した際に、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けて選択的に消火水が流れるようにしていることにより、前記の通り、警報弁2が誤開放したとしても、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していなければ、複数のスプリンクラ分岐管6内にまで消火水が流れないことになるが、本実施形態のように、二次側本管5中、最も上流側に位置し、警報弁2の二次側に接続されている二次側元本管5’にも開放弁Kを設けていることにより、そもそも、その二次側元本管5’に設けられている開放弁Kを越えては消火水が流れないことになる。
具体的には、本実施形態の場合、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していなければ、複数のスプリンクラ分岐管6内はいずれも、二次側監視圧が維持され、それにより複数の二次側分岐本管5’’内も二次側元本管5’内も、二次側監視圧が維持される。それにより、警報弁2が誤開放して二次側に消火水が供給されたとしても、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していなければ、警報弁2の二次側に接続されて、二次側本管5中、最も上流側に位置する二次側元本管5’に設けられている開放弁Kが開放せず、その開放弁Kを超えては消火水が二次側に流れることがなく、複数の二次側分岐本管5’’内のいずれにも消火水が流れることはないし、複数のスプリンクラ分岐管6内のいずれにも消火水が流れることはない。
図3は、非火災時、警報弁2が誤開放した際の状態を示したものであり、開放弁Kにより消火水の流れが遮断される様子を示したものである(流入部分を塗りつぶして示している。)。本実施形態によれば、警報弁2が誤開放して二次側に消火水が供給されたとしても、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していなければ、この図3に示したように、警報弁2の二次側に接続されて、二次側本管5中、最も上流側に位置する二次側元本管5’に設けられている開放弁Kまでしか消火水は流れず、複数の二次側分岐本管5’’内のいずれにも消火水は流れないし、複数のスプリンクラ分岐管6内のいずれにも消火水は流れない。
このスプリンクラ消火設備1においては、前記の通り、警報弁2が誤開放したとしても、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していない限り、複数のスプリンクラ分岐管6内にまで消火水が流れることなく、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業を容易にすることができるが、本実施形態のように、スプリンクラヘッド7がいずれも開作動していなければ、警報弁2の二次側に接続されて、二次側本管5中、最も上流側に位置する二次側元本管5’に設けられている開放弁Kの二次側に消火水が流れないようにしていることにより、警報弁2が誤開放して消火水が二次側本管5に供給されたとしても、消火水が流れるのはその二次側元本管5’に設けられている開放弁Kの位置までとすることができ、二次側元本管5’に開放弁Kが設けられていない場合と比較して、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業をさらに容易にすることができる。
ここで、前記のように開閉動作する開放弁Kの具体例について、図4に基づいて詳細に説明する。
開放弁Kとしては、例えば、図4の(a)乃至(c)に示したような、弁箱11内にスイング移動することにより流路を開閉する弁体12を備えたスイング式の開閉弁を用いることができる。
この開放弁Kにおいて、弁体12は、流路を閉止している状態で流路に対して垂直に対向する一次側受圧部12aと二次側受圧部12bとを有している。一次側受圧部12aと二次側受圧部12bは、二次側受圧部12bの受圧面積の方が大きくなるように形成されており、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力に保持されているときには、弁体12を閉止させているものとしている。
図4(a)は、常時の監視状態を示したものであり、すなわち、一次側圧力と二次側圧力とがいずれも二次側監視圧に保持されている際の状態を示したものである。同図に示したように、この状態において、開放弁Kは、一次側受圧部12aと二次側受圧部12bの受圧面積の大小の違いにより閉止状態が保持されることになる。
さらに、一次側受圧部12aと二次側受圧部12bは、単に二次側受圧部12bの受圧面積の方が大きくなるように形成されているだけでなく、所定の比で二次側受圧部12bの受圧面積の方が大きくなるように形成されており、その所定の比の受圧面積の大小の違いにより、一次側圧力が二次側圧力よりも高くなる際に、一次側と二次側との間に所定の大きさの差圧が発生することにより弁体12を開放させるものとしている。裏を返せば、一次側圧力が二次側圧力より高くても、差圧が所定の圧力未満であれば弁体12は開放しない。具体的には、警報弁2が開放して一次側圧力が二次側給水圧になる際に、二次側のスプリンクラヘッド7が開作動しておらず、二次側圧力が二次側監視圧に保持されているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧では弁体12を開放させない一方、警報弁2が開放して一次側圧力が二次側給水圧になる際に、二次側のスプリンクラヘッド7が開作動し、二次側圧力が大気圧に低下しているときには、それにより一次側と二次側との間に発生する大きさの差圧で弁体12を開放させるものとしている。
図4(b)は、警報弁2が誤開放した際の状態を示したものであり、すなわち、開放弁Kの弁体12の一次側に消火水が流入して一次側圧力が二次側給水圧になっている一方(流入部分に斜線を付して示している。)、二次側のスプリンクラヘッド7が作動しておらず、弁体12の二次側圧力が二次側監視圧に保持されている際の状態を示したものである。同図に示したように、この状態において、開放弁Kは、一次側圧力が二次側給水圧になっていても、一次側受圧部12aと二次側受圧部12bの受圧面積の大小の違いにより閉止状態が保持されることになる。
図4(c)は、火災時の状態を示したものであり、すなわち、警報弁2が開放すると共に、二次側のスプリンクラヘッド7が開作動し、それにより、開放弁Kの弁体12の一次側に消火水が流入して二次側給水圧となった一次側圧力と加圧気体が放出されて大気圧となった二次側圧力との差圧で弁体12が開放し、一次側から二次側に消火水が流れている際の状態を示したものである(流水部分に斜線を付して示している。)。同図に示したように、この状態において、開放弁Kは、一次側受圧部12aと二次側受圧部12bの受圧面積に大小の違いがあっても、一次側と二次側との間に生じる(所定値以上の)差圧により弁体12が開放し、一次側から二次側に消火水が流れることになる。
このような開放弁Kを用いることにより、スプリンクラ消火設備1においては、前記の通り、警報弁2が開放した際に、スプリンクラヘッド7が開作動したスプリンクラ分岐管6内に向けて選択的に消火水が流れるようにすることができる。
ここで、図4に示した例の場合、開放弁Kは、弁体12の一次側受圧部12aと二次側受圧部12bとの間を貫通し、一次側と二次側とを連通する連通口12cが設けられたものとしており、その連通口12cに、常時は連通口12cを開放する一方(図4(a))、弁体12が閉止している状態で一次側圧力が二次側給水圧になる際には連通口12cを閉止する(図4(b))、補助弁13が設けられたものとしている。このような連通口12c等を有する開放弁Kを用いることにより、常時の二次側配管4内の加圧気体による二次側監視圧を低くしつつも、図4(a)に示す常時の監視状態において、二次側配管4内に供給する加圧気体を連通口12cを介して流通させることができ、二次側配管4内に加圧気体を容易に充填させることができると共に、その管内圧力を容易に二次側監視圧に保持することができる。また、図4(b)に示す警報弁2が誤開放した際の状態において、連通口12cを閉止するので、警報弁2が誤開放して、開放弁Kの一次側に消火水が流入したとしても、その二次側に流れないようにすることができる。なお、補助弁13としては、例えば、同図に示したような、球状の弁体13aを有すると共に、常時はその弁体13aを連通口12cの開放位置に位置させる一方、弁体13aに二次側給水圧が作用した際には縮長して弁体13aを連通口12cの閉鎖位置に位置させるコイルスプリング等の弾性部材13bを有するものを用いることができる。
また、開放弁Kにおいて、弁体12とそれが着座するシート部12dとの間に圧力の漏れが生じると、弁体12を一次側と二次側との所定の設計差圧により閉止維持することができなくなる。その圧力の漏れを防ぐために、開放弁Kは、弁体12が着座するシート部12dの位置に、弁体12とシート部12dとの間をシールするシール部として環状で二重のシール部12e,12fが設けられたものとしている(図4(c)参照)。シール部を一重とした場合、シール漏れが生じることにより、弁体12を一次側と二次側との所定の設計差圧により閉止維持することができなくなる可能性がある。シール部を二重のシール部12e,12fとすることにより、シール性は向上するが、単に二重のシール部12e,12fとしただけでは、両シール部12e,12f間からの圧力の逃げ場がないため、同様に弁体12を一次側と二次側との所定の設計差圧により閉止維持することができなくなる可能性がある。そこで、開放弁Kは、シート部12dの両シール部12e,12fの間の位置に、弁体12が着座している際に、一次側受圧部12aの周囲部分に対向する環状の開口14aを有すると共に、弁箱11外部に連通する連通部14bを有する中間室14が設けられたものとしており、また、その連通部14bには、弁箱11外部側の末端開口14cに、常時は末端開口14cを開放して中間室14を大気開放する一方(図4の(a)及び(b)参照)、弁体12が開放して二次側給水圧の消火水が流入する際は末端開口14cを閉止する(図4(c)参照)空気抜き弁15が設けられたものとしている。このような中間室14等が設けられた開放弁Kを用いることにより、弁体12がシート部12dに着座して閉止状態にある際には、二重のシール部12e,12f間から外部への圧力の逃げ場を確保しつつも、弁体12が開放して消火水が流入する際には、その消火水が外部に排出されるのを防ぐことができる。すなわち、一次側と二次側との間に生じる所定の設計差圧を基準として、弁体12を開閉させることができると共に、弁体12が開放した際には、中間室14に流入する消火水が末端開口14cから外部に排出されるのを防ぐことができる。なお、空気抜き弁15としては、例えば、図4に示したような、球状の弁体15aを有すると共に、常時はその弁体15aを末端開口14cの開放位置に位置させる一方、弁体15aに二次側給水圧が作用した際には縮長して弁体15aを末端開口14cの閉鎖位置に位置させるコイルスプリング等の弾性部材15bを有するものを用いることができる。
このスプリンクラ消火設備1について、さらに詳細に説明する。
二次側監視圧と、その二次側監視圧より高い二次側給水圧の各設定値としては、例えば、二次側監視圧を0.2MPaとする場合、二次側給水圧は0.5MPaとすることができる。その際の一次側監視圧は、例えば1MPaとすることができる。なお、このスプリンクラ消火設備1においては、二次側監視圧を低くすることができるため、設備設計上、二次側配管4等の耐圧性能を低くすることができ、設備コストを安くすることができる。
警報弁2としては、二次圧調整機能付きのものを用いることができ、それにより、警報弁2の二次側に流出し、二次側配管4内に供給される消火水の給水圧力を所定の圧力(二次側給水圧)に制御されたものとすることができる。別途、二次側配管4内に供給される消火水の給水圧を調節する手段を設けてもよいが、警報弁2を二次圧調整機能付きのものとすることにより、設備構成を簡略化することができる。
二次側配管4内に常時加圧充填する気体としては、空気とすることもできるが、ガス系消火剤(窒素ガス等の不活性ガスやハロゲン化物消火剤)とすることもできる。さらに、その気体に代えて、含フッ素ケトンを含有する液体の状態の消火剤とすることができる。具体的には、ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンを含有する液体の状態の消火剤とすることができる。なお、前記液体状態の消火剤は、二次側配管4の全体に充填していてもよいし、その一部、例えばスプリンクラ分岐管6内にのみ充填していてもよい。
以上、この発明の実施形態の一例について説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、二次側元本管5’に設けられている開放弁Kは、警報弁2の近傍の位置に設けられるものとすることができる。そのようにすることによっても、設備復旧の際の配管からの水抜きの作業をさらに容易にすることができる。
また、警報弁2は、排水弁が設けられたものとすることができ、水抜きの作業は、その警報弁2に設けられた排水弁を開放することにより行うようにすることができる。
また、上記の実施形態においては、二次側本管5を二次側元本管5’と複数の二次側分岐本管5’’との複数本の管からなるものとしているが、設置場所によっては、警報弁2の二次側に接続される1本の管からなるものとしてもよく、その1本の管から複数のスプリンクラ分岐管6が分岐するものとしてもよい。