JP2018145209A - 含フッ素共重合体組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温での剛性に優れるとともに、より高温での耐ストレスクラック性を備えた成形体を成形できる含フッ素共重合体組成物と、含フッ素共重合体組成物の成形体の提供。
【解決手段】含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)とを含有する含フッ素共重合体組成物であって、含フッ素共重合体(A)が特定の構成を有するとともに、含フッ素共重合体組成物が、α≧10、0.8≦α24/α≦1.2、0.8≦α96/α≦1.2を満足する。ただし、上記式中、αは、含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分);α24は、225℃で24時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分);α96は、225℃で96時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)をそれぞれ意味する。
【選択図】なし

Description

本発明は、含フッ素共重合体組成物および該含フッ素共重合体組成物を成形してなる成形体に関する。
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)は、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、非粘着性、撥水撥油性等に優れているとともに、フッ素樹脂の中では成形性および機械的強度が高いという特徴を有する。そのため、押出成形、ブロー成形、射出成形、回転成形などの溶融成形方法により、電線の被覆、チューブ、シート、フィルム、フィラメント、ポンプケーシング、継ぎ手類、パッキング、ライニング、コーティング等の多様な成形体が製造されている。
しかし、ETFEからなる成形体は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の他のフッ素樹脂からなる成形体に比べ、高温での耐ストレスクラック性に劣る。
このような課題に対して、たとえば特許文献1には、エチレンに基づく繰り返し単位(A)と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(B)に加えて、その他のモノマーに基づく繰り返し単位(C)を有し、各繰り返し単位の含有量が特定の範囲にある含フッ素共重合体に対して、少量の酸化銅を配合した含フッ素共重合体組成物が開示されている。特許文献1の実施例には、該含フッ素共重合体組成物を成形した成形体は、197〜199℃のストレスクラック温度を有することが示されている。ストレスクラック温度が高いほど、高温での耐ストレスクラック性に優れる。
国際公開第2013/015202号
しかし、最近では、より高温での耐ストレスクラック性を備えた成形体を製造できる含フッ素共重合体組成物が求められている。また、特許文献1の成形体は、融点が低い含フッ素共重合体を用いているため高温での柔軟性に優れ、耐ストレスクラック性の点では有利であるが、高温での剛性に劣り、用途が制限される場合があった。
本発明は、高温での剛性に優れるとともに、より高温での耐ストレスクラック性を備えた成形体を成形できる含フッ素共重合体組成物と、該含フッ素共重合体組成物の成形体の提供を目的とする。
本発明者は、含フッ素共重合体と酸化銅とを含む含フッ素共重合体組成物について鋭意検討の結果、含フッ素共重合体を構成する繰り返し単位の種類および含有量を特定に制御して含フッ素共重合体の融点を高め、含フッ素共重合体の主鎖末端が塩素原子を有しないものとし、含フッ素共重合体組成物が後述の式(i)〜(iii)を満たすようにすると、高温での剛性に優れるとともに、より高温での耐ストレスクラック性を備えた成形体を成形できることを見出した。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)とを含有する含フッ素共重合体組成物であって、
前記含フッ素共重合体(A)は、エチレンに基づく繰り返し単位(a1)と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a2)と、エチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能な、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを除くその他のモノマーに基づく繰り返し単位(a3)とを有し、主鎖末端が塩素原子を有さず、
前記繰り返し単位(a1)と前記繰り返し単位(a2)とのモル比[(a1)/(a2)]が44/56〜50/50であり、前記含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(a3)の含有量が1.6〜2.4モル%であり、
該含フッ素共重合体組成物が、下記式(i)〜(iii)を満足することを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
α≧10…(i)
0.8≦α24/α≦1.2…(ii)
0.8≦α96/α≦1.2…(iii)
ただし、上記式中の記号は、以下を意味する。
α:含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
α24:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で24時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。尚、直径とはペレットの長さ方向に直交する断面における最小径と最大径の平均値である。
α96:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で96時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
[2]前記含フッ素共重合体(A)は、前記主鎖末端に、水酸基からなる末端基(a4)を有する、[1]の含フッ素共重合体組成物。
[3]前記酸化銅(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.00015〜0.02質量部である、[1]または[2]の含フッ素共重合体組成物。
[4]前記酸化銅(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.0003〜0.001質量部である、[1]〜[3]の含フッ素共重合体組成物。
[5]前記含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(a3)の含有量が、1.8〜2.2モル%である、[1]〜[4]の含フッ素共重合体組成物。
[6]前記酸化銅(B)が、酸化第二銅である、[1]〜[5]の含フッ素共重合体組成物。
[7]前記酸化銅(B)の平均粒径が0.1〜10μmであり、BET比表面積が5〜30m/gである、[1]〜[6]の含フッ素共重合体組成物。
[8]前記含フッ素共重合体(A)の融点が250℃〜265℃である、[1]〜[7]の含フッ素共重合体組成物。
[9]前記含フッ素共重合体(A)の297℃、荷重49Nにおける容量流速が、15〜40g/10分である、[1]〜[8]の含フッ素共重合体組成物。
[10]耐熱電線材料である、[1]〜[9]の含フッ素共重合体組成物。
[11][1]〜[10]の含フッ素共重合体組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、高温での剛性に優れるとともに、より高温での耐ストレスクラック性を備えた成形体を成形できる含フッ素共重合体組成物と、該含フッ素共重合体組成物の成形体を提供できる。
実施例1の含フッ素共重合体組成物および比較例1の含フッ素共重合体をそれぞれ225℃で加熱した場合における、加熱時間と、α/αとの関係を示すグラフである。
本明細書における「繰り返し単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに基づく単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であっても、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「モノマー」とは、重合性不飽和結合、すなわち重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「主鎖」とは、モノマーが重合することによって形成される炭素鎖の中で、炭素数が最大となる部分を指す。
本発明の含フッ素共重合体組成物は、含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)とを含有する。
〔含フッ素共重合体(A)〕
含フッ素共重合体(A)は、エチレンに基づく繰り返し単位(a1)と、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)に基づく繰り返し単位(a2)と、エチレンおよびTFEと共重合可能な、エチレンおよびTFEを除くその他のモノマーに基づく繰り返し単位(a3)とを有し、主鎖末端が塩素原子を有しない。
その他のモノマーとしては、たとえば、一般式CH=CX(CFY(式中、XおよびYはそれぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、nは1〜10の整数である。)で表される化合物が挙げられる。その他のモノマーは、1種または2種以上を用いることができる。
その他のモノマーとして、上記一般式CH=CX(CFYで表される化合物(以下、「FAE」ともいう。)を用いると、含フッ素共重合体組成物からなる成形体の耐ストレスクラック性がより優れる。
式中のXは、水素原子が好ましい。式中のYは、フッ素原子が好ましい。
式中のnは2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。nが上記下限値以上であれば、含フッ素共重合体組成物からなる成形体の耐熱性および高温での耐ストレスクラック性がより優れる。nが上記範囲の上限値以下であれば、FAEは重合反応性を充分に有する。nは、2、4または6が特に好ましい。
FAEの好ましい具体例としては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH等が挙げられ、なかでも含フッ素共重合体組成物からなる成形体の耐ストレスクラック性がより優れる点で、CH=CH(CFF(以下、「PFBE」ともいう。)が好ましい。
FAEは、1種または2種以上を用いることができる。
繰り返し単位(a1)と、繰り返し単位(a2)とのモル比[(a1)/(a2)]は、44.0/56.0〜50.0/50.0であり、44.5/55.5〜46.0/54.0が好ましい。該モル比が上記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体(A)の融点が充分に高く、該含フッ素共重合体組成物の成形体は耐熱性に優れ、高温での剛性が優れる。該モル比が上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体組成物は耐薬品性に優れる。
繰り返し単位(a3)の含有量は、含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対して、1.6〜2.4モル%が好ましく、1.8〜2.2モル%がより好ましい。繰り返し単位(a3)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体組成物の成形体は、高温での耐ストレスクラック性に優れる。繰り返し単位(a3)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体(A)の融点が充分に高く、該含フッ素共重合体組成物の成形体は耐熱性に優れ、高温での剛性が優れる。
含フッ素共重合体(A)は、主鎖末端に塩素原子を有しないことを特徴とする。含フッ素共重合体(A)が主鎖末端に塩素原子を有しないことにより、該含フッ素共重合体(A)が上述した特定の繰り返し単位を特定量有し、融点が高いものであっても、該含フッ素共重合体と後述の酸化銅とを含有する含フッ素共重合体組成物は、詳しくは後述するように、式(i)〜(iii)を満足しやすくなる。式(i)〜(iii)を満足する含フッ素共重合体組成物の成形体は、より高温での耐ストレスクラック性に優れる。
主鎖末端に塩素原子を有しない含フッ素共重合体(A)は、例えば連鎖移動剤として、後述するアルコール類、ハイドロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類を用いて重合反応を行うことにより得られる。具体的には、連鎖移動剤としてアルコール類を用いた場合、アルコールの水酸基が含フッ素共重合体(A)の主鎖の末端に導入され、含フッ素共重合体(A)は、主鎖末端に、水酸基からなる末端基(a4)を有する。逆に、例えば連鎖移動剤や重合溶媒として1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(商品名「AK225cb」旭硝子社製)など塩素原子を有する化合物を用いると、含フッ素共重合体(A)は主鎖末端に塩素原子を有することとなる。
含フッ素共重合体(A)の末端基は、含フッ素共重合体(A)を赤外吸収スペクトル法で分析することにより確認できる。
含フッ素共重合体(A)の297℃、荷重49Nにおける容量流速は、15〜40g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分がより好ましい。含フッ素共重合体(A)の容量流速が上記範囲の下限値以上であると、含フッ素共重合体組成物の成形性が優れ、上記範囲の上限値以下であると、含フッ素共重合体組成物の成形体の機械的強度、高温での耐ストレスクラック性が優れやすい。
含フッ素共重合体(A)の容量流速は、分子量の尺度であり、含フッ素共重合体(A)を製造する際の連鎖移動剤の量を調整する方法等で制御できる。また、容量流速が異なる2種以上の含フッ素共重合体を併用することによっても調整できる。
含フッ素共重合体(A)の融点は、250〜265℃が好ましく、250〜260℃がより好ましい。含フッ素共重合体(A)の融点が上記範囲の下限値以上であると、含フッ素共重合体組成物の成形体の耐熱性が優れ、高温での剛性に優れる。上記範囲の上限値以下であると、含フッ素共重合体組成物の成形性が優れる。
含フッ素共重合体(A)の融点は、繰り返し単位(a1)と繰り返し単位(a2)とのモル比[(a1)/(a2)]、含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対する繰り返し単位(a3)の含有量等を調整する方法等で制御できる。
本明細書において、融点は、走査型示差熱分析器を用いて、空気雰囲気下、10℃/分で昇温し、含フッ素共重合体(A)を加熱した際の吸熱ピークに対応する温度である。
含フッ素共重合体(A)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法で製造でき、特に溶液重合が好ましい。重合には、重合開始剤、連鎖移動剤、重合媒体等を使用できる。
重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0〜100℃であるラジカル重合開始剤が好ましく、該温度が20〜90℃であるラジカル重合開始剤がより好ましい。具体例としては、たとえば特許文献1に例示されている各種重合開始剤を使用できる。
重合媒体としては、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等を使用でき、具体例としては、たとえば特許文献1に例示されている重合媒体を使用できる。
連鎖移動剤は、連鎖移動定数が大きく、添加量が少なくてすむ点から、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール等のアルコール類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン類;CF等のハイドロフルオロカーボン類;アセトン等のケトン類;メチルメルカプタン等のメルカプタン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類;などが好ましい。
中でも、連鎖移動定数がより高く、含フッ素共重合体(A)の末端基の安定性が高い点から、アルコール類、ハイドロカーボン類、及びハイドロフルオロカーボン類からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、アルコール類及び/又はハイドロカーボン類がより好ましく、特にアルコール類が好ましい。アルコール類の中では、メタノール又はエタノールが特に好ましい。中でも、反応性および入手容易性から、メタノールが特に好ましい。連鎖移動剤は、1種または2種以上を用いることができる。
連鎖移動剤の使用量は、重合媒体と連鎖移動剤の合計質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.02〜40質量%がより好ましく、0.05〜20質量%が最も好ましい。
重合条件には特に制限はなく、たとえば、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は、たとえば、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
〔酸化銅(B)〕
酸化銅(B)としては、酸化第1銅(酸化銅(I))、酸化第2銅(酸化銅(II))を使用できるが、湿度の高い空気中でも安定性に優れるため、酸化第2銅が好ましい。
酸化銅(B)の含有量は、含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.00015〜0.02質量部が好ましく、0.0003〜0.001質量部がより好ましく、0.0003〜0.0007質量部が特に好ましい。
酸化銅(B)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体組成物は、詳しくは後述するように、式(i)〜(iii)を満足しやすい。式(i)〜(iii)を満足する含フッ素共重合体組成物の成形体は、より高温での耐ストレスクラック性に優れる。酸化銅(B)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体組成物の成形体の着色が抑制される。
酸化銅(B)の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。酸化銅(B)のBET比表面積は、5〜30m/gが好ましく、10〜20m/gがより好ましい。平均粒径が上記範囲の上限値以下である場合や、BET比表面積が上記範囲の下限値以上である場合には、含フッ素共重合体組成物の成形体において、酸化銅(B)を起点としたクラックが生じにくい。平均粒径が上記範囲の下限値以上である酸化銅(B)や、BET比表面積が上記範囲の上限値以下である酸化銅(B)は、製造しやすい。
本明細書において、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
本明細書において、BET比表面積は、窒素ガス吸着BET法により測定した値である。
〔その他の成分〕
本発明の含フッ素共重合体組成物は、種々の特性を発現させるために、含フッ素共重合体(A)および酸化銅(B)以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、顔料・染料、摺動性付与剤、導電性付与物質、繊維強化剤、熱伝導性付与剤、フィラー、含フッ素共重合体(A)以外の高分子材料、改質剤、結晶核剤発泡剤、発泡核剤、架橋剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。具体例としては、たとえば特許文献1に例示されているものを使用できる。
その他の成分の含有量は、付与する特性に応じて適宜選択できる。その他の成分は、1種または2種以上を用いることができる。
〔含フッ素共重合体組成物〕
本発明の含フッ素共重合体組成物は、下記式(i)〜(iii)を満足する。
α≧10…(i)
0.8≦α24/α≦1.2…(ii)
0.8≦α96/α≦1.2…(iii)
ただし、上記式中の記号は、以下を意味する。
α:含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
α24:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で24時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
α96:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で96時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
αは、含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)と、必要に応じて使用されるその他の成分とを溶融混練して得られた含フッ素共重合体組成物について、225℃での加熱を行う前の容量流速である。
αが、式(i)に記載された範囲の下限値以上であると、含フッ素共重合体組成物の成形性が優れ、式(i)に記載された範囲の上限値以下であると、含フッ素共重合体組成物の成形体の機械的強度、耐ストレスクラック性が優れる。
なお、含フッ素共重合体組成物が、高温での熱履歴を一定以上受けたものである場合、αは、式(i)に記載された範囲の下限値未満となりやすい。
αは、使用する含フッ素共重合体(A)の容量流速を調整することにより、制御できる。
αは、下記式(ia)を満足することが好ましく、下記式(ib)を満足することがより好ましい。
10≦α≦50…(ia)
15≦α≦35…(ib)
α24/αは、含フッ素共重合体組成物を直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットに成形し、該ペレットを225℃で24時間加熱したときの、225℃での加熱を行う前の容量流速に対する含フッ素共重合体組成物の容量流量変化率を意味する。α96/αは、含フッ素共重合体組成物を直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットに成形し、該ペレットを225℃で96時間加熱したときの、225℃での加熱を行う前の容量流速に対する含フッ素共重合体組成物の容量流量変化率を意味する。
尚、加熱に供するペレットは、各ペレットのそれぞれが、直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmの範囲内にあればよく、この範囲内で、ペレット同士の直径、長さが互いに異なっていてもよい。
α24/αが式(ii)に記載された範囲内であって、かつ、α96/αが式(iii)に記載された範囲内である含フッ素共重合体組成物の成形体は、加熱による容量流速変化率が少なく、より高温での耐ストレスクラック性に優れる。
本発明者は、含フッ素共重合体組成物の成形体の高温での耐ストレスクラック性について検討したところ、含フッ素共重合体組成物を225℃で加熱した際の容量流速の挙動と、該含フッ素共重合体組成物の成形体の高温での耐ストレスクラック性との間に、関係があることを見出した。
具体的には、加熱時間が0〜約24時間の範囲においては、加熱時間の経過にともなって容量流速が顕著に増加し、加熱時間が約24時間〜約96時間の範囲においては、加熱時間の経過にともなって容量流速が顕著に低下する含フッ素共重合体組成物の成形体は、高温での耐ストレスクラック性が不充分な傾向にあることを見出した。
そこで、本発明者は、24時間加熱したときの含フッ素共重合体組成物の容量流速α24の値と、96時間加熱したときの含フッ素共重合体組成物の容量流速α96の値に着目し、さらに検討を進めた。
その結果、24時間加熱したときの容量流速変化率、すなわちα24/αが式(ii)に記載された範囲内であって、かつ、96時間加熱したときの容量流速変化率、すなわちα96/αが式(iii)に記載された範囲内である含フッ素共重合体組成物の成形体は、より高温での耐ストレスクラック性が優れることを見出した。
加熱時間が0〜約24時間の範囲においては、加熱時間の経過にともなって容量流速が顕著に増加してα24/αが式(ii)に記載された範囲の上限値を超え、かつ、加熱時間が約24時間〜約96時間の範囲においては、加熱時間の経過にともなって容量流速が顕著に低下してα96/αが式(iii)に記載された範囲の下限値未満となる含フッ素共重合体組成物は、加熱時間が0〜約24時間の範囲においては、主に分解が進行し、加熱時間が約24時間〜約96時間の範囲においては、分解により生じた成分が架橋する等しているものと推測できる。
これに対して、α24/αが式(ii)を満足し、かつ、α96/αが式(iii)を満足する含フッ素共重合体組成物は、長時間の加熱によっても分解しにくく、そのため、架橋もしにくいものと考えられる。これに起因して、式(ii)および式(iii)を満足する含フッ素共重合体組成物の成形体は、より高温での耐ストレスクラック性に優れるものと考えられる。
このように24時間加熱したときの容量流量変化率α24/αと、96時間加熱したときの容量流量変化率α96/αは、成形体の高温での耐ストレスクラック性の指標となる。
α24/α、およびα96/αは、たとえば、含フッ素共重合体(A)の製造時にアルコールからなる連鎖移動剤を使用して、水酸基からなる末端基(a4)を導入し、かつ、酸化銅(B)を添加することにより、好適な範囲に調整できる。また、酸化銅(B)の添加量により、α24/αおよびα96/αを調整することもできる。
α24/αは、下記式(iia)を満足することが好ましく、下記式(iib)を満足することがより好ましい。
α96/αは、下記式(iiia)を満足することが好ましい。
0.85≦α24/α≦1.0…(iia)
0.9≦α24/α≦1.0…(iib)
0.8≦α96/α≦1.0…(iiia)
含フッ素共重合体組成物は、含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)と、必要に応じて使用されるその他の成分とを公知の方法で溶融混練することにより製造できる。本発明の含フッ素共重合体組成物は、耐熱性に優れ、熱劣化が著しく抑制されているため、高温成形が可能である。
溶融混練(押出機のシリンダー温度)は、250〜320℃、30秒間〜10分間の条件で行うことが好ましい。
以上説明したように、本発明の含フッ素共重合体組成物は、高温での剛性に優れるとともに、より高温での耐ストレスクラック性に優れる成形体を成形できる。そのため、耐熱性が必要な電線被覆材を形成するための耐熱電線材料として好適に使用される。
〔成形体〕
本発明の成形体は、上述した本発明の含フッ素共重合体組成物を、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、静電塗装等の従来公知の成形方法により成形加工したものである。
また、本発明の含フッ素共重合体組成物を成形して得られる成形体は、高温での剛性に優れるとともに、耐ストレスクラック性に優れるため、(1)ロボット、電動機、発電機、変圧器等の電気機械、家庭用電気機器の電線被覆材、(2)電話、無線機等の通信用伝送機器の電線被覆材、(3)コンピュータ・データ通信機器・端末機器等の電子機器の電線被覆材、(4)鉄道車両用電線被覆材、(5)自動車用電線被覆材、(6)航空機用電線被覆材、(7)船舶用電線被覆材、(8)ビル・工場幹線、発電所、石油化学・製鉄プラント等のシステム構成用電線被覆材等、各種機器類の電線被覆材の用途に好適に用いることができる。
また、本発明の成形体は、チューブ、シート、フィルム、フィラメント、ポンプケーシング、継ぎ手類、パッキング、ライニング、コーティング等にも使用できる。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種評価方法、測定方法を以下に示す。
[共重合組成(モル%)および末端基の分析]
含フッ素共重合体の共重合組成(各繰り返し単位の含有量)は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)測定の結果から算出した。
末端基については、フーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認した。
[平均粒径]
平均粒径は、Sympatec社製レーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS−RODOS」を用いて測定した。
[BET比表面積]
BET比表面積は、CarloErba社製「SORPTY−1750」を用い、窒素ガス吸着BET法により測定した。
[融点(℃)]
含フッ素共重合体の融点は、走査型示差熱分析器(日立ハイテクサイエンス社製「DSC7020(商品名)」)を用いて、空気雰囲気下、10℃/分で300℃まで昇温し、含フッ素共重合体(A)を加熱した際の吸熱ピークに対応する温度である。
[容量流速]
テクノセブン社製のメルトフローテスタを用いて、温度297℃、荷重49Nの条件で、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に試料を押し出すときの押出し速度(g/10分)を求め、これを容量流速とした。
(1)含フッ素共重合体(A)の容量流速
上記方法により容量流速を測定した。
(2)α
得られた含フッ素共重合体組成物(比較例1および2については含フッ素共重合体。)について、上記方法により容量流速αを測定した。
(3)α24
製造した含フッ素共重合体組成物(比較例1および2については含フッ素共重合体。)のペレット(質量:5g、直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mm)を炉内温度225℃の加熱炉(大気雰囲気)内に入れ、24時間保持した。その後、含フッ素共重合体組成物を加熱炉から取り出して室温まで放冷した後、上記方法により容量流速α24を測定した。
(4)α96
製造した含フッ素共重合体組成物(比較例1および2については含フッ素共重合体。)のペレット(質量:5g、直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mm)を炉内温度が225℃の加熱炉(大気雰囲気)内に入れ、96時間保持した。その後、含フッ素共重合体組成物を加熱炉から取り出して室温まで放冷した後、上記方法により容量流速α96を測定した。
[耐ストレスクラック性評価]
口径が30mmの押出し機にて、1.8mmの芯線(スズメッキ銅撚線)に被覆厚0.5mmで、含フッ素共重合体組成物(比較例1および2については含フッ素共重合体。)を被覆した。
条件は以下の通りである。
成形温度:320℃。
DDR(Draw−Down Ratio):16。
引き取り速度:10m/分。
上記のように被覆した電線を5℃刻みの所定温度で96時間アニール処理した。アニール処理後、電線を電線自体に8巻き以上まきつけ(自己径巻きつけ)、成形体試料を作製した。次に、この成形体試料をギヤオーブンで225℃、1時間暴露し、クラックの有無を確認した。サンプル数は5個とした。
5個すべての成形体試料にクラックが発生する最低アニール温度(T1)と、5個すべての成形体試料にクラックが発生しない最高アニール温度(T2)を求め、これらの値を下記式(α)に代入し、ストレスクラック温度(Tb)を求めた。
ストレスクラック温度(Tb)とは、上記の実験で求めた、成形体試料の50%が割れるアニール温度である。ストレスクラック温度が高いほど、耐ストレスクラック性が高いことになる。ストレスクラック温度は、205℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましい。
Tb=T1−ΔT(S/100−1/2)…(α)
ただし、上記式(α)中の記号は、以下を意味する。
Tb:ストレスクラック温度、
T1:全成形体試料にクラックが発生する最低アニール温度、
ΔT:アニール温度の間隔(5℃)、
S:全成形体試料にクラックが発生しない最高アニール温度(T2)から全成形体試料にクラックが発生する最低アニール温度(T1)までの各温度におけるクラックの発生確率(たとえば成形体試料5本のうち2本にクラックが発生した場合には、発生確率は2/5=0.4となる。)の総和。
[実施例1]
内容積が430リットルの撹拌機付き重合槽を脱気して、CF(CFHの418.2kg、PFBEの2.12kg、メタノールの3.4kgを仕込み、攪拌しながら66℃まで昇温し、TFE/エチレン=84/16(モル%)の混合ガスを1.5MPaG(ゲージ圧)になるまで導入し、50質量%tert−ブチルペルオキシピバレートのCF(CFH溶液の26gとCF(CFHの4974gを混合した溶液を注入し、重合を開始した。重合中は、圧力が1.5MPaGとなるようにTFE/エチレン=54/46(モル%)の混合ガスと、該混合ガスの100モル%に対して1.9モル%に相当する量のPFBEを連続的に添加し、TFE/エチレン混合ガスを34kg仕込んだ後にオートクレーブを冷却し、残留ガスをパージし、重合を終了させた。
得られた含フッ素共重合体のスラリーを850リットルの造粒槽へ移し、340Lの水を加えて攪拌しながら加熱し、重合媒体や残留モノマーを除去し造粒物を得た。
得られた造粒物を150℃で5時間乾燥して、実施例1の含フッ素共重合体の造粒物(1)の34kgを得た。
造粒物(1)の共重合組成、融点、容量流速を表1に示す。
また、該造粒物(1)の末端基をフーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認したところ、水酸基に起因する3650cm−1付近でのピークが確認された。
造粒物(1)の100質量部に対し、酸化銅(II)(酸化第2銅:平均粒径0.8μm、BET比表面積12m/g)を0.00045質量部添加し、口径が30mmの押出機にて、シリンダー温度260〜300℃、ダイス温度250℃、スクリュ回転数30rpmの条件で溶融押出しを行い、含フッ素共重合体組成物のペレット(1)を作製した。
得られたペレット(1)を電線の被覆に用い、上記方法にて、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
図1に、実施例1で得られた含フッ素共重合体組成物のペレット(1)(質量:5g、直径2.4〜2.5mm、長さ2.5mm)を炉内温度225℃の加熱炉(大気雰囲気)内に入れ、0〜96時間加熱したときの容量流速変化率のグラフを示す。
横軸は加熱時間(n時間)であり、縦軸は容量流速変化率(α/α)である。
各プロットは、n=1時間、8時間、24時間、48時間、96時間のデータである。また、α=26.1(g/10min)、α=25.2(g/10min)、α48=24.4(g/10min)であった。α、α24、α96は、表1に記載のとおりである。
各加熱時間における容量流速αは、ペレットを加熱炉から取り出して室温まで放冷した後、先に説明した方法で測定した。
[実施例2]
酸化銅(II)の添加量を0.00065質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット(2)を作製し、実施例1と同様の測定および算出を行った。
結果を表1に示す。
[実施例3]
連続的に添加するPFBEの量を、TFE/エチレン=54/46(モル%)の混合ガスの100モル%に対してに対して2.1モル%に相当する量とした以外は、実施例1と同様な方法で重合し、造粒物を150℃で5時間乾燥して、実施例3の含フッ素共重合体の造粒物(3)の34kgを得た。
造粒物(3)の共重合組成、融点、容量流速を表1に示す。
また、該造粒物(3)の末端基をフーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認したところ、水酸基に起因する3650cm−1付近でのピークが確認された。
造粒物(3)の100質量部に対し、実施例1で用いたものと同じ酸化銅(II)を0.00045質量部添加した以外は、実施例1と同様に溶融押出しを行い、含フッ素共重合体組成物のペレット(3)を作製した。
得られたペレット(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
[実施例4]
連続的に添加するPFBEの量を、TFE/エチレン=54/46(モル%)の混合ガスの100モル%に対して1.6モル%に相当する量とした以外は、実施例1と同様な方法で重合し、造粒物を150℃で5時間乾燥して、実施例4の含フッ素共重合体の造粒物(4)の34kgを得た。
造粒物(4)の共重合組成、融点、容量流速を表1に示す。
また、該造粒物(4)の末端基をフーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認したところ、水酸基に起因する3650cm−1付近でのピークが確認された。
造粒物(4)の100質量部に対し、実施例1で用いたものと同じ酸化銅(II)を0.00045質量部添加した以外は、実施例1と同様に溶融押出しを行い、含フッ素共重合体組成物のペレット(4)を作製した。
得られたペレット(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
[実施例5]
連続的に添加するPFBEの量を、TFE/エチレン=54/46(モル%)の混合ガスに対して2.2モル%に相当する量とした以外は、実施例1と同様な方法で重合し、造粒物を150℃で5時間乾燥して、実施例5の含フッ素共重合体の造粒物(5)の34kgを得た。
造粒物(5)の共重合組成、融点、容量流速を表1に示す。
また、該造粒物(5)の末端基をフーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認したところ、水酸基に起因する3650cm−1付近でのピークが確認された。
造粒物(5)の100質量部に対し、実施例1で用いたものと同じ酸化銅(II)を0.00030質量部添加した以外は、実施例1と同様に溶融押出しを行い、含フッ素共重合体組成物のペレット(5)を作製した。
得られたペレット(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
[実施例6]
酸化銅(II)の添加量を0.001質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、ペレット(6)を作製し、実施例1と同様の測定および算出を行った。
結果を表1に示す。
[実施例7]
酸化銅(II)の添加量を0.0015質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、ペレット(7)を作製し、実施例1と同様の測定および算出を行った。
結果を表1に示す。
[実施例8]
酸化銅(II)の添加量を0.0020質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、ペレット(8)を作製し、実施例1と同様の測定および算出を行った。
結果を表1に示す。
[比較例1]
酸化銅(II)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、ペレット(9)を作製し、実施例1と同様の測定および算出を行った。
結果を表1に示す。
図1に、比較例1の含フッ素共重合体のペレット(9)(質量:5g、直径2.4〜2.6mm、長さ2.5mm)を炉内温度225℃の加熱炉(大気雰囲気)内に入れ、0〜96時間加熱したときの容量流速変化率のグラフを示す。
横軸は加熱時間(n時間)であり、縦軸は容量流速変化率(α/α)である。
各プロットは、n=1時間、8時間、24時間、48時間、96時間のデータである。また、α=34.3(g/10min)、α=36.2(g/10min)、α48=18.1(g/10min)であった。α、α24、α96は、表1に記載のとおりである。
各加熱時間における容量流速αは、ペレットを加熱炉から取り出して室温まで放冷した後、先に説明した方法で測定した。
[比較例2]
内容積が94リットルの撹拌機付き重合槽を脱気して、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの63.1kg、連鎖移動剤である1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(商品名「AK225cb」旭硝子社製、以下、「AK225cb」という。)の42.1kg、及びPFBEの0.7kgを仕込み、TFEの13.9kg、及びエチレンの0.5kgを圧入した。
重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤溶液としてターシャリーブチルパーオキシピバレート(以下、「PBPV」という。)の1質量%のAK225cb溶液の460mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるようにTFE/エチレン=60/40のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、モノマー混合ガスの仕込みに合わせて、TFEとエチレンの合計モル数に対して2.0モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。
重合開始6.0時間後、モノマー混合ガスの7.4kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに重合槽の圧力を常圧までパージした。
得られた含フッ素共重合体のスラリーを、水の77kgを仕込んだ220L(リットル)の造粒槽に投入し、次いで撹拌しながら105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥して、含フッ素共重合体の造粒物(10)の7.3kgを得た。
造粒物(10)の共重合組成、融点、容量流速を表1に示す。
また、該造粒物(10)の末端基をフーリエ変換型赤外分光光度計測定により確認したところ、塩素基を確認でき、水酸基は確認できなかった。
造粒物(10)について、口径が30mmの押出機にて、シリンダー温度260〜300℃、ダイス温度250℃、スクリュ回転数30rpmの条件で溶融押出しを行い、含フッ素共重合体のペレット(10)を作製した。
得られたペレット(10)を用いた以外は実施例1と同様にして、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例2で得られた造粒物(10)の100質量部に対し、実施例1で用いたものと同じ酸化銅(II)を0.0005質量部添加した以外は、実施例1と同様に溶融押出しを行い、含フッ素共重合体組成物のペレット(11)を作製した。
得られたペレット(11)を用いた以外は実施例1と同様にして、耐ストレスクラック性評価を行ってストレスクラック温度を求めた。
また、上記方法により、α、α24、α96を測定し、α24/α、α96/αを算出した。
結果を表1に示す。
Figure 2018145209
各実施例の成形体は、ストレスクラック温度がいずれも208℃以上であり、高温での耐ストレスクラック性が優れていることが明らかとなった。
なかでも、α24/α、α96/αの各値がより好適な範囲にある実施例2の成形体は、ストレスクラック温度が216℃であり、高温での耐ストレスクラック性が非常に優れていた。
また、実施例1、実施例2および比較例1の結果から、ストレスクラック温度も向上することがわかった。具体的には、ストレスクラック温度が、実施例1では比較例1よりも29℃向上し、実施例2では比較例1よりも31℃向上した。
一方、比較例2および比較例3の結果から、繰り返し単位の(a1)と繰り返し単位(a2)とのモル比が特定の範囲外であるとともに、水酸基からなる末端基(a4)を有しない含フッ素共重合体の場合、酸化銅(II)を添加しているが、ストレスクラック温度は13℃しか向上せず、高温での耐ストレスクラック性は不充分であった。
本発明の含フッ素共重合体組成物は、従来よりも高温での耐ストレスクラック性に優れる成形体を製造できる。
そのため、本発明の成形体は、特に、(1)ロボット、電動機、発電機、変圧器等の電気機械、家庭用電気機器の電線被覆材、(2)電話、無線機等の通信用伝送機器の電線被覆材、(3)コンピュータ・データ通信機器・端末機器等の電子機器の電線被覆材、(4)鉄道車両用電線被覆材、(5)自動車用電線被覆材、(6)航空機用電線被覆材、(7)船舶用電線被覆材、(8)ビル・工場幹線、発電所、石油化学・製鉄プラント等のシステム構成用電線被覆材等、各種機器類の電線被覆材の用途に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 含フッ素共重合体(A)と、酸化銅(B)とを含有する含フッ素共重合体組成物であって、
    前記含フッ素共重合体(A)は、エチレンに基づく繰り返し単位(a1)と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a2)と、エチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能な、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを除くその他のモノマーに基づく繰り返し単位(a3)とを有し、主鎖末端が塩素原子を有さず、
    前記繰り返し単位(a1)と前記繰り返し単位(a2)とのモル比[(a1)/(a2)]が44/56〜50/50であり、前記含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(a3)の含有量が1.6〜2.4モル%であり、
    該含フッ素共重合体組成物が、下記式(i)〜(iii)を満足することを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
    α≧10…(i)
    0.8≦α24/α≦1.2…(ii)
    0.8≦α96/α≦1.2…(iii)
    ただし、上記式中の記号は、以下を意味する。
    α:含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
    α24:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で24時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
    α96:含フッ素共重合体組成物からなる直径2.0〜3.0mm、長さ2.0〜3.0mmのペレットを225℃で96時間加熱した後の含フッ素共重合体組成物の297℃、荷重49Nにおける容量流速(単位:g/10分)。
  2. 前記含フッ素共重合体(A)は、前記主鎖末端に、水酸基からなる末端基(a4)を有する、請求項1に記載の含フッ素共重合体組成物。
  3. 前記酸化銅(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.00015〜0.02質量部である、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体組成物。
  4. 前記酸化銅(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、0.0003〜0.001質量部である、請求項3に記載の含フッ素共重合体組成物。
  5. 前記含フッ素共重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(a3)の含有量が、1.8〜2.2モル%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  6. 前記酸化銅(B)が、酸化第二銅である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  7. 前記酸化銅(B)の平均粒径が0.1〜10μmであり、BET比表面積が5〜30m/gである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  8. 前記含フッ素共重合体(A)の融点が250℃〜265℃である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  9. 前記含フッ素共重合体(A)の297℃、荷重49Nにおける容量流速が、15〜40g/10分である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  10. 耐熱電線材料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物を成形してなる成形体。
JP2015148486A 2015-07-28 2015-07-28 含フッ素共重合体組成物および成形体 Pending JP2018145209A (ja)

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