JP2018138508A - クリストバライト層形成シリカガラス坩堝及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも炭素の不純物濃度が低く、比較的長いライフタイムが期待できる高品質結晶を得られ、クラックが生じ難いクリストバライト層形成シリカガラス坩堝やその製造方法の提供。
【解決手段】シリカガラス坩堝の内側表面に所定厚さの無気泡シリカガラス層を形成し、無気泡シリカガラス層の表面をバリウム(Ba)等から選択されるアルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆し、シリカガラス坩堝の外側表面を内側と同じ物質で被覆し、及び、シリカガラス坩堝に、不活性ガス雰囲気中等で熱処理を実施して水酸化物で被覆した表面にクリストバライト層を形成する、該熱処理後のクリストバライト層の如何なる部分においてもアルカリ土類金属の濃度Ci(ppma)が、下記式である、シリカガラス坩堝及びその製造方法。Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3|(Ri(Å)はアルカリ土類金属のイオン半径)
【選択図】図9
【解決手段】シリカガラス坩堝の内側表面に所定厚さの無気泡シリカガラス層を形成し、無気泡シリカガラス層の表面をバリウム(Ba)等から選択されるアルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆し、シリカガラス坩堝の外側表面を内側と同じ物質で被覆し、及び、シリカガラス坩堝に、不活性ガス雰囲気中等で熱処理を実施して水酸化物で被覆した表面にクリストバライト層を形成する、該熱処理後のクリストバライト層の如何なる部分においてもアルカリ土類金属の濃度Ci(ppma)が、下記式である、シリカガラス坩堝及びその製造方法。Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3|(Ri(Å)はアルカリ土類金属のイオン半径)
【選択図】図9
Description
本発明は、シリコン単結晶などの高品質結晶の成長に用いるシリカガラス坩堝において、その表面にクリストバライト層を形成したシリカガラス坩堝に関する。より具体的には、炭素等の不純物の含有濃度が低くライフタイムが比較的長い高品質単結晶を成長させることが可能となるクリストバライト層形成シリカガラス坩堝や該坩堝を得るための製造方法に関する。
工業的なシリコン単結晶製造方法は、チョクラルスキー法(Czochralski法、以下CZ法と略す)とフローティングゾーン法(Floating Zone法、以下FZ法と略す)に大別されるが、FZ法ではそもそも坩堝を使わないため、本発明を実施する技術分野はCZ法によるシリコン等の単結晶製造分野である。故に以下の説明でもCZ法を例にとって説明を行う。
なお「結晶の製造」を業界や学会では「結晶成長」と呼ぶことが多いので、本発明でも以後は「結晶成長」という表現を使う。またCZ法で成長したシリコン単結晶を「CZシリコン単結晶」、「CZ結晶」などと呼称する。
CZシリコン単結晶の成長を行う際には通常は高純度ガラス製の坩堝を用い、業界ではこれを慣用的に「石英ガラス坩堝(或いは略して石英坩堝)」と呼ぶが、これは材料科学的には適切ではない。何故ならば石英(quartz)とは二酸化ケイ素(SiO2)から成る多結晶体であり、一方ガラスとは二酸化ケイ素から成るアモルファス構造体を指すからである。
二酸化ケイ素のアモルファス構造体を一般にシリカガラス(silica glassまたはsilicate glass)と呼び、この中には、窓ガラスのように低純度のものからCZ法の坩堝に使われる高純度ガラスまでが含まれる。そこで本発明の説明では、慣用的に用いられている「石英ガラス坩堝」という表現をやめ「シリカガラス坩堝(略してシリカ坩堝)」を用いることにする。なお本発明は、高純度シリカガラスの坩堝に限定されるものでないことは言うまでもない。
CZシリコン単結晶は、半導体素子、パワー半導体素子及び太陽電池セルなどのそれぞれの基板として用いられ、いずれの場合も素子やセルの性能向上のために高品質結晶が望まれている。
シリコン結晶の品質を特徴づける物理量としてライフタイムが従来から知られており、これはシリコン結晶に光を照射して正と負のキャリアを発生させた瞬間からそれらが再結合して消滅するまでの時間で表わされる。正と負のキャリアの再結合は、結晶欠陥や不純物において起こることが知られているので、同一の抵抗率の結晶であればライフタイムの長い結晶ほど結晶欠陥や不純物が少ない、すなわち高品質結晶であると言うことができる。また再結合を起こす結晶欠陥や不純物を再結合中心と呼ぶので、ライフタイムの長い結晶は再結合中心が少ない結晶である。
シリコン結晶の品質を特徴づける物理量としてライフタイムが従来から知られており、これはシリコン結晶に光を照射して正と負のキャリアを発生させた瞬間からそれらが再結合して消滅するまでの時間で表わされる。正と負のキャリアの再結合は、結晶欠陥や不純物において起こることが知られているので、同一の抵抗率の結晶であればライフタイムの長い結晶ほど結晶欠陥や不純物が少ない、すなわち高品質結晶であると言うことができる。また再結合を起こす結晶欠陥や不純物を再結合中心と呼ぶので、ライフタイムの長い結晶は再結合中心が少ない結晶である。
CZ法によってシリコン単結晶の成長を行う場合の結晶成長炉の内部構造を、図1に模式的に示した。内側から順に、円形のシリカ坩堝、該坩堝と接触して外側を直接支えるグラファイト・サセプター、該サセプターの周囲を取り囲むグラファイト・ヒーター、該ヒーターの周囲を取り囲むグラファイト断熱材という同心円構造となっている。
CZ法によるシリコン単結晶の成長手順は次の通りである。まず原料となる多結晶シリコンをシリカ坩堝に充填し、グラファイト・ヒーターで加熱・溶融してシリコン融液を作る。次に予め準備したシリコン単結晶からなる種結晶を鉛直に吊るしてその先端を融液表面に接触させ、融液温度を適切に保った状態で種結晶を回転させながらゆっくり鉛直上方に引き上げると、種結晶直下の融液が連続的に固化し始め、今度はその固化部分が新たな種結晶となる。このように、種結晶をきっかけとして融液が次々と連続的に固化する現象を結晶成長と呼ぶ。
CZ法によるシリコン単結晶の成長手順は次の通りである。まず原料となる多結晶シリコンをシリカ坩堝に充填し、グラファイト・ヒーターで加熱・溶融してシリコン融液を作る。次に予め準備したシリコン単結晶からなる種結晶を鉛直に吊るしてその先端を融液表面に接触させ、融液温度を適切に保った状態で種結晶を回転させながらゆっくり鉛直上方に引き上げると、種結晶直下の融液が連続的に固化し始め、今度はその固化部分が新たな種結晶となる。このように、種結晶をきっかけとして融液が次々と連続的に固化する現象を結晶成長と呼ぶ。
シリカ坩堝を用いたCZ法によるシリコン単結晶の成長において、最も多く取り込まれる不純物はシリカガラスの主成分である酸素であり、結晶内での酸素濃度は1E18(個/cm3)前後である。図2は、酸素濃度に対する再結合中心密度の依存性を示す(非特許文献1参照)。図2から明らかなように酸素濃度が低いほど再結合中心が少ないので、低酸素結晶ほどライフタイムが長いと言える。
成長中の結晶に酸素が取り込まれるメカニズムとして一般的に知られているのは、
Si(融液) + SiO2 (シリカ坩堝内側) → 2SiO↑ (1)
なる反応である。ここで大部分のSiOは融液表面から蒸発し(このためSiO↑と記した)、残りの少量が成長中の結晶に取込まれその結果1E18(個/cm3)レベルの酸素濃度となることが広く知られている。
成長中の結晶に酸素が取り込まれるメカニズムとして一般的に知られているのは、
Si(融液) + SiO2 (シリカ坩堝内側) → 2SiO↑ (1)
なる反応である。ここで大部分のSiOは融液表面から蒸発し(このためSiO↑と記した)、残りの少量が成長中の結晶に取込まれその結果1E18(個/cm3)レベルの酸素濃度となることが広く知られている。
図2にはMCZ−Siという表記が見られるが、これは融液の熱対流を抑制するために炉の外から数1000ガウスの磁場(Magnetic Field)を印加したCZ成長方法(MCZと略す)であることを示す。シリコン融液は液体金属であるため、磁場を印加することによってその対流を抑止することができ、その結果式(1)の反応も抑止され低酸素濃度の結晶を成長することができることは公知の事実である。
酸素に続いて多い不純物が炭素である。炭素が結晶に混入するメカニズムは次の通りであることが知られている。すなわち反応(1)で発生したSiOが
SiO + C(炉内のグラファイト材) → Si + CO↑ (2)
なる反応で還元されて一酸化炭素(COと略す)が発生し、このCOが融液に達し成長中の結晶に取込まれることが原因である。この結果、通常のCZシリコン単結晶には約1E15(個/cm3)レベルの炭素が含まれている。図3に、CZシリコン単結晶中の炭素濃度とライフタイムの関係を示す(非特許文献2参照)。図3から明らかな様に、炭素濃度が低いほどCZシリコン結晶のライフタイムが長くなる。さらに式(1)の反応でシリカ坩堝の内側が溶ける際に、坩堝に含まれている鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の重金属不純物も融液に溶け出し、成長中の結晶に取込まれることが知られている。これらの濃度は炭素濃度よりかなり低く例えばFeの場合1E12(個/cm3)かそれ以下であることが知られているが、図4のように、この濃度レベルであってもライフタイムに影響することが知られている(非特許文献1参照)。
SiO + C(炉内のグラファイト材) → Si + CO↑ (2)
なる反応で還元されて一酸化炭素(COと略す)が発生し、このCOが融液に達し成長中の結晶に取込まれることが原因である。この結果、通常のCZシリコン単結晶には約1E15(個/cm3)レベルの炭素が含まれている。図3に、CZシリコン単結晶中の炭素濃度とライフタイムの関係を示す(非特許文献2参照)。図3から明らかな様に、炭素濃度が低いほどCZシリコン結晶のライフタイムが長くなる。さらに式(1)の反応でシリカ坩堝の内側が溶ける際に、坩堝に含まれている鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の重金属不純物も融液に溶け出し、成長中の結晶に取込まれることが知られている。これらの濃度は炭素濃度よりかなり低く例えばFeの場合1E12(個/cm3)かそれ以下であることが知られているが、図4のように、この濃度レベルであってもライフタイムに影響することが知られている(非特許文献1参照)。
以上述べたように、CZシリコン単結晶のライフタイムを伸ばすには、酸素、炭素、重金属の各不純物を極力減らす必要がある。その代表的な方法が、先に述べたMCZ法である。この方法では式(1)の反応が抑制される結果SiOの発生が減り、成長中の結晶の酸素濃度が低下することは勿論、式(2)の反応も抑制されてCOの発生が減るため低炭素結晶になる。さらに坩堝内側の溶解が抑制されることから重金属の融液への溶け込みも減ると期待され、総合的にライフタイムの向上を図ることが可能である。このため今日では半導体素子やパワー半導体素子用のCZシリコン結晶は大部分がMCZ法で成長されている。しかしながら、低コストを要求される太陽電池用のシリコン単結晶では、磁場を印加する設備の必要なMCZ法は使用されず、より安価なCZ法で成長を行っている。
結晶に取込まれる不純物を低減する方法として、シリカ坩堝の内側表面を、融液に対して不活性な物質でコーティングする方法も検討されてきた。代表的なコーティング材はシリコンナイトライド(Si3N4)である(非特許文献3参照)。しかしながらシリコンナイトライドは融液に対して完全に不活性ではなく、結晶に窒素が混入するという問題がある。単結晶シリコン中の窒素は単体では存在せず、微量(1E14(個/cm3)以下)であってもN−N−O等の複合構造の結晶欠陥を作ることが知られており(非特許文献4参照)、ライフタイム改善の目的から好ましくないことは明らかである。
この他のシリカ坩堝の内壁を処理する試みとして代表的なものは、クリストバライト化の促進剤を塗布して1000℃前後に加熱し、内壁表面のシリカをクリストバライトに構造変換させる方法である。この方法は内壁のごく表層のみをクリストバライトへ構造変換させるため、本発明ではこの部分をクリストバライト層と呼ぶことにする。クリストバライト層はシリカガラスを構成するSiO2のアモルファス構造が結晶構造に構造転換したものであり、高温で極めて安定かつ不活性でシリコン融液と反応しにくいことが知られている。またクリストバライトは白色で不透明であるので、クリストバライト層を形成する熱処理法を一般に失透化法と呼ぶが、クリストバライトだけが不透明ではなくシリカのもう一つの結晶構造体であるトリジマイトも不透明である。そこで本発明では厳密さを期するため、クリストバライト層を形成する熱処理を失透化と呼ばずにクリストバライト化と呼称する。クリストバライト化を実現する方法の中で最もよく知られている方法は、水酸化バリウム(Ba(OH)2)等のアルカリ土類金属を含む物質をクリストバライト化の促進剤として用いる方法である(特許文献1参照)。しかし引き続く加熱熱処理で内壁表面をクリストバライト化させた後室温まで冷却すると、クリストバライト層にクラックを生じ易いことが知られている(特許文献1参照)。内壁表面にクラックが発生した状態で結晶成長を行うと、シリコン融液がクラックを通過してシリカガラス部分と接触するため、このシリカガラスが溶け出してしまい不純物が取り込まれる。またクラックを生じたクリストバライト層は小片となって剥がれやすいので、融液中に取り込まれると単結晶化を阻害する。
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本発明は、上述のような従来技術を背景としてなされたものであり、少なくとも炭素の不純物濃度が低く、比較的長いライフタイムが期待できる高品質結晶を得ることができ、しかも、クラックが比較的生じにくいクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を提供することを課題とする。
また、本発明は、そのようなクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、そのようなクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題の下での試験研究過程で、本発明者は、シリカガラス坩堝の内外表面にクリストバライト層を形成したクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を使用することにより、少なくとも炭素の不純物濃度が低く、比較的長いライフタイムが規定できる高品質結晶を得ることができること、クリストバライト層形成シリカガラス坩堝の内側表面や外側表面のクリストバライト層内におけるアルカリ土類金属元素の濃度を所定値以上とすることにより、クリストバライト層にクラックが比較的生じにくくなることなどを知見した。
本発明は、上記のような知見に基づいて完成したものであり、本件では、以下の発明が提供される。
<1>シリカガラス坩堝の内側表面の厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層と、該無気泡シリカガラス層の表面に形成され、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化の促進元素として含む内側クリストバライト層と、前記1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化促進元素として含む外側クリストバライト層を具備し、坩堝内側の前記クリストバライト層は、融液と対面する坩堝内側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝内側に形成され、坩堝外側の前記クリストバライト層は、グラファイト・サセプターと対面する坩堝外側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝外側に形成され、アルカリ土類金属元素のイオン半径をRi(Å)としたとき、クリストバライト層の如何なる部分においてもアルカリ土類金属元素の濃度Ci(ppma)が
Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3|
(式中、Ri(Å)は被覆物質中におけるアルカリ土類金属元素のイオン半径を、|・・・|は絶対値をそれぞれ表わす。)
であるクリストバライト層形成シリカガラス坩堝。
<2>シリカガラス坩堝の内側表面に厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層を形成すること、前記無気泡シリカガラス層の表面をバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆すること、前記シリカガラス坩堝の外側表面を内側の被覆物質と同じ物質で被覆すること、及び、前記シリカガラス坩堝に、不活性ガス雰囲気または真空中で熱処理を実施して前記アルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆した表面にクリストバライト層を形成することを含む、<1>に記載のクリストバライト層形成シリカガラス坩堝の製造方法。
<1>シリカガラス坩堝の内側表面の厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層と、該無気泡シリカガラス層の表面に形成され、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化の促進元素として含む内側クリストバライト層と、前記1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化促進元素として含む外側クリストバライト層を具備し、坩堝内側の前記クリストバライト層は、融液と対面する坩堝内側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝内側に形成され、坩堝外側の前記クリストバライト層は、グラファイト・サセプターと対面する坩堝外側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝外側に形成され、アルカリ土類金属元素のイオン半径をRi(Å)としたとき、クリストバライト層の如何なる部分においてもアルカリ土類金属元素の濃度Ci(ppma)が
Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3|
(式中、Ri(Å)は被覆物質中におけるアルカリ土類金属元素のイオン半径を、|・・・|は絶対値をそれぞれ表わす。)
であるクリストバライト層形成シリカガラス坩堝。
<2>シリカガラス坩堝の内側表面に厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層を形成すること、前記無気泡シリカガラス層の表面をバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆すること、前記シリカガラス坩堝の外側表面を内側の被覆物質と同じ物質で被覆すること、及び、前記シリカガラス坩堝に、不活性ガス雰囲気または真空中で熱処理を実施して前記アルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆した表面にクリストバライト層を形成することを含む、<1>に記載のクリストバライト層形成シリカガラス坩堝の製造方法。
本発明は、次のような態様を含むことができる。
<3>前記無気泡シリカガラス層、及び、前記1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物での被覆を、少なくとも融液に対面する全ての部分に形成する<2>に記載の製造方法。
<4>前記1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物での被覆、及び、前記内側の被覆物質と同じ物質での外側の被覆を、少なくともグラファイト・サセプターに対面する全ての部分に形成する<2>又は<3>に記載の製造方法。
<3>前記無気泡シリカガラス層、及び、前記1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物での被覆を、少なくとも融液に対面する全ての部分に形成する<2>に記載の製造方法。
<4>前記1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物での被覆、及び、前記内側の被覆物質と同じ物質での外側の被覆を、少なくともグラファイト・サセプターに対面する全ての部分に形成する<2>又は<3>に記載の製造方法。
本発明のクリストバライト層形成シリカガラス坩堝は、クラックが生じにくいものであり、単結晶成長に用いることにより、少なくとも炭素の不純物濃度が低い高品質結晶を得ることが可能である。
また、本発明の製造方法によれば、MCZを用いない場合においても、少なくとも炭素の不純物濃度が低い高品質結晶を製造することが可能で、クラックが生じにくいクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、MCZを用いない場合においても、少なくとも炭素の不純物濃度が低い高品質結晶を製造することが可能で、クラックが生じにくいクリストバライト層形成シリカガラス坩堝を得ることができる。
本発明は、クラックが生じにくく、単結晶成長に用いることにより、少なくとも炭素の不純物濃度が低い高品質結晶を得ることが可能なクリストバライト層形成シリカ坩堝やそれを得るための製造方法に関する。
以下では、上記のような本発明を創出するのに必要であった研究内容や、研究における様々な検討内容、研究や検討の進行過程などについて詳細に説明する。
以下では、上記のような本発明を創出するのに必要であった研究内容や、研究における様々な検討内容、研究や検討の進行過程などについて詳細に説明する。
クリストバライト層を形成した従来のシリカ坩堝において、クラック発生を避けるために、シリカ坩堝内壁にクリストバライト化の促進剤を塗布したのち直ちに加熱処理を行わず、原料シリコンをチャージしてこれを融解させ結晶成長へと進む方法も行われている。即ち融解過程の加熱を利用して内壁をクリストバライト化させようとする方法である。しかしこの方法では、内壁のクリストバライト化が十分進む前に原料シリコンと接触した坩堝内壁部分からクリストバライト化の促進剤が剥がれてしまい、やはりシリカガラス面とシリコン融液が直接接触する。
そこでクラックを十分小さく制御しかつクリストバライト層をより緻密な構造にするために、シリカ坩堝の内壁に無気泡シリカガラス層を形成し、この無気泡シリカガラス層の表面をアルカリ土類金属の水酸化物で被覆して熱処理を行う方法が開発された(特許文献2参照)。本発明者たちは、特許文献2の方法で直径600(mm)のシリカ坩堝の内側を処理し、このシリカ坩堝に140(kg)の原料多結晶シリコンを充填し、磁場を用いない通常のCZシリコン単結晶の成長方法で直径200(mm)の結晶を成長した。得られた結晶インゴットからダイヤモンド・ワイヤーソーで厚さ200(μm)のウエハを加工し、そのライフタイムを測定した(現在の市販ウエハの厚さは180〜220(μm)が多いため)。ここでウエハライフタイムの測定方法は以下の通りである。
ライフタイム測定の前処理として、まずキンヒドロンを溶かしたメタノール溶液を透明なビニール袋に入れ、続いてウエハをメタノール溶液中に浸漬させてウエハ全体が溶液と接触するようにした。ライフタイムはウエハ表面と内部に存在するそれぞれの不純物の影響を受けるため、この処理を行うことによってウエハ表面の不純物を電気的に不活性にできる。この結果、ウエハ内部のライフタイムがウエハ全体のライフタイムを支配するようになる(結晶の品質を評価することが目的のため、加工起因の影響を除くことがこの化学処理の目的である)。次にこの状態で1時間放置した後に、Semilab社製の測定器PV−2000を用いてウエハのライフタイムを測定した。
測定結果を市販の従来結晶と共に図5に示す。図5は、一枚のウエハ内の中央部1点とそこを中心とした半径45(mm)の円周上の4点の測定結果の平均値を、それぞれ棒グラフで示したものである(棒グラフ1本が1枚のウエハに対応する)。図5から、特許文献2の方法によるシリカ坩堝を用いると、市販のMCZ、CZ結晶の2〜3倍のライフタイムを持つCZ結晶を成長できることが明らかである。またCZ結晶よりMCZ結晶のほうが高品質であることも分かる。このように特許文献2のシリカ坩堝を用いると、坩堝内壁表面からのシリカガラスの溶解が非常に抑制される結果、融液に取込まれる酸素、炭素、重金属などの各種不純物が従来方法よりも低減されるため、ライフタイムの向上に大きな効果がある。
そこでクラックを十分小さく制御しかつクリストバライト層をより緻密な構造にするために、シリカ坩堝の内壁に無気泡シリカガラス層を形成し、この無気泡シリカガラス層の表面をアルカリ土類金属の水酸化物で被覆して熱処理を行う方法が開発された(特許文献2参照)。本発明者たちは、特許文献2の方法で直径600(mm)のシリカ坩堝の内側を処理し、このシリカ坩堝に140(kg)の原料多結晶シリコンを充填し、磁場を用いない通常のCZシリコン単結晶の成長方法で直径200(mm)の結晶を成長した。得られた結晶インゴットからダイヤモンド・ワイヤーソーで厚さ200(μm)のウエハを加工し、そのライフタイムを測定した(現在の市販ウエハの厚さは180〜220(μm)が多いため)。ここでウエハライフタイムの測定方法は以下の通りである。
ライフタイム測定の前処理として、まずキンヒドロンを溶かしたメタノール溶液を透明なビニール袋に入れ、続いてウエハをメタノール溶液中に浸漬させてウエハ全体が溶液と接触するようにした。ライフタイムはウエハ表面と内部に存在するそれぞれの不純物の影響を受けるため、この処理を行うことによってウエハ表面の不純物を電気的に不活性にできる。この結果、ウエハ内部のライフタイムがウエハ全体のライフタイムを支配するようになる(結晶の品質を評価することが目的のため、加工起因の影響を除くことがこの化学処理の目的である)。次にこの状態で1時間放置した後に、Semilab社製の測定器PV−2000を用いてウエハのライフタイムを測定した。
測定結果を市販の従来結晶と共に図5に示す。図5は、一枚のウエハ内の中央部1点とそこを中心とした半径45(mm)の円周上の4点の測定結果の平均値を、それぞれ棒グラフで示したものである(棒グラフ1本が1枚のウエハに対応する)。図5から、特許文献2の方法によるシリカ坩堝を用いると、市販のMCZ、CZ結晶の2〜3倍のライフタイムを持つCZ結晶を成長できることが明らかである。またCZ結晶よりMCZ結晶のほうが高品質であることも分かる。このように特許文献2のシリカ坩堝を用いると、坩堝内壁表面からのシリカガラスの溶解が非常に抑制される結果、融液に取込まれる酸素、炭素、重金属などの各種不純物が従来方法よりも低減されるため、ライフタイムの向上に大きな効果がある。
しかしながら、特にパワー半導体素子及び太陽電池セルのそれぞれの基板に対する高品質化は留まりそうにない。例えばパワー半導体素子用の結晶として、シリコン融液を原料多結晶以外の何物にも接触させずに保持しここから結晶成長を行うFZ法を用いるメーカーが現れている。この方法で成長したシリコン単結晶のライフタイムは10(msec)を超えるため、今のところ市場競争力が高い。しかしFZ法で成長したシリコン単結晶はCZ法によるものと比べて2倍程度高価であるため、最近は低価格化の要求が強くなり結晶メーカーはCZ法での検討を行っている。FZ法では直径200(mm)のシリコン単結晶が現在最大口径であるが、CZ法では直径300(mm)、長さ2(m)の巨大単結晶が工業的に量産されており、さらに直径450(mm)のCZ単結晶成長技術も研究されている。従って今後のコストダウンを考えると、CZ法でライフタイムを増大させることのできる結晶成長技術が強く望まれる。
太陽電池セルでは、太陽光エネルギーによってウエハ内に発生させたキャリアを、ウエハの厚さ方向やこれと直交する方向に移動させておもて面と裏面から取り出す方式である。従ってウエハの表面(おもて面と裏面を合わせて表面と呼ぶことにする)及びウエハ内部にキャリアの再結合中心が存在すると、ウエハの外に取り出す前にキャリアが消滅してしまうので、変換効率の低下をもたらす。
セルの変換効率が20%以下の場合、ウエハ表面で消滅するキャリアの方が内部で消滅するキャリアより多いことが経験的に知られている。したがってライフタイムの長い(=再結合中心の少ない)結晶を用いても、表面でのキャリア消滅のためその良好な結晶特性を生かすことができない。しかし変換効率向上の競争が世界的に展開されている現在、20%を超えるセルが工業的に量産されるようになってきた。すなわちウエハ表面でのキャリア消滅を低減させることができるようになってきており、これは結晶内部の品質が変換効率により大きな影響を与えるようになっていることを意味する。したがってライフタイムを一層向上させた結晶を安価に入手することが必須になる。
以上のように、それぞれの基板に対する高品質化は留まりそうになく、現在より高品質のシリコン単結晶を安価な方法で開発することが強く望まれる。
セルの変換効率が20%以下の場合、ウエハ表面で消滅するキャリアの方が内部で消滅するキャリアより多いことが経験的に知られている。したがってライフタイムの長い(=再結合中心の少ない)結晶を用いても、表面でのキャリア消滅のためその良好な結晶特性を生かすことができない。しかし変換効率向上の競争が世界的に展開されている現在、20%を超えるセルが工業的に量産されるようになってきた。すなわちウエハ表面でのキャリア消滅を低減させることができるようになってきており、これは結晶内部の品質が変換効率により大きな影響を与えるようになっていることを意味する。したがってライフタイムを一層向上させた結晶を安価に入手することが必須になる。
以上のように、それぞれの基板に対する高品質化は留まりそうになく、現在より高品質のシリコン単結晶を安価な方法で開発することが強く望まれる。
本発明者たちが鋭意検討したところによると、COの発生要因として更に検討を要する反応があることが判った。それは次の式(3)で示されるように、シリカ坩堝外側とこれに直接接触しているグラファイト・サセプターが反応してCOが生成されるプロセスである。
SiO2(シリカ坩堝外側) + 2C(グラファイト・サセプター)
→ Si + 2CO↑ (3)
これはシリカ坩堝外側がグラファイトによって還元される反応であり、これを抑止できれば更にCOの発生が減ることは明らかである。本発明では、以下の方法でシリカ坩堝外側とグラファイト・サセプターの反応を抑止する。
図5に示したライフタイム向上のデータから、シリカ坩堝の内側にクリストバライト層を形成する特許文献2の坩堝は、シリコン融液と坩堝の反応(1)をかなり抑制できることが明らかである。図6に示すように、結晶成長後の坩堝内壁を実際に観察すると、通常のシリカ坩堝は約1(mm)溶解している(図6(2a))のに対し、クリストバライト層は殆んど溶け出していないことが判明した(図6(2b))。
ここでシリコンは周期律表で4族に属するので、クリストバライト層はシリコンと同族元素である炭素とも反応しにくいと考えられる。従ってシリカ坩堝の内側及び外側をクリストバライト層で覆えば、内側では反応(1)を抑制する結果反応(2)も抑制され、同時に外側では反応(3)が抑制され、結果として2通り存在するCOの発生メカニズムを双方とも抑えることができるので、より低炭素濃度のシリコン結晶を成長できると考えられる。
ただしシリカ坩堝の外側をクリストバライト化する際には内側のクリストバライト化以上にクラック発生や剥がれが起こり易いことが知られており、これを回避するために外側には故意に非クリストバライト化部分を設けて応力緩和を図る方法が特許第3054362号(特許文献1)に述べられている。しかしこの方法では非クリストバライト部分においてシリカガラスとグラファイト・サセプターが直に接触し(3)の反応が起こってCOを発生するので、CZ結晶の更なる高品質化には役立たない。
SiO2(シリカ坩堝外側) + 2C(グラファイト・サセプター)
→ Si + 2CO↑ (3)
これはシリカ坩堝外側がグラファイトによって還元される反応であり、これを抑止できれば更にCOの発生が減ることは明らかである。本発明では、以下の方法でシリカ坩堝外側とグラファイト・サセプターの反応を抑止する。
図5に示したライフタイム向上のデータから、シリカ坩堝の内側にクリストバライト層を形成する特許文献2の坩堝は、シリコン融液と坩堝の反応(1)をかなり抑制できることが明らかである。図6に示すように、結晶成長後の坩堝内壁を実際に観察すると、通常のシリカ坩堝は約1(mm)溶解している(図6(2a))のに対し、クリストバライト層は殆んど溶け出していないことが判明した(図6(2b))。
ここでシリコンは周期律表で4族に属するので、クリストバライト層はシリコンと同族元素である炭素とも反応しにくいと考えられる。従ってシリカ坩堝の内側及び外側をクリストバライト層で覆えば、内側では反応(1)を抑制する結果反応(2)も抑制され、同時に外側では反応(3)が抑制され、結果として2通り存在するCOの発生メカニズムを双方とも抑えることができるので、より低炭素濃度のシリコン結晶を成長できると考えられる。
ただしシリカ坩堝の外側をクリストバライト化する際には内側のクリストバライト化以上にクラック発生や剥がれが起こり易いことが知られており、これを回避するために外側には故意に非クリストバライト化部分を設けて応力緩和を図る方法が特許第3054362号(特許文献1)に述べられている。しかしこの方法では非クリストバライト部分においてシリカガラスとグラファイト・サセプターが直に接触し(3)の反応が起こってCOを発生するので、CZ結晶の更なる高品質化には役立たない。
本発明では、クリストバライト化処理に伴うクラック発生を防止する方法を開発し、このクリストバライト化処理をシリカ坩堝の内側及び外側に応用した。クリストバライト層部分にクラックが発生する問題は、クリストバライト化熱処理後に坩堝を冷却することに原因があるので、外側表面にクリストバライト化の促進剤を塗布した後に加熱処理を行わず、そのまま原料シリコンをチャージしてこれの融解工程でクリストバライト化処理を行うという方法も考えられた。しかし図1(1)に示すように、シリカ坩堝はグラファイト・サセプターによって直接支えられているため、クリストバライト化の促進剤が剥がれてシリカガラスの外側表面がグラファイトに直に接触し反応(3)が容易に起こってしまう。
以上から、原料シリコンをチャージする前にクリストバライト化処理をクラックの発生無しに行う方法がどうしても必要である。
シリカガラス表面にクリストバライト層を形成した後これを冷却すると、特に220℃近辺でクリストバライト層にクラックが発生し易くこれは “冷め割れ” として知られている。この原因は次のA、Bの2つがある。
A.高温のクリストバライト部分はβ型クリストバライトと呼ばれる構造であり、220℃付近まで冷却されるとα型と呼ばれるクリストバライト構造に相転移し、このとき体積収縮を起こすことが知られている(非特許文献5)。従って下地の未クリストバライト化部分(シリカガラス部分)からα型クリストバライト層に対して引張り応力が発生する。
B.クリストバライトは図7に示すように、少なくとも1000(K)(727℃)から500(K)(227℃)近辺のあらゆる温度においてシリカガラスより熱膨張率が大きい(非特許文献6参照)。従って、727℃以下ではクリストバライト部分の方が下地のシリカガラス部分より大きく縮むため、シリカガラス部分から引張り応力を受ける。
しかしながら本発明者たちが検討した結果、下記に述べるようにクラック発生の原因はBよりもAの方が遥かに大きいことが分かった。
以上から、原料シリコンをチャージする前にクリストバライト化処理をクラックの発生無しに行う方法がどうしても必要である。
シリカガラス表面にクリストバライト層を形成した後これを冷却すると、特に220℃近辺でクリストバライト層にクラックが発生し易くこれは “冷め割れ” として知られている。この原因は次のA、Bの2つがある。
A.高温のクリストバライト部分はβ型クリストバライトと呼ばれる構造であり、220℃付近まで冷却されるとα型と呼ばれるクリストバライト構造に相転移し、このとき体積収縮を起こすことが知られている(非特許文献5)。従って下地の未クリストバライト化部分(シリカガラス部分)からα型クリストバライト層に対して引張り応力が発生する。
B.クリストバライトは図7に示すように、少なくとも1000(K)(727℃)から500(K)(227℃)近辺のあらゆる温度においてシリカガラスより熱膨張率が大きい(非特許文献6参照)。従って、727℃以下ではクリストバライト部分の方が下地のシリカガラス部分より大きく縮むため、シリカガラス部分から引張り応力を受ける。
しかしながら本発明者たちが検討した結果、下記に述べるようにクラック発生の原因はBよりもAの方が遥かに大きいことが分かった。
(クリストバライトの相転移起因の歪みの計算)
非特許文献5に依れば、シリカガラス、β型クリストバライト、α型クリストバライトの密度は順番に2.21(g/cm3)、2.21(g/cm3)、2.33(g/cm3)である(非特許文献5では「電融シリカ」という用語を用いているがこれは「シリカガラス」のことである)。ここで α型クリストバライトが他の2つより高密度であるということは、単位体積の中に詰まっているSiO2の数が多いということ、従ってα型クリストバライト中のSiO2の間隔は他の2つより小さいということを意味する(上記3構造の基本的な構造単位をSiO2とする)。故に、シリカガラス板を高温熱処理して表面にβ型クリストバライト層を形成し、それを220℃近辺まで冷却してα型クリストバライトに相転移させると、このα型クリストバライト層は、収縮しようとすると同時に下地のシリカガラス部分から引張り応力を受ける。以上の考察を以下において定量的に行う。なお図7(非特許文献6参照)によれば、室温〜1000Kまでの温度においてクリストバライトやシリカガラスの熱膨張率はE(−6)〜E(−7)(K-1)オーダーと非常に小さいので、これらの密度2.33(g/cm3)、2.21(g/cm3)を温度に関係なく一定として扱う。
図8に、シリカ坩堝の内側に形成されたα型クリストバライト層の一部を四角形で示した。同図ではα型クリストバライト層の一部を坩堝内側に仮定しているが、外側に仮定しても以下の議論は同じである。
図8のα型クリストバライト層部分をA−A’方向に延長して考えると、両端がある程度自由なのでα型クリストバライト層はA−A’方向にある程度収縮できる。ここである程度自由とは、自由両端は存在するが下地のシリカガラスから束縛を受けるので完全に自由ではないという意味である。
一方図8に示すようにα型クリストバライト層部分を円周方向に延長して考えると、相転移の際にこの円周方向にも当然収縮しようとするが、閉じた円環形状であるため自由端が存在せず収縮できない。言い換えると、下地のシリカガラスから作用する円周方向の引張り応力が、α型クリストバライト層の収縮を抑止できる程度に大きい。この円周方向の引張り応力のためα型クリストバライト層の一部に縦方向のクラックが入ることがあり、閉じた円環状であったα型クリストバライト層に自由表面が現れて応力緩和が起こると同時に、閉じていた円環はクラック幅に相当する収縮を起こす(ここで縦方向とは円周方向に直交した方向(A−A’方向)である)。特許第3054362号(特許文献1)において、坩堝の外側にクリストバライト層を形成する際に、意図的に縦長形状のシリカガラス部分を残す理由は、β型クリストバライト層が相転移を起こす時に生じる円周方向の引張り応力が、上述のように縦方向のクラックを発生し易くするからである。
以上の検討から、クラック発生の支配的要因は、α型クリストバライト層の収縮を妨げる引張り応力のうち円周方向の成分であることが分かった。そこでこの性質を検討する際は円周方向のみ即ち1次元での計算を行うことにする。
シリカガラスの密度は2.21であるので、1(cm3)のシリカガラス中のSiO2の個数Nsilicaは、SiO2 = 60、アボガドロ数を6.02E23とすると、
Nsilica=(6.02E23×2.21)/60=2.217E22(個/cm3)
(4)
同様に計算すると、1(cm3)のα型クリストバライト中のSiO2の個数Nαは
Nα=2.338E22(個/cm3) (5)
となり、シリカガラスよりα型クリストバライトの方がわずかに稠密であることが分かる。
α型クリストバライト層に生じる円周方向の引張り応力は、本来はより短いはずのα型クリストバライトの結晶格子が、界面においてシリカガラスの格子長さまで引き伸ばされていることに起因する。そこでまず両者の単位長さ当たりのSiO2の個数Nα*およびNsilica*を求める。これは上記(4)式、(5)式の立方根で近似できる。従って
Nα*=(2.338E22)1/3=2.8594E7(個/cm)
Nsilica*=(2.217E22)1/3=2.8092E7(個/cm)
であり、これらの逆数がそれぞれの格子長さに相当する。よってα型クリストバライト層の格子長さがシリカガラスの格子長さまで引き伸ばされた時の歪みεαは、
εα ={(1/Nsilica*)−(1/Nα*)}/(1/Nα*)
=(Nα*/Nsilica*)−1
=0.01786・・・
∴εα≒1.8E(−2) (6)
と求められる。故にクリストバライト層がβ型からα型に相転移した時に発生する引張り応力σpは、
σp=Eαεα={1.8E(−2)}Eα (7)
となる。ここでEαはα型クリストバライトのヤング率である。この(7)式はα型クリストバライトの縮もうとする性質を完全に妨げている引張り応力を表している。
非特許文献5に依れば、シリカガラス、β型クリストバライト、α型クリストバライトの密度は順番に2.21(g/cm3)、2.21(g/cm3)、2.33(g/cm3)である(非特許文献5では「電融シリカ」という用語を用いているがこれは「シリカガラス」のことである)。ここで α型クリストバライトが他の2つより高密度であるということは、単位体積の中に詰まっているSiO2の数が多いということ、従ってα型クリストバライト中のSiO2の間隔は他の2つより小さいということを意味する(上記3構造の基本的な構造単位をSiO2とする)。故に、シリカガラス板を高温熱処理して表面にβ型クリストバライト層を形成し、それを220℃近辺まで冷却してα型クリストバライトに相転移させると、このα型クリストバライト層は、収縮しようとすると同時に下地のシリカガラス部分から引張り応力を受ける。以上の考察を以下において定量的に行う。なお図7(非特許文献6参照)によれば、室温〜1000Kまでの温度においてクリストバライトやシリカガラスの熱膨張率はE(−6)〜E(−7)(K-1)オーダーと非常に小さいので、これらの密度2.33(g/cm3)、2.21(g/cm3)を温度に関係なく一定として扱う。
図8に、シリカ坩堝の内側に形成されたα型クリストバライト層の一部を四角形で示した。同図ではα型クリストバライト層の一部を坩堝内側に仮定しているが、外側に仮定しても以下の議論は同じである。
図8のα型クリストバライト層部分をA−A’方向に延長して考えると、両端がある程度自由なのでα型クリストバライト層はA−A’方向にある程度収縮できる。ここである程度自由とは、自由両端は存在するが下地のシリカガラスから束縛を受けるので完全に自由ではないという意味である。
一方図8に示すようにα型クリストバライト層部分を円周方向に延長して考えると、相転移の際にこの円周方向にも当然収縮しようとするが、閉じた円環形状であるため自由端が存在せず収縮できない。言い換えると、下地のシリカガラスから作用する円周方向の引張り応力が、α型クリストバライト層の収縮を抑止できる程度に大きい。この円周方向の引張り応力のためα型クリストバライト層の一部に縦方向のクラックが入ることがあり、閉じた円環状であったα型クリストバライト層に自由表面が現れて応力緩和が起こると同時に、閉じていた円環はクラック幅に相当する収縮を起こす(ここで縦方向とは円周方向に直交した方向(A−A’方向)である)。特許第3054362号(特許文献1)において、坩堝の外側にクリストバライト層を形成する際に、意図的に縦長形状のシリカガラス部分を残す理由は、β型クリストバライト層が相転移を起こす時に生じる円周方向の引張り応力が、上述のように縦方向のクラックを発生し易くするからである。
以上の検討から、クラック発生の支配的要因は、α型クリストバライト層の収縮を妨げる引張り応力のうち円周方向の成分であることが分かった。そこでこの性質を検討する際は円周方向のみ即ち1次元での計算を行うことにする。
シリカガラスの密度は2.21であるので、1(cm3)のシリカガラス中のSiO2の個数Nsilicaは、SiO2 = 60、アボガドロ数を6.02E23とすると、
Nsilica=(6.02E23×2.21)/60=2.217E22(個/cm3)
(4)
同様に計算すると、1(cm3)のα型クリストバライト中のSiO2の個数Nαは
Nα=2.338E22(個/cm3) (5)
となり、シリカガラスよりα型クリストバライトの方がわずかに稠密であることが分かる。
α型クリストバライト層に生じる円周方向の引張り応力は、本来はより短いはずのα型クリストバライトの結晶格子が、界面においてシリカガラスの格子長さまで引き伸ばされていることに起因する。そこでまず両者の単位長さ当たりのSiO2の個数Nα*およびNsilica*を求める。これは上記(4)式、(5)式の立方根で近似できる。従って
Nα*=(2.338E22)1/3=2.8594E7(個/cm)
Nsilica*=(2.217E22)1/3=2.8092E7(個/cm)
であり、これらの逆数がそれぞれの格子長さに相当する。よってα型クリストバライト層の格子長さがシリカガラスの格子長さまで引き伸ばされた時の歪みεαは、
εα ={(1/Nsilica*)−(1/Nα*)}/(1/Nα*)
=(Nα*/Nsilica*)−1
=0.01786・・・
∴εα≒1.8E(−2) (6)
と求められる。故にクリストバライト層がβ型からα型に相転移した時に発生する引張り応力σpは、
σp=Eαεα={1.8E(−2)}Eα (7)
となる。ここでEαはα型クリストバライトのヤング率である。この(7)式はα型クリストバライトの縮もうとする性質を完全に妨げている引張り応力を表している。
(クリストバライトの熱膨張率起因の歪みの計算)
ある基板上に薄膜が形成されていて両者の熱膨張率が異なる系を考える。充分高い温度(Thとする)で両者間に歪みが無いとし、この系を温度Ta(<Th)まで冷却した時の熱膨張率の差に起因する膜の歪みの大きさεtは次式で与えられる。
ここでαf(T)、αs(T)は温度Tにおける薄膜と基板のそれぞれの熱膨張率である。この式は “薄膜の厚さ<<基板の厚さ”のとき成り立つが、本発明の坩堝の場合はこの条件が充分満たされている。また右辺両端の ”|・・・|” は絶対値を表す。
しかしこの式は、薄膜と基板の熱膨張率の温度依存性が具体的に与えられないと使うことができない。そこで本発明の議論では、温度Thで両者間に歪みが無いとしているから、まず
αf(Th)=αs(Th)
と仮定した。また図7からシリカガラスもクリストバライトも1000(K)以下における熱膨張率の差αf(T)−αs(T)が1E(−7)〜2E(−7)(K-1)のオーダーでほぼ一定であるから、
εt={αf(Ta)−αs(Ta)}(Th−Ta) (8)
なる近似を用いることにする。ここでαf(Ta)、αs(Ta)は温度Taにおける薄膜と基板の熱膨張率である。
ある基板上に薄膜が形成されていて両者の熱膨張率が異なる系を考える。充分高い温度(Thとする)で両者間に歪みが無いとし、この系を温度Ta(<Th)まで冷却した時の熱膨張率の差に起因する膜の歪みの大きさεtは次式で与えられる。
しかしこの式は、薄膜と基板の熱膨張率の温度依存性が具体的に与えられないと使うことができない。そこで本発明の議論では、温度Thで両者間に歪みが無いとしているから、まず
αf(Th)=αs(Th)
と仮定した。また図7からシリカガラスもクリストバライトも1000(K)以下における熱膨張率の差αf(T)−αs(T)が1E(−7)〜2E(−7)(K-1)のオーダーでほぼ一定であるから、
εt={αf(Ta)−αs(Ta)}(Th−Ta) (8)
なる近似を用いることにする。ここでαf(Ta)、αs(Ta)は温度Taにおける薄膜と基板の熱膨張率である。
式(8)を用いて “シリカガラス板の表面に温度Thで形成されたクリストバライト層” が存在し、ThからTaまで冷却された時にクリストバライト層に発生する歪みεtを計算する。図7より1000(K)(727℃)以下のあらゆる温度でクリストバライト層の方がシリカガラスより熱膨張率が大きいので、Ta<727℃であればクリストバライト層のほうがより速く収縮しその結果クリストバライト層内には引張り応力が発生する(℃は物理学的な温度ではないので(℃)とはしない)。
冷却時の温度Taとして、クリストバライトが “冷め割れ” を起こし易い220℃を選ぶ(Taとして220℃以上の場合の考察も後ほど若干行う)。この温度は図7において500(K)弱に相当し、クリストバライトの熱膨張率が最も大きくかつ急激な変化を起こす転移温度である。以上から(8)式を用いると、温度Thから220℃まで冷却した時にクリストバライト層に発生する引張り歪みεtは
εt={7.8E(−7)−6.2E(−7)}×(Th−220)
∴εt=1.6E(−7)×(Th−220) (9)
ここで温度の単位を℃としてある。クリストバライト層を形成する温度Thは1000℃前後であるので、Th−220はE2〜E3のオーダーである。冷却時の温度Taが220℃<Taである場合のαf(Ta)−αs(Ta)を用いても、図7のデータからεtのオーダーは変わらないことが分かる。
よって式(9)より、クリストバライト層に生じる引張り応力はσtは
σt=Eαεt={E(−5)〜E(−4)}Eα (10)
となる。この(10)式と(7)式を比較すると、
σt<<σp
となり、相転移起因でクラックが導入されるリスクの方が遥かに大きい。それ故クリストバライト化処理に伴うクラック発生を抑止するには、(7)式の引張り応力を可能な限り低減することが課題である。
冷却時の温度Taとして、クリストバライトが “冷め割れ” を起こし易い220℃を選ぶ(Taとして220℃以上の場合の考察も後ほど若干行う)。この温度は図7において500(K)弱に相当し、クリストバライトの熱膨張率が最も大きくかつ急激な変化を起こす転移温度である。以上から(8)式を用いると、温度Thから220℃まで冷却した時にクリストバライト層に発生する引張り歪みεtは
εt={7.8E(−7)−6.2E(−7)}×(Th−220)
∴εt=1.6E(−7)×(Th−220) (9)
ここで温度の単位を℃としてある。クリストバライト層を形成する温度Thは1000℃前後であるので、Th−220はE2〜E3のオーダーである。冷却時の温度Taが220℃<Taである場合のαf(Ta)−αs(Ta)を用いても、図7のデータからεtのオーダーは変わらないことが分かる。
よって式(9)より、クリストバライト層に生じる引張り応力はσtは
σt=Eαεt={E(−5)〜E(−4)}Eα (10)
となる。この(10)式と(7)式を比較すると、
σt<<σp
となり、相転移起因でクラックが導入されるリスクの方が遥かに大きい。それ故クリストバライト化処理に伴うクラック発生を抑止するには、(7)式の引張り応力を可能な限り低減することが課題である。
以下にクリストバライト化の促進剤として最もよく用いられる水酸化バリウム(Ba(OH)2)を例にとって、本発明内容を説明する。水酸化バリウムはその水溶液が市販されており、坩堝の内側および外側に容易に塗布できるという長所がある。
水酸化バリウムを塗布し加熱処理を行うと、バリウムがシリカガラスの中に熱拡散すると共にクリストバライト層の形成が進む。クリストバライト化はまずバリウムを核として始まるが、クリストバライト部分が拡がるにつれて既存のクリストバライト部分に接触したシリカガラス部分が新たなクリストバライト部分に相転移する結晶成長の原理も働くようになる。
クリストバライト層内に拡散したバリウムは陽イオン(Ba2+)として存在するので、シリコンイオンをSiO2構造から追い出し酸素イオン(陰イオン)と結合しやすい。表1に各種元素のイオン半径を示す(非特許文献7参照)。クリストバライト中のシリコンはSi4+という4価のイオンとして存在しイオン半径は0.42(Å)であるが、表1から判る通りバリウムはシリコンイオン(Si4+)より半径が3倍以上大きいため、これらがクリストバライト中に存在すれば圧縮応力を生じることが容易に判る。
水酸化バリウムを塗布し加熱処理を行うと、バリウムがシリカガラスの中に熱拡散すると共にクリストバライト層の形成が進む。クリストバライト化はまずバリウムを核として始まるが、クリストバライト部分が拡がるにつれて既存のクリストバライト部分に接触したシリカガラス部分が新たなクリストバライト部分に相転移する結晶成長の原理も働くようになる。
クリストバライト層内に拡散したバリウムは陽イオン(Ba2+)として存在するので、シリコンイオンをSiO2構造から追い出し酸素イオン(陰イオン)と結合しやすい。表1に各種元素のイオン半径を示す(非特許文献7参照)。クリストバライト中のシリコンはSi4+という4価のイオンとして存在しイオン半径は0.42(Å)であるが、表1から判る通りバリウムはシリコンイオン(Si4+)より半径が3倍以上大きいため、これらがクリストバライト中に存在すれば圧縮応力を生じることが容易に判る。
半径がRmで密度がNm(個/cm3)の原子(またはイオン)から構成される単結晶に、半径Riの不純物を濃度Ci(個/cm3)で添加した時に生じる歪みεiは、次式で与えられる(非特許文献8参照)。
εi=(1/3Nm){1−(Ri/Rm)3}Ci (11)
クリストバライトは多結晶であるが、多結晶は微小な単結晶部分の集合体であり各単結晶部分のバリウム濃度が等しいと仮定し、これら単結晶部分すべての歪みを平均したものが多結晶の歪みと考え、式(11)を用いて歪みを計算する。クリストバライト層内ではシリコンがバリウムと置き換わるから、今考えている系に合わせて(11)式の添え字を変更すると、
εBa=(1/3Nα,si+2o){1−(RBa/Rsi)3}Ci (11’)
本発明ではα型クリストバライト中での応力緩和を考えるのでNα, si+2oは、α型クリストバライトの単位体積当たりのシリコンイオンの数と酸素イオンの数の和であり、
Nα, si+2o=7.0E22(個/cm3)である。
(Nα, si+2o=7.0E22の詳細計算)
α型クリストバライトの密度は2.33(g/cm3)であるから、1(cm3)あたりのSiO2の個数は(5)式で与えられ、
Nα=2.338E22(個/cm3) (5)
ここでSiO2は1個のシリコンイオンと2個の酸素イオンから成るから、単位体積当たりのシリコンイオンおよび酸素イオンの数の合計Nα,sio+oは、
Nα, si+2o=3Nα=7.0E22(個/cm3)
となる。
α型クリストバライトの密度は2.33(g/cm3)であるから、1(cm3)あたりのSiO2の個数は(5)式で与えられ、
Nα=2.338E22(個/cm3) (5)
ここでSiO2は1個のシリコンイオンと2個の酸素イオンから成るから、単位体積当たりのシリコンイオンおよび酸素イオンの数の合計Nα,sio+oは、
Nα, si+2o=3Nα=7.0E22(個/cm3)
となる。
次に表1に示したシリコンおよびバリウムのイオン半径1.34Åを(11’)式に代入すると、
εBa=(1/3×7.0E22){1−(1.34/0.42)3}CBa
∴εBa=−1.50E(−22)CBa
となる。ここで負号は、歪みが圧縮であることを示す。従ってバリウム添加がαクリストバライト層内に引き起こす圧縮応力σBaは、
σBa=EαεBa=−{1.50E(−22)}EαCBa (12)
となる。故に相転移によって引き起こされる円周方向の引張り応力を相殺するために必要なバリウム濃度は、(7)式と(12)式の絶対値を等しいと置くと、
{1.8E(−2)}Eα={1.50E(−22)}EαCBa
∴CBa=1.2E20(個/cm3)
この濃度をppmaで表わすと、
CBa=1.2E20/Nα,si+2o=1.7E3(ppma) (18)
となる。従ってαクリストバライト層内のバリウム濃度が1.7E3(ppma)であれば引張り歪みを相殺できそれ以上であれば圧縮歪みが優勢になるので、相転移時におけるクラック発生を抑止できる。
以上の考察をイオン半径がRiの不純物に対して一般的に行うと、相転移時におけるクラック発生を抑止するためには、
|不純物添加によって発生する圧縮応力|≧相転移時発生する引張り応力
なる条件が成り立てばよいので、必要な不純物の濃度Ciは、
Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3| (19)
となる。クリストバライト化の促進剤として水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)を用いる場合、クラック発生防止のために必要なストロンチウム濃度CSrは、上式(19)と表1を用いて、
CSr≧3.0E3(ppma)
となる。ストロンチウムはバリウムよりイオン半径が小さいため、必要な濃度が高くなっている。カルシウム、ラジウムの場合、必要濃度CCa、CRaはそれぞれ
CCa≧4.5E3(ppma)
CRa≧1.4E3(ppma)
である。
次に、水酸化バリウムの塗布範囲は、シリカ坩堝の内側表面では、融液と対面する坩堝の全域を含みかつ坩堝縁を含まずまた坩堝縁から離れている必要があり、また坩堝の外側表面においては、グラファイト・サセプターと対面する坩堝の全域を含みかつ坩堝縁から離れている必要がある。以下にその理由を述べる。
(1)バリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たしていることを実証するために、坩堝内外表面のあらゆる箇所を測定することは現実的には不可能である。そこで水酸化バリウムの塗布領域を坩堝縁から離れた場所とし(ただし内側においては融液と対面する全域を含むこと、外側においてはグラファイト・サセプターと対面する全域を含むこと)、したがってクリストバライト層もまた坩堝縁から離れた場所に形成する。このようにすると、図10(2)の(2b)に示すように坩堝縁と向かい合うクリストバライト層端部が形成される。
このクリストバライト層端部において、バリウムは図のように坩堝の肉厚方向と坩堝縁の方向に2次元拡散をする。また前記端部から離れたクリストバライト層の非端部では、バリウムは肉厚方向のみの1次元拡散をする。よってクリストバライト層端部の肉厚方向のバリウム濃度は、前記端部から離れたクリストバライト層の非端部より低濃度になる。したがって、水酸化バリウムの塗布が一定濃度でなされている限りどこのクリストバライト層端部においても同一濃度であるから、クリストバライト層端部の任意の1ヶ所における肉厚方向のバリウム濃度が請求項を満たせば、その他のクリストバライト層の非端部の濃度は必ず請求項を満たす。このようにクリストバライト層端部が坩堝縁から離れていれば、クリストバライト層端部の任意の一ヶ所のバリウム濃度測定で、すべてのクリストバライト層の非端部のバリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たすと結論できる。
(2)水酸化バリウムを塗布した坩堝表面は続く熱処理によって直ちにクリストバライト化が始まり、さらにその表面から肉厚方向の内部に向かってクリストバライト層が連続的に形成されていく。言うまでもなく、クリストバライト層のうちの坩堝表面に現れたクリストバライト層領域は、熱処理前に水酸化バリウムを塗布した領域に一致する。
水酸化バリウム塗布後にクリストバライト化の熱処理を行う際、図11のようにシリカ坩堝を倒立させて設置する必要があり、このために作業者またはロボットが縁を持って坩堝を運搬しなければならない。バリウムは極めて強い毒性を持つので、水酸化バリウムを塗布した坩堝部分がクリストバライト化の熱処理の前に他の物体と接触してはならない。水酸化バリウムの塗布領域が坩堝縁を避けかつ坩堝縁から離れていれば、その部分は水酸化バリウムの非塗布領域であるから、坩堝縁付近を持って坩堝を運搬することができ、かつバリウムが他の物体に転写されることはない。このように安全性の面からも、水酸化バリウムの塗布領域は坩堝縁から離れている必要がある。
εBa=(1/3×7.0E22){1−(1.34/0.42)3}CBa
∴εBa=−1.50E(−22)CBa
となる。ここで負号は、歪みが圧縮であることを示す。従ってバリウム添加がαクリストバライト層内に引き起こす圧縮応力σBaは、
σBa=EαεBa=−{1.50E(−22)}EαCBa (12)
となる。故に相転移によって引き起こされる円周方向の引張り応力を相殺するために必要なバリウム濃度は、(7)式と(12)式の絶対値を等しいと置くと、
{1.8E(−2)}Eα={1.50E(−22)}EαCBa
∴CBa=1.2E20(個/cm3)
この濃度をppmaで表わすと、
CBa=1.2E20/Nα,si+2o=1.7E3(ppma) (18)
となる。従ってαクリストバライト層内のバリウム濃度が1.7E3(ppma)であれば引張り歪みを相殺できそれ以上であれば圧縮歪みが優勢になるので、相転移時におけるクラック発生を抑止できる。
以上の考察をイオン半径がRiの不純物に対して一般的に行うと、相転移時におけるクラック発生を抑止するためには、
|不純物添加によって発生する圧縮応力|≧相転移時発生する引張り応力
なる条件が成り立てばよいので、必要な不純物の濃度Ciは、
Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3| (19)
となる。クリストバライト化の促進剤として水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)を用いる場合、クラック発生防止のために必要なストロンチウム濃度CSrは、上式(19)と表1を用いて、
CSr≧3.0E3(ppma)
となる。ストロンチウムはバリウムよりイオン半径が小さいため、必要な濃度が高くなっている。カルシウム、ラジウムの場合、必要濃度CCa、CRaはそれぞれ
CCa≧4.5E3(ppma)
CRa≧1.4E3(ppma)
である。
次に、水酸化バリウムの塗布範囲は、シリカ坩堝の内側表面では、融液と対面する坩堝の全域を含みかつ坩堝縁を含まずまた坩堝縁から離れている必要があり、また坩堝の外側表面においては、グラファイト・サセプターと対面する坩堝の全域を含みかつ坩堝縁から離れている必要がある。以下にその理由を述べる。
(1)バリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たしていることを実証するために、坩堝内外表面のあらゆる箇所を測定することは現実的には不可能である。そこで水酸化バリウムの塗布領域を坩堝縁から離れた場所とし(ただし内側においては融液と対面する全域を含むこと、外側においてはグラファイト・サセプターと対面する全域を含むこと)、したがってクリストバライト層もまた坩堝縁から離れた場所に形成する。このようにすると、図10(2)の(2b)に示すように坩堝縁と向かい合うクリストバライト層端部が形成される。
このクリストバライト層端部において、バリウムは図のように坩堝の肉厚方向と坩堝縁の方向に2次元拡散をする。また前記端部から離れたクリストバライト層の非端部では、バリウムは肉厚方向のみの1次元拡散をする。よってクリストバライト層端部の肉厚方向のバリウム濃度は、前記端部から離れたクリストバライト層の非端部より低濃度になる。したがって、水酸化バリウムの塗布が一定濃度でなされている限りどこのクリストバライト層端部においても同一濃度であるから、クリストバライト層端部の任意の1ヶ所における肉厚方向のバリウム濃度が請求項を満たせば、その他のクリストバライト層の非端部の濃度は必ず請求項を満たす。このようにクリストバライト層端部が坩堝縁から離れていれば、クリストバライト層端部の任意の一ヶ所のバリウム濃度測定で、すべてのクリストバライト層の非端部のバリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たすと結論できる。
(2)水酸化バリウムを塗布した坩堝表面は続く熱処理によって直ちにクリストバライト化が始まり、さらにその表面から肉厚方向の内部に向かってクリストバライト層が連続的に形成されていく。言うまでもなく、クリストバライト層のうちの坩堝表面に現れたクリストバライト層領域は、熱処理前に水酸化バリウムを塗布した領域に一致する。
水酸化バリウム塗布後にクリストバライト化の熱処理を行う際、図11のようにシリカ坩堝を倒立させて設置する必要があり、このために作業者またはロボットが縁を持って坩堝を運搬しなければならない。バリウムは極めて強い毒性を持つので、水酸化バリウムを塗布した坩堝部分がクリストバライト化の熱処理の前に他の物体と接触してはならない。水酸化バリウムの塗布領域が坩堝縁を避けかつ坩堝縁から離れていれば、その部分は水酸化バリウムの非塗布領域であるから、坩堝縁付近を持って坩堝を運搬することができ、かつバリウムが他の物体に転写されることはない。このように安全性の面からも、水酸化バリウムの塗布領域は坩堝縁から離れている必要がある。
本発明の実施例を、クリストバライト化の促進剤として水酸化バリウムの水溶液を塗布する場合を例にとって、より具体的に説明する。ストロンチウムを含むクリストバライト化の促進剤を塗布する場合も同様であり、本発明は、このような実施例等によって何ら限定されるものではない。
<シリカガラス板に対するクリストバライト層形成実験>
CZシリコン結晶成長用の市販シリカ坩堝と同じシリカガラス板を準備した。このガラス板の表層は無気泡層厚さが2〜4mmあったので、無気泡処理は不要であった。もし表層に気泡層がある場合は、気泡を含む部位を酸水素火炎によって局部的に加熱し気泡を除去する。加熱方法としては、プラズマ炎またはアーク炎を用いても良い。
次に図10(2)の(2a)に示すように、シリカガラス板の片面の末端から2cm離れた表面に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウムの水溶液を塗布して大気中で乾燥させ、更に同様の塗布および乾燥を4回くり返し合計5回行った。次に窒素(N2)を流しながら1200℃で1.5時間の熱処理を行い、無気泡シリカガラス層の最表層をクリストバライト層に変換した。水酸化バリウムの塗布位置がガラス板の端面より2cm離れているので、クリストバライト層も当然ながら2cm離れた位置から形成された。このときガラス板端面と向かい合うクリストバライト層部分を(2b)のようにクリストバライト層端部と呼ぶ。
熱処理中に流すガスとしては、水酸化バリウムと反応物を作らないことが分かっているガスであることが必須なので、不活性ガス雰囲気または真空が望ましい。窒素以外の代表的な不活性ガスは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等である。
この後シリカガラス板断面の光学顕微鏡観察を行ったところ、クリストバライト層の厚さは30(μm)程度であった。次にSIMS法によって表面から内部に向かう方向のバリウム濃度を測定すると図10(1)のようになり、クリストバライト層の最表面付近で約6E3(ppma)、クリストバライト層が終わる約30μm深さで1.7E3(ppma)であった。この時、バリウム濃度の測定位置を図10(2)の(2b)のように、クリストバライト層端部とした。この理由を図10(2)の(2a)、(2b)を用いて説明する。
図10(2)の(2a)に示すようにバリウムを塗布し、続いてクリストバライト化の熱処理を行うと、(2b)に示すようにクリストバライト層端部では、上向き曲線で示したようなガラス板端面にも向かう拡散と肉厚方向への拡散が同時に起こり2次元拡散となる。この結果(2b)のようにクリストバライト層端部において太い矢印の方向にバリウム濃度測定を行うと、クリストバライト層の非端部と比べて低濃度になる。従って、クリストバライト層端部の表面から深さ30(μm)までのクリストバライト部分においてバリウム濃度が1.7E3(ppma)以上であれば、クリストバライト層非端部のあらゆる位置で1.7E3(ppma)以上であると結論される。
すなわちクリストバライト層内全てにおいて、クラック防止のために必要な濃度1.7E3(ppma)と同じかこれを上回ると考えられ、実際にクラックの発生は見られなかった。
従ってシリカ坩堝に対するクリストバライト化の処理条件を、
1)濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウムの水溶液を、坩堝の内側表面においては、融液と対面する全域を含みかつ坩堝縁から離れた領域に、坩堝外側においては、グラファイト・サセプターと対面する全域を含みかつ坩堝縁から離れた領域に、それぞれ少なくとも5回塗布する。坩堝縁から離れた領域の一例として、坩堝の内側外側共に坩堝縁から2cm離れていてかつ坩堝縁に沿って坩堝を一周する領域を用いることが実際的である。
2)1200℃で1.5時間のクリストバライト化の熱処理を窒素パージ雰囲気で行うとした。
CZシリコン結晶成長用の市販シリカ坩堝と同じシリカガラス板を準備した。このガラス板の表層は無気泡層厚さが2〜4mmあったので、無気泡処理は不要であった。もし表層に気泡層がある場合は、気泡を含む部位を酸水素火炎によって局部的に加熱し気泡を除去する。加熱方法としては、プラズマ炎またはアーク炎を用いても良い。
次に図10(2)の(2a)に示すように、シリカガラス板の片面の末端から2cm離れた表面に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウムの水溶液を塗布して大気中で乾燥させ、更に同様の塗布および乾燥を4回くり返し合計5回行った。次に窒素(N2)を流しながら1200℃で1.5時間の熱処理を行い、無気泡シリカガラス層の最表層をクリストバライト層に変換した。水酸化バリウムの塗布位置がガラス板の端面より2cm離れているので、クリストバライト層も当然ながら2cm離れた位置から形成された。このときガラス板端面と向かい合うクリストバライト層部分を(2b)のようにクリストバライト層端部と呼ぶ。
熱処理中に流すガスとしては、水酸化バリウムと反応物を作らないことが分かっているガスであることが必須なので、不活性ガス雰囲気または真空が望ましい。窒素以外の代表的な不活性ガスは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等である。
この後シリカガラス板断面の光学顕微鏡観察を行ったところ、クリストバライト層の厚さは30(μm)程度であった。次にSIMS法によって表面から内部に向かう方向のバリウム濃度を測定すると図10(1)のようになり、クリストバライト層の最表面付近で約6E3(ppma)、クリストバライト層が終わる約30μm深さで1.7E3(ppma)であった。この時、バリウム濃度の測定位置を図10(2)の(2b)のように、クリストバライト層端部とした。この理由を図10(2)の(2a)、(2b)を用いて説明する。
図10(2)の(2a)に示すようにバリウムを塗布し、続いてクリストバライト化の熱処理を行うと、(2b)に示すようにクリストバライト層端部では、上向き曲線で示したようなガラス板端面にも向かう拡散と肉厚方向への拡散が同時に起こり2次元拡散となる。この結果(2b)のようにクリストバライト層端部において太い矢印の方向にバリウム濃度測定を行うと、クリストバライト層の非端部と比べて低濃度になる。従って、クリストバライト層端部の表面から深さ30(μm)までのクリストバライト部分においてバリウム濃度が1.7E3(ppma)以上であれば、クリストバライト層非端部のあらゆる位置で1.7E3(ppma)以上であると結論される。
すなわちクリストバライト層内全てにおいて、クラック防止のために必要な濃度1.7E3(ppma)と同じかこれを上回ると考えられ、実際にクラックの発生は見られなかった。
従ってシリカ坩堝に対するクリストバライト化の処理条件を、
1)濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウムの水溶液を、坩堝の内側表面においては、融液と対面する全域を含みかつ坩堝縁から離れた領域に、坩堝外側においては、グラファイト・サセプターと対面する全域を含みかつ坩堝縁から離れた領域に、それぞれ少なくとも5回塗布する。坩堝縁から離れた領域の一例として、坩堝の内側外側共に坩堝縁から2cm離れていてかつ坩堝縁に沿って坩堝を一周する領域を用いることが実際的である。
2)1200℃で1.5時間のクリストバライト化の熱処理を窒素パージ雰囲気で行うとした。
<シリカ坩堝に対するクリストバライト層形成実験>
次に、CZシリコン結晶成長用のシリカ坩堝を準備し、内側表面に気泡が存在する場合は、気泡を含む部位を酸水素火炎によって局部的に加熱し気泡を除去する。加熱方法としては、プラズマ炎またはアーク炎を用いても良い。このようにして表層80μm〜4mmを気泡の無い部位に加工した後、図13の(1)に示したように、坩堝の内側において、坩堝の縁から2cm以上離れた内面のすべての領域に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウム水溶液の塗布工程(塗布後乾燥)を5回くり返した。このとき坩堝内側において、坩堝縁と融液表面位置が6cm以上離れることを予め確認してある。また坩堝外面においても、坩堝の縁から2cm以上離れた内面のすべての領域に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウム水溶液の塗布工程(塗布後乾燥)を5回くり返した(これは図示していない)。このとき坩堝外側において、坩堝縁とグラファイト・サセプター縁の差が4cm以上であることを予め確認している。
続いて図11に示したように坩堝を熱処理炉内に手作業で倒立させて設置し、シリカガラス板実験で確立した熱処理条件(窒素雰囲気で1200℃、1.5時間)を用いてシリカ坩堝全体を熱処理した。坩堝を倒立させて装着する際に、坩堝縁と縁から2cmの距離までの内外表面はバリウムが塗布されていないので、作業手袋及び台座の断熱材へのバリウム転写を避けることができた。
クリストバライト化の熱処理後に、図13に点線で囲んだ坩堝部分を切り出し、(2)で示したようにクリストバライト層端部の表面から肉厚方向のバリウム濃度の測定およびクリストバライト層の形成状況を確認した。その結果任意のクリストバライト層の端部において肉厚方向のバリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たしていることを確認したので、クリストバライト層の非端部の全域におけるバリウム濃度も請求項1に規定された不等式を満たしていると結論した。
次に、CZシリコン結晶成長用のシリカ坩堝を準備し、内側表面に気泡が存在する場合は、気泡を含む部位を酸水素火炎によって局部的に加熱し気泡を除去する。加熱方法としては、プラズマ炎またはアーク炎を用いても良い。このようにして表層80μm〜4mmを気泡の無い部位に加工した後、図13の(1)に示したように、坩堝の内側において、坩堝の縁から2cm以上離れた内面のすべての領域に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウム水溶液の塗布工程(塗布後乾燥)を5回くり返した。このとき坩堝内側において、坩堝縁と融液表面位置が6cm以上離れることを予め確認してある。また坩堝外面においても、坩堝の縁から2cm以上離れた内面のすべての領域に濃度0.1(mol/リットル)の水酸化バリウム水溶液の塗布工程(塗布後乾燥)を5回くり返した(これは図示していない)。このとき坩堝外側において、坩堝縁とグラファイト・サセプター縁の差が4cm以上であることを予め確認している。
続いて図11に示したように坩堝を熱処理炉内に手作業で倒立させて設置し、シリカガラス板実験で確立した熱処理条件(窒素雰囲気で1200℃、1.5時間)を用いてシリカ坩堝全体を熱処理した。坩堝を倒立させて装着する際に、坩堝縁と縁から2cmの距離までの内外表面はバリウムが塗布されていないので、作業手袋及び台座の断熱材へのバリウム転写を避けることができた。
クリストバライト化の熱処理後に、図13に点線で囲んだ坩堝部分を切り出し、(2)で示したようにクリストバライト層端部の表面から肉厚方向のバリウム濃度の測定およびクリストバライト層の形成状況を確認した。その結果任意のクリストバライト層の端部において肉厚方向のバリウム濃度が請求項1に規定された不等式を満たしていることを確認したので、クリストバライト層の非端部の全域におけるバリウム濃度も請求項1に規定された不等式を満たしていると結論した。
<シリカ坩堝に対するクリストバライト層形成の応用例>
本実施例の応用として、水酸化バリウムと水酸化ストロンチウムの混合物をクリストバライト化の促進剤として用いても良いが、非特許文献11、12から、同一温度における拡散はバリウムより明らかにストロンチウムの方が速いので、ストロンチウムが先にクリストバライト層内にて必要濃度に先に達する。従って事実上の両者を混合する利点はなく、ストロンチウム水溶液単体で十分である。
本実施例の応用として、水酸化バリウムと水酸化ストロンチウムの混合物をクリストバライト化の促進剤として用いても良いが、非特許文献11、12から、同一温度における拡散はバリウムより明らかにストロンチウムの方が速いので、ストロンチウムが先にクリストバライト層内にて必要濃度に先に達する。従って事実上の両者を混合する利点はなく、ストロンチウム水溶液単体で十分である。
<各種坩堝を用いた単結晶シリコン製造試験、単結晶シリコン中の炭素不純物調査試験>
本発明者たちが実験した結果を図9に示す。図9は、市販の直径600(mm)のシリカ坩堝、市販坩堝の内側のみに特許文献2に記された方法でクリストバライト層を形成した坩堝、市販坩堝に本発明の内側及び外側にクリストバライト層を形成した坩堝をそれぞれ準備し、60(kg)の原料多結晶シリコンを充填して加熱融解して単結晶シリコンの成長を行い、炭素濃度の固化率依存性を調べたものである。用いたCZ成長装置は、3種類の成長において全く同じものである。炭素濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)法で測定した。この方法の炭素濃度に関する定量下限5E14(a/cm3)を点直線で記した。
市販のシリカ坩堝で成長した結晶の各位置の炭素濃度は、図9の通りすべて定量下限以上であった。CZ結晶成長における炭素濃度の平衡偏析係数koは0.07であることが知られているので(非特許文献9参照)、これを用いると結晶の固化率g(0≦g≦1)に対する濃度C(g)を次式で表わすことができる(非特許文献10参照)。
C(g)=koCo(1−g)ko-1 (20)
ここでCoは融液の結晶成長前の炭素濃度である。ただしC(g)をより正確に求めるには、式(20)において、
(ア)偏析係数としてkoではなく実効偏析係数keffを用いた修正
(イ)融液表面からの炭素の蒸発(式(1)で表わされる)と雰囲気から融液への炭素の溶け込みを考慮した修正
が必要である。
まず(ア)の実効偏析係数keffであるが、これは次式(21)で表わされることが知られている。
keff=ko/{ko+(1−ko)exp(−vδ/D)} (21)
ここでvは結晶成長速度、δは結晶成長界面直下の拡散層厚さ、Dは融液中における不純物の拡散定数であるが、δとDは直接の測定が困難である。また(イ)の蒸発と溶け込みを考慮するには、融液からの一酸化炭素の蒸発速度や溶け込み速度を求めねばならず、これらも直接測定が非常に困難である。
従来のシリカ坩堝を用いて成長した結晶の炭素濃度(図9の4個の黒丸)が、(20)式から求めた理論曲線(実線)と非常によく一致するという事実から、この結晶成長条件では(ア)と(イ)を無視できると考えられる。
しかし内側のみをクリストバライト化処理した坩堝および本発明の両面クリストバライト化処理坩堝を用いた成長の場合は、一酸化炭素の蒸発や溶け込みが制御されているため、式(20)をそのまま用いることはできない。しかし図9の目的は、炭素濃度が低減される坩堝の順番を確認することであるので、(ア)と(イ)を考慮した厳密な偏析曲線を描く必要はない。そのため参考として式(20)を用いた理論曲線(一点鎖線および点線)を合わせて図示した。これにより、SIMSの検出限界を下回る場合においても、矢印の先端と理論曲線の交差する点の近傍が実際の濃度であろうと推定される。
故に図9の実測データおよびこれらを基にした推定から、本発明のシリカ坩堝で成長した単結晶シリコンは、上記3種類の中で最も低炭素濃度の結晶になっていると考えられる。また本発明のシリカ坩堝の処理方法であれば、水酸化バリウムを塗布後にクリストバライト化熱処理を行って室温まで冷却したときに、内側にはクラック発生がない(外側には微小クラックの発生が見受けられたが、後に述べる理由によって炭素濃度の低減には影響ない)。従ってクリストバライト化の促進剤としてその他のアルカリ土類金属元素を含む水酸化物を用いた場合でも、同様の効果を期待できる。
結晶成長用シリカ坩堝の内側と外側のそれぞれの表面において、シリコン融液と炭素に対して高温で不活性となる処理を行う本発明によれば、反応(1)、(2)、(3)全てが抑制されるので、結晶に取込まれる酸素、炭素、重金属などあらゆる不純物を低減でき、特に炭素低減の効果は特許文献2の方法よりもさらに大きい。よって本方法をCZ法によるシリコン単結晶の成長に応用すれば従来より低炭素濃度の結晶を成長でき、これと図3のデータを基にすると、非常に高ライフタイムのCZシリコン単結晶を成長でき、半導体素子、パワー半導体素子、太陽電池セルの高性能化に大きく寄与すると考えられる。
また、常電導磁石を用いたMCZ法では磁場発生の電力がCZ炉のヒーター電力と同程度消費されるが、本発明のシリカガラス坩堝を従来のCZ炉内に装着すれば、常電導MCZ法よりも非常に安価かつ同等以上の高品質結晶を成長することができる。
上記磁場の電力消費量を低減するため高価な超伝導磁石を用いるMCZ炉もあるが、超伝導を維持するための冷媒として液体ヘリウムが必要である。しかし近年ヘリウムの入手が産出量の低下のため極めて困難となってきており、本発明の結晶成長方法はこうした問題も解決できる特徴がある。
また本発明の方法で処理したシリカ坩堝は坩堝単体のコストは通常坩堝より増加するが、坩堝を含む結晶成長部材全体でみればコスト増にならない。何故ならば、本発明の方法で処理したシリカ坩堝を用いれば、反応(1)、(2)、(3)のすべてを従来方法より格段に抑止できるので、CZ炉内のあらゆるグラファイト部材(サセプター、ヒーター、断熱材等)の酸化を抑えることが可能になり、この結果炉内部材の寿命が飛躍的に伸びると同時に初期の均質性を維持できる。従ってグラファイト部材の交換頻度が非常に小さくなるためコストを落とすことができ、坩堝単体のコスト増と十分相殺できる。また本発明の方法で処理した坩堝を用いて結晶成長を実施するに当たり、成長炉を動かすために必要な電力、冷却水、ガス(アルゴン(Ar))の使用量は従来方法とまったく変わらず、また原料シリコンの溶解時間、結晶成長時間、成長終了後の冷却時間も変わらないので運転費用も従来と同じである。
このように本発明のシリカ坩堝の処理方法を用いれば、結晶成長炉の部材費用や運転費用の増大なしに、従って結晶そのものの価格上昇なしに、その品質を従来の高品質結晶であるMCZ結晶より更に向上させることができるので、各種電子デバイスの単位パフォーマンスに当たりのコストを低減できる。
本発明者たちが実験した結果を図9に示す。図9は、市販の直径600(mm)のシリカ坩堝、市販坩堝の内側のみに特許文献2に記された方法でクリストバライト層を形成した坩堝、市販坩堝に本発明の内側及び外側にクリストバライト層を形成した坩堝をそれぞれ準備し、60(kg)の原料多結晶シリコンを充填して加熱融解して単結晶シリコンの成長を行い、炭素濃度の固化率依存性を調べたものである。用いたCZ成長装置は、3種類の成長において全く同じものである。炭素濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)法で測定した。この方法の炭素濃度に関する定量下限5E14(a/cm3)を点直線で記した。
市販のシリカ坩堝で成長した結晶の各位置の炭素濃度は、図9の通りすべて定量下限以上であった。CZ結晶成長における炭素濃度の平衡偏析係数koは0.07であることが知られているので(非特許文献9参照)、これを用いると結晶の固化率g(0≦g≦1)に対する濃度C(g)を次式で表わすことができる(非特許文献10参照)。
C(g)=koCo(1−g)ko-1 (20)
ここでCoは融液の結晶成長前の炭素濃度である。ただしC(g)をより正確に求めるには、式(20)において、
(ア)偏析係数としてkoではなく実効偏析係数keffを用いた修正
(イ)融液表面からの炭素の蒸発(式(1)で表わされる)と雰囲気から融液への炭素の溶け込みを考慮した修正
が必要である。
まず(ア)の実効偏析係数keffであるが、これは次式(21)で表わされることが知られている。
keff=ko/{ko+(1−ko)exp(−vδ/D)} (21)
ここでvは結晶成長速度、δは結晶成長界面直下の拡散層厚さ、Dは融液中における不純物の拡散定数であるが、δとDは直接の測定が困難である。また(イ)の蒸発と溶け込みを考慮するには、融液からの一酸化炭素の蒸発速度や溶け込み速度を求めねばならず、これらも直接測定が非常に困難である。
従来のシリカ坩堝を用いて成長した結晶の炭素濃度(図9の4個の黒丸)が、(20)式から求めた理論曲線(実線)と非常によく一致するという事実から、この結晶成長条件では(ア)と(イ)を無視できると考えられる。
しかし内側のみをクリストバライト化処理した坩堝および本発明の両面クリストバライト化処理坩堝を用いた成長の場合は、一酸化炭素の蒸発や溶け込みが制御されているため、式(20)をそのまま用いることはできない。しかし図9の目的は、炭素濃度が低減される坩堝の順番を確認することであるので、(ア)と(イ)を考慮した厳密な偏析曲線を描く必要はない。そのため参考として式(20)を用いた理論曲線(一点鎖線および点線)を合わせて図示した。これにより、SIMSの検出限界を下回る場合においても、矢印の先端と理論曲線の交差する点の近傍が実際の濃度であろうと推定される。
故に図9の実測データおよびこれらを基にした推定から、本発明のシリカ坩堝で成長した単結晶シリコンは、上記3種類の中で最も低炭素濃度の結晶になっていると考えられる。また本発明のシリカ坩堝の処理方法であれば、水酸化バリウムを塗布後にクリストバライト化熱処理を行って室温まで冷却したときに、内側にはクラック発生がない(外側には微小クラックの発生が見受けられたが、後に述べる理由によって炭素濃度の低減には影響ない)。従ってクリストバライト化の促進剤としてその他のアルカリ土類金属元素を含む水酸化物を用いた場合でも、同様の効果を期待できる。
結晶成長用シリカ坩堝の内側と外側のそれぞれの表面において、シリコン融液と炭素に対して高温で不活性となる処理を行う本発明によれば、反応(1)、(2)、(3)全てが抑制されるので、結晶に取込まれる酸素、炭素、重金属などあらゆる不純物を低減でき、特に炭素低減の効果は特許文献2の方法よりもさらに大きい。よって本方法をCZ法によるシリコン単結晶の成長に応用すれば従来より低炭素濃度の結晶を成長でき、これと図3のデータを基にすると、非常に高ライフタイムのCZシリコン単結晶を成長でき、半導体素子、パワー半導体素子、太陽電池セルの高性能化に大きく寄与すると考えられる。
また、常電導磁石を用いたMCZ法では磁場発生の電力がCZ炉のヒーター電力と同程度消費されるが、本発明のシリカガラス坩堝を従来のCZ炉内に装着すれば、常電導MCZ法よりも非常に安価かつ同等以上の高品質結晶を成長することができる。
上記磁場の電力消費量を低減するため高価な超伝導磁石を用いるMCZ炉もあるが、超伝導を維持するための冷媒として液体ヘリウムが必要である。しかし近年ヘリウムの入手が産出量の低下のため極めて困難となってきており、本発明の結晶成長方法はこうした問題も解決できる特徴がある。
また本発明の方法で処理したシリカ坩堝は坩堝単体のコストは通常坩堝より増加するが、坩堝を含む結晶成長部材全体でみればコスト増にならない。何故ならば、本発明の方法で処理したシリカ坩堝を用いれば、反応(1)、(2)、(3)のすべてを従来方法より格段に抑止できるので、CZ炉内のあらゆるグラファイト部材(サセプター、ヒーター、断熱材等)の酸化を抑えることが可能になり、この結果炉内部材の寿命が飛躍的に伸びると同時に初期の均質性を維持できる。従ってグラファイト部材の交換頻度が非常に小さくなるためコストを落とすことができ、坩堝単体のコスト増と十分相殺できる。また本発明の方法で処理した坩堝を用いて結晶成長を実施するに当たり、成長炉を動かすために必要な電力、冷却水、ガス(アルゴン(Ar))の使用量は従来方法とまったく変わらず、また原料シリコンの溶解時間、結晶成長時間、成長終了後の冷却時間も変わらないので運転費用も従来と同じである。
このように本発明のシリカ坩堝の処理方法を用いれば、結晶成長炉の部材費用や運転費用の増大なしに、従って結晶そのものの価格上昇なしに、その品質を従来の高品質結晶であるMCZ結晶より更に向上させることができるので、各種電子デバイスの単位パフォーマンスに当たりのコストを低減できる。
本発明は、現在行われているバリウム塗布によるシリカ坩堝のクリストバライト化処理技術において、クリストバライトのバリウム等のアルカリ土類金属の濃度を明確な根拠と共に規定した発明である。これを実施するにはシリカガラス板を用いて予め条件出しを行えば、実際のシリカ坩堝にも直ちに実施できる。本発明のクリストバライト化処理技術では、バリウム等のアルカリ土類金属の塗布を坩堝の内側及び外側に数回行わねばならないが、本文にて説明したように、グラファイト備品の寿命が飛躍的に伸びるのでこのコストダウンが大きく期待できる。従ってクリストバライト化処理のコストアップを十分吸収できるので、産業上の利用可能性は非常に大きいと言える。
Claims (2)
- チョクラルスキー(Chocralski)法による融液からの結晶成長方法で用いるシリカガラス坩堝において、該シリカガラス坩堝の内側表面の厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層と、該無気泡シリカガラス層の表面に形成され、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化の促進元素として含む内側クリストバライト層と、前記1種類のアルカリ土類金属元素をクリストバライト化の促進元素として含む外側クリストバライト層を具備し、坩堝内側の前記クリストバライト層は、融液と対面する坩堝内側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝内側に形成され、坩堝外側の前記クリストバライト層は、グラファイト・サセプターと対面する坩堝外側全域を含みかつ坩堝縁から離れた坩堝外側に形成され、アルカリ土類金属元素のイオン半径をRi(Å)としたとき、クリストバライト層の如何なる部分においてもアルカリ土類金属元素の濃度Ci(ppma)が
Ci≧5.4E4/|1−(Ri/0.42)3|
(式中、Ri(Å)は被覆物質中におけるアルカリ土類金属元素のイオン半径を、|・・・|は絶対値をそれぞれ表わす。)
であるクリストバライト層形成シリカガラス坩堝。 - チョクラルスキー(Chocralski)法による融液からの結晶成長方法で用いるシリカガラス坩堝の製造方法において、シリカガラス坩堝の内側表面に厚さ80(μm)以上4(mm)以下の無気泡シリカガラス層を形成すること、前記無気泡シリカガラス層の表面をバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ラジウム(Ra)の中から選択される1種類のアルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆すること、前記シリカガラス坩堝の外側表面を内側の被覆物質と同じ物質で被覆すること、及び、前記シリカガラス坩堝に、不活性ガス雰囲気または真空中で熱処理を実施して前記アルカリ土類金属元素の水酸化物で被覆した表面にクリストバライト層を形成することを含む、請求項1に記載のクリストバライト層形成シリカガラス坩堝の製造方法。
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