JP2018138307A - 肉盛層の製造方法 - Google Patents

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Yasuhiro Yamamoto
康博 山本
宏典 青山
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宏典 青山
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Abstract

【課題】耐摩耗性や強度を確保しつつ、簡便な方法でもって、肉盛層のAl濃度の過度の上昇を抑えて前記肉盛層の割れを低減することのできる肉盛層の製造方法を提供する。
【解決手段】加工方向におけるレーザビームの照射位置より前方から供給される金属粉末のアルミニウム濃度がレーザビームの照射位置より後方から供給される金属粉末のアルミニウム濃度より低い。
【選択図】図5

Description

本発明は、肉盛層の製造方法に係り、特に、アルミニウム製の基材の表面に銅基の金属粉末を供給して肉盛層を形成する肉盛層の製造方法に関する。
従来から、たとえばエンジン用シリンダヘッドのバルブシートの耐久性を向上させるとともにその設計自由度を高めるために、バルブシートに対し、例えば粉末状の肉盛り材料を供給しながらレーザビームを照射し、バルブシートとレーザビームを相対回転させることによって肉盛層(クラッド層)を形成するレーザ加工が知られている。このレーザ加工は、エンジンの燃焼室に必要な機械加工、例えばバルブ孔形成加工等がおこなわれたシリンダヘッドに対し、そのバルブシートとなるべき領域に銅合金等からなる耐摩耗性を有する粉末状の肉盛り材料を供給しつつレーザ照射を実行し、最終的にバルブシートとなるべきリング状の肉盛層、すなわち肉盛ビード部を形成するという技術であり、一般にレーザクラッド加工や肉盛加工と称されている。
この種のレーザクラッド加工ないし肉盛加工では、肉盛り材料に対して、優れた耐摩耗性とともに良好な肉盛り性が要求されるため、通常、複雑な構造の多元素含有合金粉末が用いられるが、肉盛り性と耐摩耗性を両立させ得る肉盛り材料とすることに多大なコストがかかるとともに、高品質な肉盛りを安定して行うことが困難であった。
そこで、特許文献1には、シリンダヘッドのバルブシートとなるべきバルブシート基材の表面に、肉盛り性の良好な肉盛り材料からなる肉盛層を肉盛した上に、前記肉盛層が凝固しないうちに、耐摩耗性の良好な肉盛り材料からなる肉盛層を肉盛りする技術が提案されている。
特開平10−141132号公報
ところで、基材の表面と接触して形成される肉盛層は、アルミニウム(Al)合金からなる基材からAlが溶け出すことにより、Al濃度が高くなりやすい。そのため、耐摩耗性向上を目的としてAl濃度(言い換えれば、Al添加率)を増加させた粉末(肉盛り材料)を用いると、Al固溶限を超えたAlが肉盛層の肉盛り材料中で金属間化合物(例えば、AlNi、CuAl等)を形成し、材料伸びが低下して、前記肉盛層に割れが発生しやすくなる。
例えば、前記レーザクラッド加工の条件でAl希釈成分を調整することも考えられるが、基材の表面にはAlの酸化膜が形成されており、Al基材の融点自体は520℃程度であるのに対して、表面に形成された酸化膜の融点は2000℃以上と非常に高い。そのため、酸化膜を破壊して肉盛り材料を溶かし込むには、溶融池の温度が2000℃以上となるレーザ出力としなければならず、肉盛り材料が基材に溶着した途端に基材のAlで希釈されるので、前記Al希釈成分をレーザクラッド加工の条件で調整することは極めて難しい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性や強度を確保しつつ、簡便な方法でもって、肉盛層のAl濃度の過度の上昇を抑えて前記肉盛層の割れを低減することのできる肉盛層の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による肉盛層の製造方法は、アルミニウムないしアルミニウム合金製の基材の表面に銅基の金属粉末を供給しながら、供給された前記金属粉末にレーザビームを照射して前記金属粉末を溶融させるとともに、前記基材の表面に沿う所定の方向に前記金属粉末の供給位置及び前記レーザビームの照射位置を移動させて、前記基材の表面における前記所定の方向に肉盛層を形成する肉盛層の製造方法であって、前記所定の方向における前記レーザビームの照射位置より前方から供給される前記金属粉末のアルミニウム濃度が前記レーザビームの照射位置より後方から供給される前記金属粉末のアルミニウム濃度より低くなるとともに、前記金属粉末の前記基材への供給範囲が前記レーザビームの照射範囲より広くなるように設定されている方法である。
本発明によれば、相対的にアルミニウム濃度の低い金属粉末がレーザビームの照射位置の前側で基材と接触して前記レーザビームにより肉盛りされた後に、相対的にアルミニウム濃度の高い金属粉末がレーザビームの照射位置の後側で肉盛りされるため、肉盛層のアルミニウム濃度の過度の上昇が抑えられ、前記肉盛層の割れを低減することが可能となる。
また、金属粉末の基材への供給範囲がレーザビームの照射範囲より広くなるように設定されているので、肉盛層の下層を形成する金属粉末(相対的にアルミニウム濃度の低い金属粉末)が基材と同時に溶けることが抑えられ、アルミニウム希釈が抑えられるため、これによっても、前記肉盛層の割れを低減できる。また、肉盛層の上層を形成する金属粉末(相対的にアルミニウム濃度の高い金属粉末)の冷却時間を短縮できるため、前記肉盛層表面の被削性を向上できるという利点もある。
本発明の肉盛層の製造方法が適用されるレーザクラッド加工装置の主要構成を概略的に示す斜視図である。 図1で示すレーザクラッド加工装置による肉盛層の製造方法を模式的に示す要部拡大図である。 図2に示す同軸ノズルの内部構造および金属粉末の供給経路を概略的に説明する図であり、(A)は正転時、(B)は逆転時を説明する図である。 図2に示す同軸ノズルの内部構造および金属粉末の供給経路の他例を概略的に説明する図であり、(A)は正転時、(B)は逆転時を説明する図である。 金属粉末の供給位置とレーザビームの照射位置の関係を模式的に示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。 溶融池内部温度の測定結果の一例を示す図である。 肉盛層の断面観察結果を示す図であり、(A)は実施例の観察結果、(B)は比較例の観察結果を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
まず、図1〜図3を参照して、本発明の肉盛層の製造方法が適用されるレーザクラッド加工装置の一例を概説する。
図1は、本発明の肉盛層の製造方法が適用されるレーザクラッド加工装置の主要構成を概略的に示した斜視図であり、図2は、図1で示すレーザクラッド加工装置による肉盛層の製造方法を模式的に示す要部拡大図である。また、図3(A)、(B)は、図2に示す同軸ノズルの内部構造および金属粉末の供給経路を概略的に説明する図であり、図3(A)は正転時、図3(B)は逆転時を説明する図である。
図1で示すレーザクラッド加工装置1は、例えばアルミニウム(Al)ないしアルミニウム合金製のシリンダヘッドH(以下、基材もしくはAl基材ということがある)のバルブシート部Sにレーザクラッド加工(肉盛加工)を行う装置であって、主に、シリンダヘッドHを傾動して保持するシリンダヘッド保持装置9と、加工部位(基材表面)にレーザビームを照射しながら金属粉末(銅を主成分とする金属材料)を吐出するレーザ加工ヘッド2と、レーザ加工ヘッド2を鉛直方向に傾斜して保持して鉛直軸線周りに回転させることにより、加工部位におけるレーザ加工ヘッド2からの金属粉末の供給位置及びレーザビームの照射位置を周方向(回転方向)で移動させる回転装置3と、レーザ加工ヘッド2に金属粉末を供給する2つの供給装置10、14と、供給装置10、14からのレーザ加工ヘッド2への金属粉末の供給状態を制御する制御装置20とを備えている。
シリンダヘッド保持装置9は、バルブシート部Sの中心軸線が鉛直方向となるようにシリンダヘッドHを傾動したり、バルブシート部Sの中心軸線とレーザ加工ヘッド2の回転軸線とが一致するようにシリンダヘッドHを水平方向へ二次元的に移動させるものである。
レーザ加工ヘッド2は、主に、金属粉末の加熱手段としてのレーザビームを発生するレーザ発振部5と、レーザビームを集光する集光レンズ等が内蔵された光学系部6と、レーザビームを通過させるとともにそのレーザビームの周囲から金属粉末を吐出する二重管構造の同軸ノズル7と、を有している。
また、各供給装置10、14は、主に、レーザ加工ヘッド2に供給する金属粉末を貯留するフィーダ11、15を有し、各フィーダ11、15とレーザ加工ヘッド2の同軸ノズル7とは、供給チューブ18および該供給チューブ18に設けられた切替えバルブ19を介して接続されている(詳細構造は後述)。
このレーザクラッド加工装置1では、加工部位に形成される肉盛層(クラッド層)に応じた量の金属粉末が供給チューブ18等を介して各フィーダ11、15から同軸ノズル7へ供給され、レーザ発振部5によってその金属粉末に応じた出力のレーザビームが生成され、同軸ノズル7を介して加工部位にレーザビームを照射しながら該レーザビームの周囲から該レーザビームへ向かって金属粉末を吐出することにより、シリンダヘッドHのバルブシート部Sに環状の肉盛層を形成することができる(図2参照)。
より詳しくは、図3(A)、(B)で示すように、前記同軸ノズル7は、主に、レーザビームが通過するためのレーザ通路を有する略円管状のインナノズル部材7aと、インナノズル部材7aに外嵌されるアウタノズル部材7bとを備えている。アウタノズル部材7bの内周面は、インナノズル部材7aの外周面と相補的な形状を有し、インナノズル部材7aとアウタノズル部材7bとは同軸上に配置され、インナノズル部材7aとアウタノズル部材7bとの間に金属粉末が通過する略円環状の吐出空間8が画成されている。なお、インナノズル部材7aやアウタノズル部材7bは、その先端側へ向かって縮径している。
前記吐出空間8には、周方向で略等間隔に複数(図示例では、90°間隔で4個)の供給パイプ8a〜8dが連設されており、この供給パイプ8a〜8dのうち隣り合う2つの供給パイプ8a、8bが接続チューブ13を介して切替えバルブ19に接続され、隣り合う2つの供給パイプ8c、8dが接続チューブ17を介して切替えバルブ19に接続されている。
ここでは、4つの供給パイプ8a〜8dのうち、供給パイプ8a、8bが、レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の正転時(例えば、奇数シート加工時)の加工方向(進行方向)前側(言い換えれば、逆転時の加工方向後側)に位置し、供給パイプ8c、8dが、レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の逆転時(例えば、偶数シート加工時)の加工方向(進行方向)前側(言い換えれば、正転時の加工方向後側)に位置するように配置されている。
なお、図示例では、前記吐出空間8が一空間として形成されているが、例えば、前記吐出空間8を、周方向で略等間隔(例えば90°間隔)に設けられた分割壁によって複数(例えば4個)の小空間に分割し、各小空間に、各小空間へ金属粉末を供給するための供給パイプを連設しても良い。
一方、供給装置10のフィーダ11は、接続チューブ12を介して前記切替えバルブ19に接続されるとともに、供給装置14のフィーダ15は、接続チューブ16を介して前記切替えバルブ19に接続されている。
そして、前記制御装置20により前記回転装置3等と連動して前記切替えバルブ19の切替えを制御することにより、例えば、以下の連通状態が形成され、各フィーダ11、15から同軸ノズル7の供給パイプ8a〜8dへの金属粉末の供給経路の切替えが行われるようになっている。
[第1連通状態]
レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の正転時(例えば、奇数シート加工時)において、フィーダ11(に連結された接続チューブ12)と供給パイプ8a、8b(に連結された接続チューブ13)とが連通し、フィーダ11に貯留された金属粉末が供給パイプ8a、8bを介して吐出空間8に供給されるとともに、フィーダ15(に連結された接続チューブ16)と供給パイプ8c、8d(に連結された接続チューブ17)とが連通し、フィーダ15に貯留された金属粉末が供給パイプ8c、8dを介して吐出空間8に供給される状態(図3(A)に示される状態)。
[第2連通状態]
レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の逆転時(例えば、偶数シート加工時)において、フィーダ11(に連結された接続チューブ12)と供給パイプ8c、8d(に連結された接続チューブ17)とが連通し、フィーダ11に貯留された金属粉末が供給パイプ8c、8dを介して吐出空間8に供給されるとともに、フィーダ15(に連結された接続チューブ16)と供給パイプ8a、8b(に連結された接続チューブ13)とが連通し、フィーダ15に貯留された金属粉末が供給パイプ8a、8bを介して吐出空間8に供給される状態(図3(B)に示される状態)。
なお、図3(A)、(B)に示す例では、一つの切替えバルブ19を利用して各フィーダ11、15からの同軸ノズル7の供給パイプ8a〜8dへの金属粉末の供給状態(供給経路)の切替えを実施したが、例えば、図4(A)、(B)で示すように、各フィーダ11、15に供給パイプ8a〜8dに繋がる供給チューブを接続し、各供給チューブに切替えバルブ19a、19bを装備し、二つの切替えバルブ19a、19bを利用して(つまり、制御装置20で二つの切替えバルブ19a、19bを同時に制御して)各フィーダ11、15からの同軸ノズル7の供給パイプ8a〜8dへの金属粉末の供給状態(供給経路)の切替えを実施するようにしても良い。
また、各フィーダ11、15には、窒素ガスなどの不活性ガスからなるキャリアガスが通過するキャリアガス配管(不図示)が設けられ、当該キャリアガスを用いて該キャリアガスとともに金属粉末を当該フィーダ11、15から供給チューブ18(接続チューブ12、16等)を通して同軸ノズル7へ圧送して供給するようになっている。
なお、アウタノズル部材7bには、窒素ガスなどの不活性ガスが通過するガス供給路が設けられ、そのガス供給路を介して供給された不活性ガスが、インナノズル部材7aとアウタノズル部材7bとの間に画成されたガス充填空間と、該ガス充填空間に連通するようにインナノズル部材7aに形成された複数のガス吐出路を介してインナノズル部材7aのレーザ通路に供給される。
シリンダヘッドHのバルブシート部Sへの肉盛層の形成に当たり、各フィーダ11、15から同軸ノズル7へ金属粉末を供給する際には、キャリアガス配管に設けられた開閉バルブが開弁され、各フィーダ11、15に貯留された金属粉末が、キャリアガス配管から供給されるキャリアガスの圧力によって該キャリアガスとともに供給チューブ18を構成する各接続チューブ12、16へ送出され、前述の切替えバルブ19および各接続チューブ13、17を通って同軸ノズル7の適宜の供給パイプ8a〜8dへ供給される。各供給パイプ8a〜8dへ供給された金属粉末は、吐出空間8へ導入されて周方向へ拡散もしくは分散しながら、当該吐出空間8の先端側の吐出口から外部へ吐出される。
吐出口を介して吐出された金属粉末は、レーザ加工ヘッド2のレーザ発振部5から出射されてインナノズル部材7aのレーザ通路を通過したレーザビームにより溶融され、溶融された金属粉末が加工部位であるシリンダヘッドHのバルブシート部Sに溶着され、溶着された金属粉末が冷却固化されて、加工部位に所定の厚さ及び外形を有する肉盛層(クラッド層)が形成される。なお、インナノズル部材7aのレーザ通路は、上記したように、ガス供給路等を介して供給された不活性ガスの通路も兼ねており、レーザクラッド加工に際して不活性ガスがレーザ通路を通って被加工部材の加工部位へ噴射されるようになっている。
なお、各フィーダ11、15から各接続チューブ12、16(つまり、同軸ノズル7)へ送出される金属粉末の量や、キャリアガスの流量や圧力(フィーダ内圧)は、各フィーダ11、15により管理されている。
次に、図1で示すレーザクラッド加工装置による肉盛層の製造(形成)方法、およびそれにより形成される肉盛層の内部構造について、より詳細に説明する。
本実施形態では、前述の供給装置10のフィーダ11に、Al基材としてのシリンダヘッドHとの溶着性に優れた銅基の金属粉末(第1金属粉末)が貯留され、供給装置14のフィーダ15に、耐摩耗性ないし強度に優れた銅基の金属粉末(第2金属粉末)が貯留されている。より具体的には、フィーダ11に貯留された金属粉末のAl濃度(言い換えれば、Al添加率)が、フィーダ15に貯留された金属粉末のAl濃度より低く設定されている。
前記制御装置20は、前述のように、レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の正転時と逆転時とで(つまり、加工方向(同軸ノズル7の回転方向)に応じて)切替えバルブ19の切替えを行うことにより、シリンダヘッドHのバルブシート部Sにおける肉盛層の加工方向に対して前側に対応する供給パイプ(正転時では供給パイプ8a、8b、逆転時では供給パイプ8c、8d)が前記フィーダ11と常時連通し、肉盛層の加工方向に対して後側に対応する供給パイプ(正転時では供給パイプ8c、8d、逆転時では供給パイプ8a、8b)が前記フィーダ15と常時連通するようになっている(図3(A)、(B)も併せて参照)。
また、本実施形態では、同軸ノズル7の基材に対する位置、同軸ノズル7の諸元、レーザビームの照射状態等を調整することにより、金属粉末が溶融する位置での金属粉末の集中直径(つまり、金属粉末の供給範囲)Dkが、レーザビームの(加工方向に対する)幅(つまり、レーザビームの照射範囲)Wより大きくなるように設計されている(特に、図5(A)参照)。例えば、金属粉末の集中直径Dkは約2.85mm、レーザビームの幅Wは約1mmとされる。
これにより、本実施形態のレーザクラッド加工装置1にて肉盛層を形成する場合、同軸ノズル7に設けられた供給パイプ8a〜8dのうち、加工方向前側に位置する供給パイプ(正転時は供給パイプ8a、8b、逆転時は供給パイプ8c、8d)には前記フィーダ11から溶着性に優れた金属粉末(第1金属粉末)が供給され、加工方向後側に位置する供給パイプ(正転時は供給パイプ8c、8d、逆転時は供給パイプ8a、8b)には前記フィーダ15から耐摩耗性ないし強度に優れた金属粉末(第2金属粉末)が供給される。そして、図5(A)、(B)に拡大図示されているように、レーザ加工ヘッド2(の同軸ノズル7)の正転時と逆転時の両方において、同軸ノズル7(のインナノズル部材7a)を通過したレーザビーム(の照射位置)の前(進行方向)から前記第1金属粉末が供給され、前記レーザビーム(の照射位置)の後ろ(進行逆方向)から前記第2金属粉末が供給され、前記第1金属粉末および第2金属粉末が前記レーザビームにより溶融されてシリンダヘッドHのバルブシート部Sに溶着・肉盛りされることになる。
ここで、図6は、溶融池内部の測定位置に置かれた熱電対により計測された、溶融池内部温度の測定結果の一例を示したものである。熱電対の位置は変わらず、加工方向に沿ってレーザビームが移動していくのに伴い、溶融池の高温部が移動していくので、図中B部がレーザビームが照射されている区間、A部がレーザビーム前方に広がった溶融池、C部がレーザビーム後方の溶融池のそれぞれの温度に対応している。
なお、図6の例では、レーザビーム前方の溶融池(の加工方向の幅)が約1mm、レーザビームが照射されている区間(の加工方向の幅)が約1.5mm、レーザビーム後方の溶融池(の加工方向の幅)が約1mmとなっている。
前記したように、レーザビームの前(進行方向)から供給された第1金属粉末(溶着性に優れた粉末)は、図6中A1の温度場(1500℃程度)に入れられる。この第1金属粉末の融点は850〜950℃程度であるので、当該金属粉末は溶融するが、この時は基材表面に形成されたAl酸化膜(融点が2000℃程度)は固体のままである。Al酸化膜が固体のままであるにもかかわらず、表面は液体に覆われるため、その後到来する溶融池本体とAl基材表面との「濡れ」は確保される(つまり、玉となって未溶着とはならない)。溶融池本体の中心部分の温度は図6中B1で2100℃程度となっているため、この時になってAl酸化膜は液体となる。このように段階的に溶融池とAl基材は溶け合うため、過度に溶融池内部にAlが溶け込まず、Al希釈が抑制されることになる。
なお、本発明者等は、図6中A1で約1000℃まで温度を下げても溶着具合は同等に確保されるため、より低いレーザ出力で良好な溶着性を確保でき、省エネルギとなることを確認している。
続いて、レーザビームの後方から供給された第2金属粉末(耐摩擦性に優れた粉末)は、図6中C1の温度場(2500℃程度)に入れられる。第2金属粉末の融点は1460℃程度であるため、約2500℃の溶融池ですぐに液体となり、約1050℃にまで下がったC2で固体に変わる。C1とC2の時間差は、レーザクラッドでできた組織(の特性)を決める重要な値であり、短いほど硬質粒子が微細分散された被削性の良い組織となる。この第2金属粉末の溶融期間は短く、肉盛層(クラッド層)の上部ですぐに固まるため、シート面(バルブシートとなり得る面)に加工される際、被削性が良く耐摩耗性が確保される。
このように、本実施形態によれば、相対的にAl濃度が低くAl基材との溶着性に優れた金属粉末がレーザビームの照射位置の前側で基材と接触して前記レーザビームにより肉盛りされた後に、相対的にAl濃度が高く耐摩耗性ないし強度に優れた金属粉末がレーザビームの照射位置の後側で肉盛りされるため、肉盛層のAl濃度の過度の上昇が抑えられ、前記肉盛層の割れを低減することが可能となる。
また、金属粉末の基材への供給範囲がレーザビームの照射範囲より広くなるように設定されているので、肉盛層の下層を形成する金属粉末(相対的にAl濃度の低い金属粉末)が基材と同時に溶けることが抑えられ、Al希釈が抑えられるため、これによっても、前記肉盛層の割れを低減できる。また、肉盛層の上層を形成する金属粉末(相対的にAl濃度の高い金属粉末)の冷却時間を短縮できるため、前記肉盛層表面の被削性を向上できるという利点もある。
さらに、本実施形態では、レーザビームの照射位置の前後から相対的にAl濃度が低い金属粉末と相対的にAl濃度が高い金属粉末とが同時に供給されるので、生産性を確保できるといった効果もある。
なお、上記実施形態では、レーザビームを通過させるとともにそのレーザビームの周囲から金属粉末を吐出する二重管構造の同軸ノズル7を利用したが、例えば、レーザビームと金属粉末を別個のノズルを使用して基材(シリンダヘッドHのバルブシート部S)の表面に供給しても良い。また、上記実施形態では、各供給装置10、14から供給される異なる成分の金属粉末を一つの同軸ノズル7から吐出(供給)したが、例えば、各供給装置10、14から供給される異なる成分の金属粉末を別個の(二つの)ノズルを使用してレーザビームの前後から基材(シリンダヘッドHのバルブシート部S)の表面に向けて供給しても良い(例えば、上記特許文献1参照)。
また、前記同軸ノズル7の吐出空間8に金属粉末を供給する供給パイプの数や位置等は、適宜に変更できることは言うまでも無い。
<肉盛層(クラッド層)の断面を観察した実験とその結果>
本発明者等は、前記したレーザクラッド加工装置1を利用し、異なる粉末合金成分の金属粉末(実施例、比較例)を使用してAl基材(Al製のシリンダヘッドのバルブシート部)に肉盛層を形成し、その肉盛層の断面観察実験を実施した。
以下の表1、2はそれぞれ、実施例、比較例における金属粉末の第1金属粉末(レーザビームの前方から供給される金属粉末)および第2金属粉末(レーザビームの後方から供給される金属粉末)の粉末合金成分を示している。
[表1]
[表2]
つまり、本実験で使用した実施例における金属粉末の粉末合金成分と比較例における金属粉末の粉末合金成分とは、第1金属粉末と第2金属粉末の粉末合金成分が逆の関係となっている。
なお、上記の実施例における金属粉末の粉末合金成分の組成は、以下の考えに基づき設定されたものである。
《Ni成分について》
Niは、含有量(率)が多くなると、Cu-Ni-Siの網目状の組織が生じやすく、マトリクスが強化されるが、20%を超えると、割れが発生しやすくなり、溶着性が低下する。一方で、含有量(率)が少ないと、NiSi(ニッケル珪化物)の形成やAl固溶限の増加によるAlNi化合物の形成が抑制され、クラックを抑制できるが、5%未満ではマトリクスの強化が不十分となるため、燃焼圧等のエンジン負荷に耐えられない。そのため、5.0%〜20.0%の範囲内で、第1金属粉末でのNi量を相対的に少なくし、第2金属粉末でのNi量を相対的に多くする。
《Si成分について》
Siは、含有量(率)が多くなると、Alへの溶着性が向上するが、肉盛層にニッケル珪化物(Ni3Si)等が形成されやすくなり、クラックが生じやすくなるので溶着性向上とクラック生じやすさで相殺される。より詳しくは、2.4%以下では、未溶着が発生しやすくなり、4.0%以上では、Cu-Ni-SiにおいてCu-Ni結晶粒の粒界に形成されたニッケル珪化物(Ni3Si等)が増加するため、延性が低下し、これに基材成分(Al)が固溶限を超えて混入すると粒界に金属間化合物(AlNi等)を形成し、伸びが著しく低下する。また、低いAl濃度でも高い残留引張応力が生じるためクラックを発生しやすくなる。また、0.5%以下ではマトリクスが形成されなくなる。そのため、第1金属粉末でのSi量は、2.4%〜4.0%の範囲内、第2金属粉末でのSi量は、0.5%〜4.0%の範囲内とし、第1金属粉末でのSi量は、第2金属粉末でのSi量以上とする。
なお、本実験では、第1金属粉末でのSi量を第2金属粉末でのSi量と同じ(3.0%)としているが、例えば、第1金属粉末でのSi量を3.0%、第2金属粉末でのSi量を2.0%などとしても良い。
《Mo成分について》
Moは、含有量(率)が少ないほど溶着性が向上するが、15.0%を超えると溶着性が著しく低下する。また、含有量(率)が多いほど硬質粒子が多く晶出し、耐摩耗性が向上するが、マトリクスに比べて靱性がないため、破断歪が低下してクラックが発生しやすくなる。より詳しくは、3.0%未満の場合は耐摩耗性が低下し、40.0%を超えると硬質粒子が過剰となり靱性が低下し、クラックが発生しやすくなる。そのため、第1金属粉末でのMo量は、0%〜15.0%の範囲内、第2金属粉末でのMo量は、3.0%〜40.0%の範囲内とし、第1金属粉末でのMo量は、第2金属粉末でのMo量未満とする。
なお、Moはシリコンと結合してシリサイド(一般的には、靱性を有するFe-Mo系のシリサイド)を硬質粒子内に生成し、高温における耐摩耗性と潤滑性とを高める。このシリサイドはCo-Mo系のシリサイドよりも硬さが低く、靱性が高い。Moを主要成分とするシリサイドは、500〜700℃程度の比較的低い温度領域においても、しかも酸素分圧が低い環境においても、Moを主要成分とする固体潤滑性に富む酸化物を生成しやすい。この酸化物は、使用時に銅基のマトリクスの表面を覆い、相手材とマトリクスとの直接接触を避けるのに有利となる。これにより、自己潤滑性が確保される。
《Al成分について》
Alは、含有量(率)が多くなると、強度が向上する。また、基材のAlが希釈して割れやすくなる。より詳しくは、希釈Al成分は最大5%程度であり、割れやすくなり始めるのは9%程度であるので、Al成分が9-5=4%以下であれば、最大希釈した部分においても割れを防止できることになる。また、Al成分が僅かでも入ると引張強度は向上するが、0.08%未満ではNiAlが形成し始める。一方で、12%を上回ると、破断ひずみ(低いと割れやすい)がAl濃度0%の場合を下回ることになる。そのため、第1金属粉末でのAl量は、0%〜4.0%の範囲内、第2金属粉末でのAl量は、0.08%〜12.0%の範囲内とし、第1金属粉末でのAl量を相対的に少なくし、第2金属粉末でのAl量を相対的に多くする。
図7は、本実験で作製された肉盛層(製品時)の断面観察結果を示す組織写真図であり、図7(A)は実施例の観察結果、図7(B)は比較例の観察結果を示す図である。
図7(B)で示す比較例では、第1金属粉末がAl基材表面と全く未溶着となり、Alを削り取った痕跡が確認された。
一方、図7(A)で示す実施例では、第1金属粉末(溶着性に優れた粉末)がAlと溶け合い、その上部には第2金属粉末(耐摩耗性に優れた粉末)が溶融していることから、第1金属粉末を介して、難溶着性かつ耐摩耗性に優れた第2金属粉末が肉盛り(クラッド)されていることが確認された。
すなわち、この実験結果より、肉盛層のAl濃度の過度の上昇が抑えられ、前記肉盛層の割れを低減できることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…レーザクラッド加工装置、2…レーザ加工ヘッド、3…回転装置、5…レーザ発振部、6…光学系部、7…同軸ノズル、7a…インナノズル部材、7b…アウタノズル部材、8…吐出空間、8a〜8d…供給パイプ、9…シリンダヘッド保持装置、10、14…供給装置、11、15…フィーダ、18…供給チューブ、19…切替えバルブ、20…制御装置

Claims (1)

  1. アルミニウムないしアルミニウム合金製の基材の表面に銅基の金属粉末を供給しながら、供給された前記金属粉末にレーザビームを照射して前記金属粉末を溶融させるとともに、前記基材の表面に沿う所定の方向に前記金属粉末の供給位置及び前記レーザビームの照射位置を移動させて、前記基材の表面における前記所定の方向に肉盛層を形成する肉盛層の製造方法であって、
    前記所定の方向における前記レーザビームの照射位置より前方から供給される前記金属粉末のアルミニウム濃度が前記レーザビームの照射位置より後方から供給される前記金属粉末のアルミニウム濃度より低くなるとともに、
    前記金属粉末の前記基材への供給範囲が前記レーザビームの照射範囲より広くなるように設定されている肉盛層の製造方法。
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