JP2018137380A - 結晶系太陽電池モジュール及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルとタブ線との接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止し、高い接続信頼性を維持することが可能なバスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュール及びその製造方法を提供する。【解決手段】バスバーレス構造の結晶系太陽電池セル2を用いた結晶系太陽電池モジュール1において、フィンガー電極12と導電性接着層14と補助電極13とタブ線3とを有し、結晶系光電変換材料10(結晶系太陽電池セル2)の受光面上のフィンガー電極12間に、且つ導電性接着層14の両側縁に沿って補助電極13を設ける。【選択図】図2

Description

本発明は、バスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
太陽電池は、光起電力効果によって太陽光を即時に電力に変換して出力するエネルギー変換器であり、クリーンで無尽蔵に供給される太陽光を用いるため、新しいエネルギー源として期待されている。
一般的に太陽電池は、複数の隣接する結晶系太陽電池セル(以下、単に「セル」と呼称する場合もある。)を、はんだコートされたリボン状銅箔からなるタブ線を介して電気的に接続した結晶系太陽電池モジュール(以下、単に「モジュール」と呼称する場合もある。)として用いられている。モジュールでは、タブ線の一端側を一のセルの表面電極に接続し、他端側を隣接する他のセルの裏面電極に接続することにより、各セルを直列に接続する。セルには、複数のフィンガー電極と交差するように、銀ペーストを塗布して形成されたバスバー電極が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、高価な銀ペーストからなるバスバー電極が形成されたセルでは、価格競争に対抗できず、更なる低コスト化が切望されていることから、近年では、バスバー電極を用いない、所謂、バスバーレス構造のセルが開発されている。セルとタブ線との接続は、はんだ又は導電性接着剤を利用することができるが、はんだを用いる接続方法では、200℃以上の高温で処理が行われるため、セルの反りやクラック等により、セルとタブ線との間の接続信頼性が低下することが懸念される。
そこで、低温で溶融する金属粒子(低融点粒子)を含む導電性接着剤を用いることにより低温での処理が可能となり、高温処理によるセルの劣化を防止することができる(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、かかる導電性接着剤を用いた場合、太陽電池の高効率化のためにセルの表面に形成された微小凹凸構造(テクスチャ)により、塗工した導電性接着剤、特に加熱押圧時に溶融した導電性接着剤が、テクスチャを伝ってセルとタブ線との接続領域外に流出し、セルとタブ線との良好な接続が困難となる虞がある。
特開2010−239167号公報 特開2013−258340号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、セルとタブ線との接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止し、高い接続信頼性を維持することが可能なバスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するための本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セルが接続されてなる結晶系太陽電池モジュールであって、結晶系太陽電池セルの受光面上に、それぞれが略平行になるように形成された複数のフィンガー電極と、フィンガー電極に略直交するように形成された導電性接着層と、フィンガー電極間に形成され、且つ導電性接着層の両側縁に沿って形成された補助電極と、少なくとも補助電極の一部が対向する幅を有するタブ線とを有することを特徴とする。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、補助電極が、フィンガー電極間に形成され、且つ導電性接着層の両側縁に沿って形成されているので、結晶系太陽電池セルとタブ線とを接続する場合に、導電性接着剤の流出を阻止し、接続領域外での導電性接着剤の硬化を防止することができる。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、導電性接着層が、複数のフィンガー電極に亘って設けられてもよい。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、導電性接着層が、複数のフィンガー電極に亘って設けられているので、導電性接着層がバスバー電極の代替として作用し、各電極とタブ線とを電気的に接続することができる。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、導電性接着層が、低融点金属粒子を含んでいてもよい。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、導電性接着層が、低融点金属粒子を含んでいるので、結晶系太陽電池セルとタブ線との接続に際し、低温で加熱処理を施すことができる。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、補助電極は、導電性接着層の側縁の少なくとも一部と接するように設けられてもよい。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、補助電極が、導電性接着層の側縁の少なくとも一部と接するように設けられているので、補助電極を介してフィンガー電極同士の導通を確保することができる。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、複数の補助電極が、導電性接着層の少なくとも一方の側縁に沿って形成されてもよい。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、複数の補助電極が、導電性接着層の少なくとも一方の側縁に沿って形成されているので、1つの補助電極のサイズを縮小化することで、モジュール全体の低コスト化を図ることができる。
上述した目的を達成するための本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セルが接続されてなる結晶系太陽電池モジュールの製造方法であって、結晶系太陽電池モジュールは、結晶系太陽電池セルの受光面上に、それぞれが略平行になるように形成された複数のフィンガー電極と、フィンガー電極に略直交するように形成された導電性接着層と、フィンガー電極間に形成され、且つ導電性接着層の両側縁に沿って形成された補助電極と、少なくとも補助電極の一部が対向する幅を有するタブ線とを有し、結晶系太陽電池セルの受光面上に低融点金属粒子を含む導電性接着剤を塗布し、導電性接着剤を加熱して低融点金属粒子を溶融して導電性接着層を形成し、少なくともフィンガー電極とタブ線とを電気的に接続することを特徴とする。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、結晶系太陽電池セルの受光面上に低融点金属粒子を含む導電性接着剤を塗布し、導電性接着剤を加熱して低融点金属粒子を溶融して導電性接着層を形成することで、少なくともフィンガー電極とタブ線とを電気的に確実に接続することができる。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、導電性接着層を形成する際に、少なくとも補助電極の一部と導電性接着層の側縁の少なくとも一部とが接するように設けて、導電性接着層を介して補助電極とフィンガー電極とを電気的に接続してもよい。
従って、本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、導電性接着層を形成する際に、少なくとも補助電極の一部と導電性接着層の側縁の少なくとも一部とが接するように設けることで、導電性接着層を介して補助電極とフィンガー電極とを電気的に確実に接続することができる。
本発明によれば、バスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュールにおいて、セルとタブ線との接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止し、高い接続信頼性を維持することができる。
本発明の一実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールの分解斜視図である。 本発明の一実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールにおける結晶系太陽電池セルとタブ線との接続プロセスを説明するための図であり、(A)は、セル表面に各種電極を配置した状態を示す図であり、(B)は、セルとタブ線との接続領域に導電性接着剤を塗工した状態を示す図であり、(C)は、セル表面の接続領域にタブ線を配置した図である。 本発明の一実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールにおける結晶系太陽電池セルとタブ線との接続プロセスを説明するための図であり、(A)は、図2(B)のA−A断面図であり、(B)は、図2(C)のB−B断面図である。 実施例における結晶系太陽電池セルを評価するための各種電極の配置を示した図であり、(A)は実施例1、(B)は実施例2でそれぞれ用いたセル表面上の電極の配置を示した図である。 比較例における結晶系太陽電池セルを評価するための各種電極の配置を示した図であり、(A)は比較例1、(B)は比較例2でそれぞれ用いたセル表面上の電極の配置を示した図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下の項目に沿って図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
1.結晶系太陽電池モジュール
2.結晶系太陽電池セル
2−1.フィンガー電極
2−2.補助電極
2−3.導電性接着層
2−4.タブ線
3.結晶系太陽電池モジュールの製造方法
[1.結晶系太陽電池モジュール]
本実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールを適用した例として、図1に示す結晶系太陽電池モジュール1を挙げて説明する。図1に示すように、結晶系太陽電池モジュール1は、バスバーレス構造を有する複数の結晶系太陽電池セル2が、インターコネクタとなるタブ線3によって直列に接続されたストリングス4を有し、このストリングス4を複数配列したマトリクス5を備えている。
結晶系太陽電池モジュール1は、マトリクス5が封止接着剤のシート6で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8と共に一括してラミネートされている。そして、結晶系太陽電池モジュール1は、その周囲にアルミニウム等の金属フレーム9が取り付けられることにより形成されている。
結晶系太陽電池モジュール1では、封止接着剤としては、例えば、エチレンビニルアルコール(EVA)樹脂等の透光性封止材等が用いられ、表面カバー7としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料等が用いられ、バックシート8としては、例えば、ガラスやアルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
[2.結晶系太陽電池セル]
図2(A)〜(C)に示すように、結晶系太陽電池セル2は、各フィンガー電極と略直交することによりフィンガー電極の電気を集電するバスバー電極が設けられていない、所謂、バスバーレス構造を有している。
結晶系太陽電池セル2は、結晶系光電変換材料10(基板)からなる光電変換素子11を有しており、光電変換素子11は、結晶系光電変換材料10(結晶系太陽電池セル2)の受光面上に、フィンガー電極12及び補助電極13が、所定の位置にそれぞれ形成されている。また、結晶系光電変換材料10の受光面上の所定の位置には、導電性接着層14も形成されている。そして、各フィンガー電極12と略直交するように、タブ線3が、補助電極13及び導電性接着層14上に配設されている。
光電変換素子11としては、結晶系光電変換材料10を有するものであれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、GaAs(砒化ガリウム)系等の単結晶化合物、CdS(硫化カドミウム)、CdTe(テルル化カドミウム)等の多結晶化合物等が挙げられる。
<2−1.フィンガー電極>
フィンガー電極12は、光電変換素子11において生成した電気を収集するための電極である。フィンガー電極12は、結晶系光電変換材料10の受光面上に、それぞれが略平行になるように、且つ所定の間隔で形成されている。
フィンガー電極12の材質としては、光電変換素子11において生成した電気を収集することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、錫、ニッケル等が挙げられる。
フィンガー電極12を形成する際の間隔としては、光電変換素子11において生成した電気を収集することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。
フィンガー電極12の平均幅としては、光電変換素子11において生成した電気を収集することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、フィンガー電極12の平均幅は、例えば、フィンガー電極12の任意の10点において、フィンガー電極12の幅を測定し、測定した値を平均することにより求めることができる。
<2−2.補助電極>
一般的に太陽電池は、複数の隣接する結晶系太陽電池セルを、はんだコートされたリボン状銅箔からなるタブ線を介して電気的に接続した結晶系太陽電池モジュールとして用いられている(図1参照。)。そして、結晶系太陽電池モジュールでは、タブ線の一端側を一の結晶系太陽電池セルの表面電極に接続し、他端側を隣接する他のセルの裏面電極に接続することにより、各セルを直列に接続する。
セルとタブ線との接続は、はんだ又は導電性接着剤を利用することができるが、はんだを用いる接続方法では、200℃以上の高温で処理が行われるため、セルの反りやクラックの他、セルとタブ線との接続部に生じる内部応力、更にフラックスの残渣等により、セルとタブ線との間の接続信頼性が低下することが懸念される。
一方、導電性接着剤を用いる接続方法では、低温で処理が行われるので、セルの反り等の発生といった問題を低減することができる。しかしながら、太陽電池の高効率化には、セル表面での反射率の低減による太陽光の取り込みの促進が重要であるため、セル表面に形成した微小凹凸構造(テクスチャ)と反射防止膜との組み合わせが用いられている。
そのため、高温で溶融する金属粒子(高融点粒子)と低温で溶融する金属粒子(低融点粒子)とを含む導電性接着剤を用いる場合には、タブ線の幅よりも狭くなるように導電性接着剤を塗工してセルとタブ線とを加熱して接続する際に、導電性接着剤が硬化する前にテクスチャを伝って接続領域外に漏洩するといった問題がある。導電性接着剤が接続領域外に漏洩することで、その領域内で硬化させてセルとタブ線とを接続することが困難となる。
更に、セルとタブ線との接続性に問題が生じることにより、モジュールの接続信頼性が低下することにも繋がってしまう。加えて、モジュールは、通常、封止材及び表面保護材によりセルを内部に封入又は封止していることから、接続領域外で導電性接着剤が硬化することにより、封止材や表面保護材に剥離(デラミネーション)等の不具合が生じることがある。
一方、例えば、バスバー構造を有する結晶系太陽電池セルは、通常、結晶系太陽電池セルにおいて生成した電気を収集するフィンガー電極と、フィンガー電極から電気を収集するバスバー電極とを有しており、バスバー電極は、結晶系太陽電池セル上に銀ペーストを塗布して形成されている。
しかしながら、高価な銀ペーストからなるバスバー電極が形成された結晶系太陽電池セルでは、価格競争に対抗できず、更なる低コスト化が切望されていることから、近年では、バスバー電極を用いない、所謂、バスバーレス構造のセルが開発されている。結晶系太陽電池セルとタブ線との接続に導電性接着剤を用いた結晶系太陽電池モジュールにおいては、バスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを効率的に接続して製造することが可能なため、注目されている。
しかしながら、バスバーレス構造のセルでは、セルとタブ線との接続が不十分な部分が1箇所あっただけでも大きな出力ロスを伴い、太陽電池の発電効率が低下してしまうという問題がある。また、セルとタブ線との固定が十分ではないことに起因して、特に、モジュールの接続信頼性及びセルとタブ線との接着性が低下してしまうという問題もある。
そこで、本実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールは、上述の実情に鑑みて提案され、例えば、図1及び図2(A)〜(C)に示すように、バスバー電極の代わりに補助電極13が形成された結晶系太陽電池セル2を用いることで、電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を、バスバー構造を有する太陽電池セル(図5(B)参照。)と比較して低減することができ、コストの低減化を図ることができる。また、所定の厚みを有する補助電極13が形成された結晶系太陽電池セル2を用いることで、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止することができる。
また加えて、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を補助電極13により防止することで、結晶系太陽電池セル2とタブ線3との接着性を向上させることができ、且つ高い接続信頼性を維持することが可能となる。更に加えて、結晶系太陽電池セル2の接着性及び接続信頼性が維持されることで、出力ロスによる太陽電池の発電効率の低下を抑制することが可能となる。
従って、以上で述べた通りの非常に優れた効果を示す、バスバーレス構造の結晶系太陽電池セル2を用いた結晶系太陽電池モジュール1を提供することができる。
上述した通りの結晶系太陽電池セル2に形成された補助電極13は、タブ線3やフィンガー電極12等が断線した際に導通を確保するための電極である。補助電極13は、結晶系光電変換材料10の受光面上に、フィンガー電極12間の所定の位置に、且つ導電性接着層14の両側縁に沿って形成されている。
結晶系太陽電池セル2では、補助電極13を、フィンガー電極12間の所定の位置に、且つ導電性接着層14の両側縁に沿って形成することで、結晶系光電変換材料10の受光面上の所定の領域からの、導電性接着層14を形成するための導電性接着剤の流出を防止することができる。
図3(A)、(B)及び図4(A)に示すように、補助電極13は、所定の高さ(厚み)及び長さLを有する略直方体状に形成されている。補助電極13の高さ及び長さLは、導電性接着層14を形成するための導電性接着剤の流出を防止できる程度であればよく、用途に応じて適宜変更することができる。また、結晶系太陽電池セル2では、補助電極13の高さ及び長さLの変更に伴い、補助電極13の形状が適宜変更されてもよい。
補助電極13は、電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を低減して低コスト化を図る観点から、補助電極13の両端部13a,13bがフィンガー電極12にそれぞれ当接しない程度に離間していることが好ましい。補助電極13の両端部13a,13bとフィンガー電極12との離間距離A,Aは、互いに同一であっても異なっていてもよく、導電性接着層14を形成するための導電性接着剤が流出しない程度の間隙であればよい。
結晶系太陽電池セル2では、上述した通りに補助電極13を形成することで、導電性接着剤が硬化する前に、結晶系太陽電池セル2上のテクスチャを伝って接続領域外に漏洩することを防止することができる。更に、結晶系太陽電池セル2では、後述するタブ線3を導電性接着剤上に載置して押圧した際に、導電性接着剤がタブ線3に押されて接続領域外に漏洩することを防止することもできる。
補助電極13の材質としては、導電性接着剤の流出を防止し、タブ線3等の断線時の導通を確保することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、錫、ニッケル等が挙げられる。
補助電極13をフィンガー電極12間に形成する際の位置としては、導電性接着剤の流出を防止し、タブ線3等の断線時の導通を確保することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。結晶系太陽電池セル2では、補助電極13とフィンガー電極12との接触時に、接触部分に生じた応力による補助電極13の割れや欠け等の劣化を防止するため、補助電極13の両端部13a,13bがフィンガー電極12から離間して設けられていることが好ましい。
また、補助電極13をフィンガー電極12間に形成する際には、導電性接着層14の側縁の少なくとも一部と接するように補助電極13が設けられてもよい。結晶系太陽電池セル2では、導電性接着層14の側縁の少なくとも一部と接するように補助電極13が設けられることで、補助電極13を介してフィンガー電極12同士の導通を確保することができ、光電変換素子11において生成した電気を収集することができる。
補助電極13のサイズや設置数としては、導電性接着剤の流出を防止し、タブ線3等の断線時の導通を確保することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。
また、本実施の形態では、電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を更に低減して低コスト化を図る観点から、例えば、図4(B)に示すように、補助電極13の代わりに3つの補助電極23からなる補助電極群24を、結晶系光電変換材料21の受光面上に、導電性接着層の少なくとも一方の側縁に沿って形成した結晶系太陽電池セル20であってもよい。
結晶系太陽電池セル20では、3つの補助電極23が、互いに所定の距離B,Bを保った状態で結晶系光電変換材料21上に直列して1つの補助電極群24を形成している。補助電極23同士の離間距離B,Bは、互いに同一であっても異なっていてもよく、導電性接着剤が流出しない程度の間隙であればよい。
結晶系太陽電池セル20では、結晶系太陽電池セル2と同様にして、補助電極群24の両端部、即ち一の補助電極23の端部23a及び他の補助電極23の端部23bが、フィンガー電極22にそれぞれ当接しない程度に離間していることが好ましい。補助電極23の両端部23a,23bとフィンガー電極22との離間距離B,Bは、互いに同一であっても異なっていてもよく、導電性接着剤が流出しない程度の間隙であればよい。なお、補助電極群24を構成する補助電極23の数は、導電性接着剤の流出を防ぐことができれば、用途に応じて適宜変更することができる。
結晶系太陽電池セル20では、上述した通りに、1つの補助電極23のサイズを縮小化した補助電極群24を形成することで、補助電極13と比較して、補助電極群24の形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を更に低減し、結晶系太陽電池モジュール全体の低コスト化を図ることができる。
<2−3.導電性接着層>
導電性接着層14は、フィンガー電極12同士、フィンガー電極12及びタブ線3、フィンガー電極12及び補助電極13、又はタブ線3及び補助電極13を電気的に接続する接着層である。導電性接着層14は、結晶系光電変換材料10の受光面上に、補助電極13間の所定の位置に、且つフィンガー電極12に略直交するように形成されている。また、導電性接着層14は、複数のフィンガー電極12に亘って設けられている。これにより、導電性接着層14がバスバー電極の代替として作用し、各電極とタブ線3とを電気的に接続することができる。
導電性接着層14は、接着剤となる熱硬化性樹脂組成物中に、高温で溶融する金属粒子(銅粒子や銀粉子等の高融点粒子14a)と、低温で溶融する金属粒子(はんだ粉子等の低融点粒子14b)を含有した導電性接着ペースト(導電性接着剤)を用いて形成される。
熱硬化性樹脂を構成する硬化成分としては、硬化剤と熱硬化処理することにより接着作用を有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等を使用することができ、中でも、フラックス成分の不活性化のために、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示できる。その他には、脂環式エポキシ樹脂や複素環含有エポキシ樹脂等の一般に知られている樹脂を適用することができる。
反応速度が比較的速い脂環式エポキシ樹脂を用いた場合には、その使用に伴って熱硬化性樹脂の硬化速度が速まるので、溶融した低融点粒子14bによるネットワーク(金属の連続相)形成をより迅速に行うようにすることが好ましい。その場合には、より低融点の低融点粒子14bを使用すればよい。
硬化剤としては、硬化成分に対応した硬化剤を使用する。例えば、硬化成分がエポキシ樹脂である場合には、熱硬化の際にガスの発生がなく、エポキシ樹脂と混合した際に長いポットライフを実現でき、また、得られる硬化物の電気的特性、化学的特性及び機械的特性間の良好なバランスを実現できるという点から、酸無水物を硬化剤として使用することが好ましい。
硬化剤として、フラックス活性を有するものを使用すれば、熱硬化の際に、高融点粒子14aに対する溶融した低融点粒子14bの濡れ性を向上させることができ、導電性接着剤の熱硬化物中に比較的少量の溶融した低融点粒子14bで高融点粒子14aを介して連続したネットワーク(金属の連続相)を形成することができる。従って、高い導通信頼性を奏すると共に、相対的に熱硬化性樹脂の含有量を増大させ、各電極とタブ線3との接着強度を向上させることができる。
硬化剤にフラックス活性を発現させる手法としては、硬化剤にカルボキシル基、スルホニル基、リン酸基等のプロトン酸基を、公知の方法により導入することが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂との反応性の点から、カルボキシル基を適用することが好ましい。
硬化成分がエポキシ樹脂の場合の好ましい硬化剤としては、フリーのカルボキシル基が存在するトリカルボン酸のモノ酸無水物、好ましくは、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−酸無水物を挙げることができる。
熱硬化性樹脂における硬化成分と硬化剤との含有割合は、硬化成分や硬化剤の種類により異なるが、硬化成分がエポキシ樹脂で、硬化剤がトリカルボン酸のモノ酸無水物である場合には、相対的にエポキシ樹脂の含有量が多すぎても少なすぎても硬化が不充分となるので、モル当量基準の当量比([エポキシ樹脂]/[硬化剤])で好ましくは1:0.5〜1:1.5、より好ましくは1:0.8〜1:1.2とする。
熱硬化性樹脂には、上述した硬化成分及び硬化剤に加えて、公知の熱硬化性接着剤に配合されている各種添加剤、例えば、顔料、紫外線吸収剤、硬化促進剤、シランカップリング剤を、発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。そして、熱硬化性樹脂は、硬化成分や硬化剤、及びその他の添加剤を、常法により均一に混合することにより、調整することができる。
導電性接着層14を形成するための導電性接着ペースト(導電性接着剤)は、上述した通り、熱硬化性樹脂中に、導電性粒子である高融点粒子14a及び低融点粒子14bを含有することにより作製される。
高融点粒子14aは、電気抵抗が小さいが融点が高く、熱硬化性樹脂の通常の熱硬化処理時の加熱により溶融しないため、導電性粒子として高融点粒子14aだけを使用して効率のよい導電性を実現するためには、溶融していない高融点粒子14a同士を接触させる必要がある。そのためには、熱硬化性樹脂に多量の高融点粒子14aを配合することになるが、多量の高融点粒子14aを配合すると、相対的に熱硬化性樹脂の含有量が減少して接着力が低下する虞がある。
そこで、結晶系太陽電池セル2では、熱硬化性樹脂に配合した金属フィラーの全量の一部として、熱硬化温度近辺の溶融温度を示す低融点粒子14bを使用し、溶融した低融点粒子14bで高融点粒子14a間をネットワーク化(金属の連続相化)する。
このような目的で使用するための高融点粒子14aとしては、電気抵抗が小さいが融点が高く、熱硬化性樹脂の通常の熱硬化処理時の加熱により溶融しないものであれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、錫、ニッケル等の粒子が挙げられる。
また、低融点粒子14bとしては、具体的には、熱硬化性樹脂の熱硬化処理温度よりも低い溶融温度を示し、且つ熱硬化性樹脂の熱硬化処理条件下で高融点粒子14aと反応して、低融点粒子14bの溶融温度より高い融点を示す合金を生成するものを使用する。低融点粒子14bの使用により、熱硬化性樹脂の硬化物の耐熱性を向上させることができる。
このような低融点粒子14bとしては、Sn−Bi系はんだ粒子、Sn−In系はんだ粒子、Sn−Zn系はんだ粒子等のはんだ粒子を好ましく挙げることができ、中でも、低温溶融性の観点から、Sn−Bi系はんだ粒子、Sn−In系はんだ粒子をより好ましく挙げることができる。Sn−Bi系はんだ粒子の具体例としては、Sn−58Bi共晶系はんだ粒子(融点139℃)を、Sn−In系はんだ粒子の具体例としては、Sn−52In系はんだ粒子(融点117℃)を、Sn−Zn系はんだ粒子の具体例としては、Sn−9Zn系はんだ粒子(融点199℃)を挙げることができる。
高融点粒子14a及び低融点粒子14bの粒子形状としては、球状、扁平状、粒状、針状等の形状を挙げることができる。
高融点粒子14aと低融点粒子14bとの質量比は、高融点粒子14aが多すぎるとネットワーク(金属の連続相)が少なくなる傾向があり、高融点粒子14aが少なすぎると高融点粒子はんだの生成量が少なくなる傾向があるので、好ましくは質量比で1:2〜2:1、より好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
導電性接着ペースト(導電性接着剤)は、以上で説明した通りの金属フィラーと熱硬化性樹脂とを、常法により均一に混合することにより調整されるものであり、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。
ここで、金属フィラーの熱硬化性樹脂中の含有量(以下の式(1)で定義される質量基準の金属フィラー充填率)は、低すぎるとネットワーク(金属の連続相)が形成されにくくなる傾向があり、高すぎると熱硬化性樹脂の接着力が低下する傾向があるので、好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%である。
金属フィラー充填率(%)
={金属フィラー/(金属フィラー+硬化成分+硬化剤)}×100 ・・・(1)
<2−4.タブ線>
タブ線3は、各フィンガー電極12と略直交する方向に設けられることにより、フィンガー電極12の電気を集電するためのものであり、従来の太陽電池モジュールで使用されているタブ線を利用することができる。
タブ線3の構造としては、結晶系太陽電池セル2の各間を電気的に接続することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、図3(A)、(B)に示すように、導電層3aと基材3bとを有する構造等が挙げられる。また、タブ線3には、予め導電性接着フィルムが積層されていてもよく、更にリール形状に成形されていてもよい。
導電層3aとしては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、金メッキ、銀メッキ、錫メッキ、はんだメッキ等により形成されたもの等が挙げられる。また、基材3bの材質としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロム、モリブデン、及びこれらの合金などが挙げられる。
タブ線3は、補助電極13の一部が対向する幅、即ち、少なくともタブ線3の両側縁が補助電極13の一部を覆うように配置することが好ましい。タブ線3の幅を、そのように構成することで、結晶系太陽電池セル2の各間を電気的に接続することができると共に、有効発電面積を最大限にすることができる。
タブ線3の平均厚みとしては、結晶系太陽電池セル2の各間を電気的に接続することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。なお、タブ線3の平均厚みは、例えば、タブ線3の任意の10点において、タブ線3の厚みを測定し、測定した値を平均することにより求めることができる。
以上で説明した通り、バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セル2を用いた結晶系太陽電池モジュール1では、結晶系太陽電池セル2の受光面上に補助電極13が、フィンガー電極12間に、且つ導電性接着層14の両側縁に沿って形成されている。従って、補助電極13を設けることにより、結晶系太陽電池モジュール1では、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止することができる。また加えて、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を補助電極13により防止することで、結晶系太陽電池セル2とタブ線3との接着性を向上させることができ、且つ高い接続信頼性を維持することが可能となる。更に加えて、結晶系太陽電池セル2の接着性及び接続信頼性が維持されることで、出力ロスによる太陽電池の発電効率の低下を抑制することが可能となる。
[3.結晶系太陽電池モジュールの製造方法]
本実施の形態にかかる結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、公知のバスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュールの製造方法を適用することができる。従って、結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、補助電極13の形成方法及びそれに関連する事項についてのみ説明し、それ以外については説明を省略する。
補助電極13の形成方法としては、導電性接着剤の流出を防止し、タブ線3等の断線時の導通を確保することができれば特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、補助電極13が所望のパターン形状になるように、補助電極13を形成するためのペーストを、結晶系太陽電池セル2上に印刷することにより形成することができる。補助電極13を形成するためのペーストの印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷等が挙げられる。
結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、例えば、図2(A)に示すように、常法により結晶系光電変換材料10の受光面上に、フィンガー電極12及び補助電極13を形成する(電極形成工程)。より詳細には、電極形成工程では、所定の間隔及び高さを有するフィンガー電極12を、それぞれが略平行になるように形成し、所定の間隔及び高さを有する一対の補助電極13を、それぞれが略平行になり且つフィンガー電極12に対して略直交するように形成する。
次に、結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、図2(B)に示すように、フィンガー電極12及び補助電極13を形成した結晶系光電変換材料10の受光面上に、常法により、高融点粒子14a及び低融点粒子14bを含む導電性接着剤を塗布する(塗布工程)。
次に、結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、図3(A)に示すように、フィンガー電極12及び補助電極13を形成した結晶系光電変換材料10の受光面上に、導電性接着剤を塗布した状態において、タブ線3を導電性接着剤上に載置し、図2(C)及び図3(B)に示すように、導電性接着剤を加熱して、含有する低融点粒子14bを溶融して導電性接着層14を形成し、太陽電池セル2を得る(接着層形成工程)。
次に、太陽電池モジュールの製造方法では、得られたバスバーレス構造を有する太陽電池セル2を用いて、常法により、例えば、図1に示すような太陽電池モジュール1を製造する。
以上で説明した通り、バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セル2を用いた結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、導電性接着剤を加熱して、含有する低融点粒子14bを溶融して導電性接着層14を形成することにより、少なくともフィンガー電極12とタブ線3とを電気的に確実に接続することができる。
また、結晶系太陽電池モジュールの製造方法では、導電性接着層14を形成する際に、少なくとも補助電極13の一部と導電性接着層14の側縁の少なくとも一部とが接するように設けることにより、導電性接着層14を介して補助電極13とフィンガー電極12とを電気的に確実に接続することもできる。
以下に示す実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらによって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図4(A)に示す結晶系太陽電池セル2を作製した。まず、実施例1では、結晶系光電変換材料10の受光面上に、銀ペーストをスクリーン印刷及び焼成することにより、フィンガー電極12及び補助電極13のパターンを形成した(電極形成工程)。電極形成工程では、フィンガー電極12を、お互いが略平行になるように一定の間隔で形成し、補助電極13を、フィンガー電極12間に、且つお互いが略平行になるように所定の間隔で形成した。結晶系太陽電池セル2において補助電極13を形成する理由は、後述する導電性ペーストの流出を阻止し、塗布した導電性ペーストを結晶系光電変換材料10の受光面上の接続領域内に収めるためである。従って、電極形成工程では、接続領域外への導電性ペーストの漏洩を防止し、且つ電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を最小量にすることが可能な程度に、補助電極13の厚み及び長さL、並びにフィンガー電極12と補助電極13の両端部13a,13bとの間隔A,Aをそれぞれ調整し、電極パターンを形成した。電極形成工程では、結晶系光電変換材料10として、厚さ200μmの結晶系のBBL(バスバーレス)セルを用いた。
次いで、実施例1では、電極形成工程で形成した補助電極13間に、フィンガー電極12に略直交するように導電性ペーストをディスペンス塗布(配向塗布方式)した(塗布工程)。塗布工程では、導電性ペーストとして、低融点金属粒子(はんだ粒子)50部、高融点金属粒子(銅粒子)30部、並びに熱硬化性樹脂及び他の成分を合わせて20部含んだものを用いた。
次いで、実施例1では、塗布工程で塗布した導電性ペースト上にタブ線を載置して、温度170℃及び時間3secの条件下で加熱処理を施して導電性接着層を形成し、結晶系光電変換材料10とタブ線を接続して結晶系太陽電池セル2を作製した(接着層形成工程)。接着層形成工程では、タブ線として、無鉛はんだメッキリボンを用いた。
実施例1では、電極形成工程において電極パターンを形成するために用いた銀ペースト中の銀の使用量について評価を行い、その結果を表1に示した。なお、表1でいう「電極の形状」の「A」は、図4(A)に示した結晶系光電変換材料10上の電極パターンを示す。
実施例1では、得られた結晶系太陽電池セル2について、光学顕微鏡を用いた外観観察(目視)により、接続領域外への導電性ペーストの滲み出しの有無を評価し、その結果を表1に示した。
実施例1では、結晶系太陽電池セル2におけるタブ線の接着状態について、目視によりタブ線の脱落の有無を確認して接着強度を評価し、その結果を表1に示した。
実施例1では、タブ線の接続信頼性について、温度サイクル試験後における導通抵抗の上昇率を算出して評価し、その結果を表1に示した。温度サイクル試験後における導通抵抗の上昇率の算出には、4端子法にてそれぞれ測定した温度サイクル試験前の初期導通抵抗と温度サイクル試験後の導通抵抗とを用いた。また、温度サイクル試験では、結晶系太陽電池セル2を、−40℃及び100℃の雰囲気に各30分以上曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを200サイクル行った。
[実施例2]
実施例2では、補助電極13の代わりに3つの補助電極23からなる補助電極群24を結晶系光電変換材料21の受光面上に配置したこと以外は実施例1と同様にして、図4(B)に示す結晶系太陽電池セル20を作製した。実施例2における電極形成工程では、補助電極13の厚みと略同一の厚みを有する3つの補助電極23からなる補助電極群24を、フィンガー電極22間に、お互いが略平行になるように所定の間隔で形成した。電極形成工程では、3つの補助電極23からなる補助電極群24を、補助電極23同士の間隔B,Bが一定となるように形成した。電極形成工程では、接続領域外への導電性ペーストの漏洩を防止し、且つ電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を最小量にすることが可能な程度に、補助電極23の厚み及び長さL、並びにフィンガー電極22と補助電極23の各端部23a,23bとの間隔B,Bをそれぞれ調整し、電極パターンを形成した。
実施例2では、電極形成工程において電極パターンを形成するために用いた銀ペースト中の銀の使用量について評価を行い、その結果を表1に示した。なお、表1でいう「電極の形状」の「B」は、図4(B)に示した結晶系光電変換材料21上の電極パターンを示す。
実施例2では、得られた結晶系太陽電池セル20について、実施例1と同様にして、導電性ペーストの滲み出し、並びにタブ線の接着状態及び接続信頼性を評価し、その結果を表1に示した。
[比較例1]
比較例1では、補助電極を配置しなかったこと以外は実施例1と同様にして、図5(A)に示す結晶系太陽電池セル30を作製した。
比較例1では、電極形成工程において補助電極を形成していないので、補助電極形成用の銀の使用量はゼロであるが、それを踏まえて評価を行い、その結果を表1に示した。なお、表1でいう「電極の形状」の「C」は、図5(A)に示した結晶系光電変換材料31上の電極パターンを示す。
比較例1では、得られた結晶系太陽電池セル30について、実施例1と同様にして、導電性ペーストの滲み出し、並びにタブ線の接着状態及び接続信頼性を評価し、その結果を表1に示した。
[比較例2]
比較例2では、補助電極を配置せずに、銀ペーストをスクリーン印刷及び焼成することにより、バスバー電極43のパターンを形成し、バスバー電極43上にタブ線を載置して導電性接着層を形成し、結晶系光電変換材料41とタブ線を接続したこと以外は実施例1と同様にして、図5(B)に示す結晶系太陽電池セル40を作製した。比較例2における電極形成工程では、バスバー電極43を、フィンガー電極42に略直交し、且つ各フィンガー電極42に亘って形成した。
比較例2では、電極形成工程においてバスバー電極43を形成するために用いた銀ペースト中の銀の使用量について評価を行い、その結果を表1に示した。なお、表1でいう「電極の形状」の「D」は、図5(B)に示した結晶系光電変換材料41上の電極パターンを示す。
比較例2では、得られた結晶系太陽電池セル40について、実施例1と同様にして、導電性ペーストの滲み出し、並びにタブ線の接着状態及び接続信頼性を評価し、その結果を表1に示した。
Figure 2018137380
[結晶系太陽電池セルの評価]
<1.電極の銀使用量>
実施例1では、結晶系太陽電池セル2において、結晶系光電変換材料10の受光面上にはフィンガー電極12及び補助電極13のパターンを形成しており、比較例2の結晶系太陽電池セル40のように、フィンガー電極42及びバスバー電極43のパターンを形成していない。ここで、補助電極13の総面積とバスバー電極43の総面積とを比較すると、明らかに補助電極13の総面積の方が小さいことから、補助電極13のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量は、比較例2におけるバスバー電極43のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量よりも少なくなる。従って、表1に示した通り、実施例1における銀の総使用量に対する評価を「△」(やや多い)とした。
実施例2では、結晶系太陽電池セル20において、結晶系光電変換材料21の受光面上にはフィンガー電極22及び3つの補助電極23からなる補助電極群24のパターンを形成しており、実施例1の結晶系太陽電池セル2のように、補助電極13のパターンを形成していない。実施例2では、補助電極群24を構成する補助電極23間に間隔B,Bが存在するので、補助電極13の長さLより、3つの補助電極23の長さの総計(3×L)の方が短い。つまり、補助電極群24の総面積と補助電極13の総面積とを比較すると、補助電極群24の総面積の方が小さいことから、補助電極群24のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量は、実施例1における補助電極13のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量よりも少なくなる。従って、表1に示した通り、実施例2における銀の総使用量に対する評価を「○」(少ない)とした。
比較例1では、結晶系太陽電池セル30において、結晶系光電変換材料31の受光面上にはフィンガー電極32のパターンのみを形成し、実施例1のように補助電極13のパターンを形成していない。従って、比較例1は、実施例1と比較して銀ペースト中の銀の総使用量が少ないことになるので、表1に示した通り、比較例1における銀の総使用量に対する評価を「◎」(非常に少ない)とした。
比較例2では、比較例2におけるバスバー電極43の総面積と、実施例1における補助電極13の総面積とを比較すると、バスバー電極43の総面積の方が大きくなるように電極パターンを形成している。つまり、比較例2におけるバスバー電極43のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量は、実施例1における補助電極13のパターンを形成するために必要な銀ペースト中の銀の総使用量よりも多くなる。従って、表1に示した通り、比較例2における銀の総使用量に対する評価を「×」(多い)とした。
<2.導電性ペーストの滲み出し>
実施例1では、補助電極13を超えて接続領域外へ導電性ペーストが滲み出さなかったので、表1に示した通り、導電性ペーストの滲み出しに対する評価を「◎」(滲み出しなし)とした。
実施例2では、補助電極23を超えて接続領域外への導電性ペーストの滲み出しが一部見られたものの、結晶系太陽電池セル20の実用上の問題が無かったので、表1に示した通り、導電性ペーストの滲み出しに対する評価を「○」(一部滲み出しあり)とした。
比較例1,2では、結晶系太陽電池セル30,40内に補助電極を形成せず、接続領域外へ導電性ペーストが滲み出してしまったことから、表1に示した通り、導電性ペーストの滲み出しに対する評価をそれぞれ「×」(滲み出しあり)とした。
<3.タブ線の接着状態>
実施例1,2では、得られた結晶系太陽電池セル2,20からタブ線が脱落することなく良好な接着強度を保持した状態を維持していたので、表1に示した通り、評価をそれぞれ「○」(良好)とした。
比較例1,2では、得られた結晶系太陽電池セル30,40からタブ線が脱落して接着強度に問題があったので、表1に示した通り、評価をそれぞれ「×」(不良)とした。
<4.結晶系太陽電池セルの接続信頼性>
実施例1では、結晶系太陽電池セル2を用いた温度サイクル試験後における導通抵抗の上昇率が10%未満であり、接続信頼性が非常に良好であったので、表1に示した通り、評価を「◎」とした。
実施例2及び比較例2では、結晶系太陽電池セル20,40を用いた温度サイクル試験後における導通抵抗の上昇率が10〜20%であり、接続信頼性が良好であったので、表1に示した通り、評価をそれぞれ「○」とした。
比較例1では、結晶系太陽電池セル30を用いた温度サイクル試験後における導通抵抗の上昇率が20%を超えており、接続信頼性に問題があったので、表1に示した通り、評価を「×」とした。
[結晶系太陽電池セルの判定]
実施例1では、結晶系太陽電池セル2において、バスバー電極の代わりに補助電極13を形成することで、銀ペースト中の銀の使用量を低減することができた。実施例1では、所定の厚みを有する補助電極13を形成することで、接続領域外への導電性ペーストの滲み出しをなくすことができた。その結果、実施例1では、タブ線の脱落を防いで良好な接着状態を保持することができ、接続信頼性も非常に良好であった。従って、実施例1で得られた結晶系太陽電池セル2は、非常に優れた評価結果が得られ、表1に示した通り、総合的な評価を「◎」(良好)と判定した。また、実施例1で得られた結晶系太陽電池セル2を適用して結晶系太陽電池モジュールとして用いる場合に非常に有用である。
実施例2では、結晶系太陽電池セル20において、バスバー電極の代わりに3つの補助電極23からなる補助電極群24を形成することで、銀ペースト中の銀の使用量を更に低減することができた。実施例2では、所定の厚みを有する3つの補助電極23からなる補助電極群24を形成することで、接続領域外への導電性ペーストの滲み出しを殆どなくすことができた。その結果、実施例2では、タブ線の脱落を防いで良好な接着状態を保持することができ、接続信頼性も良好であった。従って、実施例2で得られた結晶系太陽電池セル20は、優れた評価結果が得られ、総合的な評価を「○」(良)と判定した。また、実施例2で得られた結晶系太陽電池セル20を適用して結晶系太陽電池モジュールとして用いる場合に有用である。
一方、比較例1では、結晶系太陽電池セル30において、補助電極を形成しなかったので、銀ペースト中の銀の使用量を低減することはできたが、接続領域外への導電性ペーストの滲み出しがあり、タブ線の一部が脱落するという接着不良が生じると共に、接続信頼性にも問題があった。従って、比較例1で得られた結晶系太陽電池セル30は、良い評価結果を得ることができず、表1に示した通り、総合的な評価を「×」(不良)と判定した。また、比較例1で得られた結晶系太陽電池セル30を適用して優れた結晶系太陽電池モジュールとして用いることは困難である。
比較例2では、結晶系太陽電池セル40において、補助電極を形成せずにバスバー電極43を形成したので、銀ペースト中の銀の使用量が増加してしまった。比較例2では、補助電極を形成しなかったので、接続領域外への導電性ペーストの滲み出しがあり、タブ線の一部が脱落するという接着不良が生じたが、バスバー電極43により接続信頼性は良好であった。従って、比較例2で得られた結晶系太陽電池セル40は、良い評価結果を得ることができず、表1に示した通り、総合的な評価を「×」(不良)と判定した。また、比較例2で得られた結晶系太陽電池セル40を適用して優れた結晶系太陽電池モジュールとして用いることは困難である。
本発明にかかる結晶系太陽電池モジュールは、バスバー電極の代わりに補助電極が形成された結晶系太陽電池セルを用いることで、電極パターンの形成に用いる銀ペースト中の銀の使用量を低減することができ、コストの低減化を図ることができる。また、所定の厚みを有する補助電極が形成された結晶系太陽電池セルを用いることで、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を防止することができる。また加えて、接続領域外への導電性接着剤の漏洩を補助電極により防止することで、結晶系太陽電池セルとタブ線との接着性を向上させることができ、且つ高い接続信頼性を維持することが可能となる。更に加えて、結晶系太陽電池セルの接着性及び接続信頼性が維持されることで、出力ロスによる太陽電池の発電効率の低下を抑制することが可能となる。従って、以上述べた通りの非常に優れた効果を示す、バスバーレス構造の結晶系太陽電池セルを用いた結晶系太陽電池モジュールにおいて、好適に用いることができる。
1 結晶系太陽電池モジュール、2,20,30,40 結晶系太陽電池セル、3 タブ線、3a 導電層、3b 基材、4 ストリングス、5 マトリクス、6 シート、7 表面カバー、8 バックシート、9 金属フレーム、10,21,31,41 結晶系光電変換材料、11 光電変換素子、12,22,32,42 フィンガー電極、13,23 補助電極、13a,13b,23a,23b 端部、14 導電性接着層、14a 高融点粒子、14b 低融点粒子、24 補助電極群、43 バスバー電極

Claims (7)

  1. バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セルが接続されてなる結晶系太陽電池モジュールであって、
    前記結晶系太陽電池セルの受光面上に、それぞれが略平行になるように形成された複数のフィンガー電極と、
    前記フィンガー電極に略直交するように形成された導電性接着層と、
    前記フィンガー電極間に形成され、且つ前記導電性接着層の両側縁に沿って形成された補助電極と、
    少なくとも前記補助電極の一部が対向する幅を有するタブ線と
    を有することを特徴とする結晶系太陽電池モジュール。
  2. 前記導電性接着層は、前記複数のフィンガー電極に亘って設けられることを特徴とする請求項1に記載の結晶系太陽電池モジュール。
  3. 前記導電性接着層は、低融点金属粒子を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結晶系太陽電池モジュール。
  4. 前記補助電極は、前記導電性接着層の側縁の少なくとも一部と接するように設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の結晶系太陽電池モジュール。
  5. 複数の前記補助電極が、前記導電性接着層の少なくとも一方の側縁に沿って形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の結晶系太陽電池モジュール。
  6. バスバーレス構造を有する結晶系太陽電池セルが接続されてなる結晶系太陽電池モジュールの製造方法であって、
    前記結晶系太陽電池モジュールは、前記結晶系太陽電池セルの受光面上に、それぞれが略平行になるように形成された複数のフィンガー電極と、該フィンガー電極に略直交するように形成された導電性接着層と、該フィンガー電極間に形成され、且つ該導電性接着層の両側縁に沿って形成された補助電極と、少なくとも該補助電極の一部が対向する幅を有するタブ線とを有し、
    前記結晶系太陽電池セルの受光面上に低融点金属粒子を含む前記導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤を加熱して該低融点金属粒子を溶融して前記導電性接着層を形成し、少なくとも前記フィンガー電極と前記タブ線とを電気的に接続することを特徴とする結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
  7. 前記導電性接着層を形成する際に、少なくとも前記補助電極の一部と該導電性接着層の側縁の少なくとも一部とが接するように設けて、該導電性接着層を介して該補助電極と該フィンガー電極とを電気的に接続することを特徴とする請求項6に記載の結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
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